以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
図1は、本発明の一実施形態に係る航走体監視システム7の構成を示す概略図である。
図1に示すように、航走体監視システム7は、少なくとも1つの基地局装置72と、複数の水上航走体8と、複数の水中航走体9と、目標位置決定装置1とを備える。
基地局装置72は、陸上または海上の母船上に設けられた、各水上航走体8と無線通信を行うことが可能な装置である。水上航走体8は、水上を航走することが可能な航走体(船)であり、水中航走体9の位置に基づいて自動で航走するよう構成される。換言すれば、水上航走体8は、水中航走体9を水上航走により追尾可能に構成される。また、水上航走体8は、基地局装置72との無線通信、および、水中航走体9と音響通信を行うことが可能であり、これによって、基地局装置72と水中航走体9との通信を中継することが可能に構成される。他方、水中航走体9は、水中を航走することが可能な航走体であり、例えば水中を調査させるためのミッション情報に従って水中を自動で航走する。また、水中航走体9は、水上航走体8と音響通信を行うことが可能に構成される。
図1に示す実施形態では、基地局装置72は、水中航走体9に水中を調査させるためのミッション情報を記憶している。このミッション情報は、基地局装置72から、水上航走体8を介して水中航走体9に通信されるようになっており、水中航走体9は受信したミッション情報に従って航走する。また、水上航走体8は、無人船であり、水中航走体9に対する音響通信を通して得られる状態情報に基づいて水中航走体9の状態を監視し、各水中航走体9の状態(監視結果)を基地局装置72に送信するようになっている。状態情報は、水中航走体8の異常の有無、進行方向(舵角など)、進行速度の少なくとも1つの情報を含んでも良い。また、水上航走体8の総数(M台)は、水中航走体9の総数(N台)より少ない(M<N)。ただし、本実施形態に本発明が限定されず、他の幾つかの実施形態ではM≧Nであっても良い。
ここで、航走体監視システム7において全ての水中航走体9を監視するには、複数の水中航走体9の各々の音響通信の可能な範囲(音響通信範囲)内に少なくとも1つの水上航走体8が位置する必要がある。換言すれば、水上航走体8は、音響通信が可能な水中航走体9の監視が可能である。よって、例えば、1つの水上航走体8が複数の水中航走体9を監視可能な状態では、その1つの水上航走体8の音響通信範囲内には、複数の水中航走体9が存在することとなる。
上述したような航走体監視システム7において、水上航走体8の目標位置決定装置1(以下、単に、目標位置決定装置1)は、監視対象として予め定められるなどした複数の水中航走体9を追尾可能な上述した水上航走体8の航走の目標位置Ptを決定するよう構成される。この監視対象となる複数の水中航走体9は、各水中航走体9のミッション情報などから得られる各々の航走する範囲に基づいて予め定められても良いし、水上航走体8の音響通信範囲内を水中航走体9のものよりも広くするなどして、各水上航走体8の目標位置Ptを決定する際に通信可能な複数の水中航走体9としても良い。
以下、上記の目標位置決定装置1について、図2~図15を用いて説明する。
図2は、本発明の一実施形態に係る水上航走体8の構成を示す概略ブロック図である。図3は、本発明の一実施形態に係る1台の水上航走体8が5台の水中航走体9を監視する場合において、1回目の目標位置Ptの決定時の状況を説明するための図である。図4は、図3で示す1回目の目標位置Ptに水上航走体8が移動後に次の目標位置Pt(2回目)の決定時の状況を説明するための図である。また、図5は、図4で示す2回目の目標位置Ptに水上航走体8が移動後に次の目標位置Pt(3回目)の決定時の状況を説明するための図である。
目標位置決定装置1は、図2に示すように、選定部2と、水中位置取得部3と、目標位置決定部4と、指示部5と、を備える。目標位置決定装置1が備える上述した機能部について、監視対象の水中航走体9が合計で5台の水中航走体9(9a~9e)である場合を例に説明する。
なお、以下の説明では、目標位置決定装置1は、各水上航走体8に設置(搭載)されることにより、設置された水上航走体8の目標位置Pt(以下、単に、目標位置Pt)を決定するものとする。ただし、他の幾つかの実施形態では、目標位置決定装置1は、基地局装置72と通信可能な陸上または海上(船など)に設置されても良いし、水中航走体9に設置されても良い。目標位置決定装置1は、複数の水上航走体8、および、これらと音響通信が可能な複数の水中航走体9の情報を収集し、これらの情報に基づいて、複数の水上航走体8の各々の目標位置Ptを決定しても良い。
また、目標位置決定装置1は、コンピュータで構成されていても良く、図示しないCPU(プロセッサ)や、ROMやRAMといったメモリや、外部記憶装置などとなる記憶部12を備えている。そして、メモリ(主記憶装置)にロードされたプログラム(水上目標位置決定プログラム)の命令に従ってCPUが動作(データの演算など)することで、上記の各機能部を実現する。換言すれば、上記のプログラムは、コンピュータに後述する各機能部を実現させるためのソフトウェアであり、コンピュータによる読み込みが可能な記憶媒体に記憶されても良い。
選定部2は、監視対象として定められた複数の水中航走体9のうち、目標位置Ptの算出に用いる1以上の水中航走体9(以下、基準水中航走体9t)を選定するよう構成された機能部である。つまり、選定部2は、監視対象として定められた複数の水中航走体9を監視するにあたって、監視対象の複数の水中航走体9の少なくとも一部を基準水中航走体9tとして選定可能に構成される。詳細については後述する。図2に示す実施形態では、監視対象の複数の水中航走体9の情報(識別情報など)や、そのうちの基準水中個走体9tがどれであるかを示す情報を含む監視対象情報Gが記憶部12に記憶されており、選定部2は、この監視対象情報Gの参照や更新を行うようになっている。
水中位置取得部3は、少なくとも、上記の選定部2によって選定された基準水中航走体9tを構成する各水中航走体9の位置を示す位置情報Pを取得するよう構成された機能部である。つまり、水中位置取得部3は、基準水中航走体9tに含まれる各水中個走体9の位置情報Pを取得すれば良く、監視対象の全ての水中航走体9(9a~9e)の各々の位置情報Pを取得しても良い。具体的には、図2に示すように、水上航走体8は、水中航走体9との音響通信を実現するための音響通信装置81を備えており、水中位置取得部3は、この音響通信装置81に接続されることで、音響通信装置81による音響通信により得られる情報に基づいて、各水中航走体9の位置情報Pを算出する。
この水中航走体9の位置情報Pは、予め定めた所定の位置を原点とし、この原点からの位置を示す情報である。この原点は、本実施形態のように、目標位置決定装置1が目標位置Ptを決定しようとする対象の水上航走体8のその時々の位置(現在位置)であっても良い。この場合には、水上航走体8毎に座標系が設定されることになる。あるいは、上記の原点は、例えば航走体監視システム7が備える複数の航走体(8、9)の情報を取得することにより監視する陸上の監視局(不図示)や、その監視局の監視機能が搭載されたマスタとなる水上航走体8(不図示。マスタ船)、基地局装置72の位置とされるなど、目標位置Ptの決定対象となる水上航走体8の現在位置とは異なる位置であっても良い。あるいは、位置情報Pは、緯度および経度で特定される位置(絶対位置)であっても良い。
原点がいずれであるにせよ、水中航走体9の位置情報Pは、音響通信を行うことにより得られる、水上航走体8と水中航走体9との相対位置に基づいて得られる。この相対位置は、音響通信の送信側が、音響信号を発してからその受信側からの応答信号を受信するまでの時間と、応答信号の到来方向とに基づいて、受信側の相対位置が分かる。または、送信側は、自身が発した音響信号が受信側に衝突することで生じる反射波に基づいても、受信側の相対位置が分かる。この際、水上航走体8と水中航走体9との相対位置が分かれば良いので、音響通信の送信側は、水上航走体8であっても良いし、水中航走体9であっても良い。一方が取得した相対位置は、他方に音響通信により通信することも可能である。
そして、水上航走体8と水中航走体9との相対位置を得れば、上記の位置情報Pの原点が、各水上航走体8ではない場合(監視局やマスタ船)においても、原点からの水中航走体9の位置が求められる。例えば、基地局装置72などを介した監視局等と水上航走体8との無線通信や、GPS情報などにより、水上航走体8の現在位置を得る。水上航走体8の現在位置が得られれば、原点からの水上航走体8の現在位置と、水上航走体8と水中航走体9との音響通信により得られる相対位置とから、原点から水中航走体9の位置を算出することが可能となる。原点が絶対位置の場合にも、同様な手法や、水中航走体9がGPS機能を用いて絶対位置を得ると共に音響通信により水中航走体9に絶対位置を通信するなどすれば、水中航走体9の位置情報Pが得られる。
目標位置決定部4は、上記の水中位置取得部3によって取得された基準水中航走体8の位置情報Pに基づいて目標位置Ptを決定するよう構成された機能部である。本実施形態では、位置情報Pに基づいて算出可能なスコアS、またはこのスコアSおよび水中航走体9毎に設定された追尾優先度Kに基づいて目標位置Ptを決定するが、この詳細については後述する。ただし、本実施形態に本発明は限定されず、目標位置決定部4は何らかの手法により目標位置Ptを決定すれば良い。
指示部5は、上記の目標位置決定部4によって決定された目標位置Ptを、水上航走体8の目標位置Ptへの航走を制御する航走制御装置82に出力するよう構成された機能部である。この航走制御装置82は、水上航走体8が備える操舵装置およびスクリューなどとなる航走装置(不図示)を制御することによって水上航走体8の航走を制御する装置である。指示部5は、航走制御装置82に接続されており、決定した目標位置Ptを航走制御装置82に入力する。これによって、航走制御装置82が、目標位置Ptに基づいて航走装置(不図示)を制御(操作)することにより、水上航走体8は目標位置Ptに向けて航走するようになる。
その後、水上航走体8が目標位置Ptに到着すると、水上航走体8は、目標位置Ptおいて通信可能な水中航走体9の全てと音響通信を実行し、水中航走体8において得られた情報を収集する。この情報収集の完了後には、上記と同様の方法による次の目標位置Ptの決定および移動を行う。これを繰り返すことで、水上航走体8は監視対象の水中航走体9の追尾を継続する。
