JP7251370B2 - 選択性透過膜、選択性透過膜の製造方法および水処理方法 - Google Patents

選択性透過膜、選択性透過膜の製造方法および水処理方法 Download PDF

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本発明は、水処理分野で使用される選択性透過膜に係り、特に脂質二重層よりなる被覆層を有する選択性透過膜に関する。また、本発明は、この選択性透過膜の製造方法と、この選択性透過膜を用いた水処理方法に関する。
海水、かん水の淡水化や、工業用水および超純水の製造、排水回収などの分野で、選択性透過膜として、逆浸透(RO)膜が広く用いられている。また、近年では、正浸透(FO)膜も用いられるようになっている。これらの膜を用いた処理は、イオンや低分子有機物を高度に除去できるという利点を有するが、一方、精密濾過(MF)膜や限外濾過(UF)膜と比べ、高い運転圧力を必要とする。RO膜の透水性を高めるために、例えば、ポリアミドRO膜においては、スキン層のひだ構造を制御し、表面積を大きくするなどの工夫がなされてきた。
近年、水分子を選択的に輸送する膜タンパク質であるアクアポリンが水チャネル物質として注目され、このタンパク質を組み込んだリン脂質二重層は、従来のポリアミドRO膜よりも理論上高い透水性を有する可能性が示唆されている(非特許文献1)。
水チャネル物質を組み込んだリン脂質二重層を有する選択性透過膜の製造方法として、水チャネル物質を組み込んだ脂質二重層を多孔質支持体でサンドイッチする方法、多孔質支持体の孔内部に脂質二重層を組み込む方法、疎水性膜周囲に脂質二重層を形成する方法などがある(特許文献1)。リン脂質二重層を多孔質支持体でサンドイッチする方法では、リン脂質二重層の耐圧性は向上するが、被処理水と接触する多孔質支持体自体が汚染される、多孔質支持体の中で濃度分極が発生して阻止率が大きく低下する、多孔質支持体が抵抗となり透水性が低下するおそれなどがある、などの問題がある。デンマークのアクアポリン社がポリマーマトリクスにアクアポリンを導入したRO膜を作製しているが、既存RO膜の1.2倍程度の透水性であり、非特許文献2にも明確な記載がない。
特許文献2では、カチオン性のリン脂質を用いることでナノろ過膜へ強固に担持させることが記載されているが、ナノろ過膜自体の抵抗が高いため、本来のチャネル物質が有する透水性を発現させることが難しいという課題がある。非特許文献3には、ナノろ過膜にリン脂質を担持させてチャネル物質であるアムホテリシンBを導入した結果が報告されているが、透水量は0.3L/(m・h・bar)以下である。
なお、以下、L/(m・h・bar)をLMH/barと表記する。LMHは、L/(m・h)を表す。
特許第5616396号公報 特開2014-100645号公報
Pohl,P.et al.,Proceedings of theNational Academy of Sciences 2001,98,9624-9629. Habel,J.et al.,Proceedings of the 10th International Congress on Membranes and Membrane Processes,pp.1300,2014. 会津心之亮、会津心之亮ら、分離機能層としてリン脂質二重層を導入した逆浸透膜の開発、化学工学会第43回秋季大会,I220,2011
上記の通り、従来、選択性透過膜の透水性の向上のための検討がなされているが、未だ十分に満足し得る透水性は得られていない。
本発明は、透水性基材に脂質二重層よりなる被覆層を形成した選択性透過膜であって、透水性がより改善された選択性透過膜を提供することを目的とする。
本発明者が鋭意検討した結果、脂質二重層に導入するチャネルを構成するチャネル構成分子の少なくとも一部を疎水化することで、選択性透過膜の透水性を高めることができることを見出した。
本発明は、かかる知見に基づくものであり、以下を要旨とする。
