JP7245439B2 - ガラス物品の製造方法及び製造装置 - Google Patents

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Description

本発明は、溶融ガラスを成形してガラス物品を製造する方法及び装置に関する。
周知のように、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイには、板ガラスが使用される。
特許文献1には、板ガラスを製造するための装置が開示されている。板ガラス製造装置は、溶融ガラスの供給源となる溶解槽と、溶解槽の下流側に設けられた清澄槽と、清澄槽の下流側に設けられた攪拌槽と、攪拌槽の下流側に設けられた成形装置とを備える。溶解槽、清澄槽、攪拌槽、及び成形装置は、それぞれ連絡流路によって接続されている。
清澄槽、攪拌槽、及びこれらを接続する連絡流路は、白金材料(白金又は白金合金)により構成される容器である。これらの白金材料容器は、その外表面に乾燥被膜が形成されており、耐火物材料からなる保持部材によって被覆されている。乾燥被膜と保持部材との間には、アルミナキャスタブルが充填される。アルミナキャスタブルは、適当量の水が添加されて水性スラリーとされ、乾燥被膜と保持部材との間に充填される。アルミナキャスタブルは、乾燥によって固化することで白金材料容器を固定する。
特開2010-228942号公報
ところで、板ガラス製造装置は、操業前に、溶解槽、清澄槽、攪拌槽、成形装置、連絡流路の各構成要素を個別に分離した状態で予備加熱される(以下「予熱工程」という)。予熱工程では、白金材料容器が温度上昇によって膨張する。白金材料容器が十分に膨張した後に、各構成要素を接続することで、板ガラス製造装置が組み立てられる。その後、溶解槽で生成された溶融ガラスが、清澄槽、攪拌槽、連絡流路を通じて成形装置に供給され、板ガラスとして成形される。
上記の予熱工程では、白金材料容器が膨張するが、特許文献1に記載の製造装置では、固化したアルミナキャスタブルによって当該白金材料容器が耐火レンガ等の保持部材に固定されている。このため、白金材料容器の膨張が阻害され、当該容器に大きな熱応力が作用し、破損や変形の要因となるおそれがあった。
本発明は上記の事情に鑑みて為されたものであり、予熱工程において白金材料容器を好適に膨張させることが可能なガラス物品の製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
本発明は上記の課題を解決するためのものであり、耐火レンガで被覆された白金材料製で長尺状の移送容器によって溶融ガラスを移送し、前記溶融ガラスを成形してガラス物品を製造する方法において、前記移送容器と前記耐火レンガとの間に、流動可能な粉末と、圧縮変形可能な層状部材とを介在させる充填工程と、前記充填工程後に前記移送容器を加熱する予熱工程と、を備え、前記予熱工程では、前記移送容器の熱膨張に伴って前記粉末を流動させるとともに前記層状部材を圧縮変形させることを特徴とする。
かかる構成によれば、予熱工程において、流動可能な粉末が潤滑材として作用することから、移送容器が長手方向に膨張することが許容される。また、移送容器が半径方向に膨張すると、層状部材が圧縮変形によって収縮するので、移送容器の半径方向の膨張によって粉末に作用する圧力が増加することを抑制できる。これにより、移送容器が半径方向に膨張しても、粉末は好適に流動できると共に、移送容器が長手方向に膨張する際の粉末との摩擦力の増加が抑制される。したがって、移送容器を長手方向に沿って好適に膨張させることができる。
前記層状部材は、セラミックペーパーにより構成され得る。セラミックペーパーは可撓性を有するため、充填工程において、耐火レンガや移送容器の形状に応じて変形させることで、当該層状部材を容易に設置できる。また、セラミックペーパーは好適な圧縮変形性を有するので、移送容器を長手方向に沿ってより好適に膨張させることができる。
