JP7234564B2 - 太陽電池モジュール用の裏面保護シート - Google Patents

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Description

本発明は、太陽電池モジュール用の裏面保護シートに関する。
近年、環境問題に対する意識の高まりから、クリーンなエネルギー源としての太陽電池が注目されている。一般に、太陽電池を構成する太陽電池モジュールは、受光面側から、透明前面基板、受光面側の封止材、太陽電池素子、非受光面側の封止材、裏面保護シートが順に積層された構成であり、太陽光が太陽電池素子に入射することにより発電する機能を有している。
ところで、太陽電池モジュールは、主として意匠性の向上を目的として、黒色又はそれに準ずる暗色(本明細書においてはこれらをまとめて「暗色」とも称する)の外観を有することを求められる場合がある。この場合、上記の太陽電池モジュールの非受光面側の最表面に配置される裏面保護シートについても、暗色の外観を有することが意匠上の要求として求められる。
このような要求に対応することができる太陽電池モジュール用の裏面保護シートとして、黒色顔料を含有する樹脂を製膜してなる黒色のポリエステル系樹脂シート等、各種の暗色の樹脂シートが開発されている(特許文献1参照)。
又、暗色の外観を有する裏面保護シートとして、透明或いは白色等の樹脂基材を積層してなる多層シートにおいて、各樹脂基材を接合する接着剤層を、暗色の接着剤で形成して暗色層とすることにより、少なくとも透明な樹脂基材の側から視た場合における暗色の外観を有する保護シートも開発されている(特許文献2参照)。このような層構成からなる暗色の裏面保護シートにおいては、暗色の外観を保持しつつ、尚且つ、太陽電池モジュールとしての一体化時における封止材との十分な密着性を確保するために、裏面保護シートの一方の最表面に暗色層を被覆して透明密着層が配置されることが一般的である(特許文献3参照)。
ここで、上記の透明密着層は、意匠性の観点からは、暗色層の色味をできるだけそのままの色味で需要者に視認させるために、可能な限り透明性が高い層であることが有利である。
しかしながら、暗色の裏面保護シートを配置した太陽電池モジュールは、発電に寄与する可視光域の光が暗色層に吸収される分、暗色層を配置しない太陽電池モジュールよりも、発電効率が劣る傾向があった。このような暗色の外観を有する太陽電池モジュールにおいて、意匠性(暗色の外観)を維持しながら、それに伴う発電効率の低下については、これを抑制することのできる技術的手段が模索されていた。
特開2015-9534号公報 国際公開第2016/052641号 特開2012-216689号公報
本発明は、暗色層と透明な密着層が積層されてなる構成を含んでなる太陽電池モジュール用の裏面保護シートにおいて、暗色層が発現させるべき本来の意匠性を維持しつつ、発電効率の低下を有意に抑制することができる技術的手段を提供することを目的とする。
本発明者らは、最表面に透明密着層が配置されている暗色の裏面保護シートにおいて、暗色層の一方の面には反射層を設けるとともに、透明密着層の厚さと密度を最適化して、同層の透明性を許容範囲内で低下させることと引き替えに、同層表面における拡散反射率を高めることにより、暗色層によって発現する好ましい意匠性を維持しつつ、暗色層の配置に起因する発電効率の低下を抑制することができることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は、以下のものを提供する。
(1) 白色樹脂基材からなる反射層と、暗色の外観を有し、近赤外線を透過する赤外線透過暗色層と、透明密着層と、が、積層されてなり、前記赤外線透過暗色層は、前記反射層の一方の表面を被覆していて、前記透明密着層は、前記赤外線透過暗色層を被覆し、尚且つ、最表面に露出すように配置されている、太陽電池用の裏面保護シートであって、前記透明密着層は、密度0.910g/cm以上0.960g/cm以下のポリエチレン系樹脂をベース樹脂とし、厚さが25μm以上65μm以下であって、前記透明密着層が露出している最表面の波長400nm以上750nm以下における平均拡散反射率が、4%以上8%以下である、裏面保護シート。
(2) 前記赤外線透過暗色層は、暗色顔料を含む接着剤からなる暗色接着剤層であって、前記反射層と前記透明密着層とが、前記暗色接着剤層を介して接合されている多層シートである、(1)に記載の裏面保護シート。
