JP7241479B2 - トイレ便器用コーティング剤 - Google Patents

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Description

本発明は、トイレ便器の表面に対して優れた防汚効果を付与できるトイレ便器用コーティング剤に関する。
家庭や商業施設等において、トイレを衛生的な状態に保つことは、居住者や使用者等の健康維持はもちろん、快適で気分よく生活する上で重要である。従来、トイレを衛生的な状態にする製品の一つとして、トイレ用洗浄剤が開発され使用されている。しかしながら、トイレ用洗浄剤では、トイレ便器の表面に糞便汚れが付着し難くなる効果(防汚効果)の点では限界がある。そこで、従来、トイレの便器の表面をコーティングすることにより、防汚効果を付与することが検討されている。
従来、金属、ガラス、陶器等の硬質表面に対して防汚効果を付与する方法としては、撥水化処理、及び親水化処理が知られている。
撥水化処理は、硬質表面に撥水性を付与することにより、水分を含む汚垢を反発させることにより付着し難くすることができる。このような撥水化処理は、衣類、自動車の塗装面等に広く適用されているが、トイレ便器の撥水処理への使用も検討されている。例えば、特許文献1には、フッ素系両新媒性物質を使用することによって、トイレ便器を撥水化処理できることが開示されている。
一方、親水化処理は、硬質表面に親水性を付与することにより、硬質表面の水に対する接触角を低下させ、水分を含む汚垢を流れ易くすることにより付着し難くすることができる。このような親水化処理は、ガラスや鏡の防曇や帯電防止等に広く適用されているが、トイレ便器の親水化処理への使用も検討されている。例えば、特許文献2には、特定のアセチレングリコールのアルキレノキサイド付加物を使用することによって、トイレ便器を親水化処理できることが開示されている。
しかしながら、糞便には、腸内細菌、油性物質、親水性物質等が混在しており、他の汚垢とは組成が著しく異なるため、従来の一般的な硬質表面に対する撥水化処理や親水化処理では、トイレ便器の糞便汚れに対する防汚効果は十分とはいえない。また、特許文献1及び2では、トイレ便器の表面処理によって防汚効果を付与できることが開示されているが、消費者ニーズの高まりに追従するために、防汚効果を向上させた処理剤の開発が望まれている。
特開2000-144177号公報 特開2006-307148号公報
本発明の目的は、トイレ便器の表面に対して、優れた防汚効果を付与できるトイレ便器用コーティング剤を提供することである。
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、ポリオキシアルキレン基を含むグラフト鎖を有し、且つアニオン性基を有するグラフトポリマーを用いてトイレ便器をコーティングすることにより、糞便汚れに対して格段に優れた防汚効果を付与できることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1.ポリオキシアルキレン基を含むグラフト鎖を有し、且つアニオン性基を有するグラフトポリマーを含む、トイレ便器用コーティング剤。
項2. ポリオキシアルキレン基を含むグラフト鎖を有し、且つアニオン性基を有するグラフトポリマーを含むコーティング剤を、トイレ便器の表面に接触させる、トイレ便器のコーティング方法。
本発明によれば、トイレ便器の表面を特定の構造のグラフトポリマーでコーティングすることにより、糞便汚れに対して格段に優れた防汚効果を付与できるので、トイレ便器を衛生的な状態に保つことが可能になる。
1.トイレ便器用コーティング剤
本発明のトイレ便器用コーティング剤は、ポリオキシアルキレン基を含むグラフト鎖を有し、且つアニオン性基を有するグラフトポリマーを含むことを特徴とする。以下、本発明のトイレ便器用コーティング剤について詳述する。
[グラフトポリマー]
本発明のトイレ便器用コーティング剤では、ポリオキシアルキレン基を含むグラフト鎖を有し、且つアニオン性基を有するグラフトポリマーを使用する。当該グラフトポリマーは、トイレ便器の表面に接触させると、トイレ便器の表面に付着してコーティングした状態になることにより、糞便汚れに対して格段に優れた防汚効果を付与する。
前記グラフトポリマーにおいて、グラフト鎖を構成するポリオキシアルキレン基の構造については、特に制限されないが、例えば、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのブロック又はランダム付加物等が挙げられる。これらのポリオキシアルキレン基の中でも、好ましくはポリオキシエチレンが挙げられる。また、ポリオキシアルキレン基におけるオキシアルキレン基の付加モル数としては、例えば2~300、好ましくは2~200、より好ましくは2~100、更に好ましくは5~100、特に好ましくは5~30、最も好ましくは5~20が挙げられる。
