JP7234514B2 - 光学積層体 - Google Patents
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Description
〔1〕
基材と、基材の一方の面に設けられた反射防止膜と、基材の他方の面に設けられた遮光膜とを備える光学積層体であって、前記光学積層体が下記(i)~(iii)の特性を全て満たすことを特徴とする光学積層体。
(i)0.5<R(λ1a,θ1a)/R(λ1b,θ1b)<1.5
(ii)Y(θ2)≦3%
(iii)Y(θ3)≦10%
ここで、R(λ,θ)は波長λnmの光が角度θで入射した場合の反射率であり、
λ1a=380nm、θ1a=60°、
λ1b=650nm、θ1b=60°である。
Y(θ)は、入射角度θの視感反射率であり、
θ2=5°、
θ3=60°である。
〔2〕
前記光学積層体が下記(iv)の特性をさらに満たすことを特徴とする〔1〕に記載の光学積層体。
(iv)0.3<R(λ2a,θ2a)/R(λ2b,θ2b)<1.3(θ2a=θ2b=5°)
ここで、λ2aは、400~450nmの波長範囲に存在し、λ2bは700~790nmの波長範囲に存在する。
〔3〕
前記光学積層体が下記(v)の特性をさらに満たすことを特徴とする〔1〕または〔2〕に記載の光学積層体。
(v)R(λ3a,θ3a)<2%
ここで、R(λ,θ)は波長λnmの光が角度θで入射した場合の反射率であり、λ3a=500nm、θ3a=5°である。
〔4〕
遮光膜が設けられた領域において、前記光学積層体がT(850nm,0°)>60%の領域を有することを特徴とする〔1〕~〔3〕のいずれか1に記載の光学積層体。
ここで、T(850nm,0°)は波長850nmの光を0°で入射した場合の透過率である。
〔5〕
前記遮光膜が赤外線透過領域を有し、
基材と接する遮光膜が、以下の(a)及び(b)を満たす、〔1〕~〔4〕のいずれか1に記載の光学積層体。
(a)波長450~650nmにおいて、0.8×nB≦nA≦1.2×nBかつ0.1×kB≦kA≦1.8×kB
(b)波長850nmにてkA≦0.2
nA:赤外線透過領域における、基材と接する遮光膜の屈折率
kA:赤外線透過領域における、基材と接する遮光膜の消衰係数
nB:赤外線透過領域以外の領域における、基材と接する遮光膜の屈折率
kB:赤外線透過領域以外の領域における、基材と接する遮光膜の消衰係数
〔6〕
反射防止膜は、波長550nmの光に対する屈折率が1.2~1.60の材料を含む層を1以上有する、〔1〕~〔5〕のいずれか1に記載の光学積層体。
〔7〕
反射防止膜は、波長550nmの光に対する屈折率が1.61~2.7の材料をさらに含む、〔1〕~〔6〕のいずれか1に記載の光学積層体。
〔8〕
反射防止膜は、酸化シリコン、フッ化マグネシウム、酸化マグネシウム、フッ化アルミニウム、及びシリコン酸窒化物から選ばれる1種以上の材料を含む、〔1〕~〔7〕のいずれか1項に記載の光学積層体。
〔9〕
反射防止膜は、酸化ニオブ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化アルミニウム、及び窒化シリコンから選ばれる1種以上の材料を含む、〔1〕~〔8〕のいずれか1項に記載の光学積層体。
〔10〕
基材が曲面を有する、〔1〕~〔9〕に記載の光学積層体。
基材の形状としては、反射防止膜と遮光膜を設けられる面が存在すれば特に限定されず、板状でもフィルム状でもよく、また、平坦な形状でも曲面を有する形状であってもよく、さらに平坦部分と曲面部分の両者を有する形状であってもよい。近年では表示面が曲面を有する画像表示装置も登場しており、画像を見る人の角度によらず反射性に優れた本発明の光学積層体はこのような用途に特に有用である。
本発明の光学積層体は、基材の一方の面に反射防止膜を有する。反射防止膜の材料は特に限定されるものではなく、可視光の反射を抑制できる材料であれば各種材料を利用できる。また、反射防止膜は低屈折率材料から形成される単層膜であっても、低屈折率材料の層と高屈折率材料の層とを積層した多層膜であってもよい。ここで、低屈折材料とは波長550nmの光に対する屈折率が1.2~1.60の材料であり、高屈折率材料とは波長550nmの光に対する屈折率が1.61~2.7の材料である。
