JP7234540B2 - シュートの培養方法 - Google Patents

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Description

本発明は、シュートの培養方法に関する。
現在、工業用ゴム製品に用いられている天然ゴム(ポリイソプレノイドの1種)は、トウダイグサ科のパラゴムノキ(Hevea brasiliensis)や桑科植物のインドゴムノキ(Ficus elastica)などのゴム産生植物を栽培し、その植物体が有する乳管細胞で天然ゴムを生合成させ、該天然ゴムを植物から手作業により採取することにより得られる。
現状、工業用天然ゴムは、パラゴムノキをほぼ唯一の採取源としている。またゴム製品の主原料として、様々な用途において幅広くかつ大量に用いられている。しかしながら、パラゴムノキは東南アジアや南米などの限られた地域でのみ生育可能な植物である。更に、パラゴムノキは、植樹からゴムの採取が可能な成木になるまでに7年程度を要し、また、採取出来る季節が限られる場合がある。また、成木から天然ゴムを採取できる期間は20~30年に限られる。
今後、開発途上国を中心に天然ゴムの需要の増大が見込まれており、天然ゴム資源の枯渇が懸念されていることから、安定的な天然ゴムの供給源が望まれている。
このような状況下において、パラゴムノキによる天然ゴムの増産を図る動きが見られる。パラゴムノキは、播種により実生苗を育成させ成長させた後台木とし、クローン苗から得た芽を台木に接ぎ木することで苗を増殖させる。
また従来のクローン苗から得たクローン増殖技術である接ぎ芽は、元の木がもつ病気を一緒に継いでしまう可能性があり、罹病した苗を増殖させる可能性がある。
更に接ぎ穂は、台木の影響を受ける場合があるため、真のクローン苗とはならない。
一方、組織培養を利用したクローン苗を増殖させる方法としてマイクロプロパゲーションがある。例えば、特許文献1では、ゴムノキの節、腋芽又は頂芽を含む組織を、植物生長ホルモン及び炭素源を含む誘導培地で培養してシュートを形成させ、このシュートを用いてゴムノキのクローン苗を大量に取得している。また、シュートを用いることで真のクローン苗を作出することもできる。
特開2016-140318号公報
本発明者らが鋭意検討した結果、シュートの培養を行った際、培養期間が長くなるとシュートの生育が停滞し、枯死するという問題が生じることが判明した。
本発明は、前記課題を解決し、シュートの長期培養を可能とするシュートの培養方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討した結果、培養期間3週間目と9週間目とを対比した際に、シュートのRGBの合計値の変化率が0.80~1.20、シュートの伸長量が1.0mm以上となるようにシュートを培養することにより、シュートの長期培養が可能となることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、培養期間3週間目と9週間目とを対比した際に、シュートのRGBの合計値の変化率が0.80~1.20、シュートの伸長量が1.0mm以上となるようにシュートを培養するシュートの培養方法に関する。
上記シュートの培養方法においては、スクロースを3.0~9.0質量%含む培地でシュートを培養することが好ましい。
上記シュートの培養方法においては、上記合計値の変化率が0.82~1.15、上記シュートの伸長量が1.2mm以上となるようにシュートを培養することが好ましい。
上記シュートの培養方法においては、上記シュートが木本植物のシュートであることが好ましい。
上記シュートの培養方法において、上記シュートがHevea属に属する植物のシュートであることが好ましい。
上記シュートの培養方法において、上記シュートがパラゴムノキのシュートであることが好ましい。
本発明のシュートの培養方法は、培養期間3週間目と9週間目とを対比した際に、シュートのRGBの合計値の変化率が0.80~1.20、シュートの伸長量が1.0mm以上となるようにシュートを培養するので、シュートの長期培養が可能となる。
本発明のシュートの培養方法は、培養期間3週間目と9週間目とを対比した際に、シュートのRGBの合計値の変化率が0.80~1.20、シュートの伸長量が1.0mm以上となるようにシュートを培養する。これにより、シュートの長期培養が可能となるため、例えば、材料の調達が難しい場合や長期間培養したシュートを必要とする実験等において有効に活用することができる。また、植物の需要は季節により変動するものであるが、シュートの長期培養が可能となるため、需要が高まるまでシュートを、生育状態が良好なまま保持しておくことも可能となり、生産計画の自由度を高めることができる。更には、長期間良好な生育状態を保つことで産業上の利便性向上を図ることができる。また、生育状態を揃えやすく、植物を使用する工程を安定した状態で実施できる。
上述の通り、本発明者らが鋭意検討した結果、シュートの培養を行った際、培養期間が長くなるとシュートの生育が停滞し、枯死するという問題が生じることが判明した。
生育が停滞し、枯死する理由として、生育に必要な栄養を十分に吸収できなくなることなどが考えられるが、生育停滞や枯死は組織培養においては、避けるべき状態と言える。つまり、シュートの生育を停滞させず、生育状態が良好なままに保持することは、クローンの増殖や組織の利用においても重要な点となる。
