本発明について前述の特性、特徴及び利点、並びにこれらを達成する手段ややり方は、以下の実施例(図面との関連でより詳しく解説される)の記載との関連でより明らかに、またよりはっきりと理解される。
以下では本発明を、好ましい実施形態により、図面との関連で詳細に説明する。添付図面において同じ記号は、同一又は類似の要素を示す。これらの図面は、本発明の様々な実施形態を概略的に示すものである。図面に示された要素は、必ずしも縮尺通りに描かれているわけではない。むしろ、図面に示された様々な要素は、当該要素の機能及び一般的な目的が当業者に理解されるように提示されている。図面に示された機能的な単位及び要素同士の結合及び連結は、間接的な結合又は連結として実装することもできる。結合又は連結は、有線で、又は無線で実装されていてよい。機能的な単位は、ハードウェア、ソフトウェア、又はハードウェアとソフトウェアとの組み合わせで実装することができる。
以下では、再充電可能なバッテリの特性決定との関連で技術を説明する。ここに記載する技術は、様々なタイプのバッテリとの関連で使用することができ、例えばリチウムイオンベースのバッテリ、例えばリチウム-ニッケル-マンガン-酸化コバルトバッテリ又はリチウム-酸化マンガンバッテリとの関連で、使用できる。
ここに記載するバッテリは、様々な適用分野で使用することができ、例えば機器、例えば自動車若しくはドローン、又は携帯可能な電気機器、例えばモバイル端末で使用されるバッテリのために使用できる。ここに記載したバッテリを固定式エネルギー貯蔵体の形態で使用することも考えられる。
ここに記載する技術により、状態監視に基づくバッテリの特性決定が可能になる。この状態監視は、バッテリ負荷の継続的な監視、及び/又はバッテリの状態予測を含むことができる。これは、バッテリの状態を負荷の監視により追跡することが可能になるということ、及び/又はバッテリの状態を将来における一定の予測インターバルについて、記述することができるということである。特に、バッテリの健全度(英語:state-of-health、SOH)の劣化評価を行うことができる。
一般的な原理としてSOHは、バッテリの劣化が進むと低下する。バッテリの容量が低下した場合、及び/又はバッテリのインピーダンスが増大した場合に、劣化の進行が存在し得る。
ここに記載する例のうち様々なものは、少なくとも部分的にサーバ側で実行することができる。これは、状態監視と関連付けられたロジックの少なくとも一部を、バッテリ又はバッテリ稼働式機器とは別個に、中央サーバで行うことができるということである。そのためには特に、サーバと1又は複数のバッテリ管理システムとの間で通信接続を確立することができる。ロジックの少なくとも一部をサーバで実行することにより、特に正確でコンピュータ集約的なモデル及び/又はシミュレーションを、状態監視との関連で使用することができる。これにより、状態監視を極めて正確に行うことが可能になる。さらに、一群のバッテリのためのデータを集めて利用することが、例えば機械学習させたモデルとの関連で可能になる。
ここに記載した様々な例は、バッテリ使用中の状態監視を、バッテリに関する測定データに基づき行うことができる。これは、特にバッテリの寿命の間(SOHが低下した状態)の特定の時点について、状態監視を行うことができるということである。バッテリはその後、現場で使用することができる。このようにして特に、バッテリについてこれまでの劣化挙動を考慮することができる。これによってまた、状態監視を特に正確に行うことができる。
状態監視は特に、バッテリ状態のシミュレーションを含むことができる。バッテリ状態のシミュレーションは、測定データに基づき行うことができる。その際には、バッテリ状態について間接的に観察されたパラメータも、シミュレーションとの関連で特定することができる。直接的には観察できないパラメータの例には、内部温度分布又は温度分布、電流又は電圧の値などが含まれる。このような情報に基づき、特に正確な状態監視を行うことができる。
バッテリ状態のシミュレーションとの関連ではまた、劣化モデルを使用することもできる。劣化モデルは、バッテリの劣化、特にバッテリの内部状態の劣化を、負荷の関数として記載することができる。シミュレーションを劣化モデルとともに実施することにより、予測インターバルについて、バッテリ状態パラメータの将来的な展開を記述することができる。
これらのことから明らかなように、状態監視は、IST状態にとって有用なだけではなく、記述された状態にとっても有用である。
ここに記載する技術によって、シミュレーションのシミュレーションパラメータについてパラメータ化が可能になる。特に、ここに記載する技術によって、シミュレーションのパラメータ値を特に正確に特定することができ、そのためバッテリの状態監視を特に正確に行うことができる。
様々な例は特に、熱挙動をモデル化することに関する。これは例えば、熱セルモデルに関する。次に、熱セルモデルについて詳細に述べる。
バッテリセル(例えばリチウムイオン電池又はその他の再充電可能なセル)の時間的な温度推移は、セル内部の発熱によって、またセル内の熱流、及びセルと周囲との熱流によって、決定される。これに対応して、熱挙動をモデル化する際には、発熱モデルと熱散逸モデルとが区別される。
熱は、電気化学的なエネルギーとは異なり、物質に束縛されないエネルギーであるため、状態の尺度ではなく、プロセスの尺度である。バッテリセルにおける発熱作用は、電気化学的な活物質でも、電流を流すあらゆる材料でも生じる。基本的には、以下の発熱メカニズムを区別することができる:
不可逆的な発熱
(ジュール熱ともいう)は、電解質及びインターカレーション電極(相境界にある電荷移動及びパッシベーション層の拡散抵抗を含む)を通じたリチウムイオンの輸送によって、また活物質及び導体を通じた電子の流れによって生じる。これらの作用によって、それぞれ過電圧につながり、このため電気化学的なセルモデルでは、不可逆液な発熱
は、
と記載することができる。この関係性は、過剰な電圧上昇U(t)-U
OCV(t)に寄与する全てのプロセスが同じ電流強度I(t)で生じることを前提としているため、最悪の場合の推定値を表しているに過ぎない。この際に生じる熱は、常に発熱性である。電気モデル化のために等価回路モデルを使用する場合、不可逆的な損失は、等式(1)から、また全ての抵抗要素の損失を合計することによって算出することができる:
可逆的な発熱
は、リチウムイオンをアノード及びカソードのホスト格子へとインターカレーション又はデインターカレーションすることによって、またこれらに関連する化学反応によって引き起こされ、電流の方向及びエントロピー係数に応じて、吸熱性又は発熱性であり得る。Gibbsの式を用いると、可逆的な損失は式(2.3)に従って導かれ、ここで
は、いわゆるエントロピーの係数に相当する:
エントロピー係数
は、熱量測定によって、又は電位差測定によって実験的に決定することができる。分析による算出は、セルの構成及びすべての部分反応が正確に分かっている場合にのみ、可能である。
以下では熱シミュレーションモデルを、発熱及び熱散逸が考慮される熱セルモデルにより使用可能にする技術について説明する。パラメータ化のための技術も説明する。
図1は、システム80との関連で態様を示す。システム80は、データベース82と接続されているサーバ81を含む。システム80はさらに、サーバ81と複数のバッテリ91~96のそれぞれとの間の通信接続49を備える。通信接続49は例えば、携帯電話網を介して実施することができる。
ここで説明する例では一般的に、様々なバッテリータイプを使用することができる。これは、バッテリ91~96は、複数の種類を含み得るということである。バッテリの様々なタイプの例は例えば、以下の特性のうち一又は複数に関して異なり得る:セルの形状(すなわち、丸型セル、角型セルなど)、冷却システム(能動的又は受動的なコンセプトによる空冷、冷却剤管内の冷却剤、受動的な冷却要素など)、セル化学(例えば使用する電極材料、電解質など)等。同一タイプのバッテリ91~96の間でも、このような特性との関連で一定の相違があり得る。例えば、同じタイプのバッテリ91~96が、異なる冷却システムを使用することができるように、異なるやり方で設置されていてよい。さらに、時には同じバッテリセルが、一群のセルについて電気的、熱的なシステムに応じて異なるやり方で配置されていてもよい。
ここで説明する様々な例において基本的には、このようなバッテリ固有の、かつ/又はタイプに特有の作用を、シミュレーションとの関連で考慮することができる。特にシミュレーションのモデルは、タイプに固有の形で、かつ/又はバッテリに固有の形でパラメータ化することができる。
