JP7028267B2 - タイヤ用ゴム組成物、トレッドおよびタイヤ - Google Patents
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Description
[1]芳香族ビニル成分含有ポリマーを含むゴム成分、
シリカ、
アンモニウムイオン含有液体可塑剤、および、
芳香環含有樹脂
を含むタイヤ用ゴム組成物;
[2]シリカが粒径25nm以下、好ましくは22nm以下、より好ましくは22nm以下、さらに好ましくは20nm以下のシリカを含むものであり、かつ、アンモニウムイオン含有液体可塑剤に対する、粒径が上記範囲を満たすシリカの質量比が以下の式(1)を満たす、ここで、式(1)の右辺の値は好ましくは190、より好ましくは185、さらに好ましくは184である、上記[1]記載のタイヤ用ゴム組成物
B/A≦200 (1)
(ここで、Bはゴム成分100質量部に対する粒径が上記範囲を満たすシリカの質量部を表し、Aはゴム成分100質量部に対するアンモニウムイオン含有液体可塑剤の質量部を表す。);
[3]アミン系老化防止剤をさらに含み、かつ、アンモニウムイオン含有液体可塑剤に対する、アミン系老化防止剤の質量比が以下の式(2)を満たす、ここで、式(2)の右辺の値は、好ましくは9.0、より好ましくは8.0である、上記[1]または[2]記載のタイヤ用ゴム組成物
C/A≦10.0 (2)
(ここで、Cはゴム成分100質量部に対するアミン系老化防止剤の質量部を表し、Aはゴム成分100質量部に対するアンモニウムイオン含有液体可塑剤の質量部を表す。);
[4]ステアリン酸をさらに含み、かつ、アンモニウムイオン含有液体可塑剤に対する、ステアリン酸の質量比が以下の式(3)を満たす、ここで、式(3)の右辺の値は、好ましくは3.5、より好ましくは4.0である、上記[1]~[3]のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物
D/A≧3.0 (3)
(ここで、Dはゴム成分100質量部に対するステアリン酸の質量部を表し、Aはゴム成分100質量部に対するアンモニウムイオン含有液体可塑剤の質量部を表す。);
[5]芳香族ビニル成分含有ポリマーが、シラノール変性スチレンブタジエンゴムを含むものである、上記[1]~[4]のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物;
[6]アンモニウムイオン含有液体可塑剤に対する、芳香環含有樹脂の質量比が以下の式(4)を満たす、ここで、式(4)の右辺の値は、好ましくは15.0、より好ましくは20.0、さらに好ましくは25.0、さらに好ましくは30.0である、上記[1]~[5]のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物
E/A≧10.0 (4)
(ここで、Eはゴム成分100質量部に対する芳香環含有樹脂の質量部を表し、Aはゴム成分100質量部に対するアンモニウムイオン含有液体可塑剤の質量部を表す。);
[7]ゴム成分中の芳香族ビニル成分の含有量が20質量%以上、好ましくは21質量%以上、より好ましくは22質量%以上である、上記[1]~[6]のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物;
[8]上記[1]~[7]のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物からなるトレッド;
[9]上記[8]記載のトレッドを含んでなるタイヤ
に関する。
B/A≦200 (1)
(ここで、記号は前記と同一意味を有する。)
C/A≦10.0 (2)
(ここで、記号は前記と同一意味を有する。)
D/A≧3.0 (3)
(ここで、記号は前記と同一意味を有する。)
E/A≧10.0 (4)
(ここで、記号は前記と同一意味を有する。)
ゴム成分は、芳香族ビニル成分含有ポリマーを含むものである。
芳香族ビニル成分含有ポリマーとは、芳香族ビニルモノマーを少なくとも一つのモノマー成分として重合することにより得られる、ゴムとしての特性を有するポリマーを意味する。芳香族ビニル成分含有ポリマーとしては、例えば、芳香族ビニル-共役ジエンポリマー等が挙げられる。芳香族ビニル成分含有ポリマーは1種または2種以上を用いることができる。
芳香族ビニル-共役ジエンポリマーとは、芳香族ビニルモノマーと共役ジエンモノマーとを共重合させることにより得られる、ゴムとしての特性を有するポリマーである。芳香族ビニル-共役ジエンポリマーにおいて、芳香族ビニルモノマーの含有量は、本開示の効果の観点から、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上がさらに好ましく、20質量%以上がさらに好ましく、25質量%以上がさらに好ましく、29質量%以上がさらに好ましい。一方、該含有量は、耐摩耗性等の観点から、60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、45質量%以下がさらに好ましい。芳香族ビニルモノマーの含有量は、1H-NMR測定により算出される。
