一般に、金属材料、例えば、アルミニウム又はその合金材料等による円柱状のビレット(押出材)を押出成形する押出プレス装置は、メインシリンダの、油圧で前進駆動させるメインラムの先端部に、メインクロスヘッドを介して押出ステムが取り付けられている。このような押出プレス装置において、エンドプラテン側に配置されたダイスに、コンテナシリンダ等でコンテナを押し付けた状態で、コンテナ内に収納されたビレットを、該押出ステムを前進させてダイスに押圧(アプセット工程)させる。そして、メインラム(押出ステム)をさらに前進させることにより、ダイスから所定の押出成形品を押出成形する(押出工程)。
そして、押出工程完了後、次の押出工程を開始するためにアイドリング工程が行われる。アイドリング工程(非押出工程)は様々な工程からなっており、それぞれの工程において多くの油圧駆動アクチュエータが駆動される。例えば、コンテナシリンダによりコンテナをダイスから離間させる工程、その後、押出成形品と一体でダイス側に残っているビレットの残渣(ディスカード)とダイスから押出された押出成形品とをシャー装置で切断する工程、また、次の押出工程のビレットをコンテナ内に挿入するため、押出ステム等の押出のための構成(押出ステム、メインクロスヘッド、メインラム/以下、押出ステム構成と呼称する)を、サイドシリンダによりコンテナから離間させ、待機位置まで後退させる工程や、新たなビレットを装置外から押出軸線上まで搬入させ、コンテナ内に挿入する工程等、そして、メインシリンダ及びサイドシリンダに作動油を供給させて、押出ステム構成の押出ステムをビレットに接触するまで押出方向に前進させ(無負荷前進)、そのまま押出ステムによりコンテナ内の新たなビレットをダイスに押圧させて、コンテナ内で塑性変形させるアプセット工程等がある。アイドリング工程(非押出工程)においては、これら様々な工程が平行して、あるいは連続して行われた後、次の押出工程が開始される。
従来型の押出プレス装置では、このような押出工程やアイドリング工程において、並列に接続された複数台の可変吐出量油圧ポンプ群(メインポンプユニット)のそれぞれの可変吐出量油圧ポンプを選択的に駆動させて、必要な量の作動油を押出プレス装置の各油圧駆動アクチュエータに供給させる。メインポンプユニットを構成する可変吐出量油圧ポンプには、例えば、可変容量型斜板式ピストンポンプ等が採用され、基本的には、該ポンプを駆動させる駆動電動機(一般的には誘導電動機)を、回転数を制御することなく回転させた状態で、該ポンプ毎に備える吐出量可変機構の油圧アクチュエータ(例えば、可変容量型斜板式ピストンポンプにおいて、複数のピストンのストロークを制御するための、斜板の傾斜角度を制御する油圧アクチュエータ)を制御することにより吐出量が制御される。この油圧アクチュエータは、該油圧アクチュエータへ供給される作動油の流量(あるいは圧力)が、吐出量可変機構側に配置された電磁弁への流量制御指令(0~10V)の電圧を変えることにより、0(ゼロ)Vであれば吐出流量が0(ゼロ/実際には駆動用電動機が回転している状態においては多少吐出される)となり、10Vであれば、仕様上の最大吐出量が吐出されるというように、可変吐出量油圧ポンプの仕様上の最大吐出量を上限として、流量制御指令の電圧(0~10V)に比例して吐出量が制御される。
ここで、複数台の可変吐出量油圧ポンプで構成される従来のメインポンプユニットにおける、押出工程及びアイドリング工程について、図1を参照しながら説明する。図1は、No.1からNo.4の4台の可変吐出量油圧ポンプで構成されるメインポンプユニットにおける、各油圧ポンプの駆動及び吐出量との関係を示す図である。説明を容易にするために、両工程の代表として、押出工程(初速、押出、終速)と、アイドリング工程ではメインラムの無負荷前進時、アプセット工程、無負荷後退時と、をメインラムの押出速度を%(無負荷状態の前進・後退時の速度を100%とする)で表示して挙げた。
まず、アイドリング工程を説明する。アイドリング工程においては、メインラムの無負荷前進時及び後退時(無負荷)を含め、ポンプNo.1からNo.4の全ての油圧ポンプを最大吐出量で吐出させる流量制御指令(10V)が、全ての油圧ポンプの吐出量可変機構の電磁弁へ発信される。また、アイドリング工程におけるアプセット工程においても、ポンプNo.1からNo.4の全ての油圧ポンプに流量制御指令が発信されるが、この流量制御指令は、各油圧ポンプの吐出量を最大吐出量の80%とする流量制御指令(8V)である。これらアイドリング工程においては、制御装置から予め設定された流量制御指令が、全ての油圧ポンプの吐出量可変機構の電磁弁へ一方的に発信されるオープン制御が行われる。そして、メインラムを含め、各油圧アクチュエータへ油圧管路が分岐した後に配置される各油圧アクチュエータ用の油圧機器により、必要に応じて各アクチュエータの作動速度や作動圧力が制御される。
次に、押出工程を説明する。押出工程においては、基本的に、駆動させる油圧アクチュエータがメインシリンダ(メインラム/押出ステム構成)及びサイドシリンダのみであり、押出成形品の寸法・形状精度を確保させるためにメインラムを低速で前進させる。そのため、アイドリング工程に対して、メインポンプユニットから供給させる必要作動油量(メインポンプユニットのユニット吐出量)は少なく、図1においては、予め、ポンプNo.1の最大吐出量(400L/min.)以下で必要作動油量を確保する前提で、ポンプNo.1のみが駆動される。ここで、押出工程におけるメインラムの前進速度、すなわち、押出速度は、押出成形品や押出条件に基づく好適な押出速度があって、この好適な押出速度を安定して維持させることが、ダイスから押し出される押出成形品の寸法・形状精度の安定に直結する。そのため、アイドリング工程と異なり、メインラムの押出速度は、予め、押出成形品や押出条件に準じて設定された設定押出速度となるように、試験押出成形にて得た好適な押出条件(油圧ポンプの駆動台数や吐出量設定等)に基づくオープン制御や、メインラムの実押出速度を同設定押出速度に維持させるフィードバック制御が行われる。ここでは、メインラムの実押出速度を同設定押出速度に維持させるフィードバック制御を前提に説明する。
アプセット工程後、メインラムの実押出速度が設定押出速度v1(スモールブイワン)に到達するまでの、必要作動油量及びメインラムの実押出速度の関係を示すグラフを図2に示す。グラフの横軸が時間tで、縦軸がメインラムの実押出速度v(スモールブイ)及び必要作動油量V(ラージブイ)である。グラフ中、実線がメインラムの実押出速度、破線がメインラムの実押出速度に準じた必要作動油量を示す。
アプセット工程後、メインシリンダ及びサイドシリンダの油室にメインポンプユニット(ポンプNo.1)から作動油が供給される。メインラムにより、コンテナ内のビレットが押圧され、ダイスから押出成形品が押出される(メインラムの前進が開始される)までは、メインシリンダの油室や、同油室までのメインポンプユニットからの管路内において、作動油の圧力が上昇し作動油が圧縮される。さらに、メインラムが前進を開始した後、実押出速度を上昇させる(必要作動油量を供給させる)ためには、メインポンプユニットから供給させる作動油量を増加させる必要がある。そのため、図2に示すように、メインラムの実押出速度(実線)が設定押出速度v1に到達する時間t1までに、必要作動油量は急増する。一方、メインラムの実押出速度が設定押出速度v1に到達すると、メインラムの実押出速度が設定押出速度v1に維持されれば良いので、必要作動油量は急減する。すなわち、急増する必要作動油量の最大必要作動油量Vmaxが、ポンプNo.1の最大吐出量以下であれば、メインラムの押出速度のフィードバック制御を問題無く行わせることができる。
