以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。以下で説明する各実施形態の要件は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
(実施形態1)
図1は、実施形態1のセンサ付き軸受1の斜視図である。図2及び図3は、センサ付き軸受1の分解斜視図である。図2は、センサ付き軸受1をカバー10側から見た図である。図3は、センサ付き軸受1を軸受120側から見た図である。センサ付き軸受1は、発電機付きセンサ100と、軸受120とを備える。軸受120の一方の側面に、発電機付きセンサ100が取り付けられる。発電機付きセンサ100は、カバー10と、回転部30と、回路基板40と、バックカバー60と、を備える。バックカバー60はなくてもよく,別の方法で回路基板40を保護してもよい。実施形態1の説明では、軸受120の外輪121が固定され、内輪122が外輪121に対して相対的に回転することを前提とする。
カバー10は、環状の天板12と、天板12の周囲に接続された筒状の側板11とを有する。カバー10は、ケイ素鋼板、炭素鋼(JIS規格 SS400又はS45C)、マルテンサイト系ステンレス(JIS規格 SUS420)又はフェライト系ステンレス(JIS規格 SUS430)のいずれかのような磁性を有する材料で形成される。カバー10は磁性体でなくてもよい。この場合は外部に磁束を漏らさないために、第1基板41の裏側に磁性体を設ける(バックヨークと呼称)ことが望ましい。
図3に示すように、回路基板40は、天板12の一方の面12Aに取り付けられている。一方の面12Aは、軸受120と対向する側の面である。回路基板40は、第1基板41と、第2基板42とを有する。例えば、図1及び図2に示すように、天板12に開けられた雌ねじ穴に、黄銅など非磁性材料のボルト19Bが締結することで、第1基板41と第2基板42とが天板12に固定される。図1及び図2に示すように、ボルト19Bは、カバー10に取り付けられた状態で、カバー10から突出しない長さを有する。
第1基板41及び第2基板42は、天板12の一方の面12Aに取り付けられている。天板12の中央には、貫通した開口部H12が設けられている。第1基板41は、開口部H12を縁取るように配置されている円弧状の基板である。
第1基板41には、軸受120側に設けられたコイル基板20が積層されている(図8、図11参照)。コイル基板20は、カバー10に対して軸受120側に設けられた回転部30と対向する。回転部30とコイル基板20とは非接触である。
回転部30は、磁気トラック31と、環状の基材33と、環状の取付け治具35と、を有する。基材33及び取付け治具35は、金属製である。磁気トラック31は、基材33の一方の面側に設けられている。第1基板41のコイル基板20が設けられた面と、回転部30の磁気トラック31が設けられた面とは対向する。
図4は、実施形態1の磁気トラック31の構成例を示す平面図である。磁気トラック31は、軸受120の回転軸Axを中心とする環状の部材である。磁気トラック31は、N極31NとS極31Sとからなる磁極対311を複数有する。複数の磁極対311は、回転軸Axを中心とする円の円周方向に並んでいる。N極31N及びS極31Sは、交互に配置されている。
実施形態1では、磁気トラック31と基材33とを合わせて、エンコーダマグネットという。例えば、エンコーダマグネットは、金属製の基材の一方の面にプラスチックマグネットが形成され、形成されたプラスチックマグネットの表面にN極31NとS極31Sとが交互に着磁されることにより形成される。取付け治具35は、エンコーダマグネットを、軸受120の内輪122に取り付けるために使用される。
