JP7255963B1 - Ni合金部材の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】クリープ試験初期の伸びが小さいNi合金部材を提供する。【解決手段】質量%で、Ni:50~55%、Cr:17.0~21.0%、Nb+Ta:4.75~5.5%、Mo:2.8~3.3%、Ti:0.65~1.15%、Al:0.20~0.80%、Co:1.0%以下、Cu:0.3%以下、C:0.08%以下、Si:0.35%以下、Mn:0.35%以下、P:0.015%以下、S:0.015%以下、B:0.006%以下、残部:Feおよび不可避的不純物、の組成を有する部材を付加製造技術により造形する積層造形工程と、造形された前記部材を1120℃以上、1250℃以下の温度で再結晶化させる再結晶化処理工程と、再結晶化した前記部材を925℃以上、1010℃以下の温度で溶体化する溶体化処理工程とを有するNi合金部材の製造方法。【選択図】図1

Description

本発明は、付加製造および熱処理によって、Ni基超耐熱合金の一種であるインコネル718合金(インコネルは登録商標、以下「718合金」と略す。)からなる部材を製造する方法に関する。
Ni基超耐熱合金の一つとして718合金が知られている。この合金は析出硬化型の合金である。析出硬化型の合金は、溶解度曲線以上に加熱して溶質原子を均一に固溶させる溶体化処理、および、材料内に別の相を析出させる時効処理を施すことで、析出した相が転移の運動の障害となることによって、材料の塑性変形が抑えられる。718合金では、母相であるγ相中に、時効処理によってγ”相(NiNb)およびγ’相(Ni(Al,Ti))の微細な結晶粒が析出することで、超耐熱性が発現する。
718合金製の部材は、鍛造、鋳造等によって造形される他、近年では付加製造技術によって造形されることも多い。しかし、付加製造技術によって造形した718合金部材は、クリープ特性が劣り、また、積層方向とそれに垂直な方向とでクリープ特性が大きく異なるため、熱処理方法の開発によってクリープ特性を改善しようとする試みがされてきた。
特許文献1には、アディティブ・マニュファクチャリングにより成形された析出硬化型のNi-Cr系Ni基合金からなる部材を、その固溶線温度をTとして、(T-100)℃以上、(T-50)℃以下の温度範囲の温度で溶体化処理することが記載されている。実施例には、718合金(T=1260℃)について、1180℃で溶体化処理を行うことで、クリープ破断時間が造形方向との角度によらず一様で、かつ鋳造材と同程度にまで改善されることが記載されている。この結果は、高温での溶体化処理によって結晶粒の粗大化が発生したためであるとされている。
特開2017-203195号公報
特許文献1に記載された方法によれば、付加製造によって造形した718合金部材を高温で溶体化処理することでクリープ特性が改善する。しかし、本発明者らの実験結果によれば、高温での溶体化処理を行った試験片でも、クリープ試験初期の遷移クリープから定常クリープにかけての伸びが大きいことが分かった。試験におけるクリープ曲線は、図13を参照して、負荷の瞬間に塑性ひずみからなる瞬間ひずみが現れ、加工硬化が進むにつれてひずみ速度が減少する遷移クリープ、加工硬化と組織回復が釣り合ってひずみ速度が一定になる定常クリープ、ひずみ速度が加速して破断に至る加速クリープの3段階に分類される。このうち、遷移クリープから定常クリープにかけてのひずみ速度が大きいと、弾性領域限界に達する0.2%伸び時間が短くなるため、精密な寸法と微小空隙を維持しなければならないタービンブレードなどの用途では、製品を安全領域で使用できる時間が短くなるという問題がある。また、718合金部材の用途によっては、所定時間の使用をした後に溶体化処理および時効処理を行い、部材を再生、補修して再使用されることがあり、このような用途では、クリープ試験初期の伸びを抑えることが求められる。この点に関して、特許文献1に記載された方法にはさらなる改善の余地があった。
