JP7248482B2 - 座屈荷重算定方法 - Google Patents

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本発明は、座屈荷重算定方法に関する。
鉄骨造により形成される建物においては、角形鋼管やH形鋼等の形鋼により形成される柱が、圧縮力により不安定になる座屈現象の防止が重要になる。柱には、階高が高いために一般の柱に対して長さの長い柱や、吹き抜け空間を構成するなどして複数階に跨るために長さが長くなる柱、柱と梁がピンで取り合うために梁による補剛効果が期待できない柱があり、これらの柱を「長柱」と称する。
長柱を含む鉄骨造の柱の設計方法として、従来は、非特許文献1に基づく設計方法と、座屈たわみ角法(参照として、非特許文献2)を用いた座屈固有値解析に基づく設計方法が適用されている。非特許文献1(鋼構造座屈設計指針)に基づく設計方法は、長柱に取り付く梁や柱の曲げ剛性(剛度)を変数としてモデル化するものであり、長柱の水平移動が拘束される場合と拘束されない場合の二通りのケースがあり、通常のラーメン架構では水平移動が拘束されないケースが選定される。しかしながら、このケースでは、長柱が不安定になることをサポートする他の部材の効果が完全に無視されることから、長柱にとっては極めて不利な計算結果となる。
非特許文献1に基づく設計方法の場合に生じる上記課題を解消しながら、比較的簡便な設計方法として、座屈たわみ角法を用いた座屈固有値解析に基づく設計方法がある。この設計方法では、建物を構成する柱と梁を忠実にモデル化すれば厳密解を得ることができるものの、その一方で、部材数が増えることにより計算量が飛躍的に増加する。そこで、可及的にシンプルなモデル化に基づく設計方法が求められる。尚、「座屈固有値解析」とは、長柱および長柱の上下に取り付く柱を、幾何学的非線形を考慮できる座屈たわみ角法によりモデル化し、他の部材を通常の梁要素などでモデル化する解析手法である。柱を座屈たわみ角法によりモデル化すると、柱への軸力を増やすに従い、水平力に対する抵抗力が低下していき、不安定になり易くなる。長柱及び長柱の上下の柱に加わる軸力を徐々に増やし、建物の全体剛性行列の行列式がゼロになるとき、すなわち、建物全体が外力への抵抗を失って不安定になる際の軸力を、長柱の座屈耐力とする解析手法である。
上記する可及的にシンプルなモデル化に基づく設計方法は、非特許文献3に基づいて、長柱一本のみのモデル化に基づく設計方法である。長柱は、例えば、図1や図2に示すように、建物の中間階もしくは最下階に計画されることが多い。そこで、図3に示すように、長柱の周辺部材の影響をバネに集約したシンプルなモデルが適用できる。尚、図3において、バネ1は、長柱の柱頭に取り付く梁・柱等の回転拘束効果を表し、バネ2は、長柱の柱脚に取り付くベースプレート・梁・柱等の回転拘束効果を表し、バネ3は、長柱の水平移動を拘束する効果を表す。
図3に示すモデルにおいては、バネ3の剛性 = 層剛性として評価することができる。一方、図3に示すようなモデル化には固有の課題がある。例えば、バネ1とバネ2には長柱の上下に取り付く柱の影響が含まれ、それらの柱も軸力の影響を受けて剛性が低下することから、バネ1とバネ2の剛性も軸力の上昇に応じて低下する。しかしながら、軸力を変数として剛性が変化するバネをモデル化することは極めて難しい(第一課題)。また、図3では、長柱に初期不整を与えない限り座屈モードを得ることができない。さらに、得られた座屈モードは、以下で詳説するように精度に欠けるものとなり、座屈時の長柱の変形状況を把握できないといった課題がある(第二課題)。
第一課題に対応するべく、図4に示すように、非特許文献4,5,6に基づいて、長柱の上下に取り付く柱までを含めたモデルが提案される。図4において、三本の柱のうち、中央の柱が長柱であり、その上下に通常の柱(長柱上下一般柱)が取り付いている。図4における回転拘束バネは、柱(長柱を含む)に取り付く梁の影響を表したものである。
