一面において、本発明は、カンナビノイド1受容体(本明細書中、“CB1受容体”または“CB1”とも言う)に結合する抗体およびその抗原結合フラグメントを提供する。ある態様において、CB1受容体はヒトCB1受容体である。ある態様において、抗体あたはそのフラグメントは、CB1受容体上の1つまたはそれ以上の細胞外エピトープを認識する。ある態様において、本明細書に記載のCB1受容体結合抗体およびそのフラグメントは、機能的抗体またはその抗原結合フラグメントである。ある態様において、CB1受容体結合抗体またはそのフラグメントは、CB1受容体シグナル伝達活性を阻害するか、または増大させる。ある態様において、CB1受容体結合抗体またはそのフラグメントは、それらがCB1受容体シグナル伝達活性を阻害するという点で、アンタゴニスト抗体である。ある態様において、CB1受容体結合抗体またはそのフラグメントは、それらがCB1受容体シグナル伝達活性を増強するという点で、アゴニスト抗体である。ある態様において、CB1受容体結合抗体またはそのフラグメントは、CB1受容体シグナル伝達活性のモジュレーターであるか、またはCB1受容体シグナル伝達活性のアロステリックモジュレーターである。ある態様においてCB1受容体結合抗体またはそのフラグメントは、アゴニスト活性またはアンタゴニスト活性を欠く選択的結合剤である。ある態様において、CB1受容体結合抗体またはそのフラグメントは、診断目的および/または画像化目的に有用であるアゴニスト活性またはアンタゴニスト活性なしの選択的結合剤である。
ある態様において、単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、例えば、AM6545、AM251またはリモナバンなどの小分子CB1受容体モジュレーターとして少なくとも同程度に強力である。ある態様において、抗体またはそのフラグメントは、小分子AM6545、AM251またはリモナバンと比較して少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、または少なくとも20倍以上強力なCB1受容体阻害活性または活性化活性を有する。ある態様において、単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、CB1受容体アゴニストが介在するシグナル伝達を阻害する。ある態様において、CB1受容体アゴニストが介在するシグナル伝達の阻害は、細胞内cAMPレベルおよび/または下流のERKリン酸化を決定することにより測定される。
ある態様において、単離された抗体およびその抗原結合フラグメントは、低下した脳透過性を有するか、または脳透過性がないという利点を有する。ある態様において、単離された抗体およびその抗原結合フラグメントの脳透過性は、小分子CB1受容体アゴニストまたはアンタゴニスト(例えば、AM6545、AM251またはリモナバン)と比較して低下した脳透過性を示す。ある態様において、本明細書に記載のCB1受容体結合抗体およびそのフラグメントは、小分子CB1受容体アゴニストまたはアンタゴニストと比較して低下した中枢神経系の副作用の治療的利点を提供する。小分子CB1受容体アンタゴニストであるリモナバンに伴うCNS副作用には、不安、抑うつ、興奮、摂食障害、神経過敏、攻撃性、および不眠症が含まれる(Moreira, 2009, Rev Bras Psiquiatr., 31(2):145-53)。
ある態様において、本明細書に記載の単離された抗体およびその抗原結合フラグメントは、ハイブリドーマ細胞株から作製される。他の態様において、本明細書に記載の単離された抗体およびその抗原結合フラグメントは、ファージディスプレイライブラリーから作製される。
ある態様において、本明細書に記載の単離された抗体およびその抗原結合フラグメントは、少なくともnM範囲である、天然のヒトCB1受容体に対する親和性を有する。例えば、ある態様において、CB1受容体に対する親和性は、約1μM以下、または約750nM以下、または約500nM以下、または約250nM以下、または約100nM以下、または約75nM以下、または約50nM以下、または約25nM以下、または約10nM以下、または約1nM以下である。他の態様において、本明細書に記載の単離された抗体および抗原結合フラグメントは、約15nM以下のCB1受容体に対する親和性を有する。ある態様において、単離された抗体およびその抗原結合フラグメントは、約0.01nMから約500nM、約0.02nMから約250nM、約0.02から約200nM、約0.05から約100nM、約0.05から約50nMの、ヒトCB1受容体に対する親和性を有する。
本発明の単離された抗体およびその抗原結合フラグメントは、マウス、ラット、ウサギ、ハムスター、モルモット、霊長動物、ラマまたはヒトを含むが、これらに限定されない任意の種に由来し得る。ある態様において、該単離された抗体およびその抗原結合フラグメントはマウス抗体である。他の態様において、該単離された抗体およびその抗原結合フラグメントは、キメラ抗体である。さらに他の態様において、該単離された抗体および抗原結合フラグメントは、ヒト化抗体である。ある態様において、該単離された抗体およびその抗原結合フラグメントは、完全ヒト抗体である。
一態様において、単離された抗体およびその抗原結合フラグメントは、本明細書に記載のように、ヒト化抗体またはキメラP1C4抗体である。一態様において、ヒト化P1C4抗体は、本明細書に記載のように、P1C4-H0、P1C4-H2およびP1C4-H4からなる群より選択される。一態様において、単離された抗体およびその抗原結合フラグメントは、結果として抗体エフェクター機能が低下される、損なわれる、または排除される、Fc改変を含む。さらなる態様において、単離された抗体およびその抗原結合フラグメントは、P1C4-H0-IgG2-4ハイブリッド、P1C4-H0-IgG2A330S/P331S、P1C4-H0-IgG4S228P、P1C4-H2-IgG2-4ハイブリッド、P1C4-H2-IgG2A330S/P331S、P1C4-H2-IgG4S228P、P1C4-H4-IgG2-4ハイブリッド、P1C4-H4-IgG2A330S/P331S、P1C4-H4-IgG4S228Pからなる群より選択される。
一態様において、単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号1、9、17、25、33、41、49および57からなる群より選択される核酸配列を含む重鎖可変領域を含む。別の態様において、単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号2、10、18、26、34、42、50および58からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。別の態様において、単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号3、11、19、27、35、43、51および59からなる群より選択される核酸配列を含む重鎖定常領域を含む。別の態様において、単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号4、12、20、28、36、44、52および60からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む重鎖定常領域を含む。別の態様において、単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号5、13、21、29、37、45、53および61からなる群より選択される核酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。別の態様において、単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号6、14、22、30、38、46、54および62からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。別の態様において、単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号7、15、23、31、39、47、55および63からなる群より選択される核酸配列を含む軽鎖定常領域を含む。別の態様において、単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号8、16、24、32、40、48、56および64からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖定常領域を含む。
一態様において、単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号1に記載の核酸配列を含む重鎖可変領域;配列番号3に記載の核酸配列を含む重鎖定常領域;配列番号5に記載の核酸配列を含む軽鎖可変領域;および、配列番号7に記載の核酸配列を含む軽鎖定常領域を含む。
一態様において、単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号2に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;配列番号4に記載のアミノ酸配列を含む重鎖定常領域;配列番号6に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;および、配列番号8に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖定常領域を含む。
一態様において、単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号9に記載の核酸配列を含む重鎖可変領域;配列番号11に記載の核酸配列を含む重鎖定常領域;配列番号13に記載の核酸配列を含む軽鎖可変領域;および、配列番号15に記載の核酸配列を含む軽鎖定常領域を含む。
一態様において、単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号10に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;配列番号12に記載のアミノ酸配列を含む重鎖定常領域;配列番号14に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;および、配列番号16に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖定常領域を含む。
一態様において、単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号17に記載の核酸配列を含む重鎖可変領域;配列番号19に記載の核酸配列を含む重鎖定常領域;配列番号21に記載の核酸配列を含む軽鎖可変領域;および、配列番号23に記載の核酸配列を含む軽鎖定常領域を含む。
一態様において、単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号18に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;配列番号20に記載のアミノ酸配列を含む重鎖定常領域;配列番号22に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;および、配列番号24に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖定常領域を含む。
一態様において、単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号25に記載の核酸配列を含む重鎖可変領域;配列番号27に記載の核酸配列を含む重鎖定常領域;配列番号29に記載の核酸配列を含む軽鎖可変領域;および、配列番号31に記載の核酸配列を含む軽鎖定常領域を含む。
一態様において、単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号26に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;配列番号28に記載のアミノ酸配列を含む重鎖定常領域;配列番号30に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;および、配列番号32に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖定常領域を含む。
一態様において、単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号33に記載の核酸配列を含む重鎖可変領域;配列番号35に記載の核酸配列を含む重鎖定常領域;配列番号37に記載の核酸配列を含む軽鎖可変領域;および、配列番号39に記載の核酸配列を含む軽鎖定常領域を含む。
一態様において、単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号34に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;配列番号36に記載のアミノ酸配列を含む重鎖定常領域;配列番号38に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;および、配列番号40に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖定常領域を含む。
一態様において、単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号41に記載の核酸配列を含む重鎖可変領域;配列番号43に記載の核酸配列を含む重鎖定常領域;配列番号45に記載の核酸配列を含む軽鎖可変領域;および、配列番号47に記載の核酸配列を含む軽鎖定常領域を含む。
一態様において、単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号42に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;配列番号44に記載のアミノ酸配列を含む重鎖定常領域;配列番号46に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;および、配列番号48に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖定常領域を含む。
一態様において、単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号49に記載の核酸配列を含む重鎖可変領域;配列番号51に記載の核酸配列を含む重鎖定常領域;配列番号53に記載の核酸配列を含む軽鎖可変領域;および、配列番号55に記載の核酸配列を含む軽鎖定常領域を含む。
一態様において、単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号50に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;配列番号52に記載のアミノ酸配列を含む重鎖定常領域;配列番号54に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;および、配列番号56に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖定常領域を含む。
一態様において、単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号57に記載の核酸配列を含む重鎖可変領域;配列番号59に記載の核酸配列を含む重鎖定常領域;配列番号61に記載の核酸配列を含む軽鎖可変領域;および、配列番号63に記載の核酸配列を含む軽鎖定常領域を含む。
一態様において、単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号58に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;配列番号60に記載のアミノ酸配列を含む重鎖定常領域;配列番号62に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;および、配列番号64に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖定常領域。
一態様において、本発明は、配列番号1-351からなる群より選択される核酸配列またはアミノ酸配列と少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも99%の同一性を有する核酸配列またはアミノ酸配列を含む、単離された抗体またはそのフラグメントを提供する。
一態様において、単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号2、10、18および26に記載の重鎖可変領域中に存在する複数の相補性決定領域(CDR)から独立して選択される重鎖CDRを含む。別の態様において、単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号6、14、22および30に記載の軽鎖可変領域中に存在する複数のCDRから独立して選択される軽鎖CDRを含む。
一態様において、単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号2、10、18および26に記載の重鎖可変領域中に存在する複数のCDRから独立して選択されるCDRを含むヒト化抗体である。別の態様において、単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号6、14、22および30に記載の軽鎖可変領域中に存在する複数のCDRから独立して選択されるCDRを含むヒト化抗体である。
一態様において、重鎖可変領域は、配列番号339-341からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなる。一態様において、単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号339-341からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有する重鎖可変領域アミノ酸配列を含む。さらなる態様において、該重鎖可変領域は、配列番号339-341からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなる。
別の態様において、単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号343-351からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有する重鎖アミノ酸配列を含む。さらなる態様において、該重鎖は、配列番号343-351からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなる。
別の態様において、単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号337に記載のアミノ酸配列と少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有する軽鎖可変領域アミノ酸配列を含む。さらなる態様において、該重鎖可変領域は、配列番号337に記載のアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなる。
別の態様において、単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号338に記載のアミノ酸配列と少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有する軽鎖アミノ酸配列を含む。さらなる態様において、該軽鎖は、配列番号338に記載のアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなる。
一態様において、本発明は、CB1に結合するヒト化された単離された抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。さらなる態様において、単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号337に記載の軽鎖可変領域および配列番号339に記載の重鎖可変領域を含む。別の態様において、単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号337に記載の軽鎖可変領域および配列番号340に記載の重鎖可変領域を含む。別の態様において、単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号337に記載の軽鎖可変領域および配列番号341に記載の重鎖可変領域を含む。別の態様において、単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号338に記載の完全軽鎖および配列番号343-351からなる群より選択される配列に記載の完全重鎖を含む。
他の態様において、単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号829、830、831または832に記載の軽鎖配列を含む。ある態様において、単離された抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号829、830、831または832に記載の軽鎖配列および配列番号437に記載の重鎖配列を含む。
一態様において、単離された抗体またはそのフラグメントは、配列番号352のアミノ酸配列(YYWMN)と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の相同性を有する重鎖CDR1配列を含む。別の態様において、単離された抗体またはそのフラグメントは、配列番号353のアミノ酸配列(QIYPGDGETKY)と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の相同性を有する重鎖CDR2配列を含む。別の態様において、単離された抗体またはそのフラグメントは、配列番号354のアミノ酸配列(SHGNYLPY)と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の相同性を有する重鎖CDR3配列を含む。別の態様において、単離された抗体またはそのフラグメントは、配列番号355のアミノ酸配列(SSYLH)と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の相同性を有する軽鎖CDR1配列を含む。別の態様において、単離された抗体またはそのフラグメントは、配列番号356のアミノ酸配列(STSNLAS)と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の相同性を有する軽鎖CDR2配列を含む。別の態様において、単離された抗体またはそのフラグメントは、配列番号357のアミノ酸配列(HQYHRSPPTF)と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の相同性を有する軽鎖CDR3配列を含む。
一態様において、単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、それぞれ配列番号352、353および354に記載のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、CDR2およびCDR3を含む。別の態様において、単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、それぞれ配列番号355、356および357に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3を含む。さらなる態様において、単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、それぞれ配列番号352、353、354、355、356および357に記載のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、重鎖CDR2、重鎖CDR3、軽鎖CDR1、軽鎖CDR2および軽鎖CDR3を含む。さらなる態様において、単離された抗体またはそのフラグメントは、キメラであるか、またはヒト化されている。
さらに別の態様において、単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号833に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1を含む。さらなる態様において、単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号694、834および835に記載のアミノ酸配列を含む群から選択される軽鎖CDR2を含む。さらにさらなる態様において、単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号779および836に記載のアミノ酸配列を含む群から選択される軽鎖CDR3を含む。
一態様において、単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号833に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、配列番号694に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、および配列番号836に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を含む。
別の態様において、単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号833に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、配列番号835に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、および配列番号836に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を含む。
さらに別の態様において、単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号833に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、配列番号694に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、および配列番号357に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を含む。
さらに別の態様において、単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号833に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、配列番号834に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、および配列番号779に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を含む。
さらに別の態様において、カンナビノイド受容体1(CB1)に結合する単離された抗体またはその抗原結合フラグメントであって、抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号355または833に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1;配列番号356、694、834または835に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2;および配列番号357、779または836に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を含む、単離された抗体またはその抗原結合フラグメントが本明細書に記載されている。
当業者は、本明細書に記載の抗体の重鎖および軽鎖CDRが、本明細書に記載の抗体由来の何れかの軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3;ならびに、何れかの重鎖CDR1、CDR2およびCDR3を含む抗体またはその結合フラグメントを形成するために、独立して選択され、混合され、そして組み合わされ得ることを理解し得る。当業者は、本明細書に記載の抗体の重鎖および軽鎖可変領域が、本明細書に記載の抗体由来の何れかの重鎖および軽鎖ウィ含む抗体またはその結合フラグメントを形成するために、独立して選択され、混合され、そして組み合わされ得ることをさらに理解し得る。
一態様において、本明細書に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントは、本明細書に記載のCDRから選択される重鎖および軽鎖CDR、または本明細書に記載のCDRの保存的変異体を含む、キメラ抗体またはフラグメントである。別の態様において、本明細書に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントは、本明細書に記載のCDRから選択される重鎖および軽鎖CDR、または本明細書に記載のCDRの保存的変異体を含む、ヒト化抗体またはフラグメントである。一態様において、本明細書に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントは、本明細書に記載の配列、またはその保存的変異体を含む、軽鎖および/または重鎖を含む。一態様において、保存的変異体は、本明細書に記載の対照配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の相同性を有する。一態様において、保存的変異体は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上のアミノ酸置換、挿入または欠失を含む。
ある態様において、単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、CB1に結合し、低下したエフェクター機能を示す。一態様において、単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、CB1に結合し、1つまたはそれ以上のFc領域修飾を含む。さらなる態様において、抗体またはその抗原結合フラグメントは、CB1に結合し、Fc領域中に1つまたはそれ以上の変異を含むアミノ酸配列を含む。さらなる態様において、単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、位置228および/または位置330および/または位置331に変異を有する。別の態様において、単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、Fc領域の位置228に変異を有し、ここで該Fc領域はIgG4アイソタイプのものである。さらなる態様において、該変異はS228Pである。別の態様において、単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、位置330および/または位置331に変異を有する。さらなる態様において、単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、位置330および/または331に変異を有し、ここで、該Fc領域は、IgG2アイソタイプのものである。さらなる態様において、単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、Fc領域中に以下の変異:A330SおよびP331Sを有する。別の態様において、単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、ハイブリッドFc領域であるFc領域を含む。例えば、一態様において、Fc領域は、ハイブリッドIgG2/IgG4Fc領域であり、ここで、CH1およびヒンジ領域はIgG2に由来し、そしてCH2およびCH3領域は、IgG4に由来する。
従って、一態様において、本明細書に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントは、本明細書に記載のCDRから選択される重鎖および軽鎖CDR、または本明細書に記載のCDRの保存的変異体を含む、キメラ抗体またはヒト化抗体またはフラグメントであり、ここで、単離された抗体またはそのフラグメントは、抗体エフェクター機能を変更する修飾を含むFc領域を含む。例えば、一態様において、単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号352-357に記載の軽鎖および重鎖CDR、またはその保存的変異体を含み、さらに、IgG2-IgG4ハイブリッドFc領域、位置330および331にアミノ酸変異(例えば、A330SおよびP331S)を含むIgG2 Fc領域、または位置228にアミノ酸変異(例えば、S228P)を含むIgG4 Fc領域を含む。
一態様において、本発明は、CB1に結合する単離された抗体またはその抗原結合フラグメントを提供し、ここで、該抗体またはフラグメントは、CB1受容体に対して、約70nM以下、約60nM以下、約50nM以下、約40nM以下、約30nM以下、約25nM以下、約20nM以下、約15nM以下、約10nM以下、約8nM以下、約6nM以下、約5nM以下、約4nM以下、約3nM以下、約2nM以下、または約1nM以下の結合親和性Kdを有する。一態様において、本発明は、CB1に結合する単離された抗体またはそのフラグメントを提供し、ここで、該抗体またはフラグメントは、CB1受容体に対して、約1nMから約100nM、約2nMから約75nM、約3nMから約50nM、約4nMから約10nMの範囲の結合親和性Kdを有するか、またはCB2受容体に対して、約50nM、または約40nM、または約30nM、または約20nM、または約10nM、または約5nM、または約4nM、または約3nM、または約2nM、または約1nMの結合親和性Kdを有する。
一態様において、本発明は、小分子リモナバンよりも少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、少なくとも11倍、少なくとも12倍、少なくとも13倍、少なくとも14倍、または少なくとも15倍以上強力な単離された抗体またはその抗原結合フラグメントを提供し、ここで、抗体またはフラグメントまたはリモナバンの効力は、cAMPアッセイにおけるCB1受容体アンタゴニスト介在シグナル伝達の阻害により測定される。さらなる態様において、単離された抗体またはその抗原結合フラグメントはヒト化されている。
一態様において、本発明は、CB1に結合する単離されたヒト化抗体またはその抗原結合フラグメントを提供し、ここで、該抗体またはフラグメントは、対応する非ヒト化抗体またはキメラ抗体より強い結合親和性および/またはより強い効力を示し、ここで、ヒト化抗体またはフラグメントおよび対応する非ヒト化抗体またはキメラ抗体は、同じ重鎖および軽鎖CDRを含む。例えば、一態様において、本発明は、それぞれ配列番号352、353、354、355、356および357に記載の、重鎖CDR1、CDR2およびCDR3ならびに軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3を含むヒト化抗体またはそのフラグメントを提供し、ここで、該ヒト化抗体は、CB1受容体に対するより強い結合親和性および/またはCB1受容体アゴニストの阻害に関するより強い効力を示す。一態様において、本明細書に記載のヒト化抗体およびフラグメントは、対応する非ヒト化抗体またはキメラ抗体と比較して、少なくとも50%以上、少なくとも100%以上、少なくとも2倍以上、少なくとも3倍以上、少なくとも4倍以上、少なくとも5倍以上、または少なくとも10倍以上の効力を示す。さらなる態様において、効力は、CB1-cAMP産生の阻害により測定される。
本明細書に記載のCB1受容体抗体の効力は、当技術分野で公知の何れかの方法により測定可能である。例えば、一態様において、本明細書に記載の抗体およびフラグメントの効力は、細胞内cAMPレベルまたはERKリン酸化により測定される。例えば、効力は、cAMP機能アッセイ(Cisbio)におけるcAMP産生の阻害レベルまたはウェスタンブロットにおけるWIN55,212により誘導されるERKリン酸化の阻害レベルにより測定され得る。
ある態様において、本発明は、CB1受容体への結合に関して本明細書に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントと競合し得る抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。他の態様において、本発明は、本明細書に記載の抗体または抗原結合フラグメントと本質的に同じCB1受容体上のエピトープに特異的に結合し得る、抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。かかる抗体は、常套の競合結合アッセイを用いて同定できる。任意の態様において、競合はELISA、フローサイトメトリー、または表面プラズモン共鳴(SPR)アッセイにより測定される。
