以下、例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
《実施形態1》
図1は、実施形態1に係る、開弁状態の排気弁100の断面図である。図2は、閉弁状態の排気弁100の断面図である。尚、図1,2において、フロート5は断面図ではなく正面図として描かれている(以下、排気弁の断面図においては同様である)。
排気弁100は、例えば空気等の気体が流入してきた場合にはその気体を流出させる一方、例えば水等の流体が流入してきた場合にはその流体の流出を阻止する。例えば、排気弁100は、送水始めの初期空気を配管などから多量に排出するときに用いられる。排気弁100は、弁装置の一例である。
排気弁100は、ケーシング1と、弁座4と、フロート5と、弾性部材8とを備えている。
ケーシング1には、流体が流入する流入口31、流体が流出する流出口32及び弁室27が形成されている。ケーシング1には、流入口31から流入した流体が流出口32へ向かって流れる流路33が形成されている。流入口31は、流出口32よりも下方に配置されている。
詳しくは、ケーシング1は、弁室27の一部を区画する筒状の周壁11aを有している。ケーシング1は、弁室27の一部を区画し、周壁11aの軸心方向の一端を塞ぐ天井17をさらに有していてもよい。より詳しくは、ケーシング1は、第1ケーシング11と、第2ケーシング12とを有している。第1ケーシング11は、軸心Xの方向に延びる筒状の周壁11aを有している。第1ケーシング11は、軸心Xの方向の両端にそれぞれ第1開口14及び第2開口15が形成されている。第1開口14が、流入口31である。第1ケーシング11の外周面のうち、第2開口15側の端部には雄ネジが形成されている。
第2ケーシング12は、軸心Xの方向に延びる有底の筒状に形成されている。第2ケーシング12は、軸心Xの方向に開口する開口16を有している。開口16が、流出口32である。第2ケーシング12の底が天井17を形成している。天井17には、連通孔18が貫通形成されている。連通孔18は、開口16と連続している(即ち、連通している)。
第2ケーシング12は、天井17が第2開口15を塞ぐように、第1ケーシング11の第2開口15側の端部に配置される。第1ケーシング11の第2開口15側の端部にユニオンナット19が取り付けられることによって、第2ケーシング12が第1ケーシング11に取り付けられる。ケーシング1には、周壁11aと天井17とで区画された弁室27が形成されている。弁室27の下端は、流入口31と連続している(即ち、連通している)。第1ケーシング11及び第2ケーシング12の内部に、流入口31、弁室27及び流出口32によって流路33が形成されている。
弁座4は、弁室27に(即ち、ケーシング1内において流入口31と流出口32との間に)設けられている。弁座4は、天井17に取り付けられている。弁座4は、第2ケーシング12の連通孔18に第1ケーシング11側からネジ締結されている。弁座4は、弁口41が貫通形成されている。弁口41は、弁室27と流出口32とを連通させている。
排気弁100は、フロートカバー61をさらに備えていてもよい。フロートカバー61は、流入口31から流入する流体のうちフロート5に接触する流体を低減する。フロートカバー61は、上方に開口する有底筒状又は椀状に形成されている。例えば、フロートカバー61は、円筒状の周壁62と、周壁62の一端に設けられた底63とを有している。底63には、複数の連通孔64が貫通形成されている。フロートカバー61は、弁室27に配置されている。フロートカバー61は、内部にフロート5を収容する。
図3は、図1のIII-III線における排気弁100の横断面図である。詳しくは、ケーシング1の第1ケーシング11の内周面には、軸心Xと平行に延びる4本のガイド21が形成されている。4本のガイド21は、軸心Xを中心とする周方向に等間隔で配置されている。フロートカバー61は、4本のガイド21に支持されている。フロートカバー61の周壁62と周壁11aとの間には、流体の流路33の一部となる隙間33aが形成されている。
