JP2010148486A - 細胞培養用担体 - Google Patents

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Abstract

【課題】従来の細胞培養担体用ビーズでは、細胞培養初期の細胞接着性が不十分であるため、ビーズ上で均一に細胞が増殖しないという課題がある。また、無血清培養での細胞増殖性が不十分である。そして、デキストランビーズでは、動物由来成分を有するためウイルス等の感染因子の混入の危険性があるという問題がある。
【解決手段】カルボキシル基を有する吸水性樹脂(A)を含んでなる細胞培養用担体であって、(A)が細胞接着性最小アミノ酸配列(X)を1分子中に少なくとも1個有する人工ポリペプチド(P)を含有し、(A)が正に荷電した官能基(B)を有する細胞培養用担体。
【選択図】 なし

Description

本発明は細胞培養用担体に関する。さらに詳しくは、無血清培養に好適な細胞培養用担体に関する。
細胞培養担体としては、細胞接着因子を有する架橋ポリ(メタ)アクリル酸粒子(特許文献1)、等が知られている。
また、細胞培養用担体としては、動物由来のコラーゲンを有するデキストランビーズ(非特許文献1)、細胞接着シグナルを現す最小アミノ酸配列を有するポリペプチドを配したポリスチレンビーズ(特許文献2)等が知られている。
特開2007−275056号公報 特開2003−189848号公報 Microcarrier cell culture principles & methods(ファルマシアバイオテク(株)、1996年10月10日発行)27〜31頁等
しかし、特許文献1のビーズでは、細胞培養初期の細胞接着性が不十分であるため、ビーズ上で均一に細胞が増殖しないという課題がある。
また、特許文献2及び非特許文献1のビーズでは、無血清培養での細胞増殖性が不十分である。
そして、上記のデキストランビーズでは、動物由来成分を有するためウイルス等の感染因子の混入の危険性があるという問題がある。
すなわち、本発明の目的は、無血清培養での細胞増殖性を向上させると共に、感染因子混入の危険性のない細胞培養用担体を提供し、かつ、細胞培養初期の細胞接着性が十分でありビーズ上に均一に細胞が増殖する細胞培養担体を提供することである。
本発明の細胞培養用担体は、カルボキシル基を有する吸水性樹脂(A)を含んでなる細胞培養用担体であって、(A)が細胞接着性最小アミノ酸配列(X)を1分子中に少なくとも1個有する人工ポリペプチド(P)を含有し、(A)が正に荷電した官能基(B)を有する点を要旨とする。
また、本発明の有用物質の生産方法は、上記の細胞培養用担体を用いて、細胞を培養する工程を含む点を要旨とする。
また、本発明の組織又は臓器の生産方法は、上記の細胞培養用担体を用いて、細胞を培養する工程を含む点を要旨とする。
本発明の細胞培養用担体は、細胞培養初期の細胞接着性に優れ、ビーズ上で均一に細胞が増殖するため、細胞増殖性が高い。また、動物由来成分を含まないため、細胞培養担体からのウイルス等の感染因子混入の危険性がない。さらに、無血清培養において十分な細胞増殖性を有する。
本発明の有用物質の生産方法によると、優れた細胞接着性および細胞増殖性を発揮するため、有用物質を大量に得ることができる。また、細胞培養担体からのウイルス等の感染因子混入の危険性が無く、ウイルス等の感染因子の混入されていない有用物質を容易に得ることができる。
本発明の組織又は臓器の生産方法によると、優れた細胞接着性および細胞増殖性を発揮するため、目的の組織や臓器を容易に得ることができる。また、細胞培養担体からのウイルス等の感染因子混入の危険性が無く、ウイルス等の感染因子の混入されていない組織や臓器を容易に得ることができる。
カルボキシル基を有する吸水性樹脂(A)としては、(1)〜(5)のポリマー等が含まれる。
(1)特開昭55−133413号公報等に記載の水溶液重合(断熱重合、薄膜重合又は噴霧重合等)により得られる架橋ポリアクリル酸(塩)。
(2)特公昭54−30710号公報、特開昭56−26909号公報又は特開平11−5808号公報等に記載の逆相懸濁重合により得られる架橋ポリアクリル酸(塩)。
(3)特開平10−251402号公報に記載のポリアミノ酸放射線架橋体。
(4)特開2002−179770号公報に記載の架橋ポリアスパラギン酸。
(5)特開2001−2935号公報、特開2003−052742号公報、特開2003−082250号公報、特開2003−165883号公報、特開2003−176421号公報、特開2003−183528号公報、特開2003−192732号公報、特開2003−225565号公報、特開2003−238696号公報、特開2003−335970号公報、特開2004−091673号公報、特開2004−121400号公報、特開2004−123835号公報、特開2005−075982号公報、特開2005−095759号公報、特開2005−097569号公報、特開2005−186015号公報、特開2005−186016号公報、特開2005−247931号公報等に記載された架橋ポリ(メタ)アクリル酸(塩)。
これらのうち、細胞の担体への接着性等の観点から、(2)及び(5)が好ましい。すなわち、カルボキシル基を有するモノマーを重合して得られる架橋重合体が好ましく、さらに好ましくは架橋ポリ(メタ)アクリル酸(塩)である。
なお、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を意味し、酸(塩)とは、酸及び/又は酸塩を意味する。
アクリル酸塩及びメタクリル酸塩としては、アクリル酸又はメタクリル酸のアルカリ金属(リチウム、カリウム及びナトリウム等)塩及び多価金属{アルカリ土類金属(マグネシウム及びカルシウム等)、ホウ素属金属(アルミニウム、ガリウム及びインジウム等)、及び遷移金属(チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、ニッケル、コバルト、銅、亜鉛、ジルコニウム、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、銀、カドミウム、オスミウム、及び白金等)}塩及びアンモニウム塩等が用いられる。
これらのうち、細胞毒性等の観点から、アルカリ金属塩及び多価金属塩が好ましく、さらに好ましくはアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩及び遷移金属塩、特に好ましくはアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩、最も好ましくはナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩及びカルシウム塩である。
架橋ポリ(メタ)アクリル酸(塩)は、(メタ)アクリル酸(塩)を主構成単位としていれば、(メタ)アクリル酸(塩)と共重合可能なその他のビニルモノマーも構成単位とすることができる。共重合可能なその他のビニルモノマーとしては、公知の共重合性単量体(親水性ビニルモノマー及び疎水性ビニルモノマー)及び公知の架橋性単量体等が含まれる{特開平11−5808号公報、特開2001−2935号公報、特開2003−165883号公報、特開2005−247931号公報、特開2005−186015号公報等}。
架橋ポリ(メタ)アクリル酸は、(1)疎水性有機溶媒に、撹拌下、(メタ)アクリル酸(塩)、並びに必要により、共重合可能なその他のビニルモノマー、重合開始剤、連鎖移動剤及び/又はグラフト基材を連続的に供給して、公知の逆相懸濁重合させる方法(特開平11−5808号公報、特開2001−2935号公報、2003−165883号公報、特開2005−247931号公報及び特開2005−186015号公報等);並びに(2)(メタ)アクリル酸(塩)、並びに必要により、共重合可能なその他のビニルモノマー、重合開始剤、連鎖移動剤及び/又はグラフト基材を、公知の水溶液重合させる方法(特開2005−075982号公報、特開2005−095759号公報、特開2005−097569号公報、特開2005−186015号公報及び特開2005−186016号公報等)等により製造することができる。
細胞接着性及び細胞増殖性の観点から、吸水性樹脂(A)としては、カルボキシル基及びヒドロキシル基を有する吸水性樹脂(D)がさらに好ましい。
カルボキシル基及びヒドロキシル基を有する吸水性樹脂(D)としては、(1)〜(2)のポリマー等が含まれる。
(1)特公昭53−46199号公報又は特公昭53−46200号公報等に記載のデンプン−アクリル酸(塩)グラフト架橋共重合体。
(2)特開2001−120992号公報に記載の多糖類の多価金属イオン架橋体。
これらのうち、細胞の担体への接着性等の観点から、好ましくは(1)である。
また、カルボキシル基及びヒドロキシル基を有する吸水性樹脂(D)としては、下記(1)〜(2)の樹脂が含まれる。
(1)カルボキシル基を有する吸水性樹脂(A)とヒドロキシル基を有する化合物(E)との反応により得られる吸水性樹脂
(2)カルボキシル基を有するモノマーとヒドロキシル基を有するモノマー(F)との共重合架橋体。
細胞接着性及び細胞増殖性の観点から、吸水性樹脂(D)としては、カルボキシル基を有する吸水性樹脂(A)とヒドロキシル基を有する化合物(E)との反応により得られる吸水性樹脂が好ましい。
ヒドロキシル基を有する化合物(E)としては、少なくとも1個のヒドロキシル基及び少なくとも1個の1級アミノ基を有する化合物及びこの塩、少なくとも1個のヒドロキシル基及び少なくとも1個のグリシジルエーテル基を有する化合物、ヒドロキシル基を少なくとも2個有する化合物、並びにヒドロキシル基を少なくとも1個有するハロゲン化アルキル化合物等が挙げられる。
少なくとも1個のヒドロキシル基及び少なくとも1個の1級アミノ基を有する化合物としては、2−アミノエタノール、4−アミノ−1−ブタノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、4−アミノフェノール、3−アミノ−1−プロパノール等が挙げられる。
1級アミノ基を有する化合物としては、塩酸塩、臭化水素塩、ヨウ化水素塩、フッ化水素塩、酢酸塩、リン酸塩、硫酸塩、硝酸塩等が挙げられる。
少なくとも1個のヒドロキシル基及び少なくとも1個のグリシジルエーテル基を有する化合物としては、2,3−エポキシ‐1−プロパノール、グリセロール−2,10−ジグリシジルエーテル等が挙げられる。
ヒドロキシル基を少なくとも2個有する化合物としては、エチレングリコール、メチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ヘキサン−1,6−ジオール等が挙げられる。
ヒドロキシル基を少なくとも1個有するハロゲン化アルキル化合物としては、ハロゲン化メタノール、2−ハロゲン化エタノール、3−ハロゲン化プロパノール、4−ハロゲン化ブタノール等が挙げられる。ハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素等が挙げられるが、反応性、扱いやすさ及び副生成物の安全性の観点から、塩素が好ましい。
