JP7232274B2 - 回転機械を診断する方法およびシステム - Google Patents

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Description

本明細書に記載する主題は、電気車両用の回転機械の回転構成要素を診断する方法および診断システムに関する。
電気鉄道車両または電気自動車など、電気機械の回転機械における回転構成要素の機械的不良は、重大な損傷の原因となり得る。予期しない不良は、動作の中断、コストの増大、および安全上の問題につながる。この問題を解決するため、回転機械の回転構成要素を監視し、起こっている不良を早い段階で診断する診断システムが必要とされている。
日本国特許出願公開第2017-227492号
特許文献1は、振動測定および異常検出装置について記載している。振動測定デバイスは、鉄道車両に固定され、それぞれの構成要素に取り付けられた振動センサを使用して、車軸箱などの異なる車両部品の振動を測定する。異常検出デバイスは、測定された振動データの周波数分析を実施し、周波数分析のピーク値が所定の閾値を超えた場合、異常があると判定する。
しかしながら、測定データには電磁障害が重畳される場合が多く、その周波数は測定される信号に近すぎて周波数フィルタで除去することができないため、電気鉄道車両で測定されたセンサデータに基づいた正確な不良検出は、依然として大きな課題である。
本明細書に記載する主題の目的は、電気車両用の回転機械の回転構成要素における機械的不良を正確に高い信頼性で診断する、方法および診断システムを実現することである。この課題は、独立請求項による主題によって解決される。更なる好ましい発展が従属請求項によって記載される。
本明細書に記載する主題は、電気鉄道車両または電気自動車などの電気車両に設置されてもよい、回転機械を診断する方法を含む。回転機械は、少なくとも1つの電気モータと、少なくとも1つのインバータと、複数の回転構成要素と、複数の回転構成要素のうち少なくとも1つに搭載された少なくとも1つのセンサと、少なくとも1つの車両制御装置と、少なくとも1つの診断システムとを含んでもよい。
一態様によれば、少なくとも1つのインバータと少なくとも1つの電気モータとの間の電流の絶対値が、所定の電流値以下である場合、少なくとも1つのセンサの少なくとも1つの測定信号が、少なくとも1つの診断システムによって記録されてもよい。好ましくは、モータ電流の絶対値の比較対象である所定の電流値は、定格電流の0%~10%の範囲内であり、最も好ましくは、所定の電流値は定格電流の0%~5%の範囲内である。この場合、電気車両は、慣性のみによって移動する惰性走行モードで動作する。これは、電流が電気モータに供給されないか、もしくは電流が電気モータによって発生しないこと、またはわずかな電流のみがインバータと電気モータとの間を流れることを意味する。結果として、回転構成要素のうち少なくとも1つに取り付けられた少なくとも1つのセンサの測定信号は、インバータの切替え、または電気モータを通る高電流フローにより、電磁障害によって妨害されない。そのため、回転構成要素の機械的不良を精密に検出することができる。
更に、方法は、少なくとも1つのインバータと少なくとも1つの電気モータとの間の電流の絶対値を決定するステップと、電流フローの決定された絶対値が所定の電流値以下である場合、少なくとも1つのセンサの少なくとも1つの測定信号の記録を開始するステップと、を含んでもよい。換言すれば、方法が、インバータと電気モータとの間に電流フローがないか、または少量の電流フローしかないことを検出した場合、少なくとも1つのセンサの測定信号の記録が開始されてもよい。それに加えて、信号が干渉されていないことをダブルチェックするため、記録を開始する前に、測定信号のシーケンスが分析されてもよい。例えば、測定信号が実際に妨害されていないことを確認するために、30秒~2分などの短い測定シーケンスのノイズ電力が決定されてもよい。
次に、測定データが所定時間の間記録されてもよく、所定時間に達すると、記録が停止されてもよい。所定の記録時間は、監視される回転構成要素のタイプ、および測定信号自体に応じて決まってもよい。例えば、不規則性を検出するのに、温度測定は加速度測定よりも長い測定時間を必要とすることがある。好ましくは、所定の記録時間は30秒~30分の範囲内である。
