〔第1実施形態〕
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明に係るエジェクタ用パイプモジュールが用いられる燃料電池システム10の概略構成を示すブロック図である。燃料電池システム10は、例えば車両に搭載され、車両の動力源として使用される。
燃料電池システム10は、燃料電池(FCスタック)20と、燃料ガスの供給及び排出を行う燃料ガス配管系30と、酸化剤ガスの供給及び排出を行う酸化剤ガス配管系40と、冷却系50とを備え、図示しない制御装置により動作制御される。
燃料電池20は、反応ガスとして燃料ガス及び酸化剤ガスの供給を受けて水素と酸素の電気化学反応によって発電する固体高分子形燃料電池である。本実施形態では、燃料ガスとして水素ガスが用いられ、酸化剤ガスとして空気が用いられる。
燃料電池20は、複数の単セル21が積層されてなるセル積層体22と、該セル積層体22を積層方向に挟む一対のエンドプレート23A,23Bとを備えている。
単セル21は、電解質膜の両側に、それぞれ触媒層とガス拡散層とからなるアノード(燃料極)及びカソード(空気極)を配設した膜電極複合体(MEA)が一対のセパレータにより挟持されてなる。
セル積層体22には、燃料ガスを各単セル21へ導くための燃料ガス導入用流路22aと、各単セル21から排出される燃料オフガス(アノードオフガス)を導出するための燃料ガス導出用流路22bと、酸化剤ガスを各単セル21へ導くための酸化剤ガス導入用流路22cと、各単セル21から排出される酸化剤オフガス(カソードオフガス)を導出するための酸化剤オフガス導出用流路22dと、冷却液を各単セル21へ導くための冷却液導入用流路22eと、各単セル21から排出される冷却液を導出するための冷却液導出用流路22fとが形成されている。
尚、上記一対のエンドプレート23A,23Bのうち、一方のエンドプレート23Aには、上記各種導入用流路22a,22c,22eと接続される各種導入ポートが形成されると共に、上記各種導出用流路22b,22d,22fと接続される各種導出ポートが形成されている。これら各種ポートの詳細については後述する。これに対し、他方のエンドプレート23Bには、このような各種ポートは形成されていない。
かかる構成の下、各単セル21のアノードに燃料ガスが供給され、カソードに酸化剤ガスが供給される。アノードに燃料ガスが供給されることで、これに含まれる水素がアノードを構成する触媒層の触媒と反応し、これによって水素イオンが発生する。発生した水素イオンは電解質膜を通過して、カソードで空気に含まれる酸素と化学反応を起こす。この化学反応によって発電が行われる。同時に、発電に伴って水が生成されると共に、各単セル21が発熱する。そして、燃料電池20で発生した電気は、例えば電動モータや2次電池などの電気機器に供給される。
燃料ガス配管系30は、燃料供給源としての燃料タンク31(例えば高圧水素ガスが貯蔵された高圧水素タンク)と、該燃料タンク31から燃料電池20(燃料ガス導入用流路22a)へ燃料ガスを供給する燃料ガス供給流路32と、燃料電池20(燃料ガス導出用流路22b)から導出される燃料オフガスを燃料ガス供給流路32へ還流させる燃料オフガス循環流路33とを備えている。
燃料ガス供給流路32には、燃料オフガス循環流路33との合流部においてエジェクタ34が設けられ、前記合流部よりも上流側においてインジェクタ35が設けられている。
エジェクタ34は、燃料タンク31から供給される燃料ガスを高速で噴出させることにより、燃料オフガス循環流路33から燃料オフガスを吸引し、燃料ガスと燃料オフガスとを混合して燃料電池20に供給するためのものである。エジェクタ34の構成については後述する。
インジェクタ35は、燃料タンク31からエジェクタ34へ供給される燃料ガスの流量を調整するためのものである。
燃料オフガス循環流路33には、燃料電池20から導出される燃料オフガス中に含まれる水分の一部を分離除去するための気液分離器36が設けられている。この気液分離器36にて分離された燃料オフガス中の水分は、排水管37を介して外部に排出される。
従って、燃料ガス供給流路32や燃料オフガス循環流路33、エジェクタ34など、燃料オフガスを循環させる各種構成により、本実施形態における燃料オフガス循環系が構成される。
