JP7228236B2 - 遠心分離カラム及び分析対象物質の分析方法 - Google Patents
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Description
[1]温度応答性ポリマーを含む分離層を有する遠心分離カラム。
[2]分析対象物質及び夾雑物質を含む試料を[1]に記載の遠心分離カラムに供給し、前記分離層の温度を0~80℃の範囲に制御しつつ遠心処理し、前記分析対象物質を前記夾雑物質から分離した後、前記分析対象物質を分析する、分析対象物質の分析方法。
本発明の遠心分離カラムは、温度応答性ポリマーを含む分離層を有する。
温度応答性ポリマーとしては、0~80℃の温度範囲内で水和力が変化するポリマーを例示できる。温度に応じて温度応答性ポリマーの水和力が変化することで、生体成分や医薬品等を吸着させたり、脱離させたりすることができる。本発明の遠心分離カラムを用いて0~80℃の温度範囲内で遠心分離を行い、分析対象物質又は夾雑物質のいずれか一方を分離層の温度応答性ポリマーに吸着させることで、分析対象物質を夾雑物質から分離することができる。
温度応答性ポリマーの水に対する下限臨界溶解温度は、公知の方法で測定できる。例えば、種々の濃度の温度応答性ポリマーの水溶液を調製した後、水溶液の温度を上下させて2相分離する温度を測定することで、水に対する下限臨界溶解温度を求めることができる。
温度応答性ポリマーに用いるモノマー(a)は、1種でもよく、2種以上でもよい。
温度応答性ポリマーに用いるモノマー(b)は、1種でもよく、2種以上でもよい。
温度応答性ポリマーに用いるモノマー(c)は、1種でもよく、2種以上でもよい。
モノマー(d)としては、例えば、n-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、N-tert-ブチル(メタ)アクリルアミド、フェニル(メタ)アクリルアミドを例示できる。なかでも、疎水性度の点から、n-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレートが好ましく、n-ブチルメタクリレート、tert-ブチルメタクリレートがより好ましく、n-ブチルメタクリレートが特に好ましい。なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートの総称である。
温度応答性ポリマーに用いるモノマー(d)は、1種でもよく、2種以上でもよい。
ポリマー(A)中のモノマー(a)に基づく構成単位(以下、「モノマー(a)単位」と記す。他のモノマーに基づく構成単位も同様に記す。)の割合は、全モノマー単位に対して、50~99.7モル%が好ましく、80~99.7モル%がより好ましい。モノマー(a)単位の割合が前記範囲の下限値以上であれば、温度に応答した相転移挙動は得られる。モノマー(a)単位の割合が前記範囲の上限値以下であれば、電荷を導入することができる。
なお、モノマー(a)単位、モノマー(b)単位、モノマー(c)単位及びモノマー(d)単位の合計は100モル%を超えない。
なお、Mwは、テトラヒドロフランを溶離液とするゲル浸透クロマトグラフィーを使用し、分子量既知のポリスチレンを用いて検量線を作成して測定したポリスチレン換算分子量である。
ビーズ及び多孔質体を形成する材料としては、例えば、シリカゲル、ポリスチレン、ポリグリシジルメタクリレート、ポリヒドロキシメタクリレート等の樹脂を例示できる。
官能基を有するビーズ及び多孔質体の具体例としては、例えば、アミノプロピルシリカゲル(ワコーシル(登録商標)NH2(64~210μm)、富士フィルム和光純薬工業社製)、アミノプロピル基修飾ポリグリシジルメタクリレート樹脂、アミノプロピル基修飾ポリヒドロキシメタクリレート樹脂を例示できる。ビーズ及び多孔質体は、1種でもよく、2種以上でもよい。
縮合剤としては、例えば、1-エトキシカルボニル-2-エトキシ-1,2-ジヒドロキノリン(EEDQ)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、二炭酸ジ-tert-ブチル(Boc2O)を例示できる。縮合剤は、1種でもよく、2種以上でもよい。
前記官能基と前記反応性基の反応させる際の反応温度は、適宜設定でき、例えば、20~40℃とすることができる。
重合温度は、適宜設定でき、例えば、50~90℃とすることができる。
遠心分離カラムにおける分離層の充填率は、適宜設定でき、例えば、カラム容積に対して、20~90%とすることができる。