図3のモデルにおいては,水平バネの剛性 = 層剛性と見なすことができた。一方、図4のように複数の層を対象としたモデルにおいては、水平バネの剛性は層剛性とはならない。そこで、水平バネの剛性を求めるには、層における水平外力を絶対変位で除す必要がある。両者の違いを図5と表1に示す。
Figure 0007248482000001
表1において、P1,P2,P3はそれぞれ、各階に作用する水平外力であり、δ1、δ2、δ3はそれぞれ、各階の層間変形を示す。一般的な構造計算ソフトでは層剛性の出力は容易であるが、水平外力や絶対変位を求めるためには表計算ソフト等を使った別途作業が必要となり、長柱が高い階にある場合は煩雑な作業となり得る。加えて、モデルによっては水平バネ剛性が負となってしまうこともあり得る。さらには、図4に示すモデルにおいても、図3に示すモデルと同様に、長柱に何等かの初期不整を与えない限り、座屈モードを得ることができない。
鋼構造座屈設計指針 第4版 2018 日本建築学会 若林實 鉄骨構造学詳論 丸善 1985 高田明伸,多田元英,向出静司 「水平荷重による柱軸力を受ける鋼構造ラーメン骨組中の柱の座屈長さについての考察」 日本建築学会構造系論文集 第78巻 第693号 pp.1969-1978、2013.11. 木村衛,鈴木芳郎,小河利行,五十嵐規矩夫,大田秀彦 「骨組の水平剛性が骨組の内柱材の座屈長さに与える影響」 日本建築学会学術講演梗概集 pp.253-254、1995.8. 五十嵐規矩夫,佐藤圭一 「水平補剛剛性を考慮した骨組内柱材の座屈解析」 日本建築学会構造系論文集 第73巻 第633号 pp.200-2017、2008.11. 「CFT構造計算規準化に向けて -長周期地震動も考慮した規準-」日本建築学会大会(九州)構造部門パネルディスカッション資料 pp.59-62、2016.8.日本建築学会
上記するように、非特許文献1に基づいて全部材をモデル化する手法では計算時間が膨大になり得る。一方,図3に示すように長柱一本モデルでは、長柱に取り付く柱の影響を考慮するのが難しい。また,図4に示すような複数階モデルでは、層剛性を水平バネ剛性に置き換えるのが煩雑になる。さらに、図3及び図4に示すシンプルなモデル(簡略モデル)では、座屈モードを得るために長柱に初期不整を与えなければならないという課題がある。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、モデル作成時間を含む解析時間を可及的に短縮し、煩雑なモデル化を解消しながら、精度よく座屈荷重を算定することのできる、座屈荷重算定方法を提供することを目的としている。
前記目的を達成すべく、本発明による座屈荷重算定方法の一態様は、
コンピュータ内において、建物の架構のフレームモデルを作成して座屈荷重を算定する、座屈荷重算定方法であって、
長柱と、該長柱の側方にある長柱側方一般柱を含むAフレームと、該長柱と該Aフレームとを繋ぐ梁と、により形成されるフレームモデルを、前記長柱と、前記梁と、前記長柱側方一般柱と、前記Aフレームの層剛性を有する第一ブレースと、により形成される長柱含有階置換フレームを含む置換フレームモデルに置き換える工程と、
前記置換フレームモデルに対して座屈固有値解析を行い、座屈荷重を算定する工程と、を有することを特徴とする。
本態様によれば、長柱の周囲にある架構の水平剛性を、水平バネではなくてブレースに置換して置換フレームモデルを作成し、置換フレームモデルに対して座屈固有値解析を行うことにより、建物を忠実に再現した精算モデルに比べてモデル作成時間を含む解析時間を可及的に短縮することができる。また、層剛性を、水平バネ剛性ではなくてブレースに置換することにより、煩雑なモデル化を解消することができる。さらに、層剛性をブレースに置換した置換フレームモデルに対して座屈固有値解析を行うことにより、精算モデルによる解析結果に近接した解析結果を得ることができ、精度よく座屈荷重を算定することができる。