また、時間t1以降、図を簡単にするため、実押出速度が設定押出速度v1と一致し、且つ、時間t2以降、必要作動油量も安定するように図示しているが、実際には、メインラムが受ける押出力(押出作用力)の反力は、押出工程の進行に伴うビレットの全長短縮による、ビレット及びコンテナ内面との摩擦力の減少等に起因する押出力(押出作用力)の変動により若干変動する。そのため、時間t1以降も、実押出速度を設定押出速度v1に一致させるためのフィードバック制御が継続され、メインポンプユニットから供給させる必要作動油量の増減制御が継続されることが好ましい。
ここで、上記のフィードバック制御は、具体的には、メインラムの実押出速度が、図示しない位置センサや速度センサ等により算出・検出され、図示しない制御手段において、算出・検出された実押出速度と予め設定された設定押出速度との差異から、メインシリンダ及びサイドシリンダに供給する作動油の増減量が算出される。例えば、図2に示すように、押出工程開始から時間t0経過時のメインラムの実押出速度がv0(スモールブイゼロ)、この時必要な作動油供給量をV0(ラージブイゼロ)とすると、設定押出速度v1との差異(v1-v0)から、増加すべき作動油量(V0-実押出速度v1時の必要作動油量)が算出される。そして、同増加量に基づき、駆動中のポンプNo.1の吐出量をリアルタイムで増減させるべく、ポンプNo.1の吐出量可変機構の電磁弁へ流量制御指令が発信される。
このようなメインラムの押出速度のフィードバック制御においては、例えば、ポンプNo.1からNo.4の各油圧ポンプの最大吐出量が400L/min.だとすると、ポンプNo.1の吐出量を制御する流量制御指令は0(ゼロ)から10Vが、作動油の吐出量において0(ゼロ)Lから400L/min.に相当する。そのため、流量制御指令を0.1V変化させることにより、ポンプNo.1の吐出量(メインポンプユニットのユニット吐出量)を4L/min.変化させることができる。このように、流量制御指令(電圧)と制御すべき作動油の吐出量の関係が、駆動させる油圧ポンプの台数に基づくものとなる。
一方、図示はしてないが、図1の押出工程において、図2における最大供給作動油量Vmaxが、油圧ポンプ1台の最大吐出量より多く、且つ、ポンプNo.1及びNo.2の最大吐出量の合計以下であることが想定された場合は、ポンプNo.1及びポンプNo.2の2台の油圧ポンプ駆動が前提となる。この場合、ポンプNo.1及びポンプNo.2の最大吐出量の合計が800L/min.となることから、ポンプNo.1のみで行う押出速度の制御とは異なり、ポンプNo.1及びポンプNo.2の吐出量を制御する流量制御指令は0(ゼロ)から10Vが、作動油の吐出量において0(ゼロ)Lから800L/min.に相当する。そのため、流量制御指令を0.1V変化させることにより、ポンプNo.1及びポンプNo.2の吐出量(メインポンプユニットのユニット吐出量)を8L/min.変化させることができる。
このように、複数台の可変吐出量油圧ポンプで構成される従来のメインポンプユニットで行われる、メインラムの押出速度の制御(オープン制御やフィードバック制御)は、駆動させる油圧ポンプの台数により、流量制御指令(電圧)と制御すべき作動油の吐出量の関係が異なる。そのため、押出成形品や押出速度に基づき、経験則や机上計算で求められた、図2における最大必要作動油量Vmaxを基準に、押出工程時に駆動させる油圧ポンプの台数を決定すると共に、この台数に基づく、油圧ポンプへの流量制御指令の電圧と制御すべき作動油の吐出量の関係が、押出工程における、メインラムの押出速度の制御のベースとして制御装置に入力される。
そのため、押出工程において、必要作動油量Vmaxが、駆動させた油圧ポンプの最大吐出量の合計を超えた場合、メインポンプユニットのアンロード状態の油圧ポンプ、すなわち、作動油を吐出させているが、吐出管路のアンロード弁を開放(ON)させて、吐出させた作動油をタンク管路に戻している油圧ポンプを新たにオンロード状態にさせて不足分を補うフィードバック制御を行うと、メインラムの実押出速度の変動を伴うという問題があった。これは、当初想定した油圧ポンプ台数に基づいて、制御装置内で算出された作動油の増減量に準じた流量制御信号が、当初想定と異なる台数の、それぞれの油圧ポンプに発信され、新たにオンロード状態にさせた油圧ポンプを含む、メインポンプユニットの実際のユニット吐出量の増減量が、制御装置内で算出された作動油の増減量と異なることによるものである。そのため、メインラムの実押出速度を設定押出速度に一致させるために、フィードバック制御により、メインポンプユニットのユニット吐出量が増減されるが、実際の必要作動油量より多い、あるいは少ないため、設定押出速度に対する実押出速度の変動(幅)が大きくなり、メインラムの実押出速度の制御精度が低下する。また、上記を鑑みて、押出工程中に、オンロード状態の油圧ポンプの台数が変わるような設定押出速度の変更(増減)には対応しない制御システムが一般的であった。
必要作動油量Vmaxに係るオンロード状態の油圧ポンプの台数を変える状況が発生した場合、押出工程を中止して、新たに決定した油圧ポンプの台数に基づく、油圧ポンプへの流量制御指令の電圧と制御すべき作動油の吐出量の関係を、押出工程における、メインラムの押出速度の制御のベースとして新たに制御装置に入力し直す作業が必要となる。また、押出工程を中止すると、押出成形品にストップマーク(成形不良)が付くという問題や、入力し直した押出条件(オンロード状態の油圧ポンプ台数等)下で押出工程を再開させた後、メインラムの実押出速度が設定押出速度v1に到達するまでに時間を要するという問題があった。
一方、特許文献1には、押出プレス(装置)の、複数台の可変容量型ポンプ(可変吐出量油圧ポンプ)を並列に有する油圧回路(メインポンプユニット)の制御装置が開示されている。特許文献1のメインポンプユニットにおいては、必要油量がポンプ1台の最大吐出量以下のときにポンプ1台をオンロードして同ポンプから必要油量を供給すると共に、残りのポンプをアンロードし、かつ必要油量がポンプ1台の最大吐出量より多いときに最大吐出量もしくはそれに近い状態にオンロードした1乃至数台のポンプと、不足分を補う1台の中間負荷状態のポンプにより必要油量を供給すると共に、残りのポンプをアンロードすることが開示(特許文献1の明細書第1項右欄13行目から第2項左上欄2行目まで、及び図3他参照)され、この制御装置により、全ポンプが一斉にオンロードする方式に比べて最大40%の省エネルギー効果が得られることが開示されている(特許文献1の明細書第3項左上欄8行目から16行目参照)。
さらに、特許文献1には、ポンプ4台の駆動状態について、ポンプ1台(特許文献1の図1の符号11)が100%吐出のオンロード状態で、ポンプ1台(特許文献1の図1の符号12)が中間負荷のオンロード状態で、アンロード状態のポンプが2台(特許文献1の図1の符号13、14)の場合、アンロード状態のポンプの内1台(特許文献1の図1の符号14)のモータ(特許文献1の図1の符号24)を停止させ、アンロード状態のポンプ13のモータ23を、中間負荷のオンロード状態のポンプ12の吐出量制御信号が70%以下のときは停止、70%以上になれば起動し、ポンプ23を無負荷回転状態(アンロード状態)とすることにより、さらなる省エネルギー効果が得られることが開示されている(特許文献1の明細書第3項左下欄17行目から第3項右下欄6行目参照)。
以下、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
[第1実施形態]
