JP7232383B1 - アンテナ部材 - Google Patents

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Abstract

熱可塑性樹脂組成物からなる射出成形体を有し、射出成形体の少なくとも一部を金属被覆して用いられるアンテナ部材であり、熱可塑性樹脂組成物は、ポリフェニレンエーテル系樹脂を含み、熱可塑性樹脂組成物の荷重撓み温度が120℃以上であり、熱可塑性樹脂組成物の、-30℃から120℃まで温度を上昇させる際の温度を10℃ごとの温度域に分けて、隣り合う二つの温度域の低温度側を低温度域、高温度側を高温度域としたとき、ISO 11359に記載の方法で測定される、低温度域膨張率と高温度域膨張率とが、いずれの隣り合う二つの温度域においても以下の関係を満たす、アンテナ部材;-50≦((高温度域膨張率-低温度域膨張率)/低温度域膨張率)×100≦50。

Description

本発明は、アンテナ部材に関する。
従来、アンテナ部材には機械的性質、及び耐熱性の観点から多くの金属やセラミックが用いられている。しかしながら、特に通信機器用基地局では設置時の容易性、組み立て時のハンドリング性の観点から軽量化が求められており、樹脂化の要望がある。
例えばフィルターは金属やセラミックで作られており、多くの面を金属で被覆し、電波をフィルタリングする必要がある。樹脂で代替する場合には、めっきやスパッタリングで被覆可能な樹脂が求められる。また、通信機器のアンテナ素子(振り子)は低誘電正接の樹脂に金属回路をひくことでアンテナとしての性能を発揮することができる。
一方、携帯電話等の移動体通信機器や無線LANに用いられる表面実装型誘電体アンテナとして、誘電体セラミックス単体、樹脂単体及びセラミックス含有樹脂組成物からなるものが提案されている。例えば、アンテナ基体がセラミックス単体や樹脂単体からなる表面実装型誘電体アンテナ(特許文献1参照)、めっき性の良好な、比誘電率実部が18程度のシンジオタクチック構造を有するスチレン系樹脂からなる発泡体及びその製造方法(特許文献2参照)が開示されている。さらに、樹脂材料に球状の誘電体セラミックス粉末を、組成物中の割合で40vol%~70vol%(体積%)混合した樹脂組成物(特許文献3参照)、高充填を可能とするためアスペクト比が3~5に調整されたチタン酸金属塩繊維と、これと熱可塑性樹脂等を複合した複合材料(特許文献4参照)が開示されている。
特開平9-98015号公報 特開平10-45936号公報 特許第3930814号公報 特許第2992667号公報
上記のようなアンテナ部材に樹脂組成物を用いる場合、機械的性質、電気的性質、及び耐熱性が優れており、寸法安定性にも優れることが求められている。また、簡便に望んだ形状に成形する観点から、射出成形によって成形する事が求められている。更にはめっきやスパッタリングで金属被覆可能で、高温時に金属被覆が剥がれない材料が求められる。具体的には、いずれの部品も通信時には熱を発するので、樹脂自体の耐熱性、及び高温領域でも寸法変化が少なく、金属被覆が剥がれないことが求められる。アンテナは外部環境に曝され、更には内部に発熱する部品を含むために内部は高温になることがある。高温時にもアンテナ特性を発揮する必要があり、高温でも誘電率・誘電正接の低い材料が求められている。また、回路形成可能な樹脂も求められており、回路を形成する観点からは、1GHz以上の高周波帯で、アンテナ特性発現可能であり、高温領域でも低誘電正接を維持する材料が求められている。
さらに近年、5G通信の普及に伴い、5G通信可能な通信基地局が求められている。通信の高速化に伴い、基地局が発する熱が大きくなってきているため、放熱のために設置されるヒートシンクが非常に重く全体の重量が非常に重くなっており、軽量化の要求が高まっている。特にアンテナフィルターは金属又はセラミック製で、基地局の中でかなりの重量を占める。アンテナフィルターを樹脂化することで軽量化・作業工程の簡易化が可能だが、金属皮膜を作る必要があり、樹脂と金属の密着性を保持することに課題があった。また、アンテナの振り子には金属で回路を形成する必要があるので樹脂と金属の密着性が求められるだけではなく、更にはアンテナ性能を発揮するために低誘電正接である材料が求められている。このような通信の高度化に伴い、低周波数から高周波数まであらゆる周波数の情報でも対応できることが求められている
更に、近年の通信の広域化に伴い、アンテナ部材としては、上述の様々な特性を維持しつつ、これらが低温・高温あるいは湿潤環境でも発揮されることが求められるようになってきている。
そこで、本発明は、金属皮膜との密着性を保持しながら高温領域での寸法変化・誘電正接変化が少ない、射出成形により成形され、かつ低温・高温・湿潤などあらゆる環境にも適応可能なアンテナ部材を提供することを目的とする。
本発明者らは、上述の問題を解決するために鋭意検討した結果、特定の樹脂組成物をアンテナ部材に用いることであらゆる環境でアンテナ性能を維持しながら通信機器の軽量化・組み立て作業工程の簡易化に貢献できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]
熱可塑性樹脂組成物からなる射出成形体を有し、前記射出成形体の少なくとも一部を金属被覆して用いられるアンテナ部材であり、
前記熱可塑性樹脂組成物は、(A-a)ポリフェニレンエーテル系樹脂を含み、
前記熱可塑性樹脂組成物の荷重撓み温度(DTUL)が120℃以上であり、
前記熱可塑性樹脂組成物の、-30℃から120℃まで温度を上昇させる際の温度を10℃ごとの温度域に分けて、隣り合う二つの温度域の低温度側を低温度域、高温度側を高温度域としたとき、前記低温度域におけるISO 11359に記載の方法で測定される、前記樹脂組成物のTD方向の低温度域膨張率(mm/mm/℃)と、前記高温度域におけるISO 11359に記載の方法で測定される、前記樹脂組成物のTD方向の高温度域膨張率(mm/mm/℃)とが、いずれの前記隣り合う二つの温度域においても以下の関係を満たす、アンテナ部材。
-50≦((高温度域膨張率-低温度域膨張率)/低温度域膨張率)×100≦50
[2]
前記熱可塑性樹脂組成物の、28GHzにおける誘電正接の温度依存性が下記の条件を満たす、[1]に記載のアンテナ部材。
1.DTULが120℃以上140℃未満の場合、23℃の時の誘電正接と120℃の誘電正接の値の差が0.004以下
2.DTULが140℃以上の場合、23℃の時の誘電正接と140℃の誘電正接の値の差が0.004以下
[3]
前記熱可塑性樹脂組成物の、-30℃から120℃まで温度を上昇させる際の温度を10℃ごとの温度域に分け、各温度域のISO 11359に記載の方法で測定される、前記樹脂組成物のTD方向の膨張率の平均値が10×10-5mm/mm/℃以下である、[1]又は[2]に記載のアンテナ部材。
[4]
前記熱可塑性樹脂組成物の、-30℃から120℃まで温度を上昇させる際の温度を10℃ごとの温度域に分け、各温度域のISO 11359に記載の方法で測定される、前記樹脂組成物のTD方向の膨張率のうち、最大値が10×10-5mm/mm/℃以下である、[3]に記載のアンテナ部材。
[5]
前記熱可塑性樹脂組成物が、(A-b)結晶性樹脂を含む、[1]~[4]のいずれかに記載のアンテナ部材。
[6]
前記熱可塑性樹脂組成物が、(B)無機充填剤を10質量%以上含む、[1]~[5]のいずれかに記載のアンテナ部材。
[7]
前記熱可塑性樹脂組成物が、(A-a)ポリフェニレンエーテル系樹脂を10質量%以上含む、[1]~[6]のいずれかに記載のアンテナ部材。
[8]
屋外用又は屋内用のアンテナ基地局に用いられる、[1]~[7]のいずれかに記載のアンテナ部材。
[9]
クロム酸エッチング無電解銅めっき加工により金属被覆を形成した、[1]~[8]のいずれかに記載のアンテナ部材。
[10]
クロム酸エッチング無電解銅めっき加工により金属被覆を形成したのち、85℃、湿度85%で2000h放置後に、前記金属層に割れが生じない、[1]~[9]のいずれかに記載のアンテナ部材。
[11]
前記熱可塑性樹脂組成物が、(A-c-a)ポリスチレン系樹脂を含む、[1]~[10]のいずれかに記載のアンテナ部材。
[12]
前記熱可塑性樹脂組成物が、(A-c-b)芳香族ビニル単量体単位を主体とするブロックを少なくとも1つと、共役ジエン単量体単位を主体とするブロックを少なくとも1つとを含む、ブロック共重合体、及び/又は該ブロック共重合体の水素添加物を含む、[1]~[11]のいずれかに記載のアンテナ部材。
[13]
アンテナフィルターである、[1]~[12]のいずれかに記載のアンテナ部材。
[14]
アンテナ素子である、[1]~[12]のいずれかに記載のアンテナ部材。
本発明によれば、金属皮膜との密着性を保持しながら高温領域での寸法変化・誘電正接変化が少ない、射出成形により成形され、且つ、低温・高温・湿潤などあらゆる環境にも適用可能なアンテナ部材を得ることができる。
実施例において膨張率を測定するため、評価用ISOダンベルから試験片を切り出す方法を説明するための図である。
以下、本発明の内容を詳細に説明する。
本実施形態のアンテナ部材は、熱可塑性樹脂組成物からなる射出成形体を有し、前記射出成形体の少なくとも一部を金属被覆して用いられ、前記熱可塑性樹脂組成物は、(A-a)ポリフェニレンエーテル系樹脂を含み、前記熱可塑性樹脂組成物の荷重撓み温度(DTUL)が120℃以上であり、前記熱可塑性樹脂組成物の、-30℃から120℃まで温度を上昇させる際の温度を10℃ごとの温度域に分けて、隣り合う二つの温度域の低温度側を低温度域、高温度側を高温度域としたとき、前記低温度域におけるISO 11359に記載の方法で測定される、前記樹脂組成物のTD方向の低温度域膨張率(mm/mm/℃)と、前記高温度域におけるISO 11359に記載の方法で測定される、前記樹脂組成物のTD方向の高温度域膨張率(mm/mm/℃)とが、いずれの前記隣り合う二つの温度域においても以下の関係を満たす。
-50≦((高温度域膨張率-低温度域膨張率)/低温度域膨張率)×100≦50
本実施形態における熱可塑性樹脂組成物の各成分に関して、以下に詳説する。
[(A)熱可塑性樹脂]
本実施形態における(A)熱可塑性樹脂とは、フィラーや無機充填剤等を除いた樹脂成分のことを指す。かかる樹脂成分としては、例えば、成形用として利用される種々の樹脂、例えば、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ビニル系樹脂、オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、芳香族系樹脂等が挙げられる。
本実施形態の(A)熱可塑性樹脂は、(A-a)ポリフェニレンエーテル系樹脂を含むことで、金属皮膜との密着性、誘電正接の温度依存性を向上させることができる。
本実施形態の(A)熱可塑性樹脂は、オレフィン系熱可塑性エラストマーや水添ブロック共重合体等の主として耐衝撃性を改良するための樹脂成分もこれに含むことができる。
また、本実施形態の(A)熱可塑性樹脂は、(A-b)結晶性樹脂、その他の熱可塑性樹脂を同時に含んでもよく、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ビニル系樹脂、オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、芳香族系樹脂等が挙げられる。
誘電正接が低いという観点からオレフィン系樹脂が好適に用いられ、更には充分な耐熱性を有する樹脂が好ましく、例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル樹脂;環状オレフィンポリマー(COP)、シクロオレフィンコポリマー、メチルペンテンポリマー(TPX)等のポリオレフィンポリマーなどが挙げられる。
上記オレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン単独重合体;エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ブチレン共重合体、エチレン-オクテン共重合体等のポリオレフィン共重合体等が挙げられる。特に、ポリエチレン単独重合体としては、高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等が挙げられる。
また、上記水添ブロック共重合体としては、ポリスチレンブロックと共役ジエン化合物重合体ブロックとからなるブロック共重合体を水素添加して得られる水添ブロック共重合体等が挙げられる。
水素添加前のブロック共重合体の構造としては、特に限定されず、例えば、ポリスチレンブロック鎖をS、共役ジエン化合物重合体ブロック鎖をBと表すと、S-B-S、SB-S-B、(S-B-)-S、S-B-S-B-S等の構造が挙げられる。
[(A-a)ポリフェニレンエーテル系樹脂]
本実施形態における(A-a)ポリフェニレンエーテル系樹脂(以下、単に「(A-a)成分」と称する場合がある)の具体的な例としては、例えば、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-6-エチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-6-フェニル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,6-ジクロロ-1,4-フェニレンエーテル)等が挙げられ、さらに2,6-ジメチルフェノールと他のフェノール類との共重合体(例えば、特公昭52-17880号公報に記載されてあるような2,3,6-トリメチルフェノールとの共重合体や2-メチル-6-ブチルフェノールとの共重合体)のごときポリフェニレンエーテル共重合体も挙げられる。
これらの中でも特に好ましいポリフェニレンエーテルとしては、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)、2,6-ジメチルフェノールと2,3,6-トリメチルフェノールとの共重合体、又はこれらの混合物である。
上記(A-a)成分としては、例えば、下記式(1)で表される繰り返し単位構造からなるホモ重合体、下記式(1)で表される繰り返し単位構造を有する共重合体が挙げられる。
上記(A-a)成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
Figure 0007232383000001
