JP7230197B2 - 環状ペプチド、細胞足場材、細胞分離材、及び、培地 - Google Patents

環状ペプチド、細胞足場材、細胞分離材、及び、培地 Download PDF

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Description

本開示は、環状ペプチド、細胞足場材、細胞分離材、及び、培地に関する。
インテグリンは細胞接着分子であり、α鎖とβ鎖の2つのサブユニットからなるヘテロダイマーのタンパク質である。インテグリンは、細胞接着だけでなく、細胞伸展、細胞移動、細胞増殖、組織形成、がんの転移、組織修復、血液凝固などにも関与する重要な役割を果たしている。
従来の環状ペプチドとしては、特表2005-507376号公報及び特表平6-509551号公報並びにBioconjugate Chem, 1995, 6, p. 269-277に記載のものが知られている。特表2005-507376号公報は、インテグリンに結合する、ジスルフィド結合により環状化した環状ペプチドを開示している。インテグリンに対する親和性を有する環状ペプチドは他にも知られており、例えば、特表平6-509551号公報は血小板凝集阻害剤として、Tyr-Arg-Gly-Aspを環状化させた環状ペプチドをGp IIIIIに対する高い特異性を有する血小板凝集阻害剤として記載している。また、Bioconjugate Chem, 1995, 6, p. 269-277は、(ブロモアセチル)ジアミノプロピオン酸を用いてペプチドの環化及び/又はキャリアタンパク質若しくはガラスカバースリップへの結合を行う技術を記載している。
本開示の一実施形態が解決しようとする課題は、インテグリン結合性に優れ、かつ、分子安定性、例えばアルカリ耐性に優れた環状ペプチド、並びに、上記環状ペプチドを含む細胞足場材、細胞分離材及び培地を提供することである。
上記課題を解決するための手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 下記式(1)で表されるアミノ酸配列を有する、環状ペプチド。
Figure 0007230197000001

式(1)中、X及びX並びにX及びXは、それぞれ独立に、チオエーテル結合を介して架橋されたアミノ酸残基を表し、
~Xは、それぞれ独立に、アミノ酸残基を表し、
Rはアルギニン残基を表し、Gはグリシン残基を表し、Dはアスパラギン酸残基を表し、m1~m5は、それぞれ独立に、0以上の整数を表す。ただし、X、X、X及びX並びに、X、X及びX4で表されるアミノ酸残基とRGDとの合計アミノ酸残基数は、7~16である。
<2> 上記式(1)におけるX及びXが、側鎖に固定化官能基を有するアミノ酸に由来するアミノ酸残基を含む、<1>に記載の環状ペプチド。
<3> 上記固定化官能基が、アミノ基、又は、チオール基である、<2>に記載の環状ペプチド。
<4> 上記側鎖に固定化官能基を有するアミノ酸が、L-リシン、D-リシン、L-システイン、D-システイン、L-ホモシステインおよびD-ホモシステインからなる群から選択される少なくとも1種のアミノ酸である、<2>又は<3>に記載の環状ペプチド。
<5> 上記式(1)におけるX及びXのいずれか一方が、(2S)-2-アミノ-3-[(2-アセチル)アミノ]プロパン酸、(2R)-2-アミノ-3-[(2-アセチル)アミノ]プロパン酸、(2S)-2-アミノ-4-[(2-アセチル)アミノ]ブタン酸、(2R)-2-アミノ-4-[(2-アセチル)アミノ]ブタン酸、N-δ-アセチル-L-オルニチン、N-δ-アセチル-D-オルニチン、N-ε-アセチル-L-リシン、及び、N-ε-アセチル-D-リシンからなる群から選択されるアミノ酸に由来するアミノ酸残基であり、他方が、L-ホモシステイン、D-ホモシステイン、L-ペニシラミン、又は、D-ペニシラミンに由来するアミノ酸残基である、<1>~<4>のいずれか1つに記載の環状ペプチド。
<6> 上記式(1)におけるXが、L-ホモシステイン、D-ホモシステイン、L-ペニシラミン、又は、D-ペニシラミンに由来するアミノ酸残基である、<1>~<5>のいずれか1つに記載の環状ペプチド。
<7>上記式(1)で表されるアミノ酸配列が、下記式(2)で表されるアミノ酸配列である、<1>~<6>のいずれか1つに記載の環状ペプチド。
Figure 0007230197000002

式(2)中、X及びX並びにX及びXは、それぞれ独立に、チオエーテル結合を介して架橋されたアミノ酸残基を表し、X及びXは、それぞれ独立に、アミノ酸残基を表し、Rはアルギニン残基を表し、Gはグリシン残基を表し、Dはアスパラギン酸残基を表し、m1及びm2は、それぞれ独立に、1以上の整数を表す。ただし、X、X、X及びX並びに、Xで表されるアミノ酸残基とRGDとの合計アミノ酸残基数は、7~14である。
<8> 上記式(2)におけるX及びXのいずれか一方が、(2S)-2-アミノ-3-[(2-アセチル)アミノ]プロパン酸、(2R)-2-アミノ-3-[(2-アセチル)アミノ]プロパン酸、(2S)-2-アミノ-4-[(2-アセチル)アミノ]ブタン酸、(2R)-2-アミノ-4-[(2-アセチル)アミノ]ブタン酸、N-δ-アセチル-L-オルニチン、N-δ-アセチル-D-オルニチン、N-ε-アセチル-L-リシン、及び、N-ε-アセチル-D-リシンからなる群から選択される側鎖にアセチル基を有するアミノ酸に由来するアミノ酸残基であり、他方が、L-ホモシステイン、D-ホモシステイン、L-ペニシラミン、又は、D-ペニシラミンに由来するアミノ酸残基である、<7>に記載の環状ペプチド。
<9> 上記式(2)におけるXが、L-ホモシステイン、D-ホモシステイン、L-ペニシラミン、又は、D-ペニシラミンに由来するアミノ酸残基である、<7>又は<8>に記載の環状ペプチド。
<10> 上記式(2)におけるXが、下記構造(r)で表されるアミノ酸残基である、<7>~<9>のいずれか1つに記載の環状ペプチド。
Figure 0007230197000003

構造式(r)中、Rは水素原子又は1価の有機基を表し、Lは、-(CHL1-C(=O)-、又は、-(CHL1-C(=O)-NH-で表される2価の連結基を表し、L1は0以上10以下の整数を表し、nr1は、0以上の整数を表し、*は隣接するアミノ酸残基との結合部位を表し、**はチオエーテル結合における硫黄原子との結合部位を表す。
<11> 上記式(2)におけるXが、L-ホモシステイン、D-ホモシステイン、L-ペニシラミン、又は、D-ペニシラミンに由来するアミノ酸残基であり、Xが、(2S)-2-アミノ-3-[(2-アセチル)アミノ]プロパン酸、(2R)-2-アミノ-3-[(2-アセチル)アミノ]プロパン酸、(2S)-2-アミノ-4-[(2-アセチル)アミノ]ブタン酸、(2R)-2-アミノ-4-[(2-アセチル)アミノ]ブタン酸、N-δ-アセチル-L-オルニチン、N-δ-アセチル-D-オルニチン、N-ε-アセチル-L-リシン、N-ε-アセチル-D-リシン、及び、(2S,3S)-2-[(アセチル)アミノ]-3-メチル-ペンタン酸からなる群から選択されるアミノ酸に由来するアミノ酸残基である、<7>~<10>のいずれか1つに記載の環状ペプチド。
<12> Xはα炭素にアセチル基が結合した任意のアミノ酸に由来するアミノ酸残基であり、Xはホモシステインに由来するアミノ酸残基であり、Xはホモシステインに由来するアミノ酸残基であり、XはN-δ-アセチル-オルニチンに由来するアミノ酸残基又はN-ε-アセチル-リシンに由来するアミノ酸残基であり、(Xm1は、全体でFであるか、又は
はα炭素にアセチル基が結合した任意のアミノ酸に由来するアミノ酸残基であり、Xはホモシステインに由来するアミノ酸残基であり、XはN-δ-アセチル-オルニチンに由来するアミノ酸残基又はN-ε-アセチル-リシンに由来するアミノ酸残基であり、Xはホモシステインに由来するアミノ酸残基であり、(Xm1は、全体でFである、<1>~<11>のいずれか1つに記載の環状ペプチド。
<13> <1>~<12>のいずれか1つに記載の環状ペプチドと、基材と、を含む、細胞足場材。
<14> <1>~<12>のいずれか1つに記載の環状ペプチドと、保持材と、
を含む、細胞分離材。
<15> <1>~<12>のいずれか1つに記載の環状ペプチドと、培養成分と、を含む、培地。
本発明の実施形態によれば、インテグリン結合性に優れ、かつ、分子安定性、例えばアルカリ耐性に優れた環状ペプチド、並びに上記環状ペプチドを含む細胞足場材、細胞分離材及び培地が提供される。
以下において、本開示の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本開示の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本開示はそのような実施態様に限定されるものではない。
本開示において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を意味する。
本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本開示において、各成分の量は、各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、複数種の物質の合計量を意味する。
本開示において、「工程」との語は、独立した工程だけではなく、工程の所期の目的が達成される限りは、他の工程と明確に区別できない工程をも含む。
(環状ペプチド)
本開示に係る環状ペプチドは、下記式(1)で表されるアミノ酸配列(以下、「特定アミノ酸配列」ともいう。)を有する。
Figure 0007230197000004

式(1)中、X及びX並びにX及びXは、それぞれ独立に、チオエーテル結合を介して結合されたアミノ酸残基を表し、X~Xは、それぞれ独立に、アミノ酸残基を表し、Rはアルギニン残基を表し、Gはグリシン残基を表し、Dはアスパラギン酸残基を表し、m1~m5は、それぞれ独立に、0以上の整数を表す。ただし、X、X、X及びX並びに、X、X及びXで表されるアミノ酸残基の合計数は、7~16である。
インテグリン結合性を有する環状ペプチド(以下、インテグリン結合性環状ペプチド」ともいう。)は、細胞表面の細胞形質膜にあるインテグリンに対する結合能を有する。インテグリンは細胞接着分子の1つであり、インテグリン結合性環状ペプチドと細胞表面のインテグリンとは結合するため、インテグリン結合性環状ペプチドは、細胞培養のための足場材、細胞を分離するための細胞分離材、各種細胞培養培地等に用いること等が可能であり、有用な分子である。しかし、環状ペプチドは、直鎖ペプチドと比較して、例えば、インテグリン等の細胞接着分子に対して高い結合性及び特異性を有する場合がある一方、環状ペプチドの分子安定性は直鎖ペプチドよりも低い傾向がある。
また、例えば、環状ペプチドは、アルカリ耐性;酸耐性;X線、γ線などの活性光線に対する耐性などが低い傾向がある。インテグリン結合性環状ペプチドも、分子安定性が低いために、長期間の使用又は繰り返しの使用の間に分解し、所望の効果を長期間にわたって得ることができなかった。さらに、環状ペプチドは、直鎖ペプチドよりも常に高い結合性を有するわけではなく、環状ペプチドが有するアミノ酸配列によって、インテグリン結合性が変化するため、環状ペプチドにおいて分子安定性とインテグリン結合性との両方が優れるインテグリン結合性環状ペプチドを得ることは容易ではなかった。
そこで、発明者が鋭意検討した結果、特定のアミノ酸配列を有し、かつ、特定の構造を有する環状ペプチドは、分子安定性及びインテグリン結合性の両方に優れることを見出した。その理由は明らかではないが以下のように推測される。
本開示に係る特定構造の環状ペプチドは、アミノ酸配列中の特定の部位において、アミノ酸残基がチオエーテル結合により架橋された環状部位(以下、「環状セグメント」とも称する場合がある。)を2つ含み、かつ、X、X、X及びX並びに、X、X及びXで表されるアミノ酸残基及びRGDの合計アミノ酸残基数が7~14となるようにすることで、RGD配列を2つの環状部位によって保持、すなわち、2つの環状部位がRGD配列を入れ子状に保持されている。また、特表2005-507376号公報等に記載された環状ペプチドが有するジスルフィド結合は、準共有結合であるので、培地等に含まれる還元剤等により、容易にジスルフィド結合が切断されてしまうため、十分な分子安定性が得られないことに対して、共有結合であるチオエーテル結合は、ジスルフィド結合よりも安定性により優れているので、本開示に係る環状ペプチドは、例えば、耐アルカリ性に対する分子安定性に優れ、かつ、インテグリン結合性にも優れると推定される。
以下、本開示に係る環状ペプチドの詳細について説明する。
<アミノ酸、及び、アミノ酸残基>
本開示において、アミノ酸は、原則として、国際純正・応用化学連合と国際生化学・分子生物学連合による共同命名委員会(INTERNATIONAL UNION OF PURE AND APPLIED CHEMISTRY and INTERNATIONAL UNION OF BIOCHEMISTRY AND MOLECULAR BIOLOGY IUPAC-IUB Joint Commission on Biochemical Nomenclature (JCBN))で採用された名称、略号等を用いて表す。また、アミノ酸残基は、そのアミノ酸残基が由来するアミノ酸の略号を用いて表す。
本開示において、特に明示しない限り、ペプチドまたはタンパク質のアミノ酸配列(「1次構造」ともいう。)は、左端から右端にかけてN末端からC末端となるようにアミノ酸残基を1列に並べて表す。ペプチドまたはタンパク質のアミノ酸配列中のアミノ酸残基を位置も含めて特定する場合には、アミノ酸残基の略号の右側にN末端側からの何番目のアミノ酸残基であるかを示す数字を付して表す場合がある。例えば、N末端から2番目のリシンをLys2と表す場合がある。
また、アミノ酸をその名称を用いて表した場合であって、エナンチオマーの関係にある異性体、すなわち、L体およびD体が存在するときは、L体およびD体の別を明示的に示した場合を除いて、原則として、L体であってもD体であっても構わない。例えば、「イソロイシン」は「L-イソロイシン」又は「D-イソロイシン」を表すものとし、アミノ酸残基についても同様である。同様に、アミノ酸をその略号(3文字略号または1文字略号)を用いて表した場合であって、エナンチオマーの関係にある異性体、すなわち、L体およびD体が存在する場合についても、L体およびD体の別を明示的に示した場合を除いて、原則として、L体であってもD体であっても構わない。例えば、「Lys」はいずれも「L-リシン」又は「D-リシン」を表すものとし、アミノ酸残基についても同様である。また、各アミノ酸、各アミノ酸残基について、それぞれ独立にL体とD体とを選択することができる。ただし、環状セグメント中に存在するRGD配列については、全てL体のアミノ酸残基とする。上記RGD配列以外については、環状ペプチド中に存在するアミノ酸残基は全てL体のアミノ酸残基であっても、全てD体のアミノ酸残基であっても、L体のアミノ酸残基とD体のアミノ酸残基の両方が存在していてもよい。
また、アミノ酸をその名称を用いて表した場合であって、ジアステレオマーの関係にある異性体が存在する場合は、その名称により特定されるアミノ酸には含まれないものとする。ジアステレオマーは接頭辞「アロ」を用いて異なる種類のアミノ酸として扱う。例えば、「トレオニン」は「アロトレオニン」を含まないものとする。アミノ酸残基についても同様である。
1文字略号および3文字略号が公式に認められたアミノ酸の名称および略号(1文字略号、3文字略号)を表1に示す。
Figure 0007230197000005

