JP7233269B2 - 電力ケーブル - Google Patents

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Description

本発明は、中心導体の周囲に絶縁層や吸水層が形成されている電力ケーブルに関する。
例えば、海底電力ケーブルには鉛被やアルミ被等の遮水層が設けられており、通常の状態ではこの遮水層等により海水等がケーブル内に浸入することが防止されている。
また、水中で事故が発生するなどした際に遮水層が破損するなどしても事故点からケーブル内に海水等が浸入することを防止するために、海底電力ケーブル内には、中心導体を取り巻く絶縁層の外側に、水止め用の吸水性ポリマーを含む吸水層が設けられている場合が多い(例えば特許文献1参照)。
吸水層が設けられていると、事故点からケーブル内に海水等が浸入しても、吸水層の吸水性ポリマー等の吸水材料が水分を吸収して膨潤することで、水の浸入経路が塞がれる。
そのため、海底電力ケーブル内にこのような吸水層を設けることで、水中で事故が発生するなどして遮水層が破損するなどして水がケーブル内に浸入しても、吸水層の内側の中心導体や絶縁層等が浸水することを防止することができる。
特開2018-6227号公報
ところで、海底電力ケーブルの製造工場内は温度や湿度の管理が徹底されているとはいえ、真空条件下などで製造しない限り、湿度0%にすることは実際上不可能である。そのため、吸水層を組み込んで海底電力ケーブルを製造する際に、吸水層が空気中の水分をある程度吸収した状態で海底電力ケーブル内に組み込まれる。
そして、このような現象は、海底電力ケーブルに限らず、吸水層を有する全ての電力ケーブルについて生じ得る現象である。
しかし、このように製造時に電力ケーブルに組み込まれた吸水層が水分を含んでいると、上記のような事故が生じなくても(すなわち電力ケーブルの遮水層が破損されなくても)、電力ケーブルが送電等により発熱して電力ケーブルの温度が上昇すると、吸水層が、吸収していた水分を電力ケーブル内に放出してしまう場合がある。
そして、吸水層は水分を放出する際、その内側にも放出する。そのため、吸水層から放出された水分が徐々に絶縁層内部に浸透し、絶縁劣化を経て絶縁破壊(いわゆる水トリー)を引き起こす可能性がある。
本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、吸水層が吸収していた水分をケーブル内に放出しても絶縁層で絶縁破壊が生じることを防止することが可能な電力ケーブルを提供することを目的とする。
前記の問題を解決するために、請求項1に記載の発明は、
中心導体の周囲に、その外側に向かって、少なくとも絶縁層と吸水層が形成された電力ケーブルにおいて、
前記絶縁層と前記吸水層との間に、水和物になり得る無機化合物からなる塩類が配置されており、
前記塩類は、前記吸水層の内側に接するように配置されていることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電力ケーブルにおいて、前記無機化合物には、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム又は酸化マグネシウムのうち少なくとも1種が含まれることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の電力ケーブルにおいて、前記塩類は、前記絶縁層の外側に接するように配置されていることを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の電力ケーブルにおいて、
前記絶縁層と前記吸水層との間に防湿層が設けられており、
前記塩類は、前記防湿層の内側、外側若しくは両側に接するように配置されている、又は前記防湿層の内部に配置されていることを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の電力ケーブルにおいて、前記吸水層は、吸水性ポリマーで形成されていることを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の電力ケーブルにおいて、
前記中心導体は、複数の導体素線が撚り合わされて形成されており、
前記導体素線間の間隙に、水和物になり得る無機化合物からなる塩類が配置されていることを特徴とする。
請求項7に記載の発明は、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の電力ケーブルにおいて、前記中心導体と前記絶縁層との間に、水和物になり得る無機化合物からなる塩類が配置されていることを特徴とする。
