JP7223911B1 - 電子天びん - Google Patents

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Abstract

【課題】計量値の補正に必要な、マグネットの温度を検出するため温度センサの取り付けが容易な構造を有する電子天びんを提供する。【解決手段】電子天びんは、内部にマグネット21を配置したヨーク22を有し、マグネット21の磁界中に配置されたコイルに電流を供給して被計量物の荷重と平衡させる電磁部20と、電磁部20の温度を検出する温度センサ31とを備え、前記温度センサ31は、温度センサ31を取り付けるセンサ取付部32aと、前記温度センサ31をA/D変換器40に接続する導線部32bとを有するフレキシブル基板32に取り付けられており、ヨーク22の表面には、温度センサ31を収容可能なセンサ用凹部24が形成され、温度センサ31は、温度センサ31がセンサ用凹部24に収容され、センサ取付部32aがセンサ用凹部24を閉塞するように、電磁部20に取り付けられている。【選択図】 図7

Description

本開示は、電子天びんに関し、より詳細には、電磁平衡式電子天びんに関する。
従来、電子天びんとして、計量皿に載置された被計量物の荷重によって生じるビームの変異を電圧により検出し、この変異を打ち消し、ビームを平衡に復帰させるための電磁力を発生させるための電流値に基いて質量を測定する電磁平衡式電子天びんが知られている。
このビームを平衡に復帰させるための電磁力は、通常、フォースコイル、マグネット、ヨークを備える電磁部により生成される。マグネットを構成する材料の温度特性に起因して、磁束が温度変化により変化することが知られている。このため、電磁平衡式電子天びんでは、マグネットの近傍に温度センサを設け、マグネットの温度を検出して、温度に応じた計量値の補正をしている(例えば、特許文献1,特許文献2等参照)。
特開2000-039356号公報 特開2019-056589号公報
しかしながら、特許文献1,2には、温度センサの電磁部への取付方法の詳細は開示されていない。具体的には、特許文献1では、段落0013において、温度センサがマグネット或いはこのマグネットの近傍に設けられ、測定温度を検出することが開示されているのみである。また、特許文献2では、段落0032において、温度センサは、マグネットに直接または、ヨーク22を介して間接に取り付けられていることが開示されているのみである。
製品によれば、従来の電子天びんにおける温度センサの電磁部に対する取付方法は、例えば図17に示すように、ヨーク91の側面に、温度センサ94を挿入可能な円形の穴93を設け、該穴へ温度センサ94を挿入して、熱伝導性の樹脂を充填して硬化させるというものであった。該取付方法では、硬化に一晩かかるなど、時間や手間がかかるものであった。このため、電磁部への温度センサ94の取り付けが容易な電子天びんの開発が求められていた。
本発明は、上記の事情を鑑みてなされたものであり、マグネットの温度を検出する温度センサの電磁部への取り付けが容易な電子天びんを提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の一つの態様に係る電子天びんは、以下の通り構成される。
1.電子天びんは、内部にマグネットを配置したヨークを有し、前記マグネットの磁界中に配置されたコイルに電流を供給して被計量物の荷重と平衡させる電磁部と、前記電磁部の温度を検出する温度センサと、前記温度センサに接続されるA/D変換部とを備え、前記温度センサは、前記温度センサを取り付けるセンサ取付部と、前記温度センサを前記A/D変換部に接続する導線部とを有するフレキシブル基板に取り付けられ、前記ヨークの表面には、前記温度センサを収容可能なセンサ用凹部が形成され、前記温度センサは、前記温度センサが前記センサ用凹部に収容され、前記センサ取付部が前記センサ用凹部を閉塞するように、前記電磁部に取り付けられている。
2. 上記1の電子天びんにおいて、前記ヨークの表面に、前記センサ取付部と篏合する形状の位置決め凹部が形成され、前記センサ用凹部は、前記位置決め凹部の底面に形成され、前記温度センサは、前記温度センサが前記センサ用凹部に収容され、前記センサ取付部が前記位置決め凹部に篏合するように、取り付けられていることも好ましい。
3.上記1または2の電子天びんにおいて、前記フレキシブル基板は、少なくとも片面がシールドされていることも好ましい。