これらのうち、吸水性及び細胞増殖性の観点から、2−アミノエタノール、4−アミノ−1−ブタノール、3−アミノ−1−プロパノール、2,3−エポキシ‐1−プロパノール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ハロゲン化メタノール及び2−ハロゲン化エタノールが好ましく、さらに好ましくは2−アミノエタノール、3−アミノ−1−プロパノール、2,3−エポキシ‐1−プロパノール及びエチレングリコール、特に好ましくは2−アミノエタノールである。
カルボキシル基を有する吸水性樹脂(A)とヒドロキシル基を有する化合物(E)との反応により得られる吸水性樹脂は、(A)のカルボキシル基と(E)とを反応させることにより得られる。
(E)が、少なくとも1個のヒドロキシル基及び少なくとも1個のアミノ基を有する化合物及びこの塩である場合は、反応は、(A)のカルボキシル基と(E)のヒドロキシル基とのエステル化反応、又は(A)のカルボキシル基と(E)のアミノ基とのアミド化反応である。
(E)が、少なくとも1個のヒドロキシル基及び少なくとも1個のグリシジルエーテル基を有する化合物である場合は、反応は、(A)のカルボキシル基と(E)のヒドロキシル基とのエステル化反応、又は(A)のカルボキシル基と(E)のグリシジルエーテル基とのエステル化反応である。
(E)が、ヒドロキシル基を少なくとも2個有する化合物である場合は、反応は、(A)のカルボキシル基と(E)のヒドロキシル基とのエステル化反応である。
(E)が、ヒドロキシル基を少なくとも1個有するハロゲン化アルキル化合物である場合は、反応は、(A)のカルボキシル基と(E)のヒドロキシル基とのエステル化反応、又は(A)のカルボキシル基と(E)のハロゲンとのエステル化反応である。
(A)のカルボキシル基と(E)との反応は、細胞培養初期の細胞接着性の観点から、(A)の有するカルボキシル基の90〜99モル%を(E)と反応させることが好ましい。
(E)と(A)のカルボキシル基とを反応させる場合、カルボキシル基を予めカルボジイミド化合物と反応させ、アシルイソ尿素{R’−N=C(OCOR)−NH−R’(−OCORが(A)に由来する部分)}を得た後、(E)をこのアシルイソ尿素に加えることによって、(A)と(E)とをアミド結合またはエステル結合できる。
カルボジイミド化合物としては、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド及び1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩等が挙げられる。
カルボキシル基を有するモノマーとヒドロキシル基を有するモノマー(F)との共重合架橋体に使用するカルボキシル基を有するモノマーとしては、前述の(メタ)アクリル酸が挙げられる。
ヒドロキシル基を有するモノマー(F)としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジ−エチレングリコール(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基含有(メタ)アクリルモノマーが挙げられる。これらのうち、細胞増殖性の観点から、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
なお、(メタ)アクリレートとは、アクリルレート及び/又はメタクリレートを意味する。
カルボキシル基を有するモノマーとヒドロキシル基を有するモノマー(F)との共重合体は、カルボキシル基を有するモノマーとヒドロキシル基を有するモノマー(F)とを共重合することにより得られる。重合条件、重合方法としては、前述の吸水性樹脂(A)を重合により製造する場合と同様の条件、方法が挙げられる。
カルボキシル基を有するモノマーと(F)との量比(モル比)は、細胞培養初期の細胞接着性の観点から、カルボキシル基を有するモノマー:(F)=90:10〜99:1が好ましい。
吸水性樹脂(A)の保水量(g/g)は、細胞増殖性等の観点から、2〜50が好ましく、さらに好ましくは5〜40、次にさらに好ましくは10〜30、最も好ましくは10〜25である。
なお、保水量は、次のようにして測定される。すなわち、約100mLの生理食塩水を攪拌しながら測定試料1.0gを投入してあらかじめ膨潤させた膨潤吸水性樹脂を、目開き57μmのナイロン網で作製した袋(縦20cm、横10cm)に移し、過剰の生理食塩水中に60分間浸漬する。次いで、膨潤吸水性樹脂を袋ごと遠心脱水機に入れて、150Gで90秒間遠心脱水を行い、余剰水を取り除き、遠心脱水後の重量(g2)を測定する。次式から算出した値を保水量とする。なお、ナイロン網で作製した袋及び生理食塩水については、JIS K7223−1996に準拠する。
ただし、測定試料は、減圧乾燥機{120℃、0.1kPa以下}で1時間乾燥したものを用いる。
保水量=(g2)−1.0
正に荷電した官能基(B)としては、1〜3級アミノ基、第4級アンモニオ基が含まれる。
1級アミノ基としては、例えばアミノ基、アミノメチル基、アミノエチル基、アミノプロピル基等のアミノアルキル基、3−アミノ−1−エトキシプロピル基、1−アミノ−エトキシメチル基等のアミノアルコキシアルキル基等が挙げられる。
2級アミノ基としては、1つの炭化水素基で置換されたアミノ基が挙げられる。例えば、N−アルキルアミノアルキル基が含まれ、N−メチルアミノエチル基、N−エチルアミノエチル基等のN−アルキルアミノアルキル基、イミダゾイル基等が挙げられる。
3級アミノ基としては、2つの炭化水素基で置換されたアミノ基が挙げられる。3級アミノ基を有する官能基としては、例えばN−ジメチルアミノエチル基、N−ジメチルアミノプロピル基、N−ジエチルアミノエチル基、N−ジブチルアミノエチル基等が挙げられる。
第4級アンモニオ基としては、3つの炭化水素基で置換されたアンモニオ基が挙げられる。4級アンモニオ基を有する官能基としては、トリメチルアンモニオ基、トリエチルアンモニオ基等のトリアルキルアンモニオ基等が挙げられる。
1〜3級アミノ基は、酸との塩になっていてもよい。酸としては、塩酸、臭酸、ヨウ酸、酢酸、硫酸、硝酸及びリン酸等が挙げられる。
第4級アンモニオ基は、水酸化物又は酸との塩になっていてもよい。酸としては塩酸、臭酸、ヨウ酸、酢酸、硫酸、硝酸及びリン酸等が挙げられる。
正に荷電した官能基(B)を細胞培養担体に含有させる方法としては、(i)1〜3級アミノ基又は第4級アンモニオ基含有化合物と混合する方法、(ii)1〜3級アミノ基又は第4級アンモニオ基含有化合物を反応させる方法が挙げられる。
(i)1〜3級アミノ基又は第4級アンモニオ基含有化合物を混合する方法
吸水性樹脂(A)と1〜3級アミノ基又は第4級アンモニオ基含有化合物を溶媒中で混合することで、吸水性樹脂(A)のカルボキシル基と1〜3級アミノ基又は第4級アンモニオ基含有化合物との間にイオン結合が形成し、細胞培養担体に正に荷電した官能基(B)を含有させることができる。
この方法(i)で使用できる1級アミノ基含有化合物としては、アミノメタン、アミノエタン等のアミノアルカン及びこの塩、ジアミノエタン等のジアミノアルカン(アルキレンジアミン)及びこの塩、リジン、アルギニン等の塩基性アミノ酸及びこの塩が挙げられる。
2級アミノ基含有化合物としては、ジメチルアミン等の2つの炭化水素基で置換されたアミン及びこの塩、2−メチルイミダゾール、ヒスチジン等のイミダゾール類及びこの塩が挙げられる。
3級アミノ基含有化合物としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の3つの炭化水素基で置換されたアミン及びこの塩が挙げられる。
第4級アンモニオ基含有化合物としては、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム等の4つの炭化水素で置換されたアンモニウム及びこの塩が挙げられる。
溶媒としては1〜3級アミノ基又は第4級アンモニオ基含有化合物を溶解するものであれば特に制限はないが、安全性の観点から水が好ましい。
溶媒と混合する際の1〜3級アミノ基又は第4級アンモニオ基含有化合物の使用量としては、混合する細胞培養担体の重量を基準として、1〜3級アミノ基又は第4級アンモニオ基含有化合物の使用量が0.01〜10mmol/gの範囲であることが好ましい。この1〜3級アミノ基又は第4級アンモニオ基含有化合物の使用量の範囲を満たす観点から、1〜3級アミノ基又は第4級アンモニオ基含有化合物の使用量は、溶媒の体積を基準として、1〜1,000mmol/Lが好ましい。
混合する温度には制限がなく、5〜50{さらに好ましくは20〜30}℃が好ましい。
混合装置としては、特に制限はないが、市販のマグネチックスターラー、メカニカルスターラー等が使用できる。回転数としては、溶媒の容量にもよるが、通常300rpm以下である。
(ii)1〜3級アミノ基又は第4級アンモニオ基含有化合物を反応させる方法
1級アミノ基含有化合物を反応させる方法としては、例えば、アルキレンジアミンと吸水性樹脂(A)のカルボキシル基とを反応させる方法が挙げられ、カルボキシル基を予めカルボジイミド化合物と反応させ、アシルイソ尿素{R’−N=C(OCOR)−NH−R’(−OCORが(A)に由来する部分)}を得た後、アルキレンジアミンをこのアシルイソ尿素に加えることによって、吸水性樹脂(A)に1級アミノ基含有化合物をアミド結合できる。1級アミノ基含有化合物の結合量は、細胞培養初期の細胞接着性の観点から、細胞培養担体の重量を基準として、0.1〜10mmol/gが好ましい。
2級アミノ基含有化合物を反応させる方法としては、例えば、N−アルキルアミノアルキルアミンと吸水性樹脂(A)のカルボキシル基とを反応させる方法が挙げられ、カルボキシル基を予めカルボジイミド化合物と反応させ、アシルイソ尿素{R’−N=C(OCOR)−NH−R’(−OCORが(A)に由来する部分)}を得た後、N−アルキルアミノアルキルアミンをこのアシルイソ尿素に加えることによって、吸水性樹脂(A)に2級アミノ基含有化合物をアミド結合できる。2級アミノ基含有化合物の結合量は、細胞培養初期の細胞接着性の観点から、細胞培養担体の重量を基準として、0.1〜10mmol/gが好ましい。
3級アミノ基含有化合物を反応させる方法としては、例えば、N−ジアルキルアミノアルキルクロリドと吸水性樹脂(A)のカルボキシル基及びヒドロキシル基とを反応させる方法が挙げられ、NaOH(水酸化ナトリウム)存在下、水溶液中で反応させることで、(A)のカルボキシル基とエステル結合、又は(A)のヒドロキシル基とエーテル結合することができる。
第4級アンモニオ基含有化合物を反応させる方法としては、例えば、N−グリシジル−トリアルキルアンモニウムクロリドと吸水性樹脂(A)のカルボキシル基又はヒドロキシル基とを反応させる方法が挙げられ、4級アンモニウム塩触媒存在下、水溶液中で反応させることで、(A)のカルボキシル基とエステル結合、又は(A)のヒドロキシル基とエーテル結合することができる
