JP2020008347A - 状態診断装置及び状態診断方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】回転電気機械に対する状態監視の新たな手法を実現すること。【解決手段】例えば、回転電気機械を主電動機20とするならば、インバータ18と主電動機20との間の主回路ケーブルに設けた電流センサ22による検出電流に基づいて主電動機20の対地漏洩電流を検出する。そして、検出した対地漏洩電流に対する周波数分析を行う。その周波数分析結果に基づいて、主電動機20の異常を判定する。【選択図】図1

Description

本発明は、回転電気機械の状態診断装置等に関する。
鉄道車両は、安全性の維持のために定期検査が行われる。また、運行中の異常を速やかに検知し、事故を未然に防ぐことを目的として、鉄道車両に搭載されている各種機器や部品の状態を監視・診断する技術が開発・実用化されている。状態監視の手法としては、監視対象物の機器や部品それぞれに、温度センサや振動センサといった各種センサを取り付ける手法が一般的であった(例えば、特許文献1参照)。
特開2017−26420号公報
従来の手法では、監視対象物に温度センサや振動センサといったセンサを取り付けることでその振動や温度を検知し、これに基づいて監視対象物の状態を診断している。また、監視対象物そのものにセンサを取り付けることから、各センサの検知信号を、処理を行う状態診断装置(CPUユニットなど)に入力するための新規の配線が必要となるとともに、その配線の保守も必要となり、手間であった。
特に、鉄道車両において重点的に監視すべき機器の1つが駆動用機器であり、電気車ならば、回転電気機械である主電動機が駆動用機器である。また、鉄道分野に限らず、産業応用分野においても回転電気機械は広く利用されている。そこで、本発明は、回転電気機械を監視対象物とした場合の状態監視について、従来手法とは異なる新たな手法を実現するために考案されたものである。
上記課題を解決するための第1の発明は、
可変速制御がなされる回転電気機械(例えば、図1の主電動機20)の対地漏洩電流を検出する検出手段(例えば、図10の漏洩電流検出部202)と、
前記検出された対地漏洩電流に対する周波数分析を行う分析手段(例えば、図10の周波数分析部204)と、
前記分析手段の分析結果に基づいて、前記回転電気機械の異常を判定する異常判定手段(例えば、図10の異常判定部206)と、
を備えた状態診断装置である。
他の発明として、
可変速制御がなされる回転電気機械の対地漏洩電流を検出することと、
前記検出された対地漏洩電流に対する周波数分析を行うことと、
前記分析手段の分析結果に基づいて、前記回転電気機械の異常を判定することと、
を含む状態診断方法を構成しても良い。
第1の発明等によれば、回転電気機械の対地漏洩電流に対する周波数分析を行い、その分析結果に基づき回転電気機械の異常を判定することができる。詳細は後述するが、回転電気機械に何からの異常が発生すると、対地漏洩電流に何らかの影響を与える知見が得られた。このため、対地漏洩電流に対する周波数分析を行うことで、対地漏洩電流の変化を検出し、回転電気機械の異常を判定することが可能となる。従来のように監視対象物に温度センサや振動センサを取り付ける必要がなく、またこれらのセンサに対する配線も不要となり、全く新しい手法を実現できる。
第2の発明は、第1の発明の状態診断装置であって、
前記異常判定手段は、前記対地漏洩電流の流路に含まれる軸受の異常を判定可能である、
状態診断装置である。
第2の発明によれば、詳細は後述するが、回転電気機械の軸受に何らかの異常が生じると、この軸受を流路に含む対地漏洩電流に変化が生じる知見が得られた。このことから、対地漏洩電流に基づき、主電動機の異常として軸受の異常を判定することが可能となる。回転電気機械に異常が生じたケースの多くが軸受に関する何らかの異常を含んでいるため、軸受の異常を判定することができる本発明は至便である。
第3の発明は、第1又は第2の発明の状態診断装置であって、
前記検出手段は、前記回転電気機械の主回路ケーブルに設けられた電流センサの検出電流に基づいて前記対地漏洩電流を検出する、
状態診断装置である。
第3の発明によれば、主回路ケーブルに設けられた電流センサの検出電流に基づいて、漏洩電流が検出されるので、状態診断のためのセンサを回転電気機械そのものに取り付ける必要がない。また、回転電気機械の対地漏洩電流は、主回路ケーブルを通じて回転電気機械に印加される電力に応じた値となるから、この主回路ケーブルに取り付けた電流センサによる検出電流に基づいて、回転電気機械の対地漏洩電流を推定的に検出することが可能である。
第4の発明は、第1〜第3の何れかの発明の状態診断装置であって、
前記異常判定手段は、前記回転電気機械の回転速度に応じた異常判定条件を用いて、前記回転電気機械の異常を判定する、
状態診断装置である。
第4の発明によれば、回転電気機械の回転速度が異なると、漏洩電流の変化の仕方が異なり得る。このため、回転速度に応じた異常判定条件を用いることで、回転電気機械の異常を適切に判定することが可能となる。
第5の発明は、第1〜第3の何れかの発明の状態診断装置であって、
前記回転電気機械は、電気車に搭載される主電動機であり、
前記異常判定手段は、前記回転電気機械の回転速度及び動作モードに応じた異常判定条件を用いて、前記回転電気機械の異常を判定する、
状態診断装置である。
第5の発明によれば、電気車に搭載される主電動機の回転速度や動作モードが異なると、漏洩電流の変化の仕方が異なり得る。このため、回転速度に応じた異常判定条件を用いることで、主電動機の異常を適切に判定することが可能となる。
第6の発明は、第4又は5の発明の状態診断装置であって、
前記分析手段は、
前記検出された対地漏洩電流から所定周波数成分を抽出し、