このような構成を備える目標位置決定装置1において、上述した選定部2は、目標位置決定部4によって決定された目標位置Ptに移動した水上航走体8との通信が完了したと判定される水中航走体9を基準水中航走体9tから除外した残りの水中航走体9を、次回の目標位置Ptを決定するための基準水中航走体9tとして選定するように構成される。これによって、目標位置決定装置1は、水上航走体8の移動完了後に次の目標位置Ptを決定する際には、現在位置(目標位置Pt)において音響通信が正常に完了したと判定される水中航走体8の位置情報Pを考慮しないようにする。
なお、水上航走体8と水中航走体9との通信が完了したか否かは、後述する通信完了通知Ntを規定時間(タイムアウト時間To)内に受信したか否かで判断しても良い。あるいは、通信完了通知Ntを用いない場合には、目標位置Ptに移動完了後または目標位置Ptにおける通信開始後などから予め定めた一定期間の経過後に通信が完了したとみなしても良い。
この結果、目標位置Ptの決定処理の開始前に設定された初期の基準水中航走体9tを構成する複数の水中航走体8が、目標位置Ptの決定の回数を追うごとに目標位置Ptの決定時の考慮対象から順次減らされる。これによって、基準水中航走体9tに含まれる水中航走体9との通信が優先して可能となるように目標位置Ptが決定されることになり、基準水中航走体9tとされた複数の水上航走体8と順番に通信可能となるように目標位置Ptが決定される。
これについて、図3~図5を用いて具体的に説明する。
なお、図3~図5において、各水中航走体9を中心に描かれた円はセグメントSegであり、各水中航走体9は、半径が最大の円の内側の範囲に水上航走体8が存在する場合に、水上航走体8との通信が可能であることを示している。また、図3~図5の各々で示される目標位置Ptは、後述する総合スコアStに基づいて決定されたものであるが、ここでは、任意の規定ロジックにより目標位置Ptが決定されたものであれば良い。
図3~図5において、選定部2は、目標位置Ptの決定処理の開始前(初期時)には、図3に示すように、監視対象の全てとなる5台の水中航走体9(9a~9e)を基準水中航走体9tに選定する。そして、目標位置決定部4は、この選定された5台の水中航走体9の各々の位置情報Pなどを用いて、規定ロジックにより1回目の目標位置Pt(1)を決定する。この結果、図3では、第3水中航走体9cおよび第5水中航走体9eの両方との通信がそれぞれ可能な重複領域R1内の位置が目標位置Ptとして決定されており、航走制御装置82の制御の下で、この1回目の目標位置Pt(1)に水上航走体8が移動される。
そして、図4に示すように水上航走体8が1回目の目標位置Pt(1)に移動した後、第3水中航走体9cおよび第5水中航走体9eとの通信が完了したとする。このため、選定部2は、この2台の水中航走体9(9c、9e)を基準水中航走体9tから除外する。その結果、基準水中航走体9tは、図4の実線で示すような、初期(図3参照)において監視対象に選定されていた5台の水中航走体9tのうちの残りの3台の水中航走体9(第1水中航走体9a、第2水中航走体9bおよび第4水中航走体9d)となる。よって、目標位置決定部4は、基準水中航走体9tを構成するこの3台の水中航走体9(9a、9b、9d)の位置情報Pに基づいて、2回目の目標位置Pt(2)を決定する。その結果、図4では、第1水中航走体9aおよび第2水中航走体9bの両方との通信がそれぞれ可能な重複領域R2内の位置が目標位置Ptとして決定されており、航走制御装置82の制御の下で、この2回目の目標位置Pt(2)に水上航走体8が移動される。
そして、図5に示すように水上航走体8が2回目の目標位置Pt(2)に移動した後、第1水中航走体9aおよび第2水中航走体9bとの通信が完了したとする。このため、選定部2は、この2台の水中航走体9(9a、9b)を基準水中航走体9tから除外する。その結果、基準水中航走体9tは、図5の実線で示すような、初期(図3参照)において監視対象に選定されていた5台の水中航走体9tのうちの残りの1台の水中航走体9(第4水中航走体9d)のみとなる。よって、目標位置決定部4は、この1台の水中航走体9(9d)の位置情報Pに基づいて、3回目の目標位置Pt(2)を決定する。その結果、図5では、第4水中航走体9dの真上の位置が目標位置Ptとして決定されており、航走制御装置82の制御の下で、この3回目の目標位置Pt(3)に水上航走体8が移動される。
その後は、水上航走体8が3回目の目標位置Pt(3)に移動するが、この移動後に第4水中航走体9dとの通信が完了した場合には、選定部2は、この1台の水中航走体9(9d)を基準水中航走体9tから除外する。これによって、基準水中航走体9tに含まれる水中航走体9はなくなる。このように、基準水中航走体9tに残る水中航走体9がない場合には、選定部2は、既に通信が完了と判断された監視対象の全ての水中航走体9の少なくとも一部を基準水中航走体9tとして再設定する。図3~図5に示す実施形態では、選定部2は、監視対象の5台の水中航走体9の全てを基準水中航走体9tに再設定する。これによって、上記の処理を繰返し実行(ループ)することができ、監視対象の複数の水中航走体9の水上航走体8による追尾を継続して行うことが可能となる。
ただし、本実施形態に本発明は限定されない。他の幾つかの実施形態では、監視対象の5台の水中航走体9の一部、あるいは、この一部に、監視対象として設定された5台の水中航走体9以外の水中航走体9を加えたものを、基準水中航走体9tに再設定しても良い。つまり、再設定時において、再設定前のループで追尾の対象としていた複数の水中航走体9(図3~図5では9a~9e)と、再設定後の追尾の対象としていた複数の水中航走体9とは同じであっても良いし、その少なくとも一部において異なっていても良い。水中航走体の数についても、再設定の前後で同じであっても良いし、異なっても良い。
図2に示す実施形態では、選定部2および水中位置取得部3が目標位置決定部4にそれぞれ接続されている。これにより、目標位置決定部4には、選定部2によって選定された基準水中航走体9tに含まれる水中航走体9を示す識別情報、および水中位置取得部3によって取得された各水中航走体9の位置情報Pの情報が入力されるようになっている。また、目標位置決定部4は指示部5に接続されており、目標位置決定部4によって決定された目標位置Ptが指示部5に入力される。この指示部5は、航走制御装置82に接続されており、航走制御装置82は、指示部5から出力された目標位置Ptを受信すると、目標位置Ptに水上航走体8を移動させるようになっている。
また、図2に示す実施形態では、目標位置決定装置1は、水上航走体8と水中航走体9との通信の完了を通知する通信完了通知Ntを受信する通知受信部22をさらに備えており、選定部2は、この通信完了通知Ntに基づいて、情報収集のための通信が完了された水中航走体9を認識するようになっている。この通信完了通知Ntは、例えば、水上航走体8が備える音響通信装置81が水中航走体9との通信をエラーなく完了できたことを知らせるために出力するようになっており、通知受信部22は音響通信装置81に接続されることで、通信完了通知Ntを受信可能に構成されている。
上記の構成によれば、事前に定められるなどした監視対象の複数の水中航走体9の全てと順番に通信するように、水上航走体8の目標位置Ptを順番に決定する。すなわち、監視対象の全ての水中航走体と同時に通信可能な水上航走体の位置がないような場合には、まずは、この複数の水中航走体9のうちの一部と通信可能な位置を水中航走体8の目標位置Ptとする。そして、この目標位置Ptで通信が完了した水中航走体9以外の水中航走体9を対象に次の目標位置Ptを決定する。これを繰り返すことで、監視対象の全ての水中航走体9と順番に通信を行っていくように水上航走体9の目標位置を順次決定していく。
これによって、複数の水中航走体9を、より少ない複数の水上航走体8で監視しようとした場合において、水中航走体9を見失う(ロストする)ことなく、複数の水中航走体9の全てと確実に通信できるように水上航走体8を航走させることができる。また、後述するスコアSに基づくなどして、可能な限り2以上の水中航走体9と通信可能な位置を目標位置とすることで、効率良く水中航走体9を追尾(監視)することができる。
上述した実施形態において、幾つかの実施形態では、選定部2は、水上航走体8が目標位置Ptに移動するまでの間に通信完了通知Ntを受信した場合に、通信完了通知Ntに基づいて認識した水中航走体9を基準水中航走体9tから除外した残りの水中航走体9を次回の目標位置Ptを決定するための基準水中航走体9tとして選定しても良い。
例えば、図3において、水上航走体8は、第2水中航走体9のセグメント内(SegB)に位置しているので、この位置(現在位置)や、第2水中航走体9bのセグメント内にいる間は、第2水中航走体9bとの音響通信が可能である。また、水上航走体8は、現在位置から1回目の目標位置Pt(1)に移動する間に、音響通信が可能な水中航走体9が存在し得る。例えば、水上航走体8が直線的に1回目の目標位置Pt(1)に移動する場合には、第2水中航走体9bのセグメント内、第2水中航走体9bおよび第3水中航走体9cの各々のセグメントが重なる領域、第3水中航走体9cのセグメント内、第3水中航走体9cおよび第5水中航走体9dの各々のセグメントが重なる領域を順番に通過する。つまり、水上航走体8は、目標位置決定部4が目標位置Ptを決定している間や、1回目の目標位置Pt(1)へ移動中にも、第2水中航走体9b、第3水中航走体9cおよび第5水中航走体9dと音響通信が可能なタイミングが存在する。
このように、目標位置Ptへの移動が完了するまでに音響通信が可能となった水中航走体9との通信が完了した場合には、選定部2は、基準水中航走体9tから通信が完了した水中航走体9を除外する。幾つかの実施形態では、選定部2は、通信完了通知Ntを受信すると、即座あるいは所定期間後に、既に決定されている現在の目標位置Ptへの移動を完了することなく、更新された基準水中航走体9tを対象に目標位置Ptの決定処理を実行しても良い。他の幾つかの実施形態では、選定部2は、通信完了通知Ntを受信した場合であっても、既に決定されている現在の目標位置Ptへの移動は続けても良く、その際の目標位置Ptへの移動後に、通信完了通知Ntで示される水中航走体9を、到達した目標位置Ptで通信が完了した水中航走体9と共に、基準水中航走体9tから除外しても良い。