本開示に係る環状ペプチドに含まれるアミノ酸残基は、上記表1に挙げるアミノ酸に由来するアミノ酸残基に限定されず、異常アミノ酸に由来するアミノ酸残基であってもよい。異常アミノ酸の例を以下の表2に挙げるが、異常アミノ酸はこれらに限定されるものではない。
Figure 0007230197000006
本開示に係る環状ペプチドに含まれる任意のアミノ酸残基は、化学修飾を受けていてもよい。アミノ酸残基に対する化学修飾は、通常、アミノ酸残基に対して行われる化学修飾であれば特に制限はない。アミノ酸残基に対する化学修飾の例としては、アミノ酸残基中に存在するアミノ基に対するN-アセチル化、N-ホルミル化、又は、N-アシル化、PEG(ポリエチレングリコール)化及び、アミノ酸残基中に存在するカルボキシ基に対するアミド化、PEG化等が挙げられる。
特定アミノ酸配列において、式(1)中のX又はXが、環状ペプチドのN末端のアミノ基である場合、N末端のアミノ基残基としては、特に制限はなく、N-アセチル化、N-ホルミル化、N-アシル化、PEG化等のN末端修飾を受けていても、アミノ基のままであってもよい。
また、特定アミノ酸配列において、式(1)中のX及びXが、環状ペプチドのC末端のカルボキシ基である場合、C末端のカルボキシ基は、特に制限はなく、アミド化、PEG化等のC末端修飾を受けていてもよいし、カルボキシ基のままであってもよい。
本開示に係る環状ペプチドは、特定アミノ酸配列を有し、X及びX並びにX及びXは、それぞれ独立に、チオエーテル結合を介して結合されたアミノ酸残基を表し、X~Xは、それぞれ独立に、アミノ酸残基を表す。
<<アミノ酸残基X~X>>
本開示に係る環状ペプチドは、特定アミノ酸配列を有し、X及びX並びにX及びXは、それぞれ独立に、チオエーテル結合を介して結合されたアミノ酸残基を表す。
なお、式(1)中の「-S-」は、X及びX並びにX及びXがチオエーテル結合を介して架橋されたことを表す。
本開示に係る環状ペプチドに含まれる特定アミノ酸配列において、アミノ酸残基X及びアミノ酸残基X、並びに、後述するアミノ酸残基X及びアミノ酸残基Xは、それぞれチオエーテル結合で架橋されているので、その詳細は明らかではないが、ジスルフィド結合に比べて、構造的に不可逆であるため、ジスルフィド結合により架橋されたアミノ酸残基を有する環状ペプチドよりも、分子安定性に優れると推察される。
チオエーテル結合形成前のアミノ酸としては、特に制限はないが、例えば、X及びXのいずれか一方が、チオール基を有するアミノ酸に由来するアミノ酸であり、他方が、ハロゲン原子を有する有機基で保護されたアミノ酸に由来するアミノ酸である組み合わせが挙げられる。
同様に、チオエーテル結合形成前のアミノ酸としては、特に制限はないが、例えば、X及びXのいずれか一方が、チオール基を有するアミノ酸に由来するアミノ酸であり、他方が、ハロゲン原子を有する有機基で保護されたアミノ酸に由来するアミノ酸である組み合わせが挙げられる。
上記ハロゲン原子を有する有機基としては、ハロアセチル基等が好適に挙げられる。
本開示において環状ペプチドにおける「主鎖」とは、環状ペプチド中の鎖状部分のうち相対的に最も長く幹となるペプチド鎖を指す。「側鎖」とは、環状ペプチドの主鎖に結合する鎖を意味する。
アミノ酸又はアミノ酸残基における主鎖は、環状ペプチドにおける「主鎖」に相当し、アミノ酸又はアミノ酸残基における側鎖は、環状ペプチドの主鎖に結合する側鎖となる。
以下、チオエーテル結合形成前のX~Xが取り得るチオール基を有するアミノ酸に由来するアミノ酸残基について説明する。
〔チオール基を有するアミノ酸に由来するアミノ酸残基〕
チオール基を有するアミノ酸としては、反応性の観点から、側鎖上にチオール基を有するアミノ酸であることが好ましい。アミノ酸の主鎖にはチオール基が含まないことが好ましい。
チオール基を側鎖上に有するアミノ酸残基としては、特に制限はないが、下記構造(t-1)又は(t-2)で表されるアミノ酸残基が好適に挙げられる。
Figure 0007230197000007

構造(t-1)及び(t-2)中、*は隣接するアミノ酸残基との結合部位を表し、nt-1及びnt-2は、0以上の整数を表す。
側鎖におけるnt-1又はnt-2個の炭素原子、及び、β位の炭素原子は、-NH、-SH、-COOH、炭素数1~10のアルキル基、及び、炭素数6~14のアリール基からなる群から選択される少なくとも1種の置換基によって置換されていてもよい。
炭素数1~10のアルキル基としては、直鎖状、分岐鎖状のいずれであってもよい。炭素数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基等が挙げられる。
また、炭素数6~14のアリール基としては、単環又は縮合環であってもよい。炭素数6~14のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基、フェナントレン基等が挙げられる。
nt-1及びnt-2は、チオエーテル結合の形成のし易さから、0~10の整数であることが好ましく、0~6の整数であることがより好ましく、1~4の整数であることが更に好ましい。
チオール基を側鎖上に有するアミノ酸のより具体的な例としては、システイン、ペニシラミン、ホモシステイン(2-アミノ-4-メルカプトブタン酸由来のアミノ酸)、2-アミノ-5-メルカプトペンタン酸に由来するアミノ酸等が挙げられる。
これらの中でも、チオール基を側鎖上に有するアミノ酸としては、結合安定性の観点から、L-ホモシステイン、D-ホモシステイン、L-ペニシラミン、又は、D-ペニシラミンに由来するアミノ酸であることが好ましい。
結合安定性、及び、分子安定性の観点から、チオエーテル結合形成前のX及びXのいずれか一方が、チオール基を有するアミノ酸に由来するアミノ酸残基であることが好ましく、側鎖上にチオール基を有するアミノ酸に由来するアミノ酸残基であることがより好ましく、L-ホモシステイン、D-ホモシステイン、L-ペニシラミン、又は、D-ペニシラミンに由来するアミノ酸残基であることが好ましく、ラセミ化を起こしにくい点から、L-ホモシステイン、又は、D-ホモシステインは、更に好ましい。
がハロゲン原子を有する有機基で保護されたアミノ酸に由来するアミノ酸残基である場合、結合安定性、及び、分子安定性の観点から、Xが、チオール基を有するアミノ酸に由来するアミノ酸残基であることが好ましく、側鎖上にチオール基を有するアミノ酸に由来するアミノ酸残基であることがより好ましく、L-ホモシステイン、D-ホモシステイン、L-ペニシラミン、又は、D-ペニシラミンに由来するアミノ酸残基であることが好ましく、ラセミ化を起こしにくい点から、L-ホモシステイン、又は、D-ホモシステインは更に好ましい。
また、アミノ酸残基X及びXのいずれか一方、並びに、X及びXのいずれか一方が、α-アミノ酸に由来するアミノ酸残基である場合、チオエーテル結合前のα-アミノ酸のα炭素に結合しているアミノ基又は修飾アミノ基とチオール基とが結合されたチオエーテル結合であってもよく、チオエーテル結合前のα-アミノ酸に由来するアミノ酸残基の側鎖とチオエーテル結合前のチオール基とが結合されたチオエーテル結合であってもよい。この場合、アミノ基とチオール基との間の結合は、アミノ基上に配置されたハロアセチル基等を介して行うことができる。
同様に、アミノ酸残基X及びXのいずれか一方、並びに、X及びXのいずれか一方が、α-アミノ酸に由来するアミノ酸残基である場合、チオエーテル結合前のα-アミノ酸のα炭素に結合しているカルボキシ基又は修飾カルボキシ基部分とチオエーテル結合前のチオール基とが結合されたチオエーテル結合であってもよく、チオエーテル結合前のα-アミノ酸に由来するアミノ酸残基の側鎖部分とチオエーテル結合前のチオール基とが結合されたチオエーテル結合であってもよい。
〔ハロゲン原子を有する有機基で保護されたアミノ酸に由来するアミノ酸残基〕
ハロゲン原子を有する有機基で保護されたアミノ酸に由来するアミノ酸残基としては、アミノ酸のα炭素に結合したアミノ基にハロゲン原子を有する有機基が結合したアミノ酸、又はアミノ酸の側鎖にハロゲン原子を有する有機基を有するアミノ酸に由来するアミノ酸残基であることが好ましい。ハロゲン原子を有する有機基としては、通常アミノ酸の保護基として用いられるものであれば特に制限はなく、例えば、ハロアセチル基等が好適に挙げられる。例えば、ハロゲン原子が脱離して代わりに硫黄原子が結合することで、チオエーテル結合が形成され、上記アミノ酸残基が形成される。
アミノ酸のα炭素に結合したアミノ基にハロゲン原子を有する有機基が結合したアミノ酸としては、α炭素上のアミノ基にハロアルカノイル基が結合した任意のアミノ酸が挙げられる。ハロアルカノイル基は、例えば、ハロアセチル基である。ハロアルカノイル基中のハロゲン原子は、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子である。ハロゲン原子を有する有機基の結合対象となるアミノ酸としては、L-アミノ酸でもD-アミノ酸でもよく、イソロイシン、リシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、チロシン、ロイシン、トレオニン、バリン等が挙げられる。アミノ酸のα炭素に結合したアミノ基にハロゲン原子を有する有機基が結合したアミノ酸としては、L-アミノ酸でもD-アミノ酸であってもよい、N-α-クロロアセチル-イソロイシン、N-α-クロロアセチル-リシン、N-α-クロロアセチル-アスパラギン酸、N-α-クロロアセチル-グルタミン酸、N-α-クロロアセチル-チロシン、N-α-クロロアセチル-ロイシン、N-α-クロロアセチル-トレオニン、N-α-クロロアセチル-バリン等が挙げられる。
上記側鎖にハロゲン原子を有する有機基で保護されたアミノ酸残基としては、チオエーテル結合の形成しやすさの観点から、アミノ酸残基の側鎖末端にハロゲン原子を有する有機基を有するアミノ酸であることが好ましい。このような態様を有するアミノ酸残基としては、下記構造(p-1)又は(p-2)で表されるアミノ酸残基が好適に挙げられる。
Figure 0007230197000008

構造(p-1)及び(p-2)中、halogenは、ハロゲン原子を表し、Lは、-(CHL1-C(=O)-、又は、-(CHL1-C(=O)-NH-で表される2価の連結基を表し、L1は0以上10以下の整数を表し、np1及びnp2は、それぞれ独立に0以上の整数を表し、*は隣接するアミノ酸残基との結合部位を表す。np1及びnp2は、それぞれ、0~6の整数を表すことが好ましく、0~4の整数を表すことがより好ましく、1~3の整数を表すことがさらに好ましい。また、Lにおいて、ハロゲンは左側の末端(L1が1以上の場合はアルキル側の末端)に結合している。
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。これらの中でも、反応性及びチオエーテル結合の形成のし易さと安全性の観点から、臭素原子又は塩素原子であることが好ましく、塩素原子であることがより好ましい。
np1及びnp2が1以上である場合、側鎖におけるnp1又はnp2個の炭素原子、及び、β位の炭素原子は、炭素数1~10のアルキル基、及び、炭素数6~14のアリール基からなる群から選択される少なくとも1種の置換基によって置換されていてもよい。
L1は、0~10の整数であることが好ましく、1~6の整数であることがより好ましく、1~3の整数であることが更に好ましい。
炭素数1~10のアルキル基、及び、炭素数6~14のアリール基の具体例は、上記構造(t-1)及び(t-2)における炭素数1~10のアルキル基、及び、炭素数6~14のアリール基と同様である。
ハロゲン原子を有する有機基で保護されたアミノ酸に由来するアミノ酸残基が、環状ペプチドのN末端に位置する場合、チオエーテル結合の形成しやすさの観点から、チオエーテル結合前のアミノ酸残基としては、α-アミノ基にハロゲン原子を有する有機基を有するアミノ酸残基であることが好ましく、下記構造(r-1)で表されるアミノ酸残基がより好ましい。
Figure 0007230197000009

