JP7238352B2 - 接合用ペースト、及び該接合用ペーストで接合されてなる物品 - Google Patents
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Description
また、接合材料には、初期の接合強度だけでなく、各種耐久性が求められる。最も過酷な耐久試験の一例としては、接合部材を、200℃以上の高温状態と、-40℃程度の低温状態に繰り返しさらす冷熱サイクル試験が挙げられるが、現状、金属ナノ粒子を高い比率で含有しながらも、初期及び200℃を超える冷熱サイクル試験後の接合強度に優れる物品を形成可能な接合ペーストは見出されておらず、高温動作が必要な次世代パワー半導体を実現するための大きな課題となっている。
すなわち、本発明は以下の発明に関する。
金属粒子(A)は、金属粒子(A)100質量%中に、金属ナノ粒子を25~100質量%含有し、
焼結促進剤(B)が、下記一般式(1)で表されるアミジン誘導体(D)と有機酸(E)とからなるアミジニウム塩(F)である、接合用ペースト。
金属部材同士、金属部材と半導体素子、又は金属部材とLED素子との間を、前記焼結体で接合することを特徴とする物品の製造方法。
アミジン誘導体が、有機酸とのアミジニウム塩を形することで、焼結を促進させ、優れた初期及び冷熱サイクル試験後の接合強度を発現させ、さらに、ペースト粘度の上昇を抑制し塗工適性に優れる、という格別な効果を奏する。
金属粒子(A)としては、例えば金、銀、銅、ニッケル、クロム、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、インジウム、ケイ素、アルミニウム、タングステン、モリブデン、及び白金等の金属粉、並びにこれらの合金、並びにこれらの複合粉が挙げられる。また、核体と、前記核体物質とは異なる物質で被覆した微粒子、具体的には、例えば、銅を核体とし、その表面を銀で被覆した銀コート銅粉等が挙げられる。また、例えば酸化銀、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化ルテニウム、ITO(スズドープ酸化インジウム)、AZO(アルミドープ酸化亜鉛)、及びGZO(ガリウムドープ酸化亜鉛)等の金属酸化物の粉末、並びにこれらの金属酸化物で表面被覆した粉末等が挙げられる。
使用する金属の種類は1種でもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
金属ナノ粒子として、平均粒子径が1~500nmの金属ナノ粒子を使用することが好ましく、より好ましくは2~200nmであり、特に好ましくは2~100nmである。金属ナノ粒子は、特定の粒子径範囲のものを単独で使用してもよいし、異なる粒子径範囲のものを複数組み合わせて使用してもよい。
金属ナノ粒子を必須とする金属粒子(A)を使用することにより、粒子表面の活性が上がり、ナノサイズ効果により融点が下がるため、低温での十分な焼結が可能となる。低温焼結により電子部品の実装時の温度を下げることが可能になるので熱ストレスを低減できる。そして、金属ナノ粒子は、焼結により互いに結合してサイズが大きくなると、通常サイズの金属材料(バルク金属材料)と同等の高い融点を示すようになるので、実装後は耐熱温度を向上できる。
なお、本発明における金属粒子(A)のうち、金属ナノ粒子の平均粒子径は、ナノトラック UPA-EX150(日機装社製)用いて、体積粒度分布の累積粒度(D50)を測定した。また、ナノサイズ以外の金属粒子の平均粒子径は、島津製作所社製レーザー回折粒度分布測定装置「SALD-3000」を用いて、体積粒度分布の累積粒度(D50)を測定した。
被覆前の金属ナノ粒子と前記脂肪酸との合計100質量%中、被覆前の金属ナノ粒子は70~99質量%、前記脂肪酸は1~30質量%であることが好ましく、被覆前の金属ナノ粒子は80~95質量%、前記脂肪酸は5~20質量%であることがより好ましい。前記脂肪酸の量が5~20質量%であることによって、被覆後の金属ナノ粒子の凝集を抑制でき、優れた接合強度を発現できる。
なお、前記脂肪酸で被覆された金属ナノ粒子を用いる場合は、被覆後の金属ナノ粒子全体を、金属粒子(A)に含まれる金属ナノ粒子とするものとする。
本発明の接合用ペーストは、特定構造の焼結促進剤(B)を含む。焼結促進剤(B)はアミジン誘導体(D)と有機酸(E)とからなる、アミジニウム塩(F)の構造を有する。
