JP7239785B2 - Mt型ストラドルドビークル - Google Patents
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Description
特許文献1に記載された自動二輪車は、マニュアル式変速機及びクラッチを備える。マニュアル式変速機は、シフトペダルの操作によって、1速~4速又はニュートラルのいずれかに所定順で切り替わる多段変速機である。クラッチは、操作によって動力の接続状態と切断状態が切替わる。クラッチは、変速時のみならず発進時にも使用される。クラッチは、発進・変速両用クラッチである。
特許文献1に記載されたアイドリングストップ制御装置は、マニュアル式変速機がインギヤ状態(1速~4速)の場合、且つ、クラッチが動力を切断する開放状態の場合に、エンジンを停止する。
特許文献1に記載された自動二輪車におけるエンジンは、マニュアル式変速機がインギヤ状態で、クラッチが開放状態で、且つスロットルが開状態になると再始動する。この後、自動二輪車は、ライダーの操作によりクラッチが接続状態になることによって発進する。
本発明者は、MT型鞍乗型車両を小型化しつつアイドリングストップ制御を実施するため、発電機の機能とエンジンの始動の機能とを兼ね備えた始動発電機をMT型鞍乗型車両に搭載することを考えた。
MT型鞍乗型車両の小型化に関し、エンジン周辺における装置の設置スペースは、厳しく制限される。スタータモータは、MT型鞍乗型車両の搭載物の中で比較的大きい部品であるためMT型鞍乗型車両の小型化に影響しやすい。
MT型鞍乗型車両エンジンに、発電と始動の機能を兼ね備えた始動発電機を搭載することによって、スタータモータを省略することができる。例えば始動発電機自体が始動の機能の分、発電機単体よりも大きくても、スタータモータの省略は、MT型鞍乗型車両の全体として小型化に貢献できる。
始動発電機は、スタータモータとは異なり、例えば、クランク軸との間でギア及びクラッチを介さず動力が伝達されるようにクランク軸に接続される。従って、始動発電機は、スタータモータの場合と比べて、クランク軸を駆動する力が弱くなりやすい。このため、始動発電機は、エンジンの始動のためクランク軸を回転させる時に、スタータモータの場合と比べて圧縮反力の影響を受けやすい。また、始動発電機は、スタータモータの場合と比べて大きな電流の供給を要求する。つまり、制御装置のスイッチング素子を介して大きな電流が供給される。
クランク軸を駆動する力の弱さの影響を解消するため、始動発電機によって、エンジンの始動の前に始動準備動作を行なうことが考えられる。例えば、エンジンの始動のためクランク軸を正転させる前に、クランク軸を逆転させる動作が考えられる。この動作によって、圧縮反力の山を乗り越すためのクランク軸の加速区間が拡大され、圧縮反力の山が乗り越しやすくなる。なお、始動準備動作はこれに限られず、例えばエンジンの燃焼停止後に実施したり、正転のみによって実施したりすることが考えられる。
このため、MT型鞍乗型車両の発進時に、ライダーのクラッチレバーへのクラッチ操作によってはエンジンストールが発生する場合がある。
しかし、エンジンの再始動後、車両の発進時にエンジンストールが発生すると、車両が走行することなく短時間でエンジンの再始動が繰り返されることになる。つまり、始動発電機によるクランク軸の駆動が繰り返される。更に、停止したエンジンを再始動させるため、始動発電機による始動準備動作も実施される。始動発電機によるエンジンの始動及び始動準備動作の繰返しによって、制御装置のスイッチング素子に、短時間のうちに大きな電流が流れる。スイッチング素子は、流れる電流によって発熱する。スイッチング素子の温度が発熱に伴い上昇すると、スイッチング素子のオン抵抗が増加する。スイッチング素子のオン抵抗が増加すると、始動発電機に供給される電流が減少する。このため、クランク軸を駆動する力が減少し、再始動に要する時間が長くなりやすい。
スイッチング素子の温度の上昇を抑制するため、制御装置に放熱のための構造を設けることが考えられる。例えば、スイッチング素子同士及び他の部品との間隔を拡大したり、冷却機構及び放熱部材を設けたりすることが考えられる。
このように、単にMT型鞍乗型車両に始動発電機を備えることによって小型化を図ろうとすると、アイドリングストップ制御への対応で制御装置が大型化してしまい、全体として小型化できない場合がある。