(3) 前記暗色顔料が、茶色系顔料と、フタロシアニン系顔料と、の混合物である有機系暗色顔料であって、前記茶色系顔料は、ベンズイミダゾロン系顔料、4-[(2,5-ジクロロフェニル)アゾ]-3-ヒドロキシ-N-(2,5-ジメトキシフェニル)-2-ナフタレンカルボキサミド、1-[(4-ニトロフェニル)アゾ]-2-ナフタレノール、ビス[3-ヒドロキシ-4-(フェニルアゾ)-2-ナフタレンカルボン酸]銅塩、C.I.PigmentBrown7、N,N’-ビス(2,4-ジニトロフェニル)-3,3’-ジメトキシ-1,1’-ビフェニル-4,4’-ジアミン、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸ジイミド、Δ2,2’(1H,1’H)-ビナフト[2,1-b]チオフェン-1,1’-ジオン及びN、N’-(10,15,16,17-テトラヒドロ-5,10,15,17-テトラオキソ-5H-ジナフト[2,3-a:2’3’-i]カルバゾール-4,9-ジイル)ビス(ベンズアミド)からなる群より選ばれた少なくとも一種以上の顔料である、(2)に記載の裏面保護シート。
(4) 前記赤外線透過暗色層は、主剤樹脂と、前記有機系暗色顔料とを、を含有し、樹脂成分100質量部に対する前記有機系暗色顔料の含有量が20質量部以上40質量部以下である、(3)に記載の裏面保護シート。
(5) 透明前面基板と、受光面側の封止材と、太陽電池素子と、非受光面側の封止材と、(1)から(4)のいずれかに記載の裏面保護シートと、がこの順に積層されてなる、太陽電池モジュールであって、前記受光面側の封止材及び前記非受光面側の封止材は、ポリエチレン系樹脂をベース樹脂とする透明な樹脂である、太陽電池モジュール。
本発明によれば、暗色層と透明な密着層が積層されてなる構成を含んでなる太陽電池モジュール用の裏面保護シートにおいて、暗色層が発現させるべき本来の意匠性を維持しつつ、発電効率の低下を有意に抑制することができる技術的手段となる太陽電池モジュール用の裏面保護シートを提供することができる。
本発明の裏面保護シートの層構成を模式的に示す断面図である。 本発明の裏面保護シートを用いた太陽電池モジュールの層構成の一例を模式的に示す断面図である。 図2の部分拡大図であり、太陽電池モジュール内での入射光の反射の態様の説明に供する図面である。
<太陽電池モジュール>
先ず、本発明の太陽電池モジュール用の裏面保護シート1を用いて構成される太陽電池モジュール10の全体構成について説明する。図2に示すように、太陽電池モジュール10は、受光面側から、透明前面基板2、受光面側の封止材3、太陽電池素子4、非受光面側の封止材5、裏面保護シート1が順に積層された構成からなる。本発明の裏面保護シート1は、太陽電池モジュール10において、太陽電池モジュール10の非受光面側の最外層に配置される。
そして、図1に示すように、本発明の裏面保護シート1は、反射層11と赤外線透過暗色層12と透明密着層13とが積層されてなる多層シートである。このような層構成からなる裏面保護シート1は、透明密着層13の側から見た場合に赤外線透過暗色層12の暗色の色味が需要者に太陽電池モジュール10の暗色の外観として視認させることができる。又、この裏面保護シート1は、意匠性に係る要求に応えながら、尚且つ、その表面における拡散反射率を向上させることにより暗色層による光の吸収に起因する発電効率の低下を有意に抑制することができる。裏面保護シートの組成、層構成、作用効果の詳細については後述する。
透明前面基板2としては、通常、透明ガラス板が用いられる。但し、これに限られず、耐候性を有する透明な樹脂シートを用いることもできる。いずれにしても、太陽電池素子4の受光面側に配置される基材である以上、太陽電池モジュール10による発電に寄与する光を、できるだけ高い割合で透過させることが求められる。具体的には、透明前面基板2は、波長400nm以上1200nm以下における平均光線透過率が80.0%以上であることが好ましい。
受光面側の封止材3としては、通常、各種の低密度ポリエチレン(LDPE)、或いは、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)等のオレフィン系樹脂からなる厚さ100μm~400μm程度の樹脂シートが用いられる。この受光面側の封止材3にも、透明前面基板2と同様、高い光線透過率が求められる。受光面側の封止材3は、波長400nm以上1200nm以下における平均光線透過率が80.0%以上、或いは、厚さ400μmにおけるヘイズ値が10%以下であることが好ましい。
太陽電池素子4については特段の制限はない。単結晶シリコン基板や多結晶シリコン基板を用いて作製する結晶シリコン太陽電池の他、アモルファスシリコンや微結晶シリコン、或いはカルコパイライト系の化合物等を用いてなる薄膜系太陽電池(CIGS)等、各種の太陽電池素子を適宜用いることができる。