前記充填工程では、前記層状部材は、前記耐火レンガに接触するように配置されてもよい。これにより、充填工程において、層状部材を耐火レンガに容易に設置することができる。層状部材は、耐火レンガに支持されることで、予熱工程中に位置ずれを生じることもない。加えて、耐火レンガの種別によっては予熱工程中に収縮するものもあり、耐火レンガが半径方向内方に収縮した場合であっても、層状部材を圧縮変形させることで、移送容器の半径方向及び長手方向への好適な膨張を確保できる。
本発明に係るガラス物品の製造方法は、前記予熱工程後に、前記移送容器を加熱しつつ、前記移送容器の内部に前記溶融ガラスを通過させる溶融ガラス供給工程を備え、前記溶融ガラス供給工程中に、前記粉末を拡散接合させることにより、前記移送容器を前記耐火レンガに固定する接合体を形成してもよい。
かかる構成によれば、予熱工程において粉末を流動させることで移送容器の長手方向への膨張を促すことができ、その後の溶融ガラス供給工程では、当該粉末を拡散接合させてなる接合体によって移送容器を固定することで、当該移送容器の変形及び位置ずれを防止できる。これにより、溶融ガラスを安定的に移送できる。
本発明に係るガラス物品の製造方法は、前記予熱工程後に、前記移送容器を加熱しつつ、前記移送容器の内部に前記溶融ガラスを通過させる溶融ガラス供給工程を備え、前記溶融ガラス供給工程中に、前記粉末をガラス化させることにより、ガラス層を形成してもよい。
かかる構成によれば、白金材料製の移送容器をガラス層で覆うことで、当該移送容器に接触する酸素の量を低減できる。これにより、移送容器の酸化、昇華による消耗を可及的に低減できる。
本発明は上記の課題を解決するためのものであり、白金材料製で長尺状の移送容器と、前記移送容器を被覆する耐火レンガとを備えるガラス物品の製造装置であって、前記移送容器と前記耐火レンガとの間に、流動可能な粉末から形成される機能層と、圧縮変形可能な層状部材とが介在することを特徴とする。
本発明によれば、予熱工程において白金材料容器を好適に膨張させることが可能になる。
ガラス物品の製造装置を示す側面図である。 清澄槽の断面図である。 図2のIII-III線断面図である。 ガラス物品の製造方法のフローチャートを示す。 充填工程を示す断面図である。 充填工程を示す断面図である。 充填工程の他の例を示す断面図である。 予熱工程を示す断面図である。 予熱工程を示す断面図である。
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。図1乃至図9は、本発明に係るガラス物品の製造方法及び製造装置の一実施形態を示す。
図1に示すように、本実施形態に係るガラス物品の製造装置は、上流側から順に、溶解槽1と、清澄槽2と、均質化槽(攪拌槽)3と、ポット4と、成形体5と、これらの各構成要素1~5を連結するガラス供給路6a~6dとを備える。この他、製造装置は、成形体5により成形された板ガラスGR(ガラス物品)を徐冷する徐冷炉(図示せず)及び徐冷後に板ガラスGRを切断する切断装置(図示せず)を備える。
溶解槽1は、投入されたガラス原料を溶解して溶融ガラスGMを得る溶解工程を行うための容器である。溶解槽1は、ガラス供給路6aによって清澄槽2に接続されている。
清澄槽2は、溶融ガラスGMを移送しながら清澄剤等の作用により脱泡する清澄工程を行うための容器である。清澄槽2は、ガラス供給路6bによって均質化槽3に接続されている。
図2及び図3に示すように、清澄槽2は、溶融ガラスGMを上流から下流へと移送する中空状の移送容器7と、移送容器7を被覆する耐火レンガ8a,8bと、この耐火レンガ8a,8bの端部を閉塞する蓋体9と、移送容器7と耐火レンガ8a,8bとの間に介在する接合体10及び層状部材11a,11bと、を備える。
移送容器7は、白金材料(白金又は白金合金)によって管状に構成されるが、この構成に限定されず、内部に溶融ガラスGMが通過する空間を有する構造体であればよい。移送容器7は、管状部12と、当該管状部12の両端部に設けられるフランジ部13とを備える。
