JP6133484B1 - 電力ケーブルおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
また、埋設された電力ケーブルに外傷が与えられた際、水分が長手方向に浸透(水走り)し、長距離にわたってケーブルが毀損することを防ぐため、導体上、外部半導電層上に高吸水性高分子材料が配合された介在物などを配置することが知られている。
例えば、特許文献1では、分割導体のセグメント間に従来のクラフト紙ではなく、高吸水性高分子材料が配合された複合シートを介在させることで絶縁体水分量が低下し、水トリーやボイドの発生を抑えることができると提案されているが、電力ケーブルを製造時する環境によっては、前述の品質が保証されない可能性がある。
具体的には、本発明者らの検討によれば、50℃で1週間乾燥させた高吸水性高分子材料配合介在物が30℃90%RHの雰囲気下にさらされたとき、水分量は約1日で2倍増加すること、水分量が2倍程度増加すると、水トリー伸展速度が早まることを確認している。
しかしながら、高吸水性高分子材料の有無で介在物が保持できる水分量が大きく異なるため、本発明に使用する高吸水性高分子材料が配合された介在物について特許文献2と同等条件で乾燥を実施しても、水トリーの進展が抑制できる水分量まで低減することは難しい。
これに加え、導体の形状や介在物の種類に依存しない汎用的な電力ケーブルおよびその製造方法を提供することを課題とする。
すなわち、本発明の上記課題は、以下の手段によって達成された。
前記外部半導電層上介在物層の外周に、遮水層が被覆され、
前記電力ケーブルに組み込まれた前記導体上介在物と前記外部半導電層上介在物の水分量が、いずれも90℃20%RHの雰囲気下で平衡する水分量未満であることを特徴とする電力ケーブル。
(2)少なくとも、導体、導体上介在物層、内部半導電層、絶縁層、外部半導電層、外部半導電層上介在物層を順に積層した構造を有する電力ケーブルであって、
前記絶縁層を構成する樹脂が、不飽和有機酸およびその誘導体から選択される化合物で変性されたポリオレフィン樹脂であり、
前記外部半導電層上介在物層の外周に、遮水層が被覆され、
前記電力ケーブルに組み込まれた前記導体上介在物と前記外部半導電層上介在物の水分量が、いずれも90℃20%RHの雰囲気下で平衡する水分量未満であることを特徴とする電力ケーブル。
(3)前記導体上介在物および前記外部半導電層上介在物が、基布上に導電性ゴムまたは高吸水性高分子材料のいずれか、または両方を貼り合せたものであって、該基布が、ナイロン、ポリエステル、または、アクリル系の繊維からなる不織布、織布もしくは編布であることを特徴とする(1)または(2)に記載の電力ケーブル。
(4)電力ケーブルの製造方法であって、
前記電力ケーブルが、(1)〜(3)のいずれか1項に記載の電力ケーブルであり、
前記導体上介在物を積層後に乾燥処理し、かつ前記外部半導電層上介在物を積層前に乾燥処理して積層することを特徴とする電力ケーブルの製造方法。
本発明の電力ケーブルは、例えば、図1に示すように、導体1上に、順に、導体上介在物層2、内部半導電層3、絶縁層4、外部半導電層5、外部半導電層上介在物層6が積層された構造を有し、この外部半導電層上介在物層6の外周に、遮水層7が被覆されている。
本発明の電力ケーブルは、必要により、遮水層7上に、シースや防食層を有していてもよい。
なお、導体から外部半導電層までを、ケーブルコアと称す。
本発明では、心数は、単心(1心)であっても複心(例えば、3心)であっても構わない。
ここで、例えば、3心は、少なくとも、導体1上に、順に、導体上介在物層2、内部半導電層3、絶縁層4、外部半導電層5、外部半導電層上介在物層6および遮水層7を有する単心を3つ束ね、この束ねた表面を、介在物、抑えテープ、シースなどで被覆したものである。
以下に、導体から順に説明する。
導体は、銅もしくは銅合金、アルミニウムもしくはアルミニウム合金が好ましく、断面形状は、円型、矩形であっても構わないが、本発明では銅もしくは銅合金で円型が好ましい。
また、上記の金属線の表面にスズや銀等のめっきを施したものを用いてもよく、導体としては、単線あるいは撚線のいずれであってもよい。
また、このような金属線の表面にスズや銀等のめっきを施したものを用いてもよく、導体としては、単線あるいは撚線のいずれであってもよい。
