JP7259522B2 - トレッド用ゴム組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、トレッド用ゴム組成物および該トレッド用ゴム組成物により構成されたトレッドを有する空気入りタイヤに関する。
空気入りタイヤのトレッドゴムは路面と接触するため、安全性等の観点から高いウェットグリップ性能が要求されている。ウェットグリップ性能を改善する方法としては、トレッドゴムにシリカ等の無機フィラーを配合する方法がよく知られており、更なるウェットグリップ性能の改善手法として、水酸化アルミニウムを添加する手法(例えば、特許文献1)等も提案されている。
特許第4559573号公報
しかしながら、従来技術には、ドライグリップ性能および耐摩耗性について改善の余地がある。
本発明は、ドライグリップ性能および耐摩耗性能の総合性能が改善されたトレッド用ゴム組成物、および該トレッド用ゴム組成物により構成されたトレッドを有する空気入りタイヤを提供することを目的とする。
本発明者は、鋭意検討の結果、ジエン系ゴム成分に、特定の平均粒子径を有する水酸化アルミニウム、並びにアルキルフェノール系樹脂を所定量配合することで、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、
〔1〕ジエン系ゴム100質量部に対し、平均粒子径(D50)が0.80μm以上である水酸化アルミニウムを3.0質量部以上、およびアルキルフェノール系樹脂を6.0質量部以上含有するトレッド用ゴム組成物、
〔2〕ジエン系ゴム中に80質量%以上のスチレンブタジエンゴムを含有する、〔1〕記載のトレッド用ゴム組成物、
〔3〕カーボンブラックを50~150質量部含有する、〔1〕または〔2〕記載のトレッド用ゴム組成物、
〔4〕液状ジエン系重合体を10~100質量部含有する、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載のトレッド用ゴム組成物、
〔5〕水酸化アルミニウムの含有量が30質量部以下である、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載のトレッド用ゴム組成物、
〔6〕〔1〕~〔5〕のいずれかに記載のトレッド用ゴム組成物により構成されたトレッドを有する空気入りタイヤ、に関する。
本発明によれば、ドライグリップ性能および耐摩耗性能の総合性能が改善されたトレッド用ゴム組成物、および該トレッド用ゴム組成物により構成されたトレッドを有する空気入りタイヤが提供される。
本発明の一実施形態は、ジエン系ゴム成分に、特定の平均粒子径を有する水酸化アルミニウム、並びにアルキルフェノール系樹脂を所定量含有することで、ドライグリップ性能および耐摩耗性能の総合性能が改善されたゴム組成物である。そのメカニズムは明らかではないが、比較的大粒径の水酸化アルミニウムは、ゴムとの単位質量あたりの接触面積が小さくなり、それにより摩耗後のゴム表面を過度に粗くしない状態でき、その状態の表面において比較的軟化点の高いアルキルフェノール系樹脂が適度に軟化することでゴムの硬度を極端に落とさずに粘着力を上げ、その結果、ドライグリップ性能および耐摩耗性能の総合性能が改善されるのではないかと考えられる。
<ゴム成分>
本実施形態において使用されるゴム成分としては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)等のジエン系ゴムが挙げられる。なかでも、グリップ性能および耐摩耗性がバランスよく得られるという理由から、NR、BR、およびSBRが好ましく、SBRがより好ましい。これらのゴム成分は、前記のうち1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(SBR)
SBRとしては、特に限定されず、例えば未変性の乳化重合スチレンブタジエンゴム(E-SBR)や溶液重合スチレンブタジエンゴム(S-SBR)、これらを変性した変性乳化重合スチレンブタジエンゴム(変性E-SBR)や変性溶液重合スチレンブタジエンゴム(変性S-SBR)等の変性SBRが挙げられる。またSBRとしては、伸展油を加えて柔軟性を調整した油展タイプのものと、伸展油を加えない非油展タイプのものとがあるが、このいずれも使用可能である。これらのSBRは、前記のうち1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本実施形態において使用可能なS-SBRとしては、JSR(株)、住友化学(株)、宇部興産(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等によって製造販売されるS-SBRが挙げられる。
SBRのスチレン含有量は、グリップ性能および耐摩耗性能の観点から、20質量%以上が好ましく、25質量%以上より好ましい。また、グリップ性能の温度依存性および耐摩耗性の観点からは、50質量%以下が好ましく、47質量%以下がより好ましい。なお、該スチレン含有量は、1H-NMR測定により算出される値である。
