JP7231797B1 - 摩擦攪拌点接合継手およびその製造方法、ならびに、摩擦攪拌点接合方法 - Google Patents

摩擦攪拌点接合継手およびその製造方法、ならびに、摩擦攪拌点接合方法 Download PDF

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Abstract

被接合材として表層軟質層を有する鋼板を使用する場合にも、高い十字引張強さを有する摩擦攪拌点接合継手を提供する。重ね合わせた鋼板のうち上板の上面において環状溝部を形成するとともに、接合部の形状と硬度とを同時に適切に制御する。

Description

本発明は、摩擦攪拌点接合継手およびその製造方法、ならびに、摩擦攪拌点接合方法に関する。
自動車を組み立てる際には、コストや効率の面から、プレス成形された鉄鋼材料(部品)を抵抗溶接により接合することが多い。
また、近年、摩擦攪拌点接合の鉄鋼材料への適用も検討されている。ここで、摩擦攪拌点接合とは、摩擦攪拌現象を利用した点接合法である。具体的には、ショルダー部と該ショルダー部から突出するピン部とを有するツールを回転させながら、ツールのピン部を重ね合わせた金属板からなる被接合材に圧入する(押し込む)。これにより、金属板を軟化および塑性流動させ、重ね合わせた金属板を接合する。
このような摩擦攪拌点接合に関する技術として、例えば、特許文献1には、
「金属材料からなる第1部材および第2部材をその境界部に軟質部を位置させた状態で重ね合わせ、回転工具のピン部を回転させながら前記第1部材から前記第2部材まで圧入し、前記第1部材および前記第2部材を攪拌することによって点接合する摩擦攪拌点接合方法であって、
前記第1および第2部材のうちの少なくとも一方が、800℃かつ歪み速度10-3-1での引張強度が100MPa以上の金属材料からなり、
前記軟質部が、室温において前記引張強度が100MPa以上の前記金属材料の母材硬度よりも低い硬度を有するものであり、
前記軟質部は、少なくとも前記引張強度が100MPa以上の前記金属材料の表層部に形成される軟質層であり、
前記引張強度が100MPa以上の前記金属材料は、質量%でC含有量が0.3%以上の炭素鋼であり、前記軟質層は、質量%でC含有量が0.1%以下の脱炭層である、摩擦攪拌点接合方法。」
が開示されている。
特許第6160345号
しかしながら、特許文献1の技術により得られる擦攪拌点接合継手を用いて十字引張試験を行うと、第1部材と第2部材の境界部に位置する軟質部に沿って破断が生じ、十分な十字引張強さが得られないという問題があった。
本発明は、上記の問題を解決するために開発されたものであって、被接合材として表層部に軟質層(以下、表層軟質層ともいう)を有する鋼板を使用する場合にも、高い十字引張強さを有する摩擦攪拌点接合継手およびその製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、上記の摩擦攪拌点接合継手を得るための摩擦攪拌点接合方法を提供することを目的とする。
ここで、「高い十字引張強さ」とは、JIS Z 3137に準拠した十字引張試験によって測定される十字引張強さが8.0kN以上であることを意味する。
さて、発明者らは、上記の目的を達成すべく、鋭意検討を重ねた。その結果、発明者らは、
・接合部の上面に環状溝部を形成するとともに、
・接合部の形状と硬度とを同時に適切に制御する、具体的には、以下の(a)~(c)を同時に満足させる、
ことによって、被接合材として表層軟質層を有する鋼板を使用する場合にも、高い継手強度を得られる、との知見を得た。
(a)接合部の凹部の最深点の鉛直方向位置について、被接合材となる鋼板の下側合せ面を基準位置として、-0.5mm以下、および、-TL×0.50以下のうちの少なくとも一方を満足させる。
(b)接合界面の最高点の鉛直方向位置を、被接合材となる鋼板の上側合せ面を基準位置として、+TU×0.50以上とする。
(c)鉛直方向位置:+TU×0.50または+TU×0.60において、水平方向位置で接合界面の位置の硬度と、接合界面の位置+350μmの位置の硬度との差を、80HV以下とする。
また、発明者らは、さらに検討を重ね、上記の摩擦攪拌点接合継手を得るためには、接合時に以下の(d)~(f)を同時に満足させることが重要であるとの知見を得た。
(d)ツールの圧入最大深さの鉛直方向位置について、鋼板の下側合せ面を基準位置として、-0.5mm以下、および、-TL×0.50以下のうちの少なくとも一方を満足させつつ、ツールが圧入最大深さに到達した際にショルダーと被接合材の上板とが接触する(ショルダーにより被接合材が押圧されている)状態とする。
(e)最高到達温度を850℃以下とする。
(f)接合条件を適正に制御する、具体的には、ツール回転速度、ツール圧入量および加圧力について、次式(1)の関係を満足させる。
Figure 0007231797000001
式(1)中、
nは、接合条件の切り替え回数、
k+1は、k回目の接合条件の切り替え後のツール回転速度(rpm)、
k+1は、k回目の接合条件の切り替え時点からk+1回目の接合条件の切り替え時点までのツール圧入量(mm)、