4.上記1~3のいずれかの電子天びんにおいて、前記センサ取付部は、前記センサ取付部の形状と一致する平板状の支持部材に支持されていることも好ましい。
5.上記4の電子天びんにおいて、前記支持部材は、金属板であることも好ましい。
6.上記1~5のいずれかの電子天びんにおいて、前記第2の凹部の底面と、前記温度センサの間に、熱伝導性樹脂シートを備えることも好ましい。
7.上記1~6のいずれかの電子天びんにおいて、前記フレキシブル基板は、前記ヨークに、前記位置決め凹部の底面に形成されたネジ孔と、前記センサ取付部に設けられた孔とをネジで螺合することによるネジ止めで取り付けられている。
8.また、本発明の別の態様に係る電子天びんは、内部にマグネットを配置したヨークを有し、前記マグネットの磁界中に配置されたコイルに電流を供給して被計量物の荷重と平衡させる電磁部と、前記電磁部の温度を検出する温度センサと、前記電磁部と前記温度センサに接続されるA/D変換部とを備え、前記温度センサは、前記温度センサを取り付けるセンサ取付部と、前記温度センサを前記A/D変換部に接続する導線部とを有するフレキシブル基板に取り付けられ、前記ヨークの表面には、前記温度センサを収容可能なセンサ用凹部が形成され、前記温度センサは、前記温度センサが前記センサ用凹部に収容され、前記センサ取付部と、金属テープとで、前記センサ用凹部を閉塞するように、前記電磁部に取り付けられている。
上記態様によれば、マグネットの温度を検出するための温度センサを容易に取り付けることができる電子天びんを提供することが可能になる。
本発明の実施の形態に係る電子天びんの外観斜視図である。 同電子天びんの構成ブロック図である。 同電子天びんの本体内部および表示ユニット内部の構造を示す平面図である。 同電子天びんの計量機構の底面図である。 同電子天びんの、温度検出部を取り付けた電磁部の外観を示す斜視図である。 同電子天びんの温度検出部を説明する図である。 同電子天びんの電磁部を説明する図である。 同電子天びんの温度検出部を電磁部に取り付けた状態の断面図である 同実施の形態の1つの変形例に係る電子天びんの、温度検出部と電磁部との結合状態を説明する図である。 別の変形例に係る電子天びんの、温度検出部の電磁部への取付構造を説明する図である。 さらに別の変形例に係る電子天びんの、温度検出部の電磁部への取付構造を説明する図である。 さらに別の変形例に係る電子天びんの、温度検出部の電磁部への取付構造を説明する図である。 さらに別の変形例に係る電子天びんの、温度検出部の電磁部への取付構造を説明する図である。 さらに別の変形例に係る電子天びんの、温度検出部の電磁部への取付構造を説明する図である。 さらに別の変形例に係る電子天びんの、温度検出部の電磁部への取付構造を説明する図である。 さらに別の変形例に係る電子天びんの、温度検出部の電磁部への取付構造を説明する図である。 実施の形態に係る電子天びんを用いた電波試験の結果を示すグラフである。 従来の電子天びんにおける、温度検出部の電磁部のヨークへの取付構造を説明する図である。
以下、本発明に係る実施の形態を、図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。なお、図面における各部の寸法は説明の便宜のために適宜拡縮して描画しており、縮尺は必ずしも正確なものではない。また、以下の変形例の説明において、実施の形態で説明した部材と同じ構成の部材には同じ符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、実施の形態に係る電子天びん1の外観斜視図である。電子天びん1は、所謂、電磁平衡式電子天びんである。電子天びん1は、外観上、天びん本体2、計量皿3、および表示ユニット5を備える。
天びん本体2は、平面視略四角形の箱状の本体ケース4で画成され、その内部に後述する計量機構10を格納する。天びん本体2は、底部に水平調整用脚部6を備える。計量皿3は、本体中央に設けられた皿軸(図示せず)を介して計量機構10に接続されている。
表示ユニット5は、上面にディスプレイ51、操作ボタン52を備え、側面にUSB(Universal・Serial・Bus)ポート、RS-232C等の外部インタフェイス53を備える。表示ユニット5は、略コの字状のアーム7で天びん本体2に接続されており、アーム7を上下動することで、上下に移動させることが可能となっている。
図2は、電子天びん1のブロック図であり、図3Aは、天びん本体2および表示ユニット5の内部構造を示す図である。図3Bは、天びん本体2における計量機構10周辺の底面図である。
