JP7255130B2 - 伝動ベルト補強用コード及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、伝動ベルト補強用コード及びその製造方法に関するものである。
従来から伝動ベルトは自動車、農業機械、一般産業機械において、ベルトの摩擦力により動力を伝達する目的で用いられる。一般的な伝動ベルトは接着ゴム層と、この接着ゴム層の底面側に一体に積層された別のゴム層(時としてリブ形状)とを備えており、該接着ゴム層には補強用コード(心線と呼ぶ)がベルトの長さ方向に延び、かつ、ベルト幅方向に所定ピッチでスパイラル状に埋設されている。
上記心線(補強用コード)としては例えば、特定の破断強度と非晶配向とを有するポリエステル繊維製の伝動ベルト用コードが知られている(特許文献1)。同文献では該コードは無撚り、又は下撚りコードを複数本あわせてこれに上撚りを施した諸撚構造を有するものが提案され、これを用いることにより、伝動ベルトとして長期間走行させてもベルト張力を保持でき、走行時の騒音や振動が軽減された伝動ベルトを提供することが開示されている。諸撚構造としては1本~3本の原糸をSまたはZ方向に下撚りしたものや、その後、2本~5本の下撚りコードを合わせて下撚りと反対方向に通常同数の上撚りをかけ諸撚りコードとしたものが開示されている。
例えばまた、下撚りした低弾性率材料(ポリアミド)と高弾性率材料(ポリエステル)を交撚りしたVリブドベルト用の心線が知られている(特許文献2)。心線をこの構造とすることで、心線を構成する低弾性率材料と高弾性率材料が荷重を分担し、ベルトの弾性率が適度に高くなり、大きな負荷を駆動できるVリブドベルトが提供できることが知られている。
あるいはまた、ポリエチレンテレフタレート繊維からなる伝動ベルト補強用ポリエステルコードが知られている(特許文献3)。該ポリエステルコードは、ポリエステル繊維に特定の撚係数で撚糸を施しコードとした後、接着剤処理等において、処理温度を180~250℃、ストレッチ率を-10~0%として熱処理を行うことにより得られるものであり、これにより、ベルト張力および寸法の安定性、伸縮性に優れるとともに、エネルギーロスを低減できる伝動ベルト補強用コードを提供するものである。
特開2013-199712号公報 特開2010-106898号公報 特開2012-036521号公報
しかるに上記特許文献に記載されたコード類は、比較的大きな総繊度を有する繊維の合撚を行うものであり、例えばニップロール等を用いて通常の方法で合撚りすると、強度ばらつきが生じ、本来コードが有する物性が十分に発揮されないことが判明した。本発明者らの検討によれば、ニップロールが各糸を押さえつけ、合撚りする際、合撚する各糸をニップロールが同時に押さえつけることができていないことで、断面が均等になりにくく、撚糸中に撚り糸の一部が糸道ガイドから外れたり、撚り糸の一部がニップロールから浮いたりして、コードの断面がゆがんでしまい、その部分についてコードの強力が低くなることからそれを伝導ベルトに用いると、物理物性を安定的に発現させることができず、この問題は特に総繊度が大きいコードの場合に顕著であることが判明した。
よって、本発明は、ポリエステル繊維を3本以上、合糸して撚糸したコードにおいて、必要な強力を安定的に有する伝動ベルト補強用コードを提供することができる。
かかる課題を解決するために本発明は、下記構成からなる。
(1)ポリエステル繊維を3本以上、合糸して撚糸した撚糸で構成されるコードであり、該コードの断面の少なくとも一部が、略回転対称性を備えた均一断面を有する、伝動ベルト補強用コード。
(2)前記の略回転対称性が、コードを構成するN本(N≧3)のポリエステル繊維をその断面でN個に分割した時、コードの中心から分割したポリエステル繊維同士の境界に向けた放射線の形成する角度(θ)に関し、以下の式1で計算される角度(θ)の変動(V)が0~40%の範囲内である、前記(1)記載の伝動ベルト補強用コード。