上記式(1)中、R、R、R、及びRは、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~7の第1級アルキル基、炭素数1~7の第2級アルキル基、フェニル基、ハロアルキル基、アミノアルキル基、炭化水素オキシ基、及び少なくとも2個の炭素原子がハロゲン原子と酸素原子とを隔てているハロ炭化水素オキシ基からなる群から選択される一価の基である。
(A-a)ポリフェニレンエーテル系樹脂の製造方法は、公知の方法で得られるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、第一銅塩とアミンとのコンプレックスを触媒として用いて、例えば、2,6-キシレノールを酸化重合することによって製造する、米国特許第3306874号明細書に記載される方法や、同第3306875号明細書、同第3257357号明細書及び同第3257358号明細書、特開昭50-51197号公報、特公昭52-17880号公報及び同63-152628号公報等に記載された製造方法等が挙げられる。
本実施形態における(A-a)ポリフェニレンエーテル系樹脂の還元粘度(0.5g/dLクロロホルム溶液、30℃、ウベローデ型粘度管で測定)の好ましい範囲は0.30~0.80dL/g、より好ましくは0.35~0.75dL/g、最も好ましくは0.38~0.55dL/gである。(A-a)ポリフェニレンエーテル系樹脂の還元粘度がこの範囲にあると、耐衝撃性、耐熱性等の特性に優れ好ましい。
本実施形態の(A-a)ポリフェニレンエーテル系樹脂においては、2種以上の還元粘度の異なるポリフェニレンエーテルをブレンドしたものであっても、好ましく使用することができる。
また、(A-a)ポリフェニレンエーテル系樹脂の安定化の為、公知の各種安定剤も好適に使用することができる。安定剤の例としては、酸化亜鉛、硫化亜鉛等の金属系安定剤、ヒンダードフェノール系安定剤、リン系安定剤、ヒンダードアミン系安定剤等の有機安定剤であり、これらの好ましい配合量は、(A-a)ポリフェニレンエーテル系樹脂100質量部に対して5質量部未満である。
さらに、(A-a)ポリフェニレンエーテル系樹脂に添加することが可能な公知の添加剤等も(A-a)ポリフェニレンエーテル系樹脂100質量部に対して10質量部未満の量で添加しても構わない。
上記(A-a)成分は、上記ホモ重合体及び/又は上記共重合体と、スチレン系モノマー若しくはその誘導体、及び/又は、α,β-不飽和カルボン酸若しくはその誘導体と、を反応させることによって得られる変性ポリフェニレンエーテルであってもよい。ここで、上記スチレン系モノマー若しくはその誘導体及び/又はα,β-不飽和カルボン酸若しくはその誘導体のグラフト量又は付加量としては、(A-a)成分100質量%に対して、0.01~10質量%であることが好ましい。
上記変性ポリフェニレンエーテルの製造方法としては、例えば、ラジカル発生剤の存在下又は非存在下で、溶融状態、溶液状態又はスラリー状態で、80~350℃の温度下で反応させる方法等が挙げられる。
上記ポリフェニレンエーテルとしては、上記ホモ重合体及び/又は上記共重合体と、上記変性PPEとの、任意の割合の混合物を用いてもよい。
後述の(A-b)結晶性樹脂を含まない場合においては、耐熱性と低誘電正接を保ちながら誘電率をコントロール可能とする観点から、前記(A)熱可塑性樹脂100質量%に対する、前記(A-a)ポリフェニレンエーテル系樹脂の含有量は、50質量%以上であることが好ましく、55質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがさらに好ましい。また、成形性の観点から、85質量%以下であることが好ましい。
また、後述の(A-b)結晶性樹脂を含む場合においては、耐熱性と低誘電正接を保ちながら誘電率をコントロール可能とする観点から、前記(A)熱可塑性樹脂100質量%に対する、前記(A-a)ポリフェニレンエーテル系樹脂の含有量は、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがさらに好ましい。また、流動性の観点から、90質量%以下であることが好ましい。
特に、高温領域で低誘電正接を保つという観点から、(A-a)ポリフェニレンエーテル系樹脂と(A-b)結晶性樹脂との合計量を100質量部としたときに、(A-a)ポリフェニレンエーテル系樹脂が5質量部以上であることが好ましく、より好ましくは10質量部以上であり、さらに好ましくは15質量部以上である。また、流動性の観点から、90質量部以下であることが好ましい。
[(A-b)結晶性樹脂]
本実施形態には(A-b)結晶性樹脂を含んでもよい。(A-b-a)ポリアミド、(A-b-b)ポリプロピレン、(A-b-c)ポリフェニレンスルフィド樹脂が好適に用いることができる。また、他にもポリエチレン、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン等の結晶性樹脂を用いることができる。
(A-b)結晶性樹脂個々の具体的な好ましい含有量は、熱可塑性樹脂組成物全体を100質量%としたときに、それぞれ、90質量%以下であり、より好ましくは80質量%以下であり、さらに好ましくは85質量%以下である。
特に、高温領域で低誘電正接を保つという観点から、(A-a)ポリフェニレンエーテル系樹脂と(A-b)結晶性樹脂との合計量全体を100質量%としたときに、(A-b)結晶性樹脂が95質量%以下であり、より好ましくは90質量%以下であり、さらに好ましくは85質量%以下である。
[(A-b-a)ポリアミド]
本実施形態の(A-b-a)ポリアミド(以下、単に「(A-b-a)成分」と称する場合がある)は、ポリマー主鎖の繰り返し単位中にアミド結合{-NH-C(=O)-}を有するものであれば、特に制限されない。
一般にポリアミドは、ラクタム類の開環重合、ジアミンとジカルボン酸の重縮合、ωアミノカルボン酸の重縮合等によって得られるが、これらの方法によって得られた樹脂に限定されるものではない。
ラクタム類としては、具体的にはεカプロラクタム、エナントラクタム、ωラウロラクタム等が挙げられる。
上記ジアミンとしては、大別して脂肪族、脂環式及び芳香族ジアミンが挙げられる。ジアミンの具体例としては、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、トリデカメチレンジアミン、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、5-メチルノナメチレンジアミン、1,9-ノナンジアミン、2-メチル-1,8-オクタンジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、1,4-ブタンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、1,8-オクタンジアミン、1,10-デカンジアミン、1,12-ドデカンジアミン、3-メチル-1,5-ペンタンジアミン、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミン、2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミン、5-メチル-1,9-ノナンジアミン等の脂肪族ジアミン1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、1,4-ビスアミノメチルシクロヘキサン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン等が挙げられる。
ジカルボン酸としては、大別して脂肪族、脂環式及び芳香族ジカルボン酸が挙げられる。ジカルボン酸の具体例としては、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、1,1,3-トリデカン二酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ダイマー酸等が挙げられる。
また、アミノカルボン酸としては、具体的にはεアミノカプロン酸、7-アミノヘプタン酸、8-アミノオクタン酸、9-アミノナノン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸、13-アミノトリデカン酸等が挙げられる。
本実施形態においては、これらラクタム類、ジアミン、ジカルボン酸、ωアミノカルボン酸は、単独あるいは二種以上の混合物にして重縮合を行って得られる共重合ポリアミド類はいずれも使用することができる。
また、これらラクタム類、ジアミン、ジカルボン酸、ωアミノカルボン酸を重合反応機内で低分子量のオリゴマーの段階まで重合し、押出機等で高分子量化したものも好適に使用することができる。
特に本実施形態で好適に用いることのできる(A-b-a)ポリアミドとしては、ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド4,6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6,10、ポリアミド6,12、ポリアミド6/6,6、ポリアミド6/6,12、ポリアミドMXD(m-キシリレンジアミン),6、ポリアミド6,T、ポリアミド9,T、ポリアミド6,I、ポリアミド6/6,T、ポリアミド6/6,I、ポリアミド6,6/6,T、ポリアミド6,6/6,I、ポリアミド6/6,T/6,I、ポリアミド6,6/6,T/6,I、ポリアミド6/12/6,T、ポリアミド6,6/12/6,T、ポリアミド6/12/6,I、ポリアミド6,6/12/6,I等が挙げられる。
これらのうち、複数のポリアミドを押出機等で共重合化したポリアミド類も使用することができる。中でも好ましいポリアミドは、脂肪族ポリアミドのポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド4,6、ポリアミド11、ポリアミド12;及び半芳香族ポリアミドのポリアミド9,T、ポリアミド6/6,T、ポリアミド6,6/6,T、ポリアミド6,6/6,I、ポリアミドMXD,6から選ばれる1種以上であり、より好ましくは、ポリアミド6,6、ポリアミド6、ポリアミド9,T、ポリアミド6,6/6,Iから選ばれる1種以上のポリアミドである。
本実施形態に係る(A-b-a)ポリアミドは、テレフタル酸単位を60~100モル%含有するジカルボン酸単位(a)と、炭素数が9~12の脂肪族ジアミン単位を60~100モル%含有するジアミン単位(b)とを有する。ものが吸水性・耐熱性の観点から好ましい。
[[ジカルボン酸単位(a)]]
本実施形態におけるジカルボン酸単位(a)は、当該単位(a)中、テレフタル酸単位を60~100モル%含有し、好ましくは70~100モル%含有し、より好ましくは80~100モル%含有し、さらに好ましくは90~100モル%含有し、さらにより好ましくは100モル%含有する。当該モル比率がこの範囲にあると、耐熱性に優れた樹脂組成物となる。また、複雑な形状あるいは大型の成形品を成形する際、ハイサイクル成形性に優れる傾向にある。
ジカルボン酸単位(a)は、テレフタル酸単位以外のジカルボン酸単位を含有していてもよい。かかるジカルボン酸単位としては、以下に制限されないが、例えば、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、2-メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、2,2-ジメチルグルタル酸、3,3-ジエチルコハク酸、アゼライン酸、セバシン酸、及びスベリン酸等の脂肪族ジカルボン酸;1,3-シクロペンタンジカルボン酸、及び1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸;並びに、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,4-フェニレンジオキシジ酢酸、1,3-フェニレンジオキシジ酢酸、ジフェン酸、4,4’-オキシジ安息香酸、ジフェニルメタン-4,4’-ジカルボン酸、ジフェニルスルホン-4,4’-ジカルボン酸、及び4,4’-ビフェニルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸から誘導される単位が挙げられる。
これらの単位は、1種単独であってもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。
上記のテレフタル酸単位以外のジカルボン酸単位は、ジカルボン酸単位(a)中に40モル%以下の範囲で含まれていてもよく、より好ましくは30モル%以下、さらに好ましくは20モル%以下、さらにより好ましくは10モル%以下、最も好ましくは0モル%である。
[[ジアミン単位(b)]]
本実施形態におけるジアミン単位(b)は、炭素数が9~12の脂肪族ジアミン単位を60~100モル%含有し、好ましくは70~100モル%含有し、より好ましくは80~100モル%含有し、さらに好ましくは90~100モル%含有し、さらにより好ましくは100モル%含有する。炭素数及びジアミン単位のモル比率が上記範囲にあることで、低吸水性と耐熱性のバランスに優れた樹脂組成物となる。
ジアミン単位(b)は、直鎖であっても分岐していてもよい。
上記ジアミン単位(b)を構成する直鎖の脂肪族ジアミンとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、1,9-ノナンジアミン(ノナメチレンジアミンともいう。)、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミンが挙げられる。
上記ジアミン単位(b)を構成する、主鎖から分岐した置換基を持つ脂肪族ジアミン単位を構成する脂肪族ジアミンとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、2-メチル-1,8-オクタンジアミン(2-メチルオクタメチレンジアミンともいう。)、及び2,4-ジメチルオクタメチレンジアミンが挙げられる。
上記ジアミン単位(b)として、1,9-ノナンジアミン単位及び/又は2-メチル-1,8-オクタンジアミン単位を含むことが、機械的強度、低吸水性、耐熱性のバランスの観点から好ましい。中でも、1,9-ノナンジアミン単位及び2-メチル-1,8-オクタンジアミン単位を併用することが好ましい。