フロート5は、弁室27に移動可能に配置されている。フロート5は、水等の液体に浮くように構成されている。詳しくは、フロート5は、中空状に形成されている。フロート5は、略球体に形成されている。フロート5の直径(外径)は、周壁62の内径よりも小さい。フロート5は、流入口31から液体が流入したときの液位に応じて弁口41を開閉する。具体的には、フロート5は、流入口31からの気体の流入時には弁口41を開いた状態で弁口41からの気体の流出を許容する一方、流入口31からの液体の流入時には、液体の浮力によって浮上して弁口41を閉じて弁口41からの液体の流出を阻止する。
フロート5は、ケーシング1内に流体が流入する前の状態である初期状態においては、図1に示すように、ケーシング1内においてフロートカバー61の中、より具体的には底63の上に載置されている。以下、初期状態におけるフロート5の位置を「初期位置」と称する。
弾性部材8は、弁室27において弁座4とフロート5との間に配置されている。弾性部材8は、フロート5に対して弁座4から離れる方向に弾性力を付与する。排気弁100では、弾性部材8は、コイルバネ81である。コイルバネ81は、その軸心が軸心Xと一致する状態で弁室27に配置されている。すなわち、コイルバネ81は、弁口41から鉛直下方に延びる軸回りに巻回されている。
コイルバネ81の一端部(図1では、上端部)は、第1ケーシング11の上端に支持されている。コイルバネ81は、第1ケーシング11の上端から下方に吊り下げられている。コイルバネ81の他端部(図1では、下端部)は、初期位置のフロート5と接触していない。コイルバネ81の他端部は、自由端となっている。以下、コイルバネ81の一端部を「固定端部」と称し、コイルバネ81の他端部を「自由端部」と称する。詳しくは、第1ケーシング11において、第1開口15の上端部にスナップリング82が取り付けられる。スナップリング82の上に、コイルバネ81の固定端部が載置されている。第2ケーシング12の天井17における第1ケーシング11側の面には、コイルバネ81の固定端部を収容する凹部17aが形成されている。つまり、第2ケーシング12は、凹部17aにコイルバネ81の固定端部を収容した状態で第1ケーシング11に取り付けられる。
コイルバネ81の内径は、弁座4の外形状よりも大きく、且つ、フロート5の外径よりも小さい。つまり、コイルバネ81の固定端部の内側に弁座4が配置されている。コイルバネ81の固定端部等は、弁座4よりも上方に位置しているが、コイルバネ81の大部分は、弁座4とフロート5との間に位置している。
フロート5が弁口41を閉じるまで圧縮変形したときのコイルバネ81の弾性力は、フロート5が完全に水に浸かった際にフロート5に作用する浮力(つまり、フロート5に作用する最大浮力)よりも小さく設定されている。
続いて、排気弁100の動作について説明する。以下では、排気弁100に流入する気体が空気であり、排気弁100に流入する液体が水である場合を例に説明する。
まず、排気弁100に流体が流入する前の状態においては、図1に示すように、フロート5は、フロートカバー61の底63に載置された初期位置に位置している。このとき、フロート5は、弁座4から離座しており、弁口41は開放されている。
この状態において、流入口31からケーシング1内へ空気が流入すると、空気は、ケーシング1の流路33を通って弁口41に流入する。このとき、空気は、ケーシング1の第1ケーシング11の周壁11aとフロートカバー61の周壁62との間の隙間33aを通って弁口41まで流れる。空気の一部は、フロートカバー61の連通孔64を通過し、フロートカバー61の内部に流入する。フロートカバー61の周壁62とフロート5との間には隙間があるので、空気は、その隙間を通って弁口41まで流れる。空気は、弁口41を通過し、流出口32を介してケーシング1から流出する。フロート5は、流通する空気に晒されているので、空気の流通によって揺れ動き得る。しかし、大部分の空気は、周壁11aとフロートカバー61との隙間33aを通って流れるので、フロート5の揺れ動きは低減される。
一方、流入口31からケーシング1内へ水が流入すると、水は、空気と同様に、ケーシング1の第1ケーシング11の周壁11aとフロートカバー61の周壁62との隙間33aを通って弁口41へ向かって流れていく。水の一部は、連通孔64を通過し、フロートカバー61の周壁62とフロート5との間を通って弁口41へ向かって流れていく。このとき、フロート5は、水の浮力によって浮上する。フロート5は、ケーシング1内の水位に応じて上昇する。やがて、フロート5は、コイルバネ81に接触する。その状態から水位がさらに上昇すると、フロート5もさらに上昇し、コイルバネ81を圧縮変形させていく。最終的に、フロート5は、図2に示すように、弁座4に着座して弁口41を閉じる。フロート5は、水が弁口41に達するよりも先に弁口41を閉じる。これにより、排気弁100からの水の流出が阻止される。フロート5は、流通する水に晒されているので、水の流通によって揺れ動き得る。しかし、大部分の水は、周壁11aとフロートカバー61との隙間33aを通って流れるので、フロート5の揺れ動きは低減される。