このようなアミジニウム塩(F)が、金属粒子(A)の焼結を促進する詳細な機構は完全には明らかではないが、現在のところ以下のように推察している。
まず、アミジニウム塩(F)を形成するアミジン誘導体(D)について説明する。アミジン誘導体(D)は、下記一般式(1)で表される構造を有する。
さらに、2-イミダゾリン、3,4,5,6-テトラヒドロピリミジン、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセン(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4,3,0]-5-ノネン(DBN)等の非芳香族化合物、及び、それらの誘導体を挙げることができるが、こられに限定されるものではない。
次に、本発明のアミジニウム塩(F)を形成する有機酸(E)について説明する。
有機酸(E)は、アミジン誘導体(D)にプロトンを供与することでアミジニウムカチオンを形成し、有機酸の残基はカウンターアニオンの役割を担う。
カルボキシル基を有する有機酸としては、ギ酸、酢酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸等の一価の直鎖の飽和脂肪酸;2-ヘキシルデカン酸、2-ペンチルノナン酸等の一価の分岐飽和脂肪酸;ソルビン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、イソオレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エルカ酸、セラコレイン酸等の一価の不飽和脂肪酸;マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマール酸、ジグリコール酸、アジピン酸、グルタル酸、アゼライン酸、セバシン酸等の多価の脂肪酸;さらに、安息香酸、ナフトエ酸、o-フタル酸、m-フタル酸、p-フタル酸、等の一価又は多価の芳香族カルボン酸を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。さらに、クエン酸、グルコン酸、酒石酸、乳酸、リンゴ酸等のヒドロキシル基で置換されたカルボン酸類も本発明の有機酸(E)に包含される。
スルホン酸基を有する有機酸としては、メタンスルホン酸、ブタンスルホン酸、オクタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、パーフルオロブタンスルホン酸、パーフルオロオクタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等を挙げることができる。
フェノール性水酸基を有する有機酸としては、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、1-ナフトール、2-ナフトール、カテコール、ヒドロキノン、等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。また、フェノール性有機酸を有する有機酸は、フェノール性水酸基を有するオリゴマーや樹脂であってもよく、具体的には、フェノール樹脂、フェノール-ノボラック樹脂等を挙げることができる。
焼結促進剤(B)の含有量は、金属粒子(A)と焼結促進剤(B)と後述する液状分散媒(C)との合計100質量%中、好ましくは0.1~1.5質量%であり、より好ましくは0.3~1.0質量%である。所定範囲量の焼結促進剤(B)を使用することにより、塗工適性を向上でき、金属ナノ粒子を被覆する有機物を引き剥がす効果を利用し焼結を促進させることでバルクに近い緻密な金属の膜を形成でき、冷熱サイクル試験後も高レベルで接合強度を維持できるため好ましい。
本発明の接合用ペーストは、液状分散媒(C)を含有する。液状分散媒(C)は、分散質である金属粒子(A)を分散する機能を担う。また、液状分散媒(C)に前述の焼結促進剤(B)は溶解してもよいし、微粒子として分散してもよい。
本発明の接合用ペーストは、導電ペーストであり、接合した物品としては、電子基板にある電気回路とその上に搭載する電子部品に展開できる。具体的には、ICチップ等が挙げられる。
