JP7248092B2 - ポリエステルフィルム。 - Google Patents
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Description
靭性に優れるフィルムとしては、ポリアミド系樹脂フィルム(特許文献1)や、ポリエステルフィルム(特許文献2、3)が検討されている。ナイロンフィルムは、柔軟性、耐ピンホール性や突き刺し強度といった靭性に優れるため、食品包装材料などとして、多数使用されている。また、特許文献2、3では、靭性を得るために、フィルムを高配向化する検討がされている。
そこで、本発明のポリエステルフィルムは長手方向および幅方向におけるヤング率のバランス、剛直非晶量、結晶化度を特定範囲とすることによって靭性に優れるフィルムを提供するものである。
(1)長手方向ヤング率EMDと幅方向ヤング率ETDとの比(ETD/EMD)が0.7以上1.3以下であって、フィルム全体に対する剛直非晶量が33%以上60%以下、かつフィルム全体に対する剛直非晶量の割合が結晶化度よりも大きいこと。
(2)長手方向の150℃熱収縮率が3.5%以上5.5%以下であって、かつ長手方向の100℃熱収縮率が1.5%以下であること。
(3)フィルム全体に対する可動非晶量が35%未満であること。
(4)フィルム全体に対する剛直非晶量の割合が可動非晶量の2倍以上であること。
(5)フィルム全体に対する結晶化度が25%以上35%以下であること。
(6)厚みが3μm以上、9.5μm以下であること。
本発明のポリエステルフィルムは、フィルム全体に対する剛直非晶量の割合が可動非晶量の2倍以上であることが好ましい。ここで、可動非晶量は(10)ポリエステルフィルムのバルク構成の測定に記載の方法にて測定できる。ヤング率はフィルムの強度を示す指標であり、大きいほど剛性が高い。また、剛直非晶量に関しても同様にフィルムの強度と相関が強く、シャルピー衝撃吸収エネルギーへの相関が強い。一方、可動非晶に関しては、剛直非晶と同じ非晶ではあるものの、ランダム状態であり、剛性や強度への寄与は非常に小さい。このため、剛性向上には、非晶成分のうち、剛直非晶は可動非晶よりも多いほど好ましく、特に、可動非晶量の割合に対して、2倍以上が剛直非晶である場合、著しいシャルピー衝撃吸収エネルギーの向上が見られる。このため、フィルム全体に対する剛直非晶量の割合が可動非晶量の2倍以上であることが好ましい。フィルム全体に対する剛直非晶量の割合を可動非晶量の2倍以上とするには、フィルムの面配向係数を0.165以上とした上で、二軸延伸後の熱処理温度を190℃以下とする方法が好ましく挙げられる。
本発明のポリエステルフィルムを構成するポリエステルとは、主鎖における主要な結合をエステル結合とする高分子化合物の総称である。そして、ポリエステル樹脂は、通常ジカルボン酸あるいはその誘導体とグリコールあるいはその誘導体を重縮合反応させることによって得ることができる。なお、ここで、ジカルボン酸単位(構造単位)あるいはジオール単位(構造単位)とは、重縮合によって除去される部分を除かれた2価の有機基を意味し、以下の一般式で表される。
ジオール単位(構造単位): -O-R’―O-
(ここで、R、R’は二価の有機基。RとR’は同じであっても異なっていてもよい。)
本発明に用いるポリエステルを与える、グリコールあるいはその誘導体としては、エチレングリコール以外に、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族ジヒドロキシ化合物、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリオキシアルキレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、スピログリコールなどの脂環族ジヒドロキシ化合物、ビスフェノールA、ビスフェノールSなどの芳香族ジヒドロキシ化合物、並びに、それらの誘導体が挙げられる。
以下の方法でポリエステルフィルムの製造、評価を行った。
ポリエステル樹脂およびフィルムをヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)に溶解し、1H-NMRおよび13C-NMRを用いて各モノマー残基や副生ジエチレングリコールについて含有量を定量した。