ある態様において、抗体およびそのフラグメントは、さらなる治療剤、細胞毒性剤、免疫付着分子(immunoadhesin molecule)および造影剤を含む群から選択される1つまたはそれ以上の薬剤と複合体を形成している。ある態様において、造影剤は、放射性標識、酵素、蛍光標識、発光標識、生物発光標識、磁気標識、およびビオチンからなる群より選択される。
一面において、方法は、CB1受容体を発現する細胞と本明細書に記載の抗体またはそのフラグメントとを接触させることを含む、CB1受容体のシグナル伝達活性を調節するために提供される。ある態様において、方法は、結果として、CB1受容体シグナル伝達活性の阻害をもたらした。ある態様において、方法は、CB1受容体シグナル伝達の増加した活性をもたらした。ある態様において、CB1受容体シグナル伝達活性の調節は、アロステリックモジュレーターのように、間接的である。ある態様において、CB1受容体シグナル伝達活性の調節は、Galpha i/o介在シグナル伝達 対 ベータアレスチン介在シグナル伝達についてバイアスされている。
一面において、それを必要とする対象におけるCB1受容体のアンタゴニスト作用またはアゴニスト作用に応答する疾患または障害の処置法が提供される。ある態様において、方法は、本明細書に記載の抗CB1受容体抗体またはその抗原結合フラグメントを対象に投与することを含む。一態様において、対象は哺乳動物である。さらなる態様において、対象はヒトである。ある態様において、疾患または障害は、肥満、糖尿病、異脂肪血症、代謝性疾患、線維症、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝疾患、原発性胆汁性肝硬変、腎疾患、腎線維症、慢性腎疾患、骨粗鬆症、アテローム性動脈硬化症、心血管疾患、癌、炎症性疾患、疼痛、MS痙縮および緑内障を含む眼疾患である。ある態様において、疾患または障害は、例えば、肥満、糖尿病、線維症、肝疾患、心血管疾患または癌であり、そして該方法は、結果として、CB1受容体の活性の阻害をもたらした。ある態様において、疾患または障害は、例えば、疼痛または緑内障であり、そして該方法は、結果として、CB1受容体活性の活性化または増加をもたらした。
一面において、細胞、組織または対象においてCB1受容体を検出するための方法が提供され、該方法は、細胞と本明細書に記載のCB1受容体結合抗体または抗原結合フラグメントとを接触させることを含む。一態様において、細胞は対象内に存在する。別の態様において、細胞はヒト対象内に存在する。別の態様において、細胞のCB1受容体発現レベルは、疾患状態と相関している。従って、一面において、本発明は、ヒト疾患の診断および/または予後のためのツールとして、CB1受容体に特異的に結合する抗体およびそのフラグメントの使用方法を提供する。一態様において、本発明は、本明細書に記載のCB1受容体抗体およびフラグメントの使用を含む、CB1受容体の画像化法を提供する。一態様において、CB1受容体を検出するための方法は、CB1受容体を選択的に結合する本明細書に記載のCB1受容体抗体またはそのフラグメントを用いて達成される。さらなる態様において、選択的なCB1受容体抗体またはそのフラグメントは、アゴニスト活性またはアンタゴニスト活性を示さない。さらなる態様において、選択的なCB1受容体抗体またはそのフラグメントは内在化しない。一態様において、本発明は、例えば、放射性標識、酵素、蛍光標識、発光標識、生物発光標識、磁気標識またはビオチンなどの造影剤と複合体を形成しているCB1受容体抗体またはフラグメントの使用を含む診断法および画像化法を提供する。
一態様において、本発明は、CB1受容体に特異的に結合する単離された抗体またはそのフラグメントを発現する宿主細胞を提供する。別の態様において、CB1受容体に特異的に結合する抗体またはそのフラグメントの作製法を提供し、該方法は、精製したCB1受容体またはその抗原フラグメント、CB1/脂質複合体、CB1受容体iCAPS、および/またはCB1受容体DNAで哺乳動物を免疫化することを含む。さらなる態様において、免疫化した哺乳動物はマウスである。別の態様において、哺乳動物は、免疫化された哺乳動物から細胞を取り出す前に、精製されたCB1またはその抗原フラグメント、CB1/脂質複合体、CB1受容体iCAPS、および/またはCB1受容体DNAを用いて1回、2回、3回、4回、5回またはそれ以上免疫化されている。さらなる態様において、CB1受容体に特異的に結合する抗体またはそのフラグメントは、免疫化した哺乳動物由来の細胞を含むハイブリドーマ細胞株から作製される。別の態様において、CB1受容体に特異的に結合する抗体またはそのフラグメントは、ファージディスプレイライブラリーから作製される。さらなる態様において、ファージディスプレイライブラリーは、免疫化した哺乳動物から単離された細胞に由来する。さらなる態様において、ファージディスプレイライブラリーは、天然のヒト免疫グロブリン配列に由来する。
詳細な説明
一面において、本発明は、ヒトカンナビノイド1(CB1)受容体に選択的に結合する抗体およびその抗原結合フラグメントなどの抗原結合タンパク質を提供する。抗体およびそのフラグメントは、CB1受容体をアゴナイズもしくはアンタゴナイズする、またはアゴニスト活性もしくはアンタゴニスト活性を有さないCB1を選択的に認識する、機能的抗体である。
本明細書で用いる用語“抗体”は、少なくとも1つの抗原-結合ドメインを有する結合タンパク質を意味し、組換えポリペプチド、融合タンパク質および免疫複合体を含むモノクローナル抗体フラグメントおよび/またはその変異体を含む。従って、用語“抗体”、“抗体フラグメント”および“抗体変異体”は、本明細書中で互換的に用いられる。本発明の抗体フラグメントの例としては、VL、VH、CLおよびCHIドメインからなるFabフラグメント;VHおよびCHIからなるFcフラグメント;VLおよびVHからなるFvフラグメント;VHドメインからなるdAbフラグメント;単離されたCDR領域;2つの連結されたFabフラグメントを含むF(ab’)2二価フラグメント;および、一本鎖Fv分子(scFv)が含まれるが、これに限定されない。本明細書に記載のCB1受容体結合抗体は、マウス、ラット、ウサギ、霊長動物、ラマおよびヒトを含むが、これに限定されない何れかの種から作製できる。CB1受容体結合抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体、または完全ヒト抗体であってよい。
本明細書で用いる用語“~に由来する”は、対照抗体または他の結合タンパク質と比較して分子またはポリペプチドを意味するために用いられるとき、対照抗体または他の結合タンパク質と同じエピトープに特異的に結合することができる分子またはポリペプチドを意味する。
単数形の使用は、他にこれと異なる記載がない限り、複数形も含む。用語“a”または“an”は、他にこれと異なる記載がない限り、“少なくとも1つ”を意味する。“or”の使用は、他にこれと異なる記載がない限り、“および/または”を意味する。語句“少なくとも1つ”の意味は、語句“1つまたはそれ以上”の意味と等価である。さらに、用語“包含”、ならびに他の形態、例えば“含む”および“含んだ”の使用は、制限されない。また、“要素”または“成分”などの用語は、他にこれと異なる記載がない限り、1単位を含む要素または成分および2以上の単位を含む要素または成分の両方を包含する。
本明細書に記載の抗体およびその抗原結合フラグメントは、カンナビノイド1(CB1)受容体に特異的である。“~に対して特異的”とは、抗体およびそのフラグメントが、任意の他の標的よりも高い親和性(すなわち、より低い結合親和性Kd値)でCB1受容体に結合することを意味する。従って、CB1受容体に選択的である抗体およびそのフラグメントは、任意の他のカンナビノイド受容体または他のGPCRまたは他の標的よりも高い親和性(すなわち、より低い結合親和性Kd値)でCB1受容体に結合する。抗体およびそのフラグメントまたは変異体は、CB1受容体に対して、約0.01nMから約500nM、約0.02nMから約250nM、約0.02から約200nM、約0.05から約100nM、約0.05から約50nMの範囲の結合親和性Kdを有し得る。抗体およびそのフラグメントは、CB1受容体に対して、約500nM、約250nM、約200nM、約150nM、約100nM、約75nM、約50nM、約25nM、約10nM、約5nM、約1nM、約500pM、約250pM、約100pM、約50pM、または約10pMの結合親和性Kd値を有し得る。抗体およびそのフラグメントは、CB1受容体に対して、約100nM以下、約75nM以下、約50nM以下、約10nM以下、約1nM以下、約500pM以下、または約100pM以下の結合親和性Kdを有し得る。
本明細書で用いる用語“アゴニスト”は、別の化合物または受容体部位のシグナル伝達活性を増強する化合物を意味する。
本明細書で用いる用語“アンタゴニスト”は、受容体部位での別の化合物のシグナル伝達活性を阻害、低減または阻止する化合物を意味し、より一般的には、受容体の活性化および/またはシグナル伝達活性を低減または阻止する化合物を意味する。
“アロステリックモジュレーター”は、別の化合物のアゴニスト作用を間接的に調節する化合物である。例えば、アロステリックモジュレーターは、タンパク質構造内の立体構造変化を誘導することにより、受容体アゴニストのアゴニスト作用を間接的に調節することができる。アロステリックモジュレーターは、正の(アゴニスト化合物のアゴニスト作用を増幅する)または負の(アゴニスト化合物の作用を低減する)モジュレーターであり得る。
本明細書で用いる用語“処置”または“処置する”は、治療的処置および予防的もしくは予防手段の両方を意味する。処置を必要とする対象は、既に疾患または障害に罹患している対象、ならびに該疾患または障害を発症し得る対象および該疾患または障害を予防、遅延または軽減する目的を有する対象である。本明細書に記載の“処置”法は、疾患または障害あるいは再発する疾患または障害の1つまたはそれ以上の症状の予防、治癒、遅延、その重症度の軽減、または改善のため、あるいはそのような処置を行わないで期待されるよりも対象の生存を延長するための、対象、例えば、CB1関連疾患または障害(例えば、線維性疾患)を有する対象またはかかる疾患または障害を有すると予期される対象への本明細書に記載の抗体または抗原結合フラグメントの投与を含む。本明細書で用いる用語“対象”は、げっ歯動物、ネコ、イヌおよび哺乳動物などの動物を意味する。好ましくは、本発明の対象はヒトである。
本明細書で用いる“治療的有効量”は、対象に対して治療的および/または予防的利点を提供するのに必要な化合物または組成物の量を意味する。治療的有効量は、対象および処置すべき疾患状態、対象の体重および年齢、疾患状態の重篤度、投与方法などによって変わり、当業者により容易に決定され得る。投与量は、本明細書に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントの、例えば、約1ngから約10,000mg、約1ugから約5,000mg、約1mgから約1,000mg、約10mgから約100mgの範囲のであり得る。投与量レジメンは、最適な治療応答を提供するように調整され得る。有効量はまた、抗体またはその抗原結合フラグメントの任意の毒性作用または有害作用(すなわち、副作用)を最小化する、またはそれよりも有益な効果が上回る量である。
I.修飾抗CB1抗体
任意の態様において、本明細書に記載の抗CB1受容体抗体は、1つまたはそれ以上の修飾を含み得る。本明細書に記載の抗CB1受容体抗体の修飾形態は、当技術分野で公知の何らかの技術を用いて作製可能である。修飾抗CB1受容体抗体の包括的でない例は、2015年9月10日にファイルされた米国出願番号14/774,582、2015年3月27日にファイルされた国際出願番号PCT/US15/23108、2014年3月27日にファイルされた国際出願番号PCT/CN2014/074199、および2014年7月8日にファイルされた国際出願番号PCT/CN2014/081797(それらのそれぞれの記載は引用によりその内容全体を本明細書に包含される)に記載されている。
ある態様において、抗CB1受容体抗体およびそのフラグメントは、さらなる治療剤、細胞毒性剤、免疫付着分子および造影剤を含む群から選択される薬剤をさらに含む複合体である。ある態様において、造影剤は、放射性標識、酵素、蛍光標識、発光標識、生物発光標識、磁気標識、およびビオチンからなる群より選択される。ある態様において、造影剤は、3H、14C、35S、64Cu、89Zr、90Y、99Tc、111In、125I、131I、177Lu、166Hoおよび153Smからなる群より選択される放射性標識である。ある態様において、治療剤または細胞毒性剤は、免疫抑制剤、免疫刺激剤、抗代謝物質、アルキル化剤、抗生物質、増殖因子、サイトカイン、抗血管形成剤、抗有糸分裂剤、アントラサイクリン、毒素およびアポトーシス剤を含む群から選択される。
一態様において、本明細書に記載の単離された抗CB1受容体抗体または抗原結合フラグメントは、CB1アンタゴニストにコンジュゲートされている。公知のCB1アンタゴニストの例には、リモナバン、タラナバン、VD60、Isis-414930アンチセンスCB1、JD5037、AM6545およびTM38837が含まれる。一態様において、本明細書に記載の単離された抗CB1受容体抗体または抗原結合フラグメントは、リモナバンにコンジュゲートされている。一態様において、単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、CB1受容体アゴニストである細胞毒性剤にコンジュゲートされている。別の態様において、単離された抗体または抗原結合フラグメントは、受容体の内在化を起こさせるCB1受容体の中性結合剤である細胞毒性剤にコンジュゲートされている。
別の面において、本明細書に記載の単離された抗CB1受容体抗体または抗原結合フラグメントは、化学療法剤にコンジュゲートされている。“化学療法剤”は、癌の処置に有用な化合物である。化学療法剤の例としては、チオテパおよびCYTOXAN(登録商標) シクロホスファミドなどのアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファンおよびピポスルファンなどのアルキルスルホン酸塩;ベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa)およびウレドーパ(uredopa)などのアジリジン;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミドおよびトリメチローロメラミン(trimethylolomelamine)を含むエチレンイミン類およびメチルアメラミン類(methylamelamines);アセトゲニン類(とりわけ、ブラタシンおよびブラタシノン);カンプトテシン(合成類縁体トポテカンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシンおよびビゼレシン合成類縁体を含む);クリプトフィシン(特に、クリプトフィシン1およびクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成類縁体、KW-2189およびCB1-TM1);エレウテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチン(sarcodictyin);スポンギスタチン;クロラムブシル、クロルナファジン、コロホスファミド(cholophosphmide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノブエンビキン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタードなどの窒素マスタード類;カルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチンおよびラニムスチンなどのニトロソウレア類;エンジイン抗生物質などの抗生物質(例えば、カリケアマイシン, とりわけカリケアマイシンγ11およびカリケアマイシンΩ11(例えば, Agnew, Chem Intl. Ed. Engl., 33: 183-186 (1994)を参照のこと);ダイネミシンAを含むダイネミシン類;クロドロネートなどのビスホスホネート;エスペラミシン;ならびに、ネオカルチノスタチン発色団および関連色素色素タンパク質エンジイン抗生物質発色団)、アクラシノマイシン類、アクチノマイシン、アントラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン類、アクチノマイシン(cactinomycin)、カラビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモミコーシス、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、アドリアマイシン(登録商標)ドキソルビシン(モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシンおよびデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシンCなどのマイトマイシン類、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン(olivomycins)、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、クエラマイシン、ドキソルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;メトトレキサートおよび5-フルオロウラシル(5-FU)などの抗代謝産物質;デノプテリン(denopterin)、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサートなどの葉酸類縁体;フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チアグアニジンなどのプリン類縁体;アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジンなどのピリミジン類縁体;カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトンなどのアンドロゲン;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンなどの抗副腎性製剤;フォリン酸などの葉酸リプレニッシャー(replenisher);アセグラトン;アルドホスファミド(aldophosphamide)グリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル(bestrabucil);ビスアントレン;エダトレキサート;デフォファミン(defofamine)、デメコルシン(demecolcine)、ジアジコン(diaziquone)、エルフォルニチン;エリプチニウム酢酸塩;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダミン;メイタンシンおよびアンサマイトシンなどのメイタンシノイド類;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモル(mopidanmol);ニトラエリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標) 多糖複合体(JHS Natural Products, Eugene, Oreg.);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2’,22”-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(とりわけ、T-2トキシン、ベルカリンA、ロリジンAおよびアングイジン);ウレタン(urethane);ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン(mannomustine);ミトブロニトール;ミトラクトール(mitolactol);ピポブロマン(pipobroman);ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(“Ara-C”);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド類、例えば、タキソール(登録商標)パクリタキセル(Bristol-Myers Squibb Oncology, Princeton, N.J.)、ABRAXANE(商標)(クレモホール フリー)、パクリタキセルのアルブミンベースのナノ粒子製剤(American Pharmaceutical Partners, Schaumberg, Illinois)およびタキソテール(登録商標)ドセタキセル(Rhone-Poulenc Rorer, Antony, France);クロラムブシル(Chlorambucil);GEMZAR(登録商標)ゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;シスプラチンおよびカルボプラチンなどの白金類縁体;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;NAVELBINE(登録商標)ビノレルビン;ノバントロン;テニポシド;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロネート;CPT-11;トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸などのレチノイド類;カペシタビン;ならびに、上記の何れかの薬学的に許容される塩、酸または誘導体が含まれる。また、ボルテゾミブ(ベルケイド)などのプロテアソーム阻害剤、BCL-2阻害剤、IAPアンタゴニスト(例えば、任意のペプチドなどのSmac模倣体/xIAPおよびcIAP阻害剤、(S)-N-{6-ベンゾ[1,3]ジオキソl-5-イル-1-[5-(4-フルオロ-ベンゾイル)-ピリジン-3-イルメチル]-2-オキソ-1,2-ジヒドロ-ピリジン-3-イル}-2-メチルアミノ-プロピオンアミドなどのピリジン化合物、xIAPアンチセンス)、HDAC阻害剤(HDACI)およびキナーゼ阻害剤(Sorafenib)もまた定義に包含される。一態様において、細胞毒性剤にコンジュゲートされている単離された抗体または抗原結合フラグメントは、CB1受容体アゴニストである。
ある態様において、結合タンパク質は、薬剤に直接コンジュゲートされている。他の態様において、結合タンパク質は、リンカーを介して薬剤にコンジュゲートされている。好適なリンカーとしては、本明細書に記載のアミノ酸およびポリペプチドリンカーが含まれるが、これに限定されない。リンカーは、切断可能または切断不可能であってよい。
任意の態様において、抗体およびそのフラグメントは、二重特異性抗体または二官能性抗体である。用語“二重特異性抗体”とは、単一分子内に2つの抗体の抗原結合部位を組合せて含む分子を意味する。従って、二重特異性抗体は、同時に2つの異なる抗原に結合することができる。二重特異性抗体は、一般的に、2つの異なる重鎖/軽鎖対および2つの異なる結合部位またはエピトープを有する人工ハイブリッド抗体である。二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる抗原に対して結合特異性を有する、モノクローナル抗体であってよく、好ましくはヒト抗体またはヒト化抗体である。
一態様において、二重特異性抗体および/またはそのフラグメントは、CB1および第二の標的抗原に対する結合特異性を有する。任意の態様において、二重特異性抗体および/またはそのフラグメントは、CB1およびTGF-β、2-AG、PDGF-β、IL-6、アナンダミド(AEA)、またはLOXL-2に対する結合特異性を有する。
本明細書に記載の抗体およびフラグメントは、炭酸脱水酵素IX、α-フェトプロテイン、α-アクチニン-4、A3、A33抗体に特異的な抗原、ART-4、B7、Ba 733、BAGE、BrE3-抗原、CA125、CAMEL、CAP-1、CASP-8/m、CCCL19、CCCL21、CD1、CD1a、CD2、CD3、CD4、CD5、CD8、CD11A、CD14、CD15、CD16、CD18、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD29、CD30、CD32b、CD33、CD37、CD38、CD40、CD40L、CD45、CD46、CD52、CD54、CD55、CD59、CD64、CD66a-e、CD67、CD70、CD74、CD79a、CD80、CD83、CD95、CD126、CD132、CD133、CD138、CD147、CD154、CDC27、CDK-4/m、CDKN2A、CXCR4、結腸特異的抗原-p(CSAp)、CEA(CEACAM5)、CEACAM1、CEACAM6、c-met、DAM、EGFR、EGFRvIII、EGP-1、EGP-2、ELF2-M、Ep-CAM、Flt-1、Flt-3、葉酸受容体、G250抗原、GAGE、gp100、GROB、HLA-DR、HM1.24、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)およびそのサブユニット、HER2/neu、HMGB-1、低酸素症誘導因子(HIF-1)、HSP70-2M、HST-2、Ia、IGF-1R、IFN-γ、IFN-α、IFN-β、IL-2、IL-4R、IL-6R、IL-13R、IL-15R、IL-17R、IL-18R、IL-6、IL-8、IL-12、IL-15、IL-17、IL-18、IL-23、IL-25、インシュリン様増殖因子-1(IGF-1)、KC4-抗原、KS-1-抗原、KS1-4、Le-Y、LDR/FUT、マクロファージ遊走阻止因子(MIF)、MAGE、MAGE-3、MART-1、MART-2、NY-ESO-1、TRAG-3、mCRP、MCP-1、MIP-1A、MIP-1B、MIF、MUC1、MUC2、MUC3、MUC4、MUC5、MUM-1/2、MUM-3、NCA66、NCA95、NCA90、PAM-4抗体に特異的な抗原、胎盤増殖因子、p53、PLAGL2、前立腺酸性ホスファターゼ、PSA、PRAME、PSMA、PIGF、IGF、IGF-1R、IL-6、RS5、RANTES、T101、SAGE、S100、サバイビン、サバイビン-2B、TAC、TAG-72、テネイシン、TRAIL受容体、TNF-α、Tn抗原、トムソン-フリーデンライヒ抗原、腫瘍壊死抗原、VEGFR、ED-Bフィブロネクチン、WT-1、17-1A-抗原、補体因子C3、C3a、C3b、C5a、C5、血管形成マーカー、bcl-2、bcl-6、Kras、cMET、癌遺伝子マーカーおよび癌遺伝子産物(例えば、Sensi et al., Clin Cancer Res 2006, 12:5023-32; Parmiani et al., J Immunol 2007, 178:1975-79; Novellino et al. Cancer Immunol Immunother 2005, 54:187-207を参照のこと)からなる群より選択される1つまたはそれ以上の標的抗原に結合し得る。
二重特異性抗体の作製法は周知である。伝統的には、二重特異性抗体の組換え産生は、2つの免疫グロブリン重鎖/軽鎖対の同時発現に基づき、ここで、2つの重鎖は異なる特異性を有する(Milstein et al., Nature 305:537 (1983))。免疫グロブリン重鎖および軽鎖のランダムな組み合わせのため、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は、可能性のある10の異なる抗体分子の混合物を生じ、そのうちの1つのみが正しい二重特異性構造を有している。正しい分子の精製は、通常、親和性クロマトグラフィー工程により達成される。同様の手順は、WO93/08829およびTraunecker et al., EMBO J 10:3655 (1991)に記載されている。他の二重特異性抗体の作製法は、例えば、Kufer et al., Trends Biotech 22:238-244, 2004に記載されている。
所望の結合特異性を有する抗体可変ドメインは、免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合されていてよい。融合は、好ましくは、ヒンジ、CH2およびCH3領域の少なくとも一部を含む、免疫グロブリン重鎖定常ドメインとなされる。それは、融合物の少なくとも1つに存在する軽鎖結合に必要な部位を含有する第一の重鎖定常領域(CH1)を有していてよい。免疫グロブリン重鎖融合物、および要すれば、免疫グロブリン軽鎖をコードするDNAは、別個の発現ベクターに挿入され、好適な宿主生物に同時に形質転換される。二重特異性抗体の作製のさらなる詳細は、例えば、Suresh et al., Meth Enzym 121:210 (1986)を参照のこと。種々の組換え法が、二重特異性抗体、両方の抗体フラグメントの効率的な産生のために開発されている(Carter et al. (1995), J. Hematotherapy 4: 463-470; Pluckthun et al. (1997) Immunotechology 3: 83-105; Todorovska et al. (2001) J. Immunol. Methods 248: 47-66) および完全長IgGフォーマット(Carter (2001) J. Immunol. Methods 248: 7-15)。
特に断らない限り、本発明の実施は、当技術分野で周知の常套の分子生物学、細胞生物学、生化学、および免疫学の技術および、例えば、Methods in Molecular Biology, Humana Press; Molecular Cloning: A Laboratory Manual, second edition (Sambrook et al., 1989), Current Protocols in Immunology (J. E. Coligan et al., eds., 1991); Immunobiology (C. A. Janeway and P. Travers, 1997); Antibodies (P. Finch, 1997); Antibodies: a practical approach (D. Catty., ed., IRL Press, 1988-1989); Monoclonal antibodies: a practical approach (P. Shepherd and C. Dean, eds., Oxford University Press, 2000); Phage display: a laboratory manual (C. Barbas III et al, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2001); および Using antibodies: a laboratory manual (E. Harlow and D. Lane (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1999)に記載の技術を用いる。
一面において、本発明は、マウスを、例えば、CB1受容体DNA、CB1受容体タンパク質、またはCB1/脂質複合体などのCB1受容体免疫原で免疫化することを含む、本明細書に記載の抗体およびフラグメントまたは変異体の産生方法を提供する。ある態様において、マウスは、1回、2回、3回、4回、5回またはそれ以上免疫化される。ある態様において、マウスはCB1受容体DNAで免疫化され、CB1受容体応答は、CB1受容体DNAおよび/または精製したCB1受容体タンパク質、CB1受容体タンパク質を含む膜、またはCB1受容体iCAPSでさらに免疫化することにより高まる。ある態様において、免疫化されたマウス由来の細胞は、ハイブリドーマおよびファージライブラリーを生成するために使用される。
ある態様において、CB1受容体抗体は、免疫化したマウス由来のB細胞を回収し、CB1受容体抗体産生ハイブリドーマ細胞を作製することにより、産生される。ハイブリドーマの産生は、当技術分野で周知の技術であり、抗体産生細胞をミエローマ細胞または他の不死化細胞と融合させて、不死化抗体産生ハイブリドーマ細胞株を作製することを含む(例えば、Kohler and Milstein, 1975, Nature, 256:495を参照のこと)。ハイブリドーマ細胞によって産生されるモノクローナル抗体は、沈殿、クロマトグラフィー、限外ろ過、遠心分離、ゲル電気泳動、および/または当技術分野で公知の任意の他の方法などの免疫グロブリン精製の常套の手段によって上清から単離され得る。上清または単離されたモノクローナル抗体は、天然膜と比べてCB1受容体膜への結合を評価することによって、CB1受容体への結合について試験され得る。例えば、上清または単離されたモノクローナル抗体は、ELISAでのCB1受容体への結合について試験され得る。
本発明の別の面は、ファージライブラリーの使用を含む、本明細書に記載の抗体およびフラグメントまたは変異体の産生方法を提供する。ファージディスプレイ技術による抗体の組換え産生法は、当技術分野で公知である(例えば、Winter et al., Annu. Rev. Immunol. 12:433-455 (1994), McCafferty et al., Nature 348: 552-553 (1990)およびClackson et al. Nature 352:624 (1991)を参照のこと)。ある態様において、免疫化マウス由来の脾臓を、抗CB1受容体抗体のアレイを単離し、それらの抗体由来の可変遺伝子のランダムなコンビナトリアルライブラリーを形成するために使用する。ある態様において、ファージディスプレイライブラリーを生成するために、免疫化したマウス由来の細胞を利用するよりもむしろ、該ライブラリーは、初代血液リンパ球の可変重鎖および軽鎖遺伝子から生成される。
ある態様において、ファージライブラリーを、少なくとも3ラウンドのパンニング(panning)において、CB1受容体結合ファージについてパンニングし、そしてその後、ファージ結合体を、ELISAによりCB1受容体への特異的結合についてスクリーニングする。その後、特定の結合体が選択され、完全な抗体に変換され得る。
ある態様において、本明細書に記載の抗体およびフラグメントは、キメラ抗体またはヒト化抗体である。キメラ抗体およびヒト化抗体の作製法は、当技術分野で周知であり、例えば、Lo, Benny, K. C., editor, in Antibody Engineering: Methods and Protocols, volume 248, Humana Press, New Jersey, 2004にまとめられている。
“キメラ抗体”は、ある種に由来する重鎖可変領域の少なくとも一部および軽鎖可変領域の少なくとも一部;ならびに、別の種に由来する定常領域の少なくとも一部を有する抗体である。例えば、一態様において、キメラ抗体は、マウス可変領域およびヒト定常領域を含んでいてよい。“ヒト化抗体”は、非ヒト抗体に由来する相補性決定領域(CDR);ならびにヒト抗体に由来するフレームワーク領域ならびに定常領域を含む抗体である。
本明細書で用いる用語“CDR”または“相補性決定領域”は、重鎖および軽鎖ポリペプチドの両方の可変領域内に見いだされる連続していない抗原結合部位を意味する。これらの特定の領域は、Kabat et al., J. Biol. Chem. 252, 6609-6616 (1977) および Kabat et al., Sequences of protein of immunological interest. (1991)およびChothia et al., J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987) および MacCallum et al., J. Mol. Biol. 262:732-745 (1996)に記載されており、ここで定義は、互いに比較したとき、アミノ酸残基の重複またはサブセットを含む。Kabatの定義は、配列変動性に基づいている。全ての種の全てのIGおよびTR V領域についてのIMGT独自の番号付けは、可変領域構造の高度な保存性に依拠している(Lefranc, Mp et al., Dev comp. Immunol. 27:55-77, 2003)。5,000以上の配列を整列させた後に設定したIMGT番号付けを考慮に入れ、フレームワークおよびCDRの定義を組み合わせる。Clothiaの定義は、構造ループ領域の位置に基づいている。Contactの定義(MacCallum et al.)は、複合体の結晶構造および抗体-抗原相互作用の分析に基づいている。上記の文献のそれぞれによって定義されるCDRを包含するアミノ酸残基は、比較のために記載されている。本明細書に記載の1態様において、用語“CDR”は、Kabatの定義によって定義されるCDRである。本明細書に記載の別の態様において、CDRは、IMGTによって定義されたCDRである。
CDRは、一般的に、エピトープ認識および抗体結合のために重要である。しかしながら、変更を、抗体の認識能力に干渉することなく、エピトープ認識に影響を与えるCDRを含む残基に行うことができる。例えば、エピトープ認識に影響を与えず、エピトープに対する抗体の結合親和性を増加させない変更がなされてもよい。いくつかの研究は、一次抗体配列の知識、結合および発現レベルなどのその特性に基づいて、抗体の配列内のさまざまな位置での1つまたはそれ以上のアミノ酸変化の導入の効果を調べている(Yang et al., 1995, J Mol Biol 254:392-403; Rader et al., 1998, Proc Natl Acad Sci USA 95:8910-8915; および、Vaughan et al., 1998, Nature Biotechnology 16, 535-539).