本発明によれば、電力ケーブルの吸水層が吸収していた水分をケーブル内に放出しても、絶縁層と吸水層との間に配置された無機化合物に吸収され、無機化合物が水和物になって水分を脱離させないため、水分により絶縁層で絶縁破壊が生じることを的確に防止することが可能となる。
本発明に係る電力ケーブルを表す断面図である。 本発明に係る電力ケーブルの別の構成例を表す断面図である。 (A)常温(25℃)で行った実験、(B)90℃で行った実験における測定結果を表すグラフである。 (A)各塩類の吸水量を測定した結果を表すグラフであり、(B)各塩類に残存している水分量を測定した結果を表すグラフである。 複数の導体素線の間隙を説明するとともに内部防湿層を設けた構成例を表す断面図である。
以下、図面を参照して、本発明に係る電力ケーブルについて説明する。
ただし、以下に述べる各実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態や図示例に限定するものではない。電力ケーブルは、中心導体の周囲に、その外側に向かって、少なくとも絶縁層と吸水層が形成されたものであればよい。
図1は、本発明に係る電力ケーブルを表す断面図である。なお、図1を含む各図において、導体素線や各層などの相対的な大きさや厚さ等は、必ずしも現実の電力ケーブルにおける相対的な大きさや厚さ等を反映していない。
本実施形態では、電力ケーブル10は、中心導体20の外周から外側に向かって、内部半導電層30、絶縁層40、外部半導電層50が順番に積層されて形成されたケーブルコア11を備えている。
そして、この電力ケーブル10は、ケーブルコア11の外側(外部半導電層50の外側)に吸水層60が形成されている。
また、吸水層60の外側には遮水層70が形成されている。そして、遮水層70の外側には、防食層80が形成されている。
[ケーブルコア:中心導体]
中心導体20は、複数の導体素線21が撚り合わされて形成されている。
このような中心導体20は、導体素線21を撚り合わせて圧縮した円形圧縮導体でもよい。また、撚り合わされた導体素線21の束からなるセグメント導体を複数備える分割導体構造(分割圧縮導体)であってもよく、中心導体20の構造については多様な構造を採ることができる。
[ケーブルコア:絶縁層等]
中心導体20の外側に、内部半導電層30、絶縁層40及び外部半導電層50が例えば押出成形にて形成されている。
内部半導電層30、絶縁層40、外部半導電層50の形成方法や使用する材質に関しては、電力ケーブルの使用電圧階級や電圧形態(交流又は直流)に応じて適宜選択される。例えば、一般的な交流用の電力ケーブルでは絶縁層40の形成には架橋ポリエチレンが使用される。また、内部半導電層30、外部半導電層50の材質としては、例えば、カーボン粒子を含む、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン又はこれらの混合樹脂などが使用される。
[吸水層]
外部半導電層50の外側には、吸水層60が形成されている。
この吸水層60は、吸水パウダーを含有させた導電性吸水テープ巻き又は導電性吸水クッションテープ巻きによって形成されている。
吸水パウダーの素材としては、例えば、アクリル酸塩系架橋物、酢酸ビニル・アクリル酸エステル共重体ケン化物、アクリル酸塩・アクリルアミド共重合体等の吸水性ポリマーが使用される。
導電性吸水テープ又は導電性吸水クッションテープの巻き方法に関しては、ラセン状に巻くラップ巻き、縦添えラップ巻きなど周知のテープ巻方法のいずれを採用しても良い。
また、吸水層60の厚さは、厚くした方が吸水量を増やすことができる一方で、電力ケーブル10のサイズが大きくなる等によるケーブルコストの増大や重量の増大が生じるので、これら双方の観点から適正な厚さに調整すべきである。
[金属被覆層及び防食層]
吸水層60の外周には金属の遮水層70として鉛被が設けられている。この遮水層70は、鉛被の他に、例えば、ステンレス被(SUS被)、アルミ被などでもよく、あるいはそれらの金属をコルゲート加工した環状波付金属被でもよく、あるいは金属ラミネートテープをラップさせてラップ目で接着させた金属ラミネート被でもよい。
すなわち、遮水層70は、外部からの水分の浸入を防止するとともに、電気的な遮蔽効果を得る金属被であれば、その材料に特に制限はないが、耐腐食性、加工性等が良好なものが好ましい。
