JP7234952B2 - 車両のジャッキ搭載構造 - Google Patents
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Description
ここでジャッキ搭載構造JMを説明する前に、先ず、車両後部の概要について説明する。この車両2は、図1及び図2に示すように、その車室3の後端側に後側開口部4を備えており、この後側開口部4が上方に跳ね上げ式のバックドア5によって開閉可能に構成されている。また車室3の床側にはカーペット400が敷設され、後側開口部4側には後述するスロープ装置10が設けられている。そして後述するスロープ装置10にて、車椅子等の部材(図示省略)を車室3と路面間で乗降させることが可能となっている。
図1及び図2に示すスロープ装置10は、スロープ板12とテールゲート部13とを有し、格納状態と展開状態との間で変位可能とされている。ここでテールゲート部13は、スロープ板12の基端部を支持する板状の部材であり、車両2の後側開口部4の下辺位置に上下回動可能な状態で連結されている。またスロープ板12は、車両2の後側開口部4と路面との間に掛け渡される板状の部材であり、テールゲート部13とともに上下回動可能な状態で車室3に連結されている。このスロープ板12は、第一平板部12aと、第一平板部12aを前後スライド可能な状態で収納する第二収納板部12bとから構成されている。そして図1に示すスロープ装置10が車両2に格納されている格納状態では、スロープ板12とテールゲート部13がともに起立位置で後側開口部4付近に保持されている。このとき第一平板部12aは、第二収納板部12bに重ねられた状態でその第二収納板部12b内に収納されている。そして図2に示すようにスロープ板12を展開状態とする際には、第二収納板部12bから第一平板部12aを引き出しつつ、テールゲート部13とともに後方且つ下方に傾けていく。そしてスロープ板12が、車両2の後側開口部4と路面との間に掛け渡された展開状態となり、この展開状態のスロープ板12を利用して車椅子等を車室3と路面等の間で乗降させることができる。
そして図3及び図4に示す車室3の床側には、左右一対のサイドメンバ20,30と、後部フロア40と、ジャッキ搭載構造JMとが設けられている(各図では、カーペットを省略して車室3を図示している)。このジャッキ搭載構造JMは、ジャッキJKを、後述する載置用部材50に載置して保持しつつ、特定のサイドメンバ(20)の車幅方向内側に位置する後部フロア40の適所(右サイド部42)に取出し可能に搭載する構造である。そしてこの種のジャッキ搭載構造JMでは、ジャッキJKを、その取出し性を確保しつつ、車両後突の際の飛散を極力回避できるように後部フロア40に搭載することが望まれる。そこで本実施例では、後述する比較的コンパクトな構成によって、ジャッキJKを、その取出し性を確保しつつ後部フロア40の適所に搭載しておくこととした。以下、ジャッキJKの構成と、ジャッキ搭載構造JMの各構成とを詳述する。
図4及び図5に示すジャッキJKは、自動車の車両昇降用に用いられるパンタグラフ式ジャッキであり、ベース2jと、受座3jと、パンタグラフリンク4jと、操作螺旋軸5jとを備えている。ベース2jは、ジャッキJKを支持する台座として機能し、ジャッキJKの使用時において下側に位置する路面に載置される。また受座3jは、上側に位置する車両(ボディ)を受ける座として機能し、車両の図示しない突部に嵌合可能な凹部33jを有している。またパンタグラフリンク4jは、逆ハ字形に配置される一対の下側リンク41jの上(各図では右側)に、ハ字形に配置される一対の上側リンク42jが配置されることによって形成されている。これら下側リンク41jと上側リンク42jとは、互いに相対回転できるように前後の連結軸部6j,7jによって軸連結されている。
図3に示す一対のサイドメンバ(右サイドメンバ20,左サイドメンバ30)は、左右対称形状を有している以外は概ね同一の基本構成を有するため、以下に、専ら右サイドメンバ20を一例にその詳細を説明する。図4及び図6に示す右サイドメンバ20は、車両2の右側に配置された柱状の部材であり、後述の載置用部材50が固定される本発明のサイドメンバに相当する。この右サイドメンバ20は、車両後部側において上方視でクランク状に曲げられているとともに、その曲げ起点として、前側に位置する前屈曲部20Aと、後側に位置する後屈曲部20Bとを有している。そして右サイドメンバ20には、前後の各屈曲部20A,20Bを境に、後述する前側部位21と屈曲部位22と後側部位23とが前から後に向けて形成されている。