上記ジアミン単位(b)として、1,9-ノナンジアミン単位及び/又は2-メチル-1,8-オクタンジアミン単位を含む場合の、1,9-ノナンジアミン単位と2-メチル-1,8-オクタンジアミン単位とのモル比(1,9-ノナンジアミン単位/2-メチル-1,8-オクタンジアミン単位)は、100/0~20/80の範囲であることが好ましい。当該モル比は、95/5~60/40であることがより好ましく、90/10~75/25であることがさらに好ましい。当該モル比がこの範囲にあると、特に耐熱性に優れた樹脂組成物となる傾向にある。
ジアミン単位(b)は、炭素数が9~12の脂肪族ジアミン単位以外のジアミン単位を含有していてもよい。かかるジアミン単位としては、以下に制限されないが、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、及び2-メチルペンタメチレンジアミン(2-メチル-1,5-ジアミノペンタンともいう。)等の脂肪族ジアミン;1,4-シクロヘキサンジアミン、1,3-シクロヘキサンジアミン、及び1,3-シクロペンタンジアミン等の脂環族ジアミン;並びに、メタキシリレンジアミン等の芳香族ジアミンから誘導される単位が挙げられる。
これらの単位は、1種単独であってもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。
上記の炭素数が9~12の脂肪族ジアミン単位以外のジアミン単位は、ジカルボン酸単位(ba)中に40モル%以下の範囲で含まれていてもよく、より好ましくは30モル%以下、さらに好ましくは20モル%以下、さらにより好ましくは10モル%以下、最も好ましくは0モル%である。
本実施形態の(A-b-a)ポリアミドの好ましい例としては、ポリアミド9,T、10,T等が挙げられる。
また、本実施形態の(A-b-a)ポリアミドは、本実施形態の目的を損なわない範囲で、ブチロラクタム、ピバロラクタム、ε-カプロラクタム、カプリロラクタム、エナントラクタム、及びウンデカノラクタム等のラクタム単位、6-アミノカプロン酸、11-アミノウンデカン酸、及び12-アミノドデカン酸等のアミノカルボン酸単位、ビスヘキサメチレントリアミン等の3価以上の多価アミン単位、並びに、トリメリット酸、トリメシン酸、及びピロメリット酸等の3価以上の多価カルボン酸単位を含んでもよい。
これらの単位は、1種単独であってもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。
これらの単位の(A-b-a)ポリアミド中の合計割合(モル%)は、ポリアミド全体に対して、20モル%以下であることが好ましく、10モル%以下であることがより好ましく、5モル%以下であることがさらに好ましい。
[(A-b-a)ポリアミドの含有量]
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物において、(A)熱可塑性樹脂を100質量%としたときに、成分(A-b-a)の含有量は、25~75質量%であることが好ましく、より好ましくは30~75質量%、さらに好ましくは30~70質量%である。成分(A-b-a)の含有量がこの範囲にあると、機械的強度、低吸水性、寸法精度、及びウェルド強度に優れた樹脂を得ることができる。
また、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物において、成分(A-a)と成分(A-b-a)との合計を100質量部とした場合、成分(A-b-a)の含有量は、50~95質量部であり、好ましくは60~95質量部であり、さらに好ましくは60~90質量部である。成分(A-b-a)の含有量がこの範囲にあると、機械的強度、低吸水性、寸法精度、ウェルド強度に優れた熱可塑性樹脂組成物となり、また、ハイサイクル成形が可能になる。
[(A-b-a)ポリアミドの製造方法]
(A-b-a)ポリアミドの製造方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、以下の種々の方法が挙げられる。
1)ジカルボン酸及びジアミンの水溶液又は水の懸濁液、又はジカルボン酸及びジアミン塩とラクタム及び/又はアミノカルボン酸等の他の成分との混合物(以下、これらを、「その混合物」と略称する場合がある。)の水溶液又は水の懸濁液を加熱し、溶融状態を維持したまま重合させる方法(以下、「熱溶融重合法」ともいう。);
2)ジカルボン酸及びジアミン又はその混合物の水溶液又は水の懸濁液を加熱し、析出したプレポリマーと取り出す方法(「プレポリマー法」);
3)熱溶融重合法で得られたポリアミドを融点以下の温度で固体状態を維持したまま重合度を上昇させる方法(「熱溶融重合・固相重合法」);
4)ジカルボン酸及びジアミン又はその混合物の水溶液又は水の懸濁液を加熱し、析出したプレポリマーをさらにニーダー等の押出機で再び溶融して、その重合度を上昇させる方法(「プレポリマー・押出重合法」);
5)ジカルボン酸及びジアミン又はその混合物の水溶液又は水の懸濁液を加熱し、析出したプレポリマーをさらにポリアミドの融点以下の温度で固体状態を維持して、その重合度を上昇させる方法(「プレポリマー・固相重合法」);
6)ジカルボン酸及びジアミン又はその混合物を、固体状態を維持したまま重合させる方法(「モノマー・固相重合法」);
7)「ジカルボン酸及びジアミンの塩」又はその混合物を、固体状態を維持したまま重合させる方法(「塩・固相重合法」);
8)ジカルボン酸と等価なジカルボン酸ハライド及びジアミンを用いて重合させる方法(「溶液法」)。
(A-b-a)ポリアミドの製造方法における重合形態は、以下に限定されるものではなく、例えば、バッチ式、連続式が挙げられる。
重合装置としては、特に限定されず、公知の装置(例えば、オートクレーブ型反応器、タンブラー型反応器、ニーダー等の押出機型反応器等)を用いることもできる。
[(A-b-a)ポリアミドの物性]
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物に含まれる(A-b-a)ポリアミドの末端基は、(A-a)ポリフェニレンエーテル系樹脂との反応に関与する。通常、ポリアミド系樹脂は、末端基として、アミノ基やカルボキシル基を有している。一般的に、末端カルボキシル基濃度が高くなると、耐衝撃性が低下し、流動性が向上する傾向にある。また、一般的に、末端アミノ基濃度が高くなると、耐衝撃性が向上し、流動性が低下する傾向にある。但し、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物の物性はこれらの傾向に限定されない。
成分(A-b-a)の末端アミノ基濃度は、1~80μmol/gであることが好ましく、5~60μmol/gであることがより好ましく、10~45μmol/g未満であることが更に好ましく、20~40μmol/gであることがより更に好ましい。末端アミノ基濃度を上記範囲とすることにより、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物の流動性と耐衝撃性とのバランスを一層高いレベルで維持することができる。
成分(A-b-a)の末端カルボキシル基濃度は、20~150μmol/gであることが好ましく、30~130μmol/gであることがより好ましい。末端カルボキシル基濃度を上記範囲とすることにより、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物の流動性と耐衝撃性とのバランスを一層高いレベルで維持することができる。
これらのポリアミドの各末端基の濃度は、公知の方法を用いて調整することができる。例えば、ポリアミドの重合時に所定の末端基濃度となるように、ジアミン化合物、モノアミン化合物、ジカルボン酸化合物、及びモノカルボン酸化合物等から選ばれる1種以上を添加する方法等が挙げられる。
末端アミノ基濃度と末端カルボキシル基濃度は、種々の方法により測定可能である。例えば、H-NMRにより、各末端基に対応する特性シグナルの積分値より求める方法が、精度、簡便さの観点から好ましい。例えば、ポリアミド系樹脂の末端基濃度の定量方法の具体例としては、特開平07-228689号公報の実施例に記載された方法が挙げられる。具体的には、各末端基の数は、H-NMR(500MHz、重水素化トリフルオロ酢酸中、50℃で測定)により、各末端基に対応する特性シグナルの積分値より求めるのが精度、簡便さの点で好ましい。末端封止剤によって封止された末端の特性シグナルが同定できない場合には、ポリアミドの極限粘度[η]を測定し、下記式の関係を用いて分子鎖末端基総数を算出することができる。
Mn=21900[η]-7900 (Mnは数平均分子量を表す)
分子鎖末端基総数(eq/g)=2/Mn
(A-b-a)ポリアミドにおいて、分子鎖の末端基の10~95%が末端封止剤により封止されていることが好ましい。ポリアミドの分子鎖の末端基が封止されている割合(末端封止率)の下限値は、40%以上であることがより好ましく、60%以上であることが更に好ましい。末端封止率を上記下限値以上とすることにより、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物を成形する際の粘度上昇を抑制することができる。また、末端封止率の上限値は、95%以下であることが好ましく、90%以下であることがより好ましい。末端封止率を上記上限値以下とすることにより、耐衝撃性や成形品の表面外観が一層向上する。
ポリアミドの末端封止率は、当該ポリアミドに存在する末端カルボキシル基、末端アミノ基及び末端封止剤によって封止された末端基の数をそれぞれ測定し、下記の式(1)に従って求めることができる。
末端封止率(%)=[(α-β)/α]×100 (1)
(式中、αは分子鎖の末端基の総数(単位=モル;これは、通常、ポリアミド分子の数の2倍に等しい。)を表し、βは封止されずに残ったカルボキシル基末端及びアミノ基末端の合計数(単位=モル)を表す。)
末端封止剤としては、ポリアミド末端のアミノ基又はカルボキシル基との反応性を有する単官能性の化合物であれば特に限定されないが、反応性及び封止末端の安定性等の観点から、モノカルボン酸、モノアミンが好ましく、取扱いの容易性等の観点から、モノカルボン酸がより好ましい。その他にも、酸無水物、モノイソシアネート、モノ酸ハロゲン化物、モノエステル類、モノアルコ-ル類等を末端封止剤として使用することができる。
末端封止剤として使用されるモノカルボン酸としては、アミノ基との反応性を有するものであれば特に限定されず、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸、イソ酪酸等の脂肪族モノカルボン酸;シクロヘキサンカルボン酸等の脂環式モノカルボン酸;安息香酸、トルイル酸、α-ナフタレンカルボン酸、β-ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸、フェニル酢酸等の芳香族モノカルボン酸;これらの任意の混合物等が挙げられる。これらの中でも、反応性、封止末端の安定性、及び経済性等の観点から、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、安息香酸が好ましく、酢酸、安息香酸がより好ましい。
末端封止剤として使用されるモノアミンとしては、カルボキシル基との反応性を有するものであれば特に限定されず、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン等の脂肪族モノアミン;シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン等の脂環式モノアミン;アニリン、トルイジン、ジフェニルアミン、ナフチルアミン等の芳香族モノアミン;これらの任意の混合物等が挙げられる。これらの中でも、反応性、沸点、封止末端の安定性、及び経済性等の観点から、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリンが好ましく、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミンがより好ましい。
熱可塑性樹脂組成物の耐熱安定性を一層向上させる目的で、ポリアミド中だけでなく遷移金属やハロゲンを樹脂組成物中に存在させてもよい。
遷移金属の種類は、特に限定されず、例えば、鉄、銅、セリウム、ニッケル、コバルト等が挙げられ、これらの中でも、長期熱安定性の観点から銅が好ましい。また、ハロゲンの種類は、特に限定されないが、生産設備等の腐食防止の観点から、臭素、ヨウ素が好ましい。
遷移金属の含有量は、本実施形態の成分(A-a)、及び成分(A-b-a)の合計を100質量部としたとき、質量基準で1ppm以上200ppm未満であることが好ましく、5ppm以上100ppm未満であることがより好ましい。また、ハロゲンの含有量は、本実施形態の成分(A-a)、及び成分(A-b-a)の合計を100質量部としたとき、質量基準で500ppm以上1500ppm未満であることが好ましく、700ppm以上1200ppm未満であることがより好ましい。
これら遷移金属やハロゲンを樹脂組成物に添加する方法としては、特に限定されず、例えば、ポリアミドと、(A-a)とを溶融混練する工程においてこれらを粉体として添加する方法;ポリアミドの重合時に添加する方法;高濃度で遷移金属やハロゲンを添加したポリアミドのマスターペレットを製造した後、このポリアミドのマスターペレットを樹脂組成物へ添加する方法等が挙げられる。これらの方法の中で好ましい方法は、ポリアミドの重合時に添加する方法、ポリアミドに遷移金属及び/又はハロゲンを高濃度で添加したマスターペレットを製造した後、添加する方法である。
また、本実施形態においては、上述した遷移金属及び/又はハロゲンの他に、公知の有機安定剤も問題なく使用することができる。
有機安定剤の例としては、イルガノックス1098(チバスペシャリティーケミカルズ(株)製)等に代表されるヒンダードフェノール系酸化防止剤、イルガフォス168(チバスペシャリティーケミカルズ(株)製)等に代表されるリン系加工熱安定剤、HP-136(チバスペシャリティーケミカルズ(株)製)に代表されるラクトン系加工熱安定剤、イオウ系耐熱安定剤、ヒンダードアミン系光安定剤等が挙げられる。これら有機安定剤の中でもヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系加工熱安定剤、もしくはその併用がより好ましい。