まず、第1実施形態に係る押出プレス装置の基本構成について、図3を参照しながら説明する。図3に示す押出方向を押出プレス装置の前方、その逆を後方とする。第1実施形態に係る押出プレス装置100においては、エンドプラテン1に対向して、メインシリンダを構成するメインシリンダハウジング2が配置され、エンドプラテン1及びメインシリンダハウジング2が複数のタイロッド3によって連結されている。エンドプラテン1の後方面には押出穴が形成されたダイス4が配置され、ダイス4の後方にはコンテナ5(コンテナホルダ12)が配置される。また、エンドプラテン1にはコンテナシリンダ13が配置され、コンテナシリンダ13により、コンテナ5(コンテナホルダ12)をダイス4に対して接近・離間させる。コンテナ5のビレット装填穴には、押出プレス装置100の外部から、図示しない装填機構によりビレット(押出材)6が装填され、後述する押出ステム7によりビレット6をダイス4に対して押圧させることにより、ダイス4に形成された押出製品の断面形状に準じた孔から、押出製品が連続して押出成形される。
押出作用力を発生させるメインシリンダは、メインシリンダハウジング2にメインラム9を内蔵し、その後方には、作動油の供給により、メインラム9をコンテナ5に対して前進させる油室2aが形成されている。第1実施形態においては、後述するメインポンプユニット60から、メインシリンダハウジング2の油室2aに作動油を供給させて、メインラム9を押出方向に前進させる。そして、メインラム9の前端にメインクロスヘッド8が配置され、メインクロスヘッド8の前端には、押出ステム7がその先端に図示しないフィックスダミーブロックを密接させて、コンテナ5のビレット装填穴と同芯に、コンテナ5に向けて突出するように配置されている。
このような構成により、メインラム9及びメインクロスヘッド8を前進させると、押出ステム7がコンテナ5のビレット装填穴に挿入されたビレット6の後端面を押圧させてダイス4を介して押出製品を押し出す。なお、後退用の油室を持たないメインラム9(メインクロスヘッド8)はサイドシリンダ14により後方へ移動される。サイドシリンダ14はメインシリンダハウジング2に配置され、そのシリンダロッドがメインクロスヘッド8に連結されており、メインラム9(メインクロスヘッド8)を前進させる際も、メインラム9の前進動作と協働して駆動させる。
次に、図4を参照しながら、第1実施形態に係る押出プレス装置100のメインポンプユニット60を説明する。図4は、第1実施形態に係る押出プレス装置の概略油圧回路図である。図4に示すように、メインポンプユニット60は、並列に接続させた8台の固定吐出量油圧ポンプ(No.1ポンプ41~No.8ポンプ48)と図示しない制御装置とを備える。これら8台の固定吐出量油圧ポンプは同じ出力(例えば55kW)の駆動電動機(サーボモータ/No.1モータ31~No.8モータ38)で駆動され、これら駆動電動機の所定の回転数(700rpm)に対して同じ固定吐出量(例えば200L/min.)仕様を有する。そして、各油圧ポンプの吐出量はこれら駆動電動機の回転数を制御することにより制御されるものであり、この固定吐出量が、駆動電動機の所定の回転数(700rpm)に対する最大吐出量となる。
そのため、第1実施形態に係る押出プレス装置100のメインポンプユニット60の各油圧ポンプを駆動する駆動電動機には低慣性モータが採用される。低慣性モータとしては、低慣性誘導電動機やPMモータ(永久磁石同期電動機)、そして、最も代表的なものとしてはサーボモータが挙げられる。これら低慣性モータは、同出力の一般誘導電動機に対して回転軸(回転子)の重量(回転慣性)が小さく、また、制御遅れ(すべり)が小さく、回転数制御時の応答性に優れ、低回転数から所定回転トルクを発生することができる電動機である。中でも、制御精度や応答性において、サーボモータが他の低慣性モータに対してより優れているとされている。一方、同出力の一般誘導電動機に対してサーボモータは高価であるが、市場において入手性に優れたカタログモデルとして上市されているサーボモータの最大出力は55kW程度であり、受注生産となることが多い110kW程度のサーボモータと同出力の一般誘導電動機との価格差に対して、最大出力は55kW程度のサーボモータであれば、同出力の一般誘導電動機との価格差を抑制することができる。そのため、第1実施形態のように、各油圧ポンプを駆動する駆動電動機に出力55kWのサーボモータを採用することにより、各油圧ポンプの吐出量の制御において、優れた制御精度や応答性を得られると同時に、駆動電動機としてのサーボモータの採用に関して、メインポンプユニット60のコストアップを抑制することができる。
なお、押出プレス装置100は2700Tクラスの押出プレス装置を想定しており、複数台の可変吐出量油圧ポンプと、それぞれの油圧ポンプを駆動させる駆動用電動機(一般誘導電動機)で構成される従来のメインポンプユニットであれば、例えば、アイドリング工程を前提とした最大吐出量が400L/min.の可変吐出量油圧ポンプ4台と、それぞれの油圧ポンプを駆動させる出力110kWの一般誘導電動機との組み合わせとなる。そのため、第1実施形態においては、従来のメインポンプユニットに対して、油圧ポンプの台数を倍にする代わりに、各油圧ポンプの吐出量及び駆動電動機の出力を半分にした形態と言える。
図4には、メインポンプユニット60から、メインシリンダハウジング2の油室2a、サイドシリンダ14,及び、コンテナシリンダ13に作動油を供給する油圧管路が図示されているが、各油圧アクチュエータへの油圧管路には、方向切換弁をはじめ、流量制御弁や圧力制御弁等、図示しない各種油圧機器が配置され、作動油を供給させる油圧アクチュエータを任意に選択し、油圧アクチュエータ側で駆動速度や駆動圧力を制御することができる。また、油圧ポンプ(No.1ポンプ41~No.8ポンプ48)の各吐出管路には、タンク管路への開閉制御が可能なアンロード弁(No.1アンロード弁41a~No.8アンロード弁48a)が配置されており、各アンロード弁は、駆動電動機(No.1モータ31~No.8モータ38)への回転数制御指令に基づき開閉制御される。本制御の詳細については後述する。
なお、図を簡単にするため、各吐出管路のアンロード弁については、No.1アンロード弁41aのみ図示し、他のアンロード弁(No.2アンロード弁42a~No.8アンロード弁48a)の図示を割愛している。図示されたNo.1アンロード弁41aは閉塞(OFF)状態である。同弁のソレノイドへの開指令によりアンロード弁を開放(ON)状態に移行させると、油圧ポンプから吐出された作動油はタンク管路に戻され、各油圧ポンプの駆動電動機を回転(駆動)させている状態であっても、メインポンプユニット60のユニット吐出量には加算されない。
また、図4には、メインポンプユニット60以外の油圧ポンプやシャー装置22への作動油供給管路が図示されている。シャー装置22は、先に説明したように、コンテナ5内に残っているビレット6の残渣(ディスカード)とダイス4から押出された押出成形品とを切断する装置である。また、各油圧アクチュエータから排出され図示しない作動油タンクに戻ってきた高温の作動油により、作動油タンク内の作動油の温度が上昇するのを防止するため、作動油タンク及びオイルクーラ21間で作動油を循環させる必要がある。油圧ポンプ51及び駆動電動機51aはそのための油圧ポンプユニットである。同様に、コンテナシリンダ13のロッド側に作動油を供給させる油圧ポンプ53及び駆動電動機53aは、押出工程中盤から後半にかけて、減少するコンテナシール力を補完させるための油圧ポンプユニット(”コンテナシールポンプ”等の呼称がある)である。これらメインポンプユニット60以外の油圧ポンプユニットについては、本願発明と直接関係ないため説明を割愛する。
