JP7230448B2 - 溶融Al系めっき鋼板 - Google Patents

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Description

本発明は、耐疵付き性に優れる溶融Al系めっき鋼板に関する。
めっき鋼板をプレス加工などにより加工して得られた加工品を運搬する場合、一般的には複数の加工品が積み重ねられて運搬されることが多い。そのため、運搬時にめっき鋼板のエッジ部が加工品のめっき面と接触することにより、鋼素地に達するような疵がめっき面に入ることがある。また、めっき鋼板が屋根や壁などに用いられる場合、施工現場においてめっき鋼板が工具や資材と接触して擦れることもある。このような場合にも、鋼素地に達するような疵がめっき面に入ることがある。
めっき面に鋼素地に達するような疵が入った場合、めっき鋼板がZn(亜鉛)系めっき鋼板であれば、めっき層のZnの犠牲防食作用により鋼素地が直ちに腐食することはない。しかしながら、めっき鋼板がAl(アルミニウム)系めっき鋼板である場合には、めっき層のAlによる鋼素地に対する犠牲防食作用がZn系めっき鋼板と比較して小さいため、鋼素地が腐食して意匠面、耐久性の観点から問題になることがある。
このような問題を解決するために、めっき層を硬質化する手法、または、めっき面に塗装を施す手法が知られている。
特許文献1には、溶融Al-Zn-Si合金めっき鋼板のめっき層にMgを添加することにより、めっき層に曲げ加工を行った場合にめっき層のクラック率評定が大きくなる、すなわちめっき層の延性が小さくなることが開示されている。言い換えれば、めっき層が硬化していることが示されている。
特許文献2には、基材鋼材の表面にアルミニウム・亜鉛合金めっき層が施され、その上層に架橋性官能基を有する有機ケイ化化合物を造膜成分とする塗膜が被覆されている表面処理溶融めっき鋼材が開示されている。当該技術では、アルミニウム・亜鉛合金めっき層の上層に塗膜を被覆することにより、加工部耐食性、耐疵付き性、および耐汚染性に優れた表面処理溶融めっき鋼材を実現している。
特表2008-534786号公報 特開2013-044025号公報
しかしながら、特許文献1の技術では、塗装を施した後のエッジアンダーカット長さが増大し、耐食性が低下することが開示されている。すなわち、めっき層を硬質化する代わりに他の性能が低下してしまう。また、特許文献2の技術では、塗膜を形成するためにコストアップになってしまう。
本発明の一態様は、耐疵付き性以外の性能が低下せず、かつ、コストをかけずに製造することができる、耐疵付き性に優れる溶融Al系めっき鋼板を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る溶融Al系めっき鋼板は、鋼板の表面に、Al系合金の被覆層を有する溶融Al系めっき鋼板であって、前記被覆層は、前記鋼板の表面に形成されたAlを主体とするめっき層と、前記めっき層と前記鋼板との間に形成された、Al-Fe-Si系合金からなる合金層とを有し、前記表面に平行な方向における基準となる長さを基準長さとし、前記表面に垂直な平面によって前記溶融Al系めっき鋼板を切断したときの断面において、前記平行な方向における幅であって前記基準長さに相当する幅を有する領域における前記めっき層と前記合金層との境界線の全長が、前記基準長さの1.3倍以上である。
本発明の一態様によれば、耐疵付き性以外の性能が低下せず、かつ、コストをかけずに製造することができる、耐疵付き性に優れる溶融Al系めっき鋼板を実現できる。
実施形態1に係る溶融Al系めっき鋼板の、基材鋼板の表面に対して垂直な断面の模式図である。 (a)は、断面観察長さを説明するための模式図であり、(b)は、めっき層と合金層との界面の長さを説明するための図である。 実施形態2に係る溶融Al系めっき鋼板の、基材鋼板の表面に対して垂直な断面の模式図である。 本発明の実施例および比較例としての溶融Al系めっき鋼板における合金層の模式図である。