また、前記グラフトポリマーにおいて、アニオン性基の種類については、特に制限されないが、例えば、カルボキシ基、スルホ基、これらの基の塩等が挙げられる。前記グラフトポリマーにおいて、アニオン性基は、主鎖又はグラフト鎖のいずれに結合していてもよいが、主鎖に結合していることが好ましい。
前記グラフトポリマーの重量平均分子量については、特に制限されないが、例えば、500~100万、好ましくは1000~50万、更に好ましくは1000~10万が挙げられる。本発明において、グラフトポリマーの重量平均分子量は、GPC法によって、ポリスチレンスルホン酸を標準物質として求められる値である。
前記グラフトポリマーの好適な具体例として、下記一般式(1)に示す単量体とマレイン酸との共重合体又はその塩が挙げられる。なお、当該共重合体又はその塩の単量体として含まれるマレイン酸は、無水物であってもよい。
Figure 0007241479000001
一般式(1)において、R1は炭素数2~5のアルケニル基を示す。炭素数2~5のアルケニル基としては、具体的には、ビニル基、アリル基、メタリル基等が挙げられ、好ましくはアリル基である。
一般式(1)において、AOは炭素数2~3のオキシアルキレン基を示す。
一般式(1)において、n1は、オキシアルキレン基の付加モル数であり、2~300、好ましくは2~200、より好ましくは2~100、更に好ましくは5~100、特に好ましくは5~30、最も好ましくは5~20を示す。
一般式(1)において、R2は水素原子、又は炭素数1~3のアルキル基を示す。R2として、好ましくはメチル基が挙げられる。
一般式(1)に示す単量体とマレイン酸との共重合体おいて、一般式(1)に示す単量体とマレイン酸とのモル比については、特に制限されないが、例えば、一般式(1)に示す単量体/マレイン酸として、30/70~70/30が挙げられる。
一般式(1)に示す単量体とマレイン酸との共重合体の好適な具体例として、無水マレイン酸-メトキシポリエチレングリコールアリルエーテル共重合体が挙げられる。
また、前記グラフトポリマーの他の好適な具体例として、下記一般式(2)に示す単量体と、下記一般式(3a)に示す単量体及び/又は下記一般式(3b)に示す単量体との共重合体又はその塩が挙げられる。
Figure 0007241479000002
Figure 0007241479000003
Figure 0007241479000004
一般式(2)において、R3及びR4は、同一又は異なって、水素原子、又はメチル基を示す。
一般式(2)において、m1は、0~2の数を示す。
一般式(2)において、AOは炭素数2~3のオキシアルキレン基を示す。
一般式(2)において、n2は、オキシアルキレン基の付加モル数であり、2~300、好ましくは2~200、より好ましくは2~100、更に好ましくは5~100、特に好ましくは5~30、最も好ましくは5~20を示す。
一般式(2)において、R5は、炭素数1~3のアルキル基を示す。
一般式(3a)において、R5、R6、及びR7は、同一又は異なって、水素原子、メチル基、又は基-(CH2)m2COOM1(m2は0~2の数を示し、M1は水素原子又は陽イオンを示す)を示す。
一般式(3a)に示す単量体とし、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、無水マレイン酸、マレイン酸、無水イタコン酸、イタコン酸、無水シトラコン酸、シトラコン酸、フマル酸、これらの塩等が挙げられる。塩としては、具体的には、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アミン塩等が挙げられる。
一般式(3b)において、R8は、水素原子、又はメチル基を示す。
一般式(3b)において、M2は水素原子又は陽イオンを示す。
一般式(2)に示す単量体と一般式(3a)に示す単量体との共重合体又はその塩の場合には、アニオン性基としてカルボキシル基又はその塩を有するグラフトポリマーになる。また、一般式(2)に示す単量体と一般式(3b)に示す単量体との共重合体又はその塩の場合には、アニオン性基としてスルホ基又はその塩を有するグラフトポリマーになる。
一般式(2)に示す単量体と、下記一般式(3a)に示す単量体及び/又は一般式(3b)に示す単量体との共重合体において、これらのモル比については、特に制限されないが、例えば、一般式(2)に示す単量体/下記一般式(3a)に示す単量体及び/又は一般式(3b)に示す単量体として、0.1/100~100/100、好ましくは10/100~60/100が挙げられる。