上記の構成によれば、決定された目標位置Ptまで水上航走体8が移動している間に通信(音響通信)が完了した水上航走体9が存在した場合には、その通信が完了した水上航走体9を基準水中航走体9tから除外する。これによって、監視対象の複数の水中航走体9の通信が一巡するまでの追尾時間の短縮化を図ることができ、水中航走体9を追尾(監視)の効率化を図ることができる。
図6は、本発明の一実施形態に係る目標位置決定装置1が備える探索処理部6を示す図である。なお、図6には、図2から説明に特に関連する箇所のみを抜き出して、探索処理部6と共に示している。
また、幾つかの実施形態では、図6に示すように、目標位置決定装置1は、目標位置決定部4によって決定された目標位置Ptにおいて、通信可能と予測されていた水中航走体9のうち通信が完了できない通信未完了の水中航走体9がある場合に、通信未完了の水中航走体9の探索処理を実行する探索処理部6を、さらに備えても良い。この探索処理は、例えば水上航走体8を目標位置Ptの付近で航走させることにより、水中航走体9を探す処理である。これは、後述するように、水中航走体9との音響通信が可能な範囲は、水中航走体9の深度などにも依存し、水中航走体9の真上に水上航走体8が近づくほど通信がしやすくなることによる。
例えば、図3の目標位置Pt(1)で通信可能と予測されている水中航走体9は、第3水中航走体9cおよび第5水中航走体9eである。図4の目標位置Pt(2)で通信可能と予測されている水中航走体9は、第1水中航走体9aおよび第2水中航走体9bである。また、図5の目標位置Pt(1)で通信可能と予測されている水中航走体9は、第4水中航走体9dである。
図6に示す実施形態では、探索処理部6は、航走制御装置82に接続されており、目標位置Ptへの移動完了を通知するための移動完了通知Nmを受信可能に構成されている。また、探索処理部6は、通知受信部22に接続されており、通信完了通知Ntを受信可能に構成されている。そして、探索処理部6は、移動完了通知Nmの受信後から規定時間をカウントし、所定のタイムアウト時間Toを経過しても通信完了通知Ntを受信しない場合には、探索処理の実行を開始するようになっている。
上記の構成によれば、水上航走体8が、目標位置Ptでの通信が予定(期待)されていた水中航走体9との通信が完了できない場合には、その水上航走体8の探索処理を実行する。これによって、水中航走体9を見失うことがないように図ることができる。
(目標位置決定部4の詳細)
次に、上述した目標位置決定部4について、図7~図12を用いて詳細に説明する。
図7は、本発明の一実施形態に係る目標位置決定部4の詳細な構成を示すブロック図である。図8は、本発明の一実施形態に係る各水中航走体9の位置(水上位置)を頂点とした水中のセグメント分けを示す図である。図9は、本発明の一実施形態に係る水上航走体8の候補位置Pcを頂点とした水中のセグメント分けを示す図である。図10は、本発明の一実施形態に係る移動距離に基づいて決定された目標位置Ptを示す図であり、目標位置Ptは総合スコアStが最大となる領域内にある。また、図11は、本発明の一実施形態に係る移動距離に基づいて決定された目標位置Ptを示す図であり、目標位置Ptは総合スコアStが最大の位置で通信が見込まれる水中航走体9の全てと通信可能となる重複領域R4内にある。
図7に示すように、目標位置決定部4は、スコア算出部41と、追尾優先度取得部42と、決定処理部43と、を備える。目標位置決定部4が備える上述した機能部について、図7を用いてそれぞれ説明する。
スコア算出部41は、基準水中航走体9tに選定された水中航走体9毎に、既に説明した水中位置取得部3によって取得された位置情報Pに基づいて、それぞれ、1以上の水中航走体9と通信可能な水上航走体8の候補位置Pcにおける水上航走体8と水中航走体9との通信のしやすさを示すスコアSを算出するよう構成された機能部である。つまり、決定しようとする水上航走体8の目標位置Ptの候補となる位置となる少なくとも1つの候補位置Pcがまずは特定される。そして、スコア算出部41は、特定された候補位置Pcに水上航走体8が位置したと仮定し、その候補位置Pc上の水上航走体8が通信可能な1以上の水中航走体9毎に、スコアSを算出する。
例えば、候補位置Pcは、目標位置Ptを決定する時間間隔またはその時間間隔よりも短いような一定時間以内において水中航走体9の航走(到達)が可能な範囲内や、その一定時間以内において水上航走体8が到達できる範囲内にあるいずれかの位置であっても良い。水上航走体8がその現在位置において複数の水中航走体9を検知(認識)している場合には、候補位置Pcは、それら検知されている複数の水中航走体9と継続して通信可能となる位置であっても良い。なお、水上航走体8が水中航走体9を追尾することから、水平方向における距離L(以下、水平距離)でみると、水上航走体8の到達可能範囲の方が、水中航走体9の到達可能範囲よりも広い。
また、スコア算出部41は、次に説明するように、水上航走体8が候補位置Pcに位置した場合の各水中航走体9と通信のしやすさ(スコアS)を算出しても良い。すなわち、スコア算出部41は、図8~図9に示すような、通信のしやすさで水中をレベル分けするための複数のセグメントSegで仮想的に水中を分割すると共に、各セグメントSegに通信のしやすさに応じた固有のスコアS(以下、固有スコアSs)を設定する。そして、スコア算出部41は、設定された固有スコアSsに基づいて、各水中航走体9のスコアSを算出する。
具体的には、幾つかの実施形態では、スコア算出部41は、図8に示すような、水中航走体9毎に、当該水中航走体9を頂点とした、異なる頂角を有し、上方(重力方向における上方向)に向かって広がる複数の円錐状の境界で区切られた複数のセグメントSegを演算し、これらのセグメントSegのうち水上航走体8の位置を含むセグメントSegを特定し、水中航走体9のスコアSとして算出する。他の幾つかの実施形態では、スコア算出部41は、図8に示すように、水上航走体8を頂点とした、異なる頂角を有し、下方(重力方向における下方向)へ向かって広がる複数の円錐状の境界で区切られた複数のセグメントSegを演算し、水中航走体9毎に、当該水中航走体9の位置を含むセグメントSegを特定し、水中航走体9のスコアSとして算出する。
すなわち、図8に示す実施形態では、上記の複数のセグメントSegの各々は、水中航走体9の位置を頂点とした異なる頂角を有すると共に、水上航走体8が発信した音響通信時の音響信号に対する水中航走体9からの応答信号など、水中航走体9からの音響信号の発信方向を回転軸とする2つの円錐状の境界で区切られる領域であり、セグメントSegの境界は上方に向かって広がる。
図9に示す実施形態では、上記の複数のセグメントSegの各々は、水上航走体8の候補位置Pcを頂点とした異なる頂角を有すると共に、水上航走体8が音響通信時に発信する音響信号の発信方向を回転軸とする2つの円錐状の境界で区切られる領域であり、各セグメントSegの境界は下方に向かって広がる。
なお、上記の頂角は、回転軸を通る平面で円錐を切断した時の断面に表れる二等辺三角形の頂角をいう。このように、各セグメントSegを円錐状の形状としたのは、音響通信の音響信号が指向性を有し、通信範囲が発信方向を中心とした円錐(音響コーン)状に広がるためである。
また、上記の各セグメントSegには、回転軸の中心に近いセグメントSegほど大きい値に設定される固有スコアSsが割り振られる。換言すれば、各セグメントSegの固有スコアSsは、セグメントSegの外側を区切る境界の頂角が小さいほど大きい値に設定される(図8~図9参照)。また、水中航走体9を頂点とした各セグメントがカバーする水面上の面積は、音響コーンの頂角が同じであれば、水中航走体9の深度が深いほど大きくなる。よって、水中航走体9から見た水上航走体8の水平位置が変わらないとした場合には、水中航走体8の深度が深いほど、水上航走体8はより高い固有スコアSsに入るようになる。同様に、水上航走体8を頂点とした各セグメントがカバーする水中の同一平面における面積は、音響コーンの頂角が同じであれば、水中航走体9の深度が深いほど大きくなるので、水上航走体8から見た水中航走体9の水平位置が変わらないとした場合には、水中航走体8の深度が深いほど、水中航走体8はより高い固有スコアSsに入るようになる。したがって、スコアSは、水中航走体9の深度が深いほど高く、かつ水中航走体9と水上航走体8との水平距離が近いほど高くなる。
そして、各水中航走体9の位置を頂点としたセグメント分けの場合(図8)には、スコア算出部41は、水上航走体8の候補位置Pcが各水中航走体9の音響コーンのどのセグメントSegに位置するかによって、各水中航走体9(9a~9c)のスコアSを算出する。すなわち、各水中航走体9の音響コーンにおいて候補位置Pcが位置するセグメントSegの固有スコアSsを、それぞれ、各水中航走体9のスコアSとする。他方、図9に示すような、水上航走体8の候補位置Pcを頂点としたセグメント分けの場合(図9)には、スコア算出部41は、各水中航走体9が位置するセグメントSegに設定された固有スコアSsを、それぞれ、各水中航走体9のスコアSとする。
図8~図9(後述する図12A~図13Bでも同様)の例示では、各セグメントSegの固有スコアSsは、外側を区切る境界の頂角が最も小さいセグメントSegAで7、その次に頂角が小さいセグメントSegBのスコアで5、その次に頂角が小さい(図8~図9では頂角が最も大きい)セグメントSegCで3となっている。よって、図8の例では、候補位置Pcは、第1水中航走体9aの音響コーンではSegBに位置し、第2水中航走体9bの音響コーンではSegCに位置し、水中航走体9cの音響コーンではSegBに位置するので、スコア算出部41は、第1水中航走体9a~9cの各々のスコアSを5、3、5と算出する。図9の例では、候補位置Pcに位置する水中航走体9の音響コーンにおいて、第1水中航走体9aはSegBに位置し、第2水中航走体9bはSegCに位置し、第3水中航走体9cはSegBに位置するので、スコア算出部41は、第1水中航走体9a~9cの各々のスコアSを5、3、5と算出する。