正に荷電した官能基(B)の含有量(mmol/g)は、細胞培養担体1g当たり、細胞接着性及び細胞毒性等の観点から、0.01〜10mmol/gが好ましく、さらに好ましくは0.1〜5mmol/g、次にさらに好ましくは0.5〜3.0mmol/gである。
正に荷電した官能基(B)の含有量は、次の方法により測定される。
0.02gの細胞培養担体の試料に0.1mol/Lの塩酸水溶液10mLを加え、25℃2時間静置し、水溶液をナイロン製メッシュ(目開き57μm)を先端に付けたピペットで取り除く。その後、10mLの脱イオン水を洗浄液として加え、25℃で2時間静置して洗浄液を上記ナイロン製メッシュ付きピペットで取り除く操作を3回繰り返す。その後、10重量%の硫酸ナトリウム水溶液10mlを加え、25℃で2時間静置する。液体部分を上記ナイロン製メッシュ付きピペットで取り出し、この液体部分を全自動波長分散型蛍光X線分析装置(装置名:Axiosメーカー名:PANalytical社製)で塩素イオン含量を定量する。この定量された塩素イオン量が、試料中の官能基(B)の量に等しいとして、官能基(B)の含有量を算出する。
本発明の細胞培養用担体は、さらに、細胞接着性最小アミノ酸配列(X)を1分子中に少なくとも1個有する人工ペプチド(P)を含有する。人工ポリペプチド(P)を含有しない場合細胞増殖性が悪くなる。
「細胞接着性」とは、特定の最小アミノ酸配列が細胞のインテグリンレセプターに認識され、細胞が基材に接着しやすくなる性質を意味する(大阪府立母子医療センター雑誌、第8巻 第1号、58〜66頁、1992年)。
細胞接着性最小アミノ酸配列(X)としては、「病態生理、第9巻 第7号、527〜535頁、1990年」や「大阪府立母子医療センター雑誌、第8巻 第1号、58〜66頁、1992年」に記載されているもの等が用いられる。
これらの最小アミノ酸配列(X)の中で、Arg Gly Asp配列、Leu Asp Val配列、Leu Arg Glu配列、His Ala Val配列、Arg Glu Asp Val配列(1)、Tyr Ile Gly Ser Arg配列(2)、Pro Asp Ser Gly Arg配列(3)、Arg Tyr Val Val Leu Pro Arg配列(4)、Leu Gly Thr Ile Pro Gly配列(5)、Arg Asn Ile Ala Glu Ile Ile Lys Asp Ile配列(6)、Ile Lys Val Ala Val配列(7)、Asp Gly Glu Ala配列(8)、Gly Val Lys Gly Asp Lys Gly Asn Pro Gly Trp Pro Gly Ala Pro配列(9)、Gly Glu Phe Tyr Phe Asp Leu Arg Leu Lys Gly Asp Lys配列(10)、Tyr Lys Leu Asn Val Asn Asp Ser配列(11)、Ala Lys Pro Ser Tyr Pro Pro Thr Tyr Lys配列(12)、Asn Arg Trp His Ser Ile Tyr Ile Thr Arg Phe Gly配列(13)、Thr Trp Tyr Lys Ile Ala Phe Gln Arg Asn Arg Lys配列(14)、Arg Lys Arg Leu Gln Val Gln Leu Ser Ile Arg Thr配列(15)及びPro His Ser Arg Asn配列(16)からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、細胞接着性の観点等から、さらに好ましくはArg Gly Asp配列、Tyr Ile Gly Ser Arg配列(2)、Ile Lys Val Ala Val配列(7)、Arg Lys Arg Leu Gln Val Gln Leu Ser Ile Arg Thr配列(15)及びPro His Ser Arg Asn配列(16)からなる群より選ばれる少なくとも1種、特に好ましくはArg Gly Asp配列である。
これらの最小アミノ酸配列(X)の両端には、他のアミノ酸{アラニン(Ala)、グリシン(Gly)、セリン(Ser)、トレオニン(Thr)、バリン(Val)、ロイシン(Leu)、イソロイシン(Ile)、システイン(Cys)、メチオニン(Met)、フェニルアラニン(Phe)、チロシン(Tyr)、プロリン(Pro)、トリプトファン(Trp)、アスパラギン(Asn)、グルタミン(Gln)、アスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu)、アルギニン(Arg)、リジン(Lys)及びヒスチジン(His)等}を含んでなる介在アミノ酸配列(Z)を結合していることが好ましい。
介在アミノ酸配列(Z)としては、最小アミノ酸配列(X)のN末端には、細胞接着性の観点から、Gly Ala Ala Val Thr Gly配列(65)、Gly Leu Pro Gly Pro Lys Gly Asp配列(66)、Gly Pro Ala Val Thr Gly配列(67)、Ala Gly Pro Lys Gly Ala Asp Gly Ser Pro Gly Pro Ala Val Thr Gly配列(68)、Gly Ala Ala Val Cys Glu Pro Gly配列(69)、Gly Ala Ala Leu Cys Val Ser Glu Pro Gly配列(70)、Ser Pro Ala Ser Ala Ala Leu Cys Val Ser Glu Pro Gly配列(71)、Ser Pro Ala Ser Ala Ala Val Cys Glu Pro Gly配列(72)、Ala Gly Pro Lys Gly Ala Asp Gly Ser Pro Gly Pro Ala Val Cys Glu Pro Gly配列(73)、Ala Gly Pro Lys Gly Ala Asp Gly Ser Pro Gly Pro Ala Leu Cys Val Ser Glu Pro Gly配列(74)、Gly Pro Ala Val Cys Glu Pro Gly配列(75)、Gly Pro Ala Leu Cys Val Ser Glu Pro Gly配列(76)及びGly Ala Ala Pro Gly Ala Ser配列(77)からなる群より選ばれる少なくとも1種の介在アミノ酸配列(Z)を結合していることが好ましく、Gly Ala Ala Val Thr Gly配列(65)、Gly Leu Pro Gly Pro Lys Gly Asp配列(66)、Gly Pro Ala Val Thr Gly配列(67)及びAla Gly Pro Lys Gly Ala Asp Gly Ser Pro Gly Pro Ala Val Thr Gly配列(68)からなる群より選ばれる少なくとも1種がさらに好ましく、Gly Ala Ala Val Thr Gly配列(65)が特に好ましい。
介在アミノ酸配列(Z)としては、最小アミノ酸配列(X)のC末端には、細胞接着性の観点から、Ser Pro Ala Ser Ala Ala Gly Tyr配列(78)、Ser Pro Ala Ser Ala Ala Leu Cys Val Ser配列(79)、Ser Pro Ala Ser Ala Ala Val Cys配列(80)、Ala Gly Pro Lys Gly Ala Asp Gly Ser Pro Gly Pro配列(81)、Ala Gly Pro Lys Gly Ala Asp Gly Ser Pro Gly Pro Ala Val Cys配列(82)、Ala Gly Pro Lys Gly Ala Asp Gly Ser Pro Gly Pro Ala Leu Cys Val Ser配列(83)、Ala Gly Pro Lys Gly Ala Asp Gly Ser Pro配列(84)、Ser Pro Ala Ser Ala Ala Gly Pro Val Gly Ser Pro配列(85)、Cys Asp Ala Gly Tyr配列(86)、Cys Asp Ala Gly Pro Val Gly Ser Pro配列(87)及びSer Ala Gly Pro Ser Ala Gly Tyr配列(88)からなる群より選ばれる少なくとも1種の介在アミノ酸配列(Z)を結合していることが好ましく、Ser Pro Ala Ser Ala Ala Gly Tyr配列(78)、Ser Pro Ala Ser Ala Ala Leu Cys Val Ser配列(79)、Ser Pro Ala Ser Ala Ala Val Cys配列(80)、Ala Gly Pro Lys Gly Ala Asp Gly Ser Pro Gly Pro配列(81)、Ala Gly Pro Lys Gly Ala Asp Gly Ser Pro Gly Pro Ala Val Cys配列(82)、Ala Gly Pro Lys Gly Ala Asp Gly Ser Pro Gly Pro Ala Leu Cys Val Ser配列(83)、Ala Gly Pro Lys Gly Ala Asp Gly Ser Pro配列(84)及びSer Pro Ala Ser Ala Ala Gly Pro Val Gly Ser Pro配列(85)からなる群より選ばれる少なくとも1種がさらに好ましく、Ser Pro Ala Ser Ala Ala Gly Tyr配列(78)が特に好ましい。
人工ポリペプチド(P)は、最小アミノ酸配列(X)を1分子中に少なくとも1個有すればよいが、細胞接着性の観点等から、1分子中に1〜50個有するものが好ましく、さらに好ましくは2〜50個、つぎに好ましくは3〜30個、特に好ましくは4〜20個、最も好ましくは5〜15個有するものである。なお、2種以上の最小アミノ酸配列(X)が一分子中に含まれてもよい。
人工ポリペプチド(P)は、最小アミノ酸配列(X)以外に、人工ポリペプチド(P)の熱安定性向上の観点等から、補助アミノ酸配列(Y)を有することが好ましい。
補助アミノ酸配列(Y)としては、最小アミノ酸配列(X)以外のアミノ酸配列が使用でき、人工ポリペプチド(P)の熱安定性の観点等から、Gly及び/又はAlaを有する配列が好ましい。
