以下、図面を参照しながら、第1実施形態乃至第4実施形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は、省略する場合がある。たとえば、既によく知られた事項の詳細説明、又は、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が必要以上に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面及び以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
<第1実施形態>
図1は、吸込ノズル100を備えている吸引式の掃除機200の概略的な側面図である。図1を参照して、掃除機200を説明する。
(掃除機の全体的な構成)
掃除機200は、塵埃を吸引する吸引力を発生する吸引源211と、吸引源211に電力を供給するバッテリ212と、を内蔵した掃除機本体210と、掃除機本体210から下方に延設された吸引管220と、を備えている。吸引源211は、モータと、モータによって回転される回転羽根と、によって構成されていてもよい。吸引源211の吸引力を床面上の幅広い領域に作用させるために、吸引管220の下端には、吸込ノズル100が取り付けられている。
掃除機本体210内において、バッテリ212は、吸引源211よりも前側に配置されている。バッテリ212が配置された掃除機本体210の前側部分の上面からは、使用者によって握持可能な太さを有している棒状の握持部230が上方に延設されている。握持部230の前面には、吸引源211を作動させたり停止させたりするために使用者によって操作される操作部231が設けられている。
吸引管220は、3つの管体から構成されており、吸引源211の吸引力によって吸い上げられた塵埃及び空気が流れる流路を形成している。これらの管体のうち1つは、掃除機本体210の前側部分の下面から下方に延設された基端管部221であり、基端管部221は、掃除機本体210と一体的に形成されている。他のもう1つの管体は、吸込ノズル100に対して前後方向に回動可能に接続された先端管部222であり、残りの1つの管体は、先端管部222と基端管部221とを連結している中間管部223である。
基端管部221よりも後側且つ吸引源211が収容された掃除機本体210の後側部分よりも下側には、吸引源211の吸引力によって吸い上げられた塵埃を貯留するための集塵部240が設けられている。基端管部221には、基端管部221よりも後側の集塵部240に塵埃及び空気が流出するように後方に開口した流出口(図示せず)が設けられている。集塵部240は、基端管部221の流出口から集塵部240に流入した空気が集塵部240の内部で旋回流になるように、基端管部221の流出口に連結されている。詳細には、集塵部240は、円筒状の容器であり、基端管部221の流出口から流入した空気が集塵部240の内周面に沿って流れるように、基端管部221の流出口に連結されている。集塵部240内で旋回流が生成されることにより、集塵部240内に流入した空気に含まれる塵埃は、遠心分離され得る。
集塵部240の上部には、フィルタ(図示せず)が設けられている。このフィルタは、集塵部240から掃除機本体210内の吸引源211へ向かって空気が流れることを許容する一方で、この空気に含まれる塵埃を捕捉するように構成されている。この結果、塵埃は、集塵部240内に留められる。
(吸込ノズルの構成)
吸込ノズル100は、図2及び図3に示すように、ノズルケース110を有している。ノズルケース110は、先端管部222が接続された中央部分116と、中央部分116から左方に張り出した左部分117と、中央部分116から右方に張り出した右部分118と、を有している。
詳細には、ノズルケース110は、中央部分116、左部分117及び右部分118の後部を構成するように左右方向に延設された後ケース部111を有しており、後ケース部111の左右端からは、左ケース部112及び右ケース部113が前方に突出している。左ケース部112は、ノズルケース110の左部分117の前側部分を構成しており、右ケース部113は、ノズルケース110の右部分118の前側部分を構成している。
後ケース部111よりも前側において、カバー板114が左ケース部112及び右ケース部113上で固定されている。カバー板114は、左右方向に長い薄板部材であり、ノズルケース110の左部分117乃至右部分118に亘って延設されている。カバー板114が取り付けられた状態で、後ケース部111、左ケース部112、右ケース部113及びカバー板114によって区画された吸込空間115が後ケース部111よりも前側に形成される。すなわち、吸込空間115は、ノズルケース110の左部分117から右部分118に亘って形成されている。
吸込空間115は、床面上の塵埃を吸い込むために設けられており、下方に開口している。吸込空間115に吸引源211の吸引力を作用させるために、後ケース部111には、図4に示す連通路119が形成されている。連通路119は、後ケース部111においてノズルケース110の中央部分116を構成する部分に設けられており、前後方向に延設されている。言い換えると、連通路119は、吸込ノズル100の中心線(吸込ノズル100の幅方向における中央で前後方向に延びる線)上で形成されている。連通路119よりも後側において、吸引管220(先端管部222)の先端部分224が後ケース部111に接続されている。すなわち、後ケース部111は、吸引管220の先端部分224と接続される接続部141を連通路119よりも後側に有しており、接続部141は、連通路119と同様に、吸込ノズル100の中心線上に設けられている。
吸引管220の先端部分224の断面は、左右方向に延びる中心軸を有している円弧形状になっている。後ケース部111の接続部141は、吸引管220の先端部分224を保持しつつ、先端部分224の中心軸周りにおいて先端部分224が所定の回転範囲で回転することを許容するように構成されている。このため、吸引管220は、前後方向に所定の範囲で傾動可能になっている。
先端部分224の周壁の前側部分には、連通路119と吸引管220の流路とを連通させる開口が形成されている。開口の大きさは、吸引管220がいずれの傾動角度にあっても、吸引管220の流路が連通路119に連通した状態になるように設定されている。吸引管220の流路は、連通路119を介して、吸込空間115に連通しており、吸引源211の吸引力は、吸込空間115に作用する。
吸込空間115は、床面上の塵埃が吸引される幅広の領域を確保するためだけでなく、床面上の塵埃を掻き取るブラシローラ120を配置するためにも利用される。ブラシローラ120は、図3に示すように、左右方向に長いローラ本体121と、ローラ本体121の外周面から突出した複数のブラシ列122と、を有している。ローラ本体121の左右の端部からは回転シャフト(図示せず)が突出しており、これらの回転シャフトは、左ケース部112と右ケース部113とによって回転可能に支持されている。言い換えると、ローラ本体121は、左ケース部112と右ケース部113とによって回転可能に両持ち支持されている。各ブラシ列122は、ローラ本体121の外周面上で螺旋状に配列された複数のブラシ毛によって形成されている。ブラシローラ120の大部分は、図4に示すように、吸込空間115内に収容されているが、ローラ本体121よりも下側にあるブラシ列122は、吸込空間115から下方に突出し、床面に接触している。このブラシ列によって、ノズルケース110の前側部分は、床面から浮いた状態で支持されている。この状態を保つのに十分な剛性を有するように、ブラシ列122は構成されている。