k+1は、k回目の接合条件の切り替え後の加圧力(N)
である。
ただし、Rは初期ツール回転速度(rpm)、Aは初期接合条件でのツール圧入量(mm)、Pは初期加圧力(N)とする。また、An+1は、n回目の接合条件の切り替え時点からツールの圧入最大深さ到達時点までのツール圧入量(mm)とする。
本発明は、上記の知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものである。
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.重ね合わせた2枚以上の鋼板と、該鋼板の接合部と、該接合部の上面の環状溝部と、を有する、摩擦攪拌点接合継手であって、
前記鋼板のうちの少なくとも1枚が表層軟質層を有し、
前記接合部は、凹部と、該凹部に隣接する第1の流動部と、該第1の流動部に隣接する第2の流動部と、該第1の流動部と該第2の流動部の境界である接合界面と、を有し、
前記凹部の最深点の鉛直方向位置が、前記鋼板の下側合せ面を基準位置として、-0.5mm以下、および、-TL×0.50以下のうちの少なくとも一方を満足し、
前記接合界面の最高点の鉛直方向位置が、前記鋼板の上側合せ面を基準位置として、+TU×0.50以上であり、
鉛直方向位置:+TU×0.50または+TU×0.60において、水平方向位置で前記接合界面の位置の硬度と、前記接合界面の位置+350μmの位置の硬度との差が、80HV以下である、摩擦攪拌点接合継手。
ここで、上板および下板はそれぞれ、重ね合わせた2枚以上の鋼板のうち、最上部に位置する鋼板および最下部に位置する鋼板であり、
TUは、上板の鋼板の板厚(mm)、
TLは、下板の鋼板の板厚(mm)、
上側合せ面は、上板と、該上板に隣接する鋼板との合せ面、
下側合せ面は、下板と、該下板に隣接する鋼板との合せ面
である。
また、鉛直方向位置は、基準位置よりも上側の場合を+、下側の場合を-とする。水平方向位置は、基準位置からの距離とする。
2.前記表層軟質層の平均炭素濃度が、前記表層軟質層を有する鋼板の成分組成の炭素濃度の80%以下である、前記1に記載の摩擦攪拌点接合継手。
3.ショルダー部と該ショルダー部から突出するピン部とを有するツールを回転させながら、該ピン部を被接合材である重ね合わせた2枚以上の鋼板に圧入し、該鋼板を接合する、摩擦攪拌点接合方法であって、
前記被接合材である鋼板のうちの少なくとも1枚が表層軟質層を有し、
前記ツールの圧入最大深さの鉛直方向位置が、前記鋼板の下側合せ面を基準位置として、-0.5mm以下、および、-TL×0.50以下のうちの少なくとも一方を満足し、かつ、前記ツールが圧入最大深さに到達した際に前記ショルダーと上板とが接触する状態であり、
最高到達温度が850℃以下であり、
次式(1)の関係を満足する、摩擦攪拌点接合方法。
Figure 0007231797000002
式(1)中、
nは、接合条件の切り替え回数、
k+1は、k回目の接合条件の切り替え後のツール回転速度(rpm)、
k+1は、k回目の接合条件の切り替え時点からk+1回目の接合条件の切り替え時点までのツール圧入量(mm)、
k+1は、k回目の接合条件の切り替え後の加圧力(N)
である。
ただし、Rは初期ツール回転速度(rpm)、Aは初期接合条件でのツール圧入量(mm)、Pは初期加圧力(N)とする。また、An+1は、n回目の接合条件の切り替え時点からツールの圧入最大深さ到達時点までのツール圧入量(mm)とする。
また、上板および下板はそれぞれ、重ね合わせた2枚以上の鋼板のうち、最上部に位置する鋼板および最下部に位置する鋼板であり、
TLは、下板の鋼板の板厚(mm)、
下側合せ面は、下板と、該下板に隣接する鋼板との合せ面
である。
さらに、鉛直方向位置は、基準位置よりも上側の場合を+、下側の場合を-とする。
4.前記表層軟質層の平均炭素濃度が、前記表層軟質層を有する鋼板の成分組成の炭素濃度の80%以下である、前記3に記載の摩擦攪拌点接合方法。
5.前記3または4に記載の摩擦攪拌点接合方法により、重ね合わせた2枚以上の鋼板を接合する、摩擦攪拌点接合継手の製造方法。
本発明によれば、被接合材として表層軟質層を有する鋼板を使用する場合にも、高い十字引張強さを有する摩擦攪拌点接合継手が得られる。これにより、より広範囲の鋼板に対して摩擦攪拌点接合が適用できるようになるので、産業上の利用価値は極めて大きい。
本発明の一実施形態に従う摩擦攪拌点接合継手の鉛直断面の模式図である。 試料番号13の摩擦攪拌点接合継手(環状溝部を有さない摩擦攪拌点接合継手)の鉛直断面の模式図である。
本発明を、以下の実施形態に基づき説明する。
[1]摩擦攪拌点接合継手
まず、本発明の一実施形態に従う摩擦攪拌点接合継手について、図1を用いて説明する。なお、図1では、被接合材となる鋼板が2枚の場合を例としている。ここで、図1は、接合部の凹部の中心位置を通る、摩擦攪拌点接合継手の鉛直断面(以下、単に鉛直断面ともいう)であり、各部の位置などは、いずれも当該鉛直断面でのものである。