SBRのビニル含有量は、グリップ性能の観点から、15質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましい。また、グリップ性能の温度依存性の観点からは、65質量%以下が好ましく、63質量%以下が好ましい。なお、該ビニル含有量(1,2-結合ブタジエン単位量)は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定される値である。
SBRの重量平均分子量(Mw)は、グリップ性能等の観点から、10万以上が好ましく、15万以上がより好ましく、25万以上がさらに好ましい。また、架橋均一性等の観点からは、200万以下が好ましく、100万以下がより好ましい。
ジエン系ゴム100質量%中のSBRの含有量は、グリップ性能の観点から、80質量%以上が好ましく、85質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好い。SBRの含有量が80質量%未満であると、十分なグリップ性能が得られない傾向がある。一方、SBRの含有量の上限は特に制限されず、ジエン系ゴムをSBRのみからなるゴム成分としてもよい。なお、SBRとして油展タイプのSBRを用いる場合は、当該油展タイプのSBR中に含まれる固形分としてのSBR自体の含有量をゴム成分中の含有量とする。
BRとしては、特に限定されず、例えば、シス1,4結合含有率が50%未満のBR(ローシスBR)、シス1,4結合含有率が90%以上のBR(ハイシスBR)、希土類元素系触媒を用いて合成された希土類系ブタジエンゴム(希土類系BR)、シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR(SPB含有BR)、変性BR(ハイシス変性BR、ローシス変性BR)等タイヤ工業において一般的なものを使用することができる。これらのBRのなかでも、耐摩耗性能に優れるという理由から、ハイシスBRが好ましい。
ハイシスBRとしては、例えば、日本ゼオン(株)製のBR1220、宇部興産(株)製のBR130B、BR150B、BR150L、JSR(株)製のBR730等が挙げられる。ハイシスBRを含有することで低温特性および耐摩耗性能を向上させることができる。希土類系BRとしては、例えば、ランクセス(株)製のBUNA-CB25等が挙げられる。
BRのシス1,4結合含有率(シス含量)は、耐久性や耐摩耗性能の観点から、90質量%以上が好ましく、93質量%以上がより好ましく、95質量%以上がより好ましい。
NRとしては、特に限定されず、タイヤ業界において一般的なものを用いることができ、例えば、SIR20、RSS#3、TSR20等が挙げられる。
<水酸化アルミニウム>
本実施形態に係るゴム組成物は、特定の平均粒子径(D50)を有する水酸化アルミニウムを含有する。水酸化アルミニウムは、ゴム表面を適度に粗くするため、ドライ路面との接触面積が増大し、ドライグリップ性能を向上させることができる。
水酸化アルミニウムの平均粒子径(D50)は、0.80μm以上であり、0.83μm以上が好ましく、0.86μm以上がより好ましく、0.88μm以上がさらに好ましい。平均粒子径が0.80μm未満の場合は、水酸化アルミニウムの分散が困難となり、耐摩耗性が悪化する傾向がある。また、水酸化アルミニウムの平均粒子径(D50)は、1.30μm以下が好ましく、1.25μm以下がより好ましく、1.18μm以下がさらに好ましく、1.05μm以下がさらに好ましく、0.98μm以下が特に好ましい。平均粒子径が1.30μmを超える場合は、水酸化アルミニウムが破壊核となり、耐摩耗性が低下する傾向がある。なお、本明細書における平均粒子径(D50)とは、粒子径分布測定装置により求めた粒子径分布曲線の積算質量値50%の粒子径である。
水酸化アルミニウムの窒素吸着比表面積(N2SA)は、グリップ性能の観点から、4.0m2/g以上が好ましく、5.0m2/g以上がより好ましく、6.8m2/g以上がさらに好ましく、7.5m2/g以上が特に好ましい。また、水酸化アルミニウムのN2SAは、水酸化アルミニウムの分散性、再凝集防止、耐摩耗性能の観点から、50.0m2/g以下が好ましく、40.0m2/g以下がより好ましく、20.0m2/g以下がより好ましく、14.0m2/g以下が特に好ましい。なお、本明細書における水酸化アルミニウムのN2SAは、ASTM D3037-81に準じてBET法で測定される値である。
水酸化アルミニウムのジエン系ゴム成分100質量部に対する含有量は、3.0質量部以上であり、4.0質量部以上が好ましく、5.0質量部以上がより好ましい。水酸化アルミニウムの含有量が3.0質量部未満の場合は、ドライグリップ性能の改善効果が小さい傾向がある。また、水酸化アルミニウムの含有量は、30.0質量部未満が好ましく、25.0質量部未満がより好ましく、20.0質量部未満がさらに好ましく、18.0質量部未満がさらに好まし。水酸化アルミニウムの含有量が30.0質量部以上の場合は、耐摩耗性能が低下する傾向がある。
