JP7230437B2 - 脱酸素剤における酸素吸収性能の検査方法、脱酸素剤の製造方法、脱酸素剤、脱酸素剤包装体、及び食品包装体 - Google Patents

脱酸素剤における酸素吸収性能の検査方法、脱酸素剤の製造方法、脱酸素剤、脱酸素剤包装体、及び食品包装体 Download PDF

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Description

本発明は、脱酸素剤における酸素吸収性能の検査方法、脱酸素剤の製造方法、脱酸素剤、脱酸素剤包装体、及び食品包装体に関する。
食品の長期保存のために、食品包装容器内に脱酸素剤が封入されることがある。従来の一般的な脱酸素剤として、液状の酸素吸収物質が担持体とともに造粒された粒状物が知られている(例えば、特許文献1~3)。
特許第4821692号公報 特開2003-144112号公報 特許第3541859号公報
ところで、設計どおりの脱酸素剤が製造されていない場合、食品を安定して保存することができない。そのため、製造された脱酸素剤の酸素吸収性能が充分であるか、予め把握するための知見が求められている。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、脱酸素剤の酸素吸収性能を検査できる新たな検査方法を提供することを目的とする。本発明はまた、当該検査方法に基づき調整された条件を用いる脱酸素剤の製造方法、当該製造方法により製造される脱酸素剤、脱酸素剤包装体、及び食品包装体を提供することを目的とする。
本発明の一側面は、多孔質の担持体、及び酸素吸収物質を含む液状の酸素吸収組成物、を含む造粒物を得る造粒工程と、造粒物の表面に無機微粒子を付着させて複合粒子を得る付着工程と、複合粒子の明度Lを測定する明度測定工程と、を備える、脱酸素剤における酸素吸収性能の検査方法を提供する。
本発明の検査方法において、測定される明度Lが60以上となるように、付着工程における付着条件を調整する調整工程を更に備えていてもよい。
本発明の一側面は、多孔質の担持体、及び酸素吸収物質を含む液状の酸素吸収組成物、を含む造粒物を得る造粒工程と、造粒物の表面に無機微粒子を付着させて複合粒子を得る付着工程と、を備え、付着工程を、上記の検査方法にて調整された付着条件にて実施する、脱酸素剤の製造方法を提供する。
本発明の一側面は、多孔質の担持体、及び酸素吸収物質を含む液状の酸素吸収組成物、を含む造粒物と、造粒物の表面に付着した無機微粒子と、を備える複合粒子を含み、明度Lが60以上である、脱酸素剤を提供する。
本発明の脱酸素剤において、無機微粒子が厚さ1mm以下の層を形成することが好ましい。
本発明の一側面は、上記の脱酸素剤と、該脱酸素剤を収容した通気性包材と、を備える、脱酸素剤包装体を提供する。
本発明の一側面は、上記の脱酸素剤包装体と、脱酸素剤包装体が封入された食品包装容器と、を備える、食品包装体を提供する。
本発明によれば、脱酸素剤の酸素吸収性能を検査できる新たな検査方法を提供することができる。また、本発明によれば、当該検査方法に基づき調整された条件を用いる脱酸素剤の製造方法、当該製造方法により製造される脱酸素剤、脱酸素剤包装体、及び食品包装体を提供することができる。
以下、本発明のいくつかの実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
[脱酸素剤]
一実施形態に係る脱酸素剤は、多孔質の担持体及び液状の酸素吸収組成物を含む造粒物と、造粒物の表面に付着した無機微粒子と、を備える複合粒子を含む。より具体的には、脱酸素剤は、多孔質の担持体、及び担持体に担持された液状の酸素吸収組成物を含む、造粒物と、造粒物の表面に付着している無機微粒子とから主として構成される複数の複合粒子を含む。脱酸素剤は粉体であってもよい。ここで「粉体」とは、多数の微粒子から構成され、全体として流動性を維持している集合体を意味するものであって、全体として微粒子同士が互いに結着した打錠体のような態様とは異なる。ただし、粉体を打錠した錠剤が本実施形態の脱酸素剤から排除されるものではない。本実施形態に係る脱酸素剤に含まれる複合粒子の数は、例えば、脱酸素剤1g当たり、10個以上10000個以下であってもよい。
複合粒子の質量は、複合粒子1個当たり0.3mg以上、又は0.5mg以上であってもよく、10.0mg以下、又は7.0mg以下であってもよい。複合粒子がこのように微小であると、より高い酸素吸収能力が得られる傾向がある。