第一の期間は、エンジンが燃焼動作している状態におけるライダーのクラッチレバーへの切断操作から接続操作までの期間である。エンジンが燃焼動作している状態でクラッチレバーへの切断操作がされると、エンジンの燃焼動作が停止する。このため、始動準備動作において始動発電機がクランク軸を駆動する場合に、エンジンの燃焼に起因する衝撃の影響が抑えられる。また、例えば、エンジンの燃焼動作の停止直後、燃焼動作のエネルギーによってクランク軸が回転している場合、回転の慣性力も活用して、クランク軸を再始動に適した位置に停止させやすくなる。また、クラッチレバーへの切断操作によって、クランク軸と駆動輪との間の動力伝達が切断される。このため、比較的小さな電流で始動発電機がクランク軸を駆動できる。
第二の期間は、クランク軸が停止した状態におけるクラッチレバーへの再切断操作からエンジンが再始動するまでの期間である。例えば、クラッチレバーへの切断操作によりエンジンの燃焼動作が停止した後、クラッチレバーが一旦接続操作され、さらに再切断操作でエンジンが再始動する。このクラッチレバーへの再切断操作によって、クランク軸と駆動輪との間の動力伝達が切断される時に始動準備動作が行なわれる。このため、比較的小さな電流で始動発電機がクランク軸を駆動できる。始動準備動作の後でエンジンを再始動することで、クランク軸が圧縮反力の山を乗り越しやすくなる。
(1) MT型鞍乗型車両であって、
前記MT型鞍乗型車両は、
スロットル弁及びクランク軸を有し、燃焼により生じる動力を、前記クランク軸を介して出力するエンジンと、
前記エンジンから前記動力を受け前記MT型鞍乗型車両を駆動する駆動輪と、
前記エンジンから前記駆動輪に遠心クラッチを介在することなく前記動力を伝達する動力伝達経路と、
前記動力伝達経路上に設けられ、ライダーの操作に応じて、前記エンジンと前記駆動輪の間の変速比を多段階に変更する多段変速機と、
前記ライダーのクラッチ操作を受けるクラッチレバーと、
前記エンジンと前記多段変速機の間の前記動力伝達経路上に設けられ、前記ライダーによる前記クラッチレバーへの切断操作に応じて前記動力を切断するとともに前記クラッチレバーへの接続操作に応じて前記動力を接続する発進・変速両用クラッチと、
を備え、次のことを特徴とする;
前記クランク軸との間でクラッチを介さず力が伝達されるように前記クランク軸に接続され、前記エンジンの始動時に前記クランク軸を駆動し、前記エンジンの燃焼動作時に前記クランク軸に駆動され発電する始動発電機と、
前記エンジンの前記燃焼動作及び前記始動発電機の制御を行う制御装置と、を更に備え、
前記制御装置は、前記始動発電機に流れる電流を制御するスイッチング素子を有し、(a)前記多段変速機が低ギア段の状態であり、且つ(b)前記MT型鞍乗型車両が停止又は実質的に停止しており、且つ(c)前記ライダーの前記クラッチレバーへの前記切断操作に応じて前記発進・変速両用クラッチが前記動力伝達経路を切断し、且つ(d)前記スロットル弁が実質的に最小開度の状態である、の全ての条件を満たす場合に、前記エンジンの前記燃焼動作を停止すると共に、下記SMG始動準備期間(Y)及び(Z)の何れかのうちに前記始動発電機を制御することで前記エンジンの再始動の準備として前記クランク軸の位置を調整し、その一方で、
前記多段変速機が高ギア段である場合、前記エンジンの再始動の準備としての前記始動発電機による前記クランク軸の位置調整を行わず、
前記SMG始動準備期間(Y)は、前記エンジンが前記燃焼動作している状態における前記クラッチレバーへの前記(c)での前記切断操作から前記クラッチレバーへの前記接続操作までの期間であり、
前記SMG始動準備期間(Z)は、前記クランク軸が停止した状態における前記クラッチレバーへの再切断操作から前記エンジンが前記再始動するまでの期間である。
エンジンは、クランク軸を有する。エンジンは、燃焼により生じる動力(power)を、クランク軸を介して出力する。
駆動輪は、エンジンから動力を受けMT型鞍乗型車両を駆動する。
動力伝達経路は、エンジンから駆動輪に遠心クラッチを介在することなく動力を伝達する。
多段変速機は、動力伝達経路上に設けられる。多段変速機は、エンジンと駆動輪の間の変速比を多段階に変更する。多段変速機は、ライダーの操作に応じて変速比を多段階に変更する。多段変速機は、マニュアル式変速機である。
クラッチレバーは、ライダーのクラッチ操作を受ける。クラッチ操作の種類には、切断操作と接続操作とがある。再切断操作におけるクラッチの操作自体は、切断操作である。