<樹脂成分>
本発明における可塑剤は特定の樹脂として、アルキルフェノール系樹脂を含有する。アルキルフェノール系樹脂を用いることにより、その粘着効果でグリップ力が向上する。さらに、所定の平均粒子径を有する水酸化アルミニウムとアルキルフェノール系樹脂を併用することにより、従来にはないドライグリップ性能の相乗的な向上を実現することができる。
アルキルフェノール系樹脂としては、特に限定されず、アルキルフェノールと、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、フルフラール等のアルデヒド類とを酸又はアルカリ触媒で反応させることにより得られるアルキルフェノールアルデヒド縮合樹脂;アルキルフェノールと、アセチレン等のアルキンとを反応させて得られるアルキルフェノールアルキン縮合樹脂;これらの樹脂を、カシューオイル、トールオイル、アマニ油、各種動植物油、不飽和脂肪酸、ロジン、アルキルベンゼン樹脂、アニリン、メラミン等の化合物を用いて変性した変性アルキルフェノール樹脂;等が挙げられる。なかでも、本発明の効果の観点から、アルキルフェノールアルキン縮合樹脂が好ましく、アルキルフェノールアセチレン縮合樹脂が特に好ましい。
アルキルフェノール系樹脂を構成するアルキルフェノールとしては、クレゾール、キシレノール、t-ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール等が挙げられる。なかでも、t-ブチルフェノール等の分枝状アルキル基を有するフェノールが好ましく、t-ブチルフェノールが特に好ましい。
アルキルフェノール系樹脂の窒素吸着比表面積(N2SA)は、0.5m2/g以上が好ましく、1.0m2/g以上がより好ましく、2.0m2/g以上がさらに好ましい。これにより、本発明の効果がより好適に得られる。また、該N2SAの上限は特に限定されない。なお、本明細書において、アルキルフェノール系樹脂の窒素吸着比表面積は、JIS K 6217-2:2001に準拠して求められる。
アルキルフェノール系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、耐摩耗性の観点から、60℃以上が好ましく、65℃以上がより好ましく、80℃以上がさらに好ましい。また、該Tgは、110℃以下が好ましく、105℃以下がより好ましく、100℃以下がさらに好ましい。なお、本発明において、アルキルフェノール系樹脂のガラス転移温度は、JIS K 7121に従い、昇温速度10℃/分の条件で示差走査熱量測定(DSC)を行って測定される値である。
アルキルフェノール樹脂の軟化点は、ドライグリップ性能の観点から、110℃以上が好ましく、120℃以上がより好ましく、130℃以上がさらに好ましい。また、グリップ性能の温度依存性観点からは、200℃以下が好ましく、180℃以下がより好ましく、160℃以下がさらに好ましい。なお、本明細書において、軟化点は、JIS K 6220-1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
アルキルフェノール系樹脂の水酸基価(OH価)は、ドライグリップ性能の観点から、15mgKOH/g以上が好ましく、30mgKOH/g以上がより好ましく、100mgKOH/g以上がさらに好ましく、150mgKOH/g以上が特に好ましい。また、耐摩耗性の観点からは、250mgKOH/g以下が好ましく、200mgKOH/g以下がより好ましい。なお、本明細書において、アルキルフェノール系樹脂のOH価とは、樹脂1gをアセチル化するとき、水酸基と結合した酢酸を中和するのに要する水酸化カリウムの量をミリグラム数で表したものであり、電位差滴定法(JIS K 0070:1992)により測定した値である。
アルキルフェノール系樹脂は、市販品を使用してもよいが、例えば、市販品のアルキルフェノール系樹脂に粉砕処理等を施し、上記N2SA等の特性を付与することで調製されることが好ましい。具体的には、例えば、BASF社製のコレシン等の市販品に粉砕処理を施したもの等が挙げられる。
アルキルフェノール系樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、6.0質量部以上であり、10.0質量部以上が好ましく、15.0質量部以上がさらに好ましい。6.0質量部未満であると、充分な粘着効果が得られず、ドライグリップ性能の向上が得られない。また、耐摩耗性の観点からは、80.0質量部以下が好ましく、60.0質量部以下がより好ましく、40.0質量部以下がさらに好ましい。