長柱と、梁と、長柱側方一般柱と、Aフレームの層剛性を有する第一ブレースと、により形成される長柱含有階置換フレームを含む置換フレームモデルがモデル対象である実際の建物としては、例えば長柱を含む平屋の建物が挙げられる。また、座屈荷重の算定の他、座屈モードも特定することができる。尚、「長柱の側方にある」とは、長柱の側方であって離れた位置にあることの他、長柱に隣接して位置することを含んでいる。
ここで、第一ブレースの剛性をAフレームの層剛性から求める方法は、一般の微小変形理論に基づく手計算や市販の構造計算ソフトを用いて行うことができる。しかしながら、置換フレームを構成した後の座屈荷重算定に際しては、微小変形理論に基づく算定方法は幾何剛性を考慮しておらず、フレームモデルの大変形に対応し難いことから、部材が変形した後の力の釣合いに基づいて応力と変形の関係を規定する、座屈たわみ角法を適用するのが好ましい。
また、本発明による座屈荷重算定方法の他の態様は、前記フレームモデルが、前記長柱の上方もしくは下方にある複数の長柱上下一般柱と、梁とを含んで、長柱を有さないBフレームをさらに備えている場合において、
前記置換フレームモデルに置き換える工程では、
前記長柱上下一般柱と、前記梁と、前記Bフレームの層剛性を有する第二ブレースと、により形成される長柱非含有階置換フレームを、前記長柱含有階置換フレームに結合して前記置換フレームモデルを作成することを特徴とする。
本態様によれば、長柱含有階置換フレームと、長柱非含有階置換フレームが相互に接合された複数階建物をモデル化し、座屈固有値解析を行うことにより、複数階を有する建物であって、いずれかの階に長柱を有する建物の全般をモデル化して、その座屈荷重を精度よく算定することができる。尚、第二ブレースの剛性をBフレームの層剛性から求める方法は、第一ブレースの剛性をAフレームの層剛性から求める方法と同様に、一般の微小変形理論に基づく手計算や市販の構造計算ソフトを用いた方法により行うことができる。
また、本発明による座屈荷重算定方法の他の態様において、設定された層間変形角に達した際に前記フレームモデル内の部材が塑性化している場合には、塑性化している部材を含む前記Aフレームもしくは前記Bフレームの剛性を有する前記第一ブレースもしくは前記第二ブレースにより、前記置換フレームモデルを作成することを特徴とする。
本態様によれば、フレームモデル内において一つもしくは複数の部材が塑性化している場合に、塑性化している部材を含むAフレームもしくはBフレームの剛性を有する第一ブレースもしくは前記第二ブレースによって置換フレームモデルを作成することにより、大地震時における長柱の座屈荷重をより精度よく算定することができる。
以上の説明から理解できるように、本発明の座屈荷重算定方法によれば、モデル作成時間を含む解析時間を可及的に短縮し、煩雑なモデル化を解消しながら、精度よく座屈荷重を算定することができる。
長柱が建物の中間層に存在するフレームモデルの一部を示す図である。 長柱が建物の最下階に存在するフレームモデルの一部を示す図である。 長柱の周辺部材の影響をバネに集約したシンプルなフレームモデルを示す図である。 長柱と上下の柱をフレームモデルとし、柱の周辺部材の影響を回転拘束バネと水平バネとしたフレームモデルを示す図である。 水平バネ剛性と層剛性のそれぞれの算定方法を説明する図である。 実施形態に係る座屈荷重算定方法の一例のフローチャートである。 従来のフレームモデルである精算モデルを示す図である。 実施形態に係る座屈荷重算定方法において作成される置換フレームモデルの一例を示す図である。 図8に示す置換フレームモデルの作成方法を説明する図である。 座屈固有値解析例1におけるフレームモデルを示す図であって、(a)は、比較例1に係る精算モデルを示す図であり、(b)は、実施例1に係る置換フレームモデルを示す図であり、(c)は、比較例2に係る水平バネモデルを示す図である。 