非受光面側の封止材5としては、特段の設計上の事情等がなければ、通常は、受光面側の封止材3と同様の樹脂組成物材料からなる樹脂シートが用いられる。但し、裏面保護シート1との密着性を高めるために、裏面保護シートの封止材層側の最表面に配置される透明密着層13と同様のオレフィン系樹脂(より好ましくはポリエチレン系樹脂)からなる樹脂シートとすることが好ましい。
ここで、透明前面基板2、受光面側の封止材3及び非受光面側の封止材5は、上記の通り十分に高い透明性を有する。よって、太陽電池モジュール10においては、透明前面基板2の側からの平面視において、太陽電池素子4の隙間の部分から、裏面保護シート1の色味を、ほぼ、そのままの色味において視認することができる。一方、上述の太陽電池素子4は、その表面の色味が暗色である場合が多い。よって、太陽電池モジュール10においては、暗色の外観を有する本発明の裏面保護シート1を用いることにより、太陽電池素子4が配置されていない隙間の部分の外観と、太陽電池素子4の表面の外観との色味の差を少なくすることができる。本発明によれば、このようにして、外観を統一感のある黒味によって構成することにより、太陽電池モジュール10の意匠性を向上させることができる。
尚、本明細書において「暗色」とは、色座標におけるL値、a値及びb値の範囲が下記の特定範囲にある「色」のことを言い、黒色は当然にこれに含まれる。特定範囲とは、具体的には、L値については、マンセル表色系で明度4.0以下であり、JISZ8722に準拠して測定した、標準光源D65によるCIE系色座標が、-1≦a≦2.5且つ-2≦b≦0.5の範囲にある色味のことを言い、この範囲にある色味を、本明細書においては「暗色」と言うものとする。
[太陽電池モジュールの製造方法]
太陽電池モジュール10は、太陽電池モジュールを構成する上記の各部材、即ち、透明前面基板2、受光面側の封止材3、太陽電池素子4、非受光面側の封止材5、及び、裏面保護シート1を、順次積層してなる積層体を加熱圧着して一体化する熱ラミネート加工により製造することができる。
<裏面保護シート>
本発明の裏面保護シート1は、上述の通り、反射層11と赤外線透過暗色層12と透明密着層13とが積層されてなる多層シートである。赤外線透過暗色層12は、特定の態様の層に限定はされないが、赤外線を透過する暗色顔料を含有する暗色接着剤からなる接着剤層であることが好ましい。そして、反射層11に、接着剤層でもある赤外線透過暗色層12を介して、透明密着層13が接合されている層構成を、本発明の裏面保護シートの好ましい実施形態の具体例として挙げることができる(図1参照)。以下、暗色の接着剤層である赤外線透過暗色層12によって反射層11と透明密着層13とが接合されてなる層構成の裏面保護シート1を、本発明の好ましい実施形態の一例として例示しつつ、本発明の詳細について説明する。
[反射層]
裏面保護シート1の非受光面側には白色樹脂基材からなる反射層11が配置されている。これにより、太陽電池モジュール10において、入射光のうち、赤外線透過暗色層12を透過した波長750nm以上1500nm以下の近赤外線を含む光L(図3参照)を、この反射層11で反射して再び太陽電池素子4に向かわせることができる。反射層は、波長400nm以上1200nm以下における平均光線光反射率が50%以上、好ましくは60%以上である白色樹脂基材により構成される。又、この反射層11は多層構成の裏面保護シート1において、太陽電池モジュール10との一体化後に要求されるバリア性、耐候性、絶縁性等を裏面保護シートを担保しうる基材層としての機能も有する層であることが好ましい。
上述の光反射層としての機能と基材層としての機能を要求される反射層11を形成する樹脂組成物のベース樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、好ましくは、耐熱性と耐加水分解性に優れる耐加水分解ポリエチレンテフタレート(HR-PET)、或いは、ポリエチレンナフタレート(PEN)等、各種のポリエステル系樹脂を用いることができる。
又、上記樹脂をベース樹脂として形成される反射層11に、上述の光反射層としての機能を発揮させるためには、同層を形成する樹脂組成物に適量の白色顔料を含有させて白色の樹脂層とすればよい。この白色顔料としては、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化ケイ素等を用いることができる。これらの中でも、特に、粒径が0.2μm以上1.5μm以下の酸化チタンを用いることが好ましい。このような白色顔料を含む樹脂層は、太陽電池素子の発電に寄与する近赤外線をよく反射するため、反射層11を、このような白色の樹脂層とすることにより、太陽電池モジュール10の発電効率を有意に向上させることができる。
