JP7247604B2 - 絶縁被覆材用樹脂組成物及び絶縁被覆材 - Google Patents

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Description

本発明は、高濃度と低粘度を両立し、かつ絶縁被覆材として有用な高耐熱性であり、耐屈曲性、更には耐摩耗性にも優れるポリイミド樹脂被覆を与えるポリイミド樹脂前駆体組成物と、この絶縁被覆材用樹脂組成物を用いた絶縁被覆材に関するものである。
従来、電気、電子部品、輸送機器、宇宙、航空機等の分野において、耐熱性、電気絶縁特性、耐摩耗性、耐薬品性及び機械特性等に優れたポリイミドが広く利用されている。ポリイミドの代表的な用途である絶縁被膜では、最終製品の高性能化に伴い、絶縁樹脂にはさらに高い性能が要求されている。例えばフレキシブルプリント回路基板(FPC)ではデバイスの小型化に伴ってFPCを薄型化するために絶縁被膜の薄膜化が求められるだけでなく、デバイスの筐体内に収めるために高い屈曲性が求められる。そのため、絶縁被膜には薄膜でも十分な耐久性を達成するための機械強度と、屈曲時の破断を防ぐ柔軟性が求められる。ディスプレイパネル中の絶縁被膜では、ディスプレイの薄型化とフレキシブル化のためFPC向け絶縁被膜と同様に柔軟性が求められるとともに、タッチペンなどでの接触に耐えるため、高い機械強度が求められる。さらに自動車に用いられる各種電線の絶縁被覆材料においても自動車の高出力化に伴う高耐熱性、配線の高密度化にともなう電線の高屈曲化と電線同士の擦れに対応するための高い柔軟性と機械強度が求められる。
ポリイミド樹脂の絶縁被膜を成形する際には、ポリイミド樹脂前駆体の有機溶媒溶液や水溶液(以下、ポリイミド樹脂前駆体溶液と称する)がしばしば用いられる。これは、一般的にポリイミド樹脂は各種溶剤への溶解性が低く、絶縁被膜を形成するために十分な濃度の溶液とし得ないためである。このため、各種溶剤への溶解性が高いポリアミック酸の溶液を銅やガラス等の基材に塗工、焼成し、溶媒の除去と同時にポリアミック酸のポリイミド樹脂への変換を行って、ポリイミド樹脂被覆を得る方法が広く用いられている。
ポリイミド樹脂前駆体溶液の濃度については、ポリイミド樹脂被覆の生産性、溶剤コスト、溶液の運送コスト等の低減の観点から、より高い溶質濃度が求められる。一方でポリイミド樹脂前駆体溶液の粘度については、各種塗工プロセスに適合する範囲内であることが求められる。単に溶質濃度を高くすると、著しい粘度上昇をもたらし、塗工プロセスに適合する粘度範囲から外れてしまう。そのため、溶液粘度を維持したまま溶液濃度を高めるために、ポリアミック酸の分子量を小さくする等の処方が必要となる。一般的に、高分子溶液の粘度は、溶質である高分子の分子量が大きいほど高くなるため、ポリイミド樹脂前駆体の分子量を小さくすることで、高濃度かつ好適粘度が維持されたポリイミド樹脂前駆体溶液が得られる。
しかしながら、一般的にポリアミック酸の分子量を小さくすると、焼成して得られるポリイミド樹脂被覆の機械強度や耐屈曲性が低下してしまい、上述のような絶縁被覆としての要求特性を達成できなくなるという問題が発生する。
上記の課題に対し、例えば特許文献1では、酸無水物基を末端に有するポリアミック酸オリゴマーの酸無水物基末端を水またはアルコール等で開環させ、これにジアミンモノマーを加えたポリイミド樹脂前駆体溶液が開示され、このポリイミド樹脂前駆体溶液は、高濃度かつ低粘度で、良好な力学物性を有するポリイミド樹脂塗膜が得られることが示されている。
また、特許文献1と同様に、ポリイミド樹脂前駆体を後工程で硬化する方法として、特許文献2にはポリアミック酸と特定のヘテロ環構造を有するヘテロ環化合物とを反応させることで、電気特性に優れた液晶配向剤が得られることが開示されている。
特開2001-31764号公報 特開2008-40473号公報
「新訂 最新ポリイミド -基礎と応用-」 エヌ・ティー・エス 2010年8月25日 p.76-79
ポリアミック酸については、アミド交換と呼ばれるアミック酸結合部の解離及び再結合が起こることが一般的に知られている(非特許文献1参照)。特許文献1のポリイミド樹脂前駆体の末端のみを修飾する手法では、保存中のこのようなアミド交換の寄与が考慮されておらず、長期保存下での効果の持続性には疑問の余地が残る。
これに対し、特許文献2では、主にポリアミック酸中のカルボキシル基とヘテロ環構造を有するヘテロ環化合物とが反応するものと考えられ、アミド交換によるポリアミック酸の末端構造の変化によらず効果が持続するものと考えられる。しかしながら、特許文献2では、ヘテロ環構造を有するヘテロ環化合物により硬化された液晶配向剤について、電気特性に対する寄与のみで、ヘテロ環構造を有するヘテロ環化合物を用いた硬化によるその力学特性への寄与については全く言及されていない。
本発明は上記課題を解決するものであって、本発明の目的は、低粘度と高濃度を両立し、かつ絶縁被覆材として有用な、高耐熱性、耐屈曲性、耐摩耗性に優れるポリイミド樹脂被覆を与えるポリイミド樹脂前駆体組成物と、この絶縁被覆材用樹脂組成物を用いた絶縁被覆材を提供することにある。
本発明者等は上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、ポリイミド樹脂前駆体にオキサゾリン環を有するヘテロ環化合物を所定量添加することで、上記課題を解決できることを見出し、本発明に至った。
即ち、本発明は以下を要旨とする。
[1] テトラカルボン酸二無水物由来成分及びジアミン化合物由来成分を含むポリイミド樹脂前駆体と、オキサゾリン環を有するヘテロ環化合物とを含む絶縁被覆材用樹脂組成物であって、該テトラカルボン酸二無水物由来成分に対して該オキサゾリン環を、0.01mol%以上10mol%以下含む、絶縁被覆材用樹脂組成物。
[2] 前記オキサゾリン環を有するヘテロ環化合物が、オキサゾリン環を2個以上有する化合物である、[1]に記載の絶縁被覆材用樹脂組成物。
[3 前記ポリイミド樹脂前駆体のイミド化率が1mol%以上35mol%以下である、[1]又は[2]に記載の絶縁被覆材用樹脂組成物。
[4] 前記絶縁被覆材用樹脂組成物の焼成膜のガラス転移点が、250℃以上400℃以下である、[1]乃至[3]のいずれかに記載の絶縁被覆材用樹脂組成物。
[5] 前記ポリイミド樹脂前駆体が、下記式(1)及び式(2)で表される構造単位の少なくとも一方を有する、[1]乃至[4]のいずれかに記載の絶縁被覆材用樹脂組成物。
Figure 0007247604000001
[6] 前記ポリイミド樹脂前駆体が、下記式(3)で表される構造単位を有する、[1]乃至[5]のいずれかに記載の絶縁被覆材用樹脂組成物。
Figure 0007247604000002
(式(3)中、R~Rはそれぞれ互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のフルオロアルキル基又は水酸基であり、Xは直接結合、酸素原子、硫黄原子、炭素数1以上4以下のアルキレン基、スルホニル基、スルフィニル基、スルフィド基、カルボニル基、エステル基、アミド基又は2級アミノ基であり、nは0以上4以下の整数である。)
[7] 前記ポリイミド樹脂前駆体が、下記式(5)で表される構造と、-NH-、=NH、-C(O)NH-、-NHC(=O)O-、-NHC(O)NH-、-NHC(S)NH-、-NH、-OH、-C(O)OH、-SH、-C(O)N(OH)-、-(O)S(O)-、-C(O)-及び-C(O)SHからなる群から選ばれる少なくとも1種の構造を含む繰り返し単位を有する、[1]乃至[6]のいずれかに記載の絶縁被覆材用樹脂組成物。
Figure 0007247604000003
(上記式(5)中、Rはテトラカルボン酸残基、Rはジアミン残基を表す。)
[8] 前記ポリイミド樹脂前駆体が、-C(O)NH-構造を含む繰り返し単位を有する、[7]に記載の絶縁被覆材用樹脂組成物。
[9] 前記-C(O)NH-構造が、4,4’-ジアミノベンズアニリドに由来する構造である、[8]に記載の絶縁被覆材用樹脂組成物。
[10] [1]乃至[9]のいずれかに記載の絶縁被覆材用樹脂組成物からなる樹脂層を少なくとも有する、絶縁被覆材。
本発明によれば、低粘度と高濃度を両立し、かつ絶縁被覆材として有用な、高耐熱性、耐屈曲性であり、耐摩耗性にも優れるポリイミド樹脂被覆を与えるポリイミド樹脂前駆体組成物、及びこの絶縁被覆材用樹脂組成物を用いた絶縁被覆材が提供される。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下の説明は、本発明の実施の形態の一例であり、本発明はその要旨を超えない限り、以下の記載内容に限定されるものではない。なお、本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前後の数値又は物性値を含む表現として用いるものとする。
〔用語の定義〕
本明細書において、ポリイミド樹脂前駆体、ポリイミド樹脂、ポリアミック酸等の定義は以下の通りである。
ポリイミド樹脂前駆体:(下記「ポリアミック酸」と比較して)ポリアミック酸の一部がイミド化したポリマー
ポリアミック酸:全くイミド化していない(=イミド化率0%の)ポリアミック酸