以下、本発明について、詳細に説明する。なお、本明細書中の「A~B」は、「A以上、B以下」を意味する。例えば、明細書中で「1%~5%」または「1~5%」と記載されていれば、「1%以上、5%以下」を示す。また、本明細書中では、特に明記しない限り、組成を示す際に用いる「%」は、「質量%」を意味するものとする。
(本発明の概要)
本発明の溶融Al系めっき鋼板は、基材鋼板の表面に、Al系合金の被覆層を有する溶融Al系めっき鋼板であって、被覆層は、基材鋼板の表面に形成されたAlを主体とするめっき層(以下では、Alめっき層とも称する)と、めっき層と基材鋼板との間に形成された、Al-Fe-Si系合金からなる合金層とを有している。
ここで、Al-Fe-Si系合金は、Alめっき層および基材鋼板よりも硬いため、Alめっき層の表面から疵が入ろうとしたときに、硬い合金層で疵の進行が止まり、基材鋼板まで達しないことがある。しかしながら、硬い合金層がAlめっき層と基材鋼板の界面に存在するだけでは、疵が基材鋼板に到達することを阻止するために十分ではない。
本発明者らは、鋭意研究の結果、溶融Al系めっき鋼板の断面において、Alめっき層と合金層との界面の長さが断面観察長さに対して1.3倍以上の長さを有するように、溶融Al系めっき鋼板の構造を設計することにより、疵が基材鋼板に到達することを抑制することができることを見出した。
溶融Al系めっき鋼板の断面において、Alめっき層と合金層との界面の長さが断面観察長さに対して1.3倍以上の長さを有するという条件を満たすための具体的な手段の例について、以下の実施形態1および実施形態2において詳細に説明する。
〔実施形態1〕
(溶融Al系めっき鋼板1の構造)
図1の(a)および(b)は、本実施形態における溶融Al系めっき鋼板1の、基材鋼板10の表面に対して垂直な断面の模式図である。なお、後述するように、溶融Al系めっき鋼板1の構造が、図1の(a)に示す構造となるか、図1の(b)に示す構造となるかは、溶融Al系めっき鋼板1の合金層22に含まれるCrの量による。
図1の(a)および(b)に示すように、溶融Al系めっき鋼板1は、基材鋼板10(鋼板)と、被覆層20とを有している。
基材鋼板10は、特に制限されるものではなく、従来から溶融Al系めっき鋼板のめっき原板として適用されている鋼種をはじめ、用途に応じて種々の鋼種の中から選択することができる。例えば、耐食性を重視する用途ではステンレス鋼板を基材鋼板10として適用すればよい。基材鋼板10の板厚は、限定されないが、例えば0.4~3.2mmとすることができる。
被覆層20は、Alを主体とするめっき層21と、合金層22とを含んでいる。被覆層20は、質量%で、0.15%以上5%以下のCr、および、1.0%以上7.0%以下のSiを含む。本明細書中では、これらの層の基材鋼板10への付着量に関して、被覆層20の付着量を被覆材料付着量、めっき層21の付着量をめっき付着量、合金層22の付着量を合金付着量と、それぞれ称する。
被覆層20中のAlの濃度範囲は特に定めないが、75%よりも大きいことが好ましい。これは、溶融Al系めっき鋼板において、めっき層中のAlの濃度が高いほど長期耐久性が優れるためである。
合金付着量は、めっき浴の温度、めっき浴の組成などの条件によって変化する。被覆層20中のFeの濃度は、めっき付着量と合金付着量との比が変動するため濃度範囲を設定しない。
合金層22は、めっき層21と基材鋼板10の表面との間に形成されている層である。合金層22は、Al-Fe-Si系合金部23(第1合金部)と、Al-Fe系合金層24(第2合金部)とを含む。
なお、以降における合金層22の組成の分析は、合金層断面組織のEDS(Energy Dispersive X-ray Spectrometry)測定による結果であるが、EDS測定以外の分析手法を否定するものではない。
Al-Fe-Si系合金部23は、めっき層21とAl-Fe系合金層24と間に位置しており、めっき層21と接している。Al-Fe-Si系合金部23は、2%以上10%以下のCrを含むAl-Fe-Si系金属間化合物からなる。Al-Fe-Si系合金部23の代表的な組成は、Al:60~70%、Fe:20%~30%、Si:5%~12%、Cr:2%~10%である。Al-Fe-Si系金属間化合物は、その組成より恐らくAlFeSiから構成されると考えられる。