発進・変速両用クラッチは、エンジンと多段変速機の間の動力伝達経路上に設けられる。動力伝達経路は、遠心クラッチを介在することなく動力を伝達する。従って、発進・変速両用クラッチは、発進時と変速時の両方で操作に応じて動作する。発進・変速両用クラッチは、ライダーによるクラッチレバーへの操作に応じて、エンジンと多段変速機との間の動力を断続する。発進・変速両用クラッチは、ライダーがクラッチレバーを握る切断操作によって、動力を切断する。発進・変速両用クラッチは、ライダーがクラッチレバーを握りから解放する接続操作によって、動力を接続する。
制御装置は、始動発電機に流れる電流を制御するスイッチング素子を有する。制御装置は、下記(a)から(d)の全ての条件を満たす場合に、エンジンの前記燃焼動作を停止する。制御装置は、二つのSMG始動準備期間(Y)及び(Z)の何れかのうちに始動発電機を制御することでエンジンの再始動の準備としてクランク軸の位置を調整する。ここで、上記(a)から(d)の条件は、
(a) 多段変速機が低ギア段の状態である。
(b) MT型鞍乗型車両が停止又は実質的に停止している。
(c) ライダーのクラッチレバーへの操作に応じて発進・変速両用クラッチが、動力伝達経路を切断している。
(d) スロットル弁が実質的に最小開度の状態である。
制御装置は、多段変速機が高ギア段である場合、エンジンの再始動の準備としての始動発電機によるクランク軸の位置調整を行わない。
ここで、SMG始動準備期間(Y)及び(Z)は、以下の通りである。
SMG始動準備期間(Y) エンジンが燃焼動作している状態におけるクラッチレバーへの(c)での切断操作からクラッチレバーへの接続操作までの期間である。
SMG始動準備期間(Z) クランク軸が停止した状態におけるクラッチレバーへの再切断操作からエンジンが前記再始動するまでの期間である。
始動発電機は、ギア及びクラッチを介さず動力が伝達されるようにクランク軸に接続されるため、スタータモータの場合と比べて、エンジンの圧縮行程における圧縮反力を乗り越してクランク軸を駆動する力が弱くなりやすい。そのため、始動発電機は、エンジン始動時に、スタータモータの場合と比べて大きな電流の供給が要求される。クランク軸を駆動する力が弱さを補うため、始動発電機によって、エンジンの始動の前の始動準備動作を行なうことができる。
また、(1)のMT型鞍乗型車両では、(a)多段変速機が低ギア段の状態であることがアイドリングストップ制御におけるエンジン停止の条件の一つである。そのため、エンジン再始動後のライダーのクラッチレバーへの接続操作によるエンジンストールが発生する可能性は、多段変速機が高ギア段の場合と比べて低い。この結果、車両の走行を伴わない短時間でエンジンの始動及び始動準備動作が繰り返される事態の発生を抑制できる。このため、(1)のMT型鞍乗型車両は、制御装置のスイッチング素子に、短時間のうちに大きな電流が流れる事態の発生を抑制できる。従って、(1)のMT型鞍乗型車両は、制御装置の放熱のための構造を小型化できる。
(1)のMT型鞍乗型車両では、二つのSMG始動準備期間(Y)及び(Z)の何れかのうちに始動準備が行われる。二つのSMG始動準備期間(Y)及び(Z)では、ライダーのクラッチレバーへの切断操作が行われる。ライダーのクラッチレバーへの切断操作に基づいて始動準備動作が行われることによって、(1)のMT型鞍乗型車両では、低ギア段の条件で始動発電機を使用したアイドリングストップ制御を実施しやすくなる。
より具体的に、SMG始動準備期間(Y)は、エンジンが燃焼動作している状態におけるクラッチレバーへの切断操作から接続操作までの期間である。エンジンが燃焼動作している状態でクラッチレバーへの切断操作がされると、エンジンの燃焼動作が停止する。このため、始動準備動作において始動発電機がクランク軸を駆動する場合に、エンジンの燃焼による衝撃の影響が抑えられる。また、エンジンの燃焼動作の停止直後、燃焼動作のエネルギーによってクランク軸が回転している場合、回転の慣性力も活用して、クランク軸を再始動に適した位置に停止させやすくなる。また、クラッチレバーへの切断操作によって、クランク軸と駆動輪との間の動力伝達が切断される。このため、比較的小さな電流で始動発電機がクランク軸を駆動することができる。
