以下、下記実施の形態に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施の形態によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、各図面において、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、明細書や他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法は、本発明の特徴の理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。
本発明の生体内留置物送達具は、細胞ファイバーを含む生体内留置物を治療における標的部位へ送達するために用いられるものである。細胞ファイバーは、複数の細胞をファイバー状に構成している細胞塊を含む。
本発明において、近位側とは使用者(術者)の手元側の方向を指し、遠位側とは処置部側の方向であって、近位側の反対方向を指す。
図1は生体内留置物送達具1の全体図(一部断面図)を表し、図2は生体内留置物送達具1の長軸を含む遠位側の断面図を表す。図1および図2に示すように、生体内留置物送達具1は、複数の細胞をファイバー状に構成している細胞ファイバーを含む生体内留置物100と、遠位側と近位側を有している筒状部材10と、筒状部材10の遠位端10dから100mmまでの部分に配置されている測距センサー20と、を備えている。
生体内留置物100は、遠近方向に長尺の細胞ファイバーを1本または複数本用いたものであってもよく、短い細胞ファイバーの集合体であってもよい。生体内留置物100が短い細胞ファイバーの集合体である場合、複数の細胞ファイバー間をつなぐ中間部材が生体内留置物100に含まれていてもよい。中間部材としては、細胞ファイバーに用いられる材料の他に、例えば、ゼラチン等のたんぱく質を用いることもできる。
生体内留置物100が含んでいる細胞ファイバーを構成する細胞種は特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、大脳皮質細胞等の神経細胞や骨格筋細胞や心筋細胞等の筋細胞、線維芽細胞、上皮細胞、肝細胞、膵島細胞、視細胞、血液単球細胞等が挙げられる。細胞ファイバーは、単分化能を有する幹細胞(筋幹細胞、生殖幹細胞、肝幹細胞等)から構成されることが好ましく、多分化能性を有する各種の幹細胞(神経幹細胞、造血幹細胞、間葉系幹細胞、ミューズ細胞等)、分化万能性を有する胚性幹細胞(ES細胞)、人工多能性幹細胞(iPS細胞)、体細胞由来ES細胞(ntES細胞)、多分化多能を有する幹細胞(造血幹細胞、神経幹細胞、間葉系幹細胞等)から構成されることがより好ましい。細胞ファイバーは、これらの細胞種を一種のみ使用してもよく、二種以上を併用してもよい。また、細胞ファイバーは、自家細胞だけでなく他家細胞を用いてもよい。本願において、神経細胞以外の細胞を非神経細胞と称する。
脳損傷部位への治療では、細胞ファイバーは、あらかじめ神経幹細胞からニューロンとグリア細胞に分化した神経幹細胞分化誘導ファイバーを含んでいることが好ましい。細胞ファイバーがニューロンとグリア細胞に分化した神経幹細胞分化誘導ファイバーを含んでいることにより、治療標的部位での神経再生を加速化することが可能となる。なお、その他の部位の治療では、非神経細胞の細胞ファイバーを用いることができる。
細胞ファイバーは、BDNF(脳由来神経栄養因子)、VEGF(血管内皮細胞成長因子)、EGF(上皮成長因子)、FGF(繊維芽細胞成長因子)インスリン様成長因子(IGF)、PDGF(血小板由来成長因子)、NGF(神経成長因子)等の細胞成長因子やサイトカイン等の生理活性物質および遺伝子プラスミド、抗体や薬剤内包カプセルを導入した細胞から構成されていてもよい。
細胞ファイバーを製造する方法は特に限定されないが、細胞外基質と細胞を有する内層と、外層を備える筒状体とを準備する工程と、内層において細胞を育成する工程と、外層を溶解する工程とを含むことが好ましい。外層を溶解する工程は、内層にて細胞を育成させた後に行う。また、筒状体は、外層の内側に内層が配置された構造であることが好ましい。さらに、内層の一部が筒状体の外側に面していてもよい。