また、鉛直方向(鋼板の板厚方向)の上側とは、摩擦攪拌点接合時にツールのピン部が圧入される側である。鉛直方向の下側とは、摩擦攪拌点接合時に裏あて材が設置される側(摩擦攪拌点接合時にツールのピン部が圧入される側の反対側)である。なお、摩擦攪拌点接合継手では、その形状等、例えば、凹部の位置から、鉛直方向の上側および下側を特定することができる。また、以下、被接合材となる鋼板のうち、最上部の鋼板(最上部に位置する鋼板)を上板、最下部の鋼板(最下部に位置する鋼板)を下板、最上部および最下部と中間に位置する鋼板(最上部および最下部以外の鋼板)を中板ともいう。上面は鉛直方向の上側の面であり、下面は鉛直方向の下側の面である。
本発明の一実施形態に従う摩擦攪拌点接合継手は、図1に示すように、重ね合わせた鋼板1と、該鋼板の接合部2と、該接合部の上面の環状溝部3と、を有する。なお、重ね合わせた鋼板間に(接合されずに)残存している隙間を、未接合界面4という。
[接合部]
接合部は、図1に示すように、凹部2-1と、該凹部に隣接する第1の流動部2-2と、該第1の流動部に隣接する第2の流動部2-3と、該第1の流動部と該第2の流動部の境界である接合界面2-4と、を有する。
ここで、凹部は、接合時に、ツールのピン部の圧入により形成されるものである。なお、凹部は、鉛直方向上側から見ると略円形であり、その直径は、ツールのピン部の直径とほぼ同じ大きさとなる。また、凹部の中心位置は、鉛直方向上側から見たときの凹部の中心とする。
第1の流動部は、接合時に下板が塑性流動して形成される流動領域であり、凹部の周囲に隣接して形成される。また、第2の流動部は、上板が塑性流動して形成される流動領域であり、第1の流動部に隣接して形成される。なお、被接合材となる鋼板が3枚以上の場合、中板が塑性流動して形成される流動領域はいずれも、第2の流動部に含まれるものとする。
また、第1の流動部および第2の流動部は以下のように画定する。これにより、第1の流動部と第2の流動部の境界である接合界面が特定される。
すなわち、接合部の凹部の中心位置を通る、摩擦攪拌点接合継手の鉛直断面を研磨し、ピクリン酸飽和水溶液でエッチングする。ついで、当該鉛直断面を光学顕微鏡で観察し、母材組織と流動部におけるエッチングの度合いなどから、第1の流動部および第2の流動部を画定する。そして、確定した第1の流動部と第2の流動部の境界を接合界面とする。
そして、接合部では、その形状と硬度とを、以下のように制御することが重要である。
ここで、上板および下板はそれぞれ、重ね合わせた2枚以上の鋼板のうち、最上部に位置する鋼板および最下部に位置する鋼板であり、
TUは、上板の鋼板の板厚(mm)、
TLは、下板の鋼板の板厚(mm)、
上側合せ面は、上板と、該上板に隣接する鋼板との合せ面、
下側合せ面は、下板と、該下板に隣接する鋼板との合せ面
である。
また、鉛直方向位置は、基準位置よりも上側の場合を+、下側の場合を-とする。水平方向位置は、基準位置からの距離(基準位置を0とし、-にはならない(負の値はとらない)もの)とする。
(a)凹部の最深点の鉛直方向位置(以下、凹部の最深点のレベルともいう)
凹部の最深点のレベルについて、被接合材となる鋼板の下側合せ面を基準位置として、-0.5mm以下、および、-TL×0.50以下のうちの少なくとも一方を満足させる。これにより、接合界面が強化され、被接合材として表層軟質層を有する鋼板を使用する場合にも、高い十字引張強さが得られる。なお、特に限定されるものではないが、凹部の最深点のレベルは-TL×0.90以上とすることが好ましい。
(b)接合界面の最高点の鉛直方向位置(以下、接合界面の最高点のレベルともいう)
接合界面の最高点のレベルは、被接合材となる鋼板の上側合せ面を基準位置として、+TU×0.50以上とする。好ましくは+TU×0.60以上とする。これにより、接合界面が強化され、被接合材として表層軟質層を有する鋼板を使用する場合にも、高い十字引張強さが得られる。なお、接合界面の最高点のレベルは高いほど好ましく、例えば、ツールのショルダー部の周囲からバリとして外部に排出される領域まで接合界面の最高点が到達していてもよい。接合界面の最高点のレベルは、より好ましくは+TU×0.98以下である。
なお、接合界面は、通常、鉛直断面において、鉛直方向上側に向かって湾曲した形状(鉛直方向上側に向かって凸となる形状)である。
また、凹部の最深点のレベルおよび接合界面の最高点のレベルは、接合界面の特定に使用した摩擦攪拌点接合継手の鉛直断面の撮影画像を用いて、ノギスなどにより測定すればよい。
(c)鉛直方向位置:+TU×0.50または+TU×0.60における、水平方向位置で接合界面の位置の硬度と、接合界面の位置+350μmの位置の硬度との差(以下、単に接合部の所定レベルでの硬度差ともいう)