ブラシローラ120を回転駆動する駆動力を発生させるために、図3に示すように駆動部130(たとえば、駆動モータ)が後ケース部111の左側部分内に配置されている。また、駆動部130とブラシローラ120とを接続し、駆動部130の駆動力をブラシローラ120に伝達するための伝達機構(たとえば、プーリ及び駆動ベルト:図示せず)が左ケース部112及び後ケース部111内で形成されている。駆動部130は、操作部231に電気的に接続されており、操作部231の操作に応じて、作動したり、停止したりする。駆動部130が作動すると、ブラシローラ120が回転し、ブラシローラ120の回転力は、吸込ノズル100を前進させる推進力になる。また、ブラシローラ120の回転によって、床面上に塵埃が掻き取られる。
ブラシローラ120によってノズルケース110の前側部分が支持されている一方で、ノズルケース110の後側部分は、図3に示す左右一対の後ローラ129によって床面から浮いた状態で支持される。これらの後ローラ129を接続部141よりも後側に配置するために、ノズルケース110は、平面視において略C字型のローラ支持部125を後ケース部111よりも後側に有している。ローラ支持部125に、一対の後ローラ129が回転可能に取り付けられている。これらの後ローラ129のうち左側に位置しているローラを、以下の説明では、「第1後ローラ123」と称する。また、右側に位置しているローラを、以下の説明では、「第2後ローラ124」と称する。
ローラ支持部125は、左右方向における後ケース部111の中央部分に接続されており、ノズルケース110の中央部分116の後側部分を構成している。ローラ支持部125は、一対の後ローラ129が床面に接触するように先端管部222よりも下側に位置しており、ローラ支持部125の下面は、平坦になっている。
ローラ支持部125の角隅部には、第1後ローラ123及び第2後ローラ124を収容するために下方に開口した収容凹部126,127が形成されている。第1後ローラ123及び第2後ローラ124の大部分は、収容凹部126,127内に収容されているが、第1後ローラ123及び第2後ローラ124の一部は、収容凹部126,127から突出し、床面に接触する。この状態において、第1後ローラ123及び第2後ローラ124は、ノズルケース110の後側部分が床面から浮いた状態でノズルケース110を支持している。
収容凹部126,127からの第1後ローラ123及び第2後ローラ124の突出量は、吸込空間115からのブラシローラ120の突出量よりも小さくなっている。このため、ノズルケース110の下面は、図4に示すように、後方に向けて下がる後傾姿勢になっている。すなわち、ノズルケース110の前端と床面との間の隙間の高さは、ローラ支持部125の後端と床面との間の隙間の高さよりも大きくなっている。
第1後ローラ123及び第2後ローラ124は、図3に示すように、前後方向に対して傾斜した回転軸回りに回転するようにローラ支持部125に取り付けられている。第1後ローラ123は、吸込ノズル100が左斜め前方に移動することを補助するように床面上を転動するように設けられている。言い換えると、第1後ローラ123の回転軸の傾斜は、吸込ノズル100の前進時において、第1後ローラ123が床面から右斜め後向きの摩擦力F1を受けて、床面上を転動するように設定されている。また、第2後ローラ124は、吸込ノズル100が右斜め前方に移動することを補助するように床面上を転動するように設けられている。言い換えると、第2後ローラ124の回転軸の傾斜は、吸込ノズル100の前進時において、第2後ローラ124が床面から左斜め後向きの摩擦力F2を受けて、床面上を転動するように設定されている。たとえば、図3に示すように、第1後ローラ123及び第2後ローラ124の回転軸の傾斜角度は、吸込ノズル100の中心線について略45°に設定されていてもよい。
第1後ローラ123及び第2後ローラ124は、吸込ノズル100の中心線について略左右対称になっており、吸引管220の先端部分224が接続された後ケース部111の接続部141は、上述の如く、吸込ノズル100の中心線上にある。このため、後ケース部111の接続部141と第1後ローラ123との間の距離は、接続部141と第2後ローラ124との間の距離と略等しくなっている。
第2後ローラ124を保持するための構造は、第1後ローラ123を保持するための構造を有しているので、第1後ローラ123用の保持構造のみを図5を参照して以下に説明する。
第1後ローラ123を回転可能に保持するために、収容凹部126内には、収容凹部126の幅方向に架け渡されたローラシャフト142と、ローラシャフト142に回転可能に取り付けられた一対のハブ146,147と、が設けられている。これらのハブ146,147は、ローラシャフト142の軸方向に間隔を空けて配置されており、第1後ローラ123は、これらのハブ146,147の間に配置されている。言い換えると、第1後ローラ123は、これらのハブ146,147によって、ローラシャフト142の軸方向に挟まれている。また、ローラシャフト142の軸方向におけるハブ146,147の間隔は、収容凹部126の幅よりも小さくなっている。このため、ハブ146,147と収容凹部126との間には空間が形成されている。
ハブ146,147及び第1後ローラ123がローラシャフト142の軸方向に変位することが想定されるので、この変位が所定量以上になることを規制するストッパ部140が収容凹部126内に設けられている。ストッパ部140は、ローラシャフト142の軸方向において互いに対向配置された一対のストッパ片148,149と、第1後ローラ123から上側に離間した位置でストッパ片148,149を繋いでいる接続片150と、を有している。これらのストッパ片148,149は、ハブ146,147と収容凹部126との間の空間の下端の開口領域を狭めないように、ローラシャフト142よりも上側に設けられており、ローラシャフト142よりも下側には設けられていない。
ストッパ片148は、ハブ146に対してローラシャフト142の軸方向において間隔を空けて対向配置されている。また、ストッパ片149は、ハブ147に対してローラシャフト142の軸方向において間隔を空けて対向配置されている。ストッパ片148,149の間隔は、ローラシャフト142の軸方向におけるハブ146,147及び第1後ローラ123の変位量が許容範囲に収まるように設定されている。
ストッパ片148,149は、ローラシャフト142から上方に離れている。また、ストッパ片148,149と第1後ローラ123の両端面との間にも空間が形成されている。
一対の後ローラ129に加えて、図3に示すように、吸込ノズル100の前進時における蛇行を抑制するための左補助ローラ151及び右補助ローラ152が設けられている。左補助ローラ151は、吸込ノズル100の左部分117に回転可能に取り付けられており、右補助ローラ152は、吸込ノズル100の右部分118に回転可能に取り付けられている。詳細には、左補助ローラ151及び右補助ローラ152は、後ケース部111の下面の左右の端部に形成された凹部に大部分が収容されており、一部が当該凹部から突出した状態になるように配置されている。また、左補助ローラ151及び右補助ローラ152の回転軸は、吸込ノズル100の中心軸に対して直角の方向、言い換えると、左右方向に延びている。
ノズルケース110の下面(後ケース部111の下面)からの左補助ローラ151及び右補助ローラ152の突出量は、ノズルケース110の下面(ローラ支持部125の下面)からの一対の後ローラ129の突出量よりも小さくなっている。このため、ノズルケース110が左方又は右方に傾動していない状態では、左補助ローラ151及び右補助ローラ152は、図4に示すように、床面から浮いている。一方、ノズルケース110が所定の角度だけ左方に傾動すれば、左補助ローラ151が床面に接地した状態になる。逆に、ノズルケース110が所定の角度だけ右方に傾動すれば、右補助ローラ152が床面に接地した状態になる。