座屈固有値解析例1における座屈モード図であって、(a)は、比較例1の座屈モード図であり、(b)は、実施例1の座屈モード図であり、(c)は、比較例2の座屈モード図である。 座屈固有値解析例2におけるフレームモデルを示す図であって、(a)は、比較例3に係る精算モデルを示す図であり、(b)は、実施例2に係る置換フレームモデルを示す図であり、(c)は、比較例4に係る水平バネモデルを示す図である。 座屈固有値解析例2における座屈モード図であって、(a)は、比較例3の座屈モード図であり、(b)は、実施例2の座屈モード図であり、(c)は、比較例4の座屈モード図である。
以下、各実施形態に係る座屈荷重算定方法について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
[実施形態に係る座屈荷重算定方法]
はじめに、図6乃至図9を参照して、実施形態に係る座屈荷重算定方法の一例について説明する。ここで、図6は、実施形態に係る座屈荷重算定方法の一例のフローチャートである。また、図7は、従来のフレームモデルである精算モデルを示す図であり、図8は、実施形態に係る座屈荷重算定方法において作成される置換フレームモデルの一例を示す図である。さらに、図9は、図8に示す置換フレームモデルの作成方法を説明する図である。
実施形態に係る座屈荷重算定方法が解析対象とする建物は、図7の精算モデルにて詳細に示すように、四階建ての建物であり、建物の左端には、二階床~四階床まで連続する長柱が存在し、長柱の側方には、三本の長柱側方一般柱がスパンL1,L2,L3を置いて三組存在し、長柱の上下にはそれぞれ、複数の長柱上下一般柱と梁により形成される一階フレームと四階フレームが存在する。
第1の実施形態に係る座屈荷重算定方法では、まず、図6に示すように、コンピュータ内にインストールされている市販の構造計算ソフトを用いて、例えば図7に示す精算モデルをモデル化し、構成部材の有する初期の断面剛性(断面積、ヤング率等)を入力して、フレーム応力解析を実施する。ここで、構造計算ソフトとしては、製品名:BUS-6(株式会社構造システム社製)や、製品名:Super Build/SS7(ユニオンシステム株式会社製)等を適用でき、フレームモデルの各階に各種の荷重(地震時水平力や風荷重等)を載荷した際の各階の変形量を算出する等し、各階(平屋建物も含む)の層剛性を特定するための準備計算を行う(ステップS1)。
フレーム応力解析においてコンピュータ内にて作成されるフレームモデルは、図7に示す精算モデルとなる。この精算モデルでは、二階床から四階床まで延びる長柱が含まれる二階と三階の長柱の側方において、長柱側方一般柱と梁により形成されるフレームを、「Aフレーム」とする。また、長柱が含まれない一階と四階において、長柱の直上及び直下に位置する長柱上下一般柱の側方において、長柱上下一般柱と梁により形成されるフレームを、「Bフレーム」とする。図7に示すフレームモデルでは、上下の長柱上下一般柱の間に長柱が存在し、長柱の側方にAフレームが存在し、長柱上下一般柱の側方にBフレームが存在し、それぞれが梁にて結合されることにより、精算モデルが形成されている。
ここで、「長柱側方一般柱」とは、長柱のような長さを有さず、一般的な長さの柱(3m程度)であって、かつ、長柱の側方に位置する一般柱を意味している。また、上記する「長柱上下一般柱」とは、長柱のような長さを有さず、一般的な長さの柱(3m程度)であって、かつ、長柱の上方もしくは下方の階に存在する一般柱を意味している。
フレーム応力解析を実施して載荷する荷重と各階の変形量の関係等が特定された後、Aフレームを第一ブレースに置換する(ステップS2)。