前記異常判定手段は、
前記抽出された所定周波数成分について、前記回転速度に応じて定められた前記異常判定条件を用いて、前記回転電気機械の異常を判定する、
状態診断装置である。
第6の発明によれば、予め、回転電気機械の構造や実験等により、異常によって変化する漏洩電流の周波数帯域が把握できる場合には、その周波数帯域の周波数成分を抽出することで、容易に回転電気機械の異常を判定することが可能となる。
第7の発明は、第1〜第3の何れかの発明の状態診断装置であって、
前記分析手段は、
前記検出された対地漏洩電流に対するオクターブバンド分析を行い、
前記異常判定手段は、
前記オクターブバンド分析の分析結果が、前記回転電気機械の既知状態に対応付けられた所定基準データに適合するか否かに基づいて、前記回転電気機械の異常を判定する、
状態診断装置である。
第7の発明によれば、オクターブバンド分析では広範囲の周波数帯域を対象とした周波数分析を行うことができるので、異常によって変化が生じる周波帯域が把握できなくとも、異常を判定することが可能である。また、既知状態として正常状態と対応付けた所定基準データとすることで、回転電気機械が正常であるか否か、つまり、異常であるか否かを判定することが可能となる。
第8の発明は、第7の発明の状態診断装置であって、
前記所定基準データは、前記回転電気機械の回転速度に応じて分類されており、
前記異常判定手段は、
前記オクターブバンド分析の分析結果が、前記回転速度に応じた前記所定基準データに適合するか否かに基づいて、前記回転電気機械の異常を判定する、
状態診断装置である。
回転電気機械の回転速度が異なると、発生した異常による漏洩電流の変化の仕方が異なり得る。このため、第8の発明によれば、回転速度に応じた所定基準データを用いることで、回転電気機械の異常を適切に判定することが可能となる。
第9の発明は、第7の発明の状態診断装置であって、
前記回転電気機械は、電気車に搭載される主電動機であり、
前記所定基準データは、前記回転電気機械の回転速度及び動作モードに応じて分類されており、
前記異常判定手段は、
前記オクターブバンド分析の分析結果が、前記回転速度及び動作モードに応じた前記所定基準データに適合するか否かに基づいて、前記回転電気機械の異常を判定する、
状態診断装置である。
電気車に搭載される主電動機の回転速度や動作モードが異なると、発生した異常による漏洩電流の変化の仕方が異なり得る。このため、第9の発明のように、回転速度や動作モードに応じた所定基準データを用いることで、主電動機の異常を適切に判定することが可能となる。
第10の発明は、第7〜第9の何れかの発明の状態診断装置であって、
前記異常判定手段による判定結果に基づいて、前記所定基準データを更新する機械学習手段(例えば、図10の異常判定部206)、
を更に備えた状態診断装置である。
第10の発明によれば、回転電気機械が異常であるかの判定結果を既知状態として、オクターブバンド分析結果に対応付けて新たな所定基準データとして追加してゆくことで、回転電気機械を使用しながら、異常判定の精度を高めることができる。
第11の発明は、第1〜第10の何れかの発明の状態診断装置であって、
前記回転電気機械は、電気車に搭載される主電動機であり、
前記電気車の力行時又は回生ブレーキ時の前記対地漏洩電流に基づいて、前記回転電気機械の異常を判定する、
状態診断装置である。
第11の発明によれば、電気車に搭載される主電動機の異常を、電気車の力行時又はブレーキ時における主電動機の対地漏洩電流に基づいて判定することができる。
状態診断装置の適用例。 主電動機の漏洩電流の流路を説明するための図。 漏洩電流から抽出した所定周波数成分の一例。 漏洩電流から抽出した所定周波数成分の一例。 第1の状態診断で用いられる主電動機の回転数と閾値との関係例。 第2の状態診断で用いられるテストデータの算出の説明図。 NNDD法による異常判定の説明図。 第2の状態診断による判定結果の一例。 第2の状態診断による判定結果の一例。 状態診断装置の機能構成図。 閾値テーブルの一例。 状態診断処理のフローチャート。
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態によって本発明が限定されるものではなく、本発明を適用可能な形態が以下の実施形態に限定されるものでもない。また、図面の記載において、同一要素には同一符号を付す。
[概要]
図1は、本実施形態における状態診断装置1の適用例であり、状態診断装置1が搭載された交流電気車の主回路構成を示している。図1に示すように、状態診断装置1は、交流電気車に搭載されて使用される装置であり、電流センサ22の検出電流に基づいて、交流電気車に搭載された回転電気機械の一種である主電動機20の異常を判定するといった状態診断を行う。
交流電気車では、パンタグラフ10によって架線から受電された単相交流電力である架線電力が、主変圧器12によって変圧された後、主変換装置14によって三相交流電力に変換され、駆動電力として主電動機20に供給される。主変換装置14は、コンバータ16と、インバータ18とを有する。コンバータ16は、PWM方式のコンバータであり、主変圧器12による変圧された単相交流電力を直流電力に変換する。インバータ18は、PWM方式のインバータであり、コンバータ16から出力される直流電力を、任意の周波数及び電圧を有する三相交流電力に変換する。インバータ18が出力する三相交流電力の周波数を制御することで、主電動機20の回転数を可変に制御(可変速制御)することができる。
主電動機20は、三相誘導電動機であり、力行時には、インバータ18から供給される三相交流電力によって駆動され、回生時には、発電機として動作し、発生した回生電力をインバータ18へ出力する。なお、図1では、1台のインバータ18によって台車2台分の合計4台の主電動機20を駆動する、いわゆる1C4M方式の交流電気車の例を示しているが、1C2M方式や1C1M方式など、これ以外の方式であっても良い。