これら有機安定剤の好ましい配合量は、(A-b-a)ポリアミド100質量部に対して、0.001~1質量部である。
[(A-b-b)ポリプロピレン系樹脂]
(A-b-b)ポリプロピレン系樹脂としては、特に限定されることなく、例えば、プロピレンを繰り返し単位構造とする単独重合体及び/又は共重合体等が挙げられ、結晶性プロピレン単独重合体、結晶性プロピレン-エチレンブロック共重合体、結晶性プロピレン単独重合体と結晶性プロピレン-エチレンブロック共重合体との混合物が好ましい。
結晶性プロピレン-エチレンブロック共重合体としては、特に限定されることなく、例えば、結晶性プロピレン単独重合体部分とプロピレン-エチレンランダム共重合体部分とを有するもの等が挙げられる。
(A-b-b)成分のメルトマスフローレート(以下、「MFR」ともいう)は、樹脂組成物について、燃焼時のドローダウンを抑制し、流動性と機械的強度とのバランスを高める観点から、0.1g/10分以上であることが好ましく、0.3g/10分以上であることが更に好ましく、0.5g/10分以上であることが特に好ましく、また、15g/10分以下であることが好ましく、6g/10分以下であることが更に好ましく、3g/10分以下であることが特に好ましい。
なお、MFRは、ISO1133に準拠し、温度230℃、荷重2.16kgの条件下で測定することができる。MFRは、具体的には、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
(A-b-b)成分の製造方法としては、特に限定されることなく、公知のものを用いることができる。ポリプロピレンの製造方法の具体例としては、例えば、三塩化チタン触媒又は塩化マグネシウム等の担体に担持されたハロゲン化チタン触媒等とアルキルアルミニウム化合物とを含む重合触媒組成物の存在下で、温度0~100℃、圧力3~100気圧の条件下で、プロピレンを重合する方法等が挙げられる。上記方法では、重合体の分子量を調整するため、水素等の連鎖移動剤を添加してもよい。
また、上記方法では、重合系に、上記の重合触媒組成物以外に、得られるポリプロピレンのアイソタクティシティ及び重合系の重合活性を高めるため、電子供与性化合物を内部ドナー成分又は外部ドナー成分として、更に含めることができる。これらの電子供与性化合物としては、特に限定されることなく、公知のものを用いることができる。電子供与性化合物の具体例としては、例えば、ε-カプロラクトン、メタクリル酸メチル、安息香酸エチル、トルイル酸メチル等のエステル化合物;亜リン酸トリフェニル、亜リン酸トリブチル等の亜リン酸エステル;ヘキサメチルホスホリックトリアミド等のリン酸誘導体;アルコキシエステル化合物;芳香族モノカルボン酸エステル;芳香族アルキルアルコキシシラン;脂肪族炭化水素アルコキシシラン;各種エーテル化合物;各種アルコール類;各種フェノール類等が挙げられる。
上記方法における重合方式としては、バッチ式、連続式いずれの方式としてもよく、重合方法としては、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の溶媒を用いた溶液重合やスラリー重合、更には、無溶媒で、単量体中での塊状重合やガス状重合体中での気相重合方法等としてよい。
(A-b-b)成分の製造方法の中でも、特に、結晶性プロピレン-エチレンブロック共重合体の製造方法としては、特に限定されることなく、例えば、結晶性プロピレン単独重合体部分を得る第一工程と、該結晶性プロピレン単独重合体部分と、エチレン及び必要に応じて加えられる他のα-オレフィンと、を共重合することによって、結晶性プロピレン単独重合体部分と結合したプロピレン-エチレンブロック共重合体部分を得る第二工程と、を含む方法等が挙げられる。ここで、他のα-オレフィンとしては、特に限定されることなく、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン等が挙げられる。
上記ポリプロピレン系樹脂は、ポリオレフィン系樹脂とα,β-不飽和カルボン酸又はその誘導体とをラジカル発生剤の存在下、非存在下で溶融状態、溶液状態で30~350℃の温度下で反応させることによって得られる公知の変性(該α,β-不飽和カルボン酸又はその誘導体が0.01~10重量%グラフト又は付加)ポリオレフィン系樹脂を用いてもよく、更に上記したポリプロピレン系樹脂と該変性ポリオレフィン系樹脂の任意の割合の混合物であってもかまわない。
変性ポリオレフィン性便を使う理由としては、樹脂と充填剤(フィラー)の界面の密着性向上等が挙げられる。変性ポリオレフィンを添加することで樹脂と充填剤(フィラー)界面の密着性が向上し、強度を上げることができる。
[(A-a)ポリフェニレンエーテル系樹脂と(A-b-b)ポリプロピレンとの量比]
本実施形態において、(A-a)成分と(A-b-b)成分との好ましい含有量比率は、(A-a)成分と(A-b-b)成分の総量を100質量部としたときに、(A-a)成分の含有量が10~70質量部、(A-b-b)成分の含有量が30~90質量部である。より好ましくは、(A-a)成分の含有量が10~60質量部であり、(A-b-b)成分の含有量が40~90質量部であり、更に好ましくは、(A-a)成分の含有量が10~50質量部であり、(A-b-b)成分の含有量が50~90質量部の範囲内である。(A-a)成分と(A-b-b)成分との含有比がこの範囲であると、耐衝撃性、耐熱性、引張強度のバランスに優れ好ましい。
なお、樹脂組成物中のこれらの比率は、フーリエ変換型赤外分光(FT-IR)を用いて検量線法により求めることができる。
[(A-b-c)ポリフェニレンスルフィド樹脂]
本実施形態で用いられる(A-b-c)ポリフェニレンスルフィド樹脂は、その製造方法によりリニア型ポリフェニレンスルフィド樹脂(以下、リニアPPSと略記する場合がある。)および架橋型ポリフェニレンスルフィド樹脂(以下、架橋PPSと略記する場合がある。)に二分される。
[[リニアPPS]]
前者のリニアPPSは、下記化学式(1)で示されるアリーレンスルフィドの繰返し単位を通常50モル%以上、好ましくは70モル%以上、更に好ましくは90モル%以上を含む重合体である。
[-Ar-S-] ・・・(1)
(ここで、Arはアリーレン基を示し、アリーレン基として、例えばp-フェニレン基、m-フェニレン基、置換フェニレン基(置換基としては炭素数1~10のアルキル基、フェニル基が好ましい。)、p,p’-ジフェニレンスルホン基、p,p’-ビフェニレン基、p,p’-ジフェニレンカルボニル基、ナフチレン基等が挙げられる。)
リニアPPSは構成単位であるアリーレン基が1種であるホモポリマーであってもよく、加工性や耐熱性の観点から、2種以上の異なるアリーレン基を混合して用いて得られるコポリマーであってもよい。中でも、主構成要素としてp-フェニレンスルフィドの繰り返し単位を有するリニアPPSが、加工性、耐熱性に優れ、且つ、工業に入手が容易なことから好ましい。
このリニアPPSの製造方法は、通常、ハロゲン置換芳香族化合物、例えばp-ジクロルベンゼンを硫黄と炭酸ソーダの存在下で重合させる方法、極性溶媒中で硫化ナトリウムあるいは硫化水素ナトリウムと水酸化ナトリウムの存在下で、又は硫化水素と水酸化ナトリウムあるいはナトリウムアミノアルカノエートの存在下で重合させる方法、p-クロルチオフェノールの自己縮合等が挙げられるが、中でもN-メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒やスルホラン等のスルホン系溶媒中で硫化ナトリウムとp-ジクロルベンゼンを反応させる方法が好ましい。
これらの製造方法は公知あり、例えば、米国特許第2513188号明細書、特公昭44-27671号公報、特公昭45-3368号公報、特公昭52-12240号公報、特開昭61-225217号公報および米国特許第3274165号明細書、さらに特公昭46ー27255号公報、ベルギー特許第29437号明細書、特開平5-222196号公報、等に記載された方法やこれらの文献等に例示された先行技術の方法でリニアPPSを得ることが出来る。
好ましいリニアPPSは、塩化メチレンによる抽出量が0.7質量%以下、好ましくは0.5質量%以下であり、且つ、末端-SX基(Sはイオウ原子、Xはアルカリ金属又は水素原子である)が20μmol/g以上、好ましくは20~60μmol/gである。
ここで、塩化メチレンによる抽出量の測定は以下の方法により行うことができる。
リニアPPS粉末5gを塩化メチレン80mLに加え、6時間ソックスレー抽出を実施した後、室温まで冷却し、抽出後の塩化メチレン溶液を秤量瓶に移す。更に、上記の抽出に使用した容器を、塩化メチレン合計60mLを用いて、3回に分けて洗浄し、該洗浄液を上記秤量瓶中に回収する。次に、約80℃に加熱して、該秤量瓶中の塩化メチレンを蒸発させて除去し、残渣を秤量し、この残渣量より塩化メチレンによる抽出量、すなわちリニアPPS中に存在するオリゴマー量の割合を求めることができる。
また、-SX基の定量は以下の方法によって行うことができる。すなわち、リニアPPS粉末を予め120℃で4時間乾燥した後、乾燥リニアPPS粉末20gをN-メチル-2-ピロリドン150gに加えて粉末凝集塊がなくなるように室温で30分間激しく撹拌混合し、スラリー状態にする。かかるスラリーを濾過した後、毎回約80℃の温水1リットルを用いて7回洗浄を繰り返す。ここで得た濾過ケーキを純水200g中に再度スラリー化し、ついで1Nの塩酸を加えて該スラリーのpHを4.5に調整する。
次に、25℃で30分間撹拌し、濾過した後、毎回約80℃の温水1リットルを用いて6回洗浄を繰り返す。得られた濾過ケーキを純水200g中に再度スラリー化し、次いで、1Nの水酸化ナトリウムにより滴定し、消費した水酸化ナトリウム量よりリニアPPS中に存在する-SX基の量を求めることができる。
ここで、塩化メチレンによる抽出量が0.7質量%以下、末端-SX基が20μmol/g以上を満足するリニアPPSの製造方法の具体例としては、特開平8-253587号公報に記載されている、有機アミド系溶媒中でアルカリ金属硫化物とジハロ芳香族化合物とを反応させ、且つ、反応中、反応缶の気相部分を冷却することにより反応缶内の気相の一部を凝縮させ、これを反応溶液上部の液層に還流させることによりオリゴマー成分を減少させる方法が挙げられる。
[[架橋PPS]]
そして、架橋型(半架橋型も含む)ポリフェニレンスルフィド樹脂は、上記したリニアPPSを重合した後に、さらに酸素の存在下でポリフェニレンスルフィド樹脂の融点以下の温度で加熱処理し、酸化架橋を促進してポリマー分子量、粘度を適度に高めたものである。
この架橋PPSの中で最も好ましいのは、本発明で得られる樹脂組成物を成形する際のガス・ヤニ発生の観点および離型性の観点より、320℃溶融状態で捕集される揮発分が1000質量ppm以下の架橋PPSである。ここで言う320℃溶融状態で捕集される揮発分の定量は以下の方法により行うことができる。
すなわち、架橋PPS粉末0.5gを気流入り口と出口を有する密栓付き試験管に秤量し、320℃に加熱したハンダ浴に30分間浸漬しながら、試験管の気流入り口より窒素ガスを100cc/minの流速で注入し、試験管内に発生した架橋型PPSに由来する揮発分を含むガスを試験管の気流出口よりパージし、パージされたガスはアセトンを入れた気流入り口と出口を有する密栓付き試験管の気流入り口より試験管内のアセトン中でバブリングさせ、揮発成分をアセトン中に溶解させる。アセトン中に溶解した架橋PPSの揮発分は、ガスクロマトグラフ質量分析器(GC-MS)を用いて、50℃~290℃の昇温分析をして検出される全成分をモノクロロベンゼンと同一感度と仮定して定量し、架橋PPS中の揮発分を求めることができる。
この320℃溶融状態で捕集される揮発分が1000質量ppm以下の架橋PPSを得るには、通常、リニアPPSを重合する段階のポリマー濃度、溶媒組成を工夫したり、重合した段階でポリマーを回収する洗浄方法を工夫したり、その後の架橋段階での高温処理の温度、時間などを変化させる。このようにして所望の揮発分を有する架橋PPSを得ることができる。
[[酸変性されたPPS]]
更にこれらのPPS(リニアPPS、架橋PPS)は酸変性されたPPSでも構わない。ここで酸変性したPPSとは、上記PPSを酸化合物で変性する事によって得られるものであり、該酸化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸又はその無水物や、飽和型の脂肪族カルボン酸や芳香族置換カルボン酸等が挙げられる。さらに、酢酸、塩酸、硫酸、リン酸、ケイ酸、炭酸等の無機化合物系の酸化合物も該酸化合物として挙げることができる。
[[PPSの溶融粘度]]
上記したリニアPPS、架橋PPSのそれぞれの300℃における溶融粘度は、1~10000Pa・s、好ましくは50~8000Pa・s、より好ましくは100~5000Pa・sのものが使用できる。
明細書中、溶融粘度とは、JIS K-7210を参考試験法とし、フローテスター((株)島津製作所製CFT-500型)を用いて、PPSを300℃、6分間予熱した後、荷重196N、ダイ長さ(L)/ダイ径(D)=10mm/1mmで測定した値を指す。
[(A-c)ポリフェニレンエーテル以外の非晶熱可塑性樹脂]
[[(A-c-a)ポリスチレン系樹脂]]
本実施形態の(A)マトリクス樹脂は、ポリスチレン系樹脂を含んでもよい。ポリスチレン系樹脂としては、アタクチックポリスチレン、ゴム補強されたポリスチレン(ハイインパクトポリスチレン、HIPS)、スチレン含有量が50重量%以上のスチレン-アクリロニトリル共重合体(SAN)、及び該スチレン-アクリロニトリル共重合体がゴム補強されたABS樹脂等が挙げられ、アタクチックポリスチレン及び/又はハイインパクトポリスチレンが好ましい。
上記ポリスチレン系樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、上記ポリスチレン系樹脂には、後述の(A-c-d)スチレン-グリシジルメタクリレート共重合体は含まれない。
本実施形態における、(A-c-a)ポリスチレン系樹脂の好ましい含有量は、(A-a)ポリフェニレンエーテル系樹脂を100質量部としたときに、0~100質量部であり、より好ましくは0~90質量部であり、さらに好ましくは0~80質量部である。
[[(A-c-b)芳香族ビニル単量体単位を主体とするブロックを少なくとも1つと、共役ジエン単量体単位を主体とするブロックを少なくとも1つとを含む、ブロック共重合体、及び/又は、該ブロック共重合体の水素添加物]]