SBRとしては特に限定されず、例えば、乳化重合SBR(E-SBR)、溶液重合SBR(S-SBR)等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。
ゴム成分は、ブタジエンゴム(BR)を含むことができる。
ゴム成分は、本開示の効果に影響を与えない範囲で、前記の芳香族ビニル-共役ジエンポリマーおよびBR以外の他のゴム成分を含有してもよい。他のゴム成分としては、ゴム工業で一般的に用いられるゴム成分を用いることができ、そのようなゴム成分としては、ジエン系ゴムの他、非ジエン系ゴムが挙げられる。ジエン系ゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、改質NR、変性NR、変性IR等のイソプレン系ゴム、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、ポリノルボルネンゴム等が挙げられる。非ジエン系ゴムとしては、例えば、ブチルゴム(IIR)、水素化ニトリルゴム(HNBR)、エチレンプロピレンゴム、シリコーンゴム、塩化ポリエチレンゴム、フッ素ゴム(FKM)、アクリルゴム(ACM)、ヒドリンゴム等が挙げられる。ジエン系ゴムは1種または2種以上を用いることができ、非ジエン系ゴムも1種または2種以上を用いることができる。
ゴム成分としては、芳香族ビニル成分含有ポリマーとBRを含むものが好ましく、あるいは、芳香族ビニル成分含有ポリマーとBRとからなるものが好ましい。
本開示のゴム組成物は、充填剤としてのシリカを含むものである。シリカは1種または2種以上を使用することができる。また、本開示のゴム組成物は、シリカ以外の充填剤を含んでいてもよい。そのような充填剤としては、ゴム工業で一般的に使用される充填剤をいずれも使用することができ、例えば、カーボンブラック、水酸化アルミニウム、アルミナ(酸化アルミニウム)、クレー、炭酸カルシウム、マイカ等を挙げることができる。シリカ以外の充填剤は1種または2種以上を用いることができる。シリカ以外の充填剤としては、カーボンブラックが好ましい。したがって、カーボンブラックとシリカは充填剤の好ましい組合せの一つである。
シリカとしては、特に限定されず、例えば、乾式法により調製されたシリカ(無水シリカ)、湿式法により調製されたシリカ(含水シリカ)等、ゴム工業において一般的なものを使用することができる。なかでもシラノール基が多いという理由から、湿式法により調製された含水シリカが好ましい。シリカとしては、例えば、エボニックデグサ社、ソルベイ社、東ソー・シリカ(株)、(株)トクヤマ等によって製造販売されるものなどを用いることができる。シリカは、1種または2種以上を用いることができる。
カーボンブラックとしては、ゴム工業において一般的なものを適宜利用することができる。例えば、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAF等を挙げることができ、あるいは、N110、N115、N120、N125、N134、N135、N219、N220、N231、N234、N293、N299、N326、N330、N339、N343、N347、N351、N356、N358、N375、N539、N550、N582、N630、N642、N650、N660、N683、N754、N762、N765、N772、N774、N787、N907、N908、N990、N991等を挙げることができる。これらカーボンブラックとしては、例えば、旭カーボン(株)、キャボットジャパン(株)、東海カーボン(株)、三菱ケミカル(株)、ライオン(株)、日鉄カーボン(株)、コロンビアカーボン社等によって製造販売されるものなどを用いることができる。これらのカーボンブラックは、1種または2種以上を用いることができる。
充填剤の合計含有量は、ゴム成分100質量部に対して、充分な補強性の観点から、好ましくは50質量部以上、より好ましくは70質量部以上である。一方、該含有量は、ウェットグリップ性能の観点から、好ましくは250質量部以下、より好ましくは180質量部以下、さらに好ましくは150質量部以下、さらに好ましくは120質量部以下である。