導体の構成または形状は、撚線の場合、通常の電力ケーブルで使用される構成または形状が好ましく、円型撚線〔7/0.6(本/mm)、7/0.8(本/mm)、7/1.0(本/mm)、7/1.2(本/mm)〕、分割圧縮撚線または円型圧縮撚線のいずれでも構わないが、円型圧縮撚線が特に好ましい。
なお、分割圧縮撚線は、分割導体とも称され、各セグメント間に介在物を介在せしめてなる電力ケーブル用分割導体である。
本発明では、介在物は、導体上介在物層および外部半導電層上介在物層に使用される。
介在物としては、紙、天然繊維、化学繊維、石綿繊維、ガラス繊維、天然ゴム混合物、合成ゴムまたは合成樹脂が挙げられ、クレープ紙、ポリエステル不織布、ブチルゴム紐、架橋ポリエチレン紐など好ましく、ナイロン、ポリエステル、アクリル系の繊維からなる不織布、織布、編布からなる基布に、高吸水性高分子材料や導電性ゴムなどを、片面もしくは両面に貼り合せたものがより好ましい。
ここで、ナイロンとしては、6−ナイロン、4,6−ナイロンが挙げられるが、6−ナイロンが好ましい。
また、ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが挙げられるが、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
下記表1に、本発明において好ましい介在物の構成例と90℃20%RHにおける平衡水分量を示すが、使用する介在物によって平衡水分量は異なる。
導体上介在物層の厚さは、0.1〜1.0mmが好ましく、0.4〜0.6mmがより好ましい。一方、外部半導電層上介在物層の厚さは、0.5〜1.5mmが好ましく、0.6〜1.0mmがより好ましい。
内部半導電層は、一般に、電力ケーブルで使用される内部半導電層を用いることができる。
内部半導電層は、例えば、繊維質(布)テープの導電材料を塗りつけたもの、ポリエチレンにカーボンを混入した押出形のもの、これらを組み合わせたものが挙げられる。内部半導電層は、内部半導電層用樹脂組成物を用い、これを架橋することにより形成したものが好ましい。内部半導電層用樹脂組成物は、通常、内部半導電層用樹脂、導電性物質、架橋剤および老化防止剤を含む。
内部半導電層の厚さはケーブルの電圧階級によって異なり、限定するものではないが、内部半導電層の厚さは、2mm以下が好ましく、1〜2mmがより好ましい。
絶縁層は、内部半導電層を被覆する絶縁性の層であり、一般に、絶縁層用樹脂組成物を用い、これを架橋することにより形成される。絶縁層用樹脂組成物は、通常、絶縁層用樹脂、架橋剤、および老化防止剤を含有する。
絶縁層は、構成する樹脂として、ポリオレフィン樹脂が好ましく、不飽和有機酸またはその誘導体で変性されたポリオレフィン樹脂がより好ましい。
ポリオレフィン樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンもしくはプロピレンとの共重合体が好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレンがより好ましく、ポリエチレンがさらに好ましく、低密度ポリエチレンが特に好ましい。
ポリオレフィン樹脂を編成する不飽和有機酸またはその誘導体としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸、ナフタル酸およびこれらの酸無水物が好ましく、マレイン酸もしくは無水マレイン酸がより好ましい。このなかでも、酸無水物、特に、無水マレイン酸でグラフト重合(変性)された低密度ポリチレンが特に好ましい。
また、絶縁層を構成する樹脂は、なかでも、架橋された樹脂が好ましい。
絶縁層には、市販されている絶縁コンパウンドHFDA−9253NT SC〔株式会社NUC製〕などを用いて製造してもよい。
絶縁層の厚さや形状はケーブルの電圧階級や敷設条件によって異なり、限定するものではないが、絶縁層の厚さは、10〜23mmが好ましく、12〜17mmがより好ましい。
外部半導電層は、内部半導電層と同様に、一般にテープ方式と押出方式がある。
外部半導電層は、絶縁層を被覆する半導電性の層であり、一般に、外部半導電層用樹脂組成物を用い、これを架橋することにより形成される。外部半導電層を形成するための外部半導電層用樹脂組成物は、通常、外部半導電層用樹脂、導電性物質、架橋剤および老化防止剤を含む。
遮水層はテープ状または押出した金属が挙げられる。例えば、銅テープ、アルミテープやアルミ、鉛、SUSをケーブルコア上に押し出すなどが挙げられるが、好ましくは銅テープである。