一方で、生育状態の判断は、目視での生育状態や大きさで判断されることが多く、特に目視での判断においては、個人差による判断の差が生じやすい方法と言える。生育停滞を回避する方法としては、通常は組織培養を長期において行わない手法をとる必要あるが、材料に限りがある場合や組織利用上、長期培養が必要になる場合がある。
そこで、本発明者らは、シュートの生育状態を保持できる培地を開発するとともに、生育状態が保持されている、または生育していることを判断できる指標の作成を試みた。
まず、シュートが生育停滞や枯死していないことを判断するために、色の表見の一つであるRGBの合計値に着目し、一定の生育期間における合計値の変化率により、生育が維持されているか否かを判断する指標とした。通常、生育が良好であるシュートにおいては、RGBの合計値が250~450程度である一方、枯死や停滞が進むと合計値が250未満や450超に変化する。この変化に着目し、合計値の変化率が大きいと枯死や生育停滞が生じている可能性を示唆し、合計値の変化率が小さいと生育が維持されているもしくは活性化している可能性があることを示唆するとの仮説に想到し、実験によりこの仮設が正しいことが判明した。
更に、より生育が活性化しているシュートを選別するために、一定の生育期間におけるシュートの伸長量を、シュートの生育の活性化度を判断する指標とした。
次に、一定の生育期間をどの培養期間とすべきかを検討した。鋭意検討した結果、長期培養を視野に入れた生育の状態を判断するためには、初期の生育不良の影響を除くことができ、生育が安定してくる培養開始から3週間目のシュートの状態と、培養が比較的長期の状態へ移行していく9週間目のシュートの状態とを比較することが好ましいことが判明した。
そして、上記知見を実験により裏付けることにより、培養期間3週間目の状態と9週間目の状態とを対比した際に、シュートのRGBの合計値の変化率が0.80~1.20、シュートの伸長量が1.0mm以上となるようにシュートを培養すると、シュートの長期培養が可能となることが判明した。これは、3週間目のシュートの状態と、9週間目のシュートの状態とを比較することにより、初期の生育不良の影響を除外しつつ比較的長期の培養状態を評価でき、3週間目と9週間目との状態を対比した結果、合計値の変化率が0.80~1.20であれば、枯死や生育停滞が生じておらず、生育が維持されているもしくは活性化しており、3週間目と9週間目との状態を対比した結果、シュートの伸長量が1.0mm以上であれば、シュートの生育が活性化しているため、長期培養が可能となるものと推測される。
本発明のシュートの培養方法は、培養期間3週間目と9週間目とを対比した際に、シュートのRGBの合計値の変化率が0.80~1.20、シュートの伸長量が1.0mm以上となるようにシュートを培養する。
本明細書においてシュートとは、頂芽、腋芽、不定芽の他、多芽体又は苗条原基より分化してきた芽、及びこれらの芽が伸長した状態のものを意味する。
本発明の方法が適用できる植物(シュートの由来植物)は、特に限定されないが、木本植物であることが好ましい。
上記木本植物としては、特に制限されず、落葉樹、常緑樹の広い範囲の種類及び品種の木本植物を挙げることができるが、特に、ゴムを資源として採取できるゴムノキであることが好ましく、パラゴムノキ(Hevea brasiliensis)等のHevea属;イチジク(Ficus carica)、インドゴムノキ(Ficus elastica)、オオイタビ(Ficus pumila L.)、イヌビワ(Ficus erecta Thumb.)、ホソバムクイヌビワ(Ficus ampelas Burm.f.)、コウトウイヌビワ(Ficus benguetensis Merr.)、ムクイヌビワ(Ficus irisana Elm.)、ガジュマル(Ficus microcarpa L.f.)、オオバイヌビワ(Ficus septica Burm.f.)、ベンガルボダイジュ(Ficus benghalensis)等のFicus属;グアユール(Parhenium argentatum)がより好ましい。更に好ましくは、Hevea属に属する植物等のトウダイグサ科(Euphorbiaceae)に属する植物であり、特に好ましくは、Hevea属に属する植物である。なかでも、パラゴムノキ(Hevea brasiliensis)が最も好ましい。
上記シュートを誘導するための材料としては、植物の葉柄、葉片、体細胞胚の胚軸、節、腋芽、頂芽等の植物の組織が挙げられる。なかでも、シュートを安定的に誘導することが可能であることから、節、腋芽、又は頂芽を含む組織が好ましい。具体的には、成木や幼木、苗木、クローン苗、又は試験管内で実生苗から生育させた無菌苗(無菌実生苗)由来の上記組織などが挙げられる。
成木や幼木、苗木、又はクローン苗由来の上記組織を使用する場合には、適宜必要な大きさに切断した後、表面を殺菌又は滅菌することで使用することができるが、試験管内で実生苗から生育させた無菌苗(無菌実生苗)由来の上記組織を使用する場合には、適宜必要な大きさに切断した後に使用することが可能である。
成木や幼木、苗木、又はクローン苗由来の上記組織を用いる場合、後述する誘導培地で培養する前にまず、組織の表面を洗浄する。例えば、磨き粉で洗浄したり、柔らかいスポンジで洗浄したりしても良いが、流水で洗浄するのが好ましい。当該洗浄用の水は、界面活性剤を約0.1質量%含むものであってもよい。