ゴム組成物は、シランカップリング剤を使用することが好ましい。シランカップリング剤としては、特に限定されず、ゴム工業において、従来から使用される任意のシランカップリング剤を用いることができる。シランカップリング剤の具体例としては、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド等のスルフィド基を有するシランカップリング剤;3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン等のメルカプト基を有するシランカップリング剤;3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシラン、3-ヘキサノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシラン、3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリメトキシシラン等のチオエステル基を有するシランカップリング剤;ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のビニル基を有するシランカップリング剤;3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ基を有するシランカップリング剤;γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のグリシドキシ系のシランカップリング剤;3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシラン等のニトロ系のシランカップリング剤;3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシラン等のクロロ系のシランカップリング剤等が挙げられる。なかでも、スルフィド基を有するシランカップリング剤、メルカプト基を有するシランカップリング剤、およびチオエステル基を有するシランカップリング剤が好ましく、スルフィド基を有するシランカップリング剤がより好ましい。シランカップリング剤としては、モメンティブ社や、エボニックデグサ社によって製造販売されるものなどを用いることができる。これらのシランカップリング剤は、1種または2種以上を用いることができる。
芳香環含有樹脂としては、この分野で使用される樹脂であって、芳香環を含有する樹脂であれば特に限定されない。そのような樹脂としては、例えば、C9系石油樹脂、C5C9系石油樹脂、フェノール系樹脂、クマロン系樹脂等が挙げられる。なかでも、C9系石油樹脂が好ましい。芳香環含有樹脂は1種または2種以上を使用することができる。
C9系石油樹脂としては、炭素数8~10個相当の石油留分(C9留分)であるビニルトルエン、アルキルスチレン、インデンなどのモノマーをカチオン重合することにより得られる樹脂が挙げられる。C9系石油樹脂の具体例としては、スチレン系樹脂が挙げられる。スチレン系樹脂としては特に限定されないが、α-メチルスチレン系樹脂(AMS)が好適に用いられる。α-メチルスチレン系樹脂としては、α-メチルスチレンのホモポリマー(ポリ-α-メチルスチレン)、α-メチルスチレンと芳香族化合物やフェノール系化合物を含む他の化合物とのコポリマーが挙げられる。このコポリマーを構成し得る他の化合物としては、スチレン、メトキシスチレン、ジビニルベンゼンなどが挙げられる。α-メチルスチレン系樹脂としては、アリゾナケミカル社製のものなどが好適に用いられる。C9系石油樹脂は1種または2種以上を使用することができる。
C5C9系石油樹脂とは、C5留分とC9留分を共重合することにより得られる樹脂であり、脂肪族/芳香族共重合系石油樹脂ともいう。また、前記の石油樹脂を水素添加したものを使用してもよい。C5C9系石油樹脂としては、例えば、LUHUA社製のもの、Qilong社製のもの、東ソー(株)製のもの等の市販品を好適に用いることができる。C5C9系石油樹脂は1種または2種以上を使用することができる。
フェノール系樹脂は、その構造にフェノール骨格を含む樹脂であり、例えば、フェノールホルムアルデヒド樹脂、アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、アルキルフェノールアセチレン樹脂、オイル変性フェノールホルムアルデヒド樹脂等が挙げられる。フェノール系樹脂は1種または2種以上を使用することができる。
クマロン系樹脂は、クマロンを主成分する樹脂であり、例えば、クマロン樹脂、クマロンインデン樹脂、クマロンとインデンとスチレンを主成分とする共重合樹脂等が挙げられる。クマロン系樹脂は1種または2種以上を使用することができる。
芳香環含有樹脂の重量平均分子量(Mw)は、揮発しにくく、グリップ性能が良好である点から、300以上が好ましく、400以上がより好ましく、500以上がさらに好ましい。また、該Mwは、15000以下が好ましく、10000以下がより好ましく、8000以下がさらに好ましい。