[1] 透水性基材と、該透水性基材上に形成された、チャネル構成分子によるチャネルを導入した脂質二重層とを有する選択性透過膜であって、該チャネルは、1個あたり複数のチャネル構成分子で構成されており、該チャネルを構成する複数のチャネル構成分子の少なくとも一つのチャネル構成分子が、そのチャネル構成分子の親水基の少なくとも一部が疎水化されたチャネル構成分子(以下「疎水化チャネル構成分子」と称す。)であることを特徴とする選択性透過膜。
[2] 前記チャネル構成分子がアムホテリシンBであることを特徴とする[1]に記載の選択性透過膜。
[3] 前記チャネルを構成する全チャネル構成分子における前記疎水化チャネル構成分子の割合が5~50mol%であることを特徴とする[1]又は[2]に記載の選択性透過膜。
[4] 前記チャネル構成分子を含むリポソーム懸濁液を前記透水性基材と接触させることにより前記脂質二重層を形成する工程を有する[1]~[3]のいずれかに記載の選択性透過膜の製造方法。
[5] [1]~[3]のいずれかに記載の選択性透過膜を用いて被処理水を膜分離処理する工程を有する水処理方法。
本発明によると、高透水量で塩阻止性能を有するRO膜あるいはFO膜等の選択性透過膜が提供される。
実施例及び比較例で用いた平膜試験装置の模式的説明図である。 検証例におけるT-AmBとT-AcAmBによる水チャネルの透水性の分子動力学シミュレーションを示す図であり、(a)図はAmBErの分子動力学シミュレーションを、(b)図はAcAmBErの分子動力学シミュレーションを示す。 検証例におけるAmBErとAcAmBErの水チャネルにおける水の存在領域から求めた親水的領域と疎水的領域を示す図であり、(a)図はAmBErの親水的領域と疎水的領域を、(b)図はAcAmBErの親水的領域と疎水的領域を示す。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
本発明の選択性透過膜は、透水性基材と、該透水性基材上に形成された、チャネル構成分子によるチャネルを導入した脂質二重層とを有する選択性透過膜であって、該チャネルは、1個あたり複数のチャネル構成分子で構成されており、該チャネルを構成する複数のチャネル構成分子の少なくとも一つのチャネル構成分子が、そのチャネル構成分子の親水基の少なくとも一部が疎水化されたチャネル構成分子(以下「疎水化チャネル構成分子」と称す。)であることを特徴とする。
なお、本発明において、「チャネル構成分子」は、後述のチャネル物質の分子であり、「チャネル構成分子」と「チャネル物質」とは広義において同義である。
[作用機構]
本発明による作用機構は以下の通りである。
即ち、脂質二重層にチャネル(水チャネル)を組み込んで透水性基材に担持させた選択性透過膜において、チャネルを構成するチャネル構成分子の少なくとも一部を疎水化することによって、チャネル内での水の拡散性を増加させ、より透水性の高い選択性透過膜を得ることができる。
[透水性基材]
本発明で用いる透水性基材は、MF膜、UF膜、RO膜、NF膜などのいずれでもよいが、好ましくは透過流束が35LMH/bar以上のポリアミド膜である。
脂質二重層の形成のために、透水性基材として用いるポリアミド膜の表面電位をカチオン性にすることが好ましい。このための方法としては、酸クロライド化合物とアミン化合物による界面重合でポリアミド膜を形成させた後に、余剰のクロライドとトリメチルアミン、ジメチルアミン等と反応させて4級アミンや3級アミン等を生成させる方法、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミジン、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド等のカチオン性高分子を吸着させて修飾する方法などが挙げられる。また、ポリアミド膜の表面電位をアニオン性にする方法として、酸クロライド化合物とアミン化合物による界面重合でポリアミド膜を形成させた後に、余剰のアミンとエピクロロヒドリンを反応させてエポキシ基を導入し、亜硫酸ナトリウムと反応させて、スルホン基を得る方法、次亜塩素酸ナトリウムと接触させて、カルボキシル基を生成させる方法などが挙げられる。
本発明においては、このような表面電位を有するポリアミド膜であって、透過流束が35LMH/bar以上特に45LMH/bar以上のポリアミド膜を用いることが好ましい。