本実施形態では、(A-c-b)芳香族ビニル単量体単位を主体とするブロックを少なくとも1つと、共役ジエン単量体単位を主体とするブロックを少なくとも1つとを含む、ブロック共重合体、及び/又は、該ブロック共重合体の水素添加物(以下、単に「(A-c-b)成分」と称する場合がある)をさらに含んでいてもよく、含んでいることが好ましい。本実施形態における(A-c-b)芳香族ビニル単量体単位を主体とするブロックを少なくとも1つと、共役ジエン単量体単位を主体とするブロックを少なくとも1つとを含む、ブロック共重合体、及び/又は、該ブロック共重合体の水素添加物とは、芳香族ビニル単量体単位を主体とする少なくとも1つの芳香族ビニル重合体ブロックと共役ジエン単量体単位を主体とする少なくとも1つの共役ジエン重合体ブロックとを含む非水素化ブロック共重合体及び/又は該ブロック共重合体の水素添加物をいう。
なお、上記の芳香族ビニル重合体ブロックに関して「芳香族ビニル単量体単位を主体とする」とは、当該ブロックにおいて、50質量%以上が芳香族ビニル単量体単位であるブロックを指す。より好ましくは芳香族ビニル単量体単位が70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、最も好ましくは90質量%以上である。
また、上記共役ジエン重合体ブロックの「共役ジエン単量体単位を主体とする」に関しても同様で、50質量%以上が共役ジエン単量体単位であるブロックを指す。より好ましくは共役ジエン単量体単位が70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、最も好ましくは90質量%以上である。
また、上記の芳香族ビニル重合体ブロックは、例えば、芳香族ビニル重合体ブロック中にランダムに少量の共役ジエン化合物が結合されてなる共重合体ブロックであってもよい。また、上記の共役ジエン重合体ブロックの場合も同様に、例えば、共役ジエン重合体ブロック中にランダムに少量の芳香族ビニル化合物が結合されてなる共重合体ブロックであってもよい。
芳香族ビニル単量体単位を形成するために用いる芳香族ビニル化合物としては、特に制限はなく、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン等が挙げられ、これらから選ばれた1種以上の化合物が用いられるが、中でもスチレンが特に好ましい。
共役ジエン重合体ブロックを形成するために用いる共役ジエン化合物としては、特に制限はなく、例えば、ブタジエン、イソプレン、ピペリレン、1,3-ペンタジエン等が挙げられ、これらから選ばれた1種以上の化合物が用いられるが、中でもブタジエン、イソプレン及びこれらの組み合わせが好ましい。
上記ブロック共重合体の共役ジエン重合体ブロック部分のミクロ構造は、1,2-ビニル含量もしくは1,2-ビニル含量と3,4-ビニル含量との合計量(全ビニル結合量)が5~85%であることが好ましく、10~80%であることがより好ましい。
なお、全ビニル結合量は、赤外分光光度計を用いて測定することができる。
上記ブロック共重合体の水素添加物(水素化ブロック共重合体)の製造に用いる非水素化ブロック共重合体は、芳香族ビニル重合体ブロック(A)と共役ジエン重合体ブロック(B)が、A-B型、A-B-A型、A-B-A-B型から選ばれる結合形式を有するブロック共重合体であることが好ましい。これらの内、異なる結合形式を有するブロック共重合体を組み合わせて用いても構わない。これらの中でもA-B-A型、A-B-A-B型から選ばれる結合形式を有することがより好ましく、A-B-A型の結合形式を有することがさらに好ましい。
また、本実施形態で使用する(A-c-b)成分は、部分的に水素添加されたブロック共重合体(部分水素化ブロック共重合体)であることが好ましい。
部分水素化ブロック共重合体とは、上述の非水素化ブロック共重合体を水素添加処理することにより、共役ジエン重合体ブロックの脂肪族二重結合を、0%超100%未満の範囲で制御したものをいう。該部分水素化ブロック共重合体の好ましい水素添加率は50%以上100%未満であり、より好ましくは80%以上100%未満、最も好ましくは98%以上100%未満である。
さらに、本実施形態で使用する(A-c-b)成分は、数平均分子量が30,000以上300,000未満であることが好ましい。これがこの範囲にあると、流動性、衝撃強度、及び難燃性に優れた組成物を得ることができる。
樹脂組成物中の(A-c-b)成分の数平均分子量の評価方法を以下に示す。すなわち、(A-c-b)成分には良溶解性を示し、且つ、(A-a)ポリフェニレンエーテル系樹脂には難溶性を示す溶剤、例えばクロロホルムを用いて(A-c-b)成分を分取する。これを、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定装置[GPC SYSTEM21:昭和電工(株)製]を用いて、紫外分光検出器[UV-41:昭和電工(株)製]で測定し、標準ポリスチレンで換算して数平均分子量を求める。
なお、測定条件は下記のとおりとしてよい[溶媒:クロロホルム、温度:40℃、カラム:サンプル側(K-G,K-800RL,K-800R)、リファレンス側(K-805L×2本)、流量10mL/分、測定波長:254nm、圧力15~17kg/cm)]。
また、数平均分子量の測定の際、重合時の触媒失活による低分子量成分が検出されることがあるが、その場合は分子量計算に低分子量成分は含めない。当該低分子量成分は、分子量3000以下の成分を指すものとする。通常、計算された正しい分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)は1.0~1.1の範囲内である。
これら本実施形態中で用いることのできる、(A-c-b)成分としてのこれらブロック共重合体は、本実施形態の趣旨に反しない限り、結合形式の異なるもの、芳香族ビニル化合物種の異なるもの、共役ジエン化合物種の異なるもの、1,2-結合ビニル含有量もしくは1,2-結合ビニル含有量と3,4-結合ビニル含有量の異なるもの、芳香族ビニル化合物成分含有量の異なるもの、水素添加率の異なるもの等の各々について2種以上を混合して用いても構わない。
また、本実施形態で用いることのできる、(A-c-b)成分としてのこれらブロック共重合体は、全部又は一部が変性されたブロック共重合体であっても構わない。
ここでいう変性されたブロック共重合体とは、分子構造内に少なくとも1個の炭素-炭素二重結合又は三重結合、及び少なくとも1個のカルボン酸基、酸無水物基、アミノ基、水酸基又はグリシジル基を有する、少なくとも1種の変性化合物で変性されたブロック共重合体を指す。
該変性されたブロック共重合体の製法としては、ラジカル開始剤の存在下又は不存在下で、(1)ブロック共重合体の軟化点温度以上、250℃以下の温度範囲で変性化合物と溶融混練し反応させる方法、(2)ブロック共重合体の軟化点以下の温度で、ブロック共重合体と変性化合物を溶液中で反応させる方法、(3)ブロック共重合体の軟化点以下の温度で、ブロック共重合体と変性化合物を溶融させることなく反応させる方法等が挙げられ、これらいずれの方法でも構わないが、(1)の方法が好ましく、さらには(1)の中でもラジカル開始剤存在下で行う方法が最も好ましい。
ここでいう「分子構造内に少なくとも1個の炭素-炭素二重結合又は三重結合、及び少なくとも1個のカルボン酸基、酸無水物基、アミノ基、水酸基又はグリシジル基を有する少なくとも1種の変性化合物」としては、変性されたポリフェニレンエーテルで述べた変性化合物と同じものが使用できる。
本実施形態における、(A-c-b)成分の好ましい含有量は、(A-a)ポリフェニレンエーテル系樹脂を100質量部としたときに、1~40質量部であり、より好ましくは2~35質量部であり、さらに好ましくは2~30質量部である。
また、本実施形態では、低誘電正接を保ちながら誘電率をコントロール可能とする観点から、前記(A)熱可塑性樹脂100質量%に対する、前記(A-a)ポリフェニレンエーテル系樹脂と前記(A-c-b)成分との合計含有量は、20質量%以上であることが好ましく、25質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましい。
[[(A-c-c)エチレン-αオレフィン共重合体]]
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物には、エチレンとエチレン以外のα-オレフィンとの共重合体(エチレン-αオレフィン共重合体:以下、単に「(A-c-c)成分」と称する場合がある)を含むことができる。
ここで、得られる樹脂組成物の耐薬品性、耐衝撃性の観点から、(A-c-c)成分を構成するモノマー単位として、プロピレン単位は含まれないことが好ましい。なお、「オレフィンからなるオレフィン系重合体」において「プロピレン単位は含まれない」とは、発明の効果を阻害しない程度のプロピレンを構成単位として含む場合も含まれ、例えば、(A-c-c)成分中の(A-c-c)成分を構成する全構成単位中のプロピレン単位の含有量が、0.1質量%未満であることをいう。
(A-c-c)成分としては、例えば、エチレンと、1種又は2種以上のC3~C20のα-オレフィンとの共重合体等が挙げられる。中でも、エチレンと、1種又は2種以上のC3~C8のα-オレフィンとの共重合体であることがより好ましく、エチレンと、1-プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン及び1-オクテンからなる群から選択される1種又は2種以上のコモノマーとの共重合体であることがさらに好ましく、エチレンと1-ブテンとの共重合体であることが特に好ましい。かかる共重合体を(A-c-c)成分として用いることで、より高い衝撃性とより高い耐薬品性とを有する樹脂組成物が得られる傾向にある。
(A-c-c)成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、(c)成分として、2種以上のエチレン-α-オレフィン共重合体を用いてもよい。
(A-c-c)成分中のエチレンの含有量は、樹脂組成物の柔軟性の観点から、オレフィン系重合体全量に対して、5~95質量%が好ましく、より好ましくは30~90質量%である。
(A-c-c)成分中のエチレン以外のα-オレフィンの含有量は、特に限定されず、樹脂組成物の柔軟性の観点から、オレフィン系重合体全量に対して、5質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、また、樹脂組成物の剛性の観点から、50質量%以下であることが好ましく、48質量%以下であることがより好ましい。
(A-c-c)成分の脆化温度は、-50℃以下であり、一層優れた耐衝撃性と耐薬品性が得られる観点から、-60℃以下であることが好ましく、-70℃以下であることがより好ましい。
なお、上記脆化温度は、ASTM D746に準じて測定することができる。
[[(A-c-d)スチレン-グリシジルメタクリレート共重合体]]
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物には、(A-c-d)スチレン-グリシジルメタクリレート共重合体(以下、単に「(A-c-d)成分」と称する場合がある)を含むことができる。(A-c-d)成分は、(A-a)ポリフェニレンエーテル系樹脂と(A-b-c)ポリフェニレンスルフィド樹脂との混和剤として働く。
(A-c-d)成分は、モノマー成分としてスチレン及びグリシジルメタクリレートを含む共重合体であればその他のモノマー成分を含んでいてもよいが、スチレン由来の構造とグリシジルメタクリレート由来の構造との合計含有量が65~100質量%の共重合体が好ましい。当該含有量は75~100質量%であることがより好ましく、100質量%であってもよい。
また、(A-c-d)成分は、グリシジルメタクリレート由来の構造を0.3~20質量%含むことが好ましく、より好ましくは1~15質量%、さらに好ましくは3~10質量%含む。
[(B)無機充填剤]
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物では、上記した成分のほかに、必要に応じて無機充填剤を任意の段階で添加することができる。無機充填剤を入れることで、高温時の寸法変化が抑えられる。
無機充填剤としては、ガラス繊維、チタン酸カリウム繊維、石膏繊維、黄銅繊維、セラミックス繊維、ボロンウィスカ繊維、マイカ、タルク、シリカ、炭酸カルシウム、カオリン、焼成カオリン、ウォラストナイト、ゾノトライト、アパタイト、ガラスビーズ、ガラスフレーク、酸化チタン等の繊維状、粒状、板状、あるいは針状の無機質強化材が挙げられ、特に、異方性の少ない充填剤を用いることが好ましい。これら無機充填剤は2種以上組み合わせて用いることができる。これらの中でより好ましい無機充填剤としては、ガラス繊維、炭素繊維、ガラスビーズ、が挙げられる。また、無機充填剤はシランカップリング剤等の表面処理剤を用いて公知の方法で表面処理した物を用いても構わない。ただし、天然鉱石系充填剤は、しばしば鉄元素を微量ながら含有することがあるので、精製して鉄元素を除いたものを選定して用いる必要がある。
無機充填剤個々の具体的な好ましい含有量は、熱可塑性樹脂組成物全体を100質量%としたときに、それぞれ、10質量%以上であり、より好ましくは15質量%以上であり、さらに好ましくは20質量%以下である。
また、無機充填剤全体の好ましい含有量としては、熱可塑性樹脂組成物全体を100質量%としたときに、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることがさらに好ましい。
[着色剤]
本実施形態において、樹脂組成物の着色方法には特に制限はなく、公知の有機系染顔料、及び無機顔料から選ばれる1種以上の着色剤を使用することができる。
有機染顔料としては、例えば、アゾレーキ顔料、ベンズイミダゾロン顔料、ジアリリド顔料、縮合アゾ顔料等のアゾ系顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、等のフタロシアニン系顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料、キナクリドン顔料、ペリレン顔料、アントラキノン顔料、ペリノン顔料、ジオキサジンバイオレット等の縮合多環系顔料、アジン系顔料、カーボンブラック等が挙げられる。