ここで、白色顔料の粒径は、日本電子社製の透過型電子顕微鏡(JEM-1230)を用いて白色顔料の一次粒径を写真に撮影した後、その画像をマウンテック社製の画像解析式粒度分布測定ソフトウェア(MAC-View Ver.3)にて統計処理を行い算出して得られる値を採用する。粒径の算出にあたっては体積基準の円相当径を採用する。本明細書における各種の樹脂や無機フィラーの粉末材料の粒径は、いずれも上記方法によって測定した粒径のことを言うものとする。
反射層11に白色顔料を含有させて光反射層とする場合、その含有量は、反射層11の厚さに応じて適宜調整すればよい。例えば、反射層11の厚さが、50μm以上200μm以下の範囲にあるとき、白色顔料の含有量は、同層の樹脂成分に対し、5質量%以上40質量%以下であることが好ましい。上記含有量が上記割合未満であると、「近赤外線を反射する機能」が不十分となりやすく、又、同含有量が上記割合を超えると、製膜性の低化やブリードアウト等による反射層11の平滑性の低下が問題となる一方、それ以上の添加による反射率の向上効果が認められなくなる。
反射層11には、上記のベース樹脂と白色顔料の他、更に、必要に応じて、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤等が含有されていてもよい。
反射層11を構成する白色樹脂基材は、以上説明したベース樹脂及びその他の成分を含んでなる樹脂組成物を、押し出し法、Tダイ法、キャスト成形法、インフレーション法、その他の公知の各種成形法によりシート状に成形することによって得ることができる。又、これらの樹脂シートは、上記の樹脂組成物を、テンター方式、或いは、チューブラー方式等により、1軸ないし2軸方向に延伸加工して得ることができる延伸樹脂シート、例えば、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート等であってもよい。
尚、裏面保護シート1の基材層として主たる部分を構成する反射層11の厚さは、150μm以上330μm以下であることが好ましく、180μm以上220μm以下であることがより好ましい。
[赤外線透過暗色層]
本発明の裏面保護シートにおいて、赤外線透過暗色層12は、暗色の外観を有し、透明密着層13を通してその外観を視認されることにより、太陽電池モジュール全体の暗色の外観の一部を調和的に構成して、太陽電池モジュール全体の意匠性の向上に寄与する層である。この赤外線透過暗色層12は、暗色の外観を有する層でありながらも近赤外線は透過する層である。具体的な光学特性としては、波長750nm以上1200nm以下における平均光線透過率が50%以上であることが好ましい。これにより、裏面保護シート1を用いて構成される太陽電池モジュール10においては、暗色層における近赤外線の吸収に起因する温度上昇や発電に寄与しうる光の減衰による太陽電池モジュール10の発電効率の低下を回避することもできる。尚、裏面保護シート1においては、上述の通り、この赤外線透過暗色層12が、接着剤層として、反射層11と透明密着層13との接合を維持する接着層として配置されていることが好ましい。
赤外線透過暗色層12を、暗色の外観を呈するものでありながら、波長750nm以上1500nm以下の近赤外線を透過する層とするためには、赤外線透過暗色層12を形成する樹脂組成物中に赤外線透過性を有する有機系暗色顔料を添加すればよい。
赤外線透過暗色層12に含有させる暗色顔料としては、暗色の外観を呈するものであって、上述した近赤外線の透過性を有するものであれば特定の顔料に限定はされない。但し、「茶色系顔料とフタロシアニン系顔料との混合物からなる有機系暗色顔料」(以下、この混合顔料のことを、「ベンズイミダゾロン・フタロシアニン顔料」とも言う)を、好ましく用いることができる。この「ベンズイミダゾロン・フタロシアニン顔料」は、裏面保護シート1に優れた暗色の外観と、高い赤外線透過性を備えさせることができる。尚、「茶色系顔料とフタロシアニン系顔料との混合物からなる顔料(ベンズイミダゾロン・フタロシアニン顔料)」が、近赤外線、特には、波長800nm以上900nm以下付近での赤外線透過性について、特に優れた光学特性を有すものであることは、例えば、上述の特許文献2においても実証されている通りである。
上述の、「茶色系顔料とフタロシアニン系顔料との混合物からなる顔料(ベンズイミダゾロン・フタロシアニン顔料)」に含有される顔料成分のうち、「茶色系顔料」としては、ベンズイミダゾロン系顔料、4-[(2,5-ジクロロフェニル)アゾ]-3-ヒドロキシ-N-(2,5-ジメトキシフェニル)-2-ナフタレンカルボキサミド、1-[(4-ニトロフェニル)アゾ]-2-ナフタレノール、ビス[3-ヒドロキシ-4-(フェニルアゾ)-2-ナフタレンカルボン酸]銅塩、N,N’-ビス(2,4-ジニトロフェニル)-3,3’-ジメトキシ-1,1’-ビフェニル-4,4’-ジアミン、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸ジイミド、Δ2,2’(1H,1’H)-ビナフト[2,1-b]チオフェン-1,1’-ジオン及びN、N’-(10,15,16,17-テトラヒドロ-5,10,15,17-テトラオキソ-5H-ジナフト[2,3-a:2’3’-i]カルバゾール-4,9-ジイル)ビス(ベンズアミド)からなる群より選ばれる少なくとも一種以上の顔料を用いることができる。
