JP2003034854A - 高温プレス成形性に優れた溶融アルミめっき鋼板 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 （修正有） 【課題】高温でのプレス成型時にめっきの合金化反応を
抑制し、かつ外観の美麗な溶融アルミめっき鋼板を提供
する。 【解決手段】 質量％で、Ｃ：０．１％以上０．６％以
下を含む鋼板、さらにＭｎ：０．１％以上３．０％以下
を含む鋼板、さらにＢ：０．０００２％以上０．０１％
以下を含む鋼板、さらにＳｉ：０．０１％以上０．５％
以下を含む鋼板、さらにＰ：０．１％以下、Ｓ：０．０
２％以下、Ａｌ：０．００５％以上０．１％以下を含む
鋼板、さらに（Ｔｉ＋Ｃｒ）が０．００５％以上、Ｔ
ｉ：０．２％以下、Ｃｒ：１．０％以下を含む鋼板に、
Ｓｉ：３％以上１５％以下、Ｃｒ：０．０１％以上２％
以下を含み、残部Ａｌ及び不可避的不純物からなるアル
ミめっき被覆層を施したことを特徴とする高温プレス成
形性に優れた溶融アルミめっき鋼板。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、高温でのプレス成
形性に優れ、かつ極めて高い機械強度を有し、良好な耐
食性、外観を有する溶融アルミめっき鋼板に関するもの
である。

【０００２】

【従来の技術】近年、環境保護と地球温暖化を防止する
ため化石燃料の消費を抑制する動きが強まっており、移
動手段として我々の生活に欠かせない自動車においても
車体の軽量化が強く求められている。この軽量化を達成
するためには、従来に比べ高い機械強度を有する材料を
使用することが必要になるが、一般に高い強度を有する
材料は曲げ加工などの成形加工において形状凍結性が低
下する傾向にあり、また複雑な形状のものに対しては成
形そのものが困難である。

【０００３】これらの問題を解決する方法の一つとし
て、８００℃以上の高温に加熱し、プレス加工を行った
後冷却するいわゆる高温プレスによる方法が有望であ
る。この手法によれば、一旦高温に加熱して軟化した状
態にすれば容易にプレス成形でき、さらに成形後の冷却
時の焼入れ効果により高強度化を可能にしたもので、良
好な形状凍結性と高強度を有した成形品が得られる。し
かし、鋼板を８００℃程度の高温に加熱するため表面に
酸化物（スケール）が発生し、それを取り除くための工
程が発生する。また、耐食性を必要とする部材などで
は、表面に防錆処理や金属被覆する必要があり、表面洗
浄化工程、表面処理工程が必要となる。

【０００４】これらの欠点を克服する方法として、特開
２０００−３８６４０号公報に開示されているように、
所定の鋼成分を有する鋼にＡｌ系の金属被覆を施した鋼
板を用いる知見が示されている。しかしながら、この知
見では目的とする材料強度は得られるものの、プレス前
の予備加熱条件によっては、鋼板のＦｅとめっき層のＡ
ｌによる合金層が成長しすぎて表面が荒れ、外観を損ね
ると共に、耐食性が低下するおそれがある、という欠点
がある。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、加熱時にお
ける上記のＡｌ−Ｆｅ合金層の成長を制御することで美
麗な外観を有し、かつ優れた耐食性を有した高強度成形
品を可能とする高温プレス用溶融アルミめっき鋼板を提
供するものである。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本発明者らは、鋼板成分
およびめっき浴組成が高温プレス成形性に及ぼす諸因子
を詳細に検討した結果、特定の元素を含有する鋼板を使
用し、かつめっき浴成分を制御することで合金層成長を
制御でき、高い強度を有する外観良好な成形品を得るこ
とができることを見いだした。すなわち、鋼板の高強度
化にはＣ、Ｍｎ、Ｂの添加と、Ｓｉ、Ｐ、Ｓ、Ａｌ、Ｔ
ｉ、Ｃｒをある量に制限することが有効であり、冷却時
に十分な焼入れ効果が得られ１０００〜２０００ＭＰａ
の高い強度が得られること、かつ鋼板の酸化を防止し美
麗な外観を得るためには、Ａｌ、Ｓｉ、Ｃｒを主成分と
するめっき金属の被覆が有効であり、特にＳｉとＣｒの
働きによって、加熱時のＡｌ−Ｆｅ合金化反応が抑制さ
れることを見出した。