管状部12は、円管状にされるが、この構成に限定されない。管状部12の内径は、100mm以上300mm以下とされることが望ましい。管状部12の肉厚は、0.3mm以上3mm以下とされることが望ましい。管状部12の長さは、300mm以上10000mm以下とされることが望ましい。これらの寸法は、上記の範囲に限定されず、溶融ガラスGMの種別、温度、製造装置の規模等に応じて適宜設定される。
なお、管状部12は、必要に応じ、溶融ガラスGM中に発生するガスを排出するためのベント部(通気管)を備えてもよい。また、管状部12は、溶融ガラスGMが流れる方向を変更するための仕切り板(邪魔板)を備えてもよい。
フランジ部13は、円形に構成されるが、この形状に限定されない。フランジ部13は、例えば深絞り加工により管状部12と一体的に形成される。フランジ部13は、電源装置(図示なし)に接続される。清澄槽2の移送容器7は、各フランジ部13を介して管状部12に電流を流すことで生じる抵抗加熱(ジュール熱)によって、当該管状部12の内部を流れる溶融ガラスGMを加熱する。
耐火レンガ8a,8bは、高ジルコニア系耐火物、ジルコン系耐火物、溶融シリカ系耐火物又はアルミナ系耐火物により構成されるが、この材質に限定されない。なお、高ジルコニア系耐火物とは、質量%で80~100%のZrO2を含むものをいう。図2及び図3に示すように、耐火レンガ8a,8bは、複数の耐火レンガによって構成され、図例では第一耐火レンガ8a及び第二耐火レンガ8bによって構成される。第一耐火レンガ8aは、管状部12を下側から支持する。第二耐火レンガ8bは、管状部12の上部を被覆する。なお、第一耐火レンガ8a及び第二耐火レンガ8bは、その長手方向において、さらに複数の耐火レンガに分割されてもよい。
第一耐火レンガ8a及び第二耐火レンガ8bは、管状部12の外周面12aを被覆するための面(以下「被覆面」という)14a,14bと、互いに当接する面(以下「当接面」という)15a,15bと、を有する。なお、被覆面14a,14bは、管状部12の外周面12aを保持する機能も有する。
図3に示すように、被覆面14a,14bは、管状部12の外周面12aを被覆すべく、断面視において円弧状の曲面により構成される。被覆面14a,14bの曲率半径は、管状部12の外周面12aとの間に隙間(接合体10及び層状部材11a,11bの収容空間)が形成されるように、当該外周面12aの半径よりも大きく設定される。被覆面14a,14bと管状部12の外周面12aとの間隔(外周面12aの半径と被覆面14a,14bの曲率半径との差)は、3mm以上が好ましく、より好ましくは7.5mm以上に設定される。管状部12のクリープ変形防止の観点から、この間隔は、50mm以下に設定されることが好ましく、20mm以下に設定されることがより好ましい。
第一耐火レンガ8aの当接面15aと第二耐火レンガ8bとの当接面15bとを接触させた状態では、各耐火レンガ8a,8bの被覆面14a、14bによって、管状部12を被覆する円筒面が構成される(図3参照)。
蓋体9は、耐火レンガ8a,8bと同様に、例えば高ジルコニア系耐火物、ジルコン系耐火物、溶融シリカ系耐火物又はアルミナ系耐火物により構成されるが、この材質に限定されない。蓋体9は、複数に分割されており、各分割体を組み合わせることによって、円板状(円環状)に構成される。蓋体9は、厚さ方向における一方の面が耐火レンガ8a,8bの長手方向端部に当接することで、当該端部を閉塞する。
接合体10は、原料となる粉末P(後述の図5等参照)を、移送容器7の管状部12と耐火レンガ8a,8bとの間に充填した後に、加熱によって拡散接合させることにより構成される。拡散接合とは、粉末同士を接触させ、接触面間に生じる原子の拡散を利用して接合する方法をいう。このような接合体10は、流動可能な粉末Pから形成される機能層であり、層状部材11a,11bと一体化して管状部12を耐火レンガ8a,8bに固定する。
粉末Pとしては、例えば、アルミナ粉末とシリカ粉末とを混合したものを使用できる。この場合、融点が高いアルミナ粉末を主成分とすることが望ましいが、これに限らずシリカ粉末を主成分としてもよい。上記の構成に限らず、粉末Pは、アルミナ粉末、シリカ粉末の他、ジルコニア粉末、イットリア粉末その他の各材料粉末を単体で使用し、或いは複数種の粉末を混合することにより構成され得る。
