JP7240231B2 - フィルタ装置 - Google Patents

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本発明は帯域通過フィルタ装置に関する。
近年、広帯域で高い減衰特性を備える帯域通過フィルタ(BPF)への要求が高まっている。そこで、広帯域を確保できる誘電体フィルタと、高い減衰特性を備えるSAWフィルタとを組み合わせた複合フィルタが提案されている(例えば特許文献1)。
特許文献1には、誘電体ノッチフィルタと、誘電体ノッチフィルタの減衰帯域と減衰帯域を一致させたSAWフィルタ(表面弾性波フィルタ)とが直列接続された複合フィルタが開示されている。
特開2003-179463号公報
さらに広帯域で高い減衰特性を備えるフィルタ装置が求められている。
本発明は、かかる事情に鑑みて案出されたものであり、その目的は、広帯域で高い減衰特性を備えるフィルタ装置を提供することにある。
本開示の一態様としてのフィルタ装置は、第1および第2信号端子と、第1~第3並列腕と、第1~第3共振器とを備える。第1~第3並列腕は、第1および第2信号端子の間を電気的に接続する。第1共振器は、前記第1並列腕の途中に直列に接続された、共振点と反共振点とを備えるものである。前記第2共振器は、前記第2並列腕に並列に接続された、共振点と反共振点とを備えるものである。前記第3共振器は、少なくとも1つあり、前記第3並列腕の途中に直列に接続され、共振点のみを備えたものである。そして、前記第1共振器の共振点の周波数をf1r,反共振点の周波数をf1a,前記第2共振器の共振点の周波数をf2r,反共振点の周波数をf2a,前記第3共振器の共振点の周波数をf3rとしたときに、f2r<f2a<f3r<f1r<f1aを満たす。
上記の構成からなるフィルタ装置は、広帯域であり、かつ、高い減衰特性を有する。
本開示の1実施形態に係るフィルタ装置の回路図である。 図2(a)~図2(d)はフィルタ特性を示す線図である。 フィルタ装置の断面図である。 図1の変形例を示す回路図である。 図4に示すフィルタ装置のフィルタ特性を示す線図である。 図3の変形例を示す要部断面図である。 図1の変形例を示す回路図である。 本開示のフィルタ装置における結合行列の一例を示す図である。 比較例に係るフィルタ装置のフィルタ特性を示す線図である。
以下、本開示の実施形態に係るフィルタ装置について図面を参照して説明する。なお、以下の説明で用いられる図は模式的なものであり、図面上の寸法比率等は現実のものとは必ずしも一致していない。
また、変形例等において、既に説明された実施形態と共通または類似する構成について、既に説明された実施形態と共通の符号を用い、図示や説明を省略することがある。さらに第1共振腕3a,第2共振腕3b・・のように関連する構成に共通する説明を行なう際には、単に共振腕3とし、「第1」,「第2」等の表記や「a」,「b」等の表記を省略することがある。
図1は、本開示の一実施形態に係るフィルタ装置1の回路図を示すブロック図である。図1に示すように、フィルタ装置1は、信号端子P(第1信号端子P1,第2信号端子P2)と、共振腕3(第1~第3並列腕3(3a~3c))と、共振器5(第1~第3共振器5a~5c)とを備える。
信号端子Pは、高周波信号を入出力するためのポートである。以下の説明では、第1信号端子P1を入力側,第2信号端子P2を出力側として説明する。
第1信号端子P1と第2信号端子P2との間には第1並列腕3a,第2並列腕3b,第3並列腕3cとが並列接続されている。
そして、第1並列腕3aには、その途中に第1共振器5aが直列接続されている。第1共振器5aは、共振点と反共振点とをもつ共振器であり、それぞれの周波数はf1r,f1aである。
第2並列腕3bには、その途中に第2共振器5bが並列接続されている。第2共振器5bは第2並列腕3bと基準電位との間に接続されていると言い換えることもできる。このような第2共振器5bは、共振点と反共振点とをもつ共振器であり、それぞれの周波数はf2r,f2aである。
第3並列腕3cには、その途中に少なくとも1つの第3共振器5cが直列接続されている。第3共振器5は共振点のみを有しており、その周波数はf3rである。第3共振器5cは複数あってもよく、互いに直列接続させてもよい。また、共振器3cを複数設ける場合には、共振器3c間に両者の結合を調整するための容量を追加してもよい。この例では、第3共振器5cを4個直列接続した場合について示している。
ここで、個々の共振器3の共振周波数,反共振周波数は以下の関係を満たす。
f2r<f2a<f3r<f1r<f1a
