以下、図面を参照し、本発明の一実施形態のコントロールケーブル装置を説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまで一例であり、本発明のコントロールケーブル装置は、以下の実施形態に限定されるものではない。
図1に示されるように、本実施形態のコントロールケーブル装置1は、第1コントロールケーブル21と、第2コントロールケーブル22と、第1コントロールケーブル21と第2コントロールケーブル22とを接続するケーブル接続機構3とを備えている。
コントロールケーブル装置1は、操作部P1に加わった操作力を第1コントロールケーブル21、ケーブル接続機構3、および第2コントロールケーブル22を介して被操作部P2に伝達する。これにより、コントロールケーブル装置1によって、被操作部P2が遠隔操作される。コントロールケーブル装置1は、たとえば、車両等の取付対象に所定の配索経路で取り付けられる。
コントロールケーブル装置1が適用される用途は特に限定されない。コントロールケーブル装置1は、たとえば、操作レバーなどの操作部P1を操作することによって、車両のシートの傾倒状態を変更するためのシートロック部などの被操作部P2が操作されるシートケーブルの操作機構などの、操作力伝達機構に適用することができる。
本実施形態では、第1コントロールケーブル21は、図1に示されるように、一端211aが操作部P1に接続される第1インナーケーブル211、および、第1インナーケーブル211が挿通され、一端212aが操作部側取付部B1に取り付けられる第1アウターケーシング212を有している。第2コントロールケーブル22は、一端221aが被操作部P2に接続される第2インナーケーブル221、および、第2インナーケーブル221が挿通され、一端222aが被操作部側取付部B2に取り付けられる第2アウターケーシング222を有している。
第1コントロールケーブル21は、ケーブル接続機構3に対して操作部P1側に設けられたコントロールケーブルであり、操作部P1の操作力をケーブル接続機構3に伝達する。第1コントロールケーブル21は、操作部P1とケーブル接続機構3との間に、所定の配索経路で配索される。
第1インナーケーブル211は、操作部P1とケーブル接続機構3とを接続するインナーケーブルである。第1インナーケーブル211は、一端211aと他端211bとを有している。本実施形態では、図1に示されるように、第1インナーケーブル211の一端211aは操作部P1に接続され、他端211bはケーブル接続機構3の後述するジョイント部材6に接続されている。第1インナーケーブル211は、一端211aおよび他端211bにケーブルエンドを有する公知のインナーケーブルを用いることができる。
第1アウターケーシング212は、第1インナーケーブル211を摺動可能に収容する。第1アウターケーシング212は、コントロールケーブル装置1の取付対象(例えば車両など)において、例えば二次元または三次元的に湾曲した所定の配索経路で配索され、第1インナーケーブル211を所定の配索経路に沿って案内する。
第1アウターケーシング212は、一端212aと他端212bとを有している。本実施形態では、第1アウターケーシング212の一端212aは操作部P1側に設けられた操作部側取付部B1に取り付けられ、他端212bは後述する第1接続部4に接続されている。操作部側取付部B1の形状および構造は、第1アウターケーシング212の一端212aを取り付けることができれば、特に限定されない。操作部側取付部B1は、例えば車両等の取付対象に設けられた、または、取付対象に取り付けられたブラケット等、第1アウターケーシング212の一端212aを固定可能な部分である。操作部側取付部B1によって、第1アウターケーシング212の一端212aは取付対象に対して所定の位置に固定される。第1アウターケーシング212の他端212bが接続される第1接続部4については後述する。なお、第1アウターケーシング212は、公知のアウターケーシングを用いることができる。
第2コントロールケーブル22は、ケーブル接続機構3に対して被操作部P2側に設けられたコントロールケーブルであり、ケーブル接続機構3に伝達された操作力を被操作部P2側に伝達する。第2コントロールケーブル22は、ケーブル接続機構3と被操作部P2との間に、所定の配索経路で配索される。
第2インナーケーブル221は、ケーブル接続機構3と被操作部P2とを接続するインナーケーブルである。第2インナーケーブル221は、一端221aと他端221bとを有している。本実施形態では、図1に示されるように、第2インナーケーブル221の一端221aは被操作部P2に接続され、他端221bはケーブル接続機構3の後述するジョイント部材6に接続されている。第2インナーケーブル221は、一端221aおよび他端221bにケーブルエンドを有する公知のインナーケーブルを用いることができる。
第2アウターケーシング222は、第2インナーケーブル221を摺動可能に収容する。第2アウターケーシング222は、コントロールケーブル装置1の取付対象(例えば車両など)において、例えば二次元または三次元的に湾曲した所定の配索経路で配索され、第2インナーケーブル221を所定の配索経路に沿って案内する。
第2アウターケーシング222は、一端222aと他端222bとを有している。本実施形態では、第2アウターケーシング222の一端222aは、被操作部P2側に設けられた被操作部側取付部B2に取り付けられ、他端222bは後述する第2接続部5に接続されている。被操作部側取付部B2の形状および構造は、操作部側取付部B1と同様とすることができるため、説明は省略する。第2アウターケーシング222の他端222bが接続される第2接続部5については後述する。なお、第2アウターケーシング222は、公知のアウターケーシングを用いることができる。
本実施形態では、コントロールケーブル装置1は、図1に示されるように、1つの第1コントロールケーブル21(1つの第1インナーケーブル211および1つの第1アウターケーシング212)と、2つの第2コントロールケーブル22(2つの第2インナーケーブル221および2つの第2アウターケーシング222)とを有している。本実施形態では、1つの第1インナーケーブル211が操作されることによって、2つの第2インナーケーブル221が同時に操作される。なお、コントロールケーブル装置1に設けられる第1コントロールケーブル21(第1インナーケーブル211および第1アウターケーシング212)の本数および第2コントロールケーブル22(第2インナーケーブル221および第2アウターケーシング222)の本数は、図示するものに限定されず、第1インナーケーブル211および第2インナーケーブル221の少なくとも一方が、複数本のインナーケーブルにより構成されていればよい。例えば、第1インナーケーブル211が1本で、第2インナーケーブル221が複数本であってもよいし、第1インナーケーブル211が複数本で、第2インナーケーブル221が複数本であってもよい。第1インナーケーブル211および第2インナーケーブル221がともに複数本である場合、第1インナーケーブル211と第2インナーケーブル221とは、同一の本数であってもよいし、異なる本数であってもよい。