図1には例示的に、バッテリ91~96が、通信接続49を介して状態データ41をサーバ81に送信可能なことが図示されている。例えば、状態データ41は、各バッテリ91~96の一又は複数の稼働値を示すものであってよく、すなわち、測定データを指し示すことができる。状態データ41は、事象の発生に応じて、又は所定の時間スキームに従って送信することができる。
測定データ41は例えば、各バッテリ91~96の熱シミュレーション及び/又は電気シミュレーションとの関連で使用することができる。このためにサーバ81には、各バッテリ91~96のためのシミュレーションモデルが格納されていてよい。その際には、様々なバッテリ91~96のための様々なシミュレーションモデルを使用することができる。さらに、様々なバッテリ91~96に対して、各シミュレーションモデルのために異なるパラメータ化を使用することもできる。このようにして、各バッテリ91~96について「デジタルツイン」が利用可能になる。以下、様々なバッテリ91~96のためのシミュレーションモデルの構成及びパラメータ化を正確かつスムーズに可能にする技術について説明する。このようにして、多数のバッテリ91~96についてそれぞれ、適合性の高いシミュレーションモデル及び/又は適合性の高いパラメータ化を使用することができる。
図1にも例示的に図示されているように、サーバ81は通信接続49を介して、制御データ42をバッテリ91~96に送ることができる。例えば制御データ42が、各バッテリ91~96の将来的な稼働のための一又は複数の稼働限界を示すことも可能である。制御データは例えば、各バッテリ91~96の温度管理のための一又は複数の制御パラメータ、及び/又は各バッテリ91~96の充電管理のための一又は複数の制御パラメータを示すことができる。つまり、制御データ42を使用することによってサーバ81は、バッテリ91~96の稼働に影響を与えること及び/又はバッテリ91~96の稼働を制御することができる。
図1にはさらに、各バッテリ91~96について概略的に、SOH99がそれぞれ図示されている。基本的に、バッテリ91~96のSOH99は、実施に応じて一又は複数の様々な指標を含むことができる。SOH99の典型的な指標は、例えば以下のものであり得る:電気容量、すなわち貯蔵可能な最大電荷、及び/又は電気インピーダンス、すなわち電圧と電流強度の比率としての抵抗若しくは交流抵抗の周波数応答。
以下、バッテリ91~96の使用中にバッテリ91~96のそれぞれについて、バッテリ91~96の状態のためのSOH99及び/又はその他の特徴的な指標の決定を可能にする状態監視技術について説明する。これは、例えば電気インピーダンス及び/又は電気容量を決定可能だということである。これは、サーバにおけるシミュレーションモデルによって行うことができる。この場合にサーバ81は、相応する情報をSOH99によって再度、例えば制御データ42によって、バッテリ91~96に提供することができる。この場合、例えばSOH99のさらなる劣化を回避するために、バッテリ91~96の管理システムは、バッテリの稼働プロフィールを適合させることができる。
図2には、バッテリ91~96との関連での態様が図示されている。バッテリ91~96はそれぞれ、機器69と接続されている。この機器は、各バッテリ91~96の電気エネルギーによって駆動する。
バッテリ91~96は、一若しくは複数の管理システム61を含むか、かつ/又は一若しくは複数の管理システム61と関連付けられており、この管理システム61は例えば、BMS又はその他の制御ロジック、例えば自動車の場合にはオン・ボード・ユニットである。管理システム61は例えば、ソフトウェアによってCPUに実装されていてよい。代替的に又は追加的に、例えば特定用途向け集積回路(ASIC)又はフィールドプログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)を使用することができる。バッテリ91~96は、例えばバスシステムを介して、管理システム61と通信することができる。バッテリ91~96は、通信インターフェース62を有することもできる。管理システム61は、通信インターフェース62を介して、サーバ81との通信接続49を構築することができる。
図2には、管理システム61がバッテリ91~96とは別個に示されている一方で、別の例では管理システム61が、バッテリ91~96の一部であり得る。
バッテリ91~96はさらに、一又は複数のバッテリブロック63を備える。各バッテリブロック63は通常、並列接続及び/又は直列接続された多数のバッテリセルを備える。そこには電気エネルギーを貯蔵することができる。
管理システム61は通常、一又は複数のバッテリブロック63内の一又は複数のセンサに依存していてよい。当該センサは例えば、バッテリセルのうち少なくとも幾つかにおいて電流及び/又は電圧を測定することができる。当該センサは、代替的に又はさらに、バッテリセルのうちの少なくとも幾つかとの関連で別の尺度を測定することもでき、例えばバッテリの温度、体積、圧力などを決定して、状態データ41の形態でサーバ81に送信することができる。管理システム61はまた、各バッテリ91~96の熱管理及び/又は充電管理を実行するために調整されていてもよい。熱管理との関連では、熱管理システム61が、例えば冷却及び/又は加熱を制御することができる。充電管理との関連では、管理システム61が、例えば充電速度又は放電深度を制御することができる。つまり管理システム61は、バッテリ91~96それぞれの稼働について一又は複数の稼働条件を、例えば制御データ42に基づき、調整することができる。
図3には、サーバ81との関連で態様が図示されている。サーバ81は、プロセッサ51とメモリ52を備える。メモリ52は、揮発性メモリ要素及び/又は不揮発性メモリ要素を含むことができる。サーバ81はさらに、通信インターフェース53も含むことができる。プロセッサ51は、通信インターフェース53を介して、各バッテリ91~96と、データベース82との通信接続49を構築することができる。
例えば、プログラムコードはメモリ52に記憶されていてよく、プロセッサ51によってロードすることができる。この場合にプロセッサ51は、プログラムコードを実行することができる。プログラムコードの実行により、プロセッサ51は、一又は複数の以下のプロセスを実施し、これらは本明細書の様々な例との関連で詳細に説明されている:バッテリ91~96の特性決定;一又は複数のバッテリ91~96のための一又は複数の状態予測の実施、例えば対応するバッテリ91~96によって通信接続を介して状態データ40として受信される稼働値に基づく実施;バッテリ91~96の電気シミュレーションの実施;バッテリ91~96の熱シミュレーションの実施;バッテリ91~96の状態監視の実施;一又は複数の稼働プロフィールに基づくバッテリの劣化評価の実施;バッテリ91~96のへの制御データ42の送信(例えば稼働境界条件を調整するため);対応するバッテリ91~96の状態監視の結果をデータベース82に保管;など。
図4は、例示的な方法のフローチャートである。この方法は、サーバによって実施される。この方法は、サーバ側でバッテリの特性決定をするのに役立つ。これは、図4の方法が、バッテリの状態監視に役立つということである。例えば、図4に記載の方法は、サーバ81のプロセッサ51によってメモリ52からのプログラムコードに基づき、実施することができる(図3参照)。図4において任意選択的なブロックは、破線で示されている。
まずブロック1001では、一又は複数の稼働値が、特性決定すべきバッテリから得られる。そのためにブロック1001では、例えば状態データを、バッテリとサーバとの間の通信接続を介して受信することができる。これは、特性決定すべきバッテリから測定データを受信可能だということである。
一又は複数の稼働値は、例えばバッテリのSOHに関連し得る。一又は複数の稼働値は例えば、バッテリの容量及び/又はバッテリのインピーダンスに関連し得る。一般的には、バッテリの稼働について一又は複数のさらなる又は別の特性決定尺度を、一又は複数の稼働値によって示すことも可能である。幾つかの例では例えば、電流データ(例えば時系列)及び/又は電圧データ(例えば時系列)を、稼働値によって示すことができる。これは、稼働値は例えば、バッテリのバッテリブロックの一又は複数のセルにおける電流の時間的な推移を記述することができ、かつ/又はバッテリのバッテリブロックの一又は複数のセルにおける電圧の時間的な推移を記述することができるということである。稼働値は例えば、バッテリの一又は複数の領域における温度を記述することもできる。稼働値は例えば、温度データについて相応する時系列を記述することができる。稼働値は、稼働プロフィールを含むこともでき、すなわち例えば、充電特性決定、例えば放電深度(DOD:depth of discharge)、放電速度、充電速度、SOCサイクルなどを含むことができる。