(式1)変動(V)={θ(最大)-θ(最小)}/(360/N)×100
(N=3、4、5・・・)
(3)前記の撚糸が、ポリエステル繊維を2本以上、合糸して撚糸した下撚糸を、更に、3本以上、合糸して上撚りして撚糸としたものである、前記(1)または(2)記載の伝動ベルト補強用コード。
(4)前記の撚糸の撚り数が、4~14(T/10cm)である、前記(1)~(3)のいずれかに記載の伝動ベルト補強用コード。
(5)前記コードの総繊度が22,500~50,000(dtex)である、前記(1)~(4)のいずれかに記載の伝動ベルト補強用コード。
(6)ポリエステル繊維を撚糸して下撚糸とし、しかる後に該下撚糸を、更に3本以上、同時にニップロールで押さえつけて合糸し、しかる後に上撚りする、伝動ベルト補強用コードの製造方法。
本発明によれば、ポリエステル繊維を3本以上、合糸して撚糸したコードにおいて、該コードの断面の少なくとも一部が、略回転対称性を備えた均一断面を有するので、必要な強力を安定的に有する伝動ベルト補強用コードを提供することができる。
下撚糸を3本同時にニップロールで押さえつけて合糸し、撚糸する一例を示す概念図である。 aは略回転対称性を備えた均一断面の一例を示す図面代用写真であり、bは、本発明で規定する角度(θ)を説明する図面代用写真である。
以下、本発明を実施するための形態を説明する。
本発明の伝動ベルト補強用コードは、ポリエステル繊維を3本以上、合糸して撚糸したコードであり、該コードの断面の少なくとも一部が、略回転対称性を備えた均一断面を有するので、物理特性が均一な伝動ベルトを提供することができる。
本発明の伝動ベルト補強用コードは、ポリエステル繊維を3本以上、合糸して撚糸することで、伝動ベルト補強用として必要な強力が得られ、かつ、3本以上を合糸して撚糸することから、繊維同士が収束し、伝動ベルトの成型工程を安定的に行うことができる。
なお伝動ベルトの成型工程は、本発明のコードを円筒ゴムへスパイラル状に巻き付け、ゴムでサンドイッチのうえ加硫して伝動ベルトへ成型するのが一般的に知られる。
該伝動ベルトとしては、例えば、Vリブドベルト、コグドVベルト、歯付ベルト、両面Vベルト、両面歯付ベルト、歯付Vベルト、平ベルトが例示できる。
該ポリエステル繊維を構成する合成樹脂としてはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのホモポリエステル、ポリエステルの繰り返し単位を構成する酸成分にイソフタル酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸またはアジピン酸などの脂肪族ジカルボン酸などを共重合した共重合ポリエステルなどが例示できる。
本発明の伝動ベルト補強用コードは、その断面の少なくとも一部において略回転対称性を備えるものであり、コードを構成するN本(N≧3)のポリエステル繊維をその断面でN個に分割した時、コードの中心から分割したポリエステル繊維同士の境界に向けた放射線の形成する角度(θ)に関し、下記式1で計算される角度(θ)の変動(V)が0~40%の範囲内であることが好ましい。
(式1) 変動(V)={θ(最大)-θ(最小)}/(360/N)×100
(N=3、4、5・・・)
図2aは略回転対称性を備えた均一断面の一例を示す図面代用写真であり、図2bは本発明で規定する角度(θ)を説明する図面代用写真である。図中伝動ベルト補強用コードを構成する3本のポリエステル繊維を、3本のポリエステル繊維が会合する点であるコードの中心から分割したポリエステル繊維同士の境界に向けた放射線22の形成する角度が角度(θ)21である。