Al-Fe-Si系合金部23は、粒状の、Crを含むAl-Fe-Si系金属間化合物(以下では、単にAl-Fe-Si系金属間化合物と称する)が、めっき層21とAl-Fe系合金層24の間に集合することで形成される。
被覆層20におけるAl-Fe-Si系金属間化合物の割合は、被覆層20中のCrの濃度に比例して増加する。そのため、被覆層20中のCrの濃度が低い(具体的には、0.5%以下)と、Al-Fe-Si系金属間化合物は、Al-Fe系合金層24上に互いに離散した粒状(塊状)に形成される(図1の(b)参照)。この場合、Al-Fe-Si系合金部23は、層状にならず不連続となる。一方で、被覆層20中のCrの濃度が高い(具体的には、0.5%よりも多い)と、Al-Fe-Si系金属間化合物が多量に形成されるため、Al-Fe-Si系合金部23は、層状(連続)となる(図1の(a)参照)。
Al-Fe系合金層24は、Al-Fe-Si系合金部23と、基材鋼板10との間に位置しており、基材鋼板10と接している。Al-Fe系合金層24は、第1層25と第2層26とを含む。Al-Fe系合金層24は、Crの含有量が1%以下となっている。
第1層25は、Al-Fe系合金層24における、溶融Al系めっき鋼板1の表層側に位置している。第1層25の代表的な組成は、Al:55%~70%、Fe:30%~40%、Si:0.5%~4%、Cr:0.1%~1.0%である。第1層25は、その組成より恐らくAl13Feから構成されると考えられる。
第2層26は、Al-Fe系合金層24における、溶融Al系めっき鋼板1の鋼板側に位置している。第2層26の代表的な組成は、Al:45~60%、Fe:40%~50%、Si:0.5%~5%、Cr:0.05%~0.7%である。第2層26は、その組成より恐らくAlFeから構成されると考えられる。
(溶融Al系めっき鋼板の製造方法)
溶融Al系めっき鋼板1の製造方法は、浸漬工程と、冷却工程とを含む。
浸漬工程は、質量%で、溶融Al系めっき浴(以下では、単にめっき浴と呼称する)に基材鋼板10を浸漬する工程である。
本実施形態におけるめっき浴は、0.15%以上5%以下のCr、および、1.0%以上7.0%以下のSiを含む。なお、溶融Al系めっき鋼板1の成分組成は、めっき浴の組成とほぼ同一となる。
めっき浴中のFe濃度は、実操業における、基材鋼板10またはめっき設備(具体的には、めっき釜、浸漬ロール)などからのめっき浴中への鉄の溶出と、浸漬工程後に鋼板により持ち出されるめっき浴を補充するために供給される新浴(Feをほとんど含まない)による希釈とのバランスで決まる。めっき浴中のFe濃度は、めっき浴温度などの操業条件によるが、通常は1.5%~3.0%の範囲に収まる。
めっき浴中には必要に応じて、製造性や耐食性向上を目的にアルカリ土類金属、または、スパングルの微細化を目的にTiおよび/またはBの添加をしてもよい。この場合、被覆層20中におけるそれぞれの濃度は1%以下まで添加してもよい。
また、めっき浴中には、Pb、Sb、Sn、Cd、Ni、Mn、Mg、Cu、Znなどをそれぞれの目的に応じて含ませてもよい。また、これらの元素は、原料などから不可避的に混入する場合もある。これらの元素は、被覆層20中にそれぞれ最大で1%程度含まれていてもよい。
めっき浴の融点は、その浴組成により変化するが、おおむね600~640℃である。そのため、当該融点に合わせてめっき浴の温度を650℃~700℃に設定すればよい。
浸漬工程において、めっき浴浸漬直前の基材鋼板10の温度は、620℃~700℃であることが好ましい。これは、基材鋼板10の温度が620℃未満では、めっき浴と基材鋼板10との反応が十分に進行せず、被覆層20と基材鋼板10とを十分に密着させることができない虞があるためである。一方で、基材鋼板の温度が700℃を超えると、過剰な厚さの合金層22が形成される虞がある。また、めっき浴温度から100℃以上異なるような、極端に離れた温度の基材鋼板10を連続的にめっき浴に浸漬・通過させることは、めっき浴温度の管理上、大きな困難を伴う。
