JP7229830B2 - 農地転換方法 - Google Patents

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Description

本発明は、農地転換方法に関する。
近年の農業は、担い手不足、米価の低迷、更に消費者の安全嗜好の強まり等を反映して,機械化による省力、化学肥料農薬等の削減による生産費の抑制の方向に大きくシフトしている。
このような流れの中で、短期間では効果が確認し難い「土づくり」に関する資材等のコスト削減が続いている。このコスト削減による影響は短期的には顕在化し難いが、土に対するコスト削減の期間が長引くにつれ、気象変動が著しい最近の農業生産に影を落しはじめており,いずれ顕在化するのは明白と予想される。
ここで、特許文献1には、休耕田の畑圃場化をする方法として、ごみの破砕、乾燥及び成形を経て所定の形状に加工された、ごみ固形燃料を乾留して得られる多孔質体を、休耕田に撒布したのち、撒布した多孔質体と休耕田の表層部分とを混合処理する方法が開示されている。
また、特許文献2には、休耕田等の排水不良地の畑圃場化をする方法として、休耕田等の排水不良地の土壌の排水性を改良して畑圃場とするに当り、作土層下まで穴を堀り、該穴内に、ごみの破砕、乾燥および成形を経て所定の形状に加工された、ごみ固形燃料を乾留して製造した炭化物を分級して得られる、径が2mm以上の多孔質体の複数を、バインダーにて相互に連結、一体化して成る炭素系透水体を装入したのち、覆土する方法が開示されている。
さらに、特許文献3には、水田を畑圃場に転換する場合や湿田を乾田に改良する場合に適した作業方式として、掘削溝の側壁を押圧する機能をもつサブソイラをもち、これにより疎水材の一つとしての有材心土材を投入する充填溝を形成し、この充填溝中に移動しながら有材心土材を投入し、これを充填溝中を移動する圧縮輪によって上方から圧縮すると共に、掘削溝の側壁の復元土圧によっても圧縮して、心土層中に圧密状態の保水層を形成することで心土改良を行うことが開示されている。
特開2003-41254号公報 特開2003-261871号公報 特開2006-230417号公報
ところで、本願の発明者は、前述のような「土づくり」にコスト削減がされているような事態を「農業の危機」と判断しており,「土づくり」を継続的に実施することは将来の農業にとって極めて重要であると考えている。特に、本土の活性化に必要な「物理性、化学性及び生物性の三要素」を考慮してコストパフォーマンスに優れた農業生産を広めていくことが重要であると考えている。
そして、前述の特許文献1~3の技術は、本願の発明者が提案する「物理性、化学性及び生物性の三要素」を考慮した提案ではないため、本願の発明者が提案する農業生産を実現できない。
本発明は、土づくりを考慮した水位調整システムを用いての農地を水田から畑地に転換する農地転換方法の提供を目的とする。
本発明の第1態様の農地転換方法は、農地を水田から畑地に転換する農地転換方法であって、前記農地の地下に配置され、外周に複数の貫通孔が形成されている暗渠管、及び、前記暗渠管に連結され、水頭圧を利用して前記地下の水位を調整する水閘を備える水位調整システムを用いて、前記地下の水位を定められた水位に調整する水位調整工程と、前記水位調整工程の後に行う工程であって、前記水田の土を耕起しながら前記水田の土に腐植酸を含む団粒化材を混入させて、前記水田の土を団粒化させる団粒化工程と、を含む。
本発明の第2態様の農地転換方法は、前記農地転換方法であって、前記団粒化工程では、前記水田の土のうち地面から少なくとも深さ30cm以内の土を耕起する。
本発明の第3態様の農地転換方法は、前記農地転換方法であって、前記団粒化工程では、更にロータリを用いて前記水田の土を耕起する。
本発明の第4態様の農地転換方法は、前記農地転換方法であって、前記団粒化工程で前記水田の土を耕起するために用いられる前記ロータリは、アップカットロータリ、ダウンカットロータリ、深耕ロータリ及び超砕土ロータリのいずれか1つ又は2つ以上である。
本発明の第5態様の農地転換方法は、前記農地転換方法であって、前記団粒化工程で前記水田の土を耕起するために用いられる前記ロータリは、アップカットロータリである。
本発明の第6態様の農地転換方法は、前記農地転換方法であって、前記団粒化工程の後に行う工程であって、前記団粒化工程で団粒化させた土の土壌分析を行って、団粒化させた土を畑地に利用するために必要な養分及び当該養分の必要量を特定する分析工程、を含む。
本発明の第7態様の農地転換方法は、前記農地転換方法であって、前記分析工程の後に行う工程であって、前記団粒化工程で団粒化させた土に前記分析工程で特定した前記必要量の前記必要な養分に相当する土壌改良資材を混入させる土壌改良工程、を含む。
本発明の第8態様の農地転換方法は、前記農地転換方法であって、前記土壌改良工程では、前記団粒化工程で団粒化させた土に前記土壌改良資材を混入させた土のpH値を5.8~6.2にする。
本発明の第9態様の農地転換方法は、前記農地転換方法であって、前記土壌改良工程では、前記団粒化工程で団粒化させた土に前記土壌改良資材を混入させた土の塩基飽和度を60%~80%にする。
本発明の第10態様の農地転換方法は、前記農地転換方法であって、前記土壌改良資材を混入させた土に含まれる、酸化カルシウム、酸化マグネシウム及び酸化カリウムの各塩基飽和度は、それぞれ、40%~70%、12%~25%及び1%~8%のいずれかの値であって、前記酸化カルシウム、前記酸化マグネシウム及び前記酸化カリウムの全塩基飽和度を60%~80%にする。
本発明の第11態様の農地転換方法は、前記農地転換方法であって、前記酸化カルシウムのモル量を前記酸化マグネシウムのモル量で除した値を6以下にする。
本発明の第12態様の農地転換方法は、前記農地転換方法であって、前記酸化マグネシウムのモル量を前記酸化カリウムのモル量で除した値を2以上にする。
本発明の第13態様の農地転換方法は、前記農地転換方法であって、前記土壌改良資材を混入させた土において、100g当たりの乾土のトルオーグリン酸の含有量を20mg~50mgにする。
本発明の第14態様の農地転換方法は、前記農地転換方法であって、前記土壌改良資材を混入させた土における腐植の含有率を3質量%以上にする。
本発明の第15態様の農地転換方法は、前記農地転換方法であって、前記土壌改良工程の後に行う工程であって、前記土壌改良資材を混入させた土に、有機態窒素の涵養を行う涵養工程、を含む。
本発明の第16態様の農地転換方法は、前記農地転換方法であって、前記涵養工程では、前記水田に放置された稲わらに石灰窒素を散布して、前記石灰窒素が散布された前記稲わらを前記土壌改良資材を混入させた土とともに耕起して、有機態窒素の涵養を行う。
本発明の第17態様の農地転換方法は、前記農地転換方法であって、前記水位調整工程では、前記水閘による前記地下の水位を前記農地の地面から60cmの深さの位置以下となるように調整する。
本発明は、土づくりを考慮した水位調整システムを用いての農地を水田から畑地に転換する農地転換方法を提供する。