酸化剤ガス配管系40には、燃料電池20(酸化剤ガス導入用流路22c)へ酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給流路41と、燃料電池20(酸化剤オフガス導出用流路22d)から導出される酸化剤オフガスを大気中に放出する酸化剤ガス排出流路42とが設けられている。
酸化剤ガス供給流路41には、大気中の酸化剤ガスを取り込んで燃料電池20へ圧送するコンプレッサ43と、該コンプレッサ43により圧送される酸化剤ガスを加湿する加湿器44とが設けられている。
冷却系50は、燃料電池20を冷却するための温調媒体(温度調節媒体)としての冷却液を循環させるためのものである。本実施形態では、冷却液として水にエチレングリコール(不凍液)を含有させたLLC(ロングライフクーラント)が用いられている。
冷却系50は、冷却液を冷却するためのラジエータ51と、該ラジエータ51から燃料電池20(冷却液導入用流路22e)へ冷却液を供給する冷却液供給流路52と、燃料電池20(冷却液導出用流路22f)から導出される冷却液をラジエータ51へ還流させる冷却液排出流路53と、冷却液を循環させるためのポンプ54とが設けられている。
かかる構成の下、ポンプ54の駆動により、冷却液が冷却液供給流路52を介して燃料電池20内へ供給され、各単セル21を冷却する。その後、各単セル21において熱交換され、温められた冷却液が、冷却液排出流路53を介してラジエータ51へと案内され、該ラジエータ51において冷却された後、再度、燃料電池20に供給される。このような冷却液の循環により燃料電池20が適切な温度に維持される。
燃料電池システム10の概略は以上のとおりであるが、以下において本発明の特徴部分であるエジェクタ34及びその関連構成について説明する。
本実施形態におけるエジェクタ34は、エンドプレート23Aに組付けられている。より具体的には、本実施形態のエンドプレート23Aには、セル積層体22の冷却液導出用流路22fと、冷却系50の冷却液排出流路53とを流通可能に接続する冷却液流路構成部60(図2等参照)が一体に設けられており、この冷却液流路構成部60内にエジェクタ34が配設される構成となっている。
以下、かかる構成について図面を参照して詳しく説明する。図2は、エンドプレート23Aに対しエジェクタ34を組付けたエジェクタ組付体を示す平面図である。図3は、エジェクタ組付体の分解斜視図である。図4は、図2のエジェクタ組付体のA-A線断面図であり、図5は、図2のエジェクタ組付体のB-B線断面図である。
エジェクタ34は、燃料ガス供給流路32から供給される燃料ガスを高速で噴出させるノズル部61と、燃料ガス及び燃料オフガスが流通するガス流路を構成するパイプ部材62とから構成されている。
パイプ部材62が本実施形態におけるパイプ部に相当し、これを冷却液流路構成部60(後述する区画室130)内に組付けたエンドプレート23Aが本実施形態におけるエジェクタ用パイプモジュールを構成する。
ノズル部61は、高耐食ステンレス鋼材により構成されており、その基端側において燃料ガス供給流路32と接続され、その先細りした先端部から燃料ガスを噴出する。
パイプ部材62は、例えばポリフェニレンスルファイド(PPS)樹脂等の樹脂材料により形成されている。
より具体的に、パイプ部材62は、所定の軸線C1方向に沿って延びる略円筒状の主管部81と、該主管部81の上流端側に形成された挿入管部(挿入口)82と、該挿入管部82の近傍において主管部81から分岐し、軸線C1と直交する方向に沿って延びる吸引管部(吸引口)83と、主管部81の下流端側を屈曲するように形成され、軸線C1と直交する方向に沿って延びる吐出管部(吐出口)84とを備えている。
主管部81は、自身と吸引管部83との分岐部86(吸引管部83の開口位置)よりも下流側において、ガス流路が、下流側に向かって徐々に縮径していく縮径部81aと、該縮径部81aの下流側において、軸線C1方向に沿って略直線状に形成された直管部81bと、該直管部81bの下流側において、下流側に向かって徐々に拡径していく拡径部81cとを備えている。
ここで、主に縮径部81a及び直管部81bが、ノズル部61から噴出される燃料ガスと、吸引管部83から吸引された燃料オフガスとを混合するための混合部として機能し、拡径部81cが、混合された混合ガスの圧力を昇圧させるディフューザ部として機能する。