電流センサ22は、主変換装置14内であって、インバータ18と主電動機20との間の主回路ケーブルに設けられている。図1では、1台のインバータ18によって4台の主電動機20を駆動する例を示しているが、電流センサ22は、これらの4台の主電動機20それぞれに対応して設けられる。電流センサ22は、例えばクランプ方式の電流センサとして実現可能であり、配線済みの主回路ケーブルの外側から取り付けることで、主回路ケーブルに流れる三相交流電流を検出する。従って、状態診断のために必要となるセンサの取り付けは主変換装置14内で完結するため、遠隔的に主電動機20の状態を診断することが可能となる。すなわち、監視対象物である主電動機20にセンサを取り付ける必要はない。
状態診断装置1は、主電動機20それぞれについて、対応する電流センサ22による検出電流に基づいて当該主電動機20の漏洩電流を検出し、この漏洩電流を用いて状態診断を行う。また、状態診断装置1は、制御ボード(いわゆるCPUボード)として構成することができるため、コンバータ16内やインバータ18内、すなわち主変換装置14内に実装することが可能である。電流センサ22の設置、及び、電流センサ22と状態診断装置1間の配線は、全て主変換装置14内で完結することができる。
主電動機20の漏洩電流は、主電動機20を駆動するインバータ18のスイッチング動作に起因して生じる対地漏洩電流である。すなわち、インバータ18は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やGTO(Gate Turn-Off thyristor)といった半導体スイッチング素子を、PWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)信号によってオンオフ制御することで、直流電力を任意の周波数及び電圧を有する三相交流電力に変換して出力するが、スイッチング動作によって、PWM信号に同期した高周波のコモンモード電圧を発生する。このインバータ18が発生するコモンモード電圧によって、主電動機20の固定子巻線の中性点電位がゼロにならず、主電動機20内部の浮遊容量を介して、固定子巻線からレールに高周波の対地漏洩電流が流れることになる。
図2は、主電動機20の漏洩電流の流路を説明するための台車の概略平面図を示している。図2では、台車枠に2本の車軸それぞれを回転駆動する2台の主電動機20が備えられた動輪2軸の台車を示している。主電動機20の漏洩電流の流路として、次の2つの経路が考えられる。1つ目の経路は、主電動機20の固定子巻線から、固定子201、主電動機20のフレーム203、台車枠251、車軸軸受、車軸254、車輪255を経由してレールに至る経路であり、2つ目の経路は、固定子巻線から、固定子201、固定子フレーム203、電動機軸受205、回転軸206、継手211、歯車装置221、車軸254、車輪255を経由してレールに至る経路である。
主電動機20が故障するケースの多くに、電動機軸受205の故障が含まれる。漏洩電流の経路に含まれる電動機軸受205に何らかの異常が生じると、電動機軸受205に係るインピーダンスの変化によって、主電動機20の漏洩電流に変化が生じる。このことから、本実施形態では、主電動機20の漏洩電流を用いて、電動機軸受205の異常を判定するといった主電動機20の状態診断を行う。
主電動機20の漏洩電流は、インバータ18が発生するコモンモード電圧によって生じる。インバータ18から主電動機20までは電気的に接続された回路であることから、電動機軸受205に係るインピーダンスの変化によって、漏洩電流とともに、コモンモード電流も変化すると考えられる。このことから、本実施形態では、主変換装置14内に設けた電流センサ22によってコモンモード電流を検出し、これを漏洩電流に相当するとして用いることで、主電動機20の状態診断を行う。電流センサ22を主変換装置14内に設けることで、新たに必要な配線は主変換装置14内の配線のみとなり、主電動機20周りに新たな配線をする必要がないため、実用性が向上する。
[状態診断]
次に、状態診断装置1による主電動機20の状態診断について説明する。先ず、電流センサ22による検出電流である三相交流電流の和を求め、これを、主電動機20の漏洩電流とする。そして、時系列の漏洩電流のデータ(以下、漏洩電流データという)に対して、次の2種類の手法による状態診断を行う。
(A)第1の状態診断
第1の状態診断として、漏洩電流データに対する第1の周波数分析を行う。具体的には、漏洩電流データから所定周波数成分を抽出し、これを主電動機20の回転数(回転速度ともいえる)に応じた閾値と比較することで、主電動機20の状態診断を行う。所定の閾値以上であること、を異常判定条件として、抽出した周波数成分が異常判定条件を満たすか否かによって、主電動機20(具体的には、電動機軸受205)が異常であるか否かを判定する。
図3,図4は、実験結果を示す図であり、具体的には、実験によって得られた主電動機20の漏洩電流データから抽出した、中心周波数を1160Hzとする1127Hz〜1193Hzの周波数帯域の周波数成分を示している。また、主電動機20の回転数が異なる複数の場合について実験を行った。図3(a)は、回転数が900[rpm]の場合を示し、図3(b)は、回転数が1800[rpm]の場合を示し、図3(c)は、回転数が2700[rpm]の場合を示し、図4(a)は、回転数が3600[rpm]の場合を示し、図4(b)は、回転数が4500[rpm]の場合を示し、図4(c)は、回転数が5400[rpm]の場合を示している。