前記グラフトポリマーの中でも、好ましくは一般式(1)に示す単量体とマレイン酸との共重合体又はその塩、更に好ましくは無水マレイン酸-メトキシポリエチレングリコールアリルエーテル共重合体又はその塩が挙げられる。
前記グラフトポリマーは、公知の合成方法によって得ることができる。また、前記グラフトポリマーとしては、例えば、商品名「マリアリムAKM-1511-60」(日油株式会社)等として市販されており、本発明では、前記グラフトポリマーとして市販品を使用することができる。
本発明のトイレ便器用コーティング剤における前記グラフトポリマーの濃度については、後述する使用時の濃度を満たすように適宜設定すればよい。
例えば、本発明のトイレ便器用コーティング剤が、希釈されることなく、そのままトイレ便器の表面に適用される態様(以下、「非濃縮タイプ」と表記することもある)である場合には、本発明のイレ便器用コーティング剤における前記グラフトポリマーの濃度として、例えば0.000001~99重量%、好ましくは0.000002~80重量%、更に好ましくは0.00001~60重量%が挙げられる。
また、例えば、本発明のトイレ便器用コーティング剤が、水で希釈された後にトイレ便器の表面に適用される態様(以下、「濃縮タイプ」と表記することもある)である場合には、本発明のトイレ便器用コーティング剤における前記グラフトポリマーの濃度は、希釈後の濃度が前記非濃縮タイプにおける前記グラフトポリマーの濃度の範囲になるように、設定される希釈倍率に応じて適宜設定すればよい。本発明のトイレ便器用コーティング剤が濃縮タイプである場合、設定される希釈倍率としては、例えば、10~1000000倍程度、好ましくは100~500000倍程度、更に好ましくは1000~100000倍程度が挙げられる。
[その他の成分]
本発明のトイレ便器用コーティング剤は、前記グラフトポリマー以外に、他の添加剤や基剤を含んでいてもよい。このような添加剤や基剤としては、例えば、水、1価低級アルコール、多価アルコール、界面活性剤、漂白剤、香料、消臭剤、着色剤、可溶化剤、殺菌剤、キレート剤、増量剤、溶解性調整剤、充填剤、pH調整剤、増粘剤、無機系ビルダー、有機系ビルダー、酵素等が挙げられる。
本発明のトイレ便器用コーティング剤が非濃縮タイプである場合には、水;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等の炭素数2~5の1価アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール等の水性基剤を配合し、前記グラフトポリマーが前述する濃度になるように調整すればよい。
また、本発明のトイレ便器用コーティング剤が濃縮タイプである場合には、前述する基材や添加剤を配合し、設定される希釈倍率に応じて前記グラフトポリマーの濃度を適宜調整して、液状、半固形状、固形状のいずれの形状にすればよい。
[使用方法]
本発明のトイレ便器用コーティング剤は、トイレ便器の表面(ボウル部の表面)に対して前記グラフトポリマーをコーティングさせ、糞便汚れに対する防汚効果を付与する目的で使用される。
前記グラフトポリマーをトイレ便器の表面にコーティングさせるには、前述する濃度に調整した前記グラフトポリマーをトイレ便器の表面に接触させればよい。本発明のトイレ便器用コーティング剤が非濃縮タイプである場合には、本発明のトイレ便器用コーティング剤をそのままトイレ便器の表面に接触させればよい。また、本発明のトイレ便器用コーティング剤が濃縮タイプである場合には、本発明のトイレ便器用コーティング剤を設定された希釈倍率になるように水で稀釈してトイレ便器の表面に接触させればよい。
本発明のトイレ便器用コーティング剤をトイレ便器の表面に接触させるには、トイレ便器の表面に対して、本発明のトイレ便器用コーティング剤を噴霧、塗布、流水等を行えばよい。本発明のトイレ便器用コーティング剤をトイレ便器の表面に接触させる際には、必要に応じてブラシでブラッシングを行ってもよい。
本発明のトイレ便器用コーティング剤の1回当たりの使用量については、トイレ便器の表面に接触させる方法等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、1回当たりの使用量として、前記グラフトポリマーが0.3~3000mg程度となる量が挙げられる。
また、本発明のトイレ便器用コーティング剤を用いて、前記グラフトポリマーをコーティングさせたトイレ便器は、トイレの使用によって徐々に前記グラフトポリマーが流出するので、例えば、1~8週間程度に1回の頻度で本発明のトイレ便器用コーティング剤を使用してコーティングを行うことが望ましい。また、本発明のトイレ便器用コーティング剤をフラッシュ水に含有させた状態にしておき、トイレの使用時に前記グラフトポリマーがトイレ便器表面にコーティングできるようにしておくことにより、コーティング状態を維持し、優れた防汚効果を持続させることもできる。