ただし、細孔が大きくなると耐圧性が低くなることから、ポリアミド膜の透過流束は1000LMH/bar以下であることが好ましい。
このような高透過流束のポリアミド膜は、例えば、ポリアミド膜を塩素処理して透過流束を調整することで得ることができる。
塩素処理を施していない通常のポリアミド膜の透過流束は、5LMH/bar程度であるが、ポリアミド膜を塩素処理することにより、透過流束35LMH/bar以上のポリアミド膜とすることができる。
塩素処理の方法としては、ポリアミド膜を0.5~60g/L程度の濃度(有効塩素濃度0.1~16g/L)の次亜塩素酸ナトリウム等の次亜塩素酸塩及び/又は次亜塩素酸の水溶液に浸漬する方法が挙げられる。この浸漬時間については、特に制限はないが、塩素処理効果と生産性の面から1~24時間程度とすることが好ましい。
この塩素処理に用いる次亜塩素酸塩及び/又は次亜塩素酸の水溶液の亜塩素酸塩及び/又は次亜塩素酸塩濃度や浸漬時間を調整することで、塩素処理後のポリアミド膜の透過流束を調整することができる。即ち、亜塩素酸塩及び/又は次亜塩素酸塩濃度が高い程、また、浸漬時間が長い程、塩素処理後のポリアミド膜の透過流束を大きくすることができる傾向にある。
ポリアミド膜を上記のように塩素処理することで、透過流束を向上させることができる。また、塩素処理によれば、カルボキシル基の生成によるアニオン性の表面電位の付与効果をも得ることができる。
なお、ポリアミド膜の塩素処理後は、分解生成物除去と加水分解のために0.001~1mol/L程度の濃度の水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液中に浸漬する洗浄・加水分解処理を行うことが好ましい。
[脂質二重層]
上記の透水性基材の表面に脂質二重層を形成する方法としては、ラングミュア-ブロジェット法、リポソーム融合法が挙げられる。リポソーム融合法では、上記のようにして得られた透水性基材を、透水性基材表面と反対の電荷を有する荷電性の脂質を含むリポソームの懸濁液に浸漬することにより、静電的相互作用により透水性基材上に脂質二重層が形成される。
リポソームの調製方法としては静置水和法や超音波法、エクストルージョン法など、一般的な手法を用いることができるが、均一に製膜する観点から、単一二重層のリポソームを用いることが好ましく、単一二重層のリポソームの調製が容易なエクストルージョン法を用いることが好ましい。
リポソームを構成する脂質としては、特に限定されるものではないが、上記のようにして得られたポリアミド膜の表面電位がカチオン性の場合はアニオン性脂質を、アニオン性の場合にはカチオン性脂質を含むことが好ましい。リポソームの安定性、及び製膜性の観点から、10~99mol%の範囲で中性脂質を含むことが好ましい。
アニオン性脂質としては、特に限定されるものではないが、1-パルミトイル-2-オレオイルホスファチジルグリセロール、1,2-ジオレオイルホスファチジルグリセロール、1,2-ジパルミトイルホスファチジルグリセロール、1-パルミトイル-2-オレオイルホスファチジン酸、1,2-ジオレオイルホスファチジン酸、1,2-ジパルミトイルホスファチジン酸、1-パルミトイル-2-オレオイルホスファチジルセリン、1,2-ジオレオイルホスファチジルセリン、1,2-ジパルミトイルホスファチジルセリン、1-パルミトイル-2-オレオイルホスファチジルイノシトール、1,2-ジオレオイルホスファチジルイノシトール、1,2-ジパルミトイルホスファチジルイノシトール、1’,3’-ビス[1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスフォ]-sn-グリセロール、1’,3’-ビス[1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスフォ]-sn-グリセロールなどを用いることができる。
カチオン性脂質としては、特に限定されるものではないが、1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン、1,2-パルミトイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン、3β-[N-(N’,N’-ジメチルアミノエタン)-カルバモイル]コレステロール塩酸塩などを用いることができる。