本発明は上記を考慮してなされたものであり、付加製造によって造形した718合金部材のクリープ試験初期の伸びを抑えることができる技術を提供することを目的とする。
本発明のNi合金部材の製造方法は、質量%で、Ni:50~55%、Cr:17.0~21.0%、Nb+Ta:4.75~5.5%、Mo:2.8~3.3%、Ti:0.65~1.15%、Al:0.20~0.80%、Co:1.0%以下、Cu:0.3%以下、C:0.08%以下、Si:0.35%以下、Mn:0.35%以下、P:0.015%以下、S:0.015%以下、B:0.006%以下、残部:Feおよび不可避的不純物、の組成を有する部材を付加製造技術により造形する積層造形工程と、造形された前記部材を1120℃以上、1250℃以下の温度で再結晶化させる再結晶化処理工程と、再結晶化した前記部材を925℃以上、1010℃以下の温度で溶体化する溶体化処理工程とを有する。
本発明のNi合金部材の製造方法によれば、得られたNi合金部材に標準的な条件で時効処理を施すことで、クリープ試験初期のひずみ速度を抑えることができる。
一実施形態のNi合金部材製造方法の工程フロー図である。 引張試験およびクリープ試験に用いた試験片の形状を示す図である。 クリープ試験における0.2%伸び時間の結果を示す図である。 クリープ試験における破断時間の結果を示す図である。 比較例3のクリープ曲線である。 比較例13および実施例1のクリープ曲線である。 後方散乱電子回折(EBSD)によって得られた結晶粒の画像である。 比較例3、比較例13および実施例1のクリープ破断面のSEM像である。 比較例3、比較例13および実施例1のクリープ破断面のSEM像である。 比較例3、比較例13および実施例1のクリープ破断面のSEM像である。 比較例3、比較例13および実施例1の切断面のSEM像である。 比較例3、比較例13および実施例1の切断面のSEM像である。 クリープ曲線を説明するための図である。
本発明のNi合金部材の製造方法の一実施形態を、図1の工程フローに沿って説明する。
本実施形態で用いる718合金粉末は、質量%で、Ni:50~55%、Cr:17.0~21.0%、Nb+Ta:4.75~5.5%、Mo:2.8~3.3%、Ti:0.65~1.15%、Al:0.20~0.80%、Co:1.0%以下、Cu:0.3%以下、C:0.08%以下、Si:0.35%以下、Mn:0.35%以下、P:0.015%以下、S:0.015%以下、B:0.006%以下、残部:Feおよび不可避的不純物、の組成を有する。この合金は、インコネル718(インコネルは登録商標)と呼ばれ、米国試験材料協会(ASTM)と自動車技術者協会(SAE)による合金の統一番号システム(UNS)にN07718として、また、JISG4901および4902にNCF718として規定されている。
上記合金粉末を用いて、付加製造技術により部材を造形する。付加製造の方式としては、好ましくはレーザー積層造形法(SLM法)を用いる。SLM法は粉末床溶融結合方式の一種で、原料となる合金粉末を造形ステージに敷き詰めて均一な薄層を形成し、薄層の所定位置にレーザー光を走査しながら照射して合金粉末を溶融・凝固させることを繰り返すことで、合金層を積層して、部材を造形する。
SLM法で造形された部材は、その造形方法に起因して、合金の積層方向に延びる柱状の結晶粒を多く含む。そのため、積層方向とそれに垂直な方向とで、クリープなどの機械的特性が異なることとなる。以下において、造形時の積層方向をZ方向、積層方向に垂直な方向をXY方向という。なお、SLM法ではレーザー光の走査方向の偏りの影響を抑えるために、1層毎に走査方向を所定角度ずつ回転させて積層が行われるので、造形物の組織はZ方向に垂直な面内では等方的である。本明細書においても、XY方向とはZ方向に垂直であることのみを意味し、Z方向に垂直な面内での特定の方向を意味するものではない。