フィルム全体の厚みを測定する際は、ダイヤルゲージを用いて、フィルムを200mm×300mmに切り出し、各々の試料の任意の場所5ヶ所の厚みを測定し、平均して求めた。また、積層フィルムの各層厚みについては、フィルムをエポキシ樹脂に包埋し、フィルム断面をミクロトームで切り出し、該断面を透過型電子顕微鏡(日立製作所製TEM H7100)で5000倍の倍率で観察することによって求めた。
本発明では、ロールで延伸した方向を長手方向とし、その直交方向を幅方向とする。延伸方法が不明である場合は、フィルムの任意の一方向(0°)、該方向から15°、30°、45°、60°、75°、90°、105°、120°、135°、150°、165°の方向の150℃熱収を測定し、最も150℃熱収の高かった方向を長手方向とし、長手方向と直交する方向を長手方向とした。なお、150℃熱収は(5)ポリエステルフィルムの150℃および100℃熱収縮率に記載のとおりに測定する。
アッベ屈折率計を用いて面配向係数を測定する層(以下、測定層とする)をガラス面に密着させ、次いでナトリウムD線を光源として、長手方向、幅方向、厚み方向の屈折率(Nx、Ny、Nz)を測定し、下記式より測定層の面配向係数fnを求めた。
・面配向係数fn=(Nx+Ny)/2-Nz
(5)ポリエステルフィルムの150℃および100℃熱収縮率
フィルムを長手方向および幅方向に長さ150mm×幅10mmの矩形に切り出しサンプルとした。サンプルに100mmの間隔で標線を描き、3gの錘を吊して150℃および100℃いずれかの温度に加熱した熱風オーブン内に30分間設置し加熱処理を行った。熱処理後の標線間距離を測定し、加熱前後の標線間距離の変化から熱収縮率を算出し、熱収縮率とした。測定は長手方向および幅方向に5サンプル実施して平均値で評価を行った。
ラミネート時の張り合わせ温度が150℃となるように加熱溶融したポリプロピレン樹脂をA4サイズにカットしたフィルムに3Nにて3秒押し付け、その後のラミネートシートの状態を目視で確認し、以下のように判定を行った。
○:全くシワがない
△:若干シワがある
(7)100℃加熱工程を含むラミネート後の状態
100℃に加熱したニップロールにA4サイズにカットしたフィルムと25μmのポリプロピレンキャストシートとを、ローラーに巻き込むように3Nにて押し付け、ラミネーとを行い、その後ラミネートシートの状態を目視で確認し、以下のように判定を行った。
○:全くシワがない
△:若干シワがある
(8)ポリエステルフィルムのヤング率
フィルム長手方向および幅方向に、長さ150mm、幅10mmの短冊状のサンプルを切り出して用いた。ヤング率はJIS Z1702に規定された方法に従って、インストロンタイプの引張試験機を用いて測定した。測定は下記の条件で行い、試料数10にて、それぞれについてその測定をして、平均値をとった。
測定装置:オリエンテック(株)製フィルム強伸度自動測定装置“テンシロンAMF/RTA-100”
試料サイズ:幅10mm×試長間50mm
引張り速度:300mm/分
測定環境:温度23℃、湿度65%RH。
JIS K7122 (1987)に準じて、セイコー電子工業(株)製示差走査熱量測定装置ロボットDSC-RDC220を、データ解析には“ディスクセッション”SSC/5200を用いて、窒素雰囲気下、昇温速度20℃/min、サンプル量5mgとして測定した。
i)可動非晶量
TA Instruments社製温度変調DSCを用い、試料5mgを窒素雰囲気下、0℃から150℃まで2℃/minの昇温速度、温度変調振幅±1℃、温度変調周期60秒で測定した。測定によって得られたガラス転移温度での比熱差を求め、以下の式より算出した。
可動非晶量(%)=(比熱差)/(ポリエステル完全非晶物の比熱差理論値)×100
ポリエチレンテレフタレート完全非晶物の比熱差理論値=0.4052J/(g℃)
また、本発明ではポリエチレンテレフタレートユニットが89モル%以上であるものについては、ポリエチレンテレフタレートの完全非晶物の比熱差理論値を参照した。
JIS K7122 (1987)に準じて、セイコー電子工業(株)製示差走査熱量測定装置ロボットDSC-RDC220を、データ解析には“ディスクセッション”SSC/5200を用いて、フィルムサンプル5mgをアルミニウム製受け皿上で室温から300°まで昇温速度20℃/分で昇温し、300℃で5分間保持した。そのとき、測定によって得られた吸熱ピーク熱量ΔHm、冷結晶化熱量ΔHc、完全結晶PETの融解熱量ΔHm0(140.1J/g)より、下記式によって算出した。