ケーブル接続機構3は、第1コントロールケーブル21および第2コントロールケーブル22を接続する。具体的には、ケーブル接続機構3は、第1コントロールケーブル21の第1インナーケーブル211と、第2コントロールケーブル22の第2インナーケーブル221とを接続する。また、ケーブル接続機構3は、第1アウターケーシング212と第2アウターケーシング222とを接続する。
ケーブル接続機構3は、図1に示されるように、第1アウターケーシング212の他端212bが接続された第1接続部4と、第2アウターケーシング222の他端222bが接続された第2接続部5と、第1インナーケーブル211の他端211bおよび第2インナーケーブル221の他端221bを接続するジョイント部材6とを備えている。また、ケーブル接続機構3は、図1に示されるように、第1接続部4と第2接続部5との間に設けられた付勢部材7と、第1接続部4と第2接続部5との間の距離が所定の距離以内となるように、第1接続部4と第2接続部5との相対移動を規制する規制部8とを備えている。なお、本実施形態では、ケーブル接続機構3はさらに、第1接続部4および第2接続部5を少なくとも部分的に覆うカバー部材9を備えている。
ケーブル接続機構3は、公知の取付手段によって、車体等、所定の取付対象に、取り付けられる。ケーブル接続機構3は、本実施形態では、カバー部材9を介して取付対象に取り付けられるように構成されているが、例えば、第2接続部5など、カバー部材9以外の部位を介して取付対象に取り付けられていてもよい。取付手段は、車体等、取付対象に設けられたブラケットなどに係合可能な、ケーブル接続機構3に設けられた係合部(図示せず)であってもよいし、結束バンドなど、ケーブル接続機構3とは別部材として設けられた取付部材であってもよい。
第1接続部4は、第1アウターケーシング212の他端212bが接続される部位である。本実施形態では、第1接続部4は、ケーブル接続機構3において直線状に延びる第1インナーケーブル211の軸X方向(以下、第1方向D1とも呼ぶ)で、第2接続部5に対して相対移動できるように構成されている。第1接続部4は、後述するように、付勢部材7によって軸X方向で第2接続部5から離れる方向に付勢されている。
第1接続部4の形状および構造は、第1アウターケーシング212の他端212bが接続可能であり、第2接続部5に対して相対移動可能であれば、特に限定されない。本実施形態では、第1接続部4は、第1ケースC1を有している。本実施形態では、第1接続部4が第1ケースC1によって構成されているが、第1接続部4は第1ケースC1以外の部材等を含んでいてもよい。本実施形態では、第1接続部4(第1ケースC1)は、第1アウターケーシング212の他端212bが接続される第1アウターケーシング接続部41と、第1インナーケーブル211の軸X方向である第1方向D1に延びる第1筒部42と、付勢部材7の一端7aが接続されるバネ座43とを有している。具体的には、第1接続部4は、第1接続部4の軸X方向の一端(操作部P1側の端部)4a側に、第1アウターケーシング212の他端212bが固定される第1アウターケーシング接続部41を有している。第1アウターケーシング接続部41において、第1アウターケーシング212の他端212bは、カシメ等、公知の固定手段によって固定される。第1筒部42は、第1アウターケーシング接続部41に軸X方向で隣接して設けられている。本実施形態では、第1筒部42は内部に空洞を有する略円筒状に構成され、後述する第2接続部5の第2筒部52を、第1筒部42の空洞内で移動できるように収容する。バネ座43は、本実施形態では、軸X方向で、第1アウターケーシング接続部41とは反対側となる第1接続部4の他端(被操作部P2側の端部)4b側に設けられている。本実施形態では、バネ座43は、第1筒部42の外周に対して径方向外側に突出するフランジ部F1に設けられている。具体的には、フランジ部F1のうち、第1接続部4の他端4b側の端面がバネ座43を構成している。なお、フランジ部F1の第1接続部4の一端4a側の部分は、後述する規制部8と軸X方向で当接する当接部44を構成している。規制部8と当接部44とが軸X方向で当接することによって、付勢部材7により第2接続部5から離れる方向に付勢された第1接続部4は、第2接続部5に対して、軸X方向に所定の距離以上離れるように移動することが抑制され、第2接続部5に対して所定の位置で保持される。
第2接続部5は、第2アウターケーシング222の他端222bが接続される部位である。第2接続部5は、軸X方向で、第1接続部4に対して相対移動できるように構成されている。本実施形態では、第2接続部5は軸X方向に移動せずに、第1接続部4のみが移動することにより、第1接続部4と第2接続部5とが互いに対して相対移動するように構成されている。しかし、ケーブル接続機構3は、第1接続部4と第2接続部5とが軸X方向で相対移動するように構成されていればよく、例えば、第1接続部4および第2接続部5の両方が軸X方向に移動するように構成されていてもよい。第2接続部5は、後述するように、付勢部材7によって軸X方向で第1接続部4から離れる方向に付勢されている。
第2接続部5の形状および構造は、第2アウターケーシング222の他端222bが接続可能であり、第1接続部4に対して相対移動可能であれば、特に限定されない。本実施形態では、第2接続部5は、第2ケースC2を有している。本実施形態では、第2接続部5が第2ケースC2によって構成されているが、第2接続部5は第2ケースC2以外の部材等を含んでいてもよい。本実施形態では、第2接続部5(第2ケースC2)は、第2アウターケーシング222の他端222bが接続される第2アウターケーシング接続部51と、第1方向D1に延びる第2筒部52と、付勢部材7の一端7aが接続されるバネ座53とを有している。具体的には、第2接続部5は、第2接続部5の軸X方向の一端(被操作部P2側の端部)5a側に、第2アウターケーシング222の他端222bが固定される第2アウターケーシング接続部51を有している。第2アウターケーシング接続部51において、第2アウターケーシング222の他端222bは、カシメ等、公知の固定手段によって固定される。本実施形態では、第2アウターケーシング接続部51には、2つの第2アウターケーシング222の他端222bが固定されている。なお、本実施形態では、第2ケースC2は、第2筒部52およびバネ座53を含む筒状体C21と、当該筒状体C21の端部に取り付けられる、第2アウターケーシング接続部51を含むキャップ部材C22とを備えている。筒状体C21とキャップ部材C22とは、軸X方向で互いに接続されて、第2ケースC2を構成する。