構造(r-1)中、Rは水素原子又は1価の有機基を表し、halogenは、ハロゲン原子を表し、Lは、-(CHL1-C(=O)-、又は、-(CHL1-C(=O)-NH-で表される2価の連結基を表し、L1は0以上10以下の整数を表し、nr1は、0以上の整数を表し、*は隣接するアミノ酸残基との結合部位を表す。
L及びL1は、構造(p-1)及び(p-2)中のL及びL1と同義であり、好ましい態様も同様である。nr1は、構造(p-1)及び(p-2)中のnp1及びnp2と同義であり、好ましい態様も同様である。
における1価の有機基としては、特に制限はなく、アミノ酸の側鎖として取り得る脂肪族炭化水素基が挙げられる。アミノ酸の側鎖として取り得る1価の有機基としては、表1又は表2に記載のアミノ酸の側鎖である1価の有機基が挙げられる。
脂肪族炭化水素基は、-NH、-SH、-COOH、炭素数1~10のアルキル基、及び、炭素数6~14のアリール基からなる群から選択される少なくとも1種の置換基によって置換されていてもよい。
炭素数1~10のアルキル基としては、直鎖状、分岐鎖状のいずれであってもよい。炭素数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基等が挙げられる。
また、炭素数6~14のアリール基としては、単環又は縮合環であってもよい。炭素数6~14のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基、フェナントレン基等が挙げられる。
アミノ酸残基Xが、例えば、特定アミノ酸配列のN末端に位置(Xのm5が0の場合)し、かつ、α-アミノ酸に由来するアミノ酸残基である場合、アミノ酸残基Xとしては、下記構造(r)で表されるアミノ酸に由来するアミノ酸残基であることが好ましい。
Figure 0007230197000010

構造(r)中、Rは水素原子又は1価の有機基を表し、Lは、-(CHL1-C(=O)-、又は、-(CHL1-C(=O)-NH-で表される2価の連結基を表し、L1は0以上10以下の整数を表し、nr1は、0以上の整数を表し、*は隣接するアミノ酸残基との結合部位を表し、**はチオエーテル結合における硫黄原子との結合部位を表す。
、L及びnr1は、構造(r-1における)R、L及びnr1と同義であり、好ましい態様も同様である。
チオエーテル結合前のハロゲン原子を有する有機基で保護されたアミノ酸に由来するアミノ酸残基のより具体的な例としては、特に制限はされないが、2-アミノ-3-[(2-ハロアセチル)アミノ]プロパン酸、2-アミノ-4-[(2-ハロアセチル)アミノ]ブタン酸、N-δ-ハロアセチルオルニチン、N-ε-ハロアセチルリシン、2-[(ハロアセチル)アミノ]-3-メチル-ペンタン酸、N-ζ-ハロアセチルホモリシン等に由来するアミノ酸残基が挙げられる。
これらのアミノ酸残基中のハロアセチルにおけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、中でも塩素原子が好ましい。
チオエーテル結合前のハロゲン原子を有する有機基で保護されたアミノ酸に由来するアミノ酸残基としては、結合安定性、及び、分子安定性の観点から、側鎖にクロロアセチル基を有するアミノ酸に由来するアミノ酸残基であることが好ましく、(2S)-2-アミノ-3-[(2-クロロアセチル)アミノ]プロパン酸、(2R)-2-アミノ-3-[(2-クロロアセチル)アミノ]プロパン酸、(2S)-2-アミノ-4-[(2-クロロアセチル)アミノ]ブタン酸、(2R)-2-アミノ-4-[(2-クロロアセチル)アミノ]ブタン酸、N-δ-クロロアセチル-L-オルニチン、N-δ-クロロアセチル-D-オルニチン、N-ε-クロロアセチル-L-リシン、N-ε-クロロアセチル-D-リシン、N-ζ-クロロアセチル-L-ホモリシン、N-ζ-クロロアセチル-D-ホモリシン、及び、(2S,3S)-2-[(クロロアセチル)アミノ]-3-メチル-ペンタン酸からなる群から選択されるアミノ酸残基であることがより好ましい。ただし、Xaについては、N-α-クロロアセチル-イソロイシン、N-α-クロロアセチル-リシン、N-α-クロロアセチル-アスパラギン酸、N-α-クロロアセチル-グルタミン酸、N-α-クロロアセチル-チロシン、N-α-クロロアセチル-ロイシン、N-α-クロロアセチル-トレオニン、N-α-クロロアセチル-バリン等の、アミノ酸のα炭素に結合したアミノ基にハロゲン原子を有する有機基が結合したアミノ酸に由来するアミノ酸残基であることも好ましい。
結合安定性、及び、分子安定性の観点から、X及びXのいずれか一方が、ハロゲン原子を有する有機基で保護されたアミノ酸に由来するアミノ酸残基であることが好ましく、塩素原子を有する有機基を側鎖上に有するアミノ酸残基であることがより好ましく、クロロアセチル基を側鎖上に有するアミノ酸残基であることが更に好ましく、(2S)-2-アミノ-3-[(2-クロロアセチル)アミノ]プロパン酸、(2R)-2-アミノ-3-[(2-クロロアセチル)アミノ]プロパン酸、(2S)-2-アミノ-4-[(2-クロロアセチル)アミノ]ブタン酸、(2R)-2-アミノ-4-[(2-クロロアセチル)アミノ]ブタン酸、N-δ-クロロアセチル-L-オルニチン、N-δ-クロロアセチル-D-オルニチン、N-ε-クロロアセチル-L-リシン、及び、N-ε-クロロアセチル-D-リシン、N-ζ-クロロアセチル-L-ホモリシン、及びN-ζ-クロロアセチル-D-ホモリシン、からなる群から選択されるアミノ酸に由来するアミノ酸残基であることが特に好ましい。
アミノ酸残基Xがチオール基を有するアミノ酸に由来するアミノ酸残基である場合、結合安定性、及び、分子安定性の観点から、Xは、アミノ酸のα炭素に結合したアミノ基にハロゲン原子を有する有機基が結合したアミノ酸に由来するアミノ酸残基、又はハロゲン原子を有する有機基で保護されたアミノ酸に由来するアミノ酸残基であることが好ましく、アミノ酸のα炭素に結合したアミノ基に塩素原子を有する有機基が結合したアミノ酸に由来するアミノ酸残基、又は塩素原子を有する有機基を側鎖上に有するアミノ酸残基であることがより好ましく、クロロアセチル基をα炭素に結合したアミノ基上又は側鎖上に有するアミノ酸残基であることが更に好ましく、N-α-クロロアセチル-イソロイシン、N-α-クロロアセチル-リシン、N-α-クロロアセチル-アスパラギン酸、N-α-クロロアセチル-グルタミン酸、N-α-クロロアセチル-チロシン、N-α-クロロアセチル-ロイシン、N-α-クロロアセチル-トレオニン、及びN-α-クロロアセチル-バリンからなる群から選択されるアミノ酸に由来するアミノ酸残基、又は(2S)-2-アミノ-3-[(2-クロロアセチル)アミノ]プロパン酸、(2R)-2-アミノ-3-[(2-クロロアセチル)アミノ]プロパン酸、(2S)-2-アミノ-4-[(2-クロロアセチル)アミノ]ブタン酸、(2R)-2-アミノ-4-[(2-クロロアセチル)アミノ]ブタン酸、N-δ-クロロアセチル-L-オルニチン、N-δ-クロロアセチル-D-オルニチン、N-ε-クロロアセチル-L-リシン、N-ε-クロロアセチル-D-リシン、N-ζ-クロロアセチル-L-ホモリシン、N-ζ-クロロアセチル-D-ホモリシン、及び、(2S,3S)-2-[(クロロアセチル)アミノ]-3-メチル-ペンタン酸からなる群から選択されるアミノ酸に由来するアミノ酸残基であることがより好ましい。
〔チオエーテル結合形成後のアミノ酸残基X~X
チオエーテル結合形成後のアミノ酸残基X~Xにおいて、チオエーテル結合が形成された後の、硫黄原子に結合した有機基で保護されたアミノ酸に由来するアミノ酸残基の構造としては、下記構造(q-1)又は(q-2)で表される構造が挙げられる。
Figure 0007230197000011

構造(q-1)及び(q-2)中、*は隣接するアミノ酸残基との結合であり、**はチオエーテル結合の相手方のアミノ酸残基の硫黄原子との結合であり、xq1及びxq1はそれぞれ独立に0以上の整数であり、Lは、それぞれ独立に、-(CHL1-C(=O)-、又は、-(CHL1-C(=O)-NH-で表される2価の連結基を表し、L1は0以上10以下の整数を表す。
L及びL1は、構造(p-1)及び(p-2)中のL及びL1と同義であり、好ましい態様も同様である。xq1及びxq1は、構造(p-1)及び(p-2)中のnp1及びnp2と同義であり、好ましい態様も同様である。
チオエーテル結合が形成された後の硫黄原子に結合した有機基で保護されたアミノ酸に由来するアミノ酸残基のより具体的な例としては、2-アミノ-3-[アセチルアミノ]プロパン酸、2-アミノ-4-[アセチルアミノ]ブタン酸、N-δ-アセチルオルニチン、又は、N-ε-アセチルリシン、N-ζ-アセチルホモリシンなどに由来するアミノ酸残基が挙げられる。
ただし、Xaについては、アミノ酸のα炭素に結合したアミノ基にハロゲン原子を有する有機基が結合したアミノ酸からチオエーテル結合を形成させることもできるため、N-α-アセチル-イソロイシン、N-α-アセチル-リシン、N-α-アセチル-アスパラギン酸、N-α-アセチル-グルタミン酸、N-α-アセチル-チロシン、N-α-アセチル-ロイシン、N-α-アセチル-トレオニン、N-α-アセチル-バリンなどに由来するアミノ酸残基も挙げられる。これらのアミノ酸残基のアセチル基部分がチオエーテル結合の硫黄原子に結合している。
なお、チオエーテル結合に関与する2つのアミノ酸残基のうち、チオエーテル結合の硫黄原子を供給しない方のアミノ酸残基がアセチル基等のアルカノイル基により置換されている場合、特に断りの無い限りはチオエーテル結合の硫黄原子は上記アルカノイル基に結合しており、上記アルカノイル基(例えばアセチル基)はS-結合アルカノイル基(例えばS-アセチル基)であるとも言える。ただし、本開示においては、特に断りの無い限り、このようなS-結合アルカノイル基における「S-結合」の表記は省略し、単にアルカノイル基(例えばアセチル基)として表記している。
チオエーテル結合形成後のアミノ酸残基X~Xのうち、チオエーテル結合形成後のアミノ酸残基X~Xにおいて、チオエーテル結合が形成された後のチオール基を側鎖上に有するアミノ酸残基の構造としては、下記構造(t-1)又は(t-2)で表されるアミノ酸残基の構造が挙げられる。
Figure 0007230197000012

構造(t-1)及び(t-2)中、*は隣接するアミノ酸残基との結合であり、***はチオエーテル結合の相手方のアミノ酸残基の炭素原子との結合であり、xt1及びxt2は、それぞれ独立に0以上の整数である。
xt1及びxt2は、構造(p-1)及び(p-2)中のnp1及びnp2と同義であり、好ましい態様も同様である。
チオエーテル結合が形成された後のより具体的な例としては、システイン残基、ペニシラミン残基、ホモシステイン残基(2-アミノ-4-メルカプトブタン酸由来の残基)、又は、2-アミノ-5-メルカプトペンタン酸由来のアミノ酸残基が挙げられる。
構造(q-1)又は(q-2)のアミノ酸残基等の硫黄原子に結合した有機基で保護されたアミノ酸に由来するアミノ酸残基は、環状セグメントにおけるそれぞれN末端側のアミノ酸残基X又はXであってもよいし、環状セグメントにおけるそれぞれC末端側のアミノ酸残基X又はXであってもよい。これに対応して、(t-1)又は(t-2)のアミノ酸残基等のチオール基を有するアミノ酸残基は、環状セグメントのN末端側のアミノ酸残基X又はXであってもよいし、環状セグメントのC末端側のアミノ酸残基X又はXであってもよい。
上記構造式(p-1)又は(p-2)で表されるアミノ酸残基は、下記構造(a)~(h)で表されるアミノ酸残基から選択される構造を有するアミノ酸残基であってもよい。
Figure 0007230197000013