水酸化アルミニウムとアルキルフェノール系樹脂との相乗効果によって効果が発揮されるため、両者の含有量の比率が重要である。水酸化アルミニウムの含有量に対するアルキルフェノール系樹脂の含有量の比(アルキルフェノール系樹脂の含有量/水酸化アルミニウムの含有量)は、0.5以上が好ましく、0.8以上がより好ましく、1.0以上がさらに好ましく、1.2以上が特に好ましい。また、該含有量比は、5.0以下が好ましく、4.0以下がより好ましく、3.0以下がさらに好ましく、2.5以下が特に好ましい。
本実施形態においては、上記アルキルフェノール系樹脂以外に、本発明の効果を阻害しない範囲で、他の樹脂を配合してもよい。そのような樹脂としては、例えば、クマロンインデン樹脂、テルペン系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ロジン系樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂(DCPD樹脂)等が挙げられる。また別の実施形態において、アクリル系樹脂および水素添加テルペン芳香族樹脂を含まないゴム組成物とすることができる。
<軟化剤>
本実施形態においては、安定したグリップ性能等の観点から、さらに軟化剤を配合することが好ましい。軟化剤としては特に限定されないが、オイル、液状ジエン系重合体等が挙げられる。
オイルとしては、例えば、パラフィン系、アロマ系、ナフテン系プロセスオイル等のプロセスオイルが挙げられる。
オイルを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、耐摩耗性能の観点から、100質量部以下が好ましく、80質量部以下がより好ましい。また、加工性の観点からは、5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましい。なお、本明細書において、オイルの含有量には、油展ゴムに含まれるオイル量も含まれる。
液状ジエン系重合体は、常温(25℃)で液体状態のジエン系重合体である。液状ジエン系重合体の重量平均分子量(Mw)は、耐摩耗性能の観点から、1000以上が好ましく、3000以上がより好ましい。また、該Mwは、重合溶液の粘度が高くなり過ぎ生産性が悪化したり、破壊特性が低下するという理由から、200000以下が好ましく、150000以下がより好ましい。なお、本明細書において、液状ジエン系重合体のMwは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算値である。
液状ジエン系重合体としては、液状スチレンブタジエン共重合体(液状SBR)、液状ブタジエン重合体(液状BR)、液状イソプレン重合体(液状IR)、液状スチレンイソプレン共重合体(液状SIR)等が挙げられる。なかでも、耐摩耗性と走行中の安定したグリップ性能がバランスよく得られるという理由から、液状SBRが好ましい。
液状ジエン系重合体を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、ドライグリップ性能の観点から、10質量部以上が好ましく、20質量部以上がより好ましい。また、耐摩耗性能の観点からは、100質量部以下が好ましく、80質量部以下がより好ましい。
樹脂成分と軟化剤を合わせた可塑剤の総量は、ゴム成分100質量部に対する含有量は、ドライグリップ性能の観点から、20質量部以上が好ましく、30質量部以上がより好ましく、40質量部以上がさらに好ましく、50質量部以上が特に好ましい。また、耐摩耗性能の観点からは、100質量部以下が好ましく、90質量部以下がより好ましく、80質量部以下がさらに好ましい。
<その他の成分>
本実施形態に係るゴム組成物は、前記のゴム成分、水酸化アルミニウム、樹脂成分、および軟化剤以外にも、従来からタイヤ工業に使用される配合剤や添加剤、例えば、前記の水酸化アルミニウム以外のフィラー、シランカップリング剤、ワックス、老化防止剤、ステアリン酸、酸化亜鉛、硫黄等の加硫剤、加硫促進剤等を、必要に応じて適宜含有することができる。
フィラーとしては、水酸化アルミニウム以外に、さらにその他のフィラーを用いてもよい。そのようなフィラーとしては、特に限定されず、例えば、カーボンブラック、シリカ、アルミナ(酸化アルミニウム)、炭酸カルシウム、タルク、クレー等この分野で一般的に使用されるフィラーをいずれも用いることができる。これらのフィラーは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
