実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係るロボット操作システムの構成概要図である。ロボット操作システム100は、クローラ移動ロボット(ロボットと略す)1、ロボット1に搭載された2個の現場カメラ2、操作装置3、表示装置4を主に有して構成される。オペレータ90は、ロボット1を操作する操作者である。ロボット1は、2本の腕部を有してクローラ(キャタピラ)で移動するタイプのロボットである。ロボット1は、車両部1Wと、車両部1Wの前方上面に搭載されたヒューマノイド部1Hを有する。現場カメラ2は、ロボット1の頭部に搭載されて、ロボット1が活動する現場の画像を撮影する。現場カメラ2が撮影した画像は、表示装置4に表示される。
操作装置3は、オペレータ90が操作指示を入力するための入力装置や制御演算装置60を含む。オペレータ90は、入力装置により操作指示を入力する。操作指示とは、ロボット1の各部の動きについてのオペレータ90の指示である。操作指示の例は、右手を上げる、前進するなどである。実際にロボット1を動かす信号は、操作指示から生成された制御信号である。制御信号は、アクチュエータの長さを例えば30cmにする、例えば肩関節のサーボモータを30度回転させるなどの、実際にロボット1を動かす信号である。
制御信号により、アクチュエータや肩関節のサーボモータなどは制御される。制御信号は、操作指示から生成される。制御演算装置60は、オペレータ90が入力装置に入力する操作指示から制御信号を生成する。制御演算装置60は、操作指示に基づきロボット1を制御する。
オペレータ90は、椅子に座って足および手を使用してロボット1を操作する。操作装置3は、操作指示を入力する入力装置として、上体入力装置5、モード切替ペダル6および足操作入力装置7(図示せず)を有する。上体入力装置5は、オペレータ90が手で操作して、ヒューマノイド部1Hが有する左右の腕部への操作指示を入力する。モード切替ペダル6は、オペレータ90が足で操作して、上体入力装置5の入力モードを変更する。
足操作入力装置7は、主に車両部1Wへの操作指示を入力する。足操作入力装置7は、オペレータ90が足で操作して操作指示を入力する。足操作入力装置7については、本明細書では説明しない。
制御演算装置60は、入力装置によりオペレータ90が入力した操作指示からロボット1を操作する制御信号を生成する。なお、オペレータ90が居る場所を指令所と呼ぶ。
制御演算装置60は、CPU61、メモリ部62などを含む電子計算機により実装される。メモリ部62は、CPU61で実行されるプログラムやデータを記憶する。データには、処理に使用するデータあるいは処理の結果で得られるデータなどが含まれる。メモリ部62は、フラッシュメモリのような半導体メモリおよびハードディスクである。メモリ部62は、揮発性の記憶装置および不揮発性の記憶装置を含む。
図2から図14を参照して、ロボット1の構造を説明する。図2から図7は、ロボット1の全体の斜視図、正面図、右側面図、背面図、左側面図および平面図である。図8から図14は、ヒューマノイド部1Hの斜視図、正面図、右側面図、背面図、左側面図、平面図および底面図である。図2から図14に示す姿勢をロボット1がとる状態を、基準状態と呼ぶ。
ロボット1は、車両部1Wとヒューマノイド部1Hを有する。ヒューマノイド部1Hは、頭部9、2本の腕部10、胴体部11、胴体支持アーム12、胴体接続部13およびアーム接続部14を有する。車両部1Wは、クローラで移動するタイプの車両である。車両部1Wは、小型のパワーショベルが有するようなクローラを有する。
車両部1Wは、その左右にクローラ移動部15が設けられている。左側をクローラ移動部15L、右側をクローラ移動部15Rと表記する。左右を特定しない場合は、クローラ移動部15と表記する。車両部1Wが有する左右の2個ある他の構成要素に関しても、同様に添え字LまたはRを付加して、あるいは添え字を付加しないで表記する。クローラ移動部15は、駆動される車輪16と、車輪16にかけ渡されたクローラ17を有する。車輪16は、例えば5軸の車輪16が前後に並んで配置される。クローラ17は、金属製の板がつなげられた輪状である。クローラ17を構成する金属製の板材には、回転で移動する方向に直交する方向に突起が設けられている。クローラ17には、2列の突起を設けている。水などが前後に流れやすいように、クローラ17に設けた2列の突起の間には、突起がない部分を設けている。車輪16が回転するとクローラ17も回転する。クローラ17が、地面などに接触する。地面などに接触しながらクローラ17が回転することで、車両部1Wが移動する。地面などにはクローラが接触するので、地面などに凸凹があっても車両部1Wは移動できる。左右のクローラ移動部15L、15Rは、互いに独立に動く。例えば、右側のクローラ移動部15Rを前進させ、左側のクローラ移動部15Lを後進させることができる。
車両部1Wの上面の後方には、電源となるバッテリ18(図示せず)を搭載する。車両部1Wは、クローラ移動部15L、15Rの側面および前後面を覆うクローラカバー1WA有する。車両部1Wの上面後方には、バッテリ18を収納するバッテリ収納部1WBが設けられる。
腕部10は、人の腕と同様な形状である。腕部10の構造は、後で説明する。胴体部11には、2本の腕部10がその上部の左右に回転可能に接続する。胴体部11と2本の腕部10は、人間の胴体と腕と同様な位置関係および同様な大きさを有している。そのため、ロボット1は、人間と同様な細かな作業ができる。胴体部11の下側には、胴体支持アーム12が接続する。胴体支持アーム12を移動させると、車両部1Wに対する胴体部11の位置を変更できる。
胴体部11は、腕接続部19、胴上部20、胴下部21および胴体交差回転部23を有する。腕接続部19には、2本の腕部10が接続する。胴下部21には、胴体支持アーム12が接続する。胴上部20および胴体交差回転部23は、腕接続部19と胴下部21の間に存在する。胴体交差回転部23は、胴上部20を胴下部21に対して回転させる。胴体交差回転部23が胴上部20を胴下部21に対して回転させる回転軸を、胴体交差回転軸と呼ぶ。腕接続部19は、胴上部20により回転可能に支持される。腕接続部19を胴上部20に対して回転させる回転軸を、腕接続部回転軸と呼ぶ。
胴体支持アーム12は、車両部1Wから伸びて胴体部11を支持する。胴体支持アーム12は、車両部1Wに対する位置を変更可能に胴体部11を支持する。胴体支持アーム12は、胴体部11を作業に適した位置および姿勢で配置することができる。胴体支持アーム12の長さは、ロボット1が作業する位置の想定する最大の高さや、車両部1Wが近づける場所から想定する最大距離などを考慮して決める。
胴体支持アーム12の上側に、胴体接続部13が接続する。胴体接続部13は、胴体部11を胴体支持アーム12に2回転自由度で回転可能に接続する。胴体接続部13により、胴体部11は胴体支持アーム12との接続角度を変更できる。胴体部11と胴体支持アーム12との接続角度を変更する回転軸を、胴体傾斜回転軸と呼ぶ。胴体接続部13により、胴体部11を通る胴体回転軸の回りに胴体部11は胴体支持アーム12に対して回転できる。胴体傾斜回転軸は、胴体回転軸および胴体支持アーム12と直交する。
制御するための計算が複雑になるが、胴体傾斜回転軸は、胴体回転軸および胴体支持アーム12の何れかまたは両方と直角ではない角度で交差してもよい。胴体傾斜回転軸は、胴体回転軸および胴体支持アーム12と交差していればよい。胴体接続部13は、3回転自由度以上で回転可能に胴体部11を胴体支持アーム12に接続してもよい。胴体接続部13は、胴体回転軸の回りの回転と胴体傾斜回転軸の回りの回転とを含む少なくとも2回転自由度で胴体部11を胴体支持アーム12に接続すればよい。
胴体支持アーム12の下側に、アーム接続部14が接続する。アーム接続部14は、胴体支持アーム12の一端を車両部1Wに2回転自由度で回転可能に接続する。アーム接続部14は、方位回転軸と仰角回転軸とを有する。方位回転軸は、胴体支持アーム12が延在する方向を車両部1Wの上面に投影した方向が車両部1Wの前後方向に対してなす角度を変更する回転軸である。仰角回転軸は、胴体支持アーム12と車両部1Wの上面とがなす角度を変更する回転軸である。方位回転軸と仰角回転軸は直交する。仰角回転軸と胴体傾斜回転軸は、平行である。仰角回転軸は、方位回転軸および胴体支持アーム12と直交する。
制御するための計算が複雑になるが、仰角回転軸は、方位回転軸および胴体支持アーム12の何れかまたは両方と直角ではない角度で交差してもよい。仰角回転軸は、方位回転軸および胴体支持アーム12と交差していればよい。アーム接続部14は、3回転自由度以上で回転可能に胴体支持アーム12を車両部1Wに接続してもよい。アーム接続部14は、方位回転軸の回りの回転と仰角回転軸の回りの回転とを含む少なくとも2回転自由度で胴体支持アーム12を車両部1Wに接続すればよい。
ロボット1は、車両部1Wの下端から頭部9の上端までの高さが約1.8m、車両部1Wの前後方向の長さが約1.4m、腕接続部19および腕部10の最小の横幅は約0.55mである。重量は、ヒューマノイド部1Hだけで約150kg、ロボット1全体で約300kgである。腕部10を水平に伸ばした状態で、片手で約3kg、両手で約6kgの重量の物体を把持できる。腕部10を鉛直下方に伸ばした状態では、片手で約10kg、両手で約20kgの重量の物体を把持できる。物体を把持した状態で、胴体支持アーム12を移動させることができる。
ロボット1の姿勢を表現するため、3種類の直交座標系を使用する。3種類の直交座標系は、車両部1Wを基準とする第1の直交座標系、胴体接続部13を基準とする第2の直交座標系、腕接続部19を基準とする第3の直交座標系である。
車両部1Wを基準とする第1の直交座標系を、以下のように定義する。第1の直交座標系により、車両部1Wに対する胴体支持アーム12および胴体接続部13の位置を表現する。
X1軸:車両部1Wの左右方向に平行な軸。
Y1軸:車両部1Wの前後方向に平行な軸。
Z1軸:車両部1Wの高さ方向に平行な軸。方位回転軸。
X1軸、Y1軸、Z1軸は、互いに直交する。方位回転軸(Z1軸)および仰角回転軸の交点を、第1の直交座標系の原点とする。右方をX1軸の正の向きとし、前方を1軸の正の向きとし、上方をZ1軸の正の向きとする。X1軸およびY1軸は、車両部1Wの上面に平行である。Z1軸は、車両部1Wの上面と直交する。
胴体接続部13を基準とする第2の直交座標系を以下のように定義する。第2の直交座標系により、胴体接続部13に対する腕接続部19の位置を表現する。
X2軸:胴体接続部13が有する胴体傾斜回転軸。
Y2軸:X2軸およびZ2軸に直交する軸。
Z2軸:胴体接続部13が有する胴体回転軸。
X2軸、Y2軸、Z2軸は、互いに直交する。胴体傾斜回転軸(X2軸)および胴体回転軸(Z2軸)の交点を、第2の直交座標系の原点とする。基準状態では、X1軸とX2軸、Y1軸とY2軸、Z1軸とZ2軸は、それぞれ互いに平行である。基準状態における車両部1Wの右方をX2軸の正の向きとし、前方をY2軸の正の向きとし、上方をZ2軸の正の向きとする。
腕接続部19を基準とする第3の直交座標系を以下のように定義する。第3の直交座標系により、腕接続部19に対する腕部10の位置を表現する。
X3軸:2本の腕部10が腕接続部19に接続する2個の箇所を通る回転軸。
Y3軸:X3軸およびZ3軸に直交する軸。
Z3軸:腕接続部19を回転させる回転軸。腕接続部回転軸と呼ぶ。
X3軸、Y3軸、Z3軸は、互いに直交する。第3の直交座標系の原点は、腕接続部回転軸(Z3軸)と、X3軸を含みZ3軸に垂直な平面との交点とする。基準状態での腕接続部19の右方をX3軸の正の向きとし、前方をY3軸の正の向きとし、上方をZ3軸の正の向きとする。
図15を参照して、ロボット1が有する回転軸について説明する。腕部10を除くロボット1は、以下に示す6個の回転軸を有する。図15は、ロボット1が有する回転軸を示す図である。
AZ1軸:アーム接続部14での方位回転軸。AZ1軸は、Z1軸と一致する。
EL1軸:アーム接続部14での仰角回転軸。
EL2軸:胴体接続部13での胴体傾斜回転軸。EL2軸は、X2軸と一致する。
AZ2軸:胴体接続部13での胴体回転軸。AZ2軸は、Z2軸と一致する。
XEL軸:胴体交差回転部23での胴体交差回転軸。
AZ3軸:腕接続部19を回転させる回転軸。腕接続部回転軸と呼ぶ。AZ2軸は、Z3軸と一致する。
AZ2軸とXEL軸とは同じ平面上で交差し、AZ3軸がAZ2軸とXEL軸の交点を通る。つまり、胴体部11が有する3個の回転軸であるAZ2軸、XEL軸およびAZ3軸は1点で交差する。基準状態では、胴上部20が胴下部21の真上に存在し、AZ2軸とAZ3軸が同じ直線上に存在する。XEL軸は、AZ2軸が存在する平面と直交し、AZ3軸が存在する平面と直交する。XEL軸が回転すると、AZ2軸とAZ3軸が交差するようになる。AZ2軸、XEL軸およびAZ3軸は1点で交差しなくてもよい。
ロボット1はAZ3軸を有するので、ロボット1では、XEL軸の向きを腕接続部19に対して変更できる。基準状態では、XEL軸を回転させると、腕接続部19が前後方向に回転する。AZ3軸を90度回転させた状態では、XEL軸を回転させると、腕接続部19がその左右のどちらかが高くなるように回転する。AZ3軸を45度回転させた状態では、XEL軸を回転させると、腕接続部19がその左右のどちらかが高くなるように回転し、かつ前後方向にも回転する。AZ1軸とAZ3軸を反対方向に同じ角度だけ回転させると、胴体部11では腕接続部19が向く方向を変化させずXEL軸の回転により腕接続部19が回転する方向を変更できる。
アーム接続部14および胴体接続部13での6個の回転軸の配置は、1本の腕部を有する一般の産業用ロボットの回転軸の配置と同じである。アーム接続部14および胴体接続部13の制御は、一般の産業ロボットと同様に制御することができる。
ヒューマノイド部1Hの構造の説明に戻る。図9などに示すように、頭部9は、腕接続部19の上側に接続する。頭部接続部9Cは、頭部9を腕接続部19に対して3回転自由度で回転可能に接続する。頭部9は、板状である。頭部9の前側で高さ方向のほぼ中間の位置に、数cm程度の間隔を空けて2個の現場カメラ2を搭載している。2個の現場カメラ2の視差を計算することで、物体などへの距離を把握できる。基準状態では、頭部9はZ3軸の方向を向く。現場カメラ2はY3軸の方向を向く。頭部接続部9Cは、胴体部11に対する角度を変更可能に、頭部9を胴体部11に接続する。
頭部接続部9Cは、頭部9をX3軸の回りに例えば-90度から90度、Y3軸の回りに例えば-30度から30度、Z3軸の回りに例えば-90度から90度、回転させることができる。基準状態では、X3軸、Y3軸、Z3軸の回りの回転角度は、いずれも0度である。頭部9を上に向ける場合に、X3軸の角度は正である。頭部9を左に傾ける場合に、Y3軸の角度は正である。上から見てZ3軸の回りに時計回りに回転する場合に、Z3軸の回りの回転角度が正である。ある軸の回りの回転角度は、その軸の回りに回転した角度である。
腕接続部19は、円盤状の胴接続部19A(図11に図示)、外形が直方体状である2個の腕回転部19B、厚い板状の腕接続構造部19Cを有する。胴接続部19Aは、胴上部20に回転可能に支持される。腕接続構造部19Cは、胴接続部19Aの上側に垂直に接続する。腕接続構造部19Cの両側の主面は、左右方向を向く。腕接続構造部19Cの両側の主面の前側の部分に、それぞれ直方体状の腕回転部19Bが接続する。腕回転部19Bは、腕部10を回転させる機構を収納する。腕接続構造部19Cの下を向く側面の後側の部分に、円盤状の胴接続部19Aが接続する。
2本の腕部10は、腕接続部19を回転させるAZ3軸よりも前に存在する。そのため、腕接続部19が回転する場合に、腕部10が回転を妨げることはない。
胴上部20は、腕接続部回転部20Aと、回転軸接続ヨーク20Bとを有する。ヨークとは、他の部材を回転可能に保持する穴または突起が設けられた互いに対向する部材である。ヨークに設けられた穴または突起に保持され、他の部材を回転可能にする部材を軸部材と呼ぶ。腕接続部回転部20Aは、胴接続部19Aの下方に存在し、胴接続部19Aを回転可能に支持する。腕接続部回転部20Aは、円柱状である。腕接続部回転部20Aは、胴接続部19AをAZ3軸の回りに回転させる。AZ3軸は、X3軸と交差する軸である。X3軸は、2本の腕部10が腕接続部19に接続する2個の箇所を結ぶ回転軸である。腕接続部回転部20Aは、胴上部20に対して腕接続部19をAZ3軸の回りに回転させる。
回転軸接続ヨーク20Bは、胴体交差回転部23が有する回転軸部材23Aに腕接続部回転部20Aを接続する部材である。回転軸接続ヨーク20Bは、回転軸部材23Aが貫通して接続する2枚の対向する板状の部分と、2枚の板の上部を接続する板状の部分を有する構成である。回転軸接続ヨーク20Bの上部の板状の部分の上側に、腕接続部回転部20Aが接続する。回転軸接続ヨーク20Bは、回転軸部材23Aが回転すると、回転軸部材23Aと共に回転する。
胴下部21は、回転軸保持ヨーク21Aと、垂直円柱部21Bとを有する。回転軸保持ヨーク21Aは、回転軸部材23Aを回転可能に保持する。回転軸保持ヨーク21Aは、2枚の対向する板状の部分と、2枚の板の下部を接続する板状の部分とを有する形状である。2枚の対向する板状の部分が、回転軸部材23Aを回転可能に支持する。垂直円柱部21Bは、回転軸保持ヨーク21Aの下側に接続する円柱状の部材である。
胴体交差回転部23は、回転軸部材23A、回転軸ギア23B、モータ23C、駆動ギア23Dおよびギアカバー23Eを有する。回転軸部材23Aは、XEL軸を構成する軸部材である。XEL軸は、基準状態ではX1軸に平行である。回転軸部材23Aは、回転軸保持ヨーク21Aに回転可能に保持される。回転軸部材23Aには、胴上部20が有する回転軸接続ヨーク20Bが接続する。回転軸部材23Aが回転すると、胴上部20も回転する。回転軸ギア23Bは、回転軸部材23Aに固定されたギアである。回転軸ギア23Bは、回転軸部材23Aでは右の腕部10が存在する側に存在する。モータ23Cは、回転軸ギア23Bを回転させる動力を発生させる。モータ23Cは、回転軸保持ヨーク21Aの内側の上に載置される。駆動ギア23Dは、モータ23Cが回転することで回転するギアである。駆動ギア23Dは、回転軸ギア23Bと噛み合う。駆動ギア23Dが回転すると、回転軸ギア23B、回転軸部材23Aおよび胴上部20も回転する。ギアカバー23Eは、回転軸ギア23Bおよび駆動ギア23Dを覆うカバーである。
胴体支持アーム12は、2枚の側板12Aと、側板12Aを連結する連結板12Bとを有する。2枚の側板12Aの上端部には、胴体接続部13の回転軸部材13Cが回転可能に保持される。回転軸部材13Cは、胴体接続部13を胴体支持アーム12に対して回転させるEL2軸の回転軸である部材である。2枚の側板12Aの下端部には、アーム接続部14の回転軸部材14Cが接続する。胴体支持アーム12は、胴体部11を車両部1Wに対して決められた位置に配置する。胴体支持アーム12は、人間では脚の部分に対応する。
胴体接続部13は、胴体部11を2回転自由度で回転可能に胴体支持アーム12に接続する。胴体接続部13は、AZ2軸およびEL2軸の回りに回転可能に胴体部11を胴体支持アーム12に接続する。胴体接続部13は、胴体支持アーム12に対する胴体部11の角度を変更する。胴体接続部13は、人間では腰の部分に対応する。
胴体接続部13は、胴体回転部13A、回転軸接続ヨーク13B、回転軸部材13C、回転軸ギア13D、モータ13E、駆動ギア13Fおよびギアカバー13Gを有する。胴体回転部13Aは、外形が円筒状である。胴体回転部13Aは、AZ2軸の回りに回転可能に垂直円柱部21Bを支持する。垂直円柱部21Bは、胴下部21の最も下に位置する円柱状の部分である。胴体回転部13Aの内部には、垂直円柱部21Bを回転させるためのモータやギアが存在する。回転軸接続ヨーク13Bは、その下部が前方に出ている。基準状態では、胴体回転部13Aは胴体支持アーム12よりも背面側に位置する。
回転軸接続ヨーク13Bは、胴体回転部13Aの下側に接続する。回転軸接続ヨーク13Bは、2枚の対向する板状の部分と、2枚の板の上部を接続する板状の部分を有する形状である。回転軸接続ヨーク13Bの上部の板状の部分の上側に、胴体回転部13Aが接続する。回転軸接続ヨーク13Bの2枚の対向する板状の部分は、2枚の側板12Aに挟まれて、内側に回転軸部材13Cが接続する。回転軸部材13Cが回転すると、回転軸接続ヨーク13Bおよび胴体回転部13Aが共に回転する。回転軸部材13Cには、回転軸ギア13Dが接続する。回転軸ギア13Dは、回転軸部材13Cでは右の腕部10が存在する側に存在する。モータ13Eは、回転軸ギア13Dを回転させる動力を発生する。モータ13Dは、胴体支持アーム12の連結板12Bの上側に載置される。駆動ギア13Fは、モータ13Dにより駆動されるギアである。駆動ギア13Fは回転軸ギア13Dと噛み合う。駆動ギア13Fが回転すると、回転軸ギア13Dが回転する。回転軸ギア13Dが回転すると、回転軸部材13Cを含んで胴体接続部13の胴体11側の部材が回転する。
アーム接続部14は、胴体支持アーム12を2回転自由度で回転可能に車両部1Wに接続する。アーム接続部14は、胴体支持アーム12をAZ1軸およびEL1軸の回りに回転可能に車両部1Wに接続する。AZ1軸は、車両部1Wの高さ方向に平行な回転軸である。EL1軸は、胴体支持アーム12とAZ1軸とがなす角度を変更する回転軸である。
アーム接続部14は、アーム回転部14A、アーム基部14B、回転軸保持ヨーク14C、回転軸部材14D、回転軸ギア14E、モータ14F、駆動ギア14G(図示せず)およびギアカバー14Hを有する。アーム回転部14Aは、外形がフランジを有する円筒状である。アーム回転部14Aは、車両部1Wの上面に設けられた窪みに設置される。アーム回転部14Aの円筒状の部分が、車両部1Wの内部に入る。アーム回転部14Aのフランジが、車両部1Wの窪みの底面の上に出る。アーム回転部14Aは、その上に存在するアーム基部14BをAZ1軸の回りに回転可能に支持する。アーム回転部14Aは、アーム基部14Bを回転させるためのモータやギアを収納する。アーム基部14Bは、円盤状の部材の上に略長方形の板材が接続した部材である。アーム基部14Bの円盤状の部材が、アーム回転部14Aに回転可能に支持される。