第2筒部52は、第2アウターケーシング接続部51に軸X方向で隣接して設けられている。本実施形態では、第2筒部52は内部に空洞を有する略円筒状に構成されている。本実施形態では、第2筒部52の空洞内を、ジョイント部材6が軸X方向に移動する。なお、本実施形態では、第2ケースC2の第2筒部52が第1ケースC1の第1筒部42に対して入れ子式に挿入されているが、第1筒部42および第2筒部52のうちの一方の筒部が、他方の筒部に入れ子式に挿入されていればよい。このように、第1筒部42および第2筒部52のうちの一方の筒部が、他方の筒部に入れ子式に挿入される場合、一方の筒部が他方の筒部に案内されて、第1筒部42および第2筒部52の間の相対移動が安定する。なお、変形例として、第1筒部42が第2筒部52の内部の空洞を移動するように構成されていてもよい。
本実施形態では、第2筒部52は、内部の空洞をジョイント部材6が移動可能となる大きさで形成されている。具体的には、第2筒部52は、第2筒部52の内周面に沿って、ジョイント部材6が摺動して案内されるように構成されている。第2筒部52の軸X方向の長さは、第1インナーケーブル211の操作によってジョイント部材6が移動する所定の移動量に応じた長さ、または当該所定の移動量よりも長い長さとされている。なお、変形例として、第1筒部42が第2筒部52の内部の空洞を移動する場合、第1筒部42は、第1筒部42の内周面に沿ってジョイント部材6が摺動して案内されるように構成される。この場合、第1筒部42の軸X方向の長さは、ジョイント部材6が移動する所定の移動量に応じた長さ、または当該所定の移動量よりも長い長さとされる。
バネ座53は、第1接続部4のバネ座43に対して、軸X方向で所定の距離離間した位置に設けられる。本実施形態では、バネ座53は、第2筒部52のうち、第2アウターケーシング接続部51側の端部近傍に設けられている。バネ座53は、本実施形態では、第2筒部52の外周に対して径方向外側に突出するフランジ部F2に設けられている。具体的には、フランジ部F2のうち、第1接続部4のバネ座43に軸X方向で対向する端面がバネ座53となっている。なお、例えば、付勢部材7が第2筒部52の内側に設けられる場合には、バネ座53は、ジョイント部材6の軸X方向での移動に支障がなければ、第2筒部52の内面に設けられていてもよい。
ジョイント部材6は、第1インナーケーブル211の他端211bおよび第2インナーケーブル221の他端221bが接続され、第1インナーケーブル211の操作力を、第2インナーケーブル221に伝達できるように構成されている。ジョイント部材6は、第1インナーケーブル211の移動により、第1接続部4と第2接続部5との間を移動可能に設けられている。具体的には、第1インナーケーブル211が操作されて、第1インナーケーブル211が軸X方向に移動すると、ジョイント部材6は、第1インナーケーブル211によって操作されて、第1接続部4と第2接続部5とによって形成された移動空間を軸X方向に移動するように構成されている。なお、本実施形態では、ジョイント部材6が移動する移動空間は、第1筒部42および/または第2筒部52によって形成される。ジョイント部材6は、操作部P1が操作されると、操作部P1の操作量に応じて第1インナーケーブル211を介して引き操作され、移動空間を軸X方向に移動する。ジョイント部材6の軸X方向での移動によって、第2インナーケーブル221が引き操作されて、第2インナーケーブル221によって被操作部P2が操作される。本実施形態では、ジョイント部材6が所定の移動量で移動し、被操作部P2が所定の必要な操作量で操作されると、ジョイント部材6は軸X方向の所定の位置で停止する。
ジョイント部材6は、上述したように、第1筒部42および第2筒部52のうち、内側に設けられた筒部の内部の空洞を移動するように構成されている。本実施形態では、ジョイント部材6は、第2筒部52の内部の空洞を、第2筒部52の内周面に摺動するように構成されている。ジョイント部材6の形状および構造は特に限定されない。本実施形態では、ジョイント部材6は、第1筒部42および第2筒部52のうち、ジョイント部材6が摺動する筒部の内周に沿った湾曲した外周面を有している。例えば、ジョイント部材6は、第1インナーケーブル211および第2インナーケーブル221が接続されるケーブル接続部を有した略円柱状に形成することができる。
規制部8は、第1接続部4と第2接続部5との間の距離が所定の距離以内となるように、第1接続部4と第2接続部5との間の相対移動を規制する。「第1接続部4と第2接続部5との間の距離」は、本実施形態では、第1接続部4の所定の部位(例えば、バネ座43)と、第2接続部5の所定の部位(例えば、バネ座53)との間の軸X方向の距離である。規制部8は、付勢部材7によって第2接続部5から離れる方向に付勢された第1接続部4と、第2接続部5との間の軸X方向の距離が所定の距離以内となるように(所定の距離よりも大きくならないように)、第1接続部4と第2接続部5との間の相対移動を規制している。
本実施形態では、規制部8は、第1接続部4と軸X方向で係合することによって、第1接続部4が第2接続部5に対して離れる方向に移動することを規制している。より具体的には、規制部8は、第1接続部4のフランジ部F1(当接部44)と軸X方向で係合して付勢部材7によって付勢された第1接続部4のバネ座43と、第2接続部5のバネ座53との間で、付勢部材7を所定の付勢力を維持した状態に保持している。規制部8の形状や構造は、第1接続部4と軸X方向で係合して、第1接続部4が第2接続部5に対して離れる方向に移動することを規制することができれば特に限定されない。なお、規制部8は、本実施形態では、後述するロック部材LCに設けられている。ロック部材LCについては後述する。
カバー部材9は、第1接続部4の少なくとも一部と第2接続部5の少なくとも一部を、外周側から覆っている。カバー部材9は、第1接続部4と第2接続部5とが相対移動できるように、第1接続部4および第2接続部5を内部に収容している。カバー部材9の形状および構造は特に限定されない。カバー部材9は、例えば、図5に示されるように、ヒンジ接続された一対の半割の部材によって構成された略筒状の部材とすることができる。カバー部材9は、本実施形態では、付勢部材7の外周を覆い、付勢部材7の伸縮動作が阻害されないようにしている。
カバー部材9は、本実施形態では、図5に示されるように、付勢部材7の外周をカバーするカバー部91と、第1接続部4および第2接続部5に取り付けられたロック部材LCを収容するロック部材収容部92とを有している。また、カバー部材9は、ロック部材収容部92に対してカバー部91とは反対側に、第1接続部4の第1筒部42を覆う第2カバー部93を有している。
