JP7250744B2 - 凝固分析を使用した抗凝固剤の検出および分類 - Google Patents

凝固分析を使用した抗凝固剤の検出および分類 Download PDF

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Description

関連出願の相互参照
本出願は、2014年7月31日に出願した米国仮出願第62/031,371号、および2015年2月3日に出願した米国仮出願第62/111,376号の優先権を主張するとともに、各々は、参照によりその全てが本願明細書に組み込まれるものとする。
背景
本願発明は、凝固および止血の分野に関する。
人口の加齢により、心臓および循環システムを含む疾患の危険性は、増大する懸念となってきている。抗凝固剤は、心房細動、肺塞栓症、深部静脈血栓、静脈血栓塞栓症、鬱血性心不全、脳卒中、心筋梗塞、および、患者の過剰凝固性を含む症候群の、防止および/または処理(例えば、阻止)するのに使用されてきている。従来、抗凝固薬ワルファリンがしばしば使用されており、それはビタミンK依存性凝固因子の全ての機能的レベルを低下させるものであった。しかしながら近年、特に凝固カスケードにおける特定の因子をターゲットとする改良された抗凝固剤が開発されてきている。
例えば、経口抗凝固剤の導入は、静脈および動脈の血栓塞栓性疾患を有する患者に対する処置を変えてきている。従来の経口ビタミンK拮抗剤(VKA)と異なりビタミンK依存性因子を全般的に減少させない、最近開発された経口抗凝固剤は、一定用量で与えられ、また薬および食品との相互作用の可能性が低くなっており、そのため日常的な検査モニタリングが必要でなくなっている(Ansell J. 等、Chest 133: 160S-198S, 2008;Ageno W. 等、 Chest 141: e44S-88S, 2012)。これらの新規な薬剤は、ワルファリンなどのVKA薬ならびに未分画ヘパリンおよび低分子量ヘパリンを含む確立した非経口薬品と比較して、同程度または改良された有効性および安全プロフィールを示している。
しかしながら、これらの新規の経口抗凝固剤は、患者が出血する体質を現しているときに(例えば、外傷により、または手術の間に)、臨床医および研究室職員の両方に処置の課題を呈することになる。血液凝固の阻止の程度を決定するための容易に利用できる方法がないことから、抗凝固剤が投与されている可能性のある出血している患者を治療する臨床医に、大きな問題が生じることになる。これらの薬品を検出してモニターする有用な方法がない場合がある(MiyaresおよびDavis, Am. J. Health. Syst. Pharm.69: 1473-1484, 2012を参照のこと)。
患者から採取したサンプルにおける抗凝固剤の存在を検出するための迅速な方法があることは、有用となるであろう。どの種類の抗凝固剤が患者サンプルにあるかを確認することも、同様に有用となるであろう。
実施態様の概要
いくつかの実施態様において、本発明は、患者から採取したサンプルにおける抗凝固剤の存在および拮抗を検出するための迅速にして正確な方法を提供する。いくつかの実施態様において、本発明は、どの種類の抗凝固剤がサンプルにあるかを確認するための迅速にして正確な方法を提供する。
したがって、第1の態様において、本発明は、抗凝固剤を有する可能性のある患者において、少なくとも治療的に関連する量(すなわち、治療的に関連する量またはそれよりも大きい量)の抗凝固剤を検出するための方法を提供する。当該方法は、(a)対照血液成分の対照サンプルであって、抗凝固剤を含まないことが知られている対照サンプルを、第Xa因子試薬の存在下で凝固分析して、対照サンプルの凝固測定値を得ること、ならびに(b)抗凝固剤を有する可能性のある患者からの血液成分の患者サンプルを、第Xa因子試薬の存在下で凝固分析して、患者サンプルの凝固測定値を得ること、ここで対照サンプルの凝固測定値よりも大きい患者サンプルの凝固測定値は、患者において治療的に関連する量の抗凝固剤が存在することを示し、そしてここで、対照サンプルの凝固測定値よりも小さいまたは同等の患者サンプルの凝固測定値は、治療的に関連する量の抗凝固剤が患者に存在しないことを示す、を含む。いくつかの実施態様において、抗凝固剤は、経口抗凝固剤である。経口抗凝固剤は、直接トロンビン阻害剤でもよく、または第Xa因子阻害剤でもよい。
いくつかの実施態様において、当該方法はさらに、(a)対照血液成分の対照サンプルをエカリン試薬の存在下で凝固分析して、対照エカリン凝固測定値を得ること、ならびに(b)患者からの血液成分の患者サンプルをエカリン試薬の存在下で凝固分析して、患者エカリン凝固測定値を得ること、ここで対照エカリン凝固測定値よりも大きい患者エカリン凝固測定値は、患者において抗凝固剤を直接トロンビン阻害剤(DTI)として確認し、そしてここで対照エカリン凝固測定値よりも小さいまたは同等の患者エカリン凝固測定値は、患者において抗凝固剤を抗第Xa因子抗凝固剤として確認することによって、患者に存在すると確認された抗凝固剤を分類すること含む。
別の態様においては、本発明は、抗凝固剤を有する可能性のある患者において、治療的に関連する量またはそれよりも大きい量の抗凝固剤を検出および/または分類するための方法を提供するものであり、当該方法は、患者からの血液成分の第1のサンプルを、第Xa因子試薬の存在下で凝固分析して、患者第Xa因子凝固測定値を得ること、患者からの血液成分の第2のサンプルを、エカリン試薬の存在下で凝固分析して、患者エカリン凝固測定値を得ること、ならびに患者第Xa因子凝固測定値を、抗凝固剤がないことが知られている対照血液成分からの対照第Xa因子凝固測定値と比較すること、および患者エカリン凝固測定値を、対照血液成分からの対照エカリン凝固測定値と比較すること、ここで対照エカリン凝固測定値よりも大きい患者エカリン凝固測定値は、患者において治療的に関連する量またはそれよりも大きい量の抗凝固剤の存在を確認し、そして、抗凝固剤を直接トロンビン阻害剤(DTI)として確認し、そしてここで対照第Xa因子凝固測定値よりも大きい患者第Xa因子凝固測定値は、患者において治療的に関連する量またはそれよりも大きい量の抗凝固剤の存在を確認し、そして抗凝固剤を抗第Xa因子抗凝固剤と確認し、そしてここで対照第Xa因子凝固測定値よりも小さいまたは等しい患者第Xa因子凝固測定値は、治療的に関連する量またはそれよりも大きい量の抗凝固剤が患者に存在しないことを確認する、を含むものである。
別の態様においては、本発明は、患者からの血液成分において、治療的に関連する量または治療的に関連する量より大きい量の抗凝固剤を検出しておよび/または分類するための方法を提供するものであり、当該方法は、(i)抗凝固剤を含まないことが知られている対照血液成分の第1の部分を、第Xa因子試薬の存在下で凝固分析して、対照第Xa因子凝固測定値を得ること、および(ii)患者からの血液成分の第1の部分を、第Xa因子試薬の存在下で凝固分析して、患者第Xa因子凝固測定値を得ること、ここで対照第Xa因子凝固測定値より大きい患者第Xa因子凝固測定値は、患者血液成分の治療的なレベルの抗凝固剤の存在を示しており、そしてここで対照第Xa因子凝固測定値よりも小さいまたは同等の患者第Xa因子凝固測定値は、患者血液成分において治療的に関連する量の抗凝固剤が存在しないことを示している、ことにより血液成分の抗凝固剤の存在を検出すること、ならびに、存在する場合には、(i)対照血液成分の第2の部分を、エカリン試薬の存在下で凝固分析して、対照エカリン凝固測定値を得ること、および(ii)患者血液成分の第2の部分を、エカリン試薬の存在下で凝固分析して、患者エカリン凝固測定値を得ること、ここで対照エカリン凝固測定値より大きい患者エカリン凝固測定値は、抗凝固剤を直接トロンビン阻害剤(DTI)として確認し、そしてここで対照エカリン凝固測定値よりも小さいまたは同等の患者エカリン凝固測定値は抗凝固剤を抗第Xa因子抗凝固剤として確認する、ことにより患者血液成分における抗凝固剤を分類することを含む、方法である。
いくつかの実施態様において、凝固分析は、プロトロンビン時間(PT)分析、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)分析、および活性化クロッティング時間(ACT)分析からなる群から選択される。
いくつかの実施態様において、対照サンプルの凝固測定値は、抗凝固剤が存在しないことが知られている少なくとも2つの対照血液成分からの少なくとも2つの対照サンプルの少なくとも2つの凝固測定値の範囲である。
いくつかの実施態様において、凝固分析は、粘弾性解析凝固分析である。いくつかの実施態様において、粘弾性解析は、容器の内部においてサンプルを含む容器を使用して行われる。いくつかの実施態様において、粘弾性解析は、容器およびピンを使用して行われ、ここでピンは容器に対して動くものである。いくつかの実施態様において、粘弾性解析は、容器およびピンを使用して行われ、ここで容器はピンに対して動くものである。いくつかの実施態様において、容器は底面がない。
様々な実施形態において、患者はヒトである。いくつかの実施態様において、患者は、手術、外傷、出血、脳卒中または血栓塞栓疾患を含む状態にある。
別の態様において、本発明は、抗凝固剤を有する可能性のある患者において、治療的に関連する量(またはそれより大きい量)の抗凝固剤を検出および/または分類するための方法を提供する。当該方法は、(a)患者からの血液成分の抗凝固剤の存在を検出することであって、(i)対照血液成分の対照サンプルであって、抗凝固剤を含まないことが知られている対照血液成分を、第Xa因子試薬の存在下で凝固分析して、対照サンプルの第Xa因子凝固測定値を得ること、および(ii)患者からの血液成分の患者サンプルを、第Xa因子試薬の存在下で凝固分析して、患者サンプルの第Xa因子凝固測定値を得ること、ここで対照サンプルの第Xa因子凝固測定値よりも大きい患者サンプルの第Xa因子凝固測定値は、患者において治療的に関連する量の抗凝固剤が存在することを示し、そしてここで対照サンプルの第Xa因子凝固測定値よりも小さいまたは同等の第2のサンプルの第Xa因子凝固測定値は、患者において治療的に関連する量の抗凝固剤が存在しないことを示す、のステップを含むもの、ならびに(b)患者における抗凝固剤を分類することであって、(i)対照血液成分の第2の対照サンプルを、エカリン試薬の存在下で凝固分析して、第2の対照サンプルのエカリン凝固測定値を得ること、および(ii)患者からの血液成分の第2の患者サンプルを、エカリン試薬の存在下で凝固分析して、第2の患者サンプルのエカリン凝固測定値を得ること、ここで第2の対照サンプルのエカリン凝固測定値よりも大きい第2の患者サンプルのエカリン凝固測定値は、抗凝固剤を直接トロンビン阻害剤(DTI)として確認し、そしてここで第2の対照サンプルのエカリン凝固測定値よりも小さいまたは同等の第2の患者サンプルのエカリン凝固測定値は、抗凝固剤を抗第Xa因子試薬として確認するのステップを含むもの、を含む。
いくつかの実施態様において、凝固分析は、プロトロンビン時間(PT)分析、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)分析、および活性化クロッティング時間(ACT)分析からなる群から選択される。
いくつかの実施態様において、対照サンプルの凝固測定値は、抗凝固剤がないことが知られている少なくとも2つの対照血液成分からの、少なくとも2つの対照サンプルの少なくとも2つの凝固測定値の範囲である。例えば、いくつかの実施態様において、対照第Xa因子凝固測定値は、抗凝固剤がないことが知られている少なくとも2つの対照血液成分の少なくとも2つの第Xa因子凝固測定値の範囲である。いくつかの実施態様において、対照エカリン凝固測定値は、抗凝固剤がないことが知られている少なくとも2つの対照血液成分の少なくとも2つのエカリン凝固測定値の範囲である。
いくつかの実施態様において、凝固分析は、粘弾性解析凝固分析である。いくつかの実施態様において、粘弾性解析は、容器の内部においてサンプルを含む容器を使用して行われる。いくつかの実施態様において、粘弾性解析は、容器およびピンを使用して行われ、ここでピンは容器に対して動くものである。いくつかの実施態様において、粘弾性解析は、容器およびピンを使用して行われ、ここで容器はピンに対して動くものである。いくつかの実施態様において、容器は底面がない。
様々な実施形態において、患者はヒトである。いくつかの実施態様において、患者は、手術、外傷、出血、脳卒中または血栓塞栓疾患を含む状態にある。
いくつかの実施態様において、抗凝固剤は、経口抗凝固剤である(例えば、抗第Xa因子抗凝固剤、またはDTI抗凝固剤)。
様々な実施形態において、対照第Xa因子凝固測定値よりも少なくとも1.25倍大きい患者第Xa因子凝固測定値は、患者において、治療的に関連する量またはそれよりも大きい量の抗凝固剤が存在することを確認する。いくつかの実施態様において、対照第Xa因子凝固測定値よりも少なくとも1.5倍大きい患者第Xa因子凝固測定値は、患者において、治療的に関連する量またはそれよりも大きい量の抗凝固剤が存在することを確認する。
様々な実施形態において、対照エカリン凝固測定値よりも少なくとも1.25倍大きい患者エカリン凝固測定値は、患者において、治療的に関連する量またはそれよりも大きい量の抗凝固剤が存在することを確認する。いくつかの実施態様において、対照エカリン凝固測定値よりも少なくとも1.5倍大きい患者エカリン凝固測定値は、患者において、治療的に関連する量またはそれよりも大きい量の抗凝固剤が存在することを確認する。
本発明の様々な実施形態において、治療的に関連する量またはそれよりも大きい量の抗凝固剤が存在すると確認された患者は、拮抗薬の治療的に関連する量が投与される。いくつかの実施態様において、拮抗薬は、プロトロンビン複合体濃縮製剤である。いくつかの実施態様において、治療的に関連する量またはそれよりも大きい量のDTI抗凝固剤が存在すると確認された患者は、DTI抗凝固剤に拮抗する拮抗薬(例えば、イダルシズマブ)の治療的に関連する量が投与される。いくつかの実施態様において、治療的に関連する量またはそれよりも大きい量の抗第Xa因子抗凝固剤が存在すると確認された患者は、抗第Xa因子抗凝固剤に拮抗する拮抗薬(例えば、アンデキサネット)の治療的に関連する量が投与される。
別の態様において、抗凝固剤を有する可能性のある患者において、治療的に関連する量またはそれよりも大きい量の抗凝固剤の拮抗を検出する方法である。当該方法は、(a)抗凝固剤がない(すなわち、存在していない)ことが知られている対照血液成分のサンプルを、エカリン試薬の存在下で凝固分析して、対照エカリン凝固測定値を得ること、(b)抗凝固剤がない(すなわち、存在していない)ことが知られている対照血液成分のサンプルを、第Xa因子試薬の存在下で凝固分析して、対照第Xa因子凝固測定値を得ること、(c)抗凝固剤の存在または不存在下での拮抗薬または解毒剤(例えば、イダルシズマブまたはアンデキサネット)を含むことが知られているまたは含む可能性のある患者からの血液成分を、エカリン試薬の存在下で凝固分析して、患者エカリン凝固測定値を得ること、ならびに(d)抗凝固剤の存在または不存在下での拮抗薬または解毒剤(例えば、イダルシズマブまたはアンデキサネット)を含むことが知られているまたは含む可能性のある患者からの血液成分を、第Xa因子試薬の存在下で凝固分析して、患者第Xa因子凝固測定値を得ること、および対照エカリン凝固測定値と患者エカリン凝固測定値とを比較すること、および対照第Xa因子凝固測定値と患者第Xa因子測定値とを比較すること、を含む。患者エカリン凝固測定値および/または患者第Xa因子凝固測定値が、対照エカリン凝固測定値および/または対照第Xa因子凝固測定値よりも小さいまたは同等の場合、患者は、患者における抗凝固剤の血液凝固の阻止活動に拮抗する拮抗薬を含むこととして確認される。いくつかの実施態様において、拮抗は、患者における抗凝固剤の血液凝固の阻止活動の完全な拮抗である。いくつかの実施態様において、拮抗は、患者における抗凝固剤の血液凝固の阻止活動の部分的な拮抗である。いくつかの実施態様において、拮抗薬は、プロトロンビン複合体濃縮製剤(PCC)、または、直接トロンビン阻害剤に拮抗することに特異的な(例えば、イダルシズマブ)、もしくは第Xa因子阻害剤に拮抗することに特異的な(例えば、アンデキサネット)、活性成分(例えばモノクロナール抗体またはペプチド)、または、直接トロンビン阻害剤および第Xa因子阻害剤の両方に拮抗する薬剤である。