回転軸保持ヨーク14Cは、アーム基部14Bの上側に接続した2枚の対向する板材である。回転軸保持ヨーク14Cは、回転軸部材14Dを回転可能に保持する。回転軸部材14Dは、胴体支持アーム12を車両部1Wに対して回転させるEL1軸の回転軸である部材である。回転軸ギア14Eは、回転軸部材14Dに接続する。回転軸ギア14Eは、回転軸部材14Dでは回転軸保持ヨーク14Cよりも右の腕部10が存在する側に存在する。モータ14Fは、回転軸ギア14Eを回転させる動力を発生する。モータ14Fは、回転軸保持ヨーク14Cに設けられた貫通穴を通り、回転軸保持ヨーク14Cに支持される。駆動ギア14Gは、モータ14Fの回転により駆動する。駆動ギア14Gは回転軸ギア14Eと噛み合う。駆動ギア14Gが回転すると、回転軸ギア14Eおよび回転軸部材14Dが回転する。ギアカバー14Hは、回転軸ギア14Eおよび駆動ギア14を覆うカバーである。
アーム接続部14では、AZ1軸の回りに例えば-160度から180度の範囲で回転可能である。EL1軸の回りには、例えば-70度から95度の範囲で回転可能である。ここで、AZ1軸の回りの回転角度は、ヒューマノイド部1Hが向く方向が車両部1Wの向く方向と平行になる場合に、0度とする。AZ1軸の角度は、上から見て時計回りに回転する場合に、角度を正とする。胴体支持アーム12が車両部1Wの上面と直交する場合に、EL1軸の回りの回転角度を0度とする。胴体支持アーム12が前に傾く場合に、EL1軸の角度を正とする。
胴体接続部13では、EL2軸の回りに例えば-105度から150度の範囲で回転可能である。AZ2軸の回りには、例えば-95度から95度の範囲で回転可能である。ここで、EL2軸の回りの回転角度は、胴体支持アーム12が延在する方向とAZ2軸の方向とが平行になる場合に、0度とする。胴下部21が胴体支持アーム12に対して前に傾く場合に、EL2軸の角度を正とする。AZ2軸の回りの回転角度は、胴体部11が向く方向が胴体支持アーム12の向く方向と平行になる場合に、0度とする。上から見て時計回りに胴体部11が回転する場合に、AZ2軸の角度を正とする。
胴体交差回転部23では、XEL軸の回りに例えば-95度から95度の範囲で回転可能である。ここで、XEL軸の回りの回転角度は、AZ3軸がAZ2軸と平行になる場合に、0度とする。基準状態では、XEL軸の角度は0度である。基準状態で、胴上部20が胴下部21よりも前側に移動する場合に、XEL軸の角度を正とする。
腕接続部回転部20Aでは、AZ3軸の回りに例えば-185度から185度の範囲で回転可能である。腕接続部19が向く方向と胴上部20が向く方向と同じになる場合に、AZ3軸の回りの回転角度を0度とする。上から見て時計回りに腕接続部19が回転する場合に、AZ3軸の角度を正とする。
ロボット1では、2本の腕部10を車両部1Wに対して大きく動かすことができ、作業に適した方向に2本の腕部10を向けることができる。障害物などがある場合などは、障害物などを避けるような姿勢を、ロボット1は取ることができる。つまり、把持または操作する対象へのアプローチの自由度が高く、障害物などのために作業難易度が高い場合でも、ロボット1は柔軟に対応できる。また、アプローチする駆動範囲も拡大できて、より広範囲な空間で作業することが可能となる。胴体支持アーム12により、腕接続部19の位置を決められた範囲の3次元空間内の任意の位置に配置できる。さらに、2本の腕部10の位置を、腕接続部19に対して決められた範囲の3次元空間内の任意の位置に配置できる。
ロボット1の姿勢に応じて頭部接続部9Cを制御することで、ハンド部26が存在する方向に現場カメラ2を向けることができる。
図16から図23を参照して、腕部10の構造を説明する。図16は、腕部10の斜視図である。図17は、腕部10の別の斜視図である。図18から図23は、腕部10の正面図、右側面図、背面図、左側面図、平面図および底面図である。
腕部10は、腕基部22、上腕部24、前腕部25およびハンド部26が直列に接続する。腕基部22は、腕接続部19に回転可能に支持される。上腕部24は、肩関節部27により腕基部22に2回転自由度で回転可能に接続する。前腕部25は、肘関節部28により上腕部24に2回転自由度で回転可能に接続する。ハンド部26は、手首関節部29により前腕部25に2回転自由度で回転可能に接続する。
図24を参照して、腕部10が有する回転軸について説明する。図24は、腕部10が有する回転軸を示す図である。図24(A)は左の腕部10の左側面図であり、図24(B)は左の腕部10の正面図である。
腕部10は、以下に示す7個の回転軸を有する。
AZ4軸:腕部10を腕接続部19に対して回転させる回転軸。腕基部22を通り、腕基部22を回転させる回転軸。AZ4軸を、腕基部回転軸と呼ぶ。AZ4軸の回りの回転角度を、腕基部回転角と呼ぶ。腕基部回転角を、変数θAZ4で表す。
EL4軸:上腕部24と腕基部22とがなす角度を変更させる回転軸。EL4軸は、AZ4軸と直交する。EL4軸の回りの回転角度を、上腕部傾斜角と呼ぶ。上腕部傾斜角を、変数δEL4で表す。
AZ5軸:上腕部24を通り、かつ上腕部24を回転させる回転軸。AZ5軸は、EL4軸と直交する。AZ5軸を、上腕部回転軸と呼ぶ。AZ5軸の回りの回転角度を、上腕部回転角と呼ぶ。上腕部回転角を、変数θAZ5で表す。
EL5軸:前腕部25と上腕部24がなす角度を変更させる回転軸。EL5軸は、AZ5軸と直交する。EL5軸の回りの回転角度を、前腕部傾斜角と呼ぶ。前腕部傾斜角を、変数δEL5で表す。
AZ6軸:前腕部25を通り、かつ前腕部25を回転させる回転軸。AZ6軸は、EL5軸と直交する。AZ6軸を、前腕部回転軸と呼ぶ。AZ6軸の回りの回転角度を、前腕部回転角と呼ぶ。前腕部回転角を、変数θAZ6で表す。
EL6軸:ハンド部26と前腕部25(AZ6軸)とがなす角度を、AZ6軸およびXEL2軸を含む平面(前後方向回転平面)で回転させる回転軸。EL6軸は、AZ6軸およびXEL2軸と直交する。EL6軸の回りの回転角度を、ハンド第1傾斜角と呼ぶ。ハンド第1傾斜角を、変数δEL6で表す。
XEL2軸:ハンド部26と前腕部25(AZ6軸)とがなす角度を、AZ6軸およびEL6軸を含む平面(左右方向回転平面)で回転させる回転軸。XEL2軸は、AZ6軸およびEL6軸と直交する。XEL2軸の回りの回転角度を、ハンド第2傾斜角と呼ぶ。ハンド第2傾斜角を、変数δXEL2で表す。
前後方向回転平面は、AZ6軸を含む第1平面である。左右方向回転平面は、前後方向回転平面と交差し、かつAZ6軸を含む第2平面である。計算は複雑になるが、第1平面と第2平面は、直交していなくてもよい。第1平面と第2平面は、AZ6軸を含みかつ交差していればよい。
AZ4軸は、腕基部22を腕接続部19に対して回転させる回転軸である。EL4軸とAZ5軸は、肩関節部27で腕基部22と上腕部24との接続角度を変更する回転軸である。EL5軸とAZ6軸は、肘関節部28で上腕部24と前腕部25との接続角度を変更する回転軸である。EL6軸とXEL2軸は、手首関節部29で前腕部25とハンド部26との接続角度を変更する回転軸である。前後方向回転平面および左右方向回転平面は、前腕部25を通る互いに直交する2平面である。
AZ4軸は、腕接続部19に垂直である。AZ4軸は、腕接続部19と交差していればよい。AZ4軸は、肩部回転軸とも呼ぶ。肩部回転軸は、腕接続部19と交差する回転軸である。AZ4軸の回りの回転角度を、腕基部回転角あるいは肩部回転角と呼ぶ。
腕基部22は、円柱状である。腕基部22は、腕接続部19が有する腕回転部19Bに設けられた穴に回転可能に挿入される。腕回転部19Bには、背面側からモータ19Dが挿入される。腕回転部19Bの内部には、モータ19Dが出す回転トルクにより腕基部22を回転させるウォームギア機構が収納される。腕基部22の端部には、図示しないウォームホイールが設けられる。ウォームホイールは、モータ19Dの回転により回転する図示しないウォームと噛み合う。モータ19Dおよびウォームが回転すると、ウォームホイールおよび腕基部22および腕部10がAZ4軸の回りに回転する。基準状態での腕部10は、ヒューマノイド部1Hの前後方向に回転する。腕基部22の肩関節部27側の端には、フランジが設けられる。腕基部22のフランジに、肩関節部27が接続する。腕基部22は、AZ4軸の回りを回転する。AZ4軸は、円柱状である腕基部22の中心を通る。腕回転部19Bに設けられた穴と、この穴に回転可能に挿入される腕基部22は、腕基部22を胴体部11に少なくとも1回転自由度で回転可能に接続する腕基部関節部22A(符号は図示せず)である。
腕基部22の回転可能範囲は、例えば-35度から180度の範囲である。ここで、腕基部22がAZ4軸の回りに回転する角度(腕基部回転角)は、上腕部24が下を向く場合に腕基部回転角を0度とし、上腕部24が前方に回転する場合に、腕基部回転角を正とする。腕基部22の回転により、上腕部24を真上に向けることができる。また、上腕部24を真下から後ろに35度まで回転できる。腕基部回転角θAZ4は、例えば-35度≦θAZ4≦180度の範囲内の何れかの値をとることができる。
肩関節部27が、関節接続部24Aに対して中間円筒部24Bを回転させる機構を含むと考えてもよい。そう考える場合には、肩関節部27は、上腕部24を2回転自由度で回転可能に腕基部22に接続する。肩関節部27は、上腕部24を通る上腕部回転軸(AZ5軸)の回りの回転と、上腕部24と腕基部22とがなす角度を変更する回転軸(EL4軸)の回りの回転とを可能にする。肩関節部27におけるAZ5軸の回りの回転は、上腕部24および前腕部25を回転させる。AZ5軸の回りに上腕部24を回転させる場合には、肘関節部28で前腕部25をAZ5軸の回りに回転させる場合よりも、構造が簡単になる。
肩関節部27は、EL4軸の回りの1回転自由度で上腕部24を回転可能に上腕基部22に接続すると考えてもよい。上腕部回転軸(AZ5軸)の回りに上腕部24を回転可能にする機構は、肩関節部27ではなく、上腕部24に設けられていると考えてもよい。そのように考える場合には、肩関節部27は、上腕部24を上腕基部22に少なくとも1回転自由度で回転可能に接続する。また、上腕部24を通る上腕部回転軸の回りに上腕部24が回転可能である。
関節接続部24Aに対して中間円筒部24Bを回転させる機構を肩関節部が含むことに加えて、腕基部22および腕基部関節部22Aを肩関節部の一部と考えてもよい。そう考える場合には、肩関節部は、3回転自由度で回転可能に上腕部24を腕回転部19Bに接続する。肩関節部が有する3回転自由度は、AZ4軸、EL4軸およびAZ5軸の回りの回転自由度である。腕回転部19Bは腕接続部19に含まれるので、肩関節部は、3回転自由度で回転可能に上腕部24を腕接続部19に接続する。腕接続部19は胴体部11に含まれるので、肩関節部は、3回転自由度で回転可能に上腕部24を胴体部11に接続する。肩関節部は腕部10を回転可能に胴体部11に接続する。
肩関節部27では、EL4軸の回りの回転可能範囲は、例えば-10度から75度である。ここで、肩関節部27におけるEL4軸の回転角度(上腕部傾斜角)は、上腕部24が腕基部22と直交する場合に角度を0度とする。上腕部24と腕基部22との間の角度が小さくなる、すなわち上腕部24が胴体部11から離れるように回転する場合に、EL4軸の角度を正とする。肩関節部24では、基準状態では上腕部24を横方向の外側に75度まで上げることができ、上腕部24が胴体部11に近づく方向には、10度まで回転できる。上腕部傾斜角δEL4は、例えば-10度≦δEL4≦75度の範囲内の何れかの値をとることができる。
肩関節部27では、AZ5軸の回りの回転可能範囲は、例えば-90度から20度である。ここで、AZ5軸の回りの回転角度(上腕部回転角)は、基準状態で0度であり、上腕部24が胴体部11の側に回転する場合に角度を負とする。上腕部24を通るA5軸の回りの回転により、上腕部24を下に向けて肘関節部28を90度に曲げた状態では、前腕部25を腕接続部19の前面に平行になるまで内側に回転でき、外側には20度まで回転できる。上腕部回転角θAZ5は、例えば-90度≦θAZ5≦20度の範囲内の何れかの値をとることができる。
肘関節部28が、回転軸接続部25Aに対して前腕基部25Bを回転させる機構を含むと考えてもよい。そう考える場合には、肘関節部28は、前腕部25を2回転自由度で回転可能に上腕部24に接続する。肘関節部28は、前腕部25を通る前腕部回転軸(AZ6軸)の回りの回転と、前腕部25と上腕部24とがなす角度を変更する回転軸(EL5軸)の回りの回転とを可能とする。AZ6軸の回りの回転は、前腕部25およびハンド部26を回転させる。AZ6軸の回りに前腕部25を回転させる場合には、手首関節部29でハンド部26をAZ6軸の回りに回転できるようにする場合よりも、構造が簡単になる。
肘関節部28は、EL5軸の回りの1回転自由度で前腕部25を回転可能に上腕部24に接続すると考えてもよい。前腕部回転軸(AZ6軸)の回りに前腕部25を回転可能にする機構は、肘関節部28ではなく、前腕部25に設けられていると考えてもよい。そのように考える場合には、肘関節部28は、前腕部25を上腕部24に少なくとも1回転自由度で回転可能に接続する。また、前腕部25を通る前腕部回転軸の回りに前腕部25が回転可能である。
肘関節部28では、EL5軸の回りの回転可能範囲は、例えば10度から125度である。ここで、EL5軸の回りの回転角度(前腕部傾斜角)は、前腕部25と上腕部24とが同一直線に存在する場合を0度とする。つまり、上腕部24を肘関節部28よりも前腕部25が存在する側に延長した直線と前腕部25とがなす角度が、EL5軸の回りの回転角度である。前腕部25が上腕部24よりも前側に存在する場合に、EL5軸の回りの回転角度を正とする。前腕部傾斜角が0度の場合に、前腕部25と上腕部24とがなす角度は180度である。したがって、肘関節部28は、前腕部25と上腕部24とがなす角度が約170度から約55度である範囲で、曲げ伸ばしできる。前腕部傾斜角δEL5は、例えば10度≦δEL5≦125度の範囲内の何れかの値をとることができる。
肘関節部28では、前腕部回転軸(AZ6軸)の回りの回転可能範囲は、例えば-100度から100度までである。基準状態では、前後方向回転平面が前腕部25の正面方向と平行になる。AZ6軸の回りの回転角度(前腕部回転角)は、基準状態ではAZ6軸の角度を0度とする。前後回転平面が外側に傾く場合に、AZ6軸の角度を正とする。前腕部回転角θAZ6は、例えば-100度≦θAZ6≦100度の範囲内の何れかの値をとることができる。
手首関節部29は、ハンド部26を2回転自由度で回転可能に前腕部25に接続する。手首関節部29は、2軸ジンバルである。手首関節部29は、前後方向回転平面および左右方向回転平面のそれぞれで前腕部25とハンド部26とがなす角度を変更できる。前後方向回転平面および左右方向回転平面は、どちらも前腕部25を含む平面であり、互いに直交する。EL6軸は、前後方向回転平面に直交する。EL6軸は、前後方向回転平面でハンド部26が回転することを可能にする回転軸である。XEL2軸は、左右方向回転平面に直交する。XEL2軸は、左右方向回転平面でハンド部26が回転することを可能にする回転軸である。前後方向回転平面が、前腕部回転軸(AZ6軸)を含む第1前腕平面である。左右方向回転平面が、AZ6軸を含み前後方向回転平面と直交する第2前腕平面である。前後方向回転平面および左右方向回転平面は、互いに直交しなくともよく、交差していればよい。第1前腕平面である前後方向回転平面は、AZ6軸を含まなくてもよい。第2前腕平面である左右方向回転平面は、AZ6軸を含まなくてもよい。前後方向回転平面と左右方向回転平面とは、互いに交差していればよい。
手首関節部29では、EL6軸の回りの回転による前後方向回転平面での回転角度は、ハンド部26を例えば-45度から60度まで回転できる。XEL2軸の回りの回転による左右方向回転平面での回転角度は、ハンド部26を例えば-60度から60度まで回転できる。EL6軸およびXEL2軸の回りの回転角度は、ハンド部26と前腕部25とが同一の直線上に存在する場合に、角度を0度とする。前後方向回転平面でハンド部26が前側に存在する場合に、EL6軸の回りの回転角度(ハンド第1傾斜角)を正とする。左右方向回転平面でハンド部26が外側に存在する場合に、XEL2軸の回りの回転角度(ハンド第2傾斜角)を正とする。ハンド第1傾斜角δEL6は、例えば-45度≦δEL6≦60度の範囲内の何れかの値をとることができる。ハンド第2傾斜角δXEL2は、例えば-60度≦δXEL2≦60度の範囲内の何れかの値をとることができる。
肘関節部28で前腕部25が前腕部回転軸(AZ6軸)の回りに回転するので、ハンド部26は前腕部25に対する向きを大きく変更できる。手首関節部29では、互いに直交する前後方向回転平面および左右方向回転平面で前腕部25とハンド部26との接続角度を変更できるので、ハンド部26を前腕部25に対して意図する方向に向けることが容易である。手首関節部が、前腕部25に対してハンド部26を回転させ、ハンド部26が前腕部25となす角度を変更する方式の関節部である場合は、ハンド部26と前腕部25とがなす角度が180度に近い場合(前腕部25が延在する方向にハンド部26が存在する場合)には、ハンド部26を前腕部回転軸の回りに大きく回転させる必要があり、ハンド部26を前腕部25に対して意図した方向に向けることが難しくなる。
手首関節部を、ハンド部26が前腕部25となす角度だけを変更するようにしてもよい。その場合には、手首関節部での回転自由度が1回転自由度でよく、手首関節部を簡素にできる。肘関節部28で前腕部25が前腕部回転軸(AZ6軸)の回りに回転するので、ハンド部26は前腕部回転軸に対する回転可能範囲は、手首関節部で必要な範囲にできる。ただし、ハンド部26と前腕部25とがなす角度が180度に近い場合には、ハンド部26を前腕部回転軸に対して意図した方向に向けることが難しくなる。
腕基部関節部は、2回転自由度を有してもよい。肩関節部27は、1回転自由度あるいは3回転自由度を有してもよい。肘関節部28は、1回転自由度あるいは3回転自由度を有してもよい。手首関節部29は、1回転自由度あるいは3回転自由度を有してもよい。腕基部関節部の回転自由度、肩関節部27の回転自由度、肘関節部28の回転自由度、手首関節部29の回転自由度の合計は、6回転自由度あるいは8回転自由度でもよい。
肩関節部27は、肩関節構造部27A、モータ27B、モータ設置部27Cおよび回転軸部材27Dを有する。回転軸部材27Dは、EL4軸に平行な棒状の部材である。回転軸部材27Dに、上腕部24が接続する。回転軸部材27Dが回転すると、上腕部24がEL4軸の回りを回転する。上腕部24を、AZ5軸の回りに回転させる機構は、上腕部24に設けられる。
肩関節構造部27Aおよびモータ設置部27Cは、回転軸部材27Dを回転可能に保持する部材である。回転軸部材27Dは、肩関節構造部27Aに垂直である。基準状態では肩関節構造部27Aは前後方向に水平に延在し、回転軸部材27Dは下方に延在する。肩関節構造部27Aは、フランジを有する円筒と、腕接続部19側に接続した直方体とを有する形状である。肩関節構造部27Aの円筒を前方から見ると、フランジの部分は、円の左右の対向する部分を直線で切り取った形状である。モータ設置部27Cも、フランジを有する円筒状の形状である。フランジは、肩関節構造部27Aおよびモータ設置部27Cで同じ形状である。肩関節構造部27Aの円筒のフランジおよびモータ設置部27Cのフランジは、互いに接合する。モータ設置部27Cには、その内部にモータ27Bが設置される。モータ27Bは、回転軸部材27Dを回転させる動力を発生する。モータ設置部27Cの内部には、モータ27Bの回転トルクを回転軸部材27Dに伝えるギアも収納される。
上腕部24は、関節接続部24A、中間円筒部24B、フタ24Cおよび下側円柱24Dを有する。関節接続部24Aは、肩関節部27が有する回転軸部材27Dと接続する四角い棒状の部分を有する部材である。回転軸部材27Dと関節接続部24Aは、一体に形成される。関節接続部24Aは、四角い棒状の部分の下側に円柱状の部分を有する。円柱状の部分は、中間円筒部24Bの内部に回転可能に挿入される。中間円筒部24Bが関節接続部24Aに対して回転することで、上腕部24がAZ5軸の回りを回転する。
関節接続部24Aは、肩関節構造部27Aに設けられた開口を通る。肩関節構造部27Aに設けられた開口は、基準状態では下側を向く。関節接続部24Aの角棒の部分が開口と接触することで、肩関節部27において左右方向の回転角度が制限される。肩関節部27は、上腕部27を下に向けた状態から左右方向の外側に回転させる場合は、上腕部27が水平に近い角度になるまで回転できる。
中間円筒部24Bには、背面側に開口が設けられる。背面側の開口は、中間円筒部24Bの内部のモータなどをメンテナンスなどするために設けている。フタ24Cは、中間円筒部24Bの開口をふさぐ。中間円筒部24Bの上側の内部には、関節接続部24Aに対して中間円筒部24Bを回転させるモータやギアが収納される。肘関節部28で使用するモータ24E(図示せず)も、中間円筒部24Bの下側の内部に収納される。モータ24Eの回転軸は、中間円筒部24Bの下側から外部に出る。
下側円柱24Dは、中間円筒部24Bの下側に接続する。下側円柱24Dは、中間円筒部24Bよりも径が小さい円筒である。関節接続部24A、中間円筒部24Bおよび下側円柱24Dは、1本の直線上に存在する。下側円柱24Dは、肘関節部28が有する回転軸保持ヨーク28Aに接続する。
肘関節部28は、2回転自由度で前腕部25を上腕部24に接続する。肘関節部28は、前腕部25を通る前腕部回転軸(AZ6軸)の回りの回転と、上腕部24と前腕部25とがなす角度を変更する回転とを可能にする。肘関節部28は、回転軸保持ヨーク28A、回転軸部材28B、ウォームホイール28C、ウォーム28D、ギア部28E、モータ28F、ギア部28G、モータ収納部28Hおよびギアカバー28Jを有する。ウォームギア機構を使用しているので、肘関節部28で前腕部25と上腕部24とがなす角度は、電力の供給が途絶えた場合でも維持できる。