高屈折率層を構成する材料としては、例えば酸化ニオブ(Nb2O5)、酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)、酸化アルミニウム(Al2O3)、窒化シリコン、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化タンタル(Ta2O5)、及び、これらの材料を含有する混合物からなる材料から選択された1種以上を好ましく利用できる。
低屈折率層を構成する材料としては、酸化シリコン(SiO2)、フッ化マグネシウム、酸化マグネシウム、フッ化アルミニウム、及びシリコン酸窒化物、酸化シリコンと酸化スズの混合物、及び、これらの材料を含有する混合物からなる材料から選択された1種以上を好ましく利用できる。
また酸化ニオブ(Nb2O5)と酸化シリコン(SiO2)を交互に積層し6層から8層の反射防止膜を得る場合、基板から最も離れた酸化ニオブ(Nb2O5)の膜厚は、最上層の酸化シリコン(SiO2)の膜厚を1とすると0.1~0.8の範囲が好ましく、さらには0.2~0.7の範囲が好ましく、さらには0.2~0.6の範囲が好ましい。また基板側から第3層目の酸化ニオブ(Nb2O5)の膜厚は、前記基板から最も離れた酸化ニオブ(Nb2O5)の膜厚を1とすると、0.3~1.7の範囲が好ましく、さらには0.5~1.5の範囲が好ましく、0.7~1.4の範囲が最も好ましい。
また酸化ニオブ(Nb2O5)と酸化シリコン(SiO2)を交互に積層し4層から8層の反射防止膜を得る場合において、基板に最も近い最下層の酸化ニオブ(Nb2O5)は、膜厚1~30nmが好ましく、さらには1~20nmが好ましく、最も好ましくは5~15nmである。
酸化ニオブ(Nb2O5)と酸化シリコン(SiO2)を交互に積層し4層から8層の反射防止膜を得る場合、総膜厚は、150nm~400nmが好ましく、さらに好ましくは200nm~300nm、さらには220~280nmが好ましい。
高屈折率材料として酸化ニオブ(Nb2O5)以外の材料、例えば酸化チタン(TiO2)を用い、酸化チタン(TiO2)と酸化シリコン(SiO2)を交互に積層した反射防止膜を得る場合は、前記酸化ニオブ(Nb2O5)を用いた場合と高屈折率材料の光学膜厚が同じになるように酸化チタン(TiO2)の膜厚を調整する。即ち、波長550nmにおける酸化ニオブ(Nb2O5)の屈折率は2.2であり、酸化チタン(TiO2)の膜厚は2.4である場合、酸化チタン(TiO2)の膜厚は、前述の酸化ニオブ(Nb2O5)の膜厚に0.92を乗じた膜厚となる。例えば、酸化ニオブの好ましい膜厚範囲が5~15nmである場合、酸化チタンの好ましい膜厚は4.6nm~13.8nmである。
(i)0.5<R(λ1a,θ1a)/R(λ1b,θ1b)<1.5
(ii)Y(θ2)≦3%
(iii)Y(θ3)≦10%
R(λ,θ):波長λnmの光が角度θで入射した場合の反射率
Y(θ):入射角度θの視感反射率
以下、各特性について詳述する。
(i)0.5<R(λ1a,θ1a)/R(λ1b,θ1b)<1.5(λ1a=380nm、θ1a=60°、λ1b=650nm、θ1b=60°)
特性(i)は入射角60°における赤色波長域光の反射率と青色波長域光の反射率の比を規定したもので、かかる比が0.5~1.5の範囲にあることは両反射率が同程度であることを意味する。上記反射率比をこの範囲とすることで、斜めの入射角においても、反射色a,bの値が-5≦a≦5かつ-5≦b≦5の範囲となり、ニュートラルな反射色調を得ることができる。すなわち、斜めの入射角においても、反射光が赤色にも青色にも偏り過ぎることがなく、ニュートラルな反射色調であることを意味する。また、上記反射率の比は好ましくは0.7~1.3である。
なお、特性(i)に関し、各波長域λの全範囲で上記関係式を満たす必要はなく、各波長域λの範囲内のいずれかの波長において上記関係式を満たせば足りる。
特性(ii)は入射角5°の視感反射率を規定したもので、かかる反射率が3%以下であることで基板に対しほぼ垂直方向から見た場合に十分な反射防止性能を得ることができる。なお入射角5°としたのは、入射角0°(すなわち垂直入射)に近い状態を想定したものである。
(iii)Y(θ3)≦10%(θ3=60°)