担持体は、酸素吸収組成物を担持できる多孔質粒子であればよい。通常、担持体に液状の酸素吸収組成物が含浸することで、組成物中の酸素吸収物質等が担持体に担持される。担持体は、例えば、ベントナイト粒子、活性白土及び珪藻土などの天然鉱物由来の多孔質物質や、活性アルミナ粒子及び酸化ジルコニウム粒子のような金属酸化物由来の多孔質物質であってもよい。また、担持体は、ケイ酸カルシウム粒子、多孔質シリカ粒子(メソポーラスシリカ粒子)、ゼオライト粒子及び活性炭などの無機物からなる多孔質物質であってもよいし、多孔質ナイロン粒子やセルロース粒子などの有機物からなる多孔質物質であってもよい。
酸素吸収組成物は、少なくとも酸素吸収物質を含有する。
酸素吸収物質は、常温(例えば5~35℃)で液状であってもよいし、固形状であってもよい。固形状である場合は、所定の溶媒に溶解して用いることができる。酸素吸収物質は、酸素吸収組成物の主剤であり、酸素を吸収する物質である。酸素吸収物質は、例えば、それ自身が酸化されることによって酸素を消費し、酸素を吸収する化合物であってもよい。本実施形態では、常温で液状、又は溶媒へ溶解した状態の酸素吸収物質を用いることができる。酸素吸収物質としては多価アルコールが挙げられ、具体的には、例えば、グリセリン、1,2-グリコール、及び糖アルコールが挙げられる。1,2-グリコールの具体例としては、エチレングリコール、及びプロピレングリコールが挙げられる。糖アルコールの具体例としては、エリスリトール、アラビトール、キシリトール、アドニトール、マンニトール、及びソルビトールが挙げられる。酸素吸収物質が固形状であるとき、酸素吸収物質が溶解する溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノール、第2級ブタノール、第3級ブタノール及び第3級アミルアルコール等の低級脂肪族アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール及びトリメチレングリコール等のグリコール;並びにフェノールが挙げられる。これらの酸素吸収物質は単独で、又は複数組み合わせて用いることができる。
酸素吸収物質の量は、担持体の質量100質量部に対して、通常80~200質量部であり、100~180質量部であってもよい。また、酸素吸収物質の量は、造粒物の全質量を基準として通常20~30質量%であり、22~28質量%であってもよい。酸素吸収物質の量がこれらの範囲内にあると、適切な酸素吸収能力を有する脱酸素剤が得られ易い傾向がある。
酸素吸収物質は、酸素を吸収する反応に水を必要とする場合がある。このため、酸素吸収物質自身が常温で液体であっても、必要に応じて水を酸素吸収組成物に添加する。必要に応じて添加される水の量は、酸素吸収物質100質量部に対して、通常0~80質量部であり、20~60質量部であってもよい。水の量は、担持体100質量部に対して、通常0~90質量部であり、20~70質量部であってもよい。
酸素吸収組成物は、さらにアルカリ性化合物を含むことができる。アルカリ性化合物は、水に溶解したときにアルカリ性の水溶液を形成する化合物である。アルカリ性化合物は粒子状(すなわちアルカリ性化合物粒子)であってもよい。酸素吸収物質が水酸基を持つ場合、水酸基をアルカリ性化合物がイオン化させることで、酸素吸収反応が活性化されると考えられる。アルカリ性化合物は、その一部が液状の酸素吸収組成物中に溶解していてもよい。アルカリ性化合物は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、第三リン酸塩、又は第二リン酸塩であってもよい。アルカリ性化合物は、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、水酸化ベリリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化ラジウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素リチウム、第三リン酸ナトリウム、第三リン酸カリウム、第二リン酸ナトリウム、及び第二リン酸カリウムからなる群より選ばれる1種以上の化合物であってもよい。
アルカリ性化合物の量は、担持体の質量100質量部に対して、通常100~300質量部であり、150~250質量部であってもよい。また、アルカリ性化合物の量は、造粒物の全質量を基準として通常10~50質量%であり、20~40質量%であってもよい。アルカリ性化合物の量がこれらの範囲内にあると、適切な酸素吸収能力を有する脱酸素剤が得られ易い傾向がある。