続いて、方法は、少なくとも1つの記録された測定信号を参照信号と比較するステップと、少なくとも1つの記録された測定信号の参照信号からの偏差を計算するステップと、計算された偏差が第1の所定の閾値を超える場合、異常を検出するステップと、を実行してもよい。参照信号は、既定の環境条件下(経路、車両速度、環境温度など)において回転機械の新品状態で記録され、診断システムによって格納された測定信号であってもよい。診断システムによって測定され分析される、異なるセンサおよび回転構成要素に対して、複数の参照信号があってもよい。記録された測定信号に応じて、偏差は、時間ベースの測定信号を格納された参照信号と比較することによって計算されてもよく、現在記録されている測定信号は、例えば、参照信号と比較した環境条件の差に関連して補正されてもよい。計算された偏差は、この場合、特定の時間間隔において現在記録されている測定信号と参照信号との間の差を示す偏差曲線であってもよい。例えば、偏差曲線の平均値が第1の所定の閾値を超えた場合、異常が検出されてもよい。また、計算された偏差曲線の最大値を第1の所定の閾値と比較して、異常を検出することも可能であってもよい。
別の方法として、またはそれに加えて、例えば、測定信号が振動センサからのものである場合、参照信号および現在記録されている測定信号を用いてFFT分析が実施されてもよい。この場合、FFT分析のピーク値を比較して、現在記録されている測定信号と参照信号との間の偏差が計算されてもよい。
監視される回転構成要素の異常を示す第1の所定の閾値は、好ましくは、対応する参照信号から5%~20%偏差の範囲内であってもよい。
少なくとも1つの記録された測定信号、ならびに計算された偏差は、診断システムに格納されてもよい。
上述の手順により、インバータ切替えまたは電気エンジンへの高電流供給によって引き起こされる干渉が測定信号に重畳しない場合のみ、回転構成要素に搭載されたセンサの測定信号を記録することによって、前記回転構成要素の正確な異常検出ができるようになる。
少なくとも1つのインバータと少なくとも1つの電気モータとの間の電流は、少なくとも1つのインバータと少なくとも1つの電気モータとの間に配置されたセンサを使用して決定されてもよい。センサは、インバータおよび/またはモータの電圧を測定する電圧計であってもよい。別の方法として、またはそれに加えて、リードケーブルにおける電流フローを直接測定する電流計が使用されてもよい。
別の方法として、またはそれに加えて、少なくとも1つのインバータと少なくとも1つの電気モータとの間の電流は、電気車両の駆動レバーまたはアクセルペダルの位置に応じて決定されてもよい。駆動レバーまたはアクセルペダルの位置は、電気モータによって引き込まれる電流に対応してもよい。したがって、これらのアクチュエータの出力信号からモータ電流を決定することが可能であってもよい。電力が電気モータに伝達されていない場合、駆動レバー/アクセルペダルはニュートラル位置にあってもよく、それによって惰性走行モードを簡単に検出することが可能になる。
計算された偏差が第2の所定の閾値を超えた場合、診断システムによって警報が出力されてもよい。第2の所定の閾値は、好ましくは、対応する参照信号からの偏差の20%~30%の範囲内であってもよい。
別の方法として、またはそれに加えて、連続して計算された2つの偏差間の相対差が第3の所定の閾値を超えた場合、警報が出力されてもよい。換言すれば、偏差の勾配が評価されてもよく、回転構成要素の急速に増大する欠陥による電気車両の不良を防ぐために、偏差が急速に増加する場合に警報が発せられてもよい。第3の所定の閾値は、好ましくは、連続して計算された2つの偏差間の相対差の5%~50%の範囲内、最も好ましくは10%~30%の範囲内であってもよい。
更に、少なくとも1つの測定信号の記録は、車両速度が第1の所定の速度値以上であって第2の所定の速度値以下である場合に開始されてもよい。これによって、既定の条件で測定信号を捕捉することが可能になって、記録されたデータの比較可能性が改善され、正確な不良の検出ができるようになる。
車両速度は、電気車両の駆動軸または車輪に取り付けられた速度センサによって測定されてもよい。速度センサの測定信号は、車両制御装置および/または診断システムに送信されてもよい。別の方法として、またはそれに加えて、車両速度は、診断システムまたは車両制御装置が受信したGPS信号から決定されてもよい。測定信号に応じて、第1の所定の速度値は、電気車両の最大速度の5%~40%の範囲内であってもよく、第2の所定の速度値は、電気車両の最大速度値の40%~90%の範囲内であってもよい。