左補助ローラ151及び右補助ローラ152の回転軸の傾斜方向及びこれらの突出量を除いて、左補助ローラ151及び右補助ローラ152を保持するための保持構造は、図5に示す第1後ローラ123用の保持構造と同じであってもよい。
(掃除機の動作)
使用者が操作部231を操作すると、掃除機本体210の吸引源211及び吸込ノズル100の駆動部130が作動する。
吸引源211が作動すると、吸引源211の吸引力は、吸引管220及び吸込ノズル100の連通路119を通じて、吸込ノズル100の吸込空間115に作用する。この結果、床面上の塵埃は、吸込空間115に吸い込まれ、連通路119及び吸引管220を流れて、集塵部240に空気とともに流入する。集塵部240内では、空気は旋回流になって流れ、この空気に含まれる塵埃は、遠心分離されて集塵部240に貯留される。
駆動部130が作動すると、駆動部130の駆動力は、ブラシローラ120に伝達される。この結果、ブラシローラ120は、床面上で回転し、床面上の塵埃を掻き取ることができる。また、ブラシローラ120の回転力は、吸込ノズル100を前進させる推進力になるので、使用者は、吸込ノズル100を軽い力で前進させることができる。
吸込ノズル100が前進しているとき、ノズルケース110の下面は、後傾姿勢になっており、ノズルケース110の前端部分と床面との間には比較的広い空間が形成されている。このため、たとえば、絨毯が敷かれた床面上を吸込ノズル100が前進しているときにおいて、絨毯の毛が吸込ノズル100の前端部分に引っ掛かりにくくなっており、吸込ノズル100の姿勢が絨毯の毛により変動することが抑制される。また、吸込ノズル100は、後傾姿勢になっているノズルケース110の下面で絨毯の毛を前方に徐々に押し倒しながら前進することができる。このため、吸込ノズル100の前端部分よりも後側の部分も絨毯の毛に引っ掛かりにくくなっている。とくに、一対の後ローラ129が取り付けられたローラ支持部125の下面は、平坦になっているので、一対の後ローラ129の近くにおいても絨毯の毛は、前方に寝た状態を保つことができる。このため、一対の後ローラ129に絨毯の毛が巻き込まれることが抑制される。
吸込ノズル100が床面上を前進しているとき、床面の形状によっては、吸込ノズル100の前側部分又は後側部分を上方に跳ね上げるような力を吸込ノズル100が受けることが想定される。
吸込ノズル100の前側部分が跳ね上がろうとしたとき、吸込ノズル100は、一対の後ローラ129を軸に後方に傾動しようとし得る。しかしながら、これらの後ローラ129よりも前側には、吸引管220と接続された接続部141があり、この接続部141には、吸引管220、掃除機本体210、握持部230及び集塵部240の自重による下向きの力が作用する。この下向きの力により、一対の後ローラ129を軸に後方に傾動しようとする吸込ノズル100の挙動は、抑制され得る。
逆に、吸込ノズル100の後側部分が跳ね上がろうとしたとき、吸込ノズル100は、ブラシローラ120を軸に前方に傾動しようとし得る。しかしながら、このような吸込ノズル100の前方への傾動も、ブラシローラ120の後方の接続部141に作用する下向きの力によって、抑制され得る。
接続部141に作用する下向きの力により、一対の後ローラ129(第1後ローラ123及び第2後ローラ124)は、床面から垂直抗力を受ける。このとき、接続部141から第1後ローラ123及び第2後ローラ124までの距離が互いに略等しくなっている。このため、第1後ローラ123及び第2後ローラ124に作用する垂直抗力の大きさは、ノズルケース110が左方又は右方に傾動していなければ、互いに略等しくなる。この場合、第1後ローラ123及び第2後ローラ124と床面との間に左右対称に作用する摩擦力F1,F2は、図3に示すように、互いに略等しい大きさになる。この力の状態では、摩擦力F1の右向きの分力は、摩擦力F2の左向きの分力と相殺される。このため、ノズルケース110が左右方向に傾動していなければ、第1後ローラ123及び第2後ローラ124が傾斜した回転軸回りに回転しても、吸込ノズル100は、左又は右に曲がることなくまっすぐに前進又は後進することができる。
ノズルケース110の左部分117及び右部分118に取り付けられた左補助ローラ151及び右補助ローラ152は、ノズルケース110が左右方向に傾動していなければ、床面から浮いた状態になっている。このため、左補助ローラ151と床面との間には、ノズルケース110の左方への傾動を許容する空間が形成されており、右補助ローラ152と床面との間には、ノズルケース110の右方への傾動を許容する空間が形成されている。したがって、使用者が吸引管220を左方又は右方に傾動させるように握持部230を操作すれば、吸込ノズル100は、左方又は右方に傾動する。
吸込ノズル100が左方に傾動すれば、第1後ローラ123は、第2後ローラ124よりも強い力で床面に押し付けられる。この結果、第1後ローラ123の摩擦力F1は、第2後ローラ124の摩擦力F2よりも大きくなる。この状態において、吸込ノズル100の左方への傾斜量が、左補助ローラ151が床面に接触しない程度に留められていれば、吸込ノズル100の進行方向は、第1後ローラ123の回転方向の影響を強く受ける。このため、吸込ノズル100は、摩擦力F1の方向とは反対方向、すなわち、左斜め前方に移動する。
吸込ノズル100が左方に更に傾動すると、左補助ローラ151は、床面に接地する。左補助ローラ151は、吸込ノズル100の中心線に対して傾斜した回転軸回りに回転する第1後ローラ123とは異なり、吸込ノズル100の中心線に対して直角な回転軸回りに回転する。このため、吸込ノズル100が左斜め前方に移動しているときに、左補助ローラ151は、第1後ローラ123ほどには回転しない。すなわち、左補助ローラ151は、床面に接地した状態では、左斜め前方への吸込ノズル100の移動を妨げる。
吸込ノズル100が右方に傾動した場合には、吸込ノズル100の挙動は、吸込ノズル100が左方に傾動した場合とは左右対称的になる。
床面の形状によっては、吸込ノズル100が意図せず左方及び/又は右方に傾動することが想定される。この場合、吸込ノズル100は、意図せず、左又は右に曲がりながら前進したり、左右に蛇行したりする。しかしながら、これらの意図しない挙動は、左補助ローラ151及び右補助ローラ152が床面に接地すれば抑制される。
第1後ローラ123及び第2後ローラ124は、床面上を転動するので、床面からこれらに付着した塵埃が収容凹部126,127内に入り込んで、収容凹部126内に溜まることが想定される。収容凹部126,127に溜まった塵埃の除去を容易にするために、ストッパ片148,149は、収容凹部126,127内のローラシャフト142よりも上側に設けられている。すなわち、ストッパ片148,149がこのように配置されることにより、収容凹部126,127の下端の開口領域は、ストッパ片148,149によって狭められることはない。このため、塵埃を除去するための工具(たとえば、ピンセット)を、収容凹部126,127内に差し込みやすくなっている。
ストッパ片148,149とローラシャフト142との間には、空間が形成されているが、この空間よりも塵埃が小さければ、塵埃は、この空間に捕捉された状態にはなりにくい。仮に、塵埃が、この空間に入り込んでストッパ片148,149とローラシャフト142との間に挟まれたとしても、これらによって強い力で圧縮された状態にはなりにくい。したがって、使用者は、ストッパ片148,149とローラシャフト142との間の塵埃を小さな力で除去することができる。
