JP7243887B2 - 青色インクジェットインク及び錠剤 - Google Patents
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Description
従来技術のインクジェットインクには、印刷した文字や画像等が光変褪色するもの、即ち耐光性が低いものがある。インクジェットインクにおいて耐光性が低いと、可読性の低下や色味の変化が生じ得る。特に、鮮明な青色を呈するブリリアントブルーFCF(Brilliant Blue FCF)、所謂青色1号色素(FDA Name: FD & C Blue No.1, Color Index Name: Food Blue 2, CAS Number: 3844-45-9)は、耐光性が低い。このため、上記色素を含んだインクジェットインクは、色味のくすみや印字消えが生じ得る。
本実施形態に係る青色インクジェットインクは、以下のように定義される色味(色調)を持つインクである。
まず、印刷解像度が主走査方向600dpi、副走査方向(錠剤等記録媒体の搬送方向)600dpi、トータルノズル数2,656の圧電セラミック駆動のドロップオンデマンド型インクジェットヘッドを用い、1ドロップ12plの印刷ドロップ量で、重ね打ちなしで印刷したベタ塗りの画像を被印刷物上に作成する。
上記条件で測定したL*a*b*表色系で表される色調のうち、
b* ≦-5
の範囲に入る色味(色調)を、本実施形態における「青色」とし、
b* ≦-20
の範囲に入る色味(色調)を、本実施形態における「鮮明な青色」としている。
また、今回は青色印字の光学濃度の評価として、シアン色の光学濃度(C値)を用いた。このC値が0.5以上であれば、青色として視認十分な光学濃度を持つものとしている。
図1に示すように、本実施形態で用いたブリリアントブルーFCFは光によって変性し、色味が矢印(破線)の方向に変化する。そして、その色味変化の値が一定の数値を超えると、「光変褪色」として認識されると考えられる。つまり、ブリリアントブルーFCFは、図1に示す矢印(破線)の方向に光変褪色する。
ブリリアントブルーFCFもニューコクシンもインクジェットインクの色素として使われているものであるが、ブリリアントブルーFCFを単独で医療用錠剤用等のインクジェットインクの色素として用いた場合、そのインクでは印刷画像等の耐光性は不十分であった。具体的には、例えば120万ルクスの太陽光曝光試験において、ベタ印刷画像の変褪色ΔEが34程度であった。これは、印刷文字であれば目視にて変色が判断できてしまう状況である。
本実施形態の効果が発現する理由としては、ブリリアントブルーFCFの光変褪色時のL*a*b*表色系における変色方向と、ブリリアントブルーFCFとニューコクシンを混ぜた時のL*a*b*表色系における混色による色の変化の方向が一致したためと推測される。ブリリアントブルーFCFが光変褪色した際、周囲に同じ色を呈する光変褪色していないブリリアントブルーFCFとニューコクシンに混ざることで、見かけの色の変化を少なくしていると推測される。
また、ブリリアントブルーFCF及びニューコクシンを含む色素のインク全体に占める含有量の割合は、1質量%以上18質量%以下の範囲内であることが好ましい。含有量が1質量%未満であると、印刷画像の印字濃度が不十分であり、一方、含有量が18質量%を超えると、色素の溶解安定性が悪く、インク中で色素が固体として析出し、印刷時におけるインクジェットヘッドのノズル詰まり、所謂印刷再開性が低下する原因となりうる。
本実施形態に係る青色インクジェットインクに含まれる色材は、上述のようにブリリアントブルーFCF及びニューコクシンを必ず含むが、これら2種以外の色素については、可食性のものであれば特に制限はない。本実施形態に係る青色インクジェットインクに添加可能な色素は、例えば、従来公知の合成食用色素、天然食用色素から適宜選択して添加することができる。