芳香環含有樹脂の軟化点は、グリップ性能の観点から、160℃以下が好ましく、145℃以下がより好ましく、130℃以下がさらに好ましい。また、該軟化点は、グリップ性能の観点から、20℃以上が好ましく、35℃以上がより好ましく、50℃以上がさらに好ましく、70℃以上がさらに好ましく、80℃以上がさらに好ましく、85℃以上がさらに好ましい。なお、本開示において、軟化点は、JIS K 6220-1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
樹脂成分のゴム成分100質量部に対する含有量は、接着性能およびグリップ性能の観点から、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましく、3質量部以上がさらに好ましく、4質量部以上が特に好ましい。また、耐摩耗性能およびグリップ性能の観点からは、50質量部以下が好ましく、40質量部以下がより好ましく、30質量部以下がさらに好ましく、20質量部以下がさらに好ましく、15質量部以下がさらに好ましい。
アンモニウムイオン含有液体可塑剤は、液状の、4級アンモニウム塩を含有するイオン性化合物からなる可塑剤である。ここで「液状」とは、常温(25℃)で液体状態にあることをいう。より具体的には、そのような化合物のなかでも、アミド結合(-NR-CO-(Rは水素原子または置換基を表す。ここで、置換基とは炭化水素基などをいい、炭化水素基はメチル基、エチル基などのアルキル基が好ましい。))またはカルボン酸エステル結合(-O-CO-)を有する4級アンモニウム塩であることが好ましい。この場合において、4級アンモニウムと対をなす陰イオンとしては特に限定されないが、なかでも、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等のハロゲン化物イオンであることが好ましい。上記4級アンモニウム塩が有するアミド結合またはカルボン酸エステル結合の数は、シリカの吸着およびシリカの分散性の観点から、いずれも、2個以上、4個以下であることが好ましい。アンモニウムイオン含有液体可塑剤は1種または2種以上を用いることができる。
アミド結合またはエステル結合を有する液状4級アンモニウム塩としては、以下の一般式(I)または一般式(II)で表される化合物が挙げられる。
(R11)3-m-N+(R13)-(R12)mX- (I)
(ここで、R11はC1-8の炭化水素基またはR14-[OCH(R15)CH2]n-(ここで、R14は水素原子またはアシル基を表し、R15は水素原子またはメチル基を表し、nは1~3の数を表す。)で示される基を表し、R12はアシルアミノアルキル基を表し、R13はメチル基、エチル基またはベンジル基を表し、Xはハロゲン原子を表し、mは1~3の数を表す。)
(R21)3-p-N+(R23)-(R22)pY- (II)
(ここで、ここで、R21はC1-8の炭化水素基を表し、R22はアシルオキシアルキル基を表し、R23はメチル基、エチル基またはベンジル基を表し、Yはハロゲン原子を表し、pは1~3の数を表す。)
アンモニウムイオン含有液体可塑剤の含有量は、ジエン系ゴム100質量部に対して、0.05~10質量部であることが好ましく、0.1~5質量部であることがより好ましい。
ゴム組成物は、本開示の効果を損なわない範囲で、その他の可塑剤を含むことができる。そのような可塑剤としては、オイル、液状ポリマーや、上記芳香環含有樹脂以外の樹脂成分等が挙げられる。これらその他の可塑剤は1種または2種以上を使用することができる。
オイルとしては特に限定されず、ゴム工業で通常使用するものを使用することができるが、具体例としては、例えば、プロセスオイル、植物油脂、またはその混合物が挙げられる。プロセスオイルとしては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイルなどを用いることができる。なかでも、良好なスノー性能が得られるという点から、パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイルが好ましい。オイルは、1種または2種以上を使用することができる。
液状ポリマーとしては特に限定されず、ゴム工業で通常使用するものを使用することができるが、具体例としては、例えば、液状ブタジエン重合体(液状BR)、液状スチレンブタジエン共重合体(液状SBR)、液状イソプレン重合体(液状IR)、液状スチレンイソプレン共重合体(液状SIR)等の液状ジエン系重合体が挙げられる。液状ポリマーは、1種または2種以上を使用することができる。