カーボンブラックとしては、ゴム用として一般的なものを適宜利用することができる。カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、グラファイト等が挙げられ、具体的にはN110,N115,N120,N125,N134,N135,N219,N220,N231,N234,N293,N299,N326,N330,N339,N343,N347,N351,N356,N358,N375,N539,N550,N582,N630,N642,N650,N660,N683,N754,N762,N765,N772,N774,N787,N907,N908,N990,N991等を好適に用いることができ、これ以外にも自社合成品等も好適に用いることができる。これらのカーボンブラックは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、グリップ性能および耐摩耗性の観点から、80m2/g以上が好ましく、90m2/g以上がより好ましく、100m2/g以上がさらに好ましい。また、カーボンブラックのN2SAの上限は特に限定されないが、加工性の観点から180m2/g以下が好ましく、160m2/g以下がより好ましく、150m2/g以下がさらに好ましく、148m2/g以下が特に好ましい。なお、本明細書におけるカーボンブラックのBET比表面積は、JIS K 6217-2「ゴム用カーボンブラック基本特性-第2部:比表面積の求め方-窒素吸着法-単点法」に準じて測定された値である。
カーボンブラックのDBP吸油量は、耐摩耗性の観点から、50ml/100g以上が好ましく、80ml/100g以上がより好ましく、100ml/100g以上がさらに好ましく、110ml/100g以上が特に好ましい。また、カーボンブラックのDBP吸油量は、グリップ性能の観点から、250ml/100g以下が好ましく、200ml/100g以下がより好ましく、135ml/100g以下がさらに好ましく、125ml/100g以下が特に好ましい。なお、カーボンブラックのDBP吸油量は、JIS K 6217-4:2008に準拠して測定される値である。
カーボンブラックを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、耐摩耗性能の観点から50質量部以上が好ましく、60質量部以上がより好ましく、70質量部以上がさらに好ましく、80質量部以上が特に好ましい。また、カーボンブラックの含有量の上限は特に限定されないが、低燃費性能や加工性の観点から、150質量部以下が好ましく、140質量部以下がより好ましく、130質量部以下がさらに好ましい。
シリカとしては、特に限定されるものではないが、例えば、乾式法により調製されたシリカ(無水ケイ酸)や、湿式法により調製されたシリカ(含水ケイ酸)等が挙げられる。また、シリカは、シランカップリング剤と併用することが好ましい。
ワックスを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、ゴムの劣化を抑制するという観点から、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。また、ワックスのタイヤ表面へのブルームによるタイヤの白色化を防ぐという観点からは、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
老化防止剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、ゴムの劣化を抑制するという観点から、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。また、老化防止剤のタイヤ表面へのブルームによるタイヤの変色を防ぐという観点からは、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
ステアリン酸を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、ゴムの加硫速度を上げ、タイヤの生産性を上げるという観点から、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。また、耐摩耗性の低下を防ぐという観点からは、8質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
酸化亜鉛を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、ゴムの加硫速度を上げ、タイヤの生産性を上げるという観点から、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。また、耐摩耗性の低下を防ぐという観点からは、8質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
加硫剤として硫黄を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、十分な加硫反応を確保し、良好なグリップ性能および耐摩耗性を得るという観点から、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。また、ブルーミングによる、グリップ性能および耐摩耗性の低下を抑制するという理由から、3質量部以下が好ましい。