【０００７】本発明によれば、 （１）質量％で、Ｃ：０．１％以上０．６％以下を含
み、残部Ｆｅ及び不可避的不純物からなる鋼板に、Ｓ
ｉ：３％以上１５％以下、Ｃｒ：０．０１％以上２％以
下を含み、残部Ａｌ及び不可避的不純物からなるアルミ
めっき被覆層を施したことを特徴とする高温プレス成形
性に優れた溶融アルミめっき鋼板。 （２）質量％で、Ｃ：０．１％以上０．６％以下、Ｍ
ｎ：０．１％以上３．０％以下を含み、残部Ｆｅ及び不
可避的不純物からなる鋼板に、Ｓｉ：３％以上１５％以
下、Ｃｒ：０．０１％以上２％以下を含み、残部Ａｌ及
び不可避的不純物からなるアルミめっき被覆層を施した
ことを特徴とする高温プレス成形性に優れた溶融アルミ
めっき鋼板。

【０００８】（３）Ｃ：０．１％以上０．６％以下、Ｍ
ｎ：０．１％以上３．０％以下、Ｂ：０．０００２％以
上０．０１％以下を含み、残部Ｆｅ及び不可避的不純物
からなる鋼板に、Ｓｉ：３％以上１５％以下、Ｃｒ：
０．０１％以上２％以下を含み、残部Ａｌ及び不可避的
不純物からなるアルミめっき被覆層を施したことを特徴
とする高温プレス成形性に優れた溶融アルミめっき鋼
板。 （４）鋼板中のＳｉ含有量が、質量％でＳｉ：０．０１
％以上０．５％以下であることを特徴とする、前記
（１）〜（３）に記載の高温プレス成形性に優れた溶融
アルミめっき鋼板。

【０００９】（５）鋼板中のＰ、Ｓ、Ａｌ含有量が、質
量％でＰ：０．１％以下、Ｓ：０．０２％以下、Ａｌ：
０．００５％以上０．１％以下であることを特徴とする
前記（４）に記載の高温プレス成形性に優れた溶融アル
ミめっき鋼板。 （６）鋼板中にＴｉ、Ｃｒを少なくとも１種以上含み、
その（Ｔｉ＋Ｃｒ）含有量が０．００５％以上で、上限
がそれぞれＴｉ：０．２％以下、Ｃｒ：１．０％以下で
あることを特徴とする前記（５）に記載の高温プレス成
形性に優れた溶融アルミめっき鋼板を提供する。

【００１０】

【発明の実施の形態】本発明の成分及び含有量の限定理
由を次に述べる。Ｃは目的とする強度を確保するために
添加する。Ｃが０．１％未満だと十分な強度が得られず
効果に乏しい。一方、０．６％を超えるとさらに高強度
化するものの溶接割れが生じやすくなるため、上限を
０．６％以下とした。Ｍｎは強化元素であり、焼入れ性
を高める元素でもある。かつ、不純物であるＳによる熱
間脆性を防止するのに有効である。Ｍｎが０．１％以上
においてそれらの効果が発現する。一方、３．０％を超
えると残留γ相が多くなりすぎ強度が低下する。そのた
め、Ｍｎ濃度は０．１％以上３．０％以下とした。

【００１１】Ｂは焼入れ時に作用し強度を向上させる効
果をもつ。０．０００２％以上の添加で作用するが、
０．０１％超では介在物を形成して脆化し疲労強度を低
下させるため、０．０００２％以上０．０１％以下とす
る。Ｓｉは強度向上元素として有効であるが、易酸化性
元素でもあり、溶融アルミめっきを行う際、鋼中のＳｉ
濃度が０．５％を超えると濡れ性が低下し不めっきが生
じる。従って、Ｓｉは０．５％以下とする。Ｐは強度強
化元素であるが０．１％を超える添加は靱性を低下させ
る。従って、０．１％以下とする。

【００１２】Ｓは硫化物系介在物による成形性低下のた
め少ないほど好ましいが、０．０２％まで許容できる。
従って、Ｓは０．０２％以下とする。Ａｌは脱酸剤とし
て作用する。この目的のためには０．００５％以上が必
要であるが、０．１％を超えると効果は飽和し、かえっ
て介在物を形成して脆化させるため、上限値を０．１％
とした。従って、Ａｌは０．００５％以上０．１％以下
とする。

【００１３】Ｔｉは強度強化元素であり、また、アルミ
めっきの耐熱性を向上させる元素でもあるが、あまり添
加しすぎると炭化物、窒化物を形成して軟質化してしま
う恐れがある。０．００５％以上の添加で強度向上効
果、耐酸化性向上効果が現れるが、０．２％より多く添
加すると目的とする強度が得られない可能性がある。ま
た、Ｃｒも強度強化元素であり、かつ耐食性も向上する
が、その効果を得るには０．００５％以上添加する必要
がある。ＴｉとＣｒを同時に添加する場合には、Ｔｉ＋
Ｃｒで０．００５％以上あれば強度向上効果が得られ
る。一方、Ｃｒを１．０％より多量に添加しても強度の
向上効果は少なく、コストが増大するため、Ｃｒの上限
値を１．０％とした。その他の成分については特に制限
していないが、Ｃｕ，Ｎｉ，Ｃｒ，Ｓｎ，Ｖ，Ｗ，Ｚ
ｒ，Ｍｏ，Ａｓ等のスクラップから混入する元素が存在
しても、本発明の鋼の特性には全く影響しない。