中性脂質としては、特に限定されるものではないが、1-パルミトイル-2-オレオイルホスファチジルコリン、1,2-ジオレオイルホスファチジルコリン、1,2-ジパルミトイルホスファチジルコリン、1,2-ジラウロイル-sn-グリセロ-3-ホスフォリルコリン、1-パルミトイル-2-オレオイルホスファチジルエタノールアミン、1,2-ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン、1,2-ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン、コレステロール、エルゴステロールなどを用いることができる。
これらアニオン性脂質、カチオン性脂質、中性脂質は、それぞれ1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
これらの脂質のうち、荷電性の脂質としては、1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン、1-パルミトイル-2-オレオイルホスファチジルグリセロール、および1-パルミトイル-2-オレオイルホスファチジン酸を用いることが、活性の高いチャネルの形成の観点から好ましい。
[チャネル物質]
チャネル物質としては、アクアポリン、グラミシジン、アムホテリシンB、あるいはそれらの誘導体、好ましくはグラミシジン、アムホテリシンB、あるいはこれらの誘導体、などを用いることができる。チャネル物質は1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
チャネル物質としては、疎水化の容易性の観点から特にアムホテリシンBを用いることが好ましい。
本発明において、このチャネル物質の少なくとも一部として、当該チャネル物質が有する親水基の少なくとも一部を疎水基で置換して疎水化した疎水化チャネル物質を用いる。
チャネル物質が有する親水基としては、水酸基(OH基)、カルボキシル基(COOH基)、アミノ基(NH基)等が挙げられるが、何らこれらに限定されるものではない。
また、疎水基としては、アセチル基(OCOCH)、メトキシ基(OCH基)、エトキシ基(OC基)、エステル基、オキシシラン基等が挙げられるが、何らこれらに限定されるものではない。
親水基も疎水基もチャネル物質中に1種のみが含まれていてもよく、2種以上が含まれていてもよい。
チャネル物質の親水基を疎水基で置換して疎水化する方法としては特に制限はなく、従来公知の方法をいずれも採用することができる。
例えば、チャネル物質が有する親水基をアセチル基に置換する方法としては、後掲の実施例の項に示すアムホテリシンBのアセチル化のように、塩化アセチル、無水酢酸等のアセチル化剤を用いてチャネル物質と反応させる方法が挙げられる。
また、アミノ基をアミド基に置換して疎水化する方法としては、酸塩化物と反応させる方法が挙げられる。
また、カルボキシル基をエステル基に置換して疎水化する方法としては、酸塩化物に置換した後にアルコールと反応させる方法が挙げられる。
また、水酸基をオキシシラン基に置換して疎水化する方法としては、シランカップリング剤と反応させる方法が挙げられる。
チャネル物質の疎水化の程度としては特に制限はないが、チャネル物質が有する親水基が疎水基に置換された割合(以下「疎水化率」と称す。)で5~100%、特に10~90%程度であることが好ましい。この割合が上記下限以上であれば、チャネル物質を疎水化することによる本発明の透水性向上効果を有効に得ることができ、上記上限以下であればチャネルを形成する機能を損失しない。
上記疎水化率は、上記疎水化方法において、反応液の濃度を制御することにより、調整することができる。また、親水基が疎水基に置換された割合は、未反応の物質の計測、IR分析、NMR分析等により検出することができる。
