本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、車両前後方向を基準としたときに、車幅方向は左右方向であり、車両上下方向は高さ方向である。
<第1の実施の形態>
本発明の第1の実施の形態に係るサイドシル1及びサイドシル用補強部材100について詳細に説明する。
図1は、サイドシル1の横断面すなわちサイドシル1を車両前後方向から見たときの断面図を示す。図1に示されるサイドシル1は、フロアクロスメンバー等とともに車体(図示しない)の下部を構成するように配置される。サイドシル1は、車体の幅方向である車幅方向(図1では左右方向)の左右両側の外側部にそれぞれ配置され、図示されないサイドドアの下方の高さ位置において車両前後方向(図1では奥行き方向)に延びる。フロアクロスメンバーは車体右側のサイドシル1と車体左側のサイドシル1とを接続する。各サイドシル1のうち、車両前後方向の前側の部分にはAピラーの下端部が接続され、車両前後方向の後側の部分にはCピラーの下端部が接続され、車両前後方向の中間に位置する部分には車両上下方向Hに延びるBピラーの下端部が接続される。
サイドシル1は、サイドシルアウター10と、サイドシルインナー20と、接合部40と、サイドシル用補強部材100と、を備える。
サイドシルアウター10及びサイドシルインナー20のそれぞれは、車両前後方向に延び、かつ車両前後方向に一様な断面を有する鋼板製の部材である。サイドシル1において、サイドシルアウター10及びサイドシルインナー20は車幅方向に向かい合って並ぶように配置されている。サイドシルアウター10は、車体の下部において最も外側の面を形成するように配置されている。サイドシルインナー20は、サイドシルアウター10よりも車幅方向の内側に配置されている。
サイドシルアウター10は、外側上フランジ部11と、外側下フランジ部12と、外側突出壁部13と、を備えている。
外側上フランジ部11は、車両前後方向に延びる平板状をなし、その法線方向が車幅方向と合致するように配置されている。外側下フランジ部12は、外側上フランジ部11の下方に配置されている。外側下フランジ部12は、車両前後方向に延びる平板状をなし、その法線方向が車幅方向を向くように配置されている。
外側突出壁部13は、外側上フランジ部11の下端部と外側下フランジ部12の上端部とを相互に車両上下方向に接続するように当該外側上フランジ部11と当該外側下フランジ部12との間に介在する。
外側突出壁部13は、外側上フランジ部11及び外側下フランジ部12よりも車幅方向の外側に向かって突出する形状を有する。外側突出壁部13は、その裏面が車幅方向の内側に開放される姿勢で配置されている。本実施形態では、外側突出壁部13は、外側縦壁部13aと外側上壁部13bと外側下壁部13cとを有する。外側縦壁部13aは前記横断面において車両上下方向に延びる平板状をなす。すなわち、外側縦壁部13aは、車両前後方向及び車両上下方向のそれぞれに対して平行である。外側上壁部13bは外側縦壁部13aの上端と外側上フランジ部11の下端とを接続するように前記横断面において車幅方向に延びる平板状をなす。外側下壁部13cは、外側縦壁部13aの下端と外側下フランジ部12の上端とを接続するように前記横断面において車幅方向に延びる平板状をなす。
サイドシルインナー20は、内側上フランジ部21と、内側下フランジ部22と、内側突出壁部23と、を備えている。
内側上フランジ部21は、車両前後方向に延びる平板状をなし、その法線方向が車幅方向と合致し、かつ、外側上フランジ部11に対して車幅方向に対向するように配置されている。内側下フランジ部22は、内側上フランジ部21の下方に配置されている。内側下フランジ部22は、車両前後方向に延びる平板状をなし、その法線方向が車幅方向を向き、かつ、外側下フランジ部12に対して車幅方向に対向するように配置されている。
内側突出壁部23は、内側上フランジ部21の下端部と、内側下フランジ部22の上端部と、を相互に車両上下方向に接続するように当該内側上フランジ部21と当該内側下フランジ部22との間に介在する。内側突出壁部23は、内側上フランジ部21及び内側下フランジ部22よりも車幅方向の内側に向かって突出する形状を有する。
本第1の実施の形態では、内側突出壁部23は、内側縦壁部23aと内側上壁部23bと内側下壁部23cとを有する。内側縦壁部23aは前記横断面において車両上下方向に延びる平板状をなす。すなわち、内側縦壁部23aは、車両前後方向及び車両上下方向のそれぞれに対して平行である。内側上壁部23bは内側縦壁部23aの上端と内側上フランジ部21の下端とを接続するように前記横断面において車幅方向に延びる(この実施の形態では車幅方向の内側に向かうに従って下向きに変位するような斜め向きに延びる)平板状をなす。内側下壁部23cは、内側縦壁部23aの下端と内側下フランジ部22の上端とを接続するように前記横断面において車幅方向に延びる平板状をなす。
サイドシルアウター10とサイドシルインナー20とは、外側上フランジ部11及び外側下フランジ部12がそれぞれ内側上フランジ部21及び内側下フランジ部22と車幅方向に対向するように互いに当該車幅方向に突き合わされた状態で、スポット溶接による複数のスポット溶接点Sにより接合されている。このようなサイドシルアウター10とサイドシルインナー20の対向配置により、外側突出壁部13と内側突出壁部23との間に内部空間Rが形成される。
サイドシル用補強部材100は、サイドシル1を補強するための部材であって、車体に対する側面衝突等により、サイドシルアウター10に対して車幅方向の内方に向かう荷重が加わった際に、サイドシルアウター20からサイドシルインナー10に前記荷重を伝達するとともに、当該サイドシル用補強部材100自身が当該荷重すなわち圧縮荷重を受けて圧壊することにより前記荷重によるエネルギーを吸収するように、内部空間R内に車幅方向に延びるように配置された部材である。
サイドシル用補強部材100は、車幅方向に並ぶ複数の閉空間を内部に有するようにアルミニウム製の押出形材により一体に形成される。なお、本明細書で、「アルミニウム製」とは、アルミニウム合金製を含み、アルミニウムを主たる材料とする金属で製造されることである。
サイドシル用補強部材100は、一対の横壁110と、一対の縦壁120と、複数枚の中間縦壁130と、を備える。
一対の横壁110は、車両前後方向及び車幅方向に延び車両上下方向に互いに離れて配置される。一対の横壁110は、車両前後方向及び車幅方向に伸びる横壁である上側横壁112と、車両前後方向及び車幅方向に伸びる横壁であって上側横壁112の下側に位置する下側横壁114と、を有する。上側横壁112と下側横壁114は、互いに平行に配置されている。また、上側横壁112と下側横壁114は、車幅方向に同じ長さを有している。
一対の縦壁120は、互いに車幅方向に離れて配置され一対の横壁110とつながる。一対の縦壁120は、内側縦壁124と、外側縦壁122と、を有する。内側縦壁124は、上側横壁112の車幅方向の内側端と下側横壁114の車幅方向の内側端とにつながり高さ方向に伸びる。外側縦壁122は、上側横壁112の車幅方向の外側端と下側横壁114の車幅方向の外側端とにつながり前記高さ方向に伸びる。内側縦壁124と外側縦壁122は、互いに平行に配置されている。
複数枚の中間縦壁130は、車幅方向において一対の縦壁120の間に配置され一対の横壁110とつながる。複数枚の中間縦壁130は、本第1の実施の形態において、3枚の中間縦壁を含む。すなわち、複数枚の中間縦壁130は、第1の中間縦壁131と第2の中間縦壁132と第3の中間縦壁133とを含む。第1の中間縦壁131、第2の中間縦壁132及び第3の中間縦壁133は、外側縦壁122と内側縦壁124の車幅方向の間において順に並んで配置されており、上側横壁112と下側横壁114とをつなぐように車両上下方向に延びている。
外側縦壁122と第1の中間縦壁131と第2の中間縦壁132と第3の中間縦壁133と内側縦壁124とは、等間隔Wにそれぞれ配置されている。また、外側縦壁122と第1の中間縦壁131と第2の中間縦壁132と第3の中間縦壁133と内側縦壁124とは、車幅方向の厚さ、すなわち、肉厚を等しくするように形成されている。なお、本明細書で、「等間隔」とは、後述する横壁110の肉厚tが小さいほどに閉断面構造140の圧壊荷重が小さくなることを担保できる程度に等しい間隔のことである。
サイドシル用補強部材100は、上側横壁112と下側横壁114と外側縦壁122と内側縦壁124と第1の中間縦壁131と第2の中間縦壁132と第3の中間縦壁133とにより構成され、それらが一体化するようにアルミニウム製の押出形材により形成されている。
さらに、サイドシル用補強部材100は、車幅方向に並び車幅方向及び車両上下方向に閉じた複数の閉断面構造140を形成している。具体的には、サイドシル用補強部材100は、上側横壁112と下側横壁114と外側縦壁122と第1の中間縦壁131とにより囲まれた第1の閉断面構造141と、上側横壁112と下側横壁114と第1の中間縦壁131と第2の中間縦壁132とにより囲まれた第2の閉断面構造142と、上側横壁112と下側横壁114と第2の中間縦壁132と第3の中間縦壁133とにより囲まれた第3の閉断面構造143と、上側横壁112と下側横壁114と第3の中間縦壁133と内側縦壁124とにより囲まれた第4の閉断面構造144と、を有する。