2.トイレ便器のコーティング方法
本発明のトイレ便器のコーティング方法は、前記グラフトポリマーを含むトイレ便器用コーティング剤をトイレ便器の表面に接触させることを特徴とする。本発明のトイレ便器のコーティング方法によって、トイレの便器の表面に対して優れた防汚効果を付与することが可能になる。
本発明のトイレ便器のコーティング方法の具体的態様については、前記「1.トイレ便器用コーティング剤」の欄に記載の通りである。
以下、実施例を挙げて、本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
試験例1
先ず、以下に示す試験液を準備した。
グラフトポリマー含有液:無水マレイン酸-メトキシポリ(n=9)エチレングリコールアリルエーテル共重合体を60重量%含む液、商品名「マリアリムAKM-1511-60」(日油株式会社)
イソプレングリコール含有液:イソプレングリコール99重量%含有液、商品名「IPG-S」(株式会社クラレ)
ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート含有液:商品名「ブラウノンOT-106」(青木油脂工業株式会社)
ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート含有液:商品名「ブラウノンOT-320」(青木油脂工業株式会社)
ポリオキシエチレンステアリルエーテル含有液:商品名「ブラウノンSR-720」(青木油脂工業株式会社)
ポリグリセリン脂肪酸エステル含有液:商品名「グリサーフDP-9」(青木油脂工業株式会社)
ポリオキシエチレン合成アルコールエーテル含有液:商品名「ファインサーフNE-50」(青木油脂工業株式会社)
ポリエーテル変性シリコン含有液:商品名「SH3771M」(東レ・ダウコーニング株式会社)
プロピレングリコールモノリシノレート含有液:商品名「PGMR」(伊藤製油株式会社)
アクリルポリマー含有液:アクリルポリマー60重量%含有液、商品名「ポリフローKL-850」(共栄社化学株式会社)
両新媒性オリゴマー含有液:両新媒性オリゴマー14重量%含有液、商品名「ポリフローKL-900」(共栄社化学株式会社)
ポリエチレンオキサイド含有液:ポリエチレンオキサイド96重量%含有液、商品名「アルコックスE-30」(名成化学工業株式会社)
アセチレングリコール含有液:アセチレングリコール100重量%含有液、商品名「サーフィノール485」(日信化工株式会社)
衛生陶器のカットタイル(KYタイルP4-100、日本テストパネル株式会社製、1cm×5cm、厚み0.5cm)をアセトンで洗浄した後に、蒸留水で洗浄し、自然乾燥を行った。乾燥後のカットタイルに、前記試験溶液2滴(約40μl)を滴下して全体に塗り広げた後に自然乾燥させた。その後、試験溶液で処理したカットタイルの表面に、疑似糞便としてオレイン酸を3か所(1カ所当たり0.02g)に滴下し、この状態のカットタイルを、常温の蒸留水150mlを入れた300ml容のビーカーの底に3秒間かけて沈め、静置した。カットタイルをビーカーの底に沈めた時点から、3か所の疑似糞便が全て剥がれるまでの時間を計測し、以下の判定基準に従って、防汚効果を評価した。
<防汚効果の判定基準>
◎:3か所の疑似糞便が全て剥がれるまでに要した時間が30秒以下である。
○:3か所の疑似糞便が全て剥がれるまでに要した時間が30秒超60秒以下である。
×:3か所の疑似糞便が全て剥がれるまでに要した時間が60秒超である。
得られた結果を表1に示す。従従来、硬質表面の親水化処理に使用されている処理液である比較例1~12では、疑似糞便に対する防汚効果が不十分であった。これに対して、ポリオキシアルキレン基を含むグラフト鎖を有し、且つ主鎖にアニオン性基を有するグラフトポリマーを含有する液を使用した実施例1の場合には、疑似糞便に対する防汚効果が格段に優れていた。
Figure 0007241479000005

Claims (2)

  1. ポリオキシアルキレン基を含むグラフト鎖を有し、且つアニオン性基を有するグラフトポリマー(ただし、オルガノポリシロキサン単位を側鎖に有するグラフト共重合体を除く)を含む、トイレ便器のボウル部用コーティング剤。
  2. ポリオキシアルキレン基を含むグラフト鎖を有し、且つアニオン性基を有するグラフトポリマー(ただし、オルガノポリシロキサン単位を側鎖に有するグラフト共重合体を除く)を含むコーティング剤を、トイレ便器の表面に接触させる、トイレ便器のボウル部のコーティング方法。

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