本実施形態の地下水位調整システムを用いて、2つの農地のうち一方の農地を水田として利用し、他方の農地を畑として利用している状態を示す概略図である。 本実施形態の水閘の全体図(概略図)である。 本実施形態の水閘を構成する取り出し部材の全体図(概略図)である。 本実施形態の水閘の下側部分の部分断面図である。 本実施形態の水閘を構成するスライド筒をスライドさせて外筒に固定した状態を説明するための図である。 本実施形態の取り出し部材を構成する伸縮筒(蛇腹)を伸縮させた状態を説明するための図である。 本実施形態の水閘の下側部分の部分断面図であって、取り出し部材を外筒に接触させて配置した状態(セット状態)を説明するための図である。 本実施形態の水閘の下側部分の部分断面図であって、取り出し部材を外筒から離間させた状態(オフセット状態)を説明するための図である。 本実施形態の水閘の全体図(概略図)であって、使用時の状態を説明するための図である。 本実施形態の水閘の下側部分の部分断面図であって、使用時の水の流れを説明するための図である。 本実施形態の水閘を用いて農地を水田として利用している場合と、農地を畑として利用している場合とを説明するための図である。 本実施形態の水閘の取り出し部材をセット状態の位置からオフセット状態の位置に移動させて行われるフラッシングを説明するための図である。 図2Kで説明するフラッシングの際に、農地の水の移動を説明するための図である。 本実施形態の地下水位調整システムを構成する排液器の斜視図である。 本実施形態の排液器の側面図である。 本実施形態の排液器を水田用に利用している場合の図であって、水田に隣接して配置されている排液器から水がオーバーフローしている状態の図である。 本実施形態の排液器を水田用に利用している場合の図であって、水田に隣接して配置されている排液器がある設定水位で水田の水位を維持している状態の図である。 本実施形態の排液器を水田用に利用している場合の図であって、水田に隣接して配置されている排液器が図4Bの場合よりも低い設定水位で水田の水位を維持している状態の図である。 本実施形態の排液器を水田用に利用している場合の図であって、水田に隣接して配置されている排液器が設定水位を0cmに設定している状態の図である。 本実施形態の排液器を畑用に利用している場合の図である。 本実施形態の排液器を畑用に利用している場合の図であって、排液器が明渠の一部を構成している状態の図である。 本実施形態の排液器を畑用に利用している場合の図であって、排液器が土留め板を開放して明渠からの水を排液している状態の図である。 図1の水田用に使用される潅水装置の水閘及び排液器を含む部分の拡大図である。 本実施形態の転換方法のフロー図である。 本実施形態の転換方法の一部(水田から畑地に転換する方法)のフロー図である。 本実施形態の転換方法の一部(畑地から水田に転換する方法)のフロー図である。 水田土壌及び畑地土壌の特徴を説明するための図である。
≪概要≫
以下、本実施形態における農地を水田PFから畑地TFに又は畑地TFから水田PFに転換する方法(以下、本実施形態の転換方法という。)ついて図面を参照しながら説明する。ここで、本実施形態の転換方法は、一例として、図1に示される水位調整システム10(以下、地下水位調整システム10ということもある)又は水位調整装置20(以下、地下水位調整装置20ということもある)を用いて実施される。そこで、まず、本実施形態の地下水位調整システム10の機能及び構成について説明する。次いで、本実施形態の転換方法について説明する。なお、本実施形態の作用効果については、本実施形態の転換方法の説明の中で説明する。
以下の説明において参照するすべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
≪概要≫
以下、本実施形態の地下水位調整システム10(図1参照)について説明する。まず、本実施形態の地下水位調整システム10の機能及び構成について説明する。次いで、本実施形態の作用効果について説明する。なお、以下の説明において参照するすべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
≪地下水位調整システムの機能及び構成≫
図1は、本実施形態の地下水位調整システム10を用いて、畦畔RDを挟む2つの農地FLのうち一方の農地FLを水田PFとして利用し、他方の農地FLを畑地TFとして利用している状態を示す概略図である。本実施形態の地下水位調整システム10は、複数(図1では2箇所)の農地FLの水位(農地FL上の水位及び農地FLの地下の水位)を容易に調整して、作物FP1、FP2(作物FP1は一例として稲、作物FP2は一例として麦等の野菜)の生育段階に応じた水位管理する機能を有する。なお、以下では、2つの農地FLのうち一方の農地FLを水田PFとして利用し、他方の農地FLを畑地TFとして利用している状態の例示である図1を参照しながら説明するが、本実施形態の地下水位調整システム10は2つの農地FLのうちの両方を水田PF又は畑地TFとして利用してもよい。
本実施形態の地下水位調整システム10は、図1に示されるように、一例として、複数(図1では2台)の地下水位調整装置20と、排液管30とを備えている。排液管30は、各地下水位調整装置20から流出した水W(液体の一例)が流入する液体経路とされている。
<地下水位調整装置>
各地下水位調整装置20は、図1に示されるように、水閘22と、供給マス24(供給部の一例)と、農地内水路26(水路部の一例)と、排液器28と、複数の流出水路29A、29B(輸送管の一例)とを備えている。各地下水位調整装置20を構成する複数の構成要素(水閘22、供給マス24、農地内水路26、排液器28及び複数の流出水路29A、29B)は、畦畔RD及び農地FLを構成する土SOに埋設又は固定されている。そして、本実施形態の地下水位調整システム10が複数の農地FLの水位管理をする機能を有するのに対して、本実施形態の各地下水位調整装置20は各農地FLの水位を容易に調整して作物FP1又は作物FP2の生育段階に応じた水位について管理する機能を有する。
以下、各地下水位調整装置20を構成する複数の構成要素について説明する。
〔水閘〕
本実施形態の水閘22は、水頭圧を利用して、農地FLの水位(農地FL上の水位及び農地FLの地下の水位)を容易に調整する機能を有する。本実施形態の水閘22は、図1、図2J、図2L及び図6に示されるように、その上端が畦畔RDの表面(上面)の位置と略同一となるように、畦畔RDに埋設されるようになっている。ここで、本明細書における「略同一」とは、畦畔RDの表面に対して上下方向に例えば±5cm程度を意味する。なお、図中における矢印Xの指す方向は、上下方向とされ、符号+Xの指す方向は上下方向の上側、符号-Xの指す方向は下側を意味する。
図2Aは、本実施形態の水閘22の全体図(概略図)である。また、図2Bは、本実施形態の水閘22を構成する取り出し部材250の全体図(概略図)である。
本実施形態の水閘22は、図2A、図2B等に示されるように、外筒200と、流入部210と、流出部220と、スライド筒230と、蓋240と、取り出し部材250とを備えている。
また、本実施形態の水閘22は、基本的な構成として、底壁204が下側となる姿勢で畦畔RDに埋設される有底の筒であって、周壁202における上下方向の異なる位置に2つの貫通孔206A、206Bが形成されている外筒200と、2つの貫通孔206A、206Bのうち上側の貫通孔206Aに固定され、外筒200の外部から内部へ水Wを流入させる流入部210と、2つの貫通孔206A、206Bのうち下側の貫通孔206Bに固定され、内部から外部へ水Wを流出させる流出部220と、内部に収容される筒であって、流入部210よりも下側かつ底壁204から離間した流出部220と同じ又は流出部220よりも上側の位置で下端部が周方向全周に亘って周壁202に接触され、上下方向に沿って伸縮可能な中筒252と、外筒200における上側の部分に嵌ってスライド可能とされるスライド筒230と、スライド筒230に取り付けられ、スライド筒230の上側の開口を開閉可能な蓋240と、を備えている。そして、スライド筒230はその開口を閉じた状態における蓋240の上下方向の位置が畦畔RDの表面の位置と略同一となるように位置決めされ、中筒252はその上端が畦畔RDに隣接する農地FLに必要とされる水位の位置となる長さに調整されるようになっている。
〈外筒〉
外筒200は、有底の筒(有底筒)とされている。すなわち、外筒200は、周壁202と、底壁204とを有する。外筒200は、一例として、円筒状とされている。そして、外筒200は、底壁204が上下方向の下側となる姿勢で畦畔RDに埋設されるようになっている(図1、図2A等参照)。また、周壁202における上下方向の下側、すなわち、底壁204側の部分には、2つの貫通孔206A、206Bが形成されている(図2C参照)。貫通孔206Aと貫通孔206Bは、周壁202における上下方向の異なる位置、すなわち、上下方向にオフセットした位置に形成されている。貫通孔206Aと貫通孔206Bは、一例として、周壁202の径方向において互いに逆向きに開口している。