挿入管部82には、ノズル部61が挿入されている。ノズル部61の外周部にはOリング87が装着されており、該Oリング87が挿入管部82の内周面に圧接した状態となっている。これにより、ノズル部61がパイプ部材62に対し位置決め固定されると共に、ガス流路内の気密性が確保されている。
吸引管部83の先端側には、燃料オフガス循環流路33が接続されている。一方、吸引管部83の基端側の分岐部86は、上記のように固定されたノズル部61の先端部の位置よりも下流側に位置しており、ここで吸引管部83と主管部81とが連通している。
吐出管部84は、後述する燃料ガス導入ポート105に接続される。そして、ここからセル積層体22(燃料ガス導入用流路22a)に対し、燃料ガスと燃料オフガスの混合ガスが吐出される。
次に、エジェクタ34(パイプ部材62)が組付けられるエンドプレート23Aの構成について説明する。
エンドプレート23Aの本体部(以下、「エンドプレート本体部100」という。)は、金属製のインサート部材100aと、該インサート部材100aの所定部位を被覆する被覆部100bとにより構成されている。被覆部100bは、例えばPPS樹脂等、パイプ部材62と同一樹脂材料により形成されている。
エンドプレート本体部100は、上記単セル21の積層方向を法線方向とする略平板状で平面視長方形状をなす底壁部101と、該底壁部101の周縁部全域から該底壁部101の表面側に向け突出形成された周壁部102と、該周壁部102の先端縁部から外方へ延出形成され、前記インサート部材100aが一部露出したフランジ部103とを備えている。
底壁部101には、セル積層体22(燃料ガス導入用流路22a)へ燃料ガスを導入するための燃料ガス導入ポート105と、セル積層体22(燃料ガス導出用流路22b)から燃料オフガスを導出するための燃料オフガス導出ポート106と、セル積層体22(酸化剤ガス導入用流路22c)へ酸化剤ガスを導入するための酸化剤ガス導入ポート107と、セル積層体22(酸化剤オフガス導出用流路22d)から酸化剤オフガスを導出するための酸化剤オフガス導出ポート108と、セル積層体22(冷却液導入用流路22e)へ冷却液を導入するための冷却液導入ポート109と、セル積層体22(冷却液導出用流路22f)から冷却液を導出するための冷却液導出ポート110とが形成されている。
さらに、底壁部101には、冷却液流路構成部60のベース部115が区画形成されている。ベース部115は、底壁部101からリブ状に突出形成されたベース側区画壁部116によって、その範囲が画定されている。そして、このベース部115にパイプ部材62が配設される。ベース部115及びベース側区画壁部116により、本実施形態における区画室(冷却液流路)130のベース側構成部が構成される。
ベース部115内において、パイプ部材62は、その軸線C1方向が底壁部101の所定の対角線方向に沿うように配設されている。また、ベース部115には、パイプ部材62を支持するための支持部材117が取付けられている。
尚、上記各種ポート105~110のうち、燃料ガス導入ポート105及び冷却液導出ポート110は、ベース部115内に開口形成されている。これにより、冷却液導出ポート110を介して、セル積層体22(冷却液導出用流路22f)から導出される冷却液が冷却液流路構成部60(区画室130)内へ流入可能となる。従って、冷却液導出ポート110が本実施形態における流入口に相当する。
また、燃料ガス導入ポート105には、パイプ部材62の吐出管部84が挿し込まれる。尚、吐出管部84と燃料ガス導入ポート105との間の隙間は、溶着等により接合され塞がれている。これにより、吐出管部84が燃料ガス導入ポート105に対し位置決め固定されると共に、区画室130内の気密性が確保されている。
一方、その他のポート106~109に関しては、ベース部115外に設けられている。そして、燃料オフガス導出ポート106には、燃料オフガス循環流路33が接続される。酸化剤ガス導入ポート107には、酸化剤ガス供給流路41が接続される。酸化剤オフガス導出ポート108には、酸化剤ガス排出流路42が接続される。冷却液導入ポート109には、冷却液供給流路52が接続される。