ポリイミド樹脂:完全にイミド化した(=イミド化率100%の)ポリイミド
ポリイミド樹脂前駆体組成物:ポリイミド樹脂前駆体、溶媒、オキサゾリン環を有するヘテロ環化合物、必要に応じて側鎖に複素環を有するポリマー、その他の成分を含み、ポリイミド樹脂を含んでいてもよい組成物
ポリイミド樹脂被覆:ポリイミド前駆体組成物を焼成して得られるポリイミド被覆
〔絶縁被覆材用樹脂組成物〕
本発明の絶縁被覆材用樹脂組成物は、テトラカルボン酸二無水物由来成分及びジアミン化合物由来成分を含むポリイミド樹脂前駆体(以下、本発明の絶縁被覆材用樹脂組成物に含まれるポリイミド樹脂前駆体を「本発明のポリイミド樹脂前駆体」と称す場合がある。)と、オキサゾリン環を有するヘテロ環化合物とを含み、該テトラカルボン酸二無水物由来成分に対する該オキサゾリン環の割合が、0.01mol%以上10mol%以下であることを特徴とする。
本発明の絶縁被覆材用樹脂組成物は、ポリイミド樹脂前駆体及びオキサゾリン環を有するヘテロ環化合物以外にも、他の成分を含んでいてもよく、ポリイミド樹脂を含んでいてもよい。
[作用機構]
ポリイミド樹脂前駆体に対して所定の割合でオキサゾリン環を有するヘテロ環化合物を含むことにより、低粘度な絶縁被覆材用樹脂組成物からでも高い耐熱性や耐屈曲性(屈曲追従性)、耐摩耗性を有するポリイミド樹脂被覆が得られる理由の詳細は明らかではないが、以下が考えられる。
オキサゾリン環は高温下ではカルボキシル基と速やかに反応するが、室温下ではカルボキシル基との反応は起こらないか又はその反応性が非常に低く、絶縁被覆材用樹脂組成物内でポリイミド樹脂前駆体と安定して共存することができる。一方、被覆後の加熱に際して、互いに異なるポリイミド樹脂前駆体分子鎖中のカルボキシル基とオキサゾリン環を有するヘテロ環化合物とが反応することで、ポリイミド樹脂前駆体分子鎖間に化学結合が生じて分子量が大きくなり、低粘度なポリイミド樹脂前駆体からでも高い耐熱性や耐屈曲性(屈曲追従性)、耐摩耗性を有するポリイミド樹脂被覆が得られるものと推測される。さらに、配合されるオキサゾリン環を有するヘテロ環化合物量が特定の範囲内であることで、ポリイミド樹脂前駆体とオキサゾリン環との反応点が少なすぎて十分な分子量の増大が起こらなかったり、逆に架橋密度が大きくなり過ぎることで耐屈曲性を失ったりすることなく、良好な耐屈曲性(屈曲追従性)を有するポリイミド樹脂被覆が得られるものと推測される。
[ポリイミド樹脂前駆体]
本発明において、ポリイミド樹脂前駆体とは、ポリアミック酸中のアミック酸構造が特定の範囲の割合でイミド化したものを指す。ポリイミド樹脂前駆体のイミド化率については後述する。
本発明のポリイミド樹脂前駆体は、テトラカルボン酸二無水物由来成分とジアミン化合物由来成分を含む。
<テトラカルボン酸二無水物由来成分>
テトラカルボン酸二無水物由来成分としては、鎖状脂肪族テトラカルボン酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸二無水物、芳香族テトラカルボン酸二無水物等のテトラカルボン酸二無水物に由来してポリイミド樹脂前駆体を構成する成分が挙げられる。これらのテトラカルボン酸二無水物は、1種を単独で用いても、2種以上を任意の比率及び組合せで用いてもよい。
鎖状脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、エチレンテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、meso-ブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物などが挙げられる。
脂環式テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、3,3’,4,4’-ビスシクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-テトラメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフリル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-11,2-ジカルボン酸無水物、トリシクロ[6.4.0.02,7]ドデカン-1,8:2,7-テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸無水物、1,1’-ビシクロヘキサン-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物などが挙げられる。
芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、1,2,3,4-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸二無水物、4,4-(p-フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物、4,4-(m-フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物、2,2’,6,6’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’、5,5’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’-(ヘキサフルオロトリメチレン)-ジフタル酸二無水物、4,4’-(オクタフルオロテトラメチレン)-ジフタル酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸無水物、1,2,5,6-ナフタレンジカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンジカルボン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンジカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8-フェナントレンテトラカルボン酸二無水物などが挙げられる。
<ジアミン化合物由来成分>
ジアミン化合物由来成分としては、芳香族ジアミン化合物、鎖状脂肪族ジアミン化合物、脂環式ジアミン化合物等のジアミン化合物に由来してポリイミド樹脂前駆体を構成する成分が挙げられる。これらのジアミン化合物は、1種を単独で用いても、2種以上を任意の比率及び組合せで用いてもよい。
芳香族ジアミン化合物としては、例えば、1,4-フェニレンジアミン、1,2-フェニレンジアミン、1,3-フェニレンジアミン、4,4’-(ビフェニル-2,5-ジイルビスオキシ)ビスアニリン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4-(3-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ネオペンタン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルビフェニル、4,4’-ジアミノ-2,2’-ジメチルビフェニル、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジヒドロキシビフェニル、ビス(4-アミノ-3-カルボキシフェニル)メタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、N-(4-アミノフェノキシ)-4-アミノベンズアミン、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル、ビス(3-アミノフェニル)スルホン、ノルボルナンジアミン、4,4’-ジアミノ-2-(トリフルオロメチル)ジフェニルエーテル、5-トリフルオロメチル-1,3-ベンゼンジアミン、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’-ジアミノ-2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,2-ビス[4-{4-アミノ-2-(トリフルオロメチル)フェノキシ}フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2-トリフルオロメチル-p-フェニレンジアミン、2,2-ビス(3-アミノ-4-メチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’-(9-フルオレニリデン)ジアニリン、2,7-ジアミノフルオレン、1,5-ジアミノナフタレン、及び3,7-ジアミノ-2,8-ジメチルジベンゾチオフェン5,5-ジオキシドなどが挙げられる。
鎖状脂肪族ジアミン化合物としては、例えば、1,2-エチレンジアミン、1,2-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、1,5-ジアミノペンタン、1,10-ジアミノデカン、1,2-ジアミノ-2-メチルプロパン、2,3-ジアミノ-2,3-ブタンジアミン、及び2-メチル-1,5-ジアミノペンタンなどが挙げられる。