本実施形態では、カバー部91は、略筒状(具体的には略円筒状)に形成され、第2筒部52および付勢部材7の外周を覆う。カバー部91によって、付勢部材7が外部に露出せず、付勢部材7の伸縮動作が阻害されることが抑制される。カバー部91は、付勢部材7を覆うことができる大きさの内径を有しているとともに、第1接続部4が軸X方向に移動可能となる内径を有している。具体的には、カバー部91は、第1接続部4の最大径を有するフランジ部F1(第2接続部5が軸X方向に移動可能である場合は、フランジ部F2)が軸X方向に摺動可能となる内径を有している。
ロック部材収容部92は、本実施形態では、図5に示されるように、軸X方向でロック部材LCと係合するようにロック部材LCを収容する。ロック部材収容部92は、ロック部材LCと軸X方向で係合することによって、第1接続部4および第2接続部5の軸X方向でのカバー部材9に対する移動を抑制する。本実施形態では、ロック部材収容部92は、ロック部材LCと軸X方向の両側で当接可能に構成されている。具体的には、ロック部材収容部92は、筒状のカバー部91および第2カバー部93よりも内径が大きくなっており、軸X方向に垂直な面となる段差部を有している。ロック部材LCの両端面がロック部材収容部92の段差部に軸X方向で係合して、ロック部材LCとカバー部材9との間の相対移動が規制されている。
カバー部材9は、第1接続部4および第2接続部5と軸X周り方向で係合するように構成されていてもよい。この場合、第1接続部4および第2接続部5が、カバー部材9に対して相対回転することが規制される。カバー部材9と第1接続部4および第2接続部5との間の係合構造は特に限定されない。例えば、第1筒部42の外周と第2カバー部93との間、フランジ部F1またはフランジ部F2と、カバー部91の内面との間、ロック部材LCとロック部材収容部92との間に、所定の係合突起などの係合構造を設けることにより、第1接続部4および第2接続部5が、カバー部材9に対して相対回転することを規制することができる。
付勢部材7は、図1に示されるように、第1接続部4と第2接続部5との間に設けられ、第1接続部4を第2接続部5から離れる方向に付勢する。付勢部材7は、本実施形態では、軸X方向に伸縮可能に設けられており、軸X方向の一端7aが第1接続部4に接続され、他端7bが第2接続部5に接続されている。より具体的には、付勢部材7の一端7aは、第1接続部4のバネ座43に接続され、付勢部材7の他端7bは、第2接続部5のバネ座53に接続されている。
本実施形態では、付勢部材7は、操作部P1が操作される前の初期状態(図2参照)において、第1接続部4を第2接続部5から離間させる付勢力を有している。より具体的には、付勢部材7は、第1インナーケーブル211の移動によって被操作部P2が移動可能な移動量の移動をする前には、第1接続部4と第2接続部5との間の距離の収縮が抑制された状態で、ジョイント部材6の移動を生じさせる付勢力を有している。これにより、被操作部P2を所定量操作させるために、操作部P1および第1インナーケーブル211を介してジョイント部材6が移動する間には、第1接続部4と第2接続部5との間の距離が短くなるように付勢部材7が収縮することが抑制されている。なお、上述したように、「第1接続部4と第2接続部5との間の距離」とは、第1接続部4の所定の部位(例えばバネ座43)と第2接続部5の所定の部位(例えばバネ座53)との間の軸X方向の距離である。また、被操作部P2の「移動可能な移動量」とは、被操作部P2(または被操作部P2に接続された操作対象)に必要な操作が行われる際に、被操作部P2が移動する移動量をいう。被操作部P2の移動可能な移動量は、ジョイント部材6の移動量に対応しており、ジョイント部材6が所定量移動したときに、被操作部P2が移動可能な移動量で操作され、被操作部P2が移動可能な移動量で操作された後は、ジョイント部材6はそれ以上の移動が抑制される(所定の位置で停止する)。
付勢部材7が上述した付勢力を有している場合、図2および図3に示されるように、ジョイント部材6が軸X方向に移動する間、付勢部材7は収縮せず、第1接続部4と第2接続部5との間の距離は所定の距離で維持される。この場合、第1接続部4に接続された第1アウターケーシング212の他端212bの位置がほぼ変動しない。そのため、第1アウターケーシング212の、操作部側取付部B1に固定された一端212aおよび他端212bの位置はほぼ変動しない。したがって、ジョイント部材6が被操作部P2を操作するために移動する際には、第1アウターケーシング212の両端の位置および第1アウターケーシング212の配索経路がほぼ変動せずに、第1インナーケーブル211の操作力が、ジョイント部材6に効率良く伝達される。
また、付勢部材7は、操作部P1が操作された操作状態(図4参照)において、第1接続部4と第2接続部5とが近接可能な付勢力を有している。なお、「操作部P1が操作された操作状態」は、例えば、図4に示されるように、被操作部P2の所定の操作が完了した操作完了状態において、操作部P1がさらに操作された状態とすることができる。付勢部材7は、より具体的には、第1インナーケーブル211の移動によって被操作部P2が移動可能な移動量の移動をした後、さらに第1インナーケーブル211に荷重が負荷されたとき、第1接続部4と第2接続部5との間の距離を収縮させる付勢力を有している。被操作部P2が移動可能な移動量で移動した後(例えば、被操作部P2がさらに操作できない状態まで移動した後)、操作部P1がさらに操作されるなどによって、第1インナーケーブル211に荷重が負荷されると、第1インナーケーブル211には、操作部P1と、移動が抑制され、位置がほぼ変動しないジョイント部材6との間でさらなる張力が加わる。第1インナーケーブル211に張力が加わると、第1インナーケーブル211は配索経路において直線状になろうとする。第1インナーケーブル211が直線状になろうとすると、図4に示されるように、湾曲して配索された第1アウターケーシング212も直線状になろうとする。第1アウターケーシング212の一端212aは操作部側取付部B1に固定され位置は変動しないので、第1アウターケーシング212が直線状になろうとすると、第1アウターケーシング212の他端212bは初期位置に対して第2接続部5側(図4における右側)へと移動しようとする。これにより、第1アウターケーシング212の他端212bが接続された、移動可能な第1接続部4は、付勢部材7を軸X方向に収縮させながら、第2接続部5に対して軸X方向に移動する。