SMG始動準備期間(Z)は、クランク軸が停止した状態におけるクラッチレバーへの再切断操作からエンジンが再始動するまでの期間である。クラッチレバーへの再切断操作によって、クランク軸と駆動輪との間の動力伝達が切断される。このため、比較的小さな電流で始動発電機がクランク軸を駆動しやすい。始動準備動作の後でエンジンを再始動することで、クランク軸が圧縮反力を乗り越しやすくなる。
このように、(1)のMT型鞍乗型車両では、多段変速機が低ギア段の状態においてエンジンの燃焼動作を停止するとともに、ライダーのクラッチレバーへの切断操作に基づいて始動準備動作を行なう。これにより、制御装置に短時間のうちに大きな電流が流れるのを抑制できるため、制御装置の発熱対応の構成を簡単・小型化しつつアイドリングストップ制御を実施することができる。その結果、(1)のMT型鞍乗型車両は、小型化しつつ、アイドリングストップ制御を実施することができる。
(2) (1)のMT型鞍乗型車両であって、
前記MT型鞍乗型車両は、前記ライダーの操作により前記エンジンの前記燃焼動作を停止するエンジン停止スイッチを有し、
前記制御装置は、前記(a)から(d)の条件の他、更に下記(e)の条件を満たした場合に、前記エンジンの前記燃焼動作を停止すると共に前記燃焼動作が停止した後、前記エンジンの再始動を行うために、前記始動発電機を制御することで前記クランク軸の始動開始位置を調整し、前記(e)の条件は、
(e)前記ライダーにより、前記エンジン停止スイッチが操作される。
(3) (1)のMT型鞍乗型車両であって、
前記制御装置は、前記ライダーの操作により、前記発進・変速両用クラッチが、前記動力伝達経路を切断してから感応基準時間が経過した場合に、前記エンジンの前記燃焼動作を停止する。
(4) (1)から(3)の何れか1つのMT型鞍乗型車両であって、
前記制御装置は、前記MT型鞍乗型車両の速度が0km/h以上3km/h以下で設定される基準速度を下回った場合に、前記MT型鞍乗型車両が停止又は実質的にしたものとして制御を行なう。
(5) (1)から(4)の何れか1つのMT型鞍乗型車両であって、
前記始動発電機は、前記クランク軸を収容する前記エンジンのクランクケース内に低粘度オイルで潤滑されるよう設けられ、前記SMG始動準備期間(Y)及び(Z)の何れかのうちに前記スイッチング素子を介して電流が供給されることにより駆動する。
(6) (1)から(5)の何れか1つのMT型鞍乗型車両であって、
前記始動発電機は、前記エンジンに対し位置が固定され巻線を有するステータと、前記ステータに対し空隙を介して設けられた永久磁石を有し前記クランク軸の回転と連動するように前記クランク軸に設けられたロータとを備え、
前記エンジンは、前記クラッチレバーへの前記再切断操作に基づいて前記エンジンが前記再始動する時に前記ロータの位置の検出を表す信号を前記制御装置に出力する、前記ステータの前記巻線とは異なる検出巻線を有するロータ位置検出装置を更に備える。
(7) (1)から(5)の何れか1つのMT型鞍乗型車両であって、
前記始動発電機は、スロットと周方向で交互に設けられた複数の歯部を備えるステータコア、及び前記歯部に巻回され、前記SMG始動準備期間(Y)及び(Z)の何れかのうちに前記スイッチング素子を介して電流が供給され、発電した電流を前記スイッチング素子に供給する複数相の巻線を有するステータと、前記ステータと空隙を空けて前記周方向に並び且つ前記スロットの数の2/3より多い磁極部を有するロータとを備える
MT型鞍乗型車両。
高負荷領域と低負荷領域とを有する4ストロークエンジンでは、低い回転速度における回転の変動が、他のタイプのエンジンと比べ大きい。高負荷領域とは、エンジンの1燃焼サイクルのうち、負荷トルクが1燃焼サイクルにおける負荷トルクの平均値よりも高い領域をいう。低負荷領域とは、1燃焼サイクルにおける高負荷領域以外の領域をいう。クランク軸の回転角度を基準として見ると、エンジンでの低負荷領域は、例えば、高負荷領域より広い。圧縮行程は、高負荷領域と重なりを有する。
例えば、高負荷領域と低負荷領域とを有するエンジンにおいて、エンジンの始動時にクランク軸の回転力が高負荷領域の圧縮反力を乗り越えるための助走区間を得るように、クランク軸の始動開始位置を調整することができる。
ただし、本開示のエンジンは、例えば、高負荷領域と低負荷領域とを有するエンジンに限られない。エンジンは、例えば、3以上の気筒を有するエンジンのようにクランク軸が大きなイナーシャを有し、従って始動発電機の駆動負荷が大きいエンジンであってもよい。