また、ベース部115は、冷却液導出ポート110が開口形成され冷却液流路の上流側となる上流側部位115aが、平面視長方形状の底壁部101の長辺方向に沿って形成されると共に、冷却液導出ポート110から流入した冷却液が流れて排出されていく冷却液流路の下流側となる下流側部位115bが、パイプ部材62の軸線C1方向となる、底壁部101の対角線方向に沿って形成されており、全体として平面視略へ字状に屈曲している。
さらに、エンドプレート本体部100には、パイプ部材62が配設されたベース部115を覆うように、冷却液流路構成部60を構成するカバー部120が取付けられている。カバー部120は、本実施形態における区画室130のカバー側構成部を構成するものであり、例えばPPS樹脂等、エンドプレート本体部100の被覆部100bと同一樹脂材料により形成されている。
カバー部120は、ベース部115と相対向するように配設される平面視略へ字状の表壁部121と、該表壁部121の周縁部全域から裏面側に突出形成されたカバー側区画壁部122とを備えている。
カバー部120は、カバー側区画壁部122の先端縁部と、ベース側区画壁部116の先端縁部とが溶着等により接合されることにより、エンドプレート本体部100と一体となるように固定されている。これにより、冷却液流路構成部60内(ベース部115とカバー部120との間)に、冷却液導出ポート110から流入する冷却液が流れる区画室130が形成される。
カバー部120の表壁部121には、冷却液流路の下流側端部近傍において、区画室130内から冷却液を流出させるための平面視円形状の流出口123が形成されると共に、パイプ部材62の吸引管部83を挿通させるための挿通孔124が形成されている。尚、吸引管部83と挿通孔124との間の隙間は、溶着等により接合され塞がれている。これにより、吸引管部83がカバー部120に対し位置決め固定されると共に、区画室130内の気密性が確保されている。
そして、ベース部115に対しカバー部120が取付けられた状態においては、カバー部120の流出口123と、ベース部115の冷却液導出ポート110とが、平面視で底壁部101の長辺方向に並ぶように配置された状態となる。これにより、冷却液の流れ方向R1とパイプ部材62の軸線C1方向とが交差した状態となり、冷却液がパイプ部材62の表側及び裏側を通り、パイプ部材62を跨ぐように通過していくこととなる。流出口123は、冷却液排出流路53と接続される。
また、ベース側区画壁部116及びカバー側区画壁部122には、それぞれ冷却液流路の下流側端部において、半円状の切欠き凹部116a,122aが形成されており、これらが合わさることで、パイプ部材62の挿入管部82が挿通される挿通孔が形成されている。尚、挿入管部82と切欠き凹部116a,122aとの間の隙間は、溶着等により接合され塞がれている。これにより、挿入管部82が区画壁部116,122に対し位置決め固定されると共に、区画室130内の気密性が確保されている。
次に、本実施形態に係るエジェクタ組付体(エジェクタ用パイプモジュール)の作用について、燃料ガス配管系30及び冷却系50の動作と共に説明する。
燃料ガス配管系30においては、燃料タンク31に貯蔵された燃料ガスが、インジェクタ35により流量を調整されながら、燃料ガス供給流路32を介してエジェクタ34へ導かれ、該エジェクタ34を介して燃料電池20に供給される。
この際、エジェクタ34においては、ノズル部61から高速で噴出された燃料ガスが主管部81へ流れる。この結果、主管部81内には負圧が発生し、燃料オフガス循環流路33によって還流された燃料オフガスが吸引管部83から吸引されて、主管部81内へ流れる。同時に、ノズル部61から噴出される燃料ガスは減圧膨張して周囲の熱を吸収するため、ガス流路内の温度は低下する。
続いて、主管部81内において、ノズル部61から噴出される燃料ガスと、吸引管部83から吸引された燃料オフガスとが混合されると共に、混合された混合ガスが吐出管部84を介して、セル積層体22(燃料ガス導入用流路22a)へ吐出される。
そして、混合ガスが燃料ガス導入用流路22aを介して、セル積層体22内の各単セル21のアノードに供給され、電気化学反応に供される。その後、各単セル21のアノードから排出される燃料オフガスは、燃料ガス導出用流路22bを介して、エンドプレート23Aの燃料オフガス導出ポート106から導出され、燃料オフガス循環流路33へ導かれる。かかる燃料オフガスは、燃料オフガス循環流路33を介してエジェクタ34(吸引管部83)へ還流する。