上記芳香環含有樹脂以外の樹脂成分としては、例えば、脂肪族系石油樹脂(例えば、C5系石油樹脂)、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂等が挙げられ、これらは1種または2種以上を用いることができる。
その他の可塑剤の含有量は、本開示の観点から、ゴム成分100質量部に対して、5質量部以上が好ましく、7質量部以上がより好ましく、10質量部以上がさらに好ましく、12質量部以上がさらに好ましくい。該含有量は、操縦安定性の観点から、90質量部以下が好ましく、80質量部以下がより好ましく、70質量部以下がさらに好ましく、60質量部以下がさらに好ましく、50質量部以下がさらに好ましく、40質量部以下がさらに好ましい。
本開示に係るゴム組成物には、前記成分以外にも、従来タイヤ工業で一般に使用される配合剤、例えば、ワックス、加工助剤、老化防止剤、ステアリン酸、酸化亜鉛、硫黄等の加硫剤、加硫促進剤等を適宜含有することができる。
ワックスとしては、特に限定されず、ゴム工業において通常使用されるものをいずれも好適に用いることができ、例えば、石油系ワックス、鉱物系ワックス、合成ワックスなどが挙げられる。なかでも、石油系ワックスが好ましい。石油系ワックスとしては、例えば、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。ワックスは、例えば、大内新興化学工業(株)製のもの、日本精蝋(株)製のもの、パラメルト社製のものなどを用いることができる。ワックスは、1種または2種以上を用いることができる。
加工助剤としては、例えば、脂肪酸金属塩、脂肪酸アミド、アミドエステル、シリカ表面活性剤、脂肪酸エステル、脂肪酸金属塩とアミドエステルとの混合物、脂肪酸金属塩と脂肪酸アミドとの混合物等が挙げられる。これらは、1種または2種以上を用いることができる。なかでも、脂肪酸金属塩、アミドエステル、脂肪酸金属塩とアミドエステル若しくは脂肪酸アミドとの混合物が好ましく、脂肪酸金属塩と脂肪酸アミドとの混合物がより好ましい。加工助剤は、例えば、Schill&Seilacher社製の脂肪酸石鹸系加工助剤を用いることができる。
老化防止剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、アミン系、キノリン系、キノン系、フェノール系、イミダゾール系の各化合物や、カルバミン酸金属塩等の老化防止剤が挙げられ、なかでも、アミン系が好ましく、例えば、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン、N-シクロヘキシル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ビス(1-メチルヘプチル)-p-フェニレンジアミン、N,N’-ビス(1,4-ジメチルペンチル)-p-フェニレンジアミン、N,N’-ビス(1-エチル-3-メチルペンチル)-p-フェニレンジアミン、N-4-メチル-2-ペンチル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジアリール-p-フェニレンジアミン、ヒンダードジアリール-p-フェニレンジアミン、フェニルヘキシル-p-フェニレンジアミン、フェニルオクチル-p-フェニレンジアミン等のフェニレンジアミン系老化防止剤が好ましい。老化防止剤は、1種または2種以上を用いることができる。
ステアリン酸を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、加工性の観点から、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましく、2質量部以上がさらに好ましく、3質量部以上がさらに好ましい。また、加硫速度の観点からは、10質量部以下が好ましく、8質量部以下がより好ましく、7質量部以下がさらに好ましい。
酸化亜鉛を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、加工性の観点から、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。また、耐摩耗性能の観点からは、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
加硫剤としては硫黄が好適に用いられる。硫黄としては、粉末硫黄、油処理硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄等を用いることができる。
加硫促進剤としては、例えば、スルフェンアミド系、チアゾール系、チウラム系、チオウレア系、グアニジン系、ジチオカルバミン酸系、アルデヒド-アミン系若しくはアルデヒド-アンモニア系、イミダゾリン系、またはキサンテート系加硫促進剤等が挙げられる。これら加硫促進剤は、1種または2種以上を用いることができる。なかでも、スルフェンアミド系、グアニジン系、およびチアゾール系が好ましく、スルフェンアミド系、グアニジン系を併用することがより好ましい。
