JP7246248B2 - 抗血栓性材料、及び抗血栓性材料の使用方法 - Google Patents

抗血栓性材料、及び抗血栓性材料の使用方法 Download PDF

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Description

本発明は、抗血栓性材料、及び当該抗血栓性材料の使用方法に関する。
近年、各種の高分子材料を利用した医用用材料の検討が進められており、人工腎臓用膜、血漿分離用膜、カテーテル、ステント、人工肺用膜及び人工血管等への利用が期待されている。このような医療用材料として用いられる高分子材料は、生体にとっては異物として、生体内組織や血液と接触させて使用されるため、生体適合性を有していることが要求される。
このような生体適合性を有し、医療用材料として適した種々の高分子材料が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
国際公開第2004/087228号 特開2003-192727号公報
このような状況において、新規な抗血栓性材料が求められている。
本発明者らは、特定の構成単位を有する熱可塑性樹脂が、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の[1]~[]を提供する。
[1]下記式(1)及び(2)
Figure 0007246248000001
の少なくとも一方で表されるモノマーに由来する構成単位を有するポリマーであり、
示差走査熱量計測定において、-60℃以上0℃未満の温度範囲で発熱ピークを有し、且つ、
水に対する下限臨界共溶温度(LCST)を有するポリマー
を含む、抗血栓性材料。
[2]前記抗血栓性材料が、血液と接触する部材の構成材料として用いられる、上記[1]に記載の抗血栓性材料。
[3]前記示差走査熱量計測定における、前記発熱ピークの発熱量が1.0J/g以上である、上記[1]又は[2]に記載の抗血栓性材料。
[4]前記ポリマーの数平均分子量(Mn)が、5,000~300,000である、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載の抗血栓性材料。
[5]前記ポリマーの分子量分布(Mw/Mn)(ただし、Mwは当該ポリマーの重量平均分子量であり、Mnは当該ポリマーの数平均分子量である)が、10以下である、上記[1]~[4]のいずれか一項に記載の抗血栓性材料。
[6]前記抗血栓性材料から形成した部材を、細胞シートの表面と接触させて用いられる、上記[1]~[5]のいずれか一項に記載の抗血栓性材料。
[7]上記[1]~[6]のいずれか一項に記載の抗血栓性材料を用いて形成された部材を血液と接触させる、抗血栓性材料の使用方法。
[8]上記[1]~[6]のいずれか一項に記載の抗血栓性材料から、細胞シートの構成部材の一つである層を形成し、当該層の表面上で細胞を培養する、抗血栓性材料の使用方法。
[9]培養した細胞を、冷却によって、前記層を除去し、培養した細胞を回収する、上記[8]に記載の抗血栓性材料の使用方法。
本発明の好適な一態様の抗血栓性材料は、生体適合性及び温度応答性の少なくとも1つに優れており、より好適な一態様の抗血栓性材料としては、生体適合性及び温度応答性のいずれにも優れている。
実施例1で調製したポリマー(I)のDSC測定による昇温曲線である。
〔抗血栓性材料〕
本発明の抗血栓性材料は、上記式(1)及び(2)の少なくとも一方で表されるモノマーに由来する構成単位を有し、下記要件(I)及び(II)を満たすポリマーを含む。
・要件(I):示差走査熱量計測定において、-60℃以上0℃未満の温度範囲で発熱ピークを有する。
・要件(II):水に対する下限臨界共溶温度(LCST)を有する。
要件(I)は、本発明の抗血栓性材料に含まれる前記ポリマーが、「中間水」と呼ばれる状態の水を含水していることを規定したものである。
一般的に、ポリマーを含む抗血栓性材料を、水と接触し得る環境下で使用した場合に、抗血栓性材料の表面近傍では、抗血栓性材料に含まれるポリマーからの相互作用を受けて抗血栓性材料の表面に水が吸着される。ポリマーからの相互作用を受けない水は、通常0℃で凍結又は融解するが、この吸着された水は、ポリマーからの相互作用により、-60℃でも凍結しないため「不凍水」とも呼ばれている。
一方で、上記の「中間水」は、抗血栓性材料の表面近傍に吸着している不凍水よりも、抗血栓性材料の表面からわずかに離れた範囲に存在している。そのため、この「中間水」は、抗血栓性材料に含まれるポリマーの相互作用を受けるため、0℃では凍結又は融解しないが、その相互作用の力は不凍水よりは小さく、-60℃以上0℃未満の範囲で凍結又は融解する性質を有する。