一方、冷却系50においては、冷却液がラジエータ51から冷却液供給流路52を介して燃料電池20(冷却液導入用流路22e)内へ供給され、各単セル21を冷却する。その後、各単セル21において熱交換され、温められた冷却液(例えば70℃~100℃)が冷却液導出用流路22fを介して、エンドプレート23Aの冷却液導出ポート110(流入口)から区画室130内に流入する。
そして、区画室130内に流入した冷却液は、該区画室130内をカバー部120の流出口123側に向けて流れ、該流出口123を介して冷却液排出流路53へ排出される。
この際、区画室130内においては、冷却液が、パイプ部材62の表側とカバー部120の表壁部121との間、及び、パイプ部材62の裏側とベース部115との間を通り、パイプ部材62を跨ぐように通過していき、パイプ部材62を温める。
その後、冷却液は、冷却液排出流路53を介してラジエータ51へと案内され、該ラジエータ51において冷却された後、再度、燃料電池20に供給される。
以上詳述したように、本実施形態によれば、燃料電池20の発電に伴う発熱によって温められた冷却液が流通する区画室130(冷却液流路構成部60)を備えると共に、該区画室(冷却液流路)130内に、エジェクタ34のガス流路を構成するパイプ部材62が配設されている。
これにより、主管部81と吸引管部83との分岐部86、すなわち燃料ガスと燃料オフガスの合流部を含むパイプ部材62(ガス流路)ほぼ全域を冷却液により温めることが可能となる。結果として、パイプ部材62のほぼ全域において、燃料オフガス中の水分の凍結を防止することができる。
加えて、本実施形態では、パイプ部材62が区画室130で覆われると共に、該区画室130内に冷却液が存在することから、遮音性が向上する。結果として、エジェクタ34において燃料ガスを高速で噴出する際に生じる気流音が外部に漏れにくくなり、該気流音に起因した騒音を低減することができる。
さらに、本実施形態では、区画室130(冷却液流路構成部60)のベース部115がエンドプレート本体部100と一体に形成されている。これにより、部品点数を削減し、エジェクタ34のコンパクト化や低コスト化を図ることができる。
また、本実施形態では、ベース部115と、カバー部120と、パイプ部材62とが別部材で構成されている。これにより、パイプ部材62と冷却液との接触面積を増やし、加温効率を高めることができる。
また、本実施形態では、区画室130において、カバー部120に設けられた流出口123と、ベース部115に設けられた冷却液導出ポート110とが、パイプ部材62の軸線C1を挟んで両側に分かれて配置されている。これにより、冷却液の流れ方向R1とパイプ部材62の軸線C1方向とが交差した状態となり、冷却液がパイプ部材62の表側及び裏側を通り、パイプ部材62を跨ぐように通過していくこととなる。結果として、パイプ部材62と冷却液との接触面積を増やし、加温効率を高めることができる。
また、本実施形態では、区画室130内において、パイプ部材62を支持する支持部材117が設けられている。これにより、振動等によるガタツキの発生を抑制し、パイプ部材62の位置ずれ等を抑制することができる。結果として、エジェクタ34の耐久性の向上を図ることができる。
〔第2実施形態〕
次に第2実施形態について詳しく説明する。但し、上述した第1実施形態と重複する部分については、同一の部材名称、同一の符号を用いる等してその詳細な説明を省略するとともに、以下には第1実施形態と相違する部分を中心として説明することとする。
第1実施形態においては、エンドプレート23Aの冷却液流路構成部60(区画室130)内に、これとは別体で設けられたパイプ部材62が配設されることにより、エジェクタ34がエンドプレート23Aに一体に組付けられた構成となっている。
これに対し、本実施形態においては、第1実施形態のパイプ部材62に相当するパイプ部が、エンドプレート23Aの冷却液流路構成部160に一体に設けられた構成となっており、かかる構成が第1実施形態とは異なる。
以下、かかる構成について図面を参照して詳しく説明する。図6は、第2実施形態に係るエジェクタ組付体を示す平面図である。図7は、エジェクタ組付体の分解斜視図である。図8は、図6のエジェクタ組付体のC-C線断面図である。図9は、図6のエジェクタ組付体のD-D線断面図である。