回転軸部材28Bは、前腕部25と上腕部24との間の角度を変更する回転軸(EL5軸)を構成する軸部材である。回転軸部材28Bに前腕部25が接続する。回転軸部材28Bは、上腕部24に対して直交する方向に延在する。回転軸保持ヨーク28Aは、回転軸部材28Bを回転可能に保持する。回転軸保持ヨーク28Aは、回転軸部材28Bが貫通する2枚の対向する板状の部分と、2枚の板の上部を接続する板状の部分を有する形状である。回転軸保持ヨーク28Aは、上側の板状の部分で下側円柱24Dに接続する。
図21に示すように、ウォームホイール28C、ウォーム28Dおよびギア部28Eは、上腕部24の内部に収納されたモータ24Eにより回転軸部材28Bを回転させる機構を構成する。ウォームホイール28Cは、回転軸部材28Bに取り付けられている。ウォームホイール28Cが回転することで、回転軸部材28Bが回転する。ウォームホイール28Cは、肘関節部28の左右方向の外側に存在する。ギア部28Eは、モータ24Eの回転により回転する。ギア部28Eは、中間円筒部24Bの下面に平行に設置される。ギア部28Eは、モータ24Eの回転軸と噛み合うギアと、ウォーム28Dと噛み合うギアとを有する。ウォーム28Dは、中間円筒部24Bが延在する方向に存在する。ウォーム28Dは、中間円筒部24Bに近い側でギア部28Eと噛み合う。また、中間円筒部24Bから遠い側で、ウォーム28Dはウォームホイール28Cと噛み合う。ギアカバー28Jは、ウォームホイール28C、ウォーム28Dおよびギア部28Eを覆うカバーである。
モータ24Eが回転すると、モータ24Eの回転がギア部28Eによりウォーム28Dに伝えられて、ウォーム28Dが回転する。ウォーム28Dが回転すると、ウォームホイール28Cおよび回転軸部材28Bが回転して、前腕部25と上腕部24とがなす角度が変化する。
図20に示すように、モータ28F、ギア部28Gおよびモータ収納部28Hは、前腕部25に設けられる。モータ28F、ギア部28Gおよびモータ収納部28Hは、肘関節部28において前腕部25を通る前腕部回転軸の回りに前腕部25を回転させる機構を構成する。モータ28Fは、前腕部25を回転させる動力を発生する。ギア部28Gは、モータ28Fの回転により前腕部25を回転させるためのギアである。モータ収納部28Hは、モータ28Fを収納する。ギア部28Gの外形は、フランジを有する円筒状である。モータ収納部28Hは、ギア部28Gの手首側に接続する。モータ収納部28Hは、モータ28Fを挟む2個の側面と、側面をつなぐ底面とを有する部材である。ギア部28Gは、モータ28Fと前腕基部25B(後述)の間に存在する。ギア部28Gの内部には、回転軸接続部25A(後述)、ギア機構およびモータ28Fの回転軸が存在する。ギア機構は、モータ28Fの回転により、前腕基部25Bを回転軸接続部25Aに対して回転させる機構である。
前腕部25は、回転軸接続部25A、前腕基部25B、前腕骨部25C、アクチュエータ構造部25D、ねじ棒保持部25Eおよびねじ棒保持部25Fを有する。回転軸接続部25Aは、回転軸部材28Bともに回転する部材である。回転軸接続部25Aと回転軸部材28Bは、一体に形成する。回転軸接続部25Aは、関節接続部24Aと同様な形状を有する。回転軸接続部25Aの形状は、肘関節部28が有する回転軸部材28Bと接続する円柱状の部分と、円柱状の部分の下側に接続する円筒状の部分とを有する形状である。前腕基部25Bは、フランジを有する円筒状の形状である。前腕基部25Bの上面の円形の開口に、回転軸接続部25Aの円筒状の部分が回転可能に挿入される。前腕基部25Bのフランジとギア部28Gのフランジとが接合されるギア部28Gは、前腕基部25Bよりもハンド部26が存在する側に存在する。モータ28Fが回転すると、ギア部28Gの内部に設けられたギア機構により、前腕基部25Bが回転軸接続部25Aに対して回転する。
前腕骨部25Cは、前腕基部25Bのハンド部26が存在する側に接続する角柱状の部材である。前腕骨部25Cの先端に、手首関節部29が設けられる。前腕基部25Bの下側には、外形が円筒状のギア部28Gが接続する。前腕骨部25Cは、ギア部28Gを貫通して手首側に延在する。
アクチュエータ構造部25Dは、手首関節部29において接続角度を変更する2個のアクチュエータを設置するための構造部材である。アクチュエータ構造部25Dは、前腕骨部25Cに固定される。アクチュエータ構造部25Dが固定される面は、基準状態で前腕骨部25Cの前側を向く面である。アクチュエータ構造部25Dは、手首関節部29の半分の断面がT字状であり、肘関節部28側がTの縦棒だけである形状を有する部材である。Tの縦棒だけの部分(縦板部)は、外形が円筒状のギア部28Gの外側およびフランジに接続する。ねじ棒保持部25Eは、アクチュエータ構造部25Dの断面がT字状であるハンド部26側の端部に取り付けられる。ねじ棒保持部25Fは、アクチュエータ構造部25Dの縦板部の端部および前腕基部25Bのフランジに接続する。ねじ棒保持部25Eおよびねじ棒保持部25Fの間に、2本のねじ棒が回転可能に保持される。
手首関節部29は、2回転自由度でハンド部26を前腕部25に接続する。手首関節部29は、交線が前腕部25を通る互いに直交する2平面のそれぞれで、ハンド部26と前腕部25との間の角度を変更する。交線が前腕部25を通る互いに直交する2平面は、前後方向回転平面および左右方向回転平面である。前後方向回転平面および左右方向回転平面は、アクチュエータ構造部25Dにより決まる平面に対して45度の角度をなす。図25に、手首関節部29の断面図を示す。図25は、図21に示すA-A断面での断面図である。
手首関節部29は、T字部材29A、T字部材保持ヨーク29B、T字部材保持部29Cおよび手首基部29Dを有する。T字部材29Aは、2回転自由度の接続を可能とするT字状の部材である。T字部材29Aは、前腕骨部25Cと手首基部29Dとを2回転自由度で接続する。T字部材保持ヨーク29Bは、前腕骨部25Cの先端に設けられる。T字部材保持部29Cは、手首基部29Dに設けられる。T字部材29AのTの横棒の部分をEL6軸が通り、Tの縦棒の部分をXEL2軸が通る。T字部材29AのTの横棒の部分は円柱状であり、Tの横棒の部分の円柱の中心がEL6軸である。T字部材29AのTの縦棒の部分は円柱状であり、Tの縦棒の部分の円柱の中心がXEL2軸である。T字部材29Aでは、EL6軸とXEL6軸が同一平面上に存在する。
T字部材保持ヨーク29Bは、2枚の対向する板材と、前腕骨部25C側で2枚の板材をつなぐ板材とを有する部材である。T字部材保持ヨーク29Bは、T字部材29AのTの横棒の両端を回転可能に保持する。ベアリング29E(図25に図示)は、T字部材保持ヨーク29BとT字部材29Aとの間に存在して、両者を回転可能にする。T字部材保持部29Cは、T字部材29AのTの縦棒を回転可能に保持する部材である。ベアリング29F(図25に図示)は、T字部材保持部29CとT字部材29Aとの間に存在して、両者を互いに回転可能にする。T字部材保持部29Cは、等脚台形のような断面を有する部材である。T字部材保持部29Cの台形の下底側の側面に、T字部材29AのTの縦棒の部分が挿入される。手首基部29Dは、円盤状の部材である。ハンド部26が存在する側とは反対の側の手首基部29Dの面に、T字部材保持部29Cが垂直に接続する。T字部材29AのXEL2軸が延在する部分(Tの縦棒の部分)は、T字部材保持部29Cに回転可能に保持される。XEL2軸およびEL6軸は、円盤状の手首基部29Dに平行である。XEL2軸およびEL6軸の交点を、前腕部回転軸(AZ6軸)が通る。
T字部材保持部29Cには、前腕外側アクチュエータ35および前腕内側アクチュエータ36が有する固定長リンクの他端が回転可能に接続する。
前腕外側アクチュエータ35および前腕内側アクチュエータ36は、手首関節部29での回転角度を変更する。前腕外側アクチュエータ35と前腕内側アクチュエータ36は、同様な形状である。前腕外側アクチュエータ35および前腕内側アクチュエータ36は、それぞれ移動部材と、移動部材に一端が接続する固定長リンクを有する。2本の固定長リンクの他端が手首関節部29に接続する。手首関節部29は、一端が移動部材により移動する2本の固定長リンクにより駆動される。前腕外側アクチュエータ35および前腕内側アクチュエータ36は、前腕部25に設けられる。
前腕外側アクチュエータ35の構造を説明する。前腕外側アクチュエータ35は、ねじ棒35A、移動部材35B、レール35C、リンク35D、モータ設置板35E、モータ35F、ベルト35G、プーリ35Hおよびプーリ35Jを有する。ねじ棒35Aの両端は、ねじ棒保持部25Eおよびねじ棒保持部25Fに回転可能に保持される。ねじ棒保持部25Eおよびねじ棒保持部25Fでは、ねじ棒35Aを保持する部分に直方体状の部材を設けている。移動部材35Bは、ねじ棒35Aの雄ねじに噛み合う雌ねじが設けられた貫通穴を有する。レール35Cは、アクチュエータ構造部25Dの縦板部の側面に、ねじ棒35Aと平行に設けられる。移動部材35Bは、レール35Cを挟む部分を有する。移動部材35Bはレール35Cを挟むので、ねじ棒35Aが回転すると、移動部材35Bが回転することなくねじ棒35Aに沿って移動する。
モータ設置板35Eは、ハンド部26側に存在するねじ棒保持部25Eに設けられる。
モータ設置板35Eは、前腕部25が延在する方向に対して略垂直に設けられる。モータ設置板35Eに垂直に、かつねじ棒35Aに平行に、モータ35Fがモータ設置板35に取り付けられる。ねじ棒35Aおよびモータ35Fの回転軸は、モータ設置板35に設けられた開口を通る。ベルト35G、プーリ35Hおよびプーリ35Jは、モータ35Fの回転をねじ棒35Aに伝える。プーリ35Hは、ねじ棒35Aに取り付けられる。プーリ35Jは、モータ35Fの回転軸に取り付けられる。ベルト35Gは、プーリ35Hおよびプーリ35Jにかけ渡される。モータ設置板35のモータ35Fが存在しない側に、プーリ35H、プーリ35Jおよびベルト35Gが設けられる。プーリ35Hおよびプーリ35Jがベルト35Gにより連結されているので、モータ35Fの回転軸が回転すると、ねじ棒35Aが回転する。
移動部材35Bは、ねじ棒35Aが延在する方向から見ると、1個の角を共有して互いに直交する2個の長方形を組み合わせて、共有する角を凹な円弧面により除いたような形状である。移動部材35Bの2個の長方形の部分の厚さは、同じである。別の言い方をすると、移動部材35Bは、2個の直方体を連結部材で結合したような形状を有する部材である。連結部材は、凹な円弧状の側面と2個の互いに直交する平面とを有する形状を有する部材である。移動部材35Bの1個の直方体には、ねじ棒35Aが貫通する。もう1個の直方体は、レール35Cを挟む。レール35Cを挟む側の直方体の部分にリンク35Dの一端が2回転自由度で回転可能に接続する。リンク35Dの長さは、一定で変化しない。リンク35Dは、ねじれを可能とする1回転自由度を有する。
リンク35Dの一端が移動部材35Bに回転可能に接続する箇所を、前腕外側リンク取付部J11と呼ぶ。前腕外側リンク取付部J11は、2軸ジンバルである。前腕外側リンク取付部J11では、移動部材35Bに回転可能に設けられたヨークがリンク35Dの一端に設けられた軸部材を回転可能に保持する。前腕外側リンク取付部J11のヨークは、アクチュエータ構造部25Dの縦板部に垂直に設けられる。
リンク35Dの他端は、ハンド部26(厳密には、T字部材保持部29C)に2回転自由度で回転可能に接続する。リンク35Dの一端がハンド部26に接続する箇所を、手外側リンク取付部J13と呼ぶ。手外側リンク取付部J13は、前腕外側リンク取付部J11と同様な構造である。
前腕内側アクチュエータ36は、ねじ棒36A、移動部材36B、レール36C、リンク36D、モータ設置板36E、モータ36F、ベルト36G、プーリ36Hおよびプーリ36Jを有する。リンク36Dの一端は、前腕内側リンク取付部J12により、2回転自由度で回転可能に移動部材36Dに接続する。前腕内側リンク取付部J12は、2軸ジンバルである。前腕内側リンク取付部J12は、前腕外側リンク取付部J11と同様な構造を有する。リンク36Dの他端は、手内側リンク取付部J14により、2回転自由度で回転可能に移動部材36Dに接続する。
前腕内側アクチュエータ36は、前腕外側アクチュエータ35と同様な構造を有する。前腕内側アクチュエータ36については、詳細な構造の説明を省略する。
前腕部25の裏側に、モータ35F、モータ28Fおよびモータ36Fを並行して配置している。そうすることで、前腕部25の幅および厚みを小さくできる。
腕部10では、ギア駆動による関節部とリンク駆動による関節部とを組み合わせるハイブリッド方式の駆動方式を採用している。2回転自由度を持たせる肩関節部では、1回転自由度は、上腕部を通り上腕部を回転させる。2回転自由度を有する肘関節部では、1回転自由度は、前腕部を通り前腕部を回転させる。そのため、腕部10をコンパクトにでき、駆動範囲を人間と同等以上にできる。ハイブリッド駆動方式は、腕部10が必要なパワーを出すことができ、かつ静かである。また、ハイブリッド駆動方式では、腕部10が有する各関節部を高精度に駆動することが可能になる。
図26から図39を参照して、ハンド部26の構造を説明する。図26は、ハンド部26の斜視図である。図27から図32は、ハンド部26の正面図、右側面図、背面図、左側面図、平面図および底面図である。ハンド部26は、使用する際には指部が水平になる場合が多い。ここでのハンド部26の正面は、指部が水平になる状態で、指部が延在する方向と直交する方向とする。ハンド部26は、5本の指部を有する。ハンド部26は、1本の指部と並んだ4本の指部とが対向して配置される。1本の指部および4本の指部は、その間隔が増減するように直線的に移動する。5本の指部は、根元から指全体が回転可能である。図33から図37は、ハンド部26の変化した状態1から状態5を示す斜視図である。図38は、変化した状態5で電動ドライバを操作している斜視図である。
ハンド部26は、第1指部91と、並んだ4本の第2指部92、第3指部93、第4指部94および第5指部95、第1指接続部96、第2指接続部97、および手首接続部98を有する。第1指部91は、第3指部93に対向して配置される。第2指部92は、第3指部93に並んで配置される。第2指部92が並ぶ側とは反対の側に第3指部93に並んで、第4指部94が配置される。第3指部93が並ぶ側とは反対の側に第4指部94に並んで、第5指部95が配置される。第1指接続部96に、第1指部91が回転可能に接続する。第2指接続部97に、4本の指部である第2指部92、第3指部93、第4指部94および第5指部95がそれぞれ独立に回転可能に接続する。手首接続部98は、手首関節部29と接続する。第1指部91が人間の手の親指に対応し、第2指部92が人差指に対応し、第3指部93が中指に対応し、第4指部94が薬指に対応し、第5指部95が小指に対応すると考えることができる。
ハンド部26の構造を説明するために、以下のように第4の直交座標系を定義する。
X4軸:手首接続部98に垂直な軸。
Y4軸:指部が直線移動する方向に平行な軸。
Z4軸:4本の指部が並ぶ方向に平行な軸。
基準状態での指先の方向をX4軸の正の向きとし、第1指部91から第3指部93に向かう方向をY4軸の正の向きとし、第5指部95から第2指部92に向かう方向をZ4軸の正の方向とする。X4軸に平行な方向を指先方向と呼ぶ。X4座標値が大きい側を指先側と呼び、小さい側を指元側と呼ぶ。Z4軸に平行な方向を手幅方向と呼ぶ。Z4座標値が大きい側を第2指部側と呼び、小さい側を第5指部側と呼ぶ。Y4軸に平行な方向をスライド方向と呼ぶ。Y4座標値が大きい側を第3指部側と呼び、小さい側を第1指部側と呼ぶ。
第1指接続部96は、手首接続部98に対してスライド方向に移動可能である。第1指接続部96には、第1指部91が回転可能に接続する。第2指接続部97は、手首接続部98に対してスライド方向に移動可能である。第2指接続部97には、第2指部92、第3指部93、第4指部94および第5指部95が回転可能に接続する。第1指接続部96および第2指接続部97がスライド方向に移動する際には、連動して移動する。手首接続部98に対して移動する距離は、第1指接続部96および第2指接続部97で同じであり、移動方向は互いに反対である。
手首接続部98は、手基部98A、接続円柱部98B、第1レール98C、第2レール98D、ピニオン98E(図27に図示)、モータ98F(図示せず)を有する。手基部98Aは、Y4Z4平面に平行な板状の部材である。手基部98Aに、第1指接続部96および第2指接続部97が接続する。手基部98AをX4軸に平行な方向から見ると、Z4軸方向の長さとY4軸方向の長さの比が10:11程度の長方形である。接続円柱部98Bは、手首関節部29と接続する部材である。接続円柱部98Bは、手基部98Aの指元側の主面に接続する。接続円柱部98Bは、外形が円柱状であり、径は指先側で大きく、手首関節部29が存在する側で径が階段状に小さくなる。接続円柱部98Bは、手首関節部29が有する手首基部29Dに固定される。接続円柱部98Bの中心軸を、X4軸とする。接続円柱部98Bの中心軸は、手基部98AのZ4軸方向の中央であり、かつY4軸方向では少し第1指部91が存在する側である位置に存在する。第1レール98Cなどが設けられた手基部98Aの主面とX4軸との交点を、第4の直交座標系の原点とする。
接続円柱部98Bの中心軸(X4軸)は、手首関節部29が有する2個の回転軸であるEL6軸とXEL軸の交点を通る。EL6軸とXEL軸の交点には、前腕部回転軸(AZ6軸)も通る。そのため、手首関節部29は、X4軸がAZ6軸と一致する状態(X4軸がAZ6軸と同じ直線上に存在する状態)で、ハンド部26を前腕部25に接続することができる。X4軸がAZ6軸と一致する状態で前腕部25およびハンド部26を前腕部回転軸(AZ6軸)の回りに回転させると、ハンド部26はX4軸の回りを回転する。
第1レール98Cは、第1指接続部96がY4軸に平行な方向にスライドして移動するためのレールである。第2レール98Dは、第2指接続部97がY4軸に平行な方向にスライドして移動するためのレールである。第1レール98Cと第2レール98Dは、手基部98Aの指先側の主面に設けられる。第1レール98Cは、手基部98Aの主面の第2指部側の辺に沿って設けられる。第2レール98Dは、手基部98Aの主面の第5指部側の辺に沿って設けられる。ピニオン98Eは、X4軸の回りを回転するギアである。ピニオン98Eは、第1指接続部96に設けられた第1ラック96Aと第2指接続部97に設けられた第2ラック97Aと係合する。ピニオン98Eが回転すると、第1ラック96Aすなわち第1指接続部96と第2ラック97Aすなわち第2指接続部97とが、互いに反対方向に同じ距離だけ移動する。モータ98Fは、第1ラック96Aおよび第2ラック97Aがピニオン98Eに対して移動する動力を発生する。
ハンド部26は、第1指接続部96および第2指接続部97を移動させる移動機構ではなく、第1指接続部96または第2指接続部97のどちらかだけを移動させる移動機構を備えてもよい。ハンド部26は、第1指接続部96および第2指接続部97の少なくとも一方を移動させる移動機構を備えればよい。
第1指接続部96は、第1ラック96A、第1フレーム96B、第1把持部96C、第1指接続フレーム96Dを有する。第1フレーム96Bは、Y4Z4平面に平行な主面を有する外形が直方体のフレームである。第1ラック96Aは、第1フレーム96Bの第5指部側の側面の指元側の辺(Y4軸に平行)に沿って設けられる。第1把持部96Cは、第1レール98Cを把持する部材である。第1把持部96Cが第1レール98Cを把持することで、第1指接続部96が手基部98Aと分離することなく、第1レール98Cに沿って移動できる。第1把持部96Cは、第1フレーム96Bの指元側の主面の第2指部側の辺(Y4軸に平行)に沿って設けられる。第1指接続フレーム96Dは、第1指部91が回転可能に接続する部材である。第1指接続フレーム96Dは、第1フレーム96Bの第1指部側の側面に接続する。
第2指接続部97は、第2ラック97A、第2フレーム97B、第2把持部97C、第2指接続フレーム97D、掌肉部97Eを有する。第2フレーム97Bは、Y4Z4平面に平行な主面を有する外形が直方体のフレームである。第2フレーム97BのX4軸方向の長さは、第1フレーム96Bよりも少し短い。第2ラック97Aは、第2フレーム97Bの第2指部側の側面の指元側の辺(Y4軸に平行)に沿って設けられる。第2ラック97Aと手基部98Aとの距離は、第1ラック96Aと手基部98Aとの距離と同じである。第2把持部97Cは、第2レール98Dを把持する部材である。第2把持部97Cが第2レール98Dを把持することで、第2指接続部97が手基部98Aと分離することなく、第2レール98Dに沿って移動できる。第2把持部97Cは、第2フレーム97Bの指元側の主面の第5指部側の辺(Y4軸に平行)に沿って設けられる。第2指接続フレーム97Dは、第2指部92、第3指部93、第4指部95が回転可能に接続する部材である。第2指接続フレーム97Dは、第2フレーム97Bの第3指部側の側面に接続する。
第1レール98C、第1把持部96C、第2レール98D、第2把持部97C、第1ラック96A、第2ラック97A、ピニオン98Eおよびモータ98Fは、第1指部91と第3指部93の間隔が増減するように、第1指接続部96および第2指接続部97の少なくとも一方を手基部98に対して移動させる移動機構である指移動部を構成する。
ハンド部26が有する指移動部は、第1指接続部96および第2指接続部97を移動させる。指移動部としては、第1指接続部または第2指接続部の一方だけを手基部に対して移動させるものでもよい。
掌肉部97Eは、第2指接続フレーム97Dの第1指部側の側面に第2フレーム97Bよりも指先側の位置で接続する。掌肉部97Eは、手幅方向で第1指部91と対向する部分ではスライド方向に直方体状の切り欠き97Fを有する。切り欠き97Fは、第1指接続フレーム96Dに対して回転した第1指部91を収納できる。掌肉部97Eは、ハンド部26が物体を把持する際に、物体に指元側で接触する。掌肉部97Eは、第2指接続フレーム97Dに対して回転した第2指部92、第4指部94および第5指部95を指元側で支持する。