計量機構10は、天びん本体2の中央部に配置されている。計量機構10は、ロバーバル機構16、位置センサ18、電磁部20、および温度センサ31を有する温度検出部30を備える。
ロバーバル機構16は、フレーム、上下ビームおよび浮き枠により構成され、計量皿3に載置された被計量物の荷重をビームの変位として伝達する。
位置センサ18は、ビームの変位を検出する。位置センサ18としては例えば、光学式(発光、受光素子)や静電容量式、差動トランス式等の公知のものを使用することができる。
電磁部20は、ビームの変異を補正するように補償電流を出力するフォースコイル(図示せず)、マグネット(永久磁石)21(図4)、およびヨーク22(図4)を備える。フォースコイルは、位置センサ18が検出するビームの変位量に応じて、ビームの変位を補正するための補償電流を出力し、ビームが平衡に復帰する電流値に対応する信号を出力する。
マグネット21は、例えば、アルミニッケルコバルト(アルニコ)合金磁石、サマリュウムやコバルト等の希土類磁石である。ヨーク22は、肉厚の上面を有する円筒形の部材であり、内部の上面、すなわち上面の下部には、マグネット21が取り付けられている。ヨーク22の素材としては、例えば、SUM22等の硫黄複合快削鋼鋼材や、アルミニウム等を採用することができる。
温度検出部30は、概略として、温度センサ31、および図3A,図3Bにおいて斜線で示すフレキシブル基板(以下、FPC(Flexible・Printed・Circuits)という。)32を備える。温度センサ31としては、サーミスタ、トランジスタ、ダイオード、熱電対等を使用することができる。トランジスタを用いると、価格の面で有利である。トランジスタの場合、温度は、温度センサ31の電圧降下として検出され、演算制御部54で温度に換算される。
位置センサ18、電磁部20のフォースコイル、および温度検出部30の温度センサ31は、FPC32でA/D変換器40に接続されており、それぞれ出力信号をA/D変換器40に出力する。
図示の例において、天びん本体2は、感度調整のための内蔵分銅を載せ降ろしする内蔵分銅機構14および内蔵分銅の載せ降ろしを制御するための内蔵分銅ボード15を備えている。内蔵分銅ボード15もまた、A/D変換器40に接続されている。
A/D変換器40は、アナログ/デジタル変換回路を基板に実装したものであり、位置センサ18、電磁部20のフォースコイル、温度センサ31から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換して、演算制御部54に出力する。
表示ユニット5は、上記のディスプレイ51、操作ボタン52、外部インタフェイス53に加えて、その内部に演算制御部54を備える。演算制御部54は、A/D変換器40とアーム7の内部を介して、ケーブル42で接続されている。
ディスプレイ51は、例えば液晶ディスプレイである。操作ボタン52は、例えば、電源ボタン、モード変更ボタン、ゼロ点ボタン、風袋引きボタン等、電子天びん1を操作するためのボタンである。ディスプレイ51および操作ボタン52は、タッチパネルディスプレイとして一体に構成してもよい。外部インタフェイス53は、上記の通り外部との通信のためのインタフェイスである。
演算制御部54は、例えば、少なくとも1つのプロセッサ(例えば、CPU(Central・Processing・Unit))および少なくとも1つのメモリ(例えば、DRAM(Dynamic・Random・Access・Memory)、SRAM(Static・Random・Access・Memory)等)を基板に実装したマイクロコントローラである。演算制御部54は、A/D変換器40を介して、内蔵分銅機構14を制御する。演算制御部54は、電磁部20から入力された電流値に基いて計量データを生成し、温度センサ31から入力された電圧値から温度を算出し、温度データに基いて、計量データを補正して、計量値を算出する。
以下、図4~図7を参照して、温度検出部30の電磁部20への取付構造を詳細に説明する。図4は、温度検出部30を取り付けた状態の電磁部20の外観斜視図である。図5(A)は温度検出部30の平面図、図5(B)は温度検出部30の底面図であり、図5(C)は、温度検出部30の、図5(A)のVC-VC線に沿う断面図であり、図5(D)は、温度検出部30を構成するFPC32の平面図である。図6(A)は電磁部20の平面図であり、図6(B)は電磁部20の図6(A)のVIB-VIB線に沿う断面図である。図7は、温度検出部30を電磁部20に取り付けた状態の断面図である。なお、各図において、FPC32のセンサ取付側端部と反対側に延在する部分は省略されている。