このように、排気弁100は、空気を通過させる一方、水の通過を阻止する。ここで、水の進入時に弁座4に近づくフロート5にはコイルバネ81の弾性力が抵抗として作用する。つまり、フロート5にコイルバネ81の弾性力に打ち勝つ浮力が作用したときにフロート5は上昇する。最終的に、フロート5が弁座4に着座するまでコイルバネ81が圧縮変形した場合の弾性力に打ち勝つ浮力がフロート5に作用したときにフロート5が弁座4に着座する(即ち、弁口41を閉じる)。前述の如く、フロート5が弁口41を閉じるまで圧縮変形したときのコイルバネ81の弾性力は、フロート5に作用する最大浮力よりも小さく設定されている。そのため、水位が弁口41に達するよりも先にフロート5が弁口41を閉じる。こうして、コイルバネ81が設けられていない場合と比べて、閉弁タイミングが遅くなると共に閉弁するときのケーシング1内の水位が高くなる。その結果、排気弁100は、より多くの空気を通過させることができ、十分な排気を実現することができる。
また、閉弁した状態においては、コイルバネ81は、圧縮変形しており、フロート5を弁座4から遠ざける方向に弾性力を発揮している。そのため、閉弁後において、弁座4の上流側と下流側との圧力差が小さくなると、コイルバネ81は、フロート5を弁座4から離座させる。その結果、フロート5が弁座4に固着してしまうことを防止することができる。
さらに、空気又は水がフロート5の周囲を流通する際にフロート5が空気又は水の勢いで跳ねて弁口41を閉じてしまう可能性もある。さらには、排気弁100は、振動する場合がある。例えば、排気弁100等が設置されているベースが振動する場合には、排気弁100も振動する。そのような場合には、排気弁100の全体的な振動によってフロート5が跳ね上がり、弁口41を閉じる虞もある。閉弁が早すぎると、空気を適切に排出できない。しかしながら、コイルバネ81が設けられているので、空気若しくは水の勢い又は振動によってフロート5が跳ね上がったとしても、閉弁が防止される。こうして、意図しない閉弁を防止することができる。
それに加えて、弁座4及びフロート5の損傷をコイルバネ81によって防止することもできる。つまり、排気弁100の搬送時等に排気弁100が振動すると、フロート5が弁室27内で移動する。コイルバネ81が無ければ、フロート5は、弁座4に衝突し得る。コイルバネ81を設けることによって、弁座4へのフロート5の衝突を防止することができる。その結果、弁座4及びフロート5の損傷を防止することができる。
また、コイルバネ81は、その軸心方向に伸縮するので、弁座4に近づくフロート5を弁口41へ案内することができる。つまり、浮上するフロート5がコイルバネ81に接触すると、フロート5は、コイルバネ81の端縁に嵌る。これにより、フロート5は、フロート5の中心とコイルバネ81の軸心とが概ね一致するように、ある程度位置決めされる。コイルバネ81は、その軸心方向以外の方向にも変形し得る。しかし、コイルバネ81の軸心は鉛直方向に延びているので、フロート5が浮上する際には、コイルバネ81は基本的にはその軸心方向に圧縮変形していく。コイルバネ81がその軸心方向に圧縮変形していくと、フロート5は、概ね弁口41に嵌る。こうして、フロート5は、コイルバネ81に弁口41まで案内される。
尚、排気弁100からの水の流出を許容できる使用状況においては、コイルバネ81のバネ定数や自然長を適宜設定することによって、多少の水を流出させるまで閉弁タイミングを遅らせることもできる。
このように構成された排気弁100は、図示省略の送水管又はポンプ等に設置される。排気弁100は、送水始めの初期空気を排出する一方、送水が進んで排気弁100内に水が進入すると閉弁し、空気の排出を停止すると共に水の排出も阻止する。