発明者らは、上掲特許文献1の技術により得られる擦攪拌点接合継手を用いて十字引張試験を行う場合に、第1部材と第2部材の境界部に位置する軟質部に沿って破断が生じ、十分な十字引張強さが得られないという問題が生じる原因について調査した。その結果、発明者らは、被接合材として表層軟質層を有する鋼板を使用すると、表層軟質層の影響により接合界面において硬度低下が生じ、これが原因となって、十字引張試験を行う場合に、第1部材と第2部材の境界部に位置する軟質部に沿って破断が生じることを知見した。そして、発明者らは、この知見を基にさらに検討を重ねたところ、接合部の上面に環状溝部を形成するとともに、上記(a)および(b)の要件を満足させ、同時に、接合部の所定レベルでの硬度差、つまり、上板の設置レベルでの接合界面と第2の流動部の硬度差を低減することにより、上記した軟質部に沿った破断が防止されることを知見した。
特に、接合部の所定レベルでの硬度差を80HV以下にすると、上記した軟質部に沿った破断が有効に防止され、十字引張強さが向上する。一方、接合部の所定レベルでの硬度差が80HVを超えると、上記した軟質部に沿った破断を十分に防止できず、十字引張強さが低下する。そのため、接合部の所定レベルでの硬度差は80HV以下とする。接合部の所定レベルでの硬度差は、好ましくは70HV以下、より好ましくは60HV以下である。接合部の所定レベルでの硬度差の下限は特に限定されず、0であってもよい。
なお、接合部の所定レベルでの硬度差は、基本的に、鉛直方向位置:+TU×0.60で測定する。ただし、接合界面の最高点のレベルが+TU×0.60未満の場合には、接合部の所定レベルでの硬度差を、鉛直方向位置:+TU×0.50で測定する。
また、接合部の所定レベルでの硬度差を、基本的に、鉛直方向位置:+TU×0.60(以下、+TU×0.60ともいう)で測定する理由は、以下のとおりである。
すなわち、健全な摩擦攪拌点継手の場合、+TU×0.60は接合界面に強固な接合が十分に得られる位置である。そのため、接合界面近傍に軟質部が形成されない場合には、当該位置において接合界面に沿った破断が生じない。一方、接合界面近傍に軟質部が形成される場合には、当該位置において接合界面に沿って軟質な組織が破断する。つまり、+TU×0.60は、接合界面の位置の硬度と、接合界面の位置+350μmの位置の硬度との差が、破断経路に大きく影響を与える位置である。そのため、+TU×0.60は、硬度差の測定(換言すれば、接合界面近傍における軟質層の形成有無の確認)に適した位置である。また、鉛直方向位置:+TU×0.50も、同様の理由で硬度差の測定に適した位置である、ただし、鉛直方向位置:+TU×0.50では、硬度の測定値が鋼板の板厚中央部に生じる偏析の影響を受ける可能性があるため、可能な場合には+TU×0.60で測定することが好ましい。
また、各位置での硬度の測定は、JIS Z 2244に準拠して行う。具体的には、以下のようにして行う。
すなわち、図1に示す摩擦攪拌点接合継手の鉛直断面(接合部の凹部の中心位置を通る、摩擦攪拌点接合継手の鉛直断面)を測定面とし、各位置において試験力:2.942Nの条件でビッカース硬さ(HV)を測定する。
[環状溝部]
環状溝部は、図1に示すように、接合部の上面に形成される。また、環状溝部は、接合部の上面において、凹部を取り囲むように配置される。すなわち、環状溝部は、接合時に、ツールのショルダー部と上板とが接触することにより形成される。環状溝部が形成されることにより、接合界面が強化される。これにより、被接合材として表層軟質層を有する鋼板を使用する場合にも、高い継手強度が得られる。
なお、環状溝部の有無は、目視により、摩擦攪拌点接合継手の上面の外観観察、および、摩擦攪拌点接合継手の鉛直断面の観察を行うことにより、確認することができる。
[鋼板]
被接合材となる鋼板のうち、少なくとも1枚が表層軟質層を有する。なお、表層軟質層を有する鋼板の枚数は特に限定されず、被接合材となる鋼板がいずれも表層軟質層を有していてもよい。
ここで、表層軟質層とは、フェライト分率が、板厚1/3位置のフェライト分率の2倍以上となる領域である。そして、鋼板の少なくとも一方の面において、厚さ:1μm以上の表層軟質層が存在する場合に、表層軟質層を有すると判断する。
すなわち、「表層軟質層を有する」とは、鋼板の少なくとも一方の面において、フェライト分率が、板厚1/3位置のフェライト分率の2倍以上となる領域が存在しており、かつ、その領域の厚さが1μm以上であることを意味する。
また、表層軟質層の厚さは、例えば、以下のようにして測定する。
すなわち、鋼板から、鋼板表面と垂直な任意の断面が観察面となるように、試験片を切り出す。ついで、観察面を研磨し、3vol.%ナイタールでエッチングし、組織を現出させる。ついで、鋼板の上面から下面までの種々の厚さ位置におけるミクロ組織を、ピッチ(厚さ方向の間隔):100μmピッチとして、SEM(Scanning Electron Microscope;走査電子顕微鏡)により、倍率:2000倍で撮影する。得られた種々の厚さ位置における組織画像から、Adobe Systems社のAdobe Photoshopを用いて、各厚さ位置におけるフェライトの面積を算出する。ついで、各厚さ位置におけるフェライトの面積をそれぞれの視野領域の面積で除し、それらの値を、各厚さ位置におけるフェライト分率とする。ここで、比較的平滑な面で黒く観察される相をフェライトとする。