ここで、式中、*は隣接するアミノ酸残基との結合であり、**はチオエーテル結合の相手方のアミノ酸残基の硫黄原子との結合である。
分子安定性の観点から、アミノ酸残基X及びアミノ酸残基Xのいずれか一方が、システイン残基であるとき、良好な分子安定性が得られる観点から、アミノ酸残基Xとアミノ酸残基Xのうち他方のアミノ酸残基のα炭素と、システイン残基とは、5個以上の原子により隔てられているように設計することが好ましい。上記良好な分子安定性が得られる理由は明らかでは無いが、チオエーテル結合の相手方のアミノ酸残基の硫黄原子から環状ペプチド主鎖までの炭素鎖長を長くすることにより、チオエーテル結合の電子配置が安定化され、より高い結合安定性が得られると推定される。アミノ酸残基X及びアミノ酸残基Xのいずれか一方が、システイン残基であり、他方が、チオエーテル結合の硫黄原子が有機基を介してアミノ酸側鎖に結合したアミノ酸残基である場合も同様である。
より高い分子安定性を得る観点からは、アミノ酸残基Xとアミノ酸残基Xのうち、チオール基を有するアミノ酸に由来するアミノ酸残基において、チオール基を有する側鎖上の炭素原子の合計数は、1~10であることが好ましく、1~6であることがより好ましく、1~4であることが更に好ましく、2~4であることが特に好ましい。
チオール基を有するアミノ酸に由来するアミノ酸残基において、チオール基を有する側鎖上の炭素原子の合計数とは、チオール基を有する側鎖における炭素原子の合計数である。ただし、上記チオール基を有する側鎖上の炭素原子の合計数に、主鎖に含まれる炭素数は含まれない。
例えば、システイン残基におけるチオール基を有する側鎖上の炭素原子の合計数は、1であり、ホモシステイン残基におけるチオール基を有する側鎖上の炭素原子の合計数は2であり、下記に示すペニシラミン残基における側鎖上の炭素原子の合計数は、3である。 なお、下記に示すペニシラミン残基における*は隣接するアミノ酸残基との結合部位を示す。
Figure 0007230197000014

また、インテグリン結合性の観点からは、チオール基を有するアミノ酸残基は、環状ペプチドの主鎖とチオール基を有する側鎖における硫黄原子との間の鎖長が、炭素原子数1~10であることが好ましく、1~6であることがより好ましく、1~4であることが更に好ましく、1~3であることが特に好ましい。
環状ペプチドの主鎖とチオール基を有する側鎖における硫黄原子との間の鎖長とは、環状ペプチドにおける主鎖と、チオール基とを結ぶ側鎖の原子数を、最小となるように数えた値であり、主鎖に含まれる炭素原子は鎖長の数には含まれない。
例えば、チオール基を有するアミノ酸残基が下記に示すペニシラミン残基である場合、環状ペプチドの主鎖とチオール基を有する側鎖における硫黄原子との間の鎖長は、1である。なお、下記に示すペニシラミン残基における*は隣接するアミノ酸残基との結合部位を示す。
Figure 0007230197000015

インテグリン結合性の観点からは、例えば、チオール基を有するα-アミノ酸に由来するアミノ酸残基である場合、環状ペプチドの主鎖とチオール基を有する側鎖における硫黄原子との間の鎖長としては、1~10であることが好ましく、1~6であることがより好ましく、1~4であることが更に好ましく、1~3であることが特に好ましい。
アミノ酸残基Xとアミノ酸残基Xのうちチオエーテル結合の硫黄原子を供給しないアミノ酸残基のα炭素と、チオエーテル結合の硫黄原子を供給するアミノ酸残基の硫黄原子と、の間の鎖長は、より高い分子安定性を得る観点から、4個以上の原子により隔てられていることが好ましく、4個~9個の原子によって隔てられていることがより好ましく、4~8個の原子によって隔てられていることが更に好ましい。ただし、Xaが、チオエーテル結合の硫黄原子が有機基を介してα-炭素上のアミノ基に結合しているアミノ酸残基である場合はこの限りでない。
同様の観点から、アミノ酸残基X及びアミノ酸残基Xのうちチオエーテル結合の硫黄原子を供給しないアミノ酸残基のα炭素と、チオエーテル結合の硫黄原子を供給するアミノ酸残基の硫黄原子と、の間の鎖長は、4個以上の原子により隔てられていることが好ましく、4個~9個の原子によって隔てられていることがより好ましく、4~8個の原子によって隔てられていることが更に好ましい。
チオエーテル結合の硫黄原子を供給しないアミノ酸残基のα炭素と、チオエーテル結合の硫黄原子を供給するアミノ酸残基の硫黄原子と、の間の鎖長が、4個以上の原子により隔てられている例として、上記(a)のアミノ酸残基と、L-システイン残基とが結合している場合を以下に例示するが、本開示はこれに限定されることはない。
Figure 0007230197000016

ここで、式中、*は隣接するアミノ酸残基との結合部位である。(a)のアミノ酸残基と、L-システイン残基とが結合している場合には、α炭素と、システイン残基の硫黄原子との鎖長は、1個の窒素原子及び3個の炭素原子により隔てられているため、原子数は4個である。このように、チオエーテル結合の相手方のアミノ酸残基のα炭素と、システイン残基の硫黄原子とを隔てる原子の数(鎖長)は、α原子と硫黄原子とを連結する鎖上の原子数を意味し、鎖上の原子に結合している水素原子等の上記鎖に参加していない原子はカウントしない。
<<チオエーテル結合の形成方法>>
チオエーテル結合形成前のアミノ酸残基X及びアミノ酸残基X及びアミノ酸残基X及びアミノ酸残基Xにおいて、チオエーテル結合を形成させる方法としては、特に限定されず、ペプチドにおいてチオエーテル結合を形成される公知の方法が挙げられる。
チオエーテル結合としては、例えば、チオール基を有するアミノ酸残基と、ハロゲン原子を有する有機基で保護されたアミノ酸残基とを中性、又は、アルカリ条件下(pH7~pH9)で反応させることで、ハロゲン化水素の生成を伴いながらチオール基における硫黄原子が有機基に結合することで、チオエーテル結合を形成することができる。
上記ハロゲン原子を有する有機基としては、ハロアセチル基等の保護基が好適に挙げられる。
また、例えば、チオール基を側鎖上に有するアミノ酸残基と、アミノ酸のα炭素に結合したアミノ基にハロゲン原子を有する有機基が結合したアミノ酸残基又はハロゲンを有する有機基を側鎖上に有するアミノ酸残基との間で、チオール基とハロゲンを有する有機基とを反応させてチオエーテル結合を形成する方法としては、例えば、環状化前の線状のペプチドを中性、又は、塩基性の緩衝液中で反応させることによりチオエーテル結合を形成する方法が挙げられる。
より具体的には、線状ペプチドを含む水溶液をTris-HCl(pH 8.5)緩衝液にゆっくりと滴下して静置する方法が好適に挙げられる。チオエーテル結合を形成する環化反応では、反応条件によっては環状ペプチド以外に、複数の非環状ペプチドが分子間結合により連結したオリゴマーが形成される場合がある。チオエーテル結合を形成させる方法は、環状ペプチドの収率を向上させる点から、精製する工程を含むことが好ましい。環状ペプチドの精製方法としては、公知の精製方法が挙げられる。環状ペプチドの精製方法は、上記環化反応後のペプチドを逆相高速液体クロマトグラフィー等により精製する方法が好ましい。
<<アミノ酸残基X~X>>
特定アミノ酸配列において、X~Xは、それぞれ独立に、アミノ酸残基を表し、m1~m5は、それぞれ独立に、0以上の整数を表す。
アミノ酸残基X~Xの数m1~m5は、X、X、X及びX並びに、X、X及びXで表されるアミノ酸残基とRGDとの合計アミノ酸残基数は、7~16となる範囲であれば特に制限はされない。
アミノ酸残基としては、環状ペプチドの形成が可能であれば特に制限はされず、上記表1に示されるアミノ酸(B、ZおよびXを除く。)及び表2に示すアミノ酸からなる群から選択されるアミノ酸に由来するアミノ酸残基であることが好ましく、表1に示すアミノ酸(B、ZおよびXを除く。)からなる群から選択されるアミノ酸に由来するアミノ酸残基であることがより好ましい。
また、存在する場合には、これらのアミノ酸のエナンチオマーまたはジアステレオマーに由来するアミノ酸残基であってもよい。
特定アミノ酸配列において、X~Xは、X~Xからなる群から選ばれる任意の2つのアミノ酸残基同士が、チオエーテル結合を形成していてもよい。
チオエーテル結合を形成可能なアミノ酸残基の組み合わせとしては、チオール基を有するアミノ酸に由来するアミノ酸残基であり、他方が、ハロゲン原子を有する有機基で保護されたアミノ酸に由来するアミノ酸残基である組み合わせが挙げられる。
チオール基を有するアミノ酸に由来するアミノ酸残基及びハロゲン原子を有する有機基で保護されたアミノ酸に由来するアミノ酸残基は、アミノ酸残基X~Xにおけるオール基を有するアミノ酸に由来するアミノ酸残基及びハロゲン原子を有する有機基で保護されたアミノ酸に由来するアミノ酸残基と同義であり、好ましい態様も同様である。
上記アミノ酸残基は、例えば、側鎖にカルボキシ基を有するアミノ酸残基、側鎖にヒドロキシ基を有するアミノ酸残基等であってもよい。
側鎖にカルボキシ基を有するアミノ酸残基としては、例えば、L-アスパラギン酸残基、D-アスパラギン酸残基、L-グルタミン酸残基、D-グルタミン酸残基、L-ホモグルタミン酸残基、およびD-ホモグルタミン酸残基等が挙げられる。
上記側鎖にヒドロキシ基を有するアミノ酸残基としては、例えば、L-セリン残基、D-セリン残基、L-ホモセリン残基、D-ホモセリン残基、L-チロシン残基、D-チロシン残基、L-トレオニン残基、D-トレオニン残基、L-アロトレオニン残基、およびD-アロトレオニン残基等が挙げられる。
上記アミノ酸残基としては、例えば、疎水性のアミノ酸残基であってもよい。
疎水性のアミノ酸残基としては、例えば、バリン、メチオニン、トリプトファン、プロライン、ロイシン、フェニルアラニン、イソロイシン、アラニン、グリシン等のアミノ酸残基が挙げられる。
<<Xで表されるアミノ酸残基>>
で表されるアミノ酸残基としては、インテグリン結合性の観点から、疎水性アミノ酸に由来するアミノ酸残基、及び、環構造を有するアミノ酸残基の少なくとも一方であることが好ましく、チロシン、フェニルアラニン、3-ヨードチロシン、ナフチルアラニン、ホモチロシン、プロリン、又は、イソロイシンに由来するアミノ酸残基であることが更に好ましく、フェニルアラニン又はチロシンに由来するアミノ酸残基であることが特に好ましい。
で表されるアミノ酸残基の数m1は、0以上の整数であり、コストの観点から、1以上6以下であることが好ましく、1以上3以下であることがより好ましく、1又は2であることが好ましい。
<<X及びXで表されるアミノ酸残基の数m3及びm4>>
及びXで表されるアミノ酸残基としては、特に制限はないが、インテグリン結合性の観点から、プロリン、トレオニン、又は、アスパラギン、セリン、ホモセリン、バリン、又は、アラニンのアミノ酸残基であることが好ましい。
また、X及びXで表されるアミノ酸残基の数m3及びm4は、それぞれ独立に、0以上の整数である。コストの観点から、m3及びm4は、それぞれ独立に、0以上2以下であることが好ましく、0以上1以下であることがより好ましく、m3及びm4の両方が0であることが更に好ましい。
及びXで表されるアミノ酸残基の数m3及びm4が2以上である場合は、X及びXは互いに同一のアミノ酸残基であってもよく、異なるアミノ酸残基であってもよい。
<<X及びXで表されるアミノ酸残基>>
及びXで表されるアミノ酸残基の数m2及びm5は、それぞれ独立に、0以上の整数である。コストの観点から、m5は0であることが好ましい。分子安定性及び後述する基材又は保持材上の官能基と反応して共有結合を形成のしやすさから、m2は、1以上であることが好ましく、1以上6以下であることが好ましく、1以上4以下であることがより好ましい。
m5は0である場合、Xで表されるアミノ酸残基は、アミノ基又は修飾アミノ基であってもよい。
で表されるアミノ酸残基の数m2が2以上である場合は、Xは互いに同一のアミノ酸残基であってもよく、異なるアミノ酸残基であってもよいが、Xは互いに同一のアミノ酸残基であることが好ましい。
<<側鎖に固定化官能基を有するアミノ酸>>
及びXで表されるアミノ酸残基は、分子安定性及び後述する基材又は保持材上の官能基と反応して共有結合を形成のしやすさから、側鎖に固定化官能基を有するアミノ酸残基(以下、単に「固定化官能基を有するアミノ酸残基」ともいう。)を含むことが好ましい。
上記「固定化官能基」とは、後述する基材又は保持材上の官能基と反応して共有結合を形成することができる官能基をいう。
固定化官能基としては、例えば、アミノ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、チオール基、アルデヒド基(ホルミル基)、カルバモイル基、アジド基、アルキニル基等が挙げられる。
上記固定化官能基を有するアミノ酸における固定化官能基としては、基材又は保持材上の官能基との反応性の観点から、好ましくはアミノ基、チオール基、及び、アルデヒド基からなる群から選択される少なくとも1つの基であり、より好ましくはアミノ基、及び、チオール基からなる群から選択される少なくとも1つ基である。
アミノ基を固定化官能基として用いた場合、アミノ基は、アミド結合を介して、基材又は保持材上のカルボキシ基と結合することができ、本開示に係る環状ペプチドを基材又は保持材上に容易に固定することができる。
また、チオール基を固定化官能基として用いた場合、チオール基は、共有結合を介して基材又は保持材上のエポキシ基と結合することができ、本開示に係る環状ペプチドを基材又は保持材上に容易に固定することができる。
側鎖にアミノ基を有するアミノ酸残基としては、L-リシン残基、D-リシン残基等が挙げられる。側鎖にチオール基を有するアミノ酸残基としては、L-システイン残基、D-システイン残基等が挙げられる。側鎖にアミノ基を有するアミノ酸残基及び側鎖にチオール基を有するアミノ酸残基は、比較的安価に導入することができるため、本開示に係る環状ペプチドの製造コストを抑えることができる。このため、上記のアミノ酸残基の使用は、経済的な観点から好ましい。
すなわち、側鎖に固定化官能基を有するアミノ酸としては、分子安定性の観点から、L-リシン、D-リシン、L-システイン、D-システイン、L-ホモシステイン及びD-ホモシステインからなる群から選択される少なくとも1種のアミノ酸であることが好ましく、L-リシン及びD-リシンからなる群より選ばれる少なくとも1種のアミノ酸であることがより好ましい。
(環状ペプチドのN末端)及びX(環状ペプチドのC末端)のうち少なくとも一方が、基材等との固定化の観点から、固定化官能基を有するアミノ酸残基としてリシン残基を含むことが好ましく、Xが固定化官能基を有するアミノ酸残基としてリシン残基を含むことがより好ましい。
基材等との固定化の観点から、X(環状ペプチドのN末端)及びX(環状ペプチドのC末端)のうち少なくとも一方が、固定化官能基を有するアミノ酸残基としてリシン残基を1つ以上連続して含むことが好ましく、2~10個連続して含むことがより好ましく、2~5個連続して含むことが更に好ましい。
(環状ペプチドのN末端)及びX(環状ペプチドのC末端)は、連続する固定化官能基を有するアミノ酸残基(好ましくはリシン残基)のみで構成されていてもよいが、固定化官能基を有するアミノ酸残基以外のアミノ酸残基を含んでいてもよい。
固定化官能基を有するアミノ酸残基以外のアミノ酸残基としては、1~20個、1~10個、1~5個、又は1~3個の、アラニン残基、βアラニン残基、グルタミン酸残基、アスパラギン酸残基、及びグリシン残基から選ばれるアミノ酸残基等であってもよい。
また、上記固定化官能基を有するアミノ酸残基以外のアミノ酸残基とX又はXとの間にリシン残基が更に挟まれていてもよい。
本開示に係る環状ペプチドが有する固定化官能基と、基材又は保持材上の官能基と、の組合せとしては、特に制限はないが、アミノ基とカルボキシ基との組み合わせ、アミノ基とアルデヒド基との組み合わせ、アミノ基とエポキシ基との組み合わせ、ヒドロキシ基とエポキシ基との組み合わせ、カルボキシ基とヒドロキシ基との組み合わせ、チオール基とエポキシ基との組み合わせ、アジド基とアルキニル基との組み合わせ等が挙げられる。
本開示に係る環状ペプチドが有する固定化官能基と基材又は保持材上の官能基とが反応して共有結合を形成することにより、本開示に係る環状ペプチドが基材又は保持材に固定化される。
なお、本開示に係る環状ペプチドが有する固定化官能基の少なくとも一部が基材又は保持材上の官能基と反応して共有結合を形成すればよく、すべての固定化官能基が基材又は保持材上の官能基と反応しなくてもよい。
<<RGD配列>>
本開示に係る環状ペプチドに含まれる特定アミノ酸配列は、RGD配列を有し、かつ、チオエーテル結合によって架橋されたアミノ酸残基であるX及びXの間にRGD配列が配置されていることにより、インテグリン結合性及び分子安定性に優れる。
本開示において、「RGD配列」とは、N末端側からC末端側にかけて「R(アルギニン)」、「G(グリシン)」、及び「D(アスパラギン酸)」の3つのアミノ酸残基が存在する配列を示す。「RGD配列」は、細胞接着に関与することから、本開示に係る環状ペプチドは、「RGD配列」を有することで、特にインテグリン等の細胞接着分子に対する結合性を高めることができる。
本開示に係る環状ペプチドに含まれる特定アミノ酸配列において、「RGD配列」の数は、2以上であってもよいが、1であることが好ましい。
RGD配列は、インテグリン結合性の観点から、アミノ酸残基X及びアミノ酸残基Xの間に位置する。RGD配列の位置としては、アミノ酸残基X及びアミノ酸残基Xと隣接した位置であってもよいし、アミノ酸残基Xともアミノ酸残基Xと隣接していない位置であってもよい。
インテグリン結合性の観点から、特定アミノ酸配列におけるN末端にあるXを1番目のアミノ酸残基としてC末端側へとアミノ酸残基をカウントしたときに、3~5番目のアミノ酸残基に相当することが好ましい。
、X、X及びX並びに、X、X及びXで表されるアミノ酸残基とRGDとの合計アミノ酸残基数は、7~16である。X、X、X及びX並びに、X、X及びXで表されるアミノ酸残基とRGDとの合計アミノ酸残基数、すなわち、架橋ペプチドにおいてチオエーテル結合で架橋された最もN末端側にあるアミノ酸残基(X)から最もC末端側にあるアミノ酸残基(X)までの間にあるアミノ酸残基数(以下、「最外環状セグメントのアミノ酸残基数」ともいう。)が、7~16であると、環状ペプチドの分子内ひずみが大きくなり過ぎず、α-ヘリックス等の高次構造が安定化し、かつ、インテグリン結合性に優れる。
上記観点から、最外環状セグメントのアミノ酸残基数としては、7~14であることが好ましく、7~13であることがより好ましい。
また、X及びX並びに、X及びXで表されるアミノ酸残基とRGDとの合計アミノ酸残基数、すなわち、架橋ペプチドにおいてチオエーテル結合で架橋されたアミノ酸残基(X)からアミノ酸残基(X)までの間にあるアミノ酸残基数(以下、「最内環状セグメントのアミノ酸残基数」ともいう。)は、5~14であることが好ましく、5~10であることがより好ましく、5~8であることが更に好ましい。
本開示に係る環状ペプチドが有するアミノ酸配列に含まれるアミノ酸残基の合計数は、特に制限はなく、7~50アミノ酸残基であってもよく、7~30アミノ酸残基であってもよく、8~20アミノ酸残基であってもよく、9~15アミノ酸残基であってもよい。環状ペプチドの全長が短い方が抗原性のリスクが少なく、ペプチド合成が容易である。
<<式(2)で表されるアミノ酸配列>>
本開示に係る環状ペプチドが有する上記式(1)で表されるアミノ酸配列(特定アミノ酸配列)は、インテグリン結合性及び分子安定性の観点から、下記式(2)で表されるアミノ酸配列であることが好ましい。
Figure 0007230197000017

