JP7247604B2 - 絶縁被覆材用樹脂組成物及び絶縁被覆材 - Google Patents
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Description
即ち、本発明は以下を要旨とする。
本明細書において、ポリイミド樹脂前駆体、ポリイミド樹脂、ポリアミック酸等の定義は以下の通りである。
ポリイミド樹脂前駆体:(下記「ポリアミック酸」と比較して)ポリアミック酸の一部がイミド化したポリマー
ポリアミック酸:全くイミド化していない(=イミド化率0%の)ポリアミック酸
ポリイミド樹脂:完全にイミド化した(=イミド化率100%の)ポリイミド
ポリイミド樹脂前駆体組成物:ポリイミド樹脂前駆体、溶媒、オキサゾリン環を有するヘテロ環化合物、必要に応じて側鎖に複素環を有するポリマー、その他の成分を含み、ポリイミド樹脂を含んでいてもよい組成物
ポリイミド樹脂被覆:ポリイミド前駆体組成物を焼成して得られるポリイミド被覆
本発明の絶縁被覆材用樹脂組成物は、テトラカルボン酸二無水物由来成分及びジアミン化合物由来成分を含むポリイミド樹脂前駆体(以下、本発明の絶縁被覆材用樹脂組成物に含まれるポリイミド樹脂前駆体を「本発明のポリイミド樹脂前駆体」と称す場合がある。)と、オキサゾリン環を有するヘテロ環化合物とを含み、該テトラカルボン酸二無水物由来成分に対する該オキサゾリン環の割合が、0.01mol%以上10mol%以下であることを特徴とする。
ポリイミド樹脂前駆体に対して所定の割合でオキサゾリン環を有するヘテロ環化合物を含むことにより、低粘度な絶縁被覆材用樹脂組成物からでも高い耐熱性や耐屈曲性(屈曲追従性)、耐摩耗性を有するポリイミド樹脂被覆が得られる理由の詳細は明らかではないが、以下が考えられる。
本発明において、ポリイミド樹脂前駆体とは、ポリアミック酸中のアミック酸構造が特定の範囲の割合でイミド化したものを指す。ポリイミド樹脂前駆体のイミド化率については後述する。
本発明のポリイミド樹脂前駆体は、テトラカルボン酸二無水物由来成分とジアミン化合物由来成分を含む。
テトラカルボン酸二無水物由来成分としては、鎖状脂肪族テトラカルボン酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸二無水物、芳香族テトラカルボン酸二無水物等のテトラカルボン酸二無水物に由来してポリイミド樹脂前駆体を構成する成分が挙げられる。これらのテトラカルボン酸二無水物は、1種を単独で用いても、2種以上を任意の比率及び組合せで用いてもよい。
ジアミン化合物由来成分としては、芳香族ジアミン化合物、鎖状脂肪族ジアミン化合物、脂環式ジアミン化合物等のジアミン化合物に由来してポリイミド樹脂前駆体を構成する成分が挙げられる。これらのジアミン化合物は、1種を単独で用いても、2種以上を任意の比率及び組合せで用いてもよい。
ポリイミド樹脂前駆体は、さらに目的に応じ、架橋点となるエチニル基、ビニル基、アリル基、シアノ基、イソシアネート基等を有する化合物(以下、「その他のモノマー」と称す場合がある。)由来成分を含んでいてもよい。
本発明のポリイミド樹脂前駆体は、耐熱性、生産性の観点から、下記式(1)で表される構造単位及び下記式(2)で表される構造単位の少なくとも一方を含むことが好ましい。下記式(1)及び(2)で表されるような構造を含むことで、重合時の反応性とポリイミド樹脂前駆体の溶媒への溶解性とが共に良好となり、且つ剛直な骨格を有する、耐熱性に優れたポリイミド樹脂被覆が得られる。
上記式(3)で表される構造単位がジアミン化合物由来である場合、ポリイミド樹脂前駆体は、ジアミン化合物として少なくとも下記式(4)で表されるジアミン化合物を用いて製造されることが好ましい。