次に、第1実施形態に係る押出プレス装置のメインポンプユニット60の、押出工程における制御方法について、図5乃至図7他を参照しながら説明する。具体的には、メインポンプユニット60のユニット吐出量を連続的に増減制御させることによる、押出工程におけるメインラム9の押出速度の制御方法である。説明の都合上、ユニット吐出量の増加制御から説明する。図5(a)は、本発明の第1実施形態に係る押出プレス装置のメインポンプユニットにおける、メインラムの指令押出速度に対する、各油圧ポンプの駆動電動機の電動機回転数、各油圧ポンプのアンロード弁の開放(ON)状態/閉塞(OFF)状態の関係を示す表である。説明の便宜上、図5(a)中央右下がりの太線で囲まれた範囲を”最小吐出量待機状態”とし、”最小吐出量待機状態”から上方の範囲を”作動油供給状態”、下方の範囲を”駆動電動機停止状態”と呼称する。各状態は後述する。
また、図5(b)は、図5(a)に対応する、ユニット吐出量と油圧ポンプの台数との関係を示すグラフである。図6は、図5においてNo.1ポンプ1台から、No.2ポンプを加えた2台へと油圧ポンプ台数が増える場合の、メインポンプユニットのユニット吐出量の制御を説明するグラフである。同様に、図7は、図5においてNo.1ポンプ及びNo.2ポンプの2台から、No.1ポンプ1台へと油圧ポンプ台数が減る場合の、メインポンプユニットのユニット吐出量の制御を説明するグラフである。
第1実施形態においては、説明を容易にするため、メインラム9の設定押出速度を3.0mm/sec.とし、この設定押出速度を維持させるための必要作動油量を約300L/min.とする(最大吐出量基準で油圧ポンプ1.5台分)。また、各油圧ポンプ(No.1ポンプ41~No.8ポンプ48)について、仕様上、安定して作動油を吐出させることができる吐出量の下限を最低吐出量(約30L/min./最大吐出量の約1/7)とし、各油圧ポンプが該最低吐出量を吐出する状態の駆動電動機(No.1モータ31~No.8モータ38)の回転数を最小吐出量回転数(100rpm)とする。これは、駆動電動機を最小吐出量回転数より少ない回転数で回転させた場合、油圧ポンプからの吐出が脈動し吐出量が安定しないため、第1実施形態において、これを回避して、油圧ポンプ1台の、駆動電動機の吐出量の精度を確保するための、吐出量及び駆動電動機の回転数の下限値である。また、押出工程中のメインラムの実押出速度を、設定押出速度(3.0mm/sec.)に維持させるフィードバック制御を行わせるものとする。
なお、先に説明した、各油圧ポンプの駆動電動機の所定の回転数(700rpm)に対する、各油圧ポンプの仕様上の最大吐出量200L/min.は、アイドリング工程よりも高い圧力で作動油を供給させる押出工程を前提とした最大吐出量と駆動電動機の回転数であって、上記最小吐出量回転数(100rpm)と最小吐出量(約30L/min.)も、押出工程を前提としている。そのため、押出工程よりも低い圧力で作動油を供給させるアイドリング工程においては、駆動電動機の回転数を700rpmよりも多くすることにより、各油圧ポンプが固定吐出量油圧ポンプであっても、最大吐出量を200L/min.以上(例えば、400L/min.で駆動電動機の回転数:1400rpm)にすることも可能である。
複数の油圧ポンプに、駆動させる油圧ポンプ台数に基づく同じ回転制御指令を発信させる従来のメインポンプユニットの制御と異なり、第1実施形態に係る押出プレス装置のメインポンプユニット60の、各油圧ポンプの駆動電動機には、図示しない制御装置から、駆動電動機毎に回転数制御指令(流量制御指令)が発信される。そのため、予め、押出工程における最大必要作動油量に基づき、駆動させる油圧ポンプの台数を決定し、同台数に基づく油圧ポンプの吐出量可変機構への流量制御指令の電圧と制御すべき作動油の吐出量の関係を、押出工程における、メインラムの押出速度のフィードバック制御のベースとして制御装置に入力する必要はない。
アプセット工程完了後、図5(a)の左端列(メインラム指令押出速度0.3~2.0mm/sec.)に示すように、8台の油圧ポンプ中、No.1ポンプ41のNo.1アンロード弁41aを閉塞(OFF/作動油はユニット吐出量として油圧アクチュエータへ)させた状態で、No.1ポンプ41の吐出量が最低吐出量で維持されている(No.1モータ31の回転数:最小吐出量回転数100rpm)。本願においては、複数台の油圧ポンプ中の1台の油圧ポンプ(P1)の吐出管路に配置されたアンロード弁を閉塞させて、メインラムを前進させる油室に作動油を供給させる状態を、その油圧ポンプ(P1)の”作動油供給状態”と呼称する。すなわち、メインポンプユニット60の複数の油圧ポンプの内、No.1ポンプ41のみが作動油供給状態(最低吐出量)にあり、アイドリング工程(アプセット工程)が完了し、メインシリンダハウジング2の油室2a及びサイドシリンダ11のヘッド側油室及びこれら油室への油圧管路内は、作動油で満たされるとともに、所定の圧力が維持されている。
アプセット工程(アイドリング工程)の後、No.1モータ31の回転数を回転数制御指令(流量制御指令)により最小吐出量回転数100rpmから増加させ、図5(b)に示すように、No.1ポンプ41の吐出量を最低吐出量(30L/min.)から増加させて押出工程を開始させる。メインポンプユニット60からのユニット吐出量は漸次増加するが、先に図2で説明したように、メインラム9により、コンテナ5内のビレット6が押圧され、ダイス4から押出成形品が押出される(メインラム9の前進が開始される)までは、メインシリンダハウジング2の油室2aや、サイドシリンダ14のヘッド側油室、あるいは、これら油室までのメインポンプユニット60からの油圧管路内において、作動油の圧力がさらに上昇し作動油が圧縮される。さらに、メインラム9が前進を開始した後、実押出速度を上昇させる(必要作動油量を供給させる)ために、メインポンプユニット60のユニット吐出量を増加させる必要がある。
先に説明したように、図2に示すように、押出工程開始から時間t0経過時のメインラム9の実押出速度がv0(スモールブイゼロ)、この時の必要作動油量をV0(ラージブイゼロ)とすると、設定押出速度v1との差異(v1-v0)から、増加すべき作動油量(V0-実押出速度v1時のユニット吐出量)が算出される。そして、算出された増加すべき作動油量を確保するべく、No.1ポンプ41のNo.1モータ31の回転数を増加させて、No.1ポンプ41の吐出量の増加が継続される(作動油供給状態)。
ここで、このように、油圧ポンプの少なくとも1台(P1)、第1実施形態ではNo.1ポンプ41が作動油供給状態にあるとき、少なくとも1台の、低慣性モータが停止状態の油圧ポンプ(P2)、第1実施形態ではNo.2ポンプ42の吐出管路に配置されたNo.2アンロード弁42aの開放(ON/作動油はタンク管路へ)状態を維持させたまま、油圧ポンプ(P2)、第1実施形態ではNo.2ポンプ42のNo.2モータ32を起動させて、油圧ポンプ1台の作動油の最小吐出量での吐出を行わせることが好ましい。この油圧ポンプ(P2)、第1実施形態ではNo.2ポンプ42の状態(吐出量:最小吐出量、アンロード弁:開放(ON))を、その油圧ポンプ(P2)の”最小吐出量待機状態”(図5(a)参照)と呼称する。最小吐出量待機状態にある油圧ポンプは、最低吐出量で作動油を吐出させているものの、アンロード弁が開放(ON)状態のため、吐出させた作動油はタンク管路に戻され、メインポンプユニット60のユニット吐出量に加算されることはない。