また、サイドシル用補強部材100は、外側端部と、内側端部と、を有する。外側端部は、サイドシル用補強部材100の車幅方向の外側端部であってサイドシルアウター10の外側突出壁部13に近接しまたは接続される。内側端部は、サイドシル用補強部材100の車幅方向の内側端部であってサイドシルインナー20の内側突出壁部23に近接しまたは接続される。
サイドシル用補強部材100の外側端部は、外側縦壁122により構成される。サイドシル用補強部材100の内側端部は、内側縦壁124により構成される。そして、サイドシルアウター10の外側突出壁部13に接触される外側縦壁122は、外側突出壁部13を貫通する接合部40によって、外側突出壁部13に接合される。同様に、サイドシルインナー20の内側突出壁部23に接触される内側縦壁124は、内側突出壁部23を貫通する接合部40によって、内側突出壁部23に接合される。
接合部40は、サイドシル用補強部材100の車幅方向の両側端部をそれぞれサイドシルアウター10及びサイドシルインナー20に接合することによって、サイドシル用補強部材100を内部空間Rで車両前後方向及び車幅方向に延びる姿勢に維持する。
接合部40は、例えば、セルフピアシングリベット(SPR)やフロードリルスクリュー(FDS)による機械的接合手段によるものであってもよく、また、接着剤等の化学的接合によるものであってもよく、また、スポット溶接等の冶金的接合手段によるものであってもよい。
サイドシル用補強部材100は、サイドシルアウター10に車幅方向の内方に向かう荷重が入力されたときに、サイドシルアウター10に接合部40を介して接合される内側端部たる外側縦壁122に前記荷重が入力され、車幅方向に並んだ第1の閉断面構造141と第2の閉断面構造142と第3の閉断面構造143と第4の閉断面構造144とが車幅方向の内方に順に圧壊することにより、前記荷重によるエネルギーを吸収することができる。
すなわち、サイドシル用補強部材100は、複数の閉断面構造140のうち車幅方向の外側に位置する閉断面構造から内側に位置する閉断面構造に順に圧壊可能であるように構成される。
このサイドシル用補強部材100の特徴として、一対の横壁110である上側横壁112及び下側横壁114は、それぞれ、車幅方向に並んだ複数の肉厚変化部115を有する。複数の肉厚変化部115は、第1の肉厚変化部115N1と第2の肉厚変化部115N2と第3の肉厚変化部115N3とを有する。
肉厚変化部115は、それを境として横壁110の肉厚が変化する部分である。肉厚変化部115は、横壁110における当該肉厚変化部115の位置より車幅方向外側の肉厚と当該肉厚変化部115の位置より車幅方向内側の肉厚とが互いに異なることとなる境界部分である。すなわち、肉厚変化部115を有する上側横壁112と下側横壁114とにおいて、肉厚変化部115よりも車幅方向の内側における肉厚は、肉厚変化部115よりも車幅方向の外側における肉厚よりも、小さい。
具体的には、第1の肉厚変化部115N1の車幅方向の外側における肉厚をt1とし車幅方向の内側における肉厚をt2としたときに、t1>t2なる関係が成立する。同様に、第2の肉厚変化部115N2の車幅方向の外側における肉厚をt2とし車幅方向の内側における肉厚をt3としたときに、t2≧t3なる関係が成立する。第3の肉厚変化部115N3の車幅方向の外側における肉厚をt3とし車幅方向の内側における肉厚をt4としたときに、t3≧t4なる関係が成立する。第1の実施の形態において、上側横壁112及び下側横壁114のそれぞれの複数の肉厚変化部115において、この関係は、成立している。
さらに、肉厚変化部115は、中間縦壁130が一対の横壁110に接続される位置に設けられる。
具体的には、第1の肉厚変化部115N1は、第1の中間縦壁131が上側横壁112及び下側横壁114に接続される位置に設けられている。同様に、第2の肉厚変化部115N2は、第2の中間縦壁132が上側横壁112及び下側横壁114に接続される位置に設けられている。第3の肉厚変化部115N3は、第3の中間縦壁131が上側横壁112及び下側横壁114に接続される位置に設けられている。
さらに、複数の肉厚変化部115を有するサイドシル用補強部材100の上側横壁112及び下側横壁114の肉厚について、t1-t2≧t2-t3、かつ、t2-t3≧t3-t4なる関係が成立するように、上側横壁112及び下側横壁114は、形成されている。
上記の肉厚の関係は、図2においてサイドシル用補強部材100における肉厚tN(N:自然数)と車幅方向との関係を示すグラフを見ると明らかな通り、車幅方向の内方に進むにつれて、肉厚が小さくなるとともに、その肉厚の変化量tN-tN+1も小さくなるという関係である。
(第1の実施の形態における衝突シミュレーション結果)
ここからは、サイドシル1に、側面衝突等により電柱や自動車の前後左右の角部などの円柱状部材Pが車幅方向の内方に向かって衝突した場合のサイドシル1の変形荷重をシミュレーションする。
(比較例)
まず、比較例として、第1の実施の形態に係るサイドシル用補強部材100について仮に肉厚tを一定とした構成を有するサイドシル用補強部材101、すなわち、肉厚均一のサイドシル用補強部材101を備えるサイドシル1の側面衝突による変形荷重をシミュレーションする。
図3は、肉厚均一のサイドシル用補強部材101を備えるサイドシル1に対して車幅方向に円柱状部材Pが衝突した場合における衝突の過程と、それぞれの過程における車両前後方向の変形変位量Lと、を示す模式的な図である。なお、図3の上図は、サイドシル1を車両前後方向に見た断面図であるが、下図は、サイドシル1を車両上下方向に見た平面図である。
図3に示すように、サイドシル1への衝突の瞬間、円柱状部材Pは、サイドシルアウター10に接触する位置すなわち図3における車幅方向の位置0に位置する。そして、円柱状部材Pは、衝突過程の次の位置であって、第1の閉断面構造141の幅Wを進んだ位置Aに進入する。さらに、円柱状部材Pは、衝突過程のその次の位置であって、第2の閉断面構造142の幅Wを進んだ位置Bに進入する。さらに、円柱状部材Pは、衝突過程の次の位置であって、第3の閉断面構造143の幅Wを進んだ位置Cに進入する。さらに、円柱状部材Pは、衝突過程の次の位置であって、第4の閉断面構造144の幅Wを進んだ位置Dに進入する。
図3に示すように、上記の円柱状部材Pの進入の過程において、サイドシル1の車両前後方向の変形の各過程での変位量を、各過程0→A、A→B、B→C及びC→Dに応じて、L0A、LAB、LBC及びLCDと定義する。
変形変位量L0A、LAB、LBC及びLCDは、図3を見てもわかるとおり、円柱状部材Pの円柱状形状に応じて、L0A≧LAB≧LBC≧LCDとなるように、減少する。
図4は、肉厚均一のサイドシル用補強部材101を備えるサイドシル1における各衝突過程における当該サイドシル全体の変形荷重をシミュレーションした結果を示すグラフである。
図4に示すように、サイドシル1全体の変形荷重は、サイドシル1の車両前後方向の変形量と略比例関係にあるので、円柱状部材Pの車幅方向の内方への進入に伴い、サイドシル1の車両前後方向の変形量が増加したことに伴い、増加している。
それと同時に、図4から、サイドシル1全体の変形荷重は、L0A≧LAB≧LBC≧LCDの関係から、0→Aの過程では大きく立ち上がり、A→Bの過程では少し立ち上がり量を減らしながら立ち上がり、B→Cの過程では更に立ち上がり量を減らしながら立ち上がることがわかる。C→Dの過程でも同様である。
なお、図4のシミュレーションにおいて、0→Aの過程で第1の閉断面構造141が圧壊し、A→Bの過程で第2の閉断面構造142が圧壊し、B→Cの過程で第3の閉断面構造143が圧壊し、C→Dの過程で第4の閉断面構造144が圧壊しているものとして計算しているとともに、肉厚t=一定として仮定していることから、それぞれの閉断面構造141、142、143及び144の圧壊荷重は同じであるものとして計算している。
上記シミュレーション結果から、次のことがわかる。すなわち、円柱状部材Pがサイドシル1と接触し車幅方向内方へ進行するにつれて、円柱状部材Pのサイドシル1との衝突の初期には、円柱状部材Pの車両前後方向のサイドシル1との接触面積が大きく増大し、サイドシル1の変形変位量Lが非常に大きい。そして、円柱状部材Pのサイドシル1との衝突の初期を過ぎると、円柱状部材Pの車幅方向内方への進行につれて、円柱状部材Pの車両前後方向のサイドシル1との接触面積の増加量が徐々に減少し、サイドシル1の変形変位量Lが徐々に減少する。
すなわち、肉厚tを変化するサイドシル用補強部材を有していないサイドシル1であれば、サイドシル1の変形量と変形荷重とが比例関係にあるので、円柱状部材Pがサイドシル1と接触し車幅方向内方へ進行するにつれて、サイドシル1の変形荷重は、衝突の初期において大きく立ち上がりその後徐々に緩やかに増加するような増加曲線を描く。
(実施例)
次に、第1の実施の形態に係る実施例として、サイドシル用補強部材100において、肉厚tについて、t1>t2≧t3≧t4、かつ、t1-t2≧t2-t3、かつ、t2-t3≧t3-t4なる関係が成立する場合に、当該肉厚変化するサイドシル用補強部材100を備えるサイドシル1に、側面衝突等により電柱や自動車の前後左右の角部などの円柱状部材Pが車幅方向の内方に向かって衝突した場合のサイドシル1の変形荷重をシミュレーションする。