図5(A)~図5(C)に示すように、FPC32は一端部に温度センサ31が取り付けられている。FPC32は、平面視矩形状のセンサ取付部32aを備え、センサ取付部32aの一辺から、幅を狭められた導線部32bが延出するように形成されている。なお、センサ取付部32aの形状は矩形に限定されず、円形、六角形等任意の形状でよいが、矩形であれば加工性の観点から有利である。
FPC32は、薄膜状の絶縁体ベースフィルムに導体金属箔が貼りあわされた構造を有し、端子部や半田づけ部以外を絶縁体で保護したものである。絶縁体としてはポリイミドやポリエステル等が、導体としては銅/銅箔等が用いられる。このようなFPC32は市場で入手可能である。また、これに限定されず、市場で入手可能な任意のフレキシブル基板を採用することができる。
センサ取付部32aの、センサ取付面の背面には、センサ取付部32aの形状と一致する形状の平板状の支持部材33が接着剤で取り付けられている。支持部材33は、例えば金属板である。支持部材33には、支持部材33を貫通する貫通孔34が形成されている。センサ取付部32aにおける、貫通孔34に対応する位置には、貫通孔36が形成されている。支持部材33の大きさがセンサ取付部32aと一致するとは、支持部材33がセンサ取付部32aと完全に同じ大きさであることを必要とするものではなく、センサ取付部32aが、支持部材33の外形よりも若干小さくてもよい。
FPC32のセンサ取付面には、導線部32bから、センサ取付部32aとの境界を超えて、センサ取付部32aの一部を覆うようにシールドフィルム35が設けられている。
シールドフィルム35は、例えば、アルミニウム、銅等導電性の金属を蒸着したポリエステル等の絶縁性プラスチックフィルムであり、表面には、保護のためのハードコートを有していてもよい。これに限らず市場で入手可能な、フレキシブル基板用のシールド技術を任意で用いることが可能である。
図6(A),図6(B)に示すように、ヨーク22の、マグネット21に近接する側の円形状の表面(すなわち、図示の例におけるヨーク22の上面)22aには、支持部材33、すなわちセンサ取付部32a、と篏合する形状を有する位置決め凹部23が形成されている。
位置決め凹部23の底面には、温度検出部30を取り付けたときに前記温度センサ31を収容可能なセンサ用凹部24が形成されている。センサ用凹部24の形状および寸法は、温度センサ31を収容可能であれば、特に限定されない。例えば、平面視で円形状でもよい。しかし、温度センサ31を収容する最低限の寸法、すなわち、取り付けたときにセンサ用凹部24の内面が温度センサ31になるべく近くなるような大きさおよび形状であることが好ましい。また、センサ用凹部24は、直接的にヨーク22の外周面と接することなく、位置決め凹部23の内部に形成されていることが好ましい。
また、前記位置決め凹部23の底面には、温度検出部30を取り付けたときに、貫通孔34および貫通孔36と整合する位置に、その内面に後述するネジ41と螺合する雌ネジが形成されたネジ孔25が形成されている。
温度検出部30は、図4および図7(A),図7(B)に示すように、支持部材33の貫通孔34およびFPC32の貫通孔36を、ヨーク22のネジ孔25とネジ41で螺合することにより、支持部材33が、位置決め凹部23に篏合させた状態で取り付けられている。この結果、センサ取付部32aが、センサ用凹部24を閉塞するようになる。この時、温度センサ31は、センサ用凹部24に収容される。なお、図示において、支持部材33の上面と、ヨーク22の表面とは面一になっているが、面一であることは必須ではなく、支持部材33の上面がヨーク22の表面よりも高くてもよく、低くてもよい。
温度検出部30の取付は以下の様に行う。まず、支持部材33を、温度センサ31がヨーク22の表面(上面)22aに向けた状態で、ヨーク22の位置決め凹部23に篏合させることにより位置決めする。これにより、支持部材33の貫通孔34と、FPC32の貫通孔36と、ヨーク22のネジ孔25とが位置合わせされる。ここに、ネジ41を螺合してネジ止めする。このように、本実施の形態に係る電子天びん1によれば、容易な、かつ短時間の温度検出部30の、電磁部20の取り付けが可能となる。
位置決め凹部23を設けることは、下記の変形例でも説明するように、必須ではない。しかし、位置決め凹部23を設けると、支持部材33を容易に位置決めできるので有利である。また位置決め凹部23があることで、1つのネジ41で固定する本実施形態において、センサ取付部32aおよび支持部材33が、ネジ41を中心に回転するのを防止することが可能となる。