このうち、カーボンブラックとしては、ジブチルフタレート(DBP)吸収量が250mL/100g未満、好ましくは150mL/100g未満、且つ窒素吸着比表面積900m/g未満、さらに好ましくは400m/g未満であることが好ましい。これらがこの範囲にあると、着色性、機械的強度、難燃性に特に優れた組成物を得ることができる。
ここでいうDBP吸収量、及び窒素吸着比表面積とは、それぞれASTM D2414、JIS K6217に定められた方法で測定した値をいう。
アジン系染料としては、例えばカラーインデックスにおけるソルベントブラック5(C.I.50415、CAS No.11099-03-9)、ソルベントブラック7(C.I.50415:1、CAS No.8005-20-5/101357-15-7)、アシッドブラック2(C.I.50420、CAS No.8005-03-6/68510-98-5)が挙げられる。
無機顔料としては、例えば酸化チタン、酸化亜鉛、酸化クロム等の酸化鉄を除く金属酸化物、チタンイエロー、コバルト青、群青等の複合金属酸化物等が挙げられる。
上記着色剤の好ましい含有量は、樹脂組成物全体を100質量%としたときに、カーボンブラックは2質量%以下、アジン系染料は2質量%以下、無機顔料は8質量%以下である。より好ましい量は、カーボンブラックは1質量%以下、アジン系染料は1質量%以下、無機顔料は5質量%以下である。上記含有量で添加することで、耐衝撃性や機械特性のバランスを良好に保つことができる。また、難燃性が必要な用途の場合は、難燃性の観点より、上記含有量が好ましい。
[(C)その他の成分]
本実施形態の樹脂組成物は、上述の成分以外に、(C)その他の成分として、可塑剤(低分子量ポリオレフィン、ポリエチレングリコール、脂肪酸エステル類等)、帯電防止剤、核剤、流動性改良剤、補強剤、各種過酸化物、展着剤、銅系熱安定剤、ヒンダードフェノール系酸化劣化防止剤に代表される有機系熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、エチレンビスステアリン酸アミド等の滑剤、無水マレイン酸等の変性材等を含むことができる。
(C)その他の成分個々の具体的な好ましい含有量は、樹脂組成物全体を100質量%としたときに、それぞれ、15質量%以下であり、より好ましくは13質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以下である。
また、(C)その他の成分全体の好ましい含有量としては、樹脂組成物全体を100質量%としたときに、30質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることがさらに好ましい。
<熱可塑性樹脂組成物の特性>
以下、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物の特性について述べる。
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物の荷重撓み温度(DTUL)(℃)としては、より大きな値となることが、通信の高速化に伴い、基地局が発する熱が大きくなった際にも変形しづらくなる観点から、好ましい。具体的なDTULとしては、120℃以上であり、130℃以上であることが好ましく、140℃以上であることがより好ましい。
なお、荷重撓み温度(DTUL)は、後述の実施例に記載の方法で測定される値をいう。
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物の誘電正接は、より小さい値となることが、エネルギー損失率低減を示しており、好ましい。
なお、誘電正接は、後述の実施例に記載の方法で測定される値をいう。
また、熱可塑性樹脂組成物の、28GHzにおける誘電正接の温度依存性が下記の条件を満たすことが、通信の高速化に伴い、基地局が発する熱が大きくなった際にも低誘電正接を維持できる観点から好ましい。
1.DTULが120℃以上140℃未満の場合、23℃の時の誘電正接と120℃の誘電正接の値の差が0.004以下
2.DTULが140℃以上の場合、23℃の時の誘電正接と140℃の誘電正接の値の差が0.004以下
上記誘電正接の温度依存性は、熱可塑性樹脂組成物中に低誘電正接且つガラス転移温度が高い熱可塑性樹脂、例えば(A-a)ポリフェニレンエーテル系樹脂を含有させること、等で上記範囲に調整することができる傾向にある。
本実施形態のアンテナ部材に用いられる熱可塑性樹脂組成物は、-30℃から120℃まで温度を上昇させる際の温度を10℃ごとの温度域に分けて、隣り合う二つの温度域の低温度側を低温度域、高温度側を高温度域としたとき、上記低温度域におけるISO 11359に記載の方法で測定される、上記熱可塑性樹脂組成物のTD方向の低温度域膨張率(mm/mm/℃)と、上記高温度域におけるISO 11359に記載の方法で測定される上記樹脂組成物のTD方向の高温度域膨張率(mm/mm/℃)とが、いずれの上記隣り合う二つの温度域においても以下の関係を満たす。
-50≦((高温度域膨張率-低温度域膨張率)/低温度域膨張率)×100≦50
このことで、射出成型によって成形されたアンテナ部材において、金属被覆が温度変化により剥離しづらくなる傾向にあり、温度変化による部品自体の変形も抑えることができる。
上記関係は、
-45≦((高温度域膨張率-低温度域膨張率)/低温度域膨張率)×100≦45
であることがより好ましく、
-40≦((高温度膨張率-低温度域膨張率)/低温度域膨張率)×100≦40
であることがさらに好ましい。
上記温度域は、-30℃から120℃までの温度域を、-30℃から-20℃、-20℃から-10℃、-10℃から0℃、・・・、110℃から120℃と、15個に分けた温度域をいう。また、隣り合う二つの温度域とは、15個に分けた温度域のうちの隣り合う二つの温度域の14種の組み合わせのいずれかをいう。
上記関係は、15個に分けた温度域から選択される、隣り合う二つの温度域の全ての組み合わせ(14の組み合わせ)において、満たすものとする。
なお、ISO 11359に記載の方法で測定される上記樹脂組成物のTD方向の膨張率は、後述の実施例に記載の方法で調製した試験片を用いて、後述の実施例に記載の条件で測定される値をいうものとする。
熱可塑性樹脂組成物に、ガラス転移温度が高く、非晶の熱可塑性樹脂であるポリフェニレンエーテルを含有させることにより、隣り合う温度域での膨張率の変動を小さくさせることができ、上記膨張率の関係を調整することができる。
-30℃から120℃まで温度を上昇させる際の温度を10℃ごとに15個に分けた各温度域におけるISO 11359に記載の方法で測定されたるTD方向の膨張率の平均値(15個の膨張率値の平均値、本明細書において「平均膨張率」と称する場合がある)は、めっきの剥離を抑制できる観点から、10×10-5mm/mm/℃以下であることが好ましく、より好ましくは9×10-5mm/mm/℃以下、さらに好ましくは8×10-5mm/mm/℃以下である。
上記平均値は、低膨張率の樹脂を使用すること、及び無機充填剤の種類や配合量等を調整することにより上記範囲内とすることができる。
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、-30℃から120℃まで温度を上昇させる際の温度を10℃ごとに15個に分けた上記温度域におけるISO 11359に記載の方法で測定されるTD方向の膨張率の最大値が、10×10-5mm/mm/℃以下であることが好ましく、より好ましくは2×10-5mm/mm/℃~8×10-5mm/mm/℃である。上記最大値が10×10-5mm/mm/℃以下であると、温度上昇による大きな寸法変化を抑制でき、より金属被覆の剥離も生じにくくなる。
上記最大値は、低膨張率の樹脂を使用すること、及び無機充填剤の種類や配合量等を調整することにより上記範囲内とすることができる。
(樹脂組成物の製造方法)
本実施形態の樹脂組成物は、(A)成分を構成する各成分、さらに必要に応じて着色剤、無機充填剤、その他の成分を溶融混練することにより製造することができる。
溶融混練を行う溶融混練機としては、以下に限定されないが、例えば、単軸押出機、二軸押出機を含む多軸押出機、ロール、ニーダー、ブラベンダープラストグラフ、バンバリーミキサー等による加熱溶融混練機が挙げられるが、特に、混練性の観点から、二軸押出機が好ましい。具体的には、WERNER&PFLEIDERER社製のZSKシリーズ、東芝機械(株)製のTEMシリーズ、日本製鋼所(株)製のTEXシリーズ等が挙げられる。
この際の溶融混練温度は、結晶性樹脂においてはその結晶性樹脂の融点温度以上、非結晶性樹脂においてはそのガラス転移温度以上で加熱溶融して無理なく加工できる温度を選ぶことができ、通常200~370℃の中から任意に選ぶことができる。
押出機を用いた好ましい製造方法を以下に述べる。
押出機のL/D(バレル有効長/バレル内径)は、20以上60以下であることが好ましく、より好ましくは30以上50以下である。
押出機の構成については、特に限定されないが、例えば、原料の流れ方向に対し、上流側に第1原料供給口、該第1原料供給口より下流に第1真空ベント、該第1真空ベントの下流に第2原料供給口を設け(必要に応じて、第2原料供給口の下流に、さらに第3、第4原料供給口を設けてもよい)、さらに該第2原料供給口の下流に第2真空ベントを設けたものが好ましい。特に、第1真空ベントの上流にニーディングセクションを設け、第1真空ベントと第2原料供給口との間にニーディングセクションを設け、第2~第4原料供給口と第2真空ベントとの間にニーディングセクションを設けたものがより好ましい。
上記第2~第4原料供給口への原材料供給方法は、特に限定されるものではないが、押出機第2~第4原料供給口の開放口よりの単なる添加供給よりも、押出機サイド開放口から強制サイドフィーダーを用いて供給する方法がより安定して供給できる傾向にあるため好ましい。
特に、原料に粉体が含まれ、樹脂の熱履歴による架橋物や炭化物の発生を低減したい場合は、押出機サイドから供給する強制サイドフィーダーを用いた方法がより好ましく、強制サイドフィーダーを第2~第4原料供給口に設け、これら原料の粉体を分割して供給する方法がさらに好ましい。
また、液状の原材料を添加する場合は、プランジャーポンプ、ギアポンプ等を用いて押出機中に添加する方法が好ましい。
そして、押出機第2~第4原料供給口の上部開放口は、同搬する空気を抜くための開放口として使用することもできる。
樹脂組成物の溶融混練工程における溶融混練温度、スクリュー回転数に関しては、特に限定されないが、結晶性樹脂においてはその結晶性樹脂の融点温度以上、非結晶性樹脂においてはそのガラス転移温度以上で加熱溶融して無理なく加工できる温度を選ぶことができ、通常200~370℃の中から任意に選び、スクリュー回転数を100~1200rpmとする。
二軸押出機を用いた、本実施形態の樹脂組成物の具体的な製法態様の一つとして、例えば、(A)成分を構成する各成分、原料二酸化チタンを、二軸押出機の第1原料供給口に供給し、加熱溶融ゾーンを熱可塑性樹脂の溶融温度に設定し、スクリュー回転数100~1200rpm、好ましくは200~500rpmにて溶融混練し、溶融混練する方法が挙げられる。また、(A)成分を構成する各成分、原料二酸化チタンを二軸押出機に供給する位置は、上記したように一括して押出機の第1原料供給口から供給してもよく、第2原料供給口、第3原料供給口及び第4原料供給口を設けてそれぞれの成分を分割して供給しても構わない。
さらに、樹脂の酸素存在下における熱履歴による架橋物や炭化物の発生を低減化させる場合、各原材料の押出機への添加経路における個々の工程ラインの酸素濃度を1.0体積%未満に保持することが好ましい。上記添加経路としては、特に限定されないが、具体例としては、ストックタンクから順に、配管、リフィルタンクを保有した重量式フィーダー、配管、供給ホッパー、二軸押出機、といった構成を挙げることができる。上記のような低い酸素濃度を維持するための方法としては、特に限定されないが、気密性を高めた個々の工程ラインに不活性ガスを導入する方法が有効である。通常、窒素ガスを導入して酸素濃度1.0体積%未満に維持することが好ましい。
上述した樹脂組成物の製造方法は、(A)成分中の熱可塑性樹脂がパウダー状(体積平均粒径が10μm未満)の成分を含む場合、本実施形態の樹脂組成物を二軸押出機を用いて製造する際に、二軸押出機のスクリューにおける残留物をより低減する効果をもたらし、さらには上述した製造方法で得られた樹脂組成物において、黒点異物や炭化物等の発生を低減化する効果をもたらす。
本実施形態の樹脂組成物の具体的な製造方法としては、各原料供給口の酸素濃度を1.0体積%未満に制御した押出機を用い、且つ下記1~3のいずれかの方法を実施することが好ましい。
1.本実施形態の樹脂組成物に含まれる(A)成分を構成する各成分の全量を溶融混練し(第一混練工程)、第一混練工程で得られた溶融状態の混練物に対し、原料二酸化チタンの全量を供給し、続けて溶融混練を行う(第二混練工程)、製造方法。
2.本実施形態の樹脂組成物に含まれる(A)成分を構成する各成分の全量及び原料二酸化チタンの一部を溶融混練し(第一混練工程)、第一混練工程で得られた溶融状態の混練物に対し、原料二酸化チタンの残量を供給し、続けて溶融混練を行う(第二混練工程)、製造方法。
3.本実施形態の樹脂組成物に含まれる各成分の全量を溶融混練する方法。
特に、(A)成分に含まれる、(A-a)ポリフェニレンエーテル系樹脂等の一部の熱可塑性樹脂、原料二酸化チタンは粉体状であり、押出機への噛み込み性が悪く、時間当たりの生産量を増やすことが難しい。さらに樹脂の押出機中の滞留時間が長くなることから熱劣化が起きやすい。以上から、上記1、2の製造方法で得られる樹脂組成物は、3の製造方法で得られる樹脂組成物と比較して、二酸化チタンの噛み込み性が改善され、各成分の混合性に優れ、熱劣化による分解、架橋物や炭化物の発生を低減化させることができ、且つ樹脂の時間当たりの生産量を上げることができ、生産性、品質が優れた樹脂組成物が得られるため、より好ましい。
[射出成形体、アンテナ部材]
本実施形態の射出成形体は、上述の熱可塑性樹脂組成物よりなる。本実施形態の射出成形体の製造方法は、射出成形によるものである以外、特に限定されない。射出成形においては、射出発泡成形を行い、更に軽量化することもできる。化学発泡・物理発泡共に有効であり、軽量化に貢献することができる。
また、このような方法で製造された射出成形体の表面に、金属被覆を形成した形態で使用することを想定する。
本実施形態のアンテナ部材は、上記射出成形体を1つ又は複数有する。アンテナ部材は、複数の成形品が嵌合している構造を有していてよい。