式(2)中、X及びX並びにX及びXは、それぞれ独立に、チオエーテル結合を介して架橋されたアミノ酸残基を表し、X及びXは、それぞれ独立に、アミノ酸残基を表し、Rはアルギニンを表し、Gはグリシンを表し、Dはアスパラギン酸を表し、m1及びm2は、それぞれ独立に、1以上の整数を表す。ただし、X、X、X及びX並びにXで表されるアミノ酸残基とRGDとの合計アミノ酸残基数は、7~14である。
式(2)中、X、X、X、X、X、X、m1及びm2は、上記式(1)中のX、X、X、X、X、X、m1及びm2はと同義であり、好ましい態様も同様である。
結合安定性及び分子安定性の観点から、式(2)におけるX及びXのいずれか一方が、(2S)-2-アミノ-3-[(2-アセチル)アミノ]プロパン酸、(2R)-2-アミノ-3-[(2-アセチル)アミノ]プロパン酸、(2S)-2-アミノ-4-[(2-アセチル)アミノ]ブタン酸、(2R)-2-アミノ-4-[(2-アセチル)アミノ]ブタン酸、N-δ-アセチル-L-オルニチン、N-δ-アセチル-D-オルニチン、N-ε-アセチル-L-リシン、N-ε-アセチル-D-リシン、N-ζ-アセチル-L-ホモリシン、及び、N-ζ-アセチル-D-ホモリシンからなる群から選択される側鎖にアセチル基を有するアミノ酸に由来するアミノ酸残基であり、他方が、L-ホモシステイン、D-ホモシステイン、L-ペニシラミン、又は、D-ペニシラミンに由来するアミノ酸残基であることが好ましく、L-ホモシステイン、又は、D-ホモシステインに由来するアミノ酸残基が更に好ましい。
結合安定性及び分子安定性の観点から、式(2)中におけるXが、L-ホモシステイン、D-ホモシステイン、L-ペニシラミン、又は、D-ペニシラミンに由来するアミノ酸残基であり、Xが、(2S)-2-アミノ-3-[(2-アセチル)アミノ]プロパン酸、(2R)-2-アミノ-3-[(2-アセチル)アミノ]プロパン酸、(2S)-2-アミノ-4-[(2-アセチル)アミノ]ブタン酸、(2R)-2-アミノ-4-[(2-アセチル)アミノ]ブタン酸、N-δ-アセチル-L-オルニチン、N-δ-アセチル-D-オルニチン、N-ε-アセチル-L-リシン、N-ε-アセチル-D-リシン、N-ζ-アセチル-L-ホモリシン、N-ζ-アセチル-D-ホモリシン、及び、(2S,3S)-2-[(アセチル)アミノ]-3-メチル-ペンタン酸からなる群から選択されるアミノ酸に由来するアミノ酸残基であることが好ましい。
式(2)中、アミノ酸残基Xとしては、結合安定性及び分子安定性の観点から、下記構造(r)で表されるアミノ酸残基であることが好ましい。
Figure 0007230197000018