【００１４】次に、アルミめっき層成分及び含有量の限
定理由について述べる。Ｓｉは溶融めっき金属被覆時に
生成する合金層の制御が目的で添加する。このＳｉの含
有量は、３％以上１５％以下が好適である。３％未満だ
とＦｅ−Ａｌ合金層がめっき段階で厚く成長し、加工時
にめっき層割れを助長して耐食性に悪影響を及ぼす。一
方、１５％超ではめっき層の加工性、耐食性が低下する
ため、Ｓｉ含有量は３％以上１５％以下とした。

【００１５】本発明ではめっき浴中にＣｒを少量添加す
ることを特徴とする。Ｃｒを添加すると、Ｃｒはめっき
層と鋼板の間に形成されるＦｅ−Ａｌ−Ｓｉ合金層に含
有される。これが高温プレス時のＦｅの拡散を抑制し、
合金層の成長を抑制する。そのため加工後も美麗な外観
を得られ、また、耐食性も完全に合金化した場合に比較
して格段に優れている。この効果を得るためにはＣｒは
０．０１％以上の添加が必要である。より発揮させるた
めには０．０２％以上の添加が望ましい。一方、２％以
上添加すると浴の融点が高くなりすぎて操業に支障をき
たす。従って、Ｃｒ添加量は０．０１％以上２％未満と
する。

【００１６】また、めっき層中には主成分のＡｌ，Ｓ
ｉ，Ｃｒ以外に、通常約２％のＦｅが含まれることが多
いが、Ｆｅは浴中の機器やストリップから供給される不
可避のものであり、本発明のめっき層の特性には影響し
ない。その他、めっき金属インゴット、浴中機器、スト
リップから混入する不純物、例えば、Ｚｎ、Ｎｉ、Ｃ
ｕ，Ｍｇ、Ｍｎ、Ｃｏ、Ｐｂ、Ｓｎ、Ａｓ、Ｓｂなどの
元素が微量存在しても、本発明のめっき特性には全く影
響しない。めっき層の厚みについては本発明では特に制
限を設けない。実使用上は片側あたり合金層まで含めて
厚み８〜４０μｍで何ら問題なく使用可能である。

【００１７】また、溶融めっき後の後処理として、クロ
メート処理皮膜、Ｃｒ、Ｓｉ、Ｐ、Ｚｎの化合物及びア
クリル樹脂の少なくとも１種以上よりなる皮膜、有機皮
膜処理のほかに、溶融めっき後の外観均一化処理である
ゼロスパングル処理（ｍｉｎｉｍｉｚｅｄ ｓｐａｎｇ
ｌｉｎｇ）、めっき層の加工性改善処理である焼鈍処理
等があり得るが、本発明においては特にこれらを限定せ
ず、適用することも可能である。溶融アルミめっき鋼板
の製造工程についても何ら限定するものではなく、通常
の製鋼、熱延、冷延、焼鈍条件が適用可能である。ま
た、Ｎｉ，Ｆｅプレめっき等もありうるが、これも適用
可能である。次に実施例により本発明を更に詳細に説明
する。

【００１８】

【実施例】表１に示す成分の鋼を転炉−真空脱ガス処理
により溶製し、鋼片とした後、熱間圧延、冷間圧延を経
て板厚１．２ｍｍの冷延鋼板、板厚１．８ｍｍの酸洗後
の熱延鋼板を得た。鋼種Ａ〜Ｈが冷延鋼板、鋼種Ｉ、Ｊ
が熱延鋼板である。これらの鋼板を無酸化炉−還元炉方
式のラインを使用して還元−焼鈍を行った後、表２に示
すアルミめっき浴に浸漬して溶融めっきを行った。めっ
き後ガスワイピングでめっき付着量を片面あたり２５μ
ｍに調節した。このときのめっき組成は、主成分のＡｌ
以外に表中のＳｉ、Ｃｒ、それに２％のＦｅが含まれて
いたが、Ｆｅは浴中の機器やストリップから供給される
不可避のものである。こうして製造しためっき鋼板につ
いて、熱処理後の強度と耐食性を評価した。

【００１９】評価方法は以下によった。 （１）熱処理後の強度 ９００℃の温度で５ｍｉｎ熱処理し、鋼板にはさんで冷
却した後、ＪＩＳ５号引張り試験片にて引張り試験を実
施し、引張り強度（ＴＳ）を測定した。 （２）高温プレス成形性評価 ９００℃の温度で５ｍｉｎ加熱した後、５０ｍｍφの円
筒プレス試験により表面の外観を観察した。 ○：成形可能で、表面外観に変化無し △：成形可能で、表面外観わずかに黒化 ×：成形可能で、全面黒化もしくはスケール発生