図4及び図6に示す右サイドメンバ20では、前屈曲部20Aの前方に位置する前側部位21と、後屈曲部20Bの後方に位置する後側部位23とが概ね車両前後方向に延びている。そして後側部位23は、前側部位21よりも右側に配置されているとともに、その後端23Eが、車両2の後端のボディに設けられた孔部Hに挿通されている。この後側部位23の後端23Eは、概ね車両2の後端に位置し、後述するジャッキとのクリアランスを設定する際の基準となる。また屈曲部位22は、前側部位21に対する屈曲起点となる前屈曲部20Aと、後側部位23に対する屈曲起点となる後屈曲部20Bとの間で車幅方向(一つの方向)に曲げられている。すなわち屈曲部位22は、前側部位21と後側部位23の間で車幅方向外側(各図の右側)に曲げられており、前屈曲部20Aから後屈曲部20Bに向かうにつれて次第に右側に傾斜している。
ここで右サイドメンバ20は、図6及び図10に示すように車幅方向外側(各図の右側)が解放されたハット断面を有し、車両内側を臨む内側面24と、上側を臨む上側面25と、下側を臨む下側面26とを有している。さらに上側面25の右端には、上方に向けて曲げられた上フランジ部25aが形成され、下側面26の右端には、下方に向けて曲げられた下フランジ部26aが形成されている。そして図6に示すように、右サイドメンバ20には、その変形を助長するための前後の脆弱部27,28が形成されている。前側の脆弱部27は、右サイドメンバ20の上側に形成された複数(図では3つ)の上ビード部27a,27b,27cで構成されている。これら各上ビード部27a~27cは、右サイドメンバ20の上側面25と上フランジ部25aの間の角部を局部的に上側へ盛り上がらせる方向に変形させて設けられている。そして各上ビード部27a~27cが、前屈曲部20Aの上側で前後方向に並列して形成されることで、前側部位21に対する屈曲部位22の変形が助長される。また後側の脆弱部28は、右サイドメンバ20の内側面24に形成された内ビード部28aで構成されている。この内ビード部28aは、右サイドメンバ20の内側面24を局部的に右側へ凹ませる方向に変形させて設けられており、概ね上下に長尺な矩形に形成されている。そして内ビード部28aが、後屈曲部20Bの内側面24に形成されることで、後側部位23に対する屈曲部位22の変形が助長される。
図3に示す後部フロア40は、上方視において概ね台形に形成された板材であり、前側は相対的に幅狭となっているが、後端に向かうにつれて次第に幅広となっている。この後部フロア40には、スロープ装置10(スロープ板)が配設されるセンター部41と、左右一対のサイド部42,43とが形成されている。ここでセンター部41は、左右のサイドメンバ20(30)の前側部位21(31)間に形成された概ね矩形の部位であり、後部フロア40の大部分をなして車両前後方向に延びている。そしてセンター部41は、相対的に下方に凹の凹み部位となっており、その左右には、センター部41よりも一段高い各サイド部42,43が設けられている。
図3及び図4を参照して、左右のサイド部(右サイド部42,左サイド部43)は、上述したようにセンター部41よりも一段高い部位であり、後部フロア40の右後側と左後側に分かれて設けられている。ここで各サイド部42,43は、左右対称となっている以外は概ね同一の基本構成を有しているため、以下に、右後側の右サイド部42を一例にその詳細を説明する。この右サイド部42は、本発明のサイド部に相当する部分であり、右サイドメンバ20の屈曲部位22から後側部位23にかけての部分とセンター部41の間に形成されている。なお右サイド部42の右縁は階段状に屈曲しており、図6に示す右サイドメンバ20の内側面24から上側面25にかけての部分にあてがって部分的に固定しておくことができる。そして図3に示す右サイド部42は、センター部41に比して前後左右の寸法が小さく狭小となっている。例えば本実施例の右サイド部42は、後部側の車幅方向の幅寸法W1が相対的に大きくとられているが、センター部41と比べると幅狭となっており、さらに前方に向かうにつれて次第に幅寸法が小さくなっていく。そして右サイド部42上には、図4に示す平板状のサイド板部420が固定されて一体化されており、このサイド板部420上に後述の載置用部材50が配設されている。