第2指部92、第4指部94および第5指部95のそれぞれは、手基部98Aに対して垂直な角度から掌肉部97Eに接触する角度までの範囲で回転できる。第1指部91は、手基部98Aに対して垂直な角度から第1フレーム96Bまたは第3指部93に接触する角度までの範囲で回転できる。第3指部93は、手基部98Aに対して垂直な角度から掌肉部97Eまたは第1指部91に接触する角度までの範囲で回転できる。
指部の構造を説明する。第1指部91は、指本体部91A、指先部91B、指内側部91C、指関節部91D、ウォームホイール91E(図34に図示)、ウォーム91F(図示せず)、モータ91G(図示せず)、距離センサ91Hおよび開口91Jを有する。指本体部91Aは、鋼板でできた指部の内側の面およびその両側の側面を有する形状である。第1指部91で内側とは、回転させる際に手基部98Aに向かう面である。第2指部92などでも同様に内側を定義する。指本体部91Aの側面は、指先側での高さが低く指元側で高さが高い。指本体部91Aは、指元側に側面よりも厚い底面を有する。指本体部91Aの指先側は開いている。指本体部91Aの底面の指元側には、手幅方向の幅が狭い鋼材の部分が存在する。
指先部91Bは、指本体部91Aの指先の内側に取り付けられた樹脂製の部材である。
指先部91Bの表面には、2mm程度の高さの凹凸を設けており、指先部91Bと物体とがよりしっかりと接触するようにしている。指先部91Bは、物体を持つ際に物体に接触する十分な面積を有するようにしている。指内側部91Cは、指本体部91Aの内側の面に取り付けた樹脂製の部材である。指内側部91Cは、指先部91Bよりも薄い。
指関節部91Dは、第1指接続フレーム96Dに設けられたヨーク91DAが第1指部91に設けられた指節回転軸91DBを回転可能に保持する構成である。ウォームホイール91Eは、指節回転軸91DBとともに回転するように、指本体部91Aの指元側の底面に接続する。ウォーム91Fは、ウォームホイール91Eと嵌合する。ウォーム91Fは、第1指接続フレーム96Dに収納される。第1指接続フレーム96Dの指関節部91Dが存在する側の面に開口があり、その開口の中にウォームホイール91Eが入り、ウォーム91Fと嵌合する。モータ91Gは、ウォーム91Fを回転させる動力を発生する。
モータ91Gは、第1指接続フレーム96Dに収納される。第1指接続フレーム96Dには、モータ91Gの回転をウォーム91Fに伝えるギアも収納される。
距離センサ91Hは、指先部91Bと近くに存在する物体との距離を計測するセンサである。距離センサ91Hは、指本体部91Aおよびに設けられた開口91Jを通る光線を放射して物体との距離を計測する。距離センサ91Hは、第1指部91の指先に設けられた第1距離センサである。
第3指部93は、第1指部91と同様な構造を有する。第3指部93は、指本体部93A、指先部93B、指内側部93C、指関節部93D、ウォームホイール93E(図35に図示)、ウォーム93F(図35に図示)、モータ93G(図示せず)、距離センサ93H、開口93Jを有する。距離センサ93Hは、第3指部93の指先に設けられた第2距離センサである。本体部93Aは、鋼板製である。指先部93Bおよび指内側部93Cは、樹脂製である。指本体部93Aは、内側の面が段差を有する形状である。指本体部93Aの内側の面には、指先部93Bが設けられる部分と指内側部93Cが設けられる部分とに段差が存在する。指先部93Bが設けられる部分と、指内側部93Cが設けられる部分とは平行であるが、指先部93Bが設けられる部分の方が内側に存在する。ウォーム93Fおよびモータ93Gは、第2指接続フレーム97Dに収納される。
第4指部94および第5指部95は、第3指部95と同様な形状である。第4指部94および第5指部95は、距離センサおよび開口を有しない。第4指部94は、第2指部92が並ぶ側とは反対の側に第3指部93に並び、第2指接続部97に回転可能に接続する。第5指部95は、第3指部93が並ぶ側とは反対の側に第4指部94に並び、第2指接続部97に回転可能に接続する。
第2指部92は、第4指部94と同様な構造に加えて、指本体部92Aに沿って指元側に移動するスライド指先部92Kおよびその駆動機構を有する。第2指部92は、指本体部92A、指先部92B、指内側部92C、指関節部92D、ウォームホイール92E(図35に図示)、ウォーム92F(図35に図示)、モータ92G(図示せず)、スライド指先部92K、モータ収納部92L、モータ92M(図示せず)、ネジ棒92N(図31に図示)、溝92P(図31に図示)、ナット92Q(図示せず)を有する。スライド指先部92Kは、指本体部92Aの第3指部93に隣接しない側の側面に設けられる。スライド指先部92Kは、Z4軸の方向から見ると内側に曲がった形状である。スライド指先部92Kの曲がった先端の指先部92Bに垂直な方向での位置は指先部92Bの表面の位置とほぼ同じであり、第2指部92が延在する方向での位置は指先部92Bの指元側の端とほぼ同じである。そのため、第2指部92で物体を把持する際に、スライド指先部92Kは支障にはならない。スライド指先部92Kは、指本体部92Aに沿って指本体部92Aの長さの20%程度の距離を指元側に移動できる。スライド指先部92Kは、第2指部92の指先の第3指部93が並ぶ側とは反対の側に設けられた、第1指部91が存在する側(内側)に曲がった引っ掛け部である。
指本体部92Aは、内部にスライド指先部92Kを移動させる機構を収納しており、外形が角筒状である。指本体部92Aの第3指部93が並ぶ側ではない側の側面には、指本体部92Aの長さ方向に延在する溝92Pが設けられている。溝92Pの長さは、スライド指先部92Kが移動可能な長さとほぼ等しい。ネジ棒92Nは、溝92Pの中に設けられている。ネジ棒92Nは、指元側では指本体部92Aの内部に入る。指本体部92Aの内部にネジ棒92Nと嵌合する雌ネジを有する貫通穴が設けられたナット92Qが存在する。ナット92Qの指本体部92Aに対する長さ方向の位置は決まっており、ナット92Qが回転することで、指本体部92Aから出るネジ棒92Nの長さが変化する。モータ92Gは、ナット92Qを回転させる動力を発生させる。モータ収納部92Lは、モータ92Gを収納する。スライド指先部92Kを移動させる機構は、スライド指先部92Kを第2指部92に沿って第2指接続部97に近づける方向に移動させる引っ掛け部移動部である。
ハンド部26が有する移動可能な部分の個数は、7個である。ハンド部26では、第1指部91、第2指部92、第3指部93、第4指部94および第5指部95という5本の指部がそれぞれ回転する。第1指接続部96と第2指接続部97の間隔を変更できる。第2指部92が有するスライド指先部92Kが移動できる。ハンド部26は、簡素な構造である。例えば、5本の指部が2個の指関節部で曲がる場合は、少なくとも10個の駆動機構が必要になる。
第1指部91は、手基部98Aに対して垂直な位置から平行な位置まで回転できる。第1指部91が手基部98Aに対して平行な場合は、第1指部91は掌肉部97Eに設けられた切り欠き97Fの中に入る。第2指部92、第3指部93、第4指部94および第5指部95は、それぞれ独立に手基部98Aに対する角度を変更できる。第2指部92、第3指部93、第4指部94および第5指部95は、手基部98Aに垂直な位置から掌肉部97Eに接する位置まで回転できる。
図33に示す状態1では、第1指部91、第2指部93、第3指部93、第4指部94および第5指部95を手基部98Aに対して垂直にして、第1指部91の指先部91Bと第3指部93の指先部93Bを接触させることができる。状態1では、指先部91Bと指先部93Bの間に物体を挟んで持つことができる。状態1のハンド部26は、紙などの薄い物体も挟んで持つことができる。状態1のハンド部26では、4本の指部と第1指部91とで物体を挟むので、大きな物体でも挟むことができる。
図34に示す状態2では、第1指部91だけを手基部98Aに平行にして、第2指部93、第3指部93、第4指部94および第5指部95を手基部98Aに垂直にできる。状態2のハンド部26を、第2指部93、第3指部93、第4指部94および第5指部95の内側が上に向くように手首関節部29を回転させれば、ハンド部26が有する4本の指部の上に物体を載せることができる。また、4本の指部をスコップのように使用することもできる。
図35に示す状態3では、第1指部91だけを手基部98Aに対して垂直にして、第2指部93、第3指部93、第4指部94および第5指部95を掌肉部97Eに接触させている。状態3のハンド部26は、第1指部91の指先部91Bで、ボタンなどを押すことができる。
図36に示す状態4では、第1指部91および第3指部93を手基部98Aに対して垂直にして、第2指部93、第4指部94および第5指部95を掌肉部97Eに接触させている。状態4は状態1と同様に、指先部91Bと指先部93Bの間に物体を挟んで持つことができる。第2指部93、第4指部94および第5指部95を立てた状態では入らないような狭い空間にも、第1指部91および第3指部93の指先を入れて物体を持つことができる。
図37に示す状態5では、第1指部91を手基部98Aに対して垂直にして、第2指部93、第3指部93、第4指部94および第5指部95を傾斜させて、第3指部93の指先部93Bが第1指先部91Bに斜めに接触している。状態5のハンド部26は、図38に示すように、例えば電動ドライバのグリップを把持する際のハンド部26が取るべき状態である。図38に示すように、5本の指部で電動ドライバ40のグリップ41を把持する。さらに、第2指部92が有するスライド指先部92Kを電動ドライバ40のレバー42にかけた状態にして、スライド指先部92Kを指元側に移動させることで、レバー42を引くことができる。つまり、状態5のハンド部26は、例えば電動ドライバ40を使用できる。
図39は状態4のハンド部26を使用する例を示す図である。図39(A)に斜視図を示し、図39(B)に正面図を示す。状態4のハンド部26は、第1指部91の指先部91Bと第3指部93の指先部93Bの間に、正八角形の筒状の物体45を挟んで持っている。図39(B)に示すように、第1指部91および第3指部93が手基部98Aに対して垂直な状態では、指先部91Bおよび指先部93Bは平行になる。手基部98Aを回転させる回転軸(X4軸)が指先部91Bおよび指先部93Bの間の空間の中心を通る。この空間の中心は、第1指部91および第3指部93の指先の中間点でもある。ハンド部26をX4軸の回りに回転させる場合に、物体45の位置は変化しないで回転することになる。ハンド部26は、物体45を安定して容易に回転させることができる。
腕部10では、ハンド部26は前腕部25とともに肘関節部28が有する前腕部回転軸(AZ6軸)の回りに回転する。手首関節部29では、ハンド部26は接続円柱部98Bの中心軸(X4軸)の回りに回転できない。AZ6軸をX4軸の替わりに使用することで、腕部10はハンド部26をAZ6軸(X4軸)の回りに回転させることができる。そのためには、ハンド部26が前腕部回転軸(AZ6軸)の方向に向くようにする。すなわち、X4軸をAZ6軸と一致させる。別の言葉で言うと、X4軸とAZ6軸とが1個の直線上に存在するように、ハンド部26を前腕部25に接続する。そうすると、前腕部回転軸(AZ6軸)が手基部98Aを回転させる回転軸(X4軸)になる。この状態で、肘関節部26において前腕部25を前腕部回転軸(AZ6軸)の回りに回転させると、ハンド部26もX4軸の回りに回転する。このようにして、ロボット1は、工具の一種であるドライバなどをハンド部26で持って回転させることができる。このように、腕部10は、関節部の回転自由度の合計が7回転自由度であるが、ハンド部26を回転させる動作も含めて多様な動作をすることができる。
手首関節部を、ハンド部26を通る回転軸の回りにも回転可能な3回転自由度にしてもよい。その場合には、ハンド部26を前腕部25とは異なる方向に向けた状態でも、ハンド部26でドライバなどを持って回転させることができる。手首関節部が3回転自由度である場合は、肘関節部28で前腕部25が前腕部回転軸の回りに回転できなくてもよい。手首関節部が3回転自由度にする場合は、球面軸受けを使用するか、2軸ジンバルを回転可能に保持する部材を追加する必要があり、さらに関節部を駆動するリンクを3本にするなどが必要である。その結果、3回転自由度の手首関節部は、2回転自由度である手首関節部29よりも構造が複雑になる。
ハンド部26は、指回転モード、間隔変更モード、スライドモードの3個のモードで動作する。指回転モードでは、第1指部91が第1指接続部96との間の角度を変更でき、第2指部92、第3指部93、第4指部94および第5指部95のそれぞれが独立に第2指接続部97に対してなす角度を変更できる。間隔変更モードでは、第1指接続部96と第2指接続部97との間の間隔を変更できる。なお、図34に示す状態2では、第1指接続部96と第2指接続部97との間の間隔は変更できない。状態2は、第1指接続部96と第2指接続部97との間の間隔が最も広い場合に取ることができる。スライドモードでは、スライド指先部92Kを指元側に移動させることができる。ハンド部26およびハンド操作装置80の動作モードは、オペレータ90が足でモード切替ペダル6を操作することで容易に変更できる。そのため、オペレータ90はハンド部26およびハンド操作装置80の動作モードを変更することが、ハンド部26に物体を持つなどの状態を維持したままで可能である。モード切替以外の、ハンド部26を動かす操作指示は、ハンド操作装置80によりオペレータ90が入力する。ハンド操作装置80は、オペレータ90が手に持つ。ハンド操作装置80に、動作モードの切替のための釦やスイッチやレバーなどを設けてもよい。ハンド操作装置80については、後で説明する。
複数の動作モードで使用できるハンド部26は、複数の機能を有するハイブリッドなロボットハンドと考えることができる。ハンド部26は、移動可能な部分は7個だけという簡素な構造である。それでいながら、多くのバリエーションで物体を持たせたり、工具を使用したり、4本の指部で雪かきなどのような動作をさせたりと、多くの使用形態でハンド部26を使用できる。ハンド部26は、人がする作業に同等あるいは近い多くの作業をすることができる。ハンド部26、ハンド操作装置80および制御演算装置をセットにし、このセットだけを使用することが可能である。ハンド部26、ハンド操作装置80および制御演算装置のセットは、ロボットハンドを操作するロボットハンドシステムを構成する。
ハンド部26は、様々な形態で物体を把持できる。例えば、第1指部91と第3指部93とで物体を挟んで持つことができる。第1指部91と、第2指部92、第3指部93、第4指部94および第5指部95とで、物体を挟んで持つことができる。5本の指部を使用して物体を把持する場合には、物体が重い場合でも物体に働く回転モーメントを5本の指部で分散して受け止めて安定して物体をつかめる。工具などを把持して、工具を使用するために手首関節部29を回転させる場合に、回転モーメントに対する反力を5本の指部で受けることができる。第1指部91、第2指部92、第3指部93、第4指部94および第5指部95を適切に曲げて、物体の形状に適した持ち方で物体を持つことができる。通常のマニピュレータは、2本の指での把持だけが可能であるが、ハンド部26は2本から5本の指で物体を把持できる。平面を有しない物体でも、物体の形状に合わせて5本の指を適切に回転させて、物体を持つことができる。指をどの角度まで曲げるかはオペレータ90が判断して、オペレータ90がハンド部26を操作して適切な形状になるように、5本の指部、第1指接続部96および第2指接続部97を操作する。物体を持つ際に使用する指部の本数および各指部の角度を、物体に合わせて変更できるので、ハンド部26が持てる物体のバリエーションが大きく広がる。
人指し指に相当する第2指部92は、指先が内側に曲がって指元側に移動可能なスライド指先部92Kを有する。電動ドライバや放水ノズルなどを5本の指部で把持し、レバーにスライド指先部92Kを掛けて引く(指元側に移動させる)ことで、電動ドライバや放水ノズルなどを容易に操作できる。スライド指先部92Kを掛けることができれば、レバーなどはどのような形状でもよい。電動ドライバや放水ノズルなどを操作可能であり、かつ多様な形態で物体を持つことができるような他のロボットハンドまたはマニピュレータを、発明者らは知らない。
図40から図45を参照して、操作装置3の構成を説明する。図40から図43は、操作装置3の使用状態での斜視図、右側面図、正面図および平面図である。図40から図43では、オペレータ90も図示する。図44および図45は、操作装置3の斜視図および右側面図である。図44および図45では、オペレータ90は図示しない。操作装置3は、表示装置4、上体入力装置5、モード切替ペダル6、足操作入力装置7(図示せず)および制御演算装置60を有する。表示装置4は、現場カメラ2が撮影した画像、ロボット1および周囲環境の3次元モデルをオペレータ90が指定した視点から見た画像であるモデル画像などを表示する。制御演算装置60は、表示装置4に表示する画像を生成する機能を有する。表示装置4は、立体視表示が可能な表示装置でもよい。立体視表示とは、立体的に見えるように表示することである。立体視表示装置および他の種類の表示装置を併用してもよい。
上体入力装置5は、ロボット1の左右の腕部10および左右のハンド部26を操作するための操作指示を入力する装置である。モード切替ペダル6は、ハンド部26が動くモードの切り替えをオペレータ90が入力するために使用する。モード切替ペダル6は、オペレータ90が上体入力装置5に向かう姿勢をとる場合に、オペレータ90の右側に存在するものをモード切替ペダル6Rと呼び、左側に存在するものをモード切替ペダル6Lと呼ぶ。オペレータ90は、右足でモード切替ペダル6Rを踏み、左足でモード切替ペダル6Lを踏む。足操作入力装置7は、車両部1Wおよび腕部10を含まないヒューマノイド部1Hを操作するために、オペレータ90が足で操作する。足操作入力装置7は、日本特許出願である特願2020-57275(出願日:2020年3月27日)に記載されたものと同様なものを使用する。足操作入力装置7については、本明細書では説明しない。特願2020-57275は、特開2021-49633として2021年4月1日に公開公報が出されている。特願2020-57275の記載内容は、参照により本願に取り込まれる。
上体入力装置5は、アーム操作装置50R、50L、ハンド操作装置80R、80L、支持フレーム51を有する。オペレータ90はアーム操作装置50Rにより、右の腕部10を操作する。アーム操作装置50Lにより、左の腕部10を操作する。ハンド操作装置80Rにより、右のハンド部26を操作する。ハンド操作装置80Lにより、左のハンド部26を操作する。支持フレーム51は、アーム操作装置50R、50Lを決められた位置に配置する。支持フレーム51の向って右側に、アーム操作装置50Rの上端が接続される。支持フレーム51の向って左側に、アーム操作装置50Lの上端が接続される。支持フレーム51は、アーム操作装置50R、50Lの上端を椅子に座ったオペレータ90の胸よりも少し低い位置の前方に配置する。ハンド操作装置80Rは、アーム操作装置50Rの先端に接続する。ハンド操作装置80Lは、アーム操作装置50Lの先端に接続する。
制御演算装置60は、右用のアーム操作装置50Rから入力される操作指示に基づき右の腕部10を制御し、左用のアーム操作装置50Lから入力される操作指示に基づき左の腕部10を制御する。制御演算装置60は、右用のハンド操作装置80Rから入力される操作指示に基づき右のハンド部26を制御し、左用のハンド操作装置80Lから入力される操作指示に基づき左のハンド部26を制御する。
図46から図50を参照して、アーム操作装置50R、50Lの構造を説明する。図46は、右のアーム操作装置50Rおよびハンド操作装置80Rの左側面図および正面図である。図46(A)が左側面図であり、図46(B)が正面図である。図47は、左のアーム操作装置50Lおよびハンド操作装置80Lの正面図および右側面図である。図47(A)が正面図であり、図47(B)が右側面図である。図48は、左のアーム操作装置50Lおよびハンド操作装置80Lの斜視図である。図49は、左のアーム操作装置50Lが有する回転軸を説明する斜視図である。図50は、左のアーム操作装置50Lが有する回転軸を説明する正面図および右側面図である。図50(A)が正面図であり、図50(B)が右側面図である。アーム操作装置50Rとアーム操作装置50Lは、同様な構造である。アーム操作装置50Rとアーム操作装置50Lは、人間の右腕と左腕のように互いに鏡像の関係にある。
以下の説明で、アーム操作装置50R、50Lに共通な事項に関しては、アーム操作装置50と表記する。ハンド操作装置80に関しても、同様である。
アーム操作装置50は、フレーム接続部52、上腕構造部53、前腕構造部54、肩関節計測部55、肘関節計測部56、手首関節計測部57、上腕装着部58および前腕装着部59を有する。フレーム接続部52は、アーム操作装置50を支持フレーム51に接続する。フレーム接続部52に、上腕構造部53、前腕構造部54およびハンド操作装置80が直列に接続する。
アーム操作装置50は、オペレータ90の腕の長さの例えば50%程度の長さを有する。アーム操作装置50の長さは、ロボット1が有する腕部10の長さよりも短い。アーム操作装置50の長さは、オペレータ90が動かして操作指示を入力するのに適した長さにする。アーム操作装置50の長さがオペレータ90の腕よりも短い場合に、オペレータ90が操作しやすい。アーム操作装置50の長さは、腕が短いオペレータ90でも操作しやすい長さにする。アーム操作装置50の長さがオペレータ90の腕の長さよりも短いので、アーム操作装置50をコンパクトにできる。
アーム操作装置50の長さがオペレータ90の腕の長さよりも短いので、アーム操作装置50が有する各計測関節部の角度を、腕部10が有する各関節部に取らせる角度と同じ角度にすることは難しい。アーム操作装置50が有する各計測関節部で計測される角度に、1以上に決められた係数を乗算した角度を腕部10が有する各関節部に取らせる角度とする操作指示を、アーム操作装置50は生成する。