本発明においては、チャネル物質としてこのようにして疎水化されたチャネル物質疎水化チャネル物質のみを用いてもよく、疎水化されていないチャネル物質(以下、「親水性チャネル物質」と称す。)と疎水化チャネル物質とを混合して用いてもよい。チャネルの水への親和性と水の拡散性の両方を向上させる観点から、疎水化チャネル物質と親水性チャネル物質とを混合して用いることが好ましい。その混合割合は、用いる疎水化チャネル物質の疎水化率によっても異なるが、疎水化チャネル物質:親水性チャネル物質のモル比で1:19~1:1、特に1:9~1:2の範囲、即ち、全チャネル物質(親水性チャネル物質と疎水化チャネル物質との合計)における疎水化チャネルの割合が5~50mol%、特に10~33mol%となるように混合して用いることが好ましい。この範囲よりも疎水化チャネル物質が少なく親水性チャネル物質が多いと、本発明による透水性向上効果を十分に得ることができない場合があり、この範囲よりも疎水化チャネル物質が多く親水性チャネル物質が少ないとチャネル内に水が入らないという問題が生じるおそれがある。
上記親水性チャネル物質と疎水化チャネル物質の混合割合は、後述の脂質二重層形成に用いるチャネル物質含有リポソーム懸濁液に添加する親水性チャネル物質と疎水化チャネル物質の添加割合に該当するが、通常、この割合が、形成された脂質二重層中に含有される親水性チャネル物質と疎水化チャネル物質の割合に該当するものとなる。
[チャネル物質の導入方法]
上記親水性チャネル物質と疎水化チャネル物質のリポソームへの導入方法としては、リポソーム調製段階にあらかじめ混合する方法や、脂質二重層形成後に添加する方法などを用いることができる。
リポソーム融合法によって脂質二重層を形成するに際しては、まず脂質を好ましくはチャネル物質(親水性チャネル物質と疎水化チャネル物質、以下同様)と共に溶媒に溶解させる。溶媒としては、クロロホルム、クロロホルム/メタノール混合液などを用いることができる。
脂質とチャネル物質との混合割合は、2者の合計に占めるチャネル物質の割合が1~20mol%特に2~10mol%となる程度が好適である。
次に、脂質とチャネル物質との0.25~10mM特に0.5~5mMの溶液を調製し、減圧乾燥させることにより、乾燥脂質膜を得、これに純水を添加し、脂質の相転移温度よりも高い温度とすることにより、球殻形状を有したリポソームの分散液とする。得られたリポソーム懸濁液は、液体窒素と約55℃程度の湯浴に交互に浸漬操作を繰り返す凍結融解法により粒成長させることが好ましい。
本発明で用いるリポソーム懸濁液のリポソームの平均粒径は、好ましくは0.05~5μm、特に好ましくは0.05~0.4μmである。
本発明では、このリポソーム懸濁液の脂質の濃度を0.01~0.1mmol/Lとする。
このリポソーム懸濁液と透水性基材とを接触させ、このリポソーム懸濁液に接触させた状態に好ましくは0.5~10日、特に1~5日程度保つことにより、透水性基材の表面にリポソームを吸着させ、脂質二重層を形成する。その後、透水性基材を溶液から引き上げ、必要に応じ余分な脂質を酸又はアルカリで除去し、次いで超純水又は純水で水洗することにより、透水性基材上に脂質二重層が形成された選択性透過膜が得られる。
この水洗工程は、次に説明する脂質二重層の緻密化及び均一化処理と兼用してもよい。
本発明では、このように透水性基材上に脂質二重層を形成した後、脂質二重層及び透水性基材を透過するように水を通水して脂質二重層を緻密化及び均一化するのが好ましい。水としては純水(超純水を包含する。)が好適である。通水時間は0.5~10日特に1~5日程度が好ましい。通水LVは15~100LMH程度が好適である。
前記チャネル物質含有リポソーム懸濁液と透水性基材との接触時間と、前記脂質二重層及び透水性基材を透過するように水を通水する時間との合計は、1~15日特に1~10日とりわけ2~8日程度とすることが好ましい。
脂質二重層の厚さは0.9~4.5層特に1~4.5層とりわけ1~4層程度であることが好ましい。この脂質二重層の表面に、ポリアクリル酸、ポリスチレンスルホン酸、タンニン酸、ポリアミノ酸、ポリエチレンイミン、キトサンなどのリン脂質と反対の電荷を有する物質を吸着させてもよい。
本発明の選択性透過膜を用い、RO膜処理又はFO膜処理において透過水を得る場合、駆動圧力0.05~3MPaの範囲で、透水量2LMH以上を得ることができる。