つまり、前記ポリマーは、上記要件(I)を満たすため、上述の「中間水」を含水したものであり、本発明の抗血栓性材料は、このような「中間水」を含水したポリマーを含むものである。
上述の「中間水」を含水したポリマーを含む抗血栓性材料は、血栓の発生を効果的に抑制し得、優れた生体適合性を有することが、様々な検討の中で分かった。そのような効果を奏する理由としては、以下のように考えられる。
血液中に含まれる最大成分である水であり、一般的な抗血栓性材料に血液を接触させた場合には、血液中の水が、抗血栓性材料に含まれるポリマーの相互作用により、抗血栓性材料の表面近傍に吸着されるという現象が起こり易い。そして、その吸着された水が、さらに血液中のタンパク質と接触した場合に、タンパク質が表面近傍の水に吸着されることで血栓が生じるのではないかと考えられる。
一方で、本発明の抗血栓性材料に含まれるポリマーは、上述の「中間水」を含水しているため、当該抗血栓性材料を血液と接触させた際、血液中のタンパク質は、抗血栓性材料の表面近傍に接触する前に、中間水と接触するため、抗血栓性材料の表面に生じ得る血栓を抑制し得ると推測される。
つまり、本発明の抗血栓性材料に含まれるポリマーは、上記要件(I)を満たし、上述の「中間水」を含水したものであるため、当該抗血栓性材料を血液と接触する部材の構成材料として用いた場合においても、血栓の発生を効果的に抑制し得る。そのため、本発明の抗血栓性材料は、優れた生体適合性を有するものである。
なお、上記要件(I)で規定する前記発熱ピークの発熱量は、好ましくは1.0J/g以上、より好ましくは5.0J/g以上、更に好ましくは10.0J/g以上、より更に好ましくは15.0J/g以上、特に好ましくは20.0J/g以上であり、また、好ましくは50J/g以下である。
本明細書において、上記要件(I)で規定する示差走査熱量計測定の測定条件は、後述の実施例に記載されたとおりである。
また、本発明の抗血栓性材料に含まれる前記ポリマーは、上記要件(II)で規定するとおり、水に対する下限臨界共溶温度(LCST)を有する。
水に対する下限臨界共溶温度(LCST)とは、ポリマーを水に溶解させてなる水溶液について、その温度より高いと当該水溶液が2つの液相に分離し、その温度より低いと当該水溶液が単一液相として存在する温度を意味する。
そして、上記要件(II)で規定する下限臨界共溶温度(LCST)の測定条件は、後述の実施例に記載されたとおりである。
水に対する下限臨界共溶温度(LCST)を有するポリマーを含む抗血栓性材料は、水と接触させた際に、下限臨界共溶温度(LCST)以下まで冷却することで、水に溶解させ得るという性質を有する。
本発明の抗血栓性材料は、このような性質を有するため、所定の処理を行う際には形状を維持させつつも、当該処理終了後に不要となった際には、下限臨界共溶温度(LCST)以下での冷却を行うことで、容易に除去することができるという、優れた温度応答性も発現し得る。
本発明の一態様において、前記ポリマーの下限臨界共溶温度(LCST)は、好ましくは4~80℃、より好ましくは5~60℃、更に好ましくは7~40℃である。
<ポリマーの構成>
本発明の抗血栓性材料に含まれる前記ポリマーは、上記要件(I)及び(II)を満たすように調製する観点から、前記式(1)及び(2)の少なくとも一方で表されるモノマーに由来する構成単位を有する。
Figure 0007246248000002
上記式(1)で表されるモノマー(以下、「モノマー(i)」ともいう)は、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピルアクリレート(2HBAc)である。また、上記式(2)で表されるモノマー(以下、「モノマー(ii)」ともいう)は、α-ヒドロキシイソブチロキシエチルアクリレート(HBEAc)である。
前記ポリマーは、モノマー(i)又は(ii)に由来する構成単位のみを有する単独重合体であってもよく、モノマー(i)及び(ii)に由来する構成単位を共に有する共重合体であってもよい。
モノマー(i)に由来する構成単位の含有量は、上記要件(I)及び(II)を満たすように調製する観点から、前記ポリマーの構成単位の全量(100質量%)に対して、好ましくは10~100質量%、より好ましくは30~100質量%、更に好ましくは50~100質量%、より更に好ましくは70~100質量%、特に好ましくは90~100質量%である。
モノマー(ii)に由来する構成単位の含有量は、上記要件(I)及び(II)を満たすように調製する観点から、当該ポリマーの構成単位の全量(100質量%)に対して、好ましくは10~100質量%、より好ましくは30~100質量%、更に好ましくは50~100質量%、より更に好ましくは70~100質量%、特に好ましくは90~100質量%である。