伝動ベルト補強用コードを構成するN本のポリエステル繊維をその断面でN個に分割した時、該変動(V)が上記の式の範囲内であれば、伝動ベルト補強用コードを構成するN本のポリエステル繊維が、そのコード断面において均一な割合(占有面積)で存在するので好ましい。更にまた、該変動(V)が上記の式の範囲内であれば、伝動ベルトの成型工程において、該コードを円筒ゴムへスパイラル状に巻き付け、ゴムでサンドイッチのうえ加硫して成型していく際、スパイラル状に巻き付ける力が作用して該コードが回転しても、均一に巻き付けることが可能となり好ましい。
該変動のより好ましい範囲としては、0~30%の範囲内である。これによりコード断面の均一性や、伝動ベルトの成型工程における均一性がよりいっそう増すので好ましい。
ここで、「コードの断面の少なくとも一部が、略回転対称性を備え」とは、コードの断面観察用に無作為に断面サンプルを作成した際、該断面が略回転対称性を備えることを意味し、あるいはまた、コードの長さ方向の全体にわたり、コードの断面が略回転対称性を有するものも好ましい。
本発明の伝動ベルト補強用コードは、3本以上のポリエステル繊維を合糸して撚糸したものであるが、そこで用いるポリエステル繊維は、ポリエステル繊維を2本以上、合糸して撚糸したもの(=下撚糸)を用いることが好ましい。すなわち、ポリエステル繊維を2本以上、合糸して撚糸(=下撚)し、更に、3本以上、合糸して撚糸(=上撚り)した撚糸とすることが好ましい。
上記下撚糸としてはポリエステル繊維を2本以上、好ましくは3~8本を合糸して撚糸したものが更に好ましい。該下撚糸の合糸本数がこの範囲内であれば、続いて実施する前述の上撚りにおいて、略回転対称を備えた均一な断面を有するコードが得られるので好ましい。
前述の上撚りにおいて、下撚糸を3本以上、合糸して撚糸(=上撚り)することが好ましく、3~6本を合糸して撚糸したものが更に好ましい。該上撚り糸の合糸本数がこの範囲内であれば、前述の角度(θ)が前述の式1を満たすことから好ましい。
また前述の上撚りは、4~14(T/10cm)の撚り数を有することが好ましい。該上撚りの撚り数は、補強用コードの総繊度が22,500~50,000(dtex)の範囲の太いものである場合は、4~10(T/10cm)の範囲内とすることで、太いコードにおいても繊維同士が収束し、伝動ベルトの成型工程を安定的に行うことができるので好ましい。
本発明の伝動ベルト補強用コードは、その総繊度が22,500~50,000(dtex)の範囲内であることが好ましい。該総繊度を22,500(dtex)以上とすることで、伝動ベルトとして必要な強力が得られるので好ましく、また、該総繊度を50,000(dtex)以下とすることで、該コードの少なくとも一部が、実質的に略回転対称性を備えた均一断面を有することが可能となるので好ましい。更にまた、該総繊度を22,500~50,000(dtex)の範囲内とすることで、繊維同士が適切に収束し、伝動ベルトの成型工程を安定的に行うことができるので好ましい。
本発明の伝導ベルト補強用コードの製造方法は、ポリエステル繊維を撚糸して下撚糸とし、しかる後に該下撚糸を、更に3本以上、同時にニップロールで押さえつけて合糸し、しかる後に上撚りするものである。下撚糸はポリエステル繊維を2本以上合糸して、撚糸したものが好ましい。該下撚糸を3本以上、同時にニップロールで押さえつけてから上撚りすることで、22,500~50,000(dtex)の太い総繊度においても下撚糸同士が略回転対称性を有する均一断面を有しつつ撚り合わせられているので、適切な太さのコードとすることが出来る。
前記の、下撚りで得られた下撚糸を3本以上、同時にニップロールで押さえつけて合糸する方法は、一対以上のロール同士で押さえつける方法が好ましく、2本のロールで押さえつける方法、3本のロールで連続的に押さえつける方法など、適宜選択できる。