このように、目的の抗体の均等物は、オリゴヌクレオチドによる部位特異的変異誘発、カセット突然変異誘発、エラープローンPCR、DNAシャッフリングまたは大腸菌の突然変異誘発株などの方法を用いて、CDR1、CDR2またはCDR3、またはフレームワーク領域における重鎖および軽鎖遺伝子の配列を変えることによって作製することができる(Vaughan et al., 1998, Nat Biotech 16:535-539; and Adey et al., 1996, Chap. 16, pp. 277-291, in Phage Display of Peptides and Proteins, eds. Kay et al., Academic Press)。一次抗体の核酸配列を変更する方法は、改善された親和性を有する抗体をもたらし得る(Gram et al., 1992, Proc Natl Acad Sci USA 89:3576-3580; Boder et al., 2000, Proc Natl Acad Sci USA 97:10701-10705; Davies & Riechmann, 1996, Immunotech 2:169-179; Thompson et al., 1996, J Mol Biol 256:77-88; Short et al., 2002, J Biol Chem 277:16365-16370; および、Furukawa et al., 2001, J Biol Chem 276:27622-27628)。
例えば、本明細書に記載のCB1抗体は、1つまたはそれ以上のマウス抗体由来のCDRならびにヒトフレームワーク領域および定常領域を含み得る。従って、一態様において、本明細書に記載のヒト化抗体は、抗体のCDRが由来するマウス抗体と、CB1上の同じエピトープに結合する。ヒト化抗体の例を本明細書中に提供する。本明細書に提供される重鎖および軽鎖CDR、またはその変異体を含むさらなるヒト化CB1抗体は、ヒトフレームワーク配列を用いて作製することができ、それもまた本発明に包含される。一態様において、本発明における使用に適するフレームワーク配列は、本明細書に記載のフレームワーク配列に構造的に類似したフレームワーク配列を含む。ある態様において、ヒトフレームワークは、親抗体とヒト生殖系列VHおよびVK遺伝子との間の相同性に基づいて選択される。選択されたフレームワークは、ある態様において、親抗体VHおよびVK遺伝子と最も高い相同性を有し、また親抗体によって提示されると予測されるCDR構造をサポートするために、コンピュータモデリングまたは他の手段に基づいて、予測された。
フレームワーク領域におけるさらなる修飾は、本明細書で提供される抗体の特性を改善するようになされ得る。そのようなさらなるフレームワーク修飾は、化学修飾;免疫原性を低下させるか、またはT細胞エピトープを除去するための点変異;または、元の生殖系列配列中の残基への復帰突然変異を含み得る。本発明の一態様において、ヒト化抗体およびそのフラグメントは、可変領域をさらに変更することなく、本明細書で提供されるヒトフレームワークおよび移植されたCDRを含む。ヒトフレームワーク復帰突然変異を含まないヒト化抗体は、本明細書中、H0(例えば、P1C4-H0)と称される。本発明の別の態様において、ヒト化抗体およびそのフラグメントは、本明細書に提供されるヒトフレームワークおよび移植されたCDRを含み、ここで、重鎖フレームワーク領域1のアミノ酸位置27および/または28が復帰突然変異されている。さらなる態様において、アミノ酸位置27は、Gly(G)からTyr(Y)へ復帰突然変異されており、アミノ酸位置28は、Thr(T)からGlu(E)へ復帰突然変異されている。位置27および28にかかる変異を有するヒト化抗体は、本明細書中、“H2”または“H2(YE)”(例えば、P1C4-H2またはP1C4-H2(YE))と記載される。本発明の別の態様において、ヒト化抗体およびそのフラグメントは、本明細書に記載のヒトフレームワークおよび移植されたCDRを含み、ここで、重鎖フレームワーク領域1の位置27および/または位置28のアミノ酸ならびに重鎖フレームワーク領域3の位置60および/または位置61のアミノ酸は復帰突然変異されている。さらなる態様において、位置27のアミノ酸はGly(G)からTyr(Y)へ、位置28のアミノ酸はThr(T)からGlu(E)へ、位置60のアミノ酸はAla(A)からAsn(N)へ、そして位置61のアミノ酸はGln(Q)からGly(G)へ復帰突然変異されている。位置27、28、60および61にそのような変異を有するヒト化抗体は、本明細書中、“H4”または“H4(YENG)”(例えば、P1C4-H4またはP1C4-H4(YENG))と記載される。本発明の一態様において、抗体およびその抗原結合フラグメントは、軽鎖に復帰突然変異のようなフレームワーク修飾を含む。例えば、一態様において、抗体は、軽鎖フレームワーク領域2の位置45および/または位置47に変異を含む。さらなる態様において、位置45のアミノ酸は、Arg(R)からLys(K)へ変異され、位置47のアミノ酸は、Leu(L)からTrp(W)に変異されている。本発明はまた、CB1に結合し、好適なフレームワーク配列に関して本明細書に記載の例示的な修飾に対応するフレームワーク修飾、ならびに別の方法で抗体の特性を改善する他のフレームワーク修飾を含む、ヒト化抗体を包含する。本明細書に記載のCB1抗体およびそのフラグメントは、IgG1、IgG2、IgG3もしくはIgG4アイソタイプのもの、またはそれらの任意の組み合わせであってよい。用語“アイソタイプ”は、重鎖定常領域遺伝子によりコードされる抗体クラスを意味する。加えて、重鎖定常領域は、マウス、ラット、ウサギ、ハムスター、モルモット、霊長動物、ラマまたはヒトを含むが、それに限定されない何れかの種に由来してよい。例えば、一態様において、本発明のCB1抗体およびそのフラグメントは、ヒトIgG1 Fc定常領域を含む。別の態様において、CB1抗体およびそのフラグメントは、ヒトIgG2、ヒトIgG4、またはハイブリッドIgG2-IgG4 Fc定常領域を含む。
II.エフェクター機能およびFc修飾
ある態様において、本発明は、変異型Fc領域を含むCB1抗体を提供する。抗体のFc領域は、Fcγ受容体(FcγR)および補体分子C1qに結合物抗体の一部分である。Fc領域は、抗体エフェクター機能に介在する(mediating)役割を果たしている。抗体のFcに関連して本明細書で用いる“エフェクター機能”は、例えば、C1q結合;補体依存性細胞傷害(CDC);Fc受容体結合;抗体依存性細胞介在性細胞傷害(ADCC);食作用;オプソニン化;トランスサイトーシス;および、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方制御などの抗体機能を意味する。かかるエフェクター機能は、一般的に、結合ドメイン(例えば、抗体可変ドメイン)と結合するFc領域を必要とし、そのような抗体エフェクター機能を評価するための当技術分野で公知の種々のアッセイを用いて評価することができる。変異型Fc領域は、エフェクター機能を変更する変異を含むFc領域である。ある態様において、本明細書に記載のCB1抗体は、1つまたはそれ以上のエフェクター機能を低下、障害または排除するFc領域変異を含む。例えば、一態様において、本明細書に記載の抗体およびそのフラグメントは、CB1に結合し、そして低下した、障害された、または不存在のC1q結合および/またはCDCおよび/またはADCCを示す。Fc変異は、アミノ酸挿入、欠失または置換であってよいか、または化学修飾であってよい。例えば、Fc領域修飾は、補体結合を増加または低下させ、抗体依存性細胞傷害性を増加または低下させ、またはグリコシル化を変更させ得る。種々のFc変異が当技術分野で公知であり、例えば、Labrijin et al., Nature Biotech 27(8):767-71 (2009); Idusogie, et al. J Immunol 2000; Greenwood et al Eur J Immunol 23:1098-104 (1993); Mueller et al . Mol Immunol 1997; 34:441-52; および、Rother et al Nature Biotechnol 2007; 25:1256-64に記載されている。当技術分野で公知のFc変異のいくつかは、エフェクター機能を改変するために本明細書に記載の例示的なCB1抗体に適用することができる。さらに、種々の治療用抗体が、エフェクター機能を改変するためにFc領域変異を有して製造されている。かかる治療用抗体は当技術分野で公知であり、例えば、アレムツズマブ、ベンラリズマブ、ベバシズマブ、ビメキズマブ(bimekizumab)、カンツズマブ、コドリツズマブ、ダロツズマブ(dalotuzumab)、エファリズマブ、エロツズマブ、エナバツズマブ(enavatuzumab)、エノキズマブ(enokizumab)、エトロリズマブ、ファーレツズマブ、フィクラツズマブ、イムガツズマブ(Imgatuzumab)、イトリズマブ、リファスツズマブ(lifastuzumab)、リゲリズマブ、ロデルシズマブ(Lodelcizumab)、ロルボツズマブ、モガムリズマブ、モタビズマブ、オビヌツズマブ、オカラツズマブ、オマリズマブ、パルサツズマブ、パテクリズマブ、ペラキズマブ(perakizumab)、ペルツズマブ、ピディリズマブ、クイリズマブ、ロンタリズマブ(rontalizumab)、ソフィツズマブ(sofituzumab)、ソラネズマブ、スビズマブ(suvizumab)、テプリズマブ、チルドラキズマブ、トシリズマブ、トラスツマブ、トラスツマブエムタンシン、トレガリズマブ、ベドリズマブ、ボルセツズマブ、ボルセツズマブ・マフォドチン、イットリウム(90Y)クリバツズマブテトラキセタン、アンルキンズマブ、ダセツズマブ、ダクリズマブ、エタラシズマブ、ミラツズマブ、オザネズマブ、ピナツズマブベドチン(pinatuzumab vedotin)、ポラツズマブベドチン、チガツズマブ、ベルツズマブ、アビツズマブ(abituzumab)、ボコシズマブ、デムシズマブ、ゲボキズマブ、ポネズマブ、ラルパンシズマブ(ralpancizumab)、ロモソズマブ、タネズマブ、ブロソズマブ、コンシズマブ、クレネズマブ、イバリズマブ(Ibalizumab)、イクセキズマブ(ixekizumab)、レブリキズマブ(lebrikizumab)、オロキズマブ、ペンブロリズマブ、シムツズマブ(Simtuzumab)、ウロクプルマブ(ulocuplumab)、バテリズマブ(Vatelizumab)およびサマリズマブ(例えば、配列番号358-432を参照のこと)が含まれる。当技術分野で公知のFc変異のいくつかは、エフェクター機能、抗体半減期または他の抗体特性を変えるために、本明細書に記載のCB1受容体抗体に適用され得る。
一態様において、CB1抗体は、低下したエフェクター機能を示す。さらなる態様において、CB1抗体は、位置228に変異を有するIgG4 Fc領域を含む。さらなる態様において、位置228のアミノ酸は、セリン(S)からプロリン(P)へ変異されている(すなわち、S228P)。別の態様において、CB1抗体は、低下したエフェクター機能を示し、位置330および/または位置331に変異を有するIgG2 Fc領域を含む。さらなる態様において、位置330のアミノ酸は、アラニン(A)からセリン(S)へ変異されており、および/または位置331のアミノ酸は、プロリン(P)からセリン(S)へ変異されている。さらなる態様において、CB1抗体は、A330SおよびP331S変異の両方を有するIgG2 Fcドメインを含む。別の態様において、CB1抗体は、IgG2/IgG4ハイブリッドFc領域を含む。例えば、一態様において、CB1抗体は、IgG2に由来するCH1およびヒンジ領域ならびにIgG4に由来するCH2およびCH3領域を含む。
立体配座抗原提示システム(iCAPS)。iCAPSは、機能的GPCRの精製された、単離された、立体配座的に正しい提示を可能にする。精製されたGPCRは、ベルトタンパク質に囲まれた脂質二重層中に安定化される。
一態様において、本発明は、本明細書に記載の抗体およびその抗原結合フラグメントまたは変異体の何れか1つをコードする単離された核酸を提供する。ある態様において、該単離された核酸を含むベクターが提供される。ある態様において、該ベクターで形質転換された宿主細胞が提供される。ある態様において、宿主細胞は原核細胞である。さらなる態様において、宿主細胞は大腸菌である。ある態様において、宿主細胞は真核細胞である。さらなる態様において、真核細胞は、原生生物細胞、動物細胞、植物細胞および心筋細胞からなる群より選択される。ある態様において、宿主細胞は、293、COS、NS0およびCHOを含むが、これらに限定されない哺乳動物細胞、および;または、サッカロマイセス・セレビシエなどの真菌細胞;または、Sf9などの昆虫細胞である。本発明の一態様は、結合タンパク質を産生するのに十分な条件下で、培養培地中、本明細書に記載の宿主細胞のいずれかを培養することを含む、本明細書に記載の抗体およびそのフラグメントまたは変異体を産生する方法を提供する。
本発明の例示的CB1受容体結合抗体は、以下の表1に記載される。さらなる本発明の例示的CB1受容体結合抗体は、配列番号によって定義され、表2に示される配列表に提供される。本発明の例示的ヒト化CB1受容体結合抗体の配列は、表3および表35に提供される。
ある態様において、本明細書に記載される抗CB1受容体抗体は、本明細書に記載される配列またはその保存的変異体を含む。本明細書で用いる“保存的変異体”には、保存的アミノ酸置換、挿入または欠失が含まれる。当業者は、保存的アミノ酸置換とは、1つのアミノ酸の、例えば、類似の側鎖などの類似の構造または化学的特性を有する別のアミノ酸での置換であり、そして保存的アミノ酸置換、挿入または欠失の結果、対照配列の生物学的活性を保持する配列がもたらされることを認識し得る。例示的な保存的置換は、当技術分野で、例えば、Watson et al., Molecular Biology of the Gene, The Bengamin/Cummings Publication Company, 4th Ed. (1987)に記載されている。
III.CB1関連障害の処置法
本明細書に記載の抗体およびその抗原結合フラグメントは、治療目的のためにヒト対象に投与され得る。ある態様において、本明細書に記載の抗体およびその結合フラグメントまたは変異体を対象に投与することを含む処置法を提供する。
任意の態様において、該方法は、末梢CB1受容体が優先的に標的とされる疾患の処置のために提供される。本明細書で定義される“末梢性CB1受容体”は、脳または中枢神経系に局在化されていないCB1受容体(例えば、末梢限定的な(peripherally restricted)CB1受容体)である。対照的に、用語“全身性の(global)CB1受容体”は、脳およびCNSを含む体内のどこにでもあるCB1受容体を意味する。
一態様において、単離された抗体およびその抗原結合フラグメントは、例えば、とりわけ肥満、糖尿病、異脂肪血症、線維症、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝疾患、原発性胆汁性肝硬変、心血管疾患、癌、疼痛、多発性硬化症(MS)痙縮、緑内障、炎症性疾患、腎症、骨粗鬆症、代謝障害、精神障害、神経障害、神経変性障害、繁殖障害、腎疾患、腎線維症、慢性腎疾患、アテローム性動脈硬化症、癌および皮膚障害などの種々の疾患または障害の処置に有用である。
CB1受容体シグナル伝達は、例えば、肥満、糖尿病、線維症、肝疾患、心血管疾患および癌に有害な活性を示すことが示されている(Kunos et al., 2009, Trends Pharmacol Sci 30:1-7)。一面において、本明細書に記載の抗CB1抗体、またはそのフラグメントは、CB1活性に拮抗するのに有用である。従って、別の面において、本発明は、それを必要とする対象に本明細書に記載の1つまたはそれ以上の抗CB1抗体、またはその抗原結合フラグメントを含む医薬組成物を投与することによる、CB1関連疾患または障害の処置法を提供する。ある態様において、本明細書に記載のアンタゴニスト性CB1受容体抗体およびそのフラグメントは、肥満、糖尿病、線維症、肝疾患、心血管疾患、ニコチン中毒のような中毒症、または癌の処置または予防のために使用されるとき、有益な効果を提供する。
非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)としても知られている非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は、過剰なアルコール摂取によるものではない肝臓への脂肪蓄積を意味する。NASHは、脂肪蓄積と同時に肝臓の炎症によって特徴づけられる肝疾患である。NASHはまた、糖尿病および肥満を有する人々でも見いだされ、メタボリックシンドロームに関連している。NASHは、それは肝臓における脂肪の蓄積を起こしてゆっくりと悪化させ、肝硬変をもたらし得るため、比較的良性の非アルコール性脂肪肝疾患の進行型である(Smith, et al., 2011, Crit Rev Clin Lab Sci., 48(3):97-113に報告されている)。現在、NASHに対する特定の治療法は存在しない。
一面において、本明細書に記載の抗CB1抗体またはそのフラグメントは、線維症の処置、予防、検出または実験に使用されている。マウスモデルにおけるいくつかの実験により、肝線維症を含む、線維症におけるCB1受容体の役割が確認されている。(例えば、Wei et al., 2014, Exp. Biol. Med. 239(2):183-192; Tam et al., 2010, J. Clin. Invest. 120(8):2953-66; Wan et al., 2014, Cell Metabolism, 19(6):900-1; Takano et al., 2014, Synapse, 68:89-97を参照のこと)。末梢性CB1は、脂肪症(脂肪肝)、炎症および肝臓損傷を含む、NASHおよび肝線維症に貢献するいくつかのメカニズムに関与している(Mallat et al., 2013, J Hepatology, 59(4):891-896に報告されている)。CB1は、筋線維芽細胞に変化して線維症をもたらす活性化したヒト肝星細胞(HSC)において上方制御されることが証明されている(Teixeira-Clerc et al., 2006, Nature Med., 12(6):671-76)。CB1はまた、糖尿病性腎症にも関与している(Lin et al., 2014 J. Mol. Med. 92(7):779-92)。
肝細胞特異的CB1および全身性CB1のノックアウトマウスにおける試験は、いくつかの代謝性疾患および障害に関連している末梢細胞型(肝細胞)におけるCB1の主要な役割を意味する証拠を提供している。食餌性肥満のマウスモデルにおいて、全身性CB1ノックアウト(CB1-/-)および肝細胞特異的CB1ノックアウト(LCB1-/-)の両方は、減少した脂肪症(脂肪肝)および増加した肝機能を証明し、従って、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、糖尿病およびメタボリックシンドロームの疾患病理に関連する末梢細胞型(肝細胞)におけるCB1の役割を証明している。(Osei-Hyiaman et al., 2008, J. Clin. Invest., 118(9):3160-3169; Liu et al., 2012, Gastroenterology, 142:1218-1228)。マクロファージ特異的CB1ノックダウンsiRNA(CB1R-GeRP)を用いるCB1の選択的ノックダウンは、T2Dインスリン抵抗性、高血糖およびβ細胞障害の一般的なモデルであるZucker糖尿病性脂肪(ZDF)ラットにおいて、進行性の高血糖を阻止し、血漿インスリンおよびC-ペプチドを低減させる(Jourdan et al., 2013, Nature Med. 19(9):1132-1140)。アルコール誘導性肝脂肪症のマウスモデルにおいて、全身性CB1ノックアウト(CB1-/-)および肝細胞特異的CB1ノックアウト(LCB1-/-)の両方は、脂肪が減少し、肝機能が増加したため、脂肪症疾患病理に関連する末梢細胞型(肝細胞)におけるCB1の役割を実証した(Jeong, et al., 2008, Cell Metabolism, 7:227-235)。脂質蓄積は、野生型対照と比較してCB1ノックアウトマウスから作製された巣上体白色脂肪細胞株において減少することが示された(Wagner et al., 2011, Nutrition and Diabetes, 1:e16)。
マウスにおける疾患の異なるモデルにおける試験は、末梢限定的なCB1受容体小分子アンタゴニストが肝線維症の進行を効果的に阻害し得ることを示した(例えば、Wei et al., 2014, Exp. Biol. Med. 239(2):183-192; Tam et al., 2010, J. Clin. Invest. 120(8):2953-66; Wan et al., 2014, Cell Metabolism, 19(6):900-1; Takano et al., 2014, Synapse, 68:89-97を参照のこと)。公知のCB1アンタゴニストの非限定的な例には、リモナバン、タラナバン、VD60、Isis-414930アンチセンスCB1、JD5037、AM6545およびTM38837が含まれる。リモナバンなどのCB1アンタゴニストは、細胞増殖を阻害し、筋線維芽細胞へ遷移することによって線維症に介在する初代ヒト肝星細胞(HSC)における線維化促進性(pro-fibrotic)遺伝子発現を下方制御することが示されている(Patsenker et al., 2011, Mol Med.,17(11-12):1285-1294)。CCl4誘導性肝線維症マウスモデルにおいて、CB1アンタゴニストVD60(3,4,22-3-デメトキシカルボニル-3-ヒドロキシルメチル-4-デアセチル-ビンドリン 3,4-チオノカーボネート)は、線維化促進性(pro-fibrotic)遺伝子発現(αコラーゲン)の産生および活性化した肝星細胞(HSC株LX-2)の増殖を阻害することが証明されたが、選択的CB1アゴニストACEA(N-(2-クロロエチル)-5Z,8Z,11Z,14Z-エイコサテトラエンアミド)は、この効果を阻害した(Wei Y. et al., 2014, Exp. Biol. Med. 239(2):183-192)。CB1アンタゴニストJD5037は、内在性カンナビノイド誘発性のインスリンシグナル伝達の阻害を逆転することが示された(Cinar et al., 2014, Hepatology, 59(1)143-153)。リモナバンを用いるCB1遮断は、高脂肪食ラットから単離された脂肪細胞におけるグルコース取り込みの炎症誘発性障害を逆転させる(Miranville et al, 2010, Obesity 18: 2247-2254)。
ヒトの試験はまた、末梢性CB1受容体を疾患の病因および進行に関連付ける。例えば、NASHおよびHCV患者の肝臓におけるCB1の上方制御は、肝脂肪症および線維症の重篤度と相関した(Auguet et al., 2014, BioMed Res. Intl. Vol. 2014, Article ID 502542)。加えて、慢性CB1アゴニスト作用(大麻使用を介する)は、HCV患者における肝脂肪症および線維症の増加した重篤度と相関した(Van der Poorten et al., 2010, PlosOne 5, e12841)。さらに、肥満患者でのCB1遮断が肝脂肪症を改善することが示された(Despres et al., 2009, Arterioscler Thromb Vasc Biol. 29:416-423)。
CB1アンタゴニスト作用の効果は、受容体の場所によって異なることもまた認識され得る。例えば、CB1アンタゴニスト作用の効果は、患者において観察されるリモナバンの有益な心血管効果が体重減少とは無関係であるように、組織特異的であることが知られている(Pi-Sunyeret al, 2006, J Am Coll Cardio. 147: 362A)。さらに、リモナバンは、2型糖尿病患者の血糖コントロールを改善するが(例えば、Hollander et al., 2010, 糖尿病 Care. 33(3):605-7を参照のこと)、この効果は、CNSに局在するCB1受容体によってもたらされる顕著な精神的副作用を伴うことが知られている(Kunos et al, 2009, Trends Pharmacol Sci 30:1-7; Moreira et al., 2009, Rev Bras Psiquiatr. 31(2):145-53; Pacher et al, 2013, FEBS J. 280(9): 1918-1943)。CB1受容体アンタゴニストリモナバンは、肥満-脂質におけるリモナバン(RIO-脂質)試験により、過体重患者において、いくつかの代謝性危険因子(アディポネクチンレベルを含む)のプロファイルを改善することが示された(例えば、Despreus et al., 2005, N Engl J Med, 353:2121-2134を参照のこと)。
CB1受容体シグナル伝達は、とりわけ、疼痛、MS痙縮および緑内障において有益な活性を示すことが示されている(Pacher et al., 2013, FEBS J. 280(9):1918-1943)。ある態様において、本明細書に記載のアゴニスト性CB1受容体抗体およびそのフラグメントは、疼痛、MS痙縮または緑内障の処置または予防に使用されるとき、有益な効果をもたらす。CB1アゴニストは、肝臓の脂肪酸合成、糖新生および他の代謝経路を活性化することが証明されている(例えば、Osei-Hyiaman et al, 2005, J. Clin. Invest., 115(5):1298-1305; Chanda et al., 2012, JBC, 287(45):38041-38049を参照のこと)。
多発性硬化症(MS)痙縮は、筋肉のこわばり感(feelings of stiffness)および広範な不随意筋収縮(持続的な筋収縮または突然の動き)を意味する。痙縮は、MSのより一般的な症状の一つであり、軽度の圧迫感から痛みを伴う、四肢の制御不能な痙攣まで程度が変わり得る。未処理のままの痙縮は、関節拘縮(硬化または固定化された関節)および褥瘡を含む重篤な合併症につながり得る。MS痙縮に対する現在の処置剤には、とりわけ、バクロフェン、チザニジン、ジアゼパム、ダントロレン、フェノールが含まれる。CB1受容体は、MSのマウスモデルにおける痙縮の制御に介在することが示されている(Pryce et al., 2007, Br J Pharmacol. 150(4): 519-525)。
CB1受容体の活性化は、胃腸管から生じる内臓痛を含む、いくつかの実験的疼痛モデルにおける鎮痛効果を生じる。WIN55,212-2およびSAB-378などのCB1アゴニストはまた、反復有害刺激に対する疼痛関連応答を阻害することも示されている(Brusberg et al., 2009, J. Neuroscience, 29(5):1554-1564; Talwar et al., 2011, CNS Neurol Disord Drug Targets. 10(5):536-44.)。