なお、本発明の一態様において、前記ポリマーが、モノマー(i)及び(ii)に由来する構成単位を共に有する共重合体である場合、モノマー(i)に由来する構成単位と、モノマー(ii)に由来する構成単位との含有量比〔(i)/(ii)〕は、上記要件(I)及び(II)を満たすように調製する観点から、質量比で、好ましくは5/95~95/5、より好ましくは10/90~90/10、更に好ましくは15/85~85/15、より更に好ましくは20/80~80/20である。
本発明の一態様において、前記ポリマーは、モノマー(i)及び(ii)以外の他のモノマーに由来する構成単位を有していてもよい。
ただし、モノマー(i)及び(ii)に由来する構成単位の合計含有量は、上記要件(I)及び(II)を満たすように調製する観点から、前記ポリマーの構成単位の全量(100質量%)に対して、好ましくは10~100質量%、より好ましくは30~100質量%、更に好ましくは50~100質量%、より更に好ましくは70~100質量%、特に好ましくは90~100質量%である。
本発明の一態様において、前記ポリマーの数平均分子量(Mn)は、上記要件(I)及び(II)を満たすように調製する観点から、好ましくは5,000~300,000、より好ましくは6,000~100,000、更に好ましくは7,000~60,000、より更に好ましくは8,000~50,000、特に好ましくは10,000~45,000である。
また、本発明の一態様において、前記ポリマーの分子量分布(Mw/Mn)は、上記と同様の観点から、好ましくは10以下、より好ましくは8以下、更に好ましくは7以下、より更に好ましくは5以下であり、また、好ましくは1.01以上である。
なお、Mw及びMnは、それぞれ、当該ポリマーの重量平均分子量及び数平均分子量である。
また、本明細書において、ポリマーの重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、実施例に記載の方法に基づいて測定された値を意味する。
<他の成分>
本発明の一態様の抗血栓性材料は、本発明の効果を損なわない範囲で、前記ポリマー以外の他の有効成分を含有していてもよい。
本明細書において、「有効成分」とは、抗血栓性材料に含まれる希釈溶媒を除いた成分を意味する。
前記ポリマー以外の他の有効成分としては、例えば、抗酸化剤、紫外線吸収剤、滑剤、流動性調節剤、離型剤、帯電防止剤、光拡散剤等の添加剤や、ガラス繊維、炭素繊維、粘土化合物等の無機フィラー等が挙げられる。
本発明の一態様の抗血栓性材料において、他の有効成分の含有量としては、当該抗血栓性材料に含まれる前記ポリマー100質量部に対して、好ましくは0~50質量部、より好ましくは0~25質量部、更に好ましくは0~10質量部、より更に好ましくは0~2質量部である。
また、本発明の一態様の抗血栓性材料の形態は、特に限定されず、前記ポリマーと共に希釈溶媒を含む溶液の形態であってもよく、当該溶媒を基材等の表面に塗布してなる塗膜の形態であってもよく、当該塗膜を乾燥してなるシート状物の形態であってもよい。
なお、本発明の一態様の抗血栓性材料が上記溶液の形態である場合、当該溶液中の前記ポリマーの含有量(ポリマー濃度)としては、当該溶液の全量(100質量%)に対して、好ましくは0.001~60質量%、より好ましくは0.01~45質量%、更に好ましくは0.03~30質量%、より更に好ましくは0.05~10質量%である。
また、本発明の一態様の抗血栓性材料が上記溶液の形態である場合、希釈溶媒としては、前記ポリマーを溶解し得る溶媒であればよく、例えば、水や、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン(THF)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、シクロヘキサン、n-ヘキサン、トルエン、キシレン等の有機溶媒が挙げられる。
これらの希釈溶媒は、単独で用いてもよく、2種以上を併用した混合溶媒であってもよい。
〔抗血栓性材料の製造方法〕
本発明の一態様の抗血栓性材料の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、以下の工程(1)~(2)を有する方法であることが好ましい。
・工程(1):少なくとも前記モノマー(i)又は(ii)を含む原料モノマーを重合させて、重合反応物を得る工程。
・工程(2):工程(1)で得た重合反応物を、水に接触させ、前記ポリマーを得る工程。