図5は、肉厚tについて上記の関係で肉厚変化するサイドシル用補強部材100を備えるサイドシル1に対して車幅方向に円柱状部材Pが衝突した場合における衝突の過程と、それぞれの過程における車両前後方向の変形変位量Lと、を示す模式的な図である。なお、図5の上図は、サイドシル1を車両前後方向に見た断面図であるが、下図は、サイドシル1を車両上下方向に見た平面図である。
図3の場合と同様に、サイドシル1への衝突の瞬間、円柱状部材Pは、図5における車幅方向の位置0に位置する。そして、円柱状部材Pは、衝突の過程に伴い、第1の閉断面構造141の幅Wを進んだ位置Aに進入し、第2の閉断面構造142の幅Wを進んだ位置Bに進入し、第3の閉断面構造143の幅Wを進んだ位置Cに進入し、さらに、第4の閉断面構造144の幅Wを進んだ位置Dに進入する。
図5に示されるL0A、LAB、LBC及びLCDは、図3の場合と同様に定義する。変形変位量L0A、LAB、LBC及びLCDは、図3の場合と同様に、円柱状部材Pの円柱状形状に応じて、L0A≧LAB≧LBC≧LCDとなるように、減少する。
すなわち、側面衝突における円柱状部材Pの車幅方向内方への進行とサイドシル1の車両前後方向の変形変位量とについてのこのような関係性は、参考例におけるサイドシル用補強部材101を有しているサイドシル1と同様である。そして、サイドシル用補強部材100を有しているサイドシル1において、車幅方向最外側の閉断面構造が圧壊した後、隣り合うその内側の閉断面構造の圧壊変形が始まるが、この際、円柱状部材Pによる変形の進行に応じて、最外側の閉断面構造を含むサイドシル1全体の車両前後方向への圧壊変形範囲が拡大するため、これに応じて荷重増加が生じる。以下、順次、円柱状部材Pによる変形の進行とともに、各閉断面構造を含むサイドシル1全体の車両前後方向変形範囲は拡大していく。
しかし、本発明の第1の実施の形態に係るサイドシル1及びサイドシル用補強部材100は、変形範囲の拡大による荷重増加を抑制する以下に記載の作用効果を奏する。
図6は、肉厚tについて上記の関係で肉厚変化するサイドシル用補強部材100を備えるサイドシル1における各衝突過程における当該サイドシル全体の変形荷重をシミュレーションした結果を示すグラフである。
図6においても、サイドシル1全体の変形荷重は、衝突の初期(過程0→A)において、変形変位量L0Aが大きいことに伴い、一定値まで大きく増加する。
しかし、図6に示されるように、その後の過程A→B、過程B→C、過程C→Dのサイドシル1の変形荷重は、略横ばいで推移し、略一定値を維持する。
このことは、次のことを表している。すなわち、円柱状部材Pのサイドシル用補強部材100への衝突によって、サイドシル用補強部材100の第1の閉断面構造141が圧壊し、円柱状部材Pが幅Wを車幅方向の内方に進んで、円柱状部材Pが次の位置Aに進入すると、すなわち衝突の過程A→Bにおいて、サイドシル用補強部材100は、サイドシル用補強部材100の上側横壁112及び下側横壁114が有する第1の肉厚変化部115N1よりも車幅方向の内側に位置する第2の閉断面構造142の変形を始める。このとき、第2の閉断面構造142の上辺部及び下辺部を構成する上側横壁112及び下側横壁114の肉厚はt2であり、t2≦t1であるので、第2の閉断面構造142の上辺部及び下辺部が第1の閉断面構造141の上辺部及び下辺部よりも座屈しやすい。すなわち、第2の閉断面構造142は、第1の閉断面構造141よりも圧壊しやすい。すなわち、第2の閉断面構造142の圧壊荷重は、第1の閉断面構造141の圧壊荷重よりも小さい。
このため、衝突の過程A→Bにおいて、衝突の過程0→Aの変形量L0Aに比較して、サイドシル1の車両前後方向の変形量がL0A+LABとなり増大しているものの、サイドシル用補強部材100の第2の閉断面構造142の圧壊荷重が第1の閉断面構造141の圧壊荷重よりも小さくなったことから、サイドシル1全体の変形量の増大に伴い変形荷重が増加しようとすることを第2の閉断面構造142の圧壊荷重の低下が相殺する。そして、結果的に、サイドシル1全体の変形荷重は、当該過程A→Bにおいて、先の過程0→Aの位置Aにおける変形荷重に比較して、増加しない又は増加量を低減して、略一定値を維持する。
さらに、衝突の過程A→Bが終了し、サイドシル用補強部材100の第2の閉断面構造142が圧壊し、円柱状部材Pが幅Wを車幅方向の内方に進んで、円柱状部材Pが次の位置Bに進入すると、すなわち衝突の過程B→Cにおいて、サイドシル用補強部材100は、第2の肉厚変化部115N2よりも車幅方向の内側に位置する第3の閉断面構造143の変形を始める。このとき、第3の閉断面構造143の上辺部及び下辺部を構成する上側横壁112及び下側横壁114の肉厚はt3であり、t3≦t2であるので、第3の閉断面構造143の上辺部及び下辺部が第2の閉断面構造142の上辺部及び下辺部よりも座屈しやすい。すなわち、第3の閉断面構造143は、第2の閉断面構造142よりも圧壊しやすい。すなわち、第3の閉断面構造143の圧壊荷重は、第2の閉断面構造142の圧壊荷重よりも小さい。
ここで、上記のことから、閉断面構造140の圧壊荷重は、閉断面構造140車幅方向の幅が一定値(本実施例ではW)であることを前提として、その閉断面構造の上辺部及び下辺部の肉厚tに略比例するということがわかる。
すなわち、複数の閉断面構造140は、複数の肉厚変化部115のそれぞれの位置よりも車幅方向の内側にある閉断面構造の圧壊荷重を車幅方向の内方にかけて順に小さくするということがわかる。
加えて、本実施例のサイドシル用補強部材100は、肉厚tについて、t1-t2≧t2-t3であるので、第3の閉断面構造143の圧壊荷重の第2の閉断面構造142の圧壊荷重に対する変化量は、第2の閉断面構造142の圧壊荷重の第1の閉断面構造141の圧壊荷重に対する変化量よりも小さい。
一方、衝突の過程B→Cにおいて、衝突の過程A→Bの変形量L0A+LABに比較してサイドシル1の車両前後方向の変形量がL0A+LAB+LBCとなり増大するが、L0A≧LAB≧LBC≧LCDであることから、サイドシル1全体の変形量は過程A→Bに比較して緩やかに増大し、これに伴い、サイドシル1全体の変形荷重も過程A→Bに比較して緩やかに増大しようとする。
これらのことから、衝突の過程B→Cにおいて、衝突の過程A→Bに比較して、サイドシル1の車両前後方向の変形量がL0A+LAB+LBCとなり緩やかに増大しているものの、サイドシル用補強部材100の第3の閉断面構造143の圧壊荷重が第2の閉断面構造142の圧壊荷重よりも小さくなり、かつ、第3の閉断面構造143の圧壊荷重の第2の閉断面構造142の圧壊荷重に対する変化量が第2の閉断面構造142の圧壊荷重の第1の閉断面構造141の圧壊荷重に対する変化量よりも小さいことから、サイドシル1全体の変形量の増大に伴い変形荷重が増加しようとするときの変形荷重の増大量(変化量)を第3の閉断面構造143の圧壊荷重の第2の閉断面構造142の圧壊荷重に対する変化量が相殺する。そして、結果的に、サイドシル1全体の変形荷重は、当該過程B→Cにおいて、先の過程A→Bに比較して、増加しない又は増加量を低減して、略一定値を維持する。
さらに、衝突の過程B→Cが終了し、サイドシル用補強部材100の第3の閉断面構造143が圧壊し、円柱状部材Pが幅Wを車幅方向の内方に進んで、円柱状部材Pが次の位置Cに進入すると、すなわち衝突の過程C→Dにおいて、サイドシル用補強部材100は、第4の閉断面構造144の変形を始める。上記と同様に、t4≦t3であるので、第4の閉断面構造144の圧壊荷重は、第3の閉断面構造143の圧壊荷重よりも小さい。
加えて、本実施例のサイドシル用補強部材100は、肉厚tについて、t2-t3≧t3-t4であるので、第4の閉断面構造144の圧壊荷重の第3の閉断面構造143の圧壊荷重に対する変化量は、第3の閉断面構造143の圧壊荷重の第2の閉断面構造142の圧壊荷重に対する変化量よりも小さい。
一方、衝突の過程C→Dにおいても、上記と同様に、L0A≧LAB≧LBC≧LCDであることから、サイドシル1全体の変形荷重も過程B→Cに比較して緩やかに増大しようとする。
これらのことから、衝突の過程C→Dにおいて、衝突の過程B→Cに比較して、サイドシル1の車両前後方向の変形量がL0A+LAB+LBC+LCDとなり緩やかに増大しているものの、サイドシル用補強部材100の第4の閉断面構造144の圧壊荷重が第3の閉断面構造143の圧壊荷重よりも小さくなり、かつ、第4の閉断面構造144の圧壊荷重の第3の閉断面構造143の圧壊荷重に対する変化量が第3の閉断面構造143の圧壊荷重の第2の閉断面構造142の圧壊荷重に対する変化量よりも小さいことから、サイドシル1全体の変形量の増大に伴い変形荷重が増加しようとするときの変形荷重の増大量(変化量)を第4の閉断面構造144の圧壊荷重の第3の閉断面構造143の圧壊荷重に対する変化量が相殺する。そして、結果的に、サイドシル1全体の変形荷重は、当該過程C→Dにおいて、先の過程B→Cに比較して、増加しない又は増加量を低減して、略一定値を維持する。