粉末Pの平均粒径は、例えば0.01~5mmとすることができる。予熱工程での粉末Pの潤滑作用を向上させる観点から、粉末Pは、平均粒径が0.8mm以上である骨材を含むことが好ましい。骨材の平均粒径は、例えば5mm以下とすることができる。粉末Pが骨材を含む場合、粉末Pに対する骨材の含有量は、例えば25質量%~75質量%とすればよく、骨材を除いた粉末Pの平均粒径は、例えば0.01~0.6mmとすればよい。例えば、粉末Pがアルミナ粉末とシリカ粉末からなる場合、アルミナ粉末の一部又はシリカ粉末の一部を骨材とすればよい。
本発明において、「平均粒径」は、レーザー回折法で測定した値を指し、レーザー回折法により測定した際の体積基準の累積粒度分布曲線において、その積算量が粒子の小さい方から累積して50%である粒径を表す。
粉末Pは、1300℃以上で接合体10の形成によって清澄槽2の移送容器7を耐火レンガ8a,8bに固定するように調合され、換言すると、1300℃以上で粉末P同士の拡散接合が活性化するように調合される。例えば粉末Pが、アルミナ粉末とシリカ粉末との混合粉末である場合、当該粉末Pの拡散接合が活性化する温度は、その混合比を調整することにより適宜設定できる。アルミナ粉末とシリカ粉末との混合比は、例えばアルミナ粉末が90wt%、シリカ粉末が10wt%とされるが、これに限定されない。
粉末Pの他の例として、90wt%以上のシリカ粉末を含むものを使用することができる。この粉末Pでは、例えばシリカ粉末が93wt%、アルミナ粉末が4wt%、残部が他の粉末により構成されるものが望ましいが、この混合比に限定されない。この粉末Pを使用した場合には、1500℃以上に加熱されることでガラス化が進展する。この粉末Pは、最終的に全て又は大部分がガラス化することで、ガラス層となる。
層状部材11a,11bは、可撓性を有するシート状に構成されるとともに、その厚さ方向に圧縮変形可能に構成される。層状部材11a,11bは、例えばセラミックペーパーにより構成される。セラミックペーパーは、例えばセラミック繊維の織布又は不織布であり、ジルコニアペーパーやアルミナペーパーが好適に使用される。層状部材11a,11bの圧縮変形前の厚さTb(mm)は、常温での被覆面14a,14bと管状部12の外周面12aとの間隔D(mm)に対する比(Tb/D)で、0.1~0.5とされることが好ましい。さらに、予熱工程S2における層状部材11a,11bの圧縮変形後の厚みTa(mm)は、層状部材11a,11bの圧縮変形前の厚さTb(mm)に対する比(Ta/Tb)で、0.5~0.9に設定されることが好ましい。上述の厚さの層状部材11a,11bを構成するため、薄いセラミックペーパー等を複数枚積層して用いてもよい。層状部材11a,11bの気孔率は、70~99%とされることが好ましい。層状部材11a,11bの密度は、例えば0.1~1.0g/cmとすることができる。
図2及び図3に示すように、層状部材11a,11bは、耐火レンガ8a,8bの被覆面14a,14bに接触するように配置される。層状部材11a,11bは、第一耐火レンガ8aの被覆面14aに接触する第一層状部材11aと、第二耐火レンガ8bの被覆面14bに接触する第二層状部材11bとを含む。層状部材11a,11bは、その可撓性により、平板状の状態から被覆面14a,14bの湾曲面の形状に沿うように湾曲状に変形できる。本実施形態では、各層状部材11a,11bの面積は、各被覆面14a,14bの面積と等しくされているが、この構成に限定されない。例えば被覆面14a,14bの面積よりも小さな面積を有する複数の層状部材11a,11bを被覆面14a,14bに対して並設してもよい。
本実施形態において、第一層状部材11aの厚さと第二層状部材11bの厚さとは等しくされているが、これに限らず、各層状部材11a,11bの厚さを異ならせてもよい。この場合、例えば移送容器7の下方に位置する第一層状部材11aを第二層状部材11bよりも厚くすることができる。