次に、組織を殺菌又は滅菌する。殺菌又は滅菌は、周知の殺菌剤、滅菌剤を用いて行うことができるが、エタノール、塩化ベンザルコニウム、次亜塩素酸ナトリウム水溶液が好ましい。なお、殺菌又は滅菌処理の後、更に滅菌水で洗浄してもよい。
上記洗浄、殺菌又は滅菌処理を行う具体例として例えば以下の手順が挙げられる。流水で組織の表面を洗浄した後、エタノールで洗浄。次いで次亜塩素酸ナトリウム水溶液で必要に応じて撹拌しながら滅菌。その後、滅菌水を用いて洗浄。
シュートの誘導方法は特に限定されないが、上記組織などからシュートを誘導する誘導工程の一例について説明する。
(誘導工程)
誘導工程では、上記組織を、植物生長ホルモン及び炭素源を含む誘導培地で培養することにより、シュートを誘導、形成させる。なお、誘導培地は、液体であっても固体であってもよいが、培地に上記組織を差し込んで培養することでシュートを誘導しやすくなるため、固体培養が好ましい。また、誘導培地が液体培地である場合には、静置培養を行ってもよく、振とう培養を行ってもよい。
また、殺菌又は滅菌処理を行った組織を用いる場合には、殺菌剤、滅菌剤の影響を除くため切り口を切除して培養に用いるのが好ましい。
植物生長ホルモンとしては、例えば、オーキシン系植物ホルモン及び/又はサイトカイニン系植物ホルモンが挙げられる。中でも、サイトカイニン系植物ホルモンを用いることが好ましい。
オーキシン系植物ホルモンとしては、2,4-ジクロロフェノキシ酢酸、1-ナフタレン酢酸、インドール-3-酪酸、インドール-3-酢酸、インドールプロピオン酸、クロロフェノキシ酢酸、ナフトキシ酢酸、フェニル酢酸、2,4,5-トリクロロフェノキシ酢酸、パラクロロフェノキシ酢酸、2-メチル-4-クロロフェノキシ酢酸、4-フルオロフェノキシ酢酸、2-メトキシ-3,6-ジクロロ安息香酸、2-フェニル酸、ピクロラム、ピコリン酸等が挙げられる。なかでも、2,4-ジクロロフェノキシ酢酸、1-ナフタレン酢酸、インドール-3-酪酸が好ましく、2,4-ジクロロフェノキシ酢酸、1-ナフタレン酢酸がより好ましい。
サイトカイニン系植物ホルモンとしては、ベンジルアデニン、カイネチン、ゼアチン、ベンジルアミノプリン、イソペンテニルアミノプリン、チジアズロン、イソペンテニルアデニン、ゼアチンリボシド、ジヒドロゼアチン等が挙げられる。なかでも、ベンジルアデニン、カイネチン、ゼアチンが好ましく、ベンジルアデニン、カイネチンがより好ましく、ベンジルアデニンが更に好ましい。
炭素源としては、特に限定されず、スクロース、グルコース、トレハロース、フルクトース、ラクトース、ガラクトース、キシロース、アロース、タロース、グロース、アルトロース、マンノース、イドース、アラビノース、アピオース、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、マルトース等の糖類が挙げられる。なかでも、スクロースが好ましい。
誘導培地は、上記組織への成長阻害物質の蓄積を防止するために、更に活性炭を含むことが好ましい。また、シュートの形成を促進するために、更に硝酸銀を含むことが好ましい。更には、シュートの形成を促進するために、ココナッツウォーター(ココナッツミルク)を含んでもよい。
誘導培地としては、Whiteの培地(植物細胞工学入門(学会出版センター)p20~p36に記載)、Hellerの培地(Heller R, Bot.Biol.Veg.Paris 14 1-223(1953))、SH培地(SchenkとHildebrandtの培地)、MS培地(MurashigeとSkoogの培地)(植物細胞工学入門(学会出版センター)p20~p36に記載)、LS培地(LinsmaierとSkoogの培地)(植物細胞工学入門(学会出版センター)p20~p36に記載)、Gamborg培地、B5培地(植物細胞工学入門(学会出版センター)p20~p36に記載)、MB培地(Biotechnology in Agriculture and Forestry volum5(TreesII)p222-245に記載)、WP培地(Woody Plant:木本類用)等の基本培地や、該基本培地の組成に変更を加えた改変基本培地等のベースとなる培地に植物生長ホルモンを加えたものを使用すればよい。なかでも、MS培地、B5培地、WP培地、MB培地に植物生長ホルモンを加えたものが好ましく、MS培地、その組成に変更を加えたMS改変培地、MB培地又はその組成に変更を加えたMB改変培地に植物生長ホルモンを加えたものがより好ましい。
誘導培地を固体培地とする場合、固形化剤を使用して培地を固体にすればよい。固形化剤としては、特に限定されず、寒天、ゲランガム、アガロース、ゲルライト、アガー、フィタゲル等が挙げられる。
好適な誘導培地の組成及び培養条件は、植物種により異なり、また培地が液体培地であるか固体培地であるかによっても異なるが、通常は(特に、ゴムノキの場合は)以下の組成である。
誘導培地中の炭素源の濃度は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上、更に好ましくは3.0質量%以上である。該炭素源の濃度は、好ましくは10.0質量%以下、より好ましくは9.0質量%以下、更に好ましくは5.0質量%以下である。なお、本明細書において、炭素源の濃度とは、糖類の濃度を意味する。
誘導培地にオーキシン系植物ホルモンを実質的に加えないことが好ましく、誘導培地中のオーキシン系植物ホルモンの濃度としては、具体的には、好ましくは1.0mg/L以下、より好ましくは0.1mg/L以下、更に好ましくは0.05mg/L以下、特に好ましくは0.01mg/L以下である。