第1後ローラ123又は第2後ローラ124がストッパ片148に向けて移動すれば、ストッパ片148は、このストッパ片148に対向しているハブ146に当接する。このとき、ハブ146の厚さの分だけ、ストッパ片148は、ストッパ片148と対向している第1後ローラ123又は第2後ローラ124の端面から離間した状態になる。第1後ローラ123又は第2後ローラ124が逆向きに移動した場合には、ストッパ片149は、ストッパ片149と対向している第1後ローラ123又は第2後ローラ124の端面から離間した状態になる。ストッパ片148,149と第1後ローラ123又は第2後ローラ124の端面との間の空間よりも塵埃が小さければ、この塵埃は、ストッパ片148,149と第1後ローラ123又は第2後ローラ124とにより挟まれて捕捉されることはない。このため、収容凹部に塵埃が溜まることが抑制される。また、仮に、塵埃が、ストッパ片148,149と第1後ローラ123又は第2後ローラ124とにより挟まれて圧縮された状態になっていたとしても、塵埃が受けている圧縮力は過度に強くならないので、使用者は、この塵埃を小さな力で除去することができる。
上述の実施形態では、一対の後ローラ129が設けられている。代替的に、吸込ノズル100は、図6に示すように、単一の後ローラ129を有していてもよい。これにより、吸込ノズル100は、簡素化される。
この場合、ローラ支持部125の下面からの後ローラ129の突出量は、第1後ローラ123及び第2後ローラ124と同様に、吸込空間115からのブラシローラ120の突出量よりも小さく設定される。この結果、ノズルケース110の下面は、後傾姿勢になる。
単一の後ローラ129が用いられる場合、この後ローラ129は、吸込ノズル100の中心線上に配置される。この結果、吸込ノズル100が左方及び右方のいずれか一方のみに傾動しやすくなることが防止される。また、後ローラ129は、吸込ノズル100の中心線に対して直角な回転軸回りに回転するように構成されてもよい。この場合、吸込ノズル100が前進するときに、左及び右のうちいずれか一方に曲がりやすくなることが防止される。このため、図1乃至図5に示す吸込ノズル100において、蛇行を抑制するために設けられていた左補助ローラ151及び右補助ローラ152は、省略されてもよい。
吸込ノズル100は、図7に示すように、第1後ローラ123及び第2後ローラ124に加えて、傾斜ローラ154,155を第1後ローラ123及び第2後ローラ124よりも前側に有していてもよい。傾斜ローラ154は、第1後ローラ123及び第2後ローラ124の回転軸の交点Pについて、第2後ローラ124に対して点対称になるように配置されている。傾斜ローラ155は、交点Pについて、第1後ローラ123に対して点対称になるように配置されている。
ノズルケース110の下面からの第1後ローラ123、第2後ローラ124及び傾斜ローラ154,155の突出量は、これらが均一な力で床面に接地した状態でノズルケース110の下面が後傾姿勢をとるように設定されている。このため、第1後ローラ123及び第2後ローラ124よりも前側の傾斜ローラ154,155の突出量は、第1後ローラ123及び第2後ローラ124の突出量よりも大きくなっている。
傾斜ローラ154,155が設けられる場合、吸引管220が接続される接続部141は、交点P上に設けられる。この状態で、図7の矢印で示すように、接続部141が時計回りに回転するように使用者が握持部230を操作すれば、吸込ノズル100も交点P回りに回転し、吸込ノズル100の向きが変わる。このとき、第1後ローラ123、第2後ローラ124及び傾斜ローラ154,155は、吸込ノズル100の向きの変更を妨げないように回転する。このため、吸込ノズル100の向きを変更するための操作が容易になる。
また、使用者が吸込ノズル100を前進させているときにおいて、第1後ローラ123が床面から受ける摩擦力の分力は、右向きであるのに対して、第1後ローラ123よりも前側の傾斜ローラ154の摩擦力の分力は、左向きである。このため、第1後ローラ123及び傾斜ローラ154の分力は、互いに相殺され得る。同様に、第2後ローラ124及び傾斜ローラ155の摩擦力の左右方向の分力も互いに相殺され得る。したがって、吸込ノズル100は、前進時において、左右に曲がりにくくなっており、吸込ノズル100の蛇行が抑制される。このため、傾斜ローラ154,155が設けられる場合には、図1乃至図5に示す吸込ノズル100において、蛇行を抑制するために設けられていた左補助ローラ151及び右補助ローラ152は、省略されてもよい。
<第2実施形態>
吸込ノズル100が床面から浮いた状態でブラシローラ120が回転すると、床面以外の部分にブラシローラ120が接触することが想定される。たとえば、ブラシローラ120がカーテンに接触すれば、カーテンがブラシローラ120に巻き込まれ得る。このような望ましくない状態を防ぐために、吸込ノズル100が床面から浮いた状態では、ブラシローラ120が回転しないように制御することが好ましい。このため、図8に示す吸込ノズル100は、吸込ノズル100が床面から浮いた状態か否かを検出するとともに、吸込ノズル100が床面から浮いた状態ではブラシローラ120が回転しないように構成されている。
(吸込ノズルの状態を検出する部分の構成)
吸込ノズル100は、可動部160と、位置検出部161と、駆動制御部162と、可動ローラ164と、を有しており、これらにより、吸込ノズル100が床面から浮いた状態でのブラシローラ120の回転が防止される。
可動部160を配置するために、後ケース部111の下面には、開口凹部163が下方に開口するように凹設されている。可動部160は、開口凹部163内でノズルケース110に対して取り付けられており、上下に揺動可能である。可動部160は、吸込ノズル100が床面から離れた離間状態では、自重により下方に回動し、図8に示すように、開口凹部163から突出した状態になる。図8に示す可動部160の位置を、以下の説明では、「突出位置」と称する。一方、吸込ノズル100が床面に接地された接地状態では、可動部160は、床面によって押し上げられて、図9に示すように、開口凹部163内に没入した状態になる。図9に示す可動部160の位置を、以下の説明では、「没入位置」と称する。
可動部160は、可動ローラ164の一部を収容するとともに可動ローラ164が左右方向に延びる回転軸回りに回転することを許容するように保持している。可動ローラ164は、図10に示すように、一対の後ローラ129よりも幅狭に構成されており、床面に対する可動ローラ164の接地面積は、床面に対する後ローラ129の接地面積よりも小さくなっている。
可動部160は、可動ローラ164よりも左側に配置された左支持板166と、可動ローラ164よりも右側に配置された右支持板167と、を有している。左支持板166及び右支持板167は、左右に間隔を空けて配置されており、これらの間の内部空間に可動ローラ164の大部分が収容された状態になっている。左支持板166及び右支持板167は、可動部160が没入位置にあるときに(すなわち、吸込ノズル100が接地状態にあるときに)、床面に対向する下端面168を有している。可動部160が没入位置にあるときにおいて、可動ローラ164の一部は、下端面168から突出しており、可動ローラ164は、吸込ノズル100が床面上を前進しているときに床面上で転動可能になっている。したがって、可動部160自体は、床面に接触しない。
可動部160は、可動ローラ164の回転軸に沿う方向(左右方向)における可動ローラ164の変位を所定値以内に収めるために、図11に示すように、左ストッパ爪171と、右ストッパ爪172と、を更に有している。左ストッパ爪171は、左支持板166の右側面から右方に突出しており、右ストッパ爪172は、右支持板167の左側面から左方に突出している。左ストッパ爪171及び右ストッパ爪172は、上述の下端面168の一部を形成しており、これらの間の空間は、可動ローラ164が突出する第1開口173を形成している。