図5は、軸受120に対する発電機付きセンサ100の固定形態例を示す断面図である。取付け治具35は、基材33の他方の面側に固定されている。取付け治具35は、基材33の他方の面側から、基材33の中央に位置する貫通した開口部H33を通って、基材33の一方の面側に突き出ている。基材33の一方の面側はカバー10と対向する面側である。基材33の他方の面側はバックカバー60と対向する面側である。カバー10と、バックカバー60との間には、回転部30、第1基板41及び第2基板42を設けるための空間が確保されている。図5では、ハウジング170によってシャフト160に対する軸受120の位置決め及び軸受120に対するカバー10の位置決めがされている条件下で、ベアリングナット161によって取付け治具35の一面側から回転部30を軸受120に押し付けて位置決めしている例を示している。
図6及び図7は、軸受120のサイズ及び取付け治具35の内径と、磁気トラック31及び第1基板41との関係の例を示す模式図である。実施形態1では、図6、図7で例示するように、同一径、同一形状の磁気トラック31に対して取付け治具35の形状や内径寸法を変化させることで、発電機付きセンサ100を様々な軸受サイズに対応させることができる。図6に示す取付け治具35Aの内径D1は、図7に示す取付け治具35Bの内径D2に比して小さい。図6に示す軸受120Aのサイズは、図7に示す軸受120Bのサイズに比して小さい。また、磁気トラック31の磁極対311の数や、磁気トラック31のマグネット材料を変更することで、発電部50の発電量を調整することもできる。また、実施形態1では、発電機付きセンサ100を様々な軸受サイズに対応させるため、回転部30をエンコーダマグネットと取付け治具35と分離可能な構成としている。なお、軸受サイズが1種類に限定される場合は、エンコーダマグネットと取付け治具35とを一体成形してもよい。この場合は、発電機付きセンサ100の生産性が向上する。
図8は、実施形態1の発電部50の構成例を示す平面図である。図8は、コイル基板20に磁気トラック31を重ねた状態を示している。図8に示すように、コイル基板20は、フレキシブル基板21と、フレキシブル基板21に設けられたコイルパターン23と、フレキシブル基板21に設けられた複数のヨーク25と、を有する。フレキシブル基板21の平面視による形状は、回転軸Axを中心とする正円の環状である。
図8に示すように、コイルパターン23は、平面視で第1方向に延びる複数の第1導電部231と、第1方向と平面視で交差する第2方向に延びる複数の第2導電部232と、を有する。第1方向は、例えば、回転軸Axを中心とする円の円周方向である。第2方向は、例えば、回転軸Axを中心とする円の径方向である。第1導電部231と第2導電部232は、交互に直列に接続されている。
コイルパターン23は、絶縁体の所定の面上にパターニングされて設けられた導電体のパターンである。実施形態1においては、導電体のパターンが絶縁体の複数の面上に形成されている。これに限られず、導電体のパターンが絶縁体の1つの面上に形成されていてもよい。
コイルパターン23は、平面視で、回転軸Axを中心とする円の円周方向に沿って凹凸が交互に並ぶように延設されている。この凹凸の凹部233にヨーク25が1つずつ配置されている。ヨーク25はなくても良い。ただし第1基板41を取り付けるカバー10又はコイルパターン23の裏面のバックヨークにヨーク25に相当する凸部を設け、第1基板41側にそれに対応する穴を設けることで第1基板41の位置決めと磁気の還流の効果を持たせることが可能である。
ヨーク25を設ける場合、ヨーク25は、平面視で、第1導電部231の一方の側に位置する第1ヨーク25Aと、第1導電部231の他方の側に位置する第2ヨーク25Bとを有する。例えば、第1ヨーク25Aは、第1導電部231よりも回転軸Axから遠い側に位置する。図8に示すように、回転軸Axを中心とする円の円周方向において、隣り合う一方のヨーク25(例えば、第1ヨーク25A)と他方のヨーク25(例えば、第2ヨーク25B)との間の中間に、第2導電部232が位置する。
円周方向に隣り合うヨーク25の中心間の回転軸Axを中心とした角度25pと、円周方向に隣り合う第2導電部232の中心間の回転軸Axを中心とした角度23pは、等しい。また、磁気トラック31において1つのN極31Nが設けられる回転軸Axを中心とした角度31L1と、1つのS極31Sが設けられる回転軸Axを中心とした角度31L1は、等しい。