以下、排気管100の適用例について図4を参照しながら説明する。図4は、給水システム9の配管図である。排気弁100は、給水システム9に組み込まれている。詳しくは、給水システム9は、給水ポンプ91と、真空ポンプ92と、排気弁100とを備えている。給水システム9は、貯水槽等の水を給水ポンプ91によって給水する。真空ポンプ92及び排気弁100は、給水ポンプ91のための呼び水機構を形成する。
詳しくは、給水ポンプ91には、吸入管93及び排出管94が接続されている。給水ポンプ91は、吸入管93を介して水を吸入し、排出管94を介して水を排出する。
排気弁100は、給水ポンプ91の吸水側から排気して給水ポンプ91へ呼び水を導くための排気管95に設置される。排気管95は、排気弁100の流入口31と吸入管93とを接続する第1排気管95aと、排気弁100の流出口32と真空ポンプ92の吸入口(図示省略)とを接続する第2排気管95bとを含んでいる。
真空ポンプ92は、給水ポンプ91による給水の開始時に作動させられる。真空ポンプ92によって、吸入管93、さらには吸入管93の上流側の配管等の空気が吸引される。真空ポンプ92による吸引により、吸入管93の上流側から給水ポンプ91へ向かって水(所謂、呼び水)が吸引される。この真空ポンプ92による呼び水作用と給水ポンプ91の作動とが相俟って、給水ポンプ91からの給水が早期に開始される。このとき、真空ポンプ92が吸入管93から空気を吸引している間は、排気弁100は空気の通過を許容する。やがて、吸入管93に水が引き込まれると、第1排気管95aを介して排気弁100に水が進入する。排気弁100は、水の進入により閉弁して、水の通過を阻止する。これにより、真空ポンプ92内に水が進入することが防止される。
このように、排気弁100が給水ポンプ91又は真空ポンプ92のようなポンプ等と共に使用される場合には、ポンプ又はポンプの駆動源等の振動が排気弁100に伝わる場合もある。前述の如く、コイルバネ81を設けることによって、振動によってフロート5が跳ね上がったとしても、閉弁が防止される。
さらに、排気弁100の流出口32は、真空ポンプ92に接続されている。そのため、フロート5がケーシング1内の水の浮力ではなく、流出口32からの吸引によって浮上して弁口41を閉じる虞がある。それに対し、コイルバネ81を設けることによって、吸引によってフロート5が浮上したとしても、閉弁が防止される。
以上のように、排気弁100は、流入口31、流出口32及び弁室27が形成されたケーシング1と、弁室27に設けられ、弁室27と流出口32とを連通させる弁口41を有する弁座4と、弁室27に移動可能に配置され、流入口31から液体が流入したときの液位に応じて弁口41を開閉するフロート5と、弁座4とフロート5との間に配置され、フロート5に対して弁座4から離れる方向に弾性力を付与する弾性部材8とを備えている。
この構成によれば、気体が流入口31を介してケーシング1に流入するときには、弁口41が開いている。気体は、弁室27から弁口41を介して流出口32へ流れ、流出口32を介してケーシング1から流出していく。一方、液体が流入口31を介してケーシング1に流入するときには、ケーシング1内の液位が上昇すると、フロート5が浮上して弁口41を閉じる。液体は、弁室27から流出口32の方へ流れることができず、ケーシング1からの液体の流出が阻止される。ここで、弁座4とフロート5との間には、フロート5に弁座4から離れる方向に弾性力を付与する弾性部材8が設けられている。そのため、弾性部材8の弾性力に打ち勝つ浮力がフロート5に作用したときに、フロート5は上昇する。つまり、弾性部材8が設けられていない場合と比べて、フロート5が弁口41を閉じるタイミングが遅くなる。これにより、排気弁100を介した排気をより長い間、行うことができる。
また、弾性部材8は、コイルバネ81である。
この構成によれば、フロート5に対して弁座4から離れる方向に弾性力を付与する弾性部材8を簡易な構成とすることができる。
さらに、コイルバネ81の軸心が弁口41から鉛直下方に延びるようにコイルバネ81を配置することによって、浮上するフロート5をコイルバネ81によって弁口41に案内することができる。これにより、フロート5によって安定的に弁口41を閉じることができる。
さらに、流出口32は、真空ポンプ92に接続される。
この構成によれば、真空ポンプ92の吸引によって流出口32には負圧が作用し、ケーシング1内の流体は、流出口32を介して吸引される。このようなケースでは、フロート5に真空ポンプ92による吸引力が作用する場合がある。そのような場合であっても、弾性部材8が、閉弁するフロート5に対する抵抗として作用するので、閉弁タイミングを遅らせることができる。