「茶色系顔料とフタロシアニン系顔料との混合物からなる顔料(ベンズイミダゾロン・フタロシアニン顔料)」に用いる「茶色系顔料」として、上記の中でも、「ベンズイミダゾロン系顔料」を、特に好ましく用いることができる。ベンズイミダゾロン系顔料とは、下記一般式(1)で表されるベンズイミダゾロン骨格を有する顔料である。具体的には、C.I.PigmentYellow120、C.I.PigmentYellow151、C.I.PigmentYellow154、C.I.PigmentYellow175、C.I.PigmentYellow180、C.I.PigmentYellow181、C.I.PigmentYellow194、C.I.PigmentRed175、C.I.PigmentRed176、C.I.PigmentRed185、C.I.PigmentRed208、C.I.PigmentViolet32、C.I.PigmentOrange36、C.I.PigmentOrange62、C.I.PigmentOrange72、C.I.PigmentBrown25等が挙げられるが、これに限るものではない。色域の観点からC.I.PigmentBrown25がより好ましい。
Figure 0007234564000001
上述の、「茶色系顔料とフタロシアニン系顔料との混合物からなる顔料(ベンズイミダゾロン・フタロシアニン顔料)」に含有される顔料成分のうち、「フタロシアニン系顔料」とは、フタロシアニン骨格を有する顔料であり、各種金属が配位されたフタロシアニンをも含む概念である。具体的には、C.I.PigmentGreen7、C.I.PigmentGreen36、C.I.PigmentGreen37、C.I.PigmentBlue16、C.I.PigmentBlue75、又は、C.I.PigmentBlue15等が挙げられる。
赤外線透過暗色層12が接着剤層である場合、同層を形成する暗色の接着剤は、水酸基を有する主剤樹脂と、イソシアネート基を有する硬化剤と、上述の有機系暗色顔料とを、を含有してなる暗色の接着剤であることが好ましい。
この暗色の接着剤の主剤樹脂は、具体的には、ポリウレタンジオールと、脂肪族ポリカーボネートジオール、との混合物を含むものであることが好ましい。主剤樹脂を構成するポリウレタンジオール、及び、脂肪族ポリカーボネートジオールは、ともに水酸基を有するポリオールであり、イソシアネート基を有する硬化剤と反応して、接着剤層を構成する。主剤をポリウレタンジオールと脂肪族ポリカーボネートジオールとを所定量配合した混合物とすることによって、接着剤層の接着性及び耐候性を向上させることができる。
なお、上記の主剤には、主剤成分であるポリウレタンジオール、脂肪族ポリカーボネートジオールの他に、必要に応じて、粘着付与剤、安定化剤、充填剤、可塑剤、軟化点向上剤、触媒等を添加剤として混合することができる。
又、上記の暗色の接着剤の硬化剤は、ポリイソシアネート化合物を主成分とするものであることが好ましい。このポリイソシアネート化合物は、1分子中に2以上のイソシアネート基を有する化合物であり、このイソシアネート基が主剤のポリウレタンジオール化合物中の水酸基と反応することにより、ポリウレタンジオール化合物を架橋する。このようなポリイソシアネート化合物としては、上記において説明した主剤のポリウレタンジオール化合物を架橋することができるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、ポリウレタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、「HDI」)、イソシアヌレート変性のイソホロンジイソシアネート(以下、「ヌレート変性IPDI」)等を好ましい硬化剤として例示することができる。
上記の暗色の接着剤の接着成分である主剤及び硬化剤には、良好な塗布性及びハンドリング適正を得るために、溶剤成分を添加することが好ましい。このような溶剤成分としては、上記酢酸エチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル等のカルボン酸エステルを挙げることができるがこれに限定されない。なお、既に述べたように上記の接着剤は、主剤と硬化剤の2液剤として構成されるが、主剤で使用される溶剤成分と硬化剤で使用される溶剤成分はそれぞれ独立に選択され、同一でもあってもよく、異なっていてもよい。