この取付状態において、温度センサ31は、センサ用凹部24の側面および底面とFPC32のセンサ取付部32aとで画成される空間に閉塞される状態となる。
この結果、温度センサ31は外部と隔てられ、外気にさらされず、温度検出値における外気の影響を低減することができる。また温度検出部30(温度センサ31)は、ヨーク22のマグネット21に近い表面に取り付けられるので、ヨーク22の温度は、マグネット21の温度であるとすることができ、マグネット21の温度検出の精度が向上し、したがって、計量値の温度補正の精度が向上する。
なお、支持部材33の素材は、金属に限定されず、例えば、樹脂板等他の材質であってもよい。しかし、金属板を用いると、その熱伝導性から、ヨーク22の熱の影響を受けて、熱結合によりヨーク22と支持部材33の温度がほぼ同じになり、支持部材33と、センサ用凹部24とで画成される空間の雰囲気が、ヨーク22の温度とほぼ同じとなり、ヨーク22、したがってマグネット21の温度を正確に測定することが可能となる。
また、支持部材33に金属板を用いた場合において、例えば、ヨーク22の材質を熱伝導率の高い金属(例えば、アルミニウム(236W/(m・k), 理科年表 第94冊, 国立天文台篇, 丸善出版, 2021,以下同))等、とし、金属板の材質を熱伝導率の低い金属(例えば、SUS304(16W/(m・k)))等とすれば、ヨーク22からの温度が伝わりやすく、外気からの温度が伝わり辛くなり、外気の影響をさらに低減することができるので特に有利である。
次に、このようにして取り付けられた温度検出部30のFPC32の配線について説明する。本実施の形態に係るFPC32は、温度センサ31とA/D変換器40とを接続するが、その際、図3Bに示すように、ヨーク上面から底面に向かい、ロバーバル機構に沿って底面を這うように配置され、同一平面上を通りA/D変換器40に接続されることになる。
このため、従来のケーブルを用いた配線と比較して、空間の障害が少なく、配線の取り回しが整理される。また、従来では、別途のケーブルを必要とした位置センサ18およびフォースコイルを、同じFPC32を用いて接続することが可能となり、部品点数を削減することが可能となる。これにより空間の障害を低減することできるので設計の自由度が増大する。
ところで、電子機器である電子天びんでは、EMC(Electromagnetic・Compatibility:電磁両立性)が要求される。すなわち、電磁的妨害源とならないように、かつ、電磁的な干渉を受けないように、あるいは受けても正常に動作するように設計、製造されていることが求められる。
近年、EMCの規格が厳格化されており、例えば、外部のノイズに対する耐性に係る放射イミュニティの規格は、従来は、電波試験IEC61000-4-3において、試験レベル2(3V/m)であったが、近年、試験レベル3(10V/m)とされている。図17に示す従来の取付方法では、試験レベル3を満たせていないという問題もあった。
一方、実施の形態に係る電子天びん1では、通常の配線コードに代えて、シールドフィルム35で片面シールドしたFPC32が用いられている。電子天びん1を用いて上記電波試験に供したところ、実験の項で記載するように、試験レベル3を満たすことが確認された。したがって、電子天びん1は、従来の電子天びんに比べて、配線を別途シールドするという手間やコストを削減することができる。
また、電子天びん1では、シールドフィルム35は、FPC32の温度センサ取付面に、導線部32bから、センサ取付部32aとの境界を超えて、センサ取付部32aの一部を覆うように設けられている。また、ヨーク22において、センサ用凹部24が、直接的にヨーク22の表面と接することが無いように、位置決め凹部23の内部に形成されている。
このようにすることは必須ではないが、このようにすると、温度検出部30を電磁部20にとりつけた際に、FPC32のシールドされていない部分が外に露出しないので、より確実に、ノイズの影響を受けるのを防ぐことが可能である。
また、上記実施の形態において、支持部材33が金属板である場合には、支持部材33においても、電磁波が遮蔽されるため、ノイズの影響はさらに低減される。この目的において、支持部材33が樹脂板である場合には、表面に金属を蒸着したものを用いてもよい。
変形例1
図8(A)は、実施の形態の1つの変形例に係る電子天びん1Aの温度検出部30の電磁部20への取付状態を示す拡大図である。電子天びん1Aでは、電磁部20は、電子天びん1の電磁部20と同一の構成を備えるが、センサ用凹部24の底部に熱伝導性の高い樹脂からなる熱伝導性樹脂シート26を備える。