ついで、フェライト分率が、板厚1/3位置のフェライト分率の2倍以上になる厚さ位置の最深位置(以下、最深位置ともいう)を鋼板の両面(上面および下面)それぞれで特定し、これらの厚さ位置から、鋼板の両面(上面および下面)それぞれにおける表層軟質層の厚さ(上面から(上面側の)最深位置までの距離、および、下面から(下面側の)最深位置までの距離)を特定する。また、表層軟質層の厚さが10μm以下の場合には、鋼板の上面近傍および下面近傍の種々の厚さ位置におけるミクロ組織を、SEMにより、倍率:10000倍、ピッチ(厚さ方向の間隔):5μmとして1~3枚撮影し、同様にAdobe Systems社のAdobe Photoshopを用いて、各厚さ位置におけるフェライトの面積およびフェライト分率を算出する。これにより、表層軟質層の厚さを特定する。なお、板厚1/3位置の起点(板厚0位置)は、上面および下面の任意の面とすればよい。ただし、上面を起点とする場合と、下面を起点とする場合とで、板厚1/3位置のフェライト分率が異なる際には、フェライト分率が大きい方の値を採用することが好ましい。
また、表層軟質層の平均炭素濃度は、表層軟質層を有する鋼板の成分組成の炭素濃度の80%以下であることが好ましい。ここで、表層軟質層の平均炭素濃度は、例えば、FE-EPMAにより測定する。
具体的には、鋼板から、鋼板表面と垂直な任意の断面が観察面となるように試験片を切り出す。ついで、FE-EPMAを用いて、試験片の種々の深さ位置における炭素濃度を測定し、鋼板の深さ方向における炭素濃度分布を求める。そして、表層軟質層に当たる深さ位置での炭素濃度の平均値を求め、その値を、表層軟質層の平均炭素濃度とする。
また、被接合材となる鋼板の枚数は2枚以上とすればよい。被接合材となる鋼板の枚数の上限は特に限定されるものではないが、被接合材となる鋼板の枚数は5枚以下が好ましい。被接合材となる鋼板には、全て同じ鋼種の鋼板を使用してもよく、異なる鋼種の鋼板を使用してもよい。
また、被接合材となる鋼板の板厚は、0.4~3.2mmが好適である。なお、被接合材となる鋼板には、全て同じ板厚の鋼板を使用してもよく、異なる板厚の鋼板を使用してもよい。
また、被接合材となる鋼板の成分組成としては、例えば、質量%で、
C:0.05~0.6%、Si:0.2~2.5%、Mn:1.0~4.0%、P:0.10%以下、S:0.050%以下、Al:0.01~0.80%、および、N:0.010%以下
であり、
任意に、
Nb:0.050%以下、Ti:0.050%以下、B:0.0050%以下、V:0.05%以下、Cr:0.50%以下、Mo:0.50%以下、Co:0.50%以下、Cu:0.50%以下、Ni:0.50%以下、Sb:0.020%以下、ならびに、CaおよびREM:合計で0.010%以下
から選択される1種以上を有し、残部がFeおよび不可避的不純物である成分組成を例示できる。
また、被接合材となる鋼板の引張強さは、980MPa以上が好適であり、1470MPa以上がより好適である。引張強さは、JIS Z 2241(1998)に準拠して測定する。
また、被接合材となる鋼板は、表面にめっき層を有していてもよい。めっき層は、鋼板の両面に設けても、鋼板の片面に設けてもよい。めっき層としては、例えば、亜鉛系めっき層が挙げられる。なお、亜鉛系めっき層とは、亜鉛を主成分とするめっき層(亜鉛の含有量が50質量%以上のめっき層)であり、例えば、溶融亜鉛めっき層や合金化溶融亜鉛めっき層、電気亜鉛めっき層などが挙げられる。
なお、上記の鋼板は、常法に従い、製造することが可能である。
[2]摩擦攪拌点接合方法、および、摩擦攪拌点接合継手の製造方法
つぎに、本発明の一実施形態に従う摩擦攪拌点接合方法、および、本発明の一実施形態に従う摩擦攪拌点接合継手の製造方法について、説明する。
本発明の一実施形態に従う摩擦攪拌点接合方法は、
ショルダー部と該ショルダー部から突出するピン部とを有するツールを回転させながら、該ピン部を被接合材である重ね合わせた2枚以上の鋼板に圧入し、該鋼板を接合する、摩擦攪拌点接合方法であって、
前記被接合材である鋼板のうちの少なくとも1枚が表層軟質層を有し、
前記ツールの圧入最大深さの鉛直方向位置が、前記鋼板の下側合せ面を基準位置として、-0.5mm以下、および、-TL×0.50以下のうちの少なくとも一方を満足し、かつ、前記ツールが圧入最大深さに到達した際に前記ショルダーと上板とが接触する状態であり、
最高到達温度が850℃以下であり、
次式(1)の関係を満足する、というものである。
Figure 0007231797000003
式(1)中、
nは、接合条件の切り替え回数、
k+1は、k回目の接合条件の切り替え後のツール回転速度(rpm)、
k+1は、k回目の接合条件の切り替え時点からk+1回目の接合条件の切り替え時点までのツール圧入量(mm)、
k+1は、k回目の接合条件の切り替え後の加圧力(N)
である。
ただし、Rは初期ツール回転速度(rpm)、Aは初期接合条件でのツール圧入量(mm)、Pは初期加圧力(N)とする。また、An+1は、n回目の接合条件の切り替え時点からツールの圧入最大深さ到達時点までのツール圧入量(mm)とする。