上記の暗色の接着剤、即ち、水酸基を有する主剤樹脂と、イソシアネート基を有する硬化剤と、上述の有機系暗色顔料(「ベンズイミダゾロン・フタロシアニン顔料」)とを含有する接着剤を用いる場合、その樹脂成分100質量部に対する有機系暗色顔料の含有量は20質量部以上40質量部以下とすることが好ましい。顔料の含有量をこの範囲とすることにより、5g/m以上7g/m以下の範囲の塗布量で、色調の安定性に優れる暗色の意匠性、発電効率に寄与する近赤外線の透過性、及び、必要な接着性を全て兼ね備える接着層とすることができる。
[透明密着層]
裏面保護シート1において、透明密着層13は、太陽電池モジュール10との一体化時に、非受光面側の封止材5との良好な密着性を発現させる機能を有する樹脂層である。又、この透明密着層13は、赤外線透過暗色層12の暗色の外観を、この層を通して見た場合に、十分に暗色の外観として視認できる程度の透明性を有する層であり、尚且つ、意匠性の観点から許容できる範囲内で透明性を低下、即ち、一定範囲内で敢えてヘイズを上昇させることにより、透明密着層13における適度な拡散反射を促進して、暗色の外観を有する太陽電池モジュール10発電効率の低下を抑制することにも寄与している。
透明密着層13は、太陽電池モジュール10を構成する封止材に対する所望の密着性を有する樹脂、具体的には、ポリエチレン系樹脂からなり、尚且つ、適度な透明性を有する樹脂層であればよい。このような透明密着層13を、裏面保護シート1の最表面に配置することによって、暗色の外観にかかる太陽電池モジュール10の意匠性に向上に寄与しながら、暗色の外観の確保に起因する発電効率の低下を抑制し、尚且つ、裏面保護シート1の非受光面側の封止材5に対する密着性を十分に保持することができる。
透明密着層13に適度な透明性を備えさせるために、同層のベース樹脂としては、密度0.910g/cm以上0.960g/cm以下、好ましくは、0.918g/cm以上0.950g/cm以下のポリエチレン系樹脂を用い、尚且つ、同層の厚さが25μm以上65μm以下、好ましくは30μm以上45μm以下となるように形成する。このように、透明密着層13を特定密度範囲のポリエチレン系樹脂を用いて、尚且つ、所定の厚さの層に形成することで、赤外線透過暗色層12の呈する好ましい暗色の外観の視認を阻害しない程度の許容範囲内で透明密着層13のヘイズを上昇させることができる。その結果として、裏面保護シート1の表面における拡散反射率が適度に向上し、例えば、図3に示すような態様で、太陽電池素子4に直設入光せずに裏面保護シート1まで透過してきた入射光Lの多くを太陽電池素子4に再度向かわせて、太陽電池モジュール10の発電効率の低下を有意に抑制することができる。
ここで、裏面保護シート1を備える太陽電池モジュール10に入射した光をより多くの割合で太陽電池素子4に向かわせるためには、裏面保護シートの表面における入射光Lの反射について、正反射よりも拡散反射の割合を増やす、即ち、拡散反射率を高めることが有効であることは、例えば、特開2014-27155号公報にも開示されている通り、広く知られているところである。太陽電池素子4の間の隙間を抜けて裏面保護シート1にまで到達する入射光の多くは、図3に示す入射光Lと同様に太陽電池モジュール10の受光面に対して垂直に入射してくる光である。仮に入射光Lは裏面保護シート1において正反射した場合には太陽電池モジュールの外にそのまま出て行ってしまう可能性が高いが、例えば、同図に示すような拡散反射により、太陽電池素子4への到達率が向上する。
[裏面保護シートの機能]
上述の構成からなる裏面保護シート1は、透明密着層13の側から見た場合において、赤外線透過暗色層12の暗色の色味が需要者に太陽電池モジュール10の暗色の外観として視認されることにより、太陽電池モジュール10の意匠性の向上に寄与することができる。
一方で、裏面保護シート1においては、意匠性を維持するためには、透明密着層13の透明性は極力高く維持されていることが好ましい。裏面保護シート1は、意匠性と発電効率双方の観点からの要請のいずれにも配慮して、透明密着層13のヘイズを意匠性保持の観点における許容範囲内で意図的に高めることで、同層が露出している最表面の可視光波長域の拡散反射率、具体的に、波長400nm以上750nm以下における平均拡散反射率を、4%以上8%以下の範囲に最適化したものである。このような裏面保護シート1を用いることにより、太陽電池モジュール10を、暗色の外観にかかる意匠性向上の要求とそれに起因する発電効率低化の抑制の要求とに、応えることができるものとすることができる。