上記において、ニップロールに同時に押しつけるとは、下撚糸を3本以上、一対以上のロール同士で同時に押さえつける状態をいい、具体的には一対のニップロール11間における下撚糸の把持状態が各下撚糸間で均等の張力となるように把持されている状態である。均等の張力に関し、下撚糸間で厳密に全く同じに常に維持することは困難であるが、下撚糸間で同じになるよう制御すればよい。
図1は下撚糸を3本同時にニップロールで押さえつけて合糸し、撚糸する一例を示す概念図である。
ドラムに巻かれた下撚糸12は、それぞれ糸道ガイド14を経由してニップロール11に導入され、同時に押さえつけられながら糸道ガイド15に送り出され、さらに糸道ガイド15を経由しスネールガイド16とスピンドル17により撚糸(上撚り)13がかけられ、上撚された上撚糸がスピンドル17の内側に巻回される。このときニップロールでの下撚糸の把持時の張力が下撚糸間で同じとなるように制御する。具体的には、下撚糸ドラムの巻き出し状態や下撚糸のニップロールへの糸道の適正化、ニップロールの組み合わせとして例えば金属ロールと樹脂ロールとを組み合わせることなどにより、ニップロール表面を把持に適した表面状態に制御することが有効である。
本発明の伝動ベルト補強用コードは、22,500~50,000(dtex)の太い総繊度であっても、ニップロールで押さえつける状態を適正化することにより、下撚糸それぞれに作用する張力が均等に制御できていることが有効である。具体的にはニップロールの表面状態や押さえが適切で、各ガイド類の回転が良好、あるいはまた、原料として用いる下撚糸の巻き姿が適切など、各管理項目が適切な状態が好ましい。これにより、下撚糸それぞれに作用する張力が均等に制御できることとなり好ましい。
本発明の伝動ベルト補強用コードの製造方法は、3本以上を合糸して撚糸するものであり、なかでも3本以上の下撚糸を用いて上撚りを施すことが好ましいものであるが、いずれの撚りについても撚糸機や撚糸方法は通常の方法を採用でき、リング撚糸機やイタリー式撚糸機、ダブルツイスターなど公知の方法を採用することができる。
また、該上撚りにおける撚り方向は、ZまたはS方向いずれの撚りでも構わないが、下撚りをする際には、下撚りと上撚りの撚り方向が異なる諸撚りが好ましい。
該上撚りを行う際、1,000~4,000(rpm)の回転数で、かつ本発明で規定する範囲を満たす範囲内で行うのが好ましい。なぜなら上撚りの回転数を1,000~4,000(rpm)の範囲内とすることで、上撚り時の適切な張力が得られるが、太繊度の繊維を用いて回転数を上げすぎると下撚糸の張力が上昇する傾向があるのでその際は回転数を下げるなど適宜制御する。該上撚りの回転数は、補強用コードの総繊度が22,500~50,000(dtex)の範囲の太いものである場合は、1,000~2,500(rpm)の範囲内とすることで、太いコードにおいても撚糸時の張力が適切となり、繊維同士が収束し、伝動ベルトの成型工程を安定的に行うことができるので好ましい。
かくして得られる本発明の伝導ベルト補強用コードは、安定した強度を発現できるので、Vベルト、Vリブドベルト、平ベルト、歯付ベルトなど伝動ベルトの補強用に好適に用いることができる。
以下、本発明について実施例を挙げて説明するが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではない。なお、本実施例で用いる加工状態の確認方法、及び、各種特性の測定方法は、以下のとおりとした。
[加工状態の確認方法]
(1)張力変動
リング型撚糸機において、所定の下撚糸を合糸して1本とした部分で(糸道ガイド15とスネールガイド16の間で)、張力計を用いて測定した。張力変動は以下の式で算出した。
張力変動(%)=(張力の最大値-張力の最小値)/(張力の平均値)×100
[各種特性の測定方法]
(1)角度(θ)