添加する分散剤の量としては、接合用ペースト100質量%中、5質量%以下、好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは、0.5質量%以下である。凝集防止効果の点から0.1質量%以上が好ましく、焼結の際、残存しないように5質量%以下であることが好ましい。
本発明は、上記接合用ペーストを少なくとも第1の部材に塗布する工程と、前記第1の部材上の接合用ペーストに第2の部材を接触させ、焼成することにより、第1の部材と第2の部材とを接合することができる。
接合する部材の種類は特に限定されず、金属部材、電子素子、プラスチック材料、セラミック材料等を挙げることができる。金属部材同士、金属部材と半導体素子、金属部材とLED素子とを接合することが好ましい。
即ち、金属部材同士、金属部材と半導体素子、又は金属部材とLED素子との間に、本発明の接合用ペーストを挟み、加熱し、液状分散媒(C)を除去すると共に、金属粒子(A)の少なくとも一部を溶融し、焼結体を形成し、金属部材同士、金属部材と半導体素子、又は金属部材とLED素子との間を、前記焼結体で接合することが好ましい。
電子素子としては、半導体素子、LED素子を挙げることができる。
半導体素子としては、シリコン(ケイ素)やゲルマニウムのほかに、ヒ化ガリウム、リン化ガリウム、硫化カドミウム等が用いられる。LED素子としてはアルミニウム、窒化珪素、ダイヤモンド、黒鉛、酸化イットリウム及び酸化マグネシウム等が用いられる。特に、炭化ケイ素や窒化ガリウム等のパワーデバイス素子を使用することができる。
プラスチック材料としては、例えば、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート等を挙げることができる。
セラミック材料としては、例えば、ガラス、シリコン等を挙げることができる。
第1の部材及び第2の部材は、同じ種類だけではなく、異なる種類の部材であってもよい。上記部材は、接合強度を大きくするため適宜コロナ処理、メッキ等で加工してもよい。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々に改変することができる。
(銀粉Aの製造方法)
セパラブル4口フラスコに冷却管、温度計、窒素ガス導入管、攪拌装置を取り付け、窒素雰囲気下、室温で攪拌しながらトルエン200部及びヘキサン酸銀22.3部を仕込み、0.5Mの溶液とした後に、分散剤としてジエチルアミノエタノール2.3部(金属1molに対し0.2mol倍)、オレイン酸2.8部(金属1molに対し0.1mol倍)を添加し溶解させた。その後、還元剤として濃度20%のこはく酸ジヒドラジド(以下、SUDHという)水溶液73.1部(金属1molに対しヒドラジド基2mol倍)を滴下すると液色が淡黄色から濃茶色に変化した。さらに反応を促進させるために40℃に昇温し、反応を進行させた。静置、分離した後、水相を取り出すことで過剰の還元剤や不純物を除去し、さらにトルエン層に数回蒸留水を加え、洗浄、分離を繰り返した後、乾燥させて銀粉Aを得た。銀粉Aの平均粒子径(D50)は、10nmであった。
製品名 銀ナノ粒子乾粉-2(平均粒子径(D50)60nm、比表面積5~8m2/g)DOWAエレクトロニクス株式会社製
球状銀粉(平均粒子径(D50)1.6μm、比表面積1.0m2/g)
焼結促進剤として、以下を用いた。なお、DBUは、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセンの略称である。
・DBUのギ酸塩 (製品名:U-CAT SA603、サンアプロ株式会社製)
・DBUのo-フタル酸塩 (製品名:U-CAT SA810、サンアプロ株式会社製)
・DBUのフェノール塩 (製品名:U-CAT SA1、サンアプロ株式会社製)
・DBUのp-トルエンスルホン酸塩 (製品名:U-CAT SA506、サンアプロ株式会社製)
・DBU (東京化成工業株式会社製)
・イミダゾール (東京化成工業株式会社製)
ガムテレビン油から誘導された、α-, β-, γ-ターピネオールの異性体混合物
(製品名 ターピネオールC 日本テルペン化学株式会社製)
[実施例1]
銀粉A:87.0部、焼結促進剤:0.5部、液状分散媒:12.5部を混合し、接合用ペーストを調製した。
表1に示す組成に従って、実施例1と同様に接合用ペーストを調製した。
(1)塗工適性
調製した各接合用ペーストを鋼板に下記条件で塗工し、その塗工適性を下記基準で判断した。
<塗工条件>