構造(r)中、Rは水素原子又は1価の有機基を表し、Lは、-(CHL1-C(=O)-、又は、-(CHL1-C(=O)-NH-で表される2価の連結基を表し、L1は0以上10以下の整数を表し、nr1は、0以上の整数を表し、*は隣接するアミノ酸残基との結合部位を表し、**はチオエーテル結合における硫黄原子との結合部位を表す。
、L及びnr1は、構造(r-1における)R、L及びnr1と同義であり、好ましい態様も同様である。
結合安定性及び分子安定性の観点から、式(2)におけるX及びXのいずれか一方が、(2S)-2-アミノ-3-[(2-アセチル)アミノ]プロパン酸、(2R)-2-アミノ-3-[(2-アセチル)アミノ]プロパン酸、(2S)-2-アミノ-4-[(2-アセチル)アミノ]ブタン酸、(2R)-2-アミノ-4-[(2-アセチル)アミノ]ブタン酸、N-δ-アセチル-L-オルニチン、N-δ-アセチル-D-オルニチン、N-ε-アセチル-L-リシン、N-ε-アセチル-D-リシン、N-ζ-アセチル-L-ホモリシン、及び、N-ζ-アセチル-D-ホモリシンからなる群から選択される側鎖にアセチル基を有するアミノ酸に由来するアミノ酸残基であり、他方が、L-ホモシステイン、D-ホモシステイン、L-ペニシラミン、又は、D-ペニシラミンに由来するアミノ酸残基であり、式(2)中におけるXが、L-ホモシステイン、D-ホモシステイン、L-ペニシラミン、又は、D-ペニシラミンに由来するアミノ酸残基であり、Xが、上記構造(r)で表されるアミノ酸残基(より好ましくは、(2S)-2-アミノ-3-[(2-アセチル)アミノ]プロパン酸、(2R)-2-アミノ-3-[(2-アセチル)アミノ]プロパン酸、(2S)-2-アミノ-4-[(2-アセチル)アミノ]ブタン酸、(2R)-2-アミノ-4-[(2-アセチル)アミノ]ブタン酸、N-δ-アセチル-L-オルニチン、N-δ-アセチル-D-オルニチン、N-ε-アセチル-L-リシン、N-ε-アセチル-D-リシン、N-ζ-アセチル-L-ホモリシン、N-ζ-アセチル-D-ホモリシン及び、(2S,3S)-2-[(アセチル)アミノ]-3-メチル-ペンタン酸からなる群から選択されるアミノ酸に由来するアミノ酸残基)であることが好ましい。
、X、X及びX並びにXで表されるアミノ酸残基とRGDとの合計アミノ酸残基数は、7~14である。環状ペプチドの分子内ひずみが大きくなり過ぎず、α-ヘリックス等の高次構造が安定化し、かつ、インテグリン結合性に優れる観点から、X、X、X及びX並びにXで表されるアミノ酸残基とRGDとの合計アミノ酸残基数は、7~13であることがより好ましく、8~10であることがより好ましい。
また、上記観点から、X及びXで表されるアミノ酸残基とRGDとの合計アミノ酸残基数は、5であることが好ましい。
式(2)においては以下のような実施形態もまた好ましい。ここで、各アミノ酸残基はL-アミノ酸残基であってもD-アミノ酸残基であってもよい。
すなわち、Xは、環状ペプチドのN末端アミノ酸残基であることが好ましく、この場合、Xはα炭素にアセチル基が結合したイソロイシン、リシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、チロシン、ロイシン、トレオニン、又はバリンに由来するアミノ酸残基であってもよい。中でもα炭素にアセチル基が結合したアスパラギン酸に由来するアミノ酸残基及びα炭素にアセチル基が結合したグルタミン酸に由来するアミノ酸残基が好ましく、α炭素にアセチル基が結合したグルタミン酸残基がより好ましい。
は、システインに由来するアミノ酸残基、ペニシラミンに由来するアミノ酸残基、又はホモシステインに由来するアミノ酸残基であってもよい。中でもホモシステインに由来するアミノ酸残基が好ましい。
及びXのうち、チオエーテル結合の硫黄原子を供給しない方のアミノ酸残基は、2-アミノ-3-[(2-アセチル)アミノ]プロパン酸、2-アミノ-4-[(2-アセチル)アミノ]ブタン酸、N-δ-アセチル-オルニチン、N-ε-アセチル-リシン、又はN-ζ-アセチル-ホモリシンに由来するアミノ酸残基であってもよい。中でもN-δ-アセチル-オルニチンに由来するアミノ酸残基及びN-ε-アセチル-リシンに由来するアミノ酸残基が好ましく、N-ε-アセチル-リシンに由来するアミノ酸残基がより好ましい。
及びXのうち、チオエーテル結合の硫黄原子を供給している方のアミノ酸残基は、システインに由来するアミノ酸残基、ペニシラミンに由来するアミノ酸残基、又はホモシステインに由来するアミノ酸残基であってもよい。中でもホモシステインに由来するアミノ酸残基が好ましい。
(Xm1は、全体でFを表すか、あるいはFXを表すことが好ましい。ここでXは任意の一アミノ酸残基を表すが、その例としてはアラニン、アルギニンが挙げられる。
(Xm2は、3残基以上連続するKを含むことが好ましい。Kの繰り返し数の上限は特に制限されないが、例えば10、6、又は4であってもよい。(Xm2は、全体で、例えばA、K、KKK、AKKK等を表していてもよい。
一つの好ましい実施形態においては、Xはα炭素にアセチル基が結合した任意のアミノ酸に由来するアミノ酸残基であり、Xはホモシステインに由来するアミノ酸残基であり、Xはホモシステインに由来するアミノ酸残基であり、XはN-δ-アセチル-オルニチンに由来するアミノ酸残基又はN-ε-アセチル-リシンに由来するアミノ酸残基であり、(Xm1は、全体でFである。この場合、Xはα炭素にアセチル基が結合したイソロイシン、リシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、チロシン、ロイシン、トレオニン、又はバリンに由来するアミノ酸残基であることが好ましい。また、(Xm2は、全体でA、K、KKK、又はAKKKであってもよい。
別の好ましい実施形態においては、Xはα炭素にアセチル基が結合した任意のアミノ酸に由来するアミノ酸残基であり、Xはホモシステインに由来するアミノ酸残基であり、XはN-δ-アセチル-オルニチンに由来するアミノ酸残基又はN-ε-アセチル-リシンに由来するアミノ酸残基であり、Xはホモシステインに由来するアミノ酸残基であり、(Xm1は、全体でFである。この場合、Xはα炭素にアセチル基が結合したイソロイシン、リシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、チロシン、ロイシン、トレオニン、又はバリンに由来するアミノ酸残基であることが好ましい。また、(Xm2は、全体でA、K、KKK、又はAKKKであってもよい。
さらに、本開示に係る環状ペプチドは、上記式(2)の環状ペプチドのN末端に追加のアミノ酸を加えた構造の環状ペプチドであってもよい。このような環状ペプチドの構造は以下の式(3)で表すことができる。
Figure 0007230197000019
ここで、式(3)におけるX、X、X、X、X、X、m1及びm2は、上記式(2)中のX、X、X、X、X、X、m1及びm2と同義であり、好ましい態様も同様である。また、X及びm5は、上記式(1)中のX及びm5と同義であり、好ましい態様も同様である。
ただし、式(3)の環状ペプチドにおいては、Xaはチオエーテル結合の硫黄原子が有機基を介してα-炭素上のアミノ基に結合しているアミノ酸残基ではない。このため、X及びXの組み合わせの例及び好ましい例としては、式(2)の説明においてX及びXの組み合わせの例及び好ましい例として挙げたアミノ酸残基が挙げられる。XとXのうちどちらがチオエーテル結合の硫黄原子を供給しているアミノ酸残基であるかは特に制限されないが、例えばXの方であってもよい。
(Xm5は、全体でA、K、KKK、又はAKKKであってもよい。
本開示に係る環状ペプチドは、実施例における「(2)環状ペプチドの固定」及び「(3)インテグリン結合性の評価」に記載の方法で測定した解離定数が200nM(M;mol/L)以下であることが好ましく、100nM以下であることがより好ましく、50nM以下であることがさらに好ましい。解離定数は0nMに近ければ近いほど好ましいが、実際上の観点から、上記上限値と組み合わせることができる下限値として、例えば、0.1nM、あるいは0.5nMを用いてもよい。また、本開示に係る環状ペプチドは、実施例における「(4)分子安定性の評価」に記載の方法で測定した残存率が30%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、70%以上であることがさらに好ましい。残存率は100%に近ければ近いほど好ましく、このため上記下限値と組み合わせることができる上限値として100%を用いてもよい。
本開示におけるインテグリンは、RGD配列を認識するインテグリンであれば特に限定されない。後述の実施例においてはインテグリンαvβ5を用いて結合性の評価を行っているが、インテグリンはこれに限定されず、本開示に係る環状ペプチドは、αVβ3のRGD配列を認識するインテグリンに結合することができる。
また、本開示に係る環状ペプチドの分子安定性は、耐アルカリ性を指標にして測定しているが、本開示に係る環状ペプチドの分子安定性はアルカリ以外の刺激に対する耐性、例えばX線耐性、γ線耐性、紫外線耐性、耐熱性、耐薬品性においても同様に発揮される。例えば、耐アルカリ性に優れることで、本開示に係る環状ペプチドをアフィニティリガンドとして用いるアフィニティクロマトグラフィー用担体を細胞精製に使用した際に、アルカリによる洗浄を繰り返し行ってもインテグリン結合性が維持され、細胞分離コストを低減することができる。
本開示に係る環状ペプチドの例を以下の表3-1及び表3-2に記載する。表3-1及び表3-2に記載の環状ペプチド1~47は、いずれも、全てのアミノ酸残基がL-アミノ酸残基又はグリシン等光学異性体を有しないアミノ酸残基である。表中、Hcyはホモシステイン残基を表し、Dab(acetyl)は、2-アミノ-4-アセチルアミノ-ブタン酸残基を表し、Dap(acetyl)は、2-アミノ-3-アセチルアミノ-プロパン酸残基を表し、Orn(acetyl)は、N-δ-アセチル-オルニチン残基を表し、K(acetyl)は、N-ε-アセチル-リシン残基を表す。
これらのアセチル基を含有するアミノ酸残基におけるアセチル基中のメチル基上の水素原子のうち1つが、チオエーテル結合の結合相手となるアミノ酸残基における硫黄原子への結合に置換して、チオエーテル結合による架橋が形成されている。また、架橋部アミノ酸残基の欄においては、アセチル基は省略して記載している。
表3-1及び表3-2中、括弧内に記載されたアミノ酸残基及び太字の字体で記載されたアミノ酸残基は、チオエーテル結合による架橋されたアミノ酸残基を示す。また、斜体で記載されたアミノ酸残基同士が、チオエーテル結合による架橋されたアミノ酸残基の組み合わせの1つを表し、斜体ではない太字の事体で記載されたアミノ酸残基同士が、チオエーテル結合による架橋されたアミノ酸残基の組み合わせの1つを表している。
例えば、環状ペプチド1において、斜体の「Dap」と斜体の「Hcy」とがチオエーテル結合による架橋されたアミノ酸残基を表し、太字の字体「I」と太字の字体「Hcy」とがチオエーテル結合による架橋されたアミノ酸残基を表している。
表3-1及び表3-2中のXの欄における「α-NH」は、アミノ酸残基のα-NHが、クロロアセチル基を介して(ただし、チオエーテル結合形成後はクロロ基は存在しない)結合相手となるアミノ酸残基とチオエーテル結合を形成していることを意味する。
例えば、環状ペプチド21において、アミノ酸残基Xは「K」:リシンであり、リシンは側鎖上のNHではなく、「α-NH」がクロロアセチル基を介して結合相手となるアミノ酸残基とチオエーテル結合を形成していることを示す。
Figure 0007230197000020
Figure 0007230197000021
これらの中でも、環状ペプチド3、11、14~18、20、22~30、35、38~40、及び42~47が好ましく、環状ペプチド11、22、25~30、35、38~40及び42~47が好ましく、環状ペプチド29及び30がいっそう好ましい。
配列のバリエーションは、環状ペプチド全体を基準配列と考えて適用してもよい。このため、配列番号1~配列番号47のうちいずれか1つのアミノ酸配列に対してアミノ酸残基を付加、欠失又は置換したアミノ酸基も本開示に係る環状ペプチドの要件を満たす限り使用可能である。ただし、環状セグメントの中のRGD領域は改変してはならない。配列番号1~配列番号47のうちいずれか1つのアミノ酸配列にアミノ酸残基の付加、欠失又は置換を行う場合、付加、欠失又は置換したアミノ酸残基の総数は、1~10であることが好ましく、1~5であることがより好ましく、1~3であることが更に好ましく、1又は2であることが特に好ましい。
本開示に係る環状ペプチドは、配列番号1~配列番号47のうちいずれか1つのアミノ酸配列と70%以上の配列同一性を有することが好ましく、80%以上の配列同一性を有することがより好ましく、90%以上の配列同一性を有することがさらに好ましい。なお、例えば配列番号1のアミノ酸配列と70%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列の範囲には、配列番号1のアミノ酸配列自身も含まれる。
本開示において、2つのアミノ酸配列の配列同一性は、次のようにして求める。
(i)2つのアミノ酸配列のアラインメントを行う
たとえば初期設定で使用することができるFASTA、BLAST等のアラインメントアルゴリズム及び/又はプログラムを使用して、2つの配列間のアラインメントを行うことができる。
(ii)配列同一性を計算する
得られたアラインメントに基づいて、次式により配列同一性を計算する。
配列同一性[%]=(一致ポジション数/全ポジション数)×100[%]
全ポジション数はアラインメントの長さであり、一致ポジション数はアミノ酸の種類が一致するポジションの数である。
(iii)配列同一性の計算例
例えば、次のアミノ酸配列を考える。
配列A・・・AYHRGELVWE
配列B・・・SAWHGELVW
これを、上記した条件の下でアラインメントすると、次のようになる。ここで、配列A、B間でアミノ酸(残基)の種類が一致する箇所には、見やすくするため、記号「|」を付けている。また、「-」は対応するアミノ酸が無い箇所を示す。
配列A -AYHRGELVWE
| | |||||
配列B SAWH-GELVW-
この例では、全ポジション数は11であり、一致ポジション数は7であるから、上記式に従って算出した配列同一性は、7/11×100=63.6%である。
(細胞足場材)
本開示に係る細胞足場材は、本開示に係る環状ペプチドと、基材と、を含む。
細胞は生体内においては細胞外マトリックスによって支持されていることから、同様の状態を再現する細胞足場材として、本開示に係る環状ペプチドを使用することにより、細胞をより良好に培養することができる。
細胞培養のための上記基材としては、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン等の生分解性ポリエステル類、コラーゲン若しくはその熱変性体のゼラチン、フィブロネクチン等の糖タンパク質、又はヒアルロン酸、キチン、アルギン酸等の多糖類により構成されたマトリクスが挙げられる。例えば、本開示に係る環状ペプチド中の固定化官能基を、基材中の官能基と反応させることにより、本開示に係る環状ペプチドを基材に結合させることができる。例えば、本開示に係る環状ペプチドが固定化官能基としてリシン残基のアミノ基を有する場合、アミノ基を基材上のカルボキシ基と反応させてアミド結合を形成することにより、環状ペプチドを基材に固定できる。このような手法を用いることにより、本開示に係る環状ペプチドが基材の表面に結合した細胞足場材を得ることができる。 本開示に係る環状ペプチドの量は特に限定はされないが、基材の全質量に対して0.01質量%~100質量%であってもよく、0.1質量%~50質量%であってもよい。
本開示に係る細胞足場材は、シャーレ、フラスコ、プレート(例えば、ポリスチレンウェルプレート)、培養バッグ、中空糸膜、ビーズ等の任意の培養ツール上に付与することができる。
本開示に係る細胞足場材は本開示に係る環状ペプチドを含むため、インテグリンへの良好な結合性を有し、細胞は細胞足場材に良好に接着することができる。
培養対象となる細胞としては、インテグリンを発現する生物の細胞であれば特に限定されないが、任意の動物細胞であってもよいし、任意の脊椎動物細胞であってもよいし、任意のほ乳類細胞であってもよいし、ヒトの細胞であってもよいし、ヒト以外のほ乳類の細胞であってもよい。
細胞の例としては、胚性幹(ES)細胞、人工多能性幹(iPS)細胞、周産期幹細胞、羊水由来幹細胞(AFSC)、任意の起源の間葉系幹細胞(MSC)、任意の組織型の、分化方向決定済みの前駆細胞又は成人細胞、成熟細胞、正常細胞、罹患細胞、腫瘍細胞等が挙げられる。より具体的な例としては、肝臓細胞、実質細胞、星細胞、内皮細胞、肝細胞、胆管細胞、胆樹細胞、膵臓細胞等が挙げられる。これらの細胞の例示は、後述する細胞分離材及び培地についても同様である。
(細胞分離材)
本開示に係る細胞分離材は、本開示に係る環状ペプチドと、保持材と、を含む。本開示に係る細胞分離材は、本開示に係る環状ペプチドを含むため、細胞表面のインテグリンと結合し、細胞を捕捉することができる。このため、本開示に係る細胞分離材を、例えば、アフィニティークロマトグラフィーとして用いることにより、細胞懸濁液から細胞を効率よく分離することができる。
例えば、本開示に係る環状ペプチド中の固定化官能基を、保持材中の官能基と反応させることにより、本開示に係る環状ペプチドを保持材に結合させることができる。例えば、本開示に係る環状ペプチドが固定化官能基としてリシン残基のアミノ基を有する場合、アミノ基を保持材上のカルボキシ基と反応させてアミド結合を形成することにより、環状ペプチドを保持材に固定できる。
保持材は、特に制限はなく、例えば、アガロース、デキストラン、デンプン、セルロース、プルラン、キチン、キトサン、三酢酸セルロース、及び、二酢酸セルロース等の多糖類及びその誘導体、並びに、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアルキルビニルエーテル、及び、ポリビニルアルコール等のビニル系重合体等から選ばれる材料により構成されていてもよい。
これらの材料は架橋構造を形成していてもよい。架橋構造は、機械的強度を向上させる傾向にある。
保持材は、上記の材料のうち1種類又は2種類以上の材料からなることが好ましい。
また、保持材は好ましくは多孔質であり、より好ましくは多孔質膜又は多孔質粒子であり、更に好ましくは多孔質粒子である。
本開示に係る環状ペプチドを水不溶性の保持材に固定化した細胞分離材をアフィニティクロマトグラフィーに用いることもできる。
水不溶性の保持材としては、例えば、結晶性セルロース、架橋セルロース、架橋アガロース、架橋デキストラン、及び、架橋プルラン等の多糖類、アクリレート系重合体、及び、スチレン系重合体等の有機保持材、ガラスビーズ、及び、シリカゲル等の無機保持材、さらにはこれらの組合せによって得られる、有機-有機、有機-無機等の複合保持材等が挙げられる。
水不溶性保持材としては、アルカリ耐性の観点から、多糖類又はアクリレート系重合体がより好ましく、アガロース又はセルロース等の多糖類がさらに好ましい。
水不溶性保持材として用いることができる市販品としては、例えば、多孔質セルロースゲルであるセルファイン(Cellufine) GCL2000(JNC社製)(CELLUFINEは登録商標)、セルファインMAX(Cellfine MAX)(JNC社製)、アリルデキストランとメチレンビスアクリルアミドとを共有結合で架橋したセファクリル(Sephacryl) S-1000 SF(GEヘルスケア社製)(SEPHACRYLは登録商標)、アクリレート系の保持材であるトヨパール(TOYOPEARL)(東ソー(株)製)(トヨパール及びTOYOPEARLは登録商標)、トヨパール(TOYOPEARL) AF-Carboxy-650 (東ソー(株)製)、トヨパール(TOYOPEARL) GigaCap CM-650 (東ソー(株)製)、アガロース系の架橋保持材であるセファロース(Sepharose) CL4B(GEヘルスケア社製)(SEPHAROSEは登録商標)、及び、エポキシ基で活性化されたポリメタクリルアミドであるオイパーギット(Eupergit) C250L(シグマアルドリッチ社製)(EUPERGITは登録商標)等が挙げられる。