本発明のポリイミド樹脂前駆体は、耐熱性、耐摩耗性及び耐屈曲性の観点から、下記式(5)で表される構造と、-NH-(イミノ結合;イミノ基と言うこともある)、=NH(イミノ基)、-C(O)NH-(アミド結合;アミド基と言うこともある)、-NHC(O)O-(ウレタン結合;ウレタン基と言うこともある)、-NHC(O)NH-(ウレア結合;ウレア基と言うこともある)、-NHC(S)NH-(チオウレア結合;チオウレア基と言うこともある)、-NH2(アミノ基)、-OH(水酸基)、-C(O)OH(カルボキシ基)、-SH(チオール基)、-C(O)N(OH)-(ヒドロキシアミド基)、-(O)S(O)-(スルホニル基)、-C(O)-(カルボニル基)、及び-C(O)SH(チオカルボキシ基)からなる群から選ばれる少なくとも1種の構造(以下、これらの構造を「水素結合形成構造」と称す場合がある。)を含む繰り返し単位を有することが好ましい。
分子鎖間を化学結合で連結すると、弾性率が高くなることが知られている。化学結合には共有結合と非共有結合があるが、共有結合で分子鎖間を連結した場合、弾性率は高くなる(即ち、耐摩耗性は向上する。)が、機械的な柔軟性(伸び)は低下する。即ち、耐屈曲性は低下する。通常、ポリイミド樹脂前駆体は一定の温度以上で焼成すると、分子の末端が他の分子または分子内の特定部位等と反応して共有結合を形成するため、柔軟性は低下するが、分子が非共有結合を形成する構造を含む繰り返し単位を有することで、分子間及び/または分子内の特定部位等と非共有結合(以下、単に「非共有結合」と記すことがある)が形成され、分子間相互作用により適度な弾性率を有し、耐摩耗性と耐屈曲性とを両立することができる。
なお、ポリイミド前駆体中の、水素結合形成構造の含有量は、通常、NMR、IR、ラマン、滴定又は質量分析法等により求めることができる。
具体的には、該テトラカルボン酸二無水物としては、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられ、ジアミン化合物の例としては、4,4’-ジアミノベンズアニリド、4,4’-ビス(4-アミノベンズアミド)-3,3’-ジヒドロキシビフェニル、2,2’-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、2,2’-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジヒドロキシビフェニル、ビス(4-アミノ-3-カルボキシフェニル)メタン等が挙げられる。これらの水素結合形成モノマーは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の比率及び組合せで用いてもよい。
これらのうち、特に、4,4’-ジアミノベンズアニリドを用いることが導入効果に優れる点で好ましい。
本発明のポリイミド樹脂前駆体の製造方法には、特に制限はなく、従来公知のイミド化方法が使用できる。例えば、反応溶媒存在下、上述のテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物を加熱脱水又は脱水試薬によりイミド化反応を行う方法、反応溶媒存在下、当該テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物をアミド化反応させて得られるポリアミック酸を得た後、該前駆体を加熱脱水ないし脱水試薬によりイミド化反応を行う方法などが挙げられる。この反応系内に、前述の水素結合形成モノマーを存在させておくことで、水素結合形成構造を含む繰り返し単位を有するポリイミド樹脂前駆体を製造することができる。更にこの反応系には、前述のその他のモノマーを存在させて反応を行ってもよい。いずれの場合も、溶媒中にポリイミド樹脂前駆体を含むポリイミド樹脂前駆体組成物として、本発明のポリイミド樹脂前駆体を得ることができる。
反応時間は通常1時間以上、好ましくは2時間以上であり、通常100時間以下、好ましくは42時間以下である。このような条件で行うことにより、低コストで収率よくポリイミド樹脂前駆体を得ることができる傾向にある。