特性(iii)は入射角60°の視感反射率を規定したもので、かかる反射率が10%以下であることで斜めからの入射光に対しても十分な反射防止性能を得ることができる、あるいは、基板に対して斜め方向から観察する場合においても、十分な反射防止性能を得ることができる。
(iv)0.3<R(λ2a,θ2a)/R(λ2b,θ2b)<1.3(θ2a=θ2b=5°)
λ2aは、400~450nmの波長範囲に存在し、λ2bは700~790nmの波長範囲に存在する。
特性(iv)は入射角5°における赤色波長域光の反射率と青色波長域光の反射率の比を規定したもので、かかる比が0.5~1.5の範囲にあることは各反射率が同程度であることを意味する。上記反射率比をこの範囲とすることで、入射角5°における反射色a,bの値が-5≦a≦5かつ-5≦b≦5の範囲となり、ニュートラルな反射色調を得ることができる。すなわち、反射光が赤色にも青色にも偏り過ぎることがなく、ニュートラルな反射色調であることを意味する。また、上記反射率の比は好ましくは0.7~1.3である。
(i’)角度60°で入射した場合の反射率が、可視光域における反射率最小値(60°入射)+2%となる、波長の最小値をλmin.(60°)とし、最大値をλmax.(60°)とすると、λmin.(60°)≦400nm、かつ、λmax.(60°)≧600nmである。また反射率最小値(60°入射)+2%となる、低反射領域の波長幅Δλ(60°)(=λmax.(60°)-λmin.(60°))も、250nm以上となり、角度60°の場合においても広い波長範囲において低反射性能を得ることができる。
(iv’)角度5°で入射した場合の反射率が、可視光域における反射率最小値(5°入射)+2%となる、波長の最小値をλmin.(5°)とし、最大値をλmax.(5°)とすると、λmin.(5°)≦450nm、かつ、λmax.(5°)≧700nmである。また反射率最小値(5°入射)+2%となる、低反射領域の波長幅Δλ(5°)(=λmax.(5°)-λmin.(5°))は、300nm以上となり、広い波長範囲において低反射性能を得ることができる。
(v)R(λ3a,θ3a)<2%
ここで、R(λ,θ)は波長λnmの光が角度θで入射した場合の反射率であり、λ3a=500nm、θ3a=5°である。
特性(v)は緑色波長域光の反射率を規定したものであり、かかる反射率が上記範囲であることで、緑色が強すぎることなくよりニュートラルな色調を得ることができる。
反射防止膜の形成方法については製造方法の項で詳述する。
遮光膜は、基材の反射防止膜が設けられた面とは他方の面に設けられ、光遮蔽性を有する膜である。
上記関係式はすなわち遮光膜4が遮光領域4aと、赤外線透過領域4bとを一部に有することを意味する。
(a)波長450~650nmにて、0.8×nB≦nA≦1.2×nBかつ0.1×kB≦kA≦1.8×kB
(b)波長850nmにてkA≦0.2
上記条件を満たすことにより、赤外線透過領域Aと遮光領域Bにおける反射色の違いを示す値((Δa)2+(Δb)2)1/2が2以下と小さく、かつ、視感反射率Y(5°)の値も十分小さくすることができる。すなわち、赤外線透過領域Aと遮光領域Bの境界が視認されにくく、好ましい。
好ましくは、光硬化性樹脂または熱硬化性樹脂と各種顔料とを溶媒に溶解した溶液(インク)を、基材表面に塗布または印刷し、溶媒を蒸発等により除去し、光または熱により樹脂を硬化させることで形成される。
光硬化性樹脂の一構成例は、重合性基を有するモノマーを含有するものが挙げられる。重合性基を有するモノマーとしては、少なくとも一つの末端エチレン性不飽和基を有する付加重合性モノマーが挙げられ、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ビニルエーテル、ビニルエステル、スチレン系化合物、アリルエーテル、アリルエステルが好ましく、硬化性と透明性の観点から(メタ)アクリレートモノマーがより好ましい。(メタ)アクリル酸は、アクリル酸およびメタクリル酸の総称であり、(メタ)アクリレートは、アクリレートおよびメタクリレートの総称であり、(メタ)アクリルアミドは、アクリルアミドおよびメタクリルアミドの総称である。
その他にエポキシ基やグリシジル基、オキセタン基、オキサゾリン基などの環状エーテル構造を有するモノマーも使用できる。重合性基を有するモノマーにおける重合性基の数は、1~6個が好ましく、1または2個がより好ましい。