更に、記録が所定の時間実施されたとき、少なくとも1つのインバータと少なくとも1つの電気モータとの間で決定された電流が監視されてもよく、決定された電流が所定の電流値以上である場合、少なくとも1つの測定信号の記録は停止されてもよい。換言すれば、少なくとも1つの測定信号の記録の間、電気車両が惰性走行状態のままであるかがチェックされてもよく、これは、決定された電流が所定の電流値以下であることを意味する。
別の方法として、またはそれに加えて、車両速度が監視されてもよく、車両速度が第1の所定の速度値未満または第2の所定の速度値超過である場合、少なくとも1つの測定信号の記録は停止されてもよい。換言すれば、少なくとも1つの測定信号の記録の間、車両速度が所定の範囲内のままであって、比較可能な測定条件が確保されているかがチェックされてもよい。
例えば、測定信号の記録の間、測定されたモータ電流/モータ電圧を規則的な間隔でチェックすることによって、決定された電流の監視が実施されてもよい。別の方法として、またはそれに加えて、駆動レバーまたはアクセルペダルの位置が規則的な間隔でチェックされてもよい。車両速度は、受信した速度信号を偏差に関して規則的な間隔でチェックすることによって、同様の手法で監視することができる。好ましくは、上述した監視すべき値をチェックする時間間隔は、10ms~1分の範囲内である。
少なくとも1つの記録された測定信号は、所定の時間よりも短い時間で記録が停止された場合、消去されてもよい。これは、これらの記録のみが診断システムによって格納されてもよく、それによって、妨害されない測定信号が必要な測定時間にわたって提供されることを意味する。所定の時間に達する前のモータ電流または車両速度の変化によって中断されない記録は、消去されてもよい。これによって、有用でない記録がメモリ空間を占めることが回避される。
本明細書に記載する主題は、更に、入力部と、トリガ部と、データレコーダと、評価部と、出力部と、データ記憶装置とを含む、診断システムを備えてもよい。診断部は、少なくとも1つの測定信号を、複数の回転構成要素のうち少なくとも1つに搭載された少なくとも1つのセンサから、また少なくとも1つの車両制御装置から受信してもよく、上述したような方法を実施してもよい。1つを超える診断システムが電気車両に取り付けられてもよい。診断システムの異なるユニット間の相互作用については、図6に関連して後述する。
更に、本明細書に記載する主題は、少なくとも1つの電気モータと少なくとも1つのインバータとを含む回転機械を備えてもよい。電気モータは、非同期もしくは同期モータ、または電気車両を駆動するのに適した任意の種類の電気モータであってもよい。1つを超える電気モータ、および1つを超えるインバータが、電気車両に取り付けられてもよい。
それに加えて、回転機械は、少なくとも1つのモータ軸と、少なくとも1つの歯車と、少なくとも1つの駆動軸と、少なくとも1つの軸受とを備える、複数の回転構成要素を含んでもよい。更に、回転機械は、複数の回転構成要素のうち少なくとも1つに搭載されてもよい、少なくとも1つのセンサを備えてもよい。少なくとも1つのセンサは、例えば、軸または軸受の不良を示唆することがある特性値を測定するため、電気モータのモータ軸に搭載されてもよい。また、不良の位置を正確に特定するため、更なるセンサを、歯車、駆動軸、および軸受に適用することも可能であってもよい。少なくとも1つのセンサは、加速度センサ、音響センサ、振動速度センサ、歪みゲージ、温度センサ、または回転構成要素を監視し診断するのに適した任意の種類のセンサであってもよい。また、3軸加速度センサ、または温度/圧力センサの組み合わせなど、1つを超える測定信号を送達するセンサを使用することが可能であってもよい。
更に、回転機械は、少なくとも1つの車両制御装置と、上述の診断システムとを含んでもよい。車両制御装置は、電気車両に固定されてもよく、診断システムに電気的に接続されてもよい。また、1つを超える車両制御装置が電気車両に取り付けられること、および診断システムが車両制御装置に含まれるか、またはその逆であることが可能であってもよい。車両制御装置は、電気車両の動作データおよび経路データを含んでもよい。動作データは、車両速度、エンジン負荷、必要な駆動トルクなど、電気車両の動作状態に関する情報を含んでもよい。経路データは、例えば、時刻表、経路案内、および実際の車両位置のGPSデータを含んでもよい。車両制御装置は、必要な車両速度および駆動抵抗に基づいて、電気モータの速度および負荷を制御してもよい。この目的のため、速度センサ、電流センサ、およびインバータなど、多種多様なセンサおよびアクチュエータに接続されてもよい。車両制御装置は更に、空調、ドア開閉装置など、電気車両の追加の機能を制御してもよい。