包埋法によりコードの断面サンプルを作成し、これを顕微鏡で100倍又は200倍に拡大した時、コードの中心から分割したポリエステル繊維同士の境界に向けた放射線の形成する角度(θ)とした。ポリエステル繊維同士の境界は、コードの最外周面にて読み取った。なお、倍率の選択は、伝動ベルト補強用コードの繊度が20,000dtex以上の場合は、100倍とし、それより小さい場合には200倍とした。
(2)総繊度
JIS L1017:2002年 8.3により測定した。測定数(N)はN=5とし、それらの平均値を求めた。
(3)引張強さ
JIS L1017:2002年 8.5 定速伸張形により測定した。(株)オリエンテック社製“テンシロン”引張試験機を用い、試長250mm、引張速度300mm/分で強伸度曲線を描くことにより求めた。なお測定数(N)はN=5とし、それらの平均値、最大値、最小値をそれぞれ記録した。
(4)伸び率
JIS L1017:2002年 8.5 定速伸張形により測定した。(株)オリエンテック社製“テンシロン”引張試験機を用い、試長250mm、引張速度300mm/分で強伸度曲線を描くことにより求めた。なお測定数(N)はN=5とし、それらの平均値を求めた。
(5)総合評価
以下の基準で補強用コードの総合評価を行った。
評価◎:角度(θ)の変動(V)が0~30%以下、かつ、強力の最大-最小が3N未満。
評価〇:角度(θ)の変動(V)が30%超40%以下、かつ、強力の最大-最小が3N未満。
評価×:角度(θ)の変動(V)が40%を超え、かつ、強力の最大-最小が3N以上。
[比較例1]
ポリエチレンテレフタレートフィラメント糸(360フィラメント、1100dtex、東レ(株)製1100T-360-704M)(以下PET糸1と称する場合もある)を2本、合糸して下撚り(撚り方向:S、撚り数:16.5T/10cm)を付与した下撚糸を3本、同時に、ニップロールで押さえつけて合糸し、しかる後にリング型撚糸機にて回転数3,000rpmで上撚り(撚り方向:Z、撚り数:9.4T/10cm)を施し(=2×3の撚り構成)、補強用コード1を得た。
得られた補強用コード1は角度(θ)の変動(V)が大きく、略回転対称性に劣り、均一な断面を有さないものであった。
なお上撚り時の張力変動は43%であった。
[実施例1]
比較例1において、比較例1と同じポリエチレンテレフタレートフィラメント糸(PET糸1)を使い、比較例1と同じ下撚り構成で得られた下撚糸を3本用いてニップロールで合糸し、しかる後に比較例1と同じ上撚りを施し(=2×3の撚り構成)、補強用コード2を得た。ただし、補強用コード2の合撚りに際しては、原料として用いる下撚糸として、イレギュラーな撚りや、巻き乱れがないなど、均質性に優れた巻き姿の下撚糸ドラムを選択してコードの製造に供した。また、ニップロール間の下撚糸の把持状態が各下撚糸間で均等かつ、長手方向にも張力変動を低減するよう、下撚糸ドラムの巻き出し状態や下撚糸のニップロールへの糸道を制御しながら操業した。その結果、上撚り時の張力変動は34%と小さく適切な状態であった。
得られた補強用コード2は前述の比較例1や後述の比較例2と対比して角度(θ)の変動(V)が小さく、高度な略回転対称性を備えた、均一断面を有するものであった。
[比較例2]
実施例1において、適切に管理されず、下撚糸が均等に押さえつけられずに加工した場合のコードへの影響を確認する目的で、本比較例では、下撚糸の一本がニップロールに押さえつけられない状態を再現したモデル実験を行った。
実施例1と同じポリエチレンテレフタレートフィラメント糸(PET糸1)を使い、実施例1と同じ下撚り構成で得られた下撚糸を3本用い、合糸する際、一対のニップロールの一方のロールに部分的にテープを巻いて厚みを増やし、下撚糸3本のうち2本はニップロールのテープ上で確実に押さえつけ、残り1本は実質的に押さえつけられていない状態で合糸し、しかる後に実施例1と同じ上撚りを施し(=2×3の撚り構成)、補強用コード3を得た。得られた補強用コード3は角度(θ)の変動(V)が大きく、略回転対称性に劣り、均一な断面を有さないものであった。