酸素吸収組成物は、さらに遷移金属化合物を含むことができる。遷移金属化合物は、遷移金属元素を含む化合物であり、酸素吸収物質の酸素吸収反応を促進するために添加される。遷移金属化合物は粒子状(すなわち遷移金属化合物粒子)であってもよい。遷移金属化合物は、液状の酸素吸収組成物中に溶解していてもよい。遷移金属元素の具体例としては、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、及びマンガンが挙げられる。遷移金属化合物は、例えば、遷移金属のハロゲン化物、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、炭酸塩、有機酸塩、酸化物、水酸化物、又はキレート化合物であってもよい。遷移金属化合物は、遷移金属元素を含む複塩であってもよい。遷移金属化合物は、塩化銅(I)、塩化銅(II)、硫酸銅(II)、水酸化銅(II)、酸化銅(I)、酸化銅(II)、塩化マンガン、硝酸マンガン、炭酸マンガン、及び塩化ニッケルからなる群より選ばれる1種以上の化合物であってもよい。
遷移金属化合物の量は、担持体の質量100質量部に対して、通常10~70質量部であり、30~50質量部であってもよい。また、遷移金属化合物の量は、造粒物の全質量を基準として通常1~20質量%であり、1~10質量%であってもよい。遷移金属化合物の量がこれらの範囲内にあると、適切な酸素吸収能力を有する脱酸素剤が得られ易い傾向がある。
酸素吸収組成物は、造粒物が容易に形成できるように、バインダーを更に含有していてもよい。バインダーの具体例としては、アラビアゴム、ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン及びセルロースが挙げられる。バインダーの量は、担持体の質量100質量部に対して、通常0~30質量部であり、10~20質量部であってもよい。
酸素吸収組成物は、必要によりその他の物質を更に含有していてもよい。その他の物質としては、例えば、カテコールなどのフェノール系化合物、キノン系化合物やアミン系化合物が挙げられる。その他の物質の量は、担持体の質量100質量部に対して、通常、30質量部以下程度である。
無機微粒子が付着する前の造粒物の粒径(最大幅)は、特に制限されないが、例えば0.3mm以上であってもよく、8.0mm以下、4.5mm以下、1.8mm以下、又は1.5mm以下であってもよい。造粒物の粒径又はサイズが小さいと、より高い酸素吸収能力が得られる傾向がある。
造粒物の形状は、特に限定されないが、例えば円柱状であってもよい。円柱状の造粒物の場合、底面の直径は0.3mm以上であってもよく、4.5mm以下、又は1.8mm以下であってもよい。高さは0.3mm以上であってもよく、10mm以下、又は5mm以下であってもよい。
無機微粒子は、無機物質を主成分として含む。無機微粒子は、非水溶性の粒子であってもよく、微溶性の粒子であってもよい。無機微粒子は親水性(すなわち親水性無機微粒子)であってもよい。無機微粒子は、その全質量を基準として、通常、50質量%以上の無機物質を含む。無機微粒子は、実質的に無機物質からなるものであってもよい。無機物質としては、例えば、親水性二酸化ケイ素、ケイ酸カルシウム水和物、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、及びケイ酸アルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種であってもよい。無機微粒子は、親水性無機微粒子(例えば、親水性二酸化ケイ素粒子)であってもよい。
無機微粒子の平均粒径は、150μm以下であってもよい。無機微粒子の平均粒径が150μm以下であることにより、脱酸素剤の酸素吸収能力をより一層改善することができる。造粒物の表面には、通常、微細な凹凸が形成されており、小さい粒径の無機微粒子は、造粒物表面の凹部に入り込み易い。このことが結果的に造粒物の表面積を大幅に増加させることになり、酸素吸収能力向上に寄与すると考えられる。同様の観点から、無機微粒子の平均粒径は、100μm以下、又は50μm以下であってもよい。平均粒径の下限は、特に制限されないが、ナノサイズの微粒子が高価であることと、取扱が難しくなることから、例えば、0.1μm以上であってもよい。ここでの平均粒径は、レーザー回析法により測定される二次粒子径の値である。