第一ブレースは図7において一点鎖線で囲むAフレームの層剛性を有しており、層剛性は、表1に示すように、フレーム応力解析を実施して、Aフレームの負担する層せん断力と、Aフレームが含まれる階の変形量との関係から容易に算定することができる。そして、図8に示すように、Aフレームの層剛性を有する片流れブレースとして第一ブレースを表すことにより、長柱と、長柱の側方にある長柱側方一般柱を含むAフレームと、長柱とAフレームとを繋ぐ梁と、により形成されるフレームモデル(精算モデル)を、長柱と、梁と、長柱側方一般柱と、Aフレームの層剛性を有する第一ブレースとにより形成される長柱含有階置換フレームに置換する(ステップS3)。
ここで、第一ブレースの剛性をAフレームの層剛性から求める方法、及び、第二ブレースの剛性をBフレームの層剛性から求める方法はいずれも、一般の微小変形理論に基づく手計算や市販の構造計算ソフトを用いて求めることができる。
第一ブレースの層剛性k2(Aフレームの層剛性)は、他の第二ブレースの層剛性k1、k3(以下で説明するBフレームの層剛性)とともに、図9に示すように、以下の式(1)にて表すことができる。
Figure 0007248482000002
片流れの第一ブレースをモデルに組み込むには、ブレースが取り付く柱や梁といった部材が必要になる。第一ブレースが取り付く柱や梁には、実際に配置されている位置と実際の部材を採用する。第一ブレースが取り付く梁は、長柱の柱頭・柱脚の回転を拘束するバネの役割を果たす。梁の両端は、実状に合わせて、剛、半剛、ピンのいずれかの接合構造を適用することができる。第一ブレースが取り付く長柱側方一般柱については、柱脚をピンとして柱単体の水平剛性を低くし、第一ブレース以外の水平剛性を極力低減するのが好ましい。
次に、ステップS1において実施されたフレーム応力解析における、荷重と各階の変形量の関係等に基づき、Bフレームを第二ブレースに置換する(ステップS4)。
第二ブレースは図7において一点鎖線で囲むBフレームの層剛性を有しており、層剛性は、表1に示すように、フレーム応力解析を実施して載荷する荷重と各階の変形量の関係から容易に算定することができる。そして、図8に示すように、Bフレームの層剛性を有する片流れブレースとして第二ブレースを表すことにより、長柱の上方もしくは下方にある複数の長柱上下一般柱と、梁とを含んで、長柱を有さないBフレームフレームモデル(精算モデル)を、長柱上下一般柱と、梁と、Bフレームの層剛性を有する第二ブレースとにより形成される、上下の長柱非含有階置換フレームに置換する(ステップS5)。
第二ブレースの層剛性k1、k3(上下のBフレームの層剛性)は、図9に示すように、式(1)にて表すことができる。また、第二ブレースをモデルに組み込む際においても、上記するように第一ブレースをモデルに組み込む際の留意点が踏襲される。
ステップS3にて既に作成されている長柱含有階置換フレームと、ステップS5にて作成された長柱非含有階置換フレームを結合することにより、置換フレームモデルを作成する(ステップS6)。
コンピュータ内にて作成された置換フレームモデルに対して、座屈固有値解析を行うことにより、座屈荷重を算定するとともに座屈モードが特定される(ステップS7)。
実施形態に係る座屈荷重算定方法によれば、長柱の周囲にある架構の水平剛性を、水平バネではなくてブレースに置換して置換フレームモデルを作成し、置換フレームモデルに対して座屈固有値解析を行うことにより、建物を忠実に再現した精算モデルに比べてモデル作成時間を含む解析時間を可及的に短縮することができる。
また、層剛性を水平バネ剛性ではなくてブレースに置換することにより、煩雑なモデル化を解消することができる。
さらに、以下の座屈固有値解析例1,2において詳説するように、層剛性をブレースに置換した置換フレームモデルに対して座屈固有値解析を行うことにより、精算モデルによる解析結果に近接した解析結果を得ることができ、精度よく座屈荷重を算定することができる。