フレーム接続部52は、平板状である。フレーム接続部52は、上腕構造部53が接続する腕接続構造部である。上腕構造部53および前腕構造部54は、外形が四角柱状である。上腕構造部53は、上側および下側に直方体状の外形を有する部材と、その間をつなぐ対向する2枚の板材とを有する。上腕構造部53の上側に肩関節計測部55が設けられ、下側に肘関節計測部56が設けられる。前腕構造部54は、上側に直方体状の外形を有する部材と、その下側に設けられた対向する2枚の板材とを有する。前腕構造部54の上側に肘関節計測部56が設けられ、下側に手首関節計測部57が設けられる。
肩関節計測部55は、フレーム接続部52に上腕構造部53を3回転自由度で接続し、回転軸ごとに回転角度を計測する。肘関節計測部56は、上腕構造部53に前腕構造部54を2回転自由度で接続し、回転軸ごとに回転角度を計測する。手首関節計測部57は、前腕構造部54にハンド操作装置80を2回転自由度で接続し、回転軸ごとに回転角度を計測する。ハンド操作装置80は、前腕構造部54に接続するハンド構造部である。
アーム操作装置50が有する回転軸は、ロボット1の腕部10と同じ7軸である。アーム操作装置50が有する回転軸は、以下である。アーム操作装置50が有する回転軸を、計測軸と呼ぶ。
X1M軸:上腕構造部53をフレーム接続部52に対して回転させる回転軸。X1M軸は、フレーム接続部52に垂直である。X1M軸は、腕部10が有するAZ4軸と対応する。X1M軸を、腕接続構造部回転軸と呼ぶ。
Y2M軸:上腕構造部53とフレーム接続部52とがなす角度を変更させる回転軸。Y2M軸は、腕部10が有するEL4軸と対応する。Y2M軸は、X1M軸と直交する。Y2M軸は、X1M軸と交点を持つ。
Z3M軸:上腕構造部53を通り、かつ上腕構造部53を回転させる回転軸。Z3M軸は、腕部10が有するAZ5軸と対応する。Z3M軸は、Y2M軸と直交する。Z3M軸は、Y2M軸およびX1M軸の交点を通る。Z3M軸を、上腕構造部回転軸と呼ぶ。
X4M軸:前腕構造部54と上腕構造部53がなす角度を変更させる回転軸。X4M軸は、腕部10が有するEL5軸と対応する。X4M軸は、Z3M軸と直交する。X4M軸は、Z3M軸と交点を持つ。腕部10が基準状態である場合には、X4M軸はX1M軸と平行である。
Z5M軸:前腕構造部54を通り、かつ前腕構造部54を回転させる回転軸。Z5M軸は、腕部10が有するAZ6軸と対応する。Z5M軸は、X4M軸と直交する。Z5M軸は、X4M軸およびZ3M軸の交点を通る。Z5M軸を、前腕構造部回転軸と呼ぶ。
X6M軸:ハンド操作装置80と前腕構造部54とがなす角度を変更させる回転軸。
X6M軸は、腕部10が有するEL6軸と対応する。X6M軸は、Z5M軸と直交する。X6M軸は、Z5M軸と交点を持つ。腕部10が基準状態である場合には、X6M軸はX4M軸と平行である。
Y7M軸:ハンド操作装置80と前腕構造部54とがなす角度変更させる回転軸。Y7M軸は、腕部10が有するXEL2軸と対応する。Y7M軸は、Z5M軸およびX6M軸と直交する。Y7M軸は、AZ6軸およびEL6軸の交点を通る。
アーム操作装置50が有する7個の計測軸のそれぞれは、腕部10が有する7個の回転軸のそれぞれに対応する。X1M軸は、AZ4軸と対応する。Y2M軸は、EL4軸と対応する。Z3M軸は、AZ5軸と対応する。X4M軸は、EL5軸と対応する。Z5M軸は、AZ6軸と対応する。X6M軸は、EL6軸と対応する。Y7M軸は、XEL2軸と対応する。そのため、アーム操作装置50は、腕部10を操作する操作指示を入力しやすい。アーム操作装置50は、異なる回転軸の構成を有する腕部10を操作する場合にも適用できる。その場合には、アーム操作装置50が有する各計測軸で計測した角度と、腕部の各回転軸で動かすべき角度に変換する。
各計測軸の回りの回転により計測される角度として、以下を定義する。
腕基部回転計測角θX1M:X1M軸の回りの上腕構造部53の回転角度。腕基部回転計測角θX1Mが0度である場合に、腕基部回転角θAZ4が0度である。腕基部回転計測角θX1Mが正である場合に、腕基部回転角θAZ4が正である。腕基部回転計測角θX1Mを肩部回転計測角とも呼ぶ。
上腕傾斜計測角δY2M:上腕構造部53がX1M軸となす角度。δY2Mは、Y2M軸の回りに上腕構造部53が回転することで変化する。上腕傾斜計測角δY2Mが0度である場合に、上腕部傾斜角δEL4が0度である。上腕傾斜計測角δY2Mが正である場合に、上腕部傾斜角δEL4が正である。
上腕部回転計測角θZ3M:Z3M軸の回りの上腕構造部53の回転角度。上腕部回転計測角θZ3Mが0度である場合に、上腕部回転角θAZ5が0度である。上腕部回転計測角θZ3Mが正である場合に、上腕部回転角θAZ5が正である。
前腕傾斜計測角δX4M:前腕構造部54が上腕構造部53(Z3M軸)に対してなす角度。δX4Mは、X4M軸の回りに前腕構造部54が回転することで変化する。前腕傾斜計測角δX4Mが0度である場合に、前腕部傾斜角δEL5が0度である。前腕傾斜計測角δX4Mが正である場合に、前腕部傾斜角δEL5が正である。
前腕部回転計測角θZ5M:Z5M軸の回りの前腕構造部54の回転角度。前腕部回転計測角θZ5Mが0度である場合に、前腕部回転角θAZ6が0度である。前腕部回転計測角θZ5Mが正である場合に、前腕部回転角θAZ6が正である。
ハンド第1傾斜計測角δX6M:Z5M軸およびY7M軸を含む第1計測平面で、ハンド操作装置80が前腕構造部54(Z5M軸)に対してなす角度。δX6Mは、X6M軸の回りにハンド操作装置80が回転することで変化する。ハンド第1傾斜計測角δX6Mが0度である場合に、ハンド第1傾斜角δEL6が0度である。ハンド第1傾斜計測角δX6Mが正である場合に、ハンド第1傾斜角δEL6が正である。
ハンド第2傾斜計測角δY7M:Z5M軸およびX6M軸を含む第2計測平面で、ハンド操作装置80が前腕構造部54(Z5M軸)に対してなす角度。δY7Mは、Y7M軸の回りにハンド操作装置80が回転することで変化する。ハンド第2傾斜計測角δY7Mが0度である場合に、ハンド第2傾斜角δXEL2が0度である。ハンド第2傾斜計測角δY7Mが正である場合に、ハンド第2傾斜角δXEL2が正である。
第1計測平面と第2計測平面は互いに直交している。計算は複雑になるが、第1計測平面と第2計測平面を直交ではない角度で交差させてもよい。第1計測平面と第2計測平面は、Z5M軸がそれらの交線になるように交差していればよい。
肩関節計測部55は、腕基部回転計測角θX1M、上腕傾斜計測角δY2Mおよび上腕部回転計測角θZ3Mを計測する。計測したθX1Mを係数α1倍した角度α1*θX1Mが、腕部10でAZ4軸が取るべき角度θAZ4になる。δY2Mを係数α2倍した角度α2*δY2Mが、腕部10でEL4軸が取るべき角度δEL4になる。θZ3Mを係数α3倍した角度α3*θZ3Mが、腕部10でAZ5軸が取るべき角度θAZ5になる。アーム操作装置50では、腕基部回転計測角θX1M、上腕傾斜計測角δY2Mおよび上腕部回転計測角θZ3Mが、上腕構造部53がフレーム接続部52(腕接続構造部)に接続する角度である肩関節計測角度である。
肘関節計測部56は、前腕傾斜計測角δX4Mおよび前腕部回転計測角θZ5Mを計測する。計測したδX4Mを係数α4倍した角度α4*δX4Mが、腕部10でEL5軸が取るべき角度δEL5になる。θZ5Mを係数α5倍した角度α5*θZ5Mが、腕部10でAZ6軸が取るべき角度θAZ6になる。アーム操作装置50では、前腕傾斜計測角δX4Mおよび前腕部回転計測角θZ5Mが、前腕構造部54が上腕構造部53に接続する角度である肘関節計測角度である。
手首関節計測部57は、ハンド第1傾斜計測角δX6Mおよびハンド第2傾斜計測角δY7Mを計測する。計測したδX6Mを係数α6倍した角度α6*δX6Mが、腕部10でEL6軸が取るべき角度δEL6になる。δY7Mを係数α7倍した角度α7*δY7Mが、腕部10でXEL2軸が取るべき角度δXEL2になる。アーム操作装置50では、ハンド第1傾斜計測角δX6Mおよびハンド第2傾斜計測角δY7Mが、ハンド操作装置80(ハンド構造部)が前腕構造部54に接続する角度である手首関節計測角度である。
肩関節計測部55は、X1M角計測部55A、肩関節第1ヨーク55B、肩関節第2ヨーク55C、Y2M角計測部55DおよびZ3M角計測部55Eを有する。X1M角計測部55Aは、フレーム接続部52に垂直に接続する。X1M角計測部55Aは、軸部材を回転可能に保持する軸受け、軸部材が回転しないようにするロック機構、軸部材が回転できる範囲を制限する回転範囲制限機構および軸部材の回転角度を計測するエンコーダを有する。X1M角計測部55Aは、肩関節第1ヨーク55Bが有する軸部材を回転可能に保持する。X1M軸は肩関節第1ヨーク55Bの軸部材の中心を通り、肩関節第1ヨーク55BはX1M軸の回りを回転する。X1M角計測部55Aは、肩関節第1ヨーク55BがX1M角計測部55Aに対してX1M軸の回りに回転する角度を計測する。X1M角計測部55Aは、X1M軸および肩関節第1ヨーク55Bが回転することをロックできる。回転することをロックするとは、回転しないようにすることである。
肩関節第2ヨーク55Cは、肩関節第1ヨーク55Bに挟まれている。肩関節第1ヨーク55Bおよび肩関節第2ヨーク55Cは、Y2M軸の回りの回転角度を変更可能に互いに接続する。Y2M軸の軸部材は、肩関節第2ヨーク55Cに固定されている。肩関節第2ヨーク55Cは、Y2M角計測部55Dを挟む。肩関節第2ヨーク55CがY2M軸の回りを回転すると、Y2M角計測部55Dも同じように回転する。Y2M角計測部55Dは、軸受け、ロック機構、回転範囲制限機構およびエンコーダを有する。Y2M角計測部55Dは、肩関節第2ヨーク55CおよびY2M角計測部55Dが肩関節第1ヨーク55Bに対してY2M軸の回りに回転する角度を計測する。Y2M角計測部55Dは、肩関節第2ヨーク55C、Y2M軸およびY2M角計測部55Dが回転することをロックできる。
肩関節第2ヨーク55Cは、Z3M軸の回りに回転可能である。Z3M軸の軸部材は、肩関節第2ヨーク55Cに固定されている。Z3M軸の軸部材は、下方に延在する。Z3M軸の軸部材は、上腕構造部53の上側の底面に設けられた開口を通る。Z3M角計測部55Eは、上腕構造部53の内部に設けられる。Z3M角計測部55Eは、軸受け、ロック機構、回転範囲制限機構およびエンコーダを有する。Z3M角計測部55Eは、Z3M軸を回転可能に保持する。Z3M角計測部55Eは、肩関節第2ヨーク55CがZ3M角計測部55Eに対してZ3M軸の回りに回転する角度を計測する。Z3M角計測部55Eは、Z3M軸および肩関節第2ヨーク55Cが回転することをロックできる。
肩関節計測部55は、肩計測関節部であり、肩関節角度計測部であり、肩ロック部である。肩計測関節部は、上腕構造部53を、フレーム接続部52に垂直なX1M軸の回りに回転可能に、上腕傾斜計測角を変更可能に、上腕構造部53を通るZ3M軸の回りに回転可能に、フレーム接続部52に接続する。肩関節角度計測部は、腕基部回転計測角θX1Mと、上腕傾斜計測角δY2Mと、上腕部回転計測角θX3Mとを計測する。肩ロック部は、肩計測関節部が動かないようにロックする。
肘関節計測部56は、X4M角計測部56A、肘関節ヨーク56BおよびZ5M角計測部56Cを有する。X4M角計測部56Aは、上腕構造部53の下側の直方体状の外形の部分の下側に接続する2枚の板材の間に設けられる。肘関節ヨーク56Bは、X4M角計測部56Aおよび2枚の板材をX4M軸の回りに回転可能に保持する。X4M軸の軸部材は、肘関節ヨーク56Bに固定されている。X4M角計測部56Aは、軸受け、ロック機構、回転範囲制限機構およびエンコーダを有する。X4M角計測部56Aは、肘関節ヨーク56BがX4M角計測部56Aに対してX4M軸の回りに回転する角度を計測する。X4M角計測部56Aは、X4M軸および肘関節ヨーク56Bが回転することをロックできる。
肘関節ヨーク56Bは、Z5M軸の回りに回転可能である。Z5M軸の軸部材は、肘関節ヨーク56Bに固定されている。Z5M軸は、前腕構造部54の上側の底面に設けられた開口を通り、Z5M角計測部56Cに回転可能に保持される。Z5M角計測部56Cは、前腕構造部94の上側の外形が直方体状の部分の内部に設けられる。Z5M角計測部56Cは、軸受け、ロック機構、回転範囲制限機構およびエンコーダを有する。Z5M角計測部56Cは、肘関節ヨーク56BがZ5M角計測部56Cに対してZ5M軸の回りに回転する角度を計測する。Z5M角計測部56Cは、Z5M軸および肘関節ヨーク56Bが回転することをロックできる。
肘関節計測部56は、肘計測関節部であり、肘関節角度計測部であり、肘ロック部である。肘計測関節部は、前腕構造部54を、前腕傾斜計測角δX4Mを変更可能に、Z5M軸の回りに回転可能に上腕構造部53に接続する。肘関節角度計測部は、前腕傾斜計測角δX4Mと、前腕部回転計測角θZ5Mとを計測する。肘ロック部は、肘計測関節部が動かないようにロックする。
手首関節計測部57は、手首関節第1ヨーク57A、X6M角計測部57B、Y7M角計測部57Cおよび手首関節第2ヨーク57Dを有する。手首関節第1ヨーク57Aは、前腕構造部54の下端の2枚の板材の下側に接続する。手首関節第1ヨーク57Aは、直方体状のX6M角計測部57BをX6M軸の回りに回転可能に保持する。X6M軸の軸部材は、手首関節第1ヨーク57Aに固定されている。X6M角計測部57Bは、軸受け、ロック機構、回転範囲制限機構およびとエンコーダを有する。X6M角計測部57Bは、手首関節第1ヨーク57AがX6M角計測部57Bに対してX6M軸の回りに回転する角度を計測する。X6M角計測部57Bは、X6M軸および手首関節第1ヨーク57Aが回転することをロックできる。
Y7M角計測部57Cは、直方体状である。Y7M角計測部57Cは、X6M角計測部57Bと接続してX6M軸方向においてオペレータ90の手の小指側に設けられる。手首関節第2ヨーク57Dは、X6M角計測部57BおよびY7M角計測部57CをY7M軸が延在する方向において挟む。Y7M軸の軸部材は、手首関節第2ヨーク57Dに固定されている。手首関節第2ヨーク57Dの下側の面には、ハンド操作装置80が接続する。手首関節第2ヨーク57Dは、X6M角計測部57BおよびY7M角計測部57Cを、Y7M軸の回りに回転可能に保持する。Y7M軸の軸部材は、Y7M角計測部57Cの中に入る。X6M角計測部57Bの中には、Y7M軸の軸部材は存在しない。X6M角計測部57Bは、手首関節部第2ヨーク57Dに設けられた突起を回転可能に保持する。突起は、手首関節部第2ヨーク57Dの側面においてY7M軸が存在すべき位置に設けられる。Y7M角計測部57Cは、軸受け、ロック機構、回転範囲制限機構およびエンコーダを有する。Y7M角計測部57Cは、Y7M角計測部57Cに対して手首関節第2ヨーク57DがY7M軸の回りに回転する角度を計測する。Y7M角計測部57Cは、Y7M軸および手首関節第2ヨーク57Dが回転することをロックできる。
手首関節計測部57は、手首計測関節部であり、手首関節角度計測部であり、手首ロック部である。手首計測関節部は、ハンド操作装置80を、ハンド第1傾斜計測角δX6Mと、ハンド第2傾斜計測角とを変更可能に、前腕構造部54に接続する。手首関節角度計測部は、ハンド第1傾斜計測角δX6Mと、ハンド第2傾斜計測角δY7Mとを計測する。手首ロック部は、手首計測関節部が動かないようにロックする。
上腕装着部58は、上腕構造部53をオペレータ90の上腕に装着する。前腕装着部59は、前腕構造部54をオペレータ90の前腕に装着する。図を簡単にするために上腕装着部58を小さなリング状に表現しているが、実際は異なる。上腕装着部58は、接続および分離が可能なバンドにより上腕構造部53とオペレータ90の上腕とを緩やかに連結する。上腕構造部53とオペレータ90の上腕の距離は、図に表示しているリングの直径の2倍以上の間隔を持たせる。前腕装着部59に関しても同様である。前腕装着部59は、接続および分離が可能なバンドにより前腕構造部54とオペレータ90の前腕とを緩やかに連結する。前腕構造部54とオペレータ90の前腕の距離は、図に表示しているリングの直径の2倍以上の間隔を持たせる。さらに、ハンド操作装置80に設けた手装着部87で、アーム操作装置50に先端に設けたハンド操作装置80とオペレータ90の手とを連結する。
オペレータ90が腕を動かすことで、アーム操作装置50が有する各計測軸の回りの回転角度が計測される。計測した回転角度を適切な倍率(1より大きい)で大きくした角度で、制御演算装置60は、肩関節部27、肘関節部28および手首関節部29における角度を変化させる。倍率は回転軸ごとに決められる。各回転軸で計測された回転角度に乗算される係数は、係数α1、α2、α3、α4、α5、α6、α7である。
制御演算装置は、腕基部回転計測角θX1M、上腕傾斜計測角δY2M、上腕部回転計測角θZ3M、前腕傾斜計測角δX4M、前腕部回転計測角θZ5M、ハンド第1傾斜計測角δX6M、ハンド第2傾斜計測角δY7Mに基づき、腕基部回転角θAZ4、上腕部傾斜角δEL4、上腕部回転角θAZ5、前腕部傾斜角δEL5、前腕部回転角θAZ6、ハンド第1傾斜角δEL6およびハンド第2傾斜角δXEL2を制御してもよい。例えば、以下のように計算してもよい。なお、非線形な計算式を使用してもよい。
θAZ4=α11*θX1M+α12*δY2M
+α13*θZ3M+α14*δX4M
+α15*θZ5M+α16*δX6M
+α17*δY7M
δEL4=α21*θX1M+α22*δY2M
+α23*θZ3M+α24*δX4M
+α25*θZ5M+α26*δX6M
+α27*δY7M
θAZ5=α31*θX1M+α32*δY2M
+α33*θZ3M+α34*δX4M
+α35*θZ5M+α36*δX6M
+α37*δY7M
δEL5=α41*θX1M+α42*δY2M
+α43*θZ3M+α44*δX4M
+α45*θZ5M+α46*δX6M
+α47*δY7M
θAZ6=α51*θX1M+α52*δY2M
+α53*θZ3M+α54*δX4M
+α55*θZ5M+α56*δX6M
+α57*δY7M
δEL6=α61*θX1M+α62*δY2M
+α63*θZ3M+α64*δX4M
+α65*θZ5M+α66*δX6M
+α67*δY7M
δXEL2=α71*θX1M+α72*δY2M
+α73*θZ3M+α74*δX4M
+α75*θZ5M+α76*δX6M
+α77*δY7M
係数α11などは、各回転軸で計測された回転角度に乗算される係数である。
アーム操作装置50は、オペレータ90が腕および手で操作して各関節部の角度を変更する機械式の角度入力装置を用いる。そのため、オペレータ90の癖などによらない安定したロボット1の腕部10(ロボットアーム)の操作が可能になる。加速度センサなどを使用するアーム操作装置では、バッテリの容量などにより駆動できる時間が制約される場合がある。また、加速度センサは、ドリフト等の発生で微小な角度差が発生する場合がある。アーム操作装置50は、各関節部の角度を機械式でオペレータ90が入力し、角度のデータに基づき各関節部を制御するので、長時間にわたって動作する場合でも、安定的に腕部10(ロボットアーム)を操作できる。
アーム操作装置50は、各計測関節部の角度を維持する(ロックする)機能を有する。腕部10に取らせるべき姿勢に対応するアーム操作装置50の姿勢を維持することが、オペレータ90の筋肉にとって負担になる場合は、アーム操作装置50が有する各計測関節部の角度維持機構(ロック機構)をONにする。そうすることで、オペレータ90は腕などを休めることができる。アーム操作装置50は、人と同様な合計7自由度の関節自由度を有するので、オペレータ90は自分の腕を動かすのと同様な感覚でアーム操作装置50を動かし、腕部10を操縦できる。アーム操作装置50は、オペレータ90が腕部10(ロボットアーム)を操作する負担を従来よりも軽減できる。
アーム操作装置50が有するロック機構を働かせるかどうかのスイッチ(ロックスイッチ)は、ハンド操作装置80に設ける。ハンド操作装置80Rが有するロックスイッチは、アーム操作装置50Rをロックし、ロックを解除する。ハンド操作装置80Lが有するロックスイッチは、アーム操作装置50Lをロックし、ロックを解除する。ハンド操作装置80R、80Lのどちらかのロックスイッチを操作することで、アーム操作装置50R、50Lの両方をロックし、ロック解除できるようにしてもよい。ハンド操作装置80を、ロック可能にしてもよい。ハンド操作装置80をロックするとは、ジョイスティックが動いても操作指示を生成しないようにすることである。ハンド操作装置80をロックするロックスイッチをハンド操作装置80に設けてもよいし、ハンド操作装置80とは別に設けてもよい。ハンド操作装置80をロックするロックスイッチをハンド操作装置80に設ける場合は、ハンド操作装置80がロック中でもロックスイッチだけは操作できる。
ロックスイッチは、肩ロック部、肘ロック部および手首ロック部がロックするロック状態とロックしない非ロック状態とを一律に切り替えるロック状態変更スイッチである。ロック状態では、肩関節計測部55、肘関節計測部56および手首関節計測部57は、その有する各計測関節部の角度が変化しない。非ロック状態では、肩関節計測部55、肘関節計測部56および手首関節計測部57は、その有する各計測関節部の角度が変化できる。ロックスイッチは、ハンド操作装置80とは別に設けてもよい。ロックスイッチは、オペレータ90が足で操作するものでもよい。
手首関節部が3回転自由度でハンド部を前腕部に接続する場合は、アーム操作装置の手首関節計測部も3回転自由度にする。3回転自由度の手首関節計測部では、ハンド部を通る手首部回転計測軸の回りにハンド部が回転する角度を計測でき、手首部回転計測軸の回りにハンド部が回転することをロックする機構も有する。
図51から図57を参照して、ハンド操作装置80の構造を説明する。ハンド操作装置80Rとハンド操作装置80Lは、同様な構造である。ハンド操作装置80Rとハンド操作装置80Lは、人間の右手と左手のように互いに鏡像の関係にある。図51は、オペレータ90が左手で操作して左のハンド部26Lを動かすハンド操作装置80Lの斜視図である。図52と図53は、ハンド操作装置80Lの別の方向から見た斜視図である。図54から図57は、ハンド操作装置80Lの正面図、右側面図、左側面図および底面図である。図では、手首関節計測部57の下側の部分も図に描いている。