無機微粒子の細孔容積は、0.5mL/g以上であってもよい。無機微粒子の細孔容積が0.5mL/g以上であることにより、脱酸素剤の酸素吸収能力をより一層改善することができる。大きな細孔容積を有する無機微粒子は、造粒物表面近傍の酸素吸収組成物を吸収し易いと考えられる。酸素吸収組成物(特に酸素吸収物質)が無機微粒子に吸収されると、酸素吸収物質が環境下の酸素と接触する機会が増え、その結果、酸素吸収能力が向上すると推察される。同様の観点から、無機微粒子の細孔容積は、0.8mL/g以上、又は1.2mL/g以上であってもよい。細孔容積の上限は、特に制限されないが、例えば、10mL/g以下であってもよい。ここでの細孔容積は、窒素吸着法又は水銀圧入法により測定される値である。窒素吸着法又は水銀圧入法のうち少なくともいずれか一方の方法で測定される細孔容積が上記数値範囲内であればよい。
以上例示した平均粒径、及び細孔容積を有する無機微粒子は、周知の方法によって製造することが可能であり、市販品の中から適宜選択して入手することもできる。
造粒物の表面に付着している無機微粒子の量(付着量)は、造粒物の質量100質量部に対して、0.1質量部以上、0.5質量部以上、1質量部以上、2質量部以上又は3質量部以上であってもよい。無機微粒子の量がこれらの範囲内にあると、脱酸素剤の適切な酸素吸収能力が得られ易い。造粒物の表面に付着している無機微粒子の量の上限は、特に制限されないが、造粒性や脱落抑制等の観点から、30質量部以下、15質量部以下、10質量部以下又は8質量部以下であってもよい。造粒物に付着していない単独の無機微粒子が脱酸素剤中に含まれ得るが、付着していない単独の無機微粒子の量は上記付着量に含まれない。
脱酸素剤全体を基準とした造粒物の体積比は、60%を超えていてもよい。造粒物の体積比が適切な範囲にあることで、特に高い酸素吸収能力が得られ易い。同様の観点から、造粒物の体積比は、70%以上、又は80%以上であってもよく、98%以下であってもよい。
造粒物表面に付着した無機微粒子は、造粒物の表面を連続的に又は断続的に被覆している。無機微粒子は比較的薄い層を形成しており、その層厚は、例えば1mm以下、又は0.7mm以下である。無機微粒子の層が薄いことは、複合粒子の表面をエネルギー分散型X線分析(EDX分析)によって元素分析したときに、造粒物を構成する材料(酸素吸収物質、アルカリ性化合物又は遷移金属化合物)に含まれる元素が検出されることから、確認することもできる。一般に、本実施形態に係る脱酸素剤の場合、造粒物を構成する材料に含まれる少なくとも1種の元素が、0.05原子数%以上、又は0.1原子数%以上の濃度で検出され得る。
なお、本実施形態の脱酸素剤は、例えば内実部の周囲に打錠成形によって外殻部が形成されたような錠剤とは異なる。打錠成形により形成された外殻部は必然的にある程度の厚さを有しているため、内実部を構成する材料の元素がEDX分析によって実質的に検出されることはない。
脱酸素剤の明度Lは60以上である。この点については、後の酸素吸収性能の検査方法の項にて詳述する。
[脱酸素剤包装体]
一実施形態に係る脱酸素剤包装体は、上記の実施形態に係る脱酸素剤と、この脱酸素剤を収容した通気性包材とから主として構成され得る。通気性包材は、当該技術分野で通常用いられるものから適宜選択することができる。通気性包材の具体例としては、有孔プラスチックフィルム、不織布、マイクロポーラスフィルム、紙又はこれらの組み合わせからなる基材よって形成された袋体が挙げられる。この脱酸素剤包装体は、例えば、各種の食品包装容器の中に収容して、食品の鮮度維持等の目的で使用することができる。
[食品包装体]
一実施形態に係る食品包装体は、上記脱酸素剤包装体と、この脱酸素剤包装体が封入された食品包装容器とを備える。食品包装容器は、食品包装の分野で通常用いられるものから適宜選択することができ、密封可能な容器が好適である。食品包装容器としては、袋体、深絞り包装体、トレイ包装体、ストレッチ包装体等が挙げられる。
[脱酸素剤の製造方法]
一実施形態に係る脱酸素剤の製造方法は、多孔質の担持体及び液状の酸素吸収組成物を含む造粒物を得る造粒工程と、造粒物の表面に無機微粒子を付着させて複合粒子を得る付着工程と、を備える。
造粒工程では、まず担持体と、液状の酸素吸収組成物を構成する成分とを混合して、これらを含む混合物を得る。各成分は一度に混合してもよいし、成分ごとに何度かに分けて混合してもよい。混合機は特に限定されるものではなく、例えば、円筒型、V型等の容器回転型混合機であってもよいし、リボン型、水平スクリュー型、バドル型、遊星運動型等の容器固定型混合機であってもよい。