続いてブロック1002では、状態監視を特性決定するために、バッテリの状態監視が行われる。状態監視は、バッテリのそのままの状態を測定することを含むことができ、また劣化モデルを用いた状態予測を含むこともできる。
その際、ブロック1002において複数の状態予測を行うことができる。ブロック1002において複数の状態予測を行う場合、当該状態予測がバッテリの様々な境界条件と関連付けられていてよい。ブロック1002で考慮される稼働境界条件は例えば、一又は複数の以下の要素に関連し得る:バッテリの熱管理の制御パラメータ、及び/又はバッテリの充電管理の制御パラメータ。稼働条件は一般的に、バッテリの稼働について、具体的な稼働プロフィールによりトリガー可能な特定の条件(例えば、対応するバッテリとそれぞれが関連付けられた機器69の利用によって決定)を定めることができる(すなわち、例えば負荷、取り出した電荷、放電速度、充電速度、放電深度など)。
ブロック1002における一又は複数の状態予測は、例えば各バッテリについて監視インターバルでブロック1001からの稼働値によって示される稼働プロフィールから導き出される稼働プロフィール基づいていてよい。例えば、一又は複数の状態予測のためにブロック1002において使用される稼働プロフィールは、監視インターバルにおけるバッテリ測定に基づいて決定することができる。これは、例えば測定されたDOD及び/又は測定されたSOCサイクル及び/又は測定された充電速度などを、ブロック1002における一又は複数の状態予測との関連で使用できるということである。ブロック1002における一又は複数の稼働プロフィール(監視インターバルにおいて対応するバッテリの具体的な稼働で方向づけされたもの)を使用することによって、特に信頼性の高い及び/又は正確な状態予測が可能になる。
その結果、状態予測は、予測インターバルについて劣化の時間的経過を出力することができる。これについては、図5に示されている。
図5には、バッテリ(例えば図1のバッテリ91~96)の劣化との関連で態様が図示されている。図5には、SOH99が時間との関数で示されている。SOH99は、時間の関数として減少する。このようなSOH99の減少は、図4のブロック1002に記載の情愛監視によって決定することができる。
詳細には、監視インターバル151の間に、SOH99が減少する。SOH99はシミュレーション(例えば熱モデル及び/又は電気モデルを含むもの)によって、特に正確に決定することができる。このためにはバッテリの一又は複数のパラメータを正確に決定することができ、さもなくばこのパラメータは、測定できないか、又は不正確に測定可能であるにすぎない。これは、図4のブロック1001からの稼働値に基づいて行うことができる。
この際、時点155(現在の時点)に対してバッテリの特性決定が、バッテリについて複数の状態予測181~183の実施によって行われる。その結果、状態予測181~183は、バッテリの劣化に関する予測、すなわち予測インターバル152の間のSOH99をもたらす。図5からは、SOH99が、異なる状態予測181~183の間で変動することが明らかであり、この変動は、シミュレーションの基礎となる様々な稼働プロフィールによるものである。稼働プロフィールは、温度、静置・充電状態、充放電速度、充電完了時点、放電完了時点、サイクル深度及び/又は充放電における中間充電状態の観点、またこれらの組み合わせで、異なり得る。例えば、予測インターバル152の間の時間の関数としてSOH99の低減が比較的わずかな場合に生じる状態予測181は、予測インターバル152の間の時間の関数としてのSOH99が比較的大きく低減する場合に生じる状態予測183と比較して、熱管理について別の構成及びよりわずかなDODを採用することがあり得る。例えば、バッテリの熱管理は、状態予測181に対する稼働条件として能動的な冷却により、より低い稼働温度を可能にすることができる。
ここで再度、図4を参照されたい:基本的には、ブロック1002からの状態監視結果は、様々なやり方で使用することができる。
1つの例では、各バッテリと関連付けられている管理システムを、ブロック1002からの状態監視結果に基づき、制御することができる(ブロック1003参照)。例えば、制御データ(図1:制御データ42と対比せよ)を結果の比較に基づき決定し、当該制御データを管理システムに送信することが可能である。基本的には、各バッテリの稼働について一又は複数の異なるパラメータを調整することができる。例えば、制御データは、バッテリの将来の稼働について一又は複数の稼働境界を特定することが可能である。代替的に又は追加的に、制御データが、バッテリの熱管理及び/又は充電管理について一又は複数の制御パラメータを特定することも可能である。一又は複数の状態予測結果及び/又はバッテリの一般的な特性決定の結果をこのようにフィードバックすることにより、各バッテリについて特に持続的な稼働が可能になる。
しかしながらすべての例において、バッテリの稼働における一又は複数の状態予測結果のフィードバックを行うことは必要ではない。その限りにおいてブロック1003は、任意選択的なブロックである。
幾つかの例では、代替的に又は追加的に、状態予測結果をデータベースに(図1:データベース82と対比せよ)記録することができる(ブロック1004参照)。
次に、ブロック1002における(任意選択的な)一又は複数の状態予測の実施について例示的な実装を、図6におけるフローチャートとの関連で説明する。
図6は、例示的な方法のフローチャートである。図6に記載の方法は、1つのサーバによって実施することができる。例えば、図6に記載の方法は、サーバ81のプロセッサ51によってメモリ52からのプログラムコードに基づき、実施することが可能である(図3参照)。
図6に記載の方法は、バッテリの状態予測に役立つ。複数の状態予測を行うのが望ましい場合、この方法を図6に従って複数回行う。
ブロック1011ではまず、各バッテリの容量及びインピーダンスについて稼働値を得ることができる。つまりブロック1011は、ブロック1001に相当する。これは、バッテリのSOH99についての実際の値が得られるということである。これは通常、対応するバッテリに関連付けられている各管理システムによって受信される状態データに基づいて行われる。これはまた、例えば直接測定することが不可能な特定の潜在的なバッテリの状態パラメータを決定するために、(例えば電気モデル及び/又は熱モデルによる)シミュレーションを用いて、行うことができる。これらの稼働値は、状態予測の初期化に役立つ。
その際には、ブロック1012~1014の反復1099を複数回、行う。この場合、様々な反復1099は、状態予測の時間段階、すなわち、予測インターバル152の間の進行時間に相当する。
その際、まずブロック1012でバッテリの電気状態及びバッテリの熱状態についてのシミュレーションを相応するシミュレーションモジュールによって、対応する反復1099の各時間段階に対して行う。
ブロック1012では、バッテリの対応する稼働境界条件を考慮して、シミュレーションを行う。これは、各状態予測181~183に依存する。さらに、バッテリの稼働について対応する稼働プロフィールを採用することができる。
電気状態及び熱状態をシミュレーションするために、電気シミュレーションモジュールを熱シミュレーションモジュールと結合することができる。これは図7に示されている。
図7は、例示的な方法のフローチャートである。図7には、バッテリシミュレーションとの関連で、例えば状態監視の枠組みで、態様が図示されている。
まずブロック1021では、初期化が行われる。初期化の枠組みでは、例えばバッテリについて測定された現在の稼働値を得ることができる。
その際、セルの電気的な指標について、ブロック1022において電気モデルによりシミュレーションを行う。これは、バッテリについて測定された現在の稼働値に基づいていてよい。
電気シミュレーションモジュールは、バッテリの等価回路モデル(ECM)を使用することができる。ECMは、電気的な構成要素(抵抗、インダクタンス、容量)を含むことができる。ECMの構成要素のパラメータは例えば、ナイキストプロットを用いてバッテリのセルブロックの伝達挙動の特性周波数領域により決定することができる。サーバ81に実装することにより、RC回路の数を特に多く、例えば3つ又は4つより多く選択することができる。これによって、電気シミュレーションについて非常に高い正確性を達成することができる。この際、セルブロックの各セルに対して1つのECMを使用することができる。