可動部160が突出位置に回動すると、図12に示すように、下端面168に対して略直角の前端面175(ブラシローラ120側の面)が開口凹部163から突出する。なお、前端面175は、可動部160が没入位置にあるときには、開口凹部163内に入り込んだ状態になっている。前端面175には、第1開口173よりも幅広の第2開口174が形成されている。この第2開口174は、可動部160内に入り込んだ塵埃の除去を容易にするために設けられている。
位置検出部161及び駆動制御部162は、後ケース部111内に配置されている。位置検出部161は、可動部160が没入位置にあるか突出位置にあるかを検出するとともに可動部160の位置を表す信号を駆動制御部162に出力するように構成されている。位置検出部161は、たとえば、メカニカルスイッチによって構成されていてもよいし、光学的なセンサによって構成されていてもよい。駆動制御部162は、使用者が操作部231を操作することによって駆動部130が作動することを要求し、且つ、可動部160が没入位置にあることを位置検出部161が検出していることを条件として、駆動部130を作動させるように構成されている。したがって、使用者が駆動部130の作動を要求していない場合、又は、可動部160が突出位置にあることを位置検出部161が検出している場合には、駆動制御部162は、駆動部130を作動させない。
駆動制御部162は、CPU(Central Processing Unit)が搭載された制御基板によって構成されてもよいし、ハードロジック回路で構成されてもよい。ハードロジック回路は、1又は複数の半導体チップで構成され得る。ハードロジック回路と組み合わせて、マイクロコンピュータ及び周辺回路が用いられてもよい。
(吸込ノズルの動作)
吸込ノズル100が床面に接地した状態で、使用者が操作部231を操作し、駆動部130の作動を要求すれば、駆動部130が作動し、ブラシローラ120が回転する。このとき、ブラシローラ120は、床面上の塵埃を掻き取りつつ、床面に接触することにより、吸込ノズル100を前進させる推進力を生じさせる。
吸込ノズル100が前進している間、可動ローラ164は、床面上を転動する。このため、可動部160は、床面を傷つけにくい。可動ローラ164の回転軸は、左右方向に延びているため、可動ローラ164は、吸込ノズル100が前進しながら左又は右に曲がる動作を妨げ得る。しかしながら、可動ローラ164は、一対の後ローラ129と比べて幅狭であるので、可動ローラ164と床面との間の摩擦力は、比較的小さくなっている。このため、吸込ノズル100が前進しながら左又は右に曲がる動作に対して可動ローラ164が与える抗力は、過度に大きくならない。
吸込ノズル100が前進しながら左又は右に曲がる動作に対する可動ローラ164の抗力は、小さいものの、ある程度の大きさを有し得る。この抗力に起因して、可動ローラ164は、可動ローラ164の回転軸に沿う方向の力を受けて移動し得る。可動ローラ164が移動すると、可動ローラ164の側端面に左ストッパ爪171又は右ストッパ爪172が接触し、可動ローラ164の移動が規制される。このように、左ストッパ爪171及び右ストッパ爪172は、可動ローラ164の移動を規制するために設けられているので、左ストッパ爪171及び右ストッパ爪172の間の第1開口173は、比較的幅狭である。このため、可動ローラ164が転動している間において、第1開口173が形成された下端面168が床面に対向していても、床面上の塵埃は、可動部160内に入り込みにくくなっている。
使用者が操作部231を操作し、駆動部130の停止を要求したり、吸込ノズル100を上方に持ち上げたりすれば、駆動制御部162は、駆動部130を停止する。この結果、ブラシローラ120も停止する。
ブラシローラ120が停止した状態では、使用者は、ブラシローラ120に巻き込まれることなく可動部160からの塵埃の除去を行うことができる。この塵埃除去作業において、使用者は、指で、可動部160を開口凹部163から引き出して、可動部160の前端面175を開口凹部163から突出させることができる。前端面175には、比較的幅広の第2開口174が形成されているので、使用者は、第2開口174を通じて、可動部160の内部空間に容易にアクセスし、可動部160の内部空間内の塵埃を除去することができる。なお、第2開口174は、比較的広くなっているが、第2開口174が形成された前端面175は、吸込ノズル100が床面上を移動している間、開口凹部163内に入り込んだ状態になっている。このため、第2開口174を通じた塵埃の侵入は生じにくくなっている。
<第3実施形態>
ブラシローラ120の回転によって吸込ノズル100を前進させる推進力を生じさせるために、ブラシローラ120は、図4に示す矢印の方向に回転される。絨毯が敷かれた床面上でブラシローラ120が回転した場合、絨毯の毛がブラシローラ120と後ケース部111との間に挟まることが想定される。絨毯の毛がブラシローラ120と後ケース部111との間に挟まることを防止するために、吸込ノズル100は、図13に示すように改良されてもよい。
図13に示す吸込ノズル100の後ケース部111は、吸込空間115の後端を区画している区画壁176を有している。区画壁176の上部は、直立した姿勢になっているが、区画壁176の下部は、下方に行くにつれてブラシローラ120から離れるように前傾姿勢になっている。このため、絨毯の毛は、ブラシローラ120と後ケース部111との間に挟まれにくくなっている。
区画壁176の下部には、図14に示すように、吸込ノズル100の移動に伴って床面を擦る摺接帯178が設けられてもよい。摺接帯178は、区画壁176の下部に凹設された溝部から下方に突出している。摺接帯178の突出量は、一対の後ローラ129の突出量よりも大きく設定されており、ノズルケース110は、後傾姿勢になっている状態で、摺接帯178によっても保持される。また、摺接帯178は、左右方向に長くてもよい。摺接帯178は、多数のブラシ毛又はフェルト布といった軟質の材料から形成されていてもよい。
摺接帯178は、吸込ノズル100が移動しているときに、床面に擦れるので、床面に対する清掃能力が向上する。また、摺接帯178は、軟質の材料から形成されているので、摺接帯178が床面に擦れても、床面は傷つきにくい。
図13及び図14に示す区画壁176及び摺接帯178の構成は、第1実施形態及び第2実施形態の吸込ノズル100に適用可能である。
<第4実施形態>
第1実施形態乃至第3実施形態では、吸込ノズル100は、単一のブラシローラ120を有している。代替的に、吸込ノズル100は、図15に示すように、左右一対の第1ブラシローラ181及び第2ブラシローラ182を有していてもよい。
第1ブラシローラ181及び第2ブラシローラ182は、左右方向における吸込空間115の長さの半分より短い軸長を有しており、吸込空間115内において、左右に間隔を空けて左右対称に配置されている。また、後ケース部111内には、第1ブラシローラ181及び第2ブラシローラ182用の駆動モータ183,184が配置されており、これらの駆動モータ183,184は、駆動部130を構成している。さらに、駆動モータ183の駆動力を第1ブラシローラ181に伝達するための伝達機構(図示せず)が、左ケース部112及び後ケース部111内で構成されている。また、駆動モータ184の駆動力を第2ブラシローラ182に伝達するための伝達機構(図示せず)が、右ケース部113及び後ケース部111内で構成されている。
第2ブラシローラ182は、第1ブラシローラ181と左右対称的な構造を有しているので、第1ブラシローラ181の構造についてのみ以下に説明する。
左側に位置している第1ブラシローラ181は、左ケース部112に回転可能に片持ち支持されている。第1ブラシローラ181は、左ケース部112から右方にいくにつれて前方に傾斜している回転軸回りに回転するように左ケース部112に接続されている。第1ブラシローラ181は、このように傾斜した回転軸回りに回転すると、図15に示すように、右斜め後方に向いた力F3を床面に伝達する。なお、力F3の反力が第1ブラシローラ181によって吸込ノズル100にもたらされる推進力になる。このとき、第1後ローラ123と床面との間の摩擦力F1も右斜め後方に向いている。