ただし、本開示における水不溶性保持材は、これらの保持材又は活性化保持材にのみ限定されるものではない。また、本開示に用いる水不溶性保持材は、本吸着材料の使用目的及び方法からみて、表面積が大きいことが好ましく、適当な大きさの細孔を多数有する多孔質であることが好ましい。保持材の形態としては、特に限定されるものではないが、ビーズ状、繊維状、膜状、及び、中空糸状等、いずれも可能であり、任意の形態を選ぶことができる。
本開示に係る環状ペプチドを水不溶性保持材に固定化する方法としては、上記のとおりリシン残基のアミノ基を用いた固定化方法が挙げられるが、これに限定されるものではない。
一般的にタンパク質又はポリペプチドを保持材に固定化する場合に採用される方法を採用することができる。例えば、保持材を臭化シアン、エピクロロヒドリン、ジグリシジルエーテル、トシルクロライド、トレシルクロライド、及び、ヒドラジン等と反応させて保持材を活性化又は保持材表面に反応性官能基を導入し、本開示に係る環状ペプチドと反応、固定化する方法、又は、保持材と本開示に係る環状ペプチドが存在する系にカルボジイミドのような縮合試薬、又はグリセルアルデヒドのように分子中に複数の官能基を持つ試薬を加えて縮合、架橋することによる固定化が挙げられる。
本開示に係る環状ペプチドを保持材に固定化する際には、本開示に係る環状ペプチドを水系溶媒(水系分散媒)又は有機系溶媒(有機系分散媒)に溶解(分散)することが好ましい。
水系溶媒(水系分散媒)としては、特に限定されるものではないが、例えば、HEPES(4-(2-hydroxyethyl)-1-piperazineethanesulfonic acid)緩衝液、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、トリス-塩酸緩衝液等を挙げることができる。
有機系溶媒(有機系分散媒)は、特に限定されるものではないが、極性有機溶媒が好ましく、特に、DMSO(dimethyl sulfoxide;ジメチルスルホキシド)、DMF(N,N-dimethylformamide;N,N-ジメチルホルムアミド)、又は、アルコールが好ましく、例えば、メタノール、エタノール、IPA(isopropyl alcohol;イソプロピルアルコール)、TFE(2,2,2-trifluoroethanol;2,2,2-トリフルオロエタノール)、及び、HFIP(1,1,1,3,3,3-hexafluoro-2-propanol;1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール)等が挙げられる。
本開示に係る環状ペプチドを固定化する際のpH条件は特に限定されず、酸性、中性、及び、アルカリ性のいずれでもよく、例えば、使用する溶媒(分散媒)に合わせて適宜設定することができる。
例えば、アルカリ性にする場合は、DBU(diazabicycloundecene;ジアザビシクロウンデセン)やTEA(triethylamine;トリエチルアミン)等の塩基をDMSO(dimethyl sulfoxide;ジメチルスルホキシド)やアルコールに添加してもよい。
上記細胞分離材をアフィニティクロマトグラフィー用充填剤とする場合の本開示に係る環状ペプチドの密度は特に限定されないが、0.1mmol/充填剤1L~1,000mmol/充填剤1Lが好ましく、0.1mmol/充填剤1L~100mmol/充填剤1Lがより好ましく、0.5mmol/充填剤1L~20mmol/充填剤1Lが更に好ましい。環状ペプチドの密度が上記範囲内であると、本開示に係る環状ペプチドの使用量と細胞分離性能のバランスがよく、より低コストで、効率よく細胞を分離することができる。
本開示に係る細胞分離材により分離される細胞は、インテグリンを発現する生物の細胞であれば特に限定されないが、任意の動物細胞であってもよく、任意の脊椎動物細胞であってもよく、任意のほ乳類細胞であってもよく、ヒトの細胞であってもヒト以外のほ乳類の細胞であってもよい。
(培地)
本開示に係る培地は、本開示に係る環状ペプチドと、培養成分と、を含む。
本開示に係る培地中に本開示に係る環状ペプチドが含まれることにより、培地中で培養される細胞のインテグリンと環状ペプチドとの結合が生じ、インテグリンからのシグナル伝達によりアポトーシス抑制を介した細胞生存率上昇などの効果が得られる。
上記培養成分とは、細胞を培養するための培地成分を指す。また、培養対象となる細胞としては、インテグリンを発現する生物の細胞であれば特に限定されないが、任意の動物細胞であってもよいし、任意の脊椎動物細胞であってもよいし、任意のほ乳類細胞であってもよいし、ヒトの細胞であってもよいしヒト以外のほ乳類の細胞であってもよい。
培養成分を含む培地としては、培養する細胞の種類に応じて適宜選択すればよく、例えば、DMEM(ダルベッコ改変イーグル培地)、MEM(イーグル最小必須培地)、F12、Ham、RPMI1640、MCDB(MCDB102、104、107、131、153、199など)、L15、SkBM(登録商標)、RITC80-7、MesenPro(ライフテクノロジーズ)などを挙げることができる。
培養成分として、上記培地等の培地を、標準的な組成のまま(例えば、市販されたままの状態で)用いてもよいし、細胞種や細胞条件に応じてその組成を適宜変更してもよい。 従って、培養成分は、公知の組成のものに限定されず、1又は2以上の成分が追加、除去、増量若しくは減量されたものでもよい。
培養成分に含まれるアミノ酸としては、特に限定されず、培養成分に含まれる公知のアミノ酸が挙げられる。例えば、L-アルギニン、L-シスチン、L-グルタミン、グリシン、L-ヒスチジン、L-イソロイシン、L-ロイシン、L-リシン、L-メチオニン、L-フェニルアラニン、L-セリン、L-トレオニン、L-トリプトファン、L-チロシン、L-バリン等が挙げられる。
培養成分に含まれるビタミン類としては、特に限定されず、例えば、D-パントテン酸カルシウム、塩化コリン、葉酸、イソイノシトール、ナイアシンアミド、リボフラビン、チアミン、ピリドキシン、ビオチン、リポ酸、ビタミンB12、アデニン、チミジンなどが挙げられる。
培養成分に含まれる電解質としては、特に限定されず、培養成分に含まれる公知の電解質が挙げられる。上記電解質としては、例えば、CaCl、KCl、MgSO、NaCl、NaHPO、NaHCO、Fe(NO、FeSO、CuSO、MnSO、NaSiO、(NHMo24、NaVO、NiCl、ZnSOなどが挙げられる。
培養成分は、これらの成分のほか、D-グルコース等の糖類、ピルビン酸ナトリウム、フェノールレッド等のpH指示薬、プトレシン、抗生物質などを含んでいてもよい。
培養成分は、血清を含んでいてもよいし、血清を含まなくてもよい。本開示に係る培地における血清の含有量は、0体積%以上30体積%以下であることが好ましく、0体積%以上10体積%以下であることがより好ましく、0体積%以上5体積%以下であることが更に好ましく、0体積%以上2体積%以下であることが特に好ましい。
本開示に係る培地中における本開示に係る環状ペプチドの含有量は、特に限定されるものではないが、例えば0.01ng/mL~10mg/mLであり、0.1ng/mL~1mg/mLであってもよい。本開示に係る培地中においては、細胞足場材、細胞分離材の場合とは異なり、環状ペプチドを固定化する必要は特に無い。
以上説明したとおり、本開示によれば、インテグリン結合性に優れ、かつ、分子安定性、例えばアルカリ耐性に優れた環状ペプチド、並びに上記環状ペプチドを含む細胞足場材、細胞分離材及び培地を提供することができる。
本開示に係る実施態様を以下の実施例によりさらに具体的に説明するが、実施形態はこれらに限定されるものではない。
なお、実施例において「M」とは、「mol/L」を意味する。
(1)環状ペプチドの合成
表3-1及び表3-2に記載の環状ペプチド1~47、及び、下記表4に記載の環状ペプチド48及び49を、それぞれ、全自動ペプチド合成装置(型番:PSSM-8、(株)島津製作所製)を用いて合成した。なお、実施例において作製した環状ペプチドに含まれるアミノ酸残基について光学異性体が存在する場合、アミノ酸残基はいずれもL体である。
例えば、実施例で作製したペプチド中におけるDの表記は、L-アスパラギン酸残基を表す。
Figure 0007230197000022
表4中、環状ペプチド48において、斜体の「C」と「C」とはジスルフィド結合によって架橋されたアミノ酸残基を示し、太字の字体の「K」と「C」とは、チオエーテル結合により架橋されたアミノ酸残基を示す。また、環状ペプチド49において、斜体及び太字の字体の「C」は、それぞれ、ジスルフィド結合により架橋されたアミノ酸残基を示す。
(2)環状ペプチドの固定
表面プラズモン共鳴装置(製品名:Biacore3000、GEヘルスケア社製)に市販のCM5センサーチップ(カルボキシメチルデキストラン導入タイプ、GEヘルスケア社製)をセットし、SPR(surface plasmon resonance;表面プラズモン共鳴)用HEPES(4-(2-hydroxyethyl)-1-piperazineethanesulfonic acid;ヘペス)緩衝液(20mM:HEPES-HCl、150mM:NaCl、pH7.4)を10μL/minの流速で安定させ、0.2 MのEDC(1-(3-Dimethylaminopropyl)-3-ethylcarbodiimide;1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド)と0.04 MのNHS(N-Hydroxysuccinimide;N-ヒドロキシコハク酸イミド)混合水溶液を70μL添加した。その後、HEPES緩衝液にて0.2g/Lに希釈した上記の各環状ペプチドの試料液300μLをセンサーチップに供給し、その後、エタノールアミン溶液によってブロッキング処理を施し、水酸化ナトリウム水溶液にて洗浄して、固定化を行った。ただし、固定化官能基としてのアミノ基を有するリシン残基数が1である環状ペプチド22についてのみ、センサーチップに供給する際の試料液を300μLではなく、5000μLとした。同様に、同センサーチップの別流路に試料を固定化せず、0.2MのEDCと0.04MのNHS混合水溶液を70μL添加した後、ブロッキング処理と洗浄処理を行った。得られた固定化センサーチップを、以下「固定化センサーチップA」という。
(3)インテグリン結合性の評価
上記(1)で作製した固体化センサーチップAの各流路に、25℃にて、5mMとなるように塩化マグネシウムを加えたHEPES緩衝液を用いて30nMに希釈したヒトインテグリンαvβ5を10分間添加した後、同緩衝液(塩化マグネシウム入り)をランニングバッファーとして30分間流し、Biacore3000による測定を行った。その後、0.5MのEDTA水溶液を10分間各流路に流すことにより、ヒトインテグリンαvβ5を除去する再生処理を行った。上記の、インテグリンを10分間添加すること、ランニングバッファーを30分間流すこと、Biacore3000により測定を行うこと、及び0.5MのEDTA水溶液により再生処理を行うことからなる測定処理を、さらに、100nMのヒトインテグリンαvβ5、300nMのヒトインテグリンαvβ5、及び1000nMのヒトインテグリンαvβ5についても同様にして行った。各濃度のヒトインテグリンαvβ5を流した際における環状ペプチド固定済みの流路におけるBiacore3000による測定値と環状ペプチド未固定の流路におけるBiacore3000による測定値の差分から、環状ペプチドとヒトインテグリンαvβ5との解離定数を算出し、下記の評価基準に従ってインテグリン結合性について評価した。評価基準A、B又はCであることが好ましい。評価結果を表5-1及び表5-2に示す。
評価基準A、B及びCである環状ペプチドを用いることにより、環状ペプチドとインテグリンとの特異的結合が可能になり、より効率的な細胞制御が可能となる。
(解離定数の評価基準)
A・・・解離定数が50nM以下である。
B・・・解離定数が50nMを超え、100nM以下である。
C・・・解離定数が100nMを超え、200nM以下である。
D・・・解離定数が200nMを超える。
(4)分子安定性の評価
環状ペプチドの分子安定性は、アルカリ処理した環状ペプチド水溶液をLC/MS(Liquid Chromatography Mass Spectroscopy;液体クロマトグラフィー質量分析法)により分析することで評価した。
アルカリ処理は次の方法で行った。500μMの環状ペプチド水溶液を調製し、この水溶液に当量の1M水酸化ナトリウム水溶液を加え、15℃にて20分インキュベートすることでアルカリ処理環状ペプチド水溶液を得た。アルカリ処理前の環状ペプチドのLC/MSにおける全ピークの総面積を100%とし、アルカリ処理環状ペプチド水溶液のLC/MSにおける全ピークの総面積の割合を求めることにより、環状ペプチド残存率を算出し、以下の評価基準に従って分子安定性を評価した。評価基準A、B又はCであることが好ましい。
評価結果を表5-1及び表5-2に示す。
評価基準A、B及びCである環状ペプチドを用いることにより、環状ペプチドを長期間又は繰り返し用いても細胞と特異的に結合することが出来、長期間又は繰り返しのプロセスに用いた場合でも細胞を制御することが可能となり、コストをより低減することができる。
(環状ペプチド残存率の評価基準)
A・・・環状ペプチドの残存率が70%以上である。
B・・・環状ペプチドの残存率が50%以上70%未満である。
C・・・環状ペプチドの残存率が30%以上50%未満である。
D・・・環状ペプチドの残存率が30%未満である。
なお分子安定性の評価に用いたLC/MSは以下の条件とした。
・LC装置:Prominenceシリーズ(ポンプ、カラムオーブン、オートサンプラー、検出器)((株)島津製作所製)
・MS検出器:LC/MS2010EV((株)島津製作所製)
・カラム: Cadenza CD-C18、内径2.0mm×長さ250mm、粒子径3μm(インタクト(株)製)
・溶離液A:10mM ギ酸アンモニウムを溶質として含み、溶媒は水100%の溶液(pH3)
・溶離液B:10mM ギ酸アンモニウムを溶質として含み、溶媒はアセトニトリル/水=90/10の溶液(pH3)
・流速:0.2 mL/min
・注入量:4μL
・グラジエント:0-30%:溶離液B(0-30分)、100%:溶離液B(30-40分)、0%:溶離液B(40-60分) (Bは溶離液Bを表す)
・カラム温度:45℃
・イオン化法:ESI(Electrospray Ionization;エレクトロスプレーイオン化)ポジティブ、ESIネガティブ
Figure 0007230197000023
Figure 0007230197000024
表5-1及び表5-2に記載の結果から、本開示に係る環状ペプチドは、比較例の環状ペプチドに比べ、分子安定性に優れることが分かる。全ての実施例において、環状ペプチドの残存率の値は50%以上(評価B以上)であったのに対し、全ての比較例において環状ペプチドの残存率の値は実際の値としては25%以下であった。以上より、本開示に係る環状ペプチドは、インテグリン結合性及び分子安定性の両方に優れることが分かる。
次に上記で得られた環状ペプチドを用いて、本開示に係る細胞足場材を作製し、この細胞足場材を用いてiPS細胞培養実験を行った。
(ポリスチレンプレートの表面処理)
プラズマ処理装置((株)魁半導体社製:SCB-106)を用いて、アンモニアガス中でガス圧力10Pa、出力700W、処理時間5分の条件で、ポリスチレン製6ウェルプレート(コーニング社製)の表面処理を実施した。
(CMDコーティングウェルの作製)
カルボキシメチルデキストランナトリウム(名糖産業(株)製、商品名:「CMD」、分子量:100万、以下「CMD」ともいう。)0.5gに蒸留水9.5gを加えて攪拌し、十分に溶解させ、5質量%のCMD溶液を調製した。
次いで、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(以下、「EDC」ともいう。)(ナカライテスク(株)製)383.4mgに蒸留水1mLを加えてEDC溶液を調製した。次いで、N-ヒドロキシこはく酸イミド(以下、「NHS」ともいう。)(富士フイルム和光純薬(株)製)57.5mgに蒸留水1mLを加えてNHS溶液を調製した。
次いで、上記で調製したCMD溶液10gに、EDC溶液0.05mL、NHS溶液0.05mLを加えて攪拌して、得られたCMD含有コーティング液をすぐに上記で表面処理したポリスチレンプレートの1つのウェルに1mLずつ滴下した。ポリスチレンプレートを室温で1時間静置した後、蒸留水でウェルを充分に洗浄してCMD含有コーティング液を除去し、CMDコーティングウェルを作製した。
(リガンドコーティングウェルの作製)
環状ペプチド11:0.2mgにHBS-Nバッファー(GEヘルスケアジャパン(株)製)1mLを加えて環状ペプチド溶液を調製した。次いで、EDC76.7mgに蒸留水1mLを加えてEDC溶液を調製した。次いで、NHS:11.5mgに蒸留水1mLを加えてNHS溶液を調製した。次いで、エタノールアミン(BIO RAD社製、商品名:「ProteOn エタノールアミン HCL」)1mLに蒸留水1mLを加えてエタノールアミン溶液を調製した。
次いで、上記で調製したEDC溶液:0.5mLに、NHS溶液0.5mLを加えて攪拌し、得られた混合液をすぐに上記CMDコーティングウェルに1mL滴下した。ポリスチレンプレートを7分間静置した後、蒸留水でウェルを充分に洗浄して、混合液を除去した。さらに、環状ペプチド溶液15:1mLをウェルに滴下し、60分間静置した後、蒸留水でウェルを充分に洗浄して環状ペプチド溶液を除去した。さらに、エタノールアミン溶液1mLをウェルに滴下し、7分間静置した後、蒸留水でウェルを充分に洗浄してエタノールアミン溶液を除去し、環状ペプチド11が基材としてのCMD上に固定された細胞足場材を有するウェル(以下、「リガンドコーティングウェル」ともいう。)を得た。
(γ線滅菌処理)
上記で作製したリガンドコーティングウェルを滅菌バッグに密閉し、ラジエ工業(株)製の照射施設1号機にて線量25kGyの条件でγ線滅菌処理を実施した。
これにより、「γ線照射済み細胞足場材A」を作製した。
-ペプチドのiPS細胞培養性能の評価-
iPS細胞はFujifilm Cellular Dynamics社によって樹立された01434クローンを使用した。γ線照射済み細胞足場材Aを表面に有した培養ポリスチレンプレートに、iPS細胞をsplit rate =1:6で播種し、フィーダーフリーのES及びiPS細胞培養用培地m(Stem Cell Technologies社製、製品名:mTeSR1)中で3日間培養したのち、細胞解離試薬(Thermo Fisher社、製品名:TrypLE Select)を用いた処理にてiPS細胞を単細胞剥離して回収した。得られた細胞懸濁液から、生死細胞オートアナライザー(ベックマンコールター社製、製品名:Vi-Cell XR)を用いて細胞数を計測し、細胞が増殖したか否かを判定した。
上記結果から実施例11のペプチドを用いた細胞足場材は、iPS細胞が増殖したことが確認された。これより、本開示に係る環状ペプチドがインテグリン結合性に優れるので、細胞足場材として機能を有することを示している。
2019年6月11日に出願された日本国特許出願2019-108953の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。