また、1つの回転数について、主電動機20の状態を正常状態及び異常状態の2種類の状態とした場合について実験を行った。正常状態については2回の実験を行い、それぞれの結果を実線及び細点線で示しており、異常状態については1回の実験を行い、その結果を太点線で示している。異常状態は、電動機軸受の内輪に意図的に傷を付けることで模擬した状態とした。
図3,図4によれば、電動機軸受が異常状態の場合には正常状態とは漏洩電流が異なることが分かった。また、主電動機20の回転数が異なると漏洩電流データから抽出される所定周波数成分が異なることから、主電動機20の回転数が異なると漏洩電流が異なることが分かった。また、何れの回転数についても、正常状態と異常状態とでは、漏洩電流データから抽出される周波数成分の実効値が異なる。この正常状態と異常状態との周波数成分実効値の違いから、例えばその中間値を、両状態を識別するための閾値として定めることができる。
図5は、主電動機20の回転数と閾値との関係の一例である。図5では、一例として、所定周波数成分を、中心周波数を1160Hzとする1127Hz〜1193Hzの周波数帯域の周波数成分とした場合の例を示している。また、横軸を回転数、縦軸を閾値として、実験によって得られた複数の回転数別の閾値をプロットして作成したグラフを示している。図5に示すように、主電動機20の回転数に応じて異なる閾値が定められている。これは、図3,図4を参照して上述した通り、主電動機20の回転数によって漏洩電流が変化するからである。
(B)第2の状態診断
第2の状態診断として、漏洩電流データに対する第2の周波数分析を行う。具体的には、漏洩電流データに対するオクターブバンド分析を行ってテストデータを生成し、機械学習の手法を利用することで、主電動機20の状態診断を行う。
図6は、テストデータの算出を説明する図である。図6に示すように、先ず、時系列データとして得られる漏洩電流データに対するオクターブバンド分析を行う。オクターブバンド分析では、漏洩電流データに対する所定のバンドパスフィルタ処理を連続的に行うことで、所定の単位期間Δt毎のオクターブバンド分析結果として、周波数帯域(オクターブバンド)毎の電流の大きさ(電流実効値)を得る。次いで、この単位期間Δt毎のオクターブバンド分析結果に対する主成分分析を行い、得られた主成分からなるベクトルを特徴ベクトルとする。つまり、単位期間Δt毎に1つの特徴ベクトルが得られることになり、この特徴ベクトルをテストデータとする。
また、オクターブバンド分析を行った単位期間Δtにおける主電動機20の回転数、及び、動作モードを取得し、当該単位期間Δtに該当する特徴ベクトルに対応付けておく。主電動機20の回転数は、例えば、当該主電動機20が搭載された電気車の走行速度から推定できる。動作モードとは、力行、惰行及びブレーキの運転操作と、そのノッチ数の組み合わせであり、例えば“力行5ノッチ”といったように設定される。
主電動機20が既知状態であるときの漏洩電流データに対するオクターブバンド分析を行って得られた特徴ベクトルの集合を、当該既知状態に対応する所定基準データである学習データとする。そして、テストデータが学習データに適合するか否かを判定することで、主電動機20が既知状態であるか否かを判定する。
より具体的には、正常状態を既知状態とし、機械学習の手法として近傍法の一種であるNNDD(Nearest Neighbor Data Description)法を利用する場合について説明する。図7は、NNDD法による異常判定の概要を説明する図である。図7に示すように、NNDD法では、特徴ベクトルを多次元空間上の1点と考える。診断対象の主電動機20が正常状態であるときの漏洩電流データに基づく特徴ベクトルを学習データとし、これらの集合である学習データ群Gの中から、テストデータXに最も近い学習データAを探す。そして、テストデータXと学習データAとの間の距離を基準距離で除した値(比)を求め、テストデータXが学習データ群Gに対して非類似、すなわち異常であるか否かを判定する。テストデータXが異常である場合、テストデータXと学習データAとの間の距離が大きくなるため、求めた値(比)は、異常か否かの程度を示す異常度(指標値)といえる。
より具体的な実現手法の例としては、テストデータXに最も近い学習データAのみではなく、k番目(k=1〜kNN)に近いkNN個の学習データを用いて、学習データ群Gに対してテストデータXが異常であるか否かを判定する。具体的には、次式(1)に示す異常度算出関数f(X)に従い、テストデータXの異常度fを求める。
Figure 2020008347
式(1)において、「d」は、テストデータXにk番目に近い学習データに対する基準距離である。基準距離dは、次のように定められる。すなわち、学習データそれぞれについて、k番目に近い他の学習データとの距離を算出し、算出したこれらの距離を小さい順に並べたときに99%の順位に位置する学習データとの距離を特定して、これを、k番目に近い学習データに対する基準距離dとする。また、「NN(X)」は、テストデータXにk番目に近い学習データである。そして、式(1)の異常度算出関数f(X)で求めた異常度fが正値であればテストデータXを異常と判定し、異常度fが負値であればテストデータXを正常と判定する。
図8,図9は、第2の状態診断による判定結果の一例である。図8,図9は、何れも、横軸を異常度、縦軸を度数として、異常度別の度数分布を示している。具体的には、実験によって得られた主電動機20の漏洩電流データに対するオクターブバンド分析を行って複数のテストデータを生成し、これら複数のテストデータそれぞれについて、予め用意された学習データを用いたNNDD法により、式(1)に従って異常度fを求めた。“学習データ”としては、主電動機20が“正常状態”であるときの漏洩電流データに基づく特徴ベクトルの集合とした。そして、複数のテストデータを異常度fで分類することで得られる異常度毎のテストデータの数が、図8,図9における縦軸の度数である。