以上のとおり、本実施例によれば、サイドシル用補強部材100及びサイドシル用補強部材100を備えるサイドシル1は、それぞれの閉断面構造140の圧壊荷重の変化量が、サイドシル1への円柱状部材Pの衝突にともなうサイドシル1全体の変形荷重の増大量を相殺して、サイドシル1全体の変形荷重の増加を防止又は増加量を低減することができる。
さらに、図6からわかるとおり、衝突過程0→Dにおいて、サイドシル1全体の変形荷重は、閾値Hを超えない。閾値Hは、サイドシル1よりも車幅方向の内側に位置する車体構造で例えばバッテリーパックや居室等を構築する部材を変形する程の変形荷重である。閾値Hは、例えば、350kN~500kN程度である。したがって、本実施例において、サイドシル用補強部材100及びサイドシル用補強部材100を備えるサイドシル1は、サイドシル1全体の変形荷重が閾値Hを超えることを防止することで車体内部を保護し車体の側面衝突の衝突安全性を向上することができる。
さらに、本実施例によれば、上記の通り肉厚変化するサイドシル用補強部材100及びサイドシル用補強部材100を備えるサイドシル1は、複数の閉断面構造140の圧壊荷重が上記の関係で車幅方向の内方にかけて順に小さくなることで、複数の閉断面構造140が車幅方向の内方にかけて確実に順に圧壊することができ、これにより、側面衝突により車幅方向の内方に向かう荷重によるエネルギーをそれぞれの閉断面構造140で吸収することにより、側面衝突時の衝撃エネルギーを有効に吸収することができる。
加えて、本実施例によれば、一対の横壁110が有する肉厚変化部115が、中間縦壁130が一対の横壁110に接続される位置に設けられているので、一対の横壁110のうちの部分であって閉断面構造140を画定する上辺部及び下辺部の途中で一対の横壁110の肉厚tが変化することがなく、このため、複数の閉断面構造140のそれぞれの圧壊性が安定することができる。すなわち、本実施例におけるサイドシル用補強部材100及びサイドシル用補強部材100を備えるサイドシル1は、複数の閉断面構造140のそれぞれが前記荷重によって安定的に順に圧壊することにより、前記荷重によるエネルギーを効果的に吸収することができる。したがって、本実施例におけるサイドシル用補強部材100及びサイドシル用補強部材100を備えるサイドシル1は、側面衝突時の衝撃エネルギーを有効に吸収することができる。
加えて、本実施例によれば、一対の縦壁120及び複数枚の中間縦壁130は、等間隔となるようにそれぞれ配置されているので、上記の関係で一対の横壁110の肉厚tが変化することと相まって、複数の閉断面構造140は、複数の閉断面構造140の圧壊荷重を車幅方向の内方にかけて順に小さくすることができる。このため、本実施例におけるサイドシル用補強部材100及びサイドシル用補強部材100を備えるサイドシル1は、サイドシル1全体の変形荷重の増加を防止する又はその増加量を低減することができる。したがって、本実施例におけるサイドシル用補強部材100及びサイドシル用補強部材100を備えるサイドシル1は、側面衝突時の衝撃エネルギーを有効に吸収することができる。
加えて、本実施例によれば、一対の横壁110すなわち上側横壁112及び下側横壁114は、それぞれ、肉厚変化部115を有しているので、上側横壁112及び下側横壁114の肉厚変化部115よりも車幅方向の内側における部分が車幅方向の内方に向かう荷重により共に座屈しやすくなり、これにともない、肉厚変化部115よりも車幅方向の内側における閉断面構造140がより圧壊しやすくなる。一方、変形領域は車両前後方向に拡大していくため、衝突時の合計反力は比較的安定することになる。したがって、本実施例におけるサイドシル用補強部材100及びサイドシル用補強部材100を備えるサイドシル1は、側面衝突時の衝撃エネルギーを有効に吸収することができる。本構造では、車両内側に配置された閉断面構造を構成する一対の横壁110のそれぞれの肉厚tを薄く設定しているが、より厚肉の車幅方向外側に位置する閉断面構造から順次圧壊変形が生じる点にも特徴がある。これは、前記円柱状部材Pとの接触の際に、最外側に位置する閉断面構造141は、被衝突物である前記円柱状部材Pと狭い領域で衝突するのに際して、車幅方向内側に位置する閉断面構造では、変形荷重が車両前後方向に伝播することで、より広い範囲で受圧することになり、その分、座屈変形が生じにくくなるためである。
加えて、本実施例におけるサイドシル用補強部材100を備えるサイドシル1は、一対の横壁110すなわち上側横壁112及び下側横壁114が車幅方向に延びるように内部空間R内に配置されるサイドシル用補強部材100が車幅方向の内方に向かう荷重を受け止めることで効果的にエネルギーを吸収することにより、側面衝突時の衝撃エネルギーを有効に吸収することができる。
<第2の実施の形態>
次に、本発明の第2の実施の形態に係るサイドシル1A及びサイドシル用補強部材100Aについて詳細に説明する。
なお、以下の記載において、第1の実施の形態と同じ構成を有するものについては同一符号を用いるものとする。また、以下では、第1の実施の形態に関する記載と重複する記載についてはなるべく省略し、第1の実施の形態と異なる形態となる部分について主に説明するものとする。
図7は、サイドシル1Aの横断面すなわちサイドシル1Aを車両前後方向から見たときの断面図を示す。図7に示されるサイドシル1Aは、上記サイドシル1と同様に、車体(図示しない)の下部を構成するように、車幅方向の左右両側の外側部にそれぞれ配置される。
サイドシル1Aは、サイドシルアウター10と、サイドシルインナー20と、支持部30と、接合部40と、サイドシル用補強部材100Aと、を備える。すなわち、サイドシル1Aは、主に、上記サイドシル1に対して、支持部30をさらに備えていることと、サイドシル用補強部材100Aの形態と、を相違点としている。
支持部30は、サイドシル用補強部材100Aを内部空間R内で支持するものである。支持部30は、鋼板製の板状部材である。支持部30は、サイドシルアウター10及びサイドシルインナー20の少なくとも一方に接続される。本第2の実施の形態では、支持部30は、車両前後方向に見て、L字状に形成されている。支持部30は、外側上フランジ部11、内側上フランジ部21、外側下フランジ部12及び内側下フランジ部22の少なくとも1つに接続されて内部空間R内に配置されている。支持部30は、上側支持部32と、下側支持部34と、を有する。
上側支持部32は、サイドシル用補強部材100Aの車両上下方向の上側に配置される。上側支持部32は、サイドシルアウター10及びサイドシルインナー20に接続される底部32aと、底部から高さ方向に延びる縦壁部32bと、縦壁部32bの下端縁から後述する上側横壁112Aに沿って延び上側横壁112Aに接続される頂部32cと、を有する。底部32aは、外側上フランジ部11と内側上フランジ部21との間に車幅方向に挟み込まれている板状部分である。外側上フランジ部11、底部32a及び内側上フランジ部21は、その順に並ぶように車幅方向に重ね合わされた状態で、スポット溶接による複数のスポット溶接点Sにより互いに接合されている。縦壁部32bは、底部32aに連続して車両上下方向の下方に延びている板状部分である。縦壁部32bは、内部空間Rに配置されるサイドシル用補強部材100Aの上側横壁112Aの上面近傍まで延びている。頂部32cは、縦壁部32bの下端縁で屈曲し車幅方向に延びる上側横壁112Aに沿って延びる。そして、頂部32cと上側横壁112Aとは、接合部40によって接合される。これにより、サイドシル用補強部材100Aは、サイドシル1Aの内部空間R内で上側から吊られるように、上側支持部32に支持される。上側支持部32は、底部32aと縦壁部32bとがL字の縦辺部に相当し、頂部32cがL字の横辺部に相当するように、形成されている。
下側支持部34は、サイドシル用補強部材100Aの車両上下方向の下側に配置される。下側支持部34は、サイドシルアウター10及びサイドシルインナー20に接続される底部34aと、底部から高さ方向に延びる縦壁部34bと、縦壁部34bの上端縁から後述する下側横壁114Aに沿って延び下側横壁114Aに接続される頂部34cと、を有する。底部34aは、外側下フランジ部12と内側下フランジ部22との間に車幅方向に挟み込まれている板状部分である。外側下フランジ部12、底部34a及び内側下フランジ部22は、その順に並ぶように車幅方向に重ね合わされた状態で、スポット溶接による複数のスポット溶接点Sにより互いに接合されている。縦壁部34bは、底部34aに連続して車両上下方向の上方に延びている板状部分である。縦壁部34bは、内部空間Rに配置されるサイドシル用補強部材100Aの下側横壁114Aの下面近傍まで延びている。頂部34cは、縦壁部34bの上端縁で屈曲し車幅方向に延びる下側横壁114Aに沿って延びる。そして、頂部34cと下側横壁114Aとは、接合部40によって接合される。これにより、サイドシル用補強部材100Aは、サイドシル1Aの内部空間R内で下側から支えられるように、下側支持部34に支持される。下側支持部34は、底部34aと縦壁部34bとがL字の縦辺部に相当し、頂部34cがL字の横辺部に相当するように、形成されている。なお、下側支持部34は、車両前後方向に見て、L字の横辺部すなわち頂部34cが上に配置されるような形状に、形成されている。
