JP7251369B2 - 選択性透過膜の製造方法および水処理方法 - Google Patents
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Description
本発明による作用機構は以下の通りである。
本発明で用いる透水性基材は、MF膜、UF膜、RO膜、NF膜などのいずれでもよいが、好ましくは透過流束が35LMH/bar以上のポリアミド膜である。
上記の透水性基材の表面に脂質二重層を形成する方法としては、ラングミュア-ブロジェット法、リポソーム融合法が挙げられる。リポソーム融合法では、上記のようにして得られた透水性基材を、透水性基材表面と反対の電荷を有する荷電性の脂質を含むリポソームの懸濁液に浸漬することにより、静電的相互作用により透水性基材上に脂質二重層が形成される。
チャネル物質としては、アクアポリン、グラミシジン、アムホテリシンB、あるいはそれらの誘導体、好ましくはグラミシジン、アムホテリシンB、あるいはこれらの誘導体などを用いることができる。チャネル物質は1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
透水性基材の素材として、ポリアミド膜(ES20、日東電工社製)を用いた。
カチオン性脂質として1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP、日油社製)を用いた。
チャネル物質としては、アムホテリシンB(AmB、ケイマンケミカル社製)、グラミシジンA(GA、シグマアルドリッチ社製)、又はアクアポリンZ(AqpZ、CUSABIO TECHNOLOGY LLC製)を用いた。
DOTAPとDLPCを65:5のモル比率でクロロホルムに溶解し、この溶液にメタノールに溶解したAmBをAmB濃度が脂質に対して10mol%、エルゴステロール(Erg、ケイマンケミカル)を20mol%になるように混合し、エバポレーターにより有機溶媒を蒸発させ、容器内に残存した乾燥脂質薄膜に純水を添加し、水和させることで、リポソーム懸濁液を調製した。得られたリポソーム懸濁液は、液体窒素と55℃の湯浴に交互に浸漬操作を10回繰り返す凍結融解法により、粒成長させた。リポソーム懸濁液は孔径0.1μmのポリカーボネートトラックエッチング膜(Nucrepore、GEヘルスケア)を用い、押し出し整粒し、脂質濃度が約0.01~0.5mmol/Lになるよう純水で希釈し、AmBリポソーム懸濁液を調製した。
DOTAPとDOPCを95:5のモル比率でクロロホルムに溶解し、エバポレーターにより有機溶媒を蒸発させ、容器内に残存した乾燥脂質薄膜に純水を添加し、水和させることで、リポソーム懸濁液を調製した。得られたリポソーム懸濁液を用いて、AmBリポソーム懸濁液と同様の方法によりリポソーム懸濁液を調製した。得られたリポソーム懸濁液にトリフルオロエタノールに溶解したGAをGA濃度が脂質濃度に対して5mol%になるように混合し、65℃で10時間以上加熱した後、脂質濃度が約0.01~0.5mmol/Lになるよう純水で希釈し、GAリポソーム懸濁液を調製した。
GAリポソーム懸濁液と同様の方法でリポソーム懸濁液を調製し、AqpZをAqpZ濃度が脂質に対して2mol%になるように混合し、脂質濃度が約0.01~0.5mmol/Lになるよう純水で希釈し、AqpZリポソーム懸濁液を調製した。
上記のポリアミド膜をリポソーム懸濁液に室温で表1に示す日数浸漬し、純水で洗浄することにより脂質二重層層を形成した。
上記の選択性透過膜に供給圧3bar(LV=30~70LMH)にて純水を表1に示す日数通水した。
図1に示す試験装置により、膜性能を評価した。
図2に10g/L次亜塩素酸ナトリウム水溶液で改質したポリアミド膜ES20表面に形成した脂質二重層(DOTAP/DOPC=5/95mol%(GA5mol%)膜)の断面TEM像を示す。
表面積比={(πl2/4)+πlh}/{πl2/4}=(l+4h)/l
TEM画像解析から得られた断面積比3.7145から、
3.7145=(2h+l)/l
2h=2.7145l
これを表面積比の式に代入すると
表面積比=(l+2・2.7145l)/l=6.429
従って、ひだ構造が円筒型であると仮定した場合の表面積比は6.429倍となる。
作成したリポソームや透水試験後の膜に対して、Bartlett法によるリン定量を行った。(なお、リン脂質二重層の厚さとしての層数は、バーレット法でリンを定量することにより確認できる(Bartlett, G. R., J. Biol. Chem., vol. 234, no. 3, 466-468, 1959)。)定量したリンの量から脂質二重層の層数を求めるため、ポリアミド膜のヒダ構造による表面積比を6.429倍とし、各脂質及びタンパク質(AmB、Erg、GA、AqpZ、、DLPC、DOPC、DOTAP)1分子の断面積[Å2]を以下のように仮定して計算を行った。
Ergの断面積: 40[Å2]
GAの断面積: 189[Å2]
AqpZの断面積:1600[Å2]
DLPCの断面積: 60[Å2]
DOPCの断面積: 64[Å2]
DOTAPの断面積: 64[Å2]
AmBリポソーム懸濁液の脂質濃度を0.4mmol/L、リポソーム懸濁液への浸漬時間を1日として製膜を行い、さらに純水を供給圧3barにて1日間通水し、緻密化及び均一化処理した。得られた選択性透過膜の膜性能と脂質二重層層数を評価した。