熱伝導性の高い熱伝導性樹脂シート26としては、例えば、シリコーンゲルおよび熱伝導フィラーを含み、例えば、熱線法で1W/(m・K)以上の熱伝導率を有する樹脂シートであることが好ましい。このような熱伝導性樹脂シートは市場で入手することが可能である。
このようにすることで、ヨーク22の熱が温度センサ31により伝達しやすくなり、ヨーク22、したがってマグネット21の温度を、より正確に測定することが可能となる。また、熱伝導性樹脂シート26は、温度検出部30を電磁部20に取り付けたときに、温度センサ31が当接するようになっていると、熱の伝達効率が良いので好ましい。
なお、本変形例において、熱伝導性樹脂シート26に代えて、センサ用凹部に液体の熱伝導性樹脂を流し入れ、硬化させて用いても同等の効果を奏することが可能である。しかし、製造工程の簡易化の観点から熱伝導性樹脂シートを用いることが有利である。
変形例2
図8(B)は、変形例2に係る電子天びん1Bの温度検出部30Aの電磁部20への取付状態を示す拡大図である。電子天びん1Bでは、温度検出部30Aは、温度検出部30と概略的に同じ構成を備えるが、支持部材33を備えない。また、FPC32の温度センサ取付面と反対側面に、シールドフィルム35と同等のシールドフィルム37を備える。すなわち、FPC32は両面がシールドされている。このように支持部材33は必須ではなく、これに代えてシールドフィルム37を備えてもよい。
このように、支持部材33を備えなくても、温度センサ31はセンサ用凹部24と、センサ取付部32aとで画成される空間に格納されるので、外気の影響を受けにくくなり、マグネット21の温度の、確度の高い測定が可能となる。
また、本変形例において、電子天びん1と同様に、シールドフィルム37を備えない場合においても、上記効果を奏することが可能である。しかし、FPC32の両面にシールドフィルム35,37を両方取り付けると、ノイズの影響を低減することができるので有利である。
変形例3
図9(A)は、変形例3に係る電子天びん1Cの、電磁部20Aと温度検出部30の取付状態を示す断面図であり、図9(B)は同平面図である。電子天びん1Cでは、電磁部20Aは電磁部20と概略同じ構成を有するが、ヨーク22Aには、位置決め凹部23は設けられておらず、センサ用凹部24Aのみが設けられている。位置決め凹部23を備えなくても、FPC32のセンサ取付部32aに温度センサ31が取り付けられていることで、温度センサ31をセンサ用凹部24Aに収容されるように位置決めして、ネジ止めするだけで容易に取り付けることが可能である。また、温度センサ31はセンサ用凹部24Aとセンサ取付部32aで閉塞される空間に収容されることになるので電子天びん1と同等に、マグネット21の温度検出の精度が向上させるという効果を奏することが可能となる。
変形例4
図10(A)は、変形例4に係る電子天びん1Dの、電磁部20Aと温度検出部30Bの取付状態を示す断面図であり、図10(B)は同平面図である。電子天びん1Dでは、電磁部20Aは、電子天びん1Cの電磁部20Aと同じ構成を有する。一方、温度検出部30Bは、温度検出部30と概略同じ構成を有するが、以下の点で異なる。温度検出部30Bは、センサ取付部32Aaの背面に支持部材33を備えず、導線部32Abまで延在する、シールドフィルム37を有する。また、センサ取付部32Aaはヨーク22Aの表面に、センサ用凹部24Aの周囲を囲むように配置された接着剤44で取り付けられている。取付手段として、接着剤44に代えて、両面テープや面ファスナーを用いてもよい。このように、支持部材を設けない場合でも、温度センサ31は、センサ用凹部24Aとセンサ取付部32Aaとで閉塞された空間に収容されることになり、実施の形態と同等の効果を奏することができる。この接着剤による取付の変形は、本実施形態の全ての変形例に適用することが可能である。
変形例5
図11(A)は、変形例5に係る電子天びん1Eの、電磁部20Bと温度検出部30Cの取付状態を示す断面図であり、図11(B)は同平面図、図11(C)は、図11(B)の矢印C方向から見た同側面図である。電子天びん1Eでは、電磁部20Bは、電磁部20Aと概略同じ構成を有し、温度検出部30Cは、温度検出部30と概略同じ構成を有するが、以下の点で異なる。すなわち、FPC32Bと支持部材33Aはネジ孔を備えず、矢印Cを正面としたときの、支持部材33Aの両側面にはレール状の溝43bが形成されている。センサ用凹部24Bは、ヨーク22Bの側面まで連続するように形成されている。位置決め凹部23Aの内部両側面には、溝43bと整合するレール状の突条43aが形成されている。