そして、支持部30すなわち上側支持部32及び下側支持部34は、サイドシル用補強部材100Aを、内部空間Rで車両前後方向及び車幅方向に延びる姿勢に維持する。
支持部30すなわち上側支持部32及び下側支持部34は、底部32a、34aがスポット溶接によってサイドシルアウター10及びサイドシルインナー20と一体的に接続し、頂部32c、34cが接合部40によってサイドシル用補強部材100Aと一体的に接続する。これにより、支持部30は、サイドシル用補強部材100Aとサイドシルアウター10及びサイドシルインナー20とを一体化するとともに、サイドシル用補強部材100Aに車幅方向の内方に向かう荷重が入力されたとき、当該荷重を支持部30を介してサイドシルアウター10及びサイドシルインナー20に分散することができる。
また、下部接続部34は、下側横壁114Aに沿って延びる頂部34cにより下側横壁114Aに接続されることにより、サイドシル用補強部材100Aを下側から安定的に支持することができる。
サイドシル用補強部材100Aは、第1の実施の形態におけるサイドシル用補強部材100と同様に、サイドシル1を補強するための部材であって、車体に対する側面衝突等により、サイドシルアウター10に対して車幅方向の内方に向かう荷重が加わった際に、サイドシルアウター20からサイドシルインナー10に前記荷重を伝達するとともに、当該補強部材100A自身が当該荷重すなわち圧縮荷重を受けて圧壊することにより前記荷重によるエネルギーを吸収するように、内部空間R内に車幅方向に延びるように配置された部材である。
サイドシル用補強部材100Aは、車幅方向に並ぶ複数の閉空間を内部に有するようにアルミニウム製の押出形材により一体に形成される。
サイドシル用補強部材100Aは、一対の横壁110と、一対の縦壁120と、複数枚の中間縦壁130と、を備える。
一対の横壁110は、車両前後方向及び車幅方向に伸びる横壁である上側横壁112A、車両前後方向及び車幅方向に伸びる横壁であって上側横壁112Aの下側に位置する下側横壁114Aと、を有する。上側横壁112Aと下側横壁114Aとは、互いに平行に配置されている。また、上側横壁112Aと下側横壁114Aとは、車幅方向に同じ長さを有している。
サイドシル用補強部材100Aは、上側横壁112Aと下側横壁114Aと外側縦壁122と内側縦壁124と第1の中間縦壁131と第2の中間縦壁132と第3の中間縦壁133とにより構成され、それらが一体化するようにアルミニウム製の押出形材により形成されている。そして、サイドシル用補強部材100Aは、上側横壁112Aと下側横壁114Aと外側縦壁122と内側縦壁124と第1の中間縦壁131と第2の中間縦壁132と第3の中間縦壁133とにより、車幅方向に並び車幅方向及び車両上下方向に閉じた複数の閉断面構造140、すなわち、第1の閉断面構造141、第2の閉断面構造142、第3の閉断面構造143及び第4の閉断面構造144を形成している。
サイドシル用補強部材100Aは、サイドシルアウター10に車幅方向の内方に向かう荷重が入力されたときに、サイドシルアウター10に近接する外側縦壁122に前記荷重が入力され、車幅方向に並んだ第1の閉断面構造141と第2の閉断面構造142と第3の閉断面構造143と第4の閉断面構造144とが車幅方向の内方に順に圧壊することにより、前記荷重によるエネルギーを吸収することができる。
すなわち、サイドシル用補強部材100Aは、複数の閉断面構造140のうち車幅方向の外側に位置する閉断面構造から内側に位置する閉断面構造に順に圧壊可能であるように構成される。
さらに、サイドシル用補強部材100Aについて、一対の横壁110は、それぞれ、車幅方向において、車両上下方向の厚さすなわち肉厚が変化する1つの肉厚変化部115を有する。
肉厚変化部115は、第1の実施の形態における肉厚変化部115と同様に、それを境として横壁110の肉厚が変化する部分である。肉厚変化部115は、横壁110における当該肉厚変化部115の位置より車幅方向外側の肉厚と当該肉厚変化部115の位置より車幅方向内側の肉厚とが互いに異なることとなる境界部分である。
具体的には、一対の横壁110である上側横壁112A及び下側横壁114Aは、それぞれ、第1の肉厚変化部115N1のみを有する。すなわち、上側横壁112A及び下側横壁114Aのそれぞれにおいて、1つの肉厚変化部115は、第1の肉厚変化部115N1である。
第1の肉厚変化部115N1は、第2の中間縦壁132が上側横壁112A及び下側横壁114Aに接続される位置に設けられている。
第1の肉厚変化部115N1において、車幅方向のその外側とその内側とを比較したときに、横壁110の肉厚が小さくなるように、横壁110の肉厚は、変化する。すなわち、第1の肉厚変化部115N1を有する上側横壁112Aと下側横壁114Aとにおいて、第1の肉厚変化部115N1よりも車幅方向の内側における肉厚は、第1の肉厚変化部115N1よりも車幅方向の外側における肉厚よりも、小さい。
すなわち、第1の肉厚変化部115N1の車幅方向の外側における肉厚をt1とし車幅方向の内側における肉厚をt2としたときに、t1>t2となる関係が成立する。
上記の肉厚の関係は、図8においてサイドシル用補強部材100Aにおける肉厚tNと車幅方向との関係を示すグラフを見ても、明らかに成立している。
すなわち、図7及び図8に示すとおり、第1の閉断面構造141の上辺部及び下辺部の肉厚はt1であり、第2の閉断面構造142の上辺部及び下辺部の肉厚はt1であり、第3の閉断面構造143の上辺部及び下辺部の肉厚はt2であり、第4の閉断面構造144の上辺部及び下辺部の肉厚はt2である。
また、上側支持部32は、第1の肉厚変化部115N1又はその近傍において、上側横壁112Aに接続されている。図7においては、上側支持部32の頂部32cは、上側横壁112Aと第2の中間縦壁132との接続位置よりも車幅方向内側寄りに接続されている。これは、接合部40がFDSである場合に、FDSを第2の中間縦壁132上に設けることができないことによる。
同様に、下側支持部34は、第1の肉厚変化部115N1又はその近傍において、下側横壁114Aに接続されている。図7においては、下側支持部34の頂部34cは、下側横壁114Aと第2の中間縦壁132との接続位置よりも車幅方向内側寄りに接続されている。
本第2の実施の形態におけるサイドシル1A及びサイドシル用補強部材100Aによれば、複数の閉断面構造140が車幅方向に並ぶように形成されていることから、側面衝突により、車体の外側部に対して車幅方向の内方に向かう荷重が加わった際に、複数の閉断面構造140のうち車幅方向の外側にあるものから内側にあるものにかけて順に複数の閉断面構造140が圧壊することにより、サイドシル用補強部材100Aは、効果的に荷重によるエネルギーを吸収することができる。
ここで、複数の閉断面構造140の圧壊が内側に進行するにつれて、サイドシル用補強部材100Aを備えるサイドシル1の車両前後方向の変形変位量の増加により、サイドシル1全体の変形荷重は増加しようとする。しかし、サイドシル用補強部材100Aにおいて、一対の横壁110すなわち上側横壁112A及び下側横壁114Aは、それぞれ、車幅方向において、肉厚が変化する1つの肉厚変化部115N1を有し、1つの肉厚変化部115N1を有する上側横壁112A及び下側横壁114Aにおいて、1つの肉厚変化部115N1よりも車幅方向の内側における肉厚t2は、1つの肉厚変化部115N1よりも車幅方向の外側における肉厚t1よりも、小さいので、1つの肉厚変化部115N1を有する上側横壁112A及び下側横壁114Aの、1つの肉厚変化部115N1よりも車幅方向の内側における部分が、1つの肉厚変化部115N1よりも車幅方向の外側における部分よりも座屈しやすくなる。これにより、複数の閉断面構造140のうちの1つの肉厚変化部115N1よりも車幅方向の内側における閉断面構造143、144の圧壊荷重が、1つの肉厚変化部115N1よりも車幅方向の外側における閉断面構造141、142の圧壊荷重より小さくなる。このため、サイドシル用補強部材100Aを備えるサイドシル1Aは、サイドシル1A全体の変形荷重の増加を防止する又はその増加量を低減することができる。したがって、サイドシル用補強部材100A及びサイドシル1Aは、サイドシル1A全体の変形荷重の増加を防止し又はその増加量を低減しながら、側面衝突時の衝撃エネルギーを有効に吸収することができる。
さらに、本第2の実施の形態におけるサイドシル1A及びサイドシル用補強部材100Aによれば、車幅方向に延びるように内部空間R内に配置されるサイドシル用補強部材100Aが、内部空間R内で支持部30すなわち上側支持部32及び下側支持部34に支持されて安定的に姿勢を維持することができるので、側面衝突によりサイドシル用補強部材100Aに車幅方向の内方に向かう荷重が及ぼされたとき、確実にエネルギーを吸収することができる。
さらに、本第2の実施の形態におけるサイドシル1A及びサイドシル用補強部材100Aによれば、側面衝突によりサイドシル用補強部材100Aに車幅方向の内方に向かう荷重が及ぼされたとき、支持部30が荷重をサイドシルアウター10及びサイドシルインナー20の少なくとも一方に分散することができる。したがって、サイドシル用補強部材100Aが主に衝撃エネルギーを吸収する場合よりも、サイドシル1A全体で側面衝突時の衝撃エネルギーをより有効に吸収することができる。