内層が有する細胞外基質としては、例えば、コラーゲン、ラミニン、フィブロイン、ゼラチン、グリコサミノグリカン、キチン、キトサン、ヒアルロン酸、ポリペプチド等が挙げられる。中でも、内層が有している細胞外基質は、コラーゲンまたはフィブロインを含むことが好ましい。外層は、アルギン酸ナトリウムまたはアルギン酸カルシウムを含むことが好ましい。
細胞ファイバーは、細胞の支持体を備えていてもよい。支持体の材料としては、生体吸収性高分子や天然高分子、脱細胞化処理した生体組織や細胞、またはこれらの組み合わせ等が挙げられる。生体吸収性高分子は、例えば、ポリL-乳酸(PLLA)、ポリグリコール酸(PGA)、乳酸とグリコール酸の共重合体(PLGA)やポリカプロラクトン(PCL)等を用いることができる。また、天然高分子としては、例えば、コラーゲン、ラミニン、フィブロイン、ゼラチン、グリコサミノグリカン、キチン、キトサン、ヒアルロン酸、ポリペプチド等が挙げられる。
生体内留置物100の直径は、デリバリー性能や、標的部位の形状、サイズに応じて選択することができるが、例えば、100nm以上1000μm以下であることが好ましい。生体内留置物100は、長軸方向の全長にわたって細胞を含んでいることが好ましい。また、生体内留置物100は、必要に応じて、細胞以外の物質や薬剤を含んでいてもよい。細胞以外の物質の例としては、細胞の成長を促進する物質や、治療標的部位において細胞の接着を促進する物質等が挙げられる。
生体内留置物100の構造は、円柱構造であることが好ましいが特に制限はなく、例えば、らせん形状、二重らせん構造、不織布構造、シート状、円筒形状、ひも状の細胞ファイバーを複数束ねた円筒束形状、筒状の細胞ファイバーの内側にさらに細胞ファイバーが配置された円筒重ね形状、コイル状等の三次元構造であってもよい。細胞ファイバーを中空状に形成して用いることもできる。また、シート状に形成した細胞ファイバーを巻いて円柱状にすることや、折り畳んで用いることもできる。生体内留置物100の形状は、デリバリー性能や、標的部位の形状、サイズ等に応じて選択することができる。特に、生体内留置物100の形状がらせん形状、不織布構造、三次元構造である場合は、治療標的部位の組織への定着率および適合性が上がり、治療効果を高めることが可能となる。また、あらかじめ生体内留置物100の形状を治療標的部位の組織に合わせた形状とすることによって、治療時間を短縮することができる。
図示していないが、生体内留置物100の遠位端は半球状または半楕円球状に形成されていることが好ましい。生体内留置物100の遠位端が半球状または半楕円球状に形成されていることにより、生体内留置物100の先端と血管内壁との間での摩擦を低減し、生体内留置物100のデリバリー性能向上、および生体内留置物100の遠位端のデブリ発生の抑制に寄与することができる。なお、デブリとは、生体内留置物100の遠位端が血管壁等に接触した際に発生する不要物のことをいう。
図1および図2に示すように、生体内留置物100は、筒状部材10の内腔に配置されている。筒状部材10は、遠位側と近位側を有しており、内腔を有している。生体内留置物100を筒状部材10の内腔に配置し、生体内留置物100を筒状部材10の内腔に収容した状態にて治療標的部位へ送り込むことにより、生体内留置物100を治療標的部位まで確実に送達しやすく、さらに、治療標的部位へ送達するまで生体内留置物100を保護することができる。
筒状部材10を構成する材料としては、例えば、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマー、ポリスチレンエラストマー、フッ素系エラストマー、シリコーンゴム、ラテックスゴム等の各種エラストマー、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂、白金、金、ロジウム、パラジウム、レニウム、銀、チタン、タンタル、タングステン、ステンレス鋼等の金属材料、またはこれらのうちの2つ以上を組み合わせたもの等が挙げられる。筒状部材10を構成する材料は、中でも、ポリアミドエラストマーであることが好ましい。筒状部材10を構成する材料がポリアミドエラストマーであることにより、筒状部材10の柔軟性を高めることができ、さらに加工が容易であることから筒状部材10の製造を行いやすくすることができる。