これにより、被操作部P2の操作が完了して、ジョイント部材6がほぼ移動しない状態となる操作完了状態からさらに、付勢部材7を収縮させて第1接続部4を移動させながら、操作部P1を操作することが可能となる。したがって、ユーザは、被操作部P2の操作完了状態からさらに操作部P1を操作することができ、付勢部材7を収縮させて第1接続部4を移動させるときの操作部P1の操作感によって、ユーザは操作が完了したことを容易に把握することができる。なお、本実施形態では、ジョイント部材6の移動が抑制された状態で、付勢部材7が軸X方向に収縮しているが、後述するように、ジョイント部材6が軸X方向に移動しながら、付勢部材7が軸X方向に収縮するように構成されていてもよい。また、被操作部P2の操作完了状態において、さらに操作部P1に力が加わったとしても、その力は、付勢部材7を収縮するのに消費されるため、操作部P1やジョイント部材6などの構成部品への負荷が低減される。したがって、操作部P1やジョイント部材6などの構成部品の破損を抑制することができる。
以上のように、本実施形態では、被操作部P2を操作する操作時においては、第1アウターケーシング212および第1接続部4の位置をそのままにして、第1インナーケーブル211の操作力の伝達効率を向上させるとともに、被操作部P2の操作完了後は、付勢部材7を収縮させて第1接続部4の位置を変動させて、操作の完了を操作感によって容易に把握することができる。
図2~図4では、第1接続部4が第2接続部5に対して軸X方向に移動する例を示しているが、被操作部P2が移動可能な移動量の移動をした後、さらに第1インナーケーブル211に荷重が負荷されたときに、第2接続部5が第1接続部4に対して軸X方向に移動するように構成されていてもよいし、第1接続部4および第2接続部5の両方が軸X方向に移動するように構成されていてもよい。例えば、被操作部P2が移動可能な移動量で移動した後、操作部P1がさらに操作されるなどによって、第1インナーケーブル211およびジョイント部材6を介して第2インナーケーブル221に荷重が負荷される。この場合、第2インナーケーブル221にさらなる張力が加わる。第2インナーケーブル221にさらなる張力が加わると、第2インナーケーブル221は配索経路において直線状になろうとし、湾曲して配索された第2アウターケーシング222も直線状になろうとする。第2アウターケーシング222の一端222aは被操作部側取付部B2に固定され位置は変動しないので、第2アウターケーシング222が直線状になろうとすると、第2アウターケーシング222の他端222bは初期位置に対して第1接続部4側へと移動しようとする。これにより、第2接続部5が移動可能に構成されている場合、第2アウターケーシング222の他端222bが接続された第2接続部5は、付勢部材7を軸X方向に収縮させながら、第1接続部4に対して近付くように軸X方向に移動する。これにより、被操作部P2の操作が完了した操作完了状態からさらに、付勢部材7を収縮させて第2接続部5を移動させながら、操作部P1を操作することが可能となる。なお、この場合、操作完了状態から操作部P1を操作すると、第2インナーケーブル221が直線状になる際に、第1インナーケーブル211が引き操作され、ジョイント部材6は操作部P1側に向かって軸X方向に移動する。
本実施形態では、付勢部材7は、図1~図4に示されるように、コイルバネであるが、付勢部材7は、上述した付勢力を有していれば、特に限定されず、コイルバネ以外の付勢部材であってもよい。また、本実施形態では、付勢部材7は、1つのコイルバネ(以下、コイルバネ7とも呼ぶ)であり、コイルバネ7の内側にジョイント部材6の移動空間が設けられている。この場合、コイルバネ7の径方向内側に設けられた空間がジョイント部材6の移動空間となるので、ケーブル接続機構3を径方向でコンパクトにすることができる。
また、本実施形態では、コイルバネ7の内側に、第1ケースC1と第2ケースC2との少なくとも一方が収容されている。この場合、ケーブル接続機構3を径方向でコンパクトにすることができるとともに、コイルバネ7が第1ケースC1または第2ケースC2によってガイドされ、コイルバネ7を安定して伸縮させることができる。本実施形態では、コイルバネ7の径方向で、コイルバネ7の内面と、ジョイント部材6との間には、筒部(本実施形態では第2筒部52)が設けられている。この場合、ジョイント部材6とコイルバネ7とが干渉せず、ジョイント部材6を円滑に軸X方向に移動させることができる。本実施形態では、第2筒部52は、コイルバネ7のバネガイドとして機能し、コイルバネ7の組み付けが容易となる。
なお、付勢部材7の数や配置は図示するものに限定されない。例えば、付勢部材7は軸X方向または軸X周り方向に複数設けられていてもよい。
ケーブル接続機構3には、図6に示されるように、第1接続部4と第2接続部5とに係合して、第1接続部4と第2接続部5との間の相対回転を抑制する、係合部Eが設けられている。係合部Eは、第1接続部4および第2接続部5のそれぞれと軸X周り方向に係合して、第1接続部4と第2接続部5との間の軸X周り方向の相対回転を抑制する。係合部Eは、本実施形態では、第1接続部4および第2接続部5のそれぞれと、軸X周り方向で一方の方向および他方の方向の両方で係合する。具体的には、係合部Eは、図6に示されるように、軸X周り方向で第1接続部4および第2接続部5に当接して、第1接続部4および第2接続部5の、軸X周り方向で一方の回転を抑制する第1係合部E1と、軸X周り方向で第1接続部4および第2接続部5に当接して、第1接続部4および第2接続部5の、軸X周り方向で他方の回転を抑制する第2係合部E2とを有している。なお、本実施形態では、第1係合部E1は、後述するロック部材LCの第1アームLC1に設けられた係合部であり、第2係合部E2は、後述するロック部材LCの第2アームLC2に設けられた係合部である。
ケーブル接続機構3に係合部Eが設けられていることにより、係合部Eが第1接続部4および第2接続部5の両方と係合して、第1接続部4と第2接続部5との間の相対回転が抑制される。これにより、例えば、第2接続部5が第1接続部4に対して相対回転すること(図5の矢印R参照)による、第2接続部5に接続された複数の第2アウターケーシング222が軸X周りに捻じれてしまうことが抑制される。以下、この点についてより詳細に説明する。例えば、第2接続部5に接続された第2アウターケーシング222は、複数本(2本)あるため、第2アウターケーシング222のそれぞれは、軸Xの延長線上を延びずに、図5に示されるように、軸Xから径方向外側にずれて延びている。そのため、第2接続部5が第1接続部4に対して矢印Rの方向に相対回転すると、第2アウターケーシング222は、相対回転する前の状態に対して捻じれてしまう。第2アウターケーシング222が捻じれると、第2アウターケーシング222の配索経路が変化し、その内部を摺動する第2インナーケーブル221の配索経路が捻じれる前の状態から変化してしまう。したがって、第2インナーケーブル221は設計上の配索経路とは異なる経路で配索されて、摺動抵抗が上がったり、2本の第2インナーケーブル221の一方と他方との間で摺動性が異なったりして、効率の良い摺動ができなくなる場合がある。本実施形態では、係合部Eが設けられていることによって、第1接続部4と第2接続部5との間の相対回転が抑制され、このような第2アウターケーシング222の捻じれを抑制することができる。したがって、第2アウターケーシング222の捻じれによる、第2インナーケーブル221の摺動性の低下を抑制することができる。なお、本実施形態では、第2アウターケーシング222が2本設けられ、第2アウターケーシング222の捻じれが抑制されているが、第1アウターケーシング212が複数本設けられている場合は、第1アウターケーシング212の捻じれが抑制され、同様の効果を得ることができる。