脂環式ジアミン化合物としては、例えば、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、及び4,4’-メチレンビス(2-メチルシクロヘキシルアミン)などが挙げられる。
<その他の成分>
ポリイミド樹脂前駆体は、さらに目的に応じ、架橋点となるエチニル基、ビニル基、アリル基、シアノ基、イソシアネート基等を有する化合物(以下、「その他のモノマー」と称す場合がある。)由来成分を含んでいてもよい。
<好適態様1>
本発明のポリイミド樹脂前駆体は、耐熱性、生産性の観点から、下記式(1)で表される構造単位及び下記式(2)で表される構造単位の少なくとも一方を含むことが好ましい。下記式(1)及び(2)で表されるような構造を含むことで、重合時の反応性とポリイミド樹脂前駆体の溶媒への溶解性とが共に良好となり、且つ剛直な骨格を有する、耐熱性に優れたポリイミド樹脂被覆が得られる。
Figure 0007247604000004
上記式(1),(2)で表される構造単位は、テトラカルボン酸二無水物に由来するものであっても、ジアミン化合物に由来するものであってもよいが、通常、テトラカルボン酸二無水物によりポリイミド樹脂前駆体に導入される。従って、本発明のポリイミド樹脂前駆体は、原料のテトラカルボン酸二無水物として、少なくともピロメリット酸二無水物及び/又は3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を用いて得られたものであることが好ましい。
また、本発明のポリイミド樹脂前駆体は、下記式(3)で表される構造単位を有することが好ましい。式(3)で表される構造単位は剛直な骨格を有するため、耐熱性向上や生産性の観点から好ましい。
Figure 0007247604000005
上記式(3)において、R~Rはそれぞれ互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のフルオロアルキル基又は水酸基である。これらの中でも、重合時の反応性とポリイミド樹脂前駆体の溶媒への溶解性とが共に良好となることから水素原子又はメチル基が好ましい。
上記式(3)において、Xは直接結合、酸素原子、硫黄原子、炭素数1以上4以下のアルキレン基、スルホニル基、スルフィニル基、スルフィド基、カルボニル基、アミド基、エステル基又は2級アミノ基である。これらの中でも、加熱焼成して得られるポリイミド樹脂被覆の機械特性と耐熱性が共に良好となることから、直接結合、酸素原子、硫黄原子、炭素数1~4のアルキレン基、スルホニル基又はアミド基が好ましく、特に酸素原子が好ましい。
上記式(3)において、nは0~4の整数である。nは好ましくは1~4の整数である。
なお、ポリイミド樹脂前駆体1分子全体における式(3)で表される構造単位において、R~R、X、nは必ずしも全て同一でなくともよい。特に、nが2以上の整数である場合、Xは異なる構造であってもよい。
式(3)で表される構造単位の中でも、下記式(3-1)~式(3-6)で表される構造単位のいずれかで表されるものが加熱焼成して得られるポリイミド樹脂被覆の機械特性と耐熱性が共に良好となることから、好ましい。なお、1分子のポリイミド樹脂前駆体中にこれらの構造単位が1種のみで含まれていても、複数種が組み合わされて含まれていてもよい。
Figure 0007247604000006
上記式(3)で表される構造単位はテトラカルボン酸二無水物に由来するものであっても、ジアミン化合物に由来するものであってもよいが、通常、ジアミン化合物によりポリイミド樹脂前駆体に導入される。
上記式(3)で表される構造単位がジアミン化合物由来である場合、ポリイミド樹脂前駆体は、ジアミン化合物として少なくとも下記式(4)で表されるジアミン化合物を用いて製造されることが好ましい。
Figure 0007247604000007
上記式(4)において、R’~R’は前記式(3)におけるR~Rと同様に定義され、X’はXと同様に定義される。また、n’はnと同様に定義される。
上記式(4)で表されるジアミン化合物としては、例えば、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノベンゾイルアニリド、4-アミノフェニル-4-アミノベンゾエート、ビス(4-アミノフェニル)テレフタレート、ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4-アミノ-3-カルボキシフェニル)メタン等が挙げられる。これらの中でも、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル等が好ましい。
本発明のポリイミド樹脂前駆体は、前記式(1)で表される構造単位及び前記式(2)で表される構造単位の少なくとも一方、又は前記式(3)で表される構造単位を含んでいてもよく、すべての構造単位を含んでいてもよい。また、上記以外の構造単位を有していてもよい。
前記式(1)又は(2)で表される構造単位、前記式(3)で表される構造単位による前述の効果を有効に得る上で、本発明のポリイミド樹脂前駆体を構成するテトラカルボン酸二無水物由来成分中に、式(1)及び/又は(2)で表される構造単位を80mol%以上、特に90~100mol%含み、本発明のポリイミド樹脂前駆体を構成するジアミン化合物由来成分中に式(3)で表される構造単位を80mol%以上、特に90~100mol%含むことが好ましい。
<好適態様2>
本発明のポリイミド樹脂前駆体は、耐熱性、耐摩耗性及び耐屈曲性の観点から、下記式(5)で表される構造と、-NH-(イミノ結合;イミノ基と言うこともある)、=NH(イミノ基)、-C(O)NH-(アミド結合;アミド基と言うこともある)、-NHC(O)O-(ウレタン結合;ウレタン基と言うこともある)、-NHC(O)NH-(ウレア結合;ウレア基と言うこともある)、-NHC(S)NH-(チオウレア結合;チオウレア基と言うこともある)、-NH(アミノ基)、-OH(水酸基)、-C(O)OH(カルボキシ基)、-SH(チオール基)、-C(O)N(OH)-(ヒドロキシアミド基)、-(O)S(O)-(スルホニル基)、-C(O)-(カルボニル基)、及び-C(O)SH(チオカルボキシ基)からなる群から選ばれる少なくとも1種の構造(以下、これらの構造を「水素結合形成構造」と称す場合がある。)を含む繰り返し単位を有することが好ましい。
Figure 0007247604000008
(式(5)中、Rはテトラカルボン酸残基(即ち、テトラカルボン酸二無水物に由来する構造単位)、Rはジアミン残基(即ち、ジアミン化合物に由来する構造単位)を表す。)
これは以下の理由による。
分子鎖間を化学結合で連結すると、弾性率が高くなることが知られている。化学結合には共有結合と非共有結合があるが、共有結合で分子鎖間を連結した場合、弾性率は高くなる(即ち、耐摩耗性は向上する。)が、機械的な柔軟性(伸び)は低下する。即ち、耐屈曲性は低下する。通常、ポリイミド樹脂前駆体は一定の温度以上で焼成すると、分子の末端が他の分子または分子内の特定部位等と反応して共有結合を形成するため、柔軟性は低下するが、分子が非共有結合を形成する構造を含む繰り返し単位を有することで、分子間及び/または分子内の特定部位等と非共有結合(以下、単に「非共有結合」と記すことがある)が形成され、分子間相互作用により適度な弾性率を有し、耐摩耗性と耐屈曲性とを両立することができる。
非共有結合としては、イオン結合、π-πスタッキング及び水素結合等が挙げられるが、ポリイミド樹脂被覆の耐熱性が高くなり、また機械特性にも優れるようになることから、水素結合が好ましく、本発明の好適態様2においては、水素結合を形成する構造として、特にその効果に優れる、上述の水素結合形成構造をポリイミド樹脂前駆体に導入する。
上記の水素結合形成構造のうち、特に-C(O)NH-(アミド結合)、-NHC(O)NH-(ウレア結合)、-OH(水酸基)が好ましく、とりわけ-C(O)NH-(アミド結合)が、上記の導入効果に優れる点から好ましい。
ポリイミド樹脂前駆体中の、水素結合形成構造の含有量としては、特に制限はないが、ポリイミド樹脂前駆体中の全ての繰り返し単位が水素結合形成構造を1つずつ含む場合を100%とすると、通常0%より大きく、好ましくは2%以上、より好ましくは5%以上であり、通常100%未満、好ましくは75%以下、より好ましくは50%以下である。導入量がこの範囲にあることで、引張弾性率や伸び等の機械特性がより良好なポリイミド樹脂被覆とすることができる。
なお、ポリイミド前駆体中の、水素結合形成構造の含有量は、通常、NMR、IR、ラマン、滴定又は質量分析法等により求めることができる。
水素結合形成構造をポリイミド樹脂前駆体の繰り返し単位に導入する方法としては、ポリイミド樹脂前駆体を製造する際に、水素結合形成構造を有するモノマーを重合する方法、重合反応によって水素結合形成構造を形成する方法が挙げられ、特に、水素結合形成構造を1種以上有するモノマーをポリイミド樹脂前駆体の製造原料として用いて重合する方法が好ましい。