尚、本明細書における裏面保護シートの拡散反射率とは、分光光度計(例えば、(株)島津製作所UV2450)に積分球付属装置(例えば、(株)島津製作所製ISR2200)を取り付け、硫酸バリウムを標準板とし、標準板を100%とした相対反射率を測定した値とする。
尚、透明密着層を形成するポリエチレンは、結晶性によって密度が決まり、結晶性がヘイズ値を決定する要素であるため、透明密着層13の拡散反射率は、上述した通り、透明密着層13を形成するポリエチレンの密度と、層厚さを、特定範囲に最適化することによって上記の最適範囲内に制御することが可能である。
尚、反射層11と透明密着層13とが赤外線透過暗色層12を介して接合されている上記層構成からなる裏面保護シート1の総厚さは、必要最低限の絶縁性や耐候性を担保するために150μm以上であることが好ましく、経済性の低下を回避する観点から400μm以下であることが好ましく、180μm以上240μm以下であることがより好ましい。
<裏面保護シートの製造方法>
本発明の裏面保護シートの製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、反射層11及び透明密着層13をそれぞれ形成するシート状基材を赤外線透過暗色層12を形成する暗色の接着剤によって接合する公知のドライラミネート加工により製造することができる。尚、暗色の接着剤としては、上述の通り、主剤と硬化剤からなる2液タイプの接着剤を使用することが好ましい。
上記のドライラミネート加工において、暗色顔料を含む主剤と硬化剤とからなる2液タイプの暗色の接着剤は、接合する基材の表面に塗布され、続いて塗布された接着剤から溶剤成分が蒸発することによって、基材の表面に接着剤膜を形成させる。この接着剤膜は、被接合基材の表面と接合された状態で硬化し、赤外線透過暗色層12となる。
以下、実施例、比較例を示して、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
<裏面保護シートの製造>
下記の通りにそれぞれ用意した反射層及び透明密着層を構成する樹脂基材を、下記の通りに調製した赤外線透過暗色層を形成する暗色の接着剤を用いて、ドライラミネーション法により一体化して、各実施例、各比較例の裏面保護シートを製造した。
[反射層]
全ての実施例及び比較例の裏面保護シートの反射層を形成する白色樹脂基材として、下記の「白色ポリエステル系樹脂シート」を用いた。
(白色ポリエステル系樹脂シート)
:酸化チタン添加白色PETフィルム(製品名「ルミラーE20」東レ株式会社製)白色PET、厚さ188μm。
(反射層の反射性)
上記の「白色ポリエステル系樹脂シート」の反射性を、分光光度計((株)島津製作所UV2450)を用いて予め測定確認した。その結果、反射層を構成するこの白色樹脂基材の波長400nm以上1200nm以下における平均光線光反射率は、65%であった。
[赤外線透過暗色層]
全ての実施例及び比較例の裏面保護シートの赤外線透過暗色層を形成する接着剤として、暗色顔料を含む主剤と硬化剤とからなる「暗色の接着剤」を下記の通りに調製した。
(暗色の接着剤)
ウレタン系の接着剤に下記の「赤外線透過性を有する有機系暗色顔料」を添加した「暗色の接着剤」を調整した。上記「暗色の接着剤」における下記の「赤外線透過性を有する有機系暗色顔料」の添加量は、同接着剤中の同顔料の含有量比が、固形分比で25質量%の配合量となるように調整した。又、この「暗色の接着剤」の塗工量は、全ての実施例及び比較例において、3.5g/mとした。
(赤外線透過性を有する有機系暗色顔料)
下記の「フタロシアニン系顔料」45質量部、と「茶色系顔料」55質量部とを、混合してなる混合顔料を用いた。
(フタロシアニン系顔料)
フタロシアニン系顔料(非晶質型フタロシアニン系顔料青(PigmentBlue15、粒径0.15~0.20μm))を用いた。
(茶色系顔料)
ベンズイミダゾロン系顔料(PigmentBrown25、粒径0.08μm)
(有機系暗色顔料)を用いた。
[透明密着層]
実施例及び比較例の密着層を形成するシート状基材として、下記の「透明ポリエチレン系樹脂シート」を用いた。
(透明ポリエチレン系樹脂シート)
各実施例及び比較例毎に、それぞれ規定の密度のポリエチレン樹脂を用いて、それぞれ規定の厚さに成形した透明ポリエチレン系樹脂シートを用いた。各例毎の密度、厚さは、下記表1に示す通りとした。
<評価例1:(拡散反射率)>
[分光反射率測定試験]
各実施例及び各比較例の裏面保護シートについて、透明密着層側から光を入射したときの、波長400nmから750nmにおける波長毎の光の平均拡散反射率(%)を、分光光度計((株)島津製作所UV2450)に積分球付属装置((株)島津製作所製ISR2200)を取り付け、硫酸バリウムを標準板とし、標準板を100%として相対反射率を測定する方法により測定した。結果は、「拡散反射率(%)」として表1に示す。