遮水層の厚さや形状はケーブルの電圧階級や敷設条件によって異なり、限定するものではないが、遮水層の厚さは、例えば、テープ状であれば0.3mm以下が好ましく、0.1〜0.3mmがより好ましい。
シースは、絶縁体の保護、水分からの隔離を主な目的とするが、本発明では、単なるシース以外に、防食層や遮水層などの機能性層を含む。
防食層としては、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)からなる防食層が挙げられる。
シースの厚さや形状はケーブルの電圧階級や敷設条件によって異なり、限定するものではないが、シースの厚さは、4.0〜6.0mmが好ましく、4.0〜5.5mmがより好ましい。
本発明の電力ケーブルは、製造された電力ケーブルにおいて、組み込まれた導体上介在物と外部半導電層上介在物の水分量が、いずれも、90℃20%RHの雰囲気下の介在物の平衡水分量未満(介在物固有の平衡する水分量未満)である。
介在物固有の90℃20%RHの雰囲気下の平衡水分量は、例えば、上記表1に示した値である。
本発明では、介在物固有の90℃20%RHの雰囲気下の平衡水分量未満であり、この平衡水分量の98%以下が好ましく、96%以下がより好ましく、90%以下がさらに好ましい。
本発明の電力ケーブルは、導体上に、順に、導体上介在物層、内部半導電層、絶縁層、外部半導電層、外部半導電層上介在物層および遮水層を設けることで製造される。
ここで、例えば、内部半導電層、絶縁層、外部半導電層の3層を同時押出することも好ましい。
すなわち、導体上介在物を導体に積層させる際や外部半導電層上介在物を外部半導電層(ケーブルコア)に積層させる際に、乾燥処理や必要に応じて防湿処理を施す。
乾燥処理や防湿処理することで、導体上介在物や外部半導電層上介在物の水分量が90℃20%RHにおける平衡水分値未満とすることができる。
なお、導体上の導体上介在物層を乾燥処理するには、例えば、40〜60℃で7日間以上、ドラムに巻いた状態で乾燥釜に保管する方法が挙げられる。
導体1上に、導体上介在物層2、内部半導電層3、絶縁層4、外部半導電層5、外部半導電層上介在物層6、遮蔽層7およびシース8の順に構成された、図1に示すような電力ケーブル10を、以下のようにして製造した。
その後、内部半導電層上に、無水マレイン酸をグラフトさせた架橋ポリエチレンからなる厚さ6.5mmの絶縁層、カーボン添加架橋ポリエチレンからなる厚さ0.5mmの外部半導電層を順に設けた。
外部半導電層上に、下記表3に示す、予め乾燥させた外部半導電層上介在物を積層して、厚さ0.8mmの外部半導電層上介在物を設けた。
その後、外部半導電層上介在物層の外周に、アルミニウム金属の遮蔽層、ポリ塩化ビニル(PVC)の防食層から構成される遮水機能付き外装構造(シース)を加えたモデル電力ケーブルを作製した。
導体1上に、導体上介在物層2、内部半導電層3、絶縁層4、外部半導電層5、外部半導電層上介在物層6、遮蔽層7およびシース8の順に構成された、図1に示すような電力ケーブル10であって、導体上介在物および外部半導電層上介在物を、下記表2、3のように変更した以外は、実施例1と同様にしてモデル電力ケーブルを製造した。
導体1上に、導体上介在物層2、内部半導電層3、絶縁層4、外部半導電層5、外部半導電層上介在物層6、遮蔽層7およびシース8の順に構成された、図1に示すような電力ケーブル10であって、導体上介在物および外部半導電層上介在物の乾燥処理に加え、防湿処理を施した以外は、実施例1と同様にしてモデル電力ケーブルを製造した。
導体1上に、導体上介在物層2、内部半導電層3、絶縁層4、外部半導電層5、外部半導電層上介在物層6、遮蔽層7およびシース8の順に構成された、図1に示すような電力ケーブル10であって、絶縁層に絶縁コンパウンドNUCV−9253〔株式会社NUC製〕(未変性架橋ポリエチレン)に変更した以外は、実施例1と同様にしてモデル電力ケーブルを製造した。
導体1上に、導体上介在物層2、内部半導電層3、絶縁層4、外部半導電層5、外部半導電層上介在物層6、遮蔽層7およびシース8の順に構成された、図1に示すような電力ケーブル10であって、導体上介在物および外部半導電層上介在物を積層する際に乾燥処理したり、予め乾燥させたりすることなく、すなわち、通常行われない乾燥処理または防湿処理を行わなかった以外は、実施例1と同様にしてモデル電力ケーブルを製造した。