補助アミノ酸配列(Y)としては、(Gly Ala)a 配列、(Gly Ala Gly Ala Gly Ser)b配列、(Gly Ala Gly Ala Gly Tyr)c配列、(Gly Ala Gly Val Gly Tyr)d配列、(Gly Ala Gly Tyr Gly Val)e配列、{Asp Gly Gly (Ala)f Gly Gly Ala}g配列、(Gly Val Pro Gly Val)h配列、(Gly)i配列、(Ala)j配列、(Gly Gly Ala)k配列、(Gly Val Gly Val Pro)m配列、(Gly Pro Pro)n配列、(Gly Ala Gln Gly Pro Ala Gly Pro Gly)o配列、(Gly Ala Pro Gly Ala Pro Gly Ser Gln Gly Ala Pro Gly Leu Gln)p配列及び/又は(Gly Ala Pro Gly Thr Pro Gly Pro Gln Gly Leu Pro Gly Ser Pro)q配列を有する配列等が含まれる。これらのうち、(Gly Ala)a配列、(Gly Ala Gly Ala Gly Ser)b配列、(Gly Ala Gly Ala Gly Tyr)c配列、(Gly Ala Gly Val Gly Tyr)d配列、(Gly Ala Gly Tyr Gly Val)e、{Asp Gly Gly (Ala)f Gly Gly Ala}g配列、(Gly Val Pro Gly Val)h配列、(Gly Val Gly Val Pro)m配列及び/又は(Gly Pro Pro)n配列を有するものが好ましく、さらに好ましくは(Gly Ala Gly Ala Gly Ser)b配列、(Gly Val Pro Gly Val)h配列、(Gly Val Gly Val Pro)m配列及び/又は(Gly Pro Pro)n配列を有するもの、特に好ましくは(Gly Ala Gly Ala Gly Ser)b配列を有するものである。
なお、aは5〜100の整数、bは1〜33の整数、c、d及びeは2〜33の整数、fは1〜194の整数、gは{1}〜{200/(6+f)}の小数点以下を切り捨てした整数、hは2〜40の整数、i及びjは10〜200の整数、kは3〜66の整数、mは2〜40の整数、nは3〜66の整数、oは1〜22の整数、p及びqは1〜13の整数である。
補助アミノ酸配列(Y)は、グリシン(Gly)及び/又はアラニン(Ala)を含むことが好ましい。グリシン(Gly)及びアラニン(Ala)を含む場合、これらの合計含有割合(%)は、補助アミノ酸配列(Y)の全アミノ酸個数に基づいて、10〜100が好ましく、さらに好ましくは20〜95、特に好ましくは30〜90、最も好ましくは40〜85である。この範囲であると、熱安定性がさらに良好となる。
グリシン(Gly)及びアラニン(Ala)の両方を含む場合、これらの含有個数割合(Gly/Ala)は、0.03〜40が好ましく、さらに好ましくは0.08〜13、特に好ましくは0.2〜5である。この範囲であると、熱安定性がさらに良好となる。
補助アミノ酸配列(Y)には、以上の例示の他に、他のアミノ酸{アラニン(Ala)、グリシン(Gly)、セリン(Ser)、トレオニン(Thr)、バリン(Val)、ロイシン(Leu)、イソロイシン(Ile)、システイン(Cys)、メチオニン(Met)、フェニルアラニン(Phe)、チロシン(Tyr)、プロリン(Pro)、トリプトファン(Trp)、アスパラギン(Asn)、グルタミン(Gln)、アスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu)、アルギニン(Arg)、リジン(Lys)及びヒスチジン(His)等}を含んでいてもよい。
(Gly Ala)a配列を有する補助アミノ酸配列としては、配列番号(17)〜(19)で表されるアミノ酸配列等が挙げられる。
(Gly Ala Gly Ala Gly Ser)b配列を有する補助アミノ酸配列としては、配列番号(20)〜(22)で表されるアミノ酸配列等が挙げられる。
(Gly Ala Gly Ala Gly Tyr)c配列を有する補助アミノ酸配列としては、配列番号(23)〜(25)で表されるアミノ酸配列等が挙げられる。
(Gly Ala Gly Val Gly Tyr)d配列を有する補助アミノ酸配列としては、配列番号(26)〜(28)で表されるアミノ酸配列等が挙げられる。
(Gly Ala Gly Tyr Gly Val)e配列を有する補助アミノ酸配列としては、配列番号(29)〜(31)で表されるアミノ酸配列等が挙げられる。
{Asp Gly Gly (Ala)f Gly Gly Ala}g配列を有する補助アミノ酸配列としては、配列番号(32)〜(34)で表されるアミノ酸配列等が挙げられる。
(Gly Val Pro Gly Val)h配列を有する補助アミノ酸配列としては、配列番号(35)〜(38)で表されるアミノ酸配列等が挙げられる。
(Gly)i配列を有する補助アミノ酸配列としては、配列番号(39)〜(41)で表されるアミノ酸配列等が挙げられる。
(Ala)j配列を有する補助アミノ酸配列としては、配列番号(42)〜(44)で表されるアミノ酸配列等が挙げられる。
(Gly Gly Ala)k配列を有する補助アミノ酸配列としては、配列番号(45)〜(47)で表されるアミノ酸配列等が挙げられる。
(Gly Val Gly Val Pro)m配列を有する補助アミノ酸配列としては、配列番号(48)〜(50)で表されるアミノ酸配列等が挙げられる。
(Gly Pro Pro)n配列を有する補助アミノ酸配列としては、配列番号(51)〜(53)で表されるアミノ酸配列等が挙げられる。
(Gly Ala Gln Gly Pro Ala Gly Pro Gly)o配列を有する補助アミノ酸配列としては、配列番号(54)〜(56)で表されるアミノ酸配列等が挙げられる。
(Gly Ala Pro Gly Ala Pro Gly Ser Gln Gly Ala Pro Gly Leu Gln)p配列を有する補助アミノ酸配列としては、配列番号(57)〜(59)で表されるアミノ酸配列等が挙げられる。
(Gly Ala Pro Gly Thr Pro Gly Pro Gln Gly Leu Pro Gly Ser Pro)q配列を有する補助アミノ酸配列としては、配列番号(60)〜(62)で表されるアミノ酸配列等が挙げられる。
これらの補助アミノ酸配列のうち、配列番号(17)、(18)、(20)、(21)、(22)、(23)、(24)、(26)、(27)、(29)、(30)、(32)、(33)、(34)、(35)、(36)、(38)、(39)、(40)、(42)、(43)、(45)、(46)、(48)、(49)、(51)、(52)、(54)、(55)、(57)、(58)、(60)又は(61)で表されるアミノ酸配列が好ましく、さらに好ましくは配列番号(18)、(20)、(21)、(22)、(24)、(27)、(30)、(34)、(35)、(36)、(37)、(38)、(40)、(43)、(46)、(49)、(52)、(55)、(58)又は(61)で表されるアミノ酸配列、特に好ましくは配列番号(20)、(21)又は(38)で表されるアミノ酸配列である。
補助アミノ酸配列(Y)を含む場合、(Y)の含有個数は、熱安定性の観点等から、人工ポリペプチド(P)1分子中に、2〜50が好ましく、さらに好ましくは3〜30、特に好ましくは4〜20、最も好ましくは5〜15である。また、人工ポリペプチド(P)は、2種以上の補助アミノ酸配列(Y)を含んでもよい。
人工ポリペプチド(P)は、分岐鎖を含んでいてもよく、一部が架橋されていてもよく、環状構造を含んでいてもよい。しかし、人工ポリペプチド(P)は、架橋されていないことが好ましく、さらに好ましくは架橋されていない直鎖構造、特に好ましくは環状構造を持たず架橋されていない直鎖構造である。なお、直鎖構造には、β構造(直鎖状ペプチドが折れ曲がってこの部分同士が平行に並び、その間に水素結合が作られる二次構造)も含まれる。
人工ポリペプチド(P)は、細胞接着性及び熱安定性の観点等から、最小アミノ酸配列(X)と補助アミノ酸配列(Y)とが、必要により(X)と(Y)の間に他のアミノ酸配列を介して、交互に化学結合してなる構造であることが好ましく、(X)の両端に介在アミノ酸配列(Z)を含むアミノ酸配列と(Y)とが交互に化学結合してなる構造であることがさらに好ましい。この場合、最小アミノ酸配列(X)と補助アミノ酸配列(Y)との繰り返し単位(X−Y)の数(個)は、細胞接着性の観点等から、1〜50が好ましく、さらに好ましくは2〜40、特に好ましくは3〜30、最も好ましくは4〜20である。
また、最小アミノ酸配列(X)と補助アミノ酸配列(Y)との含有個数は同じでも異なっていてもよい。異なっている場合は、いずれかの含有個数が他方の含有個数より1個少ないことが好ましい{この場合、補助アミノ酸配列(Y)が少ないことが好ましい}。人工ポリペプチド(P)中の最小アミノ酸配列(X)と補助アミノ酸配列(Y)との含有個数割合(X/Y)は、0.5〜2が好ましく、さらに好ましくは0.9〜1.4、特に好ましくは1〜1.3である。
また、人工ポリペプチド(P)の末端部分(最小アミノ酸配列(X)又は補助アミノ酸配列(Y)からペプチド末端まで)に他のアミノ酸を含んでもよい。他のアミノ酸を含む場合、その含有個数は、人工ポリペプチド(P)1個当たり、1〜1000個が好ましく、さらに好ましくは3〜300、特に好ましくは10〜100である。
人工ポリペプチド(P)の重量平均分子量(以下、Mw)は、1,000〜1,000,000が好ましく、さらに好ましくは2,000〜700,000、特に好ましくは3,000〜400,000、最も好ましくは4,000〜200,000である。
なお、人工ポリペプチド(P)のMwは、SDS−PAGE(SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動)法により、測定サンプル{ポリペプチド等}を分離し、泳動距離を標準物質と比較する方法等の公知の方法によって求められる(以下、同じ)。
好ましい人工ポリペプチド(P)の一部を以下に例示する。
(1)最小アミノ酸配列(X)がArg Gly Asp配列(x1)の場合
Arg Gly Asp配列(x1)の13個と(Gly Ala Gly Ala Gly Ser)9配列(21)(y1)の12個とを有し、(x1)のN末端にGly Ala Ala Val Thr Gly配列(65)、(x1)のC末端にSer Pro Ala Ser Ala Ala Gly Tyr配列(78)を有し、これらが交互に化学結合してなる構造を有するMw約11万のポリペプチド{「プロネクチンF」、プロネクチンは三洋化成工業(株)の登録商標(日本及び米国)である。三洋化成工業(株)製<以下同じ>};(x1)の5個と(Gly Ala Gly Ala Gly Ser)3配列(20)(y2)の5個とを有しこれらが交互に化学結合してなる構造を有するMw約2万のポリペプチド(「プロネクチンF2」);(x1)の3個と(Gly Val Pro Gly Val)2 Gly Gly (Gly Ala Gly Ala Gly Ser)3配列(38)(y3)の3個とを有しこれらが交互に化学結合してなる構造を有するMw約1万のポリペプチド(「プロネクチンF3」)等。
(2)最小アミノ酸配列(X)がIle Lys Val Ala Val配列(x2)の場合