ゴム組成物は、公知の方法により製造することができる。例えば、前記の各成分をオープンロール、密閉式混練機(バンバリーミキサー、ニーダー等)等のゴム混練装置を用いて混練りすることにより製造できる。
上記成分を配合したゴム組成物は、未加硫の段階で所定のタイヤ部材(例えば、トレッド、サイドウォール、ブレーカー等)の形状にあわせて押出し加工し、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤとすることができる。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することによりタイヤを得ることができる。タイヤ部材としては、トレッドが好ましい。
評価結果は、以下に示す各種薬品を用いて表1に従って配合を変化させて得られるゴム組成物からなるトレッドを有するタイヤ(図1に示すような構造のタイヤサイズ(195/65R15))を想定して、下記評価方法に基づいて計算したものである。結果を表1に示す。
芳香族ビニル成分含有ポリマー1(SBR):下記製造例1で合成したスチレンブタジエンゴム(スチレン含量(styr):10質量%、非油展)
芳香族ビニル成分含有ポリマー2(変性SBR):下記製造2で合成したシラノール変性スチレンブタジエンゴム(スチレン含量(styr):29.9質量%、油展量:18phr)
BR:ブタジエンゴム(BR150B、Tg:-114℃、シス含量:97モル%、宇部興産(株)から入手可能)
シリカ1:ZEOSIL115Gr(N2SA:115m2/g、平均一次粒子径:20nm、ローディアジャパン(株)から入手可能)
シリカ2:Ultrasil360(N2SA:50m2/g、平均一次粒子径:38nm、エボニックデグサ社から入手可能)
芳香環含有樹脂1:SYLVATRAXX4401(α-メチルスチレン系樹脂、軟化点:85℃、SP値:9.1、アリゾナケミカル社から入手可能)
芳香環含有樹脂2:マルカレッツT100AS(C5C9系石油樹脂、軟化点:100℃、SP値:8.7、丸善石油化学(株)から入手可能)
芳香環含有樹脂3:Koresin(アルキルフェノールアセチレン樹脂(p-t-ブチルフェノールとアセチレンの縮合樹脂)、軟化点145℃、SP値:10.8、BASF社から入手可能)
芳香環含有樹脂4:C120(クマロンインデン樹脂、軟化点:120℃、SP値:9.0、Ruetgers Chemicals社から入手可能)
液体可塑剤1(アンモニウムイオン含有液体可塑剤):(CH3)2N+[(CH2)3-NH-R12]2Cl-(ここで、R12は、デカン酸由来のアシル基を表す。)
液体可塑剤2(アンモニウムイオン含有液体可塑剤):(CH3)2N+[(CH2)2-O-R22]2Cl-(ここで、R22は、混合脂肪酸(ラウリン酸:オレイン酸=約2:1(質量比))由来のアシル基を表す。)
シランカップリング剤:Si266(ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、エボニックデグサ社から入手可能)
オイル:プロセスオイルP-200(JXTGエネルギー(株)から入手可能)
ワックス:Ozoace0355(日本精蝋(株)から入手可能)
老化防止剤:アンチゲン6C(N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、住友化学(株)から入手可能)
ステアリン酸:ステアリン酸「つばき」(日油(株)から入手可能)
酸化亜鉛:亜鉛華1号(三井金属鉱業(株)から入手可能)
硫黄:粉末硫黄(鶴見化学工業(株)から入手可能)
加硫促進剤1:ノクセラーCZ-G(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、大内新興化学工業(株)から入手可能)
加硫促進剤2:ノクセラーD(1,3-ジフェニルグアニジン(DPG)、大内新興化学工業(株)から入手可能)
窒素置換されたオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン、スチレン、および1,3-ブタジエンを仕込んだ。反応器の内容物の温度を20℃に調整した後、n-ブチルリチウムを添加して重合を開始した。断熱条件で重合し、最高温度は85℃に達した。重合転化率が99%に達した時点で1,3-ブタジエンを追加し、更に5分重合させた。重合反応終了後、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾールを添加した。次いで、スチームストリッピングにより脱溶媒を行い、110℃に調温された熱ロールにより乾燥した後、芳香族ビニル成分含有ポリマー1(SBR)を得た。スチレン量は10質量%、ビニル量は40%、Tgは-63℃、重量平均分子量(Mw)は18.8万であった。