また、主電動機20の回転数が異なる複数の場合について実験を行った。具体的には、図8(a)は、回転数が900[rpm]の場合を示し、図8(b)は、回転数が1800[rpm]の場合を示し、図8(c)は、回転数が2700[rpm]の場合を示し、図9(a)は、回転数が3600[rpm]の場合を示し、図9(b)は、回転数が4500[rpm]の場合を示し、図9(c)は、回転数が5400[rpm]の場合を示している。
また、1つの回転数について、主電動機20の状態を正常状態及び異常状態の2種類の状態とした場合について実験を行った。正常状態の実験結果については実線で示し、異常状態の実験結果については、点線で示している。異常状態は、上述の第1の状態診断の場合と同様に、電動機軸受の内輪に意図的に傷を付けることで模擬した状態である。
式(1)で求められる異常度fは、テストデータXが示す主電動機20の状態として、負値ならば“正常”、正値ならば“異常”であることを示している。従って、図8,図9によれば、主電動機20が“正常状態”である実験結果(実線のグラフ)に着目すると、全ての回転数で、異常度fが負値となっており、主電動機20の状態を“正常”と正しく判定していることがわかる。一方、主電動機20が“異常状態”である実験結果(点線のグラフ)に着目すると、回転数によって判定結果に違いが生じている。すなわち、回転数が“1800rpm”以下では、殆どのテストデータについての異常度fが負値となり、主電動機20の状態を“正常”と間違って判定する可能性がある。しかし、回転数が“2700rpm”以上では、殆どのテストデータについての異常度fが正値となり、主電動機20の状態を“異常”と正しく判定することができる。更に、回転数が高くなるにつれて、異常度fの値が大きくなっており、より明確に、主電動機20が異常状態であると判定できることがわかる。本実験で使用した主電動機20は、5400rpmでの回転が可能であることから分かる通り、通常の使用形態において、2700rpm以上で使用する場合が多々ある。このため、1800rpm以下では診断せず、2700rmp以上でのみ診断を行うこととしても、十分な有用性がある。
[機能構成]
図10は、状態診断装置1の機能構成図である。図10によれば、状態診断装置1は、操作部102と、表示部104と、音出力部106と、通信部108と、処理部200と、記憶部300とを備え、一種のコンピュータシステムとして構成される。例えば、上述した通り、状態診断装置1を制御ボード(いわゆるCPUボード)として構成することも可能である。
操作部102は、例えばキーボードやマウス、タッチパネル、各種スイッチ等で実現される入力装置であり、操作入力に応じた操作信号を処理部200に出力する。表示部104は、例えば液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等で実現される表示装置であり、処理部200からの表示信号に基づく各種表示を行う。音出力部106は、例えばスピーカ等で実現される音出力装置であり、処理部200からの音声信号に基づく各種音声出力を行う。状態診断装置1を制御ボードとして構成する場合には、状態診断装置1の管理作業等の必要に応じて、操作部102、表示部104、音出力部106を接続/取り外し可能に構成すると好適である。通信部108は、例えば無線通信モジュール、有線用の通信ケーブルのジャックや制御回路等で実現される通信装置であり、外部装置との間でデータ通信を行う。
処理部200は、例えばCPU(Central Processing Unit)等の演算装置で実現され、記憶部300に記憶されたプログラムやデータに従って、電流センサ22による検出電流を用いて、回転電気機械である主電動機20の状態診断を行う。状態診断を行うための機能部として、処理部200は、漏洩電流検出部202と、周波数分析部204と、異常判定部206と、を有する。これらの機能部は、プログラムを実行することによりソフトウェアとして実現される処理ブロックであっても良いし、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェア回路によって実現される回路ブロックであっても良い。本実施形態では、状態診断プログラム302を実行することによりソフトウェアとして実現される処理ブロックとして説明する。
また、処理部200は、状態診断の対象となる主電動機20に関するデータを、主電動機データ310として管理している。主電動機データ310は、主電動機20毎に生成されるデータであり、該当する主電動機20の識別情報である主電動機ID312と、設置箇所情報314と、第1診断用データ320と、第2診断用データ330と、走行データ340と、を格納している。
設置箇所情報314は、該当する主電動機20の鉄道車両における設置箇所に関する情報であり、何れの車両の何れの台車の何れの車軸の駆動用であるかといった内容を含む。
第1診断用データ320は、第1の状態診断に用いられるデータであり、周波数成分を抽出する周波数帯域と、閾値テーブルと、を含む。閾値テーブルは、図11に示すように、動作モード毎に用意され、主電動機20の回転数と、閾値と、を対応付けて格納している。
第2診断用データ330は、第2の状態診断に用いられるデータであり、動作モード、及び、主電動機20の回転数の組み合わせそれぞれに対応付けた複数の正常データ群を含む。正常データ群は、該当する主電動機20が正常状態であるときの漏洩電流データに対するオクターブバンド分析によって得られた特徴ベクトルの集合である。