本発明の光学積層体は、本発明の効果を損なわない範囲で、基材と反射防止膜と遮光膜以外の部材、例えば基材と反射防止膜の間に防眩層を有してもよい。防眩層は、例えば表面に凹凸形状のある層を形成することで反射光を散乱させ、反射光による眩しさを低減する機能を有する層である。
またさらに、反射防止膜の基材と接しない面に防汚膜を備えてもよい。防汚膜は撥油性や撥水性の特性をもち、防汚膜を備えることにより、例えば指紋跡などの汚れの付着を抑えるあるいはふき取りやすくする、またタッチパネル操作の際にスムーズな指滑り性を得ることができる。防汚膜の材料としては、例えば含フッ素有機ケイ素化合物などが挙げられる。防汚膜の成膜方法は特に限定されるものではないが、上記したフッ素含有有機ケイ素化合物材料を用いて真空蒸着により成膜することが好ましい。
(反射防止膜の形成)
基材の一方の面に反射防止膜を成膜する方法は特に限定されるものではなく、各種成膜方法を利用可能である。特に、パルススパッタ、ACスパッタ、デジタルスパッタ等の方法により成膜を行うことが好ましい。これらの方法によれば、緻密な反射防止膜ができ、耐久性を確保できる。また各層の膜厚を厳密に制御可能であり、このため設計通りの積層膜を作製でき、所望の光学特性を有する反射防止膜を得ることができる。さらにこれらの方法によれば、基材面内において均一な膜厚で成膜可能である。このため基材面内の場所により反射色が異なること等なく、基材面内で均一な光学特性を有する反射防止膜を得ることができる。
遮光膜は、例えば、光硬化性樹脂または熱硬化性樹脂と各種顔料とを溶媒に溶解した溶液(インク)を、基材表面に塗布または印刷し、溶媒を蒸発等により除去し、光または熱により樹脂を硬化させることで形成される。
光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、顔料としては上述したものを使用できる。
溶媒としては、水、アルコール類、エステル類、ケトン類、芳香族炭化水素系溶剤、脂肪族炭化水素系溶剤を用いてもよい。例えば、アルコール類としては、イソプロピルアルコール、メタノール、エタノール等を使用でき、エステル類としては酢酸エチル、ケトン類としてはメチルエチルケトンを使用できる。芳香族炭化水素系溶剤としては、トルエン、キシレン、ソルベッソTM100、ソルベッソTM150等を使用でき、脂肪族炭化水素系溶剤としてはヘキサン等を使用できる。
まず、ガラス基板の一方の面の所定の場所に、波長550nmにおける屈折率が1.55、消衰係数が0.23であるインクを5μmの厚さに塗布した後、150℃で10分間保持して乾燥させて遮光膜を形成した。
次に、以下の手順で遮光膜を形成した面と反対の面に、反射防止膜を形成した。遮光膜とは反対の面が成膜面となるように、前記遮光膜を備えたガラス基板をマグネトロンスパッタ装置の真空槽内に配置し、真空槽内の真空度を1.3×10-4Paとした。次に、酸素ガス5体積%、アルゴンガス95体積%からなるスパッタガスを成膜室に導入し2×10-1Paとした。酸化ニオブターゲット(AGCセラミックス株式会社製;NBOターゲット)に、電力密度5.5W/cm2の電力を投入し、ガラス基板表面に膜厚12nmの酸化ニオブからなる高屈折率層を形成した。次に、酸素ガス10体積%、アルゴンガス90体積%からなるスパッタガスを成膜室に導入し2×10-1Paとした。n型単結晶シリコンをスパッタターゲットとし、周波数20kHz、反転パルス幅5μsec、電力密度2.8W/cm2の条件でパルススパッタリングを行い、前記酸化ニオブ膜の上に、膜厚39nmの酸化ケイ素からなる低屈折率層を形成した。さらに前記1層目と同様にして、2層目低屈折率層上に、酸化ニオブからなる高屈折率層を115nm形成した。さらに前記2層目と同様にして、酸化ケイ素からなる低屈折率層を90nm形成し、4層からなる反射防止膜とした。
また、例1で得られた光学積層体について、遮光膜がある領域の波長850nmの光を0°で入射した場合の透過率を測定した。
・R(380nm,60°)/R(650nm,60°)
・波長300nm~1000nmの範囲において、反射率が、「可視光波長領域における反射率最小値+2%以下」となる、
最小波長:λmin.