追尾優先度取得部42は、複数の水中航走体9の各々について、水上航走体8による各水中航走体9の追尾優先度Kを取得するよう構成された機能部である。追尾優先度Kは、各水上航走体8が、複数の水中航走体9のどれを優先して追尾するかを定める指標(重み付け値)である。よって、任意の水上航走体8の目標位置Ptを決定するために取得する追尾優先度Kの数は、その任意の水上航走体8と音響通信が可能な水中航走体9の数と同数となる。この際、任意の水上航走体8から見た(任意の水上航走体8を基準とした)複数の水中航走体9の各々の追尾優先度Kは、それぞれ異なる値としても良い。同一の値となると複数の水中航走体9を同等に監視する結果になるためである。
すなわち、1つの水中航走体9を監視するためには、音響通信が可能な水上航走体8が1つだけ存在すれば足りる。このため、追尾優先度Kによって、各水上航走体8が追尾する複数の水中航走体9間に追尾するにあたっての優先度を持たせるようにすれば、各水上航走体8は、複数の水中航走体9を追尾優先度Kに応じて追尾させることが可能となる。このため、後述するように水上航走体8の目標位置Ptを決定するのに際して追尾優先度Kを用いれば、その目標位置Ptは、優先度が相対的に高い水中航走体9の方をより確実に監視しつつ、優先度が相対的に低い他の水中航走体9を同時に監視できるような位置とすることが可能となる。
例えば、追尾優先度Kは、ミッションの開始前など、事前に管理者などが任意に設定しても良い。この場合には、追尾優先度Kは、ミッションの開始後に変更できないようにされても良いし、変更できるようにされても良い。または、追尾優先度Kは、例えば、水上航走体8と水中航走体9との間の距離Lなど、状況に応じて変化する指標に基づいて決定されても良い。この場合については後述する。なお、1つの水上航走体8が複数の水中航走体9と音響通信が可能な場合であっても、そのうちの少なくとも1つの水中航走体9の追尾優先度Kが0であっても良い。追尾優先度Kが0とされた水中航走体9は、目標位置Ptの決定ロジックにおいて考慮されないことになる。
決定処理部43は、上述した候補位置Pc毎に、候補位置Pcについて水中航走体9毎に算出されたスコアS、および水中航走体9毎に取得された追尾優先度Kに基づいて、目標位置Ptを決定するよう構成された機能部である。幾つかの実施形態では、図7に示すように、決定処理部43は、複数の候補位置Pcについて、水中航走体9毎のスコアSおよび水中航走体9毎の追尾優先度Kに基づいて、候補位置Pc毎に総合スコアStを算出するよう構成された機能部である総合スコア算出部43aと、総合スコアStに基づいて、目標位置Ptを決定するよう構成された機能部である決定部43bと、を有する。図7に示す実施形態では、総合スコア算出部43aは、目標位置Ptの決定対象の水上航走体8と通信可能な複数の水中航走体9の各々について、それぞれ、水中航走体9毎の追尾優先度K×固有スコアSs(以下、補正スコア)を算出し、各水中航走体9のセグメント同士が重なる場合には補正スコアを合計することにより総合スコアStを算出するようになっている。また、決定部43bは、複数の候補位置Pcのうち、総合スコアStが最大となる候補位置Pcを目標位置Ptとするようになっている。
この際、最大の総合スコアStを有する候補位置Pcが複数あった場合には、決定処理部43は、例えば距離が最大、最小、あるいは最大と最小の中間付近となる候補位置Pcなど、そのうちの1つの候補位置Pcを目標位置Ptとしても良いし、その複数の候補位置Pcで定まる領域の重心(中心)となる位置を、目標位置Ptとしても良い。なお、既に説明した図3~図5では、その複数の候補位置Pcで定まる重複領域(R1~R3)の重心(中心)となる位置を目標位置Ptとしている。
他の幾つかの実施形態では、図10に示すように、決定部43bは、最大の総合スコアStを有する候補位置Pcが複数あった場合など、スコアS、あるいはスコアSおよび追尾優先度Kに基づいて目標位置Ptに決定可能な複数の候補位置Pcがある場合に、この複数の候補位置Pcのうち、水上航走体9の目標位置Ptの決定時の位置との距離(移動距離)が最も短い候補位置Pcを目標位置Ptとして決定しても良い。図10に示す実施形態では、第3水中航走体9cのSegCと、第5水中航走体9eのSegBとが重なる重複領域R1内における全ての位置で総合スコアStが最大となっている。よって、この領域F1内のいずれの位置も目標位置Ptに決定可能であるが、この重複領域R1内における、移動前の水上航走体8から最も近い位置が目標位置Ptとされている。これによって、水上航走体8が目標位置Ptへ移動する距離が最大限短くなるように図ることが可能となる。
他の幾つかの実施形態では、図11に示すように、決定部43bは、最大の総合スコアStを有する候補位置Pcが複数あった場合など、スコアS、あるいはスコアSおよび追尾優先度Kに基づいて目標位置Ptに決定可能な候補位置Pcにおいて通信可能と見込まれる水中航走体9が2以上ある場合に、該2以上の水上航走体9の全てと通信可能な領域な領域(図11のR4)を判別すると共に、判別した領域において目標位置Ptの決定時の位置との距離(移動距離)が最も短い候補位置Pcを目標位置Ptとして決定する。図11に示す実施形態では、総合スコアStが最大となる重複領域R1内では、水上航走体8は、第3水中航走体9cおよび第5水中航走体9eの2台との音響通信が可能であると見込まれる。そして、この2台の水中航走体9(9c、9e)の各々との音響通信は、各水中航走体9との音響通信が可能な最大限の範囲同士が重なる領域内なので、第3水中航走体9cのSegBおよびSegCと重なる第5水中航走体9eのSegCと、第3水中航走体9cのSegCと重なる第5水中航走体9eのSegBとを合わせた重複領域R4である。よって、この重複領域R4において、移動前の水上航走体8から最も近い位置が目標位置Ptとされている。これによって、総合スコアSt等が最も高い位置まで移動しなくても、より近い位置において、スコアS等が最も高い位置において通信可能となるはずの全ての水中航走体9と通信することができ、水上航走体8が目標位置Ptへ移動する距離が最大限短くなるように図ることができる。
このように、目標位置決定部4は、スコアS(通信のしやすさ)のみならず、スコアSおよび追尾優先度Kに基づいて水上航走体8の目標位置Ptを決定する。これは、スコアSのみに基づいて水上航走体8の目標位置Ptをそれぞれ決定すると、複数の水上航走体8の目標位置Ptが同じになる場合があるが(図12C参照)、追尾優先度Kをも考慮することにより、各水上航走体8の目標位置Ptを異ならせることが可能である為である(図12A~図12B参照)。
上述したように、各水中航走体9に定められる追尾優先度Kは水上航走体8毎に異なるので、固有スコアSsに追尾優先度Kを乗算して得られる補正スコア(K×Ss)は水上航走体8毎に異なる。また、各水上航走体8からすると、補正スコアを算出することは、各セグメントSegには、固有スコアSsが追尾優先度Kで補正された補正スコアが設定されているのと同義である(後述する図12A~図12B参照)。よって、ある候補位置PcのスコアSは、追尾優先度Kを用いなければ固有スコアSsの値となるが、追尾優先度Kを用いる場合には、水上航走体8毎に異なる値となる補正スコアの値となる。よって、総合スコアStの値が水上航走体8毎に異なってくるので、目標位置Ptも水上航走体8毎に異なるようになる。
これについて、図12A~図12Cを用いてより具体的に説明する。図12Aは、本発明の一実施形態に係る第1水上航走体8aから見た追尾優先度K1mに基づいて得られる各セグメントのスコアS(補正スコア)および総合スコアStを例示する図である。図12Bは、本発明の一実施形態に係る第2水上航走体8bから見た追尾優先度K2mに基づいて得られる各セグメントのスコアS(補正スコア)および総合スコアStを例示する図である。また、図12Cは、追尾優先度Kを用いない場合の各セグメントのスコアS(固有スコアSs)および総合スコアStを例示する参考図である。
図12A~図12Cでは、2つの水上航走体8(8a、8b)が、同じ2つの水中航走体9(9a、9b)を追尾する場合を示している。また、2つの水上航走体8の各々の目標位置Ptは、2つの水中航走体9の各々を頂点とする音響コーンに基づいて、追尾する各水中航走体9の総合スコアStが最大となる位置とされる。また、2つの水上航走体8からの音響コーンが互いに重なることで、重複領域が形成されている。このように重複領域が形成されている場合、総合スコアStは、重複領域に候補位置Pcが位置した場合には、重複領域を構成する複数のセグメントSegの固有スコアSsあるいは補正スコアの合計となる。また、重複領域以外に候補位置Pcが位置した場合の総合スコアStは、その位置のセグメントSegの固有スコアSsあるいは補正スコアとなる。
なお、図12A~図12Cでは、この重複領域のうち、第1水中航走体9aのSegB(Ss=5)と第2水中航走体9bのSegC(Ss=3)とで構成されている領域を第1重複領域Ra、第1水中航走体9aのSegC(Ss=3)と第2水中航走体9bのSegC(Ss=3)とで構成されている領域を第2重複領域Rb、第1水中航走体9aのSegC(Ss=3)と第2水中航走体9bのSegB(Ss=5)とで構成されている領域を第3重複領域Rcと呼ぶ。
この前提においては、図12Cに示す参考例では、追尾優先度Kを総合スコアStの算出に用いていない(追尾優先度Kの全てが1でも良い)。そして、重複領域のうち、第1重複領域Raは、第1水中航走体9aのSegB(Ss=5)と第2水中航走体9bのSegC(Ss=3)とで構成され、第3重複領域Rcは、第1水中航走体9aのSegC(Ss=3)と第2水中航走体9bのSegB(Ss=5)とで構成されている。よって、第1重複領域Raおよび第3重複領域Rcに候補位置Pcが位置する場合の総合スコアStは、いずれも8(=5+3)である。第2重複領域Rbは、第1水中航走体9aのSegC(Ss=3)と第2水中航走体9bのSegC(Ss=3)とで構成されているので、第2重複領域Rbに候補位置Pcが位置する場合の総合スコアStは6(=3+3)となる。重複領域以外の領域は、総合スコアStは固有スコアSsとなる。よって、追尾優先度Kを用いない図12Cの場合には、2つの水上航走体8(8a、8b)の各々の目標位置Ptは、第1重複領域Raおよび第3重複領域Rcの総合スコアStが最も大きいので、いずれも第1重複領域Raまたは第3重複領域Rcになることになる。