いくつかの実施態様において、抗凝固剤は、経口抗凝固剤である。経口抗凝固剤は、直接トロンビン阻害剤でもよく、または第Xa因子阻害剤でもよい。
いくつかの実施態様において、凝固分析は、プロトロンビン時間(PT)分析、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)分析、および活性化クロッティング時間(ACT)分析からなる群から選択される。
いくつかの実施態様において、対照サンプルの凝固測定値は、抗凝固剤がないことが知られている少なくとも2つの対照血液成分からの少なくとも2つの対照サンプルの少なくとも2つの凝固測定値の範囲である。
いくつかの実施態様において、凝固分析は、粘弾性解析凝固分析である。いくつかの実施態様において、粘弾性解析は、容器の内部においてサンプルを含む容器を使用して行われる。いくつかの実施態様において、粘弾性解析は、容器およびピンを使用して行われ、ここでピンは容器に対して動くものである。いくつかの実施態様において、粘弾性解析は、容器およびピンを使用して行われ、ここで容器はピンに対して動くものである。いくつかの実施態様において、容器は底面がない。
様々な実施形態において、患者はヒトである。いくつかの実施態様において、患者は、手術、外傷、出血、脳卒中または血栓塞栓疾患を含む状態にある。
いくつかの実施態様において、対照サンプルの第Xa因子凝固測定値は、抗凝固剤がないことが知られている少なくとも2つの対照血液成分からの少なくとも2つの対照サンプルの少なくとも2つの第Xa因子凝固測定値の範囲である。いくつかの実施態様において、対照血液成分のエカリン凝固測定値は、抗凝固剤がないことが知られている少なくとも2つの対照血液成分の少なくとも2つのエカリン凝固測定値の範囲である。
別の態様においては、本発明は、抗凝固剤を有する可能性のある患者において、治療的に関連する量またはそれよりも大きい量の抗凝固剤を検出するための方法を提供するものであり、当該方法は、患者からの血液成分の患者サンプルを、第Xa因子試薬の存在下で凝固分析して、患者サンプルの凝固測定値を得ることを含み、ここで抗凝固剤がないことが知られている対照血液成分の対照サンプルの凝固測定値よりも大きい患者サンプルの凝固測定値は、患者において治療的に関連する量で抗凝固剤が存在することを確認するものである。
いくつかの実施態様において、対照サンプルの凝固測定値よりも少なくとも1.25倍大きい患者サンプルの凝固測定値は、治療的に関連する量で抗凝固剤が患者に存在することを確認する。いくつかの実施態様において、対照サンプルの凝固測定値よりも少なくとも1.5倍大きい患者サンプルの凝固測定値は、治療的に関連する量で抗凝固剤が患者に存在することを確認する。
いくつかの実施態様において、凝固分析は、プロトロンビン時間(PT)分析、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)分析、および活性化クロッティング時間(ACT)分析からなる群から選択される。
いくつかの実施態様において、対照サンプルの凝固測定値は、抗凝固剤がないことが知られている少なくとも2つの対照血液成分からの少なくとも2つの対照サンプルの少なくとも2つの凝固測定値の範囲である。
いくつかの実施態様において、凝固分析は、粘弾性解析凝固分析である。いくつかの実施態様において、粘弾性解析は、容器の内部においてサンプルを含む容器を使用して行われる。いくつかの実施態様において、粘弾性解析は、容器およびピンを使用して行われ、ここでピンは容器に対して動くものである。いくつかの実施態様において、粘弾性解析は、容器およびピンを使用して行われ、ここで容器はピンに対して動くものである。いくつかの実施態様において、容器は底面がない。
様々な実施形態において、患者はヒトである。いくつかの実施態様において、患者は、手術、外傷、出血または血栓塞栓疾患を含む状態にある。
いくつかの実施態様において、対照サンプルの凝固測定値は、抗凝固剤がないことが知られている少なくとも2つの対照血液成分からの少なくとも2つの対照サンプルの少なくとも2つの凝固測定値の範囲である。
いくつかの実施態様において、抗凝固剤は、経口抗凝固剤である。経口抗凝固剤は、直接トロンビン阻害剤でもよく、または第Xa因子阻害剤でもよい。
また更なる態様において、本発明は、抗凝固剤を有する可能性のある患者において、治療的に関連する量またはそれよりも大きい量の抗凝固剤を分類するための方法を提供する。当該方法は、(a)患者からの血液成分の第1の患者サンプルを、第Xa因子試薬の存在下で凝固分析して、患者血液成分の第Xa因子凝固測定値を得ること、ここで抗凝固剤がないことが知られている対照血液成分の対照血液サンプルの第Xa因子凝固測定値よりも大きい患者血液成分の第Xa因子凝固測定値は、患者の治療的に関連する量の抗凝固剤が患者に存在することを確認し、ならびに(b)患者からの血液成分の第2の患者サンプルを、エカリン試薬の存在下で凝固分析して、患者血液成分のエカリン凝固測定値を得ること、ここで対照血液成分の対照サンプルのエカリン凝固測定値よりも大きい第2の患者サンプルのエカリン凝固測定値は、抗凝固剤を直接トロンビン阻害剤(DTI)として確認し、そしてここで対照サンプルのエカリン凝固測定値よりも小さいまたは同等である第2の患者サンプルのエカリン凝固測定値は、抗凝固剤を抗第Xa因子試薬として確認する、を含む。
別の態様においては、本発明は、患者における、治療的に関連する量またはそれよりも大きい量の抗凝固剤を検出し、そして分類するための方法を提供する。当該方法は、対照血液成分(抗凝固剤を含まないことが知られている)の対照サンプルを、エカリン試薬の存在下で凝固分析して、対照エカリン測定値を得ること、ならびに抗凝固剤を有する可能性のある患者からの血液成分のサンプルを、エカリン試薬の存在下で凝固分析して、患者エカリン凝固測定値を得ること、ここで対照サンプルの凝固測定値よりも大きい患者サンプルの凝固測定値は、患者において、治療的に関連する量またはそれよりも大きい量の抗凝固剤が存在することを示し、そしてそれをDTIとして分類する、を含む。
本発明はまた、抗凝固剤を有する可能性のある患者において、治療的に関連する量またはそれよりも大きい量の抗凝固剤を検出し、そして分類するための方法を提供する。当該方法は、(a)患者からの血液成分の第1の患者サンプルを、エカリン試薬の存在下で凝固分析して、患者血液成分のエカリン凝固測定値を得ること、ここで抗凝固剤がないことが知られている対照血液成分の対照血液サンプルのエカリン凝固測定値よりも大きい患者血液成分のエカリン凝固測定値は、患者において治療的に関連する量の抗凝固剤が存在することを確認し、そして抗凝固剤を直接トロンビン阻害剤(DTI)として確認し、ならびに(b)患者からの血液成分の第2の患者サンプルを、第Xa因子試薬の存在下で凝固分析して、第2の患者サンプルの第Xa因子凝固測定値を得ること、ここで対照血液成分の対照サンプルの第Xa因子凝固測定値よりも大きい第2の患者サンプルの第Xa因子凝固測定値は、患者において、治療的に関連する量の抗凝固剤が存在することを確認し、そして抗凝固剤を抗第Xa因子として確認し、そしてここで対照サンプルの第Xa因子凝固測定値よりも小さいまたは同等の第2の患者サンプルの第Xa因子凝固測定値は、サンプルを抗凝固剤を有しないこととして確認する、を含む。
いくつかの実施態様において、対照サンプルの第Xa因子凝固測定値よりも少なくとも1.25倍大きい患者サンプルの第Xa因子凝固測定値は、患者において治療的に関連する量の抗凝固剤が存在することを確認する。いくつかの実施態様において、対照サンプルの第Xa因子凝固測定値よりも少なくとも1.5倍大きい患者サンプルの第Xa因子凝固測定値は、患者において、治療的に関連する量の抗凝固剤が存在することを確認する。
いくつかの実施態様において、対照サンプルのエカリン凝固測定値よりも少なくとも1.25倍大きい患者サンプルのエカリン凝固測定値は、抗凝固剤を直接トロンビン阻害剤(DTI)として確認する。いくつかの実施態様において、対照サンプルのエカリン凝固測定値よりも少なくとも1.5倍大きい患者サンプルのエカリン凝固測定値は、抗凝固剤を直接トロンビン阻害剤(DTI)として確認する。
いくつかの実施態様において、抗凝固剤は、経口抗凝固剤である。経口抗凝固剤は、直接トロンビン阻害剤でもよく、または第Xa因子阻害剤でもよい。
いくつかの実施態様において、凝固分析は、プロトロンビン時間(PT)分析、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)分析、および活性化クロッティング時間(ACT)分析からなる群から選択される。
いくつかの実施態様において、対照サンプルの凝固測定値は、抗凝固剤がないことが知られている少なくとも2つの対照血液成分からの少なくとも2つの対照サンプルの少なくとも2つの凝固測定値の範囲である。
いくつかの実施態様において、凝固分析は、粘弾性解析凝固分析である。いくつかの実施態様において、粘弾性解析は、容器の内部においてサンプルを含む容器を使用して行われる。いくつかの実施態様において、粘弾性解析は、容器およびピンを使用して行われ、ここでピンは容器に対して動くものである。いくつかの実施態様において、粘弾性解析は、容器およびピンを使用して行われ、ここで容器はピンに対して動くものである。いくつかの実施態様において、容器は底面がない。
様々な実施形態において、患者はヒトである。いくつかの実施態様において、患者は、手術、外傷、出血、脳卒中または血栓塞栓疾患を含む状態にある。
いくつかの実施態様において、対照サンプルの第Xa因子凝固測定値は、抗凝固剤がないことが知られている少なくとも2つの対照血液成分からの少なくとも2つの対照サンプルの少なくとも2つの第Xa因子凝固測定値の範囲である。いくつかの実施態様において、対照血液成分のエカリン凝固測定値は、抗凝固剤がないことが知られている少なくとも2つの対照血液成分の少なくとも2つのエカリン凝固測定値の範囲である。
様々な実施形態において、治療的に関連する量またはそれよりも大きい量の抗凝固剤が存在すると確認された患者は、治療的に関連する量の拮抗薬が投与される。いくつかの実施態様において、拮抗薬は、プロトロンビン複合体濃縮製剤である。いくつかの実施態様において、治療的に関連する量またはそれよりも大きい量のDTI抗凝固剤が存在すると確認された患者は、DTI抗凝固剤に拮抗する拮抗薬の治療的に関連する量が投与される。いくつかの実施態様において、DTI抗凝固剤に拮抗する拮抗薬は、イダルシズマブである。いくつかの実施態様において、治療的に関連する量またはそれよりも大きい量の抗第Xa因子抗凝固剤が存在すると確認された患者は、抗第Xa因子抗凝固剤に拮抗する拮抗薬の治療的に関連する量が投与される。いくつかの実施態様において、抗第Xa因子抗凝固剤に拮抗する拮抗薬は、アンデキサネットである。
上述した実施態様の特徴は、添付の図面に関する以下の詳細な説明を参照することで、より容易に理解されるものである。
図1は、架橋フィブリンからなるフィブリン凝血塊の形成に最終的に至る、凝固カスケードを示す概要図である。抗第Xa因子試薬(または薬剤)および直接トロンビン阻害剤の両方は、外因性および内因性の経路の両方に影響を及ぼす。
図2A-2Cは、本発明の実施態様に有用な異なる種類の凝固分析を示す一連のフローチャートである。図2Aは、プロトロンビン時間(PT)凝固分析を表している。 図2Bは、活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)凝固分析を示している。 図2Cは、活性化クロッティング時間(ACT)分析を示している。
図3Aは、正常なヒトから採取された血液成分サンプルの凝血塊の存続時間の全体にわたって測定されたTEGトレーシングを示す、概要図である。R(反応時間)およびACT(活性化クロッティング時間)は、フィブリン鎖ポリマーの形成の時間であり、K(凝固時間)は、一定の凝血塊強度が達成されるまでの時間の測定値であり、α(アルファ角度)は、曲線へのR接線から引かれた線の傾きであり、そしてMA(最大振幅、mm単位で測定)は、凝血塊の強度である。LY30は、MAが定められた後30分に測定された、パーセント溶解測定値である。
図3Bは、TEGトレーシング上にある血栓生成曲線(緑のV曲線)を表す概要図である。V曲線は、単位時間あたりの凝血塊強さの変化(dyn/cm/s)として表される、凝血塊抵抗の変化の一次導関数より表されており、凝血塊形成の最大速度を表している。MRTGは、血栓生成の最大速度を表しており、そしてTMRTGは、血栓生成の最大速度までの時間を表している。
図4は、TEMogramトレーシングを示す概要図である。CTは、クロッティング時間を示し、CFTは、凝血塊形成時間を示し、アルファは、アルファ角度であり、ラムダ角度は、溶解速度であり、MCFは、最大凝血塊硬さであり、そしてMLは、最大溶解である。
図5は、様々なエカリン試薬(エカリンおよび類似酵素を含む)がカスケードに干渉する段階を示す、凝固カスケードの概要図である。
図6は、非限定的な本発明の態様に関係するステップを示す、決定木の概要図である。抗凝固剤に接している可能性のある患者から採取された血液成分は、最初に検出ステップ(試験血液成分に抗凝固剤が存在するかどうか調べる)を受け、そしてそれから抗凝固剤がDTI、または抗第Xa因子抗凝固剤であるかどうか決定する分類ステップを受ける。
表1は、エカリンの存在または不存在下での、アピキサバン、リバーロキサバン、およびダビガトランの異なる用量が添加された健常ドナーのサンプルにおける、TEGカオリン試験凝固パラメータの感度を示す。表1において、R-反応時間;MRTG-血栓生成への最大速度;TMRTG-血栓生成の最大速度までの時間。両者において統計的に有意:¥-高用量および中間の用量;
Figure 0007250744000001

§-エカリンを有する、または有しないペアサンプル。SDR-三重にて測定された3件の独立実験の平均の標準誤差。1つの記号p<0.05;2つの記号 p<0.01;3つの記号 p<0.001。
表2は、エカリンの存在または不存在下で、アピキサバン、リバーロキサバン、およびダビガトランの異なる用量が添加された健常ドナーのサンプルにおける、RapidTEG試験凝固パラメータの感度を示す。両者において統計的に有意:§-エカリンを有する、または有しないペアサンプル。SDR-三重にて測定された3件の独立実験の平均の標準誤差。1つの記号p<0.05;2つの記号 p<0.01;3つの記号 p<0.001。
図7A-7Fは、折れ線グラフである。図7A-7Cは、TEGカオリン試験R時間感度の結果を、薬剤の異なる濃度の作用として示す。図7Aは、リバーロキサバンを示す。 図7Bは、アピキサバンを示す。 そして図7Cは、ダビガトランを示す。 図7D-7Fは、RapidTEG試験ACT時間感度の結果を、薬剤の異なる濃度の作用として示す。図7Dは、リバーロキサバンを示す。 図7Eは、アピキサバンを示す。 そして図7Fは、ダビガトランを示す。ダビガトランのすべての用量のR時間は、試験されたアピキサバンおよびリバーロキサバンの最も高い濃度と同様に、非添加血液サンプルよりも著しく高かった。ダビガトランのすべての濃度のACT時間は、試験されたアピキサバンおよびリバーロキサバンの中程度およびより高い濃度と同様に、非添加のACTの血液サンプルよりも著しく高かった。点線の平行棒は、RおよびACTの正常範囲を示す。両者において統計的に有意:¥-高用量および中間の用量;
Figure 0007250744000002

図7A-7Fにおいて、1つの記号 p<0.05;2つの記号 p<0.01;3つの記号p<0.001。エラーバーは、三重にて測定された3件の独立実験の標準誤差を示す。
図8A-8Cは、エカリンの存在、または不存在下での、リバーロキサバン(図8A)、アピキサバン(図8B)およびダビガトラン(図8C)薬剤濃度の作用としての、TEGカオリン試験R時間の結果を示す、折れ線グラフである。リバーロキサバンおよびアピキサバンの両方とも、薬剤の濃度にもかかわらずエカリンが存在することに起因する、同等および著しく短縮されたR時間を示している。ダビガトランは、濃度依存的なR時間の減少を有している。点線の平行棒は、健常ドナーのRの正常範囲を示している。両者において統計的に有意:¥-高用量および中間の用量;
Figure 0007250744000003

§-エカリンを有する、または有しないペアサンプルの間において統計的に有意、p<0.001。エラーバーは、三重にて測定された3件の独立実験の標準誤差を表す。