発進・変速両用クラッチの状態、及びクラッチレバーの操作は、例えば、クラッチレバーの位置として検出される。発進・変速両用クラッチの状態は、例えば、発進・変速両用クラッチの部材の位置として検出されてもよい。クラッチレバーの位置は、例えばクラッチレバー位置センサによって検出される。このようなクラッチレバー位置センサは、例えば、発進・変速両用クラッチレバーの操作位置又は非操作位置を検出するスイッチで構成される。例えば、操作位置は、切断操作に対応し、非操作位置は、接続操作に対応する。但し、クラッチレバー位置センサは、これに限られず、例えば、発進・変速両用クラッチレバーの操作位置をアナログレベルで表す信号を出力するセンサで構成されてもよい。また、発進・変速両用クラッチの状態は、例えば、発進・変速両用クラッチの部品の位置、又は、クラッチレバーから発進・変速両用クラッチに作動力を伝達する部材の位置として検出されてもよい。
多段変速機のギア段は、例えば、多段変速機に設けられたギアポジションセンサによって検出される。ギアポジションセンサは、多段変速機のニュートラルを含む現在のギア段を検出して、制御装置に信号として送信する。
エンジンが前記燃焼動作している状態におけるクラッチレバーへの切断操作からクラッチレバーへの接続操作までの期間(SMG始動準備期間(Y))におけるクランク軸の位置の調整は、例えば、以下の動作のいずれかである。
1.エンジンの燃焼停止後からクランク軸の正転が停止するまでの間に、始動発電機がクランク軸に正転方向の力又は逆転方向の力を付与することにより、クランク軸を目標領域に停止させる。この場合、逆転方向の力は、正転するクランク軸に対するブレーキ力である。クランク軸が停止した位置は、エンジンの再始動における正転開始位置になる。
2.クランク軸の回転が一旦停止した後、クラッチレバーへの接続操作の前に、始動発電機がクランク軸に正転方向の力又は逆転方向の力を付与することにより、クランク軸を目標領域まで移動させる。クランク軸は、目標領域で停止する。クランク軸が停止した位置は、エンジンの再始動における正転開始位置になる。
なお、エンジンの燃焼停止後、例えば単にクランク軸を短期間で停止する目的で目標を定めずブレーキ力を付与する制御は、「エンジンの再始動の準備としての始動発電機によるクランク軸の位置調整」に該当しない。目標を定めない制御では、クランク軸の停止位置が所定の範囲に定まらない。
クランク軸が停止した状態におけるクラッチレバーへの再切断操作からエンジンが再始動するまでの期間(SMG始動準備期間(Z))におけるクランク軸の位置の調整は、例えば、以下の動作である。
エンジンが再始動前に、始動発電機がクランク軸に正転方向の力又は逆転方向の力を付与することにより、クランク軸を目標領域まで正転又は逆転させる。
この場合、クランク軸が目標領域まで移動したら、始動発電機がクランク軸に正転方向の力を付与することにより、エンジンの燃焼動作が開始するまでクランク軸を正転させる。
再始動よりも前におけるクランク軸の逆転は、いわゆるスイングバックである。
「期間のうちに始動発電機を制御する」ことは、期間の一部で始動発電機を制御することを意味する。ただし、「期間のうちに始動発電機を制御する」ことは、期間の全てに亘り始動発電機を制御する形態を含んでもよい。
図1は、本発明の第1実施形態に係るMT型鞍乗型車両1の構成を示す図である。ここで、図1(a)は、MT型鞍乗型車両1の構成を簡略化して示す側面図であり、図1(b)は、MT型鞍乗型車両1の制御装置41の動作を示すフローチャートである。
本明細書及び図面で、Fは、MT型鞍乗型車両1における前方を示す。Bは、MT型鞍乗型車両1における後方を示す。FBは、MT型鞍乗型車両1における前後方向を示す。Uは、MT型鞍乗型車両1における上方を示す。Dは、MT型鞍乗型車両1における下方を示す。UDは、MT型鞍乗型車両1における上下方向を示す。
エンジン10は、クランク軸11及びスロットル弁12を有する。エンジン10は、スロットル弁12の開度に応じて供給される混合気の燃焼により生じる動力を、回転するクランク軸11を介して出力する。
駆動輪15は、エンジン10から動力を受け、MT型鞍乗型車両1を駆動する。
動力伝達経路25は、エンジン10から駆動輪15に遠心クラッチを介在することなく動力を伝達する。