それに加えて、本明細書に記載する主題は、コンピュータによって実施されると、上述した方法をコンピュータに実施させる命令を含む、メモリに格納可能なコンピュータプログラム製品を含んでもよい。
要約すると、本明細書に記載する主題により、周囲の高電圧構成要素によって引き起こされる干渉によって測定信号が妨害されない場合のみ、回転構成要素に搭載されたセンサの測定信号を記録することによって、前記回転構成要素の正確な異常検出ができるようになる。
以下、添付の例示図面を参照して、本発明の少なくとも1つの好ましい実施例に基づいて、本発明について更に説明する。
台車枠9に搭載された回転機械の概略図である。 電気モータ1の動作中に記録されたセンサ測定信号を示しており、規則振動特性を有する回転構成要素における振動測定値を示した図である。電気エンジンまたはインバータによって引き起こされる干渉を含む場合と含まない場合の、振動センサの測定信号の例を示す図である。 電気モータ1の動作中に記録されたセンサ測定信号を示しており、不規則振動特性を有する回転構成要素における振動測定値を示した図である。 規則振動特性を示す回転構成要素における振動測定値を示した図である。 図2dは、不規則振動特性を示す回転構成要素における振動測定値を示した図である。 従来の異常検出と本明細書に記載する主題による異常検出との比較を概略的に示す図である。 検出された構成要素の不良の2つの起こり得る進展、および特許請求する診断システムの反応を概略的に示す図である。 車両への診断システムの統合を示す概略図である。 診断システムの一例を示す概略図である。 特許請求する方法の第1の例としてのフローチャートである。 特許請求する方法の第2の例としてのフローチャートである。 特許請求する方法の第3の例としてのフローチャートである。
図1は、台車枠9に搭載された回転機械の一例を概略的に示している。図示される回転機械は、電気モータ1と、モータ軸3と、歯車5と、駆動軸6と、2つの軸受8a、8bと、車両制御装置11と、診断システム10とを含む。図示される例では、回転機械のモータ軸3、駆動軸6、および一方の軸受8bは、例えば、異なる回転構成要素の振動を測定する、センサ4a、4b、4cを備える。また、それぞれの構成要素の状態を監視し診断するのに適した、温度または他の値を測定することも可能であってもよい。
電気モータ1は、少なくとも1つのリードケーブル2によってインバータ(図示なし)に接続される。電気モータ1は、非同期もしくは同期モータ、または電気車両13を駆動するのに適した任意の種類の電気モータであってもよい。1つを超える電気モータ1および1つを超えるインバータが、1つを超えるリードケーブル2によって接続されてもよい、電気車両13に取り付けられてもよい。
図2a~2dは、電気エンジンまたはインバータによって引き起こされる干渉を含む場合と含まない場合の、振動センサの測定信号の例を示している。図2aおよび2bは、電気モータ1の動作中に記録されたセンサ測定信号を示しており、図2aは、規則振動特性を有する回転構成要素における振動測定値を示し、図2bは、不規則振動特性を有する回転構成要素における振動測定値を示している。図2bから、測定信号にノイズが重畳されるため、損傷した回転構成要素の振動の不規則性を決定するのは困難であることが明白に推論できる。対照的に、図2cおよび2dは、回転機械に対する電力供給が遮断される電気車両13の惰性走行段階の間に記録されたセンサ測定信号を示している。図2cは、規則振動特性を示す回転構成要素における振動測定値を示し、図2dは、不規則振動特性を示す回転構成要素における振動測定値を示している。惰性走行段階の間、測定信号はインバータノイズによって妨害されないので(図2cを参照)、図2dから推論できるように、振動センサの測定信号から不規則性を精密に決定することができる。