当業者は、抗体(または追加の治療剤)の無毒な有効量が、常套的実験によりCB1関連疾患または障害を処置する目的を達成し得るかどうかを決定することができる。例えば、ポリペプチドの治療的に活性な量は、疾患のステージ(例えば、ステージI 対 ステージIV)、対象の年齢、性別、合併症(例えば、免疫抑制状態または疾患)および体重、ならびに対象における所望の応答を誘発する抗体の能力などの要因によって異なり得る。投与量レジメンは、最適な治療応答を提供するように調整することができる。例えば、いくつかの分割用量が、毎日投与されてよいか、または該用量を、治療状況の緊急性によって示されるように、比例的に減少させてよい。しかしながら、一般的に、有効投与量は、体重1キログラム当たり、1日当たり、約0.05から100mgの範囲であることが期待され、一態様において、体重1キログラム当たり、1日当たり、約0.5から10mgである。
ある態様において、本明細書に記載の抗CB1抗体およびフラグメントは、併用療法を利用する方法で使用されており、ここで、ヒト抗体は、他の標的に結合する1つまたはそれ以上の追加の抗体(例えば、他のサイトカインに結合する抗体または細胞表面分子に結合する抗体)のような、別の治療剤と共に対象に投与される。シグナル伝達経路の余剰性(redundancies)は、結果として単一抗体への応答の欠如をもたらし得るため、同じ標的細胞上の異なるエピトープまたは異なる抗原に結合する抗体との併用療法を使用する多様な戦略が、提案されている。抗CD20および抗CD22(Stein et al., Clin Cancer Res 2004, 10:2868-2878)、抗CD20および抗HLA-DR(Tobin et al., Leuk Lymphoma 2007, 48:944-956)、抗CD20および抗TRAIL-R1(Maddipatla et al., Clin Cancer Res 2007, 13:4556-4564)、抗IGF-1Rおよび抗EGFR(Goetsche et al., Int J Cancer 2005, 113:316-328)、抗IGF-1Rおよび抗VEGF(Shang et al., Mol Cancer Ther 2008, 7:2599-2608)、またはヒトEGFR2の異なる領域を標的とするトラスツマブおよびペルツズマブ(Nahta et al., 癌 Res 2004, 64:2343-2346)などの組み合わせが、前臨床評価されており、インビトロおよびインビボにおける、増強された、または相乗的抗腫瘍活性が示されている。このような併用療法は、有利には、投与される治療剤のより低い投与量を利用することができ、種々の単剤療法に関連する可能性のある毒性または合併症を回避することができる。
本明細書に記載の抗体およびフラグメントは、任意の所望の治療剤と組み合わせて投与することができる。任意の態様において、本明細書に記載の抗体およびフラグメントは、例えば、LOXL2抗体、TGFβ抗体、ニンテダニブ、チロシンキナーゼ阻害剤、PPARアゴニスト、ファルネソイドx受容体(FXR)アゴニスト、グルカゴン様ペプチド1受容体アゴニスト、またはカスパーゼ阻害剤と組み合わせて投与される。
IV.医薬組成物
別の面において、本発明は、抗CB1抗体、またはそのフラグメントを含む医薬組成物を提供する。
本明細書に記載の抗体またはそのフラグメントの製造法および対象へのその投与法は、周知であるか、当業者により容易に決定される。本明細書に記載の抗体またはそのフラグメントの投与経路は、経口、非経腸、吸入または局所投与であり得る。本明細書で用いる用語「非経腸」には、静脈内、動脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、直腸または膣内投与が含まれる。非経腸投与の静脈内、動脈内、皮下および筋肉内形態は、特定の態様において使用できる。投与の全てのこれらの形態は明確に本明細書に記載の範囲内であると考えられるが、投与のための形態は、特に静脈内または動脈内注射または点滴のための、注射用溶液であり得る。通常、好適な注射用医薬組成物は、緩衝液(例えば、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液またはクエン酸緩衝液)、界面活性剤(例えば、ポリソルベート)、要すれば安定化剤(例えば、ヒトアルブミン)などを含んでいてよい。しかしながら、本明細書の記載に適合する他の方法において、ポリペプチドは、有害細胞集団の部位に直接送達され得て、それにより罹患組織の治療剤への暴露を増加させることができる。
非経腸投与用製剤には、滅菌水溶液または非水溶液、懸濁液およびエマルジョンが含まれる。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油およびオレイン酸エチルなどの注射用有機エステルである。水性担体には、生理食塩水および緩衝媒体を含む、水、アルコール/水溶液、エマルジョンまたは懸濁液が含まれる。本発明において、薬学的に許容される担体には、0.01-0.1M(例えば、0.05M)のリン酸緩衝液または0.8%の生理食塩水が含まれるが、これに限定されない。他の一般的な非経腸ビークルには、リン酸ナトリウム溶液、リンゲルのデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸リンゲル液、または固定油が含まれる。静脈内ビークルには、液体および栄養補給物、電解質補給物(リンゲルデキストロースをベースとするもの)などが含まれる。例えば、抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤、および不活性ガスなどの防腐剤および他の添加物もまた、存在していてよい。より具体的には、注射用に適する医薬組成物には、滅菌注射溶液または分散液の即時調製のための、滅菌水溶液(水溶性である)または分散液および滅菌粉末が含まれる。かかる場合には、組成物は無菌でなければならず、容易に注射が可能である程度に流動性であるべきである。それは、製造および貯蔵の条件下で安定であるべきであり、一態様において、細菌および真菌などの微生物の汚染作用から保護しなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなど)および好適なそれらの混合物を含む、溶媒または分散液であり得る。適当な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用により、分散液の場合は必要な粒径の維持によって、および界面活性剤の使用により、維持され得る。微生物作用の防止は、種々の抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどにより達成され得る。任意の態様において、等張剤、例えば、糖類、ポリアルコール類、例えばマンニトール、ソルビトール、または塩化ナトリウムが、組成物中に含まれる。注射用組成物の持続的吸収は、組成物中に吸収を遅らせる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを含めることにより達成することができる。
何れの場合においても、滅菌注射溶液は、活性化合物(例えば、抗体自体または他の活性剤と組み合わせて)を、適当な溶媒中に必要な量で、必要に応じて本明細書に記載の1成分または成分の組合せと共に、組み込み、その後濾過滅菌することによって調製することができる。一般的に、分散液は、滅菌ビークル中に活性化合物を組み込むことによって調製され、それは基本的な分散媒体および上記に列記した必要な他の成分を含む。滅菌注射溶液の製造のための滅菌粉末の場合、製造法は、真空乾燥および凍結乾燥することであり、活性成分と予め濾過滅菌したその溶液からの任意の追加の所望の成分との粉末を得る。注射用製剤は、当技術分野で公知の方法に従って無菌条件下で、処理され、アンプル、バッグ、ボトル、シリンジ、またはバイアルなどの容器に充填され、そして密封される。さらに、該製剤は、同時継続中の米国特許出願第09/259,337号および同第09/259,338号(それぞれ、引用により本明細書中に包含させる)に記載されるようなキットの形態で包装され、販売されてよい。一態様において、かかる製品は、関連する組成物が、自己免疫疾患または腫瘍性疾患に罹患している、またはそれに罹患しやすい対象を処置するのに有用であることを示す、ラベルまたは添付文書を含む。
上記の状態の処置のための、本明細書に記載される安定化された抗体またはそのフラグメントの有効用量は、投与の手段、標的部位、患者の生理学的状態、患者がヒトであるか、または動物であるか、投与される他の薬剤および処置が予防であるか、または治療であるかを含む多くの異なる要因に依存して変化する。通常、患者はヒトであるが、トランスジェニック哺乳動物を含む非ヒト哺乳動物もまた処置できる。治療用投与量は、安全性および有効性を最適化するために、当業者に公知の常套法を用いて増量されてよい。
本明細書に記載の抗体を用いた受動免疫のため、投与量は、宿主体重1kg当たり、例えば約0.0001から100mgの範囲、より一般的には、0.01から5mg(例えば、0.02mg、0.25mg、0.5mg、0.75mg、1mg、2mgなど)であり得る。例えば、投与量は、体重1kg当たり、1mgまたは10mg、または1-10mgの範囲内、または特定の態様において、少なくとも1mgであり得る。上記の範囲の中間用量もまた、本明細書に記載の範囲内であることが意図される。
対象は、かかる用量を毎日、隔日、毎週、または経験的分析によって決定された任意の他のスケジュールに従って投与され得る。例示的な処置は、長期間、例えば、少なくとも6か月の期間に亘って複数回投与での投与を必要とする。さらなる例示的な処置レジメンは、2週間毎に1回、または月に1回、または3から6カ月に1回の投与を必要とする。例示的な投与スケジュールには、毎日1-10mg/kgもしくは15mg/kg、隔日30mg/kg、または毎週60mg/kgが含まれる。ある方法において、異なる結合特異性を有する2つまたはそれ以上のモノクローナル抗体を同時に投与し、その場合、投与される各抗体の投与量は、示された範囲内に入り得る。
本明細書に記載の抗体またはそのフラグメントは、複数回投与することができる。単回投与間の間隔は、例えば、毎日、毎週、毎月または毎年とすることができる。間隔は、患者内のポリペプチドまたは標的分子の血中レベルを測定することにより示されるように不規則であってもよい。ある方法において、投与量は、特定の血漿抗体または毒素濃度、例えば、1-1000ug/mlまたは25-300ug/mlを達成するように調整される。あるいは、抗体またはそのフラグメントは、持続放出製剤として投与されてよく、その場合、より少ない頻度の投与でよい。投与量および頻度は、患者内での抗体の半減期に応じて変化する。一般的に、ヒト化抗体は、最長の半減期を示し、キメラ抗体および非ヒト抗体が続く。一態様において、本明細書に記載の抗体またはそのフラグメントは、非コンジュゲート形態で投与され得る。別の態様において、本明細書に記載の抗体は、コンジュゲート形態で複数回投与され得る。さらに別の態様において、本明細書に記載の抗体またはそのフラグメントは、非コンジュゲート形態で投与され、その後コンジュゲート形態で投与されるか、その逆で投与されてもよい。
投与量および投与頻度は、処置が予防であるか、または治療であるかによって変化する。予防的適用において、本発明の抗体またはそのカクテルを含む組成物は、未だ疾患状態ではない患者に投与され、患者の抵抗力を向上させる。そのような量は、“予防的有効用量”と定義される。この使用において、正確な量はまた、患者の健康状態および全身免疫によって変わるが、一般的に1用量当たり、0.1から25mgの範囲、とりわけ0.5から2.5mgの範囲である。比較的低用量が、長期間にわたって比較的低頻度の間隔で投与される。ある患者は、自分たちの残りの生存期間中治療を受け続ける。
治療的適用において、比較的短い間隔で比較的高用量(例えば、1用量当たり約1から400mg/kgの抗体であり、放射性免疫複合体についてより一般的に使用される5から25mgの投与量および細胞毒素-薬物複合体分子についてより高用量である)が、疾患の進行が低下または終結するまで、特定の態様において、患者が疾患症状の部分的または完全な改善を示すまで必要とされることが多い。その後、患者は予防的レジメを投与され得る。
一態様において、対象は、本明細書に記載のポリペプチドをコードする核酸分子(例えば、ベクター中)を用いて処置され得る。ポリペプチドをコードする核酸の用量は、患者当たり、約10ngから1g、100ngから100mg、1ugから10mg、または30-300ugのDNAの範囲である。感染性ウイルスベクターの用量は、1用量当たり、10-100ウイルス粒子、またはそれ以上である。
治療剤は、予防的または治療的処置のために、非経腸、局所、静脈内、経口、皮下、動脈内、頭蓋内、腹腔内、鼻腔内または筋肉内投与手段によって投与される。筋肉内注射または静脈内注入は、本明細書に記載の抗体の投与に使用可能である。ある方法において、治療用抗体またはそのフラグメントは、頭蓋内に直接注射される。ある方法において、抗体またはそのフラグメントは、持続放出組成物またはMedipad(商標)装置のようなデバイスとして投与される。
本明細書に記載の薬剤は、必要に応じて、(例えば、予防的または治療的)処置を必要とする障害または状態を処置するのに有効な他の薬剤と組み合わせて投与され得る。さらなる薬剤は、当技術分野で認識され、特定の障害のために常套的に投与されるものである。
かなりの数の臨床経験が131Iおよび90Yで得られているが、他の放射性標識が、当技術分野で公知であり、同様の目的のために使用されている。さらに他の放射性同位体が画像化するために使用されている。例えば、本発明の範囲と互換性のあるさらなる放射性同位体には、123I、125I、32P、57Co、64Cu、67Cu、77Br、81Rb、81Kr、87Sr、113In、127Cs、129Cs、132I、197Hg、203Pb、206Bi、177Lu、186Re、212Pb、212Bi、47Sc、105Rh、109Pd、153Sm、188Re、199Au、225Ac、211A、213Biが含まれるが、これに限定されない。この点で、α、γおよびβ放射体は、本発明において全て互換性がある。さらに、更に本開示を考慮して、当業者は、過度の実験をすることなく選択した治療コースと適合する放射性核種を容易に決定できることを述べておく。このために、既に臨床診断に使用されている追加の放射性核種には、125I、123I、99Tc、43K、52Fe、67Ga、68Ga、ならびに111Inが含まれる。抗体はまた、標的化免疫療法での潜在的使用のために種々の放射性核種によって標識されている(Peirersz et al. Immunol. Cell Biol. 65: 111, 1987)。これらの放射性核種には、188Reおよび186Re、ならびにより少ない程度の199Auおよび67Cuが含まれる。米国特許第5,460,785号は、このような放射性同位体に関する追加のデータを提供し、それは引用により本明細書に包含される。
上記の通り、本明細書に記載の抗体またはそのフラグメントは、哺乳動物の疾患のインビボでの処置のために薬学的に有効な量で投与され得る。この点に関して、本明細書に記載の抗体またはそのフラグメントは、投与を容易にし、活性成分の安定性を促進するために製剤され得ることが理解され得る。任意の態様において、本発明の医薬組成物は、薬学的に許容される、非毒性の、滅菌担体、例えば生理食塩水、非毒性緩衝液、防腐剤などを含む。本発明の目的のために、治療剤にコンジュゲートまたは非コンジュゲートされた本明細書に記載の薬学的に有効量の抗体は、標的への有効な結合を達成するのに十分な量、また利益を達成する、例えば疾患または障害の症状を改善するのに十分な量、または物質もしくは細胞を検出するのに十分な量を意味するとみなされる。腫瘍細胞の場合、ポリペプチドは、特定の態様において、腫瘍細胞または免疫反応性細胞の選択した免疫反応性抗原と相互作用することができ、これらの細胞の細胞死を増加させ得る。もちろん、本明細書に記載の医薬組成物は、薬学的に有効量のポリペプチドを提供するために単回用量または複数回用量で投与され得る。
本開示の範囲に従って、本明細書に記載の抗体は、上述の治療方法に従って、治療効果は予防効果を生じさせるのに十分な量でヒトもしくは他の動物に投与され得る。本明細書に記載のポリペプチドは、このようなヒトもしくは他の動物に、既知の方法に従って、本明細書に記載の抗体を従来の薬学的に許容される担体または希釈剤と組み合わせることにより調製された常套の投与量で投与され得る。当業者は、薬学的に許容される担体または希釈剤の形態および特徴が、それと組み合わせる活性成分の量、投与経路および他の周知の変形によって決定されることを理解し得る。当業者は、本発明によるポリペプチドの1種またはそれ以上を含むカクテルが特に有効であると立証し得ることを、さらに理解し得る。
また、本明細書中、患者または他の対象に、薬学的に有効量のCB1抗体を、経口投与、注射溶液による非経腸投与、吸入、または局所投与することを含む、CB1の増加した発現またはCB1に対する増加した感受性により引き起こされる状態を治療する方法も記載される。
また、本明細書中、患者または他の対象に、経口投与、注射溶液による非経腸投与、吸入、または局所投与することを含む、CB1の増加した発現またはCB1に対する増加した感受性により引き起こされる状態を処置するための医薬の製造を目的とする、薬学的に有効量のCB1抗体の使用も記載される。
ある態様において、記載された単離された抗体およびその抗原結合フラグメントは、最小限の脳透過性という利点を有する。ある態様において、単離された抗体およびそのフラグメントは、CNS副作用が最小化されるように、CB1受容体に対する高い選択性を示し、血液脳関門を通過しない、または小分子CB1受容体化合物と比較して低い血液脳関門のの透過性を示す。さらなる態様において、単離された抗体およびそのフラグメントは、静脈内注射後、血液脳関門を通過しないか、またはリモナバンなどの小分子CB1受容体化合物と比較して低い血液脳関門の通過を示す。
一態様において、本明細書に記載の抗体およびその結合フラグメントまたは変異体は、非経腸、皮下、筋肉内、静脈内、関節内、気管支内、腹腔内、嚢内、軟骨内、洞内、腔内、小脳内、脳内、結腸内、頸管内、胃内、肝内、心筋内、骨内、骨盤内、心膜内の、腹腔内、胸腔内、前立腺内、肺内、直腸内、腎臓内、網膜内、脊髄内、滑液包内、胸腔内、鼓室内、子宮内、膀胱内、硝子体内、ボーラス注入、結膜下、経膣、経直腸、口腔、舌下、鼻腔内、および経皮から選択される少なくとも1つの経路により対象に投与され得る。
本発明は、単離された抗体およびその抗原結合フラグメント、ならびにかかる抗体およびフラグメントをコードする核酸、ならびにかかる単離された抗体、フラグメントおよび核酸を含む組成物を提供する。本発明はさらに、単離された抗体またはそのフラグメント、あるいはかかる抗体またはフラグメントをコードする核酸を含み、かつ1つまたはそれ以上の薬学的に許容される担体をさらに含む医薬組成物を提供する。薬学的に許容される担体には、例えば、賦形剤、希釈剤、封入材、充填剤、緩衝剤、または他の薬剤が含まれる。
特定の面および態様の説明
本明細書に記載の他の面およびそれらの態様は、互いに組み合わせることができる。加えて、上記の何れかの面およびそれらの態様は、以下の特定の面および態様のいずれかと組み合わせることができる。
さらに本発明を説明するのに役立ついくつかの特定の面および態様を以下に提供する:
1.カンナビノイド1(CB1)受容体に対して約1μMまたはそれ未満の結合親和性Kdを有する、該CB1受容体に結合する単離された抗体またはその抗原結合フラグメント。
2.カンナビノイド1(CB1)受容体に対して約100nMまたはそれ未満の結合親和性Kdを有する、態様1に記載の単離された抗体またはその抗原結合フラグメント。
3.カンナビノイド1(CB1)受容体に対して約10nMまたはそれ未満の結合親和性Kdを有する、態様1に記載の単離された抗体またはその抗原結合フラグメント。
4.カンナビノイド1(CB1)受容体に対して約1nMまたはそれ未満の結合親和性Kdを有する、態様1に記載の単離された抗体またはその抗原結合フラグメント。
5.CB1受容体上の細胞外エピトープに結合する、態様1に記載の単離された抗体またはその抗原結合フラグメント。
6.ヒトCB1受容体に結合する、態様1に記載の単離された抗体またはその抗原結合フラグメント。
7.CB1受容体のシグナル伝達活性を阻害する、態様1に記載の単離された抗体またはその抗原結合フラグメント。
8.抗体またはフラグメントが、小分子リモナバンと比較して少なくとも同等の効力のCB1受容体シグナル伝達阻害活性を有し、該効力が、cAMPアッセイにおいて、CB1受容体アゴニストが介在するシグナル伝達の阻害により測定される、態様7に記載の単離された抗体または抗原結合フラグメント。
9.抗体またはフラグメントが、小分子リモナバンと比較して少なくとも3倍以上の効力のCB1受容体シグナル伝達阻害活性を有し、該効力が、cAMPアッセイにおいて、CB1受容体アゴニストが介在するシグナル伝達の阻害により測定される、態様7に記載の単離された抗体または抗原結合フラグメント。
10.抗体またはフラグメントが、小分子リモナバンと比較して少なくとも同等の効力のCB1受容体シグナル伝達阻害活性を有し、該効力が、CB1受容体アゴニストが介在するERKリン酸化により測定される、態様7に記載の単離された抗体または抗原結合フラグメント。
11.抗体またはフラグメントが、小分子リモナバンと比較して少なくとも3倍以上の効力のCB1受容体シグナル伝達阻害活性を有し、該効力が、CB1受容体アゴニストが介在するERKリン酸化により測定される、態様7に記載の単離された抗体または抗原結合フラグメント。
12.抗体またはフラグメントがCB1受容体活性を活性化するか、または増強する、態様1に記載の単離された抗体または抗原結合フラグメント。
13.抗体またはフラグメントが、CB1受容体のアロステリックモジュレーターである、態様1に記載の単離された抗体または抗原結合フラグメント。
14.抗体またはフラグメントが、CB1受容体のインバースアゴニストである、態様1に記載の単離された抗体または抗原結合フラグメント。
15.抗体またはフラグメントがマウスのものである、態様1に記載の単離された抗体または抗原結合フラグメント。
16.抗体またはフラグメントがキメラである、態様1に記載の単離された抗体または抗原結合フラグメント。
17.抗体またはフラグメントがヒト化されている、態様1に記載の単離された抗体または抗原結合フラグメント。
18.抗体またはフラグメントが、CB1に選択的に結合する、態様1に記載の単離された抗体または抗原結合フラグメント。
19.抗体が、薬剤、例えば、追加の治療剤、細胞毒性剤、免疫付着分子、または造影剤と複合体を形成している、態様1に記載の単離された抗体またはその抗原結合フラグメント。
20.薬剤が、追加の治療剤、細胞毒性剤、免疫付着分子、または造影剤である、態様19に記載の単離された抗体またはその抗原結合フラグメント。
21. 治療剤がリモナバンである、態様20に記載の単離された抗体またはその抗原結合フラグメント。
22.造影剤が、放射性標識、酵素、蛍光標識、発光標識、生物発光標識、磁気標識、およびビオチンからなる群より選択される、態様20に記載の単離された抗体またはその抗原結合フラグメント。
23.抗体が、アゴニスト活性またはアンタゴニスト活性を有さない、態様18に記載の単離された抗体またはその抗原結合フラグメント。
24.CB1受容体への結合に対して態様1に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントと競合し得る、抗体またはその抗原結合フラグメント。
25.態様1に記載の抗体または抗原結合フラグメントと本質的に同じCB1受容体上のエピトープに特異的に結合することができる、抗体またはその抗原結合フラグメント。
26.抗体またはその抗原結合フラグメントが、配列番号2、10、18および26からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;ならびに、
配列番号6、14、22および30からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、態様1に記載の単離された抗体またはその抗原結合フラグメント。
27.抗体またはフラグメントが、配列番号4、12、20および28からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む重鎖定常領域;ならびに
配列番号8、16、24および32からなる群より選択される軽鎖定常領域を含む、態様1に記載の単離された抗体またはその抗原結合フラグメント。
28.抗体またはそのフラグメントが、配列番号2に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;配列番号4に記載のアミノ酸配列を含む重鎖定常領域;配列番号6に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;ならびに、配列番号8に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖定常領域を含む、態様1に記載の単離された抗体またはその抗原結合フラグメント。
29.抗体またはそのフラグメントが、配列番号10に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;配列番号12に記載のアミノ酸配列を含む重鎖定常領域;配列番号14に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;ならびに、配列番号16に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖定常領域を含む、態様1に記載の単離された抗体またはその抗原結合フラグメント。
30.抗体またはそのフラグメントが、配列番号18に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;配列番号20に記載のアミノ酸配列を含む重鎖定常領域;配列番号22に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;ならびに、配列番号24に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖定常領域を含む、態様1に記載の単離された抗体またはその抗原結合フラグメント。
31.抗体またはそのフラグメントが、配列番号26に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;配列番号28に記載のアミノ酸配列を含む重鎖定常領域;配列番号30に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;ならびに、配列番号32に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖定常領域を含む、態様1に記載の単離された抗体またはその抗原結合フラグメント。
32.CB1受容体を発現する細胞と態様1に記載の抗体または結合フラグメントとを接触させることを含む、CB1をアンタゴナイズする方法。
33.CB1受容体を発現する細胞と態様1に記載の抗体または結合フラグメントとを接触させることを含む、CB1をアゴナイズする方法。
34.態様1に記載の抗体または抗原結合フラグメントをそれを必要とする対象に投与することを含む、該対象におけるCB1受容体のアンタゴニスト作用またはアゴニスト作用に応答する疾患または障害の処置法。
35.対象がヒトである、態様34に記載の方法。
36.細胞と態様1に記載の抗体または抗原結合フラグメントを接触させることを含む、CB1の検出法。