さらに、本第2の実施の形態におけるサイドシル1A及びサイドシル用補強部材100Aによれば、支持部30への荷重の分散により内方に向かう荷重が小さくなっても、車幅方向に並ぶ複数の閉断面構造140のうちの、支持部30が接続される1つの肉厚変化部115から車幅方向の内側に位置する閉断面構造143、144が圧壊しやすくなることによりサイドシル用補強部材100Aが衝撃エネルギーを効果的に吸収することができ、サイドシル1A全体で側面衝突時の衝撃エネルギーをより有効に吸収することができる。
さらに、本第2の実施の形態におけるサイドシル1A及びサイドシル用補強部材100Aによれば、支持部30への荷重の分散により内方に向かう荷重が小さくなるため、車幅方向に並ぶ前記複数の閉断面構造140のうちの、支持部30が接続される1つの肉厚変化部115から車幅方向の内側に位置する閉断面構造143、144の肉厚を薄くしても、変形荷重が極端に低くなったり、支持部30より内側の閉断面構造143、144が外側の閉断面構造141、142よりも先に圧壊したりすることなく、より、軽量で、衝撃エネルギーを効果的に吸収することができ、サイドシル1A全体で側面衝突時の衝撃エネルギーをより有効に吸収することができる。
(変形例)
以上が本発明に係る主要な2つの実施の形態についての説明であるが、本発明の技術的範囲は、以上に説明した実施の形態に限定されない。すなわち、本発明は、例えば次のような変形例を包含する。なお、同一又は同様の構成には、同一符号を付し、説明を省略又は簡略するものとする。
初めに、本発明による側面衝突時の衝撃エネルギーを有効に吸収することができるという効果は、上記2つの実施の形態のようにサイドシル用補強部材の一対の横壁の両方が肉厚変化部を有するものに限定されず、サイドシル用補強部材の一対の横壁のうちの少なくとも一方の横壁が肉厚変化部を有するものであれば、奏される。
このような変形例は図9に示されている。図9に示すサイドシル1Bは、第1の実施の形態に係るサイドシル用補強部材100の変形例であるサイドシル用補強部材100Bを備える。
サイドシル用補強部材100Bは、一対の横壁110のうちの一方である下側横壁114Bのみが複数の肉厚変化部115を有するものである。すなわち、サイドシル用補強部材100Bの上側横壁112Bは、一定の肉厚を有し(t=一定)、下側横壁114Bのみが、複数の肉厚変化部115を有する。
下側横壁114Bのうち、外側縦壁122との接続位置から第1の肉厚変化部115N1までの部分の肉厚はt1であり、第1の肉厚変化部115N1から第2の肉厚変化部115N2までの肉厚はt2であり、第2の肉厚変化部115N2から第3の肉厚変化部115N3まで肉厚はt3であり、第3の肉厚変化部115N3から内側縦壁124との接続位置までの肉厚はt4である。
すなわち、第1の閉断面構造141の下辺部の肉厚はt1であり、第2の閉断面構造142の下辺部の肉厚はt2であり、第3の閉断面構造143の下辺部の肉厚はt3であり、第4の閉断面構造144の肉厚の下辺部はt4である。
サイドシル用補強部材100Bにおいても、t1>t2≧t3≧t4、かつ、t1-t2≧t2-t3、かつ、t2-t3≧t3-t4なる関係が成立する。
サイドシル用補強部材100B及びサイドシル用補強部材100Bを備えるサイドシル1Bによれば、第1の実施の形態におけるサイドシル用補強部材100に比較して、複数の閉断面構造140の下辺部のみが肉厚を変化しているものの、車幅方向内方への荷重によって、第2の閉断面構造142の下辺部が第1の閉断面構造141の下辺部よりも座屈しやすく、これに伴い、第2の閉断面構造142の下辺部が座屈したことに起因して第2の閉断面構造142が圧壊しやすくなる。同様に、第3の閉断面構造143の下辺部及び第4の閉断面構造144の下辺部も更に座屈しやすくなることに伴い、第3の閉断面構造143及び第4の閉断面構造144も圧壊しやすくなる。
したがって、各閉断面構造140の下辺部すなわち下側横壁114Bのみが複数の肉厚変化部15によって上記の関係で肉厚を変化するものであっても、サイドシル用補強部材100Bを備えるサイドシル1Bに例えば円柱状部材Pが側面衝突した場合に、サイドシル用補強部材100Bは、それぞれの閉断面構造140の圧壊荷重の変化量が、サイドシル1Bへの円柱状部材Pの衝突にともなうサイドシル1B全体の変形荷重の衝突過程毎の増大量を相殺して、サイドシル1B全体の変形荷重の増加を防止することができる。すなわち、サイドシル用補強部材100B及びサイドシル用補強部材100Bを備えるサイドシル1Bは、各衝突過程においてサイドシル1B全体の変形荷重の増加を防止し、変形荷重を略一定値に保ちながら、側面衝突時の衝撃エネルギーを有効に吸収することができる。
本変形例は、一対の横壁110のうちの下側横壁114Bのみが肉厚を変化するものであるが、上記の作用効果は、一対の横壁110のうちの上側横壁112Bのみが肉厚を変化するものであっても、同様である。
次に、本発明による側面衝突時の衝撃エネルギーを有効に吸収することができるという効果は、上記2つの実施の形態のようにサイドシル用補強部材が4つの閉断面構造を有しているものに限定されず、サイドシル用補強部材が少なくとも1枚の中間縦壁を備えて複数の閉断面構造を有しているものであれば、奏される。
このような変形例は図10に示されている。図10に示すサイドシル1Cは、第1の実施の形態に係るサイドシル用補強部材100の変形例であるサイドシル用補強部材100Cを備える。
サイドシル用補強部材100Cは、一対の横壁110のうちの一方である下側横壁114Cのみが1つの肉厚変化部115を有するものである。すなわち、サイドシル用補強部材100Cの上側横壁112Cは、一定の肉厚を有し(t=一定)、下側横壁114Cは、1つの肉厚変化部115すなわち第1の肉厚変化部115N1のみを有する。
さらに、サイドシル用補強部材100Cは、複数の閉断面構造140を有しているが、複数の閉断面構造140の総数は3つである。すなわち、サイドシル用補強部材100Cにおいて、複数の閉断面構造140は、第1の閉断面構造141と第2の閉断面構造142と第3の閉断面構造143とからなる。すなわち、サイドシル用補強部材100Cにおいて、3つの閉断面構造140を区画する中間縦壁130は、2枚である。
サイドシル用補強部材100Cについて、下側横壁114Cの肉厚は、第1の肉厚変化部115N1より車両前後方向外側においてt1であり、第1の肉厚変化部115N1より車両前後方向内側においてt2である。すなわち、第1の閉断面構造141の下辺部の肉厚はt1であり、第2の閉断面構造142及び第3の閉断面構造143の下辺部の肉厚はt2である。
サイドシル用補強部材100Cにおいても、t1>t2なる関係が成立している。
サイドシル用補強部材100C及びサイドシル用補強部材100Cを備えるサイドシル1Cによれば、第1の実施の形態におけるサイドシル用補強部材100に比較して、複数の閉断面構造140の下辺部のみが肉厚を変化し、かつ、第1の肉厚変化部115N1のみを有しているものであるが、車幅方向内方への荷重によって、第1の閉断面構造141の下辺部よりも第2の閉断面構造142の下辺部及び第3の閉断面構造143の下辺部が座屈しやすく、これに伴い、第1の閉断面構造141よりも第2の閉断面構造142及び第3の閉断面構造143が圧壊しやすくなる。
したがって、3つの閉断面構造140のうちの1つの肉厚変化部115よりも車幅方向の内側における閉断面構造142、143の圧壊荷重が、1つの肉厚変化部115よりも車幅方向の外側における閉断面構造141の圧壊荷重より小さくなる。このため、サイドシル用補強部材100Cを備えるサイドシル1Cは、閉断面構造140の圧壊荷重の低下量が側面衝突時のサイドシル1C全体の変形荷重の増大量の少なくとも一部を相殺して、サイドシル1C全体の変形荷重の増加を防止する又はその増加量を低減することができる。
したがって、サイドシル用補強部材100C及びサイドシル1Cは、サイドシル1C全体の変形荷重の増加を防止し又はその増加量を低減しながら、側面衝突時の衝撃エネルギーを有効に吸収することができる。
すなわち、本発明による側面衝突時の衝撃エネルギーを有効に吸収することができるという効果は、サイドシル用補強部材の一対の横壁のうちの少なくとも一方の横壁が少なくとも1つの肉厚変化部を有するものであれば、奏される。
なお、上記の変形例において、複数の閉断面構造140の総数を3つとして説明したが、2つであっても、一対の横壁のうちの少なくとも一方の横壁が少なくとも1つの肉厚変化部を有するものであれば、上記の作用効果を奏する。すなわち、複数の閉断面構造140を区画する中間縦壁130は少なくとも1枚であっても、上記の作用効果を奏する。
次に、本発明による側面衝突時の衝撃エネルギーを有効に吸収することができるという効果は、上記2つの実施の形態のようにサイドシル用補強部材の一対の横壁のそれぞれに含まれる肉厚変化部が車幅方向の同じ位置にあるものに限定されず、一対の横壁のそれぞれに含まれる肉厚変化部が車幅方向の異なる位置にあるものであっても、奏される。