[参考例1]
ポリエチレンテレフタレートフィラメント糸(240フィラメント、1100dtex、東レ(株)製1100T-240-704M)(以下PET糸2と称する場合もある)を7本、合糸して下撚り(撚り方向:S、撚り数:11.0T/10cm)を付与した下撚糸を3本、ニップロールで押さえつけて合糸し、しかる後にリング型撚糸機にて回転数3,000rpmで上撚り(撚り方向:Z、撚り数:6.0T/10cm)を施したが(=7×3の撚り構成)、上撚り時の撚糸張力が非常に高く、補強用コードを安定して得ることが難しかった。
[実施例2]
参考例1と同じポリエチレンテレフタレートフィラメント糸(PET糸2)を用い、参考例1と同じ下撚り構成で得られた下撚糸を3本、同時に、ニップロールで押さえつけて合糸し、しかる後に参考例1と同じ上撚りをリング撚糸機で施す際の回転数を1,500rpmに変更し補強用コード4を得た。得られた補強用コード4は角度(θ)の変動(V)が非常に小さく、高度な略回転対称性を備えた均一断面を有するものであった。
なお、補強用コード4の合撚りに際しては、原料として用いる下撚糸として、イレギュラーな撚りや、巻き乱れがないなど、均質性に優れた巻き姿の下撚糸ドラムを選択してコードの製造に供した。また、ニップロール間の下撚糸の把持状態が各下撚糸間で均等かつ、長手方向にも張力変動を低減するよう、下撚糸ドラムの巻き出し状態や下撚糸のニップロールへの糸道を制御しながら操業した。撚糸時の回転数も適正化した結果、上撚り時の張力変動は28%と小さく、実施例1より更に適切な状態であった。
Figure 0007255130000001
表1によれば、本発明の伝動ベルト補強用コードは、高度な略回転対称性を備えた均一断面構造を有し、かつ、補強用コードとして重要な強力のバラツキ(最大-最小)が小さいことから、伝動ベルトの補強用に使用された際、物理特性の均一な伝動ベルトを提供できることが分かる。
11:ニップロール
12:下撚糸
13:撚糸(上撚り)
14:糸道ガイド
15:糸道ガイド
16:スネールガイド
17:スピンドル
21:角度(θ)
22:コードの中心から分割した繊維同士の境界に向けた放射線

Claims (5)

  1. ポリエステル繊維を3本以上、合糸して撚糸した撚糸で構成されるコードであり、該コードの断面の少なくとも一部が、略回転対称性を備えた均一断面を有する、伝動ベルト補強用コードであって、
    前記の略回転対称性が、コードを構成するN本(N≧3)のポリエステル繊維をその断面でN個に分割した時、コードの中心から分割したポリエステル繊維同士の境界に向けた放射線の形成する角度(θ)に関し、下記式1で計算される角度(θ)の変動(V)が0~40%の範囲内であり、
    前記のコードの総繊度が7,280~50,000(dtex)の範囲内にある、
    伝動ベルト補強用コード。
    (式1) 変動(V)={θ(最大)-θ(最小)}/(360/N)×100
    (N=3、4、5・・・)
  2. 前記の撚糸が、ポリエステル繊維を2本以上、合糸して撚糸した下撚糸を、更に、3本以上、合糸して上撚りして撚糸としたものである、請求項1に記載の伝動ベルト補強用コード。
  3. 前記の撚糸の撚り数が、4~14(T/10cm)である、請求項1または2に記載の伝動ベルト補強用コード。
  4. 前記のコードの総繊度が22,500~50,000(dtex)の範囲内にある、請求項1~のいずれかに記載の伝動ベルト補強用コード。
  5. ポリエステル繊維を撚糸して下撚糸とし、しかる後に該下撚糸を、更に3本以上、同時にニップロールで押さえつけて合糸し、しかる後に上撚りする、請求項1~4のいずれかに記載の伝動ベルト補強用コードの製造方法。
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