結晶化度(%)=(ΔHm-ΔHc)/ΔHm0×100
iii)剛直非晶量
剛直非晶量は、測定によって得られた可動非晶量、結晶化度より、以下の計算式にて算出した。
剛直非晶量(%)=100-(可動非晶量+結晶化度)。
フィルムサンプルの長手方向、幅方向にそれぞれ10mm×50mmに切り出した試験サンプルを各方向について10枚用意する。東洋精機製作所製シャルピー衝撃試験機(容量:10Kg/cm、ハンマー重量:1.019Kg、ハンマーの空持ち上げ角度:127°、軸心より重心までの距離:6.12cm)に試験サンプルの長尺(50mm)側を固定し、試験温度25℃で各方向の測定を行った(計10回)。各方向それぞれの平均値を試験サンプルの断面積(試験サンプル厚み×試験サンプル幅)で除し、MJ/m2の単位に換算して、長手方向と幅方向のシャルピー衝撃吸収エネルギーを求めた。得られたシャルピー衝撃吸収エネルギーより、フィルムの靭性を以下のとおりに判定した。
◎:長手方向幅方向いずれも10MJ/m2以上である。
○:少なくとも長手方向幅方向の平均値が10MJ/m2以上である。
△:少なくとも長手方向幅方向の平均値が9MJ/m2以上である。
×:長手方向幅方向の平均値が9MJ/m2以上である。
(ポリエステルの製造)
製膜に供したポリエステル樹脂は各実施例および比較例につき以下のように準備した。
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸成分が100モル%、グリコール成分としてエチレングリコール成分が99モル%、ジエチレングリコール成分が1モル%であるポリエチレンテレフタレート樹脂(固有粘度0.65)。
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸成分が100モル%、グリコール成分としてエチレングリコール成分が99モル%、ジエチレングリコール成分が1モル%であるポリエチレンテレフタレート樹脂(固有粘度0.70)。
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸成分が100モル%、グリコール成分としてエチレングリコール成分が99モル%、ジエチレングリコール成分が1モル%であるポリエチレンテレフタレート樹脂(固有粘度0.75)。
ポリエステルA中に平均粒子径2μmの凝集シリカ粒子を粒子濃度2質量%で含有したポリエチレンテレフタレート粒子マスター(固有粘度0.62)。
表1に示したポリエステル種、粒子マスターをそれぞれ真空乾燥機にて180℃4時間乾燥し、水分を十分に除去した後、単軸の押出機に表1に示した含有量で供給、280℃で溶融し、フィルター、ギヤポンプを通し、異物の除去、押出量の均整化を行った後、Tダイより20℃に温度制御した冷却ドラム(最大高さ0.2μmのハードクロムメッキ)上にシート状に吐出し、未延伸フィルムを得た。その際、Tダイのリップと冷却ドラム間の距離は35mmに設定し、直径0.1mmのワイヤー状電極を使用して14kVの電圧で静電印加させ、冷却ドラムに密着をさせた。また、シートの冷却ドラムの通過速度は25m/分、シートの冷却ドラムとの接触長さは、2.5mとした。
Claims (5)
- 長手方向ヤング率EMDと幅方向ヤング率ETDとの比(ETD/EMD)が0.8以上1.3以下であって、フィルム全体に対する剛直非晶量が33%以上60%以下、かつフィルム全体に対する剛直非晶量の割合が結晶化度よりも大きく、厚みが3μm以上、9.5μm以下であることを特徴とするポリエステルフィルム。
- 長手方向の150℃熱収縮率が3.5%以上5.5%以下であって、かつ長手方向の100℃熱収縮率が1.5%以下である請求項1に記載のポリエステルフィルム。
- フィルム全体に対する可動非晶量が35%未満である請求項1または2に記載のポリエステルフィルム。
- フィルム全体に対する剛直非晶量の割合が可動非晶量の2倍以上である請求項1~3のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
- フィルム全体に対する結晶化度が25%以上35%以下である請求項1~4のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
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