支持部材33A(すなわち、センサ取付部32Ba)は、位置決め凹部23Aに突条43aと溝43bが嵌合するように取り付けられる。そして、FPC32Bと位置決め凹部23Aとの間の開口はヨーク22Bの側面に沿って貼り付けられる金属テープ45で閉塞されている。金属テープ45は、好ましくは銅テープである。本変形例では、センサ取付部32Ba(および支持部材33A)でセンサ用凹部24Bを閉塞する際に、その一部を金属テープで閉塞することにした。このようにしても、容易に取り付けることができ、実施の形態に係る電子天びん1と同等の効果を奏することができる。この嵌め殺しによる取付の変形は、本実施形態の全ての変形例に適用することが可能である。
変形例6,7
図12(A)は、変形例6に係る電子天びん1Fに係る電磁部20Cと温度検出部30との取付状態を示す平面図である。図12(B)は、変形例7に係る電子天びん1Gの、電磁部20Dと温度検出部30との取付状態を示す平面図である。電子天びん1F,1Gでは、電磁部20C,20Dは、電磁部20と概略同じ構成を有するが、ヨーク22C、22Dが、それぞれ、内部に円柱形の空洞を有し上面を有する四角柱、内部に円柱形の空洞を有し上面を有する八角柱である点で異なる。しかし、このようにヨーク22C,22Dの形状に関わらず、温度検出部30の取付位置がマグネット21に近い位置にあれば、同等の効果を奏することが可能である。このような変形は、本実施形態の全ての他の変形例に適用することが可能である。
変形例8
図13(A)は、変形例8に係る電子天びん1Hの、温度検出部30の電磁部20Eへの取付状態を示す平面図であり、図10(B)は、同正面図である。電磁部20Eは電磁部20Cと概略同様の構成、すなわち、内部に円柱状の空洞を有し上面を有する四角柱であるが、温度検出部30の取付位置が、ヨーク22Eの上面ではなく、正面(側面)である点で異なる、また、その取付位置は、ヨーク22Eの正面の上部である。このように、温度検出部30の取付位置を異ならしめた場合であっても、取付位置がマグネット21の近傍であれば、実施の形態に係る電子天びん1と同等の効果を奏することが可能となる。このような変形は、本実施形態の全ての他の変形例に適用することが可能である。
変形例9
図14(A)は、変形例9に係る電子天びん1Iの、温度検出部30Dの電磁部20Fへの取付状態を示す平面図であり、図14(B)は、同正面図である。温度検出部30Dは温度検出部30と概略同様の構成を有するが、支持部材33D(すなわち、センサ取付部)の形状および寸法、と取付手段である貫通孔の数および配置が異なる。また、電磁部20Fは電磁部20Cと概略同様の構成を有するが、位置決め凹部23C、センサ用凹部24Bの位置および寸法が異なる。この結果、温度検出部30Dの取付位置と、向きが異なる。しかし、この場合にもヨーク22Fにおけるマグネット21の近傍に取り付けられているので、実施の形態に係る電子天びん1と同等の効果を奏することが可能である。このような変形は、本実施形態の全ての他の変形例に適用することが可能である。
変形例10
図15は、変形例10に係る電子天びん1Jの、電磁部20Gと温度検出部30Dの取付状態を示す断面図であり、電子天びん1Jにおいて、センサ用凹部24Eはヨーク22Gの側面に設けられている。本変形例においては、FPC32Cのうち、センサ取付部32Caを、フレキシブル基板とリジッド基板とを一体化させたフレックスリジッド基板で構成することが好ましい。あるいは、FPC32Cの、センサ取付部32Caの、ポリイミド膜厚を大とすることで、強度を確保することが好ましい。また、センサ取付部32Caに図示しない支持部材を備えていてもよい。センサ用凹部24Eの最深部内壁の上部には、センサ取付部32Caと嵌合する凹部27が設けられている。センサ取付部32Caは先端を27に差し込んで、嵌め殺し状態で固定されている。センサ用凹部24Cの側面開口は、金属テープ(銅テープ)45で閉塞されている。この場合にも変形例1~9と同様に、温度センサ31は、センサ用凹部24Eの内壁、センサ取付部32Ca,および金属テープ45で画成される空間に閉塞されており、外気と遮断されている。また、取り付けには、センサ取付部32Caの先端を差し込み、金属テープ45で閉塞するだけなので、実施の形態に係る電子天びん1と同等の効果を奏することが可能である。