多段変速機30は、動力伝達経路25上に設けられる。多段変速機30は、エンジン10と駆動輪15の間の変速比を、多段階に変更する。多段変速機30は、MT型鞍乗型車両1のライダーの操作に応じて変速比を多段階に変更する。多段変速機30は、マニュアル式変速機である。
クラッチレバー36は、MT型鞍乗型車両1のライダーのクラッチ操作を受ける。クラッチ操作には、切断操作と接続操作とがある。
発進・変速両用クラッチ35は、エンジン10と多段変速機30との間の動力伝達経路25上に設けられる。発進・変速両用クラッチ35は、MT型鞍乗型車両1のライダーによるクラッチレバー36への操作に応じて、エンジン10と多段変速機30との間の動力伝達を断続する。発進・変速両用クラッチ35は、MT型鞍乗型車両1のライダーがクラッチレバー36を握る切断操作によって、動力伝達を切断する。発進・変速両用クラッチ35は、MT型鞍乗型車両1のライダーがクラッチレバー36を握りから解放する接続操作によって、動力伝達を接続する。
始動発電機20は、エンジン10の始動時にクランク軸11を駆動することでエンジン10を始動させる。また、始動発電機20は、エンジン10の燃焼動作時にクランク軸11に駆動され発電する。
制御装置41は、エンジン10の燃焼動作及び始動発電機20の制御を行う。制御装置41は、図示しないプロセッサを備えており、プロセッサがプログラムを実行することで機能を実現する。
制御装置41は、始動発電機20に流れる電流を制御するスイッチング素子21を有する。スイッチング素子21は、例えば、トランジスタで構成される。
制御装置41は、エンジン10の始動時にバッテリ5(図4参照)から始動発電機20に電力を供給することによって、始動発電機20にクランク軸11を駆動させる。制御装置41のスイッチング素子21は、始動発電機20の巻線224(図4参照)に流れる電流のオン・オフを制御する。これによって、制御装置41は、始動発電機20に流れる電流を制御する。また、制御装置41は、エンジン10が燃焼動作している場合に、始動発電機20で発電された電力をバッテリ5に供給する。この場合、制御装置41は、始動発電機20で発電された電流を整流する。整流された電流は、バッテリ5に充電される。
制御装置41のスイッチング素子21は、始動発電機20の巻線224(図4参照)から流れる電流のオン・オフを制御する。これによって、制御装置41は、始動発電機20から流れる電流を制御する。
(a) 多段変速機30が低ギア段の状態である。
(b) MT型鞍乗型車両1が停止又は実質的に停止している。
(c) MT型鞍乗型車両1のライダーのクラッチレバー36への操作に応じて発進・変速両用クラッチ35が、動力伝達経路25を切断している。
(d) スロットル弁12が実質的に最小開度の状態である。
制御装置41は、多段変速機30が高ギア段である場合、エンジン10の再始動の準備としての始動発電機20によるクランク軸11の位置調整を行わない。多段変速機30が高ギア段である場合、上記エンジン停止条件(a)を満たさないため、制御装置41はエンジン10の燃焼動作を停止しないからである。
ここで、SMG始動準備期間(Y)及び(Z)は、以下の通りである。
SMG始動準備期間(Y):エンジン10が燃焼動作している状態におけるクラッチレバー36への切断操作からクラッチレバー36への接続操作までの期間である。
SMG始動準備期間(Z):クランク軸11が停止した状態におけるクラッチレバー36への再切断操作からエンジン10が再始動するまでの期間である。
制御装置41は、アイドリングストップ制御開始の後、ステップS101において、エンジン10が燃焼動作中であるか判断する。エンジン10が燃焼動作中でない場合(ステップS101においてNo)、制御装置41は、アイドリングストップ制御の動作を終了する。エンジン10が燃焼動作中である場合(ステップS101においてYes)、制御装置41は、ステップS102においてエンジン停止条件(a)から(d)の全ての条件を満たすか判断する。エンジン停止条件(a)から(d)の全ての条件を満たす場合(ステップS102においてYes)、制御装置41は、ステップS103においてエンジン10の燃焼動作を停止する。エンジン停止条件(a)から(d)の少なくとも何れかの条件を満さない場合(ステップS102においてNo)、制御装置41は、エンジン10の燃焼動作を継続する。ステップS103においてエンジン10の燃焼動作を停止した後、制御装置41は、ステップS104において、クラッチレバー36への切断操作に基づいて始動準備制御を行なうか判断する。クラッチレバー36への切断操作に基づいて始動準備制御を行なう場合(ステップS104においてYes)、制御装置41は、SMG始動準備期間(Y)における再始動の準備としてクランク軸11の位置を調整する(ステップS105。SMG始動準備期間(Y)における位置の調整)。制御装置41は、始動発電機20を制御することでクランク軸11の位置を調整する。例えば、制御装置41は、始動発電機20を制御することで、回転しているクランク軸11にブレーキ力を付与し、クランク軸11を目標領域に停止させる。