窒素置換されたオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン、スチレン、および1,3-ブタジエンを仕込んだ。反応器の内容物の温度を20℃に調整した後、n-ブチルリチウムを添加して重合を開始した。断熱条件で重合し、最高温度は85℃に達した。重合転化率が99%に達した時点で1,3-ブタジエンを追加し、更に5分重合させた後、[3-(ジメチルアミノ)プロピル]トリメトキシシランを変性剤として加えて反応を行った。重合反応終了後、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾールを添加した。次いで、重合体100質量部に対し伸展油を18質量部加えた後、スチームストリッピングにより脱溶媒を行い、110℃に調温された熱ロールにより乾燥した後、芳香族ビニル成分含有ポリマー2(変性SBR)を得た。スチレン量は29.9質量%、ビニル量は35%、Tgは-43℃、重量平均分子量(Mw)は75.0万であった。
表1に示す配合処方にしたがい、(株)神戸製鋼所製1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄および加硫促進剤以外の薬品を、排出温度150℃で5分間混練りする。次に、得られた混練り物に硫黄および加硫促進剤を添加し、オープンロールで4分間、105℃になるまで練り込み、未加硫ゴム組成物を得る。
転がり抵抗試験機を用い、各試験用タイヤを、リム(15×6JJ)、内圧(230kPa)、荷重(3.43kN)、速度(80km/h)で走行させるときの転がり抵抗を測定し、比較例2を100とした時の指数で表示する(低燃費性指数)。指数が大きいほど、低燃費性に優れることを示す。
11 トレッド部
12 サイドウォール部
13 ビード部
14 ビードコア
15 カーカス
16 スチールベルト
18 縦溝
30 リム
Claims (9)
- 芳香族ビニル成分含有ポリマーを含むゴム成分、
シリカ、
アンモニウムイオン含有液体可塑剤、および、
芳香環含有樹脂
を含むタイヤ用ゴム組成物であって、
シリカが平均一次粒子径25nm以下のシリカを含むものであり、かつ、アンモニウムイオン含有液体可塑剤に対する、平均一次粒子径が上記範囲を満たすシリカの質量比が以下の式(1)を満たし、
アミン系老化防止剤をさらに含み、かつ、アンモニウムイオン含有液体可塑剤に対する、アミン系老化防止剤の質量比が以下の式(2)を満たし、
ステアリン酸をさらに含み、かつ、アンモニウムイオン含有液体可塑剤に対する、ステアリン酸の質量比が以下の式(3)を満たす、タイヤ用ゴム組成物。
B/A≦200 (1)
(ここで、Bはゴム成分100質量部に対する平均一次粒子径が上記範囲を満たすシリカの質量部を表し、Aはゴム成分100質量部に対するアンモニウムイオン含有液体可塑剤の質量部を表す。)
C/A≦10.0 (2)
(ここで、Cはゴム成分100質量部に対するアミン系老化防止剤の質量部を表し、Aはゴム成分100質量部に対するアンモニウムイオン含有液体可塑剤の質量部を表す。)
D/A≧3.0 (3)
(ここで、Dはゴム成分100質量部に対するステアリン酸の質量部を表し、Aはゴム成分100質量部に対するアンモニウムイオン含有液体可塑剤の質量部を表す。) - 前記式(1)の右辺が、190である、請求項1記載のタイヤ用ゴム組成物。
- 前記式(2)の右辺が、9.0である、請求項1または2記載のタイヤ用ゴム組成物。
- 前記式(3)の右辺が、3.5である、請求項1~3のいずれか1項に記載のタイヤ用ゴム組成物。
- 芳香族ビニル成分含有ポリマーが、シラノール変性スチレンブタジエンゴムを含むものである、請求項1~4のいずれか1項に記載のタイヤ用ゴム組成物。
- アンモニウムイオン含有液体可塑剤に対する、芳香環含有樹脂の質量比が以下の式(4)を満たす、請求項1~5のいずれか1項に記載のタイヤ用ゴム組成物。
E/A≧10.0 (4)
(ここで、Eはゴム成分100質量部に対する芳香環含有樹脂の質量部を表し、Aはゴム成分100質量部に対するアンモニウムイオン含有液体可塑剤の質量部を表す。) - ゴム成分中の芳香族ビニル成分の含有量が20質量%以上である、請求項1~6のいずれか1項に記載のタイヤ用ゴム組成物。
- 請求項1~7のいずれか1項に記載のタイヤ用ゴム組成物からなるトレッド。
- 請求項8記載のトレッドを含んでなるタイヤ。
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