最大波長:λmax.
Δλ=λmax.-λmin.
バンド幅比=λmax./λmin.
反射防止膜の層数と各層の膜厚を表1に示すものとした以外は、例1と同様にして、光学積層体を得た。例1と同様に分光反射率及び透過率を測定し、これより求めた、視感反射率Y、色度a*b*、及び、前述のλmin.λmax.Δλ、バンド幅比を表1に示す。
一方、例6のように0.5<R(380nm,60°)/R(650nm,60°)<1.5を満たさず、0.5よりも小さい値の場合、入射角60°からの入射光に対する反射色の色度a*b*は、-5<a*<5かつ-5<b*<5の範囲を大きくはずれ、ニュートラルな反射色調を得ることができず、赤色の強い反射色調となった。
一方、例6のように入射角60°からの入射光に対する、バンド幅比が1.600よりも小さい場合、-5<a*<5かつ-5<b*<5を満たす、の範囲を大きくはずれ、ニュートラルな反射色調を得ることができず、赤色の強い反射色調となった。
遮光膜を形成するインクを、表2に記載の屈折率と消衰係数と組成を有するインクとした以外は例3と同様にして、光学積層体を作製した。
得られた光学積層体について、例3と同様に、入射角5°からの入射光に対する分光反射率を測定し、視感反射率Y、色度a*b*を求めた値を表2に示す。さらに例3の反射色との違いを表すために、両者の色度a*の差をΔa*、色度b*の差をΔb*とし、((Δa)2+(Δb)2)1/2の値を指標として求めた。表2に合わせて示す。
例7と同様に、遮光膜を形成するインクを表2に記載の屈折率と消衰係数と組成を有するインクとした以外は例3と同様にして、光学積層体を得た。得られた光学積層体について、例7と同様にして、入射角5°からのの入射光に対する視感反射率Y、色度a*b*、及び、((Δa)2+(Δb)2)1/2の値を求めた。これらを表2に合わせて示す。
0.8×nII≦nI≦1.2×nII かつ
0.1×kII≦kI≦1.8×kII を満たす場合
例7~11の((Δa)2+(Δb)2)1/2は、2以下と十分小さい値であり、例3との反射色の違いは十分小さい。
同時に、例7~11のY値は2%以下で、例3のY値との差は1.2%以下であり、例3との反射率の差は十分小さい。
0.8×nII≦nI≦1.2×nII かつ
0.1×kII≦kI≦1.8×kII
を満たさない場合、例12の((Δa)2+(Δb)2)1/2は、2以下と十分小さいが、Y値は2%を超え、例3のY値との差は1.5%を超え、反射率の差は大きい。
ガラス基板の一方の面に、アルコキシシランの加水分解重合物及びシリカ微粒子を含有した塗布液を塗布した後に450℃で30分間保持し、表面に凹凸を有する防眩層を200nmの厚みで形成した。
次に、防眩層を形成した面と反対の面の所定の場所(領域B)に、波長450nmにて屈折率1.52及び消衰係数0.10、波長550nmにて屈折率1.54及び消衰係数0.12、波長650nmにて屈折率1.56及び消衰係数0.13であるインクを2μmの厚さに塗布した。また同様に、防眩層を形成した面と反対の面の、領域Bと異なる所定の場所(領域A)に、波長450nmにて屈折率1.54及び消衰係数0.03、波長550nmにて屈折率1.52及び消衰係数0.10、波長650nmにて屈折率1.64及び消衰係数0.11、波長850nmにて屈折率1.65及び消衰係数0.007、波長940nmにて屈折率1.64及び消衰係数0.002であるインクを2μmの厚さに塗布した。塗布後の基板を150℃で10分間保持し乾燥させた後、さらに領域Bには、波長550nmにて屈折率1.55及び消衰係数0.23であるインクを3μmの厚さに塗布し、再度150℃で10分間保持し乾燥させた。以上の手順で、防眩層を形成した面と反対の面の一部に、2種の遮光部(赤外線透過領域A、遮光領域B)を有する遮光膜を形成した。
さらに、反射防止膜の層数と各層の膜厚を表4に示すものとした以外は、例1と同様にして、防眩層の上に反射防止膜を形成した。
以上の手順で、ガラス基板の一方の面に反射防止膜と防眩層が施され、基板の他方の面の一部に2種の遮光部(赤外線透過領域A、遮光領域B)を有する遮光膜を備えた、光学積層体を得た。