その際にセルの熱指標シミュレーションは、ブロック1023における熱モデルにより行う。
熱シミュレーションモデルにより、時間的な温度推移、及び任意選択的に局所的な温度を決定することが可能になる。その際には、熱源(発熱)及びヒートシンク(熱散逸)を考慮することができる。周囲への排熱を考慮することができる。発熱モデルについての詳細は例えば、D. Bernandi, E. Pawlikowski及びJ. Newman, “A General Energy Balance for Battery Systems,” Journal of the Electrochemical Society, 1985に記載されている。局所的な温度分布については分析的又は数値的なモデルを使用することができる。熱管理の影響を考慮することができる。例えば、M.-S. Wu, K. H. Liu, Y.-Y. Wang及びC.-C. Wan, “Heat dissipation design for lithium-ion batteries,” Journal of Power Sources, vol. 109, Rn. 1, p. 160-166, 2002を参照。
続いて、さらなる予想を行うことが望ましい場合には、新たな時間段階(ブロック1024)を初期化し、電気モデル及び熱モデルを新たに適用することができる。さもなくば、シミュレーションを終了する。
このような電気・熱モデル化に基づき、再度図6との関連で、ブロック1013において劣化評価を行う。すなわち、バッテリの電気的状態及び熱的状態のシミュレーション結果に基づき、各時間段階についてバッテリの容量及びインピーダンスを決定する。
劣化評価との関連では、様々な技術を使用することができる。劣化評価は例えば、経験的な劣化モデル及び/又は機械学習による劣化モデルを含むことができる。例えば、経験的な劣化モデルと機械学習による劣化モデルとを、並行して適用することができ、その場合にこれら2つの劣化モデルの結果は、平均化(例えば加重平均)によってまとめることができる。
経験的な劣化モデルは基本的に、ブロック1012からシミュレーションで得られるバッテリの稼働プロフィールと、SOH99の悪化(例えば容量の劣化及び/又はインピーダンスの上昇)とを関連付ける、一又は複数の経験的に決定されたパラメータを含むことができる。このパラメータは例えば、実験室における測定で決定することができる。経験的劣化モデルは例えば、J. Schmalstieg, S. Kaebitz, M. Ecker及びD. U. Sauer, “A holistic aging model for Li(NiMnCo)O2 based 18650 lithium-ion batteries,” Journal of Power Sources, vol. 257, p. 325-334, 2014に記載されている。
これに対して、機械学習式劣化モデルは、同じ種類の異なるバッテリから得られる状態データに基づき連続的に、機械学習によって適合させることができる。例えば、人工ニューロンネットワーク(例えば畳み込みネットワーク、英語:convolutional neural network)を使用することができる。別の技術は、いわゆるサポートベクターマシーン(英語:support vector machine)を含むことができる。例えば、相応するアルゴリズムを機械学習によってトレーニングするために、一群のバッテリ(図1:91~96と対比せよ)のデータを使用することができる。
続いて、ブロック1014において、停止基準が満たされているかどうかを確認する。これに当てはまらない場合、予測インターバル152における次の時間段階について、すなわち次の反復1099について、ブロック1012を再度実施する。この際には、先の反復1099で決定された容量及びインピーダンスが使用され、すなわち、ブロック1012におけるシミュレーションが相互に構築される。容量及びインピーダンスを反復適合することにより、特に正確な状態予測が可能になる。
ブロック1014における停止基準が満たされている場合、状態予測は終了する。停止基準の例には、以下のものが含まれる:反復1099の回数;予測インターバル152の終了;容量及び/又はインピーダンスの閾値を超える又は下回るなど。
次に、熱モデル(図7:ブロック1023参照)と、電気モデル(図7:ブロック1022参照)について詳細に説明する。
図8には、熱モデルとの関連で態様が図示されている。
図8には、熱モデルが複数の下位モデル6001~6003を含むことが示されている。熱モデル6000は特に、セルモデル6001、すなわちバッテリの各セルのための熱モデルを含む。熱モデル6000は、空気モデル6003も含む。空気モデル6003は、バッテリのセルと周辺空気との熱交換を記述する。熱モデル6000は、熱システムモデル6002も含む。このモデルは、バッテリのセルと各周囲との間の熱交換を記述する。
以下、熱モデル6000の機能について説明する。このモデルは、1101で初期化される。初期化1101では、一連のパラメータ1102が渡される。例示的なパラメータ1102は特に、様々なセルの温度を含む。当該温度は測定可能であり、稼働値として状態データ41の形で得ることができる。さらに、様々なセルにおける電流強度I及び充電状態SOCを得ることができる。様々な過電圧を得ることもできる。これらの値を再度測定することもでき、あるいは、例えば電気シミュレーションモデルから得ることができる。
ここでこれらのパラメータは、1103における不可逆的な発熱の計算、及び1104における可逆的な発熱の計算に供給される。
ブロック1103における発熱の可逆的な割合は、各セルにおけるセル電圧及びセル電流に依存する。ブロック1104における発熱の可逆的な割合は、エントロピー係数、温度及びセル電流に依存する。
発熱モデルは、電気的状態及び/又は電気モデルの出力と、熱モデルとのインターフェースを表す。不可逆的なジュール発熱(1103)
(過電圧U
оvと電流Iとの積の合計に基づき電気モデルから直接求められる)に加えて、発熱モデルにおけるエントロピー係数
及び温度Tによって、さらに可逆的な熱
が考慮される(ブロック1104):
エントロピー係数は通常、温度に関して一定とみなすことができる。
エントロピー係数の決定は、例えば電位差測定によって行われる。その他の例は、複数の温度での開回路電圧曲線の取得又は熱量測定を含む。
電位差測定の基準的な実装については例えば、A. Eddahech, O. Briat及びJ.-M. Vinassa, “Thermal characterization of a high-power lithium-ion battery: Potentiometric and calorimetric measurement of entropy changes,” Energy, vol. 61, p. 432-439, 2013に記載されている。
電位差測定の場合、複数の温度においてそれぞれ、温度ジャンプを適用することができ、開放電圧の変化を測定することができる。
具体的な例では、電位差測定においてそれぞれのセルを完全に充電した状態から10%のSOC段階で1C、25℃で放電し、続いてしばらく(少なくとも5時間、セルによっては最大48時間)、開放電圧が勾配
で調整されるまで緩和する。続いて、順応のためにそれぞれ5時間の待機時間で、5℃、25℃及び45℃への既定の温度ジャンプをそれぞれ行う。順応相の終わりに、開放電圧値を記録し、各SOC段階について線形エントロピー係数
を求めるために使用される。
ここで、複数のセルの複数の充電状態について、すなわち複数のSOC値において、電位差測定を行うことが可能である。このようにして、複数の充電状態についてエントロピー係数を決定することができる。エントロピー係数は特に、充電状態への依存性を有していてよい。例えば、20%未満の充電状態についてはエントロピー係数の著しい偏差が生じることが観察された。代替的に、又は追加的に、バッテリの充電及び放電に対するエントロピーを別個に決定することも可能である。これは、複数の充電状態を、充電方向又は放電方向に応じて決定できるということである。