水素結合形成構造を1種以上有するモノマー(以下、「水素結合形成モノマー」と称す場合がある。)としては、水素結合形成構造を1種以上有するテトラカルボン酸二無水物やジアミン化合物が挙げられる。
具体的には、該テトラカルボン酸二無水物としては、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられ、ジアミン化合物の例としては、4,4’-ジアミノベンズアニリド、4,4’-ビス(4-アミノベンズアミド)-3,3’-ジヒドロキシビフェニル、2,2’-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、2,2’-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジヒドロキシビフェニル、ビス(4-アミノ-3-カルボキシフェニル)メタン等が挙げられる。これらの水素結合形成モノマーは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の比率及び組合せで用いてもよい。
これらのうち、特に、4,4’-ジアミノベンズアニリドを用いることが導入効果に優れる点で好ましい。
これらの水素結合形成モノマーの導入量としては、特に制限はないが、ポリイミド樹脂前駆体の全繰り返し単位中、通常0.5mol%以上、好ましくは5mol%以上、より好ましくは10mol%以上で、通常50mol%以下、好ましくは40mol%以下、より好ましくは30mol%以下である。水素結合形成モノマーの導入量がこの範囲にあることで、高弾性及び高伸度が両立されたポリイミド樹脂被覆が得られ易い。以下、この水素結合形成モノマー導入量を「水素結合形成モノマー導入量」と称す。
なお、本発明のポリイミド樹脂前駆体は、前述の好適態様1の要件のみ備えるものであってもよく、好適態様2の要件のみ備えるものであってもよく、好適態様1及び2の要件を共に備えるものであってもよい。
<製造方法>
本発明のポリイミド樹脂前駆体の製造方法には、特に制限はなく、従来公知のイミド化方法が使用できる。例えば、反応溶媒存在下、上述のテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物を加熱脱水又は脱水試薬によりイミド化反応を行う方法、反応溶媒存在下、当該テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物をアミド化反応させて得られるポリアミック酸を得た後、該前駆体を加熱脱水ないし脱水試薬によりイミド化反応を行う方法などが挙げられる。この反応系内に、前述の水素結合形成モノマーを存在させておくことで、水素結合形成構造を含む繰り返し単位を有するポリイミド樹脂前駆体を製造することができる。更にこの反応系には、前述のその他のモノマーを存在させて反応を行ってもよい。いずれの場合も、溶媒中にポリイミド樹脂前駆体を含むポリイミド樹脂前駆体組成物として、本発明のポリイミド樹脂前駆体を得ることができる。
以下、テトラカルボン酸二無水物、ジアミン化合物、水素結合形成モノマー、その他のモノマーをまとめて「テトラカルボン酸二無水物及びジアミン化合物等の原料」と称す。
脱水試薬としては、従来公知の試薬が使用できるが、例えば、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水安息香酸、無水トリフルオロ酢酸、無水クロロ酢酸等の酸無水物が挙げられる。
テトラカルボン酸二無水物及びジアミン化合物等の原料を溶媒中で反応させる方法は特に限定されない。また、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物等の原料の添加順序や添加方法も特に限定されない。例えば、溶媒にテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物を順に投入し、適切な温度で撹拌することにより、ポリイミド樹脂前駆体を得ることができる。
反応に供するジアミン化合物の量は、テトラカルボン酸二無水物1molに対して、通常0.7mol以上、好ましくは0.8mol以上、より好ましくは0.9mol以上であり、通常1.3mol以下、好ましくは1.2mol以下、より好ましくは1.1mol以下である。ジアミン化合物の量をこのような範囲とすることで、高重合度のポリイミド樹脂前駆体が得られ、製膜性、造膜性が向上する傾向にある。
溶媒中のテトラカルボン酸二無水物及びジアミン化合物等の原料の濃度は、反応条件や得られるポリイミド樹脂前駆体組成物の粘度に応じで適宜設定できる。
テトラカルボン酸二無水物及びジアミン化合物等の原料の合計濃度は、特に制限はないが、テトラカルボン酸二無水物及びジアミン化合物等の原料と溶媒とを含む溶液全量に対し、通常1重量%以上、好ましくは5重量%以上であり、通常70重量%以下、好ましくは50重量%以下である。この濃度範囲で重合を行うことにより、均一で高重合度のポリイミド樹脂前駆体を得ることができる。テトラカルボン酸二無水物及びジアミン化合物等の原料の合計濃度1重量%以上で重合を行う場合、ポリイミド樹脂前駆体の重合度が十分高くなり、最終的に得られるポリイミド樹脂被覆の強度が得られる傾向にある。一方、70重量%以下で重合を行うことで、溶液粘度が抑制され、撹拌しやすい傾向にある。
溶液中でポリイミド樹脂前駆体を得る場合、テトラカルボン酸二無水物及びジアミン化合物等の原料を溶媒中で反応させる温度は、反応が進行する温度であれば、特に制限はないが、通常0℃以上、好ましくは20℃以上であり、通常120℃以下、好ましくは100℃以下である。
反応時間は通常1時間以上、好ましくは2時間以上であり、通常100時間以下、好ましくは42時間以下である。このような条件で行うことにより、低コストで収率よくポリイミド樹脂前駆体を得ることができる傾向にある。
反応時の圧力は、常圧、加圧、又は減圧のいずれかでもよい。雰囲気は空気下でも不活性雰囲気下でもよいが、不活性雰囲気の方が得られるポリイミド樹脂被覆の屈曲追従性の観点から好ましい。
テトラカルボン酸二無水物及びジアミン化合物等の原料を反応させる際に用いる溶媒としては特に限定されないが、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、ナフサ、トルエン、キシレン、メシチレン、アニソール等の炭化水素系溶媒;四塩化炭素、塩化メチレン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、フルオロベンゼン等のハロゲン化炭化水素溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、メトキシベンゼン等のエーテル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコール系溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミド系溶媒;ジメチルスルホキシド等のスルホン系溶媒;ピリジン、ピコリン、ルチジン、キノリン、イソキノリン等の複素環系溶媒;フェノール、クレゾール等のフェノール系溶媒;γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン等のラクトン系溶媒;等が挙げられる。中でも、グリコール系溶媒、アミド系溶媒、ラクトン系溶媒がポリイミド樹脂前駆体を良く溶解し、組成物粘度等が通常の製造設備で扱いやすい傾向となるため好ましい。
これらの溶媒は、1種を単独で用いても、2種以上を任意の比率及び組合せで用いてもよい。
テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物等の原料の反応性を高めるために、有機アミン化合物を触媒として用いてもよい。有機アミン化合物としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン等の第3級アルキルアミン類;トリエタノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、N,N-ジエチルエタノールアミン等のアルカノールアミン類;トリエチレンジアミン等のアルキレンジアミン類;ピリジン等のピリジン類;N-メチルピロリジン、N-エチルピロリジン等のピロリジン類;N-メチルピペリジン、N-エチルピペリジン等のピペリジン類;イミダゾール等のイミダゾール類;キノリン、イソキノリン等のキノリン類等が挙げられる。これらは1種を単独で用いても、2種以上を任意の比率及び組合せで用いてもよい。
得られたポリイミド樹脂前駆体は、貧溶媒中に添加することで固体状に析出させて回収することもできる。
この場合、用いる貧溶媒は特に制限は無く、ポリイミド樹脂前駆体の種類によって適宜選択し得るが、ジエチルエーテル又はジイソプロピルエーテル等のエーテル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、イソブチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶媒;等が挙げられる。中でも、メタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶媒が効率良く析出物が得られ、沸点が低く乾燥が容易となる傾向にあるため好ましい。これらの溶媒は、1種を単独で用いても、2種以上を任意の比率及び組合せで用いてもよい。