反応時の圧力は、常圧、加圧、又は減圧のいずれかでもよい。雰囲気は空気下でも不活性雰囲気下でもよいが、不活性雰囲気の方が得られるポリイミド樹脂被覆の屈曲追従性の観点から好ましい。
これらの溶媒は、1種を単独で用いても、2種以上を任意の比率及び組合せで用いてもよい。
この場合、用いる貧溶媒は特に制限は無く、ポリイミド樹脂前駆体の種類によって適宜選択し得るが、ジエチルエーテル又はジイソプロピルエーテル等のエーテル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、イソブチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶媒;等が挙げられる。中でも、メタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶媒が効率良く析出物が得られ、沸点が低く乾燥が容易となる傾向にあるため好ましい。これらの溶媒は、1種を単独で用いても、2種以上を任意の比率及び組合せで用いてもよい。
本発明のポリイミド樹脂前駆体のイミド化率(mol%)は特に制限されないが、通常1mol%以上35mol%以下である。絶縁被覆材用樹脂組成物の保存安定性等の観点から、ポリイミド樹脂前駆体のイミド化率はこの範囲となることが好ましい。イミド化率が1mol%以上であることで、ポリイミド樹脂前駆体が安定製造できる傾向にある。またポリイミド樹脂前駆体のイミド化率が35mol%以下であることで、ポリイミド樹脂前駆体の溶媒に対する溶解性が得られ、ポリイミド樹脂前駆体の析出が抑制される等、保存安定性が向上する傾向にある。なお、ポリイミド樹脂前駆体のイミド化率は、後掲の実施例の項に記載の通り、1H-NMRで定量化することができる。
本発明のポリイミド樹脂前駆体の重量平均分子量(Mw)は特に制限されないが、ポリスチレン換算の重量平均分子量で通常1,000以上、好ましくは2,000以上、より好ましくは5,000以上である。また、通常2,000,000以下であり、好ましくは1,000,000以下であり、より好ましくは500,000以下である。この範囲となることで、溶媒に対する溶解性、組成物粘度等が通常の製造設備で扱いやすい傾向となるため好ましい。
重量平均分子量が2,000以上であることで、絶縁被覆成形時にポリイミド樹脂前駆体とオキサゾリン環を有するヘテロ環化合物が反応し、十分な耐熱性、耐屈曲性、耐摩耗性を示すポリイミド樹脂被覆が得られる傾向にある。
また、重量平均分子量が2,000,000以下であることで、一般的に組成物の粘度が高くなり過ぎず、良好な塗工性が得られる傾向にある。
なお、ポリスチレン換算の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により求めることができる。具体的な測定方法は、後掲の実施例の項に記載の通りである。
本発明の絶縁被覆材料用樹脂組成物はオキサゾリン環を有するヘテロ環化合物を含む。
本発明の絶縁被覆材用樹脂組成物は、側鎖に複素環を有するポリマーを含有するものであってもよく、側鎖に複素環を有するポリマーを含むことで、得られるポリイミド樹脂被覆の耐屈曲性を高めることができる。
この場合に用いる側鎖に複素環を有するポリマーは、通常、ビニル基を有する複素環化合物のポリマーであり、ホモポリマー(単独重合体)であってもよく、共重合体であってもよい。
本発明の絶縁被覆材用樹脂組成物中の側鎖に複素環を有するポリマーの含有量は、ポリイミド樹脂前駆体100重量部に対してより好ましくは0.5~5重量部である。
本発明の絶縁被覆材料用樹脂組成物は、塗布性付与、加工特性付与、各種機能付与等の観点から、界面活性剤、消泡剤、有機顔料等の着色材、酸化防止剤、紫外線吸収剤、ヒンダートアミン系光安定剤等の安定剤、帯電防止剤、潤滑油、帯電防止剤、難燃剤、可塑剤、離型剤、レベリング剤等を含有していてもよい。また、本発明の目的を損なわない範囲で、その他の樹脂や、無機系充填材又は有機系充填材を含有していてもよい。