誘導培地にサイトカイニン系植物ホルモンを加える場合の、誘導培地中のサイトカイニン系植物ホルモンの濃度としては、好ましくは0.01mg/L以上、より好ましくは0.1mg/L以上、更に好ましくは0.5mg/L以上、特に好ましくは0.8mg/L以上、最も好ましくは3.0mg/L以上である。該サイトカイニン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは8.0mg/L以下、より好ましくは7.0mg/L以下、更に好ましくは6.0mg/L以下である。
特に、上記サイトカイニン系植物ホルモンとしてベンジルアデニンを使用する場合の、該ベンジルアデニンの濃度は、4.0~6.0mg/Lであることが好ましく、最も好ましくは、5.0mg/Lである。他方、上記サイトカイニン系植物ホルモンとしてカイネチンを使用する場合の、該カイネチンの濃度は、0.8~1.2mg/Lであることが好ましく、最も好ましくは、1.0mg/Lである。
誘導培地中の活性炭の濃度は、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.03質量%以上である。該活性炭の濃度は、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下である。
誘導培地中の硝酸銀の濃度は、好ましくは0.1mg/L以上、より好ましくは0.3mg/L以上、更に好ましくは0.5mg/L以上である。該硝酸銀の濃度は、好ましくは5.0mg/L以下、より好ましくは3.0mg/L以下である。
誘導培地のpHは、4.0~10.0が好ましく、5.0~6.5がより好ましく、5.5~6.0が更に好ましい。
なお、本明細書において、固体培地のpHは、固形化剤を除く全成分を添加した培地のpHを意味する。
誘導工程は、通常、温度、照明時間等の培養条件の管理された制御環境下で行われる。培養条件は適宜設定することができるが、例えば、培養温度は、0~40℃が好ましく、20~40℃がより好ましく、25~35℃が更に好ましい。培養は、暗所で行っても明所で行ってもよいが、光条件としては、例えば、12.5μmol/m/sの照明の下、14~16時間の明時間という条件などが挙げられる。培養時間は、特に限定されないが、1~10週間培養することが好ましく、3~5週間がより好ましい。
固体培地の場合、誘導培地中の固形化剤の濃度は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上である。該固形化剤の濃度は、好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.1質量%以下、更に好ましくは0.8質量%以下である。
上述の条件のなかでも、植物生長ホルモンがサイトカイニン系植物ホルモン(特に、ベンジルアデニン、又はカイネチン)で、その濃度が3.0~8.0mg/Lであり、培養温度が25~35℃であることが特に好ましい。
以上のように、上記組織を上記誘導培地で培養することにより、シュートを誘導、形成することが可能である。
(シュート培養工程)
本発明では、上記誘導工程等により得られたシュートを培養する。なお、上記誘導工程等により得られたシュートを培養する工程を以下ではシュート培養工程ともいう。
シュート培養工程では、誘導工程等により形成させたシュートを、シュート培養培地(好ましくは植物生長ホルモン及び炭素源を含むシュート培養培地)で培養することにより、シュートを培養する。具体的には、誘導工程等により形成させたシュート(例えば、2cm程度)をシュート培養培地に差し込み移植し、培養することで、シュートが伸長し、また新たな芽を取得することも可能となる。
なお、シュート培養培地は、液体であっても固体であってもよいが、培地にシュートを差し込んで培養することでシュートが伸長しやすくなるため、固体培養が好ましい。また、シュート培養培地が液体培地である場合には、静置培養を行ってもよく、振とう培養を行ってもよい。
ここで、本明細書において、シュート培養工程で用いる「誘導工程等により形成させたシュート」とは、シュートを誘導するための材料として用いられた腋芽等の組織から切断されたシュートの切片を意味する。
また、シュート培養工程で用いるシュートとしては特に限定されず、どのような方法により形成されたシュートであっても用いることができる。
シュート培養工程では、培養期間3週間目と9週間目とを対比した際に、シュートのRGBの合計値の変化率(培養期間3週間目におけるRGBの合計値と9週間目におけるRGBの合計値の変化率)が0.80~1.20となるようにシュートを培養する。合計値の変化率の下限は好ましくは0.82、より好ましくは0.85であり、合計値の変化率の上限は好ましくは1.15、より好ましくは1.10である。
合計値の変化率が上記範囲内であると、枯死や生育停滞が生じておらず、生育が維持されているもしくは活性化できていることを意味する。
ここで、合計値の変化率が1.20とは、培養期間3週間目に比べて、培養期間9週間目において、合計値が1.20倍となっていることを示す。
なお、本明細書において、RGBの合計値は、R値、G値、B値の合計値(和)を意味し、具体的には、後述の実施例に記載の方法により測定される。