一方、上記以外のNo.3ポンプ43~No.8ポンプ48は、それぞれの駆動電動機(No.3モータ33~No.8モータ38)を停止させた状態であり、また、それぞれのアンロード弁(No.3アンロード弁43a~No.8アンロード弁48a)を開放(ON)させた状態である。これらNo.3ポンプ43~No.8ポンプ48の状態(吐出量:ゼロ、駆動電動機:停止、アンロード弁:開放(ON))を、その油圧ポンプの”駆動電動機停止状態”(図5(a)参照)と呼称する。”駆動電動機停止状態”の油圧ポンプの台数が多い程、電力消費を抑制することができる。
そして、メインポンプユニット60のユニット吐出量を増加させる際、No.1ポンプ41の吐出量を最大吐出量まで増加させても、算出された増加すべき作動油量を確保することが出来ない場合、少なくとも油圧ポンプ1台、第1実施形態ではNo.2ポンプ42における作動油の吐出量の増加制御、及び、最大吐出量で駆動させる油圧ポンプの台数の増加、第1実施形態では1台のNo.1ポンプ41を組み合わせることにより、押出工程中にメインポンプユニット60のユニット吐出量が連続的に増加制御される。
上記のように、押出工程中のメインポンプユニット60のユニット吐出量を連続的に増加させる際、より連続的に増加させるため、油圧ポンプの”油圧ポンプ台数増減準備吐出量”及び油圧ポンプの駆動電動機の”油圧ポンプ台数増減準備回転数”を設定することが好ましい。”油圧ポンプ台数増減準備吐出量”は、油圧ポンプ1台の作動油の最大吐出量から、最小吐出量を差し引いた吐出量である。そして、油圧ポンプの吐出量が油圧ポンプ台数増減準備吐出量となる、駆動電動機の回転数が”油圧ポンプ台数増減準備回転数”である。第1実施形態においては、油圧ポンプ1台の最大吐出量(200L/min.)から最小吐出量(約30L/min.)を差し引いた吐出量170L/min.が”油圧ポンプ台数増減準備吐出量”であり、同油圧ポンプの駆動電動機の回転数600rpm(=700rpm-100rpm)が”油圧ポンプ台数増減準備回転数”となる。
上記油圧ポンプ台数増減準備吐出量及び油圧ポンプ台数増減準備回転数に基づく、ユニット吐出量を増加させる際の増加制御を図6も参照しながら説明する。吐出量を増加させている作動油供給状態の油圧ポンプA、第1実施形態ではNo.1ポンプ41のNo.1モータ31の回転数が最大吐出量回転数の700rpmに到達したタイミング(No.1ポンプ41の吐出量:200L/min.)で、最小吐出量待機状態の油圧ポンプB、第1実施形態ではNo.2油圧ポンプ41のNo.2アンロード弁42aを、No.1モータ31への回転数制御指令(700rpm)により閉塞(OFF)させて、最小吐出量(30L/min.)の作動油供給状態に移行させる(No.2モータ32の回転数:100rpm.)。これにより、ほぼ瞬間的にユニット吐出量が30L/min.(最大吐出量の約1/7)急増する。
一方、上記タイミングで、油圧ポンプA、第1実施形態ではNo.1ポンプ41のNo.1モータ31の回転数を700rpmから600rpm(油圧ポンプ台数増減準備回転数)まで100rpm急減させる。これにより、No.1ポンプ41の吐出量を、最大吐出量200L/min.から170L/min.(油圧ポンプ台数増減準備吐出量)まで30L/min.急減させる。ここで、第1実施形態における各油圧ポンプの駆動電動機は、低慣性モータであるサーボモータなので、出力軸に負荷が発生している状態においても極めて応答性が高い。例えば、第1実施形態における各油圧ポンプの駆動電動機(サーボモータ/55kW)であれば、押出工程より供給させる作動油圧力が低いとはいえ、アイドリング工程において、モータ回転数を停止状態から1400rpmまで約0.3sec.で到達させることができる。そのため、モータ回転数100rpmの急減に要する時間も極めて短く、No.1ポンプ41の吐出量をほぼ瞬間的に30L/min.(最大吐出量の約1/7)急減させることができる。
その結果、図6上方のグラフに示すように、No.1ポンプ41が最大吐出量に到達したタイミングで行わせる、No.2ポンプ42の最小吐出量待機状態から最小吐出量での作動油供給状態への移行によるユニット吐出量の急増と、No.1ポンプ41の吐出量の、最大吐出量から油圧ポンプ台数増減準備吐出量への急減と(共に30L/min.)、を極めて短時間に同時に行わせるため、油圧ポンプの台数が増えるタイミングにおける、個々の油圧ポンプの吐出量の増減を相殺させて、油圧ポンプの台数が増えるタイミングにおいても、ユニット吐出量の変動は抑制され、ユニット吐出量をより連続的に増加させることができる。これら2つの制御を同時に行わせる制御を”油圧ポンプ台数増加調整制御”と呼称する。
そして、ユニット吐出量をより連続的に増加させるために、さらに、図6上方のP部において、下記の制御を行わせることが好ましい。図6上方のP部の制御の詳細を、図6下方のP部詳細を参照しながら説明する。油圧ポンプ台数増加調整制御後、一度、吐出量を、最大吐出量から油圧ポンプ台数増減準備吐出量へ急減させた油圧ポンプA、第1実施形態ではNo.1ポンプ41の吐出量を、No.1モータ31の回転数を、漸次、600rpm(油圧ポンプ台数増減準備回転数)から700rpm(最大吐出量回転数)まで増加させることより、右上がりの破線矢印で示すように増加させる。また、No.1ポンプ41のNo.1モータ31の回転数を最大吐出量回転数(700rpm)に到達させるまでの間、最小吐出量(30L/min.)での作動油供給状態へ移行させた油圧ポンプB、第1実施形態ではNo.2ポンプ42の吐出量を、水平の破線矢印で示すように維持させる。このように、最小吐出量に維持させたNo.2ポンプ42の吐出量(水平破線矢印)と、油圧ポンプ台数増減準備吐出量から最大吐出量まで増加させるNo.1ポンプ41の吐出量(右上がり破線矢印)との合計吐出量により、右上がり実線矢印で示すように、ユニット吐出量を200L/min.から230L/min.までより連続的に増加させることができる。
そして、No.1ポンプ41の吐出量が最大吐出量(200L/min.)に到達したタイミング(No.1モータ31の回転数:700rpm)で、No.1ポンプ41の吐出量を最大吐出量で維持させると共に、No.2ポンプ42のNo.2モータ32の回転数を最小吐出量回転数(100rpm)から漸次増加させ、No.2ポンプ42の吐出量を増加させることにより、No.1ポンプ41及びNo.2ポンプ42の2台の作動油供給状態により、ユニット吐出量を230L/min.から、より連続的に増加させることができる。このようなユニット吐出量の増加制御、すなわち、少なくとも油圧ポンプ1台、第1実施形態ではNo.2ポンプ42における作動油の吐出量の増加制御、及び、最大吐出量で駆動させる油圧ポンプの台数の増加、第1実施形態では1台のNo.1ポンプ41を組み合わせることにより、押出工程中にメインポンプユニット60のユニット吐出量が連続的に増加制御される。この増加制御を、図5(a)及び図5(b)に示す、作動油供給状態の油圧ポンプの台数を増やすすべてのタイミングで行わせることにより、メインポンプユニット60のユニット吐出量が、油圧ポンプの駆動台数に依らず、連続的に増加制御される。
引き続き、ユニット吐出量の減少制御について説明する。メインポンプユニット60のユニット吐出量の増加制御と比較を容易にするため、No.1ポンプ41及びNo.2ポンプ42の2台の作動油供給状態から、メインポンプユニット60のユニット吐出量を減少させる際の減少制御について説明する。
図2において、メインラム9の実押出速度が設定押出速度v1に到達すると、先に説明したように、メインラムの実押出速度が設定押出速度v1に維持されれば良いので、時間t2までの間に必要作動油量は急激に減少する。これに対応するために、メインポンプユニット60のユニット吐出量を減少させる際、No.2ポンプ42の吐出量を最小吐出量まで減少させても、算出された減少すべき作動油量を確保することが出来ない場合、少なくとも油圧ポンプ1台、第1実施形態ではNo.1ポンプ41における作動油の吐出量の減少制御、及び、最大吐出量で駆動させる油圧ポンプの台数の減少、第1実施形態ではNo.2ポンプ42を組み合わせることにより、押出工程中にメインポンプユニット60のユニット吐出量が連続的に減少制御される。