また、押し込み性、追随性、耐キンク性および安全性の観点から筒状部材10の外表面を親水性高分子物質で覆うことが好ましい。筒状部材10の外表面が親水性高分子物質で覆われていることにより、筒状部材10の外表面が血液または生理食塩水等に接触したときに摩擦係数が減少して、潤滑性を付与することができる。親水性高分子物質としては、例えば、天然または合成の高分子物質、あるいはその誘導体が挙げられる。特に、セルロース系高分子物質(例えば、酢酸セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース)、ポリエチレンオキサイド系高分子物質(ポリエチレングリコール)、無水マレイン酸系高分子物質、アクリルアミド系高分子物質、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂、水溶性ナイロンは摩擦係数が少なく、筒状部材10の外表面の摺動性を一段と向上させることが可能となる。
図1および図2に示すように、筒状部材10は、筒状部材10の遠位端10dから100mmまでの部分に、生体内留置物100を筒状部材10の内腔から放出する放出口30を有している。つまり、筒状部材10の遠位端10dから近位側へ100mmまでの区間に放出口30が設けられている。筒状部材10が、筒状部材10の遠位端10dから100mmまでの部分に放出口30を有していることにより、筒状部材10の遠位端10dに近い位置に放出口30が位置することとなり、生体内留置物送達具1の低侵襲性を高めることができる。
筒状部材10における放出口30の位置は、筒状部材10の遠位端10dから近位側に100mmまでの部分であればよいが、筒状部材10の遠位端10dから近位側に80mmまでの部分にあることが好ましく、50mmまでの部分であることがより好ましく、30mmまでの部分であることがさらに好ましい。筒状部材10における放出口30の位置の範囲を上記のように設定することにより、放出口30と筒状部材10の遠位端10dとの位置を近づけることができ、生体内留置物送達具1をより低侵襲なものとすることが可能になる。
放出口30の形状は、円形状または楕円形状であることが好ましい。放出口30の形状が円形状または楕円形状であることにより、生体内留置物100が放出口30を通る際に、生体内留置物100が放出口30に引っ掛かりにくく、生体内留置物100を破損しにくくすることができる。なお、放出口30の形状は、放出口30の深さ方向に垂直な面における放出口30の形状を示す。
放出口30の深さ方向に垂直な面における放出口30の断面積は、生体内留置物100の長軸方向に垂直な断面積よりも大きいことが好ましい。放出口30の断面積が生体内留置物100の断面積よりも大きいことにより、生体内留置物100を筒状部材10の内腔から放出する際に、生体内留置物100が放出口30を円滑に通過することができる。
放出口30の深さ方向に垂直な面における放出口30の断面積は、生体内留置物100の長軸方向に垂直な断面積の1.1倍以上であることが好ましく、1.2倍以上であることがより好ましく、1.3倍以上であることがさらに好ましい。放出口30の断面積と生体内留置物100の断面積との比率の下限値を上記の範囲に設定することにより、生体内留置物100が放出口30を通過する際に、生体内留置物100が放出口30に接触しにくく、生体内留置物100が破損しにくくすることが可能となる。また、放出口30の断面積は、生体内留置物100の断面積の2倍以下であることが好ましく、1.8倍以下であることがより好ましく、1.5倍以下であることがさらに好ましい。放出口30の断面積と生体内留置物100の断面積との比率の上限値を上記の範囲に設定することにより、放出口30の断面積が適切な大きさとなり、治療標的部位の意図した位置に生体内留置物100を留置しやすくなる。