これに対して、追尾優先度Kを用いた場合には、図12A~図12Bに示すように、2つの水上航走体8の目標位置Ptはそれぞれ異なる位置となる。なお、図12A~図12Bでは、複数の水上航走体8の番号をiで識別し、複数の水中航走体9の番号をkで識別しており、第i番目(1<i<m)の水上航走体8aから見た第k番目(1<k<n)の水中航走体9の追尾優先度KをKikで表している。よって、第1水上航走体8aから見た第1水中航走体9a、第1水中航走体9bの各々の追尾優先度Kは、それぞれK11、K12となる。第2水上航走体8bから見た第1水中航走体9a、第1水中航走体9bの各々の追尾優先度Kは、それぞれK21、K22となる。
図12Aでは、第1水上航走体8aから見た2つの水中航走体9(9a、9b)の追尾優先度Kは、例として、第1水中航走体9aで0.9(K11)、第2水中航走体9bで0.3(K12)となっている。よって、第1水上航走体8aから見た第1水中航走体9aの補正スコアは、第1水中航走体9aの追尾優先度KがK11=0.9なので、SegA:6.3(7×0.9)、SegB:4.5(5×0.9)、SegC:2.7(3×0.9)となる。同様に、第1水上航走体8aから見た第2水中航走体9bの補正スコアは、第2水中航走体9bの追尾優先度KがK12=0.3なので、SegA:2.1(7×0.3)、SegB:1.5(5×0.3)、SegC:0.9(3×0.3)となる。また、第1重複領域Ra、第2重複領域Rb、第3重複領域Rcの補正スコアは、それぞれ、上述したのと同様の計算により、5.4(=4.5+0.9)、3.6(=2.7+0.9)、4.2(=2.7+1.5)となる。したがって、総合スコアStが最大となるのは、第1水中航走体9aのSegAであるので、第1水中航走体9aの目標位置Ptは、第1水中航走体9aのSegAの範囲内となる。
他方、図12Bでは、第2水上航走体8bから見た2つの水中航走体9(9a、9b)の追尾優先度Kは、第1水中航走体9aで0.1(K21)、第2水中航走体9bで0.7(K22)となっている。よって、第2水上航走体8bから見た第1水中航走体9aの補正スコアは、第2水中航走体9bの追尾優先度KがK21=0.1なので、SegA:0.7(7×0.1)、SegB:0.5(5×0.1)、SegC:0.3(3×0.1)となる。同様に、第2水上航走体8bから見た第2水中航走体9bの補正スコアは、第2水中航走体9bの追尾優先度KがK22=0.7なので、SegA:4.9(7×0.7)、SegB:3.5(5×0.7)、SegC:2.1(3×0.7)となる。また、第1重複領域Ra、第2重複領域Rb、第3重複領域Rcの補正スコアは、それぞれ、上述したのと同様の計算により、2.6(=0.5+2.1)、2.4(=0.3+2.1)、3.8(=0.3+3.5)となる。したがって、総合スコアStが最大となるのは、第2水中航走体9bのSegAであるので、第2水中航走体9bの目標位置Ptは、第1水中航走体9bのSegAの範囲内となり、第1水中航走体9aの目標位置Ptと異なっている。
以上の構成を備える目標位置決定部4のスコア算出部41は、図7に示す実施形態では、目標位置決定装置1が備える、少なくとも1つ(本実施形態では複数)の候補位置Pcを特定する候補位置特定部40に接続されており、候補位置特定部40が特定した候補位置Pcを取得して、候補位置Pc毎に水中航走体9毎のスコアSを算出するようになっている。
例えば、候補位置特定部40は、上述した水上航走体8の到達可能範囲の任意の1以上の位置を、所定のアルゴリズムに従って選択する。この際、所定のアルゴリズムは、音響通信を通して得られる上記の状態情報(舵角や、進行速度など)を用いるものであっても良く、到達可能範囲をより正確に求めるのに利用しても良い。また、例えば、候補位置特定部40は、上述した到達可能範囲内を複数の領域に区分けして、各領域内の例えば中央などの任意の位置を候補位置Pcとすることにより、複数の候補位置Pcを特定しても良い。この際、上記の状態情報を用いるなどして、各領域に基づいて得られる複数の位置の取捨選択を通して、候補位置Pcを特定しても良い。
また、図7に示す実施形態では、上述した決定処理部43は、スコア算出部41および追尾優先度取得部42に接続されることにより、スコアSおよび追尾優先度Kが入力されるようになっている。
上記の構成によれば、目標位置Ptを決定しようとする水上航走体8が、目標位置Ptの候補となる候補位置Pcに移動した仮定の下で算出する水上航走体8と各水中航走体9との通信のしやすさを示すスコアと、その水上航走体8から見た水中航走体9毎の追尾優先度Kとに基づいて、水上航走体8の目標位置Ptを決定する。このように、スコア(通信のしやすさ)のみならず、スコアおよび追尾優先度Kに基づいて水上航走体8の目標位置Ptを決定することにより、より適切な水上航走体8の目標位置Ptを決定することができる。
すなわち、例えば、複数(例えば2つ)の水上航走体8が、それぞれ、同じ複数(例えば2つ)の水中航走体9の存在を検知(認識)している状況で目標位置Ptをそれぞれ決定する場合に、上記のスコアのみに基づいて決定すると目標位置Ptが同じになる場合がある(図12C参照)。しかし、水上航走体8毎に、通信可能な複数の水中航走体9毎に定める追尾優先度Kを加味することにより、各水上航走体8の目標位置Ptが相互に異なるように図ることができる(後述する図12A~図12B参照)。これによって、複数の水中航走体9を、より少ない複数の水上航走体8で監視しようとした場合においても、各水上航走体8が相互に異なる目標位置Ptを目標に航走するように図られるので、より多くの水中航走体9を監視できるようになり、水中航走体9を適切に、効率良く監視することができる。
次に、追尾優先度Kの定め方について、図13A~図13Bを用いて説明する。図13Aは、本発明の一実施形態に係る第1水中航走体9aから見た水上航走体8の追尾優先度Kの算出方法を説明するための図である。また、図13Bは、本発明の一実施形態に係る第2水中航走体9bから見た水上航走体8の追尾優先度Kの算出方法を説明するための図である。
幾つかの実施形態では、図13A~図13Bに示すように、上述した追尾優先度Kは、水上航走体8と水中航走体9との距離Lに基づいて定められても良い。図13A~図13Bに示す実施形態では、追尾優先度Kを、水上航走体8と水中航走体9との水平距離に基づいて定めるようになっている。
この際、幾つかの実施形態では、上述した目標位置決定装置1は、図7に示すように、複数の水中航走体8の各々毎に求められる、各水中航走体9と通信可能な複数の水上航走体8の各々との距離L(水平距離)に基づいて、距離Lが最も短い水上航走体8の追尾優先度Kが最も高くなるように、追尾優先度Kを算出するよう構成された機能部である追尾優先度算出部14を、さらに備えても良い。図13A~図13Bには、任意の水中航走体9(9aまたは9b)を追尾可能な水上航走体8が複数(8a、8b)存在する場合が示されているが、この場合において、これらの複数の水上航走体8のうちのどの水上航走体8に、その任意の水中航走体9を優先して追尾させるのかを、任意の水中航走体9と複数の水上航走体8の各々との水平距離に基づいて決定し、追尾優先度Kとしている。つまり、任意の水中航走体9と、この任意の水中航走体9と音響通信が可能な複数の水上航走体8の各々との距離L(水平距離)をそれぞれ求め、その距離Lが短いものほど優先度が高くなるように、追尾優先度Kを定める。
詳述すると、図13A~図13Bでは、第1水中航走体9aと音響通信が可能なのは2つの水上航走体8(8a、8b)であり、第2水中航走体9bと音響通信が可能なのも2つの水上航走体8(8a、8b)であるものとする。
そして、図13Aに示すように、第1水中航走体9aと第1水上航走体8aとの水平距離がL11、第1水中航走体9aと第2水上航走体8bとの水平距離がL21であるとする。そして、これらの水平距離を用いて、第1水中航走体9aを優先して監視する水上航走体8を定める。具体的には、第1水上航走体8aから見た第1水中航走体9aの追尾優先度K11を、K11={(L21)/(L11+L21)}との算出式で求める。また、第2水上航走体8bから見た第1水中航走体9aの追尾優先度K21は、K21={(L11)/(L11+L21)}との算出式で求める。図13Aの場合では、L11<L21なので、第1水中航走体9aを優先して追尾するのは、第1水上航走体8aおよび第2水上航走体8bのうちの第1水上航走体8aとなる。
また、図13Bに示すように、第2水中航走体9b(k=2)と第1水上航走体8a(i=1)との水平距離がL12、第2水中航走体9b(k=2)と第2水上航走体8b(i=2)との水平距離がL22であるとする。そして、この水平距離の関係から、第2水中航走体9bを優先して監視する水上航走体8を定める。具体的には、第1水上航走体8aから見た第2水中航走体9bの追尾優先度K12を、K12={(L22)/(L12+L22)}との算出式で求める。また、第2水上航走体8bから見た第1水中航走体9aの追尾優先度K21を、K22={(L12)/(L12+L22)}との算出式で求める。図13Bの場合では、L12>L22なので、第2水中航走体9bを優先して追尾するのは、第1水上航走体8aおよび第2水上航走体8bのうちの第2水上航走体8bとなる。
このようにして定めた追尾優先度K(K11、K12、K21、K22)について、第1水上航走体8aがK11、K12を用い、第2水上航走体8bがK21、K22を用いる。例えば、上述したように、K11=0.9、K12=0.3、K21=0.1、K22=0.7とすると、第1水上航走体8aの目標位置Ptは、第1水中航走体9aのSegAの範囲内に属する領域となり、第2水上航走体8bの目標位置Ptは、第2水中航走体9bのSegAの範囲内に属する領域となる。すなわち、複数の水上航走体8(8a、8b)の各々の目標位置Ptは、異なる位置となっている。