上述したように図8Bは、エカリンの存在、または不存在下での、アピキサバン(図8B)薬剤濃度の作用としての、TEGカオリン試験R時間の結果を示す、折れ線グラフである。 上述したように図8Cは、エカリンの存在、または不存在下での、ダビガトラン(図8C)薬剤濃度の作用としての、TEGカオリン試験R時間の結果を示す、折れ線グラフである。
図9A-9Cは、標準カオリン試験においてダビガトランを50ng/ml、200ng/ml、または500ng/mlで添加した、血液の凝固測定値を示す、TEGトレーシングおよび折れ線グラフである。図9Aは、ダビガトランの量の増加にともなうR時間の増加を示す。 図9B(図7Cの拡大図)は、対照(非添加)血液のカロリンR時間と比較したダビガトラン添加血液のR時間の増加を示す。 図9C(図8Cの拡大図)は、ダビガトラン添加血液が、エカリンおよびカオリンの存在下での凝固分析を受けたとき、R時間の結果において減少することを示している。
図10は、カオリンを使用し、50ng/mlのダビガトラン(ピンク、左端の線)、200ng/mlのダビガトラン(緑、中心の線)、または500ng/ml(白、右端の線)のダビガトランが添加された血液における血栓生成の速度を示す、標準TEGトレーシングを示す概要図である。
図11A-11Cは、標準カオリン試験における、22ng/ml、89ng/ml、または500ng/mlのリバーロキサバン(第Xa因子阻害抗凝固剤)が添加された血液の凝固測定値を示す、折れ線グラフである。図11Aは、リバーロキサバンの最も大きい量におけるR時間の増加を示す。 図11Bは、対照(非添加)血液のカオリンR時間と比較した、リバーロキサバンが添加された血液のR時間の増加を示す。 図11Cは、リバーロキサバン添加血液が、エカリンの存在下での凝固分析を受けたとき、R時間の結果において劇的に減少しており、そのため、最も大きい量であっても、リバーロキサバン添加血液のR時間は、R時間のカオリン正常範囲(対照、非添加血液)の下の境界線よりも短縮されていることを示す。
図12は、アピキサバン(「AP」;ダイヤモンド形)添加血液、リバーロキサバン(「RV」;正方形)添加血液、およびダビガトラン(「DB」;三角形)添加血液による、FXa試薬の存在下でのR時間を示す、折れ線グラフである。点線の水平線は、対照血液(すなわち、抗凝固剤を服用していない、およびいかなる抗凝固剤も添加されていないことが知られているドナーから採取された)のR範囲を表す。
図13は、0ng/mlのダビガトラン、50ng/mlのダビガトラン、150ng/mlのダビガトラン、または300ng/mlのダビガトランが添加された適用ドナーからの血液についてのエカリン存在下でのR時間を示す、棒グラフである。水平の点線は、対照血液(抗凝固剤のない血液)のR範囲を表す。
図14は、エカリンの存在下での4名のドナーからのリバーロキサバンまたはアピキサバンを含む血液のR時間を示す、折れ線グラフである。水平の点線は、対照血液(いかなる抗凝固剤もない)のR範囲を表す。
図15A-15Cは、患者に抗凝固剤を投与された前後における患者からの血液の検出および分類ステップを表す、一連の棒グラフである。図15Aは、「前」のサンプルでは、検出および分類のR時間が、対照血液の正常R範囲の中にあったことを示す。 図15Bは、検出ステップの「後」のサンプル(すなわち、FXa試薬の存在下)では、R時間が長くなり、そしてすでに対照血液の正常R範囲にはなかったことを示している。 図15Cは、分類ステップ(すなわち、エカリン試薬の存在下)では、R時間は正常範囲にあったことを示している。これらの結果は、「後」のサンプルでは抗凝固剤が存在し、抗凝固剤は抗第Xa因子抗凝固剤であったことを確認した。
図16は、拮抗薬(緑棒)をブタ血漿サンプルに投与したときの、直接トロンビン阻害剤(DTI、赤棒)の存在下におけるR時間の伸長、続いてR時間の短縮を示す、棒グラフである。ベースラインは、青棒として示される。
実施例の詳細な説明
いくつかの実施態様において、本発明は、(例えば、患者からの)血液成分の抗凝固剤の存在を検出するための方法および試薬(例えば、cups)を提供する。いくつかの実施態様において、本発明は、どの種類の抗凝固剤が血液成分に存在するかを確認するための方法および試薬を提供する。いくつかの実施態様において、本発明はまた、拮抗薬または解毒剤による抗凝固作用の拮抗を示すための方法および試薬を提供する。
ここで参照する刊行物(特許公報を含む)、ウェブサイト、会社名、および科学文献は、当業者に利用可能な知識を明確にしており、そして参照により各々が本質的におよび個々に組み込まれたことが明示されたのと同様に、そのすべてが参照により組み込まれている。ここでの任意の引例と本明細書の特定の教示との間の不一致は、後者により決定されるものである。
第1の態様において、本発明は、抗凝固剤を有する可能性のある患者において、治療的に関連する量の抗凝固剤を検出する方法を提供するものであり、当該方法は、(a)対照血液成分の対照サンプルであって、抗凝固剤を含まないことが知られている対照サンプルを、第Xa因子試薬の存在下で凝固分析して、対照サンプルの凝固測定値を得ること、(b)抗凝固剤を有する可能性のある患者からの血液成分の患者サンプルを、第Xa因子試薬の存在下で凝固分析して、患者サンプルの凝固測定値を得ること、ならびに(c)患者サンプルの凝固測定値を、対照サンプルの凝固測定値と比較すること、ここで対照サンプルの凝固測定値よりも大きい患者サンプルの凝固測定値は、患者において治療的に関連する量の抗凝固剤が存在することを示し、そしてここで対照サンプルの凝固測定値よりも小さいまたは同等の患者サンプルの凝固測定値は、治療的に関連する量の抗凝固剤が患者に存在しないことを示すものである、を含む。
別の態様においては、本発明は、抗凝固剤を有する可能性のある患者において、治療的に関連する量(または治療的に関連する量より大きい量)の抗凝固剤を検出する方法を提供するものであり、当該方法は、患者からの血液成分の患者サンプルを、第Xa因子試薬の存在下で凝固分析して、患者サンプルの凝固測定値を得ることを含み、ここで抗凝固剤がないことが知られている対照血液成分の対照サンプルの凝固測定値よりも大きい患者サンプルの凝固測定値は、患者において治療的に関連する量で抗凝固剤が存在することを確認するものである。
凝固測定値が長くなる程度は、血液成分の経口抗凝固剤の濃度による。濃度が高いほど、経口抗凝固剤がないことが知られている血液成分と比較して凝固測定値が大きくなることになる。いくつかの実施態様において、抗凝固剤がないことが知られている血液成分の凝固測定値よりも少なくとも1.25倍大きい試験血液成分の凝固測定値は、治療的に関連する量の抗凝固剤が血液成分に存在することを確認する。いくつかの実施態様において、抗凝固剤がないことが知られている血液成分の凝固測定値よりも少なくとも1.5倍大きい試験血液成分の凝固測定値は、治療的に関連する量の抗凝固剤が血液成分に存在することを確認する。いくつかの実施態様において、抗凝固剤がないことが知られている血液成分の凝固測定値よりも少なくとも1.75倍大きい試験血液成分の凝固測定値は、治療的に関連する量の抗凝固剤が血液成分に存在することを確認する。いくつかの実施態様において、抗凝固剤がないことが知られている血液成分の凝固測定値よりも少なくとも2倍大きい試験血液成分の凝固測定値は、治療的に関連する量の抗凝固剤が血液成分に存在することを確認する。
いくつかの実施態様において、対照サンプルの凝固測定値は、抗凝固剤がないことが知られている少なくとも2つの対照血液成分からの少なくとも2つの対照サンプルの少なくとも2つの凝固測定値の平均、中央値、または範囲でありえる。例えば、範囲(それは、参照範囲とも称することができる)は、(例えば、抗凝固剤がないことが知られている複数のドナーからの)複数の対照血液成分からの対照サンプルから作成することができる。平均または平均値が使用される場合、複数の対照サンプルからの凝固測定値は平均され、そしてその平均の数は、対照サンプルの凝固測定値として使用される。
いくつかの実施態様において、本発明は、患者からの血液成分における凝固カスケードの機能を判断するために凝固分析を利用する。
凝固カスケード(または凝血カスケード)は、血液が液体から固体凝血塊に変化する厳重に制御されたプロセスである。このプロセスは、凝固または凝血と称されている。図1は、凝固カスケードの概要図を提供する。凝固は、外因性組織因子経路(例えば、血管の怪我または損傷)により、または内因性接触活性化経路により引き起こされうる。2つの経路は、それからプロトロンビンをトロンビンに活性化する第Xa因子の活性化につながる。
「血液成分」は、例えば患者から採取された血液の1つ以上の成分を意味し、ここで血液成分は、フィブリン介在凝血塊を形成するのに充分な量の血漿を含む。血液成分は、容量基準で少なくとも約8%の血漿(すなわち、8%v/v血漿)を含んでもよい。血液成分は、少なくとも約10%v/v血漿、または少なくとも約12%v/v血漿、または少なくとも約15%v/v血漿、または少なくとも約20%v/v血漿を含むことができる。患者は、ヒトでもよく、また他のいかなる動物(例えば、家畜動物または特殊動物)でもあってもよい。血液は、酸素および栄養の材料を組織へ担送する生体の循環組織であり、そして、二酸化炭素および様々な代謝産物を排出するよう除去する。血液は、淡黄色または灰黄色の流体である血漿を含み、赤血球、白血球および血小板が血漿中に浮遊している。血液(しばしば全血と称される)は、各種成分または密度勾配遠心分離後の画分に分別されることができる。このように、血液成分は、限定されるものではないが、全血(それは、単に血液とも称されうる)、少なくとも約10%体積の血漿を含む白血球、少なくとも約10%体積の血漿を含む赤血球、少なくとも約10%体積の血漿を含む血小板、血漿、および、血小板画分、赤血球画分(例えば、大部分の赤血球、ならびに小部分の白血球および血漿を含む)、およびバフィーコート画分(例えば、大部分の白血液および血小板、ならびに小部分の赤血球および血漿を含む)を含む少なくとも約10%体積の血漿を含む血液のさまざまな画分を含む。血液成分はまた、上に列挙した成分のいずれかを含み、それはまた、血液成分を患者から得た後に加えられる、血液成分の凝固を防止または減少させる物質(例えば、クエン酸もしくはクエン酸塩またはヘパリン)を含む。
「抗凝固剤」は、凝固(すなわち、凝血)を防止または減少させる物質(すなわち、試薬または薬剤)であって、患者から血液成分を得る前にその物質が患者に服用または投与された場合、患者の血液成分に存在するものを意味する。そのような投与は、経口、非経口、静脈、腹膜内、筋肉内、皮下、その他を含むいかなる経路によってもよい。患者から血液成分を得た後に血液成分に加えられる物質(例えば、ヘパリンまたはクエン酸塩)は、この定義において、抗凝固剤ではないことに留意すべきである。
いくつかの実施態様において、抗凝固剤は、経口的に患者に投与される。経口的に投与される抗凝固剤は、経口抗凝固剤と称されてもよい。
「拮抗薬」は、血液凝固の阻止作用に拮抗する(例えば、拮抗薬は抗凝固剤により生じる出血に拮抗する)物質(例えば、試薬、抗体、タンパク質または薬剤)であって、患者から血液成分を得る前にその物質が患者に服用または投与された場合には、患者の血液成分に存在するものを意味する。そのような投与は、経口、非経口、静脈、腹膜内、筋肉内、皮下、その他を含む任意の経路によってなされうる。
いくつかの実施態様において、拮抗薬は、患者に経口的に投与される。
「抗凝固剤を有する可能性のある患者」は、血液成分が患者から得られる前に、(例えば、経口投与によって)抗凝固剤を摂取した可能性のある患者(例えば、ヒトの患者)を意味する。例えば、意識を失った患者が、救急室に運び込まれることがある。手術の間に、ここに記載されている方法のうちの1つが、患者の血液成分のサンプルに行われ、血液成分サンプルにおける抗凝固剤の有無を検出することによって、その者が抗凝固剤を服用しているか否かを決定することができる。この情報は、患者の必要性に対応すること、そして必要に応じて抗凝固性作用に拮抗するのに有効である。抗凝固剤を有する可能性のある患者からの血液成分は、「抗凝固剤を有する可能性のある血液成分」と称されてもよい。抗凝固剤を有する可能性のある患者からの血液成分のサンプルは、「抗凝固剤を有する可能性のあるサンプル」と称されてもよい。
いくつかの実施態様において、血液成分が得られた患者は、出血する体質を有する可能性のある患者である。いくつかの実施態様において、出血する体質は、先天性血友病状態、ビタミンK欠乏を含む任意の原因でもありえる。いくつかの場合では、出血する体質は、患者が出血する体質を有するかどうかを知らない、および患者が出血する体質を有する場合で、患者がなぜ出血する体質を有するか知られていないというような、患者による抗凝固剤の摂取に起因するものでありえる。ここで記載されている方法を使用することにより、(患者が抗凝固剤を服用した場合の)抗凝固剤の確認および分類、ならびに拮抗(拮抗薬が患者に投与された場合)を決定することができる。いくつかの実施態様において、患者は、出血を含みうる状態にある(または間もなくその状態になる)。例えば、患者は、外科手術を受けることがありえ、外科手術の準備ができていることがありえ、負傷または損傷していることがありえ、出血していることがありえ、あるいは、限定されるものではないが、脳卒中、静脈血栓塞栓疾患(VTE)、心臓発作、心不全、動脈の血栓塞栓疾患および肺塞栓症を含む血栓塞栓疾患を有していることがありえ、または最近有している、または直ちに有する可能性がある。患者は、外傷患者でもよく、および/または内出血を有してもよい。
すべてのビタミンK依存性凝固因子を全般的に阻害するものではない最近開発された経口抗凝固剤は、抗凝固剤が目標とする特定の凝固因子に基づいて、一般に2つのカテゴリに分類されることができる。
いくつかの実施態様において、経口抗凝固剤は、直接トロンビン阻害剤であり、またDTIと称されることがある。トロンビン(凝固第IIa因子)は、血液凝固プロセスの中心的な役割を果たすものである(図1を参照)。トロンビンは、(a)可溶性フィブリノゲンをフィブリンに変換すること;(b)第VI因子、第VIII因子、第XI因子および第XIII因子を活性化すること、ならびに(c)血小板を刺激することを含む、複数の役割を行う。第XI因子および第XIII因子を活性化することにより、トロンビンはさらにトロンビンを生成し、そして架橋フィブリン分子の形成を支持し、それによって凝血塊を強固にする。
DTIは、トロンビンを結合し、そして基質とのトロンビン相互作用を阻止する抗凝固剤である。DTIは、二価(トロンビンを活性部位および非活性部位の1つを阻止する)であってもよく、または一価(トロンビンを活性部位で阻止する)であってもよい。二価DTIとしては、限定されるものではないが、ヒルジンおよびビバリルジンが挙げられる。一価DTIとしては、限定されるものではないが、アルガトロバン、メラガトラン、キシメラガトランおよびダビガトランが挙げられる。ダビガトランは、ベーリンガーインゲルハイムインターナショナルGmbH、インゲルハイム、ドイツにより、商品名プラザキサにて市販されている。ダビガトランは、「永続的でなく」、選択的および競合的なトロンビン(第IIa因子)の経口直接抑制剤である。ダビガトランは、ヨーロッパおよび米国において認可されており、非弁膜症性心房細動患者における脳卒中および全身性塞栓と同様に、整形外科患者における静脈血栓塞栓症(VTE)の危険度を減少する。
いくつかの実施態様において、経口抗凝固剤は、第Xa因子の抑制剤であり、そして抗第Xa因子試薬、第Xa因子阻害剤、またはキサバンと称されることができる。キサバンは、直接、血液凝固カスケードの第Xa因子に作用する(図1Aを参照)。2つの非限定的な市販の第Xa因子の抑制剤は、リバーロキサバン(バイエルファルマAG、レーヴァークセン、ドイツ、およびヤンセンファーマシューティカルズ,Inc.、タイタスビル、ニュージャージーより、商品名イグザレルトで販売)、およびアピキサバン(ブリストル・マイヤーズ・スクイブ、ニューヨーク、ニューヨーク、およびファイザーEEIG、サンドウィッチ、英国より、商品名エリキュースで販売)である。リバーロキサバンおよびアピキサバンは、ヨーロッパおよび米国において認可されており、非弁膜症性心房細動患者の脳卒中および全身性塞栓と同様に、整形外科患者の静脈血栓塞栓症(VTE)の危険度を減少する。リバーロキサバンはまた、急性冠動脈症候群の二次的防止としてEUで承認されている。リバーロキサバンは、冠動脈イベントの後の高い心臓バイオマーカーを有する成人の患者における血栓症イベントの防止のために、バイエルファルマによって提供される製品情報にしたがって、アセチルサルチル酸(ASA)と共に、またはASAおよびクロピドグレルまたはチクロピジンと共に投与されることができる。