37.疾患または障害が、肥満、糖尿病、異脂肪血症、代謝性疾患、線維症、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝疾患、原発性胆汁性肝硬変、腎疾患、腎線維症、慢性腎疾患、骨粗鬆症、アテローム性動脈硬化症、心血管疾患、癌および炎症性疾患からなる群より選択される態様34に記載の方法。
38.疾患または障害が、疼痛、多発性硬化症の痙縮および緑内障からなる群より選択される、態様34に記載の方法
39.疾患または障害が線維症である、態様37に記載の方法。
40.抗体または抗原結合フラグメントがCB1をアンタゴナイズする、態様37に記載の方法。
41.抗原結合フラグメントがCB1をアゴナイズする、態様38に記載の方法。
42.細胞と態様1に記載の抗体または抗原結合フラグメントを接触させることを含む、CB1と関連する疾患または障害を診断するための方法
43.細胞と態様1に記載の抗体またはそのフラグメントを接触させることによりCB1発現を測定することを含む、CB1と関連する疾患または障害を有すると診断された対象の予後を決定するための方法。
44.疾患または障害が、肥満、糖尿病、異脂肪血症、代謝性疾患、線維症、NASH、肝疾患、原発性胆汁性肝硬変、腎疾患、腎線維症、慢性腎疾患、骨粗鬆症、アテローム性動脈硬化症、心血管疾患、癌、炎症性疾患、疼痛、MS痙縮、および緑内障を含む眼疾患からなる群より選択される、請求項43または43に記載の方法。
45.疾患または障害が線維症である、態様44に記載の方法。
46.単離された抗体またはその抗原結合フラグメントが、造影剤と複合体を形成している、態様36に記載の方法。
47.造影剤が、放射性標識、酵素、蛍光標識、発光標識、生物発光標識、磁気標識、およびビオチンからなる群より選択される、態様46に記載の方法。
48.細胞が対象内に存在する、態様42または43に記載の方法。
49.対象がヒトである、態様48に記載の方法。
50.態様1に記載の単離された抗体またはフラグメントを発現する宿主細胞。
51.哺乳動物を、精製したCB1受容体またはその抗原フラグメント、CB1/脂質複合体、および/またはCB1受容体DNAを用いて免疫化することを含む、CB1に特異的に結合する抗体またはそのフラグメントの作製法。
52.抗体またはそのフラグメントが、免疫化された哺乳動物由来の細胞を含むハイブリドーマ細胞株から作製される、態様51に記載の方法。
53.抗体またはそのフラグメントがファージライブラリーから作製される、態様51に記載の方法。
54.ヒト初代血中リンパ球由来の可変重鎖および軽鎖領域を含むファージライブラリーを作製し、該ファージライブラリーをCB1受容体結合についてパンニングすることを含む、CB1に特異的に結合する抗体またはそのフラグメントの作製法。
55.抗体またはその抗原結合フラグメントが、配列番号352、353および354のぞれぞれで示される重鎖CDR1、CDR2およびCDR3を含む、カンナビノイド受容体1(CB1)に結合する単離された抗体またはその抗原結合フラグメント。
56.抗体またはその抗原結合フラグメントが、配列番号355、356および357のぞれぞれで示される軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3を含む、カンナビノイド受容体1(CB1)に結合する単離された抗体またはその抗原結合フラグメント。
57.抗体またはその抗原結合フラグメントが、配列番号352、353および354のそれぞれで示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の相同性を有する重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列を含む、カンナビノイド受容体1(CB1)に結合する単離された抗体またはその抗原結合フラグメント。
58.抗体またはその抗原結合フラグメントが、配列番号355、356および357のそれぞれで示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の相同性を有する軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列を含む、カンナビノイド受容体1(CB1)に結合する単離された抗体またはその抗原結合フラグメント。
60.態様1から59のいずれかの、または本明細書に記載の、抗体または抗原結合フラグメントと同じエピトープに特異的に結合する、抗体またはその抗原結合フラグメント。
61.抗体またはその抗原結合フラグメントが、配列番号443-463からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1;配列番号464-577からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2;および、配列番号578-625からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3を含む、カンナビノイド受容体1(CB1)に結合する単離された抗体またはその抗原結合フラグメント。
61.抗体またはその抗原結合フラグメントが、配列番号626-661からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1;配列番号662-742からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2;および、配列番号742-824からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を含む、カンナビノイド受容体1(CB1)に結合する単離された抗体またはその抗原結合フラグメント。
62.抗体またはその抗原結合フラグメントがヒト化抗体である、態様1に記載の単離された抗体またはそのフラグメント。
63.抗体またはその抗原結合フラグメントが、ヒトIgG1 Fc領域を含む、本明細書に記載の単離された抗体またはその抗原結合フラグメント。
64.抗体またはその抗原結合フラグメントが修飾されたFc領域を含む、態様1から63のいずれかに記載の単離された抗体またはその抗原結合フラグメント。
65.抗体またはその抗原結合フラグメントが、IgG2/IgG4ハイブリッド、A330SおよびP331S変異を含むIgG2、ならびにS228P変異を含むIgG4からなる群より選択されるFc領域を含む、態様64に記載の単離された抗体またはその抗原結合フラグメント。
66.抗体またはその抗原結合フラグメントが、配列番号339-341からなる群より選択される重鎖可変領域アミノ酸配列、および要すれば、配列番号337に記載の軽鎖可変領域を含む、カンナビノイド受容体1(CB1)に結合する単離された抗体またはその抗原結合フラグメント
67.抗体またはその抗原結合フラグメントが、配列番号342に記載の重鎖定常領域を含む、態様66に記載の単離された抗体またはその抗原結合フラグメント。
68.抗体またはその抗原結合フラグメントが、配列番号343-351からなる群より選択される重鎖アミノ酸配列、および配列番号338に記載の軽鎖アミノ酸配列を含む、態様66に記載の単離された抗体またはその抗原結合フラグメント。
69.配列番号341を含む重鎖可変領域、および配列番号433、配列番号434または配列番号435を含む重鎖定常領域を含む、単離された抗体またはその抗原結合フラグメント。
70.配列番号340を含む重鎖可変領域、および配列番号433、配列番号434または配列番号435を含む重鎖定常領域を含む、単離された抗体またはその抗原結合フラグメント。
71.配列番号1-351および配列番号436-824からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも99%同一である、核酸配列またはアミノ酸配列を含む、単離された抗体またはそのフラグメント。
72.抗体またはフラグメントが、CB1受容体に対して約100nMまたはそれ未満の結合親和性Kdを有する、CB1に結合する単離されたヒト化抗体またはその抗原結合フラグメント。
73.抗体またはフラグメントが、CB1受容体に対して約5nMまたはそれ未満の結合親和性Kdを有する、態様72に記載の単離されたヒト化抗体またはその抗原結合フラグメント。
74.抗体またはフラグメントが、小分子リモナバンと比較して少なくとも10倍以上の効力のCB1受容体阻害活性を有し、該効力が、cAMPアッセイにおいて、CB1受容体アゴニストが介在するシグナル伝達の阻害により測定される、CB1に結合する単離されたヒト化抗体またはその抗原結合フラグメント。
75.抗体またはフラグメントが、小分子リモナバンと比較して少なくとも5倍以上の効力のCB1受容体シグナル伝達阻害活性を有し、該効力が、cAMPアッセイにおいて、CB1受容体アゴニストが介在するシグナル伝達の阻害により測定される、態様74に記載の単離された抗体または抗原結合フラグメント。
76.抗体またはフラグメントが、小分子リモナバンと比較して少なくとも同等の効力のCB1受容体シグナル伝達阻害活性を有し、該効力が、CB1受容体アゴニストが介在するシグナル伝達の阻害により測定される、態様74に記載の単離された抗体または抗原結合フラグメント。
77.抗体またはフラグメントが、対応する非ヒト化抗体またはキメラ抗体よりも強い効力を示し、該ヒト化抗体またはフラグメントおよび対応する非ヒト化抗体またはキメラ抗体が、同じ重鎖および軽鎖CDRを含み、そして該効力が、cAMPアッセイにおいて、CB1受容体アゴニストが介在するシグナル伝達の阻害により測定される、CB1に結合する単離されたヒト化抗体またはその抗原結合フラグメント。
78.ヒト化抗体またはフラグメントが、対応する非ヒト化抗体またはキメラ抗体またはフラグメントと比較して少なくとも2倍以上の効力のCB1受容体阻害活性を有する、態様77に記載の単離されたヒト化抗体または抗原結合フラグメント。
79.ヒト化抗体またはフラグメントが、対応する非ヒト化抗体またはキメラ抗体またはフラグメントと比較して少なくとも3倍以上の効力のCB1受容体阻害活性を有する、態様78に記載の単離されたヒト化抗体または抗原結合フラグメント。
80.ヒト化抗体またはフラグメントが、対応する非ヒト化抗体またはキメラ抗体またはフラグメントと比較して少なくとも5倍以上の効力のCB1受容体阻害活性を有する、態様79に記載の単離されたヒト化抗体または抗原結合フラグメント。
81.抗体またはフラグメントが、低下した脳透過性または脳透過性がないことを示す、態様1から80のいずれかに記載の単離されたヒト化抗体または抗原結合フラグメント。
82.抗体またはフラグメントの脳透過性が、小分子CB1受容体アゴニストまたはアンタゴニストと比較して低下した脳透過性を示す、態様81に記載の単離されたヒト化抗体または抗原結合フラグメント。
83.抗体またはフラグメントが、小分子CB1受容体アゴニストまたはアンタゴニストと比較して減少した中枢神経系(CNS)副作用を示す、態様81に記載の単離されたヒト化抗体または抗原結合フラグメント。
84.小分子CB1受容体アゴニストまたはアンタゴニストが、AM6545、AM251、タラナバンまたはリモナバンである、態様83に記載の単離されたヒト化抗体または抗原結合フラグメント。
85.態様55-84のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合フラグメントをそれを必要とする態様に投与することを含む、該対象におけるCB1受容体のアンタゴニスト作用またはアゴニスト作用に応答する疾患または障害の処置法。
86.対象がヒトである、態様85に記載の方法。
87.該疾患または障害が、肥満、糖尿病、異脂肪血症、代謝性疾患、線維症、NASH、肝疾患、原発性胆汁性肝硬変、腎疾患、腎線維症、慢性腎疾患、骨粗鬆症、アテローム性動脈硬化症、心血管疾患、癌、炎症性疾患、疼痛、MS痙縮、および緑内障を含む眼疾患からなる群より選択される、態様85に記載の方法。
88.抗体または抗原結合フラグメントが低下した脳透過性または脳透過性がないことを示す、態様85に記載の方法。
上記の本発明は、理解を明確にする目的のために説明および例示によっていくつか詳細に記載されているが、特定の変更および改変が、添付の特許請求の範囲の精神または範囲から逸脱することなくなされ得ることは、本発明の教示に照らして当業者に容易に理解され得る。以下の実施例は、説明のみのために提供され、それに限定するものではない。当業者は、本質的に同様の結果を得るために変更または改変することができる種々の重要でないパラメータを容易に認識し得る。
実施例1.CB1受容体抗体の作製のためのマウスの免疫化
ヒトCB1受容体のクローニングのためのcDNA配列およびプライマーは、pubmedのNCBI参照配列nM_001160258に基づく。CB1受容体を、293細胞におけるリポフェクタミンを用いる一過性発現により、または安定な細胞株の作製によって発現させた。安定な細胞株の作製のために、pcDNA4/TOの天然の完全長ヒトCB1受容体構築物をテトラサイクリン発現誘導システムTrex-CHOおよびTrex-293細胞にトランスフェクトした。細胞を抗生物質ゼオシンおよびブラスチシジン下で培養した。テトラサイクリン発現誘導によりCB1を発現したクローンを、R&Dの抗CB1受容体抗体を用いるFACS染色によって同定した(クローン368302)。膜を調製し、直接免疫化に用いるか、または界面活性剤で膜タンパク質を可溶化後、talon精製した。精製されたCB1受容体を、脂質二重層に安定化させた。CB1/脂質複合体をCB1受容体iCAPSと命名した。
Balb/cマウスを、CB1受容体DNAを用いて2回免疫し、次いで、CB1受容体膜またはCB1受容体iCAPSを用いてブーストした。免疫化前後に血液サンプルを採取し、血清を、ELISAにおいて、CB1受容体を発現する膜 対 天然の膜への結合について試験した。マウス血清が、天然の膜よりもCB1受容体発現膜に対して陽性シグナルを示したとき、マウスを屠殺し、脾臓をハイブリドーマおよびファージライブラリーの作成のために取り出した。
実施例2.リンパ球の回収、B細胞単離、融合およびCB1受容体に結合するハイブリドーマの選択
免疫化したマウスから脾臓を取り出し、単細胞懸濁液を作成した。単細胞懸濁液を作成するために、脾臓を50mLのコニカル遠心チューブの上部の面まで移し、3mLシリンジのプランジャーを用いて、該脾臓の細胞を破砕した。赤血球を氷冷ACK緩衝液で10分間溶解させ、5mlのDMEMを添加し、細胞を遠心分離した。この工程をもう一度繰り返した後、細胞を、DMEM培地中、2x107/mlの濃度に再懸濁した。
骨髄腫細胞の回収および調製:SP2/0細胞をおよそ5x104細胞/mLの密度で播種し、2日毎に継代した。細胞融合の前に、親の骨髄腫細胞を、50mLのコニカル遠心チューブ中、室温(RT)にて500xgで10分間、遠心して回収した。細胞を、30mLの無血清培地を加えて3回洗浄し、遠心分離を繰り返した。上清をピペットで除去し、細胞ペレットを25mLの培地に再懸濁し、2x107/mlの生細胞の濃度に調整した。
細胞融合:骨髄腫細胞および脾臓細胞を1:5の混合比で混ぜた。細胞混合物を1000rpmで5分間スピンダウンし、その後上清を捨てて細胞ペレットを得た。細胞混合物を融合ワーキングバッファーで2回洗浄し、遠心して、細胞ペレットを得た。細胞ペレットを融合バッファーに穏やかに懸濁して8x107/mlの最終細胞濃度を得た。細胞混合物を電極槽に添加し、電気融合を行った。細胞を細胞融合後に5分間放置し、DMEM培地で1回洗浄し、そして予め温めたHAT培地を融合細胞に添加して、0.5×106B細胞/mlの終濃度とした。その後、100μlの細胞懸濁液(5x104B細胞)を96ウェルプレートの各ウェルに添加した。平均融合効率は、1ハイブリドーマ/1x104B細胞であるため、プロトコルは、各ウェル中に5個のハイブリドーマを目指している。
ハイブリドーマ細胞培養。融合したハイブリドーマを、細胞培養インキュベーター中、5%CO2、37℃にて培養した。ハイブリドーマの増殖条件は毎日チェックした。コロニーは、通常、5日後に見られた。培地は、ポジティブスクリーニングの前の7日目に新鮮なDMEM培地と交換した。
ポジティブスクリーニング:細胞融合の7-9日後、コロニーが大きくなったとき、各ハイブリドーマウェルからの100μLの上清を、新たな96ウェルプレート上の別個のウェルに移し、ELISAとCB1タンパク質とを用いて分析した。
実施例3.ファージライブラリーの作製およびスクリーニング
全RNA抽出:脾臓組織をRNAlater中に回収した。凍結組織の小片(~30mg)を、液体N2で冷却したモーター内で均質化し、微粉末に粉砕した。TRIzol(登録商標)試薬を加えて、30秒間手で激しく振盪した。1mLの溶液を室温で2-3分で1.5マイクロチューブに移し、数分間の間、室温で置いた。混合物に、溶液1mL当たり0.2mlのクロロホルムを添加し、30秒間手で激しく振盪した。混合物を5分間室温でインキュベートし、その後、4℃にて、12,000xgで20分間、遠心した。水相を取り出し、新しいチューブに移した。等量のイソプロピルアルコールを該チューブに加え、30秒間混合した。室温で5分間インキュベート後、混合物を、4℃にて、12,000gで15分間、遠心した。ペレットを、500μLの75%エタノールを添加することにより洗浄し、4℃にて、12,000gで15分間、遠心した。得られた全RNAペレットを空気乾燥させ、予想される1μgのRNA当たり、50μLのRNase不含有水で溶解させた。RNAサンプルの1:10希釈のODを、260nMおよび280nMで測定した。
cDNA調製:第一鎖cDNA合成を市販のキット(Invitrogen、カタログ番号:18080-051)を用いて行い、すなわち、20μgの全RNAを、40μlのDEPC処理水中、5μMのオリゴ(dT)20および1mMのdNTPと混合し、65℃にて5分間インキュベートし、その後、80μLのRTバッファーと5mM MgCl2、10μM DTT、16ユニットのRNaseOUTおよび80ユニットのSuperscript III逆転写酵素とを添加した。得られた混合物を、50℃にて50分間インキュベートし、4μlのRNase Hを添加して残留RNAを除去する前に、熱不活性化した。cDNAを、その後のライブラリーの構築のために使用した。
キメラFabライブラリーを以下のように構築した。重鎖または軽鎖の可変領域を、上記で調製したマウスcDNAテンプレートを用いて、Barbasらが報告した複数の生殖細胞系列ファミリーを代表する重鎖または軽鎖特異的プライマーによって増幅させた。ヒト重鎖および軽鎖定常領域、それぞれCh1およびCL1を、既存のクローンpCOM3xTTから増幅させた。重鎖可変領域および定常領域を、オーバーラップPCRにより互いに連結させた。得られた重鎖および軽鎖を、再びオーバーラップPCRによって連結し、キメラFab DNAフラグメントを得て、それをライゲーションによってSfiIフラグメント挿入として改変pCOM3xベクター中にクローニングした。ライゲーションライブラリーDNAを洗浄し、SS320高効率コンピテント細胞に形質転換した。得られた総ユニーク形質転換体の数は、少なくとも5x107であった。
ファージライブラリーのパンニングのために、免疫したマウスからのファージライブラリーを、空のiCAPSでコーティングされたMaxisorpイムノチューブ(Thermo Scientific)中、2回サブトラクションし、その後、ビオチニル化ブリルタンパク質でコーティングしたDynabeadsのMyOneストレプトアビジンT1(Life Technologies)で2回サブトラクションした。全てのサブトラクション工程は30分続いた。一方、ビオチニル化CB1受容体iCAPSを、DynabeadsのMyOneストレプトアビジンT1(Life Technologies)上にコーティングした。次いで、ビーズ上のサブトラクションされたファージプールおよびCB1 iCAPSを、競争のための非ビオチニル化ブリルタンパク質および空のiCAPSと混合し、回転させながら室温で1時間インキュベートした。ビーズを、磁石を用いて結合混合物から分離し、非結合ファージを除去するために複数回(ラウンド1を5回、ラウンド2および3をそれぞれ10回)洗浄した。結合したファージを10分毎にグリシンバッファーpH2.2で2回溶出した。溶出液を合わせ、トリス-HClpH8.0で中和し、TG1細胞の感染に用いて、パニングの次のラウンドのためのファージを産生した。3ラウンドのパンニング後、単一コロニーを採取し、モノクローナルファージELISAによりスクリーニングした。
ファージ結合剤のスクリーニングのために、パンニング結果物で感染させたTG1の単一コロニーを、2YT/カルベニシリン/グルコース培地を含む96ウェルプレートに採取し、30℃にて一晩振盪させた。次の日、少量の飽和培地を新鮮な2YT/カルベニシリン/グルコース培地に移し、37℃にて、OD600nmが0.6-0.7に達するまで振盪した。その後、培養物を、KO7ヘルパーファージで感染させた。感染したTG1細胞をスピンダウンし、2YT/カルベニシリン/カナマイシン培地に再懸濁し、30℃にて一晩振盪した。一方、マキシソープ96ウェルプレート(Thermo Scientific)を、4℃にて一晩、ストレプトアビジン(Wako)でコーティングした。3日目、ビオチニル化抗原をストレプトアビジンでコーティングしたプレート上で捕捉し、その後、それをPBST中、3%脱脂粉乳を用いてブロッキングした。TG1細胞を再度スピンダウンした。ファージを含む上清を、3%脱脂粉乳でブロッキングし、次いでELISAプレートにローディングし、室温にて1時間インキュベートした。PBSTで3回洗浄後、PBST中、3%脱脂粉乳で1:2000希釈したHRPマウス抗M13抗体(GE Healthcare)を、該プレートに添加し、室温にてさらに1時間インキュベートした。プレートをPBSTで3回洗浄し、その後、TMB(Biopanda)で現像した。HClをプレートに添加して反応を停止させた。450nmでの吸光度を、Emaxの精密マイクロプレートリーダー(Molecular Devices)で読み取った。iCAPSに特異的に結合したクローンを、さらなる特徴付けおよび配列決定のために採取した。
ファージ上に提示されたFabを産生するプラスミドを含む大腸菌コロニーを回収した。プラスミドDNAを抽出し、配列決定して、FabDNA情報を得た。重鎖のV領域を増幅するための特異的プライマーを設計し、PCR産物を、ApaIおよびSacI制限酵素で予め処理したpTT5発現ベクターの改変体であるpTT5-HCV3中に、seamless cloningによりヒト重鎖定常領域の前にクローニングした。特異的プライマーはまた、Fabフラグメントの全体の軽鎖領域を増幅するように設計された。得られたPCRフラグメントを、改変されたpTT5ベクターであるpTT5-IL2-LCC中に、seamless cloningによりEcoRIおよびNotIで処理してクローニングした。得られた2プラスミドの配列を検証した。
実施例4.ハイブリドーマシーケンシング
ハイブリドーマ細胞(1x107)を回収し、全RNAを、脾臓組織について上述したようにTri試薬を用いて抽出した。cDNAを、上記のとおり、製造者の指示に従ってSuperScript IIIキットを用いて調製した。得られたcDNA産物を、プライマー VhRevUおよびVhForUと共に、PCRのためのテンプレートとして用いて、得られた300bpのPCR産物をPCRクリーンアップキットを用いてクリーンアップし、同じプライマーを用いて配列決定した。PCR反応はまた、軽鎖V領域特異的プライマーVkRev7およびVkFor(可変領域のみ用)またはKappaForプライマー(全体のκ軽鎖用)を用いて行った。シーケンシング反応をクリーンアップしたPCR産物に対して行い、DNA配列を得た。
実施例5.IgGの発現および分析
IgG発現:2つのpTT5ベースのプラスミド(一方は重鎖DNAを含み、他方は、軽鎖DNAを含む)を、IgG発現のために、HEK293F細胞に同時トランスフェクションした。トランスフェクションの24時間前に、293F細胞を、8X105細胞/mlの密度に希釈した。トランスフェクション1日目に、細胞を1.1-1.3X106細胞/mlで維持した。1μgのプラスミドDNAを、1mlの細胞懸濁培養物のトランスフェクションのために使用した。80μgのDNAを、4mlの新鮮な293Fフリースタイル培地中に希釈した。240μgのトランスフェクション試薬のポリエチレンイミン(PEI)を、4mlの最終容量の293Fフリースタイル培地に希釈した。インキュベーションの3分後、4mlのDNAを4mlのPEI中に混合した。8mlのDNAおよびPEI混合物を室温で15分間インキュベートし、80mlの293F細胞懸濁培養液にゆっくり添加した。細胞を、オービタルシェーカープラットフォームで、130rpmの速度で、37℃、5%CO2にてインキュベートし、4日目に回収した。
IgG精製:0.4mlのベッドボリューム(Bed Volume)のタンパク質Aを、1mLカラムに入れ、10mLのdH2Oおよび10mlのPBS(pH8.0)で洗浄した。トランスフェクトされた293F細胞懸濁液を、4℃にて、4000rpmで45分間スピンダウンした。ペレットを捨て、上清を氷上でpH8.0に調整し、準備したタンパク質Aカラムに入れた。上清の充填が終了したとき、カラムを5mlのPBS(pH8.0)で洗浄し、4mlの0.1Mクエン酸Na-HCl(pH3.5)で溶出した。IgGを含む溶出液を200μLの1.5Mトリス-HCl緩衝液(pH8.8)で中和し、30kD 4mlコンセントレーターで濃縮した。4.5mlのPBSで該コンセントレーターをいっぱいにし、スピンダウンした。最後に、IgGを交換し、PBS中に貯蔵した。IgGをOD280で検出し、純度をSDS-PAGEゲルおよびSECにより測定した。
4つの異なる試験で達成されたPA13R3-P1C4の濃度、容量および収量を、表4に示す。種々のクローンの濃度、容量および量を以下の表5に示す。
実施例6.ELISAによるCB1 iCAPSへのIgGの結合
精製したIgGを、精製したCB1受容体(CB1立体構造抗原提示システム(iCAPS))への結合についてELISAにより試験した。非ビオチニル化抗原(例えば、空のiCAPS)をMaxisorpプレート上に直接コーティングした。一次抗体は、1:3で連続希釈した精製したIgGであって、プレート上で1時間インキュベートした。PBSTで3回洗浄後、二次抗体HRPヤギ抗マウスIgG(Abmart)またはHRPヤギ抗ヒトIgG(Sigma)、をIgGの種類に応じて添加し、さらに1時間インキュベートした。プレートをPBSTで3回洗浄し、次いでTMB(Biopanda)を用いて発光させた。HClをプレートに添加して反応を停止させた。450nMでの吸光度をEmax精密マイクロプレートリーダー(Molecular Devices)で読み取った。結合データを表6にまとめる。
実施例7.FACSによるIgGの結合
TRex CHO親細胞、CB1を過剰発現するTRex CHO A56(CB1 T210A/融合パートナー)および天然のヒトCB1 TRex CHO A156を、フラスコから回収した。100μLの1x106細胞/mlの細胞を、一次抗体IgGと共にインキュベートした。抗ヒトおよび二次抗体PE結合抗マウス抗体を1:200倍希釈した。抗ヒトFab FITCを1:32倍希釈した。細胞を200μLのFACS緩衝液で2回洗浄し、BD 5mlファルコンチューブに移し、フローサイトメトリーにより分析した。初めに、精製したIgGの結合を、30nMおよび300nMの濃度で試験した。結合体を図1A-1Fに示すように同定した。