遮水層70の外周には防食層80が押出成形されている。防食層80の材質は、電力ケーブルの使用環境や仕様などによって適宜選択することができ、例えば、ポリエチレンやポリ塩化ビニルなどを用いることができるが、これらに限定されず、内側の層を保護する強度、耐水性、耐久性等を備える材料であれば他のもので形成してもよい。
[水和物になり得る無機化合物からなる塩類]
本発明の電力ケーブル10には、水和物になり得る無機化合物からなる塩類が配置されている。
塩類を構成する無機化合物は、水和物になり得る無機化合物であればよく、具体的には、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸銅、塩化カルシウム、塩化コバルト、酸化マグネシウム、酸化鉄、炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム等を挙げることができる。そして、上記の無機化合物には、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム又は酸化マグネシウムのうち少なくとも1種が含まれることが好ましい。
[塩類の配置]
本発明の電力ケーブル10では、上記の水和物になり得る無機化合物からなる塩類が絶縁層40と吸水層60との間に配置されている。
塩類を絶縁層40と吸水層60との間に配置する方法として、種々の方法を採用することができる。
(1)塩類を、吸水層60の内側に接するように配置することができる。
この場合、例えば、吸水層60を構成する吸水テープ等の内側に塩類を塗り付けるようにして塗布したり、塩類を練り込んだシートを吸水テープ等の内側に貼り付けるなどしておき、そのような状態の吸水テープを外部半導電層50に巻き付けて吸水層60を形成することで、塩類を吸水層60の内側に接するように配置することができ、塩類を絶縁層40と吸水層60との間に配置することができる。
(2)塩類を、絶縁層40や外部半導電層50の外側に接するように配置することができる。
この場合、例えば、絶縁層40や外部半導電層50を形成した後、絶縁層40や外部半導電層50の外側に塩類を塗り付けるようにして塗布したり、塩類を練り込んだシートを絶縁層40や外部半導電層50の外側に巻き付けたり貼り付けるなどすることで、塩類を絶縁層40や外部半導電層50の外側に接するように配置することができ、塩類を絶縁層40と吸水層60との間に配置することができる。
(3)図2に示すように、絶縁層40と吸水層60との間(図2では外部半導電層50と吸水層60との間)に防湿層90を設け、塩類を、この防湿層90の内側、外側若しくは両側に接するように配置したり、又は防湿層90の内部に配置することができる。
防湿層90は、ブチルゴム(イソブチレン・イソプレン共重合体)を主要な材料として形成することができる。防湿層90をブチルゴム以外の材料で形成することも可能であるが、ブチルゴムを用いることで高い防水・防湿性を得ることができる。
防湿層90は、電力ケーブル10の製造過程において、例えばブチルゴム等の押出成形により形成することができる。押出成形は、加工性、生産性が高く、これによって形成された各湿層90は、シームレスによる高い防水・防湿性能を容易に得ることができる。
また、防湿層90を、ブチルゴム等からなるテープや、布若しくは綿等の繊維又はプラスチックフィルムを基材としてブチルゴム等を塗布又は積層したテープを、外部半導電層50の外側に巻き付けて形成することも可能である。
なお、防湿層90が導電性を有するように構成することも可能であるが、これについては前述した特許文献1を参照されたい。
塩類を防湿層90の内側や外側あるいは両側に接するように配置する場合には、上記と同様に、塩類を防湿層90に塗布したり、塩類を練り込んだシートを防湿層90の内側や外側、両側に貼り付けたり巻き付けたりすることで配置することができる。
また、塩類を防湿層90の内部に配置する場合には、防湿層90を構成するブチルゴム等に塩類を練り込むなどして配置することができる。
そして、このようにして塩類を防湿層90の内側や外側、両側に接するように配置したり防湿層90の内部に配置することで、塩類を絶縁層40と吸水層60との間に配置することが可能となる。
本発明のように、電力ケーブル10において、水和物になり得る無機化合物からなる塩類を絶縁層40と吸水層60との間に配置すると、塩類は、以下のように機能する。
すなわち、前述したように、電力ケーブル10の製造時に電力ケーブル10に組み込まれた吸水層60に既に水分が含まれている場合がある。その場合、電力ケーブル10の設置後、電力ケーブル10が送電等により発熱して電力ケーブル10の温度が上昇した際に(例えば90℃程度)、吸水層60が、吸収していた水分を電力ケーブル10内に放出してしまう場合がある。