[実験]
図16は、実施の形態の電子天びん1を用いて、電波試験IEC61000-4-3に供した結果を示す。実験は、試験設置は0.8m高さの非伝導テーブルに載せ、天びんから配線できるケーブルの一部(1m)を10V/mの境界線に這わせて行った。図16(A)は、水平方向に周波数を1%スイープ照射をしたときの計量値の変動であり、図16(B)は、垂直方向に周波数を1%スイープ照射をしたときの計量値の変動である。図中太線で示す±10dig,すなわち0.1が、天びんにおける許容範囲である。これにより、本実施の形態に係る電子天びんにおいて、EMCの要求が満たされていることわかった。
以上、本発明の好ましい実施の形態および変形例を述べたが、これらを当業者の知識に基いて改変および組み合わせることは可能であり、そのような形態も本発明の範囲に含まれる。
20,20A,20B,20C,20D,20E,20F,20G :電磁部
21 :マグネット
22,22A,22B,22C,22D,22E,22F,22G :ヨーク
23,23A,23C, :位置決め凹部
24,24A,24B,24C,24D,24E :センサ用凹部
25 :ネジ孔
26 :熱伝導性樹脂シート
31 :温度センサ
32 :フレキシブル基板(FPC)
32a,32Aa,32Ba,32Ca :センサ取付部
32b :導線部
33,33A,33B,33C,33D :支持部材
34 :貫通孔
36 :貫通孔
40 :A/D変換器
41 :ネジ
45 :金属テープ

Claims (8)

  1. 内部にマグネットを配置したヨークを有し、前記マグネットの磁界中に配置されたコイルに電流を供給して被計量物の荷重と平衡させる電磁部と、
    前記電磁部の温度を検出する温度センサと、
    前記電磁部と前記温度センサに接続されるA/D変換部とを備え、
    前記温度センサは、前記温度センサを取り付けるセンサ取付部と、前記温度センサを前記A/D変換部に接続する導線部とを有するフレキシブル基板に取り付けられ、
    前記ヨークの表面には、前記温度センサを収容可能なセンサ用凹部が形成され、
    前記温度センサは、前記温度センサが前記センサ用凹部に収容され、前記センサ取付部が前記センサ用凹部を閉塞するように、前記電磁部に取り付けられていることを特徴とする電子天びん。
  2. 前記ヨークの表面に、前記センサ取付部と篏合する形状の位置決め凹部が形成され、
    前記センサ用凹部は、前記位置決め凹部の底面に形成され、
    前記温度センサは、前記温度センサが前記センサ用凹部に収容され、前記センサ取付部が前記位置決め凹部に篏合するように、取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の電子天びん。
  3. 前記フレキシブル基板は、少なくとも片面がシールドされていることを特徴とする請求項1または2に記載の電子天びん。
  4. 前記センサ取付部は、前記センサ取付部の形状と一致する平板状の支持部材に支持されていることを特徴とする請求項1または2に記載の電子天びん。
  5. 前記支持部材は、金属板であることを特徴とする請求項4に記載の電子天びん。
  6. 前記センサ用凹部の底面と、前記温度センサとの間に、熱伝導性樹脂シートを備えることを特徴とする請求項1または2に記載の電子天びん。
  7. 前記フレキシブル基板は、前記ヨークに、
    前記位置決め凹部の底面に形成されたネジ孔と、
    前記センサ取付部に設けられた孔とをネジで螺合することによる
    ネジ止めで取り付けられていることを特徴とする請求項2に記載の電子天びん。
  8. 内部にマグネットを配置したヨークを有し、前記マグネットの磁界中に配置されたコイルに電流を供給して被計量物の荷重と平衡させる電磁部と、
    前記電磁部の温度を検出する温度センサと、
    前記電磁部と前記温度センサに接続されるA/D変換部とを備え、
    前記温度センサは、前記温度センサを取り付けるセンサ取付部と、前記温度センサを前記A/D変換部に接続する導線部とを有するフレキシブル基板に取り付けられ、
    前記ヨークの表面には、前記温度センサを収容可能なセンサ用凹部が形成され、
    前記温度センサは、前記温度センサが前記センサ用凹部に収容され、前記センサ取付部と、金属テープとで、前記センサ用凹部を閉塞するように、前記電磁部に取り付けられていることを特徴とする電子天びん。
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