導体1上に、導体上介在物層2、内部半導電層3、絶縁層4、外部半導電層5、外部半導電層上介在物層6、遮蔽層7およびシース8の順に構成された、図1に示すような電力ケーブル10であって、外部半導電層上介在物を積層する際に、外部半導電層上介在物を予め乾燥させることを行わなかった以外は、実施例1と同様にしてモデル電力ケーブルを製造した。
導体1上に、導体上介在物層2、内部半導電層3、絶縁層4、外部半導電層5、外部半導電層上介在物層6、遮蔽層7およびシース8の順に構成された、図1に示すような電力ケーブル10であって、導体上介在物層を設けた後、乾燥釜に保管しなかった以外は、実施例1と同様にしてモデル電力ケーブルを製造した。
上記のように製造した各モデル電力ケーブルに対して、以下の評価を行った。
カールフィッシャー法により、下記のようにして測定した。
90℃20%RHと25℃25mmHgの各雰囲気における導体上介在物および外部半導電層上介在物の平衡水分量をカールフィッシャー試薬(ヨウ素、二酸化硫黄、塩基、アルコール溶剤より構成)を用いた、電量滴定法で測定した。
得られた結果を、下記表2および3に示す。
なお、前記表1に記載の介在物の90℃20%RHの雰囲気における平衡水分量も上記のようにして得られた値である。
各電力ケーブルを25℃60%RH雰囲気に製造後2日間保管した後および下記ヒートサイクル試験後、25℃60%RH雰囲気に試験後2日間保管した後に、それぞれ測定した。
測定は、各電力ケーブルを所定の長さに切断し、導体上介在物および外部半導電層上介在物、絶縁層を取り出して、カールフィッシャー試薬(ヨウ素、二酸化硫黄、塩基、アルコール溶剤より構成)を用いた、電量滴定法で測定した。
得られた結果を、下記表4に示す。
実施例1〜3および比較例1〜3の電力ケーブルは、下記の条件(a)で、実施例4の電力ケーブルは、下記の条件(b)で行った。
ここで、条件(a)は320kV〜500kV級の電力ケーブルで実施するヒートサイクル条件、条件(b)は500kV級の電力ケーブルで実施するヒートサイクル条件よりも厳しい条件である。
・課電電圧:直流電圧、270kV
・温度条件:導体温度90℃ヒートサイクル(1回/日、内8時間通電)
条件(b)
・課電電圧:商用周波交流電圧、90kV
・温度条件:導体温度90℃ヒートサイクル(1回/日、内8時間通電)
また、電力ケーブル製造後およびヒートサイクル試験後の水分量ならびにヒートサイクル試験の結果を下記表4に示す。
これらの結果より、電力ケーブル製造時に介在物の水分量を規定することで、電力ケーブル絶縁層中の水分量を低減し、電力ケーブルの長期特性を向上させることができる。
2 導体上介在物層
3 内部半導電層
4 絶縁層
5 外部半導電層
6 外部半導電層上介在物層
7 遮蔽層
8 シース
9 ケーブルコア
10 電力ケーブル
Claims (4)
- 少なくとも、導体、導体上介在物層、内部半導電層、絶縁層、外部半導電層、外部半導電層上介在物層を順に積層した構造を有する電力ケーブルであって、
前記外部半導電層上介在物層の外周に、遮水層が被覆され、
前記電力ケーブルに組み込まれた前記導体上介在物と前記外部半導電層上介在物の水分量が、いずれも90℃20%RHの雰囲気下で平衡する水分量未満であることを特徴とする電力ケーブル。 - 少なくとも、導体、導体上介在物層、内部半導電層、絶縁層、外部半導電層、外部半導電層上介在物層を順に積層した構造を有する電力ケーブルであって、
前記絶縁層を構成する樹脂が、不飽和有機酸およびその誘導体から選択される化合物で変性されたポリオレフィン樹脂であり、
前記外部半導電層上介在物層の外周に、遮水層が被覆され、
前記電力ケーブルに組み込まれた前記導体上介在物と前記外部半導電層上介在物の水分量が、いずれも90℃20%RHの雰囲気下で平衡する水分量未満であることを特徴とする電力ケーブル。 - 前記導体上介在物および前記外部半導電層上介在物が、基布上に導電性ゴムまたは高吸水性高分子材料のいずれか、または両方を貼り合せたものであって、該基布が、ナイロン、ポリエステル、または、アクリル系の繊維からなる不織布、織布もしくは編布であることを特徴とする請求項1または2に記載の電力ケーブル。
- 電力ケーブルの製造方法であって、
前記電力ケーブルが、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電力ケーブルであり、
前記導体上介在物を積層後に乾燥処理し、かつ前記外部半導電層上介在物を積層前に乾燥処理して積層することを特徴とする電力ケーブルの製造方法。
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