図1および図2に示すように、測距センサー20は、筒状部材10の遠位端10dから100mmまでの部分に配置されている。つまり、筒状部材10の遠位端10dから近位側へ100mmまでの区間に測距センサー20が設けられている。測距センサー20が筒状部材10の遠位端10dから100mmまでの部分に配置されていることにより、筒状部材10の遠位端10d付近において動脈瘤の大きさ等の情報を得ることができ、生体内留置物100を治療標的部位の適切な位置に素早く留置することができる。
測距センサー20の種類は、例えば、光を用いた光学式、超音波を用いた超音波式等が挙げられる。また、測距センサー20は、GPS等を用いた位置情報取得に基づいて、距離を測定するものであってもよい。中でも、測距センサー20は、超音波式であることが好ましい。測距センサー20が超音波式であることにより、光学式では血管内の血流量や狭窄の度合い等の治療標的部位の状態によっては測定誤差が大きくなるおそれがあるのに対し、超音波式では治療標的部位の状態の影響を受けにくく、測定誤差を小さくすることができる。
測距センサー20が配置されている位置は、筒状部材10の遠位端10dから近位側に100mmまでの部分であればよいが、筒状部材10の遠位端10dから近位側に80mmまでの部分にあることが好ましく、50mmまでの部分であることがより好ましく、30mmまでの部分であることがさらに好ましい。測距センサー20が配置されている位置を上記の範囲に設定することにより、体内における筒状部材10の遠位端10d付近での治療標的部位の情報を得ることができ、治療時間の短縮を図ることができる。
測距センサー20は、放出口30よりも遠位側に配置されていることが好ましい。測距センサー20が放出口30よりも遠位側に配置されていることにより、放出口30よりも測距センサー20の方が筒状部材10の遠位端10dに近くなり、筒状部材10の遠位端10dに近い位置での治療標的部位の情報を確認しながら、目的の位置に生体内留置物100を留置することが容易となる。
測距センサー20と放出口30との距離は、20mm以下であることが好ましく、15mm以下であることがより好ましく、10mm以下であることがさらに好ましい。測距センサー20と放出口30との距離の上限値を上記の範囲に設定することにより、測距センサー20にて情報を得た部分と放出口30との位置のズレが小さくなり、治療標的部位の適切な位置に生体内留置物100を留置しやすくなる。測距センサー20と放出口30との距離の下限値は特に限定されないが、例えば、0.5mm以上、1mm以上、2mm以上とすることができる。また、測距センサー20と放出口30との距離が0mm、つまり、測距センサー20と放出口30とが隣接していてもよい。
筒状部材10の内腔に配置されている生体内留置物100を筒状部材10の内腔から放出する方法としては、例えば、筒状部材10の遠近方向に移動が可能であるプッシャを用い、プッシャによって生体内留置物100の近位端部に力を加えて生体内留置物100を押し出す方法、筒状部材10の内腔に水や空気等の流体を送り込んで生体内留置物100を押し出す方法等が挙げられる。中でも、生体内留置物100を筒状部材10の内腔から放出する方法としては、筒状部材10の内腔に流体を送り込んで生体内留置物100を外部へ放出することが好ましい。流体を用いて生体内留置物100を筒状部材10の内腔から放出することにより、生体内留置物100に過度な力が加わりにくく、筒状部材10の内腔から生体内留置物100を放出する際に生体内留置物100が破損しにくくなる。
図1に示すように、筒状部材10の近位端10pに、筒状部材10の内腔へ流体を注入する注入部40を有していることが好ましい。筒状部材10の近位端10pに注入部40を有していることにより、筒状部材10の近位端10pから遠位側に向かって流体を内腔に注入することができ、筒状部材10の内腔に配置されている生体内留置物100の近位端部に注入された流体が当たり、生体内留置物100を筒状部材10の内腔から効率的に放出させることができる。
筒状部材10の内腔へ注入する流体としては、例えば、生理食塩水、滅菌された水道水、純水等の液体、空気、酸素ガス等の気体が挙げられる。治療標的部位が血管内である場合には、筒状部材10の内腔へ注入する流体は液体であることが好ましい。また、治療標的部位が消化管である場合には、筒状部材10の内腔へ注入する流体として気体を用いることも可能である。