本実施形態に係るエンドプレート23Aの本体部(エンドプレート本体部100)の底壁部101には、冷却液流路構成部160のベース部215が区画形成されている。ベース部215は、底壁部101からリブ状に突出形成されたベース側区画壁部216によって、その範囲が画定されている。ベース部215及びベース側区画壁部216により、本実施形態における冷却液流路(後述する区画室250)のベース側構成部が構成される。
ベース部215内には、冷却液導出ポート110が開口形成されている。これにより、冷却液導出ポート110を介して、セル積層体22(冷却液導出用流路22f)から導出される冷却液が冷却液流路構成部160(区画室250)内へ流入可能となる。
また、ベース部215内には、ベース側パイプ構成部217が形成されている。ベース側パイプ構成部217は、その軸線C2方向が底壁部101の所定の対角線方向に沿うように形成されている。
本実施形態では、ベース部215、ベース側区画壁部216、及び、ベース側パイプ構成部217が、例えばPPS樹脂等の樹脂材料により、底壁部101の被覆部100bと一体に形成されている。
ベース側パイプ構成部217には、軸線C2と直交する断面が半円弧状となるベース側溝部218が軸線C2方向に沿って形成されている。ベース側パイプ構成部217のガス流路下流側端部には、燃料ガス導入ポート105と連通するように、軸線C2と直交する方向に沿って延びる吐出管部(吐出口)219が貫通形成されている。
さらに、エンドプレート本体部100には、ベース部215を覆うように、冷却液流路構成部160を構成するカバー部220が取付けられている。カバー部220は、例えばPPS樹脂等、エンドプレート本体部100の被覆部100bと同一樹脂材料により形成されている。
カバー部220は、ベース部215と相対向するように配設される表壁部221と、該表壁部221の周縁部全域から裏面側に突出するように形成されたカバー側区画壁部222とを備えている。
表壁部221の裏面には、ベース側パイプ構成部217に対応するように、カバー側パイプ構成部225が表壁部221と一体に成形されている。カバー側パイプ構成部225には、ベース側溝部218に対応して、軸線C2と直交する断面が半円弧状となるカバー側溝部226が軸線C2方向に沿って形成されている。但し、本実施形態では、表壁部221の厚肉化を防止するため、表壁部221のカバー側溝部226に対応する部分が肉抜き形成されている。
また、カバー側パイプ構成部225のガス流路上流端側には、カバー側溝部226に連続するように、軸線C2に沿って形成された円筒状の上流管部227が設けられている。
上流管部227は、軸線C2に沿って、カバー側区画壁部222の外側まで貫通し開口している。この上流管部227の上流側部分がノズル部61を挿入可能な挿入管部(挿入口)となる。
ノズル部61の外周部にはOリング87が装着されており、該Oリング87が上流管部227の内周面に圧接した状態となっている。これにより、ノズル部61が上流管部227に対し位置決め固定されると共に、ガス流路内の気密性が確保されている。
また、カバー側パイプ構成部225には、上流管部227から分岐し、軸線C2と直交する方向に沿って延びる吸引管部(吸引口)228が形成されている。
吸引管部228の先端側には、燃料オフガス循環流路33が接続される。一方、吸引管部228の基端側の分岐部229は、上記のように固定されたノズル部61の先端部の位置よりも下流側に位置しており、ここで吸引管部228と上流管部227とが連通している。
カバー部220には、冷却液流路の下流側端部において、後述する区画室250内から冷却液を流出させるための平面視略半円形状の流出口230が形成されている。また、これに合わせて、冷却液流路の下流側端部位置におけるカバー側区画壁部222は、コーナー部が大きく面取りされるように円弧状に湾曲形成されている。流出口230は、冷却液排出流路53と接続される。
カバー部220は、カバー側区画壁部222の先端縁部と、ベース側区画壁部216の先端縁部とが溶着等により接合されることにより、エンドプレート本体部100と一体となるように固定されている。これにより、冷却液流路構成部160内(ベース部215とカバー部220との間)に、冷却液導出ポート110から流入する冷却液が流れる区画室250が形成される。