図4及び図7に示す載置用部材50は、未使用状態のジャッキJKを載置可能な板状の部材であり、本実施例では、後述する保持ブラケット60を介してジャッキJKを保持できる。この載置用部材50は、図7及び図9を参照して、上方及び左方が解放された断面略L字状に形成されており、底壁部51及び右壁部52で本体部が形成され、さらに補助壁部53が設けられている。なお後述する載置用部材50の配置位置は、本体部をなす底壁部51及び右壁部52の配置位置で規定でき、補助壁部53の配置位置は特に考慮しなくともよい。そして右壁部52は、底壁部51(詳細後述)の右縁から起立する立壁状の部位であり、その前側には、右サイドメンバ20との溶接用の凹部位52aが形成されている。また右壁部52の上縁には、右側に向けて張り出す上側フランジ52bが形成されており、この上側フランジ52bは、右サイドメンバ20の上側面25に沿うように配置される。
図4及び図8に示す保持ブラケット60は、上方が解放された断面横コ字状の板材であり、載置用部材50上に配置される底板部61と、この底板部61の左右端から起立する右板部62及び左板部63とを有している。底板部61は、上方視で概ね矩形をなしているとともに、その前部側が一段高くされて、横向きに寝かせられたジャッキJKの下側形状に合わせられている。そして底板部61の前縁左側には、上方に延長したのち前方に延長するストッパ片610が設けられている。このストッパ片610は、ジャッキJKのベース2jに当接可能な位置に配置されており、ジャッキJKの前側への過移動を規制することができる。またストッパ片610の前端は、載置用部材50の位置決め片510に当接可能な位置に配置されており、載置用部材50に対する位置決めに利用できる。
図9を参照して、載置用部材50及び保持ブラケット60を、後部フロア40に配設する(図9では、便宜上、保持ブラケットを二点破線で図示する)。このとき載置用部材50を、右サイドメンバ20の屈曲部位22に沿わせながら右サイド部42のサイド板部420上に配置する。さらに底壁部51の後部と補助壁部53の上に、右サイドメンバ20に沿うように保持ブラケット60を傾斜させて位置決めして配置しておく。そして載置用部材50の底壁部51を、その後部に位置する保持ブラケット60とともにサイド板部420に溶接して固定する。
つぎに図3及び図4を参照して、載置用部材50の保持ブラケット60に、横向きに寝かせた未使用状態のジャッキJKを前後から挿通させた状態とする。このとき保持ブラケット60の右板部62と左板部63の間にベース2jと受座3jを配置し、この状態でジャッキJKの操作螺旋軸5jを正転方向に螺旋回ししていく。こうすることでパンタグラフリンク4jの高さ(横向きの状態では左右の長さ)が大きくなり、ベース2jと受座3jとが右板部62と左板部63に押し当てられる。このようにジャッキJKの適所を保持ブラケット60に押し当てておくことで、このジャッキJKを載置用部材50に載置しつつ安定的に保持しておくことができる。そして本実施例では、図10に示すように横向きに寝かせた状態のジャッキJKを、右サイド部42のサイド板部420に沿わせて平行に配置することで、車室3における効率的なスペースの確保が可能となっている。
図3、図12及び図13を参照して、車両後突の際には、車両2の後端(23E,33E)から入力された荷重Fを各サイドメンバ20,30が変形することで吸収する。そして各サイドメンバ20,30の変形時の挙動は、左右対称となっている以外は概ね同一であるため、以下に、右サイドメンバ20を一例にその挙動を説明する。図12に示す右サイドメンバ20は、屈曲部位22にて車幅方向外側に曲げられていることで、屈曲部位22から後側部位23にかけての部分が荷重Fにて車両前方に変形していく(図12では、便宜上、変形途中のサイドメンバを、ハッチを付した二点破線で図示している)。