ここで、それぞれSOC及び/又は充電方向若しくは放電方向への依存性に応じて、ブロック1104における可逆的な発熱との関連でエントロピー係数について異なる値を使用することもできる。
ブロック1103~1104からの発熱に応じて、ブロック1105では、セル温度を決定することができる。ブロック1105は、熱散逸モデルを実装している。基本的には、様々な種類の熱散逸モデルが考えられる。特に、セルの種類又は必要とされる正確性に応じて、様々な複合的熱散逸モデルを使用することができる。
熱散逸モデルの選択に際しては、様々な複合的モデル化アプローチから選択することができる。この際に重要なのは、所定のバッテリシステムについて予想される負荷シナリオのもとで生じる温度差及び熱勾配であり、相応して正確にモデル化すべきである。
使用されるセルの型式、冷却システム、及びバッテリパックの設計は、モデル化に対して大きな影響をもたらす。リチウムイオン電池の劣化予測については、電極コイルにおける温度変化が、特に重要である。例えば、体積平均コイル温度と、当該温度で熱的に均一なセルのセル機能低下との間に関連性が確認された。他方、熱的な不均一性自体は、さらなる有意な機能低下を示さないことが確認された。しかしながら、不均一になると予測されるセルコイル温度を有するバッテリパック構成については、状態監視を有効にするために、体積平均値を計算可能にしなければならない。さらに、セル内の温度差が高い場合、温度差の分布を知ることは、安全面でクリティカルなホットスポットを検知するために必要になる。発熱、ひいては所定のバッテリシステムのための熱モデルに必要な位置的・空間的な次元を確定するためには、基本的に2つのやり方がある:
1.実験的な測定:セルに、特にセル内に設けられた温度センサによって、負荷による温度変化を直接測定する。セル内部への温度センサの設置は、著しい準備コストとなり得る。セルハウジングにおけるセンサでは、活物質における温度分布を推定できるに過ぎない。この温度分布は、伝導性が比較的良好なハウジング材料(アルミニウム又は鋼)に影響を受けるからである。
2.シミュレーションによる調査:温度境界条件又は熱流境界条件を介した冷却システムの接続を考慮した三次元分解セルモデルを用いて、例えば電気モデルからの発熱によって、稼働中に生じる温度差をシミュレーション分析することができる。これは、様々な冷却構成のための有限要素シミュレーションにより行うことができる。
実験的な測定でも、シミュレーション調査でも、例えば具体的なバッテリのための状態データ41を用いて現場稼働の枠組みで得られる稼働プロフィールに基づいていてよい。これはつまり、例えば負荷、取り出された電荷、放電速度、充電速度、放電深度などを、具体的な稼働に応じて考慮することができるということである。
この際、各セルにおける位置的・空間的な温度勾配についてのこのようなシミュレーションによる調査及び/又は実験的な調査の結果は、熱散逸モデルの位置的・空間的な次元を決定するために、考慮することもできる。例えば、位置・空間における著しい温度勾配を実験的に、又はシミュレーションにより決定する場合、例えば二次元又は一次元で規定されている、より高次の熱散逸モデルを使用することができる。さもなくば、0次元の熱散逸モデルを使用することもできる。基本的には、三次元の熱散逸モデルも可能であろう。例えば、デカルト座標系に配置されておらず、例えば互いにずれているセルについては、三次元の熱散逸モデルが特に有用であり得ることが確認された。
しばしば、セルの種類に応じて、及び/又はバッテリ冷却システムに応じて、実験による調査又はシミュレーションによる調査無しでも、より低次元の熱散逸モデルを用いて位置・空間において既に十分に良好な結果が得られるかどうかを既に決定可能なことが確認された。例えば丸型セルの場合、具体的な冷却変法(ジャケット冷却、導体冷却、又は冷却無し)にかかわらず、0次元の熱散逸モデルが十分であり得ることが確認された。これは、角形セルの場合とは異なる。この場合には通常、熱散逸について二次元モデルが必要となり得る。
この際、0次元の位置的・空間的な次元についてのセルモデルは、分析的に規定されていてよく、一次元又は二次元の位置的・空間的な次元についてのセルモデルは、有限要素により数値的に規定されていてよい(ここで、状態監視の枠組みにおけるシミュレーションのメッシュ密度は、前述のように必要とされる位置的・空間的な次元を特定するために、校正シミュレーションのメッシュ密度よりも明らかに小さくてよい)。同じことは、三次元の位置的・空間的な次元にも当てはまることがある。
熱散逸モデルの位置的・空間的な次元の選択を検証するためには、既定の損失仕様のもとでの熱量測定における定常的な熱伝導及び非定常的な熱伝導を考慮することができる。これによって、電気モデルからの何らかのエラーの伝播が抑制される。負荷サイクルとしては、例えば以下のものが選択される:
・定常損失:交互の充放電パルス(持続時間1秒)を有する複数のフェーズ、それぞれ変動する充電速度(Cレート)で。様々なCレートの間で、それぞれ規定された休止。負荷時間及び休止時間の長さは、定常的な温度水準がそれぞれ達成されるように選択する。
・正弦プロフィール:定出力プロフィールを正弦シグナルによりモデル化し、これによって0からPmaxまでの正弦波の損失プロフィールが生じる。一定の振幅及び周波数を有する正弦波の温度応答が得られるように、振幅及び周波数を選択する。
いずれの負荷サイクルもSOCニュートラルである(1秒パルスを除く)ため、直接測定できない可逆的な発熱は生じない。不可逆的な発熱P
V,
rは、端子電圧U
Klemme及び端子電流I
Klemmeによって計算し、散逸モデルに従って規定される:
セルの温度分布を分析するために、これらはそれぞれ、セルハウジングに複数の温度センサを備えていてよい。
測定は、温度調整庫において一定の温度で行うことができる。周辺温度を測定する。まずは熱輸送の態様として、自由対流及び輻射をのみを想定する。セルは例えば、ゴムマットの上に直立で置く。
それから、両方の検証サイクルにおけるセルの温度分布を、例えば最大約0.3Wの定電力損失で考慮することができる。この際、温度分布の尺度に応じて、例えば0次元の位置的・空間的な次元による熱散逸モデルの選択が妥当かどうかを確認することができる。
よって熱散逸モデルは、上述のように構成することができ、ブロック1103及び1104からの発熱を入力として得る。図7から、ブロック1105における熱散逸モデルによるセル温度の決定は、システムからの熱流(ブロック1113)に応じて、また空気温度(ブロック1118)にも応じて行われることが分かる。そのために、システムモデル6002及び空気モデル6003を使用する。
セルモデルは、可逆的及び不可逆的な損失P
Vに基づき、また熱散逸流に基づいて、各時間段階についてセル温度を算出する(ブロック1107)。ここで熱散逸流は、対流熱流P
Kоnv及び放射熱P
Rad(空気モデルから、ブロック1106)、並びにシステムモデルP
Packの様々な熱流から構成される。0次元の熱散逸モデルにおいて、セル温度は以下のようにして算出される:
式中、mはセルの質量に相当し、cpは熱容量に相当する。二次元の熱散逸モデルでは、損失PVが、活物質に均一に分布しており、セル内部の温度分布は、有限要素法によるフーリエ微分方程式で計算する。空気及びシステム構成要素による散逸流は、規定された側面に従って考慮する。
次に、空気モデル6003について詳細に説明する。空気モデル6003では、空気の速度に従って(ブロック1115)、自由対流と強制対流とが区別される(ブロック1114)。自由対流では、各セルについて周辺空気の熱空気質量が初期化される。この熱空気質量は、隣接する空気質量及び/又は周囲(温度境界条件)との抵抗を介して結び付けられる(ブロック1117)。強制対流は、流体ネットワークモデルによって表される(ブロック1116)。セルモデルではまず、セルと、関連する空気制御体積との間の熱流が、相関関係を用いて計算される(ブロック1106)。それから規定の流れ方向に関連して、空気モデルにおいて、流体技術的に平行なセルの熱流がP
Kоnvに加算され、空気質量流
の温度上昇ΔTが式(6)に従って決定される:
次に、システムモデル6002について詳細に説明する。システムモデル6002は、セルにとって重要な3つの作用を束ねている:セル間の熱交換(ブロック1110)、セルと周辺要素間の熱交換(ブロック1109)、及びセルと流体冷却要素、例えば冷却剤が流れている管との間の熱交換(ブロック1111)。これらの作用は、ブロック1112で付加される。