また、上板および下板はそれぞれ、重ね合わせた2枚以上の鋼板のうち、最上部に位置する鋼板および最下部に位置する鋼板であり、
TLは、下板の鋼板の板厚(mm)、
下側合せ面は、下板と、該下板に隣接する鋼板との合せ面
である。
さらに、鉛直方向位置は、基準位置よりも上側の場合を+、下側の場合を-とする。
加えて、本発明の一実施形態に従う摩擦攪拌点接合方法は、上記の本発明の一実施形態に従う摩擦攪拌点接合継手を得る(製造する)ための方法である。
また、本発明の一実施形態に従う摩擦攪拌点接合継手の製造方法は、上記の本発明の一実施形態に従う摩擦攪拌点接合方法により、重ね合わせた2枚以上の鋼板を接合する、というものである。
加えて、本発明の一実施形態に従う摩擦攪拌点接合継手の製造方法は、上記の本発明の一実施形態に従う摩擦攪拌点接合継手を製造するための方法である。
被接合材である重ね合わせた2枚以上の鋼板を、ショルダー部と該ショルダー部から突出するピン部とを有するツールにより接合する。具体的には、ツールを回転させながら、ツールのピン部を被接合材に圧入し、鋼板を接合する。ここで、ツールは、特に限定されず、一般的なものを使用することができる。また、ショルダー部およびピン部の形状、例えば、ショルダー部の直径(以下、ショルダー径ともいう)やピン部の直径(以下、ピン径ともいう)、ピン部の長さ(以下、ピン長ともいう)、ピン側面の傾斜角も特に限定されず、被接合材となる鋼板の鋼種や板厚に応じて決定すればよい。例えば、被接合材として、表層軟質層を有し、引張強さが980MPa以上で、板厚が1.6mmの鋼板を2枚使用する場合には、ショルダー径は6.0~16.0mm、ピン径は3.0~8.0mm、ピン長は2.0~3.5mm、ピン側面の傾斜角は3~30°とすることが好ましい。
また、接合時には、被接合材の下面(ツールのピン部を圧入するのと反対側の面)に、裏あてを設ける。
加えて、被接合材である鋼板の少なくとも1枚に、表層軟質層を有する鋼板を用いる。なお、表層軟質層の定義や厚さの測定方法などは上述のとおりである。また、被接合材となる鋼板が、接合前に表層軟質層を有していれば、通常、接合後にも表層軟質層を有していると判断できる。さらに、被接合材である鋼板の説明についても、上述のとおりである。
そして、本発明の一実施形態に従う摩擦攪拌点接合方法では、以下の条件を満足させることが重要である。
(d)ツールの圧入最大深さの鉛直方向位置
ツールの圧入最大深さの鉛直方向位置について、鋼板の下側合せ面を基準位置として、-0.5mm以下、および、-TL×0.50以下のうちの少なくとも一方を満足させつつ、ツールが圧入最大深さに到達した際にショルダーと被接合材の上板とが接触する(ショルダーにより被接合材が押圧されている)状態とする。ツールの圧入深さの鉛直方向位置を適切に制御することにより、材料流動を促進して、接合界面の最高点を、より高い位置とすることが可能となる。また、ショルダーと被接合材の上板とを接触させることにより、重ね合わせた鋼板同士がより密着し、接合界面が強化される。なお、特に限定されるものではないが、ツールの圧入深さの鉛直方向位置は、-TL×0.90以上とすることが好ましい。
(e)最高到達温度
接合中の接合部の最高到達温度を850℃以下とする。これにより、接合部の所定レベルでの硬度差を80HV以下とすることが可能となる。最高到達温度は、好ましくは830℃以下、より好ましくは810℃以下である。また、最高到達温度は、好ましくは650℃以上である。
ここで、最高到達温度は、例えば、以下のようにして測定する。
すなわち、ツールの内部、具体的には、接合部と接触するツールのピン部先端近傍に、熱電対を設置する。そして、ツール内部の熱電対により、接合中の温度(接合部で上昇した温度)を連続的に計測する。そして、計測した接合中の最高温度を、最高到達温度とする。
(f)接合条件の制御
接合条件を適正に制御する、具体的には、ツール回転速度、ツール圧入量および加圧力について、次式(1)の関係を満足させることが重要である。なお、式(1)の左辺を、以下、Eともいう。
Figure 0007231797000004
式(1)中、
nは、接合条件の切り替え回数、
k+1は、k回目の接合条件の切り替え後のツール回転速度(rpm)、
k+1は、k回目の接合条件の切り替え時点からk+1回目の接合条件の切り替え時点までのツール圧入量(mm)、
k+1は、k回目の接合条件の切り替え後の加圧力(N)
である。
ただし、Rは初期ツール回転速度(rpm)、Aは初期接合条件でのツール圧入量(mm)(換言すれば、接合開始時点から1回目の接合条件の切り替え時点までのツール圧入量(mm))、Pは初期加圧力(N)とする。また、An+1は、n回目の接合条件の切り替え時点からツールの圧入最大深さ到達時点までのツール圧入量(mm)とする。
なお、切り替えを行う接合条件は、ツール回転速度および加圧力のうちの少なくとも一方とする。
上掲式(1)の関係を満足させる、すなわち、Eを41.0以下とすることにより、接合部の所定レベルでの硬度差を80HV以下とすることが可能となる。なお、Eは、好ましくは40以下である。なお、Eの下限については特に限定されるものではないが、Eは好ましくは10以上である。