なお、貫通孔206Aと貫通孔206Bとは、周壁202における上下方向の異なる位置に形成されていればよく、周壁202の径方向において互いに逆向きに開口していなくてもよい。また、図2Cに示されるように、外筒200における上下方向の下側の部分には、上下方向の上側から下側に亘って徐々に径が小さくなる内周面208Aを有する内壁208が設けられている。内周面208Aの技術的意味については後述する。
〈流入部及び流出部〉
流入部210は、2つの貫通孔206A、206Bのうち上下方向の上側の貫通孔206Aに固定され、外筒200の外部から内部ISへ水Wを流入させるための部材とされている(図2A、図2H、図2I等参照)。流入部210は、筒状とされ、貫通孔206Aに嵌め込まれた状態でその一端側の部分が外筒200の周壁202に固定されている。なお、流入部210の他端は、後述する農地内水路26に接続されるようになっている(図1参照)。
また、流出部220は、2つの貫通孔206A、206Bのうち上下方向の下側の貫通孔206Bに固定され、外筒200の内部ISから外部へ水Wを流出させるための部材とされている(図2A、図2H等参照)。流出部220は、筒状とされ、その一端側の部分が外筒200の底壁204上部における貫通孔206Bの周縁に繋がっている。なお、流出部220の他端は、後述する流出水路29Aに接続されるようになっている(図1参照)。
〈スライド筒及び蓋〉
スライド筒230は、一例として、両端が開口した円筒とされている。スライド筒230は、図2Aに示されるように、外筒200における上下方向の上側の部分に配置されている。また、スライド筒230は、その内周面に外筒200の外周面を対向させた状態で嵌っており、かつ、外筒200に対してスライド可能とされている(図2D参照)。そして、スライド筒230は、スライド可能な範囲において、外筒200に対してねじ等の固定部材(図示省略)により固定されるようになっている。なお、スライド筒230の上端部分の内周には、後述する蓋240を固定するための雌ねじ(図示省略)が形成されている。
蓋240は、スライド筒230に取り付けられ、スライド筒230の上下方向の上側の開口を開閉可能とされている。蓋240の外周には、スライド筒230の雌ねじと嵌め合う雄ねじ(図示省略)が形成されている。
以上の構成により、蓋240が取り付けられたスライド筒230(図2A参照)、すなわち、上端部分の開口が蓋240により閉じられた状態におけるスライド筒230は、図1に示されるように、蓋240の上下方向の位置(スライド筒230の上端の位置)が畦畔RDの表面(上面)の位置と略同一となるように位置決めされるようになっている。
〈取り出し部材〉
取り出し部材250は、図2Aに示されるように、外筒200及び外筒200に嵌っているスライド筒230で形成される内部ISに収容されるようになっている、また、取り出し部材250は、外筒200及びスライド筒230の内部ISから取り出し可能な部材とされている。図2Bは、外筒200及びスライド筒230の内部ISから取り出された取り出し部材250の全体図(概略図)である。取り出し部材250は、図2Bに示されるように、中筒252と、シャフト部254とを有する。
(中筒)
中筒252は、外筒200及びスライド筒230の内部ISに収容され、上下方向に沿って伸縮可能とされている。中筒252は、その上端が畦畔RDに隣接する農地FLに必要とされる水位の位置となる長さに調整されて使用されるようになっている(図1参照)。
中筒252は、図2Bに示されるように、伸縮筒252Aと、下側キャップ252Bと、上側キャップ252Cと、固定用ねじ252Dとを有する。
伸縮筒252Aは、一例として、図2A、図2B等に示されるように、両端が開口し、周壁が伸縮可能な蛇腹とされている。
下側キャップ252Bは、伸縮筒252Aの上下方向の下側の部分に取り付けられている。下側キャップ252Bは、外観上は円柱状の部材とされているが(図2B及び図2C参照)、上下方向に貫通しつつ、後述する中空シャフト254Aに固定されている。
また、下側キャップ252Bの一部は、上下方向の上側から下側に亘って徐々に径が小さくなる弾性部材252B1とされている。ここで、本実施形態では、弾性部材252B1は、一例としてゴム製とされている。中筒252は、その使用時において、伸縮筒252Aの下端部である弾性部材252B1が周方向全周に亘って外筒200の一部である内壁208の内周面208Aに接触された状態で、外筒200に保持されるようになっている(図2C参照)。この場合、下側キャップ252Bの上下方向の位置は、外筒200に形成されている2つの貫通孔206A、206Bのうち上下方向の上側の貫通孔206Aよりも下側かつ外筒200の底壁204から離間した貫通孔206Bと同じ又は貫通孔206Bよりも上側の位置となるように設定されている。すなわち、この場合における下側キャップ252Bの上下方向の位置は、流入部210よりも下側かつ外筒200の底壁204から離間した流出部220よりも上側の位置となるように設定されている。
上側キャップ252Cは、図2A及び図2Bに示されるように、伸縮筒252Aの上下方向の上側の部分に取り付けられている。上側キャップ252Cは、外観上は円柱状の部材とされているが(図2B及び図2E参照)、上下方向に貫通しつつ、後述する中空シャフト254Aに、固定用ねじ252Dにより固定されるようになっている。具体的には、上側キャップ252Cは、中筒252の上端(上側キャップ252Cの上端)が農地FLに必要とされる水位の位置となる中筒252の長さに調整された状態で、前記シャフト部に固定されるようになっている。
(シャフト部)
シャフト部254は、図2Bに示されるように、中空シャフト254Aと、スライドシャフト254Bと、留め具254Cとを有する。
中空シャフト254Aは、前述のとおり、下側キャップ252Bに固定されている。この場合、中空シャフト254Aは、中筒252の軸に重なった位置に配置されている。中空シャフト254Aは、その下端が下側キャップ252Bから下側にはみ出さないようにして、下側キャップ252Bに固定されている。また、中空シャフト254Aの長さは、伸縮筒252Aが伸びて最大長となった状態の中筒252の長さよりも長く設定されている。そのため、中空シャフト254Aは、伸縮筒252Aの伸縮長さに関わらず、中筒252の上端(上側キャップ252Cの上端)からはみ出している。別言すると、中空シャフト254Aは、その一部が中筒252の内部ISに配置されている。
スライドシャフト254Bは、中空シャフト254Aの内部に嵌め込まれ、中空シャフト254Aに対してスライド可能とされている(図2B及び図2E参照)。また、スライドシャフト254Bは、固定部材254Dを用いて中空シャフト254Aに固定可能されるようになっている。
スライドシャフト254Bは、通常、その下端の位置を中空シャフト254Aの下端の位置に合わせた状態で中空シャフト254Aに固定されている。これに対して、スライドシャフト254Bは、通常の状態よりも下側の所定の位置で固定された状態では、外筒200の底壁204に接触して底壁204に支持されつつ中空シャフト254Aを支持するようになっている(図2G参照)。これに伴い、スライドシャフト254Bは、弾性部材252B1の外周部分が内壁208の内周面208Aから離間するようになっている(図2G参照)。
〔供給マス〕
次に、本実施形態の供給マス24について図1を参照しながら説明する。供給マス24は、主給液管MSから供給された水Wを貯留する機能と、貯留した水Wを農地FL(水田PF)に供給する機能を有する。供給マス24は、地下に埋設されている主給液管MSに繋げられている。なお、本実施形態では、供給マス24は、農地FLを挟んで水閘22の反対側に配置されている。
〔農地内水路〕