基材鋼板10のめっき浴への浸漬時間は、1秒~5秒とすることが好ましい。浸漬時間が1秒未満では、めっき浴と基材鋼板10の反応時間が十分に確保されず、被覆層20と基材鋼板10とを十分に密着させることができない虞がある。また、浸漬時間が5秒を超えると、過剰な厚さの合金層22を形成する虞がある。
基材鋼板10へのめっき付着量は、特に限定されるものでは無いが、例えば、片面付着量で20g/m以上400g/m以下の範囲を挙げることができる。
冷却工程は、前記溶融Al系めっき浴から引き上げられた基材鋼板10を冷却する工程である。冷却工程において、めっき浴から基材鋼板10を引き上げた時点から凝固までの冷却速度を5℃/秒~30℃/秒(より好ましくは、10℃/秒~20℃/秒)とすることにより、溶融Al系めっき鋼板1を製造することができる。
以上のように、溶融Al系めっき鋼板1は、0.15%以上5%以下のCr、および、1.0%以上7.0%以下のSiを含むめっき浴を用いて製造される。換言すれば、溶融Al系めっき鋼板1の被覆層20は、0.15%以上5%以下のCr、および、1.0%以上7.0%以下のSiを含む。
上記の製造方法で製造された溶融Al系めっき鋼板1の合金層22は、(1)めっき層21と接する、Al-Fe-Si系合金からなるAl-Fe-Si系合金部23と、(2)基材鋼板10に接するAl-Fe系合金からなる、連続層であるAl-Fe系合金層24と、を含む。
ここで、上述したように、被覆層20中のCrの濃度が低い(具体的には、0.5%以下)と、Al-Fe-Si系金属間化合物は、Al-Fe系合金層24上に互いに離散した粒状(塊状)に形成される。そのため、めっき層20と合金層22との界面の長さが、断面観察長さの1.3倍以上となる。
また、被覆層20中のCrの濃度が高い(具体的には、0.5%よりも多い)と、Al-Fe-Si系金属間化合物が多量に形成されるため、Al-Fe-Si系合金部23は、層状(連続)となる。この場合には、Al-Fe-Si系合金部23は、粒状のAl-Fe-Si系金属間化合物が凝集することによって層状に形成される。そのため、Al-Fe-Si系合金部23の表面に凹凸が形成される。その結果、めっき層20と合金層22との界面の長さが、断面観察長さの1.3倍以上となる。
ここで、本明細書における「断面観察長さ」および「めっき層20と合金層22との界面の長さ」について、図2を参照しながら説明する。図2の(a)は、断面観察長さを説明するための模式図であり、図2の(b)は、めっき層20と合金層22との界面の長さを説明するための図である。
本明細書における断面観察長さL1は、図2の(a)に示すように、例えば、光学顕微鏡または走査型電子顕微鏡により溶融Al系めっき鋼板1を観察する場合において、基材鋼板10の表面に平行な線分であって、観察画面の一方の端から他方の端までの線分の長さを意味する。
本明細書におけるめっき層20と合金層22との界面の長さL2は、図2の(b)に示すように、光学顕微鏡または走査型電子顕微鏡により溶融Al系めっき鋼板1を観察する場合において、観察画面における、めっき層21と合金層22との境界線の全長を意味する。
換言すれば、「めっき層20と合金層22との界面の長さが、断面観察長さの1.3倍以上である」とは、基材鋼板10の表面に平行な方向における基準となる長さを基準長さとしたときに、基材鋼板10の表面に垂直な平面によって溶融Al系めっき鋼板1を切断したときの断面において、基材鋼板10の表面に平行な方向における幅であって上記基準長さに相当する幅を有する領域におけるめっき層21と合金層22との境界線の全長が、上記基準長さの1.3倍以上であることを意味する。
なお、本願発明の特徴点である「めっき層20と合金層22との界面の長さが、断面観察長さの1.3倍以上である」ことを特定するためには、上記基準長さとしての観察画面の幅(すなわち、観察画面における基材鋼板10の表面に平行な方向における長さ)が少なくとも100μmである必要がある。