なお、本発明の選択性透過膜の用途としては、海水、かん水の脱塩処理、工水、下水、水道水の浄化処理の他、ファインケミカル、医薬、食品の濃縮などの用途が例示される。被処理水の温度は10~40℃特に15~35℃程度が好ましい。
以下、実施例及び比較例について説明する。
まず、選択性透過膜の材料、作製方法及び選択性透過膜の評価方法について説明する。
[透水性基材]
透水性基材の素材として、ポリアミド膜(ES20、日東電工社製)を用いた。
上記ポリアミド膜を10g/Lの有効塩素濃度の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(pH7.0)に1時間浸漬し、更に0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液に16時間浸漬し、次いで純水で洗浄した。この塩素処理ポリアミド膜の透過流束は50LMH/barであった。
[脂質]
カチオン性脂質として1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP、日油社製)を用いた。
中性脂質として1,2-ジラウロイルホスファチジルコリン(DLPC、日油社製)を用いた。
[チャネル物質]
チャネル物質としては、以下のAmB、50%AcAmB、75%AcAmBを用いた。
AmB:アムホテリシンB(AmB、ケイマンケミカル社製)
50%AcAmB:以下の方法でAmBの水酸基の50%をアセチル化した疎水化アムホテリシンB
75%AcAmB:以下の方法でAmBの水酸基の75%をアセチル化した疎水化アムホテリシンB
[アムホテリシンBのアセチル化]
ジクロロメタン5mLに、アムホテリシンB1.0g、塩化アセチル0.3~0.7g、ピリジン0.3~0.7g添加して、室温で20時間、撹拌して反応させた。20時間後、純水を添加して反応を停止させた。純水で有機相を洗浄し、減圧乾燥することにより、アセチル化して疎水化されたアムホテリシンBを得た。
アムホテリシンBの水酸基のうち、アセチル化された基の割合(疎水化率)は反応後に残存している酢酸を滴定することにより求めた。また、この疎水化率は、塩化アセチルとピリジンの濃度を変化させることにより調整した。
[チャネル物質含有リポソーム懸濁液の調製]
DOTAPとDLPCを65:5のモル比率でクロロホルムに溶解し、この溶液にメタノールに溶解したチャネル物質をチャネル物質濃度(チャネル物質を複数用いる場合はその合計濃度)が脂質に対して10mol%、エルゴステロール(Erg、ケイマンケミカル)を20mol%になるように混合し、エバポレーターにより有機溶媒を蒸発させ、容器内に残存した乾燥脂質薄膜に純水を添加し、55℃で水和させることで、リポソーム懸濁液を調製した。得られたリポソーム懸濁液は、液体窒素と55℃の湯浴に交互に浸漬操作を5回繰り返す凍結融解法により、粒成長させた。このリポソーム懸濁液を、孔径0.1μmのポリカーボネートトラックエッチング膜(Nucrepore、GEヘルスケア)を用いて押し出し整粒し、脂質濃度が約0.04又は約0.01mmol/Lになるよう純水で希釈してチャネル物質含有リポソーム懸濁液を調製した。
[脂質二重層層の形成]
上記のポリアミド膜をチャネル物質含有リポソーム懸濁液に室温で72時間浸漬し、その後純水で洗浄することにより脂質二重層層を形成した。
[膜性能評価試験]
図1に示す試験装置により、膜性能を評価した。
この試験装置において、膜供給水は、配管1よりポンプ2で、密閉容器3の平膜セル4の下側の原水室5に供給される。原水室5内はスターラー6で撹拌子を回転させることにより撹拌される。膜透過水は平膜セル4の上側の透過水室7を経て配管8より取り出される。濃縮水は配管9より取り出される。密閉容器3内の圧力は、配管9に設けた圧力計10と、濃縮水取出配管9に設けた圧力調整バルブ11により調整される。
純水を供給水として透過流束を測定した。また、500mg/LのNaCl水溶液を供給水としたときの透過水の電気伝導度と濃縮水の電気伝導度から、下記式でNaClの阻止率を求めた。
NaCl阻止率[%]=(1-透過水の電気伝導度/濃縮水の電気伝導度)×100
[実施例1,2、比較例1]