次に、本実施形態の農地内水路26について図1を参照しながら説明する。農地内水路26は、水閘22の流入部210と供給マス24とを繋ぎ、供給マス24から流入部210に水Wを輸送するための水路とされている。そして、農地内水路26の一部は、農地FLの地下に配置された暗渠管26Aとされている。暗渠管26Aの外周には、複数の貫通孔が形成されている。
〔排液器〕
次に、本実施形態の排液器28について、図1、図3A及び図3Bを参照しながら説明する。ここで、図3Aは排液器28の斜視図、図3Bは排液器28の側面図である。
本実施形態の排液器28は、基本的な構成として、底板300、底板300の幅方向の両端側に配置されている一対の対向壁310、及び、底板300の奥行方向における一端側に配置され、対向壁310同士を繋ぎ、排液管30に流出する水Wを通過させる貫通孔322が形成されている繋ぎ壁320を有し、底板300の奥行方向における他端側を農地FLに向けた状態で農地FLに隣接して配置される本体360と、底板300の奥行方向の中央に配置され、上下方向にスライドして上端の位置が変更可能なシャッター330と、底板300の奥行方向におけるシャッター330を挟んで繋ぎ壁320の反対側で一対の対向壁310に支持されている土留め板340と、を備えている。
本実施形態の排液器28は、図1に示されるように、農地FLを水田PFとして利用する場合には水田PFに隣接して配置され、農地FLを畑地TFとして利用する場合には明渠ODを挟んで畑地TFの反対側における明渠ODに隣接する位置に配置されるようになっている。そして、本実施形態の排液器28は、農地FLを水田PFとして利用する場合には水田PFの水Wの水位を調整する機能と、農地FLを畑地TFとして利用する場合には明渠ODから水Wを排水する機能を有する。
さらに、本実施形態の排液器28は、農地FLを水田PFとして利用する場合であって前述の水閘22とともに同じ水田PFに対して設置される場合には、以下の機能を有する。
すなわち、排液器28は、水田PFの水Wの水位が何らかの理由(例えば大雨)により水閘22による設定水位よりも上側に(高く)なる場合に、その設定により水田PFの水Wの水位を定められた水位(図6における第2板334の上端に引かれた破線を参照)よりも上側にならないようにする機能を有する。
本実施形態の排液器28は、図3A及び図3Bに示されるように、内部に空間が形成されている箱状とされ、底板300と、一対の対向壁310と、繋ぎ壁320と、シャッター330と、土留め板340と、流出部350(接続部の一例)とを備えている。ここで、図中における矢印Zの指す方向は、排液器28の奥行方向とされ、符号+Zの指す方向は奥行方向の手前側、符号-Zの指す方向は奥側を意味する。また、矢印Yの指す方向は、排液器28の幅方向とされ、符号+Yの指す方向は幅方向の手前側、符号-Yの指す方向は幅方向の奥側を意味する。
以下、排液器28の各構成要素(底板300、一対の対向壁310等)の概要について説明し、次いで各構成要素の詳細について説明する。
(排液器の各構成要素の概要)
底板300は、上下方向から見て、矩形状とされている(図3A参照)。
一対の対向壁310は、底板300の幅方向の両端に配置され、底板300の上面から上下方向の上側に突出して対向している(図3A及び図3B参照)。
繋ぎ壁320は、底板300の奥行方向の奥側の端に配置され、一対の対向壁310を構成する各対向壁310における底板300の奥行方向の奥側の端同士を繋いでいる(図3A参照)。
シャッター330は、底板300の奥行方向の中央に配置され、その両側(底板300の幅方向の両端側)で一対の対向壁310に嵌め込まれて一対の対向壁310に支持されつつ、上下方向にスライド可能とされている(図3A及び図4A~図4D参照)。
土留め板340は、底板300の奥行方向の手前側(シャッター330を挟んで繋ぎ壁320の反対側)の端に配置され、一対の対向壁310に支持されている(図3A参照)。なお、土留め板340の高さ(上下方向の長さ)は、一対の対向壁310及び繋ぎ壁320の高さ(上下方向の長さ)よりも低く(短く)設定されている(図3A参照)。
流出部350は、円筒状とされ、繋ぎ壁320における底板300の奥行方向の奥側の面から更に奥側に突出するように配置され、底板300の奥行方向から見て後述する繋ぎ壁320に形成されている貫通孔322(図3B参照)を囲んでいる。
以上のとおりであるから、本実施形態の排液器28は、底板300と、一対の対向壁310と、繋ぎ壁320と、土留め板340とで囲まれた内部空間を形成し、底板300の奥行方向の手前側かつ上下方向の上側の部分が開口し、奥側が前述の貫通孔322により開口している箱を構成している。また、シャッター330は、上記内部空間を底板300の奥行方向の中央で仕切っている。
なお、本実施形態の排液器28は、底板300の奥行方向における手前側、すなわち、土留め板340側が農地FLに向いた状態で配置されるようになっている(図1参照)。具体的には、排液器28は、農地FLを水田PFとして利用する場合には土留め板340を水田PFの端に隣接させた状態で配置され、農地FLを畑地TFとして利用する場合には土留め板340を明渠ODの端に隣接させた状態で配置されるようになっている。また、本実施形態では、底板300、一対の対向壁310及び流出部350の組み合せ(本体360の一例)は、一例として、一体的に形成された中空の成形品とされている。また、当該組み合せは、一例として、ポリエチレン等の樹脂で形成されている。
次に、排液器28の各構成要素の詳細について説明する。
(底板及び一対の対向壁)
底板300は、前述のとおり、上下方向から見て、矩形状とされている(図3A参照)。
一対の対向壁310における、底板300の奥行方向の手前側かつ上下方向の上側の部分には、上下方向の上端から中央側に向かって徐々に底板300の奥行方向の手前側に近づく傾斜面314が形成されている。そのため、各対向壁310は、底板300の幅方向の手前側から見ると、矩形状の板の1つの角の周辺部分が斜めに切り欠かれたような形状とされている(図3B参照)。
各対向壁310における、底板300の幅方向の外側の面には、底板300の奥行方向に沿って並ぶ、複数(一例として2つ)の凹み312が形成されている。2つの凹み312は、上下方向に沿った直線状とされている。なお、本実施形態では、2つの凹み312のうち底板300の奥行方向の手前側の凹み312の長さは奥側の凹み312の長さよりも短く設定されている。
また、各対向壁310における、底板300の幅方向の内側の面には、シャッター330及び土留め板340を支持するための凹み(図示省略)が形成されている。
(繋ぎ壁及び流出部)
繋ぎ壁320は、前述のとおり、一対の対向壁310を構成する各対向壁310における底板300の奥行方向の奥側の端同士を繋いでいる(図3A参照)。繋ぎ壁320における、底板300の幅方向の中央かつ上下方向の下側の部分には、円形の貫通孔322が形成されている。
流出部350は、底板300の奥行方向から見て貫通孔322に囲まれている状態で、繋ぎ壁320における底板300の奥行方向の奥側の面から更に奥側に突出している(図3B参照)。流出部350の外周面には、流出水路29Bを取り付けるための雄ねじが形成されている(図3B参照)。
(シャッター)
シャッター330は、2枚の板で構成されている。そして、本実施形態では、当該2枚の板のうち底板300の奥行方向の手前側に配置されている板を第1板332、もう1枚の板を第2板334とする(図3A及び図3B参照)。そして、第2板334は、第1板332の裏面に自身の表面の少なくとも一部を接触させた状態で底板300の奥行方向の奥側に配置されている。第1板332及び第2板334は、それぞれ、一対の対向壁310に支持された状態で、上下方向にスライド可能とされている。
また、第1板332における、底板300の奥行方向の手前側の面には、複数(一例として3つ)の凹み332Aが形成されている。各凹み332Aは、底板300の幅方向に沿った直線状とされ、上下方向に並んでいる。
(土留め板)