すなわち右サイドメンバ20では、後側部位23が、その軸方向から荷重Fを受け止めながら車両前側に移動していく。つづいて屈曲部位22は、後側部位23の押圧を後屈曲部20B側で受けることで、前屈曲部20Aを起点に次第に右方に傾きながら前側に変形していく。このとき右サイドメンバ20では、図6及び図9に示す各脆弱部27,28によって変形が助長されるため、屈曲部位22が前側に向けて傾くようにスムーズに曲げられていく。そして図13に示すように、後側部位23が前後に潰れた状態となり、さらに屈曲部位22が大きく前方且つ右方に傾くことにより、車両2の後端(23E)から入力された荷重を右サイドメンバ20で吸収することができる。
2j ベース
3j 受座
33j 凹部
4j パンタグラフリンク
41j 下側リンク
42j 上側リンク
5j 操作螺旋軸
6j,7j 連結軸部
2 車両
3 車室
4 後側開口部
5 バックドア
10 スロープ装置
12 スロープ板
12a 第一平板部
12b 第二収納板部
13 テールゲート部
400 カーペット
JM ジャッキ搭載構造
20 右サイドメンバ(本発明のサイドメンバ)
20A 前屈曲部
20B 後屈曲部
21 前側部位
22 屈曲部位
23 後側部位
23E 後側部位の後端(車両の後端)
24 内側面
25 上側面
25a 上フランジ部
26 下側面
26a 下フランジ部
27 前側の脆弱部
27a,27b,27c 上ビード部
28 後側の脆弱部
28a 内ビード部
30 左サイドメンバ
30A,30B 別の屈曲部
31 別の前側部位
32 別の屈曲部位
33 別の後側部位
33E 別の後側部位の後端
40 後部フロア
41 センター部
42 右サイド部(本発明のサイド部)
43 左サイド部
420 サイド板部
50 載置用部材
51 底壁部
51a 段差部
51b 小片部
510 位置決め片
511 補強リブ
51c,53c 位置決め孔
52 右壁部
52a 凹部位
52b 上側フランジ
53 補助壁部
60 保持ブラケット
61 底板部
62 右板部
620 凹み箇所
63 左板部
610 ストッパ片
62a,63a 支持フランジ
71 前固定部位
72 後固定部位
Claims (6)
- 車両昇降用のジャッキを、載置用部材に載置して保持しつつ、サイドメンバの車幅方向内側に配置された後部フロアに取出し可能に搭載する車両のジャッキ搭載構造において、
前記サイドメンバは、車両後部側において車両前後方向に延びる前側部位及び後側部位と、前記前側部位と前記後側部位の間に位置する屈曲部位とを有するとともに、前記屈曲部位にて、車幅方向及び上方の少なくとも一つの方向に曲げられており、
前記載置用部材は、前記サイドメンバに固定されて、前記屈曲部位に近接した状態で前記後側部位よりも車両前側に配置されている車両のジャッキ搭載構造。 - 前記載置用部材は、車幅方向から前記サイドメンバと前記後部フロアとに渡されてこれらに固定されている請求項1に記載の車両のジャッキ搭載構造。
- 前記屈曲部位は、前記前側部位に対する屈曲起点となる前屈曲部と、前記後側部位に対する屈曲起点となる後屈曲部との間で前記一つの方向に曲げられており、
前記載置用部材は、前記前屈曲部と前記後屈曲部の間に固定されて配設されている請求項1又は2に記載の車両のジャッキ搭載構造。 - 前記載置用部材は、前屈曲部側に設けられた前固定部位と、後屈曲部側に設けられた後固定部位にて前記屈曲部位に固定されて配設されている請求項3に記載の車両のジャッキ搭載構造。
- 前記サイドメンバには、その変形を助長する脆弱部が設けられている請求項1~4のいずれか一項に記載の車両のジャッキ搭載構造。
- 前記後部フロアには、前記サイドメンバの車幅方向内側に、車両と路面間に掛け渡し可能なスロープ板が配設されるセンター部が設けられているとともに、
前記サイドメンバと前記センター部の間に、前記載置用部材に搭載されたジャッキが配置されるサイド部が設けられている請求項1~5のいずれか一項に記載の車両のジャッキ搭載構造。
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2020
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