図51から図57では、ハンド操作装置80を基準とする直交座標系であるUVW座標系も示す。U軸は、ハンド操作装置80の厚み方向の軸である。オペレータ90の手がある側をU軸の正の向きとする。V軸は、ハンド操作装置80の前後方向の軸である。V軸の正の向きは、前から後ろに向かう方向とする。W軸は、ハンド操作装置80の高さ方向の軸である。W軸の正の向きは、下から上に向かう方向とする。
ハンド操作装置80は、第1ジョイスティック81、第2ジョイスティック82、第3ジョイスティック83、第4ジョイスティック84、第5ジョイスティック85、本体部86および手装着部87を有する。第1ジョイスティック81、第2ジョイスティック82、第3ジョイスティック83、第4ジョイスティック84および第5ジョイスティック85は、ハンド部26が有する第1指部91、第2指部92、第3指部93、第4指部94および第5指部95にそれぞれ対応する。本体部86は、オペレータ90が把持する部分である。手装着部87は、本体部86の外側(オペレータ90の手の甲側)の主面に設けられる。手装着部87にオペレータ90が手を入れることで、オペレータ90が本体部86を握っていなくても、オペレータ90の手から本体部86が離れなくなる。
本体部86は、正面から見ると略長方形、側面から見ると四角形の1辺をその途中で30度弱折り曲げたような略五角形である。正面側の側面を、第1側面86Aと呼ぶ。第1側面86Aの下側に接続する側面を、第2側面86Bと呼ぶ。第2側面86BとVW平面で約30度の角度をなすように折れ曲がって接続する側面を、第3側面86Cと呼ぶ。第2側面86Bは、U軸と平行である。第3側面86Cは、第2側面86Bに対して内側(オペレータ90の掌から遠い側)に傾斜している。内側に傾斜すると、U軸の負の側がW軸の正の側に位置することになる。第3側面86Cは、第2側面86Bに対してUW平面で約30度の角度をなすように傾斜している。第1側面86Aには、略直方体状の空間を有する窪み86Dが設けられる。第1側面86Aのほとんどが、窪み86Dの略長方形の開口部である。窪み86Dの底面は、第1側面86Aと平行である。第1側面86Aは、本体部86を把持する際にオペレータ90の人指し指および中指が延在する方向に沿う本体部86の側面である。第2側面86Bは、第1側面86Aに隣接して第1側面86Aとは交差する角度の方向に延在する本体部86の側面である。第2側面86Bは、第1側面86Aと鈍角、例えば110度程度をなす角度の方向に延在する。第1側面86Aと第2側面86Bとは、細く浅い溝などを介して隣接してもよい。
第1ジョイスティック81は、第1側面86Aに設けられた窪み86Dの底面に垂直に設けられる。第2ジョイスティック82および第3ジョイスティック83は、第2側面86Bに垂直に設けられる。第4ジョイスティック84および第5ジョイスティック85は、第3側面86Cに垂直に設けられる。このように配置することで、5個のジョイスティックを、人間の手の5本指で操作しやすい位置に配置できる。オペレータ90は親指で、第1ジョイスティック81を操作する。第1ジョイスティック81を窪み86Dの底面に設けているので、本体部86のV軸に平行な方向での幅を人間が握りやすい長さにでき、かつ第1ジョイスティック81を親指で容易に傾斜させることができる。人指し指で第2ジョイスティック82を操作する。中指で第3ジョイスティック83を操作する。薬指で第4ジョイスティック84を操作する。小指で第5ジョイスティック85を操作する。指回転モードでは、第1ジョイスティック81を操作すると、第1指部91が動く。第2ジョイスティック82を操作すると、第2指部92が動く。第3ジョイスティック83を操作すると、第3指部93が動く。第4ジョイスティック84を操作すると、第4指部94が動く。第5ジョイスティック85を操作すると、第5指部95が動く。複数のジョイスティックを同時に操作すれば、複数の指部が同時に動く。
第1ジョイスティック81、第2ジョイスティック82、第3ジョイスティック83、第4ジョイスティック84および第5ジョイスティック85は、図54における左右方向に傾けることができる。第1ジョイスティック81は、第1側面86Aに垂直な方向(高さ方向)での長さを変更できる。なお、各ジョイスティックは、図54における上下方向、左右方向および高さ方向に操作可能であるが、ハンド部26を操作するために使用しない方向には動かないようにロックをかけている。各ジョイスティックは、力が加えられた方向に傾斜し、力が加えられなくなると通常の位置(垂直な位置)に戻る。
第1ジョイスティック81を高さ方向に移動させる操作は、アーム操作装置50が有する各関節計測部での各回転軸の回りの回転角度を、その時点での角度に固定する(ロックする)かどうかを決める。第1ジョイスティック81は、ロックスイッチでもある。第1ジョイスティック81を押し込んで戻す操作により、アーム操作装置50が有する各関節計測部での各角度を固定するかどうかが変化する。ロック中は、第1ジョイスティック81が押し込まれた状態のままとしてもよい。動作開始時は、アーム操作装置50が有する各関節計測部は角度を変更可能である。第1ジョイスティック81を押し込むと、アーム操作装置50が有する各関節計測部での各回転軸の回りの回転角度が、その時点での角度に固定される。その状態で、第1ジョイスティック81を再度押し込むと、アーム操作装置50が有する各関節計測部での各回転軸の回りの回転角度が変更可能になる。なお、ハンド操作装置80Rの第1ジョイスティック81により、アーム操作装置50Rの各関節計測部での角度を固定するかどうかを操作する。ハンド操作装置80Lの第1ジョイスティック81により、アーム操作装置50Lの角度を固定するかどうかを操作する。
モード切替ペダル6R、6Lにより、オペレータ90はハンド部26およびハンド操作装置80の動作モードを切り替える。ハンド部26およびハンド操作装置80は、動作モードが切り替えられると、切り替えられた動作モードで動作する。左右のハンド部26は同じ動作モードで動作する。ハンド操作装置80Rを操作すると、右のハンド部26が動く。ハンド操作装置80Lを操作すると、左のハンド部26が動く。モード切替ペダル6R、6Lのどちらも踏んでいない場合は、ハンド操作装置80R、80Lを操作することで、左右のハンド部26は指回転モードで操作できる。モード切替ペダル6Rだけを踏んでいる場合は、ハンド操作装置80R、80Lを操作することで、左右のハンド部26は間隔変更モードで操作できる。モード切替ペダル6Lだけを踏んでいる場合は、ハンド操作装置80R、80Lを操作することで、左右のハンド部26はスライドモードで操作できる。モード切替ペダル6R、6Lを同時に踏んでいる場合は、ハンド操作装置80R、80Lを操作することで、左右のハンド部26は指回転モードで操作できる。なお、モード切替ペダル6R、6Lを踏んでいるかどうかと、ハンド部26およびハンド操作装置80の動作モードとの対応関係は、上記から変更してもよい。例えば、右のモード切替ペダル6Rだけを踏んでいる場合と、左のモード切替ペダル6Lだけを踏んでいる場合の動作モードを入れ替えてもよい。モード切替ペダルが3値以上を入力できるようにして、右のモード切替ペダルで右のハンド部26およびハンド操作装置80Rの動作モードを変更し、左のモード切替ペダルで左のハンド部26およびハンド操作装置80Lの動作モードを変更するようにしてもよい。
モード切替ペダル6R、6Lは、ロボットハンドであるハンド部26を操作する操作指示を入力するロボットハンド操作装置の一部を構成する。モード切替ペダル6Rは、ハンド部26およびハンド操作装置80の動作モードを指回転モードと間隔変更モードとの間で切り替えるために、オペレータ90が足で操作する移動モード変更スイッチである。モード切替ペダル6Lは、ハンド部26およびハンド操作装置80の動作モードを指回転モードとスライドモードとの間で切り替えるために、オペレータ90が足で操作するスライドモード変更スイッチである。モード切替ペダル6Rをスライドモード変更スイッチにし、モード切替ペダル6Lを移動モード変更スイッチにしてもよい。移動モード変更スイッチおよびスライドモード変更スイッチの少なくとも一つをハンド操作装置が有してもよい。
指回転モードでハンド部26を操作する方法を説明する。第1ジョイスティック81を左右方向でオペレータ90の掌から離れる向き(U軸の負の向き)に傾けると、第1指部91が第1フレーム96Bに近づく向きに回転する。第1ジョイスティック81を左右方向でオペレータ90の掌に近づく向き(U軸の正の向き)に傾けると、第1指部91が第1フレーム96Bから離れる向きに回転する。第1ジョイスティック81を傾斜させている間は、第1指部91は回転する。力が加えられなくなり第1ジョイスティック81が垂直な位置に戻ると、第1指部91は回転を停止する。第1ジョイスティック81を操作することで、第1指部91は手基部98Aに対して垂直な角度から第1フレーム96Bまたは第3指部93に接触する角度までの範囲内で任意の角度をとることができる。
第1ジョイスティック81を傾斜させる速度に応じて、第1指部91が回転する速度が変化する。第1指部91が回転する速度は、第1ジョイスティック81を動かす速度に応じて単調非減少に決められる。第1ジョイスティック81を速く傾斜させると、第1指部91が速く回転する。第1ジョイスティック81をゆっくり傾斜させると、第1指部91がゆっくり回転する。ジョイスティックを動かす速度と指部が動く速度の関係は、第2ジョイスティック82と第2指部92の間などでも同様である。
第2ジョイスティック82により、第2指部92を操作する。第2ジョイスティック82を左右方向でオペレータ90の掌から離れる向き(U軸の負の向き)に傾けると、第2指部92が掌肉部97Eに近づく向きに回転する。第2ジョイスティック82を左右方向でオペレータ90の掌に近づく向き(U軸の正の向き)に傾けると、第2指部92が掌肉部97Eから離れる向きに回転する。第2ジョイスティック82を傾斜させている間は、第2指部92は回転する。力が加えられなくなり第2ジョイスティック82が垂直な位置に戻ると、第2指部92は回転を停止する。第2ジョイスティック82を操作することで、第2指部92は手基部98Aに対して垂直な角度から掌肉部97Eに接触する角度までの範囲内で任意の角度をとることができる。
第3ジョイスティック83により、第3指部93を操作する。第3ジョイスティック83を左右方向でオペレータ90の掌から離れる向き(U軸の負の向き)に傾けると、第3指部93が掌肉部97Eに近づく向きに回転する。第3ジョイスティック83を左右方向でオペレータ90の掌に近づく向き(U軸の正の向き)に傾けると、第3指部93が掌肉部97Eから離れる向きに回転する。第3ジョイスティック83を傾斜させている間は、第3指部93は回転する。力が加えられなくなり第3ジョイスティック83が垂直な位置に戻ると、第3指部93は回転を停止する。第3ジョイスティック83を操作することで、第3指部91は手基部98Aに対して垂直な角度から掌肉部97Eまたは第1指部91に接触する角度までの範囲内で任意の角度をとることができる。
第4ジョイスティック84により、第4指部94を操作する。第4ジョイスティック84を左右方向でオペレータ90の掌から離れる向き(U軸の負の向き)に傾けると、第4指部94が掌肉部97Eに近づく向きに回転する。第4ジョイスティック84を左右方向でオペレータ90の掌に近づく向き(U軸の正の向き)に傾けると、第4指部94が掌肉部97Eから離れる向きに回転する。第4ジョイスティック84を傾斜させている間は、第4指部94は回転する。力が加えられなくなり第4ジョイスティック84が垂直な位置に戻ると、第4指部94は回転を停止する。第4ジョイスティック84を操作することで、第4指部94は手基部98Aに対して垂直な角度から掌肉部97Eに接触する角度までの範囲内で任意の角度をとることができる。
第5ジョイスティック85により、第5指部95を操作する。第5ジョイスティック85を左右方向でオペレータ90の掌から離れる向き(U軸の負の向き)に傾けると、第5指部95が掌肉部97Eに近づく向きに回転する。第5ジョイスティック85を左右方向でオペレータ90の掌に近づく向き(U軸の正の向き)に傾けると、第5指部95が掌肉部97Eから離れる向きに回転する。第5ジョイスティック85を傾斜させている間は、第5指部95は回転する。力が加えられなくなり第5ジョイスティック85が垂直な位置に戻ると、第5指部95は回転を停止する。第5ジョイスティック85を操作することで、第5指部95は手基部98Aに対して垂直な角度から掌肉部97Eに接触する角度までの範囲内で任意の角度をとることができる。
なお、5本のジョイスティックすべてで、ジョイスティックを左右方向でオペレータ90の掌に近づく向き(U軸の正の向き)に傾ける場合に、対応する指部が手基部98Aに近づく向きに回転し、ジョイスティックを左右方向でオペレータ90の掌から離れる向き(U軸の負の向き)に傾ける場合に、対応する指部が手基部98Aから離れる向きに回転するようにしてもよい。
このように、オペレータ90が各ジョイスティックを操作するときに対応する指部が動く操作指示が入力され、オペレータ90が各ジョイスティックを操作しないときに対応する指部が動く操作指示が入力されない。ジョイスティックを操作するとは、オペレータ90がジョイスティックの全体またはその部分を動かす、あるいは動かした状態を保持することである。
ハンド操作装置80では、ジョイスティックを操作することで対応する指部を回転させる。ジョイスティックを傾けていないときは、指部は回転しない。オペレータ90は、指部を意図する角度まで回転させるまでジョイスティックを傾け、意図する角度になるとジョイスティックから指を離す。このようなオペレーションで、オペレータ90は容易に各指部を意図する角度にすることができる。ジョイスティックを動かす速度に応じて単調非減少に決められた速度で、ジョイスティックに対応する指部が回転する。例えば、第1ジョイスティック81を速く動かすと、第1指部91が速く動く。第1ジョイスティック81をゆっくり動かすと、第1指部91がゆっくり動く。他のジョイスティックと対応する指部でも同様である。そのため、速く動かしたい場合、意図した角度に正確に動かしたい場合のどちらでも容易に、オペレータ90は指を回転させることができる。
なお、ジョイスティックを動かす速度(操作速度と呼ぶ)と、対応する指部が回転する速度(回転速度と呼ぶ)は比例させてもよいし、比例させなくてもよい。操作速度が小さい間は、回転速度と操作速度を比例させてもよい。操作速度が大きくなると、回転速度と操作速度の間の比例係数を小さくするようにしてもよい。操作速度が閾値以上では、回転速度が上限値になるようにしてもよい。
操作速度が第1の値(操作速度1と呼ぶ)である場合に、対応する指部が第1の値(回転速度1と呼ぶ)で回転し、操作速度が第1の値よりも大きい第2の値(操作速度2と呼ぶ)である場合に、対応する指部が回転する速度が第1の値以上である第2の値(回転速度2と呼ぶ)である。操作速度1<操作速度2であるように操作速度1と操作速度2をどのように選んだ場合でも、回転速度1≦回転速度2が成立する。このような場合に、操作速度に対して回転速度が単調非減少であるという。
間隔変更モードでは、第1ジョイスティック81により第1指接続部96および第2指接続部97を制御する。第1ジョイスティック81を左右方向でオペレータ90の掌に近づく向き(U軸の正の向き)に傾けると、第1指接続部96と第2指接続部97の間隔が広がる方向に第1指接続部96および第2指接続部97が移動する。第1ジョイスティック81を左右方向でオペレータ90の掌から離れる向き(U軸の負の向き)に傾けると、第1指接続部96と第2指接続部97の間隔が狭まる方向に第1指接続部96および第2指接続部97が移動する。ただし、第1指部91の回転角度が閾値以下の場合は、間隔変更モードで第1ジョイスティック81を操作しても、第1指接続部96および第2指接続部97は移動しない。第1指部91の回転角度は、第1指部91が第1フレーム96Bの上面と平行になる場合にゼロ度とする。閾値は、例えば3度などのように適切に決める。
なお、間隔変更モードで、第1ジョイスティック81を左右方向でオペレータ90の掌に近づく向き(U軸の正の向き)に傾ける場合に、第1指接続部96と第2指接続部97の間隔が狭まる方向に第1指接続部96および第2指接続部97が移動し、第1ジョイスティック81を左右方向でオペレータ90の掌から離れる向き(U軸の負の向き)に傾ける場合に、第1指接続部96と第2指接続部97の間隔が広がる方向に第1指接続部96および第2指接続部97が移動するようにしてもよい。
間隔変更モードでは、第1ジョイスティック81を動かす速度に応じて、第1指接続部96および第2指接続部97が移動する速度が変化する。第1指接続部96および第2指接続部97が移動する速度は、指移動部が動く速度である。指移動部が動くと、第1指接続部96と第2指接続部97の間隔が変化する。動かす速度に応じて、第1指接続部96と第2指接続部97の間隔が変化する速度は単調非減少に決められる。第1ジョイスティック81を速く動かすと、間隔が速く増減する。第1ジョイスティック81をゆっくり動かすと、間隔がゆっくり増減する。
間隔変更モードでの第1ジョイスティック81は、オペレータ90が操作することで指移動部が動く操作指示を入力する指移動部操作部である。指移動部操作部は、第1ジョイスティック81ではなく、第2ジョイスティック82、第3ジョイスティック83、第4ジョイスティック84および第5ジョイスティック85の何れかでもよい。指移動部操作部でもある場合の、第1ジョイスティック81、第2ジョイスティック82、第3ジョイスティック83、第4ジョイスティック84および第5ジョイスティック85の何れかを、指移動部操作ジョイスティックと呼ぶ。指移動部操作ジョイスティックは、指移動部操作部としても兼用されるジョイスティックである。
なお、第5指部95を有さない、あるいは第5指部95および第4指部94を有さないロボットハンドを操作するハンド操作装置は、第5ジョイスティック85、あるいは第5ジョイスティック85および第4ジョイスティック84を備えない。指移動部操作ジョイスティックは、ハンド操作装置に備えられたジョイスティックの中で、指移動部を操作する操作指示を入力するジョイスティックである。第1ジョイスティック81、第2ジョイスティック82および第3ジョイスティック83を備えたハンド操作装置では、第1ジョイスティック81、第2ジョイスティック82および第3ジョイスティック83の何れかが指移動部操作部としても兼用される指移動部操作ジョイスティックである。
指移動部操作部として専用の釦、レバー、スイッチなどをハンド操作装置に設けてもよい。間隔変更モードでは、指移動部操作ジョイスティックは指移動部操作部である。指回転モードおよびスライドモードでは、指移動部操作ジョイスティックは指移動部操作部ではない。
第1指接続部96と第2指接続部97の間隔が可能な範囲の最大になると、それ以上には間隔は広がらない。第1指接続部96と第2指接続部97の間隔が可能な範囲の最小になると、それ以上には間隔は狭まらない。第1指部91および第3指部93の少なくとも一方が手基部98Aに対して垂直ではない場合は、第1指部91と第3指部93が接触すると、それ以上には間隔は狭くすることはできない。
ハンド部26では、指回転モードと間隔変更モードの切替は、5本の指部の状態によらず可能である。指部を回転させた後に間隔を変更し、さらに指部を回転させることができる。間隔を変更した後に、指部を回転させ、さらに間隔を変更できる。なお、第1指部91と第3指部93が接触する状況では、第1指部91および第3指部93は接触を解消する側への回転または移動だけができる。
物体を把持するために、例えばオペレータ90は以下のような手順で操作する。指回転モードで、第1指部91の第1指接続部96に対する角度を意図した角度にする。第2指部92、第3指部93、第4指部94および第5指部95のそれぞれの第2指接続部97に対する角度を意図した角度にする。その後、間隔変更モードで、第1指接続部96と第2指接続部97の間隔が意図する距離になるまで、第1指接続部96および第2指接続部97を移動させる。指回転モードに戻して、第1指部91、第2指部92、第3指部93、第4指部94および第5指部95の角度を微調整する。必要であれば、さらに間隔変更モードで、第1指接続部96と第2指接続部97の間隔を変更する。
物体によっては、先に間隔変更モードで、第1指接続部96と第2指接続部97の間隔が意図する距離になるまで、第1指接続部96および第2指接続部97を移動させる。その後、指回転モードで、第1指部91を第1指接続部96に対して意図した角度にする。
第2指部92、第3指部93、第4指部94および第5指部95のそれぞれを第2指接続部97に対して意図した角度にする。
ハンド部26は、第1指部91と第3指部93との2本の指部で、物体を把持できる。さらに、ハンド部26は、第2指部92、第4指部94および第5指部95の内の少なくとも1本の指部を加えた3本から5本の指部で、物体を把持できる。
スライドモードでは、第2ジョイスティック82によりスライド指先部92Kを移動させることを制御する。第2ジョイスティック82を左右方向でオペレータ90の掌から離れる向き(U軸の負の向き)に傾けると、スライド指先部92Kが掌肉部97Eに近づく向きに移動する。第2ジョイスティック82を左右方向でオペレータ90の掌に近づく向き(U軸の正の向き)に傾けると、スライド指先部92Kが掌肉部97Eから離れる向きに移動する。第2ジョイスティック82を傾斜させている間は、スライド指先部92Kは移動する。力が加えられなくなり第2ジョイスティック82が垂直な位置に戻ると、スライド指先部92Kは移動を停止する。第2ジョイスティック82を傾斜させる速度に応じて、スライド指先部92Kが移動する速度が変化する。傾斜させる速度に応じて、スライド指先部92Kが移動する速度は単調非減少に決められる。第2ジョイスティック82を速く傾斜させると、スライド指先部92Kが速く移動する。第2ジョイスティック82をゆっくり傾斜させると、スライド指先部92Kがゆっくり移動する。