培養期間3週間目、9週間目におけるそれぞれのシュートのRGBの合計値は、好ましくは200以上、より好ましくは250以上、更に好ましくは280以上であり、好ましくは500以下、より好ましくは450以下、更に好ましくは420以下である。これにより、効果がより好適に得られる。
シュート培養工程では、培養期間3週間目と9週間目とを対比した際に、シュートの伸長量(培養期間3週間目~9週間目におけるシュートの伸長量)が1.0mm以上となるようにシュートを培養する。シュートの伸長量は好ましくは1.2mm以上、より好ましくは1.5mm以上、更に好ましくは2.0mm以上であり、上限は特に限定されない。シュートの伸長量が上記範囲内であると、シュートの生育が活性化できていることを意味する。
なお、本明細書において、シュートの伸長量は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
なお、本明細書において、培養期間については、シュート培養培地にシュート(シュートの切片)を移植したときを培養開始(0時間)とし、培養期間3週間目は、培養開始後504時間、培養期間9週間目は、培養開始後1512時間を意味し、新たなシュート培養培地に移植した(植え替えた)際は培養期間をリセットせずに、培養期間を累積加算することとする。
シュート培養培地は、植物生長ホルモン及び炭素源を含むことが好ましい。該植物生長ホルモンとしては、例えば、オーキシン系植物ホルモン及び/又はサイトカイニン系植物ホルモンが挙げられる。中でも、サイトカイニン系植物ホルモンを使用することが好ましい。
オーキシン系植物ホルモンとしては、上記誘導培地に用いられるオーキシン系植物ホルモンと同様のものを用いることができる。
サイトカイニン系植物ホルモンとしては、上記誘導培地に用いられるサイトカイニン系植物ホルモンと同様のものを用いることができるが、なかでも、ベンジルアデニン、カイネチン、ゼアチンが好ましく、ベンジルアデニン、カイネチンがより好ましく、ベンジルアデニンが更に好ましい。
シュート培養培地に用いられる炭素源としては、特に限定されず、上記誘導培地に用いられる炭素源と同様のものを用いることができるが、なかでも、スクロースが好ましい。
シュート培養培地は、上記誘導培地同様、更に、活性炭、硝酸銀を含むことが好ましい。
シュート培養培地としては、上記誘導培地として用いられる基本培地や、該基本培地の組成に変更を加えた改変基本培地等のベースとなる培地に植物生長ホルモンを加えた同様のものを用いることができるが、なかでも、MS培地、B5培地、WP培地、MB培地に植物生長ホルモンを加えたものが好ましく、MS培地、その組成に変更を加えたMS改変培地、MB培地又はその組成に変更を加えたMB改変培地に植物生長ホルモンを加えたものがより好ましく、MB培地又はその組成に変更を加えたMB改変培地に植物生長ホルモンを加えたものが更に好ましい。
シュート培養培地を固体培地とする場合、固形化剤を使用して培地を固体にすればよい。固形化剤としては、特に限定されず、寒天、ゲランガム、アガロース、ゲルライト、アガー、フィタゲル等が挙げられる。
好適なシュート培養培地の組成及び培養条件は、植物種により異なり、また培地が液体培地であるか固体培地であるかによっても異なるが、通常は(特に、ゴムノキの場合は)以下の組成である。
シュート培養培地中の炭素源(好ましくはスクロース)の濃度は、好ましくは3.0質量%以上、より好ましくは5.0質量%以上である。該炭素源(好ましくはスクロース)の濃度は、好ましくは9.0質量%以下、より好ましくは7.0質量%以下である。
シュート培養培地中のオーキシン系植物ホルモンの濃度としては、好ましくは2.0mg/L以下、より好ましくは1.0mg/L以下、更に好ましくは0.1mg/L以下、特に好ましくは0.08mg/L以下、最も好ましくは0mg/Lである。
シュート培養培地にサイトカイニン系植物ホルモンを加える場合の、シュート培養培地中のサイトカイニン系植物ホルモンの濃度としては、好ましくは1.0mg/L以上、より好ましくは3.0mg/L以上、更に好ましくは3.5mg/L以上、特に好ましくは4.0mg/L以上である。該サイトカイニン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは10.0mg/L以下、より好ましくは8.0mg/L以下、更に好ましくは6.0mg/L以下である。
シュート培養培地中の活性炭の濃度は、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.03質量%以上である。該活性炭の濃度は、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下である。
シュート培養培地中の硝酸銀の濃度は、好ましくは0.1mg/L以上、より好ましくは0.3mg/L以上、更に好ましくは0.5mg/L以上である。該硝酸銀の濃度は、好ましくは5.0mg/L以下、より好ましくは3.0mg/L以下である。
シュート培養培地のpHは、4.0~10.0が好ましく、5.0~6.5がより好ましく、5.5~6.0が更に好ましい。
シュート培養工程は、通常、温度、照明時間等の培養条件の管理された制御環境下で行われる。培養条件は適宜設定することができるが、例えば、培養温度は、0~40℃が好ましく、20~40℃がより好ましく、25~35℃が更に好ましい。培養は、暗所で行っても明所で行ってもよいが、光条件としては、例えば、5~20μmol/m/sの照明の下、14~16時間の明時間という条件などが挙げられる。