セル間の熱交換は二次元で規定され、関連する接触抵抗によりパラメータ化することができる。また、周辺要素、例えば電流導体、熱伝導板若しくは実装素子、又はその他の固体冷却要素との伝導も、セルごとに設定することができる。周辺要素のパラメータ化は、例えば最初は分析的に行い、場合によっては実験で修正する。固体の影響に加え、温度が一定で二相に存在するのであれば、冷却剤による温度制御を周辺モデルで表すこともできる。温度が変化するバッテリパックを冷却剤が貫流する図は、システムモデル6002のブロック1111で実現される。冷却剤がセルを通過する順番は、二次元のマトリックスにより調整される。
その際、システムモデル6002のパラメータ化を行うため、すなわち、接触抵抗、熱容量などの様々なパラメータの値を取得するためには、様々な戦略がある。
一つの例では、バッテリのセル間の熱交換、セルと固体冷却要素との熱交換、及びセルと流体冷却要素との熱交換の接触抵抗及び/又は熱容量のパラメータ化は、所定の基準値に基づいて行うことができる。これらの基準値は例えば、様々な材料について、文献から得ることができる。外周部及び冷却システムの材料及び素材に固有の特性値は、文献から取得することができる。
その後、より高い精度を得るために、引き続きこのパラメータ化を調整することができる。このような検証は特に、セルレベル又はシステムレベルで行うことができる(すなわち、システムモデル6002及び空気モデル6003を考慮に入れる)
各セルの熱容量は、熱量計により決定することができる。その際には、セルを設置した状態で、例えば±1℃の温度ジャンプを行い、そのために必要な熱出力P
Zを記録することができる。空の熱量計(熱出力:PB)によりジャンプを繰り返すことができる。セルの熱容量は、式(7)により算出される:
一般的な比熱は、700~1000J/(kgK)の範囲にある。
複数のセル同士、並びに周辺部及び/又は空気との結合を決定するためにも、発熱の熱量測定を用いることができる。複数のセルを基準マトリックス状に配置することができる。これは、隣接するセル同士の間隔を離して配置可能だということである。これにより、相関関係を有する流体ネットワークモデルについて、強制対流を測定することができる。基準マトリックス配置は、流路に設けることができる。軸流ファンにより流速を調整することができる。基準マトリックス配置に沿って分布された温度計により、温度分布を測定することができる。このようにして、その後、接触抵抗及び/又は熱容量のパラメータ化を適合させることができる。
セルの異方性熱伝導率、及び特定の基準構成についての熱伝達率は、熱インピーダンス分光分析法(TIS)により決定することができる。その際には、異なる周波数の正弦波損失をセルに印加し、セル表面での温度応答を測定する。熱散逸モデルと算出された熱インピーダンスとの伝達関数により、このようにして特性決定された熱的な特性値を決定することができる。
図9は、例示的な方法のフロー図である。熱モデル6000をパラメータ化するための上述の様々な技術は、図9にまとめられている。図9の手法を用いると、熱モデル6000をパラメータ化することが可能である(図8と対比せよ)。
図9の方法に従ってパラメータ化を開始する開始基準としては、様々なものがあり得る。1つの例では、タイプ固有のパラメータ化を行うことができる。これは、サーバ81は、例えばデータベース82(図1と対比せよ)において、異なる種類のバッテリ91~96のカタログを管理することができるということである。シミュレーションが初期化されるたびに(図7:ブロック1021と対比せよ)、サーバ81はデータベースにアクセスし、実際のバッテリータイプについてその都度、パラメータの対応する値を読み出すことができる。別の例では、バッテリ固有のパラメータ化を行うことも可能である。このような場合、データベース82において、異なるバッテリ91~96のカタログをサーバ81によって管理することもできる。この場合、サーバ81はその都度、実際のバッテリを特定し、対応する動作パラメータ値をロードすることができる。最後に、各シミュレーションに少なくとも部分的に適合するようなパラメータ化も可能である。この場合、ブロック1021が実行される際に、新しいパラメータ化がトリガーされ得る。例示的な適用シナリオは例えば、シミュレーションモデルの複雑性選択に関する。時には、例えば対応するバッテリ91~96の特定の稼働プロフィールが原因で、あまり複雑ではないシミュレーションモデルの選択で十分な場合もある。例えば、熱シミュレーションの熱散逸モデルの位置的・空間的な次元に関する例を挙げることができる。例えば、稼働プロフィールがバッテリの負荷が低い(充電又は放電が遅いなど)ことを示している場合には、バッテリ内の温度勾配が低くなり得る。この場合には、熱散逸モデルについてより低位の位置的・空間的な次元を使用することができる。
まず、ブロック1031では、発熱に関するモデルの定量化が行われる。そのために、特に可逆性的な割合をパラメータ化することができる。このために例えば電位差測定を行うことができ、こうしてエントロピー係数を決定することができる。式3と対比せよ。
続いて、ブロック1032において、熱散逸モデルの位置的・空間的な次元を決定する。このためにはさまざまなやり方がある。例えば、セル形状の有限要素シミュレーションを行うことができ、このシミュレーションに関連して特に高い精度を使用することができる(狭いシミュレーショングリッド、メッシュ)。特に、三次元シミュレーションを行うことができる。その際、温度勾配を考慮することができる。典型的な負荷パラメータに対する温度勾配が特定の閾値を下回らない場合、例えば、熱散逸のために0次元モデルを使用することができる。このような0次元モデルは、特に分析的に決定されていてよい。それ以外の場合は、一次元又は二次元のモデルを使用することができる。また、熱勾配の尺度はしばしば、稼働プロフィールにも依存する。このため、ブロック1032で稼働プロフィールを考慮することができる。例えば、状態データ41を用いて各バッテリから現在の稼働プロフィールを取得することができる。バッテリの負荷が小さければ発熱も少ないので熱勾配も小さくなり、(二次元モデルではなく)0次元又は一次元のモデルで十分となり得る。
その後、ブロック1033において、セルモデル、空気モデル及び/又はシステムモデル6001~6003のパラメータ化が行われる。そのために例えば、特定の接触抵抗の熱容量及び/又は熱伝導率について文献から値を取ることができる。また、例えば初期化された値を適合させるために、1つ又は複数の熱量測定を行うことも可能である(ブロック1034を参照)。熱量測定によって、セルの熱容量を決定することができる。ブロック1034において、例えば熱セルモデル6001の異方性熱伝達率を決定するために、TISを実行することも可能である。
図10は、電気モデル900に関連する態様を示す(図7:ブロック1022参照)。電気モデル900は、等価回路イメージモデルに基づいている。電気モデルは、セル電流及びセル電圧を提供することができる。その際にこれらの尺度は、発熱モデル(図8、ブロック1102参照)への入力として使用することができる。
等価回路イメージモデル(ECM)の基本原理は、電気化学セルの挙動を電気技術構成要素901~906の連結により表すことである。その際には、詳細度に応じて、セルコンポーネントの個々の作用を一緒に、又は別々に考慮することができる。ECMの一般的な構造について、例示的なセル(Panasonic NCR18650PF)のインピーダンススペクトルを用いて、以下に説明する。
図10は、セルのインピーダンススペクトル950をナイキストプロットした図である。高周波数でのナイキストプロットの負の領域は、両極と金属ハウジング自体へのアレスタによる誘導性挙動を示す。これは通常、残りのECMコンポーネント902~906と直列の一定のインダクタンスL 901によってモデル化される。
インピーダンス曲線と実軸との交点は通常、1kHz程度の範囲で生じ、電流導体、電極材料、電解質及びセパレータについて制限された導電率の和として、セルの純粋なオーミック内部抵抗に相当する。モデル化するためには、SOC、温度及び劣化状態に依存して、純粋なオーミック抵抗Rоhm902を使用することができる。
ゼロ交差後には、アノード(固体電解質界面:SEI)及びカソード(固体透過性界面:SPI)のパッシベーション層での分極効果が反映された第一の円弧が続く。ここでSPI層の作用はたいてい、SEIでの作用よりも小さい。SEI層の成長は、黒鉛アノードを用いたリチウムイオン電池において主要な劣化メカニズムと考えられているため、この動的作用は劣化状態の進行とともにより顕著になり、新しいセルではしばしば、個別に観察できない。