充填材としては、不織布等平板状に加工したものを用いても良いし、複数の材料を混合して用いても良い。
本発明の絶縁被覆材用樹脂組成物の粘度は、特に制限は無いが、組成物の生産性、その後の使用時の取り扱い性、成膜性、成膜時の表面平滑性等の観点から、通常30,000mPa・s以下、好ましくは20,000mPa・s以下、より好ましくは10,000mPa・s以下、特に好ましくは5,000mPa・s以下である。粘度の下限については特に制限はないが、通常100mPa・s以上である。
尚、絶縁被覆材用樹脂組成物の粘度は、後述の実施例に記載のように例えばB型粘度計を用いて測定することができる。
本発明の絶縁被覆材用樹脂組成物の焼成膜は、DMS法(動的熱機械測定装置)によるそのガラス転移温度(Tg)が、好ましくは250℃以上であり、より好ましくは260℃以上であり、更に好ましくは270℃以上であり、特に好ましくは280℃以上である。ガラス転移温度が上記下限値以上であることが耐熱性の観点から好ましい。一方、ガラス転移温度(Tg)の上限については特に制限されないが、通常400℃以下であり、Tgを有さないものもある。なお、DMS法によるガラス転移温度(Tg)は後掲の実施例に記載の方法により測定することができる。
本発明の絶縁被覆材用樹脂組成物の用途には特に制限はないが、その高耐熱性、耐屈曲性、更には耐摩耗性等の特性により、絶縁被覆材、金属線や金属板等の金属被覆材、ポリイミドフィルム、ポリイミド積層体等に用いることができる。なお、絶縁とは電気機械や回路において、周辺部品や導体に電流が流れないよう遮断することである。
塗布する方法としては、ダイコーティング、スピンコーティング、ディップコーティング、スクリーン印刷、スプレー、キャスト法、コーターを用いる方法、吹付による塗布方法、浸漬法、カレンダー法及び流涎法等が挙げられる。これらの方法は塗布面積及び被塗布面の形状などに応じて適宜選択することができる。
本発明の絶縁被覆材用樹脂組成物を用いてポリイミドフィルムを成膜して使用する場合、そのポリイミドフィルムの厚さは、通常1μm以上、好ましくは2μm以上であり、通常300μm以下、好ましくは200μm以下である。厚さが1μm以上であることにより、ポリイミドフィルムが十分な強度を有する自律フィルムとなり、ハンドリング性が向上する傾向にある。また、厚さを300μm以下にすることによりフィルムの均一性が担保しやすい傾向にある。
ポリイミドフィルムの引張弾性率は、特段の制限はないが、耐摩耗性の観点から好ましくは2000MPa以上、より好ましくは2500MPa以上、更に好ましくは3000MPa以上、特に好ましくは3500MPa以上であり、一方、耐屈曲性の観点から好ましくは10GPa以下、より好ましくは5000MPa以下である。
また、引張伸度は、特段の制限はないが、耐屈曲性の観点から好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上、更に好ましくは50%以上であり、屈曲追従性の観点から特に上限はなく、伸度が高い方が好ましい。
なお、ポリイミドフィルムの引張弾性率及び引張伸度は、後掲の実施例の項に記載の方法で測定される。
支持体からポリイミドフィルムを剥離する方法は特に制限はないが、フィルムなどの性能を損なうことなく剥離できるという点で、物理的に剥離する方法、レーザーによって剥離する方法が好ましい。
上述のように、基材に本発明の絶縁被覆材用樹脂組成物を塗布後、加熱して、基材上にポリイミドフィルムを成膜し、これをそのまま剥離することなく基材と一体化させてポリイミド積層体とすることができる。
基材として金属を用いる場合、用いられる金属としては、特に限定されるものではないが、例えば金、銀、銅、アルミニウム及び鉄などが挙げられる。これら各種合金を用いてもよい。