次に積層造形された部材(造形まま材)を再結晶化させる。再結晶化処理の目的は、Z方向とXY方向の異方性をできる限り減少させることである。具体的には、再結晶化によって結晶粒のZ方向とXY方向の大きさの差を小さくすることである。このことは以下において、等方化または等軸化ということがある。
再結晶化処理の温度は1120℃以上であり、好ましくは1140℃以上である。これにより、部材を再結晶化することができる。一方、再結晶化処理の温度は、1250℃以下であり、好ましくは1200℃以下、より好ましくは1180℃以下である。再結晶化処理温度が1250℃を超えると、処理中に部材が軟化して変形する恐れがある。また、再結晶化処理温度が1200℃を超えると、結晶粒が肥大化しすぎて、クリープ試験における破断時間が短くなる。再結晶化処理温度が1140℃~1180℃の範囲にある場合に、結晶粒の等軸化が最も進む。
再結晶化処理において、部材を上記温度に保持する時間は、好ましくは30分以上、より好ましくは1時間以上である。再結晶化するのに十分な時間を取るためである。一方、再結晶化処理において、部材を上記温度に保持する時間は、好ましくは2時間以下である。再結晶化処理時間は温度ほど大きな影響を及ぼさないが、時間が長すぎると、結晶が大きくなりすぎるからである。部材は常圧の不活性ガス雰囲気または真空雰囲気中で保持される。
部材を所定温度で所定時間保持して再結晶化させた後、部材にエアまたは不活性ガスを吹き付けることによって、少なくとも約600℃以下にまで冷却する。また、冷却速度は10℃/分以上であることが好ましい。これにより、冷却過程でδ相などが析出することを防止できる。後述するように、適量のδ相の存在はクリープ特性の改善に有用であると考えられるが、冷却速度によってδ相の析出量を制御することは技術的に難しいので、再結晶化処理ではδ相を析出させないことが好ましい。
次に再結晶化した部材を溶体化する。溶体化処理の目的は、溶質原子を均一に固溶させることである。また、718合金の溶体化処理では、δ相(NiNb)の微細な結晶粒を析出させることが一般的である。δ相は約1010~1020℃以下で安定であるとされる。δ相はγ”相と構成元素が同じであるため、δ相が成長しすぎると、後の時効処理でγ”相の析出量が減少して、析出硬化の効果が減殺されると言われている。一方で、δ相は母相の結晶粒界に析出して結晶粒の成長を抑制すると言われており、これによってクリープ特性を高める機能を奏すると考えられる。
溶体化処理の温度は、好ましくは925℃以上、1010℃以下である。この温度は、鍛造等によって造形された718合金部材に対する標準的な溶体化処理温度である。例えば、SAEのASM5662規格では、部材を1725~1850F(Fは華氏、940~1010℃に相当)で保持した後、空冷する。また、JISG4901および4902の参考附属書には、固溶化熱処理として、925~1010℃で処理して急冷する条件が記載されている。これにより、部材の組織を均一に溶体化し、かつ適量のδ相を析出させることができる。
溶体化処理において、部材を上記温度に保持する時間は、好ましくは30分以上、より好ましくは1時間以上である。溶体化するのに十分な時間を取るためである。一方、溶体化処理において、部材を上記温度に保持する時間は、好ましくは2時間以下である。溶体化処理時間は温度ほど大きな影響を及ぼさないが、時間が長すぎると、δ相が成長しすぎるからである。
部材を所定温度で所定時間保持して溶体化した後、部材にエアまたは不活性ガスを吹き付けることによって冷却する。多少急冷気味に冷却することにより、溶体化した状態を維持するためである。
次に再結晶化した部材を時効処理する。時効処理の目的は、母相であるγ相中に、γ”相およびγ’相を析出させることである。
時効処理の温度は、好ましくは610℃以上、730℃以下である。この温度は、鍛造等によって造形された718合金部材に対する標準的な時効処理温度である。例えば、SAEのASM5663規格では、部材を1325F(718℃)で8時間保持し、100F/hで1150F(621℃)まで降温して、さらにその温度で8時間保持して、空冷する。また、上述のJISG4901および4902の参考附属書では、上記固溶化熱処理後に、705~730℃に8時間保持、610~630℃まで炉冷し、さらにその温度で時効後空冷して、総時効時間を18時間とすることが記載されている。