また、上記のように、押出工程中のメインポンプユニット60のユニット吐出量を連続的に減少させる際も、より連続的に増加させるため、油圧ポンプの”油圧ポンプ台数増減準備吐出量”(170L/min.)及び油圧ポンプの駆動電動機の”油圧ポンプ台数増減準備回転数”(600rpm)を設定することが好ましい。
上記油圧ポンプ台数増減準備吐出量及び油圧ポンプ台数増減準備回転数に基づいて、図7上方のZ部において、下記の制御を行わせることがより好ましい。図7上方のZ部の制御の詳細を、図7下方のZ部詳細を参照しながら説明する。まず、吐出量を減少させている油圧ポンプC、第1実施形態ではNo.2ポンプ42のNo.2モータ32の回転数が最小吐出量回転数(100rpm)に到達したタイミング(No.2ポンプ42の吐出量:30L/min.)で、No.2ポンプ42の吐出量を、水平の破線矢印で示すように最小吐出量で維持させる。また、その間、最大吐出量の作動油供給状態である油圧ポンプD、第1実施形態ではNo.1ポンプ41のNo.1モータ31の回転数を、最大吐出量回転数(700rpm)から、油圧ポンプ台数増減準備回転数(600rpm)まで漸次減少させて、No.1ポンプ41の吐出量を、左下がりの破線矢印で示すように油圧ポンプ台数増減準備吐出量(170L/min.)まで減少させる。このように、最小吐出量に維持させたNo.2ポンプ42の吐出量(水平破線矢印)と、最大吐出量から油圧ポンプ台数増減準備吐出量まで減少させるNo.1ポンプ41の吐出量(左下がり破線矢印)との合計吐出量により、左下がり実線矢印で示すように、ユニット吐出量を230L/min.から200L/min.までより連続的に減少させることができる。
そして、油圧ポンプD、第1実施形態ではNo.1ポンプ41のNo.1モータ31の回転数が油圧ポンプ台数増減準備回転数の600rpmに到達したタイミング(No.1ポンプ41の吐出量:170L/min.)で、最小吐出量の作動油供給状態にある油圧ポンプC、第1実施形態ではNo.2ポンプ42のNo.2アンロード弁42aを、No.1モータ31への回転数制御指令(600rpm)により開放(ON)させて、最小吐出量待機状態に移行させる。これにより、ほぼ瞬間的にユニット吐出量が30L/min.(最大吐出量の約1/7)急減する。
一方、上記タイミングで、油圧ポンプD、第1実施形態ではNo.1ポンプ41のNo.1モータ31の回転数を600rpm(油圧ポンプ台数増減準備回転数)から700rpmまで100rpm急増させる。これにより、No.1ポンプ41の吐出量を、170L/min.(油圧ポンプ台数増減準備吐出量)から最大吐出量200L/min.まで30L/min.急増させる。先に説明したように、第1実施形態における各油圧ポンプの駆動電動機は、低慣性モータであるサーボモータなので、出力軸に負荷が発生している状態においても極めて応答性が高く、No.1ポンプ41の吐出量をほぼ瞬間的に30L/min.(最大吐出量の約1/7)急増させることができる。
その結果、図7上方のグラフに示すように、No.1ポンプ41が油圧ポンプ台数増減準備吐出量に到達したタイミングで行わせる、No.2ポンプ42の最小吐出量での作動油供給状態から最小吐出量待機状態への移行によるユニット吐出量の急減と、No.1ポンプ41の吐出量の、油圧ポンプ台数増減準備吐出量から最大吐出量への急増と(共に30L/min.)、を極めて短時間に同時に行わせるため、油圧ポンプの台数が減るタイミングにおける、個々の油圧ポンプの吐出量の増減を相殺させて、油圧ポンプの台数が減るタイミングにおいても、ユニット吐出量の変動は抑制され、ユニット吐出量をより連続的に減少させることができる。これら2つの制御を同時に行わせる制御を”油圧ポンプ台数減少調整制御”と呼称する。このようなユニット吐出量の減少制御、すなわち、少なくとも油圧ポンプ1台、第1実施形態ではNo.1ポンプ41における作動油の吐出量の減少制御、及び、最大吐出量で駆動させる油圧ポンプの台数の減少、第1実施形態では1台のNo.2ポンプ42を組み合わせることにより、押出工程中にメインポンプユニット60のユニット吐出量が連続的に減少制御される。この減少制御を、図5(a)及び図5(b)に示す、作動油供給状態の油圧ポンプの台数を減らすすべてのタイミングで行わせることにより、メインポンプユニット60のユニット吐出量が、油圧ポンプの駆動台数に依らず、連続的に減少制御される。
これまで説明したように、図2に示す、押出工程開始から、メインラム9の実押出速度が設定押出速度V1に到達する時間t1までの、必要作動油量の増加、あるいは、時間t1以降の必要作動油量の減少に対して、油圧ポンプ1台における作動油の吐出量の制御、及び、最大吐出量で駆動させる前記油圧ポンプの台数の増加、を組み合わせることにより、押出工程中における油圧ポンプの駆動台数に依らず、メインポンプユニット60のユニット吐出量が連続的に増減制御され、押出工程におけるメインラムの押出速度のフィードバック制御が可能となる。また、時間t1以降においても、諸要因により、メインラム9の実押出速度が変動する場合、必要に応じてユニット吐出量を増減させて、押出工程におけるメインラムの押出速度のフィードバック制御を継続させることができる。さらに、メインラム9の押出速度のオープン制御においても、押出工程中における油圧ポンプの駆動台数に依らず、必要に応じてユニット吐出量を増減させることができる。
なお、押出工程中における油圧ポンプの駆動台数に依らないため、メインラムの押出速度のフィードバック制御やオープン制御いずれであっても、押出工程中の設定押出速度の変更も可能である。また、さらに、図5(a)に示すように、押出工程中、最小吐出量待機状態の油圧ポンプ以外の駆動電動機を停止状態(駆動電動機停止状態)とすることができるので、押出工程における電力消費を大きく抑制すると共に、油圧ポンプ及び駆動電動機からの騒音も大きく抑制することが可能となる。
ここで、図5(a)の、左から増加するメインラム指令押出速度の各縦欄における電動機回転数について補足説明する。各縦欄において、No.1ポンプを除いて、電動機回転数を600-700(rpm)と記載した油圧ポンプが1台あるが、これは、作動油供給状態の油圧ポンプ台数の増減時において必要となる、関連油圧ポンプの駆動電動機の、先に説明した、油圧ポンプ台数増減準備吐出量~最大吐出量に対応する回転数制御を示したものである。一方、電動機回転数を100-700(rpm)と記載した油圧ポンプは、吐出量制御に対応する駆動電動機の回転数制御を示したものである。
なお、特許文献1のような、複数台の可変吐出量油圧ポンプを並列に接続するメインポンプユニットの吐出量の増減制御においては、これら可変吐出量油圧ポンプの吐出量可変機構(可変容量型斜板式ピストンポンプ等)の機械的制御に係る構成(油圧駆動部の摺動・回転支持部や作動油のシール部等)の経年変化による制御精度の変化(劣化)を回避することが困難である。極端な場合、吐出量可変機構の電磁弁への流量制御指令が同じであっても、制御される吐出量が変動する虞がある。そのため、これら構成の定期的なメンテナンスが必要であり、また、変化した制御精度を何らかの形で補正する必要がある。