尚、図6に示す座屈荷重算定方法が解析対象とする建物は、四階建ての建物であり、その途中階に長柱が存在する建物であるが、仮に長柱を有する平屋建ての建物を解析対象とする場合は、図6のフローチャートにおいて、ステップS3で置換フレームモデルが作成され、その後にステップS7の座屈固有値解析を行うことになる。
また、ステップS1のフレーム応力解析においては、地震レベルに応じた層間変形角(1/100、1/50等)が生じている際に、フレームモデル内の部材が塑性化している場合には、ステップS2において、塑性化している部材を含むAフレームの剛性を有する第一ブレースに置換し、同様に、ステップS4において、塑性化している部材を含むBフレームの剛性を有する第二ブレースに置換した後、ステップS6において置換フレームモデルを作成する。尚、梁の端部が塑性化し、ヒンジが生じている場合には、実状に合わせて端部の接合条件をピン接合とする。
この方法によれば、フレームモデル内において一つもしくは複数の部材が塑性化している場合に、塑性化している部材を含むAフレームもしくはBフレームの剛性を有する第一ブレースもしくは第二ブレースによって置換フレームモデルが作成されていることから、大地震時における長柱の座屈荷重をより精度よく算定することができる。
[座屈固有値解析例]
<座屈固有値解析例1>
次に、図10及び図11を参照して、本発明者等により実施された座屈固有値解析例1について説明する。ここで、図10は座屈固有値解析例1におけるフレームモデルを示す図であって、図10(a)は、比較例1に係る精算モデルを示す図であって各部材の仕様をともに示した図であり、図10(b)は、実施例1に係る置換フレームモデルを示す図であって第一ブレースと第二ブレースの断面積をともに示す図であり、図10(c)は、比較例2に係る水平バネモデルを示す図であって各バネのバネ定数をともに示した図である。また、図11は座屈固有値解析例1における座屈モード図であり、図11(a)、図11(b)、及び図11(c)はそれぞれ、比較例1、実施例1、及び比較例2の座屈モード図である。
図10(a)からも明らかなように、解析対象モデルは、4階建ての建物で、途中階の左端に長柱を備えた建物である。
図11に示す比較例1の座屈モード図より、長柱が座屈する際には、長柱と長柱上下一般柱が鉛直方向に圧縮される。長柱が圧縮される際には、長柱に取り付いている梁もその変形に追従する。一方、長柱の右側にある二本の長柱側方一般柱はそれほど圧縮されないため、長柱に取り付く梁(図11(a)おいて二点鎖線の楕円で包囲した部材)が傾いて軸力が生じる。また、図10(a)に示すAフレーム及びBフレームに対して右から左に倒そうとする水平力が生じる。その結果、図11(a)に示すように、左側にスウェイした座屈モードとなる。
一方、図10(b)のモデルにおいても同様に、長柱が圧縮された際には、長柱に取り付く梁が追随して梁に軸力が生じる。その結果、第一ブレースと第二ブレースには右から左へ水平力が作用することとなり、図11(b)に示すような左側にスウェイした座屈モードとなる。図11(b)に示す実施例1の座屈モードは、図11(a)に示す精算モデルの比較例1の座屈モードに近似したモードを示すことが分かる。
また、図10(c)の水平バネモデルの座屈モードを示す図11(c)を描くに当たり、柱には微小な初期不整を与えている。水平バネモデルでは、周辺の柱や梁がモデル化されていないことから、図11(c)に示すように、精算モデルとは大きく異なる座屈モードとなることが分かる。
このように、実施例1に係るブレース置換モデルは、層剛性から水平バネ剛性への変換作業が不要であること、周辺部材をブレースモデルに取り入れることにより、精算モデルに近い座屈モードが得られる利点を有している。
次に、表2において、比較例1,2と実施例1の座屈固有値解析によって得られた長柱の座屈荷重Pcrを示す。
Figure 0007248482000003