土留め板340は、前述のとおり、一対の対向壁310に支持されて上下方向にスライド可能とされている。具体的には、土留め板340は、スライド可能とされていることで、一対の対向壁310に着脱可能とされている。また、土留め板340には、複数(一例として2つ)の凹み340Aが形成されている(図3A参照)。2つの凹み340Aは、底板300の幅方向に沿った直線状とされ、上下方向に並んでいる。なお、本実施形態では、土留め板340には複数の凹み340Aが形成されているとしたが、複数の凹み340Aに換えて複数の貫通孔(図示省略)としてもよい。
なお、本実施形態の排液器28は、農地FLを畑地TFとして利用する場合に、畑地TFに隣接する明渠OD(図5A等参照)に、底板300の奥行方向の手前側(土留め板340側)を沿わせて、明渠ODの一部(明渠ODの側壁の一部)を形成させることで、明渠ODの排液器として使用できる。この場合、図5A~図5Cに示されるように、明渠ODから水Wを排出する場合は、第1板332及び第2板334を上側にスライドさせた状態で土留め板340を上側にスライドさせればよい。
以上より、本実施形態の排液器28は、農地FLを水田PF及び畑地TFとして利用できるようになっている。
〔複数の流出水路〕
本実施形態の流出水路29Aは、一端が水閘22の流出部220(図2A等参照)に接続され、他端が排液管30に接続されるようになっている。そして、流出部220から流出して排液管30に流入する水Wの流路を構成している。
また、本実施形態の流出水路29Bは、一端が排液器28の流出部350(図3B参照)に接続され、他端が排液管30に接続されるようになっている。そして、流出部350から流出して排液管30に流入する水Wの流路を構成している。
以上が、本実施形態の地下水位調整システム10の機能及び構成についての説明である。なお、前述のとおり、本実施形態の地下水位調整装置20は、基本的に地下水位調整システム10を構成する複数の地下水位調整装置20が1つとなった構成といえる。そのため、本実施形態の地下水位調整装置20は、基本的に本実施形態の地下水位調整システム10と同じような機能を発揮することから、本発明の地下水位調整システムの一例と捉えることができる。
≪本実施形態の転換方法≫
次に、本実施形態の転換方法(図7のS10、Sはステップ(工程)という意味。以下、省略。)について、主に、図7~図9を参照しながら説明する。ここで、図7は、本実施形態の転換方法のフロー図である。前述のとおり、本実施形態では、本実施形態の地下水位調整システム10(及び地下水位調整装置20)を用いて、後述する各工程(例えば、図8の団粒化工程S23、図9の肥料混入工程S34等)を行うことで、農地FLを水田PFから畑地TFに転換でき、かつ、農地FLを畑地TFから水田PFに転換できる。このようにして、本実施形態の転換方法では、水田PFと畑地TFとを繰り返して転換できる。図7は、水田PFとして利用されていた農地FLを畑地TFに転換(S20)した後に、畑地TFに転換された農地FLを利用して畑作を行い(S40)、次いで、畑地TFとして利用されていた農地FLを水田PFに転換(S30)した後に、水田PFに転換された農地FLを利用して稲作を行う(S60)ことを意味する。さらに、本実施形態の転換方法では、稲作(S60)を行った後に、再び農地FLを畑地TFに転換(S20)して畑作を行う(S40)ことが可能であることを意味する。
また、図8は、本実施形態の転換方法の一部である、水田PFから畑地TFに転換する方法S20(以下、第1転換方法S20という。)のフロー図である。すなわち、図8のフロー図は、図7のフロー図におけるS20の具体的な内容を示している。これに対して、図9は、本実施形態の転換方法の別の一部である、畑地TFから水田PFに転換する方法S30(以下、第2転換方法S30という。)のフロー図である。すなわち、図9のフロー図は、図7のフロー図におけるS30の具体的な内容を示している。
以下、水田PFの土壌(水田土壌)及び畑地TFの土壌(畑地土壌)の特徴について図10を参照しながら説明し、次いで、水田PFの土壌及び畑地TFの土壌の特徴を踏まえたうえで、本実施形態の転換方法について第1転換方法S20と第2転換方法S30とに分けて説明する。
ここで、本実施形態の第1転換方法S20は、基本的な構成として、農地FLを水田PFから畑地TFに転換する農地転換方法であって、農地FLの地下に配置され、外周に複数の貫通孔が形成されている暗渠管26A、及び、暗渠管26Aに連結され、水頭圧を利用して地下の水位を調整する水閘22を備える水位調整システム10(又は水位調整装置20)を用いて、地下の水位を定められた水位に調整する水位調整工程S22と、水位調整工程S22の後に行う工程であって、水田PFの土SOを耕起しながら水田PFの土SOに腐植酸を含む団粒化材を混入させて、水田PFの土SOを団粒化させる団粒化工程S23と、を含む(図1、図8等参照)。
また、本実施形態の第2転換方法S30は、水田PFとして利用された後に畑地TFとして利用された農地FLを再び水田PFに転換する農地転換方法であって、農地FLの地下に配置され、外周に複数の貫通孔が形成されている暗渠管26A、暗渠管26Aに連結され、水頭圧を利用して地下の水位を調整する水閘22、及び、農地FL上に水Wを供給する供給部24を備える水位調整システム10(又は水位調整装置20)を用いて、地下の水位を上昇させる水位上昇工程S31と、水位上昇工程S31の後に行う工程であって、畑地TFの地面を加圧して畑地TFの地下の浸透水(水W)を減少させる浸透水減少工程S32と、浸透水減少工程S32の後に行う工程であって、水位調整システム10(又は水位調整装置20)を用いて、地面上に水Wを供給する水供給工程S36と、を含む(図1、図9等参照)。
そして、本実施形態の転換方法S10は、第1転換方法S20と、第2転換方法S30とを含み、第1転換方法S20の後に畑地TFとなった農地FLを畑作に利用する工程S40を行い、更に工程S40の後に第2転換方法S30を行って畑地TFから水田PFとなった農地FLを稲作に利用する工程S60を行う(図7参照)。なお、本実施形態の転換方法S10では、工程S60の後に再び第1転換方法S20を行うことが可能となっている。
<水田土壌及び畑地土壌の特徴>
以下、水田土壌及び畑地土壌の特徴について図10を参照しながら説明する。なお、以下の説明において数値範囲に使用する「~」の意味について補足すると、例えば「2cm~3cm」は「2cm以上3cm以下」を意味する。そして、本明細書で数値範囲に使用する「~」は、「『~』の前の記載部分以上『~』の後の記載部分以下」を意味する。
〔水田土壌の特徴〕
水田土壌は、図10に示されるように、地面から地下の方向に向かうに従い(上下方向の上側から下側に向かうに従い)、作土層、鋤床、下層土の順で積層されている積層構造となっている。
そして、水田土壌は、以下のような各特徴を有する。
・作土層の厚みは、一例として15cm程度である。
・作土層の直下には、鋤床がある。鋤床は、不透水層としての機能を有する。
鋤床の厚みは、一例として5cm程度である。
・鋤床の強度は、大型機械に対応するための地耐力の要求から、近年増加傾向にある。
・減水深は、一例として2cm~3cmである。
・水田土壌は、栽培期間の半分以上が湛水状態である。すなわち、水田土壌は、常に酸素不足の状態である。そのため、有機物の分解速度が遅い。
・水田土壌の場合の暗渠管26Aは、主に、排水対策として利用される。すなわち、落水による土壌への酸素供給として利用される。そのため、中干し、コンバインの地耐力、冬季排水・春作業にはよい。
・水田土壌は、用水の酸性化や暗渠管26Aによる溶脱及び資材投入量の減少で,pH値の低下が顕著である。
・水田土壌は、地力窒素の供給力低下(インキュベート窒素減)により、肥料主体の栽培、根張りが悪化する。その結果、不安定な稲作の要因となる。
以上が、水田土壌の特徴についての説明である。
〔畑地土壌の特徴〕
畑地土壌は、図10に示されるように、地面から地下の方向に向かうに従い(上下方向の上側から下側に向かうに従い)、作土層、鋤床、下層土の順で積層されている積層構造となっている。