貧溶媒で析出させて得られたポリイミド樹脂前駆体を溶媒に再溶解させてワニスとして用いることもできる。
<イミド化率>
本発明のポリイミド樹脂前駆体のイミド化率(mol%)は特に制限されないが、通常1mol%以上35mol%以下である。絶縁被覆材用樹脂組成物の保存安定性等の観点から、ポリイミド樹脂前駆体のイミド化率はこの範囲となることが好ましい。イミド化率が1mol%以上であることで、ポリイミド樹脂前駆体が安定製造できる傾向にある。またポリイミド樹脂前駆体のイミド化率が35mol%以下であることで、ポリイミド樹脂前駆体の溶媒に対する溶解性が得られ、ポリイミド樹脂前駆体の析出が抑制される等、保存安定性が向上する傾向にある。なお、ポリイミド樹脂前駆体のイミド化率は、後掲の実施例の項に記載の通り、H-NMRで定量化することができる。
<重量平均分子量>
本発明のポリイミド樹脂前駆体の重量平均分子量(Mw)は特に制限されないが、ポリスチレン換算の重量平均分子量で通常1,000以上、好ましくは2,000以上、より好ましくは5,000以上である。また、通常2,000,000以下であり、好ましくは1,000,000以下であり、より好ましくは500,000以下である。この範囲となることで、溶媒に対する溶解性、組成物粘度等が通常の製造設備で扱いやすい傾向となるため好ましい。
重量平均分子量が2,000以上であることで、絶縁被覆成形時にポリイミド樹脂前駆体とオキサゾリン環を有するヘテロ環化合物が反応し、十分な耐熱性、耐屈曲性、耐摩耗性を示すポリイミド樹脂被覆が得られる傾向にある。
また、重量平均分子量が2,000,000以下であることで、一般的に組成物の粘度が高くなり過ぎず、良好な塗工性が得られる傾向にある。
なお、ポリスチレン換算の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により求めることができる。具体的な測定方法は、後掲の実施例の項に記載の通りである。
本発明の絶縁被覆材用樹脂組成物中のポリイミド樹脂前駆体の濃度は、特に制限はないが、組成物の生産性、その後の使用時の取り扱い性、成膜性、成膜時の表面平滑性等の観点から、通常15重量%以上、好ましくは18重量%以上、より好ましくは20重量%以上、特に好ましくは25重量%以上であり、通常50重量%以下である。
組成物中のポリイミド樹脂前駆体の濃度は従来知られている方法を用いて適宜確認することができる。例えば、組成物の溶媒や、その他成分を減圧乾燥等の方法を用いて留去し、留去する前後の重量比から求めることができる。
[オキサゾリン環を有するヘテロ環化合物]
本発明の絶縁被覆材料用樹脂組成物はオキサゾリン環を有するヘテロ環化合物を含む。
オキサゾリン環を有するヘテロ環化合物は、通常一分子内に2つまたはそれ以上のオキサゾリン環を有するヘテロ環化合物であり、特に限定されない。例えば、オキサゾリン環とビニル基を有するモノマーを重合して得られる側鎖にオキサゾリン環を有するホモポリマー(単独重合体)であってもよく、またはその他のオキサゾリン環を有しないビニル基を有するモノマーとの共重合体であってもよい。
オキサゾリン環を有するヘテロ環化合物は、本発明のポリイミド樹脂前駆体を溶解させる溶媒に可溶であることが好ましい。
オキサゾリン環を有するヘテロ環化合物としては、例えば2,2’-ビス(2-オキサゾリン)、2,2’-ビス-4-ベンジル-2-オキサゾリンのように2つのオキサゾリン環同士が直接結合している化合物、1,4-ビス(4,5-ジヒドロ-2-オキサゾリル)ベンゼン、1,3-ビス(4,5-ジヒドロ-2-オキサゾリル)ベンゼン、2,6-ビス(イソプロピル-2-オキサゾリン-2-イル)ピリジン、2,2’-メチレンビス(4-tert-ブチル-2-オキサゾリン)、2,2’-メチレンビス(4-フェニル-2-オキサゾリン)のように2つのオキサゾリン環が異なる有機基を介して結合している化合物、1,2,4-トリス-(2-オキサゾリン-2-イル)ベンゼンのように3つのオキサゾリン環を有する化合物、2,3-ビス(4-イソプロペニル-2-オキサゾリン-2-イル)ブタン、2,2’-イソプロピリデンビス(4-tert-ブチル-2-オキサゾリン)、2,2’-イソプロピリデンビス(4-フェニル-2-オキサゾリン)のようにオキサゾリン環の他に二重結合を有する化合物等が挙げられる。これらの他、エポクロス(商品名、株式会社日本触媒製)のようなオキサゾリン環を有するポリマーやオリゴマーも挙げられる。これらのなかでも、本発明のポリイミド樹脂前駆体との相溶性や反応性、及び絶縁被覆材用樹脂組成物の保存安定性の観点から、1,4-ビス(4,5-ジヒドロ-2-オキサゾリル)ベンゼン、1,3-ビス(4,5-ジヒドロ-2-オキサゾリル)ベンゼン、及びエポクロスをより好適に用いることができる。
これらのオキサゾリン環を有するヘテロ環化合物は、1種を単独で用いても、2種以上を任意の比率及び組合せで用いてもよい。
本発明の絶縁被覆材用樹脂組成物は、オキサゾリン環を有するヘテロ環化合物を、ポリイミド樹脂前駆体に含まれるテトラカルボン酸二無水物由来成分に対してオキサゾリン環の割合が0.01mol%以上10mol%以下となるように含む(以下、ポリイミド樹脂前駆体に含まれるテトラカルボン酸二無水物由来成分に対するオキサゾリン環の割合を、単に「オキサゾリン環割合」と称す場合がある。)。オキサゾリン環割合は、好ましくは0.02mol%以上であり、より好ましくは0.03mol%以上であり、さらに好ましくは0.04mol%以上であり、特に好ましくは0.035mol%以上である。また、オキサゾリン環割合は、好ましくは8mol%以下であり、より好ましくは6mol%以下であり、さらに好ましくは5mol%以下であり、特に好ましくは3mol%以下である。オキサゾリン環割合が上記下限値未満であると、オキサゾリン環とポリイミド樹脂前駆体中のカルボキシル基とが反応し分子量が大きくなることによる耐屈曲性の向上効果を十分に得ることができない傾向にある。また、上記上限値を超えるほどの多量のオキサゾリン環を有するヘテロ環化合物を加えた場合は、ポリイミド樹脂被覆中のポリイミド樹脂分子鎖間のオキサゾリン環由来の架橋構造が多くなりすぎ、逆に耐屈曲性を失う。
上記のオキサゾリン環割合でオキサゾリン環を有するヘテロ環化合物を含む本発明の絶縁被覆材用樹脂組成物は、前述の方法で製造されたポリイミド樹脂前駆体組成物に、オキサゾリン環を有するヘテロ環化合物を混合することにより製造される。
[側鎖に複素環を有するポリマー]
本発明の絶縁被覆材用樹脂組成物は、側鎖に複素環を有するポリマーを含有するものであってもよく、側鎖に複素環を有するポリマーを含むことで、得られるポリイミド樹脂被覆の耐屈曲性を高めることができる。
この場合に用いる側鎖に複素環を有するポリマーは、通常、ビニル基を有する複素環化合物のポリマーであり、ホモポリマー(単独重合体)であってもよく、共重合体であってもよい。
側鎖に複素環を有するポリマーを構成するモノマー成分であるビニル基を有する複素環化合物としては、ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルピロール、ビニルポルフィリン、ビニルインドール、ビニルフタルイミド、ビニルチオフェンなどが挙げられるが、窒素原子を含む複素環化合物が、ポリイミド樹脂前駆体との相溶性に優れるため好ましい。また、5員環および/又は6員環の複素環化合物が溶媒への溶解性の観点から好ましい。
これらの複素環化合物よりなるホモポリマーとしては、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジン、ポリビニルピロール、ポリビニルポルフィリン、ポリビニルインドール、ポリビニルフタルイミド、ポリビニルチオフェンなど、ポリイミド樹脂前駆体との反応性を有さないものが挙げられる。
側鎖に複素環を有するポリマーは、これらのビニル基を有する複素環化合物の2種以上の共重合体、或いはビニル基を有する複素環化合物の1種又は2種以上と他のビニル系モノマーの1種又は2種以上の共重合体であってもよく、ビニル基を有する複素環化合物と他のビニル系モノマーとの共重合体としては、ポリビニルピリジン-ポリスチレン共重合体、ポリビニルピロリドン-ポリビニルアルコール共重合体などが挙げられる。
側鎖に複素環を有するポリマーとしては、なかでも、複素環が窒素原子と炭素原子で構成されるものが好ましく、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジン、或いは、ビニルピロリドン及び/又はビニルピリジンを共重合成分とした共重合体であることが好ましく、特にポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジンが好ましい。なお、ビニルピロリドン及び/又はビニルピリジンを共重合成分として含む共重合体は、共重合体を構成するモノマー由来の全構造単位に対して、ビニルピロリドン及び/又はビニルピリジンに由来する構造単位を50mol%以上含むことが好ましい。