プロネクチンF、プロネクチンF2又はプロネクチンF3のArg Gly Asp配列(x1)をIle Lys Val Ala Val配列(7)(x2)に、最小アミノ酸配列(X)のN末端に結合するGly Ala Ala Val Thr Gly配列(65)をGly Ala Ala Pro Gly Ala Ser配列(77)に、最小アミノ酸配列(X)のC末端に結合するSer Pro Ala Ser Ala Ala Gly Tyr配列(78)をSer Ala Gly Pro Ser Ala Gly Tyr配列(88)に変更した「プロネクチンL」、「プロネクチンL2」、又は「プロネクチンL3」等。
(3)最小アミノ酸配列(X)がTyr Ile Gly Ser Arg配列(x3)の場合
プロネクチンF、プロネクチンF2又はプロネクチンF3のArg Gly Asp配列(x1)をTyr Ile Gly Ser Arg配列(x3)に、最小アミノ酸配列(X)のN末端に結合するGly Ala Ala Val Thr Gly配列(65)をGly Ala Ala Val Cys Glu Pro Gly配列(69)に、最小アミノ酸配列(X)のC末端に結合するSer Pro Ala Ser Ala Ala Gly Tyr配列(78)をCys Asp Ala Gly Tyr配列(86)に変更した「プロネクチンY」、「プロネクチンY2」、又は「プロネクチンY3」等。
また、(1)〜(3)のポリペプチドの他、宝酒造(株)製RetroNectin(リコンビナントヒトフィブロネクチンCH−296){最小アミノ酸配列(X)としてArg Gly Asp配列(x1)及びLeu Asp Val配列を含有するMw約6万のポリペプチド}、同RGDS−Protein A{最小アミノ酸配列(X)としてArg Gly Asp配列(x1)を含有するMw約3万のポリペプチド}も好ましく使用できる{ただし、これらのポリペプチドは天然に由来し、補助アミノ酸配列(Y)が含まれていない。よって、熱安定性等が上記の(1)〜(3)よりも劣る。また、これらのポリペプチドのアミノ酸配列は特開平2−311498号に開示されている。}。
人工ポリペプチド(P)は、人工的に合成されるものであり、例えば、有機合成法(固相合成法、液相合成法等)及び生化学的合成法[遺伝子組換え微生物(酵母、細菌、大腸菌等)]等によって製造する。すなわち、人工ポリペプチド(P)は、動物由来のコラーゲンやフィブロネクチン等の細胞接着性蛋白質を含まない。
有機合成法に関しては、例えば、日本生化学会編「続生化学実験講座2、タンパク質の化学(下)」第641〜694頁(昭和62年5月20日;株式会社東京化学同人発行)に記載されている方法等が用いられる。生化学的合成法に関しては、例えば、特表平3−502935号公報に記載されている方法等が用いられる。人工ポリペプチド(P)を容易に合成できる点で、遺伝子組換え微生物による生化学的合成法が好ましく、特に好ましくは遺伝子組換え大腸菌を用いて合成する方法である。
本発明の細胞培養用担体において、吸水性樹脂(A)と人工ポリペプチド(P)とは、通常、化学結合(イオン結合、水素結合及び/又は共有結合等)及び/又は物理吸着(ファンデルワールス力による吸着)によって結合される。吸水性樹脂(A)と人工ポリペプチド(P)とが強固に結合される点で、化学結合が好ましく、さらに好ましくは共有結合である。
人工ポリペプチド(P)は、吸水性樹脂(A)と多価金属イオン(B){金属化合物等を含む。}とを混合してから、吸水性樹脂(A)に結合してもよいが、人工ポリペプチドと吸水性樹脂(A)とを結合させて人工ポリペプチド結合吸水性樹脂を得てから、人工ポリペプチド結合吸水性樹脂と多価金属イオン(B){金属化合物等を含む。}とを混合することが好ましい。
吸水性樹脂(A)に人工ポリペプチド(P)を共有結合させる方法としては、例えば、「ペプチド合成の基礎と実験、平成9年10月5日、丸善株式会社発行」に記載の方法等が挙げられ、具体的には、以下の(1)〜(3)の通りである。
(1)人工ポリペプチド(P)のうち1級アミノ基又は2級アミノ基を有するものと吸水性樹脂(A)のカルボキシル基とを反応させる場合、カルボキシル基を予めカルボジイミド化合物と反応させ、アシルイソ尿素{R’−N=C(OCOR)−NH−R’(−OCORが(A)に由来する部分)}を得た後、人工ポリペプチド(P)のうち1級アミノ基又は2級アミノ基を有するものをこのアシルイソ尿素に加えることによって、吸水性樹脂(A)と人工ポリペプチド(P)とをアミド結合できる。
カルボジイミド化合物としては、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド及び1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩等が挙げられる。
(2)人工ポリペプチド(P)のうち1級アミノ基又は2級アミノ基を有するものと吸水性樹脂(A)のうちヒドロキシル基を有するもの{共重合単量体として、ヒドロキシル基を有するモノマー(F)を用いたもの等}とを反応させる場合、吸水性樹脂(A)のヒドロキシル基を予めカルボニルジイミダゾール化合物と反応させ、イミダゾール誘導体{R−Im、Imはイミダゾリン環、Rが吸水性樹脂(A)に由来}を得た後、人工ポリペプチド(P)のうち1級アミノ基又は2級アミノ基を有するものをこのイミダゾール誘導体に加えることによって、吸水性樹脂(A)と人工ポリペプチド(P)とをN−C結合できる。
カルボニルジイミダゾール化合物としては、N,N’−カルボニルジイミダゾール等が挙げられる。
(3)人工ポリペプチド(P)のうちヒドロキシル基を有するものと吸水性樹脂(A)のカルボキシル基とを反応させる場合、吸水性樹脂(A)のカルボキシル基を予めカルボジイミド化合物と反応させ、アシルイソ尿素を得た後、人工ポリペプチド(P)のうちヒドロキシル基を有するものをこのアシルイソ尿素に加えることによって、吸水性樹脂(A)とポリペプチドとをエステル結合できる。
人工ポリペプチド(P)を吸水性樹脂(A)に、物理吸着、イオン結合及び/又は水素結合させる方法としては、溶媒等に人工ポリペプチド(P)と吸水性樹脂(A)とを投入し、混合して作製する方法等が挙げられる。溶媒としては特に制限はないが、無機塩、有機酸塩、酸及び/又は塩基を0.001〜50重量%(好ましくは0.005〜30重量%、さらに好ましくは0.01〜10重量%)含有する水溶液等(特開2003−189848等に記載)が使用できる。
これらの溶媒の中で、無機塩、酸及び/又は塩基を含有する水溶液、並びに水が好ましく、さらに好ましくは無機塩、酸及び/又は塩基を含有する水溶液、並びにイオン交換蒸留水、特に好ましくは無機塩、酸及び/又は塩基を含有する水溶液である。
人工ポリペプチド(P)の含有量は、細胞接着性等の観点から、細胞培養担体1g当たり、5ng/g〜500mg/gが好ましく、さらに好ましくは50ng/g〜50mg/g、次に好ましくは500ng/g〜50mg/g、次に好ましくは500ng/g〜20mg/g、特に好ましくは500ng/g〜5mg/g、最も好ましくは5μg〜5mg/gである。
なお、人工ポリペプチド(P)の含有量は、人工ポリペプチド(P)の含有量が500μg/gを超える場合、Biuret法(たとえば、日本生化学会編「生化学実験講座1、タンパク質の化学I」第45〜55頁(1979年12月11日;株式会社東京化学同人発行)等により求められる。
一方、人工ポリペプチド(P)の含有量が500μg/g以下の場合、Kjeldahl法(たとえば、日本生化学会編「生化学実験講座1、タンパク質の化学I」第45〜55頁(1979年12月11日;株式会社東京化学同人発行)等により求められる。
また、免疫学的測定法(特開2004−049921号公報等に記載)を利用して測定することもできる。具体的には、(1)人工ポリペプチド(P)の含有量が既知である細胞培養用担体{Biuret法やKjeldahl法等で人工ポリペプチド(P)の含有量が既知になった細胞培養用担体}を生理食塩水に浸漬し、人工ポリプチド(P)と結合する抗体に酵素を標識したもの(以下、酵素標識抗体)とを反応させ、この反応した酵素標識抗体の酵素量を吸光度測定し、検量線(人工ポリペプチド(P)の含有量とそれに対する吸光度)を作成する。(2)同様に検体(人工ポリペプチド(P)の含有量が未知である細胞培養用担体)の吸光度を測定する。(1)で得られた検量線と(2)で得られた吸光度から、検体の人工ポリペプチド(P)の含有量を求めることができる。
なお、測定試料は、減圧乾燥機{120℃、0.1kPa以下}で1時間乾燥したものを用いる。
本発明の細胞培養用担体は、細胞増殖性を高めるため、細胞増殖因子を含有させてもよい。細胞増殖因子としては、細胞の増殖を促進する物質、例えば、線維芽細胞増殖因子、トランスフォーミング増殖因子、上皮細胞増殖因子、肝細胞増殖因子、血小板由来増殖因子、インシュリン様増殖因子、血管内皮細胞増殖因子、神経成長因子、幹細胞因子、白血病阻害因子、骨形成因子、ヘパリン結合上皮細胞増殖因子、神経栄養因子、結合組織成長因子、アンジオポエチン、コンドロモジュリン、テノモジュリン、インターフェロン、インターロイキン、腫瘍壊死因子、コロニー刺激因子、アドレナモジュリン及びナトリウム利尿ペプチド等の生理活性ポリペプチド等が挙げられる(例えば、財団法人名古屋大学出版会発行「上田実編ティッシュエンジニアリング」(1999年)に記載)。これらの細胞増殖因子の中で、適用できる組織細胞の範囲が広く、細胞増殖性がより高くなるという観点等から、線維芽細胞増殖因子、トランスフォーミング増殖因子、上皮細胞増殖因子、肝細胞増殖因子、血小板由来増殖因子、インシュリン様増殖因子、血管内皮細胞増殖因子、骨形成因子、インターロイキン及び腫瘍壊死因子が好ましく、さらに好ましくは線維芽細胞増殖因子、上皮細胞増殖因子、インシュリン様増殖因子、血管内皮細胞増殖因子、インターロイキン及び腫瘍壊死因子である。
細胞増殖因子は、吸水性樹脂(A)に結合していることが好ましい。この結合は、吸水性樹脂(A)と人工ポリペプチド(P)との結合と同様に、化学結合及び/又は物理吸着が使用でき、好ましい化学結合及び/又は物理吸着も同様である。
細胞増殖因子を含む場合、この含有量は、細胞増殖性等の観点から、細胞培養担体1g当たり、10pg/g〜1000μg/gが好ましく、さらに好ましくは100pg/g〜100μg/g、特に好ましくは1000pg/g〜10μg/gである。
本発明の細胞培養用担体の外形状は、吸水性樹脂(A)の外形状と一致する。
本発明の細胞培養用担体を生理食塩水で膨潤させて得た膨潤粒子の体積平均粒子径(μm)は、細胞増殖性等の観点から、10〜2000が好ましく、さらに好ましくは25〜1000、特に好ましくは50〜500、最も好ましくは100〜300である。
本発明の細胞培養用担体の保水量(g/g)は、細胞増殖性等の観点から、2〜50が好ましく、さらに好ましくは5〜40、特に好ましくは10〜30、最も好ましくは10〜25である。なお、細胞培養担体の保水量の測定法は、前述の吸水性樹脂(A)の保水量の測定方法と同じである。