図3では、従来の異常検出と本明細書に記載する主題による異常検出との比較を概略的に示している。従来の異常検出は、電気モータの動作中に記録されたセンサ測定信号を使用する。結果として、測定信号にはインバータノイズが重畳される。妨害された測定信号により、異常を精密に特定することができず、誤検出が起こる。誤検出の発生は、従来の異常検出を使用した振動測定の評価を表す、図3に示される破線に見ることができる。振動センサが監視する構成要素は損傷していないが、従来の異常検出は、例えば日にち(a)において異常を誤って認識する。対照的に、実線によって表される、特許請求する異常検出の方法は、かかる誤検出を示していない。更に、図3から、従来の異常検出では、構成要素の損傷の進展を十分に決定できないことが推論できる。不良の検出が不規則なため、構成要素の損傷の継続的な進展は識別不能である(例えば、日にち(c)および(d)に検出された異常を参照)。対照的に、特許請求する異常検出の方法は、検出される異常の継続的な増大に基づいて、構成要素の不良のプロセスが評価できるようになる(欠陥が進展している図の右側を参照)。これによって、図4から明白であるように、検出された不良の進展に関する診断システム10の適切な反応が可能になる。
図4に示される図は、特許請求する診断システム10によって検出された構成要素の不良がどのように進展するかに関する2つの異なる道筋と、それに対応する診断システム10の反応とを示している。
時間t~tにおける最初の4つの測定点は、監視されている構成要素に不規則性がないことを示しており、決定された偏差値は全て、監視されている構成要素の異常を示す第1の閾値Athreshold1を下回っている。しかしながら、時間tにおける第5の測定点では、決定された偏差は第1の閾値Athreshold1を超えているので、異常が検出されている。結果として、診断システム10は、損傷した構成要素をより緊密に監視するため、測定点t~tの時間間隔を短縮する。実線(白点)で示される不良の進展の場合、不良は緩やかに増大しているので、検出された偏差が、警報につながる第2の閾値Athreshold2を超えるまで、監視されている構成要素を回転機械で更に動作させることができる。対照的に、破線(黒点)で示される不良の進展の場合、異常は急速に増大しているので、診断システム10は、異常が検出された直後に不良勾配閾値ΔAthresholdを超えることによって発せられる警報を出力する。図4に示される破線の曲線から、不良勾配を考慮しなければ、次の測定点tにおける偏差は第2の閾値をはるかに上回っていて、回転機械の重大な誤作動につながっていた可能性があることが明らかになる。したがって、僅差自体の他に偏差の勾配を監視することによって、回転機械の故障を高い信頼性で回避することが可能になる。
図5は、電気車両13への診断システム10の統合を概略的に示している。診断システム10は、電気車両13に固定され、電気車両13の車両制御装置11およびドライバマシンインターフェース12に電気的に接続されてもよい。また、診断システム10が車両制御装置11に統合されること、またはその逆が可能であってもよい。駆動輪軸7の駆動軸6を監視するセンサ4は、診断システム10に接続されてもよい。車両制御装置11は、中でも特に、駆動軸または輪軸7に取り付けられた速度センサ(図示なし)からの速度値を受信してもよい。速度センサは診断システム10にも接続されてもよく、駆動軸を監視するセンサ4は車両制御装置11にも接続されてもよい。更に、車両制御装置11、診断システム10、およびドライバマシンインターフェース12の間でデータが交換されてもよい。例えば、車両制御装置11は、車両速度および駆動レバー位置などの動作データ、ならびに電気車両13の現在位置などの経路データを、診断システム10に送信してもよい。診断システム10は次に、このデータを使用して、センサ測定信号を記録する適切な時間スロットを特定してもよい。更に、診断システム10は、診断結果を車両制御装置11に送信してもよく、続いて車両制御装置が、例えば、回転構成要素の異常が検出されたことにより、電気車両13の減速を開始してもよい。診断システム10が、回転構成要素の欠陥によってもたらされる警報を発した場合、電気車両13の運転者に障害を知らせるため、対応する信号もドライバマシンインターフェース12に伝送されてもよい。
図6は、診断システム10の概略的な一例を示している。図示される診断システム10は、入力部101と、トリガ部102と、データレコーダ103と、評価部104と、出力部105と、データ記憶装置106とを備える。
入力部101は、回転構成要素を監視し診断する、センサ4、4a、4b、4cの信号を受信してもよい。インバータと電気モータ1との間の電流がそれぞれのセンサによって測定される場合、入力部101はこの電流信号も受信してもよい。また、前記電流信号が車両制御装置11に送信されること、または車両制御装置11もしくは診断システム10が、駆動レバーもしくはアクセルペダルの位置に基づいて、インバータと電気モータ1との間の電流を決定することが可能であってもよい。更に、記録パラメータ(例えば、サンプリング周波数、記録時間)および構成要素パラメータ(例えば、構成要素の温度の基準値、振動振幅、振動速度)などの仕様が、入力部101に入力され、データベース106に送信されて格納されてもよい。