本実施形態のアンテナ部材は、上記射出成形体を有することで、アンテナ部品の中でも特にアンテナフィルターやアンテナ素子(振り子)等、めっき処理が必要で高温に晒される部品への展開が容易になる。特に、膨張率が本実施形態に規定した隣り合う二つの温度域の関係を示す材料を使うことで、温度上昇時の金属被覆の剥離や形状変化を防止でき、好ましい。
[アンテナ部材の金属被覆]
上記アンテナ部材の少なくとも一部を金属被覆する方法は特に限定されず、従来公知の方法が用いられ得る。乾式めっき又は湿式めっきにより絶縁層上に金属被覆を形成可能である。湿式めっきの場合は、まず、射出成形体の表面を、過マンガン酸塩(過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウム等)、重クロム酸塩、オゾン、過酸化水素/硫酸、硝酸等の酸化剤で粗化処理(エッチング処理)し、凸凹のアンカーを形成する。酸化剤としては、特に過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウム等の水酸化ナトリウム水溶液(アルカリ性過マンガン酸水溶液)が好ましく用いられる。次いで、無電解めっきと電解めっきとを組み合わせた方法で金属被覆を形成する。また金属被覆したいパターンとは逆パターンのめっきレジストを形成し、無電解めっきのみで金属被覆を形成することもできる。その後のパターン形成の方法として、例えば、当業者に公知のサブトラクティブ法、セミアディティブ法などを用いることができる。
乾式めっきとしては、蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の公知の方法を使用することができる。物理的気相蒸着法(PVD法)、化学的気相蒸着法(CVD法)、液相成長法などが主に挙げられる。例えば、物理的気相蒸着法(PVD法)としては真空蒸着法、分子線エピタキシー法(MBE法)、スパッタリング法、イオン化蒸着法、レーザーアブレーション法、イオンクラスタービーム法などが挙げられ、化学的気相蒸着法(CVD法)としては熱CVD法、プラズマCVD法、有機金属CVD法(MOCVD法)、化学輸送法(CVT法)、基板反応法などが挙げられ、液相成長法としては液相エピタキシー法、トラベリングソルベント法、ソース電流制御法などが挙げられる。その他の方法として、無電解めっき法などを挙げることができる。上記の方法の中では、膜厚の制御、膜質の制御、汎用性、生産性などの点から、真空蒸着法、スパッタリング法、プラズマCVD法が好ましい。
真空蒸着法は、電子ビームや抵抗加熱器で膜を形成するターゲットを加熱蒸発させて、基板に堆積成膜させる方法である。蒸着時の初期真空度を1×10-2Pa以下、好ましくは1×10-3Pa以下にまで減圧した後、0.5~100Å/秒で蒸着する事が好ましい。
スパッタリング法は、非熱平衡グロー放電プラズマ雰囲気やイオン源からのイオンビームによって供給されるアルゴンイオン等の高運動エネルギー粒子を膜に用いるターゲットに衝突させて、ターゲットの放出粒子を得、基板に堆積成膜する方法である。
プラズマCVD法は、水素化アモルファスSi膜の形成方法として広く用いられている方法である。例えば、シラン(SiH)ガスを高周波グロー放電によって分解して基板に堆積成膜する方法である。放電時の全圧0.1~1torr(13~130Pa)、アルゴン又は水素で希釈されている場合のガス濃度10%以上、ガス流量50~200mL/min、投入パワー数十~数百mW/cmである。
本実施形態の金属被覆に用いられる金属は特に限定されないが、例えば、導電率の高い銅や金を使うことが好ましい。
[アンテナ部材の回路形成]
本実施形態のアンテナ部材は、金属インクの塗布やめっきをして使用されることがある。
本実施形態のアンテナ部材は、金属回路、金属配線、金属基盤からなる群から選ばれる1つ以上を有していてよい。
当該観点から、本実施形態の射出成形体として、金属インク塗布可能である射出成形体が好ましく用いられる。金属インクについては、金、銀、銅を問わず使用することができる。更には、複数の金属を含むインクを使用することもできる。
めっきについても同様で、いかなる金属においても使用することができる。導電性の観点からは銅が好まれて使用されるが、鉛や錫、金、銀も使用可能である。
本実施形態のアンテナ部材は、銅害防止性が高く、吸水率が少ない傾向にあるため、上記金属インクの塗布やめっき後の割れを低減することができる。
たとえば、金属インクを塗布したのちに様々な方法で樹脂に密着させる方法がある。レーザーを使用して密着させる方法等、耐熱性が必要な方法でも本実施形態のアンテナ部材であれば使用可能である。
たとえば、アンテナ部材にインクジェット法を利用して、導電性金属ペーストにより配線基板の回路パターンの描画形成を行なうことができる。この回路パターン形成方法は公知の方法(例えば特開2002-324966号参照)によればよい。
使用する導電性金属ペーストは、有機溶剤を含む熱硬化性樹脂組成物中に、微細な平均粒子径の金属超微粒子を均一に分散してなる導電性金属ペーストであり、この微細な平均粒子径の金属超微粒子は、その平均粒子径が1~100nmの範囲に選択され、金属超微粒子表面は、かかる金属超微粒子に含まれる金属元素と配位的な結合が可能な基として、窒素、酸素、イオウ原子を含む基を有する化合物1種以上により被覆されているものが好適に使用できる。
上記導電性金属ペーストに含有される、微細な平均粒子径の金属超微粒子には、金、銀、銅、白金、パラジウム、タングステン、ニッケル、タンタル、ビスマス、鉛、インジウム、錫、亜鉛、チタン、アルミニウムからなる群より選択される、一種類の金属からなる微粒子、又は、2種類以上の金属からなる合金の微粒子が好適に使用できる。
回路パターンの形成方法は上記導電性金属ペーストを微小な液滴として、基板上に噴射・塗布して、前記導電性金属ペーストの塗布膜からなる回路パターンを描画する工程と、描画された導電性金属ペーストの塗布膜を、少なくとも前記熱硬化性樹脂の熱硬化がなされる温度において、加熱処理する工程とを有する。
インクジェット方式による描画手段としては、加熱発泡により気泡を発生し、液滴の吐出を行うサーマル方式の描画手段や、ピエゾ素子を利用する圧縮により、液滴の吐出を行うピエゾ方式の描画手段がある。
めっきで回路を形成する場合、レーザー照射部に選択的に銅やニッケル等のめっき処理をすることができる方法がある。
[アンテナ部材の誘電特性]
本実施形態のアンテナ部材は特に高周波領域において、低誘電正接の材料が求められる用途に用いることができる。当該用途では、損失が大きくなると通信機器用部材としての性能が落ちてしまうため、誘電正接のコントロールが重要な技術となる。本実施形態であれば、金属皮膜と密着性を保持しながら高温領域での寸法変化・誘電正接変化が少ない、射出成形により成形されたアンテナ部材を提供可能である。
本実施形態のアンテナ部材は、低周波数から高周波数まであらゆる周波数の情報でも対応できることから、通信機器用アンテナのフィルター又はアンテナ素子(振り子部品)に使用することができる。特に、様々な特性を維持しつつ、これらが低温・高温あるいは湿潤環境でも発揮できることから、屋外用又は屋内用で重量の重いアンテナ基地局に好適に使用することができる。
以下に、実施例及び比較例によって本実施形態をさらに詳細に説明するが、本実施形態はこの実施例に限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例に用いた原材料及び評価方法を以下に示す。
[原材料]
(A-a)ポリフェニレンエーテル(以下、PPE)
(A-a-1)2,6-キシレノールを酸化重合して得られたポリフェニレンエーテル樹脂
該ポリフェニレンエーテル樹脂の還元粘度(0.5g/dL、クロロホルム溶液、30℃測定)は、0.52dL/gであった。Tgは約210℃であった。
(A-a-2)2,6-キシレノールを酸化重合して得られたポリフェニレンエーテル樹脂
該ポリフェニレンエーテル樹脂の還元粘度(0.5g/dL、クロロホルム溶液、30℃測定)は、0.40dL/gであった。Tgは約210℃であった。
(A-a-3)2,6-キシレノールを酸化重合して得られたポリフェニレンエーテル樹脂
該ポリフェニレンエーテル樹脂の還元粘度(0.5g/dL、クロロホルム溶液、30℃測定)は、0.32dL/gであった。Tgは約210℃であった。
(A-b)結晶性樹脂
(A-b-a)ポリアミド
(A-b-a-1)ポリアミド6,6(以下、PA66)
アジピン酸とヘキサメチレンジアミンの等モル塩2400gとアジピン酸100g、及び純水2.5リットルを5リットルのオートクレーブの中に仕込み、良く撹拌した。オートクレーブ内の雰囲気を充分窒素で置換した後、撹拌しながら室温から220℃まで約1時間かけて昇温した。この際、オートクレーブ内のゲージ圧は、水蒸気による自然圧で1.76MPaとなった。続いて、1.76MPa以上の圧にならないよう水を反応系外に除去しながら加熱を続けた。さらに2時間後内温が260℃に到達したら、加熱は続けながら、オートクレーブのバルブの開閉により約40分かけて、内圧が0.2MPaになるまで降圧した。その後、約8時間かけて室温まで冷却した。冷却後オートクレーブを開け、約2kgのポリマーを取りだし、粉砕した。
得られたポリアミドはMw=38700、Mw/Mn=2.1であった。なお、Mw、Mnは、GPC(移動層:ヘキサフルオロイソプロパノール、標準物質:PMMA(ポリメチルメタクリレート))を用いて求めた。
また、特開平7-228689号公報の実施例に記載されている末端アミノ基濃度の測定方法に従い測定した結果、末端アミノ基濃度は38μmol/gであった。Tgは約50℃であった。
(A-b-a-2)ポリアミド9,T(以下、PA9Tと記載する。)
テレフタル酸9743.5g(58.65モル)、1,9-ノナンジアミン8027.8g(51.0モル)、2-メチル-1,8-オクタンジアミン1424.6g(9.0モル)、安息香酸329.7g(2.7モル)、次亜リン酸ナトリウム一水和物19.6g(原料に対して0.1質量%)及び蒸留水5Lを40Lオートクレーブに入れ、窒素置換した。
100℃で30分間撹拌し、2時間かけて内部温度を210℃に昇温した。この時、オートクレーブは22kg/cm2まで昇圧した。そのまま1時間反応を続けた後230℃に昇温し、その後2時間、230℃に温度を保ち、水蒸気を徐々に抜いて圧力を22kg/cm2に保ちながら反応させた。次に、30分かけて圧力を10kg/cm2まで下げ、更に1時間反応させて、極限粘度[η]が0.25dl/gのプレポリマーを得た。これを、100℃、減圧下で12時間乾燥し、2mm以下の大きさまで粉砕した。これを230℃、0.1mmHg下にて、10時間固相重合し、融点が306℃、極限粘度[η]が0.80dl/gであった。また、特開平7-228689号の実施例に記載されているアミノ基末端濃度の測定方法に従い測定した結果、末端アミノ基濃度は20μmol/gであった。Tgは約125℃であった。
(A-b-b)ポリプロピレン
(A-b-b-1)ポリプロピレン MFR=2g/10分のポリプロピレン単独重合体
なお、MFRは、ISO1133に準拠し、温度230℃、荷重2.16kgの条件下で測定した。Tgは約0℃であった。
(A-b-b-2)無水マレイン酸で変性された数平均分子量(Mn):60,000、重量平均分子量(Mw):91,000のポリプロピレン。Tgは約0℃であった。
(A-b-c)ポリフェニレンスルフィド樹脂
(A-b-c-1):溶融粘度(フローテスターを用いて、300℃、荷重196N、L/D=10/1で6分間保持した後測定した値。)が30Pa・s、塩化メチレンによる抽出量が0.7質量%、-SX基量が32μmol/gのp-フェニレンスルフィドの繰り返し単位を有するリニア型のPPS。Tgは約80℃であった。
(A-b-c-2):溶融粘度(フローテスターを用いて、300℃、荷重196N、L/D=10/1で6分間保持した後測定した値。)が60Pa・s、320℃の溶融状態で捕集される揮発分160質量ppmの架橋型のPPS。Tgは約80℃であった。
(A-c)ポリフェニレンエーテル以外の非晶熱可塑性樹脂
(A-c-a)ポリスチレン系樹脂
(A-c-a-1)ハイインパクトポリスチレン(PSジャパン株式会社製H9405)Tgは約100℃であった。
(A-c-a-2)ハイインパクトポリスチレン(ペトロケミカルズ(株)製、商品名「CT-60」)Tgは約100℃であった。
(A-c-a-3)ポリスチレン(PSジャパン株式会社製GPPS 680)Tgは約100℃であった。
(A-c-b)芳香族ビニル単量体単位を主体とするブロックを少なくとも1つと、共役ジエン単量体単位を主体とするブロックを少なくとも1つとを含む、ブロック共重合体、及び/又は、該ブロック共重合体の水素添加物
(A-c-b-1)水添ブロック共重合体(旭化成株式会社製タフテック(商標)H1051)
(A-c-b-2)水添ブロック共重合体(旭化成株式会社製 タフテック(商標)H1081)
(A-c-b-3)
公知の方法により、重合体ブロックIをポリスチレンからなるものとし、重合体ブロックIIをポリブタジエンからなるものとして、II-I-II-Iのブロック構造を有するブロック共重合体を合成した。公知の方法により、合成したブロック共重合体に水素添加を行った。重合体の変性は行わなかった。得られた未変性水素添加ブロック共重合体の物性を下記に示す。
水素添加後のブロック共重合体におけるポリスチレンの含有量:44質量%、水素添加後のブロック共重合体の数平均分子量(Mn):95300、重量平均分子量(Mw):113600、水素添加後のポリブタジエンブロックにおける1,2-ビニル結合量(全ビニル結合量):79%、ポリブタジエンブロックを構成するポリブタジエン部分に対する水素添加率:99%
(A-c-b-4)
スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体エラストマー(クラレ株式会社製、セプトン 2023)
(A-c-c)エチレン-αオレフィン共重合体
(A-c-c-1)エチレン?α?オレフィン共重合体(三井化学株式会社製 タフマー P-0680J)
(A-c-d)スチレン-グリシジルメタクリレート共重合体
(A-c-d-1)グリシジルメタクリレートを5質量%含有するスチレン-グリシジルメタクリレート共重合体(重量平均分子量:110,000)
(A-c-e)熱可塑性ノルボルネン樹脂