これらの基材へのポリイミド樹脂被覆の成膜形態は特に制限はなく、基材の形状や用途に合わせ、適宜形成することができる。例えば、基材の全面、片面、両面、端面等に被覆を行ってもよく、また、基材全面又は一部分に被覆してもよい。
また、膜は単層でも多層でもよい。
本発明の絶縁被覆材は、上記の本発明の絶縁被覆材用樹脂組成物よりなる樹脂層を有するものであり、特にその高耐熱性と耐屈曲性、更には耐摩耗性から、電線・ケーブル絶縁被覆材、低温貯蔵タンク、宇宙断熱材又は集積回路等のエナメルコーティング材等として好適に用いることができる。
以下の実施例・比較例で得られたポリイミド樹脂前駆体、絶縁被覆材用樹脂組成物及びポリイミドフィルムは以下の方法により評価した。
ポリイミド樹脂前駆体の1H-NMR測定から、アミック酸部分のアミドプロトン及び主鎖骨格中の芳香族プロトンを定量することによりイミド化率を求めた。具体的には、ポリイミド樹脂前駆体をトリメチルシラン(TMS)入りDMSO-d6に溶解させた溶液を試料に使用し、TMSをリファレンスピーク(0ppm)として以下の計算式よりイミド化率を算出した。
イミド化率(mol%)=(B/2)/A×100
(上式においてAは芳香族プロトン(7~8ppm)のピーク積分値を、ポリアミック酸の繰り返し単位中に含まれる芳香族プロトンの数で割った値であり、Bはアミック酸構造部分のアミドプロトン(10~11ppm)の積分値である。)
ポリイミド樹脂前駆体の重量平均分子量(Mw)は、以下に示すGPC法によって求めた。
ポリイミド樹脂前駆体を、りん酸0.03mol/L、塩化リチウム0.01mol/Lの濃度で溶解したN,N-ジメチルアセトアミド溶液を希釈液に用いて0.2重量%の濃度に希釈し、Viscotek TDAmax(Spectris製)を用いて上記希釈液を展開溶剤として測定し、ポリスチレン換算することで重量平均分子量(Mw)を求めた。カラムにはTSKgel SuperAWM-H(東ソー製)2本とTSKgel SuperAW2500(東ソー製)1本を使用し、カラム及び検出器の温度は共に40℃とした。流速は0.5mL/minとした。
粘度は、Brookfield製B型粘度計、DV-I+を用いて、30℃における回転粘度を測定した。
<好適態様1の実施例及び比較例>
JIS K6301に準じ、幅10mm、長さ80mm、厚み約30μmの短冊状としたポリイミドフィルムの試験片を、引張試験機〔オリエンテック社製、製品名「テンシロンUTM-ポリイミド樹脂-100」〕を用いて、チャック間距離30mm、引張速度10mm/分にて引張試験を実施し、応力-歪曲線を作成し、引張弾性率(MPa)を求めると共に、試験片が破断した時点での伸び率を測定し、引張伸度(%)とした。この引張弾性率が大きい程耐摩耗性に優れる。また、この引張伸度が大きい程、柔軟性に優れ、耐屈曲性(屈曲追従性)に優れると評価される。
上記の好適態様1の実施例及び比較例の引張弾性率と引張伸度の測定において、ポリイミドフィルムの厚みを後掲の表2に示す厚みとしたこと以外は、同様にして引張弾性率と引張伸度を測定した。
動的熱機械測定装置(SIIナノテクノロジー株式会社製、DMS/SS6100)を用い、下記の測定条件にてサンプルの振動荷重に対するサンプルの貯蔵弾性率、損失弾性率を測定し、損失正接よりガラス転移温度(Tg)を求めた。即ち、ポリイミドフィルムの試験片の貯蔵弾性率(E’)を損失弾性率(E”)で除した損失正接(tanδ)のピークトップをガラス転移温度(Tg)と定義した。このガラス転移温度(Tg)は、ポリイミド樹脂のガラス転移温度(Tg)に相当し、Tgが高いほど耐熱性に優れたものと評価される。
(DMS測定条件)
測定温度範囲:50℃~400℃(昇温速度:3℃/min)
引張り加重:5g
試験片形状:6mm×20mm
実施例及び比較例のポリイミド樹脂前駆体組成物の製造に使用した原料は以下の通りである。