さらなる非限定的な第Xa因子の抑制剤は、ベトリキサバン(LY517717;ポルトラファーマシューティカルズ)、ダレキサバン(YM150;アステラス)、エドキサバン(リクシアナ;DU-176b;第一)、TAK-442(武田)、およびエリバキサバン(PD0348292;ファイザー)を含む。
様々な実施形態において、ここに記載されている方法は、第Xa因子試薬の使用を含む。「第Xa因子試薬」は、第Xa因子(FXa)および/または第Xa因子を含む凝固因子のいかなる組合せを意味する。この第Xa因子試薬は、機能および/または安定性の改良のため(塩類、緩衝剤、糖、その他を含む)他の物質を含有することができる。第Xa因子試薬は、血液成分が患者から得られた後に、血液成分に加えられる。この代わりに、第Xa因子試薬は、第X因子チモーゲン(活性第Xa因子の前駆体)を活性化するラッセルクサリヘビ毒などのその他の試薬の添加によって、血液成分サンプルにおいて内在の第X因子から調製されることができる。
「凝固測定値」は、凝血塊形成の測定値である。当該測定値は、限定されるものではないが、フィブリンの最初の形成の時間、または凝血塊が一定の強度に達する時間を含む、凝血塊の形成の間の任意の時間に、得ることができる。凝固測定値を測定するのに使用される凝固分析が、トロンボエラストグラフィ(TEG)分析(例えば、トロンボエラストグラフ凝固アナライザー・モデル5000プラットフォームにて行われる)である場合、フィブリンの最初の形成の時間は「R」時間であり、そして凝血塊が一定の強度レベルに達する時間は「K」時間である。凝固測定値を測定するのに使用される凝固分析が、トロンボエラストメトリー(TEM)分析(例えば、ROTEMプラットフォームにて行われる)である場合、フィブリンの最初の形成の時間は、「反応時間(RT)」であり、そして凝血塊が一定の強度レベルに達する時間は、凝血塊形成時間(CFT)である。凝固測定値は、患者から直接採取された血液成分、またはカルシウム添加により適切に拮抗されている、カオリンなどの凝固活性剤もしくはクエン酸塩などの凝固抑制剤で処理された血液成分から得ることができることに留意すべきである。
「凝固分析」は、凝血塊を形成する血液または血液成分の能力を測定するのに使用することができる任意の種類の分析を意味する。凝固分析は、限定されるものではないが、粘弾性分析(トロンボエラストグラフィ(TEG)分析またはトロンボエラストメトリー(TEM)分析を含む)、プロトロンビン時間(PT)分析、活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)分析、ならびに活性化クロッティング時間(ACT)分析を含む。
いくつかの実施態様において、凝固分析は、プロトロンビン時間(PT)凝固分析である。図2Aは、プロトロンビン時間(PT)凝固分析を図式的に表している。PT分析は、(起源の組み換え体、あるいは脳、肺または胎盤からの抽出物由来でありえる)組織因子を含むトロンボプラスチン試薬およびカルシウムを、血漿(または例えばクエン酸添加されていてもよい、他の血液成分)に添加し、そしてクロッティング時間を測定することにより行われる。プロトロンビン時間(PT)は、試薬および凝固計により変化するが、概して10から14秒間の範囲である(BatesおよびWeitz、 Circulation112: e53-e60, 2005; White 等、 "Approachto the bleeding patient", In: Colman RW 等、(eds)Hemostasis and Thrombosis: Basic Principles and Clinical Practice. 第三版、フィラデルフィア、 Pa: JB Lippincott Co. 1134 -1147, 1994を参照)。PT値は、ここに記載の方法による非限定的な凝固測定値として使用されることができる。試験されている血液が抗凝固剤を含む(例えば、抗凝固剤が被験者に経口投与されている)とき、または試験されている血液が凝固因子欠乏患者(例えば、第VII因子、第X因子および第V因子、プロトロンビン、またはフィブリノゲンの欠乏)からのものであるとき、PTは、正常でなくてもよい(例えば、長くなってもよい)。ヘパリンの高用量およびフィブリン分解産物の存在を含む、フィブリノゲンのフィブリンへの転換反応の阻害剤を有する患者では、本試験はまた正常ではない。
いくつかの実施態様において、凝固分析は、活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)凝固分析である。図2Bは、活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)凝固分析に含まれるステップを図式的に表す。aPTT分析は、カオリン・ケファリンクロッティング時間分析(ケファリンは、血小板リン脂質置換体である)、またはカオリンを有する部分トロンボプラスチン時間(PTTK)分析としても知られている。aPTTは、典型的には、最初に表面活性剤(例えば、カオリン、セライト、エラグ酸、またはシリカ)および希釈されたリン脂質(例えば、ケファリン)を、クエン酸加の血漿に添加することにより行われる(図2B)。この分析のリン脂質は、組織因子が存在しないので、部分トロンボプラスチンと称される。接触因子(例えば、第XII因子、第XI因子、プレカリクレインおよび高分子量キニノーゲン)を最適活性にするインキュベーションおよび第IXa因子の生成の後、それからカルシウムが添加され、そしてクロッティング時間が測定される。このように、APTT時間は、カルシウムの添加からフィブリン凝固の形成までの時間である。クロッティング時間は、使用する試薬(例えば、表面活性剤の種類)および凝固計によって変化するが、aPTTは、概して22から40秒の間の範囲である(上記のBatesおよびWeitzを参照)。aPTT時間は、ここに記載されている方法による非限定的な凝固測定値として使用されることができる。試験されている血液が抗凝固剤を含む(例えば、抗凝固剤が被験者に経口投与されている)とき、aPTTは正常でなくてもよい(例えば、長くなってもよい)aPTTは、第IX因子、第VIII因子、第X因子、もしくは第V因子;プロトロンビン;またはフィブリノゲンなどの、接触因子の欠乏によって長くなることがありえる。特定の因子抑制剤はまた、非特異的抑制剤と同様に、aPTTを長くすることがありえる。フィブリン分解産物および抗凝固剤(例えば、ヘパリン、直接トロンビン阻害剤、またはワルファリン)はまた、aPTTを長くする。
いくつかの実施態様において、凝固分析は、活性化クロッティング時間(ACT)分析である。図2Cは、活性化クロッティング時間(ACT)分析に含まれるステップを図式的に表す。典型的には、全血は、チューブまたはカートリッジであって凝固活性剤(例えば、セライト、カオリンまたはガラス粒子)および磁気攪拌棒を含むものへと集められる。一旦トロンビンが発生すると、それは、血小板凝集およびフィブリン形成を誘起し、そして血液が凝固するのにかかる時間が測定される(Van CottおよびLaposata,"Coagulation". In: Jacobs DS 等、 (eds),The Laboratory Test Handbook, 第五版、 クリーブランド、オハイオ:Lexi-Comp; 2001:327-358, 2001もまた参照のこと)。ACTのための基準値は、70と180秒の間の範囲である。ACT値は、ここに記載されている方法による、非限定的な凝固測定値として使用されることができる。試験されている血液が抗凝固剤を含む(例えば、抗凝固剤が被験者に経口投与されている)とき、ACT時間は長くなる。
いくつかの実施態様において、凝固分析は、粘弾性分析である。「粘弾性解析」は、弾性固体(例えば、フィブリン固体)および流体の特徴を測定するいかなる分析法も意味する。換言すれば、粘弾性解析は、血液、血漿、または血液サンプルなどの粘稠性流体の特性に関する調査を可能にする。いくつかの実施態様において、粘弾性解析は、生体内で止血することになる条件を模倣する状態で行われる。例えば、その条件は、体温(例えば、37℃の温度)を模倣する温度を含んでもよい。その条件はまた、血管において見られる流速を模倣した流速での、凝血塊の形成および溶解を含んでもよい。
いくつかの実施態様において、血液サンプルの粘弾性解析は、血液サンプルを止血分析装置に受けさせることを含んでもよい。1つの非限定的な粘弾性解析方法は、トロンボエラストグラフィ(「TEG」)分析である。このようにいくつかの実施態様において、粘弾性解析は、血液サンプルをトロンボエラストグラフィ(TEG)を使用した解析に受けさせることを含み、それはドイツのヘルムート・ハータートにより、1940年代に最初に記載されている。
トロンボエラストグラフィを行う各種機器、およびそれを使用する方法は、米国特許公報番号5,223,227;6,225,126;6,537,819;7,182,913;6,613,573;6,787,363;7,179,652;7,732,213;8,008,086;7,754,489;7,939,329;8,076,144;6,797,419;6,890,299;7,524,670;7,811,792;20070092405;20070059840;8,421,458;US20120301967;および7,261,861に記載されており、各々の全ての開示が、参照によりここに明示的に組み込まれるものとする。
トロンボエラストグラフィ(TE)は、緩やかな静脈血の流れに似た低剪断環境下で凝固が誘起されるように、血液の弾性特性をモニターする。発達している凝血塊の剪断弾力の変化のパターンは、形成された凝血塊の強度および安定性と同様に、凝血塊形成の動態、要するに、発達している凝血塊の機構的特性の測定を可能にする。上記の通り、凝血塊の動態、強度および安定性は、「機構的作用」、すなわち循環血液の変形している剪断応力への抵抗を行う、凝血塊の能力に関する情報を提供する。本質的に凝血塊は、止血の基本機構である。止血を測定する止血計器は、その構造発達の全体にわたる機構作用を行う凝血塊の能力を測定することが可能である。これら止血アナライザーは、非分離の全血液成分の総生成物、または試験開始の時間から最初のフィブリン形成までの定位形態として、強固しそして最終的な凝血塊強度となり凝血塊が溶解する凝血塊速度を通して、患者の止血のすべての位相を連続的に測定する。
いくつかの実施態様において、粘弾性解析および/または止血アナライザーは、血液と接触する容器を含む。
ここで用いられる「容器」は、固定表面(例えば、固体表面)を意味し、その一部が、粘弾性解析の間の任意の時点で、容器に置かれた血液サンプルの一部に接触する。血液サンプルの一部と接触する容器の部分はまた、容器の「内部」と称されてもよい。「容器の中へ」という段階は、容器が血液サンプルの部分と接触する底面を有することを意味しないことに留意されたい。むしろ、容器はリング形状の構造であってもよく、リングの内部は容器の内側であり、リングの内部は血液サンプルの一部と接触するリング状容器の部分である。血液サンプルは、容器内に流入し、例えば真空圧力または表面張力によってそこに保持され得る。
この定義に含まれるさらに別の種類の容器は、プレートまたはカセット(例えば、マイクロ流体カセット)に存在するものであり、ここでプレートまたはカセットは、そこに複数のチャネル、リザーバ、トンネルおよびリングを有する。連続チャネル(例えば、チャネル、リザーバ、およびリングを含む)の各々は、ここでその用語が使用されることにおいて、容器である。したがって、1つのカセットに複数の容器が存在することがある。米国特許第7,261,861号(参照により組み込まれる)には、複数のチャネルまたは容器を備えたそのようなカセットが記載されている。カセットのチャネルまたはトンネルのいずれの表面も、粘弾性解析中の任意の時点で、その表面が血液サンプルの任意の部分と接触する場合、容器の内部であってもよい。
1つの非限定的な止血分析装置は、米国特許第7,261,861号、米国特許公開番号US20070092405、および米国特許公開番号US20070059840に記載されている。
トロンボエラストグラフィを使用して粘弾性解析を行う別の非限定的な止血分析装置は、ヘモティクスCorp.(ブレインツリー、MA)によって市販されているTEGトロンボエラストグラフ止血アナライザーシステムである。
したがって、TEG分析は、進行中の血栓の機械的強度を測定するTEGトロンボエラストグラフ止血アナライザーシステムを使用して実施することができる。当該分析を行うため、血液サンプルを容器(例えば、カップまたはキュベット)に入れ、そしてプラスチックピンを容器の中心に入れる。容器の内壁との接触(または容器への凝固活性化剤の添加)により、凝血塊形成が始まる。それから、TEGトロンボエラストグラフ止血分析装置は、穏やかな静脈流を模倣し、そして凝固を活性化するために、約4.45度から4.75度で、10秒ごとに振動様式で容器を回転させる。フィブリンと血小板の凝集体が形成されると、それらは容器の内部をプラスチック製のピンに接続し、容器を動かすのに使用されるエネルギーをピンに伝達する。ピンに接続されたねじりワイヤーは、凝血塊の強度を経時的に測定し、出力の大きさは凝血塊の強度に正比例する。凝血塊の強度が時間の経過と共に増加するにつれて、典型的なTEGトレーシング曲線が発達する(図3A参照)。示された曲線は、抗凝固剤を服用していないことが知られている正常なヒト患者由来の曲線である。
ピンの回転運動は、トランスデューサによって電気信号に変換され、電気信号は、プロセッサおよび制御プログラムを含むコンピュータによってモニターすることができる。コンピュータは、電気信号を操作することができ、測定された凝固プロセスに対応する止血プロフィールを作成する。さらに、コンピュータは、視覚ディスプレイを含んでもよく、または止血プロファイルの視覚的表現を提供するようプリンタに結合されてもよい。このようなコンピュータの構成は、当業者の技能の範囲内である。図3Aに示すように、結果として生じる止血プロファイル(すなわち、TEGトレーシング曲線)は、形成される最初のフィブリン鎖、凝血塊形成の動態、凝血塊の強度(ミリメートル(mm)で測定し、dyn/cmのせん断弾性単位に換算)、および凝血塊の溶解を認識する時間の測定である。Donahue等、J. Veterinary Emergency andCritical Care:15(1): 9-16(2005年3月)もまた参照するとともに、参照によりここに組み込まれる。
これらの測定されたパラメータのいくつかの記述は、ここに記載された方法により凝固測定として使用することができ、以下の通りである。
Rは、血液がトロンボエラストグラフィアナライザーに入れてから最初のフィブリンが形成されるまでの待ち時間の期間である。これは典型的には、約30秒から約10分を要する。しかしながらRの範囲は、実施される特定のTEG分析(例えば、試験される血液成分の種類、血液成分がクエン酸添加されているかどうかなど)に基づいて変化することになる。例えば、以下の実施例1では、正常なRの範囲(すなわち、カオリンの存在下でのクエン酸加の血液成分によるもの)は、約5分から約10分である。低凝固能状態(すなわち血液の凝固能が低下している状態)の患者では、R数はより長く、凝血形成がより遅いこと示し、凝固能亢進状態(血液の凝固能が高められた状態)ではR数はより短い。ここに記載の方法において、非限定的な凝固測定値として使用することができるR値(分または秒単位)である。なお、図3Aに示すように、カロリン-組織因子で処理した血液成分を用いてTEG分析を行った場合、上述および図2Cに記載されているように、以前の活性化クロッティング時間(ACT)分析を参照し、R値は時にACT値(活性化クロッティング時間値)と称されることから、R値は「R/ACT」と表示される。
K値(分単位で測定)は、Rの終了から凝血塊が20mmに達するまでの時間であり、このK値は凝血塊形成の速度を表す。このK値は、典型的には約0から約4分(すなわち、Rの終了後)である。低凝固能状態では、K数はより長く、凝固能亢進状態ではK数はより短い。このK値は、ここに記載の方法による非限定的な凝固測定値として使用することができる。