固体培地の場合、シュート培養培地中の固形化剤の濃度は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上である。該固形化剤の濃度は、好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.1質量%以下、更に好ましくは0.8質量%以下である。
上述の条件のなかでも、シュート培養培地が、MB培地又はその組成に変更を加えたMB改変培地であることが好ましく、MB培地又はその組成に変更を加えたMB改変培地に植物生長ホルモンを加えた培地であることがより好ましく、MB培地又はその組成に変更を加えたMB改変培地にサイトカイニン系植物ホルモンを加えた培地であることが更に好ましい。このような培地でシュートを培養することにより、培養期間3週間目と9週間目とを対比した際に、シュートのRGBの合計値の変化率が0.80~1.20、シュートの伸長量が1.0mm以上となるようにシュートを培養することが可能となる。
更に、シュート培養培地中の、(1)炭素源(好ましくはスクロース)の濃度が3.0~9.0質量%、(2)サイトカイニン系植物ホルモンの濃度が3.0~8.0mg/L、(3)活性炭の濃度が0.01~0.1質量%、(4)硝酸銀の濃度が0.5~3.0mg/L、(5)固形化剤の濃度が0.1~2.0質量%、のいずれかの条件を満たすことが好ましく、(1)~(5)の全ての条件を満たすことがより好ましい。このような培地でシュートを培養することにより、培養期間3週間目と9週間目とを対比した際に、シュートのRGBの合計値の変化率が0.80~1.20、シュートの伸長量が1.0mm以上となるようにシュートを培養することが可能となる。
また、培養条件としては、(A)培養温度が25~35℃、(B)光条件が5~20μmol/m/sの照明の下、14~16時間の明時間という条件、のいずれかの条件を満たすことが好ましく、(A)~(B)の全ての条件を満たすことがより好ましい。このような培養条件でシュートを培養することにより、培養期間3週間目と9週間目とを対比した際に、シュートのRGBの合計値の変化率が0.80~1.20、シュートの伸長量が1.0mm以上となるようにシュートを培養することが可能となる。
また、誘導培地で培養した期間が3ヶ月未満のシュートを用いることも好ましい。
本発明では、培養期間3週間目の状態と9週間目の状態とを対比した際に、シュートのRGBの合計値の変化率が0.80~1.20、シュートの伸長量が1.0mm以上となるようにシュートを培養するため、シュートの長期培養が可能となる。培養期間としては、特に限定されないが、好ましくは9週以上、より好ましくは10週以上、更に好ましくは12週以上、特に好ましくは15週以上である。
本発明では、シュートの長期培養が可能となるため、培養しているシュートを、例えば3週間毎に新しいシュート培養培地へ移植することで、培養を継続すればよい。
以上のように、誘導工程等により形成させたシュート(シュートの切片)を、培養期間3週間目と9週間目とを対比した際に、シュートのRGBの合計値の変化率が0.80~1.20、シュートの伸長量が1.0mm以上となるように培養することにより、シュートの長期培養が可能となり、シュートを伸長させることができる。また、このシュート培養工程では、シュートが伸長するだけではなく、新たなシュートも形成される。このシュート培養工程により伸長させたシュートは、安定して成長したシュートであるため、好適に発根工程に供することが可能である。
(発根工程)
発根工程では、シュート培養工程により伸長させたシュートを発根誘導培地で培養することにより発根させる。
発根方法は特に限定されないが、発根工程の一例について説明する。
発根工程では、例えば、シュート培養工程により伸長させたシュートを発根誘導培地で培養して発根させる。なお、発根誘導培地は、液体であっても固体であってもよいが、培地にシュートを差し込んで培養することで発根させやすくなるため、固体培養が好ましい。また、発根誘導培地が液体培地である場合には、静置培養を行ってもよく、振とう培養を行ってもよい。
発根誘導培地は、植物生長ホルモン及び炭素源を含むものであるが、該植物生長ホルモンとしては、例えば、オーキシン系植物ホルモン及び/又はサイトカイニン系植物ホルモンが挙げられる。中でも、オーキシン系植物ホルモンを用いることが好ましい。
オーキシン系植物ホルモンとしては、上記誘導培地に用いられるオーキシン系植物ホルモンと同様のものを用いることができるが、なかでも、2,4-ジクロロフェノキシ酢酸、1-ナフタレン酢酸、インドール-3-酪酸、インドール-3-酢酸が好ましく、インドール-3-酪酸がより好ましい。
サイトカイニン系植物ホルモンとしては、上記誘導培地に用いられるサイトカイニン系植物ホルモンと同様のものを用いることができるが、なかでも、ベンジルアデニン、カイネチン、ゼアチンが好ましく、ベンジルアデニン、カイネチンがより好ましい。
発根誘導培地に用いられる炭素源としては、特に限定されず、上記誘導培地に用いられる炭素源と同様のものを用いることができるが、なかでもスクロースが好ましい。
発根誘導培地は、上記誘導培地同様、更に、活性炭、硝酸銀を含むことが好ましい。
発根誘導培地としては、上記誘導培地として用いられる基本培地や、該基本培地の組成に変更を加えた改変基本培地等のベースとなる培地に植物生長ホルモンを加えた同様のものを用いることができるが、なかでも、MS培地、B5培地、WP培地に植物生長ホルモンを加えたものが好ましく、MS培地又はその組成に変更を加えたMS改変培地に植物生長ホルモンを加えたものがより好ましい。