3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA):三菱ケミカル株式会社製
4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(ODA):和歌山精化工業株式会社製
4,4’-ジアミノベンズアニリド(DABA):和歌山精化工業株式会社製
N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc):三菱ガス化学株式会社製
1,3-ビス(4,5-ジヒドロ-2-オキサゾリル)ベンゼン(1,3-BDOB):東京化成工業株式会社製
ポリビニルピロリドンK-30(PVP K-30、分子量45,000):第一工業製薬株式会社製
[ポリイミド樹脂前駆体の合成]
<合成例1>
窒素ガス導入管、冷却器、攪拌機を備えた4つ口フラスコに、BPDA63.5重量部、ODA 44.4重量部、DMAc 491重量部を加えた。この混合物を撹拌しながら昇温し、80℃で6時間反応させて、固形分濃度18重量%のポリイミド樹脂前駆体組成物PI-1を得た。得られたポリイミド樹脂前駆体の重量平均分子量は55,320で、イミド化率は9.4%であった。また、得られたポリイミド樹脂前駆体組成物PI-1の粘度は1,220mPa・sであった。
なお、ここで、固形分濃度は、ポリイミド樹脂前駆体濃度に該当し、原料の使用量から求められる値である。
絶縁被覆材用樹脂組成物中のポリイミド樹脂前駆体濃度は、表1~4に記載した濃度となるように、添加剤を調製した。以下の合成例でも同様である。
表1に示す配合組成に従って、絶縁被覆材用樹脂組成物PI-1-1~PI-1-8(実施例用)及びPI-1-9~PI-1-12(比較例用)を調製した。なお、表1に示すポリイミド樹脂前駆体使用量は、ポリイミド樹脂前駆体組成物中のポリイミド樹脂前駆体の重量部を示す。
PI-1~PI-12の絶縁被覆材用樹脂組成物をスピンコーター用いてガラス板に塗布し、ホットプレートを用いて室温から500℃まで昇温し、500℃で6分間加熱して硬化させて、ガラス板-ポリイミド樹脂被覆の積層体を得た。該積層体を室温に戻した後、90℃の熱湯に積層体を浸漬し、ガラスとフィルムを剥離した。続いて、フィルムを100℃のイナート乾燥機で60分間乾燥することにより、表1に示す膜厚のポリイミドフィルムを得た。
[ポリイミド樹脂前駆体の合成]
<合成例2>
窒素ガス導入管、冷却器、攪拌機を備えた4つ口フラスコに、BPDA 33.1重量部、ODA17.2重量部、DABA 6.5重量部、DMAc 259重量部を加えた。この混合物を撹拌しながら昇温し、80℃で6時間反応させ、固形分濃度18重量%のポリイミド樹脂前駆体組成物PI-2を得た。得られたポリイミド樹脂前駆体の重量平均分子量は138,300で、イミド化率は8.4%であった。また、得られたポリイミド樹脂前駆体組成物PI-2の粘度は3,500mPa・sであった。
このポリイミド樹脂前駆体PI-2は、BPDA 100mol%に、ODA 75mol%とDABA 25.0mol%を反応させたものであり、水素結合形成モノマー導入量であるDABA導入量は25mol%である。
窒素ガス導入管、冷却器、攪拌機を備えた4つ口フラスコに、BPDA 11.8重量部、ODA7.4重量部、DABA 9.4重量部、DMAc 71.5重量部を加えた。この混合物を撹拌しながら昇温し、80℃で6時間反応させ、固形分濃度22重量%のポリイミド樹脂前駆体組成物3(PI-3)を得た。得られたポリイミド樹脂前駆体の重量平均分子量は132,300であり、イミド化率は18.8%であった。また、得られたポリイミド樹脂前駆体組成物3の粘度は10400mPa・sであった。
このポリイミド樹脂前駆体3は、BPDA 100mol%に、ODA 90.0mol%とDABA 10.0mol%を反応させたものであり、水素結合形成モノマー導入量であるDABA導入量は10mol%である。