工程(1)での重合体の重合方法としては、特に制限は無く、例えば、前記原料モノマーと重合開始剤のみを用いた塊状重合による方法であってもよく、重合開始剤及び溶媒を用いた溶液重合、懸濁重合、及び乳化重合等による方法であってもよい。また、これらの重合方法において、必要に応じて、連鎖移動剤を用いてもよい。
用いる溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類や、テトラヒドロフラン(THF)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、トルエン、アセトン等の有機溶媒が挙げられ、また、水であってもよい。
これらの溶媒は、単独で用いてもよく、2種以上を併用した混合溶媒であってもよい。
工程(1)で得た重合反応物は、その重合過程で、水を取り込んでいる場合には、上記要件(1)を満たす前記ポリマーとなっている場合もある。
ただし、工程(2)によって、重合反応物から、上記要件(1)を満たす前記ポリマーに容易に調製することができる。
工程(2)における、前記重合化合物を水に接触させる方法としては、水を構成成分とする液体を用いて、前記重合化合物を当該液体に接触させる方法が挙げられ、水を構成成分とする液体としては、例えば、リン酸緩衝食塩水、生理食塩水、血液、水等が挙げられる。これらの中でも、本発明の一態様において、前記重合化合物を水に接触させる方法としては、血液中に含まれる水と接触させる方法が好ましい。
このようにして、前記重合化合物を水に接触させて、上述の「中間水」を含水させることで、上記要件(1)を満たす前記ポリマーを調製できる。
なお、工程(2)は、工程(1)で重合反応物を得た後に、他の工程を経ずに行ってもよく、その場合には、工程(2)で得た前記ポリマーに、必要に応じて、上述の他の有効成分や、希釈溶媒を加えて、抗血栓性材料を調製することができる。
また、工程(1)で重合反応物を得た後、工程(2)を経ずに、重合反応物に、必要に応じて、上述の他の有効成分や希釈溶媒を加えて組成物を調製し、当該組成物からシート状物等の成形品を製造し、この成形品を使用しながら、同時に工程(2)を経てもよい。つまり、使用時に、この成形品を水と接触させて、成形品に含まれる重合反応物に「中間水」を含水させて前記ポリマーとすることもできる。
〔抗血栓性材料の用途、使用方法〕
本発明の一態様の抗血栓性材料は、血栓の発生を効果的に抑制し得、優れた生体適合性を有する。そのため、本発明の一態様の抗血栓性材料は、血液と接触する部材の構成材料として用いられることが好ましく、具体的には、血液浄化膜、人工腎臓用膜、血漿分離用膜、人工肺用膜、人工血管、カテーテル、歯科材料、細胞シート等の構成材料として好適に使用し得る。
また、本発明の一態様の抗血栓性材料は、上述のとおり、所定の温度以下とすることで容易に除去し得、優れた温度応答性も有する。そのため、本発明の一態様の抗血栓性材料は、細胞シートの構成材料として好適に使用し得る。
細胞シートは、一般的に、基材フィルム上に、温度応答性ポリマーを含む層を有するシートであって、細胞の培養に使用されるシートである。具体的には、細胞シートの当該層上にて細胞を培養した後、温度処理によって、当該層を溶解させて、培養した細胞を回収することができる。
本発明の一態様の抗血栓性材料は、細胞を培養するための、上記層の構成材料として使用されることが好ましい。培養した細胞を回収する際には、下限臨界共溶温度(LCST)以下に冷却することで、容易に回収することができる。
本発明の一態様の抗血栓性材料が、上記特性を有していることを考慮すると、本発明は、下記[1]及び[2]の使用方法も提供し得る。
・[1]上述の抗血栓性材料を用いて形成された部材を血液と接触させる、抗血栓性材料の使用方法。
・[2]上述の抗血栓性材料から、細胞シートの構成部材の一つである層を形成し、当該層の表面上で細胞を培養する、抗血栓性材料の使用方法。
上記[1]及び[2]の使用方法における、抗血栓性材料の構成については、上述のとおりである。
また、上記[2]の使用方法において、細胞を培養した、本発明の抗血栓性材料から形成された層は、下限臨界共溶温度(LCST)以下の冷却によって、溶解する。そのため、上記[2]の使用方法において、培養した細胞を、冷却によって、前記層を除去し、培養した細胞を回収することが好ましい。
以下に本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に何らの制限を受けるものではない。なお、実施例中の測定値は以下の方法あるいは装置を用いて測定した。
(重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn))