本発明の第2実施形態について説明する。図2は、本発明の第2実施形態に係るMT型鞍乗型車両2の構成を示す図である。ここで、図2(a)は、MT型鞍乗型車両2の構成を簡略化して示す左側面図であり、図2(b)は、MT型鞍乗型車両2の制御装置42における動作を示すフローチャートである。本実施形態では、制御装置42における動作が、図2のように構成される。この他の構成は、第1実施形態と同一であり、図1に示すMT型鞍乗型車両1と同じ符号を付して説明を省略する。
(a)多段変速機30が低ギア段の状態である。
(b)MT型鞍乗型車両2が停止又は実質的に停止している。
(c)MT型鞍乗型車両2のライダーのクラッチレバー36への操作に応じて発進・変速両用クラッチ35が、動力伝達経路25を切断している。
(d)スロットル弁12が実質的に最小開度の状態である。
(e)ライダーにより、エンジン停止スイッチ13が操作される。
制御装置42は、第1実施形態の制御装置41のステップS102とステップS103との間に、ステップS201の処理が入る。詳細には、図2(b)に示すように、エンジン停止条件(a)から(d)の全ての条件を満たす場合(ステップS102においてYes)、制御装置42は、ライダーにより、エンジン停止スイッチ13が操作されたか判断する。MT型鞍乗型車両2のライダーにより、エンジン停止スイッチ13が操作された場合(ステップS201においてYes)、制御装置41は、ステップS103においてエンジン10の燃焼動作を停止する。MT型鞍乗型車両2のライダーにより、エンジン停止スイッチ13が操作されていない場合(ステップS201においてNo)、動作は再びステップS102に戻る。
本発明の第3実施形態について説明する。図3は、本発明の第3実施形態に係るMT型鞍乗型車両3の制御装置43における動作を示すフローチャートである。図3における図1(b)と同一の処理には、図1(b)と同一の符号が付されている。本実施形態における第1実施形態と同一の処理の説明は、省略する。
本発明の第4実施形態について説明する。図4は、本発明の第4実施形態に係るMT型鞍乗型車両4のエンジン10-1、始動発電機20-1、及び多段変速機30-1の構成を示す図である。本実施形態は、第1から第3実施形態のそれぞれの適用例でもある。従って、本実施形態で説明する構成は、第1から第3実施形態のそれぞれに適用され得る。図4(a)は、MT型鞍乗型車両4のエンジン10-1、始動発電機20-1、及び多段変速機30-1の左側面図である。図4(b)は、図4(a)のX-X´における断面図である。図4(c)は、始動発電機20-1の断面図である。図4において、図1(a)と同一の構成については、図1(a)と同一の符号を付している。本実施形態において第1実施形態と共通の構成の説明は、省略する。
10、10-1 エンジン
11 クランク軸
20、20-1 始動発電機
21 スイッチング素子
25 動力伝達経路
30、30-1 多段変速機
35 発進・変速両用クラッチ
36 クラッチレバー
41~43 制御装置
Claims (7)
- MT型鞍乗型車両であって、
前記MT型鞍乗型車両は、
スロットル弁及びクランク軸を有し、燃焼により生じる動力を、前記クランク軸を介して出力するエンジンと、
前記エンジンから前記動力を受け前記MT型鞍乗型車両を駆動する駆動輪と、
前記エンジンから前記駆動輪に遠心クラッチを介在することなく前記動力を伝達する動力伝達経路と、
前記動力伝達経路上に設けられ、ライダーの操作に応じて、前記エンジンと前記駆動輪の間の変速比を多段階に変更する多段変速機と、
前記ライダーのクラッチ操作を受けるクラッチレバーと、
前記エンジンと前記多段変速機の間の前記動力伝達経路上に設けられ、前記ライダーによる前記クラッチレバーへの切断操作に応じて前記動力を切断するとともに前記クラッチレバーへの接続操作に応じて前記動力を接続する発進・変速両用クラッチと、