しかし、本発明のように水和物になり得る無機化合物からなる塩類が絶縁層40と吸水層60との間に配置されていると、吸水層60から放出された水分のうち吸水層60より内側に放出された水分は、塩類が配置されている部分に到達すると、無機化合物により水和水として取り込まれることで塩類に吸収される。その際、無機化合物は水和物になる(なお、水分の一部は無機化合物に吸着される可能性もある。)。
そして、無機化合物が水分を取り込んで水和物になる反応は90℃程度の温度環境下でも生じる。また、水和物から水和水が脱離する温度は通常90℃より高いため、水和物となった無機化合物からは90℃程度の温度環境下では水和水は脱離しない。
そのため、送電等により電力ケーブル10の温度が上昇して吸水層60から水分が電力ケーブル10内に放出されても、少なくとも吸水層60から内側に放出された水分は、吸水層60の内側に存在する塩類により確実に吸収されるため、更にその内側にある絶縁層40にまで水分が届かない。
そのため、吸水層60が吸収していた水分を電力ケーブル10内に放出しても、その水分が絶縁層40内部に浸透することはなく、絶縁層40で絶縁劣化が生じたり絶縁破壊(いわゆる水トリー)が生じることを確実に防止することが可能となる。
以上のことを確かめるために本発明者らが行った実験について説明する。
[実験1]
まず、電力ケーブル10の吸水層60を構成する吸水材に含まれている水分を、塩類が吸水材から奪うことができるかどうかを確かめる実験を行った。
[実験1-1]
具体的には、ケーブル用の吸水材(VT-403(商品名)、福岡クロス工業株式会社製)を適量に切り分け、各吸水材片とサンプル管の瓶と蓋を温度25℃、湿度50%の環境に24時間以上晒した。なお、その際、吸水材(吸水材片)の常温(25℃)での吸水量は8[wt%]であった。
その後、瓶の中に1つの吸水材片と硫酸マグネシウム(水和物になり得る無機化合物)1gとを互いに接触しないようにして入れて蓋をし(試料A1)、もう1つの瓶には吸水材片と塩化カルシウム(水和物になり得る無機化合物)1gを同様にして入れて蓋をした(試料A2)。また、対照実験として、他の瓶に多孔質ケイ酸カルシウム1gと吸水材片を入れて蓋をし(試料B)、更に吸水材片のみを入れて瓶に蓋をしないもの(試料C1)と、吸水材片のみを入れて瓶に蓋をしたもの(試料C2)をそれぞれ用意した。
そして、各試料A1~C2を精密室(25℃)にて保管し、各吸水材片に残存している水分量[wt%]を経時的に測定した。
一週間(7日)後と30日後の各測定結果を図3(A)に示す。
[実験1-2]
また、同様にして用意した各試料A1~C2に対して、精密室の温度を90℃にして同様の実験を行った。一週間(7日)後と30日後の各測定結果を図3(B)に示す。
試料C1(蓋なし)と試料C2(蓋あり)における常温(25℃)と高温(90℃)での実験結果から、まず、吸水材からは常温(25℃)でもある程度の水分が放出され得るが、温度が90℃まで上昇すると多量の水分が放出されることが分かる。
また、試料A1や試料A2の結果から、硫酸マグネシウムや塩化カルシウムは、常温でも高温でも吸水材に含まれている水分を吸水材から十分に奪うことができることが分かる。
一方、試料Bの結果から、多孔質ケイ酸カルシウムは、高温では吸水材に含まれている水分を吸水材から奪い得るが、常温では吸水材に含まれている水分を吸水材から奪う力が弱い(あるいは吸水材に含まれている水分を吸水材から奪えない)ことが分かる。
[実験2]
次に、塩類が、吸収した水分を高温低湿条件下で放出してしまうかどうかを確かめる実験を行った。
[実験2-1]
具体的には、アルミ箔トレーに各塩類を1gずつ盛り付けて、温度40℃、湿度85%の恒温槽中で1時間後、24時間後、7日後の吸水量[wt%]を測定した。各塩類の測定結果を図4(A)に示す。
[実験2-2]
また、7日後、恒温槽を温度90℃、湿度0%にして各塩類を放置し、24時間後及び7日後に各塩類に残存している水分量[wt%]を測定した。各塩類の測定結果を図4(B)に示す。
なお、図4(A)、(B)における各試料は、試料A1、A2、Bは上記の実験1の場合と同様に硫酸マグネシウム、塩化カルシウム、多孔質ケイ酸カルシウムであり、試料A3は酸化マグネシウム(水和物になり得る無機化合物)である。
その結果、硫酸マグネシウム(試料A1)は水分を100[wt%]程度吸収した。また、硫酸マグネシウムを90℃で7日間乾燥させると、硫酸マグネシウムから水分が抜けるが、30[wt%]程度の水分が残り、その後もその状態が続いた。