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用い、テトラヒドロフランを展開溶媒として、既知の分子量(分子量分布=1)の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。この検量線に基づいてGPCのリテンションタイムから、Mw及びMnを算出した。
(DSC測定における発熱ピークの発熱量の測定)
下記の実施例1及び2で調製したポリマー(I)又は(II)を測定試料として用いた。なお、当該測定試料の質量を予め測定した。
DSC装置(エスアイアイ・ナノテクノロジーズ株式会社製、製品名「EXSTAR X-DSC7000」)を用いて、窒素流量50mL/分、5.0℃/分の条件で、下記(i)~(iii)の順序による温度プログラムにて温度変化した際のDSC曲線を得た。
(温度プログラム)
・(i)25℃から、降温速度5.0℃/分にて、-100℃まで冷却。
・(ii)-100℃で5分間保持。
・(iii)-100℃から、昇温速度5.0℃/分にて、50℃まで加熱。
(i)及び(iii)の温度変化の際のDSC曲線において、-60℃以上0℃未満の温度範囲での「発熱ピーク」の有無を確認し、発熱ピークを有する場合には、当該発熱ピークから発熱量を算出した。
実施例1
前記式(1)で表されるモノマーである2-ヒドロキシ-2-メチルプロピルアクリレート(2HBAc)15gを、溶媒である1,4-ジオキサン60gに溶解させ、これに、重合開始剤であるアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を、2HBAcに対して0.1質量%相当量添加し、窒素雰囲気下にて、75℃で6時間かけて、加熱攪拌しながら、ラジカル重合反応を進行させた。反応終了後の反応液を、貧溶媒であるテトラヒドロフラン(THF)とヘキサンの混合溶媒(THF/ヘキサン=1/1(質量比)中に滴下して、重合反応物を析出させ取り出した後、当該重合反応物を水中にて7日間浸して膨潤させ、ポリマー(I)を得た。
得られたポリマー(I)は、前記式(1)で表されるモノマーに由来する構成単位を有するものであり、数平均分子量(Mn)は38,100、分子量分布(Mw/Mn)は4.68であった。
また、当該ポリマー(I)について、DSC測定を行ったところ、図1に示すように、-60℃以上0℃未満の温度範囲での「発熱ピーク」の存在が確認され、当該発熱ピークから算出した発熱量は「42.4J/g」であった。
そして、後述の各試験に用いるために、上記ポリマー(I)を0.02g秤量し、メタノール10mLに溶解させてなるメタノール溶液と、上記ポリマー(I)を4℃の水に溶解させてなる濃度1.0質量%の水溶液を、それぞれ抗血栓性材料として調製した。
実施例2
前記式(2)で表されるモノマーであるα-ヒドロキシイソブチロキシエチルアクリレート(HBEAc)15gを、溶媒である1,4-ジオキサン60gに溶解させ、これに、重合開始剤であるアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を、HBEAcに対して0.1重量%相当量添加し、窒素雰囲気下にて、75℃で6時間かけて、加熱攪拌しながら、ラジカル重合反応を進行させた。反応終了後の反応液を、貧溶媒であるテトラヒドロフラン(THF)とヘキサンの混合溶媒(THF/ヘキサン=1/1(質量比)中に滴下して、重合反応物を析出させ取り出した後、当該重合反応物を水中にて7日間浸して膨潤させ、ポリマー(II)を得た。
得られたポリマー(II)は、前記式(2)で表されるモノマーに由来する構成単位を有するものであり、数平均分子量(Mn)は15,800、分子量分布(Mw/Mn)は2.30であった。
また、当該ポリマー(II)について、DSC測定を行ったところ、-60℃以上0℃未満の温度範囲での「発熱ピーク」の存在が確認され、当該発熱ピークから算出した発熱量は「30.4J/g」であった。
そして、後述の各試験に用いるために、上記ポリマー(II)を0.02g秤量し、メタノール10mLに溶解させてなるメタノール溶液と、上記ポリマー(II)を4℃の水に溶解させてなる濃度1.0質量%の水溶液を、それぞれ抗血栓性材料として調製した。
実施例1及び2で得られたポリマー(I)及び(II)を用いて、以下の手順にて、「血小板の粘着試験」及び「温度応答性試験」を行った。これらの結果を表1に示す。
〔血小板の粘着試験〕
(1)コート被膜の形成
実施例1及び2で調製したポリマー(I)又は(II)を溶解させてなるメタノール溶液を、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂板の表面上に、スピンコートで塗布して、コート被膜を形成した。そして、当該被膜を形成した樹脂板から8mm角に切り出したものを試験サンプルとした。