なお、SAEのASM5664規格では、溶体化処理として、部材を1900~1950F(1038~1066℃)で保持した後空冷し、時効処理として、部材を1400F(760℃)と1200F(649℃)で計20時間処理する方法が規定されているが、この規格は、高温でのクリープ特性を犠牲にして、低温で使用することを想定したもので、やや特殊な規格である。
以上の積層造形、再結晶化処理、溶体化処理、時効処理を経て、本実施形態のNi合金部材が得られる。
原料として表1に示す組成の合金粉末を用い、Ybファイバーレーザー(焦点径:80μm)を用いた粉末積層造形システム(EOS GmbH、M290)を用いて部材を造形した。Z方向の引張試験およびクリープ試験用には、図2に示す試験片を、長さ方向を積層方向として直接造形した。XY方向の引張試験およびクリープ試験用には、造形した直方体から図2に示す試験片を切り出した。
Figure 0007255963000002
実施例1および2の試料を、再結晶化温度を変えて、再結晶化処理、溶体化処理および時効処理を施して作製した。再結晶化処理は、試料を真空雰囲気で、所定の温度で1時間保持した後、空冷によって室温まで冷却した。溶体化処理は、試料を真空雰囲気で、980℃で1時間保持した後、空冷によって室温まで冷却した。時効処理は、真空雰囲気で、720℃で8時間保持し、620℃まで2時間で炉冷却し、620℃でさらに8時間保持した後、空冷によって室温まで冷却した。
比較例1の試料は、熱処理を施していない造形まま材である。比較例2~16の試料は、溶体化温度を変えて、溶体化処理および時効処理を施して作製した。溶体化処理は、試料を真空雰囲気で、所定の温度で1時間保持した後、空冷によって室温まで冷却した。時効処理は、実施例と同じ方法で行った。
引張試験は、ASTM E21に準拠して、オートグラフを用いて、650℃、ひずみ速度0.005/sの条件で行った。クリープ試験は、JISZ2271に準拠して、621℃、荷重724MPaの条件で行った。
表2に、650℃での引張試験の結果を示す。
Figure 0007255963000003
比較例1(造形まま材)の引張強度は、当然ながら、0.2%耐力および引張強さとも他の試料より低かった。比較例2~16の結果を比較すると、Z方向およびXY方向、0.2%耐力および引張強さのいずれについても、溶体化処理温度を950℃から上げていくに従って強度が上がり、1020~1030℃で最も高くなり、それを超えると徐々に低下した。また、溶体化温度が1100℃以下では、Z方向よりXY方向の方が高い強度を示し、1120℃以上でZ方向とXY方向の差が縮まった。比較例2~16における溶体化処理温度の違いによる強度の変化の原因は明らかではないが、造形まま材にδ相や脆くて亀裂発生点となりやすいLaves相(Fe(Nb,Ti))が含まれており、これらの相が1020℃以上での熱処理によって溶解した可能性がある。また、溶体化処理温度が1030℃を超えると、結晶粒が大きくなるにしたがって引張強さが徐々に低下した可能性がある。実施例1および2の0.2%耐力および引張強さは、再結晶化処理と同じ温度で溶体化処理した比較例とほぼ同じ値を示した。
表3に、621℃でのクリープ試験の結果を示す。また、表3に示した結果のうち、図3に0.2%伸び時間、図4に破断時間の結果を示す。図3および図4の横軸は、実施例についてはその再結晶化処理温度、比較例についてはその溶体化処理温度である。また、図5に比較例3、図6に比較例13および実施例1のクリープ曲線を示す。
Figure 0007255963000004