得られた光学積層体の遮光領域Bについて、例1~6と同様に、分光反射率及び透過率を測定し、これより求めた、視感反射率Y、色度a*b*、及び、前述のλmin.λmax.Δλ、バンド幅比、さらに反射色0°(a,b)SCI、反射色0°(a,b)SCE、拡散反射率(0°)(SCI,SCE)を表4に合わせて示す。また赤外線透過領域Aにおける、波長550nm、850nm、940nmの透過率も、合わせて表4に示す。さらに遮光膜が施されていない領域における、波長550nm、940nmの透過率も、合わせて表4に示す。
反射防止膜の層数と各層の膜厚を表4に示すものとした以外は、例13と同様にして、ガラス基板の一方の面に反射防止膜と防眩層が施され、基板の他方の面の一部に2種の遮光部(赤外線透過領域A、遮光領域B)を有する遮光膜を備えた、光学積層体を得た。得られた光学積層体について、例13と同様に、視感反射率Y、色度a*b*、及び、前述のλmin.λmax.Δλ、バンド幅比、反射色0°(a,b)SCI、反射色0°(a,b)SCE、拡散反射率(0°)(SCI,SCE)、及び各波長における透過率を、表4に合わせて示す。
例13、14においては、入射角60°からの入射光に対する、バンド幅比は1.700よりも大きい値であり、-2<a*<2かつ-2<b*<2を満たす、よりニュートラルな反射色調を得ることができた。
0.8×nB≦nA≦1.2×nBかつ0.1×kB≦kA≦1.8×kB
nA:赤外線透過領域Aにおいて基材と接する遮光膜の屈折率
kA:赤外線透過領域Aにおいて基材と接する遮光膜の消衰係数
nB:遮光領域Bにおいて基材と接する遮光膜の屈折率
kB:遮光領域Bにおいて基材と接する遮光膜の消衰係数
を満たしたことで、反射防止膜面から観察した際に、赤外線透過領域Aと遮光領域Bの境界が視認されにくい、光学積層体を得ることができた。
さらには波長940nmにおいてもkA≦0.2を満たし、さらにはkA≦0.1を満たしたことで、領域Aにおける波長940nmの光の透過率が77%を超える、高い赤外線透過率を有する領域を備えた光学積層体を得ることができた。
例13と同様にして、ガラス基板の一方の面に防眩層を形成し、基板の他方の面の一部に2種の遮光部(赤外線透過領域A、遮光領域B)を形成した。
次に、以下の手順で、防眩層の上に、後反応スパッタ法を用いて反射防止膜を形成した。後反応スパッタ法は、スパッタリング法による金属極薄膜の形成と後反応(成膜後の酸化あるいは窒化など)を繰り返すことで、無機酸化膜あるいは無機窒化膜等を成膜する方法である。真空槽内に、スパッタリング法による成膜を行う領域と、酸化源あるいは窒化源等を備えた領域を有し、2領域間を、基材を繰り返し搬送することで、所望の膜厚の無機酸化膜あるいは無機窒化膜等を得る。前記防眩層と2種の遮光部を備えたガラス基板を、防眩層が成膜面となるように、前記の後反応スパッタ法による成膜を実施可能な真空槽内に配置し、真空槽内の真空度を1.3×10-4Paとした。次に、真空槽内のスパッタリング成膜を行う領域に、アルゴンガス100体積%からなるスパッタガスを導入して2×10-1Paとした。酸化源を備えた領域には、酸素ガスを導入し4×10-1Paとした。金属ニオブターゲットに電力密度5.5W/cm2の電力を投入し、酸化源電力を1kwとし、防眩層上に膜厚9nmの酸化ニオブからなる高屈折率層を形成した。次に、同様にアルゴンガス100体積%を導入し2×10-1Paとした条件で、n型単結晶シリコンターゲットに、電力密度5.5W/cm2(周波数20kHz、反転パルス幅5μsec)を投入し、酸化源電力を1kwとし、前記酸化ニオブ膜の上に、膜厚50nmの酸化ケイ素からなる低屈折率層を形成した。同様に、酸化ニオブは前記1層目と同様にして、酸化ケイ素は前記2層目と同様にして、表4に示す各層の膜厚からなる8層の反射防止膜を形成した。
以上の手順で、ガラス基板の一方の面に反射防止膜と防眩層が施され、基板の他方の面の一部に2種の遮光部(赤外線透過領域A、遮光領域B)を備えた、光学積層体を得た。