塩化カルシウム(試料A2)は水分を350[wt%]程度まで吸収して溶けた(潮解)。また、塩化カルシウムを90℃で7日間乾燥させると、塩化カルシウムから水分が抜けるが、20[wt%]程度の水分が残り、その後もその状態が続いた。
酸化マグネシウム(試料A3)は水分を30[wt%]程度吸収した。また、酸化マグネシウムを90℃で7日間乾燥させると、酸化マグネシウムから水分が抜けるが、25[wt%]程度の水分が残り、その後もその状態が続いた。
試料A1~A3の各無機化合物に残った水分は水和水になった(各無機化合物が水和物になった)と考えられる。
なお、上記のように、塩化カルシウムは十分に水分を吸収すると潮解して溶けるが、電力ケーブル10内の水分量はごく少量であるため、電力ケーブル10内に塩類として塩化カルシウムを配置しても、塩化カルシウムが潮解して溶けてしまうことはない。
一方、多孔質ケイ酸カルシウム(試料B)は水分を10[wt%]程度吸収したが、多孔質ケイ酸カルシウムを90℃で7日間乾燥させると多孔質ケイ酸カルシウムに残存している水分量がほぼ0[wt%]になり、水分がほとんど抜けてしまい、塩類中に水分が残らなかった。
すなわち、多孔質ケイ酸カルシウム(試料B)の場合は、電力ケーブル10の吸水層60が水分を放出した場合、その水分を吸収し得るが、電力ケーブル10内の水分量が低下すると、吸収した水分を放出してしまう可能性が高いことが分かる。
[効果]
以上のように、本発明に係る電力ケーブル10によれば、絶縁層40と吸水層60との間に、水和物になり得る無機化合物(硫酸マグネシウム、塩化カルシウム、酸化マグネシウム等)からなる塩類が配置されているため、電力ケーブル10が送電等により高温(90℃程度)になり、製造時点で吸水層60に吸収されていた水分が吸水層60から放出されても、少なくとも吸水層60から内側に放出された水分は、吸水層60の内側に配置されている塩類により確実に吸収される。そのため、塩類により、水分が更にその内側にある絶縁層40に到達することが防止される。
また、塩類に吸収された水分のうち、無機化合物に水和水として取り込まれた水分は、90℃程度の温度では無機化合物(水和物)から脱離しない。
そのため、吸水層60が吸収していた水分を電力ケーブル10内に放出しても、その水分は無機化合物に水和水として取り込まれて無機化合物から脱離しなくなるため、もはや絶縁層40内部に浸透することはなく、絶縁層40で絶縁劣化が生じたり絶縁破壊(いわゆる水トリー)が生じることを確実に防止することが可能となる。
なお、以下、電力ケーブル10内に配置する塩類の適切な量について説明する。
上記のように、常温で電力ケーブル10の吸水層60が吸収している8[wt%]程度の水分が、電力ケーブル10が高温になった際に全て放出されるものとし、さらに、放出された水分を塩類の無機化合物で全て水和水として取り込むと仮定すると、無機化合物が全て水和物になる場合に水和水として取り込まれる水分が上記のように仮に無機化合物の25[wt%]であるとすると、塩類は、吸水層60の吸水材の(8/25=)0.32倍必要ということになる。
このように、電力ケーブル10の吸水層60の吸水材が吸収している水分量(すなわち吸水層60から放出され得る水分量)がα[wt%]であり、塩類を構成する無機化合物が全て水和物になる際に取り込まれる水分量が無機化合物に対してβ[wt%]である場合には、電力ケーブル10内に塩類を吸水層60の吸水材のα/β倍の量だけ配置すればよいことが分かる。
ただし、電力ケーブル10が高温になっても吸水層60に吸収されている水分が全て放出されるわけではなく、水分が吸水層60から内側(絶縁層40側)に放出されるだけでなく外側にも放出されることを考慮すると、電力ケーブル10内に配置すべき塩類の量は上記の量より少なくてもよい可能性もある。
電力ケーブル10内に配置する塩類の量は、上記の事情を考慮して適宜決められる。
[変形例]
また、水和物になり得る無機化合物からなる塩類を、上記のように電力ケーブル10の絶縁層40と吸水層60との間に配置するだけでなく、絶縁層40の内側に配置することも可能である。
例えば、図5に示すように、中心導体20の、撚り合わされて形成された複数の導体素線21間の間隙22に、水和物になり得る無機化合物からなる塩類を配置するように構成することも可能である。
この場合、例えば、塩類を複数の導体素線21の間隙22に充填させるようにして配置してもよく、また、塩類を含有させたテープ状や紐状の吸水部材(図示省略)を導体素線21に巻き付けるようにして塩類を配置したり、吸水部材を導体素線21に沿わせる等して配置することも可能であり、塩類の配置のしかたに限定はない。