上記のように、本実施形態の溶融Al系めっき鋼板1は、めっき層20と合金層22との界面の長さが、断面観察長さの1.3倍以上となっている。当該構造を有する溶融Al系めっき鋼板1は、Alめっき層の表面から疵が入ろうとしたときに、従来の溶融Al系めっき鋼板と比べて、疵が基材鋼板に到達することをより抑制することができる。これは、鋼板のエッジ部など鋭利なものがめっき層21と接触して疵が入る場合に、めっき層21と合金層22との界面において疵を進展させようとする力の方向が変わることにより、疵が合金層22の内部で止まり、基材鋼板10まで到達しないためであると考えられる。
以上のように、本実施形態の溶融Al系めっき鋼板1は、耐疵付性に優れ、耐食性の低下がなく、かつ、コストをかけずに製造することができる。
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について説明すれば、以下のとおりである。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
(溶融Al系めっき鋼板1Aの構造)
図3は、本実施形態における溶融Al系めっき鋼板1Aの、基材鋼板10の表面に対して垂直な断面の模式図である。
図3に示すように、溶融Al系めっき鋼板1Aは、実施形態1における被覆層20に代えて被覆層20Aを有している。
被覆層20Aは、めっき層21と、合金層22Aとを含んでいる。
合金層22Aは、めっき層21と基材鋼板10の表面との間に形成されている層である。合金層22Aは、Al-Fe-Si系合金からなっている。
溶融Al系めっき鋼板1Aでは、合金層22AがCrを実質的に含まない。このため、溶融Al系めっき鋼板1Aでは、実施形態1における溶融Al系めっき鋼板1とは異なり、合金層22Aにおいて、粒状の、Crを含むAl-Fe-Si系金属間化合物が形成されない。そのため、従来のように基材鋼板10に対して単にめっきを施すだけでは、めっき層と合金層との界面の長さを断面観察長さの1.3倍以上とすることができない。
そこで、溶融Al系めっき鋼板1Aでは、めっきを施す前に、基材鋼板10に対して所定の表面粗さを付与する処理(以降では、高粗度化処理と称する)を行う。高粗度化処理は、特に限定されるものではないが、例えば、所定の粒度を有する粒子(例えば、アルミナ粒子)を用いたブラスト処理によって行うことができる。
次に、溶融Al系めっき鋼板1Aの製造方法について説明する。溶融Al系めっき鋼板1Aの製造方法は、基材鋼板10の表面に対して所定の表面粗さを付与する高粗度化処理工程と、浸漬工程と、冷却工程とを含む。冷却工程は、実施形態1と同様である。また、浸漬工程は、めっき浴にCrを含ませないこと以外は、実施形態1と同様である。
溶融Al系めっき鋼板1Aは、基材鋼板10に対して予め高粗度化処理を行うことにより、めっき層と合金層との界面の長さが断面観察長さの1.3倍以上となっている。その結果、従来の溶融Al系めっき鋼板と比べて、疵が基材鋼板に到達することをより抑制することができる。また、溶融Al系めっき鋼板1Aは、耐食性の低下がなく、かつ、コストをかけずに製造することができる。
本発明の発明例および比較例として、表1に示す化学組成を有する冷延焼鈍鋼板(寸法:130mm×40mm、板厚:0.8mm、表面粗さRa:0.50μm(JIS B0601「線粗さ」に基づく))を基材鋼板として、溶融Al系めっき鋼板を作製した。なお、表1に示す数値は、質量%の値である。
Figure 0007230448000001
溶融Al系めっき鋼板は、以下のようにして作製した。まず、めっき試験シミュレータ(レスカ製)を用いて、基材鋼板を50vol%H-N雰囲気下にて720℃に昇温し、15秒保持することにより還元加熱を施した後、表2に示す組成となるよう建浴した溶融Al系めっき浴に基材鋼板を浸漬した。なお、No.2の溶融Al系めっき鋼板の作成に用いた冷延焼鈍鋼板については、溶融Alめっきを施す前に、高粗度化処理を行った。具体的には、冷延焼鈍鋼板に粒度#100のアルミナ粒子によるブラスト処理を行うことにより、表面粗さRaを1.2μmに調整した。