また、排気弁100は、給水ポンプ91の吸水側から排気して給水ポンプ91へ呼び水を導くための排気管95に設置される。
この構成によれば、排気弁100は、給水ポンプ91の呼び水機構の一部として用いられる。排気弁100は、弾性部材8によって排気時間が十分に確保されているので、給水ポンプ91の吸水側から空気を十分に排気することができる。つまり、排気弁100は、高い呼び水性能に寄与することができる。
《実施形態2》
続いて、実施形態2に係る排気弁200について、図5を参照しながら説明する。図5は、排気弁200の断面図である。
排気弁200は、さらに逆止弁を備える点で、排気弁100と異なる。以下では、排気弁200のうち、排気弁100と同様の構成については同様の符号を付して説明を省略し、排気弁100と異なる構成を中心に説明する。
排気弁200は、ケーシング201と、弁座4と、フロート5と、弾性部材8と、逆止弁207とを備えている。
ケーシング201には、流入口31、流出口232及び弁室27が形成されている。ケーシング201は、流入口31から流入した流体が流出口232へ向かって流れる流路233が形成されている。ケーシング201は、第1ケーシング11と、第2ケーシング212と、第3ケーシング213とを有している。第1ケーシング11は、排気弁100の第1ケーシング11と同じ構成をしている。
第2ケーシング212は、排気弁100の第2ケーシング12と概ね同じ構成をしている。第2ケーシング212は、軸心Xの方向に延びる有底の筒状に形成されている。第2ケーシング212は、軸心Xの方向に開口する開口16を有している。第2ケーシング212の底が天井17を形成している。第2ケーシング212は、開口16に第1軸受275が設けられている。第1軸受275は、軸心Xを中心とする環状に形成されている。第1軸受275は、軸心Xを中心とする半径方向に延びるアーム(図示省略)によって、第1軸受275と同心状に形成されたベースリング277に連結されている。第1軸受275、アーム及びベースリング277は、全体として平板状に形成されている。第2ケーシング212の開口16の端部には、ベースリング277が載置される段差と、該段差よりも開口端に近い位置に軸心Xを中心として周方向に延びる溝とが形成されている。ベースリング277が段差に載置された状態において、溝にC形止め輪278が嵌められている。これにより、第1軸受275が、開口16に配置されている。
第3ケーシング213には、軸心Xの方向に沿って下方に開口する第1開口223と、第1開口223よりも上方に位置し、軸心Xを中心とする半径方向に開口する第2開口224と、第1開口223と第2開口224とを連通させる連通孔225とが形成されている。第1開口223の開口端部には、雌ネジが形成されている。第1ケーシング11の第1開口15側の端部に第2ケーシング212が載置された状態で、第3ケーシング213が第1ケーシング11の第1開口15側の端部にネジ締結される。これにより、第2ケーシング212及び第3ケーシング213が第1ケーシング11に取り付けられる。
ケーシング201には、周壁11aと天井17とで区画された、フロート5用の弁室27が形成されている。さらに、ケーシング201には、第2ケーシング212の開口16と第3ケーシング213の第1開口223とによって、逆止弁207用の弁室279が形成されている。第1ケーシング11、第2ケーシング212及び第3ケーシング213の内部に、流路233が形成されている。流路233の一部は、周壁11aとフロートカバー61との隙間33aで形成されている。第2開口224が、流出口232である。流出口232は、流入口31よりも上方に配置されている。
第3ケーシング213は、第2軸受276が形成されている。第2軸受276は、連通孔225内に設けられている。第2軸受は、連通孔225の内周面から延びる複数のアーム(図示省略)に連結されている。第2軸受276は、軸心Xの方向に延びる開口を有している。
逆止弁207は、弁体271と弁座272とを有している。
弁体271は、円盤状に形成されている。弁体271は、開口16の開口端の内径よりも大きな外径を有する。弁体271は、第1シャフト273と第2シャフト274とを有している。第1シャフト273及び第2シャフト274は、弁体271の両側から弁体271の軸心方向へ延びている。すなわち、第1シャフト273及び第2シャフト274は、一直線状に配置されている。第1シャフト273及び第2シャフト274は、弁体271の中心に配置されている。