本発明で用いる側鎖に複素環を有するポリマーは、分子量が5,000~2,000,000のものが好ましく、分子量が10,000~2,000,000のものがより好ましく、分子量が20,000~1,800,000のものがさらに好ましく、分子量が30,000~1,500,000のものが特に好ましい。上記範囲であることで、ポリイミド樹脂の分子間に配位した場合に、ポリイミド分子間力を弱める機能を得られる傾向にある。なお、ここでいう「分子量」は、重量平均分子量(Mw)のことであり、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定されるポリスチレン換算の値である。
これらの側鎖に複素環を有するポリマーは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の比率及び組合せで用いてもよい。
本発明の絶縁被覆材用樹脂組成物が側鎖に複素環を有するポリマーを含む場合、側鎖に複素環を有するポリマーの含有量は、本発明のポリイミド樹脂前駆体100重量部に対して0.1~7重量部であることが好ましい。側鎖に複素環を有するポリマーの含有量がポリイミド樹脂前駆体100重量部に対して0.1重量部以上であることで側鎖に複素環を有するポリマーを配合することによる耐屈曲性の向上効果を十分に得ることができる傾向にある。また、7重量部以下であることで、ポリイミド樹脂被覆成形時の熱により側鎖に複素環を有するポリマーの分子切断が抑制され、目的とする耐屈曲性が得られる傾向にある。
本発明の絶縁被覆材用樹脂組成物中の側鎖に複素環を有するポリマーの含有量は、ポリイミド樹脂前駆体100重量部に対してより好ましくは0.5~5重量部である。
上記の割合で側鎖に複素環を有するポリマーを含む本発明の絶縁被覆材用樹脂組成物は、前述の方法等で製造されたポリイミド樹脂前駆体組成物に、側鎖に複素環を有するポリマーを混合することにより製造される。
[その他の成分]
本発明の絶縁被覆材料用樹脂組成物は、塗布性付与、加工特性付与、各種機能付与等の観点から、界面活性剤、消泡剤、有機顔料等の着色材、酸化防止剤、紫外線吸収剤、ヒンダートアミン系光安定剤等の安定剤、帯電防止剤、潤滑油、帯電防止剤、難燃剤、可塑剤、離型剤、レベリング剤等を含有していてもよい。また、本発明の目的を損なわない範囲で、その他の樹脂や、無機系充填材又は有機系充填材を含有していてもよい。
無機系充填材としては、例えばシリカ、ケイ藻土、酸化ベリリウム、軽石及び軽石バルーン等の無機酸化物;水酸化アルミニウム及び水酸化マグネシウム等の水酸化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、ドロマイト及びドーソナイト等の金属炭酸塩;硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸アンモニウム及び亜硫酸カルシウム等の金属硫酸塩並びに亜硫酸塩;タルク、クレー、マイカ、アスベスト、ガラス繊維、ガラスバルーン、ガラスビーズ、ケイ酸カルシウム、モンモリロナイト及びベントナイト等のケイ酸塩;硫化モリブデン、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウム及びボロン繊維等の粉末状、粒状、板状又は繊維状の無機質充填材;炭化ケイ素、窒化ケイ素、ジルコニア、窒化アルミニウム、炭化チタン及びチタン酸カリウム等の粉末状、粒状、繊維状又はウイスカー状のセラミックス充填材などが挙げられる。
有機系充填材としては、例えばモミ殻などの殻繊維、木粉、木綿、ジュート、紙細片、セロハン片、芳香族ポリアミド繊維、セルロース繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、熱硬化性樹脂粉末及びゴムなどが挙げられる。
充填材としては、不織布等平板状に加工したものを用いても良いし、複数の材料を混合して用いても良い。
これら各種充填材及び添加成分は、本発明の絶縁被覆材用樹脂組成物を製造するいかなる工程のいかなる段階で添加してもよい。
その他の成分の中で、レベリング剤を含むと、形成されるポリイミド樹脂被覆の平滑性が向上する傾向となるため好ましい。レベリング剤としては、例えばシリコーン系化合物等が挙げられる。シリコーン系化合物は特に限定はないが、例えば、ポリエーテル変性シロキサン、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性ポリメチルアルキルシロキサン、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性ポリメチルアルキルシロキサン、アラルキル変性ポリメチルアルキルシロキサン、高重合シリコーン、アミノ変性シリコーン、アミノ誘導体シリコーン、フェニル変性シリコーン及びポリエーテル変性シリコーン等が挙げられる。
[絶縁被覆材用樹脂組成物の粘度]
本発明の絶縁被覆材用樹脂組成物の粘度は、特に制限は無いが、組成物の生産性、その後の使用時の取り扱い性、成膜性、成膜時の表面平滑性等の観点から、通常30,000mPa・s以下、好ましくは20,000mPa・s以下、より好ましくは10,000mPa・s以下、特に好ましくは5,000mPa・s以下である。粘度の下限については特に制限はないが、通常100mPa・s以上である。
尚、絶縁被覆材用樹脂組成物の粘度は、後述の実施例に記載のように例えばB型粘度計を用いて測定することができる。
[ガラス転移温度(Tg)]
本発明の絶縁被覆材用樹脂組成物の焼成膜は、DMS法(動的熱機械測定装置)によるそのガラス転移温度(Tg)が、好ましくは250℃以上であり、より好ましくは260℃以上であり、更に好ましくは270℃以上であり、特に好ましくは280℃以上である。ガラス転移温度が上記下限値以上であることが耐熱性の観点から好ましい。一方、ガラス転移温度(Tg)の上限については特に制限されないが、通常400℃以下であり、Tgを有さないものもある。なお、DMS法によるガラス転移温度(Tg)は後掲の実施例に記載の方法により測定することができる。
[用途]
本発明の絶縁被覆材用樹脂組成物の用途には特に制限はないが、その高耐熱性、耐屈曲性、更には耐摩耗性等の特性により、絶縁被覆材、金属線や金属板等の金属被覆材、ポリイミドフィルム、ポリイミド積層体等に用いることができる。なお、絶縁とは電気機械や回路において、周辺部品や導体に電流が流れないよう遮断することである。
いずれの用途においても、本発明の絶縁被覆材用樹脂組成物は、通常、基材上に成膜して各種用途に供される。
本発明の絶縁被覆材用樹脂組成物を用いた膜の形成方法は時に制限はないが、基材等に塗布する方法等が挙げられる。
塗布する方法としては、ダイコーティング、スピンコーティング、ディップコーティング、スクリーン印刷、スプレー、キャスト法、コーターを用いる方法、吹付による塗布方法、浸漬法、カレンダー法及び流涎法等が挙げられる。これらの方法は塗布面積及び被塗布面の形状などに応じて適宜選択することができる。
塗布等で形成した膜に含まれる溶媒を揮発させる方法も特に制限はない。通常は、組成物が塗布されたキャリア基板を加熱することにより、溶媒を揮発させる。加熱方法は特に制限されず、例えば、熱風加熱、真空加熱、赤外線加熱、マイクロ波加熱及び熱板・ホットロール等を用いた接触による加熱等が挙げられる。
上記の場合の加熱温度は、溶媒の種類に応じて好適な温度を用いることができる。加熱温度は、通常40℃以上、好ましくは100℃以上、さらに好ましくは200℃以上、特に好ましくは300℃以上、通常1000℃以下、好ましくは700℃以下、さらに好ましくは600℃以下、特に好ましくは500℃以下である。加熱温度が40℃以上である場合、溶媒が十分揮発される点で好ましい。また、加熱温度が300℃以上である場合、イミド化反応の進行が速いため、短時間焼成が可能となる。また、加熱の雰囲気は、空気下でも不活性雰囲気下でもよく特に制限はないが、ポリイミドに無色透明が要求されるときは、着色抑制のため窒素等の不活性雰囲気下で加熱することが好ましい。
[ポリイミドフィルム]
本発明の絶縁被覆材用樹脂組成物を用いてポリイミドフィルムを成膜して使用する場合、そのポリイミドフィルムの厚さは、通常1μm以上、好ましくは2μm以上であり、通常300μm以下、好ましくは200μm以下である。厚さが1μm以上であることにより、ポリイミドフィルムが十分な強度を有する自律フィルムとなり、ハンドリング性が向上する傾向にある。また、厚さを300μm以下にすることによりフィルムの均一性が担保しやすい傾向にある。
ポリイミドフィルムに求められる性能は用途に依存するが、以下のような機械的強度を有することが好ましい。
ポリイミドフィルムの引張弾性率は、特段の制限はないが、耐摩耗性の観点から好ましくは2000MPa以上、より好ましくは2500MPa以上、更に好ましくは3000MPa以上、特に好ましくは3500MPa以上であり、一方、耐屈曲性の観点から好ましくは10GPa以下、より好ましくは5000MPa以下である。
また、引張伸度は、特段の制限はないが、耐屈曲性の観点から好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上、更に好ましくは50%以上であり、屈曲追従性の観点から特に上限はなく、伸度が高い方が好ましい。