本発明の細胞培養用担体は、必要に応じて滅菌処理を施してもよい。滅菌方法としては、放射線、エチレンオキサイドガス、プラズマ、γ線、アルコール、オートクレーブ、乾熱等を用いた滅菌方法が適用できる。これらは、1種の方法のみで行ってもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
本発明の細胞培養用担体に接着できる細胞(CE)としては細胞であれば制限がないが、本発明の細胞培養用担体を用いると細胞増殖性が高いため、医薬品等の有用物質生産や治療等に用いられる哺乳動物由来の正常細胞、哺乳動物由来の株化細胞及び昆虫細胞が適している。
哺乳動物由来の正常細胞としては、皮膚に関与する細胞(上皮細胞、線維芽細胞、血管内皮細胞及び平滑筋細胞等)、血管に関与する細胞(血管内皮細胞、平滑筋細胞及び線維芽細胞等)、筋肉に関与する細胞(筋肉細胞等)、脂肪に関与する細胞(脂肪細胞等)、神経に関与する細胞(神経細胞等)、肝臓に関与する細胞(肝細胞等)、膵臓に関与する細胞(膵ラ島細胞等)、腎臓に関与する細胞(腎上皮細胞、近位尿細管上皮細胞及びメサンギウム細胞等)、肺・気管支に関与する細胞(上皮細胞、線維芽細胞、血管内皮細胞及び平滑筋細胞等)、目に関与する細胞(視細胞、角膜上皮細胞及び角膜内皮細胞等)、前立腺に関与する細胞(上皮細胞、間質細胞及び平滑筋細胞等)、骨に関与する細胞(骨芽細胞、骨細胞及び破骨細胞等)、軟骨に関与する細胞(軟骨芽細胞及び軟骨細胞等)、歯に関与する細胞(歯根膜細胞及び骨芽細胞等)、血液に関与する細胞(白血球及び赤血球等)、及び幹細胞{例えば、骨髄未分化間葉系幹細胞、骨格筋幹細胞、造血系幹細胞、神経幹細胞、肝幹細胞(oval cell、small hepatocyte等)、脂肪組織幹細胞、胚性幹(ES)細胞、表皮幹細胞、腸管幹細胞、精子幹細胞、胚生殖幹(EG)細胞、膵臓幹細胞(膵管上皮幹細胞等)、白血球系幹細胞、リンパ球系幹細胞、角膜系幹細胞、前駆細胞(脂肪前駆細胞、血管内皮前駆細胞、軟骨前駆細胞、リンパ球系前駆細胞、NK前駆細胞等)等}等が挙げられる。
哺乳動物由来の株化細胞としては、3T3細胞、A549細胞、AH130細胞、B95−8細胞、BHK細胞、BOSC23細胞、BS−C−1細胞、C3H10T1/2細胞、C−6細胞、CHO細胞、COS細胞、CV−1細胞、F9細胞、FL細胞、FL5−1細胞、FM3A細胞、G−361細胞、GP+E−86細胞、GP+envAm12細胞、H4−II−E細胞、HEK293細胞、HeLa細胞、HEp−2細胞、HL−60細胞、HTC細胞、HUVEC細胞、IMR−32細胞、IMR−90細胞、K562細胞、KB細胞、L細胞、L5178Y細胞、L−929細胞、MA104細胞、MDBK細胞、MDCK細胞、MIA PaCG−2細胞、N18細胞、Namalwa細胞、NG108−15細胞、NRK細胞、OC10細胞、OTT6050細胞、P388細胞、PA12細胞、PA317細胞、PC−12細胞、PER.C6細胞、PG13細胞、QGH細胞、Raji細胞、RPMI−1788細胞、SGE1細胞、Sp2/O−Ag14細胞、ST2細胞、THP−1細胞、U−937細胞、V79細胞、VERO細胞、WI−38細胞、ψ2細胞、及びψCRE細胞等が挙げられる{細胞培養の技術(日本組織培養学会編集、株式会社朝倉書店発行、1999年)}。
昆虫細胞としては、カイコ細胞(BmN細胞及びBoMo細胞等)、クワコ細胞、サクサン細胞、シンジュサン細胞、ヨトウガ細胞(Sf9細胞及びSf21細胞等)、クワゴマダラヒトリ細胞、ハマキムシ細胞、ショウジョウバエ細胞、センチニクバエ細胞、ヒトスジシマカ細胞、アゲハチョウ細胞、ワモンゴキブリ細胞及びイラクサキンウワバ細胞(Tn−5細胞、HIGH FIVE細胞及びMG1細胞等)等が挙げられる{昆虫バイオ工場(木村滋 編著、株式会社工業調査会 発行、2000年)。
これらの細胞のうち、医薬品等の有用物質生産や治療等の観点から、哺乳動物由来の正常細胞及び哺乳動物由来の株化細胞が好ましい。そして、治療に有用な点で、さらに好ましくは平滑筋細胞、肝細胞、骨芽細胞、上皮細胞、線維芽細胞、血管内皮細胞及び幹細胞、特に好ましくは上皮細胞である。また、医薬品等の有用物質生産に有用な点で、さらに好ましくは3T3細胞、BHK細胞、CHO細胞、HEK293細胞、HeLa細胞、L−929細胞、MDCK細胞、PER.C6細胞、VERO細胞及びWI−38細胞、特に好ましくはMDCK細胞及びVERO細胞である。
本発明の細胞培養用担体を用いる細胞培養方法に用いる培地(ME)としては、無血清培地(Grace培地、IPL−41培地、Schneider’s培地、Opti−PROTMSFM培地、Opti−MEMTMI培地、VP−SFM培地、CD293培地、293SFMII培地、CD−CHO培地、CHO−S−SFMII培地、FreeStyleTM293培地、CD−CHO ATGTM培地及びこれらの混合培地等);一般の培地(RPMI培地、MEM培地、Eagle’sMEM培地、BME培地、DME培地、αMEM培地、IMEM培地、ES培地、DM−160培地、Fisher培地、F12培地、WE培地、ASF103培地、ASF104培地、ASF301培地、TC−100培地、Sf−900II培地、Ex−cell405培地、Express−Five培地、Drosophila培地及びこれらの混合培地);及びこれらの混合培地が挙げられる。
これらのうち、ヒトへの感染の可能性がある物質(血清に由来するウイルス等)の混入防止の観点等から、無血清培地が好ましく、さらに好ましくはOpti−PROTMSFM培地、Opti−MEMTMI培地、VP−SFM培地、CD293培地、293SFMII培地、CD−CHO培地、CHO−S−SFMII培地、FreeStyleTM293培地、CD−CHO ATGTM培地及びこれらの混合培地、特に好ましくはOpti−PROTMSFM培地、VP−SFM培地、CD293培地、293SFMII培地、FreeStyleTM293培地及びこれらの混合培地である。
また、これらの培地には、血清を添加することができるが、ヒトへの感染の可能性がある物質(血清に由来するウイルス等)の混入防止の観点等から、血清を添加しないことが好ましい。
血清としては、ヒト血清、及び動物血清(ウシ血清、ウマ血清、ヤギ血清、ヒツジ血清、ブタ血清、ウサギ血清、ニワトリ血清、ラット血清、及びマウス血清等)が含まれる。
血清を添加する場合、これらのうち、ヒト血清、ウシ血清、及びウマ血清が好ましい。また、動物血清の由来は、成体由来の血清、仔由来の血清、新生由来の血清、及び胎児由来の血清等が挙げられる。血清を添加する場合、これらのうち、仔由来の血清、新生由来の血清、及び胎児由来の血清が好ましく、さらに好ましくは新生由来の血清、及び胎児由来の血清、特に好ましくは胎児由来の血清である。血清を添加する場合、さらに血清は、非働化処理や、抗体の除去処理等を行ってもよい。
血清を使用する場合、血清の使用量(重量%)は、培地の重量に基づいて、0.1〜50が好ましく、さらに好ましくは0.3〜30、特に好ましくは1〜20である。
培地中には、必要に応じて、細胞増殖因子を含有させることができる。細胞増殖因子を含有させることにより、細胞の増殖速度を高めたり、細胞活性を高めたりすることができる。
細胞増殖因子としては、線維芽細胞増殖因子、トランスフォーミング増殖因子、上皮細胞増殖因子、肝細胞増殖因子、血小板由来増殖因子、インシュリン様増殖因子、血管内皮増殖因子、神経成長因子、幹細胞因子、白血病阻害因子、骨形成因子、ヘパリン結合上皮細胞増殖因子、神経栄養因子、結合組織成長因子、アンジオポエチン、サイトカイン、インターロイキン、アドレナモジュリン及びナトリウム利尿ペプチド等の生理活性ペプチドが含まれる。これらのうち、適用できる細胞の範囲が広く、治癒期間がより短縮できるという観点から、線維芽細胞増殖因子、トランスフォーミング増殖因子、インシュリン様増殖因子及び骨形成因子が好ましく、さらに好ましくは線維芽細胞増殖因子、トランスフォーミング増殖因子及びインシュリン様増殖因子である。
細胞増殖因子を使用する場合、細胞増殖因子の含有量(重量%)は細胞増殖因子の種類によって異なるが、培地の重量に基づいて、10−16〜10−3が好ましく、さらに好ましくは10−14〜10−5、特に好ましくは10−12〜10−7である。
これらの培地には、さらに抗菌剤(アンホテリシンB、ゲンタマイシン、ペニシリン及びストレプトマイシン等)を含有させることができる。抗菌剤を含有させる場合、この含有量(重量%)は抗菌剤の種類によって異なるが、培地の重量に基づいて、10−6〜10が好ましく、さらに好ましくは10−5〜1、特に好ましくは10−4〜0.1である。
培地に分散させる細胞の濃度(個/mL)としては特に制限はないが、培地1mL当たり、100〜1億が好ましく、さらに好ましくは1000〜1千万、特に好ましくは1万〜100万である。
細胞の個数の計数方法は公知の方法が使用でき、例えば、クリスタルバイオレットを用いた細胞核計数法で測定することができる{細胞培養の技術(日本組織培養学会編集、株式会社朝倉書店発行、1999年)}。
また、培地に投入する細胞培養用担体の乾燥重量(g)は、培養する細胞の種類等によって適宜決定できるが、培地1L当たり、0.005〜800が好ましく、さらに好ましくは0.02〜200、特に好ましくは0.1〜40である。
培養条件としては、特に制限は無く、二酸化炭素(CO2)濃度1〜20体積%、5〜45℃で1時間〜100日間、必要に応じて1〜10日毎に培地交換しなら培養する条件等が適用できる。好ましい条件としては、CO2濃度3〜10体積%、30〜40℃、1〜20日間、1〜3日毎に培地交換しながら培養する条件である。
細胞培養用担体から、細胞を剥離する方法は、公知の方法が使用でき、例えば、キレート剤(EDTA等)、非動物由来の蛋白質分解酵素{植物由来の蛋白質分解酵素(パパイン等)}、遺伝子組換えによる合成酵素(商品名:TrypLETM Select、インビトロジェン(株)製等)及び/又は動物由来の蛋白質分解酵素(トリプシンやコラゲナーゼ等)によって剥離させる方法が利用できる。
以下に実施例として掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。なお、以下において、特記しない限り部は重量部を、%は重量%を意味する。
<製造例1>
<吸水性樹脂(G−1)の調製>
攪拌機、モノマー供給管、窒素ガス導入管、温度計、還流冷却器を備えた反応容器にシクロヘキサン624部、重合分散剤としてソルビタンモノステアレート3.1部を仕込み、窒素バブリングを30分以上行って、溶存空気を追い出し75℃まで昇温した。
別の反応器に80%アクリル酸水溶液173部を仕込み、冷却しながら28%水酸化ナトリウム水溶液207部を加えて中和した。この水溶液に架橋性単量体{エチレングリコールジグリシジルエーテル}0.90部及び重合開始剤{過硫酸カリウム}0.278部、連鎖移動剤{次亜リン酸ナトリウム}0.053部を添加した後、窒素バブリングを行い、溶存空気を追い出しモノマー水溶液を得た。