このような変形例は図11に示されている。図11に示すサイドシル1Dは、第2の実施の形態に係るサイドシル用補強部材100Aの変形例であるサイドシル用補強部材100Dと、第2の実施の形態に係る下側支持部34の変形例である下側支持部34Dと、を備える。
サイドシル用補強部材100Dにおいて、一対の横壁110の上側横壁112D及び下側横壁114Dが共に1つの肉厚変化部115を有するものであるが、上側横壁112Dが有する1つの肉厚変化部115(第1の肉厚変化部115N1)と、下側横壁114Dが有する1つの肉厚変化部115(第1の肉厚変化部115N1)は、車幅方向において異なる位置に設けられている。
具体的には、上側横壁112Dが有する第1の肉厚変化部115N1は、上側横壁112Dに第2の中間縦壁132がつながる位置に設けられている。下側横壁114Dが有する第1の肉厚変化部115N1は、下側横壁114Dに第1の中間縦壁131がつながる位置に設けられている。
言い換えれば、第2の閉断面構造142は、第1の閉断面構造141よりも下辺部の肉厚を小さくし、第3の閉断面構造143は、第2の閉断面構造142よりも上辺部の肉厚を小さくする。
下側支持部34Dは、形状に関し第2の実施の形態における下側支持部34と異なり、第1の底部34Da1及び第2の底部34Da2と、第1の縦壁部34Db1及び第2の縦壁部34Db2と、頂部34Dcと、を有する。
第1の底部34Da1及び第2の底部34Da2は、サイドシルアウター10の外側下壁部13cに接続可能となるように、外側下壁部13cに沿って車幅方向に並んでいる。そして、第1の底部34Da1及び第2の底部34Da2は、それぞれ、スポット溶接点Sで外側下壁部13cに接続されている。第2の底部34Da2は、第1の底部34Da1より車幅方向の外側に配置されている。
第1の縦壁部34Db1は、第1の底部34Da1の端縁に接続され、第1の底部34Da1から高さ方向に屈曲して下側横壁114Dの下面近傍まで延びている。同様に、第2の縦壁部34Db2は、第2の底部34Da2の端縁に接続され、第2の底部34Da2から高さ方向に屈曲して下側横壁114Dの下面近傍まで延びている。
頂部34Dcは、下側横壁114Dに沿って車幅方向に延びるとともに、一方側端縁が第1の縦壁部34Db1の上側端縁に接続され、他方側端縁が第2の縦壁部34Db2の上側端縁に接続されている。そして、頂部34Dcは、接合部40が下から貫通して、接合部40によって第2の閉断面構造142の下辺部である下側横壁114Dに接合されている。
下側支持部34Dは、第1の縦壁部34Db1及び第2の縦壁部34Db2が車両前後方向に延びるように内部空間R内に配置される。
サイドシル用補強部材100D及びサイドシル用補強部材100Dを備えるサイドシル1Dによれば、第2の実施の形態におけるサイドシル用補強部材100Aに比較して、上側横壁112Dの第1の肉厚変化部115N1と下側横壁114Dの第1の肉厚変化部115N1とが、車幅方向の異なる位置に配置されているものであるが、下側横壁114Dの第1の肉厚変化部115N1によって第1の閉断面構造141よりも第2の閉断面構造142の方が圧壊しやすくなっており、上側横壁112Dの第1の肉厚変化部115N1によって第2の閉断面構造142よりも第3の閉断面構造143の方が圧壊しやすくなっている。
したがって、サイドシル用補強部材100Dを備えるサイドシル1Dは、閉断面構造140の圧壊荷重の低下量が側面衝突時のサイドシル1D全体の変形荷重の増大量の少なくとも一部を相殺して、サイドシル1D全体の変形荷重の増加を防止する又はその増加量を低減することができる。
したがって、サイドシル用補強部材100D及びサイドシル1Dは、サイドシル1D全体の変形荷重の増加を防止し又はその増加量を低減しながら、側面衝突時の衝撃エネルギーを有効に吸収することができる。
また、下側支持部34D及び下側支持部34Dを備えるサイドシル1Dによれば、第2の実施の形態における下側支持部34に比較して、下側支持部34Dが底部34Da1、34Da2によりサイドシルアウター10に接続されることにより、サイドシル1Dの製造工程においてサイドシル用補強部材100Dの組み付け性を向上することができる。
なお、第2の実施の形態における支持部30においても、頂部32c、34cをサイドシル用補強部材100Aに接合し、底部32a、34aをそれぞれサイドシルアウター10の外側上フランジ11、外側下フランジ12とに接合しておくことによって、サイドシルアウター10側に支持部30及びサイドシル用補強部材100を組み付けることができるので、サイドシル1Aの製造工程における組み付け性を向上することができる。
また、下側支持部34D及び下側支持部34Dを備えるサイドシル1Dによれば、第2の実施の形態における下側支持部34に比較して、第1の底部34Da1と第2の底部34Da2と第1の縦壁部34Db1と第2の縦壁部34Db2とにより頂部34Dcを介してサイドシル用補強部材100Dを支持するので、より安定的に前記サイドシル用補強部材を支持することができる。したがって、車両前後方向に伸びるサイドシル1Dにおいて、車両前後方向全般に渡って下側支持部を設ける必要がなく、下側支持部の重量低減につながり、サイドシル1D全体の重量低減ひいては車両全体の重量低減につながる。
さらに、下側支持部34D及び下側支持部34Dを備えるサイドシル1Dによれば、車両に対する斜め方向の側面衝突によりサイドシル1Dに荷重が及ぼされたときに、サイドシル用補強部材100Dが荷重のうちの車幅方向の内方に向かう荷重によるエネルギーを減少させるとともに、下部接続部34Dは、第1の縦壁部34Db1及び第2の縦壁部34Db2が車両前後方向に延びるように配置されているので、荷重のうちの車両前後方向の荷重によりサイドシル用補強部材100Dが内部空間R内で位置ずれすることを防止することができる。したがって、サイドシル1Dは、車両に対する斜め方向の側面衝突時の衝撃エネルギーを有効に吸収することができる。
また、下側支持部のみならず上側支持部を含む本発明の支持部により車幅方向の内方に向かう荷重をサイドシルアウター及びサイドシルインナーの少なくとも一方に分散することができるという効果は、第2の実施の形態における支持部に限定されず、本変形例のようにサイドシル用補強部材を前記内部空間内で支持するものであり、サイドシルアウター及びサイドシルインナーの少なくとも一方に接続されるものであれば、奏される。すなわち、支持部の形状は、L字状に限定されない。また、支持部は、サイドシルアウターとサイドシルインナーとに挟み込まれるものに限定されない。
次に、本発明による側面衝突時の衝撃エネルギーを有効に吸収することができるという効果は、上記2つの実施の形態のように肉厚変化部が支持部と横壁との接続位置に設けられている場合に限定されず、肉厚変化部が支持部と横壁との接続位置と異なる位置に設けられている場合にも、奏される。
このような変形例は図12及び図13に示されている。図12に示すサイドシル1Eは、第2の実施の形態に係るサイドシル用補強部材100Aの変形例であるサイドシル用補強部材100Eと、第2の実施の形態に係る下側支持部34の変形例である下側支持部34Eと、を備える。
サイドシル用補強部材100Eにおいて、一対の横壁110のうちの両方である上側横壁112E及び下側横壁114Eが共に1つの肉厚変化部115を有するものであるが、上側横壁112Eが有する1つの肉厚変化部115(第1の肉厚変化部115N1)と、下側横壁114Eが有する1つの肉厚変化部115(第1の肉厚変化部115N1)は、それぞれ、上側支持部32が上側横壁112Eに接続される位置よりも車幅方向内側に配置され、下側支持部34Eが下側横壁114Eに接続される位置よりも車幅方向内側に配置される。
具体的には、上側横壁112Eが有する第1の肉厚変化部115N1は、上側横壁112Eと第3の中間縦壁133との接続位置に設けられている一方で、上側支持部32と上側横壁112Eとの接合位置は第2の中間縦壁132の近傍位置である。同様に、下側横壁114Eが有する第1の肉厚変化部115N1は、下側横壁114Eと第3の中間縦壁133との接続位置に設けられている一方で、下側支持部34Eと下側横壁114Eとの接合位置は第2の中間縦壁132と第3の中間縦壁133との略中間位置である。
下側支持部34Eは、下側支持部34の変形例として上述した下側支持部34Dを、高さ方向から見て90度回転したような形状を有するものである。下側支持部34Eは、第1の底部34Ea及び第2の底部34Eaと、第1の縦壁部34Eb及び第2の縦壁部34Ebと、頂部34Ecと、を有する。すなわち、下側支持部34Eは、第1の縦壁部34Eb及び第2の縦壁部34Ebが車幅方向に延びるように配置される。なお、図12において、第1の底部34Ea及び第2の底部34Eaと、第1の縦壁部34Eb及び第2の縦壁部34Ebは、それぞれ、車両前後方向に並んでいることにより図面上重なっているため、同一符号とした。