トリガ部102は、センサ測定信号の記録をトリガするように構成されてもよい。そのため、車両制御装置11からの動作および経路データ、ならびにインバータと電気モータとの間の電流の決定された値を受信してもよい。動作データは、車両速度、エンジン負荷、必要な駆動トルクなど、電気車両の動作状態に関する情報を含んでもよい。経路データは、例えば、時刻表、経路案内、および実際の車両位置のGPSデータを含んでもよい。トリガ部102は、インバータと電気モータとの間で決定された電流を、電気車両の動作データおよび経路データと併せて分析して、車両状態がセンサ測定信号を記録するのに適切であるか否かを決定してもよい。例えば、インバータと電気モータ1との間で決定された電流が所定の電流値以下である場合、トリガ部102は、センサ測定信号をデータレコーダ103に記録するのを開始する、トリガ信号を伝送してもよい。また、トリガ部102が更に、トリガ信号をデータレコーダ103に伝送する前に、車両速度が所定の範囲内にあるかをチェックしてもよいことも可能であってもよい。更に、トリガ部102が、車両状態が測定信号の記録を開始するのに適切であるか否かを決定するために、駆動レバーの位置または次の停車場までの経路の長さなど、動作データおよび経路データの追加の信号を考慮してもよいことが可能であってもよい。
トリガ信号を受信する際、データレコーダ103は、受信した測定信号の記録を開始してもよく、所定の記録時間の間、記録を実施してもよい。所定の記録時間、サンプリング周波数、および適正な記録を実施するのに必要な他の全ての情報は、データベース106に格納されてもよく、トリガ部102がトリガ信号をデータレコーダ103に伝送すると、データレコーダ103に送信されてもよい。
センサ測定信号を記録した後、データレコーダ103は、記録されたデータを評価部104に伝送して分析してもよい。評価部104は、記録されたデータを前処理し、次に、記録された測定信号のそれぞれの参照信号からの偏差を計算してもよい。参照信号、ならびに偏差が許容範囲内にあるかを示す閾値は、データベース106に格納され、要求された場合に評価部105に伝送されてもよい。参照信号は、既定の環境条件下(経路、車両速度、環境温度など)において回転機械の新品状態で記録されたそれぞれの回転構成要素の測定信号であってもよい。記録された測定信号に応じて、偏差は、時間ベースの測定信号を格納された参照信号と比較することによって計算されてもよく、現在記録されている測定信号は、例えば、参照信号と比較した環境条件の差に関連して補正されてもよい。計算された偏差は、この場合、特定の時間間隔において現在記録されている測定信号と参照信号との間の差を示す偏差曲線であってもよい。別の方法として、またはそれに加えて、参照信号および現在記録されている測定信号を用いて、FFT分析が実施されてもよい。この場合、FFT分析のピーク値を比較して、現在記録されている測定信号と参照信号との間の偏差が計算されてもよい。計算された偏差および記録されたセンサ測定信号は、次に、データベース106に格納されてもよい。
評価部104が、計算された偏差が第1の所定の閾値を上回っていると判定した場合、異常を検出し、この情報を出力部105に伝送してもよい。出力部105は、異常を車両制御装置11に送信してもよく、制御装置はその際、例えば減速することによって、電気車両13の動作パラメータを適応させて、回転機械の故障を回避してもよい。異常もデータベース106に格納されてもよく、センサ測定信号の記録の間のより短い間隔につながってもよい。評価部104が、偏差が第2の所定の閾値を上回っていると判定した場合、出力部105を介して車両制御装置11およびドライバマシンインターフェース12に送信されてもよいような警報を発してもよい。この場合、電気モータ1の電力は大幅に低減されてもよく、事故を回避するため、電気車両13は次の機会に停止されてもよい。