分析対象物質及び夾雑物質を含む試料中の分析対象物質を液体クロマトグラフ、液体クロマトグラフィータンデム質量分析装置(LC-MS/MS)等で分析する際、本発明の遠心分離カラムを用いて前処理を行うことで、分析対象物質を夾雑物質から分離できる。
本発明の分析対象物質の分析方法では、分析対象物質及び夾雑物質を含む試料を本発明の遠心分離カラムに供給し、分離層の温度を0~80℃の範囲に制御しつつ遠心処理し、分析対象物質を夾雑物質から分離した後、分析対象物質を分析する。夾雑物質を除去することにより、分析精度が向上し、また分析装置(特に液体クロマトグラフィーカラム)の保護効果が高くなる。
夾雑物質は、試料中の分析対象物質以外の物質のうち、温度応答性ポリマーへの吸着特性が分析対象物質と異なる物質である。夾雑物質としては、分析対象物質として例示したものと同様の物質を例示できる。試料中のどの物質が分析対象物質となり、どの物質が夾雑物質となるかは、分析の目的に応じて決まる。例えば、生体試料中の特定の医薬品を分析対象物質とし、生体成分を夾雑物質として除去することで、生体試料中の医薬品の量を高精度に分析できる。
分離層16の温度が温度応答性ポリマーの下限臨界溶解温度よりも低温の場合、温度応答性ポリマーが親水性となり、医薬品が分離層16に吸着され、生体成分が分離層16を通過してマイクロチューブ20に回収される。これにより、アルブミン等の生体成分を精製できる。
また、分離層16に医薬品を吸着させた場合、別のマイクロチューブ20に装着した遠心分離カラム10に溶出液を供給し、分離層16の温度を温度応答性ポリマーの下限臨界溶解温度よりも高温に制御した状態で遠心処理するする。これにより、分離層16から医薬品を溶出させて回収できる。
本発明では、温度応答性ポリマーを利用して、分離層16の温度を制御して分析対象物質及び夾雑物質の吸着及び脱離を制御するため、必ずしも溶出液として有機溶媒を用いなくてもよい。溶離液を水系から有機系に移行させる液体クロマトグラフやLC-MS/MSでは、溶出液が有機溶媒であると、液体クロマトグラフィーカラム内での分析対象物質の吸着が不安定になり、分析精度が低下する。液体クロマトグラフやLC-MS/MS等での分析精度が高くなる点では、溶出液は水系溶媒が好ましい。
遠心処理時の分離層の温度を制御する方法は、特に限定されず、例えば、特定の温度に制御した試料や溶出液を遠心分離カラムに供給して遠心処理する方法、温度制御機能を有する遠心分離機によって温度を制御しつつ遠心処理する方法を例示できる。なかでも、分離層の温度を容易に制御できる点から、特定の温度に制御した試料や溶出液を遠心分離カラムに供給して遠心処理する方法が好ましい。
前処理で回収した分析対象物質の分析は、公知の方法で行える。
また、本発明では、従来の固相抽出のように有機溶媒による抽出を行う必要がない。分離層に一旦吸着させた分析対象物質を溶出する場合に水系溶媒を使用することで、液体クロマトグラフやLC-MS/MS等での分析精度をさらに向上させることができる。
[製造例1]
(1)アミノプロピルシリカゲル表面への重合開始剤(v-501)の導入
二口ナスフラスコ(100mL)に、溶媒としてN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)を約10mL入れた後、重合開始剤としてV-501(4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、富士フィルム和光純薬工業社製)を3.50g(12.5mmol)、縮合剤として1-エトキシカルボニル-2-エトキシ-1,2-ジヒドロキノリン(EEDQ、シグマアルドリッチ社製)を6.18g(25.0mmol)溶解した。次いで、アミノプロピルシリカゲル(ワコーシル(登録商標)NH2(64~210μm)、富士フィルム和光純薬工業社製)をステンレス試験用ふるいにかけて分級したものを5.0g入れ、最終的にDMFの全量を50mLとした。次いで、超音波槽で脱気しながら30分間窒素バブリングし、フラスコ内を完全に窒素置換した。室温(25℃)で6時間振とうし、反応させた。反応後、吸引ろ過し、エタノール(特級)(500mL)で洗浄し、デシケーターで減圧乾燥し、表面に重合開始剤が結合されたシリカゲルS-1(5.0g)を得た。