ただし、追尾優先度Kの算出方法は上述した実施形態に限定されない。他の幾つかの実施形態では、K11=L21^2/(L11^2+L21^2)、K21=L11^2/(L11^2+L21^2)などや、K11=1/L11、K21=1/L21など、他の算出式で求めても良い。ΣKik=固定値(1≦i≦m、1≦k≦n)となるような算出であっても良い。また、例えば、1つの水中航走体9と音響通信が可能な水上航走体8が3つの場合には、第1水中航走体9aと第1水上航走体8aとの水平距離がL11、第1水中航走体9aと第2水上航走体8bとの水平距離がL21、第1水中航走体9aと第3水上航走体8cとの水平距離がL31とした場合には、例えば、K11=1/2×(L21+L31)/(L11+L21+L31)、K21=1/2×(L11+L31)/(L11+L21+L31)、K31=1/2×(L11+L21)/(L11+L21+L31)などとなる。つまり、i番目の第i水上航走体8iから見た、第k番目の第k水中航走体9kの追尾優先度Kikは、Kik={(第k水中航走体9k(自水中航走体)を除く、水中航走体9kと第i水上航走体8iとの距離の合計の平均)÷(ΣLikの合計)}で算出しても良い。
図7に示す実施形態では、追尾優先度算出部14と追尾優先度取得部42とが接続されており、追尾優先度取得部42は、追尾優先度算出部14が算出した追尾優先度Kを取得するようになっている。また、図7に示す実施形態では、各水中航走体9が、音響通信が可能な各水上航走体8との距離Lに基づいて、上述したように追尾優先度Kを決定すると共に、決定した追尾優先度Kを、水上航走体8に通信するようになっている。これによって、各水上航走体8は、必要な追尾優先度Kを得る。具体的には、第1水中航走体9aがK11およびK21を算出し、K11を第1水上航走体8aに送信し、K21を第2水上航走体8bに送信する。また、第2水中航走体9bがK12およびK22を算出し、K12を第1水上航走体8に送信し、K22を第2水上航走体8bに送信する。よって、第1水上航走体8a(第1水上航走体8aの追尾優先度取得部42)はK11およびK12を受信し、第2水上航走体8b(第2水上航走体8bの追尾優先度取得部42)はK21およびK22を受信する。
ただし、上述した実施形態に本発明は限定されない。上述した実施形態では、追尾優先度算出部14が水中航走体9に搭載され、他の機能部(2~5)が水上航走体8に搭載されているが、他の幾つかの実施形態では、追尾優先度算出部14および水中位置取得部3が水中航走体9に搭載されても良い。この場合、水上航走体8に搭載された候補位置特定部40は、音響通信により、追尾優先度Kと共に、水中航走体9が音響通信により得た位置情報Pを取得する。その他の幾つかの実施形態では、上述した追尾優先度算出部14を各水上航走体8あるいは監視局またはマスタ船が備えることで、水上航走体8毎に必要な距離Lを通信により取得し、追尾優先度Kを算出しても良い。また、その他の幾つかの実施形態では、追尾優先度Kは、例えば、各水中航走体9からの距離Lが最も短い水上航走体8に対しては大きい値を設定し、その他の水上航走体8に対しては、それよりも小さい値であれば、距離Lに関係なく、任意の値を設定しても良い。
なお、他の幾つかの実施形態では、上述した前提において、第1水上航走体8aから見た第1水中航走体9a、第2水中航走体9bの追尾優先度Kを、それぞれ、K11=L12/(L11+L12)、K12=L11/(L11+L12)、第2水上航走体8bから見た第1水中航走体9a、第2水中航走体9bの追尾優先度Kを、それぞれ、K21=L22/(L21+L22)、K22=L21/(L21+L22)などと算出しても良い。この場合には、各水上航走体8の目標位置Ptを決定するのに、その水上航走体8と通信可能な各水中航走体8との距離Lのみを取得すれば良い。よって、他の水上航走体8の存在に関係なく、水上航走体8毎に水中航走体9の追尾優先度Kを決定することが可能となる。
上記の構成によれば、各水中航走体9の追尾優先度Kは、水上航走体8と、各水中航走体9の各々との距離Lに基づいて定められる。これによって、水上航走体8からの距離Lが近い水中航走体9ほど追尾優先度Kを大きくするといったことが可能であり、水中航走体9毎の追尾優先度Kが異なるように図ることができる。
また、幾つかの実施形態では、追尾優先度Kは、水中航走体9の重要度Dに基づいて定められてもよい。すなわち、例えば幾つかの実施形態では、追尾優先度Kは、上記の重要度Dによって定められる。他の幾つかの実施形態では、追尾優先度Kは、上記の距離Lおよび上記の重要度Dによって定められる。この場合には、追尾優先度Kは、上述した距離Lに基づいて算出された値に、重要度Dを乗算、加算など演算することにより定めても良い。本実施形態では、追尾優先度Kは、距離Lに基づいて算出された値×重要度Dで算出するようになっている。この場合、補正スコアは、固有スコアSs×距離Lに基づいて算出された値×重要度Dとなる。その他の幾つかの実施形態では、追尾優先度Kは、上述した距離Lに基づいてのみ定められても良い。
水中航走体9の重要度Dは、例えば、水中航走体9のミッション(前述)の重要度Dや、水中航走体9に何らかの異常が生じた場合に水中航走体9を見失う(ロスト)ことの回避を図る場合など、重点的に追尾する必要性の有無に応じた値を有する。具体的には、例えば、障害(異常)が発生した水中航走体9の重要度Dを、障害が発生していない水中航走体9より大きくしても良い。水中航走体9に異常が発生しているかは、例えば、上述したような音響通信を通して得られる状態情報に基づいて判定しても良い。また、例えば、水中航走体9に実行させるミッションの重要性が高いほど重要度Dが大きくなるようにしても良い。例えば、水中航走体9の深度(音波強度)に応じて、深度が大きいほど重要度Dが大きくなるようにしても良い。これは、音響通信装置は頂角が大きくなるとたとえ近距離であっても通信不可となる特性をもつものが多いため、浅い深度では頂角を小さくする場合には、固有スコアSsの高いセグメントの領域が狭くなる。また、水上航走体8と水中航走体9との距離(直線距離)が遠くなれば、減衰が大きくなり通信しにくくなる。このため、深度が大きく距離が大きい水中航走体9は、いずれの水上航走体8とも通信できなくなる可能性があるためである。
上記の構成によれば、各水中航走体の追尾優先度Kは、水中航走体9の重要度D、または、その重要度Dおよび上記の距離Lに基づいて定められる。これによって、追尾優先度Kを状況に応じて適切に決定することができる。
その他、幾つかの実施形態では、上述したスコア算出部41は、水中航走体9の未来の位置を予測するよう構成された機能部である位置予測部41aを、有しても良い。この場合、上述した水中航走体9の位置情報Pは、水中航走体9の未来の位置を示す未来位置情報である。位置予測部41aは、音響通信により得られる水中航走体9の位置、進行方向、および速度に基づいて、この水中航走体9の一定時間後の位置を予測する。このとき、位置予測部41aは、水中航走体9の位置、進行方向、および速度の履歴に基づいて水中航走体9の軌道を推定し、当該軌道に基づいて水中航走体9の一定時間後の位置を予測してもよい。また位置予測部41aは、位置、進行方向、および速度に加え、記憶部12などに記憶されたミッション情報から特定される目的地に基づいて、水中航走体9の一定時間後の位置を予測してもよい。また、この場合の候補位置Pcは、位置予測部41aが予測した位置に水中航走体9が位置するときに、水上航走体8が存在可能な地点となる。
上記の構成によれば、水中航走体の方向、速度、舵角などから予測される未来の位置と、水上航走体の候補位置とに基づいてスコアを算出することにより、より適切な目標位置を設定することができる。
また、幾つかの実施形態では、目標位置決定装置1が監視局やマスタ船、マスタとなる水中航走体9などに設置しても良い。この場合には、目標位置決定装置1は、航走体監視システム7が備える複数の水上航走体8および複数の水中航走体9の位置を得ることが可能となる。よって、目標位置決定装置1は、複数の水上航走体の目標位置Ptを決定することが可能となる。しかも、任意の水上航走体8の目標位置Ptを決定するのに用いる水中航走体9毎の追尾優先度Kと、他の任意の水上航走体8の目標位置Ptを決定するのに用いる水中航走体9毎の追尾優先度Kとは、水中航走体9毎に異なる値を有するように調整することが可能となる。例えば、上述した距離Lに基づいて追尾優先度Kを決定する場合には、状況によっては、K11=K21、または、K12=K22となる場合が想定される。このような場合が生じたとてしても、その場合に任意の演算を行うことで、K11≠K21、K12≠K22とすることが可能である。この任意の演算としては、ΣKik=固定値(1≦i≦m、1≦k≦n)の条件の下で行っても良い。
上記の構成によれば、複数の水上航走体8の目標位置Ptが同じ位置となるのを確実に防止することができる。
以下、上述した構成(機能)を備える目標位置決定装置1が行う処理に対応する水上航走体8の目標位置決定方法について、図14を用いて説明する。図14は、本発明の一実施形態に係る目標位置決定方法を示す図である。
図14に示すように、水上航走体8の目標位置決定方法(以下、単に、目標位置決定方法)は、選定ステップと、水中位置取得ステップと、目標位置決定ステップと、目標位置指示ステップと、を備える。
選定ステップは、監視対象として定められた複数の水中航走体9のうちから基準水中航走体9tとする水中航走体9を選定するステップである。この選定ステップは、既に説明した選定部2が実行する処理内容と同様であるため、詳細は省略する。
水中位置取得ステップは、選定ステップによって選定された基準水中航走体9tを構成する各水中航走体9の位置を示す位置情報Pを取得するステップである。この水中位置取得ステップは、既に説明した水中位置取得部3が実行する処理内容と同様であるため、詳細は省略する。
目標位置決定ステップは、上記の水中位置取得ステップによって取得された基準水中航走体8の位置情報Pに基づいて目標位置Ptを決定するステップである。この目標位置決定ステップは、既に説明した目標位置決定部4が実行する処理内容と同様であるため、詳細は省略する。
目標位置指示ステップは、上記の目標位置決定ステップによって決定された目標位置Ptを既に説明した航走制御装置82に出力するステップである。この目標位置指示ステップは、既に説明した指示部5が実行する処理内容と同様であるため、詳細は省略する。
図14に示す実施形態では、目標位置決定方法は、目標位置決定ステップによって決定された目標位置Ptにおいて、通信可能と予測されていた水中航走体9のうち通信が完了できない通信未完了の水中航走体9がある場合に、通信未完了の水中航走体9の探索処理を実行するステップを、さらに備えても良い。