なお、第3共振器5cが複数個あり、それぞれの共振周波数f3rが互いに異なっている場合には、いずれの値もf2aよりも大きく、f1rよりも小さくしてもよい。複数個の第3共振器5cを直列接続してなる1つのフィルタとしての共振周波数をf3rとしてもよい。
このように、フィルタ装置1は、第1~第3共振器5a~5cが並列接続された構成となっている。このような構成とすることで、個々の共振器3の結合を自由に調整することができ、その結果、異なる性質の共振器を接続しても全体としてのフィルタ特性を実現することができる。
図2に第1共振器5a、第2共振器5bとして、SAW共振子を、第3共振器5cとしてQ値150のLTCCフィルタ(λ/4共振器)を用い、第3共振器5cを4個直列接続した場合のフィルタ特性についてシミレーションした結果を示す。なお、SAW共振子は表面弾性波(Surface Acoustic Wave)を用いた共振子であり、LTCCフィルタは低
温同時焼成セラミックス(Low Temperature Co-fired Ceramics)を用いた多層回路基板
に形成されるフィルタを指すものとする。第3共振器5cとしてλ/4共振器を用いる場合には、並列腕3cに基準電位に繋がるλ/4線路を設けることになる。したがって、第3並列腕3cに複数のλ/4線路が並列接続されているとも見ることができる。図中において、実線は挿入損失(S21)を、破線は反射損失(S11)を示している。
図2において横軸は周波数(単位:GHz)、縦軸は減衰特性(単位:dB)を示している。図2(a)は第1共振器5aの周波数特性を、図2(b)に第2共振器5bの周波数特性を、図2(c)に第3共振器5cを4個直列接続した共振器の周波数特性を、図2(d)にはフィルタ装置1の周波数特性をそれぞれ示している。図中からも明らかなように、第1共振器5aの反共振点(f1a)と第2共振器5bの共振点(f2r)とが、第3共振器5cの帯域の肩に位置している。特に、第2共振器5bは共振点および反共振点をもち、かつ並列に接続されていることから、帯域の肩に共振点(f2r)を位置させることができ、帯域内の特性を維持することができる。そして、第3共振器5cの個々の共振点(f3r1~f3r4)は第1共振器5aの反共振点(f1a)と第2共振器5bの共振点(f2r)との間に位置している。
そして、図2(d)からも明らかなように、第3共振器5cの広帯域の特性は維持しつつも、第1共振器5a,第2共振器5bにより減衰特性を高め、急峻な肩特性を実現していることが分かった。また、異なる種類(性質)の共振器を組み合わせても良好なフィルタ特性を実現できることを確認した。
ここで、図1に示すように、共振器5の両側には、容量やインダクタを介在させてもよい。この場合には、この容量・インダクタにより各共振器5間の結合を調整することができる。
なお、フィルタ装置1の特性は、各共振器5間の結合を結合行列により設計している。本特性を出すためには、フィルタの通過帯域よりも高周波数側に減衰極を有する共振器(第1共振器5a)と、通過帯域よりも低周波数側に減衰極を有する共振器(第2共振器5b)と、通過帯域を維持する共振器(第3共品器5c)とが互いに結合しないようにする。
そして、フィルタとしての通過帯域を形成するためには、各並列腕3の最も第2信号端子P2側に位置する共振器5の位相が重要となる。そこで、例えば、図8に示す結合行列を実現させるよう、容量やインダクタを介在させる。この例では、第2信号端子P2側には全て容量が直列接続されている。後述するが、第3共振器5cの数が偶数個の場合には容量を挿入するとよい。
図1に示す場合は、第2信号端子P2における直前の素子は、すべて容量が選択されてい
る。ただし、全て容量でなくてもよい。例えば、第1共振器5aと、第2共振器5bとの両側に位置する素子をすべて容量とした場合には、第3共振器5cの数が奇数のときには、共振器5cの第2信号端子P2における直前の素子は、インダクタとなり、第3共振器5cの数が偶数のときには容量となる。
なお、この例では複数の第3共振器5c内において飛び越し結合をさせていないが、減衰極を増やすために飛び越し結合を設けてもよい。例えば、図1において第3共振器5c
のうち最も第1信号端子P1側に位置する共振器と、最も第2信号端子P2側に位置する共振器との間にインダクタ性の飛び越し結合を設けてもよい。
次に、上述の構成を実現する具体的な構成について説明する。図3はフィルタ装置1の断面図を示す。フィルタ装置1は、誘電体基板10と、誘電体基板10の上面に実装された機能部品20と機能部品30とを備える。
誘電体基板10は複数の誘電体層11が積層されてなる。誘電体層11は特に限定されないが、例えばチタン酸バリウム等のセラミック材料からなる、誘電体層11を構成する材料は、所望のフィルタ特性,サイズを実現できる誘電率、tanδを備える材料を選択してもよい。