そして、畑地土壌は、以下のような各特徴を有する。
・畑地TFの作土層の厚みは、水田PFの作土層の厚みよりも厚い。そして、畑地TFの作土層の厚みは、一例として30cm以上が好ましい。
・作土層の直下には、硬盤層がある。そのため、大型機械に対応するための地耐力がある。
・畑地土壌には、降雨等による速やかな表層排水及び縦浸透がみられる。そのため、湛水により、作物の根の酸素不足がみられる。
・畑地土壌は、常に乾燥状態にある。そのため、十分な酸素が含まれ、微生物活動がみられる。その結果、有機物の分解が速い。
・畑地土壌には、栽培する作物に応じた地下水位の調整が必要となる。例えば、開花期の水分要求量が多く、作物種の違いにより畑地土壌への水分の要求が異なる。そのため、排水及び給水のシステムが必要なり、これにより最適な畑地土壌の水分管理が行われる。
・畑地土壌は、水田土壌と異なり、縦のみず道(上下方向のみず道)が形成されている。そのため、降雨による養分の溶脱が起こる。その結果、畑地土壌は、養分等の補給が良品生産の絶対要件となり、手抜き(養分補給を怠ること)は収穫物に直反映する。
以上が、畑地土壌の特徴についての説明である。
以上が、水田土壌及び畑地土壌の特徴についての説明である。
<第1転換方法(農地を水田から畑地に転換する方法)>
本実施形態の第1転換方法S20は、図8に示されるように、水位調整システムの設置(工程)S21、水位調整工程S22、団粒化工程S23、分析工程S24、土壌改良工程S25及び涵養工程S26を含み、基本的にこれらの工程の記載順で行われる。以下、各工程について説明する。
〔水位調整システムの設置(工程)S21〕
本工程は、畑地TFとして利用されていた農地FLに、水位調整システム10(又は水位調整装置20)を設置する工程である(図1参照)。
この場合、暗渠管26Aは、一例として、5m~8mの配置間隔で施工する。これにより、水田PF特有の硬盤(鋤床)があり、水Wの縦浸透が少ない圃場に、地下水位の設定が可能となる。
また、暗渠管26Aと直交するようにモミガラ充填をする弾丸暗渠(図示省略)を組み合わせで施工してもよい。
本実施形態の地下水位調整システム10(又は地下水位調整装置20)の設置に伴い排液器28も設置されるため(図1参照)、再び農地FLを畑地TFから水田PFにした場合の対応も可能となる利点がある。
なお、隣接する水田PFからの浸透水の浸入が想定される場合は、例えば、畦畔RDの隣接する位置に遮水シート(図示省略)や遮水暗渠(図示省略)の施工をしてもよい。また、予め農地FLに水位調整システム10(又は水位調整装置20)が設置されており、畑地TFを水田PFに変換する場合には、本工程は当然に省略できる。
〔水位調整工程S22〕
本工程では、水位調整システムの設置(工程)S21で設置した水閘22(図2A、図2H等参照)の設定水位を調整して、一例として、水閘22による地下の水位を農地FLの地面から60cmの深さの位置以下となるように調整する。なお、前述のとおり、再び農地FLを畑地TFから水田PFにするような場合、すなわち、図7のフロー図においてS30及びS60を行い、再びS20を行う場合、本工程では、水閘22による地下の水位を畑地TF時の設定水位よりも上昇させればよい。
〔団粒化工程S23〕
本工程では、水田PFの土SOを耕起しながら水田PFの土SOに腐植酸を含む団粒化材を混入させて、水田PFの土SOを団粒化させる工程である。本工程は、水田土壌の団粒化促進と、水田土壌の表面水の排除を目的として行われる。
また、本工程では、単粒構造の水田土壌を、団粒が主体の畑地土壌に早期に改善するため、土SOに団粒化材を混入させて耕起し擬似団粒化、すなわち、物理的な改善を図る。擬似団粒化により、土SOの空隙量が増加し大幅な排水性の改善がなされる。ここで、本工程の団粒化材の一例としては、アヅミン(デンカ(株)製、アヅミンはデンカ(株)の登録商標)がある。アヅミンは、腐植酸を主成分とした腐植酸苦土肥料である。本工程では、団粒化材を土SOに混入させることで、土壌粒子の結合を進め、土壌三相(固相、液相及び気相)の割合を調整できる。そのため、土SOの透水性及び肥料保持力を向上させ、いわゆる「湿害」の発生率を減少させ、土SOの保肥力を向上できる。この効果は、農地FLの地下に暗渠管26Aを設置させ、本実施形態の地下水位調整システム10(地下水位調整装置20)と組み合わせて行う本工程の特徴的な効果である。なお、本工程で用いられる団粒化材は、上記の効果を奏する資材であれば、アヅミン以外の資材であってもよい。例えば、PVA系の資材と腐植酸由来の資材とを組み合せた資材であってもよいし、EVA(エチレン酢酸ビニル共重合樹脂)の系資材と腐植酸由来の資材とを組み合せた資材であってもよい。
また、本工程の効果をより発揮させるためには、一例として深耕30cm以上を行うことが好ましい。具体的には、プラウ(図示省略)等により農地FLの地面から少なくとも深さ30cm以内の土SOを耕起する。この場合、更にアップカットロータリ(図示省略)、ダウンカットロータリ(図示省略)、深耕ロータリ(図示省略)、超砕土ロータリ(図示省略)その他のロータリを用いて水田PFの土SOを耕起することが好ましい。その結果、硬盤破砕や根の伸張に好適な土壌構造を形成できる。この場合、例えば、アップカットロータリ、ダウンカットロータリ、深耕ロータリ及び超砕土ロータリの少なくとも1つ又は2つ以上を用いてもよい。
なお、水田PFの土SOを耕起する場合にアップカットロータリを用いることは、転換後の畑地TFにおいて人為的な土壌構造を造ることができる点で、他のロータリを用いる場合よりも有効である。そして、アップカットロータリを用いて水田PFの土SOを耕起すると、土壌の表面の土SOが細粒となりかつ表面から下層側に向けて土SOの粒径を大きくできる。その結果、本工程で更にアップカットロータリを用いて土SOの耕起を行うことで、土壌の排水性を向上させることができる。
〔分析工程S24〕
本工程は、団粒化工程S23で団粒化させた土SOの土壌分析を行って、団粒化させた土SOを畑地TFに利用するために必要な養分及び当該養分の必要量を特定する工程である。
具体的には、本工程では、畑作に必要な土壌養分量の確認を目的とした土壌分析を行う。
本実施形態の土壌分析では、一例として、K、Ca、Mg、リン酸、腐植等の定量分析と、pH値の分析とを行う。水田土壌で畑作物の栽培を行うには、前述の土壌の物理性の改善に加え、土壌の化学性の改善が不可欠である。そのため、本工程で土壌の分析を行い、その結果に基づいて、次工程(土壌改良工程S25)で土壌の化学性の改善を行う。水田土壌は一般的にpH値が低く、かつ、塩基類(K、Ca、Mg)の飽和度も低いため、本工程の分析では次工程(土壌改良工程S25)で畑作に適した化学性の土SOに改善するための基礎資料を得る必要がある。なお、一般的に分析を行うことなく資材の施用が行われているケースも見られるが、分析を行わない不適正な施用は生産性に支障を与える結果となり得る。
また、水田PFを畑地TFに転換した場合に、最も重要な土壌の化学性の要素としてpH値がある。水田PFのpH値は酸性に偏っているため、本実施形態では、pH値を約6(一例として5.8~6.2)に上昇させることを目安とする。また、塩基類についても量とともに相互バランスをとることが必要であり、その積算根拠となる土壌CEC(塩基置換容量、cation exchange capacity)が重要な分析項目になる。
〔土壌改良工程S25〕
本工程は、団粒化工程S23で団粒化させた土SOに分析工程S24で特定した必要量の必要な養分に相当する土壌改良資材を混入させる工程である。ここで、本工程で用いられる土壌改良剤は、一例として、前述のアヅミン、苦土石灰、加里肥料石灰等である。ただし、土壌改良剤は、分析工程S24で特定した養分に相当する資材であれば、これに限られない。