均質化槽3は、清澄された溶融ガラスGMを攪拌し、均一化する工程(均質化工程)を行うための白金材料製の移送容器である。均質化槽3の移送容器は、底付きの管状容器であり、その外周面は耐火レンガ(図示なし)で被覆される。均質化槽3は、攪拌翼を有するスターラ3aを備える。均質化槽3は、ガラス供給路6cによってポット4に接続されている。
ポット4は、溶融ガラスGMを成形に適した状態に調整する状態調整工程を行うための容器である。ポット4は、溶融ガラスGMの粘度調整及び流量調整のための容積部として例示される。ポット4は、ガラス供給路6dによって成形体5に接続されている。
成形体5は、オーバーフローダウンドロー法によって溶融ガラスGMを板状に成形する。詳細には、成形体5は、断面形状(図1の紙面と直交する断面形状)が略楔形状を成しており、この成形体5の上部には、オーバーフロー溝(図示せず)が形成されている。
成形体5は、溶融ガラスGMをオーバーフロー溝から溢れ出させて、成形体5の両側の側壁面(紙面の表裏面側に位置する側面)に沿って流下させる。成形体5は、流下させた溶融ガラスGMを側壁面の下頂部で融合させる。これにより、帯状の板ガラスGRが成形される。帯状の板ガラスGRは、後述の徐冷工程S7及び切断工程S8に供され、所望寸法の板ガラスとされる。
このようにして得られた板ガラスは、例えば、厚みが0.01~10mmであって、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどのフラットパネルディスプレイ、有機EL照明、太陽電池などの基板や保護カバーに利用される。成形体5は、スロットダウンドロー法などの他のダウンドロー法を実行するものであってもよい。本発明に係るガラス物品は、板ガラスGRに限定されず、ガラス管その他の各種形状を有するものを含む。例えば、ガラス管を形成する場合には、成形体5に代えてダンナー法を利用する成形装置が配備される。
板ガラスの組成としては、ケイ酸塩ガラス、シリカガラスが用いられ、好ましくはホウ珪酸ガラス、ソーダライムガラス、アルミノ珪酸塩ガラス、化学強化ガラスが用いられ、最も好ましくは無アルカリガラスが用いられる。ここで、無アルカリガラスとは、アルカリ成分(アルカリ金属酸化物)が実質的に含まれていないガラスのことであって、具体的には、アルカリ成分の重量比が3000ppm以下のガラスのことである。本発明におけるアルカリ成分の重量比は、好ましくは1000ppm以下であり、より好ましくは500ppm以下であり、最も好ましくは300ppm以下である。
各ガラス供給路6a~6dは、溶解槽1、清澄槽2、均質化槽(攪拌槽)3、ポット4及び成形体5をその順に連結する。各ガラス供給路6a~6dは、白金材料製の移送容器を備える。
以下、上記構成の製造装置によってガラス物品(板ガラスGR)を製造する方法について説明する。図4に示すように、本方法は、充填工程S1、予熱工程S2、組立工程S3、溶解工程S4、溶融ガラス供給工程S5、成形工程S6、徐冷工程S7、及び切断工程S8を備える。
充填工程S1では、清澄槽2に粉末Pを充填する。例えば図5に示すように、清澄槽2の移送容器7を被覆する第一耐火レンガ8aと第二耐火レンガ8bとを上下に離間させた状態で、第一耐火レンガ8aの被覆面14aに接触するように第一層状部材11aを配置する。また、第二耐火レンガ8bの被覆面14bに接触するように第二層状部材11bを配置する。
次に、第一耐火レンガ8aの被覆面14a(第一層状部材11a)と、移送容器7の管状部12の外周面12aとの間に粉末Pを充填する。その後、図6に示すように、第二耐火レンガ8bの当接面15bを第一耐火レンガ8aの当接面15aに当接させる。このとき、第一層状部材11a及び第二層状部材11bは、管状部12の全周を覆うように円筒状となる。そして、外周面12aの上側の部分と、第二耐火レンガ8bの被覆面14b(第二層状部材11b)との間の空間に、粉末Pを充填する。その後、耐火レンガ8a,8bの端部を蓋体9により閉塞する。