続いて、電極-電解質界面での電荷移動反応と二重層容量との組み合わせにより、第二の半円弧が発生する。ここで二重層容量Cdl(dlは、二重層(double layer))とは、アノード及びカソードと電解質との接触面に生じる電荷帯である。そこに蓄えられる電荷の量は、電極の電位に依存する。二重層容量は電極-電解質界面で発生するため、アノード及びカソードでの電荷移動酸化還元反応と並行して発生する。こうして、イオン伝導から電気伝導への移行により分極過電圧が発生し、ECMでは通常、電荷移動抵抗Rct(ctは、電荷移動(charge transfer))で表される。アノードとカソードは基本的に異なるパラメータを有するため、インピーダンス曲線には2つの別々の半円弧が現れることもある。調査されたセルにおける各円弧からは、一方の電極(例えば黒鉛アノード)の電荷移動抵抗がもう一方の電極に比べて比較的小さいこと、又は両方の電荷移動反応が同様の動的挙動を示すことを結論付けることができる。二重層容量Cdl及び電荷移動抵抗Rctは、基本的にSOC、温度、電流レート(Stromrate)及び劣化状態に依存する。
電荷移動/二重層容量及びSEI層の半円弧の場合に注目すべきは、この半円弧が、虚軸方向に圧縮されたような形状をしていることである。この現象は、電気化学作用の時定数が固定値でなく、平均値付近に分布している場合に起こる。この分布は、並行プロセスの重畳(例えばアノード及びカソードでの電荷担体の同時移動)により、また多孔質電極における電極/電解質界面の空間的拡大により発生する。しかしながら通常のRC回路は、複素平面上で理想的な半円を表すに過ぎないため、圧縮された円弧をモデル化するためには、いわゆるZarc要素903が使用される。
低周波領域では、インピーダンススペクトルは最終的にほぼ45°の角度で終了するが、これは電解質及び電極におけるイオン濃度の差異に起因する拡散挙動に起因する。R-L-C要素を用いた拡散による物質輸送現象を正確にモデル化することは、困難である。多孔質電極構造をイメージ化するのに適したアプローチは、いわゆる伝送線路(transmission lines)である。しかしながら伝送経路は伝達関数が複雑であり、必要なパラメータの数も多いため、文献ではいわゆるワールブルク(Warburg)要素が使われている。これらは、拡散経路の末端における境界条件の違いにより、3つのバリエーションに分けられる。
上述の要素を組み合わせることにより、リチウムイオン電池のインピーダンス曲線を良好に再現することができ、ひいては個々の電気化学的作用の発現を分析することができる。しかしながら、伝達挙動を時間領域に変換する場合、周波数領域のいくつかの要素(定相要素(Constant Phase)、Zarc要素及びワールブルク要素)はラプラス変換がないため、近似させる必要がある。その際に導体ネットワークの他には、直列に接続されたRC回路が、近似のための最も一般的な変形である。ここでZarc要素903は、圧縮された半円形状を最適に表すために、RC回路の数を不均等(3、5・・・)にすることが推奨される。
基本的に、適用に関連する周波数範囲にわたるセルの動的挙動を近似するために使用するRC回路の数は常に、精度、計算時間、及びパラメータ化コストに関する一致点である。
電気的ECMでは、セルの動的挙動に加え、さらに無負荷時の静的挙動をモデル化することができる。いわゆる開回路電圧(OCV:open circuit voltage)は、使用する電極材料及びそのバランスに依存し、経時的な劣化により変化し得る。これは通常、SOC依存の理想電圧源によりモデル化される。さらに、エントロピー変化による温度依存性を考慮することもできるが、これは通常、それほど顕著ではない。LFPカソードのような特定の電極材料ではさらに、事前の電流負荷との関係で明らかなヒステリシス効果も発生する。
様々な例において、開回路電圧をモデル化するためのSOC依存型理想電圧源の代わりに、又はそれに加えて、開回路電圧のモデル化に関連してヒステリシスを考慮することもできる。これはつまり、開回路電圧が電流の流れる方向に依存していることを意味するとも言える。ある電流方向が別の電流方向に変わる際に開回路電圧をモデル化可能にするために、対応する移行係数を考慮することができる。これにより、1つの電流方向に関連する開回路電圧の特性から、別の電流方向に関連する開回路電圧の特性への移行をモデル化することができる。
先の段落では、リチウムイオン電池をセルレベルでモデル化することについて説明した。バッテリシステムを電気的にシミュレートするステップ、すなわち電気システムモデルは、詳細には様々な段階で行うことができる:
(i)セルシステムのスケーリング:この最も単純なケースでは、バッテリパック全体を1つのセルモデルで表す。システム電圧は、セル電圧と直列セル数の積から求められ、システム電流は、並列セル数で割ってセルモデルに適用する。このように、セルモデルのパラメータを適合させる必要はない。
(ii)直列接続のモデル化、セル並列接続のスケーリング:ここでは一連の各直列セルが、独自のセルモデルによって表される。これにより、パラメータのばらつきや、その結果生じる作用(例えばSOCドリフト及び一連の直列セルにおける不均一な劣化挙動)を、すでに表すことができる。バッテリシステムにおける既存の並列回路は、1.)のようにシミュレートされる。
(iii)直列接続及び並列接続のモデル化:この詳細レベルでは、バッテリシステムにおける各セルが、独自のセルモデルによってシミュレートされる。(ii)に加えて、並列接続の作用(例えば異なる電流負荷、及びパラメータがばらついた場合に生じるSOCウィンドウ)も表すことができる。
電気等価回路モデルの精度は、モデルパラメータの品質に大きく依存する。
動的等価回路パラメータをパラメータ化する際には基本的に、時間領域での手順と周波数領域での手順とを区別することができる。時間領域における手順の1つは、ダイナミックストレス測定(DST)である(USABC Electric Vehicle Battery Test Procedures Manual, Rev. 2 (1996)参照)。時間領域でのもう一つの手順は、印加された電流ジャンプに対するセルの電圧応答の評価(電流パルス特性測定)である。モデルの伝達関数、及び誤差を最小化する最適化アルゴリズムにより、パラメータセットを数値的に特定(フィッティング)することができ、これによって、測定された電圧応答を、規定の最大誤差で再現することができる。この方法の問題点は、最適化における極小値によって、電圧応答を再現するため数学的に有意な値が見つかることがあるものの、これらは企図した電気化学的な対応性を持っていないため、他の負荷プロフィールでは必然的に、シミュレーション失敗につながるということである。時間領域でパラメータ化する別の可能性は、規定時間の持続後に印加される定電流パルスに対する直流抵抗の計算である。抵抗値が電気化学的な意味を持つように、時間を規定すべきである(例えば、電荷担体移動抵抗についてはRDC,1s)。周波数領域での電気化学インピーダンス分光法(EIS)測定では、規定の周波数帯域で一定の周波数点を有する正弦波状の励起信号(たいていは電流、ガルバノスタティックEIS)をセルにかけ、システム応答(ガルバノスタットEISでは電圧)の振幅及び位相シフトを測定する。この場合、異なる時定数を有する動的作用を別々に観測できることが有利である。インピーダンス曲線の一般的な表現形式は、図10によるナイキスト線図である。等価回路の複雑な伝達関数により、パラメータ化の枠組みの中で、動的モデルのパラメータをフィッティング法により再び決定することができる。EISにおける本来の励起信号はゼロ位置付近の正弦波交流であるため、電流レート依存性を測定するためには通常、さらなる直流オフセットがかけられる。しかしながらこれにより充電状態が変わるため、直流オフセットとEIS測定時間の適切な一致点を見出す必要がある。