弁座272は、第2ケーシング212の開口16の開口端に形成されている。
弁体271は、弁室279に収容されている。第1シャフト273は、第1軸受275に挿入されている。第2シャフト274は、第2軸受276に挿入されている。第1シャフト273及び第2シャフト274は、それぞれ第1軸受275及び第2軸受276に対して軸心Xの方向に摺動自在となっている。ケーシング201に流体が流入していない状態においては、弁体271は、その自重により弁座272に着座した状態となる(図5の実線参照)。弁体271は、弁座272に着座することによって開口16を閉鎖する。
続いて、このように構成された排気弁200の動作について説明する。排気弁200におけるフロート5の動作は、排気弁100におけるフロート5の動作と同じである。
まず、排気弁200に流体が流入する前の状態においては、フロート5は、フロートカバー61の底63に載置された初期位置に位置し、弁口41を開放している。また、弁体271は、弁座272に着座して、開口16を閉鎖している。
この状態において、流入口31からケーシング201内へ空気が流入すると、空気は、ケーシング201の流路233を通って弁口41に流入する。弁口41を通過した空気は、弁体271を押し上げて開弁させる。空気は、開口16から第3ケーシング213の第1開口223及び連通孔225を順に通過し、流出口232を介してケーシング201から流出する。
一方、流入口31からケーシング201内へ水が流入すると、水は、空気と同様に、弁口41へ向かって流れていく。このとき、フロート5は、水の浮力によって浮上する。やがて、フロート5は、弁座4に着座して弁口41を閉じる。フロート5は、水が弁口41に達するよりも先に弁口41を閉じる。これにより、排気弁200からの水の流出が阻止される。
このとき、排気弁200においては弾性部材8としてのコイルバネ81が閉弁タイミングを遅らせるので、排気弁200を介した十分な排気が実現される。
このように構成された排気弁200は、図示省略の送水管又はポンプ等に設置される。排気弁200は、送水始めの初期ガスを排出する一方、送水が進んで排気弁200内に水が進入すると閉弁し、ガスの排出を停止すると共に水の排出も阻止する。
ここで、排気弁200は逆止弁207を有しているので、流出口232からケーシング201内に流体が流入してきても、逆止弁207が閉弁して、流体の逆流を防止する。例えば、排気弁200が図4に示すような給水システム9に組み込まれている場合、給水ポンプ91への呼び水の引き込みが完了した後は真空ポンプ92の作動が停止される。その結果、排気弁200の流出口232には吸引力が作用しなくなる。その一方で、給水ポンプ91が吸入管93を介して水を吸引するため、排気弁200の流入口31には給水ポンプ91による吸引力が作用し得る。そのような場合に、流出口232からケーシング201内に空気が流入しても、逆止弁207が開口16を閉弁するので、排気弁200を空気が逆流することが防止される。その結果、排気管95を介して吸入管93に空気が流入することが防止され、給水ポンプ91による給水が適切に継続される。
以上のように、排気弁200は、流入口31、流出口232及び弁室227が形成されたケーシング201と、弁室227に設けられ、弁室227と流出口232とを連通させる弁口41を有する弁座4と、弁室227に移動可能に配置され、流入口31から液体が流入したときの液位に応じて弁口41を開閉するフロート5と、弁座4とフロート5との間に配置され、フロート5に対して弁座4から離れる方向に弾性力を付与する弾性部材8とを備えている。
この構成によれば、気体が流入口31を介してケーシング201に流入するときには、弁口41が開いている。気体は、弁室227から弁口41を介して流出口232へ流れ、流出口232を介してケーシング201から流出していく。一方、液体が流入口31を介してケーシング201に流入するときには、ケーシング201内の液位が上昇すると、フロート5が浮上して弁口41を閉じる。液体は、弁室227から流出口232の方へ流れることができず、ケーシング201からの液体の流出が阻止される。ここで、弁座4とフロート5との間には、フロート5に弁座4から離れる方向に弾性力を付与する弾性部材8が設けられている。そのため、弾性部材8の弾性力に打ち勝つ浮力がフロート5に作用したときに、フロート5は上昇する。つまり、弾性部材8が設けられていない場合と比べて、フロート5が弁口41を閉じるタイミングが遅くなる。これにより、排気弁200を介した排気をより長い間、行うことができる。