次いで、混合物を、例えば、押出造粒、攪拌造粒、流動層造粒、転動造粒、又は圧縮造粒によって造粒することにより、造粒物を得ることができる。押出造粒は、例えば、所定の開孔を有するスクリーンを用いて行うことができる。押出造粒によって得られる造粒物は、円柱状であることが多い。
付着工程では、造粒工程にて得られた造粒物と、無機微粒子とを混ぜ合わせる。これにより、造粒物の表面に無機微粒子を付着させて複合粒子(脱酸素剤を構成する粒子)を得ることができる。例えば、造粒物と、無機微粒子とを混合し、得られた混合物を振とうすることにより、造粒物に無機微粒子を付着させることができる。
付着工程は、後述の検査方法にて調整された付着条件にて実施される。これにより、無機微粒子の付着量が適切である複合粒子を得ることができる。
脱酸素剤の製造方法は、さらにふるい工程を備えていてもよい。ふるい工程では、付着工程にて得られた複合粒子をふるい掛けして、付着が不充分な無機微粒子をふるい落とすことができる。ふるい工程は、例えば所定の目開きを有するふるいをセットした振動ふるいを用いて実施することができる。なお、無機微粒子の付着条件が(概ね)最適化されている場合は、本工程によりふるい落とされる粒子は僅かである。この場合、本工程実施の前後における明度Lの変動は見られないため、本工程の実施は必須ではない。
担持体、酸素吸収組成物、無機微粒子等に関するその他の事項は、脱酸素剤の項にて説明したとおりである。
[酸素吸収性能の検査方法]
一実施形態に係る、酸素吸収性能の検査方法は、多孔質の担持体、及び酸素吸収物質を含む液状の酸素吸収組成物、を含む造粒物を得る造粒工程と、造粒物の表面に無機微粒子を付着させて複合粒子を得る付着工程と、複合粒子の明度Lを測定する明度測定工程と、を備える。
明度測定工程では、例えば色彩式差計を用いて複合粒子の明度Lを測定することができる。造粒物及びこれに付着した無機微粒子から構成される脱酸素剤の明度は、複合粒子の表面積、及び表面積により変動する酸素吸収能力に関係する。脱酸素剤の明度が大きいことは、造粒物表面により多くの無機微粒子が付着し、露出した造粒物表面の面積が少なく、造粒物全体が均一に無機微粒子で覆われた複合粒子であることを意味する。明度の変化は付着した無機微粒子の量を反映し、明度が大きくなると無機微粒子が付着した面積や、付着した無機微粒子層の厚みが増したことを意味すると考えられる。造粒物に付着した無機微粒子が多いと、複合粒子の表面積が増加することで充分な酸素吸収速度を確保することができる。このように、複合粒子の明度Lを測定することで無機微粒子の付着態様を推測することができ、その結果脱酸素剤の酸素吸収性能を間接的に検査することができる。
脱酸素剤を測定した際のL表色系の明度Lが60以上であると、無機微粒子が造粒物の表面全体に亘って付着し、優れた酸素吸収性能を発現し得る状態となると考えられる。同様の観点から、脱酸素剤の明度Lは65以上であってもよく、70以上であってもよく、75以上であってもよい。明度Lの上限は特に制限されないが、明度が過度に大きい場合、余剰の無機微粒子が複合粒子表面に存在すると考えられる。そのような余剰粒子は、複合粒子表面から脱落して装置内に付着したり、環境中に飛散したりする虞がある。また、無機微粒子層が過度に厚くなると、酸素吸収組成物が複合粒子表面に滲出するのに時間が掛かり、酸素吸収速度の初速が遅くなる虞がある。これらのことから、例えばLは85以下であってもよく、80以下であってもよい。
酸素吸収性能の検査方法は、測定される明度Lが60以上となるように、付着工程における付着条件を調整する調整工程を備えることができる。すなわち本実施形態においては、必要に応じ付着工程~調整工程を繰り返して実施することができる。明度測定工程での結果を前工程にフィードバックすることで、非破壊でかつ簡易に製造条件を調整することができる。
前述のとおり、脱酸素剤の明度は、主として、造粒物の表面に付着している無機微粒子の量(付着量)によって変動する。そのため、例えば造粒物と無機微粒子を混ぜ合わせる付着工程での運転条件を変えることによって、明度を調整することができる。運転条件の項目は特に制限されないが、例えば、温度や湿度等の環境における条件や、回転速度、振幅速度、混合時間等の装置における条件が挙げられる。
造粒工程、付着工程、ふるい工程等に関するその他の事項は、脱酸素剤の製造方法の項にて説明したとおりである。なお、ふるい工程は明度測定工程の前に実施することができる。