本実施形態に係る青色インクジェットインクは、上述の色素以外に、上述の色素を分散させるために分散媒を含有してもよい。本実施形態に係る青色インクジェットインクに添加可能な分散媒としては、例えば、精製水、エタノール、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール300(平均分子量300)、1-プロパノール、2-プロパノール、乳酸エチルなどが挙げられる。特に配合割合は限定するものではないが、インクでのノズルでの乾燥を防止するために、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール300のいずれかを、インク中に1質量%以上30質量%以下の範囲内で含有させることがより好ましい。含有量が1質量%より少ないと、インクの乾燥が起こりやすくなりノズルの目詰まりの原因となり、30質量%を超えると医療用錠剤表面における印字表面の乾燥が遅くなりすぎ、印刷した錠剤同士が接触したときに未乾燥のインクがもう一方の錠剤に付着して汚れとなるといった不具合の原因となることがある。
本実施形態に係る青色インクジェットインクは、印刷方法について特に限定されず、市販のインクジェットプリンタ等のインクジェット装置を用いた印刷が可能である。このため、本実施形態に係るインクジェットインクは、応用範囲が広く、非常に有用である。例えば、本実施形態に係るインクジェットインクは、ピエゾ素子(圧電セラミックス)をアクチュエータとする、所謂ドロップオンデマンド方式のインクジェット装置で印刷し得るし、他の方式のインクジェット装置でも印刷し得る。
本実施形態では、本実施形態に係る青色インクジェットインクを、上述の印刷方法を用いて、例えば錠剤の表面に印字、印画してもよい。つまり、本実施形態に係る青色インクジェットインクであれば、例えば、医療用錠剤の表面にインクジェット印刷法を用いて施された印刷部、即ち印刷画像の耐光性を向上させることができる。以下、実施形態に係る青色インクジェットインクで印刷した印刷画像を備える錠剤の構成について説明する。
本実施形態に係る錠剤は、例えば、医療用錠剤である。ここで、「医療用錠剤」とは、例えば、素錠(裸錠)、糖衣錠、腸溶錠、口腔内崩壊錠などのほか、錠剤の最表面に水溶性表面層が形成されているフィルムコーティング錠などを含むものである。
図3は、印刷(印字、印画)がなされた医療用錠剤(フィルムコーティング錠)の一例を示す概略断面図である。図3には、断面視で、表面にフィルムコート層7が形成された錠剤の基材1の上面に文字などの印刷画像3が印刷されたフィルムコート錠印刷物9が示されている。
なお、本実施形態では、図4に示すように、素錠印刷画像11としてベタ画像を印刷してもよく、図5に示すように、フィルムコート錠印刷画像13として二次元バーコードを印刷してもよい。
本実施形態では、錠剤として医療用錠剤を例に挙げて説明したが、本発明のこれに限定されるものではない。本実施形態に係る青色インクジェットインクの印刷対象は特に制限されず、例えば、ヒト以外の動物(ペット、家畜、家禽等)に投与する錠剤、飼料、肥料、洗浄剤、ラムネ菓子などの食品といった各種錠剤の表面に印刷してもよい。また、本実施形態に係る青色インクジェットインクは、印刷対象のサイズについても特に制限されず、種々のサイズの錠剤について適用可能である。
(1)本実施形態に係る青色インクジェットインクは、可食性を有するインクジェットインクであって、色素として、ブリリアントブルーFCFと、ニューコクシンとを含んでいる。
このような構成であれば、従来技術と比較して、印字色を青色に保持しつつ、インクジェットインクの耐光性を向上させることができる。
(2)また、本実施形態に係る青色インクジェットインクに含まれるブリリアントブルーFCFとニューコクシンとの質量比(ブリリアントブルーFCFの質量:ニューコクシンの質量)は、1:0.025~1:2の範囲内であってもよい。
このような構成であれば、従来技術と比較して、印字色を青色に保持しつつ、インクジェットインクの耐光性をさらに向上させることができる。
このような構成であれば、従来技術と比較して、印字色を青色に保持しつつ、インクジェットインクの耐光性を確実に向上させ、且つ印刷再開性も向上させることができる。
(4)また、本実施形態に係る青色インクジェットインクは、錠剤表面への直接印刷、食品への直接印刷に用いられるものであってもよい。
このような構成であれば、従来技術と比較して、錠剤の表面等に直接印刷した印字等に発生する色味のくすみや印字消えを低減することができる。
このような構成であれば、従来技術と比較して、錠剤の表面等に直接印刷した印刷画像3等に発生する色味のくすみや印字消えを低減することができる。
(6)また、本実施形態に係る錠剤5は、医療用錠剤であってもよい。
このような構成であれば、従来技術と比較して、医療用錠剤の表面に直接印刷した印刷画像3等に発生する色味のくすみや印字消えを低減することができる。