走行データ340は、状態診断装置1が搭載された鉄道車両による走行に関するデータであり、1回の走行毎に生成され、当該走行の開始時点及び終了時点の日時を示す走行期間と、漏洩電流データと、診断データと、総合診断結果と、を格納している。ここで、1回の走行(1走行)とは、ある程度の長さに亘る期間での走行であり、例えば、当該車両の運用が割り当てられた列車に係る始発駅から終着駅までの走行や、1日の走行とすることができる。
漏洩電流データは、漏洩電流検出部202によって検出された主電動機20の漏洩電流の、走行期間に亘る時系列のデータである。
診断データは、漏洩電流データを用いた状態診断に関するデータであり、当該走行における単位期間Δt毎に生成され、当該単位期間Δtの開始時点及び終了時点の日時を示す単位期間と、動作モードと、走行速度と、主電動機20の回転数と、周波数分析部204による当該単位期間Δtの漏洩電流データに対するオクターブバンド分析結果と、第1の状態診断の結果である第1診断結果と、第2の状態診断の結果である第2診断結果と、を格納している。
総合診断結果は、当該1走行における当該主電動機20に対する総合的な診断結果であり、単位期間Δt毎の第1診断結果及び第2診断結果に基づいて判定される。
漏洩電流検出部202は、インバータ18と主電動機20との間の主回路ケーブルに設けられた電流センサ22の検出電流に基づいて、当該主電動機20の対地漏洩電流(以下適宜「漏洩電流」と略称する。)を検出する。電流センサ22による検出電流は三相交流電流の和であるので、この三相交流電流の和の実効値を求めて漏洩電流を検出する。
周波数分析部204は、漏洩電流検出部202によって検出された漏洩電流(対地漏洩電流)に対する周波数分析を行う。すなわち、第1の状態診断のための周波数分析として、単位期間Δt毎に、漏洩電流データから、第1診断用データ320で定められる抽出周波数帯域の周波数成分を抽出する。なお、当該単位期間Δtのオクターブバンド分析結果から、抽出周波数帯域の周波数成分を抽出するようにしても良い。また、第2の状態診断のための周波数分析として、漏洩電流データに対するオクターブバンド分析を行い、単位期間Δt毎に、オクターブバンド分析結果に対する主成分分析を行って特徴ベクトルを算出する。
異常判定部206は、周波数分析部204による分析結果に基づいて、主電動機20の異常を判定する状態診断を行う。すなわち、第1の状態診断として、単位期間Δt毎に、第1診断用データ320で定められる閾値テーブルを参照して、当該単位期間Δtの動作モード、及び、主電動機20の回転数の組み合わせに対応する閾値を判断し、この閾値を超えることを異常判定条件として、周波数分析部204によって抽出された当該単位期間Δtの所定周波数成分が異常判定条件を満たすか否かによって、主電動機20が“異常”であるか“正常”であるかを判定する。
また、第2の状態診断として、単位期間Δt毎に、周波数分析部204によって求められた特徴ベクトルをテストデータXとし、第2診断用データ330で定められる当該単位期間Δtの動作モード、及び、主電動機20の回転数の組み合わせに対応する正常データ群を所定基準データである学習データ群として、テストデータXが学習データ群に適合するか否かに基づいて、主電動機20の異常を判定する。より具体的には、機械学習の手法の1つであるNNDD法を用いるならば、式(1)の異常度算出関数f(X)に従って、テストデータXの異常度fを求め、求めた異常度fが正値であれば“異常”と判定し、異常度fが負値であれば“正常”と判定する。そして、異常判定部206は、第2の状態診断によって“正常”と判断したならば、テストデータXとした特徴ベクトルを、該当する正常データ群に追加する。
更に、異常判定部206は、1走行分の第1の状態診断の診断結果、及び、第2の状態診断の診断結果に基づいて、主電動機20の状態を総合的に判定する。例えば、第1の状態診断の診断結果、及び、第2の状態診断のそれぞれについて、単位期間Δt毎の診断結果を時系列のデータとして、所定期間(所定回数)以上連続して“異常”と判定している場合や、或いは、1走行分の診断回数に対する“異常”と判定した回数の割合が所定割合以上である場合に、当該診断による判定結果を“異常”とする。そして、第1の状態診断及び第2の状態診断の両方或いは少なくとも一方の状態診断において“異常”と判定した場合に、総合的な判定結果として、主電動機20が“異常”であると判定する。
記憶部300は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)、ハードディスク等の記憶装置で実現され、処理部200が状態診断装置1を統括的に制御するためのプログラムやデータを記憶するとともに、処理部200の作業領域として用いられ、処理部200が各種プログラムに従って実行した演算結果や、操作部102や通信部108からの入力データが一時的に格納される。本実施形態では、記憶部300には、状態診断プログラム302と、主電動機データ310と、が記憶される。
[処理の流れ]
図12は、状態診断処理の流れを説明するフローチャートである。この処理は、処理部200が状態診断プログラム302を実行することで実現される処理であり、状態診断装置1が搭載された鉄道車両の1回の走行(1走行)に対して実行される。
状態診断処理では、先ず、漏洩電流検出部202が、主電動機20の漏洩電流の検出を開始する(ステップS1)。そして、所与の診断開始タイミングとなったならば(ステップS3:YES)、周波数分析部204が、漏洩電流データに対するオクターブバンド分析を開始する(ステップS5)。ここで、診断開始タイミングは、例えば、停車駅から出発した後、所定時間(例えば、5秒)が経過したタイミングや、ノッチ(力行ノッチやブレーキノッチ)が所定ノッチとなったタイミング、所定の運転操作となったタイミング、所定のキロ程位置を通過したタイミング、等とすることができる。