Figure 0007230448000002
次に、基材鋼板を溶融Al系めっき浴から引き上げ、冷却することにより溶融Al系めっき鋼板を作製した。溶融Al系めっき浴のデータ、および、冷却条件を表3に示す。各実施例としての溶融Al系めっき鋼板は、それぞれ7枚ずつ作製した。
Figure 0007230448000003
(合金層の構造の特定)
作製した溶融Al系めっき鋼板におけるめっきが施された部分のほぼ中央部から40mm×40mmの大きさに切断した。次に、切り出した鋼板を樹脂埋めした後研磨を施して断面観察用のサンプルとした。
上記断面観察用のサンプルを48%のHF溶液2mlおよびグリセリン20mlを混合した溶液に2s~10s浸漬しエッチングを施した後、光学顕微鏡または電子顕微鏡にて観察することにより、合金層の構造を調査した。また、必要に応じて、合金層の組成を特定するためにEDSによる成分分析を行った。
各溶融Al系めっき鋼板の合金層の構造を表4に示す。なお、表4におけるA~Dは、以下のとおりである。また、A~Dの合金層の構造の模式図を図4に示す。
A:連続したAl-Fe-Si系合金層の単層構造
B:2層のAl-Fe系合金層からなる複層構造
C:Alめっき層と接する連続なAl-Fe-Si系合金部、および2層のAl-Fe系合金層からなる複層構造
D:Alめっき層と接する不連続なAl-Fe-Si系合金部、および2層のAl-Fe系合金層からなる複層構造。
(めっき層と合金層の界面の長さの測定方法)
光学顕微鏡を用いて倍率200倍で上記断面観察用のサンプルの断面観察を行い、断面観察写真を撮影した。撮影した断面観察写真を用いて、サンプルごとに、断面観察長さL1、および、めっき層と合金層の界面の長さL2を測定した(図2参照)。測定した断面観察長さL1、および、めっき層と合金層の界面の長さL2を用いて、断面観察長さL1に対するめっき層と合金層の界面の長さL2の比率(L2/L1)を算出した。算出した結果を表4に示す。
(耐疵付き試験方法)
製造した溶融Al系めっき鋼板について、めっき鋼板の表面から入る疵を模擬するため、自動クロスカット試験機(No.551-AUTO2、株式会社安田精機製作所製)を用いて、めっき表面から切り込み(クロスカット)を入れた。具体的には、NTカッターの刃を用いて、クロスカット試験機の荷重最大の条件でめっき表面に切り込みを入れた。
クロスカットを入れた溶融Al系めっき鋼板各7枚のうち4枚は、切り込みの到達箇所を評価するために用い、残りの3枚を耐食性評価に用いた。
クロスカットを入れた溶融Al系めっき鋼板を、切り込み部を含むように切断した後、樹脂に埋め込んだ。次に、樹脂を研磨して溶融Al系めっき鋼板の断面を観察できるサンプルを調製した。光学顕微鏡を用いて溶融Al系めっき鋼板の断面を観察することにより、切り込みの到達箇所を特定した。特定した結果を表4に示す。表4に示す<1>、および<2>は、以下のとおりである。
<1>切り込みの到達箇所が被覆層の内部であったもの。すなわち、めっき層、合金層の内部であったもの。
<2>切り込みの到達箇所が、基材鋼板の内部であったもの。
製造した溶融Al系めっき鋼板のそれぞれについて各4枚ずつ調査し、<2>に分類された供試材が4枚のうち1枚でもあれば、当該溶融Al系めっき鋼板の切り込み到達箇所が<2>であると判定した。
また、クロスカットを入れた溶融Al系めっき鋼板各3枚ずつに、JIS Z 2371:2015「塩水噴霧試験方法」に準じて塩水噴霧試験を行い、切り込み部から赤錆が発生するまでの時間を評価した。当該試験結果を表4に示す。
塩水噴霧試験による赤錆が発生するまでの時間が400時間以上であれば、溶融Al系めっき鋼板の表面からの疵付きによっても疵が鋼板にまで到達することがなく、実用上、十分な耐疵付き性を有すると判断される。
Figure 0007230448000004