また、磁気トラック31において円周方向に隣り合うN極31NとS極31Sとの回転軸Axを中心とした角度31p(図4参照)は、角度25pと等しい。また、実施形態では、角度25p、角度23p、角度31p、角度31L1、角度31L1は全て等しい。
実施形態1では、回転軸Axを中心に、コイル基板20に対して磁気トラック31が相対的に回転すると、第1ヨーク25AがN極31Nと対向するときは、第2ヨーク25BはS極31Sと対向する。また、第1ヨーク25AがS極31Sと対向するときは、第2ヨーク25BはN極31Nと対向する。第1ヨーク25A及び第2ヨーク25Bは、磁気トラック31の同一磁極と対向することはない。これにより、第1ヨーク25Aを通る磁束密度の変化の位相と、第2ヨーク25Bを通る磁束密度の変化の位相は、180°ずれた状態となる。
上述したように、第1ヨーク25Aは、第1導電部231よりも回転軸Axから遠い側に位置する。第2ヨーク25Bは、第1導電部231よりも回転軸Axに近い側に位置する。このため、第1ヨーク25Aを通る磁束密度の変化によってコイルパターン23に生じる誘導電流と、第2ヨーク25Bを通る磁束密度の変化によってコイルパターン23に生じる誘導電流は、同じ方向に流れる。
コイル基板20がカバー10に固定され、磁気トラック31が内輪122の回転に伴い相対的に回転すると、ヨーク25と対向する磁極が交互に替わる。これにより、ヨーク25を通る磁束密度が周期的に変化する。この磁束密度の周期的な変化に応じて、ヨーク25の周りに位置するコイルパターン23に電圧変化(例えば、正弦波の交流電圧)が発生する。このように、内輪122に設けられてN極31NとS極31Sとが並ぶ磁気トラック31を有する回転部30と、カバー10に設けられて磁気トラック31と対向する位置に配置されてコイル(コイルパターン23)が設けられた基板(第1基板41)は、組み合わせによって発電部50として機能する。ここで、カバー10は、第1部品として機能する。また、回転部30は、第2部品として機能する。第2部品は、第1部品に対して回転軸Axを中心に相対的に回転する。
また、第1基板41は、2つのホールセンサHS1,HS2を備える。2つのホールセンサHS1,HS2は、コイル基板20を挟んで回転部30の反対側に設けられている。2つのホールセンサHS1,HS2は、電流が流れているときに磁場の影響を受けると起電力を生じる所謂ホール効果を利用して磁束密度の変化を検出するセンサである。2つのホールセンサHS1、HS2は、カバー10に固定された第1基板41に対して、内輪122の回転と連動して回転角度が変位する磁気トラック31からの磁束密度の変化を検出する。すなわち、磁気トラック31からの磁束密度の変化に基づいて内輪122の回転角度等を検出する。
ホールセンサHS1とホールセンサHS2とは、同一タイミングで磁気トラック31から受ける磁束密度がそれぞれ異なるように配置されている。具体的には、回転軸Axを中心とする円周上においてホールセンサHS1とホールセンサHS2とを結ぶ円弧の長さは、同一円周上において隣接するヨーク25の中心間を結ぶ円弧の長さの整数倍にならないよう配置されている。言い換えれば、回転軸Axを中心とするホールセンサHS1とホールセンサHS2との間の角度は、回転軸Axを中心としてN極31NとS極31Sとが1つずつ設けられる範囲の角度の整数倍にならない。図8に示す平面視では、ホールセンサHS2が2つのヨーク25の中間に配置され、ホールセンサHS1がヨーク25と重なる位置に配置されている。
図9は、2つのホールセンサHS1、HS2が検出する磁束密度の関係を示す模式的なグラフである。図9では、N極とS極のうち一方をプラス(+)の磁束、他方をマイナス(-)の磁束としている。内輪122の回転に伴って回転部30が回転すると、2つのホールセンサHS1,HS2に対する磁気トラック31からの磁束密度の位相が変化する。このように、2つのホールセンサHS1,HS2は、内輪122の回転による磁気トラック31からの磁束密度の変化に応じた信号を出力する。このとき、図8に示す配置のホールセンサHS1,HS2の一方が検出する磁束密度の位相は、他方が検出する磁束密度の位相に対して90度ずれる。このため、回転部30の回転角度に応じて2つのホールセンサHS1,HS2から出力される信号同士の波形の関係は、図9の波形W1と波形W2との関係が示すように、位相が90度ずれた関係になる。このように、2つのホールセンサHS1,HS2は、信号の位相がそれぞれ異なる。