(2)血小板溶液の調製
また、別に、クエン酸ナトリウムで抗凝固したヒト新鮮血液を、1500rpmで5分間遠心分離し、上澄みを多血小板血漿(platelet rich plasma:PRP)として回収した。そして、PRP回収後の残りの血液をさらに4000rpmで10分間遠心分離し、上澄みを乏血小板血漿(platelet poor plasma:PPP)として回収した。
回収したPRPをリン酸緩衝(phosphate buffered saline:PBS)溶液を用いて800倍に希釈したのち、血球計算板を用いてPRP中の血小板濃度の確認を行った。血小板濃度が既知の上記PRPを、回収したPPPを用いて希釈し、血小板濃度が4×10cells/mLの血小板懸濁液を調製した。
(3)血小板の粘着試験
試験サンプルのコート被膜の表面に、上記の血小板懸濁液を200μL滴下し、37℃にて1時間静置した。その後、試験サンプルを、PBSにて2回洗浄した後、1質量%のグルタルアルデヒド溶液に浸漬し、37℃にて2時間固定した。固定後、試験サンプルをPBSに10分間、PBS/水=1/1(体積比)の混合液に8分間、水に8分間、及び、さらに別に用意した水に8分間浸漬させて洗浄し、室温にて風乾した。
そして、洗浄後の試験サンプルのコート被膜の表面を、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、各試験サンプルに粘着した単位面積あたりの血小板数を測定した。なお、血小板の形態変化の進行度により、1型、2型及び3型に分類して、下記式で定義される「モルフォロジカルスコア(MS)」をそれぞれ算出した。
MS=n1×1+n2×2+n3×3
(式中、n1は1型の血小板数、n2は2型の血小板数、n3は3型の血小板数を表す。)
また、コート被膜を形成していないPET樹脂板についても、上記と同様の処理により、表面に血小板を粘着し、粘着した単位面積あたりの血小板数を測定し、MSを算出した。
そして、PET樹脂板のMSに対する、各試験サンプルのMSの比〔試験サンプルのMS/PET樹脂板のMS〕を算出し、血小板の粘着性を評価した。
(温度応答性試験)
常圧(10Pa)下で、実施例1及び2で調製したポリマー(I)又は(II)を溶解させてなる水溶液について、4℃から40℃まで昇温した場合、及び、40℃から4℃まで降温した場合における、波長500nmでの光透過率の変化を、紫外可視分光光度計により測定した。
そして、水溶液を昇温もしくは降温する過程において、光透過率が80%以上変化した際の温度を「下限臨界共溶温度(LCST)」とした。
Figure 0007246248000003
表1より、実施例1及び2で調製した、DSC測定で-60℃以上0℃未満の温度範囲で発熱ピークを有するポリマーを含む抗血栓性材料は、血小板の粘着を抑制する効果が非常に高いことが分かる。

Claims (7)

  1. 下記式(1)及び(2)
    Figure 0007246248000004
    の少なくとも一方で表されるモノマーに由来する構成単位を有するポリマーであり、
    示差走査熱量計測定において、-60℃以上0℃未満の温度範囲で発熱ピークを有し、且つ、
    水に対する下限臨界共溶温度(LCST)を有するポリマー
    を含み、細胞シートの構成部材として用いられる、抗血栓性材料。
  2. 前記抗血栓性材料が、血液と接触する部材の構成材料として用いられる、請求項1に記載の抗血栓性材料。
  3. 前記示差走査熱量計測定における、前記発熱ピークの発熱量が1.0J/g以上である、請求項1又は2に記載の抗血栓性材料。
  4. 前記ポリマーの数平均分子量(Mn)が、5,000~300,000である、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗血栓性材料。
  5. 前記ポリマーの分子量分布(Mw/Mn)(ただし、Mwは当該ポリマーの重量平均分子量であり、Mnは当該ポリマーの数平均分子量である)が、10以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の抗血栓性材料。
  6. 請求項1~のいずれか一項に記載の抗血栓性材料から、細胞シートの構成部材の一つである層を形成し、当該層の表面上で細胞を培養する、抗血栓性材料の使用方法。
  7. 培養した細胞を、冷却によって、前記層を除去し、培養した細胞を回収する、請求項に記載の抗血栓性材料の使用方法。
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