図1に示すように、注入部40には、流体を筒状部材10の内腔に注入または吸引するためのシリンジ50が接続されていることが好ましい。注入部40にシリンジ50が接続されていることにより、注入部40を通じて筒状部材10の内腔へ流体を注入する際に流体の注入量が制御しやすく、治療標的部位への生体内留置物100の送達が行いやすくなる。
具体的には、シリンジ50に滅菌済みの生理食塩水等の流体を満たし、筒状部材10の注入部40に接続する。その後、シリンジ50を操作することによって筒状部材10内の流体が加圧され、生体内留置物100が筒状部材10内を遠位側に移動する。筒状部材10の放出口30が生体内管腔の治療標的部位に到達した際に、シリンジ50をさらに操作して筒状部材10内にある流体を加圧し、生体内留置物100を治療標的部位に放出することができる。また、シリンジ50を引くことによって、生体内留置物100を筒状部材10の内腔に戻すことができるため、生体内留置物100の留置場所を調節することが可能である。なお、流体として液体を用いる場合には、シリンジ50内から空気を除去した後に筒状部材10の注入部40に接続することが好ましい。
図2に示すように、放出口30は、筒状部材10の側部に配置されていることが好ましい。筒状部材10の側部とは、筒状部材10の側面部分を示す。つまり、放出口30は、筒状部材10の遠位端10dから100mmまでの部分であって、筒状部材10の側面部分に配置されていることが好ましい。放出口30が筒状部材10の側部に配置されていることにより、生体内留置物送達具1を血管等の生体内管腔に挿入した状態において、放出口30が治療標的部位に対向することとなるため、治療標的部位の適切な位置に生体内留置物100を留置することが容易となる。
図3~図6は、図2に示した生体内留置物送達具1の断面図を表す。図3は放出口30よりも近位側での生体内留置物送達具1の断面図であり、図4~図6は放出口30がある部分での生体内留置物送達具1の断面図である。図4~図6では、図4が最も近位側での生体内留置物送達具1の断面図であり、図6が最も遠位側での生体内留置物送達具1の断面図である。図3~図6に示すように、筒状部材10の長軸に垂直な断面における筒状部材10の内腔の断面積は、放出口30がある部分において、遠位側に向かうにつれて小さくなることが好ましい。放出口30がある部分における筒状部材10の内腔の断面積が遠位側に向かうにつれて小さくなっていることにより、生体内留置物100が遠位側に移動するにつれて放出口30側に寄りやすくなり、生体内留置物100を筒状部材10の内腔から放出しやすくなる。
図2に示すように、測距センサー20は、筒状部材10の側部に配置されていることが好ましい。つまり、測距センサー20は、筒状部材10の遠位端10dから100mmまでの部分であって、筒状部材10の側面部分に配置されていることが好ましい。測距センサー20が筒状部材10の側部に配置されていることにより、生体内留置物100を治療標的部位に送達するために生体内留置物送達具1の遠位端部を治療標的部位付近に配置した際に、測距センサー20が血管等の生体内管腔の内壁に対向するため、生体内管腔に生じた狭窄の大きさ等を測距センサー20が正確に測定することが容易となる。
測距センサー20および放出口30は、筒状部材10の遠位端10dから100mmまでの部分であって、筒状部材10の側部に配置されていることが好ましい。測距センサー20と放出口30の両方が筒状部材10の遠位端10dから100mmまでの部分であり、かつ、筒状部材10の側部に配置されていることにより、測距センサー20と放出口30の両方ともが筒状部材10の遠位端部に位置し、さらに治療標的部位に対向するため、治療時間を短くすることが可能となって、生体内留置物送達具1がより低侵襲なものとすることができる。
測距センサー20の測距方向と、放出口30の中心を通る軸とがなす角度は、45度以下(0度を含む)であることが好ましい。放出口30の中心とは、放出口30の深さ方向に垂直な面における放出口30の形状の中心を示し、放出口30の中心を通る軸とは、放出口30の深さ方向に平行であって、放出口30の中心を通る軸を示す。測距センサー20の測距方向と放出口30の中心を通る軸とがなす角度が45度以下であることにより、測距センサー20の測距方向と放出口30が向いている方向とが近くなり、測距センサー20によって距離等の情報を測定した部分に近い位置に生体内留置物100を留置することができる。