ポリイミドフィルムがこのような引張弾性率と引張伸度を兼備することで、高弾性率と高伸度が両立され、表面保護層、デバイス用基板、絶縁膜又は配線膜等様々な用途に好適に使用される。また、フィルムに成膜した際に、このような引張弾性率と引張伸度を満たすものであれば、後述の金属被覆材としての用途においても、例えば近年のモータの小型、高出力化の要求に見合う耐屈曲性と耐摩耗性を満たすものとなる。
なお、ポリイミドフィルムの引張弾性率及び引張伸度は、後掲の実施例の項に記載の方法で測定される。
本発明の絶縁被覆材用樹脂組成物によるポリイミドフィルムは、例えば、支持体(基材)に、上述したように、本発明の組成物を塗布後、加熱し、該支持体からフィルムを剥離することにより得ることができる。
支持体からポリイミドフィルムを剥離する方法は特に制限はないが、フィルムなどの性能を損なうことなく剥離できるという点で、物理的に剥離する方法、レーザーによって剥離する方法が好ましい。
物理的に剥離する方法とは、例えば、ポリイミドフィルム/支持体からなる積層体の周縁を切離してポリイミドフィルムを得る方法、周縁部を吸引してポリイミドフィルムを得る方法、周縁を固定し支持体を移動させてポリイミドフィルムを得る方法などが挙げられる。
<ポリイミド積層体>
上述のように、基材に本発明の絶縁被覆材用樹脂組成物を塗布後、加熱して、基材上にポリイミドフィルムを成膜し、これをそのまま剥離することなく基材と一体化させてポリイミド積層体とすることができる。
基材としては、硬質で耐熱性を有することが好ましい。すなわち、製造工程上必要とされる温度条件で、変形しない素材を用いることが好ましい。具体的には、通常200℃以上、好ましくは250℃以上のガラス転移温度を持つ素材で基材が構成されていることが好ましい。このような基材としては、例えば、ガラス、セラミック、金属及びシリコンウェハ等が挙げられる。
基材としてガラスを用いる場合、用いられるガラスとしては、特に限定されるものではないが、例えば青板ガラス(アルカリガラス)、高ケイ酸ガラス、ソーダ石灰ガラス、鉛ガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、無アルカリガラス(ホウケイ酸ガラス、コーニング社製イーグルXG等)及びアルミノケイ酸塩ガラス等が挙げられる。
基材として金属を用いる場合、用いられる金属としては、特に限定されるものではないが、例えば金、銀、銅、アルミニウム及び鉄などが挙げられる。これら各種合金を用いてもよい。
基材の形状には特に制限はなく、フィルムないしはシート状、板状であってもよく、この場合、基材は、平面状でも曲面状でも、段差を有するものであってもよい。また、基材は、線状、棒状であってもよい。
これらの基材へのポリイミド樹脂被覆の成膜形態は特に制限はなく、基材の形状や用途に合わせ、適宜形成することができる。例えば、基材の全面、片面、両面、端面等に被覆を行ってもよく、また、基材全面又は一部分に被覆してもよい。
また、膜は単層でも多層でもよい。
<絶縁被覆材>
本発明の絶縁被覆材は、上記の本発明の絶縁被覆材用樹脂組成物よりなる樹脂層を有するものであり、特にその高耐熱性と耐屈曲性、更には耐摩耗性から、電線・ケーブル絶縁被覆材、低温貯蔵タンク、宇宙断熱材又は集積回路等のエナメルコーティング材等として好適に用いることができる。
本発明の絶縁被覆材用樹脂組成物により被覆する金属の種類には特に制限はないが、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、鉄や、これらの金属の1種又は2種以上を含む合金が挙げられる。
本発明の絶縁被覆材用樹脂組成物よりなる樹脂被覆層は、前述のポリイミドフィルムの成膜方法と同様にして形成することができ、通常1~200μm程度の厚さに形成される。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限又は下限の好ましい値としての意味をもつものであり、好ましい範囲は前記した上限又は下限の値と、下記実施例の値又は実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
〔評価方法〕
以下の実施例・比較例で得られたポリイミド樹脂前駆体、絶縁被覆材用樹脂組成物及びポリイミドフィルムは以下の方法により評価した。
[イミド化率]
ポリイミド樹脂前駆体のH-NMR測定から、アミック酸部分のアミドプロトン及び主鎖骨格中の芳香族プロトンを定量することによりイミド化率を求めた。具体的には、ポリイミド樹脂前駆体をトリメチルシラン(TMS)入りDMSO-dに溶解させた溶液を試料に使用し、TMSをリファレンスピーク(0ppm)として以下の計算式よりイミド化率を算出した。
イミド化率(mol%)=(B/2)/A×100
(上式においてAは芳香族プロトン(7~8ppm)のピーク積分値を、ポリアミック酸の繰り返し単位中に含まれる芳香族プロトンの数で割った値であり、Bはアミック酸構造部分のアミドプロトン(10~11ppm)の積分値である。)
[重量平均分子量(Mw)]
ポリイミド樹脂前駆体の重量平均分子量(Mw)は、以下に示すGPC法によって求めた。
ポリイミド樹脂前駆体を、りん酸0.03mol/L、塩化リチウム0.01mol/Lの濃度で溶解したN,N-ジメチルアセトアミド溶液を希釈液に用いて0.2重量%の濃度に希釈し、Viscotek TDAmax(Spectris製)を用いて上記希釈液を展開溶剤として測定し、ポリスチレン換算することで重量平均分子量(Mw)を求めた。カラムにはTSKgel SuperAWM-H(東ソー製)2本とTSKgel SuperAW2500(東ソー製)1本を使用し、カラム及び検出器の温度は共に40℃とした。流速は0.5mL/minとした。
[粘度]
粘度は、Brookfield製B型粘度計、DV-I+を用いて、30℃における回転粘度を測定した。
[耐屈曲性(引張伸度)及び耐摩耗性(引張弾性率)]
<好適態様1の実施例及び比較例>
JIS K6301に準じ、幅10mm、長さ80mm、厚み約30μmの短冊状としたポリイミドフィルムの試験片を、引張試験機〔オリエンテック社製、製品名「テンシロンUTM-ポリイミド樹脂-100」〕を用いて、チャック間距離30mm、引張速度10mm/分にて引張試験を実施し、応力-歪曲線を作成し、引張弾性率(MPa)を求めると共に、試験片が破断した時点での伸び率を測定し、引張伸度(%)とした。この引張弾性率が大きい程耐摩耗性に優れる。また、この引張伸度が大きい程、柔軟性に優れ、耐屈曲性(屈曲追従性)に優れると評価される。
<好適態様2の実施例及び比較例>
上記の好適態様1の実施例及び比較例の引張弾性率と引張伸度の測定において、ポリイミドフィルムの厚みを後掲の表2に示す厚みとしたこと以外は、同様にして引張弾性率と引張伸度を測定した。
[耐熱性(ガラス転移温度)]
動的熱機械測定装置(SIIナノテクノロジー株式会社製、DMS/SS6100)を用い、下記の測定条件にてサンプルの振動荷重に対するサンプルの貯蔵弾性率、損失弾性率を測定し、損失正接よりガラス転移温度(Tg)を求めた。即ち、ポリイミドフィルムの試験片の貯蔵弾性率(E’)を損失弾性率(E”)で除した損失正接(tanδ)のピークトップをガラス転移温度(Tg)と定義した。このガラス転移温度(Tg)は、ポリイミド樹脂のガラス転移温度(Tg)に相当し、Tgが高いほど耐熱性に優れたものと評価される。
(DMS測定条件)
測定温度範囲:50℃~400℃(昇温速度:3℃/min)
引張り加重:5g
試験片形状:6mm×20mm
〔使用原料〕
実施例及び比較例のポリイミド樹脂前駆体組成物の製造に使用した原料は以下の通りである。
3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA):三菱ケミカル株式会社製
4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(ODA):和歌山精化工業株式会社製
4,4’-ジアミノベンズアニリド(DABA):和歌山精化工業株式会社製
N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc):三菱ガス化学株式会社製
1,3-ビス(4,5-ジヒドロ-2-オキサゾリル)ベンゼン(1,3-BDOB):東京化成工業株式会社製
ポリビニルピロリドンK-30(PVP K-30、分子量45,000):第一工業製薬株式会社製
〔好適態様1の合成例、実施例及び比較例〕
[ポリイミド樹脂前駆体の合成]
<合成例1>
窒素ガス導入管、冷却器、攪拌機を備えた4つ口フラスコに、BPDA63.5重量部、ODA 44.4重量部、DMAc 491重量部を加えた。この混合物を撹拌しながら昇温し、80℃で6時間反応させて、固形分濃度18重量%のポリイミド樹脂前駆体組成物PI-1を得た。得られたポリイミド樹脂前駆体の重量平均分子量は55,320で、イミド化率は9.4%であった。また、得られたポリイミド樹脂前駆体組成物PI-1の粘度は1,220mPa・sであった。