このように中心導体20を構成する複数の導体素線21間の間隙22に水和物になり得る無機化合物からなる塩類を配置することで、中心導体20に水分が入り込んだときや、中心導体20に水分が入り込もうとするときに、塩類がその水分を的確に吸収するため、水分が中心導体20に入り込んで中心導体20の長手方向に沿って移動することを効果的に抑止することが可能となる。
また、電力ケーブル10の中心導体20と絶縁層40との間に、水和物になり得る無機化合物からなる塩類を配置するように構成することも可能である。
この場合、例えば、絶縁層40の内側や、内部半導電層30の内側や外側に、塩類を塗布したり、塩類を練り込んだシートを貼り付けるなどして塩類を配置することが可能である。
あるいは、図5に示すように、例えば中心導体20と内部半導電層30との間に内部防湿層100を設け、塩類を、内部防湿層100の内側、外側若しくは両側に接するように配置したり、又は内部防湿層100の内部に配置するように構成してもよい。
この場合、内部防湿層100は、前述した防湿層90(図2参照)と同様に、ブチルゴム(イソブチレン・イソプレン共重合体)を主要な材料として形成することができる。内部防湿層100をブチルゴム以外の材料で形成することも可能であるが、ブチルゴムを用いることで高い防水・防湿性を得ることができる。
そして、前述した防湿層90の場合と同様にして、塩類を、内部防湿層100の内側、外側若しくは両側に接するように配置したり、内部防湿層100の内部に配置することができる。
そして、このように構成しても、中心導体20に水分が入り込んだときや、中心導体20に水分が入り込もうとするときに、塩類がその水分を的確に吸収するため、水分が中心導体20に入り込んで中心導体20の長手方向に沿って移動することを効果的に抑止することが可能となる。
なお、図5では、防湿層90の図示が省略されているが、上記の変形例において絶縁層40と吸水層60との間(例えば外部半導電層50と吸水層60との間)に防湿層90を設け、塩類を、この防湿層90の内側、外側若しくは両側に接するように配置したり、又は防湿層90の内部に配置することが可能であることは言うまでもない。
なお、本発明が上記の実施形態や変形例等に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜変更可能であることは言うまでもない。
10 電力ケーブル
20 中心導体
21 導体素線
22 導体素線間の間隙
40 絶縁層
60 吸水層
90 防湿層

Claims (7)

  1. 中心導体の周囲に、その外側に向かって、少なくとも絶縁層と吸水層が形成された電力ケーブルにおいて、
    前記絶縁層と前記吸水層との間に、水和物になり得る無機化合物からなる塩類が配置されており、
    前記塩類は、前記吸水層の内側に接するように配置されていることを特徴とする電力ケーブル。
  2. 前記無機化合物には、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム又は酸化マグネシウムのうち少なくとも1種が含まれることを特徴とする請求項1に記載の電力ケーブル。
  3. 前記塩類は、前記絶縁層の外側に接するように配置されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電力ケーブル。
  4. 前記絶縁層と前記吸水層との間に防湿層が設けられており、
    前記塩類は、前記防湿層の内側、外側若しくは両側に接するように配置されている、又は前記防湿層の内部に配置されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の電力ケーブル。
  5. 前記吸水層は、吸水性ポリマーで形成されていることを特徴とする請求項4に記載の電力ケーブル。
  6. 前記中心導体は、複数の導体素線が撚り合わされて形成されており、
    前記導体素線間の間隙に、水和物になり得る無機化合物からなる塩類が配置されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の電力ケーブル。
  7. 前記中心導体と前記絶縁層との間に、水和物になり得る無機化合物からなる塩類が配置されていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の電力ケーブル。
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