測距センサー20の測距方向と、放出口30の中心を通る軸とがなす角度は、45度以下であることが好ましいが、30度以下であることがより好ましく、15度以下であることがさらに好ましく、10度以下であることが特に好ましく、0度であることが最も好ましい。測距センサー20の測距方向と放出口30の中心を通る軸とがなす角度の上限値を上記の範囲に設定することにより、測距センサー20の測距方向と放出口30の向きとが近くなるため、治療標的部位の意図した位置に生体内留置物100をより留置しやすくなる。測距センサー20の測距方向と放出口30の中心を通る軸とがなす角度の下限値は特に限定されず、例えば、0度以上とすることができる。
図1に示すように、筒状部材10は、測距センサー20に接続されている導線60を内部に有していることが好ましい。導線60は、測距センサー20と生体内留置物送達具1の外部機器(図示せず)とを電気的に接続するものである。筒状部材10が内部に、測距センサー20に接続されている導線60を有していることにより、導線60が筒状部材10に埋め込まれることとなって他物と接触することを防止し、導線60が破損しにくくなる。
導線60の材料は、導電性材料であれば特に限定されず、例えば、鉄線、銅線、銀線、ステンレス線、タングステン線、ニッケルチタン線等を用いることができる。中でも、導線60は、ステンレス線であることが好ましい。導線60がステンレス線であることにより、導線60と測距センサー20との接続部の断線が生じにくくなる。
測距センサー20への導線60の接続の方法としては、例えば、溶接、はんだ等のろう付け、かしめ等による接続等を用いることができる。導線60の測距センサー20への接続方法は、中でも、溶接であることが好ましい。導線60が測距センサー20へ溶接によって接続されていることにより、導線60と測距センサー20との接続を容易に強固なものとすることができる。導線60と測距センサー20は、その間に導電性部材を介して接続されていてもよい。
また、測距センサー20は、導線60を有していなくてもよい。測距センサー20が導線60を有していない場合には、無線給電を用いて測距センサー20と生体内留置物送達具1の外部機器(図示せず)とを電気的に接続することが挙げられる。無線給電は、電磁誘導式、磁界共振式等の非放射型、マイクロ波式等の放射型等が挙げられる。中でも、測距センサー20の無線給電としては、非放射型であることが好ましい。
図示していないが、筒状部材10の長軸を含む断面において、筒状部材10は、放出口30が配置されている側を特定するX線不透過マーカーを有していることが好ましい。放出口30が配置されている側を特定するX線不透過マーカーを筒状部材10が有していることにより、X線透過によってX線不透過マーカーが視認でき、血管等の生体内管腔における放出口30が向いている位置を確認することが可能となって治療標的部位への生体内留置物100の留置が行いやすく、治療時間を短縮することができる。X線不透過マーカーは、筒状部材10に取り付けられる筒状部材10とは別の部材であってもよく、筒状部材10の一部分であってもよい。
X線不透過マーカーの形状は、円筒状、多角筒状、筒にスリットが入った断面C字の形状、線材を巻回したコイル形状等が挙げられる。X線不透過マーカーが放出口30の配置されている側を特定するには、例えば、X線不透過マーカーの形状を円筒状または多角筒状として、X線不透過マーカーの放出口30が配置されている側の部分の幅を他の部分の幅よりも大きくする、X線不透過マーカーの形状を断面C字形状として、X線不透過マーカーのスリットが入っている部分を放出口30が配置されている側に配置すること等が挙げられる。中でも、X線不透過マーカーは、円筒状であって、放出口30が配置されている側の部分の幅が他の部分の幅よりも大きい形状であることが好ましい。X線不透過マーカーが、円筒状であって放出口30が配置されている側の部分の幅が他の部分よりも大きい形状であることにより、X線透過によってX線不透過マーカーが確認しやすく、放出口30が配置されている側を容易に判別することが可能となる。