なお、ここで、固形分濃度は、ポリイミド樹脂前駆体濃度に該当し、原料の使用量から求められる値である。
絶縁被覆材用樹脂組成物中のポリイミド樹脂前駆体濃度は、表1~4に記載した濃度となるように、添加剤を調製した。以下の合成例でも同様である。
[絶縁被覆材用樹脂組成物の調製]
表1に示す配合組成に従って、絶縁被覆材用樹脂組成物PI-1-1~PI-1-8(実施例用)及びPI-1-9~PI-1-12(比較例用)を調製した。なお、表1に示すポリイミド樹脂前駆体使用量は、ポリイミド樹脂前駆体組成物中のポリイミド樹脂前駆体の重量部を示す。
[ポリイミドフィルムの作製]
PI-1~PI-12の絶縁被覆材用樹脂組成物をスピンコーター用いてガラス板に塗布し、ホットプレートを用いて室温から500℃まで昇温し、500℃で6分間加熱して硬化させて、ガラス板-ポリイミド樹脂被覆の積層体を得た。該積層体を室温に戻した後、90℃の熱湯に積層体を浸漬し、ガラスとフィルムを剥離した。続いて、フィルムを100℃のイナート乾燥機で60分間乾燥することにより、表1に示す膜厚のポリイミドフィルムを得た。
得られたポリイミドフィルムの評価結果を表1に示す。
Figure 0007247604000009
〔好適態様2の合成例、実施例及び比較例〕
[ポリイミド樹脂前駆体の合成]
<合成例2>
窒素ガス導入管、冷却器、攪拌機を備えた4つ口フラスコに、BPDA 33.1重量部、ODA17.2重量部、DABA 6.5重量部、DMAc 259重量部を加えた。この混合物を撹拌しながら昇温し、80℃で6時間反応させ、固形分濃度18重量%のポリイミド樹脂前駆体組成物PI-2を得た。得られたポリイミド樹脂前駆体の重量平均分子量は138,300で、イミド化率は8.4%であった。また、得られたポリイミド樹脂前駆体組成物PI-2の粘度は3,500mPa・sであった。
このポリイミド樹脂前駆体PI-2は、BPDA 100mol%に、ODA 75mol%とDABA 25.0mol%を反応させたものであり、水素結合形成モノマー導入量であるDABA導入量は25mol%である。
<合成例3>
窒素ガス導入管、冷却器、攪拌機を備えた4つ口フラスコに、BPDA 11.8重量部、ODA7.4重量部、DABA 9.4重量部、DMAc 71.5重量部を加えた。この混合物を撹拌しながら昇温し、80℃で6時間反応させ、固形分濃度22重量%のポリイミド樹脂前駆体組成物3(PI-3)を得た。得られたポリイミド樹脂前駆体の重量平均分子量は132,300であり、イミド化率は18.8%であった。また、得られたポリイミド樹脂前駆体組成物3の粘度は10400mPa・sであった。
このポリイミド樹脂前駆体3は、BPDA 100mol%に、ODA 90.0mol%とDABA 10.0mol%を反応させたものであり、水素結合形成モノマー導入量であるDABA導入量は10mol%である。
<合成例4>
窒素ガス導入管、冷却器、攪拌機を備えた4つ口フラスコに、BPDA 11.0重量部、ODA5.4重量部、DABA 2.6重量部、DMAc 67.2重量部を加えた。この混合物を撹拌しながら昇温し、80℃で6時間反応させ、固形分濃度22重量%のポリイミド樹脂前駆体組成物4(PI-4)を得た。得られたポリイミド樹脂前駆体の重量平均分子量は156,700であり、イミド化率は16.7%であった。また、得られたポリイミド樹脂前駆体組成物4の粘度は15100mPa・sであった。
このポリイミド樹脂前駆体4は、BPDA 100mol%に、ODA 70.0mol%とDABA 30.0mol%を反応させたものであり、水素結合形成モノマー導入量であるDABA導入量は30mol%である。
[絶縁被覆材用樹脂組成物の調製]
表2~4に示す配合組成に従って、絶縁被覆材用樹脂組成物PI-2-1~PI-2-10、PI-3-1~PI-3-6及びPI-4-1~PI-4-6(実施例用)及びPI-2-11~PI-2-14、PI-3-7~PI-3-10及びPI-4-7~PI-4-10(比較例用)を調製した。なお、表2~4に示すポリイミド樹脂前駆体の使用量は、ポリイミド樹脂前駆体組成物中のポリイミド樹脂前駆体の重量部を示す。
[ポリイミドフィルムの作製]
PI-2-1~PI-2-14、PI-3-1~PI-3-10及びPI-4-1~PI-4-10の絶縁被覆材用樹脂組成物をスピンコーター用いてガラス板に塗布し、ホットプレートを用いて室温から500℃まで昇温し、500℃で6分間加熱して硬化させて、ガラス板-ポリイミド樹脂被覆の積層体を得た。該積層体を室温に戻した後、90℃の熱湯に積層体を浸漬し、ガラスとフィルムを剥離した。続いて、フィルムを100℃のイナート乾燥機で60分間乾燥することにより、表2~4に示す膜厚のポリイミドフィルムを得た。
得られたポリイミドフィルムの評価結果を表2~4に示す。
Figure 0007247604000010
Figure 0007247604000011
Figure 0007247604000012
表1~表4より明らかなように、ポリイミド樹脂前駆体に、本発明の範囲内でオキサゾリン環を有するヘテロ環化合物を添加した実施例の絶縁被覆材用樹脂組成物から得られたポリイミドフィルムは高い耐熱性を有すると共に引張伸度が大きく、耐屈曲性に優れる。
これに対して、オキサゾリン環を有するヘテロ環化合物を添加していない比較例では、引張伸度が小さく、屈曲追従性に劣るか、または加熱、硬化中に生じる内部応力にフィルムが耐えられず、十分な強度を有するフィルムが得られない。オキサゾリン環を有するヘテロ環化合物の添加量が多過ぎる比較例では、むしろ引張伸度が低下しており、耐屈曲性が損なわれていることが分かる。

Claims (10)

  1. テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物の反応により得られたポリイミド樹脂前駆体と、オキサゾリン環を有するヘテロ環化合物とを含む絶縁被覆材用樹脂組成物であって、
    該テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物の反応により得られたポリイミド樹脂前駆体テトラカルボン酸二無水物モノマー相当部に対して該オキサゾリン環を、0.01mol%以上10mol%以下含む、絶縁被覆材用樹脂組成物。
  2. 前記オキサゾリン環を有するヘテロ環化合物が、オキサゾリン環を2個以上有する化合物である、請求項1に記載の絶縁被覆材用樹脂組成物。
  3. 前記ポリイミド樹脂前駆体のイミド化率が1mol%以上35mol%以下である、請求項1又は2に記載の絶縁被覆材用樹脂組成物。
  4. 前記絶縁被覆材用樹脂組成物の焼成膜のガラス転移点が、250℃以上400℃以下である、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の絶縁被覆材用樹脂組成物。
  5. 前記ポリイミド樹脂前駆体が、下記式(1)及び式(2)で表される構造単位の少なくとも一方を有する、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の絶縁被覆材用樹脂組成物。
    Figure 0007247604000013
  6. 前記ポリイミド樹脂前駆体が、下記式(3)で表される構造単位を有する、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の絶縁被覆材用樹脂組成物。
    Figure 0007247604000014
    (式(3)中、
    ~Rはそれぞれ互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のフルオロアルキル基又は水酸基であり、
    Xは直接結合、酸素原子、硫黄原子、炭素数1以上4以下のアルキレン基、スルホニル基、スルフィニル基、スルフィド基、カルボニル基、エステル基、アミド基又は2級アミノ基であり、
    nは0以上4以下の整数である。)
  7. 前記ポリイミド樹脂前駆体が、下記式(5)で表される構造と、-NH-、=NH、-C(O)NH-、-NHC(=O)O-、-NHC(O)NH-、-NHC(S)NH-、-NH、-OH、-C(O)OH、-SH、-C(O)N(OH)-、-(O)S(O)-、-C(O)-及び-C(O)SHからなる群から選ばれる少なくとも1種の構造を含む繰り返し単位を有する、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の絶縁被覆材用樹脂組成物。
    Figure 0007247604000015
    (上記式(5)中、Rはテトラカルボン酸残基、Rはジアミン残基を表す。)
  8. 前記ポリイミド樹脂前駆体が、-C(O)NH-構造を含む繰り返し単位を有する、請求項7に記載の絶縁被覆材用樹脂組成物。
  9. 前記-C(O)NH-構造が、4,4’-ジアミノベンズアニリドに由来する構造である、請求項8に記載の絶縁被覆材用樹脂組成物。
  10. 請求項1乃至9のいずれか1項に記載の絶縁被覆材用樹脂組成物からなる樹脂層を少なくとも有する、絶縁被覆材。
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