又、上述の通り裏面保護シートの表面における拡散反射率と太陽電池モジュールの発電効率との間には正の相関があることは上述の通り周知であるため、得られた拡散反射率(%)の数値を、太陽電池モジュールに組込んだ際の発電効率維持能力の指標とみなし、下記の規準で評価した。結果は、「発電効率」として表1に示す。
(評価基準)
A:拡散反射率が9%以上
B:拡散反射率が4%以上9%未満
C:拡散反射率が4%未満
<評価例2:(意匠性(暗色の外観の維持))>
各実施例及び各比較例の裏面保護シートについて、透明密着層側から見た場合における暗色の意匠性を、透明密着層を積層せずに硬化させた暗色接着剤層の表面の色味を比較対象とし、目視による観察によって各裏面保護シートの色味について官能的な評価を行った。評価規準は下記の通りとする。結果は、「意匠性」として表1に示す。
(評価基準)
A:比較対象の暗色と比較して、ほぼ同一の暗色に見える。
B:比較対象の暗色と比較して、差異を感じるが十分に暗色に見える。
C:比較対象の暗色と比較して、明らかに白っぽく見える。
Figure 0007234564000002
表1より、本発明の裏面保護シートは、暗色の外観を有することにより、太陽電池モジュールの意匠性の向上に寄与することができる裏面保護シートであり、尚且つ、暗色層の存在に起因する太陽電池モジュールの発電効率の低下を抑制することができる裏面保護シート、即ち、発電効率と意匠性がバランス良く両立されている裏面保護シートであることが分かる。
1 裏面保護シート
11 反射層
12 赤外線透過暗色層
13 透明密着層
2 透明前面基板
3 受光面側の封止材
4 太陽電池素子
5 非受光面側の封止材
10 太陽電池モジュール

Claims (5)

  1. 白色樹脂基材からなる反射層と、
    暗色の外観を有し、近赤外線を透過する赤外線透過暗色層と、
    透明密着層と、が、積層されてなり、
    前記赤外線透過暗色層は、前記反射層の一方の表面を被覆していて、
    前記透明密着層は、前記赤外線透過暗色層を被覆し、尚且つ、最表面に露出すように配置されている、太陽電池用の裏面保護シートであって、
    前記透明密着層は、密度0.910g/cm以上0.960g/cm以下のポリエチレン系樹脂をベース樹脂とし、厚さが25μm以上65μm以下であって、
    前記透明密着層が露出している最表面の波長400nm以上750nm以下における平均拡散反射率が、4%以上8%以下である、裏面保護シート。
  2. 前記赤外線透過暗色層は、暗色顔料を含む接着剤からなる暗色接着剤層であって、
    前記反射層と前記透明密着層とが、前記暗色接着剤層を介して接合されている多層シートである、請求項1に記載の裏面保護シート。
  3. 前記暗色顔料が、茶色系顔料と、フタロシアニン系顔料と、の混合物である有機系暗色顔料であって、
    前記茶色系顔料は、ベンズイミダゾロン系顔料、4-[(2,5-ジクロロフェニル)アゾ]-3-ヒドロキシ-N-(2,5-ジメトキシフェニル)-2-ナフタレンカルボキサミド、1-[(4-ニトロフェニル)アゾ]-2-ナフタレノール、ビス[3-ヒドロキシ-4-(フェニルアゾ)-2-ナフタレンカルボン酸]銅塩、C.I.PigmentBrown7、N,N’-ビス(2,4-ジニトロフェニル)-3,3’-ジメトキシ-1,1’-ビフェニル-4,4’-ジアミン、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸ジイミド、Δ2,2’(1H,1’H)-ビナフト[2,1-b]チオフェン-1,1’-ジオン及びN、N’-(10,15,16,17-テトラヒドロ-5,10,15,17-テトラオキソ-5H-ジナフト[2,3-a:2’3’-i]カルバゾール-4,9-ジイル)ビス(ベンズアミド)からなる群より選ばれた少なくとも一種以上の顔料である、請求項2に記載の裏面保護シート。
  4. 前記赤外線透過暗色層は、主剤樹脂と、前記有機系暗色顔料とを、を含有し、樹脂成分100質量部に対する前記有機系暗色顔料の含有量が20質量部以上40質量部以下である、請求項3に記載の裏面保護シート。
  5. 透明前面基板と、
    受光面側の封止材と、
    太陽電池素子と、
    非受光面側の封止材と、
    請求項1から4のいずれかに記載の裏面保護シートと、がこの順に積層されてなる、太陽電池モジュールであって、
    前記受光面側の封止材及び前記非受光面側の封止材は、ポリエチレン系樹脂をベース樹脂とする透明な樹脂である、
    太陽電池モジュール。
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