α角度(または単にα)は、フィブリンの蓄積および架橋(凝固強化)の速さを測定する。これは、分点から曲線に接して形成される線と水平軸との間の角度である。この角度は、典型的には約47から74°である。低凝固能状態ではα度は小さく、凝固能亢進状態ではα度が大きい。このα角度値は、ここに記載の方法による非限定的な凝固測定値として使用することができる。
MAまたは最大振幅(mm)は、フィブリンおよび血小板結合の最大動的特性の直接的な関数であり、フィブリン-血小板血栓の最大強度を表す。この数は、典型的には約54mmから約72mmであり、粘弾性分析の開始後、典型的には約15から約35分の間にMAが生じる。試験した血液サンプルが減少した血小板機能を有する場合、このMAはフィブリンのみに基づく凝血塊の強度を表すことに留意されたい。MAの減少は、低血糖症状態(例えば、血小板機能不全または血小板減少症を伴う)を表しえるものであり、一方で、MAの増加(例えば、Rの減少と相まって)は、凝固能亢進状態を示唆し得る。このMA値は、ここに記載の方法による非限定的な凝固測定値として使用することができる。
LY30は、MA後の30分のトレーシング面積減少の測定値である。当該LY30は、MA後の30分の振幅減少のパーセンテージである。この数は、典型的には0%から約8%であり、ここに記載の方法による非限定的な凝固測定値である。線維素溶解が起こらない場合、MAトレーシングにおける振幅値は一定のままであるか、または凝血塊退縮のためにわずかに減少し得る。しかしながら、線維素溶解が起こると(例えば、凝血亢進状態で)、TEGトレーシングの曲線が減衰し始める。TEG分析における最大振幅に続く30分での潜在的曲線下面積での結果的減少は、LY30と称される(図3A参照)。LY30、最大振幅点後の30分の溶解パーセンテージ(溶解した凝血塊のパーセンテージとして表される)は、凝血塊溶解の速度を示す。
以下の実施例の部分に記載されている改変TEG分析のような、TEG分析の改変を行うことができることに留意すべきである。例えば、以下の実施例1において、RapidTEG(rTEG)試験は、組織因子とカオリンの両方を組み込んで、従来のカオリンパラメータおよびTEG-ACTパラメータ(秒単位で測定)を生成する。TEG-ACTは、活性化クロッティング時間に等しい(Chavez JJ.、 Anesth. Analg. 99:1290-1294, 2004を参照)。長くなったTEG-ACT時間(正常な血液成分とのACT時間と比較して)は、凝血塊形成の速度が遅いことを示す。
最後に、速度曲線は、カオリンTEG試験およびRapidTEG試験(カオリンおよび組織因子の両方を含む)から導き出すことができることに留意すべきである。これらの速度曲線は、TEGソフトウェアを使用してプロットすることができる。これらの曲線は凝血塊増殖速度を表す(MRTG、血栓生成の最大速度;およびTMRTG、血栓生成の最大速度の時間)(図3Bを参照)。MRTGまたはTMRTGのいずれかまたは両方は、ここに記載の方法による非限定的な凝固測定値として使用することができる。
出血する体質をもつ外科患者の救急処置と同様に、大量の出血にともなうショック状態で到着する外傷患者を評価するために、TEGのような装置によってもたらされる凝固の粘弾性測定がますます使用されてきている。TEGは、心臓手術および移植患者の管理ツールとして広く使用されており、血液製剤の投与をガイドするための情報を提供する(Holcolmb J.B. 等、 Ann. Surg. 256:476-486, 2012を参照)。TEGは、低分子量および未分画のヘパリンの両方を検出することができ、ヘパリナーゼカップを使用して、これらの薬剤の作用が完全に拮抗したかどうかを示すことができる。さらにまた、TEG血小板マッピング分析は、経口抗凝固剤と組み合わせて使用することができるクロピドグレルおよびアスピリンを含む抗血小板療法に対する応答を定量化するために使用される。エカリンを用いたTEG分析は、心臓手術中の組み換え型ヒルジンならびにビバリルジンをモニターするために使用されている(Koster, A. 等、J. Card. Surg. 23:321-323, 2008; Choi, T.S. 等、 Am. J. Clin.Path. 125: 290-295, 2006)。
使用することができる別の粘弾性止血分析は、トロンボエラストメトリー(「TEM」)分析である。このTEM分析は、ROTEMトロンボエラストメトリー凝固アナライザー(TEMインターナショナルGmbH、ミュンヘン、ドイツ)を使用して行うことができ、この使用はよく知られている(例えば、Sorensen, B.等、J. Thromb. Haemost., 2003.1(3): p. 551-8. Ingerslev, J.等、Haemophilia, 2003. 9(4):p. 348-52. Fenger-Eriksen, C.等、Br J Anaesth, 2005. 94(3):p. 324-9を参照)。ROTEMアナライザーにおいて、血液サンプルを容器(キュベットまたはカップとも称される)に入れ、円筒状のピンを浸漬する。ピンと容器の内壁との間には、血液によって埋められる1mmの隙間がある。ピンはスプリングによって右および左に回転する。血液が液体である(すなわち、凝固してていない)限り、その動きは制限されない。しかし、血液が凝固を始めると、凝血塊は凝血塊硬さを増してピンの回転をますます制限する。ピンは光検出器に接続されている。この動態は機械的に検出され、典型的なトレーシング曲線(TEMogram)および数値パラメータと統合されたコンピュータによって計算される(図4参照)。
ROTEMトロンボエラストメトリー凝固アナライザーでは、ピンの動きは、プロセッサおよび制御プログラムを含むコンピュータによってモニターすることができる。コンピュータは、電気信号を操作して、測定された凝固プロセスに対応する止血プロフィールを作成する。さらに、コンピュータは、視覚表示を含むことができ、または止血プロファイル(TEMogramと称される)の視覚表現を提供するためにプリンタに結合されることができる。このようなコンピュータの構成は、当業者の技能の範囲内である。図5に示すように、結果として生じる止血プロファイル(すなわち、TEGトレーシング曲線)は、形成される最初のフィブリン鎖、凝血塊形成の動態、凝血塊の強度(ミリメートル(mm)で測定し、dyn/cmのせん断弾性単位に換算)、および凝血塊の溶解を認識する時間の測定である。これらの測定されたパラメータのいくつかの記述は、ここに記載された方法により凝固測定として使用することができ、以下の通りである。
CT(クロッティング時間)は、ROTEMアナライザーに血液を入れたときから血液が凝固塊を形成し始めるまでの、待ち時間である。このCT時間は、ここに記載されている方法による非限定的な凝固測定値として使用されることができる。
CFT(凝血塊形成時間):CTから20mmポイントの凝血塊の硬さに達するまでの時間。このCFT時間は、ここに記載の方法による非限定的な凝固測定値として使用することができる。
アルファ角度:アルファ角度は2mmの振幅での接線の角度である。このアルファ角度は、ここに記載の方法による非限定的な凝固測定値として使用することができる。
MCF(最大凝血塊硬さ):MCFはトレースの最大垂直振幅である。MCFは、フィブリンおよび血小板凝血塊の絶対強度を表す。MCF値は、ここに記載の方法による非限定的な凝固測定値として使用することができる。
A10(またはA5、A15またはA20値)。このA10値は、10分(または5または15または20分)後に得られた凝血塊硬さ(または振幅)を示し、初期の段階でのMCF値の予測値を提供する。これらのA値のいずれかを(例えば、A10)、ここに記載の方法による非限定的な凝固測定値として使用することができる。
LI30(30分後の溶解指数)。LI30値は、CT後の30分のMCF値に関する残存凝血塊安定性のパーセンテージである。このLI30値は、ここに記載の方法による非限定的な凝固測定値として使用することができる。フィブリン溶解が起こらない場合、TEMトレーシング上のMCFでの振幅値は一定のままであるか、または凝血塊退縮のためにわずかに減少し得る。しかしながら、線維素溶解が起こると(例えば、凝血亢進状態で)、TEMトレーシングの曲線が減衰し始める。LI30は、TEMトレーシングからのLY30値に対応する。
ML(最大溶解)。MLパラメータは、選択された任意の時点または試験が停止されたときに見られた減少凝血塊安定性のパーセンテージ(MCFに対する%)を示す。このML値は、ここに記載の方法による非限定的な凝固測定値として使用することができる。
このように、TEGまたはTEM分析に関連するパラメータは、これらの各々がここに記載の方法により凝固測定として使用することができ、凝血塊強度を表す凝血塊の最大強度を含む。これは、TEG分析におけるMA値およびTEM分析におけるMCF値である。TEGにおける反応時間(R)(秒または分単位で測定)およびTEMにおけるクロッティング時間(CT)は、凝血塊の最初の証拠が存在するまでの時間である。凝血塊動態(K、分単位で測定)は、凝血塊硬さの達成を示すTEG試験におけるパラメータであり、そしてTEGにおけるα、またはTEMにおけるアルファ角度は、凝血塊発達の動態を示す、凝血塊反応時間の時点から発したTEGトレーシングまたはTEMトレーシングの曲線に引かれた接線からの角度測定値であり(Trapani, L.M.、 Thromboelastography:Current Applications, Future Directions", Open Journal of Anesthesiology3(1): Article ID: 27628, 5 頁 (2013); および Kroll, M..H.、 "Thromboelastography:Theory and Practice in Measuring Hemostasis," Clinical Laboratory News:Thromboelastography 36(12), 2010年12月; TEG計器の取扱説明書(ヘモネティクス Corp.から入手可能)、およびROTEM計器の取扱説明書(TEMインターナショナルGmbHから入手可能)を参照のこと)、これらすべての文献は、参照によりそのすべてがここに組み込まれるものとする。
いくつかの実施態様において、当該パラメータ(したがって凝固測定値)は、凝固が起こるときのサンプルの異なる励起レベルの観察によって記録される。例えば、容器がマイクロ流体カセットまたはカセット内の特定のチャネルである場合、血液成分サンプルは、共鳴周波数で励起され、そして凝固が生じると電磁または光源によってその挙動が観察されることができる。他の実施態様において、サンプルを励起することなく、光源を用いて血液成分サンプルの凝固測定値を観察することができる。
単一のカセットは、複数の容器(例えば、カセット内の異なるチャネル)を有することができるので、異なるサンプル(例えば、患者からの血液成分の複数の部分)は互いに容易に直接比較可能である。例えば、1つのチャネルを未処理とし、1つのチャネルを第Xa因子試薬で処理し、1つのチャネルをエカリン試薬で処理することができる。別の例では、異なる個体からの血液成分を異なるチャネルで測定し、異なる個体からの結果を単一のカセットから同時に得ることができる。
「治療的に関連する量」とは、試験される血液成分における抗凝固剤への治療的に有効な濃度範囲内にある抗凝固剤の量を意味する。治療的に関連する量は、抗凝固剤ごとに異なり、抗凝固剤の生物学的利用能および患者による摂取後の抗凝固剤の半減期によって影響を受ける。例えば、ダビガトランは半減期が12-17時間であり、腎機能障害の患者では長くなる(ベーリンガーインゲルハイムインターナショナル G.プラザキサ(ダビガトランエテキシラート)製品情報)。アピキサバンおよびリバーロキサバンは、ダビガトランよりも短い半減期を有する。しかしながら、アピキサバンは、健常ボランティアと比較して、重度の腎障害を有する患者において半減期を最大44%増加させる(Dager等、 Crit. Care Med. 41: 42-46, 2013を参照)。アピキサバンまたはリバーロキサバンの抗凝固作用は、最後の投与後少なくとも10-30時間、すなわち約2回の半減期にわたって持続することが予測されうる。しかしながら一般に、抗凝固剤の治療的に関連する量は、血液(または血液成分)中において、約75ng/mlから約500ng/mlである。例えば、アピキサバンについて、治療的に関連する量は、血液または血液成分において約275から約775ng/mlの間、または約300から約650ng/mlの間、または約400から約600ng/mlの間、または約500ng/mlである。リバーロキサバンについて、治療的に関連する量は、血液または血液成分において約40から約350ng/mlの間、または約55から約250ng/mlの間、または約70から約150ng/mlの間、または約89ng/mlである。ダビガトランについて、治療的に関連する量は、血液または血液成分において約100から約350ng/mlの間、または約150から約300ng/mlの間、または約175から約250ng/mlの間、または約200ng/mlである。
別の態様において、本発明は、患者からの血液成分における治療的に関連する量または治療的に関連する量よりも大きい量の抗凝固剤を分類するための方法を提供するものであり、当該方法は、(a)血液成分の抗凝固剤の存在を確認することであって、(i)対照血液成分サンプル(抗凝固剤を含まないとが知られている)を、第Xa因子試薬の存在下で凝固分析して、対照凝固測定値を得ること、および(ii)同じドナー(抗凝固剤の存在に関して知られていない)からの血液成分サンプルを、第Xa因子試薬の存在下で凝固分析して、第2の血液成分の凝固測定値を得ることのステップを含み、ここで第1のサンプルの凝固測定値よりも大きい第2のサンプルの凝固測定値は、血液成分において治療的なレベルでの抗凝固剤の存在を示し、さらにここで第1のサンプルの凝固測定値よりも小さいまたは同等の第2のサンプルからの凝固測定値は、血液成分において治療的に関連する量で抗凝固剤が存在しないことを示しており、ならびに(b)血液成分の抗凝固剤を分類することであって、(i)血液成分の第2の部分((a)に記載のステップにより抗凝固剤を含むことが知られている)を、エカリン試薬の存在下で凝固分析して、第2の部分の凝固測定値を得ること、および(ii)血液の第2の部分(抗凝固剤を含まないことが知られる)を、エカリン試薬の存在下で凝固分析して、当該部分の凝固測定値を得ること、のステップを含み、ここで(抗凝固剤を含まないことが知られている)部分の凝固測定値よりも大きい(抗凝固剤を含むことが知られている)部分の凝固測定値は、抗凝固剤を直接トロンビン阻害剤(DTI)として確認し、そしてここで(抗凝固剤を含まないことが知られている)部分の凝固測定値よりも小さいまたは同等の(抗凝固剤を含むことが知られている)部分の凝固測定値は、抗凝固剤を抗第Xa因子抗凝固剤として確認する、を含む。
さらにもう一つの態様において、本発明は、抗凝固剤を有する可能性のある患者において、治療的に関連する量または治療的に関連する量よりも大きい量の抗凝固剤を分類する方法を提供するものであり、当該方法は、(a)患者から血液成分の抗凝固剤の存在を確認することであって、(i)対照血液成分の対照サンプルであって、当該対照血液成分が抗凝固剤を含まないことが知られているものを、第Xa因子試薬の存在下で凝固分析して、対照サンプルの第Xa因子凝固測定値を得ること、および(ii)患者からの血液成分の患者サンプルを、第Xa因子試薬の存在下で凝固分析して、患者サンプルの第Xa因子凝固測定値を得ること、のステップを含み、ここで対照サンプルの第Xa因子凝固測定値よりも大きい患者サンプルの第Xa因子凝固測定値は、治療的に関連する量の抗凝固剤が患者に存在することを示し、そしてここで対照サンプルの第Xa因子凝固測定値よりも小さいまたは同等の第2のサンプルの第Xa因子凝固測定値は、患者において治療的に関連する量で抗凝固剤が存在しないことを示し、ならびに(b)患者の抗凝固剤を分類することであって、(i)対照血液成分の第2の対照サンプルを、エカリン試薬の存在下で凝固分析して、第2の対照サンプルのエカリン凝固測定値を得ること、および(ii)患者からの血液成分の第2の患者サンプルを、エカリン試薬の存在下で凝固分析して、第2の患者サンプルのエカリン凝固測定値を得ることのステップを含み、ここで第2の対照サンプルのエカリン凝固測定値よりも大きい第2の患者サンプルのエカリン凝固測定値は、抗凝固剤を直接トロンビン阻害剤(DTI)として確認し、そしてここで第2の対照サンプルのエカリン凝固測定値よりも小さいまたは同等の第2の患者サンプルのエカリン凝固測定値は、抗凝固剤を抗第Xa因子試薬として確認する、を含む。