得られたモノマー水溶液を上記の重合反応器のモノマー供給管より6.5ml/分の割合で連続的に重合反応器内の撹拌中(撹拌速度は500rpm)のシクロヘキサン液中に約1時間かけて供給してシクロヘキサン還流下で重合を行った。
次に共沸脱水によって160部の水を抜き出した後、含水ゲルポリマーを取り出し、更に120℃で2時間乾燥して、乾燥架橋ポリアクリル酸ナトリウム塩を得た。
乾燥架橋ポリアクリル酸ナトリウム塩を、目開きが75μmのふるい及び106μmのふるい(JIS Z8801−1:2000)により分級して、粒子径75〜106μmの粒子{架橋ポリアクリル酸ナトリウム塩粒子}(G−1)を得た。吸水性樹脂(G−1)の保水量は20g/gであった。
<製造例2>
<吸水性樹脂(G−2)の調製>
「架橋性単量体{エチレングリコールジグリシジルエーテル}の使用量を0.90部から4.52部に変更すること」及び「28%水酸化ナトリウム水溶液の使用量を207部から110部に変更すること」以外、製造例1と同様にして、吸水性樹脂(G−2)を得た。(G−2)の保水量は4g/gであった。
<製造例3>
<吸水性樹脂(G−3)の調製>
「架橋性単量体{エチレングリコールジグリシジルエーテル}の使用量を0.90部から0.0106部に変更すること」以外、製造例1と同様にして、吸水性樹脂(G−3)を得た。(G−3)の保水量は50g/gであった。
<製造例4>
<吸水性樹脂(H−1)の調製>
吸水性樹脂(G−1)1g、水溶性カルボジイミド(1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド・塩酸塩3.83g及びアミノエタノール・塩酸塩3.90gに、塩化ナトリウムを0.85%で含有する0.02M,pH5.2のリン酸緩衝液(以下、pH5.2のPBS)25mLを加え、25℃で撹拌し、4時間反応させた後、反応溶液を吸引除去した。イオン交換水の100mLを添加し1時間撹拌後、吸引除去する洗浄操作を5回行い、引き続き、減圧乾燥機{40℃、0.1kPa以下}で、4時間減圧乾燥して吸水性樹脂(H−1)を得た。(H−1)の保水量は10g/gであった。
<製造例5>
<吸水性樹脂(H−2)の調製>
吸水性樹脂を(G−1)から(G−2)に変更すること以外、製造例4と同様にして、吸水性樹脂(H−2)を得た。(H−2)の保水量は2g/gであった。
<製造例6>
<吸水性樹脂(H−3)の調製>
吸水性樹脂を(G−1)から(G−3)に変更すること以外、製造例4と同様にして、吸水性樹脂(H−3)を得た。(H−3)の保水量は30g/gであった。
<製造例7>
<吸水性樹脂(H−4)の調製>
80%アクリル酸水溶液の使用量を173部から18部に変更し、且つ2−ヒドロキシエチルアクリレートの197部を使用すること及び28%水酸化ナトリウム水溶液の使用量を207部から21.5部に変更すること以外、製造例1と同様にして、吸水性樹脂(H−4)を得た。(H−4)の保水量は10g/gであった。
<製造例8>
<吸水性樹脂(I−1)の調製>
吸水性樹脂(H−1)1g、N−ジエチルアミノエチルクロライド・塩酸塩8.6g及び48%水酸化ナトリウム水溶液4.35gに、イオン交換水10mLを加え、60℃で撹拌し、5時間反応させた後、反応溶液を吸引除去した。イオン交換水の100mLを添加し1時間撹拌後、吸引除去する洗浄操作を5回行い、引き続き、減圧乾燥機{40℃、0.1kPa以下}で、4時間減圧乾燥して吸水性樹脂(I−1)を得た。(I−1)の保水量は10g/gであった。また、正に荷電した官能基(B)の含有量は、2.5mmol/gであった。
<製造例9>
<吸水性樹脂(I−2)の調製>
吸水性樹脂を(H−1)から(H−2)に変更すること以外、製造例8と同様にして、吸水性樹脂(I−2)を得た。(I−2)の保水量は2g/gであった。また、正に荷電した官能基(B)の含有量は、2.5mmol/gであった。
<製造例10>
<吸水性樹脂(I−3)の調製>
吸水性樹脂を(H−1)から(H−3)に変更すること以外、製造例8と同様にして、吸水性樹脂(I−3)を得た。(I−3)の保水量は30g/gであった。また、正に荷電した官能基(B)の含有量は、2.5mmol/gであった。
<製造例11>
<吸水性樹脂(I−4)の調製>
48%水酸化ナトリウム水溶液の使用量を4.35gから0.15gに変更すること以外、製造例8と同様にして、吸水性樹脂(I−4)を得た。(I−4)の保水量は10g/gであった。また、正に荷電した官能基(B)の含有量は、0.1mmol/gであった。
<製造例12>
<吸水性樹脂(I−5)の調製>
48%水酸化ナトリウム水溶液の使用量を4.35gから7.13gに変更すること以外、製造例8と同様にして、吸水性樹脂(I−5)を得た。(I−5)の保水量は10g/gであった。また、正に荷電した官能基(B)の含有量は、5.0mmol/gであった。
<製造例13>
<吸水性樹脂(I−6)の調製>
吸水性樹脂を(H−1)から(H−4)に変更すること以外、製造例8と同様にして、吸水性樹脂(I−6)を得た。(I−6)の保水量は10g/gであった。また、正に荷電した官能基(B)の含有量は、2.5mmol/gであった。
<製造例14>
<吸水性樹脂(I−7)の調製>
吸水性樹脂(H−1)1g、水溶性カルボジイミド(1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド・塩酸塩0.268g及びジアミノエタン・二塩酸塩の3.06gに、塩化ナトリウムを0.85%で含有する0.02M,pH5.2のPBSの25mLを加え、25℃で撹拌し、4時間反応させた後、反応溶液を吸引除去した。イオン交換水の100mLを添加し1時間撹拌後、吸引除去する洗浄操作を5回行い、引き続き、減圧乾燥機{40℃、0.1kPa以下}で、4時間減圧乾燥して吸水性樹脂(I−7)を得た。(I−7)の保水量は10g/gであった。また、正に荷電した官能基(B)の含有量は、2.5mmol/gであった。
<製造例15>
<吸水性樹脂(I−8)の調製>
吸水性樹脂(H−1)1g、水溶性カルボジイミド(1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド・塩酸塩0.268g及び1−アミノ−2−ジエチルアミノエタン4.52gに、塩化ナトリウムを0.85%で含有する0.02M,pH5.2のPBS25mLを加え、25℃で撹拌し、4時間反応させた後、反応溶液を吸引除去した。イオン交換水の100mLを添加し1時間撹拌後、吸引除去する洗浄操作を5回行い、引き続き、減圧乾燥機{40℃、0.1kPa以下}で、4時間減圧乾燥して吸水性樹脂(I−8)を得た。(I−8)の保水量は10g/gであった。また、正に荷電した官能基(B)の含有量は、2.5mmol/gであった。
<製造例16>
<吸水性樹脂(I−9)の調製>
吸水性樹脂(H−1)1g、N−グリシジル−トリメチルアンモニウム・塩酸塩0.408g及びテトラエチルアンモニウム・塩酸塩0.01gに、塩化ナトリウムを0.85%で含有する0.1M,pH7.4のPBS25mLを加え、60℃で撹拌し、2時間反応させた後、反応溶液を吸引除去した。イオン交換水の100mLを添加し1時間撹拌後、吸引除去する洗浄操作を5回行い、引き続き、減圧乾燥機{40℃、0.1kPa以下}で、4時間減圧乾燥して吸水性樹脂(I−9)を得た。(I−9)の保水量は10g/gであった。また、正に荷電した官能基(B)の含有量は、2.5mmol/gであった。
<製造例17>
<吸水性樹脂(I−10)の調製>
48%水酸化ナトリウム水溶液の使用量を4.35gから2.81gに変更すること以外、製造例8と同様にして、吸水性樹脂(I−10)を得た。(I−10)の保水量は10g/gであった。また、正に荷電した官能基(B)の含有量は、1.5mmol/gであった。
<製造例18>
<吸水性樹脂(I−11)の調製>
吸水性樹脂を(H−1)から(G−1)に変更すること、N−ジエチルアミノエチルクロライド・塩酸塩の使用量を8.6gから0.342gに変更すること及び、48%水酸化ナトリウム水溶液の使用量を4.35gから0.175gに変更すること以外、製造例8と同様にして、吸水性樹脂(I−11)を得た。(I−11)の保水量は20g/gであった。
<実施例1>
<人工ポリペプチド(P1)の調製>
特表平3−502935号公報中の実施例記載の方法に準じて、Arg Gly Asp配列(x1)13個と(Gly Ala Gly Ala Gly Ser)9配列(21)12個とを有し、(x1)のN末端にGly Ala Ala Val Thr Gly配列(65)、(x1)のC末端にSer Pro Ala Ser Ala Ala Gly Tyr配列(78)を有し、これらが交互に化学結合してなる構造を有するMw約11万のペプチド「プロネクチンF」を製造し、人工ポリペプチド(P1)とした。
<人工ポリペプチド(P1)が結合した吸水性樹脂の調製>
吸水性樹脂(I−1)1gに、水溶性カルボジイミド(1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド・塩酸塩)を60mMの濃度で含む、0.02M,pH5.2のPBS溶液の15mLを加え、25℃で攪拌し、0.5時間反応させて、変性吸水性樹脂を得た。
次に、この変性吸水性樹脂に、人工ポリペプチド(P1)を2.4mg/mLの濃度で含む0.2M,pH7.2のPBS溶液の1mLを加え、25℃で攪拌し、2時間反応させた後、反応溶液を吸引除去し、PBSの40mLを添加、吸引除去する洗浄操作を5回行い、さらにイオン交換水の40mLを添加、吸引除去する洗浄操作を2回行い、引き続き、減圧乾燥機{40℃、0.1kPa以下}で、4時間減圧乾燥して細胞培養担体(人工ポリペプチド結合吸水性樹脂)(A−1)を得た。(A−1)の保水量は20g/gであった。
<実施例2〜11>
吸水性樹脂(I−1)を吸水性樹脂(I−2)〜(I−11)に変更したこと以外、実施例1と同様にして、細胞培養担体(A−2)〜(A−11)を得た。(A−2)〜(A−11)の保水量を表1に示した。
<比較例1>
製造例8で調製した吸水性樹脂(I−1)を比較用の細胞培養担体(HA−1)とした。(HA−1)の保水量を表1に示した。
<比較例2>
製造例1で調製した吸水性樹脂(H−1)を比較用の細胞培養担体(HA−2)とした。(HA−2)の保水量を表1に示した。
<比較例3>
吸水性樹脂(I−1)を吸水性樹脂(H−1)に変更したこと以外、実施例1と同様にして、細胞培養担体(HA−3)を得た。(HA−3)の保水量を表1に示した。
<比較例4>
非特許文献1に記載された「正に荷電した官能基を有するデキストランビーズ」{商品名Cytodex−1、アマシャム・バイオサイエンス社製}を比較用の細胞培養担体(HA−4)とした。この細胞培養担体の正に荷電した官能基(B)の含有量は、1.0mmol/gであった。(HA−4)の保水量を表1に示した。
<比較例5>