加硫促進剤としては、例えば、スルフェンアミド系、チアゾール系、チウラム系、チオウレア系、グアニジン系、ジチオカルバミン酸系、アルデヒド-アミン系若しくはアルデヒド-アンモニア系、イミダゾリン系、およびキサンテート系加硫促進剤等が挙げられ、グアニジン系、およびチウラム系加硫促進剤が好ましい。これら加硫促進剤は、前記のうち1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
グアニジン系加硫促進剤としては、例えば、1,3-ジフェニルグアニジン、1,3-ジ-o-トリルグアニジン、1-o-トリルビグアニド、ジカテコールボレートのジ-o-トリルグアニジン塩、1,3-ジ-o-クメニルグアニジン、1,3-ジ-o-ビフェニルグアニジン、1,3-ジ-o-クメニル-2-プロピオニルグアニジン等が挙げられる。なかでも、1,3-ジフェニルグアニジンが好ましい。
チウラム系加硫促進剤としては、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT-N)等が挙げられ、TOT-Nが好ましい。
加硫促進剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、十分な加硫速度を確保するという観点から、1.0質量部以上が好ましく、2.0質量部以上が好ましく、3.0質量部以上がさらに好ましい。また、ブルーミングを抑制するという観点からは、15質量部以下が好ましく、12質量部以下がより好ましく、10質量部以下がさらに好ましい。
<ゴム組成物およびタイヤ>
本実施形態のゴム組成物の製造方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、バンバリーミキサーやニーダー、オープンロール等で前記各成分を混練りし、その後加硫する方法等により製造できる。
こうして得られる本実施形態のゴム組成物は、タイヤのトレッド、アンダートレッド、カーカス、サイドウォール、ビード等のタイヤ用途を始め、防振ゴム、ベルト、ホース、その他の工業製品等にも用いることができる。特に、ウェットグリップ性および耐摩耗性が改善できることから、本実施形態のゴム組成物で構成されるトレッドを有するタイヤとすることが好ましい。
本実施形態に係るタイヤは、本実施形態のゴム組成物を用いて、通常の方法により製造できる。すなわち、ゴム成分に対して前記の配合剤を必要に応じて配合した本実施形態のゴム組成物を、未加硫の段階でトレッドの形状にあわせて押出し加工し、タイヤ成型機上で他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、通常の方法にて成型することにより、未加硫タイヤを形成し、この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することにより、本実施形態のタイヤを製造することができる。また、本実施形態のタイヤは、乗用車用、バス用、トラック用、競技用等として使用することができるが、特に競技用の高性能ウェットタイヤとして好適に使用することができる。
本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明は、実施例にのみ限定されるものではない。
以下、実施例および比較例において用いた各種薬品をまとめて示す。
SBR:旭化成(株)製のタフデン4850(未変性S-SBR、スチレン含量:40質量%、ビニル含量:46質量%、Mw:94万、ゴム固形分100質量部に対してオイル分50質量部含有)
BR:日本ゼオン(株)製のBR1220(未変性BR、シス含量:96質量%)
カーボンブラック:東海カーボン(株)製のシースト9SAF(N2SA:142m2/g、DBP吸油量:115ml/100g)
水酸化アルミニウム1:ナバルテック社製のアピラール120E(平均粒子径:0.9μm、N2SA:11m2/g)
水酸化アルミニウム:昭和電工(株)製のハイジライトH-43(平均粒子径:0.75μm、N2SA:6.7m2/g)
水酸化アルミニウム:住友化学(株)製のATH#B(平均粒子径:0.60μm、N2SA:15m2/g)
アルキルフェノール系樹脂:BASF社製のコレシンの乾式粉砕品(p-t-ブチルフェノール及びアセチレンの縮合樹脂、N2SA:4.1m2/g、Tg:98℃、軟化点:145℃、OH価:193mgKOH/g)
液状SBR:(株)クラレ製のL-SBR-820(Mw:10000)
ワックス:大内新興化学工業(株)製のサンノックN
老化防止剤:住友化学(株)製のアンチゲン6C(N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン)
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸「椿」