これらを鑑みると、流量制御指令に基づく、可変吐出量油圧ポンプの吐出量可変機構の機械的制御が介在する油圧ポンプの吐出量の制御精度に対して、機械的制御が介在せず、駆動電動機への回転数制御指令で吐出量を電気的・直接的に制御する固定吐出量油圧ポンプの吐出量の制御精度の方が優れていることは言うまでもない。また、駆動電動機が低慣性モータであれば、同出力の一般誘導電動機に対して、先に説明した様々な優位性がある上、第1実施形態のように、低慣性モータとして、出力55kW程度のサーボモータを採用して、メインポンプユニットを構成した場合、第1実施形態で説明した、油圧ポンプの駆動台数に依らない、ユニット吐出量の連続的な増減制御が可能になると共に、一般的に高額だとされるサーボモータであっても、同出力の誘電電動機との価格差を抑制して、メインポンプユニットのコストを抑制することができる。
さらに、近年要求が高まっている自動車部材等に採用される精密押出製品の場合、製品のサイズにも依るが、メインラムの押出速度が3.0mm/sec.以下の低速となることが多い。そのため、押出工程において、この押出速度を維持するための必要作動油量(図2の時間t2以降の押出速度安定時)は非常に少なく、この時の必要作動油量よりも大きな吐出量仕様を有する油圧ポンプ(可変吐出量油圧ポンプ/固定吐出量油圧ポンプ)を前提にした、吐出量を絞り込んだ状態での押出速度の制御(オープン制御/フィードバック制御)の場合、制御精度を確保することが難しくなる。
一方、アイドリング工程においては、メインポンプユニットからの大量の作動油供給(ユニット吐出量)が必須となる。そのため、精密押出工程を前提にして個々の油圧ポンプの最大吐出量を抑制すると、アイドリング工程における必要作動油量を鑑みて、油圧ポンプの台数を増やさざるを得ない。しかしながら、駆動させる油圧ポンプの台数により、流量制御指令(電圧)と制御すべき作動油の吐出量の関係が異なる複数台の可変吐出量油圧ポンプと、それぞれの油圧ポンプを駆動させる駆動用電動機(一般誘導電動機)で構成される従来のメインポンプユニットで行われる、メインラムの押出速度のオープン制御やフィードバック制御においては、油圧ポンプの台数を変更(増減)する制御は、増減されるユニット吐出量が、実際の必要作動油量より多い、あるいは少ないため、設定押出速度に対する実押出速度の変動(幅)が大きくなり、吐出量制御の追従性が低く現実的には採用されることはほとんどない。また、特許文献1においても、オンロード状態(作動油供給状態)の油圧ポンプの増減による、ユニット吐出量の連続的な増減制御が困難である。したがって、個々の油圧ポンプの最大吐出量を抑制し、油圧ポンプ台数を増やす場合は、第1実施形態で説明したような、組み合わせる駆動電動機を低慣性モータとして、同モータの回転数制御で吐出量を制御させる複数台の固定吐出量油圧ポンプで構成されるメインポンプユニットが、第1実施形態で説明したメインポンプユニットの制御方法により、押出工程を含めた全ての工程において電力消費を抑制し、押出工程における油圧ポンプの駆動台数に依らず、押出工程におけるメインラムの押出速度の制御を行わせるのに好適である。
[第2実施形態]
次に、図8を参照しながら、第2実施形態に係る押出プレス装置100のメインポンプユニット160を説明する。図8は、本発明の第2実施形態に係る押出プレス装置の概略油圧回路図である。第2実施形態に係る押出プレス装置100は、第1実施形態に係る押出プレス装置100(図3)の構成と同じである。したがって、図3と同じ構成については、両図と同じ符号を付与し説明を省略する。
第2実施形態においては、メインポンプユニット160が第1実施形態に係るメインポンプユニット60と異なる。具体的には、メインポンプユニット160を構成する油圧ポンプの台数が8台ではなく4台である点と、各油圧ポンプが固定吐出量油圧ポンプではなく、可変吐出量油圧ポンプである点と、が相違点である。メインポンプユニット160以外の図中の油圧ポンプは、第1実施形態(図3)で説明したものと同じであるため、図3と同じ符号を付与し説明を省略する。
図8に示すように、メインポンプユニット160は、並列に接続させた4台の可変吐出量油圧ポンプ(No.1ポンプ141~No.4ポンプ144)と図示しない制御装置とを備える。これら4台の可変吐出量油圧ポンプは同じ出力(例えば55kW)の駆動電動機(サーボモータ/No.1モータ131~No.4モータ134)で駆動され、同じ吐出量可変範囲を有する。なお、仕様上の最大吐出量は、押出工程よりも低い圧力で作動油を供給させるアイドリング工程を前提とした400L/min.で、これに対応する駆動電動機の回転数を1400rpmとする。
各油圧ポンプの吐出量可変機構(可変容量型斜板式ピストンポンプ等)に作動油を供給させる油圧ポンプユニットが、油圧ポンプ145及び駆動電動機135である。油圧ポンプ145は固定吐出量油圧ポンプで、且つ、駆動電動機135は所定の回転数でオープン制御される。そして、油圧ポンプ144から吐出量可変機構に供給される作動油の流量(あるいは圧力)が、吐出量可変機構側に配置された電磁弁への流量制御指令により制御され、吐出量が制御される。
また、油圧ポンプ(No.1ポンプ141~No.4ポンプ144)の各吐出管路には、タンク管路への開閉制御が可能なアンロード弁(No.1アンロード弁141a~No.4アンロード弁144a)が配置されており、各アンロード弁は、駆動電動機(No.1モータ131~No.4モータ134)への回転数制御指令に基づき開閉制御される。
先に説明したように、アイドリング工程においては、基本的に、No.1ポンプ141からNo.4ポンプ144の全ての油圧ポンプを最大吐出量で吐出させる流量制御指令(10V)が、全ての油圧ポンプの吐出量可変機構の電磁弁へ発信され、吐出量可変機構の機械的構成(傾板の傾斜角度等)が最大吐出量に対応した状態にオープン制御される。そして、各油圧ポンプの駆動電動機(No.1モータ131~No.4モータ134)の回転数を1400rpmで回転させる回転数制御指令が発信され、メインポンプユニット160のユニット吐出量は最大ユニット吐出量の1600L/sec.(=400L/sec.×4台)となる。
一方、押出工程においては、アイドリング工程に対して高い圧力で作動油を供給させる必要があるが必要作動油量は少ない。この時の必要作動油量よりも大きな吐出量仕様を有する油圧ポンプを前提にした、吐出量を絞り込んだ状態での押出速度の制御(オープン制御/フィードバック制御)の場合、制御精度を確保することが難しくなることは先に説明したとおりである。そこで、第2実施形態に係るメインポンプユニット160は、すべての油圧ポンプ(No.1ポンプ141~No.4ポンプ144)について、アイドリング工程における、吐出量可変機構の機械的構成の最大吐出量(400L/min.)に対応した状態に対して、押出工程においては、吐出量可変機構の機械的構成を最大吐出量に対応した状態から、例えば、最大吐出量の約半分(200L/min.)に対応した状態とする(各駆動電動機の回転数:700rpm時)。そして、この吐出量可変機構のこの状態を維持させて、この200L/min.を最大吐出量として、各油圧ポンプの駆動電動機(No.1モータ131~No.4モータ134)の回転数制御(100~700rpm)により吐出量が制御される。
すなわち、該可変吐出量油圧ポンプの該吐出量可変範囲から、少なくとも2種類の吐出量、第2実施形態では400L/min.及び200L/min.を選択すると共に、押出プレス装置の工程毎、第2実施形態ではアイドリング工程(非押出工程)及び押出工程毎に、その少なくとも2種類の吐出量から1種類の吐出量を選択し、選択された該1種類の吐出量を該工程における油圧ポンプ1台の最大吐出量、第2実施形態では、400L/min.をアイドリング工程(非押出工程)における最大吐出量、200L/min.を、押出工程における最大吐出量として、駆動電動機の回転数制御により吐出量が制御される。