TRex CHO親細胞、CB1を過剰発現するTRex CHO A56、天然のヒトCB1 TRex CHO A156、5HT2Bをさらに評価するために、マウスCB1およびヒトCB2を用いて、IgG結合の特異性を調べた。100μlの1x106細胞/mlの細胞を、氷上にて30分間、1μMから0.5nMまでの3倍連続希釈した一次抗体IgGと共にインキュベートした。200μlのFACS緩衝液で2回洗浄後、細胞を、氷上で30分間、二次抗体と共にインキュベートした。細胞を200μLのFACS緩衝液で2回洗浄し、BDファルコン5mlチューブに移し、FACSによって分析した。
Santa Cruzの抗CB1ウサギポリクローナル抗体および二次抗体FITC結合抗ウサギ抗体を用いて、マウスCB1の発現を検出した。R&Dマウスモノクローナル抗CB2およびヒトIgG P2C2を用いて、CB2および5HT2Bの発現をそれぞれ確認した。抗マウスおよび抗ヒト二次抗体の両方は、PE結合型であった。
選択した結合体について、完全な結合曲線を、ある濃度範囲を試験することによりCB1受容体に対して作成した。1μMから0.1μMまでの3倍の連続希釈を調製した。選択性を、それぞれA156(天然にCB1受容体を発現する)またはA56(T210A修飾および融合パートナーとのICL3置換を有するCB1受容体を過剰発現する)への結合と比較して、フローサイトメトリーにより、5HT2BまたはCB2を発現する細胞への結合を測定することにより決定した。図2Cおよび図2Dに示す通り、CB2および5HT2Bの発現をマウスモノクローナル抗CB2およびP2C2ヒトIgGを用いて確認し、CB2および5HT2B発現をそれぞれ確認した。PE結合抗マウス(抗CB2の検出のための)およびPE結合抗ヒト抗体を用いて、CB2および5HT2Bをそれぞれ検出した。抗体PA13R3-P1C4および36E12B6C2は、図2Aおよび図2Bに示すように、CB1に選択的に結合した。加えて、表7は、PA13R3-P1C4および36E12B6C2のいくつかのバッチのそれぞれについて、濃度および解離定数(Kd)を示している。
試験結果は、PA13R3-P1C4 IgGおよびFabおよび36E12B6C2が、A56およびA156の両方に結合するが、親TRex CHOには結合せず、それらは、5ht2b、ヒトCB2またはマウスCB1との交差活性を有していないことを示した。
実施例8.競合アッセイ
TRex CHO A156天然ヒトCB1細胞を用いて、36E12B6C2およびP1C4が同様のエピトープに結合するかどうかを試験した。P1C4および36E12B6C2のEC80およびEC50での濃度を染色のために用いた。過剰量のPA13R3-P1C4 IgG、Fabおよび36E12B6C2を競合のために用いた。100μlの1x106細胞/mlのA156細胞を、氷上で30分間、競合用(competitor)IgGと共にインキュベートし、その後、染色用IgGを混合物に添加して、氷上で30分間インキュベーションした。200μlのFACS緩衝液で2回洗浄後、細胞を二次抗体と共に氷上で30分間インキュベートした。PE結合抗ヒトおよび抗マウス抗体を1:200倍に希釈した。細胞を200μlのFACS緩衝液で2回洗浄し、BDファルコン5mlチューブに移し、FACSによって分析した。
試験結果は、PA13R3-P1C4 FabおよびIgGがCB1結合について36E12B6C2と競合したことを示し、PA13R3-P1C4および36E12B6C2が重複するエピトープに結合することが示唆された(図3AおよびB)。100nMから500nMに増加した競合体36E12B6C2もまた、CB1への結合についてPA13R3-P1C4と競合することができた。
実施例9.cAMP機能アッセイ
cAMP機能アッセイを行い、抗体のアンタゴニスト作用を測定した。cAMP機能アッセイ(Cisbio)を、白色384ウェル低容量プレート(Greiner)で行った。8000細胞/ウェルのCB1を安定発現するTRex CHO細胞を該プレートに播種し、次いで種々の濃度のアンタゴニスト(10μMから0μMの範囲)と共に、室温で10分間インキュベートした。5μMのフォルスコリン(Sigma Aldrich)および9μMのカンナビノイドCP55940(Sigma Aldrich)を細胞刺激混合物に加え、室温で30分間インキュベートして、CB1を活性化した。インキュベーションの30分後、5μLのcAMP-d2(Cisbio社が提供する複合体および溶解バッファーで1:39希釈)および5μLの抗cAMPクリプテート(Cisbio社が提供する複合体および溶解バッファーで1:9希釈)を細胞刺激物に添加し、1時間インキュベートした。FRETシグナルを、Envisionマルチラベルプレートリーダー(Perkin Elmer)を用いて、620nMでの抗cAMPクリプテート励起および665nMでの放出において、検出した。データ分析をGraphPad Prismを用いて行った。
図4に示す通り、2つの抗体、36E12B2H8(ハイブリドーマ)およびPA13R3-P1C4(ファージ由来)は、アンタゴニスト活性等価(36E12B2H8)を示すか、または小分子陽性対照(CB1受容体インバースアゴニストであるSR141716A(リモナバン)およびAM251ならびにニュートラルアンタゴニストであるAM6545)よりも強力な活性(PA13R3-PIC4)を示し、それぞれIC50値は、350±28nMおよび90±13nMであった。
実施例10:ERK活性化アッセイ
mAbのアンタゴニスト活性をさらに確認するため、CB1受容体シグナル伝達経路の一部としてのERK活性化を評価した。試験の2日前に、Trex-CHO CB1受容体細胞を、500,000細胞/ウェルで6ウェルプレート中に播種した。1μg/mLのテトラサイクリンを用いて、24時間後にCB1受容体発現を誘導した。細胞を、試験の少なくとも2時間前から血清枯渇状態にした。300nMの精製したIgGを該培養培地に添加し、30分後、細胞をCB1受容体アゴニストWIN55,212(100nM)で10分間および15分間刺激した。細胞溶解物を集め、ERK活性化レベルをウェスタンブロットにより決定した。抗ERKおよび抗リン酸特異的ERK抗体は、Cell Signaling Inc社から入手した。
CB1受容体アゴニストWIN55,212での処理は、リン酸化ERKシグナルの増加によって証明されるように、ERK活性化を誘導した。総ERKをウェスタンブロットのローディング対照として用いて、サンプルの等ローディング量を示した。図5Aに示すように、ファージ由来の抗体PA13R3-P1C4(300nM)は、WIN55,212(100nM)により誘導されるERKリン酸化を阻害したが、対照IgG(無関係な結合体(irrelevant binder))またはPA13R3-P1E4は阻害しなかった。図5Bに示す通り、ハイブリドーマ由来の抗体36E12B2E5、36E12B6C2および36E12B6F2は、WIN55,212により誘導されるERKリン酸化を阻害したが、対照IgGは阻害しなかった。図5Aおよび5Bの両方に示す通り、AM6545(ニュートラルアンタゴニスト)を陽性対照として用いた。
実施例11.AMP機能アッセイ
cAMPアゴニスト機能アッセイ(Cisbio)を、白色384ウェル低容量プレート(Greiner)で行った。8000細胞/ウェルのCB1を安定に発現するTRex CHO細胞をプレートに播種し、次いで種々の濃度のアゴニスト(1.5μMから0μMの範囲)と共に室温にて10分間インキュベートした。アゴニスト活性(図6Aおよび6B)について試験するために、5μMのフォルスコリン(Sigma Aldrich)を細胞刺激混合物に添加して、室温にて30分間インキュベートした。正のアロステリックモジュレーター活性(図6Cおよび6D)を評価するために、5μMのフォルスコリン(Sigma Aldrich)および1μMのCP55940を細胞刺激混合物に添加し、室温にて30分間インキュベートした。
30分間のインキュベーション後、5μLのcAMP-d2(Cisbio社が提供する複合体および溶解バッファーで1:39希釈)および5μLの抗cAMPクリプテート(Cisbio社が提供する複合体および溶解バッファーで1:9希釈)を細胞刺激物に添加し、1時間インキュベートした。FRETシグナルを、620nMでの抗cAMPクリプテート励起および665nMでの放出の際に、Envisionマルチラベルプレートリーダー(Perkin Elmer)を用いて検出した。データ分析をGraphPad Prismソフトウェアを用いて行った。
cAMPアゴニストスクリーニングの結果は、PA2LR3-P2D3、PA2LR3-P4B1、PA2LR3-P6G7およびPA2LR3-P6B12を含むつの可能性のあるアゴニストIgGを同定した。特に、PA2LR3-P2D3、PA2LR3-P4B1およびPA2LR3-P6G7は、図6Aおよび6Bに示す通り、EC50>300nMを示した。また、PA2LR3-P6B12は、図6Cに示す通り、CP55940の存在下で約1000nMのEC50を有する、可能性のあるアロステリックモジュレーターである。陽性対照および陰性対照は図6Bおよび6Dに示されている。
cAMPアッセイもまた、PA13R3-P1C4および36E12B6C2をさらに特徴付けるために行った。cAMP機能アッセイ(Cisbio)を、白色の384ウェル低容量プレート(Greiner)にて行った。8000細胞/ウェルのCB1を安定に発現するTRex-CHO細胞を該プレートに播種し、次いで、3μMから0μMの範囲の濃度のAM6545、SR141716A、PA12R3-P1C4および36E12B6C2を含むアンタゴニストと共に、室温にて10分間インキュベートした。10分間インキュベーション後、5μMのフォルスコリン(Sigma Aldrich)を細胞刺激混合物に添加し、室温にて30分間インキュベートした。cAMP産生を定量するために、5μLのcAMP-d2および5μLの抗cAMPクリプテートを細胞刺激物に添加し、1時間インキュベートした。FRETシグナルを、620nMでの抗cAMPクリプテート励起および665nMでの放出の際に、EnVisionマルチラベルプレートリーダー(Perkin Elmer)で検出した。データ分析をGraphPad Prismソフトウェアを用いて行った。試験結果を図7に示す。これまで、AM6545およびSR141716Aは、それぞれニュートラルアンタゴニストおよびインバースアゴニストとして特徴付けられていた。cAMP機能アッセイの結果は、PA12R3-P1C4および36E12B6C2が、SR141716Aド同様の阻害パターンを有することを示し、PA12R3-P1C4および36E12B6C2がインバースアゴニストであることが示唆された。
実施例12.iCAPS ELISA結合アッセイ
ELISA結合アッセイを行い、CB1を発現するiCAPS(タンパク質1配列とのICL3天然配列置換を含むA138およびBRILとのICL3天然配列置換を含むA139)、5HT2Bを発現するiCAPS(h13h)、空のiCAPS、またはrBril-0918へのCB1受容体IgGまたはFab抗体ン結合を評価した。試験されたIgG分子およびFab分子は、陰性対照BRIL結合体であるP1F7 IgGおよびP1F7 Fabと比較して、36E12B6C2 IgG、36E12B6C2 Fab、PA13R3-P1C4 IgGおよびPA13R3-P1C4 Fabであった。IgG抗体の場合、結合を検出するために用いた二次抗体は、抗マウスIgG-HRPであった。Fabの場合、結合を検出するために用いた二次抗体は抗ヒトIgG-HRPであった。試験結果は、図8Aおよび8Bならびに以下の表8に示す。A138 iCAPSおよびA139 iCAPS結合の両方について、36E12B6C2 Fabは、36E12B6C2 IgGより顕著に高いC50値を示した。対照的に、PA13R3-P1C4 IgGおよびFabは、A139およびA138の両方への結合について、ほぼ等しいEC50値を示した。CB1抗体またはFabのいずれも、rBril-0918、空のiCAP、または5HT2Bを発現するiCAPSへの結合を示さなかった。対照mAb P1F7はBRILを認識し、それ故に、ICL3中にBRIL融合を含むA139への結合を示すが、BRILを欠くA138には結合しなかった。
実施例13.B1受容体の内在化の試験
CB1内在化を誘導するWIN55,212(CB1特異的アゴニスト)に対するCB1抗体の影響を、フローサイトメトリーによって調べた。5x105細胞/ウェルのCB1を安定に発現するTRex-CHO細胞を6ウェルプレートに播種した。テトラサイクリン(1μg/ml)を、24時間、培養培地に添加して、CB1発現を誘導した。試験日、細胞を2時間、血清飢餓にした。その後、細胞をCB1抗体(300nM)、AM6545(CB1ニュートラルアンタゴニスト)および陰性対照(BRIL結合体)と共に30分間プレインキュベートした。次いで、CB1アゴニスト(1μM WIN55,212)を培養培地に1時間添加し、受容体内在化を誘導した。CB1の表面発現を、R&Dからの抗CB1 N末端マウスモノクローナル抗体で染色し、平均蛍光強度(MFI)をフローサイトメトリーを用いて測定した。試験結果を図9Aに示す。CB1アゴニスト WIN55,212での処理は、対照と比較してMFIの減少を示し、CB1の内在化を示唆した(図9A、ヒストグラムの上列)。CB1特異的ニュートラルアンタゴニストAM6545での前処理は、WIN55,212により誘導されるCB1受容体内在化を阻害した(図9A、ヒストグラムの上列)。CB1抗体(300nM)の前処理は、WIN55,212により誘導されるCB1受容体内在化に影響を与えなかった(図9A、ヒストグラムの中央と下列)。
受容体内在化に対するCB1抗体の影響も調べた。血清飢餓の2時間後、300nMのCB1抗体、P2A12陰性対照(BRIL結合体)およびCB1アゴニストであるWIN55,212を培養培地に1時間添加した。細胞を回収し、抗CB1 N末端マウスモノクローナル抗体(R&D)で染色した。試験結果を図9Bに示す。ここでも、WIN55212によりCB1受容体内在化を誘導し、CB1ニュートラルアンタゴニストであるAM6545での前処置により該内在化が阻害された(図9B、ヒストグラムの上列)。CB1の表面発現は、CB1抗体によって影響を受けず、CB1抗体が受容体内在化を誘導しなかったことが示唆された(図9B、ヒストグラムの中央と下列)。
実施例14.ヒト化CB1抗体の効力
ヒト化P1C4抗体を作製し、効力、特異性および親和性について試験した。ヒト化P1C4抗体を作製するために、ヒトフレームワークを、P1C4とヒト生殖系列VHおよびVK遺伝子との相同性に基づいて選択した。選択されたフレームワークは、PIC4 VHおよびVK領域と最も高い相同性を有し、PIC4によって提示されると予測されるCDR構造を支持することができるように、コンピュータモデリングに基づいて選択された。
以下のヒト化抗体を作製した:(1)P1C4-H0-IgG;(2)P1C4-H2(YE)-IgG(重鎖可変領域におけるG27YおよびT28E変異を含む);および、(3)P1C4-H4(YENG)-IgG(重鎖可変領域におけるG27Y、T28E、A60N、Q61G変異を含む)。
cAMPアッセイを、キメラPA13R3-P1C4およびヒト化PA13R3-P1C4抗体の効力を決定するために行った。cAMP機能アッセイ(Cisbio)を、白色384ウェル低容量プレート(Greiner)で行った。8,000細胞/ウェルの天然ヒトCB1を安定に発現するTRex-CHO細胞を該プレートに播種し、次いで、1μMから0μMの範囲の濃度で、リモナバン(SR141716A)、PA12R3-P1C4キメラ、PA12R3-P1C4 H0(復帰変異なし)、PA12R3-P1C4 H2(YE)、PA12R3-P1C4 H4(YENG)およびP2A12(陰性対照)と共に、室温にて10分間、インキュベートした。10分後、5μMのフォルスコリン(Sigma Aldrich)を刺激混合物に添加し、室温にて30分間インキュベートした。cAMP産生を定量するために、5μLのcAMP-d2および5μLの抗cAMPクリプテートを添加し、1時間インキュベートした。FRETシグナルを、620nMでの抗cAMPクリプテート励起および665nMでの放出の際に、EnVisionマルチラベルプレートリーダー(Perkin Elmer)を用いて検出した。データ分析をGraphPad Prismソフトウェアを用いて行った。
試験結果を図10および以下の表9に示す。cAMP機能アッセイは、ヒト化P1C4-H2およびP1C4-H4が、それぞれ21nMおよび17nMのIC50を有したことを示した。従って、試験した抗体のうち、ヒト化抗体H1C4-H2およびPIC4-H4は、cAMPの阻害により測定される通り、対応するキメラ抗体よりもさらに大きな効力を示した。
ヒト化P1C4抗体の結合親和性、交差反応性および特異性を、フローサイトメトリーによりTRex CHO親細胞、TRex CHO A56 CB1過剰発現細胞(T210A/融合パートナー)、天然のヒトCB1 TRex CHO A156細胞、Trex親(CB1なし)細胞、マウスCB1細胞およびヒトCB2安定化細胞を用いて決定した。100μLの1x10
6細胞/mlの細胞を、300nMから0.5nMまでの3倍連続希釈液の、PA13R3-P1C4 キメラ、ヒト化P1C4-H0(変異なし)、P1C4-H2(YE)、P1C4-H4(YENG)またはP2A12(対照)IgGと共に、氷上で30分間インキュベートした。200μLのFACS緩衝液で2回洗浄後、細胞を、PE結合抗ヒト二次抗体(Southern Biotech)と共に氷上で30分間インキュベートした。細胞を200μLのFACS緩衝液で2回洗浄し、BDファルコン5mlチューブに移し、フローサイトメトリー(BD FACScalibur)により分析した。
試験結果を図11および上記の表10に示す。ヒト化CB1抗体はA56細胞およびA156細胞に結合した。ヒト化抗体P1C4-H2およびPIC4-H4は両方とも、キメラP1C4抗体と比較してより高い親和性で、TRex CHO A56 CB1過剰発現細胞ならびに天然ヒトCB1 A156細胞に結合した(図11A)。また、試験した抗体はいずれも、マウスCB1またはヒトCB2との交差反応性を示さなかった(図11B)。
実施例15.低下したエフェクター機能のCB1抗体
低下したエフェクター機能を示すように設計されたCB1アンタゴニスト抗体を構築し、試験した。次のFc改変の1つまたはそれ以上を有するCB1アンタゴニスト抗体を作製した:(1)位置228でのセリンからプロリンへの変異(S228P)を有するIgG4定常領域;(2)位置330でのアラニンからセリンへの変異(A330S)および位置331でのプロリンからセリンへの変異(P331S)を有するIgG2定常領域;ならびに、(3)IgG2/IgG4ハイブリッド定常領域。
フレームワーク領域における0、2または4個の復帰変異を有する得られたヒト化CB1抗体を、配列番号343-351として提供する。該抗体を、Fcγ受容体および補体C1qへの結合の程度についてELISAにより試験した。得られたCB1抗体を、インビトロにおいて、初代ヒト免疫細胞を活性化する能力についても試験した。具体的には、1つまたはそれ以上のFc改変を有するCB1抗体を、免疫細胞の活性化について、例えば、その架橋能力または活性化マーカーの発現を誘導する抗体の能力を評価することにより、試験した。試験結果は、CB1アンタゴニスト抗体が、定常領域の改変を含まない対応するCB1アンタゴニスト抗体と比較して、低下したFcγR結合および/または低下したC1q結合および/または低下した免疫細胞活性化を有することを示す。
実施例16.生体内分布の試験
試験を、マウスにおいてインビボで、CB1抗体P4B5の生体内分布を決定するために行った。抗体P4B5をVivotag 680 XL(Perkin Elmer)で標識し、無毛マウス(群当たりn=4)に5mg/kgまたは25mg/kgの標識した抗体を静脈内(IV)注射した。全身のイメージングを、以下の時点で、蛍光媒介断層撮影(FMT)を用いて行い、種々の組織の蛍光を測定した:0時間(0h)、1h、5h、24h、48h、72h、96hおよび144h。標識したP4B5は、図12に示す通り、標識していないP4B5と比較して、CB1細胞に対して同様の結合親和性を示した。標識していないP4B5についてのEC50は60.5nMであり、Vivotag 680 XLで標識したP4B5についてのEC50は57.8nMであった。
試験結果を図13Aおよび13Bに示す。標識した抗体を、図13A.1およびA.2に示す通り、時間経過に亘って検出し、それは、より高い抗体用量(25mg/kg)を受容した代表的なマウスからのデータを提供する。しかしながら、血液からのバックグラウンドシグナルを差し引いたとき、抗CB1抗体は脳内で検出されず(図13B)、抗体が、IV注射後、血液脳関門を通過しなかったことが示唆された。
実施例17.PA13R3-P1C4ヒト化変異体についてのIgGの発現および分析
異なるヒトIgGサブクラスのうち、IgG2およびIgG4サブクラスのFc領域は、FcγRまたは補体1q(C1q)を活性化するようなエフェクター分子にほとんど結合せず、結果として、低いエフェクター機能活性となる。免疫エフェクター機能の活性化を最小限にするために、ヒト化リード抗体シリーズのP1C4-H2およびP1C4-H4を、さらなる特徴付けのために、3つのヒトFcフレームワーク変異体、IgG2、IgG4およびIgG2とIgG4とのハイブリッドにクローニングした。
ヒト化P1C4-H2の重鎖の可変領域(配列番号340)、ヒト化P1C4-H4の重鎖の可変領域(配列番号341)およびヒト化P1C4の軽鎖(配列番号338)を下の表11に示す。太字の残基は復帰変異であり、下線の残基はCDR領域を示す。異なるIgGファミリーにおけるFc変異体を作製するために、3つの重鎖定常領域配列を用いた。IgG2重鎖定常領域(配列番号433)、IgG4重鎖定常領域(配列番号434)、ハイブリッドIgG2/4重鎖定常領域(配列番号435)の配列を下の表11に示す。
抗体変異体を、異なる日に異なるバッチで293FreeStyle、CHO-SおよびCHO-K1細胞中で発現させ、精製した。
293FreeStyle発現について、重鎖および軽鎖配列をコードする個々のpTT5プラスミドを、完全IgG抗体の発現のためにFreeStyle HEK293F細胞中に同時トランスフェクトした。細胞を、37℃、5%CO2にて、FreeStyle 293発現培地中で培養した。トランスフェクションの24時間前に、細胞を8x105細胞/mLの密度に希釈した。トランスフェクション溶液を調製するために、80μgのDNA(40μg軽鎖+40μg重鎖)および240μgのポリエチレンイミン(PEI)を、8mLのFreestyle 293F培地に希釈し、十分に混合し、そして0.2μmのシリンジトップフィルターに通して50mLコニカルチューブ中に濾過し、次いで、22℃にて15分間インキュベートした。8mLのトランスフェクション溶液を80mLの293F細胞培養物(FreeStyle 293発現培地中に1.1-1.3x106細胞/mLの密度に希釈)にゆっくり添加し、それを、130rpmで回転しながら4日間、37℃、5%CO2にて、インキュベートした。トランスフェクトされた細胞培養物から上清を、4℃にて、4000rpmで45分遠心することにより回収し、0.1M NaOHでpH8.0に調整し、そしてタンパク質精製まで氷上に保持した。
CHO-S発現について、重鎖および軽鎖配列をコードする個々のpTT5プラスミドを、完全IgG抗体の発現のためにCHO-S細胞中に同時トランスフェクトした。細胞を、37℃、5%CO2にて、CD-CHO培地中で培養した。トランスフェクションの24時間前に、細胞をCD-CHO培地中0.6-0.7x106細胞/mL8x105細胞/mLの密度に希釈した。トランスフェクションの日に、細胞を、250mL振盪フラスコ中、CD-CHO培地中、1.1-1.3x106細胞/mLの密度まで希釈した。各250mL振盪フラスコに、8mLの細胞を添加した。80μgのプラスミドDNA(40μg軽鎖+40μg重鎖)を、最終容量4mLのCD-CHO培地に希釈し、0.2μmのシリンジトップフィルターに通して50mLコニカルチューブ中に濾過した。別個の50mLコニカルチューブにおいて、80μLのFreeStyle Max試薬を最終容量4mLのCD-CHO培地に希釈した。これらの2つの混合物を22℃にて3分間インキュベートし、その後、それらを合わせ、混合し、さらに15分間、22℃にてインキュベートした。8mLのDNA/トランスフェクション試薬混合物を、250mLフラスコ中の80mLの細胞培養物にゆっくり添加した。これを、~1.0x106細胞/mLの最終細胞密度にした。その後、培養フラスコを、133rpmで回転しながら6日間、37℃、5%CO2にて、オービタル振盪プラットフォーム上でインキュベートした。培養上清を、4℃にて、4000rpmで45分間遠心(Allegra X-15R、Beckman)することにより回収し、0.1M NaOHでpH8.0に調整し、そしてタンパク質精製まで氷上に保持した。
293FreeStyleおよびCHO-SからのIgG精製を、以下の通りに行った:上清をタンパク質Aカラム(0.4mLベッドボリューム(Bed Volume))上に入れ、PBSでpH7.4に予め平衡化し、重力によって流下させた。カラムを5mLのPBS pH7.4で洗浄し、タンパク質を4mLの0.1Mクエン酸Na-HCl pH3.5で溶出した。溶離液を200μLの1.5Mトリス-HCl緩衝液pH8.8で中和し、濃縮し、アミコン30kDa 4mL濃縮器(Millipore)を製造者の指示書に従って用いてPBS pH7.4でバッファー交換し、最終容量約0.5-1mLを得た。タンパク質濃度を、280nmでの吸光度によって決定し、純度をSDS-PAGEおよびSECにより測定した。
CHO-K1におけるタンパク質発現および精製を、医薬品開発業務受託機関(CRO)でその独自の(proprietary)方法で行った。要約すると、CHO-K1細胞をトランスフェクションのために使用した。IgGをMabSelect(商標)SuRe(商標)ビーズを用いて精製し、洗浄工程でダルベッコのPBS(Lonza BE17-512Q)を用いた。IgGを0.1MグリシンpH3.5で溶出した。
タンパク質QCについて、3μgの抗体を各試験、SDS-PAGEおよびSEC分析に用いた。QC通過基準は、SDS-PAGEにおいて純度>90%であり、SECにおいて単量体ピーク>90%であった。QC試験に合格した精製したIgGタンパク質について、タンパク質を、スクリューキャップチューブに100μL/チューブ、~5mg/mL濃度で分配した。アリコートを液体窒素中で急速冷凍し、-80℃で貯蔵した。
293FreeStyleにおけるタンパク質収量は、低いmg/Lから53mg/Lの範囲であった。CHO-S細胞における収量は、約1mg/Lと低かった。CHO-K1細胞における収量は、198mg/Lから350mg/Lの範囲であった。SDS-PAGEは、非還元条件下で約150kDaで泳動する完全なタンパク質、および目に見える分解または凝集のない、重鎖および軽鎖を代表する2つのバンドが見られた。例として、293FreeStyleバッチの1つについてのSECプロファイルおよびSDS-PAGE分析を図14Aに示し、CHO-K1バッチの1つについて図14Bに示した。293FreeStyleおよびCHO-Sバッチについてのタンパク質精製データを表12にまとめる。
実施例18.PA13R3-P1C4ヒト化変異体についてのcAMP機能アッセイ