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明は、実施例により何ら限定されるものではない。
青色1号色素(ブリリアントブルーFCF)と赤色102号色素(ニューコクシン)とを含むインクを用いた素錠及びフィルムコーティング錠剤印刷品の製造、及び耐性試験。
(インクジェットインクの製造)
まず、印刷用インクを調製した。インクジェットインクは、色素、有機溶媒、水、内添樹脂、レベリング剤の各成分を含んでいる。調製の順序としては、最初に、水と有機溶媒とを混合して混合溶媒を得た。次に、その混合溶媒に、内添樹脂とレベリング剤とを添加して透明ベース液を得た。最後に、その透明ベース液に、色材を添加した。こうして、本実施例に係るインクを調製した。以下、具体的に各種成分について説明する。
レベリング剤は、インクジェットヘッドからの吐出ドロップが良好に形成できるように、インクの表面張力を調整する材料である。インクの表面張力は、具体的には、24mN/m~34mN/mの範囲内にあると好ましい。但し、錠剤の表層での濡れ性や内部への浸透性を考慮すると、なるべく小さな表面張力値、すなわち濡れ性の良い表面張力値を選択する必要がある。そこで、本実施例では、24mN/m~28mN/mの表面張力になるようにインクを調製した。なお、表面張力値は小さければ小さいほどよいわけではない。例えば、表面張力値が24mN/m未満では液滴にならず、ミスト不良やスプラッシュ現象(吐出の玉割れ)等、吐出不良を引き起こすことがある。
前述の透明ベース液に、それぞれに異なる量の青色1号色素、赤色102号色素を加え、インク(1)~(15)の15種類のインクを各100g得た。それぞれのインクの組成を表1に示す。
上記精製インクを用いて、ベンディングモードピエゾ式インクジェットヘッドを搭載したインクジェットプリンタにて、テスト用素錠(基剤:調整澱粉)及びフィルムコーティング錠(基剤:調整澱粉、コーティング剤:ヒドロキシプロピルメチルセルロース70%・酸化チタン30%の混合、直径:6.5mm)に円形のベタ画像(直径4.0mm)の印刷を行なった。この結果、各色で印刷された素錠及びフィルムコーティング錠印刷物を得た。
印刷した素錠及びフィルムコーティング錠印刷物のベタ画像の上面に置き、X-rite社製分光濃度計「X-rite530」で色調(L*a*b*表色系)および青色印字の光学濃度(C値)を測定する。なお、設定条件は、視野角が2°、光源がD50である。
色度及び光学色濃度を測定した素錠及びフィルムコーティング錠印刷物に対して、キセノンウェザーメーター(東洋精機製作所 Ci4000)を用いて累積120万ルクスの可視光を照射した。可視光を照射した素錠及びフィルムコーティング錠印刷物に対し再度可視光の照射前と同じ条件で分光光度計にて色度及び光学色濃度を測定し、色素の混合比による色度及び光学色濃度の試験前後の変化量の違いを比較した。比較した結果を表1に示した。結果として、青色1号色素1質量に対して赤色102号色素が0.025質量部以上2質量部以下の範囲内であれば、青色1号色素のみのインクに対して変褪色ΔEが23以下と少ないことが確認された。
以下、本実施例における印刷再開性の評価基準を、図8を参照しつつ説明する。
図8は、本実施例における印刷再開性の評価基準を説明するための概念図である。図8(a)は、本実施例における印刷再開性を評価するために用いたテストパターンを示している。このテストパターンは、図8(a)の横方向に伸びる直線と、図8(a)の縦方向に伸びる直線とで構成されており、各直線の線幅は0.5mmである。図8(b)は、インクを注入した直後におけるテストパターンの線幅W1を示している。図8(c)は、印刷を30分間停止し印刷を再開した直後における線幅W2をそれぞれ示している。本実施例では、図8(c)に示すように、印刷を30分間停止し印刷を再開した直後における線幅W2が、インクを注入した直後における線幅W1と比べて減少していない場合、あるいは線幅W1と比べて減少しているが、その減少率は10%以下である場合を「○」と評価した。
青色1号色素(ブリリアントブルーFCF)と赤色102号色素(ニューコクシン)とを含むインクを用いた素錠及びフィルムコーティング錠剤印刷品の製造、及び耐性試験
(インクジェットインクの製造)