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
1.造粒物の作製
表1に示す原料を密封状態で均一に混合して、活性炭と、活性炭に担持された酸素吸収組成物と、を含有する混合物を得た。得られた混合物をスクリーン孔径1.0mmφ、開孔率22.6%のスクリーンを設けた押出し造粒機により造粒し、顆粒状の造粒物を得た。
Figure 0007230437000001
2.無機微粒子の準備
無機微粒子として、サイロページ720(親水性二酸化ケイ素(SiO)粒子、富士シリシア化学製)を準備した。
3.明度に基づく混合条件の調整
V型混合機V-10(徳寿工作所製)に、無機微粒子100g及び造粒物1kgを投入した。混合機での混合条件を変えて両者を混合し、種々の脱酸素剤を得た。得られた脱酸素剤それぞれに対して後述の明度測定を実施し、混合条件を調整した。その中からいくつかの例を取り上げ、以下に示す。なお、いずれの実施例においても、付着した無機微粒子は1mm以下の層を形成していた。
4.脱酸素剤(複合粒子)の作製
(実施例1)
V型混合機V-10に、無機微粒子100g及び造粒物1kgを投入した。そして、回転数30rpm、運転時間10秒間で両者を混合した。これにより、造粒物表面に無機微粒子が付着した脱酸素剤を得た。得られた脱酸素剤100gを、目開き1000μmのふるいをセットした振動ふるい(アズワン製)に投入し、60秒間ふるいにかけて、付着が不充分な無機微粒子をふるい落とした。
(実施例2)
V型混合機での混合条件を表2に示すように変更したこと、及び振動ふるいによるふるい工程を実施しなかったこと以外は、実施例1と同様にして脱酸素剤を得た。
(実施例3~5)
V型混合機での混合条件を表2に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして脱酸素剤を得た。
(比較例1)
作製した造粒物を脱酸素剤とした。
(比較例2)
V型混合機での混合条件を表2に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして脱酸素剤を得た。
5.明度測定
各例にて得られた脱酸素剤(又は造粒物)の明度を、以下の手順で測定した。結果を表2に示す。
(1)保管中に脱酸素剤から脱落した無機微粒子を取り除くため、ステンレス製のふるい(目開き1000μm)を用いて1mm以上の脱酸素剤を分級した。
(2)深さ15mm、直径33mmのガラス製シャーレを準備し、(1)で分級した脱酸素剤をシャーレ全体を満たすまで充填した。
(3)脱酸素剤の山の部分をすり切り、シャーレ底部の外側の明度(L表色系で規定されるL)を色彩色差計CR-200(コニカミノルタ社製)を用いて測定した。
(4)(1)~(3)を3回繰り返し、平均値を脱酸素剤の明度とした。
6.酸素吸収能力
脱酸素剤3gを、有孔包材によって形成された袋(縦60mm、横60mm)に収納し、脱酸素剤包装体を作製した。有効包材として、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレン/紙/ポリエチレンから構成される積層材料を用いた。脱酸素剤包装体を、ショ糖44%水溶液を浸した脱脂綿(水分活性0.95)とともに、ガスバリア性の袋の中に入れた。袋を密封し、その中に空気500mLを注入してから、袋を25℃の雰囲気に静置した。15時間後、及び24時間後の袋内の酸素濃度を測定した。酸素吸収能力の評価は、24時間後の酸素濃度が0.1%以下でA、0.1%超~5%未満でB、5%以上でCとした。結果を表2に示す。
Figure 0007230437000002


Claims (2)

  1. 多孔質の担持体、及び酸素吸収物質を含む液状の酸素吸収組成物、を含む造粒物を得る造粒工程と、
    前記造粒物の表面に無機微粒子を付着させて複合粒子を得る付着工程と、
    前記複合粒子の明度Lを測定する明度測定工程と、を備え、
    前記多孔質の担持体が活性炭であり、前記無機微粒子が二酸化ケイ素である、
    脱酸素剤における酸素吸収性能の検査方法。
  2. 測定される前記明度Lが60以上となるように、前記付着工程における前記無機微粒子の付着条件を調整する調整工程を前記明度測定工程後に更に備える、請求項1に記載の検査方法。
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