ガラス基板の一部に曲面部(曲率半径:200mm)を有し、平坦部から連続的に曲面となるガラス基板上に、曲面部にてガラス表面が凸となる側に、例13と同様に、防眩層を形成した。次に、防眩層を形成した面と反対の面の一部に、例13と同様に、2種の遮光部(赤外線透過領域A、遮光領域B)を有する遮光膜を形成した。次に、反射防止膜の層数と各層の膜厚を表4に示すものとした以外は、例15と同様にして、防眩層の上に反射防止膜を形成した。さらに反射防止膜の上に、膜厚5nmの防汚膜を形成した。防汚膜は以下の方法で成膜した。
前記の後反応スパッタ法による成膜を実施可能な真空槽内に、防汚膜を蒸着可能な領域を設け、反射防止膜を形成後に真空槽から取り出すことなく、反射防止膜形成後に連続して真空中で防汚膜を成膜した。具体的には、フッ素含有有機ケイ素化合物膜形成用組成物(旭硝子製、Afluid(登録商標)S550)を加熱容器に入れ280℃に加熱し、真空槽内に設置した水晶振動子モニタにより膜厚を測定しながら、反射防止膜上のフッ素含有有機ケイ素化合物膜の膜厚が5nmになるまで成膜を行った。なお、フッ素含有有機ケイ素化合物膜形成用組成物は、本実施例による光学積層体の作製を開始する前に、あらかじめ、真空槽内で脱気して溶媒を適切に除去した後、加熱容器を280℃まで昇温後、該組成物の温度が安定するまで保持した。
なお防汚膜は、撥水性、撥油性を付与できる材料から選択できるが、フッ素含有ケイ素化合物が好ましく、例えばパーフルオロポリエーテル基、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアルキレン基から選ばれる1つ以上の基を有する有機ケイ素化合物が好ましい。前記の有機ケイ素化合物の市販品としては、KY-178、KY-185(いずれも信越化学社製)、オプツールDSX(ダイキン社製)、Afluid(登録商標)S550(旭硝子製)等を好ましく使用できる。
以上の手順で、曲面部を有したガラス基板上に、曲面部でガラス表面が凸となる側に、防汚膜と反射防止膜と防眩層が施され、基板の他方の面の一部に2種の遮光部(赤外線透過領域A、遮光領域B)を有する遮光膜を備えた、光学積層体を得た。
得られた光学積層体の領域Bについて、例13と同様に、分光反射率及び透過率を測定し、これより求めた、視感反射率Y、色度a*b*、及び、前述のλmin.λmax.Δλ、バンド幅比、反射色0°(a,b)SCI、反射色0°(a,b)SCE、拡散反射率(0°)(SCI,SCE)を表4に合わせて示す。また領域Aにおける、波長550nm、850nm、940nmの透過率も、合わせて表4に示す。さらに遮光膜が施されていない領域における、波長550nm、940nmの透過率も、合わせて表4に示す。なお上記光学特性の測定は、基板の曲面部でない平坦部において行った。
例15、16においては、入射角60°からの入射光に対する、バンド幅比は1.700よりも大きい値であり、-3<a*<3かつ-3<b*<3を満たす、よりニュートラルな反射色調を得ることができた。
例15、16においては、入射角5°からの入射光に対する、λmin(5°)≦420nmかつλmax(5°)≧750nmであり、入射角60°からの入射光に対する、λmin(60°)≦400nmかつλmax(60°)≧640nmであり、入射光の入射角度が変わっても、ニュートラルな反射色調が得られ、入射角60°からの入射光に対する反射色の色度a*b*は、-3<a*<3かつ-3<b*<3を満たすことができた。
例16においては、上記の入射角60°からの入射光に対する、各反射特性を満たしたことで、曲面部においても、ニュートラルな反射色調を得ることができた。また平坦部から曲面部へ、光の入射角度が連続的に変わる箇所においても、反射色が大きく変わることなく、ニュートラルな反射色調を得ることができた。また平坦部から曲面部へ、観察者が観測する角度が連続的に変わる箇所においても、反射色が大きく変わることなく、ニュートラルな反射色調を得ることができた。
0.8×nB≦nA≦1.2×nBかつ0.1×kB≦kA≦1.8×kB
nA:領域Aにおいて基材と接する遮光膜の屈折率
kA:領域Aにおいて基材と接する遮光膜の消衰係数
nB:領域Bにおいて基材と接する遮光膜の屈折率