・メタルマスク:開口部4mm角、板厚50μm(セリアコーポレーション製)
・メタルスキージ:40mm×250mm、厚み1mm(セリアコーポレーション製)
<評価基準>
○:接合用ペーストが、良好な流動性を有し、開口部(4mm角)全体に均一に付着している状態(良好)
△:接合用ペーストが、良好な流動性を有するが、開口部の一部(2~3mm角の範囲)に付着するが、付着していない部分がある状態(使用可能)
×:接合用ペーストが、流動性が乏しく、開口部のうち、2mm角範囲以下にしか付着していない状態(不良)
(接合条件)
前記塗工条件にて、各接合用ペーストを下記基材1の金メッキ面に塗工し、金メッキ面がペースト側となるように下記基材2を貼り付けた。これを250℃の熱風乾燥オーブン中で60分間、大気雰囲気で焼結して試験片を得た。なお、塗工時の接合用ペーストの厚みは用いたメタルマスクの板厚:50μmである。
基材1:片側が金メッキされた銅板 1.3cm×1.3cm(厚み2mm)
基材2:片側が金メッキされたSiチップ 5mm×5mm(厚み300μm)
[冷熱サイクル試験]
試験片を、-40℃の温度条件で10分間保持した後、250℃の温度条件で10分間保持する処理工程を1サイクルとし、この処理を500サイクル行った。
試験条件
・測定高さ:100μm
・測定スピード:500μm/s
具体的には基材1を固定し、基材1と焼結体との界面を起点として基材2に向かって高さ100μmの位置を、500μm/sの速度で押し、接合が破壊される強度を求めた。
◎:15MPa以上(非常に良好)
○:10MPa以上、15MPa未満(良好)
△:5MPa以上、10MPa未満(使用可能)
×:5MPa未満(不良)
Claims (10)
- 金属粒子(A)と焼結促進剤(B)と液状分散媒(C)とを含有し、
金属粒子(A)は、金属粒子(A)100質量%中に、金属ナノ粒子を25~100質量%含有し、
前記金属ナノ粒子は、平均粒子径が1~500nmであり、
焼結促進剤(B)が、下記一般式(1)で表されるアミジン誘導体(D)と有機酸(E)とからなるアミジニウム塩(F)であり、
前記アミジン誘導体(D)が、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセン、又は1,5-ジアザビシクロ[4,3,0]-5-ノネンを含む、接合用ペースト。
(ただし前記有機酸(E)は、金属ナノ粒子を被覆する有機物である場合を除く。)
一般式(1)
- 金属粒子(A)と焼結促進剤(B)と液状分散媒(C)との合計100質量%中に、金属粒子(A)を80質量%以上含む、請求項1に記載の接合用ペースト。
- 金属粒子(A)と焼結促進剤(B)と液状分散媒(C)との合計100質量%中に、焼結促進剤(B)を0.1~1.5質量%含む、請求項1又は2に記載の接合用ペースト。
- 有機酸(E)が、カルボキシル基を有する、請求項1~3いずれか1項に記載の接合用ペースト。
- 有機酸(E)がギ酸である、請求項1~4いずれか1項に記載の接合用ペースト。
- 金属ナノ粒子の表面の少なくとも一部が、炭素数が3~22である飽和又は不飽和の脂肪酸により被覆されている、請求項1~5いずれかに1項に記載の接合用ペースト。
- 金属粒子(A)100質量%中に、金属ナノ粒子を80~100質量%以上含む、請求項1~6いずれか1項に記載の接合用ペースト。
- 金属ナノ粒子の平均粒子径が2~200nmである、請求項1~7いずれか1項に記載の接合用ペースト。
- 金属部材同士、金属部材と半導体素子、又は金属部材とLED素子との間に、請求項1~8いずれか1項に記載の接合用ペーストを挟み、加熱し、液状分散媒(C)を除去すると共に、金属粒子(A)の少なくとも一部を溶融して焼結体を形成し、
金属部材同士、金属部材と半導体素子、又は金属部材とLED素子との間を、前記焼結体で接合することを特徴とする物品の製造方法。 - 金属部材同士、金属部材と半導体素子、又は金属部材とLED素子とが、請求項1~8いずれか1項に記載の接合用ペーストから形成された焼結体で接合されており、-40℃の温度条件で10分間保持した後、250℃の温度条件で10分間保持する処理工程を1サイクルとし、この処理を500サイクル行う冷熱サイクル試験の前及び後において、ダイシェア強度が5MPa以上である物品。
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