ここで、n(接合条件の切り替え回数)は0以上の整数であればよい。すなわち、接合条件(ツール回転速度および加圧力)の切り替えは、任意であり、行っても、行わなくてもよい。なお、nが0の場合には、初期接合条件でのツール圧入量であるAが、接合開始時点からツールの圧入最大深さ到達時点までのツール圧入量(mm)となる。また、特に限定されるものではないが、nは5回以下が好ましい。
また、初期接合条件、すなわち、1回目の接合条件の切り替え前の接合条件である初期ツール回転速度および初期加圧力は、最高到達温度を850℃以下とし、かつ、上掲式(1)の関係を満足させることができれば、特に限定されず、被接合材となる鋼板の鋼種や板厚に応じて、決定すればよい。例えば、被接合材として、表層軟質層を有し、引張強さが980MPa以上で、板厚が1.6mmの鋼板を2枚使用する場合には、初期ツール回転速度(R)は200~2000rpmとすることが好ましい。また、初期加圧力(P)は、10~60kNとすることが好ましい。
また、接合条件を切り替える場合には、切り替え後のツール回転速度を初期ツール回転速度よりも低くする一方、切り替え後の加圧力を初期加圧力よりも大きくすることが好ましい。
例えば、被接合材として、表層軟質層を有し、引張強さが980MPa以上で、板厚が1.6mmの鋼板を2枚使用し、n(接合条件の切り替え回数)を1回とする場合、切り替え後のツール回転速度(R)は40~400rpmとすることが好ましい。また、切り替え後の加圧力(P)は、20~70kNとすることが好ましい。
なお、ツール回転速度および加圧力を切り替えるタイミングは、例えば、被接合材として、表層軟質層を有し、引張強さが980MPa以上で、板厚が1.6mmの鋼板を2枚使用し、n(接合条件の切り替え回数)を1回とする場合には、上板の上面からのツール(ピン部)圧入深さ(A)が0.8~2.4mmに到達したタイミングとすることが好ましい。
さらに、接合時間は3~60秒とすることが好ましい。
なお、最高到達温度は、外部熱源を利用して調整してもよい。また、上記以外の条件については特に限定されず、常法に従えばよい。
以下、実施例により、本発明の実施形態をより具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例によって制限を受けるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲で適宜変更を加えて実施することが可能である。これらは、いずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
表1に示す成分組成(残部はFeおよび不可避的不純物)の鋼を溶製し、連続鋳造によりスラブとした。ついで、スラブに熱間圧延を施し、熱延鋼板を得た。ついで、熱延鋼板に酸洗を施した。ついで、熱延鋼板に、冷間圧延および焼鈍を施し、冷延鋼板(板厚:1.2~1.6mm)を得た。ついで、得られた鋼板から、JIS5号引張試験片を圧延直角方向が長手方向(引張方向)となるように採取した。ついで、採取した試験片を用いてJIS Z 2241(1998)に準拠した引張試験を行い、引張強さ(TS)を測定した。また、上述した方法により、表層軟質層の有無の確認、および、表層軟質層の平均炭素濃度の測定を行った。結果を表1に併記する。
また、得られた鋼板から50mm×150mmの試験片を切り出し、表2に示す組み合わせで十字に重ね合わせた。なお、3枚重ねの場合には、上板と中板を十字に重ね合わせ、中板と下板は平行に重ね合わせた(すなわち、後述する十字引張強さの測定では、上板-中板間での十字引張強さを測定した。)。ついで、試験片の十字重ね合わせ部の中心に、表2に示す条件で摩擦攪拌点接合を施し、摩擦攪拌点接合継手を得た。
なお、ツールの形状は、ショルダー径:10mm、ピン径:4.8mm、ピン側面の傾斜角:10°とし、ピン長は接合条件に応じて1.8mm~4.6mmとした。また、試料番号1~5、9~14および16~21では、接合中、ツール回転速度および加圧力の切り替えを同時に1回行った。試料番号6では、接合中、加圧力のみ切り替えを1回行った。ここで、ツール回転速度および加圧力を切り替えるタイミングは、上板の上面からのツール圧入深さを基準とした(表2に記載の「切替時のツール圧入深さ」は、上板の上面からのツール圧入深さである。)。
また、ツールが圧入最大深さに到達した際に、目視により、ショルダーの外周部と上板の接触状態を確認したところ、試料番号13では、ショルダーの外周部と上板とが接触していなかった。一方、試料番号13以外のものはいずれも、ツールが圧入最大深さに到達した際にショルダーの外周部と上板とが接触していた。参考のため、図2に、試料番号13の摩擦攪拌点接合継手(環状溝部を有さない摩擦攪拌点接合継手)の鉛直断面の模式図を示す。