表4に示すように、No.1およびNo.3の溶融Al系めっき鋼板では、めっき前の基材鋼板が冷延焼鈍済み鋼板であったので、めっき層と合金層との界面は特に凹凸を有しておらず、L2/L1は1.0であった。そのため、切り込みは基材鋼板の内部にまで達していた。また、早期に赤錆が発生してしまい、耐疵付き性は不良であった。
これに対して、No.2の溶融Al系めっき鋼板は、めっきを行う前に基材鋼板に高粗度化処理を行い、No.1と同じ条件によって作製したものである。その結果、めっき層と合金層との界面に凹凸が形成されており、L2/L1は1.3であった。そのため、切り込みは、めっき層または合金層の内部に留まっており、基材鋼板の内部に達していなかった。また、赤錆発生時間は400時間を越え、耐疵付き性は良好であった。
No.4~No.10の溶融Al系めっき鋼板では、作製に用いためっき浴の組成が、0.15%以上5%以下のCr、および、1.0%以上7.0%以下のSiのうち少なくとも一方を満たさない組成であった。その結果、粒状の、Crを含むAl-Fe-Si系金属間化合物が形成されなかったため、めっき層と合金層との界面は特に凹凸を有しておらず、L2/L1は1.1であった。そのため、切り込みは基材鋼板の内部にまで達していた。また、赤錆発生時間は400時間未満であり、耐疵付き性は不良であった。
No.11~No.16の溶融Al系めっき鋼板では、めっき前において基材鋼板に高粗度化処理を行っていない冷延焼鈍済み鋼板を用いていたが、作製に用いためっき浴の組成が、0.15%以上5%以下のCr、および、1.0%以上7.0%以下のSiであったため、粒状の、Crを含むAl-Fe-Si系金属間化合物が形成した。そのため、めっき層と合金層との界面に凹凸が形成され、L2/L1は1.4~1.9であった。その結果、切り込みはめっき層または合金層の内部に留まっており、基材鋼板の内部に達していなかった。また、赤錆発生時間は400時間を越え、耐疵付き性は良好であった。
1、1A 溶融Al系めっき鋼板
10 基材鋼板(鋼板)
20、20A 被覆層
21 めっき層
22、22A 合金層
23 Al-Fe-Si系合金部(第1合金部)
24 Al-Fe系合金層(第2合金部)

Claims (4)

  1. 鋼板の表面に、Al系合金の被覆層を有する溶融Al系めっき鋼板であって、
    前記被覆層は、
    SiおよびCrをそれぞれ不可避量以上含有し、Ti、B、Pb、Sb、Sn、Cd、Ni、Mn、Mg、Cu、およびZnをそれぞれ不可避量から1質量%以下の範囲で含み、
    前記鋼板の表面に形成されたAlを主体とするめっき層と、
    前記めっき層と前記鋼板との間に形成された、Al-Fe-Si系合金からなる合金層とを有し、
    前記鋼板へのめっき付着量は、片面付着量が20g/m 以上400g/m 以下であり、
    前記表面に平行な方向における基準となる長さを基準長さとし、
    前記表面に垂直な平面によって前記溶融Al系めっき鋼板を切断したときの断面において、前記平行な方向における幅であって前記基準長さに相当する幅を有する領域における前記めっき層と前記合金層との境界線の全長が、前記基準長さの1.3倍以上であることを特徴とする溶融Al系めっき鋼板。
  2. 前記合金層は、
    前記めっき層と接する、Al-Fe-Si系合金からなる第1合金部と、
    前記鋼板に接するAl-Fe系合金からなる、連続層である第2合金部と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の溶融Al系めっき鋼板。
  3. 前記被覆層は、質量%で、1.0%以上7.0%以下のSiを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の溶融Al系めっき鋼板。
  4. 前記被覆層は、質量%で、さらに、0.15%以上5%以下のCrを含むことを特徴とする請求項3に記載の溶融Al系めっき鋼板。
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