別の態様において、本発明は、抗凝固剤を有する可能性のある患者において、治療的に関連する量または治療的に関連する量よりも大きい量の抗凝固剤を分類する方法であって、当該方法は、(a)患者からの血液成分の第1の患者サンプルを、第Xa因子試薬の存在下で凝固分析して、患者血液成分の第Xa因子凝固測定値を得ること、ここで抗凝固剤がないこと知られている対照血液成分の対照血液サンプルの第Xa因子凝固測定値よりも大きい患者血液成分の第Xa因子凝固測定値は、患者において治療的に関連する量の抗凝固剤が存在することを確認し、ならびに(b)患者からの血液成分の第2の患者サンプルを、エカリン試薬の存在下で凝固分析して、第2の患者サンプルのエカリン凝固測定値を得ること、ここで対照血液成分の対照サンプルのエカリン凝固測定値よりも大きい第2の患者サンプルのエカリン凝固測定値は、抗凝固剤を直接トロンビン阻害剤(DTI)として確認し、そしてここで対象サンプルのエカリン凝固測定値よりも低いまた同等の第2の患者サンプルのエカリン凝固測定値は、抗凝固剤を抗第Xa因子試薬として確認する、を含む。
別の態様において、本発明は、抗凝固剤を有する可能性のある(または抗凝固剤を有することが知られている)患者において、治療的に関連する量またはそれよりも大きい量の抗凝固剤の確認および分類するための方法を提供するものであり、当該方法は、患者からの血液成分の第1の患者サンプルを、エカリン試薬の存在下で凝固分析して、患者血液成分のエカリン凝固測定値を得ること、ここで抗凝固剤がないことが知られている対照血液成分の対照血液サンプルのエカリン凝固測定値よりも大きい患者血液成分のエカリン凝固測定値は、患者において治療的に関連する量の抗凝固剤が存在することを確認し、DTIとしてそれを分類する、を含む。いくつかの実施態様において、当該方法は、抗凝固剤を含むことが知られているまたは可能性のある患者からの血液成分の第2の患者サンプルを、FXa試薬の存在下で凝固分析して、第2の患者サンプルのFXa凝固測定値を得ること、ここで抗凝固剤がないことが知られている対照血液成分の対照サンプルのFXa凝固測定値よりも大きい第2の患者試料のFXa凝固測定値は、治療的に関連する量で抗凝固剤が存在することを確認し、そしてそれをFXa抑制剤として分類し、そしてここで対照サンプルのFXa凝固測定値よりも小さいまたは同等の第2の患者サンプルのFXa凝固測定値は、いかなる抗凝固剤もないことを示す、をさらに含む。
いくつかの実施態様において、対照サンプルの第Xa因子凝固測定値の少なくとも1.25倍である患者サンプルの第Xa因子凝固測定値は、患者において治療的に関連する量の抗凝固剤が存在することを確認する。いくつかの実施態様において、対照サンプルの第Xa因子凝固測定値よりも少なくとも1.5倍、または少なくとも1.75倍、または少なくとも2.0倍、または少なくとも2.25倍大きい患者サンプルの第Xa因子凝固測定値は、患者において治療的に関連する量の抗凝固剤が存在することを確認する。
いくつかの実施態様において、対照サンプルのエカリン凝固測定値より少なくとも1.25倍大きい患者サンプルのエカリン凝固測定値は、抗凝固剤を直接トロンビン阻害剤(DTI)として確認する。いくつかの実施態様において、対照サンプルのエカリン凝固測定値より少なくとも1.5倍、または少なくとも1.75倍、または少なくとも2.0倍、または少なくとも2.25倍大きい患者サンプルのエカリン凝固測定値は、抗凝固剤を直接トロンビン阻害剤として確認する。
「エカリン試薬」は、プロトロンビンチモーゲン(活性トロンビンの前駆体)を活性化し、トロンビン様酵素活性を有する活性化形態を生成する分子を意味する。いくつかの実施態様において、エカリン試薬はまた、エカリンに類似の酵素も含む。いくつかの非限定的なエカリン試薬は、図5に示されている。いくつかの実施態様において、エカリン試薬は、プロトロンビンチモーゲン(活性トロンビンの前駆体)を活性化するものであり、またノコギリヘビのエキス・カリナツス(Echis carinatus)の毒に由来するものである。いくつかの実施態様において、エカリン試薬はテキスタリンである。
図6は、本発明のこの非限定的な態様に関係する決定木を概略的に示す。図6に示すように、上述の方法のステップ(a)は、「検出」ステップと称されることができる。第Xa因子試薬の存在下で凝固アッセイを使用して、試験された血液成分の凝固測定値(図6の「R時間」)が正常範囲内であれば(ここで正常範囲は、抗凝固剤を服用していないことが知られているドナーからの血液成分に基づいている)、試験された血液成分が得られた患者は、抗凝固剤に接していない(すなわち、患者は試験血液成分が得られる前に抗凝固剤を投与されていなかった)と確認される。しかしながら、試験された血液成分の凝固測定値(図6の「R時間」)が正常範囲内にない(例えば正常範囲よりも長いR時間を有する)場合には、試験された血液成分が得られた患者は、抗凝固剤に接していると確認される。上記の方法のステップ(b)は、「分類」ステップと称することができる(図6を参照)。試験血液成分が抗凝固剤に接している患者(すなわち、抗凝固剤が投与されている患者)から得られたものであると確認されると、凝固分析においてエカリン試薬を使用し、抗凝固剤は、凝固測定値がエカリン正常範囲内にあるか否かによって、DTIまたは抗第Xa因子抗凝固剤のいずれかであると確認することができる。図6に示すように、エカリンを用いた凝固分析におけるR時間が正常範囲内(すなわち、抗凝固剤に接していないことが知られている健常ドナーからの血液成分の、エカリンの存在下でのR時間の範囲)である場合、患者の抗凝固剤は、第Xa因子阻害剤として確認される。しかし、エカリンを用いた凝固分析におけるR時間が正常範囲(すなわち、抗凝固剤に接していないことが知られているドナーからの血液成分の、エカリンの存在下でのR時間の範囲)より長い(すなわち、その範囲外である)場合、患者の抗凝固剤は、DTI阻害剤として確認される。
いくつかの実施態様において、患者が抗凝固剤を投与されている患者であるとことが確認されると、所望であれば、患者は、(例えば、治療的に関連する量の)拮抗薬で処置されることができる。例えば、患者がダビガトラン抗凝固剤(DTI抗凝固剤)を有することが確認された場合、ダビガトランの抗凝固作用に拮抗するよう患者に投与することができる非限定的な拮抗薬は、イダルシズマブ(ベーリンガーインゲルハイム)である。同様に、患者が第Xa因子阻害抗凝固剤を有すると確認された場合、第Xa因子阻害剤の抗凝固作用に拮抗するよう患者に投与することができる非限定的な拮抗剤は、アンデキサネットアルファ(ポルトラファーマシューティカルズ)である。DTIまたは第Xa因子阻害抗凝固剤の抗凝固作用に拮抗するよう患者に投与することができる別の非限定的な拮抗薬は、プロトロンビン複合体濃縮製剤(PCC)(例えば、Kセントラ(KCentra)、オクタプレックス、およびベリプレックス の商品名で販売されているRCC-4因子)である。
図6は、開示された方法の単なる一例にすぎないことに留意されたい。いくつかの実施態様において、分類ステップおよび検出ステップは、同時に起こる。例えば、凝固分析が、複数の凝固分を同時に実施する方法および装置を使用して実施される分析である場合(例えば、米国特許第7,261,861号に開示されたTEG方法と装置を使用すること)、1つのカセットに4つのチャネルが含まれている場合、4つのチャネルは、(a)第Xa因子試薬の存在下での、抗凝固剤を服用していないことが知られているドナーからの対照血液成分、(b)第Xa因子試薬の存在下での試験血液成分、(c)エカリン試薬の存在下での対照血液成分、ならびに(d)エカリン試薬の存在下での試験血液成分を含むことができるという展開を容易に想像することができる。対照血液成分の正常範囲が予め決定されている場合、4つのチャネルは、例えば、(a)第Xa因子試薬のない試験血液、(b)第Xa因子試薬を有する試験血液、(c)エカリン試薬のない試験血液、ならびに(d)エカリン試薬を有する試験血液でありえる。もちろん、日常的に熟練した実施者であれば、患者が抗凝固剤を服用しているかどうかを判断するのに必要な情報を確認し、またその場合は、その抗凝固剤がDTIまたは抗第Xa因子抗凝固剤であるかどうかを確認するための、任意の凝固分析を使用することができる。
以下の実施例は、ここに記載の本発明の様々な実施形態を説明することを意図するものであって、限定されるものではない。
実施例1
TEG凝固分析を用いて、ダビガトラン、リバーロキサバン、およびアピキサバンの低用量、通常用量および高用量が、これらの化合物が添加された血液中で検出さるか否かを測定した。14名の健常ヒトボランティアのドナーから得た血液に、3種類の経口抗凝固剤(OAC)、すなわちダビガトラン、リバーロキサバン、およびアピキサバンを添加した。試験された各OACについて、3ドナーからのクエン酸加の血液に、3種の異なる濃度の活性薬物(すなわち、当該化合物)を添加した。当該添加した血液サンプルおよび希釈剤を添加した対照サンプルを、カオリンおよびRapidTEG(登録商標)試薬(ヘモネティクス)を使用した、TEG(登録商標)5000トロンボエラストグラフ(登録商標)止血アナライザー(ヘモネティクスCorportion、ブレイントリー、MA、米国)により試験した。各サンプルは三重にて試験した。すべてのサンプルは、エカリン(エンザイム リサーチ ラボラトリーズ、サウスベンド、INから購入)の存在および不存在において試験された。本研究はIRBによって承認され、すべてのドナーは18歳以上であり、同意書に署名している。
サンプル調製
標準的な静脈穿刺技術、および21ゲージ針を備えるベクトンディッキンソン・バキュテイナ・プッシュボタンコレクションセットを用いて血液を採取した。血液は、抽出してから2時間以内に添加され、そして検査された。
ダビガトラン・ストックは、0.1M HCl中に溶解し、さらに1:1のDMSO:HO中で希釈した、活性ダビガトラン部分(Alsachim、フランス)から調製した。血液に添加するために使用された最終ストックは、0.1MHCl/DMSO/HO中で20ng/pLの濃度を有していた。クエン酸加の血液チューブに、このダビガトラン・ストックを添加して、クエン酸加の全血での最終濃度が500、200、および50ng/mLとなるように作製した。
ダビガトランは、待機的股関節または膝関節置換後の静脈血栓塞栓症(VTE)の防止のために(腎臓障害のない患者には220mg/日で、そして中程度の腎臓障害患者には150mg/日で)、そして腎臓障害および心房細動(AF)の患者の脳卒中の予防のために(減らされた75mg/日の用量にて)、米国で承認されている(ベーリンガーインゲルハイムインターナショナル、ダビガトランエテキシラート製品および処方情報)。ダビガトランの150mgの経口用量は、110ng/mLの最大血漿濃度(C.)を有する(Stangier等、Clin. Pharmacokinet. 47: 285-295,2008; Mueck, W.等、Thrombosis Journal 11:10 (2013)を参照)。
リバーロキサバン・ストックは、1:1のDMSO:H0溶液における、20mgイグザレルト錠剤(ヤンセン、タイタスビル、NJ)の撹拌によって調製され、1:1のDMSO:H0における20ng/uLリバーロキサバンの最終濃度に希釈された。クエン酸加の血液チューブは、このリバーロキサバン・ストックが添加され、クエン酸加の全血において500、89および22ng/mLの最終濃度が作製された。リバーロキサバンは、非弁AF成人の脳卒中および全身性塞栓症の予防のため(20mg/日;EUおよび米国)、深部静脈血栓症(DVT)および肺塞栓症(PE)の治療のため、および成人患者における再発性DVTおよびPEの予防のため(3週間1日2回15mg、続いて20mg/日;EUおよび米国)に承認されている(Wong等、 J. Thromb. Haemost. 6: 820-829,2008;ヤンセンファーマシューティカルズ、リバーロキサバン処方情報を参照)。10mgのリバーロキサバンの経口用量は、141ng/mLのCmaxを有する(Mueck, W.等、 Thrombosis Journal 11:10,2013; Kubitza D.等、Clin Pharmacol Ther. 78:412-421, 2005を参照)。アピキサバン・ストックは、2.5mgのエリキュース錠剤(ブリストル・マイヤーズ・スクイブ、ニューヨーク、NY)から、全血における1000、500および250ng/mLの最終濃度にて、同様の方法で調製された。アピキサバンは、待機的股関または膝関節置換手術のVTEの防止のため(2.5mgBID)、および非弁AF患者の脳卒中および全身性塞栓症の予防のため(5mg BID)に承認されている(ブリストル・マイヤーズSP,EEIG.アピキサバン製品特徴の概要を参照)。20mgのアピキサバンの経口用量は、460ng/mLのCmaxを有する(Mueck, W.等、Thrombosis Journal 11:10, 2013;Raghavan N等、Drug Metab Dispos. 37:74-81, 2009を参照)。対照サンプルは、各試験薬剤のために調製され、クエン酸加の血液および薬剤ストックを希釈するために使用した希釈剤のみを含む溶媒対照、ならびに不純物のないクエン酸加の血液チューブを含んでいた。
トロンボエラストグラフィ
試験は、カオリンバイアル、0.2M CaCl、RapidTEG(rTEG)バイアル、希釈剤水、および製造業者(ヘモネティクス、ブレイントリー、MA)によって提供されたディスポーザブルの透明カップおよびピン、およびエカリン(エンザイムリサーチ ラボラトリーズ、サウスベンド、IN)を使用して、TEG-5000アナライザー(ヘモネティクスCorp.、ブレイントリー、MA、米国)で行われた。すべての試験は、各用量で三重にて行われ、そしてMA(最大振幅)パラメータが定まるまで続けられた。TEGトレーシングの各種要素は、図3Aにおいて表されている。カオリン試験は、Rパラメータを生成し、それは分にて測定され、また試験の開始から、凝固の始まりがTEGトレーシング上に2mm振幅の読み取り値を生成するのに十分な抵抗性を提供する時点までに経過した時間である。このパラメータは、酵素的凝固因子の機能に関連する凝固の開始段階を表す。Rパラメータは、カオリンにより、5から10分の正常範囲を有する。長くなったR時間は、より遅い凝血塊形成を示す。Kは、分点からフィブリン架橋が20mm振幅の読み取り値を生成するのに十分な凝血抵抗を提供する時点までの時間間隔の測定値である。α角度は、K時間のRからの接線の傾きと中心線により形成された角度であり、度単位で測定されている。K時間およびα角度は凝血塊が強固になる速度を示し、そして利用可能なフィブリノゲンをフィブリンにするトロンビンの切断を示している。MAは、凝血塊強度がその最大振幅に達する点を示し、TEGトレーシングにおいてミリメートル単位で測定され、そしてGPIIb-IIIa受容体を介した最大血小板-フィブリン相互作用の最終結果を反映している(Khurana S等、J Lab Clin Med. 130:401-411,1997を参照)。
RapidTEG(rTEG)試験は、組織因子とカオリンの両方を組み込んで、TEG-ACTパラメータと同様に、従来のカオリンパラメータを生成し、それは秒単位で測定される。TEG-ACTは、活性化クロッティング時間に等しく(Chavez J.J. 等、Anesth. Analg.99:1290-1294, 2004参照) 、そして86から118秒の正常範囲を有する。長くなったTEG-ACT時間は、より遅い凝血塊形成を示す。加えて、上記カオリンおよびrTEG試験から得られた速度曲線を、TEGソフトウェアを用いてプロットした。これらの曲線は、凝血塊増殖の速度を表す(MRTG、血栓生成の最大速度;およびTMRTG、血栓生成の最大速度の時間)(図3Bを参照)。
カオリン試験のため、1mLのクエン酸加の血液サンプルに、カオリンが混合され、そして、この血液の340マイクロリットル(μL)は、カルシウム再添加のため20μLの0.2MCaClを含むTEGカップに添加された。エカリンを有するカオリン試験は、20μLのエカリン/CaCl溶液(0.16MCaCl;19 EU/mLエカリン)を使用して、同様に行われた。