吸水性樹脂(HA−4)1gに、水溶性カルボジイミド(1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド・塩酸塩)を60mMの濃度で含む0.2M,pH5.2のPBS溶液の20mL、人工ポリペプチド(P1)を2.4mg/mLの濃度で含む0.2M,pH5.2のPBS溶液の1mLを加え、25℃で攪拌し、2時間反応させた後、反応溶液を吸引除去し、PBSの40mLを添加、吸引除去する洗浄操作を5回行い、さらにイオン交換水の40mLを添加、吸引除去する洗浄操作を2回行い、引き続き、減圧乾燥機{40℃、0.1kPa以下}で、4時間減圧乾燥して細胞培養担体(HA−5)を得た。(HA−5)の保水量を表1に示した。
<比較例6>
デキストランビーズ{商品名Sephadex G50 Medium、アマシャム・バイオサイエンス社製}を、目開きが53μmのふるい及び75μmのふるい(JIS Z8801−1:2000)により分級して、粒子径53〜75μmの粒子を得て、これを比較用の細胞培養担体(HA−6)とした。(HA−6)の保水量を表1に示した。
<比較例7>
吸水性樹脂(HA−4)を吸水性樹脂(HA−6)に変更したこと以外、比較例5と同様にして、細胞培養担体(HA−7)を得た。(HA−7)の保水量を表1に示した。
<HmLu細胞培養初期の細胞接着率・細胞増殖性評価>
実施例1〜9、11及び比較例1〜7で得られた細胞培養担体について、以下のようにして評価を行った。
評価試料{細胞培養用担体}を生理食塩水で膨潤させた後、150Gで90秒間遠心脱水し余剰水を取り除いて膨潤担体を調製した。
スピンナーフラスコに膨潤担体3gを投入し、生理食塩水を100mL/フラスコで加え、オートクレーブ滅菌(121℃、20分間)した後、生理食塩水をアスピレータで吸引除去し、培地(商品名:Minimum Essential Medium、インビトロジェン(株)製)に、血清(商品名:Fetal Bovine Serum、インビトロジェン(株)製)2%で含有させた培地を50mL/フラスコで添加し、1時間放置した。スピナーフラスコから培地を吸引除去し、再度、同じ培地を100mL/フラスコで添加し、スピンナーフラスコを37℃、二酸化炭素ガス濃度5容量%のCO2インキュベーターの中に2時間放置した後、予めプレ培養していたHmLu細胞を細胞濃度が20万個/mLになるように培地に播種した。引き続き、37℃、二酸化炭素ガス濃度5容量%のCO2インキュベーターの中で、30rpmの攪拌をしながら、3日間の培養を行った。
培養3時間後にサンプリングし、細胞培養初期の接着率を下記に記載の方法で測定した。
また、培養3日目にサンプリングし、細胞培養担体上の細胞状態を観察し、並びに培地中の単位体積当たりの細胞核数をクリスタルバイオレットを用いた細胞核計数法により計数し、培地中の細胞濃度(万個/mL)を測定し、結果を表1に示した。
<細胞培養初期の接着率の測定方法>
細胞培養初期の接着率は次のようにして測定される。培養開始3時間後の、細胞培養担体含有培養液0.5mLを取り、細胞培養担体含有培養液の上清液中の細胞数を赤血球計数板で計数する。細胞培養担体に付着した細胞をトリプシンで剥離し、赤血球計数板で計数する。上清液中の細胞数と細胞培養担体に付着した細胞数より、以下の式から算出する。

細胞接着率(%)={(細胞培養担体に付着した細胞数)/(細胞培養担体に付着した細胞数+上清液中の細胞数)}×100

非動物由来の蛋白質分解酵素{植物由来の蛋白質分解酵素(パパイン等)}、遺伝子組換えによる合成酵素(商品名:TrypLETM Select、インビトロジェン(株)製等)及び/又は動物由来の蛋白質分解酵素(トリプシンやコラゲナーゼ等)
<MDCK細胞の細胞培養初期の接着率・細胞増殖性評価>
実施例1についてはMDCK細胞での評価も併せて行った。すなわち、培地(商品名:Minimum Essential Medium、インビトロジェン(株)製)に、血清(商品名:Fetal Bovine Serum、インビトロジェン(株)製)2%で含有させた培地から、無血清培地(商品名:OPTI PRO−SFM、インビトロジェン(株)製)に変更すること及び、HmLu細胞からMDCK細胞に変更すること以外は前述の「HmLuの細胞培養初期の細胞接着率・細胞増殖性評価」と同様にして、細胞培養担体上の細胞状態を観察し、MDCK細胞の培養初期の接着率及び細胞濃度を測定した。
<VERO細胞の細胞培養初期の接着率・細胞増殖性評価>
実施例10については、以下のようにして評価を行った。
評価試料{細胞培養用担体}を生理食塩水で膨潤させた後、150Gで90秒間遠心脱水し余剰水を取り除いて膨潤担体を調製した。
スピンナーフラスコに膨潤担体3gを投入し、生理食塩水を100mL/フラスコで加え、オートクレーブ滅菌(121℃、20分間)した後、生理食塩水をアスピレータで吸引除去し、無血清培地(商品名:VP−SFM、インビトロジェン(株)製)に抗菌剤(商品名:PSA、カスケード社製)を0.2%で含有させた培地を50mL/フラスコで添加し、1時間放置した。スピナーフラスコから培地を吸引除去し、再度、同じ培地を100mL/フラスコで添加し、スピンナーフラスコを37℃、二酸化炭素ガス濃度5容量%のCO2インキュベーターの中に2時間放置した後、予めプレ培養していたVERO細胞(大日本住友製薬(株)製)を細胞濃度が20万個/mLになるように培地に播種した。引き続き、37℃、二酸化炭素ガス濃度5容量%のCO2インキュベーターの中で、30rpmの攪拌をしながら、7日間の培養を行った。なお、培養4日目、5日目及び6日目に培地の半分を新しい培地と交換した。
培養3時間後にサンプリングし、細胞培養初期の接着率をは前述の「HmLuの細胞培養初期の細胞接着率・細胞増殖性評価」に記載の方法で測定した。
培養7日目にサンプリングし、細胞培養担体上の細胞状態を観察し、並びに培地中の単位体積当たりの細胞核数をクリスタルバイオレットを用いた細胞核計数法により計数し、培地中の細胞濃度(万個/mL)を測定し、結果を表1に示した。
Figure 2010148486
デキストランを担体用樹脂とする場合には、比較例6((B)無し)と比較例4((B)有り)とを比較すると、正に荷電した官能基(B)を導入することにより、細胞培養初期の接着率が55%向上する。また、人工ポリペプチド(P)を導入したデキストランを担体用樹脂とする場合には、比較例7((B)無し)と比較例5((B)有り)とを比較すると、(B)を導入することにより、細胞培養初期の接着率が50%向上する。
そして、デキストランを担体用樹脂とする場合には、比較例4((P)無し)と比較例5((P)有り)とを比較すると、人工ポリペプチド(P)を導入することにより、細胞培養初期の接着率は向上しない。また、(B)を導入したデキストランを担体用樹脂とする場合には、比較例6((P)無し)と比較例7((P)有り)とを比較すると、人工ポリペプチド(P)を導入することにより、細胞培養初期の接着率は5%向上する。
そして、さらにデキストランを担体用樹脂とする場合には、比較例6((B)及び(P)両方が無し)と比較例5((B)及び(P)の両方があり)とを比較すると、(B)及び(P)の両方を導入することにより、55%向上する。
したがって、デキストランを担体用樹脂とする場合には、(P)及び(B)を単独で導入した場合でも、両方を導入した場合でも、細胞培養初期の接着率は最大で55%の向上であり、両方を導入する相乗効果は無いと考えられる。
一方、カルボキシル基を有する吸水性樹脂を担体とする場合には、比較例2((B)無し)と比較例1((B)有り)とを比較すると、正に荷電した官能基(B)を導入することにより、細胞培養初期の接着率が75%向上する。
そして、比較例2((P)無し)と比較例3((P)有り)とを比較すると、人工ポリペプチド(P)を導入することにより、細胞培養初期の接着率は5%向上する。
これらの結果から、カルボキシル基を有する吸水性樹脂を担体とする場合に(P)及び(B)を導入した際の細胞培養初期の接着率としてデキストランの結果を踏まえて予測できる値は、75%の向上であり、大きくても80%の向上である。
しかしながら、実施例1の結果から分かるように、カルボキシル基を有する吸水性樹脂を担体とする場合に(P)及び(B)を導入した際の細胞培養初期の接着率は、比較例2と比較すると、90%向上しており先の予測よりも大きな値となっている。これらから(P)及び(B)を導入することの相乗効果が存すると解される。
また、全ての比較例において、細胞濃度は10〜50万Cells/mLであるが、実施例において細胞濃度は40〜100万Cells/mLとなっている(培養する細胞がHmLu細胞の場合)。このことから、本発明の実施例は、細胞増殖性が高いことが分かる。
以上の結果から、本発明の細胞培養担体(実施例1〜11)は、細胞培養初期の細胞接着性及び細胞増殖性が格段に高くなること判明した。
本発明の細胞培養用担体は、無血清培養において優れた細胞増殖性を発揮することができ、またウイルス等の感染因子の混入の危険性がないため、細胞が関係する、研究開発、有用物質生産及び治療等に極めて有用である。
研究開発用としては、分化機能等の細胞機能評価用細胞の培養、動物実験(毒性試験、刺激性試験及び代謝機能試験等)の代替用細胞の培養、遺伝子や蛋白質導入用細胞の培養等に利用できる。
有用物質生産用としては、サイトカイン、血栓溶解剤、血液凝固因子製剤、ワクチン、ホルモン、抗生物質、抗体及び増殖因子等の生産用細胞の培養に利用できる。これらのうち、ワクチンの生産用細胞の培養に好適である。
治療用としては、皮膚、頭蓋骨、筋肉、皮膚組織、骨、軟骨、血管、神経、腱、靭帯、毛胞組織、粘膜組織、歯周組織、象牙質、骨髄、網膜、漿膜、胃腸管及び脂肪等の組織、並びに肺、肝、膵及び腎等の臓器の細胞培養に利用できる。

Claims (7)

  1. カルボキシル基を有する吸水性樹脂(A)を含んでなる細胞培養用担体であって、(A)が細胞接着性最小アミノ酸配列(X)を1分子中に少なくとも1個有する人工ポリペプチド(P)を含有し、(A)が正に荷電した官能基(B)を有する細胞培養用担体。
  2. 吸水性樹脂(A)がカルボキシル基を有するモノマーを重合して得られる架橋重合体である請求項1に記載の細胞培養用担体。
  3. 吸水性樹脂(A)が、カルボキシル基及びヒドロキシル基を有する吸水性樹脂(D)である請求項1又は2に記載の細胞培養担体。
  4. 吸水性樹脂(D)が、カルボキシル基を有する吸水性樹脂(A)とヒドロキシル基を有する化合物(E)との反応により得られる吸水性樹脂である請求項3に記載の細胞培養担体。
  5. 吸水性樹脂(D)が、カルボキシル基を有するモノマーとヒドロキシル基を有するモノマー(F)との共重合架橋体である請求項3に記載の細胞培養用担体。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の細胞培養用担体を用いて、細胞を培養する工程を含む有用物質の生産方法。
  7. 請求項1〜5のいずれかに記載の細胞培養用担体を用いて、細胞を培養する工程を含む組織又は臓器の生産方法。
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