係合部Eが設けられる位置は、係合部Eが第1接続部4および第2接続部5に係合して、第1接続部4と第2接続部5との間の相対回転を抑制することができれば、特に限定されない。係合部Eは、本実施形態では、規制部8とともに後述するロック部材LCに設けられているが、規制部8とは別の位置に、別部材として設けられていてもよい。また、本実施形態では、係合部Eは、第1接続部4および第2接続部5のそれぞれに対して、軸X方向で同じ位置で係合しているが、軸X方向で異なる位置で第1接続部4および第2接続部5のそれぞれに係合してもよい。
本実施形態では、ケーブル接続機構3は、図6に示されるように、係合部Eを有するロック部材LCを備えている。ロック部材LCは、第1接続部4および第2接続部5に取り付けられる。ロック部材LCは、第1接続部4および第2接続部5に取り付けられることにより、ロック部材LCの係合部Eによって、第1接続部4と第2接続部5との間の相対回転を抑制する。ロック部材LCの第1接続部4および第2接続部5への取付方向は特に限定されないが、本実施形態では、ロック部材LCは、第1方向D1(軸X方向)に略垂直な第2方向D2(第1筒部42の径方向)に沿って取り付けられる(図8および図9参照)。
本実施形態では、ロック部材LCは、係合部Eに加えて、規制部8を有している(図5参照)。この場合、1つのロック部材LCによって、第1接続部4と第2接続部5との間の、軸X周り方向の相対回転および軸X方向の相対移動の両方を抑制することができる。したがって、軸X周り方向の相対回転および軸X方向の相対移動を別々の部材で抑制する必要がなく、コントロールケーブル装置1の部品点数を減らすことができ、コントロールケーブル装置1をコンパクトにすることができる。
本実施形態では、上述したように、第1接続部4が第1筒部42を有し、第2接続部5が第2筒部52を有しており、第1筒部42および第2筒部52のうちの一方の筒部が他方に筒部に入れ子式に挿入されている。そして、ロック部材LCは、図6に示されるように、第1接続部4および第2接続部5に取り付けられたときに、径方向内側に配置された一方の筒部(本実施形態では、第2筒部52)と、径方向外側に配置された他方の筒部(本実施形態では、第1筒部42)とに係合可能である。この場合、図8および図9に示されるように、一方の筒部が他方の筒部に入れ子式に挿入されたオーバーラップした部分において、ロック部材LCを取り付ける操作によって、ロック部材LCの係合部Eが一度に第1接続部4および第2接続部5と係合する。したがって、簡単な操作で、第1接続部4と第2接続部5との間の相対回転を抑制することができる。
本実施形態では、第1筒部42および第2筒部52のうち、径方向外側に配置された他方の筒部(本実施形態では第1筒部42)は、図7および図10に示されるように、第1筒部42および第2筒部52が径方向にオーバーラップした領域において、他方の筒部の外側から内側に貫通する一対の開口OP1、OP2を有している。これにより、ロック部材LCの係合部Eは、この一対の開口OP1、OP2を通って、径方向内側に配置された一方の筒部(本実施形態では第2筒部52)に係合することができる。
また、本実施形態では、径方向外側に配置された他方の筒部(第1筒部42)は、図6、図10および図11に示されるように、一対の開口OP1、OP2のそれぞれの開口縁に、第1係合部E1と係合する第1当接部A1と、第2係合部E2と係合する第2当接部A2とを有している。また、径方向内側に配置された一方の筒部(第2筒部52)は、第1係合部E1と係合する第3当接部A3と、第2係合部E2と係合する第4当接部A4とを有している。
なお、径方向内側に配置された一方の筒部(第2筒部52)は、図7および図10に示されるように、径方向外側に配置された他方の筒部(第1筒部42)に形成された一対の開口OP1、OP2に対応する位置に、一対の切欠部N1、N2を有している。この切欠部N1、N2にロック部材LCの係合部Eが係合する。切欠部N1、N2は、本実施形態では、筒部の外側から内側に貫通した開口であるが、切欠部N1、N2は貫通した開口ではなく、筒部の外面に形成された凹部などであってもよい。
本実施形態では、開口OP1、OP2および切欠部N1、N2のうちの一方(本実施形態では、切欠部N1、N2)は、図7および図8に示されるように、ロック部材LCの第1方向D1の幅に対応した第1長さL4で、第1方向D1に延びている。そして、ロック部材LCは、切欠部N1、N2に嵌合して、ロック部材LCの係合部Eが切欠部N1、N2と軸X周り方向で係合するとともに、ロック部材LCは、第1方向D1(軸X方向)の両側で切欠部N1、N2と係合する。これにより、ロック部材LCは、径方向内側に配置された筒部(第2筒部52)に嵌合して、ロック部材LCと筒部(第2筒部52)との間の軸X方向での相対移動を規制する。
また、開口OP1、OP2および切欠部N1、N2のうちの他方(本実施形態では、開口OP1、OP2)は、図7および図8に示されるように、第1長さL4よりも長い第2長さL5で、第1方向D1に延びている。ロック部材LCは、ロック部材LCの係合部Eが開口OP1、OP2の開口縁(第1方向D1に沿って延びる開口縁)と軸X周り方向で係合する一方で、第1方向D1(軸X方向)では、ロック部材LCの規制部8が設けられた端面側が開口OP1、OP2の開口縁(第2方向D2に沿って延びる開口縁)と係合するが、ロック部材LCの他方の端面側は他の部材と係合していない。したがって、ロック部材LCが第1筒部42および第2筒部52に取り付けられた状態で、第1筒部42は第2筒部52に対して第1方向D1のうちの一方の方向へ相対移動することができる。
なお、本実施形態では、開口OP1、OP2および切欠部N1、N2は、筒部の側面において、第2方向D2に見たときに略矩形状に形成されているが、開口OP1、OP2および切欠部N1、N2の形状は特に限定されない。