仮に、ホールセンサが1つしかない場合、1つしかないホールセンサが検出する磁束密度の初期値が磁束密度の最高値又は最低値であったとき、回転部30がどちらに回転しても磁束密度の変化パターンが同一になってしまうため、回転方向を検出不可能になることがある。これに対し、2つのホールセンサHS1,HS2を備えることで、少なくとも一方は磁束密度の初期値が磁束密度の最高値でも最低値でもない値になる。従って、2つのホールセンサHS1,HS2を備えることで、より確実に回転部30の回転方向を検出できる。
図10は、2つのホールセンサHS1,HS2が検出する磁束密度の関係に基づいたリサジュー図形である。図10に示すように、2つのホールセンサHS1,HS2のうち一方(例えば、ホールセンサHS1)によって検出された磁束密度を第1磁束密度U(t)とし、他方(例えば、ホールセンサHS2)によって検出された磁束密度を第2磁束密度V(t)として、一方を横軸に、他方を縦軸にしたリサジュー図形を想定する。n回目の検出タイミング(nは、自然数)において2つのホールセンサHS1,HS2のうち一方(例えば、ホールセンサHS1)によって検出された磁束密度に対応する信号を第1信号U(t
n)とし、他方(例えば、ホールセンサHS2)によって検出された磁束密度に対応する信号を第2信号V(t
n)とする。図10において、n回目の検出タイミングにおける点n(U(t
n),V(t
n))の位相θ
nは、以下の式(1)のように表すことができる。
(n+1)回目の検出タイミングにおける点n(U(t
(n+1)),V(t
(n+1)))の位相θ
(n+1)は、上述の式(1)のnに(n+1)を代入することで表すことができる。ここで、n回目の検出タイミングと(n+1)回目の検出タイミングとの間の経過時間に変化した出力の位相をdθとすると、dθは以下の式(2)のように表すことができる。
また、n回目の検出タイミングと(n+1)回目の検出タイミングとの間の経過時間をdtとし、磁気トラック31が有する360度範囲の磁極対311の数をNとすると、回転部30の回転速度、すなわち内輪122の回転速度[rpm]は、以下の式(3)のように表すことができる。
このように、2つのホールセンサHS1,HS2を備えることで、内輪122の回転方向、所定の時間(例えばdt)あたりの回転角度の変化、回転速度を求めることが可能な情報を得られる。すなわち、ある時点(例えば、起動時)の2つのホールセンサHS1,HS2によって検出された磁束密度の位相に対応する信号の初期値を基準とした回転角度及び回転角度の検出や、回転速度の算出が可能になる。
図11は、図8に示すXIII-XIII’断面で第1基板41を切断した場合の断面図である。実施形態1のコイル基板20は、厚さ方向に積層された複数層のフレキシブル基板21の各々に設けられた複数層のコイルパターン23と、複数層のコイルパターン23をカバーするよう設けられたヨーク25とを含む。
図11に示す例では、6層のフレキシブル基板21Aから21Fを含むフレキシブル基板21と、厚さ方向に積層された6層の平面コイル23Aから23Fを含むコイルパターン23と、を有する。平面コイル23Aから23Fにおいて、厚さ方向で隣り合う平面コイル間にはフレキシブル基板21が配置されている。また、フレキシブル基板21Bから21Fには貫通穴H21が設けられている。貫通穴H21に、ヨーク25が埋め込まれている。
平面コイル23Aから23Fの平面視による形状は、互いに同一である。例えば、図8に示したように、平面コイル23Aから23Fは、それぞれ複数の第1導電部231と複数の第2導電部232とを有する。また、平面コイル23Aから23Fは、例えば、コイルパターン23の延設方向の両端部28A,28Bにおいて、互いに接続されている。つまり、平面コイル23Aから23Fは、互いに並列又は直列に接続されている。