表2より、実施例1の座屈荷重は、精算モデルである比較例1の座屈荷重と近接した値(誤差8%程度)となっており、高い解析精度が得られることが実証されている。一方、比較例2の座屈荷重は、比較例1の座屈荷重の半分程度と大きな誤差を有しており、極めて安全側の設計になることが実証されている。
<座屈固有値解析例2>
次に、図12及び図13を参照して、本発明者等により実施された座屈固有値解析例2について説明する。ここで、図12は座屈固有値解析例2におけるフレームモデルを示す図であって、図12(a)は、比較例3に係る精算モデルを示す図であって各部材の仕様をともに示した図であり、図12(b)は、実施例2に係る置換フレームモデルを示す図であって第一ブレースと第二ブレースの断面積をともに示す図であり、図12(c)は、比較例4に係る水平バネモデルを示す図であって各バネのバネ定数をともに示した図である。また、図13は座屈固有値解析例2における座屈モード図であり、図13(a)、図13(b)、及び図13(c)はそれぞれ、比較例3、実施例2、及び比較例4の座屈モード図である。
図12(a)からも明らかなように、解析対象モデルは、4階建ての建物で、途中階の中央に長柱を備えた建物であり、右側の部材の断面積と断面二次モーメントが左側の部材に比べて高くなっていて(C3>C2、G2>G1)、解析例1の解析モデルよりも複雑な構造の解析モデルとなっている。
図13(a)と図13(b)より、比較例3と実施例2の座屈モードはともに近似したモードであることが分かる。これに対して、図13(c)は精算モデルとは大きく異なる座屈モードとなることが分かり、このことは解析例1と同様の結論とである。
次に、表3において、比較例3,4と実施例2の座屈固有値解析によって得られた長柱の座屈荷重Pcrを示す。
Figure 0007248482000004
表3より、実施例2の座屈荷重は、精算モデルである比較例3の座屈荷重と近接した値(誤差1%程度)となっており、高い解析精度が得られることが実証されている。一方、比較例4の座屈荷重は、比較例3の座屈荷重の7割弱程度と大きな誤差を有しており、極めて安全側の設計になることが実証されている。
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。

Claims (3)

  1. コンピュータ内において、建物の架構のフレームモデルを作成して座屈荷重を算定する、座屈荷重算定方法であって、
    長柱と、該長柱の側方にある長柱側方一般柱を含むAフレームと、該長柱と該Aフレームとを繋ぐ梁と、により形成されるフレームモデルを、前記長柱と、前記梁と、前記長柱側方一般柱と、前記Aフレームの層剛性を有する第一ブレースと、により形成される長柱含有階置換フレームを含む置換フレームモデルに置き換える工程と、
    前記置換フレームモデルに対して座屈固有値解析を行い、座屈荷重を算定する工程と、を有することを特徴とする、座屈荷重算定方法。
  2. 前記フレームモデルが、前記長柱の上方もしくは下方にある複数の長柱上下一般柱と、梁とを含んで、長柱を有さないBフレームをさらに備えている場合において、
    前記置換フレームモデルに置き換える工程では、
    前記長柱上下一般柱と、前記梁と、前記Bフレームの層剛性を有する第二ブレースと、により形成される長柱非含有階置換フレームを、前記長柱含有階置換フレームに結合して前記置換フレームモデルを作成することを特徴とする、請求項1に記載の座屈荷重算定方法。
  3. 設定された層間変形角に達した際に前記フレームモデル内の部材が塑性化している場合には、塑性化している部材を含む前記Aフレームもしくは前記Bフレームの剛性を有する前記第一ブレースもしくは前記第二ブレースにより、前記置換フレームモデルを作成することを特徴とする、請求項2に記載の座屈荷重算定方法。
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