クリプテート標識した抗cAMP抗体およびd2標識したcAMPを用いる競合イムノアッセイフォーマットに基づく市販のキット(Cisbio)を使用して、CB1を安定に発現するTRex-CHO細胞において細胞内cAMPレベルの変化を測定することにより、PA13R3-P1C4ヒト化変異体抗体を特徴付けた。細胞数、フォルスコリン濃度およびCP55,940濃度を、製造者の指示書に従って最適化した。cAMPアンタゴニスト機能アッセイを白色384ウェル低容量プレート(Greiner)にて行った。ヒトCB1を発現するTRex-CHO細胞を、8000細胞/ウェルの密度で血清不含有HamのF12培地に播種し、次いで種々の濃度のmAbまたは対照化合物と共に22℃にて10分間インキュベートした。5μMのフォルスコリン(EC20にて、Sigma Aldrich)および9nMのCP55,940(EC80にて、Sigma Aldrich)を、続けて細胞に添加し、22℃にて30分間インキュベートして、それぞれがアデニリルシクラーゼ活性を増強させ、CB1シグナル伝達を活性化させた。その後、5μLのcAMP-d2(Cisbioが提供する複合体および溶解バッファーで1:39希釈)および5μLの抗cAMPクリプテート(Cisbioが提供する複合体および溶解バッファーで1:9希釈)を細胞に添加し、22℃にて1時間インキュベートした。FRETシグナルを、620nMでの抗cAMPクリプテート励起および665nMでの放出にて、Envisionマルチラベルプレートリーダー(Perkin Elmer)で検出した。データ分析をGraphPadプリズムを用いて行った。
このアッセイにおけるヒト化PA13R3-P1C4抗体の活性を、親キメラPA13R3-P1C4、リモナバン、CB1の小分子インバースアゴニストおよびP2A12 mAb、IgG1アイソタイプの非GPCR標的化mAb陰性対照抗体と比較した。PA13R3-P1C4 mAbおよびそのヒト化変異体は、用量依存的に、CP55,940により誘導される細胞内cAMPの低下を阻害するが、陰性対照であるP2A12 mAbは、何らの効果も有さなかった(図15)。PA13R3-P1C4ヒト化変異体の平均IC50±SDを表13に列記する。
ヒト化P1C4-h2およびh4変異体は、cAMPアンタゴニストアッセイにおいて、キメラPA13R3-P1C4 mAbよりも強力(1.6-3.3倍)であった(p<0.005)。P1C4-h2およびP1C4-h4ヒト化変異体は、同等の効力を有していたが、ヒト化PA13R3-P1C4変異体の異なるアイソタイプのうち、IgG2およびIgG2/4変異体に対してIgG1およびIgG4変異体でより高い効力が観察される傾向があった。
本発明者らはさらに、PA13R3-P1C4ヒト化変異体抗体アンタゴニスト作用の機序、特にかかる抗体がCB1インバースアゴニストまたはニュートラルアンタゴニストとして作用するかどうかを特徴付けた。リモナバン(SR141716A)、既知のCB1インバースアゴニストおよびAM6545、既知のCB1ニュートラルアンタゴニストを、対照化合物として用いた。
PA13R3-P1C4ヒト化変異体抗体が、インバースアゴニストまたはニュートラルアンタゴニストとして作用するかどうかを特徴付けるために、cAMPアッセイを外因性アゴニストの不存在下で行った。非特異的なアデニル酸シクラーゼアクティベーターであるフォルスコリンを、該アッセイ培地に添加し、検出の限界内に基礎cAMPレベルを上昇させた。cAMPアゴニスト機能アッセイ(Cisbio)を白色384ウェル低容量プレート(Greiner)で行った。血清不含有HamのF12培地中、8000細胞/ウェルのヒトCB1を発現するTRex-CHO細胞を該プレートに播種し、その後種々の濃度のmAbまたは対照化合物と共に、22℃にて10分間インキュベートした。5μMのフォルスコリン(Sigma Aldrich)を細胞に添加し、22℃にて30分間インキュベートした。22℃にて30分間のインキュベーション後、5μLのcAMP-d2(Cisbioが提供する複合体および溶解バッファーで1:39希釈)および5μLの抗cAMPクリプテート(Cisbioが提供する複合体および溶解バッファーで1:9希釈)を細胞に添加し、1時間インキュベートした。FRETシグナルを、620nMでの抗cAMPクリプテート励起および665nMでの放出にて、Envisionマルチラベルプレートリーダー(Perkin Elmer)で検出した。データ分析をGraphPadプリズムを用いて行った。
本発明者らは、1.5μMのフォルスコリンで刺激したTRex-CHO CB1細胞(図16A)ならびに5μMのフォルスコリンで刺激したTRex-CHO CB1細胞(図16B)において、ヒト化変異体P1C4-h2-IgG2およびP1C4-h2-IgG4と、リモナバン、AM6545およびP2A12-IgG1陰性対照抗体との活性を比較した。結果は、P1C4-h2-IgG1、P1C4-h2-IgG2、P1C4-h2-IgG4およびリモナバンがcAMPレベルを用量依存的に増加させ、それらはインバースアゴニスト機序を示していた。これに対して、CB1ニュートラルアンタゴニストであるAM6545およびP2A12-IgG1陰性対照抗体は、cAMPレベルに影響を及ぼさなかった。
シルドプロット分析を行い、用いたアゴニストの性質および濃度とは関係のない、その受容体に対するアンタゴニストの結合親和性の尺度である、平衡解離定数(KB)を決定した。cAMP HTRFアンタゴニストアッセイにおける、CB1アゴニストであるCP55,940およびWIN55,212の用量応答曲線は、種々の濃度のP1C4-h2-IgG4の存在下で決定された。
図17A-Dは、cAMPアッセイにより、CP55,940およびWIN55,212により誘導されるCB1活性に対する、P1C4-h2-IgG4濃度の増加の効果を示す(それぞれ)。用量比(R)は、CB1アゴニスト(CP55,940またはWIN55,212)の濃度を、P1C4-h2-IgG4不存在下で得られるのと同じ反応をその存在下で得るために増加する必要があることによる、CP55,940またはWIN55,212のEC50に基づいて計算された。以下の表14および15は、4つの異なる試験から測定されたシルトスロープ(Schild slope)および平衡解離定数(K
B)を示す。
実施例19.PA13R3-P1C4ヒト化変異体についてのERK活性化アッセイ
本発明者らは、親抗体PA13R3-P1C4が、WIN55,212により誘導されるERK活性化を阻害することを実施例10および図5Aに示した。PA13R3-P1C4ヒト化変異体もまたWIN55,212により誘導されたERK活性化を阻害することを確認するために、本発明者らは、これらの抗体のWIN55,212により誘導されたERKリン酸化を阻害する能力を試験した。
試験の2日前、Trex-CHO CB1受容体を発現する細胞を、6ウェルプレートに500,000細胞/ウェルで播種した。1μg/mLのテトラサイクリンを用いて、23時間後にCB1受容体発現を誘導した。細胞を、試験の少なくとも2時間前に血清飢餓状態にした。300nMの精製したIgGを培養培地に添加し、30分後、細胞をCB1受容体アゴニストであるWIN55,212(100nM)で10分間および15分間刺激した。細胞溶解物を回収し、ERK活性化レベルをウェスタンブロットにより決定した。抗ERK抗体および抗リン酸特異的ERK抗体をCell Signaling Inc.から入手した。
図18Aに示す通り、CB1アゴニストであるWIN55,212での処理は、リン酸化ERKレベルを増加させ、CB1受容体がERK経路を経てシグナル伝達することが示唆された。CB1特異的アンタゴニストであるリモナバンでの前処理は、WIN55,212により誘導されるERK活性化を阻害した。リモナバンと同様に、抗CB1抗体P1C4-h2-IgG1およびP1C4-h4-IgG1での前処理は、WIN55,212により誘導されるERK活性化を阻害した(図18A)。P1C4-h0-IgG1は、WIN55,212により誘導されるERK活性化を阻害しなかった。このことは、P1C4-h0-IgG1が、他のヒト化P1C4変異体よりも効力が低いことを示す、cAMPアンタゴニストアッセイと一致し、WIN55,212により誘導されたERK活性化を阻害する効果がないとの仮説が成り立つ。
WIN55,212により活性化されたERK経路へのIgG2およびIgG4フレームワークにおけるP1C4-h2の効果も調べた。キメラPA13R3-P1C4およびヒト化P1C4-h2-IgG1と同様に、CB1抗体であるP1C4-h2-IgG2およびP1C4-h2-IgG4での前処理は、WIN55,212により誘導されるERKリン酸化を阻害した(図18B)。GPCRを標的化しないmAbであるP2A12は、WIN55,212により誘導されるERK活性化を阻害しなかった。これらの結果は、これらのFcフレームワークがPA13R3-P1C4のアンタゴニスト特性に影響を与えないことを示している。
実施例20.PA13R3-P1C4ヒト化変異体についてのCB1受容体内在化の試験
フローサイトメトリーを用いて、アゴニストまたはアンタゴニスト化合物の存在下または不存在下での、CB1受容体内在化アッセイにおいて、PA13R3-P1C4およびヒト化変異体抗体の活性を特徴付けた。
試験の日、細胞を2時間血清飢餓状態にした。その後、細胞をCB1抗体(300nM)、AM6545(CB1ニュートラルアンタゴニスト)および陰性対照(BRIL結合体)と共に30分間前処理した。次いで、CB1アゴニスト(1μMのWIN55,212)を培養培地に1時間添加し、受容体内在化を誘導した。CB1の表面発現を、R&Dから入手した抗CB1 N末端マウスモノクローナル抗体を用いて染色し、平均蛍光強度(MFI)をフローサイトメトリー(Guava)を用いて決定した。
TRex-293細胞におけるCB1発現は、CB1 N末端を標的とするマウスモノクローナル抗体を用いる表面染色の増加によって明らかなように、テトラサイクリンにより誘導された(図19A、パネルA、点線)。テトラサイクリンおよびCB1アゴニストであるWIN55,212での処理は、表面染色を減らし、内在化を介して細胞表面上のCB1の喪失を示した(図19A、パネルA、破線)。CB1特異的アンタゴニストであるリモナバンでの前処理(図19A、パネルB、黒一色線)は、細胞表面のCB1染色におけるアゴニストにより誘導される減少を阻害した。リモナバンと同様に、抗CB1抗体(PA13R3-P1C4(図19A、パネルD、黒一色線)、P1C4-h2-IgG1(図19A、パネルF、黒一色線)およびP1C4-h4-IgG1(図19A、パネルG、黒一色線))での前処理は、WIN55,212により誘導されるCB1受容体内在化を阻害した。P1C4-h0-IgG1(図19A、パネルE、黒一色線)および陰性対照抗体であるP2A12-IgG1(図19A、パネルC、黒一色線)は、WIN55,212により誘導されるCB1内在化を阻害しなかった。cAMPアンタゴニストおよびERK活性化アッセイと一致して、P1C4-h0-IgG1は、他のヒト化P1C4変異体よりも効力が低く、WIN55,212により誘導される受容体内在化を阻害する効果の欠如は、P1C4-h0-IgG1の高いオフレート(off-rate)のためであり得る。
異なるヒトIgGサブクラスのうち、IgG2およびIgG4サブクラスのFc領域は、FcγRおよび補体1q(C1q)を活性化するようなエフェクター分子に弱く結合し、結果として、より低いエフェクター機能の活性をもたらす。例えば、P1C4-h2は、免疫エフェクター機能の活性化が望ましくない、本発明者らの治療適用として、ヒトFcフレームワークIgG2およびIgG4中にクローニングされた(実施例17に記載)。その後、ヒト化変異体P1C4-h2-IgG1、P1C4-h4-IgG1、P1C4-h2-IgG2およびP1C4-h2-IgG4を、CB1受容体内在化の阻害についてアッセイした。上記のとおり、TRex-293細胞におけるCB1発現は、CB1 N末端を標的とするマウスモノクローナル抗体を用いる表面染色の増加によって明らかとなるように、テトラサイクリンにより誘導された(図19B、パネルA、点線)。テトラサイクリンおよびCB1アゴニストであるWIN55,212での処理は、表面染色を減らし、内在化を介して細胞表面上のCB1の喪失を示した(図19B、パネルA、破線)。CB1特異的アンタゴニストであるリモナバンでの前処理(図19B、パネルB、黒一色線)は、細胞表面のCB1染色におけるアゴニストにより誘導される減少を阻害した。リモナバンと同様に、抗CB1抗体(PA13R3-P1C4(図19B、パネルD、黒一色線)、P1C4-h2-IgG1(図19B、パネルF、黒一色線)およびP1C4-h4-IgG1(図19B、パネルG、黒一色線))での前処理は、WIN55,212により誘導されるCB1受容体内在化を阻害した。P1C4-h0-IgG1(図19B、パネルE、黒一色線)および陰性対照抗体であるP2A12-IgG1(図19B、パネルC、黒一色線)は、WIN55,212により誘導されるCB1内在化を阻害しなかった。
実施例21.フローサイトメトリーによる、ヒト化PA13R3-P1C4抗体変異体の結合
PA13R3-P1C4ヒト化変異体の結合親和性を、CB1を安定にトランスフェクトしたTRex CHO細胞を用いてフローサイトメトリーにより決定した。テトラサイクリンを誘導可能なヒトCB1、ヒトCB2またはマウスCB1発現構築物を安定にトランスフェクトしたTRex CHO親細胞およびTRex-CHO細胞を回収した。試験抗体の結合を決定するために、100μLの1x10
6細胞/mLの細胞を、1μMから1.3nMの濃度範囲の試験抗体と共に氷上で30分間インキュベートした。その後、細胞を、4℃にて、1600rpmで3分間遠心した。上清を吸引し、細胞を200μLのFACS緩衝液で洗浄した。洗浄手段を2回繰り返した。最後の洗浄後、細胞を、PE結合抗ヒトFc二次抗体(1:200希釈)を含むFACS緩衝液に再懸濁し、4℃で30分間インキュベートした。細胞を200μLのFACS緩衝液で2回洗浄し、フローサイトメトリー(Guava)により分析した。データ分析および結合親和性(K
D)の測定を、GraphPad Prismソフトウェアを用いて行った。PA13R3-P1C4ヒト化変異体の平均解離定数(K
D)を、タンパク質の少なくとも2つの異なるバッチを用いて、少なくとも4つの異なる試験を平均することにより、決定した(図20A-Dおよび表16)。
h2-IgG2、h2-IgG2/4およびh4-IgG2/4を除くヒト化変異体は、親キメラ抗体PA13R3-P1C4と比較してヒトCB1に対する統計的に有意に増加した結合親和性を示した。それぞれの種の平均解離定数を、少なくとも2つの異なるタンパク質調製物(唯一のタンパク質調製物を有するP1C4-h2-IgG1を除く)を用いて決定した。それぞれの種解離定数は、異なるタンパク質調製物間で同等であった(表16)。P1C4-h2およびP1C4-h4変異体の結合親和性は、類似していた。しかしながら、IgG2、IgG4およびIgG2/4変異体と比べて、IgG1変異体のより高い結合親和性が、統計的に有意ではないが、わずかな傾向で観察された。
P1C4-h0-IgG1は、測定された最低の見かけの解離定数(KD24nM)を有する。しかしながら、P1C4-h0-IgG1の最大FACSシグナル(平均蛍光強度)は、他のP1C4変異体ほど高くならなかった。このことは、P1C4-h0-IgG1のより高いオフレートを示し得る。
PA13R3-P1C4の結合選択性および交差反応性ならびにそのヒト化変異体もまた、目的のGPCRを安定にトランスフェクトしたTRex CHO細胞を用いてフローサイトメトリーにより特徴付けた。具体的には、CB2を超えるCB1の結合選択性が決定された。マウスCB1に対する交差反応性も決定された。マウスCB1の発現を決定するために、100μLの1x106細胞/mLの細胞を、1μg/100μLの抗CB1ウサギポリクローナル抗体(Santa Cruz)と共に、氷上で30分間インキュベートした。R&D Systemsから入手したマウスモノクローナル抗CB2抗体を用いて、CB2の発現を確認した。100μLの1x106細胞/mLの細胞を、0.5μg/100μLの抗CB2抗体と共に、氷上で30分間インキュベートした。インキュベーション後、細胞を4℃にて1600rpmで3分間遠心した。上清を吸引し、細胞を200μLのFACS緩衝液で洗浄した。この手順を2回繰り返した。最後の洗浄後、細胞を、マウスCB1検出のためのFITC結合抗ウサギ二次抗体(1:200希釈)およびCB2発現のためのPE結合抗マウスIgG二次抗体(1:200希釈)を含むFACS緩衝液に再懸濁し、4℃にて30分間インキュベートした。30分間、二次抗体と共にインキュベーション後、細胞を4℃にて1600rpmで3分間遠心した。上清を吸引し、過剰量の二次抗体を除いた。細胞を200μLのFACS緩衝液で2回洗浄し、フローサイトメトリー(Guava)により分析した。1μMから1.3nMの完全な濃度曲線の範囲の精製したIgGの結合を決定した。データ分析及び結合親和性(KD)の測定を、GraphPad Prismソフトウェアを用いて行った。
of ヒト化PA13R3-P1C4変異体の、ヒトCB2およびマウスCB1よりもヒトCB1に対する結合選択性および交差反応性を、図20E-Mに示す。PA13R3-P1C4と同様に、ヒト化変異体は、ヒトCB2よりもヒトCB1に選択的に結合した。マウスCB1への実質的な結合は、1μMまでの濃度で観察され、細胞外ドメインにおけるヒトおよびマウスCB1間の高いアミノ酸同一性(97%の同一性)にもかかわらず、この種との交差反応性の欠如が示唆された。
実施例22.ELC2の交換(swapping)はFACS結合へ作用する
細胞表面に発現されるCB1へのP1C4の結合能力に対するECL2変異の効果を試験するために、本発明者らは、 部位特異的変異誘発によってCB1細胞発現構築物を構築した。該して、2つのオリゴ、Apollo_ECL2_h2m_F(CTGCAATCTGTTTGCTCAGACATTTTCCCACTCATTGATGAAACCTACCT)(配列番号826)およびApollo_ECL2_h2m_R(GGAAAATGTCTGAGCAAACAGATTGCAGTTTCTTGCAGTTCCAGCCCAGG)(配列番号827)をPCR反応のプライマーとして用い、テンプレートとしてpcDNA4TO-ヒトCB1を用いた。ECL2にE→KおよびH→L変異を導入する反応により、マウスCB1 ECL2と同一のヒトCB1 ECL2配列を作製した。50μLのPCR反応混合物は、10μLの5×PCR緩衝液、2μLのdNTP(各10mM)、0.25μLの各フォワードおよびリバースプライマー(100μMストック)、50ngのテンプレートDNA、1μLのDMSOおよび1μLのPhusionポリメラーゼ(NEB)を含んだ。PCRサイクルは、95℃にて30秒、55℃にて1分、72℃にて7分であって、これを16回繰り返す。PCR反応の完了後、1μLのDpnI(20U/μL)をPCR産物に添加した。PCR産物を37℃にて1時間インキュベートし、その後、その1μLをDh5α 大腸菌に形質転換した。得られた形質転換体を播種し、単一コロニーを、変異を確認するために配列決定した。得られた構築物を、pcDNA4TO-ヒト/マウスECL2交換CB1-IRES-GFPと名付けた。
ECL2におけるE→KおよびH→L部位がPA13R3-P1C4 CB1結合に重要であることを確認するために、ヒトCB1、マウスCB1またはヒト/マウスECL2交換発現構築物で一過性にトランスフェクトしたTRex-CHO細胞を用いて、フローサイトメトリーによりP1C4-h4-IgG1の結合を調べた。
TRex-CHO細胞を、10%ウシ胎仔血清、1%ペニシリンおよびストレプトマイシンならびに10μg/mlのブラストサイジンを添加したHamのF12培養培地中で増殖させた。トランスフェクションの前日、細胞を継代し、6ウェルプレートにおいて、1ウェル当たり2mlの培養培地に0.5x106細胞で播種した。トランスフェクションの日、細胞を、Life Technologiesの指示に従って、リポフェクタミン2000を用いて、pcDNA4TO-ヒトCB1、pcDNA4TO-マウスCB1-IRES-GFP、pcDNA4TO-ヒト/マウスECL2l交換CB1-IRES-GFPまたはpcDNA4TO-GFP陰性対照でトランスフェクトした。トランスフェクションの1日後、細胞を1μg/mlのテトラサイクリンで24時間処理して、CB1発現を誘導した。試験日に、培地を吸引した。細胞をDPBSで1回洗浄し、細胞解離緩衝液と共に5分間インキュベートした。細胞を回収し、1600rpmで3分間遠心した。上清を吸引し、細胞をDPBSで洗浄した。細胞数をBio-Rad T10細胞カウンターを用いて決定した。細胞を1600rpmで3分間遠心した。上清を吸引してDPBSを除去し、1x106細胞/mLでFACS緩衝液(DPBS中、3%FBS、0.09%アジ化ナトリウム)に再懸濁した。PA13R3-P1C4 mAbのヒトCB1への結合を決定するために、マウスCB1、ヒト/マウスECL2交換CB1および対照細胞、100μLの1x106細胞/mLの細胞を、P1C4-h4-IgG1、R&D CB1 mAbまたはP2A12と共に氷上で30分間インキュベートした。二次PE結合抗ヒトmAbまたはPE結合抗マウスmAbを、FACS緩衝液で1:200倍に希釈した。二次抗体でのみ染色された細胞を陰性対照として用いた。二次抗体と共にインキュベーション後、細胞を200μLのFACS緩衝液で2回洗浄し、フローサイトメトリー(Guava)で分析した。
図21に示す通り、P1C4-h4-IgG1はヒトCB1に結合するが、マウスCB1またはヒト/マウスECL2交換CB1には結合しなかった。ヒトCB1とヒト/マウスECL2交換CB1との唯一の違いは、ECL2の残基E→KおよびH→Lである。フローサイトメトリー結合結果は、ECL2がP1C4結合に重要であることを示唆した。R&D CB1モノクローナル抗体を、CB1の発現を示す陽性対照として用いた。P2A12およびpcDNA4TO-GFPを、それぞれ染色対照および空のベクター対照として使用した。
実施例23.ADCCおよびCDCエフェクター機能分析
ヒト化P1C4変異体P1C4-h2-IgG2およびP1C4-h2-IgG4のエフェクター機能の推定される不存在を確認するために、抗体依存性細胞細胞傷害(ADCC)アッセイおよび補体依存性細胞傷害(CDC)アッセイをDaudi細胞を用いて行った。
ADCCアッセイについて、Daudi標的細胞濃度を、ADCC培地で12.5×10
4細胞/mLに調整した。80μLの細胞懸濁液(1×10
4生細胞)を丸底96ウェルプレートの各ウェルに添加した。ADCC培地で連続希釈した20μLの抗体を、三連で各ウェルに分注した。リツキシマブおよび抗hel-hIgG1の終濃度は、0.128ng/mL、0.64ng/mL、3.2ng/mL、16ng/mL、80ng/mL、0.4μg/mL、2μg/mLであった。抗hel-hIgG2、抗hel-hIgG4、P1C4-h2-IgG2およびP1C4-h2-IgG4の終濃度は、3.2ng/mL、16ng/mL、80ng/mL、0.4μg/mL、2μg/mL、10μg/mL、50μg/mLであった。プレートを22-25℃にて30分間インキュベートした。PBMC濃度をADCC培地で調整し、それにより100μLのPBMC細胞を標的細胞に添加することになり、エフェクター:標的細胞比はそれぞれ25:1および50:1であった。プレートを250xgで4分間遠心し、その後、37℃でインキュベートした。上清を回収する45分前に、CytoTox96キット(Promega)からの20μLの溶解溶液を、最大溶解対照ウェルに添加した。インキュベーションの5時間後、プレートを250xgで4分間遠心した。各ウェルから50μLの上清を新しい平底96ウェルアッセイプレートに移した。CytoTox 96キット(Promega)からの50μLの基質を各ウェルに添加し、30秒間混合した。プレートを室温にて30分間インキュベートし、その後、50μLの停止溶液を各ウェルに添加し、30秒間混合した。吸光度を490nMで読み取った。データ分析のために、%溶解は、GraphPad Prism5.0を用いて以下のように計算され、IC
50値を求めた:
リツキシマブは、50:1のE/T比で1.19ng/mLのIC50、25:1のE/T比で0.92ng/mLのIC50で、Daudi細胞にADCC効作用を誘導した。図22A-Cに示す通り、P1C4 Fc変異体抗体は、50:1および25:1のE/T比でDaudi細胞にADCC効作用を有しなかった。
CDCアッセイについて、Daudi標的細胞を回収し、細胞濃度を、細胞培養培地で80×10
4細胞/mLに調整した。平底96ウェル白色プレートに、25μL/ウェルの細胞を添加した。その後、ADCC培地で連続希釈した、12.5μL/ウェルのP1C4、リツキシマブ、抗HEL-hIgG1および抗HEL-hIgG2を各ウェルに二連で添加した。リツキシマブおよび抗hel-hIgG1の終濃度は、0.128ng/mL、0.64ng/mL、3.2ng/mL、16ng/mL、80ng/mL、0.4μg/mL、2μg/mLであった。抗hel-hIgG2、抗hel-hIgG4、P1C4-H2-IgG2およびP1C4-H2-IgG4の終濃度は、3.2ng/mL、16ng/mL、80ng/mL、0.4μg/mL、2μg/mL、10μg/mL、50μg/mLであった。プレートを15分間インキュベートした。ADCC培地で希釈したヒト補体を、10%の終濃度に達するように12.5μL/ウェルで細胞を含むプレートに添加した。最大溶解ウェルについて、5μLの溶解溶液を添加した。全てのウェルの最終容量を、ADCC培地で50μLに合わせた。プレートを37℃にて2時間インキュベートし、その後、50μL/ウェルのCTG溶液を細胞に添加した。プレートを、200の速度で2分間、マイクロプレートシェーカー上で振盪し、次いで、室温で10分間インキュベートした。発光シグナルはEnvisionを用いて赤であった。データ分析のために、%細胞傷害性およびIC
50をGraphPad Prism 5.0を用いて以下のように計算した。
抗体のCDC作用をDaudi細胞で試験し、PBMCによるDaudiの細胞溶解を、CellTiter-Gloアッセイにより実行し、補体の終濃度は10%であった。リツキシマブは、399ng/mLのIC50でDaudi細胞においてCDC作用を誘導した。図22Dに示す通り、P1C4 Fc変異体抗体は、Daudi細胞においてCDC作用を有さなかった。
実施例24.P1C4抗体による変性CB1タンパク質の認識
試験を、PA13R3-P1C4およびそのヒト化変異体抗体が、ウェスタンブロット分析により変性したCB1タンパク質(Hisタグを付した、N/C末端切断型CB1)上のエピトープ(複数可)を認識するかどうかを調べるために、行った。精製したヒトCB1タンパク質(レーンあたり750ng)を、ベータ-メルカプトエタノール(二重らせん)を含むSDS還元バッファーと混合した。変性したCB1組換えタンパク質を、12%還元SDS-PAGEゲル上にローディングし、タンパク質を120Vで1時間分離させ、その後、PVDF膜(メタノールに予め浸した)に300mAで70分間、電気的に転写した。膜を、22℃にて、5%NFDM/PBS-Tで1時間ブロッキングし、次いで、5%NFDM/PBS-T中で、4℃にて一晩、試験抗体(2μg/mL)で免疫ブロッティングした。市販のマウス抗His抗体およびマウス抗CB1抗体(R&D Systems)を陽性対照として用いて、本試験で使用する組換えCB1タンパク質からのぞかれたC末端領域を認識するウサギ抗CB1抗体(Cayman)を陰性対照として用いた。
一晩インキュベーション後、膜を、22℃にて、0.5%Tween-20PBS(PBS-T)で3回洗浄した。5%NFDM/PBS-T中、二次抗体AP結合抗ヒトIgG(1:5000)または抗マウスIgGまたは抗ウサギIgGをそれぞれの膜に添加し、22℃にて1時間インキュベートした。膜を、各5分間、PBS-Tで3回洗浄した。最後の洗浄後、シグナルを、NBT/BCIP基質溶液と共に22℃にてインキュベートすることにより発色させ、流水下で膜を洗浄することによって反応を停止させた。