RapidTEG(rTEG)試験のため、試薬は、20μL希釈剤水によって再組成され、そして製造業者の指示にしたがって5分間そのままにした。この再組成された10μLの試薬は、カルシウム再添加のため20μLの0.2MCaClを有するTEGカップに添加された。
340μLのクエン酸加の血液サンプルは、これら2つの試薬とともにカップに添加され、そしてカップの内容物は、カップの内容物をピペット中に抽出し、そしてカップに再充填することにより、3回混合された。混合の直後に試験を開始し、MAパラメータが定まるまで試験が続けられた。エカリンを有するrTEG試験は、20μLのエカリン/CaCl溶液(0.16MCaCl;19EU/mL エカリン)を使用して、上記のrTEG試験として行われた。
統計分析
統計分析は、両側スチューデントt検定を使用してなされた。すべての解析において、<0.05のP値は、統計的に有意であると見なした。
結果:
カオリン試験の結果は、表1ならびに図7A、7B、および7Cにおいて示される。
表1は、エカリンの存在または不存在下での、アピキサバン、リバーロキサバンおよびダビガトランの異なる用量が添加された健常ドナーのサンプルにおける、TEGカオリン試験凝固パラメータ感度を示す。表1において、R-反応時間;MRTG-血栓生成への最大速度;TMRTG-血栓生成の最大速度への時間。両者において統計的に有意:¥-高用量および中間の用量;
Figure 0007250744000004

§-エカリンを有する、または有しないペアサンプル。
SDR-三重にて測定された3件の独立実験での平均の標準誤差。1つの記号 p<0.05;2つの記号p<0.01;3つの記号 p<0.001。
カオリン試験におけるR、K、αおよびMRTGパラメータは、リバーロキサバンの高い濃度においてのみ、統計的有意性に達したが(表1、図7A)、アピキサバン(P<.045)(表1、図7B)およびダビガトラン(P<.038)のすべての試験濃度の存在を検出することができた(表1、図7C)。加えて、すべての薬剤について、TMRTGパラメータは、対照群と試験したすべての濃度との間で統計的に異なっていた。さらに、ダビガトランサンプルのR,αおよびTMRTGパラメータは、すべての濃度において有意に異なっており、適切な用量応答を示した(表1、図7C)。最終的に、リバーロキサバンおよびダビガトランのカオリン試験からのMA値は、対照と比較して、試験したNOACの添加によって変化せず、凝血塊強度への血小板/フィブリンの寄与に対するこれらの薬剤の作用の欠如を示している。しかしながら、250ng/mL濃度のアピキサバン・トレーシングは、MAが対照群と有意に異なるが(P<.001)、依然として正常範囲内にあったことを示している(データ示さず)。
表2は、エカリンの存在または不存在下で、アピキサバン、リバーロキサバン、およびダビガトランの異なる用量が添加された健常ドナーのサンプルにおける、RapidTEG試験凝固パラメータの感度を示す。両者において統計的に有意:§-エカリンを有する、または有しないペアサンプル。SDR-三重にて測定された3件の独立実験での平均の標準誤差。1つの記号p<0.05;2つの記号 p<0.01;3つの記号 p<0.001。
RapidTEG試験でのすべての試験された薬剤のTEG ACTパラメータは、対照群とリバーロキサバン、アピキサバンおよびダビガトランのすべての試験した濃度との間で有意に異なっていた。この試験の結果は、22ng/mL(P=0.576)のリバーロキサバン濃度を除き(表2、図7Dを参照)、表2、図7D、7E、および7Fに示されている。
さらにまた、TEG ACTパラメータは、リバーロキサバンの濃度(表2および図7Dの結果を参照)およびダビガトランの濃度(表2、図7F)の間で異ならせることができ、良好な用量反応曲線を示していた。RapidTEG試験でのアピキサバンおよびリバーロキサバンの両方についてのK、αおよびMRTGパラメータは、対照と、または試験濃度との間に統計的有意差を示さなかった。しかし、ダビガトラン群のKパラメータは、試験したより低い濃度と対照とで統計的に異なっていたが(200ng/mL、P=.003;50ng/mL、P=.003)、500ng/mL(P=.438)の濃度と対照ではそうではなく、またダビガトラン群のαパラメータは、500ng/mL(P<.01)および50ng/mL(P<.001)の濃度と対照とで統計的に異なっていたが、200ng/mL(P=.383)の濃度と対照ではそうではなかった。加えて、Kおよびαパラメータの両方は、ダビガトランの最も高い濃度を他の濃度に対して異ならせることができた(500ng/mL対200ng/mL、P=.002;500ng/mL対50ng/mL、P<.001)。さらにまた、MRTGパラメータは、2つの低い濃度のダビガトランに対して感受性であった(500ng/mL、P=.061;200ng/mL、P=.0015;50ng/mL、P<0.001)。RapidTEG試験のTMRTGパラメータは、リバーロキサバンおよびダビガトランの両方の存在に感受性であるが、アピキサバンではそうではない。さらにまた、TMRTGパラメータは、ダビガトランの濃度において異ならせることができる(500ng/mL対200ng/mL、P<0.001;200ng/mL対50ng/mL、P<0.001)。最終的に、リバーロキサバンおよびアピキサバンのRapidTEG試験のMA値は、対照と比較して、試験した薬剤濃度の添加によって変化せず、そしてダビガトラン500ng/mL濃度のMA値のみが対照群と有意に異なっていたが(P<0.01)、まだ正常範囲の中にあった(データ示さず)。
エカリンは、ノコギリヘビのエキス・カリナツス(Echis carinatus)の毒に由来する。エカリンは、プロトロンビンを活性化する(トロンビンの前駆体、図5を参照)。エカリンによるプロトロンビンのこの活性化は、低レベルの凝血促進酵素活性を有するプロトトロンビン-トロンビン中間体であるメイゾトロンビンを産生する。
表1および図8A-8Cからわかるように、カオリン試験へのエカリンの添加は、処置群および対照群の両方で、R、KおよびTMRTGの値に有意な減少を引き起こし(アピキサバンP<.001;リバーロキサバンP<.003;ダビガトランP<.004)、そして処置群および対照群の両方についてαおよびMRTGの値の有意な増加を引き起こした(アピキサバンP<.001;リバーロキサバンP<.008;ダビガトランP<0.008)(表1を参照)。さらにまた、抗第Xa因子薬剤(単に抗Xa薬剤とも称される)の存在下でのカオリン試験へのエカリンの添加は、R値を凝固能亢進範囲に著しく低下させ(<5分)、試験したより大きい投薬量を除き、対照と統計的な差はなく(アピキサバン:1000ng/mL、P=.026;500ng/mL、P=.756;250ng/mL、P=.054)、リバーロキサバン(500ng/mL、P=.0017;89ng/mL、P=.079;22ng/mL、P=.898)、一方でダビガトランの存在下でのみ、Rの用量に関連した減少がある(表1、図8Cもまた参照)。カオリン試験でのエカリンの添加では、ダビガトランまたはリバーロキサバンのサンプルのMA値を、エカリンなしで実施したサンプルと比較して変化させなかったが、アピキサバンの存在下では、MA値は、エカリンなしで行われたサンプルとは、統計的に異なっており(1000ng/mL、P=.020;500ng/mL、P=.009;250ng/mL、P<.001)、しかしながら、まだ正常範囲の中にあった(データ示さず)。
表2よりわかるように、RapidTEG試験へのエカリンの添加は、抗XaおよびDTI薬剤の両方についてのTEG-ACT時間を有意に減少させ(アピキサバン、P<.001;リバーロキサバン、P≦.001;ダビガトラン、P<.001)、リバーロキサバンおよびダビガトランの両方の存在下でのTMRTG時間も同様であり(リバーロキサバン、P<.001;ダビガトラン、P<.001)、凝固能亢進状態を増加させた(表2を参照)。一方で、リバーロキサバンまたはアピキサバンの存在下でエカリンが添加された場合、RapidTEGα角度は、試験された濃度のいずれにおいても変化しなかった。しかしながら、ダビガトランの最も低い濃度において、角度値の減少があった(200ng/mL、P=.047;50ng/mL、P=.016)。RapidTEGK値は、エカリンが添加されたとき、アピキサバンの最も高いおよび最も低い濃度(1000ng/mL、P=0.017;250ng/mL、P=0.17)およびリバーロキサバンの中間の濃度(89ng/mL、P=.044)において有意に減少したが、ダビガトランの中間の濃度(200ng/mL、P=.004)において増加した。最終的に、RapidTEG試験におけるエカリンの添加は、ダビガトランの200ng/mLの濃度のMA値のみを有意に減少させたが(p<0.05)、これは、まだ正常範囲の中にあった(データ示さず)。
実施例2
健常ヒトボランティア(抗凝固剤が投与されていない)から、血液が供与された。供与後に、ドナーから採取された血液(凝固を防ぐためにクエン酸塩が添加)を部分に分け、血液の部分には、未添加、ダビガトランまたはリバーロキサバンが添加された。それから部分は、エカリンの存在下で行われる分析を含む、トロンボエラストグラフィを使用した分析がなされた。
これらの試験にて、3名の健常ヒトボランティアの血液を採取した。各用量において、3回のトロンボエラストグラフィ分析が行われ、そして報告された数は平均した結果を示す。使用した直接トロンビン阻害剤は、ダビガトランであった。ダビガトランのストックは、1mlDMSO+750ul生理的食塩水(0.9%NaCl)+1mg 活性ダビガトラン部分であった。使用した抗第Xa因子薬剤は、リバーロキサバンであった。リバーロキサバンのストックは、20mgの錠剤が1mlの生理的食塩水および9mlのDMSOに溶解したものであった。
ダビガトランおよびリバーロキサバン各々の3つの量、すなわち、低用量、通常用量および高用量が使用された。ダビガトランでは、低用量は50ng/mlであり、通常用量は200ng/mlであり、そして高用量は500ng/mlであった。リバーロキサバンでは、低用量は22ng/mlであり、通常用量は89ng/mlであり、そして高用量は500ng/mlであった。
図9Aは、50ng/mlのダビガトラン(赤線)、200ng/mlのダビガトラン(緑線)、および500ng/mlのダビガトラン(黒線)が添加された血液成分からのカオリンTEGトレーシングを示す。図9Aよりわかるように、ダビガトランが存在することにより、試験された血液成分のR値を用量依存的に増加させる。図9Bは、対照血液成分(すなわち、抗凝固剤を服用していないことが知られているボランティアから採取され、その血液には抗凝固剤が添加されなかった)のR値と比較した、添加された血液成分のR値のプロットである。なお、図9Bは、図7Cの拡大図である。図9Bが示すように、対照血液のR値の参照範囲は、約5分から約10分の間であり、平均R値が約7.9分であった。ダビガトランの最も低い用量(50ng/ml)は、正常(すなわち対照)参照範囲外のR値となった。興味深いことに、血液成分がエカリンで処理されると、ダビガトランが添加された血液のR値は、短くなり、そして正常参照範囲に接近する(図9Cを参照)。なお図9Cは、図8Cの拡大図である。
図10は、ダビガトランの存在が、血栓生成をなす速度および時間を減少させることを示している。これらの結果は、添加された血液のMRTG(mm/分)およびTMRTG(分)を測定した、以下の表3に表されている(これらのパラメータの説明のため、図3Bを参照)。
Figure 0007250744000005
図11Aは、22ng/mlのリバーロキサバン(赤線)、89ng/mlのリバーロキサバン(緑線)、および500ng/mlのリバーロキサバン(黒線)が添加された血液成分からのカオリンTEGトレーシングを示している。図11Aより分かるように、高用量のリバーロキサバンが存在することにより、試験された血液成分のR値を用量依存的に増加させる。図11Bは、対照血液成分(すなわち、抗凝固剤を服用していないことが知られているボランティアから採取され、その血液には抗凝固剤が添加されなかった)のR値と比較した、リバーロキサバンが添加された血液成分のR値のプロットである。図11Bが示すように、対照血液のR値の参照範囲は、約5分から約10分の間にあり、対照R値が約8.2分であった。最も高い用量のリバーロキサバン(500ng/ml)は、正常(すなわち、対照)参照範囲外のR値をもたらした一方で、2つの低い用量が対照参照範囲内であった。興味深いことに、血液成分がエカリンで処理されると、リバーロキサバンが添加された血液のR値は劇的に短くなり、そして全ての3つの用量レベルは、対照参照範囲外となった(図11Cを参照)。
実施例3
この方法は、血液成分に抗凝固剤が存在すること確認するため、TEGが使用できるかどうか決定するために行われた。
経口抗凝固剤を服用しておらず、他の重大な健康問題がないことが知られている健康なボランティアからの血液を、FXaまたはエカリン試薬を使用してTEG(登録商標)止血アナライザーにて分析する。
FXa試薬(すなわち、第Xa因子試薬)は、試験されている血液成分の抗凝固剤の存在(または不存在)を検出するために用いる。経口抗凝固剤の不存在下では、FXa試薬は凝固プロセスを加速し、非常に短いR時間をもたらすことになる。直接トロンビン阻害剤および/または抗第Xa因子抗凝固剤の存在下では、プロセスは遅くされ、R時間が長くなることになる。R時間のこの違いは、経口抗凝固剤の存在を検出するために利用される。
前および後の血液サンプルが利用できるとき、R時間に関する有意差は、存在を検出するために使用されることになる。しかしながら実際の患者集団においては、(薬剤)前のサンプルが容易に利用できないと考えられる。この種の場合、サンプル健常集団から生成された参照範囲が、検出のために使用されることになる。血液サンプルからのR時間が正常範囲の中にある場合、経口抗血液凝固剤が存在しないと結論される。R時間が範囲の外にある場合、その結果は、その人/ドナーの経口抗凝固剤の存在を示すことになる。
エカリン試薬は、抗凝固剤の種類を分類するために使用される。エカリン分析からのR時間は、2つの利用できる種類(直接トロンビン阻害剤および抗第Xa因子阻害剤)を区別するのに使用される。このエカリン試薬は、FXa試薬から結果と組み合わせて、決定することに使用されることができる。参照範囲は、この試薬のサンプル健常ボランティア集団(いかなる薬剤にも接していない)から生成される。
本発明のこの非限定的な実施態様により、FXa試薬が経口抗凝固剤の存在を示す場合、エカリン試薬R時間は、分類の目的のためエカリン参照範囲に対して分析される。R時間がエカリン正常範囲の中である場合、存在する抗凝固剤は抗Xaである。(エカリン正常)範囲外にあるR時間は、直接トロンビン阻害剤の存在を示す。
複数のドナーから生成されたR時間は、参照範囲を作成するために用いた。血液は、異なる濃度で直接トロンビン阻害剤または1つまたは複数の抗Xaが添加され、そしてFXa試薬またはエカリン試薬を使用して分析された。選択された薬物濃度は、これら2つの種類の薬物の公表された治療的範囲を表す。この分析は、可能性あるドナー変動を把握するために、複数のドナーにおいて繰り返された。
図12は、FXa試薬存在下での、R時間(分)の参照範囲を示す。図12の点線は、FXa試薬の正常参照範囲(すなわち、FXa試薬の存在下での、抗凝固剤がないことが知られている血液成分のR時間)を表す。いかなる経口抗凝固剤も存在しないとき、R時間はこの範囲に入る(すなわち、約1.8分以下となる)。図12において、APおよびRVは、それぞれアピキサバンおよびリバーロキサバンを示しており、そして2つの非限定的な抗Xa薬剤を代表している。非限定的な直接トロンビン阻害剤(DTI)は、図12において、DBまたはダビガトランにより表されている。(抗凝固剤が投与されていないことが知られている)同一ドナーからの血液への、抗Xa薬剤(すなわち、APもしくはRV)のいずれの1つ、または直接トロンビン阻害剤(すなわち、DB)のインビトロ添加は、参照範囲と比較して、R時間が用量依存的に長くなる結果となった。