サイドシル用補強部材100E及びサイドシル用補強部材100Eを備えるサイドシル1Eによれば、側面衝突によりサイドシル用補強部材100Eに車幅方向の内方に向かう荷重が及ぼされたとき、前記荷重が上側支持部32及び下側支持部34Eを通じてサイドシルアウター10及び前記サイドシルインナー20の少なくとも一方に分散するとともに、分散により内方に向かう前記荷重が小さくなっても、上側支持部32及び下側支持部34Eがそれぞれ上側横壁112E及び下側横壁114Eに接続される位置よりも車幅方向内側に配置される1つの肉厚変化部115N1よりも内側に位置する第4の閉断面構造144が圧壊しやすくなることにより衝撃エネルギーを吸収することができ、サイドシル1E全体で、側面衝突時の衝撃エネルギーをより有効に吸収することができる。
また、下側支持部34E及び下側支持部34Eを備えるサイドシル1Eによれば、第2の実施の形態における下側支持部34に比較して、第1の縦壁部34Eb及び第2の縦壁部34Ebが前記車幅方向に延びるように配置されているので、下側支持部34Eが車幅方向に位置ずれすることなく、サイドシル用補強部材100Eは、車幅方向の内方に向かう荷重が及ぼされても下側支持部34Eに安定的に支持されて内部空間R内で適切な位置を維持することができる。したがって、サイドシル用補強部材100Eが側面衝突時の衝撃エネルギーをより確実に吸収することができ、サイドシル1E全体で側面衝突時の衝撃エネルギーをより有効に吸収することができる。
続いて、肉厚変化部が支持部と横壁との接続位置と異なる位置に設けられている場合の変形例として、図13が示されている。図13に示すサイドシル1Eは、第2の実施の形態に係るサイドシル用補強部材100Aの変形例であるサイドシル用補強部材100Fを備える。
サイドシル用補強部材100Fにおいて、一対の横壁110の上側横壁112F及び下側横壁114Fが共に1つの肉厚変化部115を有するものであるが、上側横壁112F及び下側横壁114Fが有する1つの肉厚変化部115(第1の肉厚変化部115N1)の位置は、車幅方向において第1の中間縦壁131と第2の中間縦壁132との間の位置に設けられている。
すなわち、第1の肉厚変化部115N1が設けられる位置は、中間縦壁130が上側横壁112F及び下側横壁114Fに接続される位置ではない。
また、第1の肉厚変化部115N1は、下側支持部34が下側横壁114Fに接続される位置及び上側支持部32が上側横壁112Fに接続される位置よりも車幅方向外側に配置されている。
また、サイドシル用補強部材100Fは、接合部40によって支持部30に接合されていると同時に、サイドシルアウターの外側縦壁部13aにも接合されている。
サイドシル用補強部材100F及びサイドシル用補強部材100Fを備えるサイドシル1Fによれば、第1の肉厚変化部115N1が設けられる位置が中間縦壁130が上側横壁112F及び下側横壁114Fに接続される位置ではないものの、第1の肉厚変化部115N1を有する第2の閉断面構造142並びに第1の肉厚変化部115N1よりも車幅方向の内側に位置する第3の閉断面構造143及び第4の閉断面構造144が圧壊しやすくなるため、サイドシル用補強部材100Fが衝撃エネルギーを吸収することができ、サイドシル1E全体で側面衝突時の衝撃エネルギーを有効に吸収することができる。
また、サイドシル用補強部材100F及びサイドシル用補強部材100Fを備えるサイドシル1Fによれば、サイドシル用補強部材100Fが上側支持部32及び下側支持部34に接合されているだけでなく、サイドシルアウター10とに接合部40で接合されているため、内部空間R内でより安定的に姿勢を維持することができ、側面衝突により車幅方向の内方に向かう荷重による衝撃エネルギーをより有効に吸収することができる。
次に、本発明による側面衝突時の衝撃エネルギーを有効に吸収することができるという効果は、上記2つの実施の形態のようなサイドシルの形状を有するものに限定されず、サイドシル用補強部材が車幅方向に延びる姿勢で支持されるものであれば、奏される。
このような変形例は図14及び図15に示されている。図14に示すサイドシル1Gは、第2の実施の形態に係るサイドシルアウター10及びサイドシルインナー20の変形例であるサイドシルアウター10G及びサイドシルインナー20Gを備える。
サイドシルアウター10Gは、外側突出壁部13Gを備えている。
外側突出壁部13Gは、外側縦壁部13Gaと外側上壁部13Gbと外側下壁部13Gcとを有する。外側上壁部13Gbと外側下壁部13Gcは、それぞれ、第2の実施の形態におけるサイドシルアウター10の外側上壁部13bと外側下壁部13cと同じ態様であるため、説明を省略する。
外側縦壁部13Gaは、概形として、第2の実施の形態における外側縦壁部13aと同じく横断面において車両上下方向に延びる形状を有しているが、車両上下方向の略中間位置に、更に車幅方向の外向きに突出する外側凸部13Gapを有している。
外側突部13Gapは、車両上下方向において、サイドシル1Gが備えるサイドシル用補強部材100Gの外側端部すなわち外側縦壁122が収まる程度の幅を有している。
サイドシルインナー20Gは、内側突出壁部23Gを備えている。
内側突出壁部23Gは、内側縦壁部23Gaと内側上壁部23Gbと内側下壁部23Gcとを有する。内側上壁部23Gbと内側下壁部23Gは、それぞれ、第2の実施の形態におけるサイドシルインナー10の内側上壁部23bと内側下壁部23cと同じ態様であるため、説明を省略する。
内側縦壁部23Gaは、概形として、第2の実施の形態における内側縦壁部23aと同じく横断面において車両上下方向に延びる形状を有しているが、車両上下方向の略中間位置であって外側凸部13Gapに車幅方向に対向する位置に、更に車幅方向の内向きに突出する内側凸部23Gapを有している。
内側凸部23Gapは、車両上下方向において、サイドシル1Gが備えるサイドシル用補強部材100Gの内側端部すなわち内側縦壁124が収まる程度の幅を有している。
本変形例において、サイドシル用補強部材100Gは、第2の実施の形態におけるサイドシル用補強部材100Aと同じ態様を有しているため、説明を省略する。
サイドシルアウター10G及びサイドシルインナー20G並びにそれらを備えるサイドシル1Gによれば、サイドシル用補強部材100Gが支持部30によって車幅方向に延びる姿勢で支持されていることに加えて、サイドシル用補強部材100Gの車幅方向の両側端部が外側凸部13Gap及び内側凸部23Gapにはまり込むことにより車幅方向に延びる姿勢で支持されることができる。すなわち、サイドシル用補強部材100Gは、内部空間R内でより安定的に車幅方向に延びる姿勢を維持することができる。したがって、サイドシル1Gに側面衝突により車幅方向の内方に向かう荷重が及ぼされても、当該荷重によりサイドシル用補強部材100Gが内部空間R内で位置ずれすることを防止することができ、サイドシル用補強部材100Gが側面衝突時の衝撃エネルギーをより確実に吸収することができ、サイドシル1G全体で側面衝突時の衝撃エネルギーをより有効に吸収することができる。
続いて、サイドシル用補強部材が車幅方向に延びる姿勢で支持されるものの変形例が、図15に示されている。図15は、本発明に係るサイドシルの他の変形例を示す断面図である。
さらに、本発明による側面衝突時の衝撃エネルギーを有効に吸収することができるという効果は、サイドシル用補強部材がサイドシルの内部空間内に設けられている場合に限定されず、サイドシル用補強部材がサイドシルの本体部よりも外側に設けられてサイドシルの本体部に支持されている場合にも、奏される。
図15において、サイドシル1Hは、サイドシル押出形材50とサイドシル用補強部材100Hとを備える。
サイドシル押出形材50は、サイドシル1Hの本体部を構成する部材である。サイドシル押出形材50は、第1及び第2の実施の形態におけるサイドシルアウター及びサイドシルインナーのような鋼製の2枚の板材を車幅方向に重ね合わせて内部空間を形成するようなものではなく、例えばアルミニウムを押し出してサイドシルとしての形状に形成された一体の部材である。
サイドシル押出形材50は、車両上下方向の下方にサイドシル用補強部材100Hを接合するための下側フランジ51を有する。
下側フランジ51は、サイドシル押出形材50の車幅方向の外側面から連続して下方に延びるように形成されている。
そして、サイドシル用補強部材100Hは、その外側端部を接合部40によって下側フランジ51に接合される。
サイドシル用補強部材100Hは、内側端部近傍に、車両の構造部材例えばフロアクロスメンバーFに接合部40によって接合される。
すなわち、サイドシル用補強部材100Hは、サイドシル1Hの本体部を構成するサイドシル押出形材50の外側において、サイドシル用補強部材が車幅方向に延びる姿勢でサイドシル押出形材50に支持されている。
サイドシル用補強部材100Hの構成は、第1の実施の形態におけるサイドシル用補強部材100と同じ構成であるので説明を省略するが、複数の肉厚変化部を有し車幅方向の内方にかけて肉厚を順に小さくすることにより圧壊荷重を順に小さくする複数の閉断面構造を有する。
サイドシル1Hによれば、側面衝突により車幅方向の内方に向かう荷重が及ぼされても、サイドシル用補強部材100Hがサイドシル押出形材50の外側において車幅方向に延びる姿勢でサイドシル押出形材50に支持されているため、サイドシル用補強部材100Hがサイドシル1H全体の変形荷重の増加を防止し又はその増加量を低減しながら、側面衝突時の衝撃エネルギーを有効に吸収することができる。
なお、サイドシル押出形材50とサイドシル用補強部材100Hとは、一体に押出成形されてもよい。