図14示す実施形態を説明すると、ステップS0において、既に説明したように監視対象となる複数の水中航走体9を決定する。このステップは予め決定されていた監視対象の情報を取得することであっても良い。次に、ステップS1において、決定された監視対象となる全ての水中航走体9を基準水中航走体9tに設定する(選定ステップ)。ステップS2において水中位置取得ステップを実行し、基準水中航走体9tを構成する各水中航走体9の位置情報Pを取得する。ステップS3において目標位置決定ステップを実行し、ステップS2において取得された位置情報Pに基づいて水上航走体8の目標位置Ptを決定する。ステップS4において目標位置指示ステップを実行し、決定された目標位置Ptを既に説明した航走制御装置82に出力する。これによって、水上航走体8が決定された目標位置Ptに移動した後、ステップS3における目標位置Ptの決定時に見込まれていた1以上の水中航走体9との通信が行われる。
その後、ステップS5において、上記の1以上の水中航走体9との通信が全て完了(正常完了)したかを確認し、通信が全て完了した場合には、ステップS6において、通信が完了したと判定される水中航走体9を基準水中航走体9tから除外することで、基準水中航走体9tを更新する(選定ステップ)。ステップS7において、基準水中航走体9tに水上航走体9が残っているかを確認し、残っていない場合には、ステップS1に戻り、ステップS1以降を再度実行する。逆に、残っている場合には、ステップS2に戻り、ステップS2以降を再度実行する。また、上述したステップS5において、予定された水中航走体9のうち通信が完了できない水中航走体9がある場合には、ステップS8において、既に説明した探索処理を実行し、本フローを終了する。探索処理が完了後は、再度、本フローを開始しても良い。なお、ステップS1~ステップS7の繰返しの中で、予め定められていた任意の終了条件が満たされた場合には、フローを終了するようにしても良い。
次に、上述した目標位置決定部4の処理に対応する方法を、図15を用いて説明する。図15は、本発明の一実施形態に係るスコアSおよび追尾優先度Kに基づく目標位置Ptの決定フローを示す図である。
図15に示すように、この方法は、基準水中航走体9tに選定された水中航走体9毎に取得された位置情報Pに基づいて、それぞれ、1以上の水中航走体9と通信可能な水上航走体8の候補位置Pcにおける上記のスコアSを算出するスコア算出ステップ(S41)と、候補位置Pcにおける水中航走体9毎に算出されたスコアSに基づいて、目標位置Ptを決定する決定処理ステップ(44)と、を備える。図15に示す実施形態では、本方法は、基準水中航走体9tに選定された水中航走体9毎の、水上航走体8による各水中航走体9の追尾優先度Kを取得する追尾優先度取得ステップ(S43)をさらに備えており、上記の決定処理ステップ(44)は、候補位置Pcについて水中航走体9毎に算出された上記のスコアS、および水中航走体9毎に取得された追尾優先度Kに基づいて、目標位置Ptを決定する。
これらのスコア算出ステップ(S41)、追尾優先度取得ステップ(S43)、決定処理ステップ(44)は、それぞれ、既に説明したスコア算出部41、追尾優先度取得部42、決定処理部43が実行する処理内容と同様であるため、詳細は省略する。
上述した決定処理ステップ(44)は、幾つかの実施形態では、図15に示すように、少なくとも1つの候補位置Pcについて、水中航走体9毎のスコアSおよび水中航走体9毎の追尾優先度Kに基づいて、候補位置Pc毎に総合スコアStを算出する総合スコア算出ステップ(S44a)と、総合スコアStに基づいて、目標位置Ptを決定する決定ステップ(S44b)と、で構成されても良い。総合スコア算出ステップ(S44a)、決定ステップ(S44b)は、それぞれ、既に説明した総合スコア算出部43a、決定部43bが実行する処理内容と同様であるため、詳細は省略する。
図15に示す実施形態では、少なくとも1つの候補位置Pcを特定する候補位置特定ステップ(S40)と、複数の水中航走体8の各々毎に求められる、各水中航走体9と通信可能な複数の水上航走体8の各々との距離L(水平距離)に基づいて、距離Lが最も短い水上航走体8の追尾優先度Kが最も高くなるように、追尾優先度Kを算出する追尾優先度算出ステップ(S42)とを、さらに備えている。これらの候補位置特定ステップ(S40)、追尾優先度算出ステップ(S42)は、それぞれ、既に説明した候補位置特定部40、追尾優先度算出部14が実行する処理内容と同様であるため、詳細は省略する。
そして、図15に示す実施形態では、ステップS40において特定候補位置特定ステップを実行し、基準水中航走体9の位置情報Pとの関係において、目標位置Ptの決定対象となる水上航走体8に関する複数の候補位置Pcを特定する。ステップS41においてスコア算出ステップを実行し、ステップS40で取得された複数の候補位置Pcの各々について、目標位置Ptの決定対象の水上航走体8がその候補位置Pcに位置したと仮定した場合における、水上航走体8と各水中航走体9の各々との通信のしやすさ(スコアS)を、位置情報Pを用いて算出する。
ステップS42において追尾優先度算出ステップを実行することにより、既に説明したように追尾優先度Kを算出する。その後、ステップS43において追尾優先度取得ステップを目標位置Ptの決定対象の水上航走体8から見た複数の水中航走体9の各々の追尾優先度Kを取得する。なお、追尾優先度算出ステップは、追尾優先度取得ステップよりも前に実行されていれば、どの段階で実行されても良い。
ステップS44において、決定処理ステップを実行する。具体的には、ステップS44aにおいて総合スコア算出ステップを実行し、ステップS44bにおいて決定ステップを実行する。より具体的には、決定ステップ(S44b)では、総合スコア算出ステップ(S44a)の実行により得られた候補位置Pc毎の総合スコアStに基づいて、複数の候補位置Pcのうち総合スコアStが最も大きい候補位置Pcを、水上航走体8の目標位置Ptに決定する。
なお、他の幾つかの実施形態では、スコア算出ステップ(S41)は、水中航走体9の未来の位置を予測する位置予測ステップを有していても良い。この場合には、水中航走体9の位置情報Pは、水中航走体9の未来位置情報である。
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
(付記)
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る水上航走体(8)の目標位置決定装置(1)は、
水中を航走する複数の水中航走体(9)を追尾する水上航走体(8)の航走の目標位置(Pt)を決定する水上航走体(8)の目標位置決定装置(1)であって、
前記複数の水中航走体(9)のうち、前記目標位置(Pt)の算出に用いる1以上の水中航走体(9)である基準水中航走体(9t)を選定するよう構成された選定部(2)と、
前記基準水中航走体(9t)の位置を示す位置情報(P)を取得するよう構成された第1取得部(例えば図2の水中位置取得部3)と、
前記基準水中航走体(9t)の前記位置情報(P)に基づいて前記目標位置(Pt)を決定するよう構成された目標位置決定部(4)と、
決定された前記目標位置(Pt)を、前記水上航走体(8)の前記目標位置(Pt)への航走を制御する航走制御装置(82)に出力するよう構成された指示部(5)と、を備え、
前記選定部(2)は、決定された前記目標位置(Pt)に移動した前記水上航走体(8)との通信が完了したと判定される前記水中航走体(9)を前記基準水中航走体(9t)から除外した残りの前記水中航走体(9)を、次回の前記目標位置(Pt)を決定するための前記基準水中航走体(9t)として選定するように構成される。
上記(1)の構成によれば、事前に定められるなどした監視対象の複数の水中航走体(9)の全てと順番に通信するように、水上航走体(8)の目標位置(Pt)を順番に決定する。すなわち、監視対象の全ての水中航走体(9)と同時に通信可能な水上航走体(8)の位置がないような場合には、まずは、この複数の水中航走体(9)のうちの一部と通信可能な位置を水中航走体(9)の目標位置(Pt)とする。そして、この目標位置(Pt)で通信が完了した水中航走体(9)以外の水中航走体(9)を対象に次の目標位置(Pt)とする。これを繰り返すことで、監視対象の全ての水中航走体(9)と順番に通信を行っていくように水上航走体(8)の目標位置(Pt)を順次決定していく。
これによって、複数の水中航走体(9)を、より少ない複数の水上航走体(8)で監視しようとした場合において、水中航走体(9)を見失う(ロストする)ことなく、複数の水中航走体(9)の全てと確実に通信できるように水上航走体(8)を航走させることができる。また、後述するスコア(S)に基づくなどして、可能な限り2以上の水中航走体(9)と通信可能な位置を目標位置(Pt)とすることで、効率良く水中航走体(9)を追尾(監視)することができる。
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記選定部(2)は、前記残りの水中航走体(9)がない場合には、既に前記通信が完了と判断された前記複数の水中航走体(9)の少なくとも一部を前記基準水中航走体(9t)として再設定する。
上記(2)の構成によれば、事前に監視対象に定められるなどした複数の水中航走体(9)の全てとの通信の完了後は、再度、上記の監視対象の複数の水中航走体(9)の全てなどを基準水中航走体(9t)に再設定する。これによって、監視対象の複数の水中航走体(9)の水上航走体(8)による追尾を継続して行うことができる。なお、再設定時において、再設定前のループで追尾の対象としていた複数の水中航走体(9)と、再設定後の追尾の対象としていた複数の水中航走体(9)とは同じであっても良いし、その少なくとも一部において異なっていても良い。水中航走体(9)の数についても、再設定の前後で同じであっても良いし、異なっても良い。
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)~(2)の構成において、
前記水上航走体(8)と前記水中航走体(9)との前記通信の完了を通知する通信完了通知(Nt)を受信する通知受信部(22)をさらに備え、
前記選定部(2)は、前記通信完了通知(Nt)に基づいて、前記通信が完了された前記水中航走体(9)を認識する。