そして、ベース部215に対しカバー部220が取付けられた状態においては、ベース側パイプ構成部217(ベース側溝部218)とカバー側パイプ構成部225(カバー側溝部226)が合わさることにより、軸線C2方向に沿って延びる略円筒状の下流管部235が形成されると共に、該下流管部235と上記上流管部227とが軸線C2に沿って1つに繋がった1本のパイプ(主管部)となる。
従って、吐出管部219、上流管部227、吸引管部228及び下流管部235により本実施形態におけるパイプ部が構成されると共に、該パイプ部とノズル部61とにより、本実施形態におけるエジェクタ234が構成される。また、前記パイプ部を冷却液流路構成部160(区画室250)内に備えたエンドプレート23Aが本実施形態におけるエジェクタ用パイプモジュールを構成する。
また、ベース側パイプ構成部217の先端縁部と、カバー側パイプ構成部225の先端縁部とが溶着等により接合されており、ガス流路の気密性が確保されている。
下流管部235には、上記第1実施形態の主管部81と同様に、ガス流路の上流側より順に縮径部、直管部及び拡径部が形成されている(符号略)。これにより、下流管部235は、燃料ガスと燃料オフガスとを混合する混合部として機能すると共に、混合ガスの圧力を昇圧させるディフューザ部として機能する。
また、ベース側区画壁部216の冷却流路下流側の端部には、半円状の切欠き凹部216aが形成されている。これにより、ベース部215に対しカバー部220が取付けられた状態においては、切欠き凹部216aに対し上流管部227が嵌め込まれる。尚、上流管部227と切欠き凹部216aとの間の隙間は、溶着等により接合され塞がれている。これにより、上流管部227がベース側区画壁部216に対し位置決め固定されると共に、区画室250内の気密性が確保されている。
さらに、本実施形態では、ベース部215に対しカバー部220が取付けられた状態において、下流管部235によって区画室250の内部空間が仕切られた状態となり、軸線C2方向に平行して延びる2本の冷却液流路250a,250bが形成される。これにより、冷却液導出ポート110から区画室250内へ流入した冷却液は、その流れ方向R2が2方向に分岐することとなる。
但し、本実施形態では、両冷却液流路250a,250bにおける冷却液の流れを均一にするため、冷却液導出ポート110から離れた外側の冷却液流路250aの入口部を、内側の冷却液流路250bの入口部よりも狭め、流路面積を小さく絞っている。
加えて、冷却液流路250a、250bの下流側端部位置には、それぞれ整流手段としての整流部245がベース部215に突出形成されている。整流部245は、軸線C2方向に平行して延びると共に、該軸線C2と直交する断面が流出口230の開口側に向け先細りした形状となっている。
次に、本実施形態に係るエジェクタ組付体(エジェクタ用パイプモジュール)の作用について、燃料ガス配管系30及び冷却系50の動作と共に説明する。尚、ここでも第1実施形態と説明が重複する部分については、その説明を省略する。
エジェクタ234においては、ノズル部61から高速で噴出された燃料ガスが上流管部227から下流管部235へ向け流れる。この結果、燃料オフガス循環流路33によって還流された燃料オフガスが吸引管部228から吸引されて、上流管部227から下流管部235へ向け流れる。同時に、ノズル部61から噴出される燃料ガスは減圧膨張して周囲の熱を吸収するため、ガス流路内の温度は低下する。
続いて、下流管部235内において、ノズル部61から噴出される燃料ガスと、吸引管部228から吸引された燃料オフガスとが混合されると共に、混合された混合ガスが吐出管部219を介して、セル積層体22(燃料ガス導入用流路22a)へ吐出される。
一方、冷却系50においては、各単セル21にて温められた冷却液(例えば70℃~100℃)が冷却液導出用流路22fを介して、エンドプレート23Aの冷却液導出ポート110(流入口)から区画室250内に流入する。
区画室250内へ流入した冷却液は、その流れ方向R2が2方向に分岐し、下流管部235及び上流管部227の両側の冷却液流路250a,250bを通って、流出口230に向けて流れる。この際、下流管部235、上流管部227、吸引管部228及び分岐部229など両側面が冷却液と接触し、両側方から温められる。
そして、冷却液流路250a、250bをそれぞれ通過した冷却液は、冷却液流路構成部160(区画室250)の下流側端部において合流し、流出口230の開口側に向け流れる。その後、冷却液は流出口230を介して冷却液排出流路53へ排出される。