X線不透過マーカーを構成する材料は、例えば、鉛、バリウム、ヨウ素、タングステン、金、白金、イリジウム、ステンレス、チタン、コバルトクロム合金等のX線不透過物質を用いることができる。X線不透過物質は、中でも、白金であることが好ましい。X線不透過マーカーを構成する材料に白金を用いることにより、X線の造影性が高いX線不透過マーカーとすることができる。
図3に示すように、筒状部材10の長軸方向に垂直な断面において、生体内留置物100の最大外径は、筒状部材10の最小内径の50%以上90%以下であることが好ましい。生体内留置物100の最大内径と筒状部材10の最小内径の比率を上記の範囲に設定することにより、生体内留置物100を筒状部材10から放出しやすく、効率的に生体内留置物100の留置を行うことが可能となる。
筒状部材10の長軸方向に垂直な断面において、生体内留置物100の最大外径は、筒状部材10の最小内径の50%以上であることが好ましいが、51%以上であることがより好ましく、52%以上であることがさらに好ましい。生体内留置物100の最大内径と筒状部材10の最小内径の比率の下限値を上記の範囲に設定することにより、筒状部材10の内腔に流体が送り込まれた際に、生体内留置物100が流体に接触する面積を十分に確保することができ、筒状部材10の内腔から生体内留置物100を放出しやすくすることができる。また、筒状部材10の長軸方向に垂直な断面において、生体内留置物100の最大外径は、筒状部材10の最小内径の90%以下であることが好ましいが、85%以下であることがより好ましく、80%以下であることがさらに好ましい。生体内留置物100の最大内径と筒状部材10の最小内径の比率の上限値を上記の範囲に設定することにより、生体内留置物100の外表面と筒状部材10の内表面との間に摩擦が生じにくく、容易に筒状部材10から生体内留置物100を放出して、治療標的部位に生体内留置物100を留置することができる。
筒状部材10の内表面に親水性コーティング層が設けられていることが好ましい。筒状部材10の内表面に親水性コーティング層が設けられていることにより、筒状部材10の内表面に生理食塩水等の液体や生体内留置物100が接触した際に、筒状部材10の内表面の滑り性を高めることができ、筒状部材10の内腔を生体内留置物100が遠近方向に移動しやすくなり、治療標的部位へ生体内留置物100を留置することが行いやすくなる。
また、生体内留置物送達具1は、遠位側と近位側を有している筒状部材10と、筒状部材10の遠位端10dから100mmまでの部分に配置されている測距センサー20と、を備えており、筒状部材10は、内腔に、複数の細胞をファイバー状に構成している細胞ファイバーを含む生体内留置物100を配置する配置部を有し、筒状部材10は、筒状部材10の遠位端10dから100mmまでの部分に、生体内留置物100を筒状部材10の内腔から放出する放出口30を有するものであってもよい。
図示していないが、筒状部材10は、測距センサー20とは異なる種類のセンサーを有していてもよい。測距センサー20とは異なる種類のセンサーとしては、例えば、温度センサー、圧力センサー等が挙げられる。筒状部材10が複数種のセンサーを有していることにより、生体内留置物送達具1が治療標的部位の様々な情報を得ることができ、治療時間の短縮を図ることができる。
以上のように、生体内留置物送達具は、複数の細胞をファイバー状に構成している細胞ファイバーを含む生体内留置物と、遠位側と近位側を有している筒状部材と、筒状部材の遠位端から100mmまでの部分に配置されている測距センサーと、を備えており、生体内留置物は、筒状部材の内腔に配置されており、筒状部材は、筒状部材の遠位端から100mmまでの部分に、生体内留置物を筒状部材の内腔から放出する放出口を有する。生体内留置物送達具が筒状部材の遠位端から100mmまでの部分に測距センサーと、生体内留置物を筒状部材の内腔から放出する放出口とを有していることにより、治療中に測距センサーによって動脈瘤の大きさや生体内留置物の適切な留置位置等の治療標的部位の情報を得ることができ、治療時間を短縮しながら細胞組織を標的部位へ定位的に低侵襲にて送達することができる。