AmBリポソーム懸濁液の脂質濃度を0.2mmol/L、リポソーム懸濁液への浸漬時間を1日として製膜を行い、さらに純水を供給圧3barにて1日間通水し、緻密化及び均一化処理した。得られた選択性透過膜の膜性能と脂質二重層層数を評価した。
AmBリポソーム懸濁液の脂質濃度を0.1mmol/L、リポソーム懸濁液への浸漬時間を1日として製膜を行い、さらに純水を供給圧3barにて1日間通水し、緻密化及び均一化処理した。得られた選択性透過膜の膜性能と脂質二重層層数を評価した。
AmBリポソーム懸濁液の脂質濃度を0.08mmol/L、リポソーム懸濁液への浸漬時間を5日としてとして製膜を行い、さらに純水を供給圧3barにて1日間通水し、緻密化及び均一化処理した。得られた選択性透過膜の膜性能と脂質二重層層数を評価した。
AmBリポソーム懸濁液の脂質濃度を0.06mmol/L、リポソーム懸濁液への浸漬時間を5日として製膜を行い、さらに純水を供給圧3barにて1日間通水し、緻密化及び均一化処理した。得られた選択性透過膜の膜性能と脂質二重層層数を評価した。
AmBリポソーム懸濁液の脂質濃度を0.04mmol/L、リポソーム懸濁液への浸漬時間を5日として製膜を行い、さらに純水を供給圧3barにて4日間通水し、緻密化及び均一化処理した。得られた選択性透過膜の膜性能と脂質二重層層数を評価した。
AmBリポソーム懸濁液の脂質濃度を0.02mmol/L、リポソーム懸濁液への浸漬時間を5日として製膜を行い、さらに純水を供給圧3barにて4日間通水し、緻密化及び均一化処理した。得られた選択性透過膜の膜性能と脂質二重層層数を評価した。
GAリポソーム懸濁液の脂質濃度を0.1mmol/L、リポソーム懸濁液への浸漬時間を3日として製膜を行い、さらに純水を供給圧3barにて2日間通水し、緻密化及び均一化処理した。得られた選択性透過膜の膜性能と脂質二重層層数を評価した。
GAリポソーム懸濁液の脂質濃度を0.08mmol/L、リポソーム懸濁液への浸漬時間を3日として製膜を行い、さらに純水を供給圧3barにて2日間通水し、緻密化及び均一化処理した。得られた選択性透過膜の膜性能と脂質二重層層数を評価した。
GAリポソーム懸濁液の脂質濃度を0.06mmol/L、リポソーム懸濁液への浸漬時間を3日として製膜を行い、さらに純水を供給圧3barにて2日間通水し、緻密化及び均一化処理した。得られた選択性透過膜の膜性能と脂質二重層層数を評価した。
GAリポソーム懸濁液の脂質濃度を0.04mmol/L、リポソーム懸濁液への浸漬時間を3日として製膜を行い、さらに純水を供給圧3barにて2日間通水し、緻密化及び均一化処理した。得られた選択性透過膜の膜性能と脂質二重層層数を評価した。
AqpZリポソーム懸濁液の脂質濃度を0.04mmol/L、リポソーム懸濁液への浸漬時間を3日として製膜を行い、さらに純水を供給圧3barにて4日間通水し、緻密化及び均一化処理した。得られた選択性透過膜の膜性能と脂質二重層層数を評価した。
AqpZリポソーム懸濁液の脂質濃度を0.02mmol/L、リポソーム懸濁液への浸漬時間を3日として製膜を行い、さらに純水を供給圧3barにて4日間通水し、緻密化及び均一化処理した。得られた選択性透過膜の膜性能と脂質二重層層数を評価した。
AqpZリポソーム懸濁液の脂質濃度を0.01mmol/L、リポソーム懸濁液への浸漬時間を3日として製膜を行い、さらに純水を供給圧3barにて4日間通水し、緻密化及び均一化処理した。得られた選択性透過膜の膜性能と脂質二重層層数を評価した。
比較例1-2と実施例1-1の対比から示されるように、脂質二重層の層数が4.5以下になると透過流束が大きく向上する。すなわち、比較例1-1,1-2では透過流束は7.2LMH/bar、6.0LMH/barであるのに対して、実施例ではいずれも9LMH/bar以上の透過流束が得られる。また、NaClの阻止率は、実施例1-3では82%以上であるが、その他の実施例はすべて89%以上であり、条件によっては90%超の阻止率になっている。
3 密閉容器
4 平膜セル
6 スターラー
7 圧力計
Claims (3)
- 透水性基材と、該透水性基材上に形成された、チャネル構成分子によるチャネルを導入した脂質二重層とを有する選択性透過膜を製造する方法であって、
リポソーム懸濁液を該透水性基材と接触させることによって脂質二重層を形成する工程を有する選択性透過膜の製造方法において、
該リポソーム懸濁液の脂質濃度が0.01~0.1mmol/Lであり、
前記脂質が、カチオン性脂質と、10~99mol%の範囲で中性脂質を含み、該カチオン性脂質が1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパンであり、
前記脂質二重層を形成する工程において、前記リポソーム懸濁液を前記透水性基材と0.5~10日間接触させ、
前記透水性基材上に脂質二重層を形成した後、該脂質二重層及び透水性基材を透過するように純水を0.5~10日間通水して脂質二重層を緻密化及び均一化することを特徴とする選択性透過膜の製造方法。 - チャネル構成分子がグラミシジンA、アムホテリシンB、アクアポリン、又はこれらの誘導体である請求項1に記載の選択性透過膜の製造方法。
- 請求項1又は2に記載の製造方法により製造された選択性透過膜を用いて、造水、又はイオンの分離を行うことを特徴とする水処理方法。
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