第2ブラシローラ182は、第1ブラシローラ181と左右対称になっているので、第1ブラシローラ181が回転時に床面に与える力F4は、左斜め後方に向いている。なお、力F4の反力が第2ブラシローラ182によって吸込ノズル100にもたらされる推進力になる。このとき、第2後ローラ124と床面との間の摩擦力F2も左斜め後方に向いている。
ノズルケース110が左右に傾動していない状態では、第1ブラシローラ181及び第2ブラシローラ182は、略均等な力で床面に押し付けられる。この結果、これらの第1ブラシローラ181及び第2ブラシローラ182の力F3,F4の大きさは、互いに略等しくなる。このため、力F3の右向きの分力と力F4の左向きの分力とが互いに相殺され、吸込ノズル100が前進しているときに、左又は右に曲がりにくくなっている。
ノズルケース110が左方に傾動されれば、左側に位置している第1ブラシローラ181は、右側に位置している第2ブラシローラ182よりも強い力で床面に押し付けられる。この結果、第1ブラシローラ181の力F3は、第2ブラシローラ182の力F4よりも大きくなる。このとき、第1後ローラ123の摩擦力F1は、第2後ローラ124の摩擦力F2よりも大きくなっている。したがって、吸込ノズル100の進行方向は、第2ブラシローラ182及び第2後ローラ124よりはむしろ、第1ブラシローラ181及び第1後ローラ123の影響を強く受ける。第1ブラシローラ181の力F3及び第1後ローラ123の摩擦力F1はともに、右斜め後方を向いているので、これらの分力は、ともに右向きになる。このため、ノズルケース110を左方に傾動させることにより、吸込ノズル100は、前進しながら容易に左に曲がることができる。逆に、ノズルケース110が右方に傾動されれば、ノズルケース110は、前進しながら容易に右に曲がることができる。
図15に示す第1ブラシローラ181及び第2ブラシローラ182は、左右方向に対して前方に傾斜した回転軸回りに回転するように構成されている。代替的に、第1ブラシローラ181及び第2ブラシローラ182は、左右方向に対して傾斜していない回転軸回りに回転するように構成されていてもよい。この場合、第1ブラシローラ181のブラシ列122の螺旋形状は、ブラシ列122が床面に接触したときに、右斜め後向きの力F3が得られるように設定されていてもよい。また、第2ブラシローラ182のブラシ列122の螺旋形状は、ブラシ列122が床面に接触したときに、左斜め後向きの力F4が得られるように設定されていてもよい。更に代替的に、左右対称の力F3,F4が得られるように、第1ブラシローラ181及び第2ブラシローラ182の回転軸の傾斜及びこれらのブラシ列122の螺旋形状の両方が設定されていてもよい。
第1ブラシローラ181及び第2ブラシローラ182に係る構成は、第1実施形態乃至第3実施形態の吸込ノズル100に適用されてもよい。
(効果等)
上述の実施形態に係る吸込ノズル100は、以下の特徴を有しているとともに、以下の効果を奏する。
上述の実施形態に係る一の局面に係る吸込ノズルは、吸引式の掃除機用に利用可能である。吸込ノズルは、床面上の塵埃が吸い込まれるように下方に開口した吸込空間が形成されたノズルケースと、駆動力を発生させる駆動部と、床面に接触可能な状態でノズルケースによって回転可能に支持されているとともに、駆動部の駆動力によって回転し、床面上の塵埃を掻き取りつつ吸込ノズルを前進させる推進力を生じさせるブラシローラと、吸込ノズルが前進しているときにブラシローラよりも後側において床面上を転動するようにノズルケースに回転可能に取り付けられた後ローラと、を備える。ブラシローラ及び後ローラは、ノズルケースの下面が後方に向けて下がる後傾姿勢となるようにノズルケースを支持している。
上述の構成によれば、ノズルケースは、ノズルケースの下面が後方に向けて下がる後傾姿勢になるようにブラシローラ及び後ローラによって支持されているので、ノズルケースの前端と床面との間に比較的大きな隙間を形成可能である。このため、例えば、絨毯が敷かれた床面上を吸込ノズルが前進しているときに、絨毯の毛がノズルケースの前端に引っ掛かることは生じにくい。したがって、絨毯の毛がノズルケースの前端に引っ掛かって、吸込ノズルの姿勢が崩れることは生じにくくなるので、吸込ノズルは、姿勢が安定した状態で絨毯が敷かれた床面上を前進することができる。この場合、絨毯とブラシローラとの接触状態が安定するので、駆動部がブラシローラを回転しているときにブラシローラから床面に伝わる推進力が過度に弱まることは生じにくくなる。すなわち、吸込ノズルは、変動が抑制された推進力をブラシローラから得ながら床面上を前進することができる。しかも、吸込ノズルが床面に敷かれた絨毯上を前進しているときにノズルケースの下側に入り込んだ絨毯の毛は、後傾姿勢のノズルケースの下面によって徐々に寝かせられた状態になるので、吸込ノズルの前進は、絨毯の毛によっては妨げられにくくなる。
上述の構成において、掃除機は、吸込空間を通じて吸い込まれた塵埃が流れる流路を形成している吸引管を備えていてもよい。ノズルケースは、後ローラよりも前側且つブラシローラよりも後側の位置で吸引管に接続可能に構成されていてもよい。
ノズルケースが後ローラを軸にして後側に傾動した場合には、後ローラよりも前側に位置するブラシローラは、床面から離間した状態になり得る。また、ノズルケースがブラシローラを軸にして前側に傾動した場合には、ブラシローラよりも後側に位置している後ローラは、床面から離間した状態になり得る。これらの望ましくない状態を回避するために、上述の構成では、吸引管は、後ローラよりも前側且つブラシローラよりも後側でノズルケースに接続されている。この接続部分では、使用者が吸引管を通じて吸込ノズルを床面に押し付ける下向きの力を加えることができる。後ローラよりも前側且つブラシローラよりも後側の位置で下向きの力が加われば、上述の傾動が抑制される。
上述の構成において、吸込ノズルは、後ローラである第1後ローラよりも左側又は右側においてノズルケースに回転可能に取り付けられた第2後ローラを更に備えていてもよい。第1後ローラは、吸込ノズルが左斜め前方又は右斜め前方へ移動することを補助するように傾斜した回転軸回りに床面上を転動可能であってもよい。第2後ローラは、第1後ローラの回転軸に対して左右対称の回転軸回りに回転し、吸込ノズルが右斜め前方又は左斜め前方へ移動することを補助するように床面上を転動可能であってもよい。
上述の構成によれば、第1後ローラ及び第2後ローラの回転軸は、左右対称になっている。このため、第1後ローラ及び第2後ローラが床面に互いに等しい力で床面に押し付けられた状態で吸込ノズルが前進しているときには、第1後ローラ及び第2後ローラから床面に伝わる左右方向の力は、互いに相殺される。したがって、吸込ノズルは、左又は右に曲がることなく前進することができる。
一方、吸込ノズルが左傾又は右傾した姿勢になれば、第1後ローラ及び第2後ローラのうち一方が他方よりも強い力で床面に押し付けられる。この場合、吸込ノズルの進行方向は、強い力で床面に押し付けられたローラからの影響を強く受ける。このため、強い力で床面に押し付けられたローラが左斜め前方への吸込ノズルの移動を補助するように傾斜した回転軸回りに床面上で転動すれば、吸込ノズルは、左斜め前方に軽い力で移動することができる。当該ローラが、逆に、右斜め前方への吸込ノズルの移動を補助するように傾斜した回転軸回りに床面上で転動すれば、吸込ノズルは、右斜め前方に軽い力で移動することができる。