発根誘導培地を固体培地とする場合、固形化剤を使用して培地を固体にすればよい。固形化剤としては、特に限定されず、寒天、ゲランガム、アガロース、ゲルライト、アガー、フィタゲル等が挙げられる。
好適な発根誘導培地の組成及び培養条件は、植物種により異なり、また培地が液体培地であるか固体培地であるかによっても異なるが、通常は(特に、ゴムノキの場合は)以下の組成である。
発根誘導培地中の炭素源の濃度は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上である。該炭素源の濃度は、好ましくは10.0質量%以下、より好ましくは5.0質量%以下である。
発根誘導培地にオーキシン系植物ホルモンを加える場合の、発根誘導培地中のオーキシン系植物ホルモンの濃度としては、好ましくは0.5mg/L以上、より好ましくは1.0mg/L以上、更に好ましくは3.0mg/L以上である。該オーキシン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは10.0mg/L以下、より好ましくは6.0mg/L以下、更に好ましくは5.0mg/L以下である。
発根誘導培地にサイトカイニン系植物ホルモンを実質的に加えないことが好ましく、具体的には、好ましくは1.0mg/L以下、より好ましくは0.1mg/L以下、更に好ましくは0.05mg/L以下、特に好ましくは0.01mg/L以下である。
発根誘導培地中の活性炭の濃度は、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.03質量%以上である。該活性炭の濃度は、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下である。
発根誘導培地中の硝酸銀の濃度は、好ましくは0.1mg/L以上、より好ましくは0.3mg/L以上、更に好ましくは0.5mg/L以上である。該硝酸銀の濃度は、好ましくは5.0mg/L以下、より好ましくは3.0mg/L以下である。
発根誘導培地のpHは、4.0~10.0が好ましく、5.0~6.5がより好ましく、5.5~6.0が更に好ましい。
発根工程は、通常、温度、照明時間等の培養条件の管理された制御環境下で行われる。培養条件は適宜設定することができるが、例えば、培養温度は、0~40℃が好ましく、20~40℃がより好ましく、25~35℃が更に好ましい。培養は、暗所で行っても明所で行ってもよいが、光条件としては、例えば、12.5μmol/m/sの照明の下、14~16時間の明時間という条件などが挙げられる。培養時間は、特に限定されないが、1~10週間培養することが好ましく、4~8週間がより好ましい。
固体培地の場合、発根誘導培地中の固形化剤の濃度は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上である。該固形化剤の濃度は、好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.1質量%以下、更に好ましくは0.8質量%以下である。
上述の条件のなかでも、植物生長ホルモンがオーキシン系植物ホルモン(特に、インドール-3-酪酸)で、その濃度が3.0~6.0mg/Lであり、培養温度が25~35℃であることが特に好ましい。
以上のように、シュートを上記発根誘導培地で培養することにより、発根させることが可能であり、発根させたシュート(本明細書において、発根したシュートを「幼植物」とも称する。)が得られ、完全な植物体であるクローン苗が形成される。この幼植物は、直接土壌に移植してもよいが、馴化させてから土壌に移植してもよい。馴化させる方法は特に限定されない。
なお、上記形成されたクローン苗を用いて、誘導工程、シュート培養工程、発根工程を繰り返し実施することにより、優良品種のクローン苗を大量に安定的に生産することも可能である。
本発明では、また、培養期間3週間目と9週間目とを対比した際に、シュートのRGBの合計値の変化率が0.80~1.20、シュートの伸長量が1.0mm以上となるようにシュートを培養することにより、シュートの長期培養が可能となる知見を活かして、培養培地や培養条件の評価を行うことができる。
具体的には、シュートの培養を行い、培養期間3週間目と9週間目とを対比した際の、シュートのRGBの合計値の変化率、シュートの伸長量に基づいて、培養培地や培養条件がシュートの長期培養に適しているか否かを判断することができる。
このように、本発明は、シュートの培養を行い、培養期間3週間目と9週間目とを対比した際の、シュートのRGBの合計値の変化率、シュートの伸長量に基づいて、培養培地を評価する方法、シュートの培養を行い、培養期間3週間目と9週間目とを対比した際の、シュートのRGBの合計値の変化率、シュートの伸長量に基づいて、培養条件を評価する方法も提供する。
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
以下、実施例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
BA:ベンジルアデニン
KI:カイネチン
硝酸銀:メルク社製の硝酸銀
ゲル化剤:フルカ(FLUKA)社製のアガー(Agar)(パウダー)