スライドモードでの第2ジョイスティック82は、オペレータ90が操作することで引っ掛け部移動部を操作する操作指示を入力する引っ掛け部操作部である。引っ掛け部操作部は、第2ジョイスティック82ではなく、第1ジョイスティック81、第3ジョイスティック83、第4ジョイスティック84および第5ジョイスティック85の何れかでもよい。引っ掛け部操作部でもある場合の、第1ジョイスティック81、第2ジョイスティック82、第3ジョイスティック83、第4ジョイスティック84および第5ジョイスティック85の何れかを、引っ掛け部操作ジョイスティックと呼ぶ。引っ掛け部操作ジョイスティックは、引っ掛け部操作部としても兼用されるジョイスティックである。
なお、第5指部95を有さない、あるいは第5指部95および第4指部94を有さないロボットハンドを操作するハンド操作装置は、第5ジョイスティック85、あるいは第5ジョイスティック85および第4ジョイスティック84を備えない。引っ掛け部操作ジョイスティックは、ハンド操作装置に備えられたジョイスティックの中で、引っ掛け部移動部を操作する操作指示を入力するジョイスティックである。第1ジョイスティック81、第2ジョイスティック82および第3ジョイスティック83を備えたハンド操作装置では、第1ジョイスティック81、第2ジョイスティック82および第3ジョイスティック83の何れかが引っ掛け部操作部としても兼用される引っ掛け部操作ジョイスティックである。
引っ掛け部操作部として専用の釦、レバー、スイッチなどをハンド操作装置に設けてもよい。スライドモードでは、引っ掛け部操作ジョイスティックは引っ掛け部操作部である。指回転モードおよび間隔変更モードでは、引っ掛け部操作ジョイスティックは引っ掛け部操作部ではない。
ハンド部26は、スライドモードでも動作するので、電動ドライバや放水ノズル等のグリップを把持して操作レバーにスライド指先部92Kを引っ掛けた状態で、スライド指先部92Kを指元側に移動させることで、電動ドライバや放水ノズル等を操作できる。電動ドライバや放水ノズル等の操作する場合に、ハンド部26を付け替えることは不要である。
ハンド部26が有する指部を操作するためにジョイスティックを使用することで、オペレータ90の負担を従来よりも軽減できる。ジョイスティックを使用することで、物体を把持した状態をキープすることが容易になる。ジョイスティックを操作しない場合に、指部はその時点の状態を保持できる。そのため、オペレータ90は操作中に手および神経を休めることができる。ジョイスティックを使用することで、物体を把持する、あるいは物体を手放すなどの操作を、オペレータ90がON/OFF制御の感覚で実施できる。
グローブ(手袋)式のハンド操作装置、曲げセンサを用いたハンド操作装置では、オペレータは自分の手および指の角度に常に気を配る必要がある。ハンド部の繊細な動きが必要な操作、あるいは長時間の連続操作では、オペレータは指を休めることができないので、オペレータの負担が大きい。オペレータが不用意に自分の指を動かすと、ロボットハンドの指が追従して動き、予期せぬ動作を起こし、果たすべき任務を実施する上で支障をきたすことが考えられる。
図58を参照して、操作装置3のソフトウェア構成を説明する。図58は、実施の形態1に係るロボット操作システムの機能構成を説明するブロック図である。制御演算装置60は、通信回線69を介してロボット1と接続される。制御演算装置60とロボット1は、通信回線69を介して互いに通信する。通信回線69により、制御演算装置60からロボット1を制御する制御信号が送られる。ロボット1からは、現場カメラ2が撮影した画像やハンド部26の指先に設けた距離センサ91H、93Hが検出する距離などが送られる。通信回線69は、有線回線でも無線回線でもよく、公衆回線でも専用回線でもよい。通信回線69には、用途に合わせた通信回線を使用する。ロボット1と制御演算装置60との間の距離は、任意である。距離は、何千kmも離れていてもよいし、1mでもよい。
表示装置4、上体入力装置5、モード切替ペダル6R、6L、足操作入力装置7(図示せず)と制御演算装置60との間は、LAN70で結ぶ。この明細書における遠隔操作とは、遠隔で機械を操作する方法で機械を制御(操作)するという意味である。遠隔操作する際には、遠隔操作される機械に操作指示または制御信号を送信する。ロボット1と制御演算装置60の実際の距離は、遠隔でなくてもよい。上体入力装置5と制御演算装置60とを、LAN70を介さないで接続してもよい。
ロボット1は、現場カメラ2、胴体支持アーム12などの骨格部71、アーム接続部14などの関節部72、車両部1W、モータ73、アクチュエータ74、制御部75および通信部76を、主に有して構成される。
骨格部71は、胴体支持アーム12、胴下部21、胴上部20、腕接続部19、上腕部24、前腕部25、ハンド部26である。関節部72は、アーム接続部14、胴体接続部13、胴体交差回転部23、腕接続部回転部20A、腕基部関節部22A、肩関節部27、肘関節部28および手首関節部29である。なお、肩関節部27は、上腕部24を通る上腕部回転軸(AZ5軸)の回りの回転と、上腕部24と腕基部22とがなす角度を変更する回転軸(EL4軸)の回りの回転とを可能にする。肘関節部28は、前腕部25を通る前腕部回転軸(AZ6軸)の回りの回転と、前腕部25と上腕部24とがなす角度を変更する回転軸(EL5軸)の回りの回転とを可能とする。上腕部回転軸(AZ5軸)は、上腕部24を通り、上腕部24が延在する方向の回転軸である。前腕部回転軸(AZ6軸)は、前腕部25を通り、前腕部25が延在する方向の回転軸である。
遠隔操作されるロボットにおいて、遠隔操作される部位を被操作部と呼ぶ。ロボット1の被操作部は、アーム接続部14、胴体接続部13、胴体交差回転部23、腕接続部回転部20A、腕基部関節部22A、肩関節部27、肘関節部28、手首関節部29およびハンド部26である。操作指示により遠隔操作されるロボットの1の部位を、操作対象部と呼ぶ。操作指示は、上体入力装置5などにより入力される。操作対象部は、被操作部の少なくとも一部である。
モータ73は、アーム接続部14、胴体接続部13、胴体交差回転部23、腕接続部回転部20A、腕部10が有する関節部(手首関節部29は除く)、およびハンド部26が有する指関節部などを、回転させる動力を発生させる。アクチュエータ74は、前腕外側アクチュエータ35および前腕内側アクチュエータ36であり、手首関節部29を回転および静止させる。
制御部75は、制御演算装置60からの制御信号を基にモータ73およびアクチュエータ74を制御する。制御部75は、内部に記憶部77を有する。記憶部77は、制御信号などを記憶する。通信部76は、制御演算装置60と双方向に通信する。
制御演算装置60は、通信部63、構造データ記憶部64、状態データ記憶部65、上体入力装置インタフェース部66、操作指示データ生成部67、制御信号生成部68を主に有して構成される。上体入力装置インタフェース部は、図および以後の説明では、上体入力装置IF部と表記する。なお、図示していないが、足入力装置7(図示せず)に対するオペレータ90の操作から、車両部1Wおよびヒューマノイド部1H(腕部10を除く)を操作する操作指示および制御信号を生成する機能部も存在する。
構造データ記憶部64は、ロボット1の構造を表現する構造データを記憶する。構造データ記憶部64には、ロボット1を遠隔操作中には変化しないデータを記憶する。状態データ記憶部65は、現場カメラ2が撮影した画像や、操作指示データ(後で説明する)などの遠隔操作中に変化するデータを記憶する。
上体入力装置IF部66は、上体入力装置5が有するアーム操作装置50R、50Lで計測される各計測関節部での角度、ハンド操作装置80R、80Lで操作されるジョイスティックの操作方向と速度などのデータを受信して、状態データ記憶部65に書き込む。
操作指示データ生成部67は、ロボット1の被操作部を操作(制御)する操作指示データを生成する。生成される操作指示データは、腕部10およびハンド部26がすべき動作を指示する操作指示を表すデータである。
操作指示データ生成部67は、アーム操作装置50R、50Lで計測する角度から左右の腕部10が有する腕基部関節部22A、肩関節部27、肘関節部28、手首関節部29への操作指示データを生成する。操作指示データ生成部67は、ハンド操作装置80R、80Lの第1ジョイスティック81から第5ジョイスティック85などの動きから、左右のハンド部26を操作する操作指示データを生成する。
制御信号生成部68は、状態データ記憶部65を参照して操作指示データからロボット1が有するモータ73およびアクチュエータ74を制御する制御信号を生成する。
構造データ記憶部64および状態データ記憶部65は、ハードウェアとしてはメモリ部62に対応する。通信部63、操作指示データ生成部67および制御信号生成部68は、メモリ部62に記憶した専用プログラムをCPU61で実行させることにより実現する。
動作を説明する。オペレータ90は、表示装置4および上体入力装置5の前に座り、アーム操作装置50R、50Lを動かし、ハンド操作装置80R、80L、モード切替ペダル6R、6Lを操作する。アーム操作装置50R、50Lの各計測関節部の角度、ハンド操作装置80R、80Lの各ジョイスティックの動き、モード切替ペダル6R、6Lが踏み込まれているかどうかが、制御演算装置60に入力される。制御演算装置60は、操作指示データおよび制御信号を生成する。ロボット1の左右の腕部10が、アーム操作装置50R、50Lおよびハンド操作装置80R、80Lから入力される操作指示にしたがって動く。
アーム操作装置50R、50Lに対して各計測関節部の角度を固定する(ロックする)と、アーム操作装置50R、50Lは動かない。アーム操作装置50R、50Lが動かないと、ロボット1の腕部10も動かない。オペレータ90は、アーム操作装置50R、50Lをロックしている間に、休むことができる。オペレータ90がアーム操作装置50R、50Lを装着してロックを解除すると、オペレータ90は腕部10の操作を再開できる。
ロボット1の左右のハンド部26が、ハンド操作装置80R、80Lから入力される操作指示にしたがって動く。ハンド操作装置80では、ジョイスティックを使用しているので、ジョイスティックを傾けていない場合は、ハンド部26は動かない。
モード切替ペダル6R、6Lのどちらも踏まれていない場合は、左右のハンド部26は指回転モードである。指回転モードでは、ハンド操作装置80が有する各ジョイスティックを操作することで、ハンド部26が有する各指部が回転する。第1ジョイスティック81を動かすことで第1指部91が回転する操作指示が入力される。第2ジョイスティック82を動かすことで第2指部92が回転する操作指示が入力される。第3ジョイスティック83を動かすことで第3指部93が回転する操作指示が入力される。第4ジョイスティック84を動かすことで第4指部94が回転する操作指示が入力される。第5ジョイスティック85を動かすことで第5指部95が回転する操作指示が入力される。
モード切替ペダル6Rだけが踏まれている場合は、左右のハンド部26は間隔変更モードである。間隔変更モードでは、ハンド操作装置80が有する第1ジョイスティック81を操作することで、ハンド部26が有する第1指接続部96と第2指接続部97の間隔を変更できる。モード切替ペダル6Lだけが踏まれている場合は、左右のハンド部26はスライドモードである。スライドモードでは、ハンド操作装置80が有する第2ジョイスティック82を操作することで、ハンド部26が有するスライド指先部92Kを指元側に移動できる。
ハンド部26は、簡素な構造だが、多くの種類の動作ができる。物体を把持する場合には、2本から5本の指部の伸ばした指先で物体を把持でき、物体の形状に合わせて5本の指部を回転させて物体を把持できる。例えば、大きいあるいは長い物体は、把持に使用する指部の本数を多くして把持し、小さい物体は2本の指部だけで把持する。あるいは、第1指部91を掌肉部91Eの中に入れて、上に向けた4本の指の上に物体を載せることができる。大きなあるいは長い物体を、左右のハンド部26で持つことができる。左右のハンド部26で持つ場合には、左右のハンド部26を4本の指部が上に向くようにし、適切な間隔をおいて同じ高さに配置して、物体を左右のハンド部26の4本の指の上に載せる。大きな物体を、左右のハンド部26の4本の指が鉛直方向に並ぶようにして、2個のハンド部26の間に挟んで持つこともできる。さらに、物体をつまむ、ひねる、曲げる、ねじる、ボタンを押す、レバーを引くなど多様な数多くの動作をハンド部26にさせるようにハンド部26を操作できる。ハンド部26は、人が行っているほとんどの動作をすることができる。その際に、ハンド部26を作業内容に合わせて交換することは不要である。そのため、多くの種類の作業を連続してシームレスに、ハンド部26を有するロボット1がするように遠隔操作できる。
本開示に係るロボット操作システムでは、予期しない事象が発生する状況でも、その状況に適した動作をロボットが取れるように、オペレータの判断により遠隔操作ができる。人工知能技術を応用した自律型のロボットでは対応できないような多様な環境において、本開示に係るロボット操作システムによれば、オペレータが臨機応変な作業指示ができるようになる。本開示に係るロボット操作システムは、オペレータがロボットを操作する負担を従来よりも軽減できる。
本開示に係るロボット操作システムの適用先は、非常に多岐にわたる。例えば、以下が考えられる。
・人命に係る危険作業で人間の代替作業を必要とされる分野。
・省人化を要求される分野。介護分野や農業分野など。
・テレワークの実現を図る遠隔操作事業分野。
例えば、以下のような作業に使用することが期待される。
・地雷、爆弾などを処理する作業。
・テロ対応時などの人命に関わる危険な作業。
・事故が発生した原子力発電所での作業。
・化学物質等での長時間作業が不可能な作業環境での作業。塗装作業など。
・介護現場での人を補助あるいは支援する作業。
・農作業における各種作業。
・警備、監視作業。例えば、無人施設での24時間にわたる警備業務など。
上に例を示したどの作業も、その時の状況に応じた判断が必要であり、ロボットだけでは対応できないような作業である。ロボットが人工知能を有していたとしても、ロボットだけでは対応することは現在の技術では難しい。これらの作業では、作業内容をあらかじめ決めることができない。これらの作業は、予測不可能な事態が発生し、臨機応変な判断が必要となる作業である。状況に応じて状況に適切な多様な作業を、ロボットができるようにするためには、人の判断を利用する遠隔操作が必要である。両手を使用する細かい様々な作業まで、人がロボットを遠隔操作できるようになれば、社会的に非常に有益である。本開示に係るロボット操作システムは、両手を使用する細かい作業を含む多種多様な作業を、人がロボットを遠隔操作できるようにするものである。
また、重要施設などを警備する分野でも、ロボット操作システムは活用できる。無人通信局や無人駅などの無人施設での、24時間警備などに適用できる。必要な場合に、人によりロボットを遠隔操作することで、例えば、監視、警備業務での業務の質を向上させることができる。
ハンド部26は5本の指部を有する。ハンド部は、第1指部91、第2指部92および第3指部93の3本の指部を有するものでもよい。あるいは、第4指部94も有する4本体の指部を有するものでもよい。あるいは、6本以上の指部を有するハンド部でもよい。第2指部がスライド指先部を有さなくてもよい。対向する第1指部および第3指部を含む少なくとも3本の指部を有するものであり、第1指部が第1指接続部に回転可能に接続し、第3指部および他の指部が第2指接続部に回転可能に接続し、第1指接続部と第2指接続部との間の間隔が変更可能なものであればよい。ハンド部が5本とは異なる本数の指部を有する場合でも、ハンド部が有する指部と同じ本数のジョイスティックをハンド操作装置は有する。
3本指のハンド部が有する第1指部および第3指部ではない指部は、第2指部でなくてもよい。第4指部あるいは第5指部と、第1指部および第3指部の3本の指部をハンド部が有する場合は、第4指部あるいは第5指部が第3指部に並んで配置された第2指部であると考えることができる。
3本あるいは4本の指部を有するハンド部がスライド指先部を有する場合は、第2指部にスライド指先部を設ける。第2指部は、第3指部の前側に並ぶ指部である。ハンド部の前側は、基準状態のロボットでロボットの正面に存在する側である。
ハンド部26は、5本の指部を有するロボットハンドである。腕部10は、直列に接続した上腕部、前腕部およびハンド部を有するロボットアームである。ハンド部26あるいはその変形を、ロボットハンドとして使用してもよい。腕部10あるいはその変形を、ロボットアームとして使用してもよい。
ハンド操作装置80は、オペレータ90により操作されてハンド部26(ロボットハンド)を動かす操作指示を入力するロボットハンド操作装置である。操作対象であるロボットハンドは、少なくとも3本の指部を有するものであれば、どんなロボットハンドでもよい。1セットのハンド部26およびハンド操作装置80と、制御演算装置60のハンド部26を遠隔操作する機能は、ロボットハンドを遠隔操作するロボットハンド操作システムを構成する。ハンド部(ロボットハンド)は、ハンド部26を変形したものでもよい。ハンド操作装置は、ハンド操作装置80を変形したものでもよい。ロボットハンドおよびハンド操作装置の少なくとも一方を変形する場合には、その変形に応じて制御演算装置も変形させる。制御演算装置は、ハンド操作装置により入力された操作指示に基づきロボットハンドを制御する。何れの場合でも、本開示に係るロボットハンド操作装置およびロボットハンド操作システムは、オペレータがロボットハンドを操作する負担を従来よりも軽減できる。
アーム操作装置50は、ロボットアームである腕部10を操作する操作指示を操作者がアーム操作装置50を動かすことで入力するロボットアーム操作装置である。ロボットアームとしては、ハンド部26とは異なるロボットハンド(ハンド部)を有するものでもよい。
腕部10が有する肩関節部26(腕基部関節部22Aを含む)および肘関節部27は、1回転自由度で回転可能にする機構を直列につなげて2回転自由度または3回転自由度の関節部を構成している。1回転自由度で回転可能にする機構を直列につなげる関節部を、直列式の関節部と呼ぶ。腕部は、2回転自由度で回転可能な2軸ジンバルなどを使用する関節部、あるいは球面軸受けなどを使用する3回転自由度の関節部を有するものでもよい。2軸ジンバルとしては、交差する2平面での角度をそれぞれ変更可能にする2個の回転機構を有するもの(XY式)、基準となる直線(基準直線)の回りの回転機構と基準直線となす角度を変更可能にする回転機構を有するもの(経緯式)の何れでもよい。3回転自由度の関節部は、2軸ジンバルが回転可能に接続する2個の部材の一方の側の部材に、その部材を通る軸の回りの回転を可能にする機構を備えたものでもよい。XY式の2軸ジンバルを使用する2回転自由度または3回転自由度の関節部を、XY式の関節部と呼ぶ。経緯式の2軸ジンバルを使用する2回転自由度または3回転自由度の関節部を、経緯式の関節部と呼ぶ。
ロボットアームとしては、腕接続部と、腕接続部に接続する上腕部と、上腕部に接続する前腕部と、前腕部に接続するハンド部と、上腕部を腕接続部に回転可能に接続する肩関節部と、前腕部を上腕部に回転可能に接続する肘関節部と、ハンド部を前腕部に回転可能に接続する手首関節部とを有するものであればよい。ハンド部は、どのようなものでもよい。肩関節部は、直列式の関節部、XY式の関節部、経緯式の関節部の何れでもよい。肩関節部は、上腕部を腕接続部に回転可能に接続するものであればどのようなものでもよい。肘関節部は、直列式の関節部、XY式の関節部、経緯式の関節部の何れでもよい。肘関節部は、前腕部を上腕部に回転可能に接続するものであればどのようなものでもよい。手首関節部は、直列式の関節部、XY式の関節部、経緯式の関節部の何れでもよい。手首関節部は、ハンド部を前腕部に回転可能に接続するものであればどのようなものでもよい。手首関節部は、ハンド部を通る回転軸の回りにハンド部を回転可能に前腕部に接続するものでもよい。このようなロボットアームをタイプ1のロボットアームと呼ぶ。
タイプ1のロボットアームは、ハンド部と、ハンド部が接続する前腕部と、前腕部が接続する上腕部と、上腕部が接続する腕接続部と、ハンド部を前腕部に回転可能に接続する手首関節部と、前腕部を上腕部に回転可能に接続する肘関節部と、上腕部を腕基部に回転可能に接続する肩関節部とを備えるものでもよい。
タイプ1のロボットアームは、ロボットハンドと、ロボットハンドが接続する前腕部と、前腕部が接続する上腕部と、上腕部が接続する腕接続部とを備えるものでもよい。ロボットアームは、少なくとも2回転自由度で回転可能にロボットハンドを前腕部に接続する手首関節部と、少なくとも2回転自由度で回転可能に前腕部を上腕部に接続する肘関節部と、少なくとも2回転自由度で回転可能に上腕部を腕接続部に接続する肩関節部を備えるものでもよい。
タイプ1のロボットアームを操作する操作指示を、オペレータがロボットアーム操作装置を動かすことで入力する、タイプ1のロボットアーム操作装置は、腕接続構造部と、腕接続構造部に接続する上腕構造部と、上腕構造部に接続する前腕構造部と、前腕構造部に接続するハンド構造部とを備える。ロボットアーム操作装置は、肩関節部で上腕部が腕接続部に接続するのと同じ回転自由度で回転可能に上腕構造部を腕接続構造部に接続する肩計測関節部と、肘関節部で前腕部が上腕部に接続するのと同じ回転自由度で回転可能に前腕構造部を上腕構造部に接続する肘計測関節部と、手首関節部でハンド部が前腕部に接続するのと同じ回転自由度で回転可能にハンド構造部を前腕構造部に接続する手首計測関節部とを備える。ロボットアーム操作装置は、肩計測関節部が動かないようにロックする肩ロック部と、肘計測関節部が動かないようにロックする肘ロック部と、手首計測関節部が動かないようにロックする手首ロック部と、肩計測関節部で上腕構造部が腕接続構造部に接続する角度である肩関節計測角度を計測する肩関節角度計測部と、肘計測関節部で前腕構造部が上腕構造部に接続する角度である肘関節計測角度を計測する肘関節角度計測部と、手首計測関節部でハンド構造部が前腕構造部に接続する角度である手首関節計測角度を計測する手首関節角度計測部とを備える。ロボットアーム操作装置は、肩ロック部、肘ロック部および手首ロック部がロックするロック状態とロックしない非ロック状態とを一律に切り替えるロック状態変更スイッチとを備える。タイプ1のロボットアーム操作装置により入力される操作指示は、肩関節計測角度、肘関節計測角度、手首関節計測角度である。