尚、冷却液流路構成部160の下流側端部においては、上述したカバー側区画壁部222の湾曲形状や整流部245の作用によって、冷却液流路250a、250bから導かれる冷却液が流出口230の開口側に向けスムーズに流れるように構成されている。
以上詳述したように、本実施形態によれば、上記第1実施形態と同様の作用効果が奏される。
特に本実施形態では、ベース部215に一体形成されたベース側パイプ構成部217と、カバー部220に一体形成されたカバー側パイプ構成部225とを合わせることにより、エジェクタ234のパイプ部が形成される構成となっている。これにより、部品点数を削減し、エジェクタ234のコンパクト化や低コスト化を図ることができる。
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
(a)上記各実施形態では、本発明を、車両等に搭載される燃料電池システムに用いられるエジェクタ組付体(エジェクタ用パイプモジュール)として具体化したが、これに限らず、例えば工場や一般家庭の発電用の燃料電池システムに用いられるものとして具体化してもよい。
(b)上記各実施形態では、エジェクタ用パイプモジュールの区画室を構成するベース側構成部及びカバー側構成部のうち、ベース側構成部がエンドプレート23Aの被覆部100bと一体に樹脂形成された構成となっている。
これに限らず、別体で設けられたベース側構成部をエンドプレート23Aに対し接着や溶着、ネジ止めする等して一体とする構成としてもよい。つまり、ベース側構成部、カバー側構成部及びパイプ部からなるエジェクタ用パイプモジュールが、エンドプレート23Aとは別体で設けられた構成としてもよい。
勿論、エジェクタ用パイプモジュールが別体で設けられた構成においては、該エジェクタ用パイプモジュールをエンドプレート23Aとは離間して配設する構成としてもよい。
(c)ベース側構成部、カバー側構成部及びパイプ部の配置構成など、エジェクタ用パイプモジュールに係る構成は、上記各実施形態に限定されるものではない。
例えばベース側構成部及びカバー側構成部によって形成される区画室の内壁面に沿ってパイプ部が配設され、該パイプ部の片側面のみが冷却液に接するような構成としてもよい。
また、上記各実施形態では、区画室において、冷却液の流入口と流出口とが、パイプ部の軸線方向に少なくとも所定区間離間して配置されている。これに限らず、例えば第1実施形態のように、冷却液がパイプ部材62の表側及び裏側を通り、パイプ部材62を跨ぐように通過していく構成の下、冷却液の流入口と流出口とが、パイプ部材62の軸線C1方向同一位置に配置され、冷却液の流れ方向R1とパイプ部材62の軸線C1方向とが直交する構成としてもよい。かかる場合、冷却液の流れ方向R1と交わる部位が、例えばノズル部61の先端部に対応する位置など、パイプ部材62において最も加温したい部位であることが好ましい。
(d)また、パイプ部の形状は、上記各実施形態に限定されるものではない。例えば上記第1実施形態において、パイプ部材62の挿入管部(挿入口)82と吸引管部(吸引口)83の分岐部86が、ノズル部61の先端部の位置よりも下流側に位置した構成となっている。これに限らず、分岐部86が、ノズル部61の先端部の位置よりも上流側に配置される構成としてもよい。
上記各本実施形態では、吸引管部(吸引口)を、ノズル部61の先端部の位置よりも下流側に配置することで、最も低温になるノズル部61の先端部を燃料オフガスが通過しないようにしているが、かかる構成では、燃料オフガスの吸引性が低下するおそれもある。
これに対し、本発明に係る構成の下では、燃料オフガス中の水分が凍結するなどの不具合が発生しにくくなるため、吸引管部を、ノズル部61の先端部の位置よりも上流側に配置し、燃料オフガスの吸引性の低下抑制を図ることができる。
(e)上記第1実施形態では、ベース部115に対しパイプ部材62を支持するための支持部材117が取付けられている。これに限らず、支持部材117がベース部115に一体形成された構成としてもよいし、パイプ部材62に取付けられる又は一体形成される構成としてもよい。
これに代えて又は加えて、パイプ部材62を支持するための支持部材が、カバー部120の表壁部121の裏面に取付けられる又は一体形成される構成としてもよい。