いくつかの実施態様において、FXaの存在下での、対照血液(すなわち、抗凝固剤が投与されなかったドナーから採取された)の参照範囲は、約1.0分から約2.0分の間にある。いくつかの実施態様において、FXaの存在下での、対照血液(すなわち、抗凝固剤が投与されなかったドナーから採取された)の参照範囲は、約1.5分から約1.9分の間にある。いくつかの実施態様において、FXaの存在下での、対照血液(すなわち、抗凝固剤が投与されなかったドナーから採取された)の参照範囲は、約1.8分である。
図12に示すように、血液成分における薬剤の100ng/mlの濃度(この量は、AP、RVおよびDBの治療的に関連する量である)は、少なくとも1.25倍、または少なくとも1.5倍、または少なくとも1.75倍、または少なくとも2倍、約1.8分の参照範囲よりも上にR時間を引き上げた。
エカリン試薬を使用することにより、直接トロンビン阻害抗凝固剤の存在は、血液成分においてトロンボエラストグラフィを使用して検出されることができる。図13は、4名のドナーからの血液成分でのR時間の測定値を示しており、(ドナーから採取された後の)その血液は、指示された量のダビガトランが添加され、そしてエカリン試薬の存在下で、トロンボエラストグラフィを使用して測定された。R時間(分)は、エカリン試薬で処置され、トロンボエラストグラフィを使用して測定された、経口抗凝固剤なしのドナー血液(抗凝固剤が投与されていないことがと知られている)から得られたR時間と比較された。
いくつかの実施態様において、エカリン試薬の存在下での、対照血液(すなわち、抗凝固剤が投与されていないドナーから採取された)の参照範囲は、約1.0分から約3.5分である。いくつかの実施態様において、エカリン試薬の存在下での、対照血液(すなわち、抗凝固剤が投与されていないドナーから採取された)の参照範囲は、約1.5分から約3.25分である。いくつかの実施態様において、エカリン試薬の存在下での、対照血液(すなわち、抗凝固剤が投与されていないドナーから採取された)の参照範囲は、約1.9分から約3分である。いくつかの実施態様において、エカリン試薬の存在下での、対照血液(すなわち、抗凝固剤が投与されていないドナーから採取された)の参照範囲は、約3.1分である。
図13は、特定のドナーによる参照範囲が変化しうることを示している。例えば、ドナー126は、低い未処置(すなわち、ドナー126からの血液にDBが添加されていない)のR時間を有する。ドナー126の血液に50ng/mlのDBを添加し、そしてエカリン試薬の存在下で、トロンボエラストグラフィを使用してR時間を測定することにより、未添加ドナー血液(すなわち、未処置または対照血液)126の未処置のR時間よりも2倍も長いR時間での増加という結果となった。図13に示すように、これは、同じドナーからの未添加血液との比較と同様に、他のドナーにあてはまった。さらにまた、集合的参照範囲として約3.1分のR時間を使用して、エカリンの存在下での、50ng/mlのDB(110ng/mlの治療的に関連する量より低いDB-上述したMuek等を参照)が添加された、ドナー117、127および146からの血液は、少なくとも1.25倍、または少なくとも1.5倍、3.1分の参照範囲より大きかった。150ng/mlのDB(DBの治療的に関連する量)のR時間を見ると、全4名のドナーからの添加された血液は、少なくとも1.25倍、または少なくとも1.4倍も、3.1分の集合的参照範囲を超えたR時間(エカリン存在下)を有していた。
エカリン試薬を使用することにより、抗第Xa因子抗凝固薬剤の存在は、トロンボエラストグラフィを使用して、血液成分において検出されることができる。
図14は、4名のドナーからの血液成分におけるR時間の測定値であって、その血液(採取後)に、指示された量のリバーロキサバン(抗Xa因子薬剤)を添加し、エカリン試薬の存在下で、トロンボエラストグラフィを用いて測定したものを示す。R時間(分)は、経口抗凝固剤なしのドナーから得られ(すなわち、抗凝固剤が投与されないことが知られている患者から採取され)、エカリン試薬で処置され、トロンボエラストグラフィを使用して測定されたR時間と比較された。
図14にて行われた分析において、エカリンの存在下での、対照血液(すなわち、抗凝固剤が投与されないことが知られているドナーから採取された)のR時間時(分)は、約1分から約4.5分の間にある(データ示さず)。いくつかの実施態様において、エカリン存在下での、対照血液(すなわち、抗凝固剤が投与されていないドナーから採取された)の参照時間は、約3.9分から約4.2分の間にある。いくつかの実施態様において、エカリン存在下での、対照血液(すなわち、抗凝固剤が投与されていないドナーから採取された)の参照時間は、約4.1分である。
図14に示すように、血液成分におけるRV薬剤の50-350ng/mlに変化する濃度(これは、RVの治療的に関連する量を表す)は、約1から4.2分の参照範囲内のR時間となる。なお、対照血液のR時間の参照範囲は、血液が採取された患者によることになる。いくつかの実施態様において、RV添加血液のR時間は、対照血液の上部境界のR時間よりも、少なくとも1.25倍、少なくとも1.5倍、または少なくとも1.75倍、または少なくとも2倍小さく遅い。
別の抗第Xa因子薬剤、すなわちアピキサバンについても同様の結果が見出された(データ示さず)。
図14のこれらの結果は、抗凝固剤を第Xa因子分子として分類するためにエカリンを用いることができることを示している。
実施例4
第Xa因子試薬およびエカリンを用いた抗凝固剤の検出と分類
1名のヒトボランティアからの血液を、ボランティアに抗凝固剤が経口投与された前と後に、第Xa因子およびヘパリンによりトロンボエラストグラフィを使用して分析した。
これらの試験において、特定の試薬(すなわち、第Xa因子またはエカリン)の正常範囲は、抗凝固剤を摂取していないことが知られている複数のドナーを用いて決定した。
そのヒトボランティアは、抗凝固剤を摂取していない(すなわち投与されていない)ことが知られていた。この例では、ボランティアに抗凝固剤を投与する前にボランティアから血液を採取した。これは「前」の血液成分サンプルである。ボランティアは、20mgのリバーロキサバン、抗第Xa因子抗凝固剤が経口投与された。リバーロキサバンの経口投与から2時間30分後、ボランティアから再び血液を採取した。これは「後」の血液成分サンプルである。
「前」および「後」のサンプルは、第Xa因子の存在下またはエカリンの存在下で、トロンボエラストグラフィを用いて分析した。第Xa因子の存在下でR時間が決定されると、その時間は検出時間と称される。エカリンの存在下でR時間が決定されると、その時間は分類時間と称される。
図15Aは、「前」の分析の結果(すなわち、ドナーに抗凝固剤を投与する前のR時間)を示す。図15Aにおいて、約1.5分(検出時間)の実線の水平線と約4.1分(分類時間)の実線の水平線は、それぞれ第Xa因子およびエカリンの参照範囲の上限を示しており、それらは抗凝固剤を服用していないことが知られている複数のヒトドナー(すなわち、対照ドナー)から決定された。図15Aに示されるように、ボランティアの血液において抗凝固薬の不存在下で(すなわち、「前」の血液サンプルで)、検出試薬(すなわち、FXa)のR時間は、検出時間の正常範囲内(すなわち、水平線より下)にある。R時間が正常範囲内(すなわち、抗凝固剤を服用していないことが分かっている対照ドナーからの血液の範囲内)にあるため、これらの知見は、ボランティアの血液中に抗凝固剤がないことを確認した(図6の決定木も参照)。
図15Bは、FXa試薬の存在下での、トロンボエラストグラフィを使用した、「前」および「後」の分析(すなわち、「後」の分析は、ドナーに抗凝固剤を投与した後に得られたR時間である)の結果を示している。ドナー患者が抗Xa薬剤である、リバーロキサバン20mgを経口投与した2時間30分後に血液を採取した。図15Aに示されるように、約1.5分の水平線は、FXa試薬の存在下での、抗凝固剤を服用していないことが知られている複数のドナーからの参照範囲の上限である(すなわち、これが検出時間の参照範囲である)。図15Bに示されるように、「前」の検出時間は約1.5分の参照範囲内にある(すなわち、より短い)。しかしながら、「後」(すなわち、ドナーがリバーロキサバンを経口投与された2.5時間後)の検出時間は、1.5分の参照範囲外である。実際、「後」の検出時間は約4.4分である。この試験によれば、「後」の検出時間は、1.5分の参照範囲R時間の2.93倍である。検出時間における参照範囲外の「後」の検出時間(R時間)は、抗凝固剤の存在を示している(図5参照)。
図15Cは、エカリン試薬の存在下での、トロンボエラストグラフィを使用した、「前」および「後」の分析の結果を示している(すなわち、「後」の分析は、ドナーに抗凝固剤を投与した後に得られたR時間である)。ドナー患者が抗Xa薬剤であるリバーロキサバン20mgを経口投与した2時間30分後に、血液を採取した。図15Aに示すように、約4.1分の水平線は、抗凝固剤を服用していないことが知られている複数のドナーから決定された、エカリン試薬の存在下での参照範囲の上限である(すなわち、これは分類時間の参照範囲である)。図15Cに示すように、ボランティアの「後」の血液のR結果は、対照血液(すなわち、抗凝固剤を服用していないことが知られているドナーからの血液)のエカリン参照範囲内にあるため、ボランティアの血液中の抗凝固剤は、抗第Xa因子試薬であることが確認され、そして直接トロンビン阻害剤ではないことが確認された(図6の決定木も参照)。
したがって、図15A-15Cにおいて、トロンボエラストグラフィ凝固分析と組み合わせてFXa試薬およびエカリン試薬を使用して、抗凝固剤を摂取した(すなわち、投与されている)ボランティアからの血液の分析により、(a)ボランティアは抗凝固剤を服用しており(対照血液と比較して、第Xa因子の存在下での検出時間における増加したR時間によって証明される)、および(b)ボランティアが摂取していた抗凝固剤は抗第Xa因子試薬であり、直接トロンビン阻害剤ではなかった(エカリンの存在下での対照血液の参照範囲内のR時間によって証明される)ことを確かめることができた。
実施例5
新規の経口抗凝固剤(OAC)は定期的なモニタリングを必要としないが、外傷や緊急手術などの臨床状況では薬物レベルを測定する必要がありうる。ダビガトランについては、臨床的または実験的な全血分析が確立されていない。トロンボエラストグラフィ(TEG(登録商標))は、止血パラメータの変化を介してダビガトランを検出および追跡する有望な結果を示している。
本試験では、次世代の完全自動化TEG(登録商標)6Sシステムとダビガトランおよびその特異的拮抗剤の作用を評価した。
TEG(登録商標)6Sシステム(ヘモネティクスCorp.、ブレインツリー、MA)は、共振周波数およびディスポーザブルのマルチチャネルマイクロ流体カートリッジを使用した、粘弾性測定に基づいている。健常ボランティアからの血液および血漿に、治療的範囲(増加濃度)でダビガトランが添加され、そしてエカリンベースの直接トロンビン阻害剤(DTI)チャネルを有するOACカートリッジで試験した。このチャネルは、ダビガトランレベルを希釈TT(Hemoclot(登録商標))で測定した、実験的外傷モデル(n=6)からのブタ血漿でも評価した。TEG6s R時間(反応時間)は薬剤レベルと相関していた。
結果:インビトロ:R時間は、全血におけるダビガトランレベルと高度に相関していた(r>0.95)。血漿中でも有意な相関が観察された(r>0.6)。
外傷モデル:R時間は、ダビガトラン血漿レベルと有意に相関していた(r=0.7)。ベースラインのR時間は、3.4±0.6分(n=4)であった。ダビガトラン投与後、R時間の著しい伸びが、R時間≧21±5.9分にて、外傷の前後に観察された。拮抗剤イダルシズマブの投与により、R時間をベースラインまで戻した(3.6±0.6分)。
表4は、異なるチャネルからのR時間を分析し、抗凝固剤を検出および分類したやり方をまとめたものである。
Figure 0007250744000006
図16に示す棒グラフは、5つの別々のブタ血漿サンプルにおいて、R時間はDTI抗凝固剤の存在下で長くなるが(赤棒)、イダルシズマブ拮抗剤の投与に際しては、R時間(緑棒)がベースライン(青棒)に戻った。したがって、ここに記載の方法を用いてサンプルを分析する場合、サンプル中の抗凝固剤の確認および分類は、その抗凝固剤の選択された拮抗により可能となる。
結論:TEG(登録商標)6sは、臨床状況における、血漿と同様に全血での止血システムにおけるダビガトランの作用を効果的に測定する可能性を有する。この新規技術は完全に自動化されており、わずか5分で全血を臨床的に関連性のある結果をもたらすことができる。
上述した本発明の実施形態は、単なる例示であることを意図しており、当業者には数多くの変形および修正が明らかであろう。そのような変形および修正のすべては、添付の特許請求の範囲に定義される本発明の範囲内にあることが意図されている。

Claims (17)

  1. 抗凝固剤を有する可能性のある患者において、治療的に関連する量またはそれよりも大きい量の抗凝固剤の拮抗を検出するための方法であって、
    a)抗凝固剤を含まないことが確認されている対照血液成分のサンプルを、エカリン試薬の存在下で凝固分析して、対照エカリン凝固測定値を得、
    b)抗凝固剤を含まないことが確認されている対照血液成分のサンプルを、第Xa因子試薬の存在下で凝固分析して、対照第Xa因子凝固測定値を得、
    c)拮抗薬を有する可能性のある患者からの血液成分のサンプルを、エカリン試薬の存在下で凝固分析し、患者エカリン凝固測定値を得、
    d)拮抗薬を有する可能性のある患者からの血液成分のサンプルを、第Xa因子試薬の存在下で凝固分析し、患者第Xa因子凝固測定値を得、
    e)対照エカリン凝固測定値と患者エカリン凝固測定値とを比較し、そして対照第Xa因子凝固測定値と患者第Xa因子凝固測定値とを比較し、
    ここで、対照エカリン凝固測定値よりも小さいまたは同等の患者エカリン凝固測定値、及び/または、対照第Xa因子凝固測定値よりも小さいまたは同等の患者第Xa因子凝固測定値は、患者における抗凝固剤の抗凝固活性に拮抗する拮抗薬を有するとみなされる患者由来の血液成分として確認することを含む方法。
  2. 凝固分析が、プロトロンビン時間分析、活性化部分トロンボプラスチン時間分析、活性化クロッティング時間分析および粘弾性解析凝固分析からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
  3. 凝固分析が、粘弾性解析凝固分析であり、そして、粘弾性解析凝固が分析容器の内部においてサンプルを含む容器を使用して行われる、請求項2に記載の方法。
  4. 粘弾性解析凝固分析が、容器及びピンを使用して行われ、ここでピンが容器に対して動くか、容器がピンに対して動く、請求項3に記載の方法。
  5. 容器は底面がない、請求項3に記載の方法。
  6. 患者がヒトである、請求項1-5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 患者が、手術、外傷、出血、脳卒中および血栓塞栓疾患からなる群から選択される状態にある、請求項1-6のいずれか一項に記載の方法。
  8. 抗凝固剤が、経口抗凝固剤である、請求項1-7のいずれか一項に記載の方法。
  9. 対照第Xa因子凝固測定値は、抗凝固剤がないことが知られている少なくとも2つの対照血液成分の少なくとも2つの第Xa因子凝固測定値の範囲にあり、及び、対照エカリン凝固測定値は、抗凝固剤がないことが知られている少なくとも2つの対照血液成分の少なくとも2つのエカリン凝固測定値の範囲にある、請求項1に記載の方法。
  10. 拮抗薬は、直接トロンビン阻害剤の抗凝固活性に拮抗する、請求項1に記載の方法。
  11. 拮抗薬は、第Xa因子阻害剤の抗凝固活性に拮抗する、請求項1に記載の方法。
  12. 拮抗薬がアンデキサネットである請求項11に記載の方法。
  13. 拮抗薬がプロトロンビン複合体濃縮製剤である請求項10または11に記載の方法。
  14. 拮抗が、患者における抗凝固剤の抗凝固活性の完全な拮抗である請求項1に記載の方法。
  15. 拮抗が、患者における抗凝固剤の抗凝固活性の部分的な拮抗である請求項1に記載の方法。
  16. 経口抗凝固剤が直接トロンビン阻害剤または第Xa因子阻害剤である、請求項8に記載の方法。
  17. 拮抗薬はイダルシズマブである、請求項10に記載の方法。
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