Claims (12)

  1. 下記式(1)で表されるアミノ酸配列を有する、環状ペプチド。
    Figure 0007230197000025

    式(1)中、X及びX並びにX及びXは、それぞれ独立に、チオエーテル結合を介して架橋されたアミノ酸残基を表し、
    ~Xは、それぞれ独立に、アミノ酸残基を表し、
    Rはアルギニン残基を表し、Gはグリシン残基を表し、Dはアスパラギン酸残基を表し、
    m1~m5は、それぞれ独立に、0以上の整数を表す。ただし、Xa、Xb、Xc及びXd並びに、X、X及びX4で表されるアミノ酸残基とRGDとの合計アミノ酸残基数は、7~16であり、
    アミノ酸残基X 及びアミノ酸残基X のいずれか一方がシステイン残基であり、アミノ酸残基X 及びアミノ酸残基X のうち他方のアミノ酸残基のα炭素と、前記システイン残基とが5個以上の原子により隔てられている
  2. 前記式(1)におけるX及びXが、側鎖に固定化官能基を有するアミノ酸に由来するアミノ酸残基を含む、請求項1に記載の環状ペプチド。
  3. 前記固定化官能基が、アミノ基、又は、チオール基である、請求項2に記載の環状ペプチド。
  4. 前記側鎖に固定化官能基を有するアミノ酸が、L-リシン、D-リシン、L-システイン、D-システイン、L-ホモシステインおよびD-ホモシステインからなる群から選択される少なくとも1種のアミノ酸である、請求項2又は請求項3に記載の環状ペプチド。
  5. 前記式(1)におけるXが、L-ホモシステイン、D-ホモシステイン、L-ペニシラミン、又は、D-ペニシラミンに由来するアミノ酸残基である、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の環状ペプチド。
  6. 前記式(1)で表されるアミノ酸配列が、下記式(2)で表されるアミノ酸配列である、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の環状ペプチド。
    Figure 0007230197000026

    式(2)中、X及びX並びにX及びXは、それぞれ独立に、チオエーテル結合を介して架橋されたアミノ酸残基を表し、
    及びXは、それぞれ独立に、アミノ酸残基を表し、
    Rはアルギニン残基を表し、Gはグリシン残基を表し、Dはアスパラギン酸残基を表し、m1及びm2は、それぞれ独立に、1以上の整数を表す。ただし、X、X、X及びX並びに、Xで表されるアミノ酸残基とRGDとの合計アミノ酸残基数は、7~14であり、
    アミノ酸残基X 及びアミノ酸残基X のいずれか一方がシステイン残基であり、アミノ酸残基X とアミノ酸残基X のうち他方のアミノ酸残基のα炭素と、前記システイン残基とが5個以上の原子により隔てられている
  7. 前記式(2)におけるXが、L-ホモシステイン、D-ホモシステイン、L-ペニシラミン、又は、D-ペニシラミンに由来するアミノ酸残基である、請求項に記載の環状ペプチド。
  8. 前記式(2)におけるXが、下記構造(r)で表されるアミノ酸残基である、請求項6又は請求項7に記載の環状ペプチド。
    Figure 0007230197000027

    構造式(r)中、Rは水素原子又は1価の有機基を表し、Lは、-(CHL1-C(=O)-、又は、-(CHL1-C(=O)-NH-で表される2価の連結基を表し、L1は0以上10以下の整数を表し、nr1は、0以上の整数を表し、*は隣接するアミノ酸残基との結合部位を表し、**はチオエーテル結合における硫黄原子との結合部位を表す。
  9. 前記式(2)におけるXが、L-ホモシステイン、D-ホモシステイン、L-ペニシラミン、又は、D-ペニシラミンに由来するアミノ酸残基であり、Xが、(2S)-2-アミノ-3-[(2-アセチル)アミノ]プロパン酸、(2R)-2-アミノ-3-[(2-アセチル)アミノ]プロパン酸、(2S)-2-アミノ-4-[(2-アセチル)アミノ]ブタン酸、(2R)-2-アミノ-4-[(2-アセチル)アミノ]ブタン酸、N-δ-アセチル-L-オルニチン、N-δ-アセチル-D-オルニチン、N-ε-アセチル-L-リシン、N-ε-アセチル-D-リシン、及び、(2S,3S)-2-[(アセチル)アミノ]-3-メチル-ペンタン酸からなる群から選択されるアミノ酸に由来するアミノ酸残基である、請求項~請求項のいずれか1項に記載の環状ペプチド。
  10. 請求項1~請求項のいずれか1項に記載の環状ペプチドと、
    基材と、
    を含む、細胞足場材。
  11. 請求項1~請求項のいずれか1項に記載の環状ペプチドと、
    保持材と、
    を含む、細胞分離材。
  12. 請求項1~請求項のいずれか1項に記載の環状ペプチドと、
    培養成分と、
    を含む、培地。
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