また、フレキシブル基板21F上には絶縁層27が設けられている。コイルパターン23のうち、最上層に位置する平面コイル23Fは絶縁層27で覆われている。なお、図11に示す天板12の一方の面12Aに対するフレキシブル基板21、コイルパターン23、絶縁層27の位置関係を反転し、絶縁層27側が回転部30と対向するようにしてもよい。この場合、絶縁層27を省略し、平面コイル23Fが露出するようにしてもよい。また、フレキシブル基板21及びコイルパターン23は、単層であってもよい。コイル基板20の積層数及び回転軸Axを中心とした円弧の長さは必要な発電量に応じて適宜変更可能である。
また、コイルパターン23は、整流回路43と接続されている。実施形態1の整流回路43は、ダイオードブリッジであるが、他の整流器を採用してもよい。また、整流回路43は、ホールセンサHS1及びホールセンサHS2と接続されている。コイルパターン23とホールセンサHS1,HS2との間に整流回路43が介在する電気的接続関係である。この電気的接続関係は、例えば、フレキシブル基板21Fに設けられたパターン配線とコネクタ、整流回路43に積層された絶縁層29に設けられたホールセンサHS1,HS2の端子に対応するコンタクトホール等によるものであるが、他の形態を取ってもよい。フレキシブル基板21に生じた単層交流電力は、整流回路43によって整流され、直流電流としてホールセンサHS1,HS2に供給される。整流回路43は、コイル基板20と天板12の一方の面12Aとの間に配置しても良いが、第1基板41の厚みが増してしまう恐れもあるためホールセンサHS1と同一平面に設置するのが望ましい。図11では、整流回路43は、絶縁層27上に積層された回路として実装されている。ホールセンサHS1は、整流回路43を覆う絶縁層29の上に積層される。ホールセンサHS1は、天板12の一方の面12Aに設けられた陥没穴12Bの内側に入り込むように、絶縁層29から天板12の一方の面12A側に突出して設けられている。図示しないが、ホールセンサHS2も、ホールセンサHS1と同様、天板12の一方の面12Aに設けられた陥没穴12Bの内側に入り込むように設けられている。このように、2つのホールセンサHS1,HS2は、第1基板41を介してカバー10に固定されている。
図12は、実施形態1の第1基板41と第2基板42の配置及び構成の一例を示す平面図である。図13は、回路基板40の主要構成を示すブロック図である。図12では、コイル基板20の図示を省略した状態で第1基板41の構成配置例を示している。上述のように、天板12の一方の面12Aには、第1基板41と第2基板42とが取り付けられている。第2基板42は、回転軸Axを中心とした径方向の位置が、側板11と第1基板41との間である。すなわち、第2基板42は、回転部30と対向しない位置に設けられている。これによって、第2基板42に対する回転部30からの磁気的な影響を抑制している。なお磁気トラック31からの磁束の影響が十分に小さい、又は磁気シールド等で保護されている場合には第2基板42を回転部30と対向させた位置に設置しても良い。
上述のように、第1基板41には、整流回路43が実装されている。また、図12に示すように、第1基板41と第2基板42とは、配線CLを介して接続されている。整流回路43は、コイル基板20から供給された単相交流電力を直流電圧に変換して、配線CLを介して第2基板42へ供給する。
第2基板42には、センサ44と、通信回路453(図13参照)を有する制御部45と、アンテナ47とが実装されている。整流回路43からの直流電力は、センサ44及び制御部45に供給される。センサ44、制御部45及びアンテナ47は、別々のIC(Integrated Circuit)チップで構成されていてもよいし、それらの一部又は全部が1つのICチップで構成されていてもよい。
また、カバー10には、貫通孔が開けられている。この貫通孔は、樹脂などの非磁性材料で形成された非磁性蓋17で密閉されている。後述するように、第2基板42には、アンテナ47が実装される。カバー10は磁性を有するので、アンテナ47からの電磁波をシールドする作用を有する。しかし、アンテナ47は非磁性蓋17と対向する位置に配置される。このため、アンテナ47の電磁波WVは、非磁性蓋17を介して、通信部151へ到達することができる。