続いて、単位期間Δt毎に、ループAの繰り返し処理を行う。ループAの繰り返し処理として、周波数分析部204が、当該単位期間Δtのオクターブバンド分析結果から、所定の周波数帯域の周波数成分(所定周波数成分)を抽出する(ステップS7)。次いで、異常判定部206が、抽出された漏洩電流の周波数成分を、当該単位期間Δtの動作モード、及び、主電動機20の回転数の組み合わせに対応する閾値と比較することで、主電動機20の状態が異常であるか否かを判定する第1の状態診断を行う(ステップS9)。
また、周波数分析部204が、当該単位期間Δtのオクターブバンド分析結果に対する主成分分析を行って特徴ベクトルを生成する(ステップS11)。そして、異常判定部206が、生成された特徴ベクトルをテストデータとし、当該単位期間Δtの動作モード、及び、主電動機20の回転数の組み合わせに対応する正常時データを学習データとして、NNDD法等の機械学習の手法によって、主電動機20の状態が異常であるか正常であるかを判定する第2の状態診断を行う(ステップS13)。
このループAの処理は、所与の診断終了タイミングとなるまで繰り返し行われる。診断終了タイミングは、例えば、停車駅に停車したタイミングといったように、診断開始タイミングに応じて定められる。
ループAの処理が終了すると、周波数分析部204が、漏洩電流データに対するオクターブバンド分析を終了する(ステップS17)。続いて、処理部200は、定められた1回の走行が終了したかを判断し、終了していないならば(ステップS19:NO)、ステップS3に戻り、同様の処理を繰り返す。
1回の走行が終了したならば(ステップS19:YES)、異常判定部206が、単位期間Δt毎の第1の状態診断、及び、第2の状態診断の診断結果に基づき、当該走行における主電動機20の状態を総合的に判定する(ステップS21)。以上の処理を行うと、状態診断処理は終了となる。
[作用効果]
このように、本実施形態によれば、回転電気機械の一種である主電動機20の漏洩電流に対する周波数分析を行い、その分析結果に基づき主電動機20の異常を判定することができる。また、主電動機20の漏洩電流は、インバータ18が発生するコモンモード電圧によって生じるので、主変換装置14内であってインバータ18と主電動機20との間の主回路ケーブルに設けた電流センサ22による検出電流によって、主電動機20の漏洩電流を容易に検出することが可能である。すなわち、従来のように監視対象物である主電動機20に温度センサや振動センサを取り付ける必要がなく、またこれらのセンサに対する配線も不要となり、全く新しい手法を実現できる。
なお、本発明の適用可能な実施形態は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能なのは勿論である。
(A)状態診断装置1
上述の実施形態では、状態診断装置1は鉄道車両に搭載されるとしたが、状態診断装置1の一部又は全部の機能を、地上側の外部装置が担うこととしても良い。例えば、オクターブバンド分析によってデータ量を大幅に削減できることから、漏洩電流データに対するオクターブバンド分析までの処理(すなわち、漏洩電流検出部202、及び、周波数分析部204)を車上側の装置(車上装置)で行い、以降の処理(すなわち、異常判定部206)を地上側の装置(地上装置)で行うようにすることができる。この場合、車上装置と地上装置とで状態診断装置1が構成されることになり、車上装置と地上装置との間のデータ通信は、鉄道車両の走行中に、無線通信網を介して車上装置から地上装置へ送信することにしても良いし、或いは、走行中は検出した漏洩電流データ、或いは、当該漏洩電流に対するオクターブバンド分析結果を車上装置において蓄積記憶しておき、走行終了後に、有線通信や無線通信によって車上装置から地上装置へ送信するようにしても良い。
(B)状態診断の実行
また、漏洩電流に基づく状態診断は、インバータ18による主電動機20の制御(可変速制御)がなされる力行時或いは回生ブレーキ時に行うことにしても良い。惰行時には主電動機20の制御がなされない、つまり、インバータ18が停止して主電動機20に駆動電力が供給されないため、主電動機20の漏洩電流を検出できないと考えられるためである。状態診断処理(図12参照)において、診断開始タイミング(ステップS3)を、鉄道車両の動作モードがだ行から力行又は回生に移行したこととし、診断終了タイミング(ステップS15)を、鉄道車両の動作モードが力行又は回生からだ行に移行したこととすることで、実現できる。
また、漏洩電流に基づく状態診断を、主電動機20の回転数が所定数以上である場合に行うことにしても良い。例えば、図3,図4に示した実験結果によれば、主電動機20の正常状態と異常状態とでは漏洩電流データから抽出される所定周波数成分が異なるが、主電動機20の回転数が高くなるほど、その違いが大きくなる。また、図8,9に示した実験結果によれば、主電動機20の異常状態に着目すると、主電動機20の回転数が1800rpm以下では、殆どのテストデータについての異常度fが負値となり、主電動機20の状態を“正常”と間違って判定する可能性がある。しかし、回転数が2700rpm以上では、殆どのテストデータについての異常度fが正値となり、主電動機20の状態を“異常”と正しく判定することができる。更に、回転数が高くなるにつれて、異常度fの値が大きくなっており、より明確に主電動機20が異常状態であると判定していることがわかる。このことから、例えば、本実験で使用した主電動機20についていえば、回転数が2700rmp以上である場合に状態診断を行うようにすることが望ましいといえる。