(A-c-e-1)熱可塑性ノルボルネン系樹脂 (日本ゼオン株式会社製、ZEONEX480)Tgは約140℃であった。
(B)無機充填剤
(B-1)ガラス繊維(日本電気硝子社製 ECS03-T249)
(B-2)ガラス繊維(日本電気硝子社製 ECS03-T747)
(B-3)ガラス繊維(日本電気硝子社製 ECS03-T497)
(B-4)タルク(竹原化学工業製 ハイトロンA)
(B-5)タルク(林化成工業製 タルカンパウダー PK-C)
(B-6)ガラスフレーク(日本板硝子製 「フレカ REFG-301」)
(B-7)ガラスフレーク(日本板硝子製 MEG160FY M06)
(その他の成分)
(C-1)エチレンビスステアリン酸アミド(花王社製「カオーワックスEB-G」)
(C-2)無水マレイン酸(日本油脂(株)製、「クリスタルMAN」)
(C-3)過酸化物(日本油脂株式会社製、「パーヘキサ25B-40」)
[評価方法]
実施例及び比較例で行った各評価試験は、以下のようにして行った。
(1―1)、(1-2)1GHzの誘電率・誘電正接
得られた樹脂組成物のペレットを、シリンダー温度250~350℃に設定した小型射出成形機(商品名:EC75-SXII、東芝機械社製)に供給し、金型温度70~130℃、射出圧力200MPa、射出時間20秒、冷却時間15秒の条件で60mm×60mm×2.0mmの平板を作製した。また、平板を切削し、下記条件で測定した。
測定装置:vector network analyzer HP8510C(アジレント・テクノロジー)
synthesized sweeper HP83651A(同上)
test set HP8517B(同上)
試験片寸法:40mm×4mm×2.0mm
共振器の形状:内径229mm、高さ40mmの円筒
測定方向:1方向
測定周波数:1GHz付近(TM010モード)
前処理:90h/22±1℃/60±5%RH
試験環境:22℃/56%RH
誘電正接は低ければ低いほど性能が良いと判断した。
(1-3)、(1-4)28GHzの誘電率・誘電正接
得られた樹脂組成物のペレットを、シリンダー温度250~350℃に設定した小型射出成形機(商品名:EC75-SXII、東芝機械社製)に供給し、金型温度70~130℃、射出圧力200MPa、射出時間20秒、冷却時間20秒の条件で150mm×150mm×4.0mmの平板を作製し、下記条件で28GHzの誘電率を測定した。
測定周波数:22GHz-33GHz
測定方法:周波数変化法
測定装置:ベクトルネットワークアナライザ(KeysightPNA N5247B10MHz-67GHz)、キーコム社高周波用フリースペースタイプSパラメータ測定治具、制御PC
測定環境条件:室温26℃、湿度50%
(1-5)吸水後の誘電正接
得られた樹脂組成物のペレットを、シリンダー温度250~350℃に設定した小型射出成形機(商品名:EC75-SXII、東芝機械社製)に供給し、金型温度70~130℃、射出圧力200MPa、射出時間20秒、冷却時間20秒の条件で60mm×60mm×0.9mmの平板を作製し、80℃の温水に144時間浸漬した後、下記条件で10GHzの誘電正接を測定した。
測定周波数:10GHz
測定装置:10MHz to 43.5GHz PNA network analyzer N5224B、10GHz Split Post Dielectric Resonator N1501AE10
測定環境条件:室温23℃、湿度50%
(2)荷重撓み温度(DTUL)
得られた樹脂組成物のペレットを、シリンダー温度250~350℃に設定した小型射出成形機(商品名:EC75-SXII、東芝機械社製)に供給し、金型温度70~130℃、射出圧力200MPa、射出時間20秒、冷却時間15秒、ISOダンベル成形条件に準拠した条件及び金型で評価用ISOダンベルを作製した。また、該ISOダンベルを切削し、荷重撓み温度(DTUL)測定用テストピースを作製した。上記荷重撓み温度測定用テストピースを用いて、荷重撓み温度:DTUL(ISO 75:1.80MPa荷重)の測定を行った。
値が大きいほど、耐熱性に優れていると判定した。
(3)めっき性
得られた樹脂組成物のペレットを、シリンダー温度250~350℃に設定した小型射出成形機(商品名:EC75-SXII、東芝機械社製)に供給し、金型温度70~130℃、射出圧力200MPa、射出時間20秒、冷却時間15秒の条件で90mm×50mm×2.5mmの平板を作製した。また、該平板に対し、クロム酸でエッチングした後に、無電解銅めっきを施した。この時、平板全面にめっきが乗った場合に〇、めっきが乗らなかった場合に×と表記し、めっきが乗るものほど通信機器用部品として優れていると判断した。
更には、めっきに対し、-30℃~85℃の間でヒートサイクル試験を各60分、30サイクル行った後に、カッターで×印に切り込みを入れてから、セロハン(登録商標)テープを貼り付け、剥離試験を実施した。この時、目視でめっきが剥がれなかった場合に〇、目視でめっきが剥がれた場合に×と表記し、剥がれなかったものほど通信機器用部品として優れていると判断した。めっきが剥がれたかどうかの判断は、セロハン(登録商標)テープを貼り付け、剥がした部分の面積(100%)において10%以上の面積で樹脂の表面が見えたかどうかで判断した。
(4)28GHzの誘電正接温度依存性
得られた樹脂組成物のペレットを、シリンダー温度250~350℃に設定した小型射出成形機(商品名:EC75-SXII、東芝機械社製)に供給し、金型温度70~130℃、射出圧力250MPa、射出時間20秒、冷却時間15秒の条件で60mm×60mm×0.9mmの平板を作製した。該平板を、切削し、37mm×37mm×0.9mmにして、下記装置を用いて誘電正接を測定した。この時、DTULが120℃以上140℃以下の材料の場合、23℃の時の誘電正接と120℃の誘電正接の値を比べた。DTULが140℃以上の材料の場合、23℃の時の誘電正接と140℃の誘電正接の値を比べた。これらの差が小さいほど通信機器用部品として優れていると判断した。
測定装置:キーサイト・テクノロジー製N5227B PNA マイクロ波ネットワーク・アナライザ67GHz
共振器;FATEC製平衡形円板共振器
恒温槽:エスペック製SU-662
(5)膨張率
得られた樹脂組成物のペレットを、シリンダー温度250~350℃に設定した小型射出成形機(商品名:EC75-SXII、東芝機械社製)に供給し、金型温度70~130℃、射出圧力200MPa、射出時間20秒、冷却時間15秒、ISOダンベル成形条件に準拠した条件及び金型で評価用ISOダンベルを作製した。また、該ISOダンベルから図1に示すように試験片を切り出し、温度23℃、湿度50%RHに調節された実験室内に168時間静置後、ISO11359に記載の方法にて、熱機械分析装置(TMA、商品名TMA/SS6100、SIIテクノロジー社製)を用いて、以下の条件で膨張率を測定した。
100℃で4hアニール処理をしてから、窒素雰囲気下(流量100ml/分)、圧縮荷重3gfにて、-40℃まで冷却後、5℃/分の速度で150℃まで加熱し、TD方向の膨張率を測定した。膨張率は、-30℃から120℃までの10℃ごとの温度域(15個の温度域)に分け、各温度域において測定した。
そして、15個の温度域の膨張率のうち、最も高い値を膨張率の最大値(mm/mm/℃)とし、また、15個の温度域の膨張率の平均値を平均膨張率として(平均膨張率)(mm/mm/℃)算出した。
また、15個の温度域のうち、任意の隣り合う二つの温度域の低温度側を低温度域、高温度側を高温度域としたとき、上記低温度域の膨張率(低温度域膨張率(mm/mm/℃))と上記高温度域の膨張率(高温度域膨張率(mm/mm/℃))とから、以下の式を用いて、低温度域と高温度域との膨張率の変化割合を求め、最も変化割合が大きかった値を、変化割合の最大値(%)とした。
(低温度域と高温度域との膨張率の変化割合)=(高温度域膨張率-低温度域膨張率/低温度域膨張率)×100
上記隣り合う任意の2個の温度域とは、温度-30℃から120℃までを10℃ごとの15個に分けた温度域(-30℃から-20℃、-20℃から-10℃、-10℃から0℃、・・・、110℃から120℃)のうち、隣り合う温度域の14種の組み合わせ(例えば、-30℃から-20℃の低温度域と-20℃から-10℃の高温度域との組み合わせ、-20℃から-10℃の低温度域と-10℃から0℃の高温度域との組み合わせ等)をいう。
(6)高・低温時のアンテナ効率
下記条件にてアンテナ効率のシミュレーションを行った。
アンテナ基材:60× 7 × 1mm3 、全面べたGND、パターン幅1mm、厚さ25μm。
銅+Niメッキ
メイン基板:60× 130 × 1mm3 ,比誘電率 4.0 誘電損失 0.020
厚さ35 μ m 導電率 5.8 × 107 S/m
シミュレーション装置:CST 社の MW STUDIO
動作周波数帯で反射係数が6dB 以下となるよう調整した。
材料の誘電特性(誘電率と誘電正接)
材料の誘電特性は(4)の方法で測定した。

<高温域>
材料のDTULの値に応じて以下の値を用いた。
DTULが120℃以下の材料の場合、100℃の時の誘電特性
DTULが120℃以上140℃以下の材料の場合、120℃の時の誘電特性
DTULが140℃以上の材料の場合、140℃の誘電特性
<低温域>
―30℃の時の誘電特性を用いた。
そして、シミュレーションから4GHzのトータル効率を得て、トータル効率をアンテナ効率とした。トータル効率は0に近いほど好ましく、アンテナとしての性能が高いと言える。
[実施例1~13、比較例1~5]
(A)熱可塑性樹脂、及びその他の成分を表1に示した組成で配合し、二軸押出機ZSK-40(COPERION WERNER&PFLEIDERER社製、ドイツ国)を用いて樹脂組成物の製造を行った。この二軸押出機において、原料の流れ方向に対して上流側に第1原料供給口を設け、これより下流に第1真空ベント、中流に第2原料供給口、その下流に第3原料供給口、さらにその下流に第2真空ベントを設けた。
上記のように設定した押出機を用い、表1及び2に示す組成及び添加方法で各成分を添加し、押出温度250~320℃、スクリュー回転数300rpm、吐出量100kg/時間の条件にて溶融混練し、ペレットを製造した。
得られた樹脂組成物ペレットを用いて、上述の各評価を行った。評価結果を表1および2に示す。
Figure 0007232383000002
Figure 0007232383000003
本発明のアンテナ部材は、アンテナフィルター及びアンテナ素子(振り子)等で好適に使用することができ、産業上の利用可能性を有する。特に、金属皮膜との密着性を保持しながら高温領域での寸法変化・誘電正接変化が少ない、射出成形により成形され、且つ低温・高温・湿潤などあらゆる環境にも適用可能なアンテナ部材として好適に使用することができる。

Claims (14)

  1. 熱可塑性樹脂組成物からなる射出成形体を有し、前記射出成形体の少なくとも一部を金属被覆して用いられるアンテナ部材であり、
    前記熱可塑性樹脂組成物は、(A)熱可塑性樹脂を含み、前記(A)熱可塑性樹脂は、(A-a)ポリフェニレンエーテル系樹脂を含み、
    前記熱可塑性樹脂組成物の荷重撓み温度(DTUL)が120℃以上であり、
    前記熱可塑性樹脂組成物の、-30℃から120℃まで温度を上昇させる際の温度を10℃ごとの温度域に分けて、隣り合う二つの温度域の低温度側を低温度域、高温度側を高温度域としたとき、前記低温度域におけるISO 11359に記載の方法で測定される、前記樹脂組成物のTD方向の低温度域膨張率(mm/mm/℃)と、前記高温度域におけるISO 11359に記載の方法で測定される、前記樹脂組成物のTD方向の高温度域膨張率(mm/mm/℃)が、いずれの前記隣り合う二つの温度域においても以下の関係を満たす、アンテナ部材。
    -50≦((高温度域線膨張率-低温度域線膨張率)/低温度域線膨張率)×100≦50
  2. 前記熱可塑性樹脂組成物の、28GHzにおける誘電正接の温度依存性が下記の条件を満たす、請求項1に記載のアンテナ部材。
    1.DTULが120℃以上140℃未満の場合、23℃の時の誘電正接と120℃の誘電正接の値の差が0.004以下
    2.DTULが140℃以上の場合、23℃の時の誘電正接と140℃の誘電正接の値の差が0.004以下
  3. 前記熱可塑性樹脂組成物の、-30℃から120℃まで温度を上昇させる際の温度を10℃ごとの温度域に分け、各温度域のISO 11359に準拠して測定される、前記樹脂組成物のTD方向の線膨張率の平均値が10×10-5mm/mm/℃以下である、請求項1又は2に記載のアンテナ部材。
  4. 前記熱可塑性樹脂組成物の、-30℃から120℃まで温度を上昇させる際の温度を10℃ごとの温度域に分け、各温度域のISO 11359に準拠して測定される、前記樹脂組成物のTD方向の線膨張率のうち、最大値が10×10-5mm/mm/℃以下である、請求項3に記載のアンテナ部材。
  5. 前記(A)熱可塑性樹脂が、(A-b)結晶性樹脂を含む、請求項1又は2に記載のアンテナ部材。
  6. 前記熱可塑性樹脂組成物が、(B)無機充填剤を10質量%以上含む、請求項1又は2に記載のアンテナ部材。
  7. 前記(A)熱可塑性樹脂が、(A-a)ポリフェニレンエーテル系樹脂を10質量%以上含む、請求項1又は2に記載のアンテナ部材。
  8. 屋外用又は屋内用のアンテナ基地局に用いられる、請求項1又は2に記載のアンテナ部材。
  9. クロム酸エッチング無電解銅めっき加工により金属被覆を形成した、請求項1又は2に記載のアンテナ部材。
  10. クロム酸エッチング無電解銅めっき加工により金属被覆を形成したのち、85℃、湿度85%で2000h放置後に、前記金属層に割れが生じない、請求項1又は2に記載のアンテナ部材。
  11. 前記熱可塑性樹脂組成物が、(A-c-a)ポリスチレン系樹脂を含む、請求項1又は2に記載のアンテナ部材。
  12. 前記熱可塑性樹脂組成物が、(A-c-b)芳香族ビニル単量体単位を主体とするブロックを少なくとも1つと、共役ジエン単量体単位を主体とするブロックを少なくとも1つとを含む、ブロック共重合体、及び/又は、該ブロック共重合体の水素添加物を含む、請求項1又は2に記載のアンテナ部材。
  13. アンテナフィルターである、請求項1又は2に記載のアンテナ部材。
  14. アンテナ素子である、請求項1又は2に記載のアンテナ部材。
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