チャネル物質として表1に示すものを用い、リポソーム懸濁液調製時の脂質濃度を表1に示す濃度として上記の方法でチャネル物質含有リポソーム懸濁液を調製し、このチャネル物質含有リポソーム懸濁液を用いて上記の方法で脂質脂質二重層を形成して作製した選択性透過膜について、上記の膜性能の評価を行い、結果を表1に示した。
Figure 0007251370000001
表1より明らかなように、AmBのみを用いた比較例1に比べて、AmBと疎水化AmBの75%AcAmB又は50%AcAmBとを混合して用いた実施例1,2では、透過流束の大きい選択性透過膜が得られている。特に実施例2ではNaCl阻止率も高い選択性透過膜が得られている。
[検証例:アセチル化したアムホテリシンBを含む水チャネルの透水性の検証]
8個のアムホテリシンB(AmB)分子から成るチャネルモデル(T-AmB)と、チャネルを構成する8個のアムホテリシンB分子の中で1個の分子について、チャネル内表面に表出する水酸基を中心に75%の水酸基をアセチル基に置換した疎水化AmB(AcAmB)を用いたチャネルモデル(T-AcAmB)を作成し、分子動力学シミュレーションによりRO透過シミュレーションを行ったところ、T-AmBでの透水性能(4860LMH/bar/channel)に比べて、T-AcAmBではおよそ1.8倍の透水性能(8780LMH/bar/channel)を示した。
図2にT-AmBとT-AcAmBによる水チャネルの透水性の分子動力学シミュレーションを示す。
AmBやAcAmBは、エルゴステロール(Er)と結合するため、AmBもしくはAcAmBとErを結合させて水チャネルを形成させている。AmBとErの水チャネルをAmBEr、AcAmBとErの水チャネルをAcAmBErと表示し、それぞれ図2の(a),(b)に示した。この図は、水チャネルを中央に配置して左側の水に圧力をかけて、水が左から右に移動する現象を観察している。左側の水を表示し、右側の水は非表示とすることで水の移動を視覚的に確認できるようにした。4nsの段階で左側の水が右側に移動する量に差が見られ、AcAmBErの方がAmBErよりも多いことが分かる。
また、図3に、水の動径分布関数を導出し、AmBErとAcAmBErの水チャネルにおける水の存在領域から求めた親水的領域と疎水的領域を示す。AmBErの場合は親水的領域のみが形成されるが、AcAmBErの場合は、アセチル化によってAmBが疎水化されるため、水チャネル内部に疎水的領域が形成される。疎水的領域の存在が、ウォータースリップ効果をもたらし、水分子の水チャネル内部での拡散性を向上させたことが透水性の向上に繋がったと考えられる。
2 ポンプ
3 密閉容器
4 平膜セル
5 原水室
6 スターラー
7 透過水室
10 圧力計

Claims (4)

  1. 透水性基材と、該透水性基材上に形成された、チャネル構成分子によるチャネルを導入した脂質二重層とを有する選択性透過膜であって、
    該チャネルは、1個あたり複数のチャネル構成分子で構成されており、
    該チャネルを構成する複数のチャネル構成分子の少なくとも一つのチャネル構成分子が、そのチャネル構成分子の親水基の少なくとも一部が疎水化されたチャネル構成分子(以下「疎水化チャネル構成分子」と称す。)であり、
    該親水基が、水酸基(OH基)、カルボキシル基(COOH基)、アミノ基(NH 基)の1種又は2種以上であり、
    該親水基は、該疎水化により、アセチル基(OCOCH )、メトキシ基(OCH 基)、エトキシ基(OC 基)、エステル基、オキシシラン基の1種又は2種以上の疎水基に置換されており、
    前記チャネルを構成する全チャネル構成分子における前記疎水化チャネル構成分子の割合が5~50mol%であることを特徴とする選択性透過膜。
  2. 前記チャネル構成分子がアムホテリシンBであることを特徴とする請求項1に記載の選択性透過膜。
  3. 前記チャネル構成分子を含むリポソーム懸濁液を前記透水性基材と接触させることにより前記脂質二重層を形成する工程を有する請求項1又は2に記載の選択性透過膜の製造方法。
  4. 請求項1又は2に記載の選択性透過膜を用いて被処理水を膜分離処理する工程を有する水処理方法。
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