センサ44は、第1基板41から供給される直流電圧で動作するセンサ類を含む。図12及び図13に例示するセンサ44は、加速度センサ441及び温度センサ442を有する。加速度センサ441は、軸受120の振動を検出する。温度センサ442は、軸受120の周囲温度を検出する。
実施形態1において、整流回路43は、発電部50の発電によってコイル基板20に生じる電流を整流して複数のセンサ(2つのホールセンサHS1,HS2、加速度センサ441、温度センサ442等)に供給する整流器として機能する。また、図示しないが、センサ44は、軸受120の周囲湿度を検出する湿度センサ、軸受120の潤滑油の酸化劣化に伴って生じるガス状の炭化水素、硫化水素、アンモニア等を検出するガスセンサ、軸受120において生じる摩擦音を検出する超音波センサ等を有してもよい。その場合、これらのセンサも複数のセンサに含まれる。
制御部45は、センサ44によって検出されたデータの記憶、アンテナ47を介した当該データの外部送信等を行う。図13に例示する制御部45は、制御回路451と、記憶回路452と、通信回路453と、を有する。制御回路451は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。記憶回路452は、不揮発性メモリを有する。不揮発性メモリとして、NAND型又はNOR型のフラッシュメモリが例示される。通信回路453は、制御回路451を構成するCPUに含まれている。又は、通信回路453は、CPUとは別のICチップで構成されていてもよい。
制御回路451は、記憶回路452と通信回路453とを制御する。例えば、制御回路451は、センサ44によって検出された各種データをアナログデータからデジタルデータに変換する(すなわち、A/D変換する)。また、制御回路451は、A/D変換されたデジタルデータを記憶回路452に書き込む。制御回路451は、A/D変換されたデジタルデータをキャッシュメモリに一時的に記憶し、一時的に記憶したデジタルデータを任意のタイミングで読み出して記憶回路452に書き込んでもよい。また、制御回路451は、記憶回路452からデジタルデータを読み出して、通信回路453に出力する。
通信回路453は、制御回路451の制御下で、アンテナ47を介し、記憶回路452から読み出されたデジタルデータを外部に送信する。例えば、図1に示したように、通信回路453は、電磁波WVの無線通信により、デジタルデータを外部に送信する。送信されたデジタルデータは、上位装置150の通信部151で受信される。通信部151で受信したデジタルデータは、コンピュータ152で処理される。このように、センサ付き軸受1は、デジタルデータを無線で送信することができるので、小型化が可能になる。なお、実施形態1において、通信回路453によるデジタルデータの外部への送信は、無線ではなく、有線であってもよい。
以上説明したように、実施形態1によれば、磁気トラック31とコイル基板20との相対的な位置関係の変動に応じて生じた電力で2つのホールセンサHS1,HS2、センサ44等を動作させることができる。従って、外部の電源及び電池を必要としない。また、磁気トラック31に応じた信号の位相が異なる2つのホールセンサHS1,HS2によって、磁気トラック31とコイル基板20との相対的な位置関係の変動に関するセンシングを行うことができる。すなわち、内輪122の回転角度の変化に関する情報を得られる。また、発電に用いられる磁気トラック31とコイル基板20の相対的な位置関係をセンシングすることで、センシングに関する構成と発電に関する構成とを一体化できることから、よりコンパクトにすることができる。
また、発電によって生じる電流を整流して2つのホールセンサHS1,HS2、センサ44等に供給する整流回路43を備える。従って、動作に直流電流を必要とするこれらのセンサを動作させることができる。