kB:領域Bにおいて基材と接する遮光膜の消衰係数
を満たしたことで、反射防止膜面から観察した際に、領域Aと領域Bの境界が視認されにくい、光学積層体を得ることができた。
さらには波長940nmにおいてもkA≦0.2を満たし、さらにはkA≦0.1を満たしたことで、領域Aにおける波長940nmの光の透過率が78%を超える、高い赤外線透過率を有する領域を備えた光学積層体を得ることができた。
2 基材
3 反射防止膜
4 遮光膜
4a 遮光領域
4b 赤外線透過領域
Claims (8)
- 基材と、基材の一方の面に設けられた反射防止膜と、基材の他方の面に設けられた遮光膜とを備える光学積層体であって、前記光学積層体が下記(i)~(iii)の特性を全て満たし、
前記基材が曲面を有し、
前記遮光膜が、可視光透過率が0.1%以下である遮光領域と、可視光透過率が5%以下かつ波長850nmの赤外線の透過率が60%以上である赤外線透過領域とを有するとともに、
前記基材と接する遮光膜が、以下の(a)及び(b)を満たす、ことを特徴とする光学積層体。
(i)0.5<R(λ1a,θ1a)/R(λ1b,θ1b)<1.5
(ii)Y(θ2)≦3%
(iii)Y(θ3)≦10%
ここで、R(λ,θ)は波長λnmの光が角度θで入射した場合の反射率であり、
λ1a=380nm、θ1a=60°、
λ1b=650nm、θ1b=60°である。
Y(θ)は、入射角度θの視感反射率であり、
θ2=5°、
θ3=60°である。
(a)波長450~650nmにおいて、0.8×nB≦nA≦1.2×nBかつ0.1×kB≦kA≦1.8×kB
(b)波長850nmにてkA≦0.2
nA:赤外線透過領域における、基材と接する遮光膜の屈折率
kA:赤外線透過領域における、基材と接する遮光膜の消衰係数
nB:遮光領域における、基材と接する遮光膜の屈折率
kB:遮光領域における、基材と接する遮光膜の消衰係数 - 前記光学積層体が下記(iv)の特性をさらに満たすことを特徴とする請求項1に記載の光学積層体。
(iv)0.3<R(λ2a,θ2a)/R(λ2b,θ2b)<1.3(θ2a=θ2b=5°)
ここで、λ2aは、400~450nmの波長範囲に存在し、λ2bは700~790nmの波長範囲に存在する。 - 前記光学積層体が下記(v)の特性をさらに満たすことを特徴とする請求項1または2に記載の光学積層体。
(v)R(λ3a,θ3a)<2%
ここで、R(λ,θ)は波長λnmの光が角度θで入射した場合の反射率であり、λ3a=500nm、θ3a=5°である。 - 遮光膜が設けられた領域において、前記光学積層体がT(850nm,0°)>60%の領域を有することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の光学積層体。
ここで、T(850nm,0°)は波長850nmの光を0°で入射した場合の透過率である。 - 反射防止膜は、波長550nmの光に対する屈折率が1.2~1.60の材料を含む層を1以上有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の光学積層体。
- 反射防止膜は、波長550nmの光に対する屈折率が1.61~2.7の材料をさらに含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の光学積層体。
- 反射防止膜は、酸化シリコン、フッ化マグネシウム、酸化マグネシウム、フッ化アルミニウム、及びシリコン酸窒化物から選ばれる1種以上の材料を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の光学積層体。
- 反射防止膜は、酸化ニオブ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化アルミニウム、及び窒化シリコンから選ばれる1種以上の材料を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の光学積層体。
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