また、畑作に適した土壌の化学性を得るために土壌改良資材の施用を行うが、土壌のpH値に留意することが好ましい。例えば、分析工程S24での土壌分析の結果、大幅にpHを変更するために大量の土壌改良資材の施用をすると、畑作物の育成に支障が出る場合がある。そこで、pH値の調整については、一例として、3年後に約6(一例として5.8~6.2)に上昇させることを目安として徐々にpH値を上昇させていくことが好ましい。なお、栽培する作物によっては最適なpH値が異なる。そこで、本工程では、例えば、アルカリ性を有する土壌改良資材を使用して、土壌のpHの改善を行ってもよい。
また、本工程では、土壌改良資材の一例としてアヅミンを使用することは、以下の理由により好ましい。すなわち、アヅミンは腐植酸を主成分とする。水田土壌は腐植酸の含有率が低い。そのため、アヅミンは、畑作化により消耗が著しい腐植の欠乏状態を十分に補うことができる。また、近年、施用が減少傾向にある堆肥には化学性を改善する機能があるが、本実施形態の土壌改良資材の一例であるアヅミンは前述のとおり腐植酸を有する。そのため、本工程で土壌改良資材に用いられるアヅミンは、土SOの化学性を改善できる点で有効である。
また、ケイ酸吸収が多い畑作物がある。そこで、畑地TFへの転換後にこのような畑作物を栽培するような場合には、本工程の土壌改良資材として、主成分がケイ酸でアルカリ性を有する資材を使用してもよい。このような資材の一例として、BMとれ太郎(全農製)等がある。
また、土壌の陽イオン交換容量に対する塩基飽和度は、酸化カルシウム(CaO)では40%~70%、酸化マグネシウム(MgO)では12%~25%、酸化カリウム(KO)では1%~8%のいずれかの値であって、全塩基飽和度は60%~80%にすることが好ましい。全塩基飽和度とは、酸化カルシウム、酸化マグネシウム及び酸化カリウムを合計した全塩基飽和度をいう。この場合、CaOのモル量をMgOのモル量で除した値を6以下にし、CaOのモル量をKOのモル量で除した値を2以上にすることが好ましい。また、土壌改良資材を混入させた土SOにおいて、100g当たりの乾土のトルオーグリン酸(有効態リン酸)の含有量を20mg~50mgにすることが好ましい。さらに、土壌改良資材を混入させた土SOにおける腐植の含有率を3質量%以上にすることが好ましい。ただし、塩基飽和度はCECにより異なることから、低CECの場合には前述の全塩基飽和度の好ましい範囲よりも高く設定する必要がある。
以上、本工程について説明したが、本工程による土壌改良の効果をより発揮させるためには、一例として深耕30cm以上を行うことが好ましい。このように、深耕を行うことにより、均質な土壌の化学性を得ることができる。なお、本工程で深耕を行う場合、下層土には旧作土より化学性が劣る場合があることから、分析工程S24における土壌分析において土SOのサンプル採取を深耕予定の深さまで段階的に行って地下の深さ方向における分析をすることが好ましい。
〔涵養工程S26〕
本工程は、土壌改良工程S25において土壌改良資材を混入させた土SOに、有機態窒素の涵養を行う工程である。
本工程では、例えば、水田PFで第1転換方法S20の直前に水稲作で圃場(農地FL)に放置された稲わらの腐熟を促進させて、地力窒素(有機態窒素)の涵養を目的とするものである。本工程では、例えば、水稲収穫後に、20g/mの石灰窒素を稲わらの残った農地FLに散布した状態で農地FLを耕起する。別言すると、本工程では、水田PF(として利用された農地FL)に放置された稲わらに石灰窒素を散布して、石灰窒素が散布された稲わらを土壌改良工程S25において土壌改良資材を混入させた土SOとともに耕起して、有機態窒素の涵養を行う。その結果、稲わらの腐熟が促進され、生物性の観点から地力の増進となる。また、本工程のようにして涵養を行うこと(稲わらの土壌還元)は、残存した稲わらを有用な資源として利用できる点で有効である。
以上が、本実施形態の第1転換方法S20(農地を水田から畑地に転換する方法)についての説明である。
<第2転換方法(農地を畑地から水田に転換する方法)>
次に、本実施形態の第2転換方法S30について図9を参照しながら説明する。本実施形態の第2転換方法S30は、水位上昇工程S31、浸透水減少工程S32、分析工程S33、肥料混入工程S34、涵養工程S35、水供給工程S36及び減水深調整工程S37を含み、基本的にこれらの工程の記載順で行われる。以下、各工程について説明する。
〔水位上昇工程S31〕
本工程は、水位調整システム10(又は水位調整装置20)を用いて、地下の水位を上昇させる工程である。具体的には、第1転換方法S20(図8参照)の水位調整工程S22において、水閘22(図2A、図2H等参照)の設定水位を調整して、一例として、水閘22による地下の水位を農地FLの地面から50cmの深さの位置以下となるように設定して、地下の水位を上昇させる。
〔浸透水減少工程S32〕
本工程は、畑地TFの地面を加圧して畑地TFの地下の浸透水を減少させる工程である。
農地FLは、畑地TFとして使用したことで圃場の縦浸透(みず道(図10の縦に引かた一対の破線内))が形成されており、水田PFにした場合に水持ちが非常に悪化していることが考えられる。
そこで、その対策として、一例として、重機(図示省略)での床締めを行い、更に代掻きを(好ましくは複数回)行うことで、畑地TFとして使用されていた農地FLの地面を加圧して、地下浸透水を減らす。また、畦畔RD際からの漏水についても、あぜ波(図示省略)の設置やくろ塗り(畔塗り)作業を行うことが好ましい。
なお、水閘22により調整される地下水位は、代掻き時に過剰窒素等の流出を図る時期、中干しの時期、収穫間際の時期等には最低水位まで低下させるが、その他の時期では基本的に最高水位(図2Jの水稲栽培の場合を参照)とする。
また、畑地TFの表面水の円滑な排出に役立った排液器28は,水稲の生育にあわせてシャッター330の第2板334の高さを変更して常に適正水位を確保するように随時変更を行う(図4A~図4D参照)。
〔分析工程S33〕
本工程は、浸透水減少工程S32で浸透水が減少した土SOの土壌分析を行って、浸透水が減少した土SOを水田PFに利用するために必要な養分及び当該養分の必要量を特定する工程である。
本工程では、水稲作に必要な土壌の養分量の確認を目的として土壌分析(一例として、ケイ酸、腐植等の量の分析)を行う。
ここで、畑地TFから水田PFに再び転換した場合,水稲生育に対して最も影響を与えるのが地力窒素の発現量である。そして、その量によっては無肥料でも倒伏が起こる可能性がある。そのため、復田後3年間くらいは、インキュベーションによる窒素発現量を把握することで基肥の量を調整できる。なお、畑地TFでの野菜作等の後は、農地FLに施肥窒素の残存が見られる。そのため、本工程では、代掻きを(好ましくは複数回)行う等により土壌における残存窒素分の除去を行うことが好ましい。すなわち、本工程では、浸透水が減少した土SOの残存酵素を除去してから土壌分析を行うことが有効である。
〔肥料混入工程S34〕
本工程は、浸透水減少工程S32で浸透水が減少した土SOに分析工程S33で特定した養分に相当する肥料を必要な量混入させる工程である。この場合の肥料の一例としては、アヅミン等がある。
ここで、水稲にとって極めて重要なケイ酸は、畑地TFで農地FLを使用していた際に縦浸透が増加したことで、土壌から大量に減少していることが想定される。また、ケイ酸は、過剰な窒素による倒伏を軽減させるためにも非常に有効であり,登熟歩合の向上を通じた収量向上も期待できる。そのため、本工程におけるケイ酸の施用は、必須要件である。
なお、本工程は、基本的に分析工程S33の土壌分析の結果に基づいて行われるが、逆に過剰になっている場合も想定されることから、ケイ酸及び腐植以外は無施用としてもよい。この場合、肥料を混入させた土SOにおいて、100g当たりの乾土の有効態ケイ酸の含有量を20mg以上にすることが好ましい。また、肥料を混入させた土SOにおける腐植の含有率を3%以上にすることが好ましい。
〔涵養工程S35〕
本工程は、肥料混入工程S34後の農地FL上における畑作時の残渣を利用して土SOの地力窒素(有機態窒素)を涵養する工程である。