誘電体層11の上には、各種導体パターン13が形成されている。これらの導体パターン13と誘電体層11とにより第3共振器5cであるλ/4共振器等が形成されたり、結合を調整するための容量やインダクタが形成されたり各共振器5間を接続する配線が形成されたりする。また、誘電体層11を厚み方向に貫通する貫通導体15により、層間の電気的接続を実現することができる。また、λ/4共振器を構成する際には、一般的に使用されているステップ型λ/4共振器などの小型共振器を用いても良い。さらに、高Q化の
ため、一部にλ/2共振器や同軸共振器を用いても良い。
誘電体基板10の下面には複数のパッド導体17が形成されている。これらパッド導体15がフィルタ装置1と外部回路との電気的接続を可能とする。例えば、パッド導体17Sが高周波信号の入出力を可能とする端子Pとして機能し、パッド導体17Gが基準電位に接続されるグランド端子として機能する。
そして、機能部品20は、圧電基板を含む基板21と、基板21の圧電基板に形成されたIDT電極23とを含む。すなわち、機能部品20は、SAW共振子としての第1共振器3aを実現する構成となっている。
圧電基板としては、タンタル酸リチウム単結晶、ニオブ酸リチウム単結晶、水晶等を用いることができる。基板21は、圧電基板単体でもよいし、薄層状の圧電基板を直接または間接的に支持する支持基板とを合わせた複合基板であってもよい。薄層状の圧電基板を用いる場合には、3GHz、5GHz等の高周波帯にも対応が可能となる。支持基板としてはSi基板やサファイア基板を用いることができる。IDT電極23は、圧電基板の上面に導体層をパターニングして形成されたものであり、互いに異なる電位に接続される電極指が互い違いに配列されたものである。なお、IDT電極の電極指の配列方向の両側には、反射器電極を含んでいてもよい。
同様に機能部品30も、圧電基板を含む基板31と、基板31の圧電部に形成されたIDT電極33とを含み、SAW共振子としての第2共振器3bを実現する構成となっている。
結合を調整するための容量やインダクタは、誘電体基板10側に設けてもよいし、機能部品20,機能部品30の側に設けてもよい。
このような構成により、図1に示す回路構成を実現することができる。なお、機能部品20,30は、IDT電極23,33を空間内に収容するカバー25,35を備えている。カバー25,35はいわゆるWLP(ウェハレベルパッケージ)を実現するもので、樹脂材料等で形成されている。このカバー25,35にCu等の導体パターンで結合を調整するための容量やインダクタを形成する場合には、フォトリソ工程を用いることができるので、精密なパターニングが可能となる。
ここで、共振器5を並列接続した場合には、個々の共振器5間の結合を自由に設計できる一方で、1つの共振腕3における共振器5の特性のばらつきが他の全ての共振腕3における共振器5に影響することとなる。これに対して、機能部品20,30を精密な導体パターニングが可能なWLP型のカバー25,35を備える場合には、各並列腕3における特性制御を精密にすることができるものとなる。
<変形例>
図1に示す例では、第3共振器5cが4個、すなわち偶数個備える場合について説明したが、奇数個であってもよい。図4に第3共振器5cを1個(奇数個)備えるフィルタ装置1Aの回路図を示す。以下、フィルタ装置1Aにおいて、フィルタ装置1と異なる点についてのみ説明し、同様の構成についての説明は省略する。
フィルタ装置1では、第2並列腕3bにおいて、第2共振器5bの両側に位置する結合調整用の素子が共に容量であったのに対して、フィルタ装置1Aでは、第2共振器5bの第1信号端子P1側には容量を、第2信号端子P2側にはインダクタを直列接続している。
第3共振器5bが奇数個の場合には、位相特性等を勘案すると、結合の調整の一方をインダクタにする必要がある。
このような構成のフィルタ装置1Aのフィルタ特性を図5に示す。図5において、横軸は周波数(単位:GHz),縦軸は減衰量(単位:dB)であり、実線は挿入損失を、破線は反射損失を示している。図5からも明らかなように、広い通過帯域と急峻な肩特性とを実現できていることが確認された。
なお、比較例として、フィルタ装置1Aにおいて、第2共振器5bの第2信号端子P2側のインダクタを容量に変えたモデルを作製した。この比較例にかかるフィルタ特性を図9に示す。図9において、横軸は周波数(単位:GHz),縦軸は減衰量(単位:dB)であり、実線は挿入損失を、破線は反射損失を示している。
図9に示す通り、比較例にフィルタ装置によれば通過帯域内に矢印で示すリップル(減衰極)が位置してしまうことが分かった。この例では、第3共振器5cの個数は1であったが、2,3の場合も同様に第2共振器5bの第2信号端子P2側に容量を配置した場合とインダクタを配置した場合についてフィルタ特性を測定した。その結果、第3共振器5cの個数が奇数の場合には共通して、インダクタを配置する必要があり、偶数の場合には容量を配置する必要があることが分かった。