【００２０】（３）耐食性評価 （２）で作製した円筒プレス成形品について湿度９５％
以上、温度４０℃にて湿潤試験を２４ｈ実施し、外観を
観察した。 ○：赤錆発生無し △：わずかに赤錆発生 ×：前面赤錆発生

【００２１】

【表１】

【００２２】

【表２】

【００２３】Ｎｏ．１１は目的とする高強度は得られた
ものの、めっき層中のＣｒが無かったため、プレス成形
後の外観が良くなかった。Ｎｏ．１２も目的とする高強
度は得られたものの、めっき層中のＳｉが高すぎたた
め、プレス成形後の外観が良くなかった。また、Ｎｏ．
１３、１５は、Ｃの量が少なく、必要な焼入れ性が得ら
れずに目的とする高強度が得られなかった。Ｎｏ．１４
ではＭｎの量が高すぎ、目的の強度が得られなかった。
Ｎｏ．１〜１０については、強度、外観、耐食性とも良
好な特性が得られた。特に、Ｎｏ．１〜３においては、
Ｃだけでなく、Ｍｎ、さらにはＢを添加すると強度が向
上する傾向である。また、Ｎｏ．２とＮｏ．９はＴｉ，
Ｃｒの添加も強度が向上する傾向がある。

【００２４】

【発明の効果】以上述べたように、本発明は、高温プレ
ス時の課題であった外観を改善し、かつ必要な耐食性を
兼備した高強度プレス品用溶融アルミめっき鋼板を提供
するもので、今後材料の軽量化が求められたときの新し
い材料として非常に有望であり、産業上の寄与も大き
い。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 末廣 正芳 福岡県北九州市戸畑区飛幡町１番１号 新 日本製鐵株式会社八幡製鐵所内 (72)発明者 宮腰 寿拓 福岡県北九州市戸畑区飛幡町１番１号 新 日本製鐵株式会社八幡製鐵所内 Ｆターム(参考） 4K027 AA05 AA22 AB02 AB05 AB48 AC62 AC72 AC82

Claims (6)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 質量％で、Ｃ：０．１％以上０．６％以
   下を含み、残部Ｆｅ及び不可避的不純物からなる鋼板
   に、Ｓｉ：３％以上１５％以下、Ｃｒ：０．０１％以上
   ２％以下を含み、残部Ａｌ及び不可避的不純物からなる
   アルミめっき被覆層を施したことを特徴とする高温プレ
   ス成形性に優れた溶融アルミめっき鋼板。
2. 【請求項２】 質量％で、Ｃ：０．１％以上０．６％以
   下、Ｍｎ：０．１％以上３．０％以下を含み、残部Ｆｅ
   及び不可避的不純物からなる鋼板に、Ｓｉ：３％以上１
   ５％以下、Ｃｒ：０．０１％以上２％以下を含み、残部
   Ａｌ及び不可避的不純物からなるアルミめっき被覆層を
   施したことを特徴とする高温プレス成形性に優れた溶融
   アルミめっき鋼板。
3. 【請求項３】 Ｃ：０．１％以上０．６％以下、Ｍｎ：
   ０．１％以上３．０％以下、Ｂ：０．０００２％以上
   ０．０１％以下を含み、残部Ｆｅ及び不可避的不純物か
   らなる鋼板に、Ｓｉ：３％以上１５％以下、Ｃｒ：０．
   ０１％以上２％以下を含み、残部Ａｌ及び不可避的不純
   物からなるアルミめっき被覆層を施したことを特徴とす
   る高温プレス成形性に優れた溶融アルミめっき鋼板。
4. 【請求項４】 鋼板中のＳｉ含有量が、質量％で、Ｓ
   ｉ：０．０１％以上０．５％以下であることを特徴とす
   る、請求項１〜３に記載の高温プレス成形性に優れた溶
   融アルミめっき鋼板。
5. 【請求項５】 鋼板中のＰ、Ｓ、Ａｌ含有量が、質量％
   で、Ｐ：０．１％以下、Ｓ：０．０２％以下、Ａｌ：
   ０．００５％以上０．１％以下であることを特徴とする
   請求項４に記載の高温プレス成形性に優れた溶融アルミ
   めっき鋼板。
6. 【請求項６】 鋼板中にＴｉ、Ｃｒを少なくとも１種以
   上含み、その（Ｔｉ＋Ｃｒ）含有量が０．００５％以上
   で、上限がそれぞれＴｉ：０．２％以下、Ｃｒ：１．０
   ％以下であることを特徴とする請求項５に記載の高温プ
   レス成形性に優れた溶融アルミめっき鋼板。