消毒剤:ユナイテッド ドラッグ(The United Drug)社製、ピラッド-ポビドン(Pyrad-Povidone)(商品名)(ポビドンヨード溶液)
<誘導工程>
パラゴムノキの苗木から腋芽を含む組織を採取した。
次に、苗木から採取した腋芽を含む組織を流水で洗浄し、更に70質量%エタノールで洗浄した後、約5~10体積%に希釈した次亜塩素酸ナトリウム水溶液で滅菌し、滅菌水で洗浄した。
次に、滅菌した組織を誘導培地(固体培地)に差し込み、培養を行った(誘導工程)。誘導培地は、MS培地(植物細胞工学入門(学会出版センター)p20~p36に記載)に、ベンジルアデニン5.0mg/L、硝酸銀1.0mg/L、スクロース3.0質量%、活性炭0.05質量%を添加し、培地のpHを5.7に調整した後、ゲル化剤を0.275質量%となるように添加して、オートクレーブ(121℃、20分)で滅菌し、クリーンベンチ内で冷却することにより調製した。
パラゴムノキの上記組織を誘導培地(固体培地)に差し込み、培養温度28℃、12.5μmol/m/sの照明の下、16時間の明時間という条件で培養し、シュートを誘導した。なお、4週間ごとに同じ組成の誘導培地に移植する植え継ぎを行った。
(実施例、比較例)
<シュート培養工程>
誘導工程により誘導されたシュートを20mm程度に切り出し、全ての葉を切り落としてシュートの切片を調製した。そして、調製したシュートの切片をシュート培養培地で培養した(シュート培養工程)。シュート培養培地は、下記表1に記載の基本培地に、下記表1に記載の所定濃度のスクロース等を添加し、培地のpHを5.7に調整した後、ゲル化剤を0.275質量%となるように添加して、オートクレーブ(121℃、20分)で滅菌し、クリーンベンチ内で冷却することにより調製した。
なお、表1において、植物齢とは、誘導培地で培養した期間を意味する。
調製したシュートの切片をシュート培養培地(固体培地)に差し込み、表1に記載の培養温度、12.5μmol/m/sの照明の下、16時間の明時間という条件で15週間培養した(n=5)。なお、3週間ごとに同じ組成のシュート培養培地に移植する植え継ぎを行った。そして、培養中1週間(168時間)経過毎に観察(シュートの長さの測定)、写真撮影(RGBの合計値の評価)を行った。
〔シュートの伸長量の評価〕
培養期間3週間目(培養開始後504時間)と9週間目(培養開始後1512時間)において測定したシュートの長さから、培養期間3週間目~9週間目におけるシュートの伸長量を算出した。
〔RGBの合計値の評価〕
培養期間3週間目(培養開始後504時間)と9週間目(培養開始後1512時間)において撮影した写真から、培養期間3週間目のシュートのRGBの合計値、培養期間9週間目のシュートのRGBの合計値を算出し、培養期間3週間目と9週間目におけるRGBの合計値の変化率を算出した。
写真からRGBの合計値を測定する方法は、撮影した写真をRGB値を測定可能なソフトウエアで開き、シュートにあたる部分のRGB値を測定した。
なお、シュートのうち、生長点付近をRGBの合計値を測定する箇所とし、RGBの合計値は生長点付近の座標の平均値とした。
〔シュートの長期培養の可否〕
シュートを15週間培養した後、(1)茎の伸長、(2)脇芽の伸長、(3)葉の展開、について目視で生育状態を判断した。
○、△の場合に、シュートの長期培養が可能と判断した。
○:(1)~(3)の少なくとも1つが観察
△:生存しているが増殖が見られない
×:枯れ、葉の先端の白変又は茶変が観察
実施例、比較例における、培地の配合、培養温度、及び評価結果を表1に示す。
Figure 0007234540000001
表1より、培養期間3週間目と9週間目とを対比した際に、シュートのRGBの合計値の変化率が0.80~1.20、シュートの伸長量が1.0mm以上となるようにシュートを培養することにより、シュートの長期培養が可能となることが分かった。

Claims (4)

  1. 培養期間3週間目と9週間目とを対比した際に、シュートのRGBの合計値の変化率が0.80~1.20、シュートの伸長量が1.0mm以上となるようにシュートを培養し、シュートを培養する培地が、以下の(1)~(6)の条件のうち少なくとも(2)、(4)、(6)を満たし、培養条件が、以下の(A)、(B)の条件のうち少なくとも1つを満たす、Hevea属に属する植物のシュートの培養方法。
    (1)炭素源の濃度が3.0~9.0質量%
    (2)ベンジルアデニンの濃度が3.0~8.0mg/L
    (3)活性炭の濃度が0.01~0.1質量%
    (4)硝酸銀の濃度が0.5~3.0mg/L
    (5)固形化剤の濃度が0.1~2.0質量%
    (6)MB培地又はその組成に変更を加えたMB改変培地に植物生長ホルモンを加えた培地である
    (A)培養温度が25~35℃
    (B)光条件が5~20μmol/m/sの照明の下、14~16時間の明時間
  2. スクロースを3.0~9.0質量%含む培地でシュートを培養する請求項1記載のシュートの培養方法。
  3. 前記合計値の変化率が0.82~1.15、前記シュートの伸長量が1.2mm以上となるようにシュートを培養する請求項1又は2記載のシュートの培養方法。
  4. 前記シュートがパラゴムノキのシュートである請求項1~3のいずれかに記載のシュートの培養方法。
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