上記(3)の構成によれば、水上航走体(8)の目標位置(Pt)への移動後において通信可能な1以上の水上航走体(8)との通信の完了は、例えば水中航走体(9)から送信されるなどする通信完了通知(Nt)により認識される。これによって、水上航走体(8)と水中航走体(9)との通信が完了したことを確実に判定することができる。
(4)幾つかの実施形態では、上記(3)の構成において、
前記選定部(2)は、前記水上航走体(8)が前記目標位置(Pt)に移動するまでの間に前記通信完了通知(Nt)を受信した場合に、前記通信完了通知(Nt)に基づいて認識した前記水中航走体(9)を前記基準水中航走体(9t)から除外した残りの前記水中航走体(9)を次回の前記目標位置(Pt)を決定するための前記基準水中航走体(9t)として選定する。
上記(4)の構成によれば、決定された目標位置(Pt)まで水上航走体(8)が移動している間に通信が完了した水上航走体(8)が存在した場合には、その通信が完了した水上航走体(8)を基準水中航走体(9t)から除外する。これによって、水中航走体(9)を追尾(監視)の効率化を図ることができる。
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)~(4)の構成において、
前記決定された目標位置(Pt)において、通信可能と予測されていた前記水中航走体(9)のうち前記通信が完了できない通信未完了の前記水中航走体(9)がある場合に、前記通信未完了の水中航走体(9)の探索処理を実行する探索処理部(6)を、さらに備える。
上記(5)の構成によれば、水上航走体(8)が、目標位置(Pt)での通信が予定(期待)されていた水中航走体(9)との通信が完了できない場合には、その水上航走体(8)の探索処理を実行する。これによって、水中航走体(9)を見失うことがないように図ることができる。
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)~(5)の構成において、
前記目標位置決定部(4)は、
前記基準水中航走体(9t)に選定された前記水中航走体(9)毎に、前記第1取得部(例えば図2の水中位置取得部3)によって取得された前記位置情報(P)に基づいて、1以上の前記水中航走体(9)と通信可能な前記水上航走体(8)の候補位置(Pc)における前記水上航走体(8)と前記水中航走体(9)との通信のしやすさを示すスコア(S)を算出するスコア算出部(41)と、
前記候補位置(Pc)における前記水中航走体(9)毎に算出された前記スコア(S)に基づいて、前記目標位置(Pt)を決定する決定処理部(43)と、を備える。
上記(6)の構成によれば、目標位置(Pt)を決定しようとする水上航走体(8)が、目標位置(Pt)の候補となる候補位置(Pc)に移動した仮定の下で算出する水上航走体(8)と各水中航走体(9)との通信のしやすさを示すスコア(S)に基づいて、水上航走体(8)の目標位置(Pt)を決定する。これによって、可能な限り2以上の水中航走体(9)と通信可能な位置を目標位置(Pt)とすることができ、効率良く水中航走体(9)を追尾(監視)することができる。
(7)幾つかの実施形態では、上記(6)の構成において、
前記目標位置決定部(4)は、前記基準水中航走体(9t)に選定された前記水中航走体(9)毎の、前記水上航走体(8)による前記水中航走体(9)の追尾優先度(K)を取得する第2取得部(例えば図7の追尾優先度取得部42)をさらに備え、
前記決定処理部(43)は、前記候補位置(Pc)における前記水中航走体(9)毎に算出された前記スコア(S)、および前記水中航走体(9)毎に取得された前記追尾優先度(K)に基づいて、前記目標位置(Pt)を決定する。
上記(7)の構成によれば、目標位置(Pt)を決定しようとする水上航走体(8)が、目標位置(Pt)の候補となる候補位置(Pc)に移動した仮定の下で算出する水上航走体(8)と各水中航走体(9)との通信のしやすさを示すスコア(S)と、その水上航走体(8)から見た水中航走体(9)毎の追尾優先度(K)とに基づいて、水上航走体(8)の目標位置(Pt)を決定する。このように、スコア(S)(通信のしやすさ)のみならず、スコア(S)および追尾優先度(K)に基づいて水上航走体(8)の目標位置(Pt)を決定することにより、より適切な水上航走体(8)の目標位置(Pt)を決定することができる。
すなわち、例えば、複数(例えば2つ)の水上航走体(8)が、それぞれ、同じ複数(例えば2つ)の水中航走体(9)の存在を検知(認識)している状況で目標位置(Pt)をそれぞれ決定する場合に、上記のスコア(S)のみに基づいて決定すると目標位置(Pt)が同じになる場合がある(後述する図12C参照)。しかし、水上航走体(8)毎に、通信可能な複数の水中航走体(9)毎に定める追尾優先度(K)を加味することにより、各水上航走体(8)の目標位置(Pt)が相互に異なるように図ることができる(後述する図12A~図12B参照)。これによって、複数の水中航走体(9)を、より少ない複数の水上航走体(8)で監視しようとした場合においても、各水上航走体(8)が相互に異なる目標位置(Pt)を目標に航走するように図られるので、より多くの水中航走体(9)を監視できるようになり、水中航走体(9)を適切に、効率良く監視することができる。
(8)幾つかの実施形態では、上記(6)~(7)の構成において、
前記決定処理部(43)は、前記スコア(S)に基づいて前記目標位置(Pt)に決定可能な複数の前記候補位置(Pc)がある場合に、該複数の候補位置(Pc)のうち、前記水上航走体(8)の前記目標位置(Pt)の決定時の位置との距離(L)が最も短い前記候補位置(Pc)を前記目標位置(Pt)として決定する。
上記(8)の構成によれば、スコア(S)、あるいは、スコア(S)および追尾優先度(K)が同じとなる位置が複数ある場合には、標位置の決定時における水上航走体(8)の位置から最も近い位置やその付近の位置を目標位置(Pt)に決定する。これによって、水上航走体(8)が目標位置(Pt)へ移動する距離(L)が最大限短くなるように図ることができる。よって、複数の水中航走体(9)の全てとの1回の通信を完了するまでの時間の短縮化を図ることができ、各水中航走体(9)との通信ができない時間の短縮化を図ることができる。
(9)幾つかの実施形態では、上記(6)~(7)の構成において、
前記決定処理部(43)は、前記スコア(S)に基づいて前記目標位置(Pt)に決定可能な前記候補位置(Pc)において通信可能と見込まれる前記水中航走体(9)が2以上ある場合に、該2以上の前記水上航走体(8)の全てと通信可能な領域を判別すると共に、判別した前記領域において前記目標位置(Pt)の決定時の位置との距離(L)が最も短い前記候補位置(Pc)を前記目標位置(Pt)として決定する。
上記(9)の構成によれば、目標位置(Pt)において通信可能となると見込まれる水中航走体(9)が2以上ある場合に、それらの全ての水中航走体(9)と通信可能な位置であって、目標位置(Pt)の決定時の位置から最も近い位置を目標位置(Pt)とする。これによって、スコア(S)等が最も高い位置まで移動しなくても、より近い位置において、スコア(S)等が最も高い位置において通信可能となるはずの全ての水中航走体(9)と通信することができ、水上航走体(8)が目標位置(Pt)へ移動する距離(L)が最大限短くなるように図ることができる。よって、複数の水中航走体(9)の全てとの1回の通信を完了するまでの時間の短縮化を図ることができ、各水中航走体(9)との通信ができない時間の短縮化を図ることができる。
(10)本発明の少なくとも一実施形態に係る水上航走体(8)の目標位置決定方法は、
水中を航走する複数の水中航走体(9)を追尾する水上航走体(8)の航走の目標位置(Pt)を決定する水上航走体(8)の目標位置決定方法であって、
前記複数の水中航走体(9)のうち、前記目標位置(Pt)の算出に用いる1以上の水中航走体(9)である基準水中航走体(9t)を選定するステップと、
前記基準水中航走体(9t)の位置を示す位置情報(P)を取得するステップと、
前記基準水中航走体(9t)の前記位置情報(P)に基づいて前記目標位置(Pt)を決定するステップと、
決定された前記目標位置(Pt)を、前記水上航走体(8)の前記目標位置(Pt)への航走を制御する航走制御装置(82)に出力するステップと、を備え、
前記選定するステップは、決定された前記目標位置(Pt)に移動した前記水上航走体(8)との通信が完了したと判定される前記水中航走体(9)を前記基準水中航走体(9t)から除外した残りの前記水中航走体(9)を、次回の前記目標位置(Pt)を決定するための前記基準水中航走体(9t)として選定する。
上記(10)の構成によれば、上記(1)と同様の効果を奏する。
(11)本発明の少なくとも一実施形態に係る水上航走体(8)の目標位置決定プログラムは、
水中を航走する複数の水中航走体(9)を追尾する水上航走体(8)の航走の目標位置(Pt)を決定する水上航走体(8)の目標位置決定プログラムであって、
コンピュータに、
前記複数の水中航走体(9)のうち、前記目標位置(Pt)の算出に用いる1以上の水中航走体(9)である基準水中航走体(9t)を選定する選定部(2)と、
前記基準水中航走体(9t)の位置を示す位置情報(P)を取得する第1取得部(例えば図2の水中位置取得部3)と、
前記基準水中航走体(9t)の前記位置情報(P)に基づいて前記目標位置(Pt)を決定する目標位置決定部(4)と、
決定された前記目標位置(Pt)を、前記水上航走体(8)の前記目標位置(Pt)への航走を制御する航走制御装置(82)に出力する指示部(5)と、を実現させると共に、
前記選定部(2)は、決定された前記目標位置(Pt)に移動した前記水上航走体(8)との通信が完了したと判定される前記水中航走体(9)を前記基準水中航走体(9t)から除外した残りの前記水中航走体(9)を、次回の前記目標位置(Pt)を決定するための前記基準水中航走体(9t)として選定するように機能させる。
上記(11)の構成によれば、上記(1)と同様の効果を奏する。
(12)本発明の少なくとも一実施形態に係る水上航走体(8)の航走体監視システム(7)は、
水中を航走する複数の水中航走体(9)と、
前記水中航走体(9)を追尾可能な少なくとも1つの水上航走体(8)と、
上記(1)~(9)のいずれか1項に記載の、前記水上航走体(8)の航走の目標位置(Pt)を決定するよう構成された水上航走体(8)の目標位置決定装置(1)と、を備える。
上記(12)の構成によれば、上記(1)と同様の効果を奏する。