図7は充填工程S1の他の例を示す。本例では、第二層状部材11bは、第一構成部材11cと第二構成部材11dとを備える。本例における充填工程S1では、第一耐火レンガ8aの被覆面14a(第一層状部材11a)と、移送容器7の管状部12の外周面12a(下側部分)との間に粉末Pを充填した後、外周面12aの上側部分を覆うように粉末Pを載せる。その後、この粉末Pに、第二層状部材11bの第一構成部材11cを被せる。そして、第二構成部材11dによって外周面12aの上側の粉末Pを被覆する。第一構成部材11c及び第二構成部材11dによって粉末Pを押さえることで、当該粉末Pの外周面12aからの脱落を防止できる。その後、第二層状部材11b(第一構成部材11c、第二構成部材11d)の上に、第二耐火レンガ8bの被覆面14bを被せる。第二耐火レンガ8bの当接面15bが第一耐火レンガ8aの当接面15aに接触することにより(図6参照)、本例の充填工程S1が終了する。
予熱工程S2では、製造装置の構成要素1~5,6a~6dを個別に分離した状態で、これらを昇温する。以下、予熱工程S2の例として、清澄槽2を加熱する場合を説明する。
予熱工程S2では、清澄槽2の移送容器7を昇温するため、フランジ部13を介して管状部12に電流を流す。これによって移送容器7が加熱され、管状部12は、その軸心方向(長手方向)及び半径方向に膨張する。このとき、各耐火レンガ8a,8bと管状部12との間に充填された粉末Pは、粉末状態を維持しており、管状部12と耐火レンガ8a,8bとの間の空間において、流動(移動)可能である。このような粉末Pが潤滑材として作用することにより、各管状部12は、熱応力を発生させることなく膨張できる。
図8及び図9は、管状部12が半径方向に膨張する態様を示す清澄槽2の部分断面図である。図8に示すように、予熱工程S2において、管状部12は二点鎖線及び矢印で示すように半径方向外方に膨張しようとする。この場合、粉末P及び第一層状部材11aに作用する圧力が増加する。
図9に示すように、第一層状部材11aは、管状部12の膨張により粉末Pに押圧されることで、その厚みが減少するように圧縮変形(収縮)する(収縮態様を二点鎖線、矢印及び実線で示す)。このように、層状部材11a,11bが収縮することで、管状部12は、粉末Pに作用する圧力を増加させることなく膨張できる。これにより、粉末Pは好適に流動できる。また、管状部12が長手方向に膨張する際に、粉末Pとの摩擦力の増加が抑制される。したがって、管状部12は、半径方向に膨張しつつ、長手方向にも好適に膨張できる。
場合によっては、第一層状部材11aは、圧縮変形後に粉砕され、体積がさらに減少する。この場合でも、粉末Pとの摩擦力の増加が抑制されるので、管状部12は、半径方向に膨張しつつ、長手方向にも好適に膨張できる。
本発明者の知見によれば、耐火レンガ8a,8bとして高ジルコニア系耐火物を用いた場合、予熱工程S2において移送容器7の温度が1100℃に到達すると、当該耐火レンガ8a,8bが収縮する現象が確認されている。この場合、耐火レンガ8a,8bが移送容器7の半径方向内方に収縮することで、移送容器7は、粉末Pを介して圧縮されることになる。このような場合であっても、層状部材11a,11bを圧縮変形させることで、移送容器7は、半径方向及び長手方向に好適に膨張できる。
管状部12が所定の温度(例えば1200℃以上かつ粉末Pの拡散接合が活性化する温度未満)にまで到達すると、予熱工程S2が終了し、組立工程S3が実行される。組立工程S3では、溶解槽1、清澄槽2、均質化槽3、ポット4、成形体5、及びガラス供給路6a~6dを接続することで、製造装置が組み立てられる。
溶解工程S4では、溶解槽1内に供給されたガラス原料が加熱され、溶融ガラスGMが生成される。なお、立ち上げ期間の短縮のため、組立工程S3以前に溶解槽1内で予め溶融ガラスGMを生成してもよい。
溶融ガラス供給工程S5では、溶解槽1の溶融ガラスGMを、各ガラス供給路6a~6dを介して、清澄槽2、均質化槽3、ポット4、そして成形体5へと順次移送する。
組立工程S3直後の溶融ガラス供給工程S5(製造装置の立ち上げ時)において、清澄槽2及び各ガラス供給路6a~6dは、管状部12への通電によって昇温し続ける。さらに、清澄槽2及びガラス供給路6a~6dは、高温の溶融ガラスGMが清澄槽2及び各ガラス供給路6a~6dの管状部12を通過することによっても昇温する。この昇温に伴い、清澄槽2に充填された粉末Pも昇温する。