なお、主電動機20の回転数は、当該主電動機20を搭載した列車の走行速度から推定的に求めることができる。そして、状態診断処理(図12参照)において、診断開始タイミング(ステップS3)を、鉄道車両の走行速度が、主電動機20の所定回転数に相当する速度以上となったこととし、診断終了タイミング(ステップS15)を、鉄道車両の走行速度が、主電動機20の所定回転数に相当する速度を下回ったこととすることで、実現できる。
また、漏洩電流に基づく状態診断は、所定の動作モード(例えば、“力行最大ノッチ”)のときのみに行うようにしても良い。この場合には、状態診断処理(図12参照)において、診断開始タイミング(ステップS3)を、鉄道車両の動作モードが所定動作モード(例えば、“力行最大ノッチ”)に移行したこととし、診断終了タイミング(ステップS15)を、鉄道車両の動作モードが所定動作モードからそれ以外の動作モードに移行したこととすることで、実現できる。また、第1診断用データ320の閾値テーブル、及び、第2診断用データ330の正常データ群は、該当する動作モード(この例の場合は“力行最大ノッチ”)に対応するデータのみが用意されていれば良く、各単位期間Δtにおける主電動機20の回転数に対応するデータ(第1診断ならば閾値、第2診断ならば正常時データ)を用いて、主電動機20の状態診断を行うことができる。
(C)回転電気機械
また、上述の実施形態では、診断対象となる回転電気機械を電気車における主電動機20としたが、自動車やオートバイ等の他の車両に搭載される電動機や、昇降機(エレベータ)や産業用機械等に搭載される電動機、発電機など、可変速制御される回転電気機械であれば、何れも監視対象物として状態診断を行うことができる。
昇降機や産業用機械等に搭載される電動機は単一の動作モードで使用されることが多く、このような場合には、上述した電気車に係る動作モードは不用であるから、第1診断用の閾値テーブル及び第2診断用の正常データ群を動作モード別に用意する必要はない。
そして、電動機の状態診断は、各単位期間Δtにおける電動機の回転数に対応するデータ(第1診断ならば閾値、第2診断ならば正常時データ)を用いて行うことができる。
1…状態診断装置
200…処理部
202…漏洩電流検出部
204…周波数分析部
206…異常判定部
300…記憶部
302…状態診断プログラム
310…主電動機データ
20…主電動機
22…電流センサ

Claims (12)

  1. 可変速制御がなされる回転電気機械の対地漏洩電流を検出する検出手段と、
    前記検出された対地漏洩電流に対する周波数分析を行う分析手段と、
    前記分析手段の分析結果に基づいて、前記回転電気機械の異常を判定する異常判定手段と、
    を備えた状態診断装置。
  2. 前記異常判定手段は、前記対地漏洩電流の流路に含まれる軸受の異常を判定可能である、
    請求項1に記載の状態診断装置。
  3. 前記検出手段は、前記回転電気機械の主回路ケーブルに設けられた電流センサの検出電流に基づいて前記対地漏洩電流を検出する、
    請求項1又は2に記載の状態診断装置。
  4. 前記異常判定手段は、前記回転電気機械の回転速度に応じた異常判定条件を用いて、前記回転電気機械の異常を判定する、
    請求項1〜3の何れか一項に記載の状態診断装置。
  5. 前記回転電気機械は、電気車に搭載される主電動機であり、
    前記異常判定手段は、前記回転電気機械の回転速度及び動作モードに応じた異常判定条件を用いて、前記回転電気機械の異常を判定する、
    請求項1〜3の何れか一項に記載の状態診断装置。
  6. 前記分析手段は、
    前記検出された対地漏洩電流から所定周波数成分を抽出し、
    前記異常判定手段は、
    前記抽出された所定周波数成分について、前記回転速度に応じて定められた前記異常判定条件を用いて、前記回転電気機械の異常を判定する、
    請求項4又は5に記載の状態診断装置。
  7. 前記分析手段は、
    前記検出された対地漏洩電流に対するオクターブバンド分析を行い、
    前記異常判定手段は、
    前記オクターブバンド分析の分析結果が、前記回転電気機械の既知状態に対応付けられた所定基準データに適合するか否かに基づいて、前記回転電気機械の異常を判定する、
    請求項1〜3の何れか一項に記載の状態診断装置。
  8. 前記所定基準データは、前記回転電気機械の回転速度に応じて分類されており、
    前記異常判定手段は、
    前記オクターブバンド分析の分析結果が、前記回転速度に応じた前記所定基準データに適合するか否かに基づいて、前記回転電気機械の異常を判定する、
    請求項7に記載の状態診断装置。
  9. 前記回転電気機械は、電気車に搭載される主電動機であり、
    前記所定基準データは、前記回転電気機械の回転速度及び動作モードに応じて分類されており、
    前記異常判定手段は、
    前記オクターブバンド分析の分析結果が、前記回転速度及び動作モードに応じた前記所定基準データに適合するか否かに基づいて、前記回転電気機械の異常を判定する、
    請求項7に記載の状態診断装置。
  10. 前記異常判定手段による判定結果に基づいて、前記所定基準データを更新する機械学習手段、
    を更に備えた請求項7〜9の何れかに記載の状態診断装置。
  11. 前記回転電気機械は、電気車に搭載される主電動機であり、
    前記電気車の力行時又は回生ブレーキ時の前記対地漏洩電流に基づいて、前記回転電気機械の異常を判定する、
    請求項1〜10の何れか一項に記載の状態診断装置。
  12. 可変速制御がなされる回転電気機械の対地漏洩電流を検出することと、
    前記検出された対地漏洩電流に対する周波数分析を行うことと、
    前記分析手段の分析結果に基づいて、前記回転電気機械の異常を判定することと、
    を含む状態診断方法。
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