図7は、特許請求する方法の第1の例としてのフローチャートを示している。診断方法を開始した後、インバータと電気モータ1との間の電流が、例えば、モータ電流もしくはモータ電圧を直接測定することによって、または電気車両13の駆動レバー/アクセルペダルの信号を分析することによって、ステップS601で監視される。モータ電流Iの相対値が所定の電流値Ithreshold以下である場合、電気車両13のいくつかの回転構成要素に搭載された異なるセンサ4、4a、4b、4cから送信されてもよい、測定信号が記録される(S602)。記録は、所定の時間tsampleにわたって実施され、その後の測定データが保存される(S603)。後に続くステップ604で、測定データは、取り付けられたセンサ4、4a、4b、4cによって監視される回転構成要素に起こり得る機械的不良に関して分析される。所定の第2の閾値Athreshold2を超える異常Aが検出された場合、例えば、電気車両13のドライバマシンインターフェースに対して、警報が発せられる。異常は、測定信号の参照信号からの偏差に基づいて検出されてもよい。
図8は、特許請求する方法の第2の例としてのフローチャートを示している。特許請求する方法の第2の例は、ステップS601およびS602の間に、センサ測定信号の記録を開始するためには満たさなければならない第2の要件があることを除いて、図7に示される第1の例と同一である。モータ電流の相対値が所定の電流値Ithreshold以下でなければならないという要件に加えて、電気車両13の車両速度は、第1の車両速度vと第2の車両速度vとの間の範囲内でなければならない。これにより、既定の条件下で、より高い信頼性で不良を特定するために、測定信号を記録することが可能になる。
図9は、特許請求する方法の第3の例としてのフローチャートを示している。第3の例では、所定の時間tsampleに達するまでの測定時間tの間、規則的な時間間隔Δtで、測定信号を記録するための要件I≦Ithresholdおよびv>Vvehicle>vがチェックされる。測定時間全体にわたって要件が満たされた場合、更なる手順は第1および第2の例と同一である。測定時間の記録中の特定の時間に要件の少なくとも1つが満たされなかった場合、記録は停止され、方法は最初から開始される。測定データが記録されている場合、ステップ605が実施され、記録されたデータは消去される。データ記録の間は測定条件を監視し、有用でない記録データを消去する追加のステップによって、不良検出の質を更に改善し、無駄な格納空間を回避することが可能になる。
上述のフローチャートに関して、動作は異なる順序で実施されてもよいこと、特定の動作が組み合わされてもよいこと、および特定の動作が重なり合ってもよいことなどが理解されるべきである。一般に、本明細書に記載し、図面に示される、様々な例の全ての特徴は、部分的または全体に組み合わされてもよい。本明細書に記載する主題は、発明的活動を適用することなく当業者にとって明白である限りにおいて、これらの組み合わせも伴うものとする。また、明細書および図面は、提案する方法、デバイス、およびシステムの原理を単に例証するものであることに留意されたい。したがって、当業者であれば、本明細書には明示的に記載も図示もされないが、本明細書に記載する主題の原理を具体化し、その趣旨および範囲内に含まれる、様々な構成を考案できることが理解されるであろう。
再び要約すると、本明細書に記載する主題により、周囲の高電圧構成要素によって引き起こされる干渉によって測定信号が妨害されない場合のみ、回転構成要素に搭載されたセンサ4、4a、4b、4cの測定信号を記録することによって、前記回転構成要素の正確な異常検出ができるようになる。
1 電気モータ
2 リードケーブル
3 モータ軸
4、4a、4b、4c センサ
5 歯車
6 駆動軸
7、7a、7b 車輪、輪軸
8a、8b 軸受
9 台車枠
10 診断システム
11 車両制御装置
12 ドライバマシンインターフェース
13 電気車両
101 入力部
102 トリガ部
103 データレコーダ
104 評価部
105 出力部
106 データ記憶装置

Claims (8)

  1. 少なくとも1つの電気モータと、少なくとも1つのインバータと、複数の回転構成要素と、前記複数の回転構成要素のうち少なくとも1つに搭載された少なくとも1つのセンサと、前記電気モータの速度および負荷を制御する少なくとも1つの車両制御装置と、少なくとも1つの診断システムとを含む、電気車両の回転機械を診断する方法であって、
    前記診断システムの入力部により、前記センサからの測定信号を受信し、
    前記診断システムのトリガ部により、前記入力部から前記センサの測定信号を受信し、前記インバータと前記電気モータとの間の電流の絶対値が、所定の値以下である場合、前記センサからの信号の記憶を開始するトリガ信号を伝送し、
    前記診断システムのデータレコーダ部は、前記トリガ部からのトリ信号に応じて、前記センサの測定信号記録を開始するものであり