表3、図3および図4から、比較例では、溶体化温度が1100℃以下でXY方向のクリープ特性が極めて悪く、溶体化温度が1120℃以上でZ方向との差が縮まっている。実施例と比較例を、実施例の再結晶化処理温度と比較例の溶体化処理温度が同程度の場合で比較すると、データのばらつきが大きいが、破断時間(図4)についてはほぼ同じで、0.2%伸び時間(図3)については実施例の方が長い傾向がみられた。718合金の鍛造材を標準的な条件で溶体化および時効処理した試料の0.2%伸び時間は200~400時間程度と言われており、実施例1および2の0.2%伸び時間はそれと同程度にまで改善されている。
図5の比較例3(溶体化温度980℃+時効処理)は、前述のASM規格およびJIS規格に記載された方法で熱処理したものであるが、クリープ性能は悪かった。付加製造による718合金の造形物を標準的な条件で溶体化および時効処理しても、よいクリープ特性が得られないことを示している。付加製造による造形では、合金粉末が融解したメルトプールが急冷凝固する際に形成されるデンドライト組織のセル界面にNbの偏析が生じ、標準的な溶体化および時効条件ではδ相が成長しすぎたためと考えられる。
図6の比較例13(溶体化温度1160℃+時効処理)と実施例1(再結晶化温度1160℃+溶体化温度980℃+時効処理)を比較すると、Z方向、XY方向ともに、破断時間は比較例13の方が長いが、試験初期の遷移クリープから定常クリープにかけてのひずみ速度は実施例1の方が低かった。このことは、表3においても、比較例13より実施例1の方が0.2%伸び時間が長いことに表れている。
以上の結果から、高温で1回の溶体化処理を行うより、高温での再結晶化処理と718合金で標準的な溶体化処理を行うことによって、クリープ試験初期の伸びが抑えられることが確認できた。
上記結果をもたらしたメカニズムを調査するために、試料の結晶組織を調査した。
まず、熱処理温度が結晶の形状および大きさに及ぼす影響を調べるため、造形まま材を980~1200℃で1時間保持して空冷した試料、および造形まま材を1160℃で1時間保持して空冷した後980℃で1時間保持して空冷した試料について、Z方向に平行な断面の後方散乱電子回折(EBSD)測定を行った。EBSDによれば、結晶粒毎の結晶方位を知ることができ、測定面における結晶粒の輪郭を示す画像を作成することができる。図7は結晶粒界を示す画像である。図7では、両側の結晶方位が10度以上異なる粒界を示した。図7の縦方向が試料のZ方向、横方向が試料のXY方向で、各画像左下のバーの長さは600μmである。表4に、測定面に現れた結晶粒の領域のZ方向およびXY方向の幅の平均値を示す。測定面は各結晶粒をランダムな位置で二分するため、この幅の平均値は各結晶粒のZ方向またはXY方向の大きさの平均値を示すものではないが、その指標となるものである。なお、図7および表4の各試料はいずれも時効処理をしていないものであり、時効処理することによって備考欄に示した各比較例または実施例の試料になる。
Figure 0007255963000005
図7および表4から、結晶粒は熱処理温度が高いほど大きくなり、1100~1200℃、特に1120~1180℃で、Z方向とXY方向の大きさの差が小さくなっている。また、1160℃で熱処理したものと、1160℃+980℃で熱処理したものの結晶サイズを比較すると、後者が少し大きいものの余り違いはなかった。この結果を実施例および比較例の引張試験およびクリープ試験の結果と合わせて考えると、表4の数値が約40μm、すなわち熱処理温度が1140~1180℃のときに、引張特性およびクリープ特性が等方的で、かつ最も良好な結果を示すと考えられる。
次に、図5および図6に示した比較例3、比較例13および実施例1のクリープ試験片の破断面を観察した。図8~10に破断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を示す。図8~10中で、ZはZ方向に引張負荷を与えたクリープ試験、XYはXY方向に引張負荷を与えたクリープ試験を意味する。各SEM像の下にあるバーの長さは、図8が1mm、図9が300μm、図10が100μmである。