この昇温によって、粉末Pの拡散接合が活性化する。この際、粉末Pの温度は、1400℃以上1700℃以下とすればよい。
本実施形態では、粉末P中のアルミナ粉末同士、及びアルミナ粉末とシリカ粉末との間で、拡散接合が発生する。また、アルミナ粉末とシリカ粉末とによりムライトが発生する。ムライトは、アルミナ粉末同士を強固に接合する。時間の経過とともに拡散接合が進行し、最終的に、粉末Pは一個又は複数個の接合体10となる。接合体10は、層状部材11a,11bと一体化し、管状部12及び耐火レンガ8a,8bと密着することで、耐火レンガ8a,8bに対する管状部12の移動を阻害する。このため、管状部12は、耐火レンガ8a,8bに固定される。接合体10は、板ガラスGRの製造が終了するまでの間、耐火レンガ8a,8bとともに管状部12を支持し続ける。なお、粉末Pが全て接合体10となるまでに要する時間は、二十四時間以内であることが望ましいが、この範囲に限定されない。
シリカ粉末が主成分である(90wt%以上含まれる)粉末Pを使用した場合、当該粉末Pは、予熱工程S2において流動可能な状態を維持する。これにより、粉末Pは、移送容器7の半径方向の膨張に応じて層状部材11a,11bを圧縮変形させる。また、粉末Pは、移送容器7の長手方向の膨張に応じて流動する。
溶融ガラス供給工程S5において、この粉末Pは、1500℃以上に加熱されると、ガラス化を進展させる。全ての粉末Pがガラス化すると、移送容器7の管状部12を被覆するガラス層(機能層)が形成される。このガラス層(機能層)は、管状部12に接触する酸素の量を低減する。これにより、管状部12の酸化、昇華による消耗を可及的に低減できる。
溶融ガラス供給工程S5において、溶融ガラスGMが清澄槽2の移送容器7内を流通する際、ガラス原料には清澄剤が配合されていることから、この清澄剤の作用により溶融ガラスGMからガス(泡)が除去される。また、均質化槽3において、溶融ガラスGMは、攪拌されて均質化される。溶融ガラスGMがポット4、ガラス供給路6dを通過する際には、その状態(例えば粘度や流量)が調整される。
成形工程S6では、溶融ガラス供給工程S5を経て溶融ガラスGMが成形体5に供給される。成形体5は、溶融ガラスGMをオーバーフロー溝から溢れ出させ、その側壁面に沿って流下させる。成形体5は、流下させた溶融ガラスGMを下頂部で融合させることで、板ガラスGRを成形する。
その後、板ガラスGRは、徐冷炉による徐冷工程S7、切断装置による切断工程S8を経て、所定寸法に形成される。或いは、切断工程S8で板ガラスGRの幅方向の両端を除去した後に、帯状の板ガラスGRをロール状に巻き取ってもよい(巻取工程)。以上により、ガラス物品(板ガラスGR)が完成する。
以上説明した本実施形態に係るガラス物品の製造方法によれば、予熱工程S2において、清澄槽2の移送容器7は、耐火レンガ8a,8bとの間に充填される拡散接合可能な粉末P又はガラス化可能な粉末Pによって支持される。移送容器7の管状部12が膨張する場合には、この粉末Pは、各管状部12の膨張を阻害しないように、各管状部12と耐火レンガ8a,8bとの間において移動(流動)できる。また、予熱工程S2において移送容器7が半径方向に膨張する場合、その膨張によって層状部材11a,11bを圧縮変形(収縮)させることで、粉末Pに作用する圧力を低減する。これにより、粉末Pは好適に流動できると共に、長手方向に膨張する際に移送容器7に働く摩擦力の増加を抑制できる。その結果、予熱工程S2において、移送容器7を好適に所期の長さまで膨張させることができる。
また、溶融ガラス供給工程S5中は、粉末Pが拡散接合によって接合体10として構成されることで、当該接合体10と耐火レンガ8a,8bとによって、各管状部12を移動しないように確実に固定できる。また、粉末Pをガラス化させ、ガラス層を形成することで、各管状部12の酸化、昇華による消耗を低減できる。
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、上記した作用効果に限定されるものでもない。本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