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛2種
硫黄:軽井沢硫黄(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤1:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(DPG、1,3-ジフェニルグアニジン)
加硫促進剤2:大内新興化学工業(株)製のノクセラーTOT-N(テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド)
実施例および比較例
表1および表2に示す配合内容に従い、上記各種薬品(硫黄および加硫促進剤を除く)を、バンバリーミキサーにて、排出温度150℃で5分間混練りし、混練り物を得た。得られた混練り物に、硫黄および加硫促進剤を添加し、排出温度100℃で3分間混練りし、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物をトレッドの形状に成形し、タイヤ成型機上で他のタイヤ部材とともに貼り合わせて未加硫タイヤを形成し、170℃で12分間プレス加硫し、試験用タイヤを製造した。
得られた試験用タイヤについて、下記試験方法により評価を行った。それぞれの試験結果を表1および表2に示す。
<ドライグリップ性能>
試験用タイヤを国産FR車(排気量2000cc)の全輪に装着し、1周3kmのドライアスファルト路面のテストコースにて15周実車走行を行った。その際におけるベストラップ時のコントロールをテストドライバーが評価し、比較例3を100として指数表示した。指数が大きいほどドライ路面におけるグリップ性能が高いことを示す。
<耐摩耗性能>
タイヤサイズ195/65R15にて、国産FF車に装着し、走行距離8000km後のタイヤトレッド部の溝深さを測定し、タイヤ溝深さが1mm減るときの走行距離を求めた。結果は指数で表し、指数が大きいほど耐摩耗性が良好であることを示す。指数は次の式で求めた。
(耐摩耗性能指数)=(各配合例のタイヤ溝が1mm減るときの走行距離)/(比較例3のタイヤ溝が1mm減るときの走行距離)×100
Figure 0007259522000001
Figure 0007259522000002
表1および表2の結果より、ジエン系ゴム成分に、特定の平均粒子径を有する水酸化アルミニウム、およびアルキルフェノール系樹脂を所定量配合した本発明のトレッド用ゴム組成物により構成されたトレッドを有する空気入りタイヤは、ドライグリップ性能および耐摩耗性能の総合性能が改善されることがわかる。

Claims (6)

  1. ジエン系ゴム100質量部に対し、
    平均粒子径(D50)が0.80~1.30μmである水酸化アルミニウムを3.0質量部以上30.0質量部未満、液状ジエン系重合体を10~100質量部、およびアルキルフェノール系樹脂を6.0~80.0質量部含し、
    水酸化アルミニウムの含有量に対するアルキルフェノール系樹脂の含有量の比(アルキルフェノール系樹脂の含有量/水酸化アルミニウムの含有量)が0.5~5.0であるトレッド用ゴム組成物(ただし、ゴム成分100質量部に対し、平均繊維長10μm~10mmのセルロース短繊維を0.1~20質量部含有するゴム組成物、および、ゴム成分100質量部に対し、下記式(1)または(2):
    Figure 0007259522000003
    (式(1)中、各R 1 は、それぞれ独立して、置換基を有していても良いC 1 ~C 20 のアルキル基、置換基を有していても良いフェニル基または置換基を有していても良いベンジル基を表し、R 2 は、置換基を有していても良いC 1 ~C 10 のアルキル基または置換基を有していても良いC 5 ~C 12 のシクロアルキル基を表す。)
    Figure 0007259522000004
    (式(2)中、各R 3 は、それぞれ独立して、C 1 ~C 10 のアルキル基を表す。)で表される老化防止剤を0.1~10質量部含有するゴム組成物を除く)
  2. ジエン系ゴム中に80質量%以上のスチレンブタジエンゴムを含有する、請求項1記載のトレッド用ゴム組成物。
  3. カーボンブラックを50~150質量部含有する、請求項1または2記載のトレッド用ゴム組成物。
  4. 前記水酸化アルミニウムの平均粒子径(D50)が0.86~1.30μmである、請求項1~3のいずれか一項に記載のトレッド用ゴム組成物。
  5. 水酸化アルミニウムの含有量が3.0質量部以上25.0質量部未満である、請求項1~4のいずれか一項に記載のトレッド用ゴム組成物
  6. 請求項1~5のいずれか一項に記載のトレッド用ゴム組成物により構成されたトレッドを有する空気入りタイヤ。
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