かくして得られた摩擦攪拌点接合継手について、上述した方法により、凹部の最深点のレベルの測定、接合界面の最高点のレベルの測定、接合部の所定レベルでの硬度の測定、および、環状溝部の有無の確認を行った。結果を表3に示す。ここで、表3に記載の接合部の所定レベルでの硬度は、No.1~9および13~21については鉛直方向位置:+TU×0.60で測定したもの、No.10および12については鉛直方向位置:+TU×0.50で測定したものを記載している。なお、No.1~4、9~10および12~21についてはいずれも、鉛直方向位置:+TU×0.50、または、鉛直方向位置:+TU×0.60で測定した硬度差が80HV以下であった。
また、同じ条件で同様の摩擦攪拌点接合継手を作成し、これを用いて、JIS Z3137に準拠する十字引張試験を行い、十字引張強さを測定した。結果を表3に示す。なお、十字引張強さが8.0kN以上の場合を合格とする。
Figure 0007231797000005
Figure 0007231797000006
Figure 0007231797000007
表3に示したように、発明例ではいずれも、十字引張強さが8.0kN以上であり、高い十字引張強さが得られていた。
一方、比較例では、十分な継手強度が得られなかった。
1 鋼板
2 接合部
3 環状溝部
4 未接合界面
2-1 凹部
2-2 第1の流動部
2-3 第2の流動部
2-4 接合界面

Claims (5)

  1. 重ね合わせた2枚以上の鋼板と、該鋼板の接合部と、該接合部の上面の環状溝部と、を有する、摩擦攪拌点接合継手であって、
    前記鋼板のうちの少なくとも1枚が表層軟質層を有し、
    前記接合部は、凹部と、該凹部に隣接する第1の流動部と、該第1の流動部に隣接する第2の流動部と、該第1の流動部と該第2の流動部の境界である接合界面と、を有し、
    前記凹部の最深点の鉛直方向位置が、前記鋼板の下側合せ面を基準位置として、-0.5mm以下、および、-TL×0.50以下のうちの少なくとも一方を満足し、
    前記接合界面の最高点の鉛直方向位置が、前記鋼板の上側合せ面を基準位置として、+TU×0.50以上であり、
    鉛直方向位置:+TU×0.50または+TU×0.60において、水平方向位置で前記接合界面の位置の硬度と、前記接合界面の位置+350μmの位置の硬度との差が、80HV以下である、摩擦攪拌点接合継手。
    ここで、上板および下板はそれぞれ、重ね合わせた2枚以上の鋼板のうち、最上部に位置する鋼板および最下部に位置する鋼板であり、
    TUは、上板の鋼板の板厚(mm)、
    TLは、下板の鋼板の板厚(mm)、
    上側合せ面は、上板と、該上板に隣接する鋼板との合せ面、
    下側合せ面は、下板と、該下板に隣接する鋼板との合せ面
    である。
    また、鉛直方向位置は、基準位置よりも上側の場合を+、下側の場合を-とする。水平方向位置は、基準位置からの距離とする。
  2. 前記表層軟質層の平均炭素濃度が、前記表層軟質層を有する鋼板の成分組成の炭素濃度の80%以下である、請求項1に記載の摩擦攪拌点接合継手。
  3. ショルダー部と該ショルダー部から突出するピン部とを有するツールを回転させながら、該ピン部を被接合材である重ね合わせた2枚以上の鋼板に圧入し、該鋼板を接合する、摩擦攪拌点接合方法であって、
    前記被接合材である鋼板のうちの少なくとも1枚が表層軟質層を有し、
    前記ツールの圧入最大深さの鉛直方向位置が、前記鋼板の下側合せ面を基準位置として、-0.5mm以下、および、-TL×0.50以下のうちの少なくとも一方を満足し、かつ、前記ツールが圧入最大深さに到達した際に前記ショルダーと上板とが接触する状態であり、
    最高到達温度が850℃以下であり、
    次式(1)の関係を満足する、摩擦攪拌点接合方法。
    Figure 0007231797000008
    式(1)中、
    nは、接合条件の切り替え回数、
    k+1は、k回目の接合条件の切り替え後のツール回転速度(rpm)、
    k+1は、k回目の接合条件の切り替え時点からk+1回目の接合条件の切り替え時点までのツール圧入量(mm)、
    k+1は、k回目の接合条件の切り替え後の加圧力(N)
    である。
    ただし、Rは初期ツール回転速度(rpm)、Aは初期接合条件でのツール圧入量(mm)、Pは初期加圧力(N)とする。また、An+1は、n回目の接合条件の切り替え時点からツールの圧入最大深さ到達時点までのツール圧入量(mm)とする。
    また、上板および下板はそれぞれ、重ね合わせた2枚以上の鋼板のうち、最上部に位置する鋼板および最下部に位置する鋼板であり、
    TLは、下板の鋼板の板厚(mm)、
    下側合せ面は、下板と、該下板に隣接する鋼板との合せ面
    である。
    さらに、鉛直方向位置は、基準位置よりも上側の場合を+、下側の場合を-とする。
  4. 前記表層軟質層の平均炭素濃度が、前記表層軟質層を有する鋼板の成分組成の炭素濃度の80%以下である、請求項3に記載の摩擦攪拌点接合方法。
  5. 請求項3または4に記載の摩擦攪拌点接合方法により、重ね合わせた2枚以上の鋼板を接合する、摩擦攪拌点接合継手の製造方法。
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