二口ナスフラスコ(100mL)に、溶媒としてエタノール(特級)を約40mL入れた後、モノマー(c)としてN,N’-メチレンビスアクリルアミド(BIS)を0.135g(0.876mmol)、モノマー(a)としてN-イソプロピルアクリルアミド(NIPAAm)を4.0g(35.3mmol)、モノマー(d)としてn-ブチルメタクリレート(BMA)を287mg(2.02mmol)、モノマー(b)としてN-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミド(DMAPAAm)を473mg(3.03mmol)溶解した。次いで、シリカゲルS-1(2g)を入れ、最終的にエタノール(特級)の全量を100mLとした。次いで、超音波槽で脱気しながら30分間窒素バブリングし、フラスコ内を完全に窒素置換した後、PEGバス(70℃)内で5時間反応させた。反応後、吸引ろ過し、エタノール(特級)で洗浄し、デシケーター内で減圧乾燥し、表面にポリマーA-1(温度応答性ポリマー)がグラフトされたポリマー修飾シリカS-2(2.0g)を得た。ポリマーA-1の共重合組成は、モル比でNIPAAm単位:DMAPAAm単位:BIS単位:BMA単位=85.6:7.3:2.1:4.9であった。
サンプル管にポリマー修飾シリカS-2を50mg秤量し、水:メタノール(質量比)=1:1の混合液600μLで懸濁した懸濁液をスピンカラム(NucleoSpin RNA、タカラバイオ社製)に流し込み、遠心分離機にて1000gで2分間遠心処理した。次いで、超純水50mLを流し込み、遠心分離機にて1000gで2分間遠心処理する操作を繰り返し行って洗浄し、ポリマー修飾シリカS-2を含む分離層を有する遠心分離カラムX-1を得た。
(試料調製)
1.0mg/mLのミダゾラム(和光純薬工業社製)を200μLサンプル管に移し、窒素乾固させた後、1.0mg/mLのアルブミンを1mL入れて溶解させ、試料B-1とした。
(前処理)
遠心分離カラムX-1をマイクロチューブに装着し、40℃、600μLのリン酸緩衝液(16.7mmol/L、pH7.0)を遠心分離カラムX-1に供給し、遠心分離機にて1000gで2分間遠心処理してコンディショニングを行った。次いで、40℃、100μLの試料B-1を遠心分離カラムX-1に供給し、遠心分離機にて1000gで4分間遠心分離し、分離層を通過したマイクロチューブ内の液を回収した。
(HPLC分析)
回収液の分画の組成をHPLCで分析した。HPLC分析の条件は、以下のとおりとした。結果を図3に示す。
カラム:PNIPAAm修飾シリカビーズ充填カラム(4.6mm×150mm)、
溶離液:10mM Ammonium acetate (pH 6.5)、
流速:1.0mL/分。
遠心分離カラムX-1を用い、例1と同様にして、40℃の試料B-1と4℃の試料B-1をそれぞれ遠心分離し、分離層を通過した回収液中の分画の組成を分析した。40℃の試料B-1を遠心分離して得た回収液の分析結果を図4(A)、4℃の試料B-1を遠心分離して得た回収液の分析結果を図4(B)に示す。
(試料調製)
1.0mg/mLのジアゼパム(和光純薬工業社製)を200μLサンプル管に移し、窒素乾固させた後、1.0mg/mLのアルブミンを1mL入れて溶解させ、試料B-2とした。
(前処理)
40℃の試料B-1の代わりに40℃の試料B-2を用いる以外は、例1と同様にして遠心分離し、分離層を通過した回収液中の分画の組成を分析した。結果を図5に示す。
遠心分離カラムX-1を用い、例1と同様にして、40℃の試料B-2と4℃の試料B-2をそれぞれ遠心分離し、分離層を通過した回収液中の分画の組成を分析した。40℃の試料B-2を遠心分離して得た回収液の分析結果を図6(A)、4℃の試料B-2を遠心分離して得た回収液の分析結果を図6(B)に示す。
Claims (2)
- 温度に応じて水和力が変化する温度応答性ポリマーを含む分離層を有する遠心分離カラムに分析対象物質及び夾雑物質を含む試料を供給し、前記分離層の温度を0~80℃の範囲で且つ前記夾雑物質が前記温度応答性ポリマーに吸着される温度に制御しつつ遠心処理し、前記夾雑物質を前記分離層に吸着させ、前記分析対象物質は前記分離層を通過させることにより、前記分析対象物質を前記夾雑物質から分離した後、前記分析対象物質を分析する、分析対象物質の分析方法。
- 前記分離層に前記夾雑物質を吸着させた後、前記分離層の温度を前記夾雑物質が前記温度応答性ポリマーから脱離される温度に制御しつつ遠心処理し、前記夾雑物質を溶出させて回収する、請求項1に記載の分析対象物質の分析方法。
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