図8~10から、いずれの破断面でも明確な欠陥を起点とした破壊はなく、破面の形状の違いは結晶組織と塑性変形の違いによるものと推測される。比較例3のZを除いて、いずれの試験片でも結晶粒界での破壊が支配的であった。なお、SEM写真において、粒界破壊による破面には結晶粒の形状に起因するぼこぼことした凹凸がみられ、粒内破壊による破面は微小なディンプルが形成されたざらざらとした平坦面に見える。比較例3のXYではほぼ全体が粒界破壊で、比較例3のZでは、粒内破壊した箇所が多くみられた(例えば図10比較例3Zの中央部)。比較例13では、Z、XYともに全体が粒界破壊であった。実施例1では、Z、XYともに大部分が粒界破壊であるが、わずかに粒内破壊した箇所がみられた(例えば図10実施例1Zの左下部や同図実施例1XYの中央部)。
図11および図12に比較例3、比較例13および実施例1の切断面のSEM写真を示す。切断面はZ方向に平行な面での切断面で、図の上下方向がZ方向である。
図11において、画像中で明るい点がδ相またはLaves相である。比較例3(溶体化温度980℃+時効処理)では、粒界に沿ってδ相が多数並んで存在する。比較例13(溶体化温度1160℃+時効処理)および実施例1(再結晶化温度1160℃+溶体化温度980℃+時効処理)でも粒界に沿ってδ相が存在するが、比較例3より少ない。また、比較例13および実施例1のX線回折(XRD)測定では、金属炭化物のごく小さなピークが観測されており、Cr、Ti、Nb等の炭化物も粒界に析出していると思われる。
図12はさらに高解像度のSEM写真である。図12から、比較例3、比較例13、実施例1の順にγ’相とγ”相の析出相から構成される組織が微細になっている。この理由は次のように推測される。造形まま材ではセル状またはデンドライト状の組織によって溶質元素の偏析がある。比較例3では、造形まま材の組織の影響を強く受けて、溶質元素を含む析出相が偏在する。比較例13と実施例1では、1160℃での熱処理によって組成の均一化が進むため、析出相が微細化する。さらに、実施例1では、980℃での溶体化処理後の冷却中の偏析が少なく、さらに微細な析出相が得られる。
以上より、実施形態のNi合金部材の製造過程では、次のような組織の変化が起こると考えられる。造形まま材の再結晶化を1120℃以上の温度で行うことで、Z方向とXY方向の等軸化がある程度進行して、引張特性およびクリープ特性の異方性が減少する。再結晶化処理温度が1140~1180℃であれば、より等軸化が進む。また、この高温での再結晶化処理中に、δ相およびLaves相が溶解し、溶質元素の偏析の均一化が進行する。再結晶化処理された部材は、溶体化処理によって微細なδ相が析出する。これにより、時効処理によって微細なγ”相とγ’相が析出することで、クリープ試験初期のひずみ速度が抑えられる。
本発明は、上記の実施形態や実施例に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内で種々の変形が可能である。

Claims (2)

  1. 質量%で、Ni:50~55%、Cr:17.0~21.0%、Nb+Ta:4.75~5.5%、Mo:2.8~3.3%、Ti:0.65~1.15%、Al:0.20~0.80%、Co:1.0%以下、Cu:0.3%以下、C:0.08%以下、Si:0.35%以下、Mn:0.35%以下、P:0.015%以下、S:0.015%以下、B:0.006%以下、残部:Feおよび不可避的不純物、の組成を有する部材を付加製造技術により造形する積層造形工程と、
    造形された前記部材を1120℃以上、1250℃以下の温度で再結晶化させる再結晶化処理工程と、
    再結晶化した前記部材を925℃以上、1010℃以下の温度で溶体化する溶体化処理工程と、
    を有するNi合金部材の製造方法。
  2. 溶体化した前記部材を610℃以上、730℃以下の温度で熱処理する時効処理工程をさらに有する、
    請求項1に記載のNi合金部材の製造方法。
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