上述の構成において、掃除機は、吸込空間を通じて吸い込まれた塵埃が流れる流路を形成している吸引管を備えていてもよい。吸込ノズルは、吸込ノズルは、後ローラである第1後ローラよりも左側又は右側においてノズルケースに回転可能に取り付けられた第2後ローラを更に備えていてもよい。第1後ローラは、吸込ノズルが左斜め前方又は右斜め前方へ移動することを補助するように傾斜した回転軸回りに床面上を転動可能であってもよい。第2後ローラは、第1後ローラの回転軸に対して左右対称の回転軸回りに回転し、吸込ノズルが右斜め前方又は左斜め前方へ移動することを補助するように床面上を転動可能であってもよい。ノズルケースは、ブラシローラよりも後側で吸引管に接続可能に構成された接続部を有していてもよい。接続部は、第1後ローラ及び第2後ローラよりも前側の位置であって、第1後ローラ及び第2後ローラから等距離だけ離れた位置に設けられていてもよい。
上述の構成によれば、使用者が吸引管を通じて吸込ノズルを床面に押し付けながら前方に移動させているときに、使用者の力は、吸引管が接続された接続部を通じて吸込ノズルに伝わる。このとき、接続部から第1後ローラ及び第2後ローラの距離が互いに等しくなっているので、第1後ローラ及び第2後ローラは、互いに略等しい力で床面に押し付けられ得る。この場合、第1後ローラ及び第2後ローラから生ずる左右方向の力の大きさは略等しくなるので、これらの左右方向の力は、互いに相殺されやすくなる。このため、使用者が吸込ノズルを前進させているときに、吸込ノズルが左又は右に曲がりにくくなる。
上述の構成において、ノズルケースは、接続部が設けられた中央部分と、中央部分から左側に張り出した左部分と、中央部分から右側に張り出した右部分と、を有していてもよい。左部分及び右部分が床面から離れるように第1後ローラ及び第2後ローラが中央部分に取り付けられていることにより、吸引管が左右に傾動したときに吸引管の左右の傾動に応じてノズルケースが傾動することが許容されていてもよい。第1後ローラ及び第2後ローラのうち左側に位置しているローラは、吸込ノズルが左斜め前方へ移動することを補助するように傾斜した回転軸回りに床面上を転動可能であり、右側に位置しているローラは、吸込ノズルが右斜め前方へ移動することを補助するように傾斜した回転軸回りに床面上を転動可能であってもよい。
上述の構成によれば、ノズルケースの中央部分において第1後ローラ及び第2後ローラが取り付けられているので、吸込ノズルは、ノズルケースの左部分及び右部分が床面から離れた状態で、床面上で支持され得る。ノズルケースの左部分及び右部分と床面との間に空間が形成されれば、ノズルケースが左右に傾動することが許容される。このため、使用者が吸引管を左右に傾動させれば、この傾動に応じて、ノズルケースは、左右に傾動し得る。
ノズルケースが左側に傾動すれば、第1後ローラ及び第2後ローラのうち左側に位置しているローラが右側に位置しているローラよりも強く床面に押し付けられる。この状態では、左側に位置しているローラが吸込ノズルの進行方向に与える影響は、右側に位置しているローラが吸込ノズルの進行方向に与える影響よりも大きくなる。このため、使用者が吸引管を左側に傾動させることにより、吸込ノズルは、左斜め前方に移動することができる。逆に、使用者が吸引管を右側に傾動させれば、吸込ノズルは、右斜め前方に移動することができる。
上述の構成において、吸込ノズルは、吸込空間内でブラシローラである第1ブラシローラと左右対称に設けられているとともに、床面に接触可能な状態でノズルケースによって回転可能に支持されて駆動部によって回転駆動される第2ブラシローラを更に備えていてもよい。第1ブラシローラ及び第2ブラシローラのうち左側に位置しているブラシローラは、駆動部によって駆動されているときに、吸込ノズルを左斜め前方に移動させる方向の推進力が生ずるように傾斜した回転軸回りに回転する一方で、右側に位置しているブラシローラは、吸込ノズルを右斜め前方に移動させる方向の推進力が生ずるように傾斜した回転軸回りに回転していてもよい。
上述の構成において、吸込ノズルは、吸込空間内でブラシローラである第1ブラシローラと左右対称に設けられているとともに、床面に接触可能な状態でノズルケースによって回転可能に支持されて駆動部によって回転駆動される第2ブラシローラを更に備えていてもよい。第1ブラシローラ及び第2ブラシローラそれぞれは、左右方向に延設されたローラ本体と、ローラ本体の外周面から突出したブラシ列と、を含んでいてもよい。第1ブラシローラ及び第2ブラシローラのうち左側に位置しているブラシローラのブラシ列は、駆動部によって駆動されているときに、当該ブラシ列が床面に接して吸込ノズルを左斜め前方に移動させる方向の推進力が生ずるように延設されており、右側に位置しているブラシローラのブラシ列は、当該ブラシ列が床面に接して吸込ノズルを右斜め前方に移動させる方向の推進力が生ずるように延設されていてもよい。
上述の構成によれば、第1ブラシローラ及び第2ブラシローラは、左右対称に配置されている。このため、これらのブラシローラが床面に均一な力で接触した状態で回転駆動されれば、第1ブラシローラ及び第2ブラシローラによりもたらされる推進力の左右方向の分力は、互いに相殺される。したがって、これらのブラシローラが床面に均一な力で接触した状態で駆動部により回転駆動されれば、吸込ノズルは、まっすぐに前進し得る。
一方、ノズルケースが左側に傾動すれば、左側に位置しているブラシローラは、右側に位置しているブラシローラよりも強く床面に接触する。このため、左側に位置しているブラシローラによりもたらされる推進力は、右側に位置しているブラシローラによりもたらされる推進力よりも強くなり、吸込ノズルは、左に曲がりながら前進することができる。このとき、第1後ローラ及び第2後ローラのうち左側に位置しているローラが右側に位置しているローラよりも強く床面に押し付けられており、左側に位置しているローラの影響が比較的強くなっている。左側に位置しているローラは、吸込ノズルが左斜め前方へ移動することを補助しており、左側に位置しているブラシローラによりもたらされる推進力の方向と同じ方向の吸込ノズルの移動を補助する。このため、吸込ノズルが左に曲がりながら前進することが容易になっている。逆に、ノズルケースが右側に傾動すれば、吸込ノズルは、前進しながら容易に右に曲がることができる。
上述の構成において、吸込ノズルは、左右方向に延びる回転軸回りに回転可能に左部分に取り付けられた左補助ローラと、左右方向に延びる回転軸回りに回転可能に右部分に取り付けられた右補助ローラと、を更に備えていてもよい。左補助ローラ及び右補助ローラは、ノズルケースが左右方向に傾動していない状態で床面から浮いた状態になっていてもよい。左補助ローラは、ノズルケースが左側に所定の角度だけ傾動したときに床面に接地してもよい。右補助ローラは、ノズルケースが右側に所定の角度だけ傾動したときに床面に接地してもよい。
上述の構成によれば、左補助ローラは、ノズルケースが左側に所定の角度だけ傾動したときに床面に接地する。この状態において、左補助ローラは、左右方向に延びる回転軸回りに回転可能であるので、吸込ノズルの前後方向の移動を妨げない一方で、左右方向における吸込ノズルの移動を妨げる。同様に、右補助ローラは、ノズルケースが右側に所定の角度だけ傾動したときに、前後方向における吸込ノズルの移動を許容しつつ、左右方向における吸込ノズルの移動を妨げる。一方、左補助ローラ及び右補助ローラが床面と接触しない程度に吸込ノズルが傾動された状態では、吸込ノズルは、左補助ローラ及び右補助ローラによって妨げられることなく、左又は右に曲がりながら前進することができる。
上述の構成において、ノズルケースには、後ローラの一部がノズルケースの下面から突出している状態で後ローラを収容可能に下方に開口した収容凹部が形成されていてもよい。吸込ノズルは、収容凹部内において、後ローラを回転可能に支持しているローラシャフトと、ローラシャフトの軸方向において後ローラが所定量以上に変位することを規制するストッパ部と、を更に備えていてもよい。ストッパ部は、ローラシャフトよりも上側に設けられていてもよい。