ウェスタンブロットの結果は、陽性対照抗体が、63kDaの正確な見かけの分子量を有する変性したCB1タンパク質を検出することができたことを示した(図23B、レーン9および10)。陰性対照C末端特異的抗体(図23B、レーン11)、PA13R3-P1C4(図23A、Lレーン2)またはヒト化変異体抗体(図23A、レーン3から6)によってはバンドは検出されなかった。試験に用いた抗ヒトFc二次抗体は、精製したヒトIgGを検出することができた(図23A、レーン1)。これらの結果は、PA13R3-P1C4およびヒト化変異体抗体が、変性し、線形化したCB1タンパク質を認識できなかったことを示す。フローサイトメトリー試験を加えて、これらの結果は、PA13R3-P1C4およびヒト化変異体抗体がエピトープの立体構造を認識するが、線形エピトープを認識しないことを確認する。
実施例25.キメラおよびヒト化P1C4 Fab cAMPおよびFACS結合
PA13R3-P1C4 Fab結合親和性を決定するため、完全な結合曲線を、フローサイトメトリーによってテトラサイクリンで誘導されるCB1発現構築物を安定にトランスフェクトしたTRex-CHO細胞を用いて、ある範囲の濃度で試験することによりCB1受容体に対して作成した。3μMから0.1μMの3倍連続希釈液を調製した。FITC結合抗ヒト抗体を用いて、PA13R3-P1C4 Fabを検出した。PA13R3-P1C4 Fabは、TRex-CHO CB1細胞に用量依存的に結合した(図24Aおよび表17)。
cAMP機能アッセイを行い、P1C4 Fabのアンタゴニスト作用を測定した。cAMP機能アッセイ(Cisbio)を白色384ウェル低容量プレート(Greiner)で行った。8000細胞/ウェルのCB1を安定に発現するTRex CHO細胞を該プレートに播種し、次いで種々の濃度のP1C4 Fabと共に室温にて10分間インキュベートした。5μMのフォルスコリン(Sigma Aldrich)および9nMのカンナビノイドCP55940(Sigma Aldrich)を細胞刺激混合物に添加し、室温にて30分間インキュベートしてCB1を活性化させた。30分間インキュベーション後、5μLのcAMP-d2(Cisbioが提供する複合体および溶解バッファーで1:39希釈)および5μLの抗cAMPクリプテート(Cisbioが提供する複合体および溶解バッファーで1:9希釈)を細胞刺激物に添加し、1時間インキュベートした。FRETシグナルを、620nMでの抗cAMPクリプテート励起および665nMでの放出にて、Envisionマルチラベルプレートリーダー(Perkin Elmer)を用いて検出した。データ分析を、GraphPad Prismを用いて行った。結果を、図24Bおよび表17に示す。示されるIC
50および解離定数(Kd)の平均±SDは、少なくとも2つの異なる試験から測定された。
実施例26.P1C4 ヒト化変異体の生物物理特性評価
本発明者らは、低および高pH下での安定性を測定し、最大溶解度をテストするための試験を行うことにより、PA13R3-P1C4ヒト化Fc変異体の安定性および溶解性を特徴付けた。本発明者らはまた、複数回の凍結/解凍サイクルおよびpHシフトの条件下後に、ヒトおよび非ヒト霊長動物血清中、加速条件下でこれらの分子の安定性を特徴づけた。
P1C4ヒト化変異体のpH安定性を特徴付けるために、200μLの各抗体(~5mg/mL)およびPBS対照を調製し、Pur-A-Lyzer Maxi 12000透析カセット(Sigma、カタログ番号PURX12015-1KT)に導入した。タンパク質を、それぞれ2LのpH3の緩衝液(NaOHによりpH3に調整した0.1M酢酸)またはpH9の緩衝液(NaOHによりpH9に調整した0.2Mグリシン)に対して4℃で一晩透析した。事前に計量した空のエッペンドルフチューブに、透析カセットからタンパク質サンプルを回収し、可視沈殿を調べた。サンプル容量は重量で測定した。透析の成功を確認するために、3μLの透析したサンプルを取り出し、pH試験紙により確認した。50μLのサンプルをSEC分析のために取り出した。残りのサンプルを40℃のインキュベーター中で48時間維持した。その後、サンプルを再度、可視沈殿について調べた。6μLの48時間インキュベートしたサンプルをTSK G3000SWXL SECカラムに入れ、タンパク質濃度をSECピーク面積によって計算した(40℃でインキュベーション後)。タンパク質の回収率を決定するために、以下の式を用いた。透析前(容量x濃度)/透析後(容量x濃度)x100%。
pH3およびpH9の緩衝液に対して透析し、その後、40℃にて48時間インキュベーション後、4つのIgGの沈殿は観察されなかった。4つすべてのIgGについて、回収率は約71-83%であった。低い回収率は、透析カセットにサンプルが残っている可能性が高かった。SECプロファイルによって計算された単量体IgGは、全ての4つの透析したIgGについて99%以上であった。40℃にて48時間インキュベーション後のpH3緩衝液中のIgGは、より広範なSECピークを示し、pH3緩衝液での長いインキュベーション後のより高いIgGの異質性(heterogeneity)が示唆された。cAMPおよびCB1を発現する細胞の結合活性を、実施例11および7に従って測定し、結果を表18および19にそれぞれまとめている。結果は、pH3下では、P1C4-h2-IgG4、P1C4-h4-IgG2およびP1C4-h4-IgG4のcAMP活性が減少し、pH9下ではP1C4-h4-IgG2が減少したことを示した。
400μLのIgG(~5mg/mL)を、14000xgで4℃にて、遠心濾過(Amicon Ultra-0.5mL 30K)して、~100μLまで濃縮することにより、P1C4ヒト化変異体の溶解性を特徴付けた。200μLのさらなるIgGを遠心フィルターに添加し、14000xgで4℃にて~100μLまで濃縮した。その後、さらに200μLのIgGを遠心フィルターに添加し、14000xgで4℃にて~100μLまで濃縮した(全800μLから100μL)。濃縮したタンパク質を、ピペッティングを繰り返して可視沈殿を調べた。その後、濃縮を14000xgで4℃にて、容量が50μLになるまで継続した。遠心フィルターを逆にし、事前に計量した空のチューブにセットした。遠心フィルターを1000xgで、4℃にて5分間スピンダウンして、濃縮サンプルを集めた。チューブを計量してサンプル容量を得た。沈殿が見えた場合、チューブを14000xgで4℃にて10分間スピンダウンした。上清を新たな1.5mLのエッペンドルフチューブに取り出し、室温にて24時間インキュベートした。その後、沈殿物を、14000xgで、4℃にて10分間の遠心によりスピンダウンし、上清を新しい1.5mLのエッペンドルフチューブに移した。SEC特性化のために、6μLの濃縮サンプルの上清をTSK G3000SWXL SECカラムに入れ、タンパク質濃度をSECピーク面積により計算した。タンパク質回収率を以下のように計算した。濃縮前(容量x濃度)/濃縮後(容量x濃度)x100%。
4つのFc変異体を濃縮して、タンパク質濃度を85mg/mLより高くした。タンパク質回収率は99%以上であった。インキュベーション前および室温にて24時間インキュベーション後に、93.9mg/mLにてP1C4-h2-IgG4のわずかな可視沈殿が観察された。他の3つのIgGでは、85mg/mLより高い濃度で、室温にて24時間インキュベーション後に、可視沈殿は観察されなかった。SECプロファイルにより計算された単量体IgGは、~99%での開始レベルと比較して、4つ全ての濃縮IgGについて96%以上であった。データを表20にまとめる。
P1C4ヒト化変異体の加速安定性も評価した。1.5mLのエッペンドルフチューブに、100μLのタンパク質サンプル(~5mg/ml)を入れた。該チューブをパラフィルムで密封した。2つのチューブをセットし、1つは4℃で維持し、もう1つは40℃で33日間維持した。SEC分析のために、20μlのアリコートを取り出し、可視沈殿を調べた。SEC分析について、6μLのサンプルをTSK G3000SWXL SECカラムに注入し、タンパク質濃度をSECピーク面積により測定した。タンパク質回収率を以下のように計算した。インキュベーション前(容量x濃度)/インキュベーション後(容量x濃度)x100%。
33日間、4℃および40℃でインキュベーション後に、沈殿は観察されなかった。SECプロファイルにより計算された単量体IgGは、4つ全てのIgGについて4℃および40℃の両方で98%以上であった。SECプロファイルにより計算された回収率は、4つ全てのIgGについて4℃および40℃の両方で96%以上であった(表21)。P1C4 Fc変異体の効力の変化は、その効力がわずかに低下したことを示す参照範囲外のIC
50を示すP1C4-h4-IgG2以外は、4℃および40℃で33日後に観察されなかった(表22)。
P1C4ヒト化変異体の血清安定性も特徴付けた。ヒト血清をSigmaから入手した。非ヒト霊長動物血清をCrown Bioscience社から集めた。エッペンドルフチューブ中で、950μLの血清を50μLの終濃度250μg/ml(~1.67μM)のIgGと混合し、37℃でインキュベートした。200μLのサンプルを、0、24、48および72時間の時点で、CB1を発現する細胞を用いるフローサイトメトリー結合アッセイのために取り出した。試験したIgGの開始濃度は500nMであって、サンプルを、フローサイトメトリーアッセイ用に連続的に3倍希釈して、結合K
Dを決定した。表23および24に示す結果は、ヒトまたはNHP血清と共に37℃にて、24時間インキュベーション後に親和性が変化しなかったことを示した。K
Dの有意な変化は、ヒトおよびNHP血清と共に48時間インキュベーション後にCB1を発現する細胞の結合親和性の低下を示すP1C4-h2-IgG2を除いて、サンプルについて観察されなかった。加えて、P1C4-h4-IgG2はまた、48時間後に、CB1を発現する細胞の結合親和性の低下を示した。
P1C4ヒト化変異体の凍結/解凍安定性を以下のように特徴付けた。各ヒト化P1C4 Fc変異体の凍結ストックからの100μLアリコートを、22℃の水浴中で解答後、液体窒素で急速凍結した。凍結サンプルを、少なくとも20分間-80℃で維持した後、それを再び22℃の水浴中で解凍した。サンプルに、そのような凍結/解凍サイクルを10回繰り返した。沈殿を調べるために目視検査した。20μLのアリコートを、1、5および10回目の凍結/解凍サイクルにて、SEC分析のためにサンプルから取り出した。SEC特性化のために、6μLのインキュベートしたサンプルをTSK G3000SWXL SECカラムに注入した。タンパク質濃度を、SECピーク面積により測定した。タンパク質回収率を以下の式を用いて計算した。F/T前(濃度)/F/T後(濃度)x100%。
結果は、10回の凍結/解凍サイクル後、単量体IgGは、試験した4つ全てのIgG変異体について97%以上であったことを示した。タンパク質回収率は、全てのIgGで96%以上であった。P1C4-H2-IG4は、1回目の凍結/解凍サイクル後にわずかな濁りを示したが、有意な沈殿またはタンパク質濃度の減少は観察されなかった。結果を表25-28にまとめる。5回の凍結/解凍サイクル後に回収したタンパク質サンプルもまた、cAMPアンタゴニストアッセイを用いて機能について試験し、計算されたIC
50の結果は、正常範囲内の効力の有意な変化を示さなかった(表29)。
pHシフト下で4つのP1C4 Fc変異体の安定性を試験するために、0.2mLのMabSelect樹脂を10mLのカラムに充填し、10mLのDPBS pH7.4で平衡化した。150μLのIgGサンプル(~5mg/mL)をカラムに入れた。カラムを1.6mLのDPBSで洗浄した。その後、IgGを、1.6mLのクエン酸ナトリウム(pH~3.5)で溶出した。タンパク質の濃度を測定した。次いで、タンパク質を、機能アッセイのために~3mg/mLまで濃縮した。可視沈殿は観察されなかった。これらのサンプルを、14000xgで4℃にて10分間スピンダウンした。上清を新しいエッペンドルフチューブに移し、タンパク質濃度を測定した。このサンプルを、SECにより凝集もまた調べ、cAMPアンタゴニストアッセイにより機能も試験した。SECプロファイルは、単量体IgGの割合が、pHを3.5にした後に95%以上であったことを示した。cAMPアンタゴニスト結果を表30に示し、P1C4-h2-IgG4、P1C4-h4-IgG2およびP1C4-h4-IgG4がpH3.5で安定であって、測定されたIC
50が許容される範囲内であることが示された。P1C4-h2-IgG2は、pH3.5で異なる挙動を示し、許容される範囲と比較して、低いIC
50値であった。この結果は、pH安定性試験の結果と同様であった。
実施例27.PA13R3-P1C4のCDR突然変異誘発
各CDR上の各アミノ酸位置の役割を調べるために、部位特異的飽和突然変異誘発を、キメラP1C4Fabの各CDR位置に行った。NNSまたは特定の子ドンを含む変異原性プライマーを合成し、Tris-EDTA緩衝液中に溶解し、10μMワーキングストックまで希釈した。25μLのPCR反応液を、正確性と増幅性が高い(high fidelity)DNAポリメラーゼを用いて96ウェルプレートにセットした。得られたPCR産物を、37℃にて5時間、各ウェル中で0.8μLのDpnI(20U/μL)を用いて処理した。DpnI処理したPCR産物(2μL)を、30μlの大腸菌Dh5αコンピテント細胞にトランスフェクトした。DNAを、ミニプレップして形質転換体から単離し、配列決定して、所望の変異を同定した。所望のクローンからのプラスミドDNAを用いて、大腸菌BL21(CodonPlus)コンピテント細胞を形質転換した。単一コロニーを、Fabタンパク質発現のために使用した。
Fab発現のために、コロニーを、100μlのSB培地を含む96ウェルプレートに採取し、一晩培養した。次の日、各ウェルからの10μLを、深い96ウェルプレート中に、50μg/mLのカナマイシンを含む500μLのZYM培地に接種した。該プレートを通気性のプレートシーラーで密封し、25℃にて36時間、シェーカー中、450rpmにて振盪した。
ELISAのためにサンプルを調製するため、深い96ウェルプレートを、Beckmanテーブルトップで、20分間3000rpmにて(~2050rcf)、4℃にて、遠心した。100μLの上清を、発現プレートから、200μLのPBSを含む希釈プレート(pH7.4)に移し、十分に混合した。
Fab発現をELISAにより測定した。96ウェルハーフウェルELISAプレート(Corning、3690)を、2μg/mLの抗ヒス抗体(Sigma H1029 2mg/ml)を50μl/ウェル用いて、4℃にて一晩、直接コーティングした。その後、プレートを150μLのPBSTで6回洗浄した。次いで、各ウェルを175μL/ウェルの3%ミルク/PBS(pH7.4)で1時間、22℃にてブロッキングした。その後、プレートをPBSTで6回洗浄し、次いで、PBSで3倍希釈した25μL/ウェルのFab(pH7.4)を含む培養培地を、各ウェルに添加し、22℃にて1時間インキュベートした。該プレートを再度、PBSTで6回洗浄し、その後、50μl/ウェルのHRP標識した抗ヒトFab抗体(0293 Sigma)を、3%ミルクで1:10000希釈して添加し、22℃にて1時間インキュベートした。ELISAを行うために、プレートをPBSTで6回洗浄し、50μL/ウェルのTMB基質を添加した。反応を50μL/ウェルの1N HClを添加することにより停止させ、OD450をBioTekリーダーで読み取った。
iCAPS結合を測定するELISAのために、96ウェルハーフウェルELISAプレートをを2μg/mL、25μL/ウェルのストレプトアビジンPBS液(pH7.4)で、4℃にて一晩、コーティングした。その後、プレートを回転させながら150μLのPBSTで6回洗浄した。その後、25μL/ウェルの5ug/mL CB1 iCAPSをプレートに添加し、1時間インキュベーションした。PBSTで6回洗浄後、各ウェルを、175μL/ウェルの3%ミルク/PBS(pH7.4)で1時間、22℃にてブロッキングした。次いで、プレートをPBSTで6回洗浄し、その後、PBSで3倍希釈した25μL/ウェルのFabを含む培養培地(pH7.4)を各ウェルに添加し、22℃にて1時間インキュベートした。プレートを、再度、PBSTで6回洗浄し、その後、50μl/ウェルの抗ヒトFab抗体(0293 Sigma)を、3%ミルクで1:10000希釈して添加し、22℃にて1時間インキュベートした。プレートを現像するために、該プレートをPBSTで6回洗浄し、50μL/ウェルのTMB基質を添加した。反応を、50μL/ウェルの1N HClを添加することにより停止させ、OD450をBioTekリーダーで読み取った。
各クローンを三連でアッセイした。Fab発現により正規化したiCAPSへの相対的結合を計算するために、iCAPS結合のELISAシグナルをFab発現ELISAデータで割り、親クローンのデータを比較した。許容可能な変化は、親クローンと比較して、少なくとも50%の特異的iCAPS結合活性を保持するクローンとして定義された。これらの許容可能な変化を、表31および表32にまとめる。示された変異のCDR配列は表34に見いだされ得る。
実施例28.肝臓組織サンプルにおけるCB1の、HRPをコンジュゲートしたP1C4-h2-IgG4抗体による免疫染色
P1C4-h2-IgG4抗体を、製造者の指示書に従ってLightning-Link HRPコンジュゲーションキット(Innova Bioscience、701-0010)を用いて標識した。パラフィルム処理したヒト肝臓サンプルのスライドを、Clearene溶媒(Leica Biosystems)で5分間処理した後、最終的に50%濃度までエタノールで濃縮した。その後、スライドを、PBSで簡易に洗浄後に、メタノール/過酸化水素中に15分間浸した。その後、スライドを、抗原賦活化(Antigen retrieval)のために温めながらクエン酸生理食塩水(ベクター、H-3300)で処理し、次いで、予め温めたPBS(350ml)およびトリプシン(2.45ml)中、37℃にて水浴中に20分間、置いた。PBSで洗浄後、スライドをカゼイン(ベクター、SP-5020)で、室温にて1時間、ブロッキングした。ブロッキング後、1:100希釈したHRPをコンジュゲートしたP1C4-h2-IgG4またはアイソタイプ対照抗体を添加し、4℃にて一晩インキュベートした。次いで、スライドをPBSで洗浄し、3滴のベクターABC Tertiary (ベクター、PK-7100)で、22℃にて45分間、処理した。PBSを用いてスライドを3回洗浄し、DABミックス(ベクター、SK-4100)を該スライドに添加して5-10分後に、それらを再びPBSで簡易に洗浄した。その後、スライドを、マイヤーズヘマトキシリン(TCS Biosciences、HS315)で1分間、カウンター染色し、次いで、水で処理し、増加濃度のエタノール(50%から100%)で処理し、Clearene溶媒で2回処理し、その後、それらをPertex(Leica Biosystems)にマウントした。
結果は、早期NASH(図25、左パネル)、NASH線維症(図25、中パネル)および後期線維症(図25、右パネル)サンプルにおける、マクロファージ、肝細胞および肝臓筋線維芽細胞における正のCB1特異的染色を示した。アイソタイプ対照の無関係の抗体(図26)または正常組織サンプル(図27)では染色は観察されなかった。
実施例29.初代ヒト肝臓星細胞における線維症の遺伝子マーカーに対する抗CB1抗体の作用の測定
初代肝臓星細胞(HSC)を、3名の健常ドナーから得た肝臓組織から単離した。DMEM+10%FBSで2-3回継代後、細胞をプラスチック上で活性化させ、0.5%血清含有培地に一晩入れた。次いで、細胞を、種々の濃度のリモナバン(CB1アンタゴニスト)、P1C4-h2-IgG4および非機能的対照抗体で6または24時間処理した。α-SMA、プロコラーゲンA1(I)、TIMP1およびTGFβを含む線維化を促進させる遺伝子の発現阻害を、RT-PCRにより測定し、データをプロットした。
結果は、HSCをP1C4-h2抗体で処理したとき、プロコラーゲンA1(I)発現の顕著な減少が見られたが、非機能的対照抗体およびPBSでの処理では見られなかったことを示す(図28)。PBS対照および非機能的対照抗体と比較して、TGFβ(図29)およびTIMP1(図30)発現も顕著に減少した。加えて、α-SMA発現の減少はまた、PBSまたは非機能的抗体で処理した細胞と比較して、P1C4-IgG1またはIgG4で処理した細胞で顕著であった(図31)。
実施例30:カニクイザルの脳脊髄液(CSF)中の抗CB1抗体の定量
カニクイザル(2匹のオスおよび2匹のメス/群)を、表33の処理スキームによりP1C4-h2-IgG4で処理し、CSFを示した時点で収集した。P1C4-h2-IgG4を、1ug/mLの抗ID抗体でコーティングした96ウェルプレートにCSFを添加し、HRPをコンジュゲートした抗IgG抗体(Abcam)および発色試薬を用いて検出するELISAにより定量した。
表33に示す通り、抗体は、検出可能な場合、非常に低いレベルで検出された。最高用量群では、注入された用量の0.1%未満がCSFで検出され、CNSの抗体暴露が非常に低いことが示された。
実施例31.カニクイザルにおける代謝および心血管要因に対する抗CB1抗体の効果の測定
RIOプログラムは、いくつかの要因を用いて、リモナバン処理の心血管代謝効果について実証した。例えば、Pi-Sunyeret al., 2006, J Am Coll Cardio, l47:362Aを参照のこと。このように、本明細書に記載の抗CB1抗体の効果もまた、同様の心血管代謝因子に対する効果について評価された。
肥満のカニクイザルおよびアカゲザルを、3mg/kgまたは0.3mg/kgの抗CB1抗体であるP1C4-h2-IgG4を毎週皮下投与処理した。陰性対照について、霊長動物セットには、(1)医薬担体のみ;または、(2)CB1に結合することが知られていない対照抗体の何れかを注射した。霊長動物の食物摂取、体重、インスリン感受性、トリグリセリドレベルおよび他の心血管危険因子の影響を観察した。
3mg/kgまたは0.3mg/kgの抗CB1抗体であるP1C4-h2-IgG4で処理した霊長動物は、低下したトリグリセリドレベルおよび他の心血管危険因子を示すことが示される。3mg/kgまたは0.3mg/kgの抗CB1抗体であるP1C4-h2-IgG4で処理した霊長動物はまた、改善したインスリン感受性を示すことが示された。対照抗体または担体のみを注射した霊長動物は、これらの因子の改善は観察されなかった。
以上の例示的な実施例に記載されるように本発明における多数の改変および変形が当業者により行われることが予期される。従って、添付の特許請求の範囲により明らかであるような限定のみが、本発明の範囲内とされるべきである。本明細書中に引用される全ての文献は、あらゆる目的のためにその内容全体が引用により本明細書中に包含される。
実施例32.抗CB1抗体P1C4-h2-IgG4の親和性成熟
P1C4-h2-IgG4のより強力な変異体を得るために、ランダム化CDR残基を含む3つの大型酵母ディスプレイライブラリーを構築し、改良された結合剤を選択するために磁気活性化細胞選別(MACS)およびFACSを使用することによって親和性成熟キャンペーンを行った。さらなる詳細については、例えば、Wang et al., 2011, J Biol Chem. 286(51): 44218-44233参照。ライブラリーの設計は、P1C4-h2-IgG4と同じ生殖細胞系ファミリーの天然ヒト抗体の大型データベース中のCDR残基の可変性の分析に基づいた(VH1ファミリーメンバー1-69およびVk3ファミリーメンバー3-20)。ランダム化のために選択されたCDR残基は、以下の表35に下線が引かれている。
3つの酵母ディスプレイライブラリーは、(1)軽鎖のみ、(2)重鎖のみ、または(3)軽鎖および重鎖の両方において変異を有するように設計された。各ライブラリーの理論的多様性はそれぞれ、6.5x103、1.4x105および9.0x108であり、各ライブラリーの実際のサイズはそれぞれ、1.5x105、5.0x107および2.3x109であった。
CB1 iCAPSの濃度が徐々に低下するMACSおよびFACS選択の数回後、CB1に対する潜在的により高い親和性を示す4つのクローンが同定された。4つ全てのクローンは、軽鎖CDRのみが変化し、変化していない親重鎖を保持した。新規軽鎖の配列は、以下の表36に示されており、変更された残基に下線が引かれている。
親和性成熟P1C4変異体の軽鎖において改変されることが見いだされた個々の残基は、親和性成熟P1C4変異体の軽鎖において改変されることが見出された個々の残基は、以下の表37にまとめられている。
次に、酵母ディスプレイ選択を介して同定された4つの親和性成熟P1C4変異体を酵母ディスプレイベクターから全長IgG4(S228Pでヒンジ変異を有する)に再形成し、改良された結合親和性およびアンタゴニスト機能について試験した。各抗体を293細胞で発現し、Protein A アフィニティークロマトグラフィーによって精製した。親P1C4-h2-IgG4も、同等のコントロールが利用可能であることを確実にするように同様の方法で発現させ精製した。
4つの親和性成熟P1C4変異体の結合親和性の改善を、全長天然ヒトCB1を発現するTRex-CHO細胞上のフローサイトメトリーによって評価し、TRex-CHO親細胞を陰性対照として用いた。簡潔には、1x10
6細胞/mlの細胞100μlをP1C4親和性成熟変異体および親P1C4 IgGとともに、氷上で30分間1μM~1.3nMで開始する3倍連続希釈でインキュベートした。200μLのFACS緩衝液で2回洗浄した後、細胞を二次抗体とともに氷上で30分間インキュベートした。細胞を200μLのFACS緩衝液で2回洗浄し、BD Falcon 5mLチューブに移し、FACSによって分析した。結合親和性(K
D)のデータ解析および測定は、GraphPad Prismソフトウェアを用いて行った。結果を表38に要約する。結合親和性は、親P1C4-h2-IgG4と比較して4つのクローンの全てについて約2~3倍に増強された。
親和性成熟P1C4変異体の機能活性を、クリプテート標識抗cAMP抗体およびd2標識cAMP(Cisbio)を用いる競合イムノアッセイに基づく市販のcAMPキットを用いるcAMPアンタゴニストアッセイによって定量した。ヒトCB1発現TRex-CHO細胞の8000細胞/ウェルを白色384ウェルプレートに播種し、次にmAbまたは対照化合物を22℃で10分間様々な濃度でインキュベートした。5μMフォルスコリン(Sigma Aldrich)および9nM CP55,940(Sigma Aldrich)を細胞に添加し、22℃で30分間インキュベートしてCB1シグナル伝達を活性化した。22℃で30分間インキュベート後、5μLのcAMP-d2および5μLの抗cAMPクリプテートを細胞に加え、1時間インキュベートした。FRETシグナルは、620nm励起および665nm発光の抗cAMPクリプテートでEnvisionマルチラベルプレートリーダー(Perkin Elmer)を用いて検出した。GraphPad Prismを用いてデータ分析を行った。結果は表39に要約されている。結合親和性について観察された増強と同様に、機能的効力は、親P1C4-h2-IgG4と比較して、いくつかの親和性成熟クローン(RY-HL-LC-A12_FACS4およびRY-LC-B12_FACS3)において、最大2-3倍増強した。