上記のように、第2実施形態においては、複数の可変吐出量油圧ポンプで構成されるメインポンプユニットであっても、押出工程においては、可変吐出量油圧ポンプの吐出量可変機構による機械的な吐出量制御ではなく、各油圧ポンプの低慣性モータの回転数制御により吐出量が制御される。言い換えれば、異なる吐出量仕様の異なる固定吐出量油圧ポンプを使い分けるように可変吐出量油圧ポンプを活用し、吐出量可変機構は最大吐出量を選択するためだけに活用し、リアルタイムでの吐出量の増減に吐出量可変機構を使用しない。そのため、押出工程中における油圧ポンプの駆動台数に依らず、必要に応じてメインポンプユニットのユニット吐出量を増減させることができる点や、最小吐出量待機状態の油圧ポンプ以外の駆動電動機を停止状態(駆動電動機停止状態)とすることによる、押出工程における電力消費の抑制が可能な点も、第1実施形態と同じである。
また、アイドリング工程に対して高い圧力で作動油を供給させる必要があるが必要作動油量は少ない押出工程においては、吐出量可変機構について、最大吐出量400L/min.の約半分の200L/min.を押出工程における最大吐出量とすることにより、少ない吐出量の固定吐出量油圧ポンプの台数を増やしたり、別に用意した少ない吐出量の固定吐出量油圧ポンプへ油圧回路を切換えたりすることなく、押出工程におけるメインラムの押出速度の制御を行わせることができる。
一方、メインポンプユニットからの大量の作動油供給(ユニット吐出量)が必須となるアイドリング工程においては、押出工程に対して低い圧力で作動油を供給させることができるため、400L/min.をアイドリング工程(非押出工程)における最大吐出量とすることにより、所望する作動油量を油圧ポンプの台数を増やすことなく確保することができる。
なお、第2実施形態に係るメインポンプユニット160において、第1実施形態で説明した、メインポンプユニット60の押出工程における、油圧ポンプの駆動台数に依らないユニット吐出量の連続的な増減制御は、基本的にすべて可能であることは言うまでもない。これら油圧ポンプの駆動台数に依らないユニット吐出量の連続的な増減制御については、第1実施形態(図5~図7)で詳細に説明しているため、第2実施形態を前提とした説明は割愛する。
以上、発明を実施するための形態について、第1実施形態及び第2実施形態を説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された内容を逸脱しない範囲で、色々な形で実施できることは言うまでもない。
例えば、第1実施形態において、押出工程における、最小吐出量待機状態の油圧ポンプを1台として説明した。油圧ポンプの駆動電動機がサーボモータ等の低慣性モータであれば、先に説明したように、該モータの出力軸側に所定の負荷が発生している状態においても、モータ回転数を停止状態から所望する回転数まで短時間で到達させることができるため、最小吐出量待機状態の油圧ポンプが1台あれば、メインポンプユニットのユニット吐出量の連続的な増減制御に問題はなく、駆動電動機停止状態の油圧ポンプ台数が多い程、電力消費は抑制される。
しかしながら、必要に応じて、最小吐出量待機状態の油圧ポンプを2台以上としてもよい。例えば、押出工程におけるメインラムの押出速度の制御において、図2における時間t1までに増加する必要作動油量に、ユニット吐出量をより早く到達させるため、吐出量を増加させている作動油供給状態の油圧ポンプ、例えば、図5(a)の左から2列目(メインラム指令押出速度2.0~4.0mm/sec.)のNo.2ポンプ42の吐出量の、最小吐出量から最大吐出量までの吐出量増加を早め、以降、次々と、最小吐出量待機状態の油圧ポンプを作動油供給状態へと移行させる場合は、これらの移行を確実にするため、最小吐出量待機状態の油圧ポンプを2台以上としてもよい。
また、精密押出等を前提として、メインポンプユニットを構成する油圧ポンプの台数を増やし、各油圧ポンプの最大吐出量を意図的に抑制した構成において、図2における時間t1までに増加する必要作動油量に対応するようにユニット吐出量を急増させたい場合、上記のように、2台以上の油圧ポンプを最小吐出量待機状態として、第1実施形態で説明したメインポンプユニットのユニット吐出量増加制御を、油圧ポンプ1台ずつではなく2台同時に行わせてもよい。あるいは、何らかの理由で、ユニット吐出量を急減させる必要がある場合も、メインポンプユニットのユニット吐出量減少制御を油圧ポンプ2台同時に行わせることも可能である。
一方、必要作動油量の急増をほぼ考慮しなくてもよい、図2における時間t1以降の必要作動油量の減少時や、メインラムの押出速度が設定押出速度v1にほぼ到達した時間t2以降の安定時において、吐出量を減少させている作動油供給状態の油圧ポンプのアンロード弁を開放(ON)させて、最小吐出量待機状態に移行させた場合、それ以前に、最小吐出量待機状態が維持されている油圧ポンプと合わせて、2台の油圧ポンプが最小吐出量待機状態となる場合がある。このように、2台以上の油圧ポンプが最小吐出量待機状態となる場合、少なくとも1台の油圧ポンプを駆動電動機停止状態へ移行させることが、電力消費を抑制する観点から好ましく、押出工程中、油圧ポンプ1台だけを最小吐出量待機状態に維持させることがより好ましい。
またさらに、第1実施形態で説明した、押出工程における、メインポンプユニットのユニット吐出量の増減制御は、最初に作動油供給状態に移行させる油圧ポンプを特定せず、押出成形サイクル毎に選択されることが好ましい。また、この油圧ポンプの選択が自動で行われることがさらに好ましい。第1実施形態においては、アプセット工程完了後、8台の油圧ポンプ中、No.1ポンプ41のNo.1アンロード弁41aを閉塞させて、No.1ポンプ41から作動油供給状態へと移行させ、必要なユニット吐出量の増減に準じて順次油圧ポンプを作動油供給状態へと移行させるとした。
しかしながら、先に説明したように、押出工程における必要作動油量は、アイドリング工程における必要作動油量に対して少ないことが一般的である。近年要求が高まっている精密押出製品の場合は特に少ない。そのため、押出工程において最初に作動油供給状態に移行させる油圧ポンプを特定せず、押出成形サイクル毎に変更させることにより、メインポンプユニットを構成する各油圧ポンプの駆動時間を、長期的に均一化させることができる。これにより、各油圧ポンプの、部品交換を含むメンテナンス頻度を均一化させることができ、これらを計画的に実施することができる。
具体的には、押出工程において最初に作動油供給状態に移行させる油圧ポンプを、押出成形サイクル毎に1台ずつ変更するプログラム(例えば、ある押出成形サイクルではNo.1ポンプ41から、その次の押出成形サイクルではNo.2ポンプ42から作動油供給状態に移行させる)や、押出成形サイクル毎に、ユニット吐出量の増減制御のために作動油供給状態に移行させた油圧ポンプを記憶させて、最初に作動油供給状態に移行させる油圧ポンプを、前の押出成形サイクルの押出工程において、作動油供給状態に移行させなかった油圧ポンプから作動油供給状態に移行させる(例えば、ある押出成形サイクルで、押出工程においてNo.1~3ポンプ(41~43)を作動油供給状態に移行させた場合、次の押出成形サイクルの押出工程においては、No.4ポンプ44から作動油供給状態に移行させる)といったプログラムが採用されることが好ましい。
また、上記のような押出工程での、最初に作動油供給状態に移行させる油圧ポンプの選択において、押出工程時の各油圧ポンプの吐出量制御精度を継続して記録させ、該吐出量制御精度が許容精度以下になった油圧ポンプや、部品交換が所定期間内に予定されている油圧ポンプ等を、該選択肢から外すプログラムが採用されてもよい。