上述の構成によれば、収容凹部に収容された後ローラの一部は、ノズルケースの下面から突出しているので、後ローラは、床面に接地して床面上を転動することができる。この場合、後ローラに付着した塵埃が収容凹部内に入り込み、収容凹部内で塵埃が溜まることが生じ得る。収容凹部内の塵埃を使用者が除去することを容易にするためには、収容凹部の開口幅を大きくすることが好ましい。しかしながら、収容凹部の開口幅を単に広くすれば、後ローラがローラシャフトに沿って大きく変位し、吸込ノズルの進行方向が左右に意図せず振れることが生じ得る。このような後ローラの変位を規制するためにストッパ部が設けられている。このストッパ部は、ローラシャフトよりも上側に設けられているので、収容凹部の下端の開口部分を狭めない。このため、使用者は、収容凹部の下端の開口部分を通じて、収容凹部の内部にアクセスして、収容凹部内の塵埃を除去することができる。
上述の構成において、ストッパ部は、ローラシャフトから離間した状態で収容凹部内に設けられていてもよい。
上述の構成によれば、ストッパ部は、ローラシャフトから離間しているので、塵埃がストッパ部とローラシャフトとの間の空間よりも小さければ、当該空間で捕捉されにくい。また、仮に、当該空間よりも大きな塵埃が当該空間に圧縮した状態で挟まったとしても、塵埃に作用している圧縮力は、過度に大きくならず、使用者は、この塵埃を軽い力で除去することができる。
上述の構成において、吸込ノズル100は、ローラシャフトの軸方向に後ローラを挟むように配置された一対のハブを更に備えていてもよい。ストッパ部は、一対のハブに対して間隔を空けて対向配置された一対のストッパ片を有していてもよい。各ストッパ片は、後ローラに対して空間を空けた状態で当該ストッパ片に対向しているハブに当接することによりローラシャフトの軸方向における後ローラの変位を規制するように構成されている。
上述の構成によれば、一対のストッパ片が一対のハブと対向配置されており、ハブ及び後ローラが一方のストッパ片に向けて変位したときにハブが当該ストッパ片と当接すれば、ローラシャフトの軸方向における後ローラの変位が規制される。
ローラシャフトの軸方向における後ローラの変位を規制するために、ストッパ片を後ローラに当接させる構造も考え得るが、この場合には、ストッパ片と後ローラとの間に空間を形成することはできない。一方、ストッパ片をハブに当接させる構造では、後ローラとストッパ片との間に空間を形成することができる。当該空間よりも後ローラに付着した塵埃が小さければ、当該空間に挟まった状態で留まることはない。仮に、この空間よりも大きな塵埃が後ローラとストッパ片とにより圧縮された状態で挟まっていたとしても、この塵埃に作用する圧縮力は、過度に大きくならず、使用者は、小さな力で塵埃を除去し得る。
上述の構成において、ノズルケースには、下方に開口した開口凹部が形成されていてもよい。吸込ノズルは、吸込ノズルが床面から離間した離間状態になっているときに開口凹部から突出した突出位置にあり、吸込ノズルが床面に接地した接地状態になっているときに突出位置から開口凹部に没入した没入位置にあるようにノズルケースに取り付けられた可動部と、可動部が没入位置にあるか否かを検出する位置検出部と、可動部が没入位置になっていることを位置検出部が検出したことを条件として、駆動部を作動させる駆動制御部と、を更に備えていてもよい。
上述の構成によれば、吸込ノズルが床面に接地した接地状態になっているとき、可動部は、床面によって上方に押され、開口凹部に没入した状態になる。一方、吸込ノズルが床面から離れると、可動部は、開口凹部から突出した突出位置になる。このような可動部の位置を位置検出部が検出することにより、吸込ノズルが接地状態になっているか否かが分かる。すなわち、可動部が没入位置になっていることを位置検出部が検出すれば、吸込ノズルは、接地状態になっており、この状態で、駆動部がブラシローラを回転させても、ブラシローラにカーテンなどが巻き込まれることはない。このため、駆動制御部は、可動部が没入位置になっていることを位置検出部が検出したことを条件として、駆動部を作動させる。
上述の構成において、吸込ノズルは、接地状態時に床面上で転動するように可動部に保持された可動ローラを更に備えていてもよい。可動部には、可動ローラを収容する内部空間と、可動部が没入位置にあるときに床面に対向した状態で開口凹部から露出する第1開口と、可動部が没入位置にあるときに開口凹部内に入り込んでいる一方で可動部が突出位置にあるときに開口凹部から露出する第2開口と、が形成されていてもよい。第1開口は、可動ローラの一部が突出することを許容する大きさを有しているとともに内部空間に連通していてもよい。第2開口は、第1開口を通じて内部空間内に入り込んだ塵埃の除去を許容するように第1開口よりも広くなっているとともに内部空間に連通していてもよい。
上述の構成によれば、可動部が没入位置にあるときには、可動部の第1開口は、床面に対向した状態で開口凹部から露出している。このとき、可動ローラの一部は、第1開口を通じて突出している。このため、可動ローラは、吸込ノズルが床面に接地した接地状態になっているときに床面上で転動することができ、床面は、傷つきにくくなっている。可動ローラが床面上で転動しているとき、可動ローラに付着した塵埃は、第1開口を通じて、可動部の内部空間に入り込み得る。このような塵埃の除去を容易にするために、可動部には、第1開口よりも広い第2開口が形成されている。第2開口が第1開口よりも広くなっていても、第2開口は、可動部が没入位置にあるときには、開口凹部内に入り込んだ状態になっているので、第2開口を通じた可動部内への塵埃の侵入は、生じにくくなっている。
上述の構成において、ノズルケースには、下方に開口した開口凹部が形成されていてもよい。吸込ノズルは、吸込ノズルが床面から離間した離間状態になっているときに開口凹部から突出した突出位置にあり、吸込ノズルが床面に接地した接地状態になっているときに突出位置から開口凹部に没入した没入位置にあるようにノズルケースに取り付けられた可動部と、接地状態時に床面上で転動するように可動部に保持された可動ローラと、を更に備えていてもよい。床面に対する可動ローラの接地面積は、床面に対する後ローラの接地面積よりも小さくてもよい。
上述の構成によれば、第1後ローラ及び第2後ローラは、床面に伝わる左右方向の力が互いに相殺されるように左右対称になっているが、可動ローラが床面に接地すれば、この力のバランスが崩れ得る。このため、可動ローラは、第1後ローラ及び第2後ローラよりも狭い接地面積で床面に接触するように構成されており、この結果、可動ローラが第1後ローラ及び第2後ローラの間の力のバランスに与える影響が低減される。したがって、可動ローラが床面に接地していても、使用者が吸込ノズルを前進させているときに、吸込ノズルが左又は右に曲がりにくくなる。
上述の構成において、ノズルケースは、吸込空間の後端を区画する区画壁を有していてもよい。区画壁の下部は、下方にいくにつれてブラシローラから離れるような前傾姿勢になっていてもよい。
ブラシローラの周囲の空間が狭ければ狭いほど、吸込ノズルは、小型化され得る。このため、区画壁は、可能な限りブラシローラに近接した状態にされることが好ましい。しかし、この場合、吸込ノズルを前進させるようにブラシローラが回転したときに、床面に敷かれた絨毯の毛が区画壁の下部とブラシローラとの間に挟まれることが想定される。このような事態を回避するために、上述の構成では、区画壁の下部は、下方にいくにつれてブラシローラから離れるような前傾姿勢になっている。このため、絨毯に近い位置では、ブラシローラと区画壁との間の空間は広くなっており、絨毯の毛がブラシローラと区画壁とに挟まれた状態が生じにくくなっている。