<変形例>
図3に示す例では機能部品20,30としてSAW共振子を構成する場合を例に説明したが、図6に示すようにBAW(Bulk Acoustic Wave)共振子としてもよい。図6は、機能部品20Aの断面図である。
機能部品20Aは、基板21Aに、圧電部27と、これを厚み方向に挟む電極23Aとで構成されるBAW共振子が配置されている。基板21Aは例えばSi基板である。BAW共振子は、その振動を妨げないように、基板21Aに対して空隙を介して配置したり、音響反射膜を介して配置したりしている。図6においては、空隙を介して配置した場合を示している。
ここで、フィルタ装置として、機能部品20,30の双方をBAW共振子で構成してもよいし、一方をBAW共振子、他方をSAW共振子で構成してもよい。
<変形例>
上述の例では、並列腕3は3本のみ設けた場合を例に説明したがこの限りではない。例えば、図7に示すように、並列腕3dを新たに追加し、第1共振器5a,第2共振器5bを設けてもよい。並列腕3の数を増やしても、個々の共振器5は独立しているため、フィルタを設計することができる。例えば、直列に接続される第1共振器5aを備える並列腕3を1つ、並列に接続される第2共振器5bを備える並列腕3を1つ、追加してもよい。
なお、共振器5a,共振器5bについては、1つの並列腕3には、1つの共振器5をとするのがよい。
また、共振器5aと、共振器5bとを同じ並列腕3に接続することはできない。これは、減衰極が低域側と高域側に発生するので、広帯域なフィルタではフィルタの通過帯域内に減衰極が入り込みフィルタ特性を実現できないためである。一方、2つの共振器5aを同じ並列腕3の内で直列に接続することは、理論上は可能である。ただし、狭帯域なフィルタ設計をした後に並列接続させる必要があるため、設計は複雑となる。
また、図4に示すフィルタ装置1Aにおいて、第3共振器3cの両側に位置する容量に変えて両側共にインダクタに変えても同様に良好なフィルタ特性を得ることができることを確認している。
1・・・フィルタ装置
3・・・並列腕
3a・・・第1並列腕
3b・・・第2並列腕
3c・・・第3並列腕
5・・・共振器
5a・・・第1共振器
5b・・・第2共振器
5c・・・第3共振器
P1・・・第1信号端子
P2・・・第2信号端子

Claims (6)

  1. 第1および第2信号端子の間を電気的に接続する第1~第3並列腕と、
    前記第1並列腕の途中に直列に接続された、共振点と反共振点とを備える第1共振器と、前記第2並列腕に並列に接続された、共振点と反共振点とを備える第2共振器と、
    前記第3並列腕の途中に直列に接続され、共振点を備える少なくとも1つの第3共振器と、を備え、
    前記第1共振器の共振点の周波数をf1r,反共振点の周波数をf1a,前記第2共振器の共振点の周波数をf2r,反共振点の周波数をf2a,前記第3共振器の共振点の周波数をf3rとしたときに、f2r<f2a<f3r<f1r<f1aを満た
    前記少なくとも1つの第3共振器は、f2aからf1rの間に、反共振点を有さず、
    前記第1並列腕、前記第2並列腕及び前記第3並列腕を相互に接続することによってラダー型フィルタを形成する直列腕を有しない、
    フィルタ装置。
  2. 前記第1並列腕,前記第2並列腕,および前記第3並列腕の少なくとも1つには、途中に容量部またはインダクタ部が介在している、請求項1に記載のフィルタ装置。
  3. 前記第3並列腕には、前記第3共振器が偶数個直列接続されており、
    前記第2並列腕の途中には、前記第2共振器より第1信号端子の側と、前記第2共振器よりも前記第2信号端子の側とに、容量部がそれぞれ直列接続されている、請求項1に記載のフィルタ装置。
  4. 前記第3並列腕には、前記第3共振器が奇数個直列接続されており、
    前記第2並列腕の途中には、前記第2共振器より第1信号端子の側に容量部が、前記第2共振器よりも前記第2信号端子の側にインダクタ部がそれぞれ直列接続されている、請求項1に記載のフィルタ装置。
  5. 前記第1共振器および前記第2共振器はSAW共振子であり、前記第3共振器は誘電体共振器である、請求項1乃至4のいずれかに記載のフィルタ装置。
  6. 前記第1共振器および前記第2共振器はBAW共振子であり、前記第3共振器は誘電体共振器である、請求項1乃至4のいずれかに記載のフィルタ装置。
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