タイプ1のロボットアームを、制御演算装置は、操作指示である、肩関節計測角度、肘関節計測角度、手首関節計測角度に基づき、肩関節部、肘関節部、手首関節部を制御する。
あるいは、ロボットアームは、ハンド部と、ハンド部が回転可能に接続する前腕部と、前腕部が回転可能に接続する上腕部と、上腕部が回転可能に接続する腕基部と、腕基部が回転可能に接続する腕接続部とを備える。ロボットアームでは、前腕部を通る前腕部回転軸を含む第1平面で前腕部回転軸とハンド部がなす角度であるハンド第1傾斜角と、第1平面と交差し、かつ前腕部回転軸を含む第2平面で前腕部回転軸とハンド部がなす角度であるハンド第2傾斜角とを変更可能に、ハンド部が前腕部に接続する。ロボットアームでは、上腕部と前腕部がなす角度である前腕部傾斜角を変更可能に、前腕部が上腕部に接続する。ロボットアームでは、腕基部と上腕部がなす角度である上腕部傾斜角を変更可能に、上腕部が腕基部に接続する。ロボットアームでは、腕基部を通る腕基部回転軸の回りの回転角度である腕基部回転角を変更可能に、腕基部が腕接続部に接続する。ロボットアームでは、上腕部を通る上腕部回転軸の回りに上腕部が回転可能であり、かつ前腕部回転軸の回りに前腕部が回転可能である。このようなロボットアームを、タイプ2のロボットアームと呼ぶ。タイプ2のロボットアームは、タイプ1のロボットアームに含まれる。
タイプ2のロボットアームは、以下のようなものでもよい。ロボットアームは、ハンド部と、ハンド部が回転可能に接続する前腕部と、前腕部が回転可能に接続する上腕部と、上腕部が回転可能に接続する腕基部と、腕基部が回転可能に接続する腕接続部とを備える。ロボットアームは、手首関節部と、肘関節部と、肩関節部と、腕基部関節部とを備える。手首関節部は、前腕部を通る前腕部回転軸を含む第1平面で前腕部回転軸とハンド部がなす角度であるハンド第1傾斜角と、第1平面と交差し、かつ前腕部回転軸を含む第2平面で前腕部回転軸とハンド部がなす角度であるハンド第2傾斜角とを変更可能に、ハンド部を前腕部に接続する。肘関節部は、上腕部と前腕部がなす角度である前腕部傾斜角を変更可能に、前腕部を上腕部に接続する。肩関節部は、腕基部と上腕部がなす角度である上腕部傾斜角を変更可能に、上腕部を腕基部に接続する。腕基部関節部は、腕基部を通る腕基部回転軸の回りの回転角度である腕基部回転角を変更可能に、腕基部を腕接続部に接続する。
腕部10は、タイプ2のロボットアームである。腕部10は、タイプ1のロボットアームでもある。
タイプ2のロボットアームは、タイプ2のロボットアーム操作装置により、ロボットアームを操作する操作指示をオペレータが入力する。タイプ2のロボットアーム操作装置をオペレータが動かすことで、ロボットアームを操作する操作指示をオペレータが入力する。入力された操作指示は、ロボットアームを制御する制御演算装置に入力される。
タイプ2のロボットアーム操作装置は、腕接続構造部と、腕接続構造部に接続する上腕構造部と、上腕構造部に接続する前腕構造部と、前腕構造部に接続するハンド構造部とを備える。
ロボットアーム操作装置は、肩計測関節部と、肘計測関節部と、手首計測関節部とを備える。肩計測関節部は、腕接続構造部に垂直な腕接続構造部回転軸の回りに回転可能に、上腕構造部が腕接続構造部回転軸となす角度である上腕傾斜計測角を変更可能に、上腕構造部を通る上腕構造部回転軸の回りに回転可能に、上腕構造部を腕接続構造部に接続する。肘計測関節部は、前腕構造部が上腕構造部に対してなす角度である前腕傾斜計測角を変更可能に、前腕構造部を通る前腕構造部回転軸の回りに回転可能に、前腕構造部を上腕構造部に接続する。手首計測関節部は、前腕構造部回転軸を含む第1計測平面でハンド構造部が前腕構造部回転軸に対してなす角度であるハンド第1傾斜計測角と、第1計測平面と交差し、かつ前腕構造部回転軸を含む第2計測平面でハンド構造部が前腕構造部回転軸に対してなす角度であるハンド第2傾斜計測角とを変更可能に、ハンド構造部を前腕構造部に接続する。
ロボットアーム操作装置は、肩関節角度計測部と、肘関節角度計測部と、手首関節角度計測部とを備える。肩関節角度計測部は、腕接続構造部回転軸の回りに上腕構造部が回転する角度である腕基部回転計測角と、上腕傾斜計測角と、上腕構造部回転軸の回りに上腕構造部が回転する角度である上腕部回転計測角とを計測する。肘関節角度計測部は、前腕傾斜計測角と、前腕構造部回転軸の回りに前腕構造部が回転する角度である前腕部回転計測角とを計測する。手首関節角度計測部は、ハンド第1傾斜計測角と、ハンド第2傾斜計測角とを計測する。
ロボットアーム操作装置により操作者が入力する操作指示は、腕基部回転計測角θX1M、上腕傾斜計測角δY2M、上腕部回転計測角θZ3M、前腕傾斜計測角δX4M、前腕部回転計測角θZ5M、ハンド第1傾斜計測角δX6M、およびハンド第2傾斜計測角δY7Mである。
アーム操作装置50は、タイプ2のロボットアーム操作装置である。アーム操作装置50は、タイプ1のロボットアーム操作装置でもある。タイプ1のロボットアーム操作装置であるアーム操作装置50は、肩関節計測角度として腕基部回転計測角θX1M、上腕傾斜計測角δY2M、および上腕部回転計測角θZ3Mを計測する。アーム操作装置50は、肘関節計測角度として前腕傾斜計測角δX4M、および前腕部回転計測角θZ5Mを計測する。アーム操作装置50は、手首関節計測角度としてハンド第1傾斜計測角δX6M、およびハンド第2傾斜計測角δY7M
タイプ2のロボットアームを、制御演算装置は、操作指示である、腕基部回転計測角θX1M、上腕傾斜計測角δY2M、上腕部回転計測角θZ3M、前腕傾斜計測角δX4M、前腕部回転計測角θZ5M、ハンド第1傾斜計測角δX6M、およびハンド第2傾斜計測角δY7Mに基づき、腕基部回転角θAZ4、上腕部傾斜角δEL4、上腕部回転角θAZ5、前腕部傾斜角δEL5、前腕部回転角θAZ6、ハンド第1傾斜角δEL6およびハンド第2傾斜角δXEL2を制御する。
タイプ1およびタイプ2のロボットアーム操作装置は、肩計測関節部が肩関節部と同じ回転自由度であり、肘計測関節部が肘関節部と同じ回転自由度であり、手首計測関節部が手首関節部と同じ回転自由度である。関節部と対応する計測関節部が同じ回転自由度であるとは、関節部と対応する計測関節部が有する回転軸の種類および数が一致していることである。
肩計測関節部と肩関節部、肘計測関節部と肘関節部、手首計測関節部と手首関節部の何れか少なくとも一つが同じ回転自由度ではない場合でも、ロボットアーム操作装置がロボットアームを操作可能な場合がある。
関節部において、腕接続部に近い側の部材を第1部材と呼び、遠い側の部材を第2部材と呼ぶ。肩関節部27(腕基部関節部22Aも含む)では、腕接続部19が第1部材であり、上腕部24が第2部材である。肘関節部28では、上腕部24が第1部材であり、前腕部25が第2部材である。手首関節部29では、前腕部25が第1部材であり、ハンド部26が第2部材である。なお、肩関節部27における第1部材は、胴体部11であるとも考えられる。手首関節部29における第2部材であるハンド部26は、ロボットハンドである。
直列式または経緯式の関節部では、第1部材に対して第2部材がなす角度は、第1部材を通る第1部材回転軸と第2部材とがなす関節部傾斜角と、第1部材回転軸の回りに第2部材が回転する関節部回転角とで表す。関節部において第1部材に対して第2部材がなす角度が2回転自由度で変更可能とは、関節部傾斜角および関節部回転角を変更可能であることである。関節部において第1部材に対して第2部材がなす角度が1回転自由度で変更可能とは、その関節部で関節部傾斜角を変更可能であることである。第1部材に対して第2部材がなす角度が変更可能も、その関節部で関節部傾斜角を変更可能であることである。第2部材を通る回転軸を、第2部材回転軸と呼ぶ。関節部で第2部材回転軸の回りに第2部材が回転する角度を、第2部材回転角と呼ぶ。
肩関節部27における第1部材回転軸は、腕基部回転軸(AZ4軸)である。肩関節部27における第2部材回転軸は、上腕部回転軸(AZ5軸)である。肩関節部27における関節部傾斜角は、上腕部傾斜角δEL4である。肩関節部27における関節部回転角は、腕基部回転角θAZ4である。肩関節部27における第2部材回転角は、上腕部回転角θAZ5である。
肘関節部28における第1部材回転軸は、上腕部回転軸(AZ5軸)である。肘関節部2における第2部材回転軸は、前腕部回転軸(AZ6軸)である。肘関節部28における関節部傾斜角は、前腕部傾斜角δEL5である。肘関節部28における関節部回転角は、上腕部回転軸(AZ5軸)の回りに上腕部24に対して前腕部25が回転する角度(肘関節部回転角と呼ぶ)である。肘関節部28での第2部材回転角は、前腕部回転角θAZ6である。手首関節部29での第1部材回転軸は、前腕部回転軸(AZ6軸)である。
XY式の関節部では、互いに交差する2平面を第1平面と第2平面と呼ぶ。第2平面に垂直な回転軸を第1回転軸と呼び、第1平面に垂直な回転軸を第2回転軸と呼ぶ。第1回転軸の回りに第2部材が回転する角度を、第1傾斜角と呼ぶ。第2回転軸の回りに第2部材が回転する角度を、第2傾斜角と呼ぶ。XY式の関節部では、第1部材に対して第2部材がなす角度は、第1傾斜角および第2傾斜角である。XY式の関節部での第1部材に対して第2部材がなす角度は、2回転自由度で変更可能である。第1平面と第2平面は、互いに直交することが望ましいが、互いに交差していればよい。第1平面と第2平面の交線は、第1部材回転軸と一致することが望ましいが、第1平面と第2平面の交線と第1部材回転軸とが一致していなくてもよい。
手首関節部29では、第1部材回転軸が前腕部回転軸(AZ6軸)であり、前後方向回転平面が第2平面であり、EL6軸が第1回転軸であり、左右方向回転平面が第1平面であり、EL6軸が第2回転軸である。手首関節部29では、第1傾斜角はハンド第1傾斜角δEL6であり、第2傾斜角はハンド第2傾斜角δXEL2である。
直列式または経緯式の手首関節部では、関節部傾斜角をハンド部傾斜角と呼び、関節部回転角を手首関節部回転角と呼ぶ。手首関節部の第2部材回転角をハンド部回転角と呼ぶ。
関節部の回転自由度は、その関節部で第2部材が第2部材回転軸の回りに回転できる場合は、第1部材に対して第2部材がなす角度の回転自由度に1回転自由を加えた回転自由度である。関節部の回転自由度は、その関節部で第2部材が第2部材回転軸の回りに回転できない場合は、第1部材に対して第2部材がなす角度の回転自由度に等しい。
肩関節部で腕接続部に対して上腕部が1回転自由度または2回転自由度で接続する角度を、上腕部接続角と呼ぶ。肘関節部で上腕部に対して前腕部が1回転自由度または2回転自由度で接続する角度を、前腕部接続角と呼ぶ。手首関節部で前腕部に対してハンド部が1回転自由度または2回転自由度で接続する角度を、ハンド部接続角と呼ぶ。
タイプ3のロボットアームは、腕接続部と、腕接続部に接続する上腕部と、上腕部に接続する前腕部と、前腕部に接続するハンド部とを備える。ロボットアームは、腕接続部と交差する肩部回転軸の回りの回転角度である肩部回転角と、肩部回転軸と上腕部とがなす角度である上腕部傾斜角とを変更可能に、上腕部を腕接続部に接続する肩関節部と、上腕部を通る上腕部回転軸と前腕部がなす角度である前腕部傾斜角を変更可能に、前腕部を上腕部に接続する肘関節部と、ハンド部を前腕部に回転可能に接続する手首関節部とを備える。タイプ3のロボットアームでは、上腕部または前腕部が上腕部回転軸の回りに回転する角度である肘部回転角が変更可能である。
タイプ3のロボットアームは、腕接続部と、腕接続部に接続する上腕部と、上腕部に接続する前腕部と、前腕部に接続するハンド部とを備え、腕接続部と交差する肩部回転軸の回りに回転可能に、かつ肩部回転軸と上腕部とがなす角度を変更可能に上腕部が腕接続部に接続し、上腕部を通る上腕部回転軸と前腕部とがなす角度を変更可能に前腕部が上腕部に接続し、ハンド部が前腕部に回転可能に接続し、上腕部または前腕部が上腕部回転軸の回りに回転可能であるものでもよい。
タイプ3のロボットアームにおいて、上腕部が上腕部回転軸の回りに回転する角度である肘部回転角が変更可能であることは、肩関節部が3回転自由度であることを意味する。腕部10において、肩関節部が関節接続部24Aに対して中間円筒部24Bを回転させる機構、腕基部22および腕基部関節部22Aを含むと考える場合には、腕部10の肩関節部は3回転自由度である。肩関節部が有する3回転自由度は、腕基部回転角、上腕部傾斜角および上腕部回転角をそれぞれ変化させる回転自由度である。したがって、腕部10は、タイプ3のロボットアームでもある。
前腕部が上腕部回転軸の回りに回転する角度である肘部回転角が変更可能であることは、肘関節部で前腕部が上腕部に2回転自由度で接続することを意味する。肘関節部で前腕部が上腕部に2回転自由度で接続する腕部は、例えば国際公開WO2018/074101(先行文献1と呼ぶ)に記載された人型ロボット100が有する肘関節部31である。先行文献1の段落0093には、「前腕部8は、上腕部7に肘関節部31により2回転自由度で接続される。肘関節部31は、上腕部7と同じ方向の回転軸Rz2を有し、回転軸Rz2により回転する前腕部8の上腕部7に対する角度も変更できる2軸ジンバルである。」と記載されている。先行文献1における「回転軸Rz2」は、本開示における上腕部回転軸に対応する。「回転軸Rz2」の回りの回転角度が、本開示における前腕部が上腕部回転軸の回りに回転する角度である肘部回転角に対応する。「回転軸Rz2により回転する前腕部8の上腕部7に対する角度」は、本開示においては、前腕部傾斜角に対応する。
手首関節部が少なくとも2回転自由度を有する場合には、タイプ3のロボットアームでは、肩関節部、肘関節部および手首関節部の回転自由度の合計が少なくとも7回転自由度である。
タイプ3のロボットアームは、タイプ3のロボットアーム操作装置により、ロボットアームを操作する操作指示をオペレータが入力する。タイプ3のロボットアーム操作装置をオペレータが動かすことで、ロボットアームを操作する操作指示をオペレータが入力する。腕部10は、タイプ3のロボットアームでもある。アーム操作装置50は、タイプ3のロボットアーム操作装置でもある。
タイプ3のロボットアーム操作装置は、腕接続構造部と、腕接続構造部に接続する上腕構造部と、上腕構造部に接続する前腕構造部と、前腕構造部に接続するハンド構造部とを備える。ロボットアーム操作装置は、腕接続構造部と交差する腕接続構造部回転軸の回りに回転可能に、上腕構造部が腕接続構造部回転軸となす角度である上腕傾斜計測角を変更可能に、上腕構造部を通る上腕構造部回転軸の回りに回転可能に、上腕構造部を腕接続構造部に接続する肩計測関節部と、前腕構造部が上腕構造部に対してなす角度である前腕傾斜計測角を変更可能に、前腕構造部を上腕構造部に接続する肘計測関節部と、前腕傾斜計測角を変更可能に、ハンド構造部を前腕構造部に接続する手首計測関節部とを備える。ロボットアーム操作装置は、さらに、腕接続構造部回転軸の回りに上腕構造部が回転する角度である肩部回転計測角と、上腕傾斜計測角と、上腕構造部回転軸の回りに上腕構造部が回転する角度である上腕部回転計測角とを計測する肩関節角度計測部と、前腕傾斜計測角を計測する肘関節角度計測部と、手首計測関節部でハンド構造部が前腕構造部に接続する角度である手首関節計測角度を計測する手首関節角度計測部とを備える。
タイプ3のロボットアームを、制御演算装置は、操作指示である、肩部回転計測角、上腕傾斜計測角、上腕部回転計測角、前腕傾斜計測角、および手首関節計測角度に基づき、肩部回転角、上腕部傾斜角、肘部回転角、前腕部傾斜角、および手首関節部を制御する。
タイプ2またはタイプ3のロボットアーム操作装置は、肩ロック部、肘ロック部および手首ロック部の少なくとも1つを備えなくてもよい。タイプ2またはタイプ3のロボットアーム操作装置は、肩ロック部、肘ロック部および手首ロック部を備えてもよい。
本開示に係るロボットアーム操作装置は、肩計測関節部、肘計測関節部および手首計測関節部の少なくとも1つで、操作対象であるロボットアームの肩関節部、肘関節部および手首関節部が有する回転自由度と異なってもよい。例えば、アーム操作装置50は、先行文献1に記載されている上肢部7を操作する操作指示を入力するために使用できる。アーム操作装置50は、3回転自由度の肩計測関節部と前腕部傾斜角を変更できる回転自由度を含む2回転自由度を有する肘計測関節部を有する。先行文献1に記載されている上肢部7は、2回転自由度の肩関節部13と、肘部回転角および前腕部傾斜角が変更可能な2回転自由度の肘関節部31とを有する。アーム操作装置50は、先行文献1に記載されている上肢部7を操作する操作指示を入力できる。アーム操作装置50により、先行文献1に記載されている上肢部7を操作する操作指示を入力する場合には、Z3M軸の回りの回転角度である上腕部回転計測角θZ3Mに基づき、肘関節部31において回転軸Rz2の回りの回転角度を変更する操作指示を入力する。
アーム操作装置50を、手首計測関節部においてハンド構造部と前腕構造部とがなす角度(ハンド部傾斜計測角と呼ぶ)と、ハンド構造部を通る回転軸の回りハンド構造部の回転角度(ハンド部回転計測角と呼ぶ)とを計測できるように変形してもよい。ハンド部傾斜計測角を変数δY8Mで表す、ハンド部回転計測角を変数δZ9Mで表す。そのように変形したアーム操作装置は、例えば先行文献1の手首関節部36を操作する操作指示を入力する場合に使用できる。前腕部回転計測角θZ5Mおよびハンド部傾斜計測角δY8Mに基づき、手首関節部36のX軸の回りの回転角αvおよびY軸の回りの回転角βvを変更する操作指示を入力する。ハンド部回転計測角δZ9Mに基づき、手首関節部36のZ軸の回りの回転角γvを変更する操作指示を入力する。
腕部10およびアーム操作装置50の1セットと、制御演算装置60の腕部10を遠隔操作する機能は、ロボットアームを遠隔操作するロボットアーム操作システムを構成する。ハンド部26を含まない腕部を遠隔操作する場合でも、1セットの腕部およびアーム操作装置と、制御演算装置の腕部を遠隔操作する機能は、ロボットアーム操作システムを構成する。ハンド部26を含む腕部10を遠隔操作する場合には、ロボットアーム操作システムはハンド操作装置80も含む。ロボットアーム操作システムは、アーム操作装置50を有さず、ハンド操作装置80を有するものでもよい。ロボットアーム操作システムの操作対象は、ハンド部26を含まない腕部10、あるいはハンド部26を含む腕部10、あるいはハンド部26を有するロボットアームであればよい。腕部(ロボットアーム)は、腕部10を変形したものでもよく、アーム操作装置はアーム操作装置50を変形したものでもよい。ハンド部(ロボットハンド)はハンド部26を変形したものでもよく、ハンド操作装置は、ハンド操作装置80を変形したものでもよい。ロボットアーム、アーム操作装置、ロボットハンドおよびハンド操作装置の少なくとも一つを変形する場合には、その変形に応じて制御演算装置も変形させる。制御演算装置は、アーム操作装置およびハンド操作装置の少なくとも一つにより入力された操作指示に基づきロボットアームおよびロボットハンドの少なくとも一つを制御する。何れの場合でも、ロボットアーム操作装置およびロボットアーム操作システムによれば、オペレータがロボットアームを操作する負担を従来よりも軽減できる。
ロボット操作システム100は、左右の腕部10(ハンド部26を含む)を操作対象とする。ロボット操作システムは、左右の腕部10(ハンド部26を含まない)を操作対象とするものでもよい。ロボット操作システムは、左右のハンド部26を操作対象とするものでもよい。腕部10(ハンド部26を含まない)は変形したものでもよく、ハンド部26は変形したものでもよい。
ロボットは、上半身だけのロボットでもよい。クローラではなく通常の車輪で移動するロボット、2本足で移動する人型ロボットなどでもよい。
操作対象であるロボットは、対向する第1指部および第3指部を含む少なくとも3本の指部を有するものであり、第1指部が第1指接続部に回転可能に接続し、第3指部および他の指部が第2指接続部に回転可能に接続し、第1指接続部と第2指接続部との間の間隔が変更可能なロボットハンドをハンド部として有するものであればよい。
あるいは、前述したタイプ1またはタイプ2またはタイプ3のロボットアームを胴体部の左右に有するロボットを操作対象としてもよい。
ロボットをオペレータ90が音声で遠隔操作できるようにしてもよい。その場合には、オペレータ90がマイクを装着し、制御演算装置が音声処理部を有する。音声処理部は、音声認識部と音声制御部とを有する。音声認識部は、オペレータ90が発生する音声から予め決められた特定の語句を抽出する。オペレータ90の音声は、マイクから入力される。音声制御部は、抽出した語句に応じた操作指示データを生成する。音声制御部が生成した操作指示データは、状態データ記憶部に書き込まれる。制御信号生成部は、状態データ記憶部を参照して操作指示データに応じた制御信号を生成する。
特定の語句は、例えば、ストップ、キープ、キープ解除などである。語句と、語句から生成される操作指示データの対応は、例えば、以下のようになる。
(a) ストップからは、ロボット1の動作を停止させる操作指示データが生成される。
(b) キープからは、アーム操作装置50R、50Lをロック状態にし、腕部10を静止させる操作指示データが生成される。ハンド操作装置80R、80Lからの操作指示は、無効になる。
(c) キープ解除からは、アーム操作装置50R、50Lのロックを解除し、アーム操作装置50R、50Lおよびハンド操作装置80R、80Lからの入力に対して操作指示データを生成する。
音声認識部は、上記とは異なる語句を認識できたり、上記の語句の中で認識しない語句があったりしてもよい。音声制御部は、音声認識部が抽出した語句に応じてロボット1を停止または動作させることができれば、どのようなものでもよい。
実施の形態の変形や一部の構成要素を省略すること、変形や省略の自由な組み合わせが可能である。