本工程では、畑地TF(として利用された農地FL)に放置された畑作時の残渣(一例として、麦わら、豆殻、野菜残渣等)に一例として20g/mの石灰窒素を散布して、石灰窒素が散布された残渣を肥料混入工程S34において肥料を混入させた土SOとともに耕起して、有機態窒素の涵養を行う。その結果、残渣の腐熟が促進され、生物性の観点から地力の増進となる。また、本工程のようにして涵養を行うこと(残渣の土壌還元)は、残渣を有用な資源として利用できる点で有効である。
〔水供給工程S36〕
本工程は、水位上昇工程S31から涵養工程S35まで終了した農地FL上に、水位調整システム10(又は水位調整装置20)を用いて、地面上に水Wを供給する工程である。なお、地面上に供給された水Wの水位は、水閘22(図2Jの水稲栽培の場合を参照)を用いて、設定水位に調整される(図2H参照)。
〔減水深調整工程S37〕
本工程は、1日当たりの減水深が一例として2cm~3cmとなるように、地面を代掻きする工程である。本工程により、漏水が抑制される。
以上が、本実施形態の第2転換方法S30(農地を畑地から水田に転換する方法)についての説明である。
なお、前述の説明のとおり、本実施形態の転換方法S10に含まれる各転換方法(第1転換方法S20及び第2転換方法S30)を用いれば、それぞれ、水位調整システム10(水位調整装置20)を用いたうえで、図8又は図9に示されるフロー図に沿って農地FLの転換を行うことで、土SOの活性化に必要な「物理性、化学性及び生物性の三要素」を考慮した農業生産を実現できる。別言すると、本実施形態を用いれば、土SOの活性化に必要な「物理性、化学性及び生物性の三要素」を考慮したコストパフォーマンスに優れた農業生産を実現できる。
以上が、本実施形態の転換方法についての説明である。
以上のとおり、本発明について特定の実施形態を一例として説明したが、本発明は前述の実施形態に限定されるものではない。例えば、本実施形態の各方法に用いられる水位調整システム10は、本実施形態の構成要素(水閘22等)と異なる構造の水閘(図示省略)を用いてもよい。
10 水位調整システム(地下水位調整システム)
20 水位調整装置(地下水位調整システム)
22 水閘
24 供給マス(供給部)
26 農地内水路
26A 暗渠管
28 排液器
29A 流出水路
29B 流出水路
30 排液管
200 外筒
202 周壁
204 底壁
206A 貫通孔
206B 貫通孔
208 内壁
208A 内周面
210 流入部
220 流出部
230 スライド筒
240 蓋
250 取り出し部材
252 中筒
252A 伸縮筒(蛇腹)
252B 下側キャップ
252B1 弾性部材
252C 上側キャップ
252D 固定用ねじ
254 シャフト部
254A 中空シャフト
254B スライドシャフト
254C 留め具
254D 固定部材
300 底板
310 対向壁
312 凹み
314 傾斜面
320 繋ぎ壁
322 貫通孔
330 シャッター
332 第1板
332A 凹み
334 第2板
340 土留め板
340A 凹み
350 流出部
360 本体
FL 農地
FP1 作物(稲)
FP2 作物(麦等の野菜)
IS 内部
MS 主給液管
OD 明渠
PF 水田
RD 畦畔
SO 土
S10 農地の転換方法
S20 第1転換方法(農地を水田から畑地に転換する方法)
S21 水位調整システムの設置(工程)
S22 水位調整工程
S23 団粒化工程
S24 分析工程
S25 土壌改良工程
S26 涵養工程
S30 第2転換方法(農地を畑地から水田に転換する方法)
S31 水位上昇工程
S32 浸透水減少工程
S33 分析工程
S34 肥料混入工程
S35 涵養工程
S36 水供給工程
S37 減水深調整工程
S40 畑作利用工程(畑作に利用する工程)
S60 稲作利用工程(稲作に利用する工程)
TF 畑地
W 水(液体の一例)

Claims (17)

  1. 農地を水田から畑地に転換する農地転換方法であって、
    前記農地の地下に配置され、外周に複数の貫通孔が形成されている暗渠管、及び、前記暗渠管に連結され、水頭圧を利用して前記地下の水位を調整する水閘を備える水位調整システムを用いて、前記地下の水位を定められた水位に調整する水位調整工程と、
    前記水位調整工程の後に行う工程であって、前記水田の土を耕起しながら前記水田の土に腐植酸を含む団粒化材を混入させて、前記水田の土を団粒化させる団粒化工程と、
    を含む農地転換方法。
  2. 前記団粒化工程では、前記水田の土のうち地面から少なくとも深さ30cm以内の土を耕起する、
    請求項1に記載の農地転換方法。
  3. 前記団粒化工程では、更にロータリを用いて前記水田の土を耕起する、
    請求項2に記載の農地転換方法。
  4. 前記団粒化工程で前記水田の土を耕起するために用いられる前記ロータリは、アップカットロータリ、ダウンカットロータリ、深耕ロータリ及び超砕土ロータリのいずれか1つ又は2つ以上である、
    請求項3に記載の農地転換方法。
  5. 前記団粒化工程で前記水田の土を耕起するために用いられる前記ロータリは、アップカットロータリである、
    請求項4に記載の農地転換方法。
  6. 前記団粒化工程の後に行う工程であって、前記団粒化工程で団粒化させた土の土壌分析を行って、団粒化させた土を畑地に利用するために必要な養分及び当該養分の必要量を特定する分析工程、
    を含む請求項1~5のいずれか1項に記載の農地転換方法。
  7. 前記分析工程の後に行う工程であって、前記団粒化工程で団粒化させた土に前記分析工程で特定した前記必要量の前記必要な養分に相当する土壌改良資材を混入させる土壌改良工程、
    を含む請求項6に記載の農地転換方法。
  8. 前記土壌改良工程では、前記団粒化工程で団粒化させた土に前記土壌改良資材を混入させた土のpH値を5.8~6.2にする、
    請求項7に記載の農地転換方法。
  9. 前記土壌改良工程では、前記団粒化工程で団粒化させた土に前記土壌改良資材を混入させた土の塩基飽和度を60%~80%にする、
    請求項7又は8に記載の農地転換方法。
  10. 前記土壌改良資材を混入させた土に含まれる、酸化カルシウム、酸化マグネシウム及び酸化カリウムの各塩基飽和度は、それぞれ、40%~70%、12%~25%及び1%~8%のいずれかの値であって、前記酸化カルシウム、前記酸化マグネシウム及び前記酸化カリウムの全塩基飽和度を60%~80%にする、
    請求項9に記載の農地転換方法。
  11. 前記酸化カルシウムのモル量を前記酸化マグネシウムのモル量で除した値を6以下にする、
    請求項10に記載の農地転換方法。
  12. 前記酸化マグネシウムのモル量を前記酸化カリウムのモル量で除した値を2以上にする、
    請求項10又は11に記載の農地転換方法。
  13. 前記土壌改良資材を混入させた土において、100g当たりの乾土のトルオーグリン酸の含有量を20mg~50mgにする、
    請求項10~12のいずれか1項に記載の農地転換方法。
  14. 前記土壌改良資材を混入させた土における腐植の含有率を3質量%以上にする、
    請求項10~13のいずれか1項に記載の農地転換方法。
  15. 前記土壌改良工程の後に行う工程であって、前記土壌改良資材を混入させた土に、有機態窒素の涵養を行う涵養工程、
    を含む請求項7~14のいずれか1項に記載の農地転換方法。
  16. 前記涵養工程では、前記水田に放置された稲わらに石灰窒素を散布して、前記石灰窒素が散布された前記稲わらを前記土壌改良資材を混入させた土とともに耕起して、有機態窒素の涵養を行う、
    請求項15に記載の農地転換方法。
  17. 前記水位調整工程では、前記水閘による前記地下の水位を前記農地の地面から60cmの深さの位置以下となるように調整する、
    請求項1~16のいずれか1項に記載の農地転換方法。
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