また、排気弁200は、ケーシング201内において弁座4と流出口232との間に配置され、流出口232から流入する流体が弁座4の方へ流れるのを阻止する逆止弁207をさらに備える。
この構成によれば、流体が排気弁200を逆流することが防止される。前述の如く、排気弁200が給水ポンプ91へ呼び水を導くために用いられる場合には、給水ポンプ91への呼び水の導入が完了した後は真空ポンプ92の作動が停止される。つまり、排気弁200の流入口31から流出口232の方へ向かう吸引が停止される。その場合、給水ポンプ91の吸引により、流出口232から流入口31へ向かう流れ、即ち、排気弁200を逆流する流れが生じ得る。それに対し、排気弁200には逆止弁207が設けられているので、流体の逆流が防止される。これにより、給水ポンプ91の適切な給水が維持される。
さらに、逆止弁207が排気弁200と一体的に形成され、逆止弁を別途設ける必要がないので、逆止弁207を含む全体的な構成を簡易且つコンパクトに形成することができる。
また、逆止弁207は、流路233のうち流体が下方から上方へ流れる部分に配置され、弁体271は、その自重により弁座272に着座するように構成されている。
この構成によれば、弁体271を着座させるための弾性部材等を別途設ける必要がないので、逆止弁207を簡易且つコンパクトに形成することができる。ひいては、排気弁200を簡易且つコンパクトに形成することができる。
《その他の実施形態》
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、前記実施形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、前記実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。また、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、前記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
例えば、ケーシング1,201の構成は、一例に過ぎず、任意の構成を採用し得る。例えば、ケーシング1,201は、ガイド21が設けられていなくてもよい。つまり、フロートカバー61の支持構造は、ガイド21によるものに限られない。
また、フロートカバー61は、省略されてもよい。その場合、ケーシング1,201には、初期位置におけるフロート5を支持するフロート受けが設けられる。気体及び液体は、周壁11aとフロート5との間を通って流通する。
弾性部材8は、コイルバネ81に限定されない。例えば、弾性部材8は、板バネ等であってもよい。例えば、弁室27における弁座4とフロート5との間に、ケーシング1の内壁から軸心Xを中心とする半径方向内側に延びる複数の板バネが弾性部材として設けられていてもよい。板バネの半径方向内側端は、上昇するフロート5が接触する程度の位置まで延び且つ軸心Xまでは延びていない。フロート5は、板バネを上方へ撓ませながら浮上して、弁口41を閉じる。このような構成であっても、フロートに対して弁座から離れる方向に弾性力を付与する弾性部材を実現することができる。
また、コイルバネ81の自由端部は、初期位置のフロート5に接触していてもよい。これにより、フロート5は、初期位置から浮上するときから、コイルバネ81により弾性力を付与されつつ、コイルバネ81によって弁口41まで案内される。
排気弁100,200は、給水ポンン91への呼び水のために使用されるものに限定されない。排気弁100,200は、気体を通過させ且つ液体の通過を阻止することが要求される部分に適用することができる。例えば、配管又は装置からの空気抜きに使用するエアベント(自動空気抜き弁)として排気弁100,200を使用することができる。また、前述の如く、弾性部材8の弾性力しだいでは、排気弁100,200が多少の液体を通過させるように排気弁100,200を構成することもできる。