まず、印刷用インクを調製した。インクジェットインクは、実施例1と同様に、色素、有機溶媒、水、内添樹脂、レベリング剤の各成分を含んでいる。調製の順序としては、最初に、水と有機溶媒とを混合して混合溶媒を得た。次に、その混合溶媒に、内添樹脂とレベリング剤とを添加して透明ベース液を得た。最後に、その透明ベース液に、色材を添加した。こうして、本実施例に係るインクを調製した。以下、具体的に各種成分について説明する。
前述の混合溶媒に、内添樹脂としてポリエチレングリコール1540(平均分子量が1540であるポリエチレングリコールの意)、続いてレベリング剤としてソルビタン酸脂肪酸エステル(製品名:「ポエムO-80V」理研ビタミン社製)を表2記載の量加え、1時間程度撹拌して透明ベース液を得た。
前述の透明ベース液に、それぞれに異なる量の青色1号色素、赤色102号色素を加え、インク(16)~(24)の9種類のインクを各100g得た。それぞれのインクの組成を表2に示す。
上記精製インクを用いて、ベンディングモードピエゾ式インクジェットヘッドを搭載したインクジェットプリンタにて、テスト用素錠(基剤:調整澱粉)及びフィルムコーティング錠(基剤:調整澱粉、コーティング剤:ヒドロキシプロピルメチルセルロース70%・酸化チタン30%の混合、直径:6.5mm)に円形のベタ画像(直径4.0mm)の印刷を行なった。この結果、各色で印刷された素錠及びフィルムコーティング錠印刷物を得た。
印刷した素錠及びフィルムコーティング錠印刷物のベタ画像の上面に置き、X-rite社製分光濃度計「X-rite530」で色調(L*a*b*表色系)および青色印字の光学濃度(C値)を測定する。なお、設定条件は、視野角が2°、光源がD50である。
色度及び光学色濃度を測定した素錠及びフィルムコーティング錠印刷物に対して、キセノンウェザーメーター(東洋精機製作所 Ci4000)を用いて累積120万ルクスの可視光を照射した。可視光を照射した素錠及びフィルムコーティング錠印刷物に対し再度可視光の照射前と同じ条件で分光光度計にて色度及び光学色濃度を測定し、色素の混合比による色度及び光学色濃度の試験前後の変化量の違いを比較した。
また、青色印字の光学濃度(C値)は印字色をシアン、マゼンタ、イエローの3色の光学濃度の組み合わせで表現する際、青色を示すシアンの光学濃度をX-rite社製分光濃度計「X-rite530」で測定したものである。
3:印刷画像
5:素錠印刷物
7:フィルムコート層
9:フィルムコート錠印刷物
11:素錠印刷画像(ベタ画像)
13:フィルムコート錠印刷画像(二次元バーコード)
Claims (6)
- 可食性を有するインクジェットインクにおいて、
色素として、ブリリアントブルーFCFと、ニューコクシンとを含み、
前記インクジェットインクの表面張力を24mN/m~34mN/mの範囲内とし、
前記ブリリアントブルーFCFと、前記ニューコクシンとの質量比(ブリリアントブルーFCFの質量:ニューコクシンの質量)は、1:0.025~1:2の範囲内であり、
前記色素の総質量が前記インクジェットインク全体の8質量%以上18質量%以下の範囲内であり、
溶媒として、水、エタノールおよびプロピレングリコールのみを含み、
添加物質としてのヒドロキシプロピルセルロースを含まないことを特徴とする青色インクジェットインク。 - 錠剤表面への直接印刷、食品への直接印刷に用いられることを特徴とする請求項1に記載の青色インクジェットインク。
- 前記ブリリアントブルーFCFと、前記ニューコクシンとの質量比(ブリリアントブルーFCFの質量:ニューコクシンの質量)は、1:0.025~1:0.25の範囲内である、または1:1.2~1:2の範囲内であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の青色インクジェットインク。
- 前記ブリリアントブルーFCFと、前記ニューコクシンとの質量比(ブリリアントブルーFCFの質量:ニューコクシンの質量)は、1:1.2~1:2の範囲内であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の青色インクジェットインク。
- 請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の青色インクジェットインクで印刷した印刷部を備える錠剤。
- 医療用錠剤であることを特徴とする請求項5に記載の錠剤。
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