    前記入力部は、前記インバータと前記電気モータとの間の前記電流の絶対値を決定し、
    前記データレコーダ部は
    前記決定された絶対値が前記所定の値以下である場合、前記センサの前記測定信号の記録を開始し
    所定の時間にわたって前記測定信号の記録を実施し、
    前記診断システムの評価部は、
    前記記録された測定信号を参照信号と比較し、
    前記記録された測定信号の前記参照信号からの偏差を計算し、
    前記計算された偏差が第1の所定の閾値を超えている場合、異常を検出し、
    前記記録された測定信号および前記計算された偏差を前記診断システムのデータベースに格納し、
    前記評価部は、さらに、前記計算された偏差が第2の所定の閾値を超えた場合、あるいは、連続して計算された2つの偏差の間の相対差が第3の所定の閾値を超えた場合、警報を出力する、電気車両の回転機械を診断する方法。
  2. 請求項に記載の電気車両の回転機械を診断する方法において、
    前記インバータと前記電気モータとの間の前記電流が、前記インバータと前記電気モータとの間に配置されたセンサを使用して決定される電気車両の回転機械を診断する方法。
  3. 請求項に記載の電気車両の回転機械を診断する方法において、
    前記インバータと前記電気モータとの間の前記電流が、電気車両の駆動レバーまたはアクセルペダルの位置に応じて決定される電気車両の回転機械を診断する方法。
  4. 請求項に記載の電気車両の回転機械を診断する方法において、
    前記データレコーダ部は、前記電気車両の速度が第1の所定の速度値以上であって第2の所定の速度値以下である場合、前記測定信号の前記記録を開始する電気車両の回転機械を診断する方法。
  5. 請求項に記載の電気車両の回転機械を診断する方法において、
    前記診断システムは、
    前記測定信号の前記記録を実施するとき、
    前記インバータと前記1つの電気モータとの間の前記決定された電流を監視し、
    前記決定された電流のフローが前記所定の値よりも高い場合、前記測定信号の前記記録を停止する電気車両の回転機械を診断する方法。
  6. 請求項に記載の電気車両の回転機械を診断する方法において、
    前記電気車両の速度を監視するステップと、
    前記電気車両の前記速度が前記第1の所定の速度値未満または前記第2の所定の速度値より高い場合、前記測定信号の前記記録を停止する電気車両の回転機械を診断する方法。
  7. 請求項に記載の電気車両の回転機械を診断する方法において、
    前記所定の時間よりも短い時間で前記記録が停止された場合、前記記録された測定信号が消去される、電気車両の回転機械を診断する方法。
  8. 入力部と、トリガ部と、データレコーダと、評価部と、出力部と、データ記憶装置とを含み、電気モータと前記電気モータの速度および負荷を制御する車両制御装置と電気モータに接続されるインバータと、複数の回転構成要素に搭載されたセンサとに接続される診断システムにおいて、
    前記診断システムの入力部は、前記センサからの測定信号を受信し、
    前記診断システムのトリガ部は、前記入力部から前記センサの測定信号を受信し、前記インバータと前記電気モータとの間の電流の絶対値が、所定の値以下である場合、前記センサからの信号の記憶を開始するトリガ信号を伝送し、
    前記診断システムのデータレコーダ部は、前記トリガ部からのトリ信号に応じて、前記センサの測定信号記録を開始するものであり、
    前記入力部は、前記インバータと前記電気モータとの間の前記電流の絶対値を決定し、
    前記データレコーダ部は、
    前記決定された絶対値が前記所定の値以下である場合、前記センサの前記測定信号の記録を開始し、
    所定の時間にわたって前記測定信号の記録を実施し、
    前記診断システムの評価部は、
    前記記録された測定信号を参照信号と比較し、
    前記記録された測定信号の前記参照信号からの偏差を計算し、
    前記計算された偏差が第1の所定の閾値を超えている場合、異常を検出し、
    前記記録された測定信号および前記計算された偏差を前記診断システムのデータベースに格納し、
    前記評価部は、さらに、前記計算された偏差が第2の所定の閾値を超えた場合、あるいは、連続して計算された2つの偏差の間の相対差が第3の所定の閾値を超えた場合、警報を出力する、診断システム。
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