開回路電圧をモデル化するためのECMにおける理想電圧源のパラメータ化には、2つの異なる方法がある:緩和電流測定では、リチウムイオン電池を満充電又は放電状態から規定充電状態まで段階的に放電又は充電し、続いて全ての動的作用(例えば過電圧及び濃度勾配)を消滅させるべく規定された時間、無負荷で待機する。ここで待機時間は通常、数時間の範囲であり、全ての過電圧の減衰は、SOC及びセル温度に応じて数日かかることもある。その後、待機時間終了時の緩和された電圧値により、充放電の静止電圧曲線が得られる。それぞれの場合で同じSOCについて双方の曲線を比較すると、数値にズレが確認されるが、これはヒステリシス効果と呼ばれる。前段階に対する静止電圧の当該依存性は、セル化学、SOCに依存し、温度にも若干、依存する。これは特に、二相転移をする電極材料(例えばリン酸鉄リチウム)で顕著に現れる。ECMにおける理想電圧源をパラメータ化するための定電流測定では、リチウムイオンセルはSOCの全範囲にわたって低い定電流で充放電される。電流レートが低いため(通常、C/50からC/10の間)、過電圧が非常に僅かな準定常状態を想定することができる。充放電曲線の平均化によってこれらを除去し、準静止電圧特性が得られる。その際に試験時間は、緩和測定と比較すると通常は明らかに短く、測定点の数は連続測定によって、明らかにより多くなる。しかしながらこの方法によっては、ヒステリシス効果を定量化することはできない。定電流曲線はさらに、微分電圧分析(DVA)を用いてハーフセル又はフルセルのインターカレーション電位を決定するためにも、文献で頻繁に使用される。
図11は、例示的な方法のフローチャートである。図11による方法は、電気モデル900のパラメータ化を行うために使用することができる。
まずブロック1041において、周波数空間における一又は複数の関連する負荷範囲を特定することができる。負荷範囲は、バッテリの負荷プロフィールで表される範囲、すなわち有意な振幅で存在する範囲に相当する。このために、例えば状態データ41によって示されるバッテリの動作プロフィールを考慮することができる。
このような技術は、次のような知見に基づく:特定用途のために、電流挙動及び電圧挙動、ひいては発熱及び劣化要因をできるだけ正確に表現できるようにするには、モデル規定において、それぞれの電気負荷及び環境プロファイルを考慮すべきである。これらは、車両開発プロセスにおける車載バッテリの用途では、縦方向のダイナミクスシミュレーションに関連した運転サイクルから、又は実車での測定から導き出すことができる。このことから、バッテリパックの電流、温度及びSOCの稼働範囲、ひいてはモデルのパラメータ化に必要な範囲を、振幅分析により求めることができる。
一方、電流信号の離散フーリエ変換により、システム励起のダイナミクスを周波数スペクトルで定量化することができ、ひいては電気モデルに関して関連する周波数範囲を決定することが可能である。乗用車における典型的な測定では例えば、約1Hzまでが関連する範囲となる。これは、ドライバーの運転スタイルによるかもしれない。この情報と、EISによるバッテリパックのリチウムイオンセルの動的伝達挙動により、次のステップでモデル化に関連する電気化学プロセス、ひいては動的電気モデルのシステム配置を決定することができる。
これは、次にブロック1042で動的モデル配置が規定されることを意味する。電気化学インピーダンス分光法は、異なる周波数帯域を連続的に測定するため、用途に関連するインピーダンス作用及びその特定の時定数を特定するために、特に適している。よって動的モデル配置を規定するために、各セルは、ブロック1041で特定された温度及びSOCの動作範囲のそれぞれにおいて、5kHzから10mHzまでの周波数範囲のハイブリッドEISで測定される。ここでサンプリング点(Stuetzstelle)の数は、分解能と測定時間の一致点である。
得られたインピーダンス曲線を用いて、電気モデルで表すべき関連する電気化学的作用を、その時定数、例えばインピーダンスの誘導成分又は負の虚数部を有するインピーダンス区画によって特定することができる。
インピーダンス挙動のモデル化品質を評価するため、また異なるECMをパラメータ化する(すなわち、例えばRC回路の数を決定する)ために、最小二乗法に基づくEIS測定のパラメータフィッティングを使用することができる:
コスト関数Sにおいて、
及び
並びに
及び
はそれぞれ順に、測定値の実数部及び虚数部、並びにパラメータベクトルPによるモデルフィットを表す。w
iにより、周波数依存の重み付け係数を追加することができる。
及び
は、選択したECMの伝達関数から得られ、2RCの場合には例えば以下の通りである:
ただし、
上記式から、2つの独立した関数から構成される非線形コスト関数が得られる。解は、勾配に基づく又は導関数無しの最適化アルゴリズムにより求めることができる。
複数の伝達関数をそれぞれ、複雑さの異なるモデルにフィッティングすることが可能である。その後、その精度を確認し、ECMの複雑さ(例えばRC回路の数)をEISにより決定することができる。ワールブルク要素を有するモデルは、純粋なRCモデルよりも拡散分岐をよりよく表すことが観察された。しかしながらこれは、拡散のための2つのRC要素から始めると、十分良好に近似させることができる。3つ又は4つのRC回路モデルは、計算コスト及びパラメータ化コストと精度との良好な一致点である。ここでは1つ又は2つのRC回路をそれぞれ、高周波の動的作用に割り当て、拡散挙動は2つのRC回路でモデル化される。
ブロック1042において動的モデル配置を規定した後、ブロック1043において静的セル挙動の特定及びパラメータ化を行う。
異なるセル化学の静的セル挙動をパラメータ化するためには、緩和法(電流遮断、CI:Current-Interruptionとも)や定電流法(CC:Constant Current)も使用できる。緩和測定では、初期容量決定後、各セルを満充電状態から既定のSOCステップで放電させ、続いて再度、充電する。SOCのステップ幅は、SOC範囲の上限、中間、下限におけるOCVの傾きに応じて適合される。この容量測定は、CC-CV充放電により、セルの指定電圧範囲及びその都度のCV終了基準(C/50)に従って行われる。この容量値は、残りのモデルパラメータのSOC依存パラメータ化の基礎にもなる。放電又は充電された各SOCステップの後、セルは少なくとも3時間(低SOC範囲では最大10時間)緩和され、終了時の電圧値が放電曲線及び/又は充電曲線のサンプリング点となる。充電曲線と放電曲線との電圧差は、セルのヒステリシス挙動の最大値と解釈することができる。
ヒステリシス挙動をECMに統合するため、文献には、その際に使用可能な様々なアプローチが存在する。一例として、Verbruggeらによる時間離散形式のヒステリシスモデルがある。
次にブロック1044において、インピーダンス挙動のパラメータ化が行われる。
このために、時間領域及び周波数領域における手法を使用することができる。EISについては、ブロック1042との関連で既に論じた。異なる周波数帯において交流電流を励起することにより、異なる電気化学反応を個別に励起し、特定することができる。しかしながら、これでは電荷担体移動反応の電流レート依存性を十分に捉えられない場合がある。追加的に印加される直流成分により、ある周波数点の交流励起内でSOCがシフトし、線形転送挙動が見られなくなるからである。よってインピーダンスパラメータは、電流パルス(HPPC)に基づき測定することができる。ここで、2つのバリエーションを区別することができる:
a)純粋なパラメータフィッティングによるHPPC:この場合、すべてのインピーダンスパラメータを一緒にフィッティングするか、又は電流パルスによる一又は複数の電圧曲線に分割してフィッティングする。この分割により、異なる電気化学的作用を個別に考慮することができる。
b)事前に規定されたパラメータによるHPPCフィッティング:a)とは異なり、この場合には各インピーダンスパラメータが、フィッティングの上流測定(例えばEIS測定によるRоhm)によって事前にもたらされる。
異なるCレートに加え、規定のSOCインターバル及び温度インターバルに対して、インピーダンス挙動のパラメータ化が行われる。変法a)及びb)に相応する実際のパラメータフィッティングのために、上述の最適化アルゴリズムを再度、使用することができる。
最後にブロック1045において、システムレベルでのモデル化により、電気セルモデルの合成が行われる。
電気セルモデルとしては、先のブロック1041~1044に相応して、開放電圧、ヒステリシス挙動、オーミック抵抗、及び最大4つのRC回路を有するグローバルインピーダンスモデルを使用することができる。状態空間表現での伝達挙動(2RC変形を明快にするため)は、これに応じて以下のようになる:
セルモデルにおける計算は全てマトリックスに基づくため、直列回路及び並列回路のシミュレーションを効率的に行うことができる。
もちろん、上述した本発明の実施形態及び態様の特徴は、互いに組み合わせることができる。これらの特徴は特に、本発明の範囲から逸脱しない限りにおいて、記載された組み合わせだけでなく、他の組み合わせや単独で使用することもできる。