本実施形態では、ロック部材LCが第1接続部4および第2接続部5に取り付けられる前の状態(図8および図10参照)において、第1筒部42と第2筒部52とが軸X周り方向に相対回転可能となるように構成されている。この場合、コントロールケーブル装置1を組み立てる際に、第1筒部42と第2筒部52とを軸X方向に組み付けるときに、第1筒部42と第2筒部52とを、軸X周り方向で正確に位置合わせしてから挿入することが不要となり、組み付けが容易となる。特に、本実施形態では、径方向内側に配置される筒部(本実施形態では、第2筒部52)の外周が軸X方向に垂直な断面が略円形であり、径方向外側に配置される筒部(本実施形態では、第1筒部42)の内面が、軸X方向に垂直な断面が略円形となっている。この場合、第1筒部42および第2筒部52の径方向に対向する面に凹凸などがなく、第1筒部42と第2筒部52との間の軸X周り方向での位置関係がどのような場合であっても、第1筒部42と第2筒部52とを容易に組み付けることができる。
ロック部材LCの形状は、第1接続部4および第2接続部5に取り付け可能であり、ロック部材LCの係合部Eによって、第1接続部4と第2接続部5との間の相対回転を抑制することができれば、特に限定されない。本実施形態では、図6、図10および図11に示されるように、ロック部材LCは、第1方向D1に略垂直な第2方向D2に延びる第1アームLC1と、第1アームLC1に並行して第2方向D2に延びる第2アームLC2と、第1アームLC1と第2アームLC2とを繋ぐ連結部LC3とを有している。より具体的には、ロック部材LCは、軸X方向に垂直な断面が略C字状となる、軸X方向に薄い板状の部材によって構成されている。本実施形態では、図6および図11に示されるように、ロック部材LCは、第1アームLC1および第2アームLC2によって、第1筒部42および第2筒部52を、第1方向D1と第2方向D2とに略垂直な第3方向D3で挟み込んでいる。
第1アームLC1は、第1係合部E1を有している。本実施形態では、第1アームLC1は、第3方向D3で第2アームLC2に対向する面に第1係合部E1を有している。第1アームLC1の第2アームLC2に対向する面は、連結部LC3側となる第1アームLC1の基端側から先端側に向かって平坦面として形成されている。本実施形態では、第1筒部42の第1当接部A1および第2筒部52の第3当接部A3は、第1係合部E1と面接触するように、ロック部材LCが取り付けられたときに、同一面上に並ぶように形成されている(図10参照)。なお、本実施形態では、第1当接部A1は、第1アームLC1の基端側と接触する基端側当接部と、第1アームLC1の先端側と接触する先端側当接部とを有し、第3当接部A3は、第1アームLC1の基端側と接触する基端側当接部と、第1アームLC1の先端側と接触する先端側当接部とを有している。
第1アームLC1の第3方向D3で、第1係合部E1が設けられた面と反対側には、図6、図10および図11に示されるように、第3方向D3に凸となる湾曲した凸部を有している。この凸部は、ロック部材LCが第1接続部4および第2接続部5に取り付けられたときに、第1筒部42の外周に沿うように湾曲している。
第2アームLC2は、第2係合部E2を有している。本実施形態では、第2アームLC2は、第3方向D3で第1アームLC1に対向する面に第2係合部E2を有している。第2アームLC2の第1アームLC1に対向する面は、連結部LC3側となる第2アームLC2の基端側から先端側に向かって平坦面として形成されている。本実施形態では、第1筒部42の第2当接部A2および第2筒部52の第4当接部A4は、第2係合部E2と面接触するように、ロック部材LCが取り付けられたときに、同一面上に並ぶように形成されている(図10および図11参照)。なお、本実施形態では、第2当接部A2は、第2アームLC2の基端側と接触する基端側当接部と、第2アームLC2の先端側と接触する先端側当接部とを有し、第4当接部A4は、第2アームLC2の基端側と接触する基端側当接部と、第2アームLC2の先端側と接触する先端側当接部とを有している。第2アームLC2も第1アームLC1と同様に、第1筒部42の外周に沿うように湾曲した凸部を有している。
第1アームLC1および第2アームLC2のそれぞれは、図6、図10および図11に示されるように、第1アームLC1および第2アームLC2の先端側から互いに近付くように、第3方向D3に延びる係合爪CLを有している。一対の係合爪CLの間の第3方向D3での距離は、第1当接部A1と第2当接部A2との間の第3方向D3の距離および第3当接部A3と第4当接部A4との間の第3方向D3の距離よりも短い。係合爪CLは、第1筒部42および第2筒部52のうち、径方向外側に位置する他方の筒部(本実施形態では、第1筒部42)の外面と第2方向D2で係合して、ロック部材LCが第1筒部42および第2筒部52から離脱することを抑制している。
また、本実施形態では、第1アームLC1および第2アームLC2は、ロック部材LCを第1筒部42および第2筒部52に対して第2方向D2に取り付ける際に、第3方向D3で互いに離れる方向および近付く方向に撓むことが可能な弾性を有している。この場合、例えば、第1アームLC1および第2アームLC2が係合爪CLを有している場合など、ロック部材LCを押し込んだときに第1アームLC1および第2アームLC2が互いに離れる方向に撓んで、容易にロック部材LCを第1筒部42および第2筒部52に対して取り付けることができる。また、図12に示されているように、例えば、径方向内側の第2筒部52と径方向外側の第1筒部42とが、ロック部材LCを取り付ける際に軸X周り方向での位置がずれて組みつけられた場合であっても、第1アームLC1および第2アームLC2が互いに離れる方向に撓んで、ロック部材LCの取り付けが可能となる。さらに、例えば、図12に示されるように、軸X周り方向での位置がずれている径方向内側の第2筒部52は、互いに離れる方向に撓んだ第1アームLC1および第2アームLC2の復元力によって、第1アームLC1および第2アームLC2から、矢印AR1、AR2によって示される力を受ける。これにより、第1筒部42に対して軸X周り方向で位置がずれている第2筒部52は、第1アームLC1および第2アームLC2によって、図11に示されるような正常な位置へと回転して位置が補正され、正常な係合状態となる。なお、この筒部の位置の修正は、ロック部材LCを取り付ける時点で第1アームLC1および第2アームLC2の弾性によって半自動的になされてもよいし、ロック部材LCを取り付けた後に作業者が筒部に軽く振動を加えたり、わずかに筒部を回転させたりすること等によってなされてもよい。
つぎに、図7~図11を用いて、コントロールケーブル装置1を組み立てる手順の一例を説明する。なお、以下の手順はあくまで一例であり、本発明は以下の説明によって限定されるものではなく、手順は必ずしも以下の通りである必要はなく、順序を変更してもよい。
例えば、コントロールケーブル装置1を車両において組み付ける前には、図7に示されるように、操作部P1側に設けられた第1コントロールケーブル21と、被操作部P2側に設けられた第2コントロールケーブル22とが分離された状態で配置されている。
図7に示される状態から、コイルバネ7が第2接続部5の第2筒部52の外側に取り付けられるとともに、第1インナーケーブル211の他端211bと、第2インナーケーブル221の他端221bとがジョイント部材6に係合される。ジョイント部材6は、第2筒部52の内側に収容される。