上記実施形態では、組立工程S3後に粉末Pを拡散接合させる例を示したが、本発明はこの態様に限定されない。予熱工程S2中に移送容器7の膨張が許容されている限り、粉末Pの一部が予熱工程S2中に拡散接合してもよい。
上記実施形態では、清澄槽2が備える移送容器7に本発明を適用したが、ガラス供給路6a~6dが備える移送容器に本発明を適用してもよい。また、均質化槽3が備える移送容器に本発明を適用してもよい。内部を流通する溶融ガラスGMの温度が高温になる程、移送容器に発生する熱応力によって破損や変形が顕著となる。つまり、内部を流通する溶融ガラスGMの温度が高温である移送容器に本発明を適用すれば、移送容器の破損や変形を防止する効果がより顕著となる。このため、溶解槽1と清澄槽2を接続するガラス供給路6a、清澄槽2、清澄槽2と均質化槽3を接続するガラス供給路6b、均質化槽3、及び、均質化槽3とポット4を接続するガラス供給路6cに本発明を適用することが好ましく、ガラス供給路6a及び清澄槽2に適用することがより好ましい。
上記実施形態の清澄槽2及びガラス供給路6a~6dは、一つの移送容器によって構成されるが、複数の移送容器によって構成されてもよい。後者の場合、複数の移送容器を突き合わせて接続することによって所望の長さの移送容器が形成される。
上記の実施形態では、移送容器7と耐火レンガ8a,8bとの間に拡散接合可能な粉末Pを充填して予熱工程S2を行う例を示したが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、移送容器7の耐火レンガ8a,8bとの間に、拡散接合によって接合体10を形成しない粉末、具体的にはガラス粉末、セラミック粉末等の流動可能な粉末を充填材として介在させてもよい。
7 移送容器
8a 第一耐火レンガ
8b 第二耐火レンガ
10 接合体(機能層)
11a 第一層状部材
11b 第二層状部材
GM 溶融ガラス
GR ガラス物品(板ガラス)
P 粉末
S1 充填工程
S2 予熱工程
S5 溶融ガラス供給工程

Claims (6)

  1. 耐火レンガで被覆された白金材料製で長尺状の移送容器によって溶融ガラスを移送し、前記溶融ガラスを成形してガラス物品を製造する方法において、
    前記移送容器と前記耐火レンガとの間に、流動可能な粉末と、圧縮変形可能な層状部材とを介在させる充填工程と、
    前記充填工程後に前記移送容器を加熱する予熱工程と、を備え、
    前記予熱工程では、前記移送容器の熱膨張に伴って前記粉末を流動させるとともに前記層状部材を圧縮変形させることを特徴とするガラス物品の製造方法。
  2. 前記層状部材は、セラミックペーパーにより構成される請求項1に記載のガラス物品の製造方法。
  3. 前記充填工程では、前記層状部材は、前記耐火レンガに接触するように配置される請求項1又は2に記載のガラス物品の製造方法。
  4. 前記予熱工程後に、前記移送容器を加熱しつつ、前記移送容器の内部に前記溶融ガラスを通過させる溶融ガラス供給工程を備え、
    前記溶融ガラス供給工程中に、前記粉末を拡散接合させることにより、前記移送容器を前記耐火レンガに固定する接合体を形成する請求項1から3のいずれか一項に記載のガラス物品の製造方法。
  5. 前記予熱工程後に、前記移送容器を加熱しつつ、前記移送容器の内部に前記溶融ガラスを通過させる溶融ガラス供給工程を備え、
    前記溶融ガラス供給工程中に、前記粉末をガラス化させることにより、ガラス層を形成する請求項1から3のいずれか一項に記載のガラス物品の製造方法。
  6. 白金材料製で長尺状の移送容器と、前記移送容器を被覆する耐火レンガとを備えるガラス物品の製造装置であって、
    前記移送容器と前記耐火レンガとの間に、流動可能な粉末から形成される機能層と、圧縮変形可能な層状部材とが介在することを特徴とするガラス物品の製造装置。

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