を備え、次のことを特徴とする;
前記クランク軸との間でクラッチを介さず力が伝達されるように前記クランク軸に接続され、前記エンジンの始動時に前記クランク軸を駆動し、前記エンジンの燃焼動作時に前記クランク軸に駆動され発電する始動発電機と、
前記エンジンの前記燃焼動作及び前記始動発電機の制御を行う制御装置と、を更に備え、
前記制御装置は、前記始動発電機に流れる電流を制御するスイッチング素子を有し、(a)前記多段変速機が低ギア段の状態であり、且つ(b)前記MT型鞍乗型車両が停止又は実質的に停止しており、且つ(c)前記ライダーの前記クラッチレバーへの前記切断操作に応じて前記発進・変速両用クラッチが前記動力伝達経路を切断し、且つ(d)前記スロットル弁が実質的に最小開度の状態である、の全ての条件を満たす場合に、前記エンジンの前記燃焼動作を停止すると共に、下記SMG始動準備期間(Y)及び(Z)の何れかのうちに前記始動発電機を制御することで前記エンジンの再始動の準備として前記クランク軸の位置を調整し、その一方で、
前記多段変速機が高ギア段である場合、前記エンジンの再始動の準備としての前記始動発電機による前記クランク軸の位置調整を行わず、
前記SMG始動準備期間(Y)は、前記エンジンが前記燃焼動作している状態における前記クラッチレバーへの前記(c)での前記切断操作から前記クラッチレバーへの前記接続操作までの期間であり、
前記SMG始動準備期間(Z)は、前記クランク軸が停止した状態における前記クラッチレバーへの再切断操作から前記エンジンが前記再始動するまでの期間である。 - 請求項1に記載のMT型鞍乗型車両であって、
前記MT型鞍乗型車両は、前記ライダーの操作により前記エンジンの前記燃焼動作を停止するエンジン停止スイッチを有し、
前記制御装置は、前記(a)から(d)の条件の他、更に下記(e)の条件を満たした場合に、前記エンジンの前記燃焼動作を停止すると共に前記燃焼動作が停止した後、前記エンジンの再始動を行うために、前記始動発電機を制御することで前記クランク軸の始動開始位置を調整し、前記(e)の条件は、
(e)前記ライダーにより、前記エンジン停止スイッチが操作される
MT型鞍乗型車両。 - 請求項1に記載のMT型鞍乗型車両であって、
前記制御装置は、前記ライダーの操作により、前記発進・変速両用クラッチが、前記動力伝達経路を切断してから感応基準時間が経過した場合に、前記エンジンの前記燃焼動作を停止する
MT型鞍乗型車両。 - 請求項1から3の何れか1項に記載のMT型鞍乗型車両であって、
前記制御装置は、前記MT型鞍乗型車両の速度が0km/h以上3km/h以下で設定される基準速度を下回った場合に、前記MT型鞍乗型車両が停止又は実質的にしたものとして制御を行なう
MT型鞍乗型車両。 - 請求項1から4の何れか1項に記載のMT型鞍乗型車両であって、
前記始動発電機は、前記クランク軸を収容する前記エンジンのクランクケース内に低粘度オイルで潤滑されるよう設けられ、前記SMG始動準備期間(Y)及び(Z)の何れかのうちに前記スイッチング素子を介して電流が供給されることにより駆動する
MT型鞍乗型車両。 - 請求項1から5の何れか1項に記載のMT型鞍乗型車両であって、
前記始動発電機は、前記エンジンに対し位置が固定され巻線を有するステータと、前記ステータに対し空隙を介して設けられた永久磁石を有し前記クランク軸の回転と連動するように前記クランク軸に設けられたロータとを備え、
前記エンジンは、前記クラッチレバーへの前記再切断操作に基づいて前記エンジンが再始動する時に前記ロータの位置の検出を表す信号を前記制御装置に出力する、前記ステータの前記巻線とは異なる検出巻線を有するロータ位置検出装置を更に備える
MT型鞍乗型車両。 - 請求項1から5の何れか1項に記載のMT型鞍乗型車両であって、
前記始動発電機は、スロットと周方向で交互に設けられた複数の歯部を備えるステータコア、及び前記歯部に巻回され、前記SMG始動準備期間(Y)及び(Z)の何れかのうちに前記スイッチング素子を介して電流が供給され、発電した電流を前記スイッチング素子に供給する複数相の巻線を有するステータと、前記ステータと空隙を空けて前記周方向に並び且つ前記スロットの数の2/3より多い磁極部を有するロータとを備える
MT型鞍乗型車両。
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