また、回転部30は、カバー10に対して回転軸Axを中心に相対的に回転し、磁気トラック31は、回転軸Axを中心とする円周方向にN極31NとS極31Sとが並ぶ。従って、内輪122のように回転する物に回転部30を設け、カバー10を固定することで外部の電源及び電池を必要とせず2つのホールセンサHS1,HS2、センサ44等を動作させることができる。
さらに、回転部30を発電と内輪122の回転角度のセンシングの両方に利用可能である。このため、発電と回転角度の検出との構成が個別に設けられる構成に比して発電機付きセンサ100をコンパクトにできる。また、2つのホールセンサHS1,HS2に限らず、整流回路43を介してコイル基板20から得られる電力を加速度センサ441、温度センサ442のような回転角度以外の情報を取得するためのセンサの動作にも利用することができる。従って、内輪122の回転角度に関する情報(位置情報)と「その他の情報(例えば、振動、温度に関する情報)」とを組み合わせて収集することがより容易になる。
さらに、第1基板41は、コイル基板20と2つのホールセンサHS1,HS2とを一体的に取り扱い可能に設けられた基板である。従って、これらの構成を個別に取り扱う場合に比して、事後の位相調整等が不要になるため、取り扱いがより容易になる。また、事後の位相調整が不要なことから、これらの構成を個別に取り扱う場合に比してコンパクトな構成にすることがより容易になる。しかも、2つのホールセンサHS1,HS2の電力は、コイル基板20から得られることから、センサ用電源を新たに用意するような専用設計が不要になる。
さらに、第1基板41にコイル基板20及び2つのホールセンサHS1,HS2のような磁気トラック31の磁場を利用するものを集中的に設け、磁場に関係がない又は磁場の影響が抑制されることが望ましい他の構成を別途設けることが可能になる(例えば、第2基板42)。
なお、実施形態1では、内輪122に回転部30が固定されているが、これは内輪122が回転することを想定したものであってこれに限られるものでない。内輪122が固定されて外輪121が回転可能に軸支される構成の場合、回転部30を外輪121に固定するようにしてよい。その場合、カバー10は、固定された内輪122と連結される。
また、実施形態1では、コイル基板20を含む第1基板41がカバー10に固定され、磁気トラック31が設けられた回転部30がカバー10に対して回転する構成であるが、逆であってもよい。すなわち、固定された磁気トラック31に対してカバー10が回転してもよい。
(実施形態2)
図14は、直動方向SVに沿う直線状に連続する磁極対91と相対移動可能に設けられた発電機付きセンサ81の主要構成を示す模式図である。磁極対91は、N極91NとS極91Sとを含む。磁極対91は、例えば発電機付きセンサ81を直動可能に支持するレールRに設けられる。
発電機付きセンサ81は、少なくともコイルパターン80と、整流回路43と、2つのホールセンサHS3,HS4とを備える。コイルパターン80は、コイルパターン23が直動方向SVに沿い、ヨーク25が直動方向SVに直交し、かつ、磁極対91が設けられたレールRの面に沿う方向に沿って設けられたコイル基板20の変形例である。実施形態2の整流回路43は、実施形態1における整流回路43と同様の機能を有する。2つのホールセンサHS3,HS4は、実施形態1における2つのホールセンサHS1,HS2と同様の機能を有する。ただし、2つのホールセンサHS3,HS4は、図14に示すように、直動方向SVに沿う磁極対91の配置周期により生じる磁場を前提として、ホールセンサHS3が検出する磁束密度の位相と、ホールセンサHS4が検出する磁束密度の位相とが異なるように配置されている。
また、図示しないが、発電機付きセンサ81は、実施形態1の第2基板42に設けられていたセンサ44、制御部45、アンテナ47と同様の構成を備えていてもよい。
直動方向SVに沿ってレールRと発電機付きセンサ81とが相対移動すると、コイルパターン80に交流電力が生じる。当該交流電力は、整流回路43によって整流され、直流電流としてホールセンサHS3,HS4に供給される。ホールセンサHS3が検出する磁束密度の位相と、ホールセンサHS4が検出する磁束密度の位相とが異なることによって、レールRと発電機付きセンサ81との相対移動方向や相対移動速度を算出可能になる。