窒素ガス導入管、冷却器、攪拌機を備えた4つ口フラスコに、BPDA 11.0重量部、ODA5.4重量部、DABA 2.6重量部、DMAc 67.2重量部を加えた。この混合物を撹拌しながら昇温し、80℃で6時間反応させ、固形分濃度22重量%のポリイミド樹脂前駆体組成物4(PI-4)を得た。得られたポリイミド樹脂前駆体の重量平均分子量は156,700であり、イミド化率は16.7%であった。また、得られたポリイミド樹脂前駆体組成物4の粘度は15100mPa・sであった。
このポリイミド樹脂前駆体4は、BPDA 100mol%に、ODA 70.0mol%とDABA 30.0mol%を反応させたものであり、水素結合形成モノマー導入量であるDABA導入量は30mol%である。
表2~4に示す配合組成に従って、絶縁被覆材用樹脂組成物PI-2-1~PI-2-10、PI-3-1~PI-3-6及びPI-4-1~PI-4-6(実施例用)及びPI-2-11~PI-2-14、PI-3-7~PI-3-10及びPI-4-7~PI-4-10(比較例用)を調製した。なお、表2~4に示すポリイミド樹脂前駆体の使用量は、ポリイミド樹脂前駆体組成物中のポリイミド樹脂前駆体の重量部を示す。
PI-2-1~PI-2-14、PI-3-1~PI-3-10及びPI-4-1~PI-4-10の絶縁被覆材用樹脂組成物をスピンコーター用いてガラス板に塗布し、ホットプレートを用いて室温から500℃まで昇温し、500℃で6分間加熱して硬化させて、ガラス板-ポリイミド樹脂被覆の積層体を得た。該積層体を室温に戻した後、90℃の熱湯に積層体を浸漬し、ガラスとフィルムを剥離した。続いて、フィルムを100℃のイナート乾燥機で60分間乾燥することにより、表2~4に示す膜厚のポリイミドフィルムを得た。
これに対して、オキサゾリン環を有するヘテロ環化合物を添加していない比較例では、引張伸度が小さく、屈曲追従性に劣るか、または加熱、硬化中に生じる内部応力にフィルムが耐えられず、十分な強度を有するフィルムが得られない。オキサゾリン環を有するヘテロ環化合物の添加量が多過ぎる比較例では、むしろ引張伸度が低下しており、耐屈曲性が損なわれていることが分かる。
Claims (10)
- テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物の反応により得られたポリイミド樹脂前駆体と、オキサゾリン環を有するヘテロ環化合物とを含む絶縁被覆材用樹脂組成物であって、
該テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物の反応により得られたポリイミド樹脂前駆体のテトラカルボン酸二無水物モノマー相当部に対して該オキサゾリン環を、0.01mol%以上10mol%以下含む、絶縁被覆材用樹脂組成物。 - 前記オキサゾリン環を有するヘテロ環化合物が、オキサゾリン環を2個以上有する化合物である、請求項1に記載の絶縁被覆材用樹脂組成物。
- 前記ポリイミド樹脂前駆体のイミド化率が1mol%以上35mol%以下である、請求項1又は2に記載の絶縁被覆材用樹脂組成物。
- 前記絶縁被覆材用樹脂組成物の焼成膜のガラス転移点が、250℃以上400℃以下である、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の絶縁被覆材用樹脂組成物。
- 前記ポリイミド樹脂前駆体が、-C(O)NH-構造を含む繰り返し単位を有する、請求項7に記載の絶縁被覆材用樹脂組成物。
- 前記-C(O)NH-構造が、4,4’-ジアミノベンズアニリドに由来する構造である、請求項8に記載の絶縁被覆材用樹脂組成物。
- 請求項1乃至9のいずれか1項に記載の絶縁被覆材用樹脂組成物からなる樹脂層を少なくとも有する、絶縁被覆材。
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