つぎに、図8に示されるように、第1接続部4と第2接続部5とを軸X方向に近付くように移動させて、第2筒部52が第1筒部42に挿入される。その状態でさらに第2筒部52を第1筒部42に対して軸X方向に移動させて、コイルバネ7を所定量収縮させる。第1筒部42および第2筒部52は共に略円筒状であるので、この第2筒部52の第1筒部42への挿入の際に、第2筒部52の第1筒部42に対する軸X周り方向の位置によらずに、第1筒部42と第2筒部52とを迅速に組み付けることができる。
第2筒部52が第1筒部42に挿入され、図8に示されるように、第1筒部42の開口OP1、OP2を経由して第2筒部52の切欠部N1、N2へと、ロック部材LCを取り付け可能な状態となると、ロック部材LCを第2方向D2に移動させ、ロック部材LCを第1接続部4および第2接続部5に取り付ける。
図10に示される状態から図11に示される状態に向かって、ロック部材LCを第2方向D2に移動させると、ロック部材LCの第1アームLC1および第2アームLC2が互いに離れる方向に弾性変形しながら、第2方向D2に所定量移動する。これにより、図11に示されるように、第1アームLC1および第2アームLC2によって、第1筒部42および第2筒部52が第3方向D3に挟み込まれる。このとき、第1アームLC1および第2アームLC2は、切欠部N1、N2に嵌合し、ロック部材LCは、第2筒部52に対する軸X方向の移動が規制される。
図8において二点鎖線で示されるように、ロック部材LCが取り付けられた状態で、軸X方向に第1筒部42および第2筒部52を互いに押し込む方向の力を解除すると、コイルバネ7の付勢力によって、第1接続部4は軸X方向で第2接続部5から離れる方向(図8において左方向)に力を受ける。これにより、図8に示される状態から、第1接続部4は、ロック部材LCとフランジ部F1(または第1筒部42の開口OP1、OP2の第2方向D2に延びる開口縁)とが当接するまで、軸X方向で第2接続部5から離れる方向に移動して、図9に示される状態で停止する。この状態で、第1接続部4および第2接続部5が一体となった状態で、カバー部材9へと第1接続部4および第2接続部5を収容する(図5および図6参照)。カバー部材9へ第1接続部4および第2接続部5を収容する際には、コイルバネ7を縮めたりする必要がなく、互いに組み付けられた状態の第1接続部4および第2接続部5をカバー部材9に向かって軸X方向に垂直な方向に移動させるだけよく、カバー部材9への取り付けが非常に容易である。
その後、第1接続部4および第2接続部5が収容されたカバー部材9を取付対象となる車両の所定の位置へと移動させて固定することによって、コントロールケーブル装置1の車両への取り付けが完了する。
つぎに、車両のシートの操作機構を例にあげて、本実施形態のコントロールケーブル装置をより詳細に説明する。なお、以下の説明によって、本発明が限定されるものではない。
コントロールケーブル装置1は、取付対象となる車体に対して所定の配索経路で取り付けられる。第1アウターケーシング212は、シートを操作する操作部P1から第1接続部4まで、図2に概略的に示されるように湾曲して配索されている。図2に示される状態は、操作部P1が操作される前の状態である。第1接続部4はコイルバネ7によって操作部P1側(図2において左側)に付勢され、第1接続部4の当接部44が規制部8に当接して、第1接続部4は軸X方向の所定の位置に保持されている。
図2に示される状態から操作部P1が操作されると、図3に示されるように、第1インナーケーブル211が引き操作され、第1インナーケーブル211によってジョイント部材6が第2筒部52の内側の移動空間において、操作部P1側に向かって軸X方向に移動する。このとき、コイルバネ7の所定の付勢力によって、コイルバネ7は収縮せず、第1接続部4は初期位置から実質的に移動せず、第1接続部4と第2接続部5との間の軸X方向の位置は変わることなく、ジョイント部材6が軸X方向に移動する。
ジョイント部材6が図2の位置から図3の位置まで移動すると、ジョイント部材6によって、第2インナーケーブル221が軸X方向に引き操作される。第2インナーケーブル221が引き操作されると、第2インナーケーブル221の一端221aによって、被操作部P2が操作される。これにより、車両のシートの図示しないロック機構のロックが解除され、シートの傾倒状態を変えることができる。
本実施形態では、ジョイント部材6が図2に示される位置から図3に示される操作完了状態となるまでに、被操作部P2は、第2インナーケーブル221によって移動可能な移動量L1(図3参照)で操作され、移動量L1で操作されるとそれ以上の引き操作が規制され、ジョイント部材6は所定の位置で停止する。なお、このとき、第1インナーケーブル221は、移動量L1に対応した操作量L2(図3参照)で操作される。本実施形態では、この操作完了状態において、操作部P1はさらに操作可能に構成されており、操作部P1のさらなる操作によって、第1インナーケーブル211はさらなる引き操作が可能となっている。
具体的には、操作完了状態で、操作部P1の操作によってさらに第1インナーケーブル211が引き操作されると、図4に示されるように、ジョイント部材6の位置はほぼ変動することなく、操作部側取付部B1から第1接続部4まで、湾曲して配索された第1アウターケーシング212は、直線状になろうとする第1インナーケーブル211によって、配索経路が最短距離に近付くように直線状になろうとする。第1アウターケーシング212が直線状になろうとすると、第1アウターケーシング212の他端212bは初期位置に対して第2接続部5側(図4における右側)へと移動しようとする。これにより、第1接続部4は、第1アウターケーシング212から力を受けて、図4に示されるように、コイルバネ7を軸X方向に収縮させながら、第2接続部5に対して軸X方向に移動する。
これにより、ジョイント部材6の位置がそのままで、コイルバネ7を縮ませて第1接続部4が移動するとともに、操作部P1がさらなる予備操作量L3(図4参照)で操作される。この操作部P1の予備操作量L3のときの操作感によって、ユーザは操作の完了を容易に把握することができる。操作部P1の操作の過程において、最初は、第1インナーケーブル211によって、ジョイント部材6および第2インナーケーブル221を操作するときの抵抗を操作感として感じた後、操作完了状態において、一旦ジョイント部材6が停止したときの別の抵抗感を感じ、次に、操作完了後に、コイルバネ7を収縮させる際の別の抵抗感を感じる。したがって、ユーザは操作感によって操作の完了を容易に把握できる。また、コイルバネ7を収縮させる際には、操作部P1の予備操作量L3に応じて徐々に抵抗感が高まるため、より操作の完了の把握が容易となる。