JP7222977B2 - アクリル酸-n-ブチルエステルまたはアクリル酸イソブチルエステルの連続的製造方法 - Google Patents

アクリル酸-n-ブチルエステルまたはアクリル酸イソブチルエステルの連続的製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、アクリル酸ブチルエステルHC=CH-C(=O)OR(式中、R=n-ブチルまたはイソブチル)の連続的製造法に関する。
3-ヒドロキシプロピオン酸からアクリル酸アルキルエステルを製造する方法が公知である。原則的には、3-ヒドロキシプロピオン酸をまず第1ステップにおいてアルコールでエステル化してから、続くステップにおいて、結果として生じる3-ヒドロキシプロピオン酸エステルを対応するアクリル酸アルキルエステルへと脱水することができる。代案として、3-ヒドロキシプロピオン酸を、まず第1ステップで脱水してから、続くステップにおいて、結果として生じたアクリル酸をアルコールでエステル化することもできる。
国際公開第2003/082795号(Cargill,Inc.)は、例13(14ページ)において、水性3-ヒドロキシプロピオン酸およびn-ブタノール(触媒:HSO)を起点とした、n-ブチルアクリレートのワンポット合成を記載する。この方法は、3段階で行われ、つまり、まず水を完全に分留してから、蒸留装置内でn-ブタノールを分離し、最終的には温度および圧力を下げた後に、残渣から生成物のn-ブチルアクリレートを分留する。
収率は37%でしかない。
国際公開第2015/036218号(BASF SE)は、水性3-ヒドロキシプロピオン酸をアクリル酸へと脱水する方法を記載する。
アクリル酸の、アルコールによるエステル化は、特に、独国特許出願公開第19604267号明細書(BASF AG)または欧州特許出願公開第765859号明細書(BASF AG)に記載される方法によって行うことができる。
独国特許出願公開第19604267号明細書は、(メタ)アクリル酸のアルキルエステルの連続的製造方法を開示し、ただし、そのプロセスは、2つの相互連結された精留ユニット内で行われる。
欧州特許出願公開第765859号明細書は、反応ゾーンが少なくとも2つの直列に接続された反応領域のカスケードからなる、アクリル酸アルキルエステルの連続的製造方法を教示する。
欧州特許第1182189号明細書(Rohm and Haas Company)は、エステル化反応混合物からn-ブチルアクリレートを連続的に回収する方法に関する。
国際公開第2012/071158号(Rohm and Haas Company)は、蒸発した反応器内容物を直接に塔へと案内する、C1~4-アルキル(メタ)アクリレート用の特殊な蒸留方法を記載する。
3-ヒドロキシプロピオン酸の可能な一製造方法は、発酵により、グルコースを経由し、ただし、そのグルコースは、再生可能資源、例えばトウモロコシから獲得される。発酵による3-ヒドロキシプロピオン酸の製造は、例えば、国際公開第2012/074818号(Novozymes,Inc.)に記載される。
本発明の課題は、従来技術の不利点を克服しつつ、アクリル酸-n-ブチルエステルおよびアクリル酸イソブチルエステルの改善された経済的な製造方法を提供することであった。さらに、その製造方法は、特に簡単に実現および実施でき、さらに特に経済的である。
それに応じて、精留塔を備えた反応器中で水性3-ヒドロキシプロピオン酸を、対応するブタノールR-OHの存在下、脱水およびエステル化条件下で変換し、形成されたアクリル酸ブチルエステル、未変換ブタノール、ならびに使用および形成された水を3成分共沸混合物として塔頂から分留し、それぞれ液状の水性相および有機相へと分離した後、その水性相および有機相をそれぞれ少なくとも部分的に排出し、アクリル酸ブチルエステルおよびブタノールを含有する有機相を蒸留により分離することを特徴とする、アクリル酸アルキルエステルHC=CH-C(=O)OR(式中、R=n-ブチルまたはイソブチル)の連続的製造方法が見出された。
本発明の方法を用いると、中でも次の利点が達成されることが、本発明により認められた:
3-ヒドロキシプロピオン酸の使用により、ほぼアセテートフリーのアクリル酸ブチルエステルを製造できる。「アセテート」とは、ここでは、n-ブチルアセテートないしはイソブチルアセテート[HC-C(=O)-OR]と理解される。
(続くエステル化用の中間体である)アクリル酸を製造するための従来の設備では、形成されるアクリル酸に加えて反応時に同じく生じる酢酸を、続く、アルコールとのエステル化の際にアセテート形成が起こらないように手間をかけて分離する必要がある。
さらに、特別な一形態では、制御概念の改善(下記を参照)を介して、より少ないエネルギー消費およびさらに改善された品質(特に、純度)において、アクリル酸ブチルエステルのさらに高い収率が生み出される。
その上、特別な形態では、特別な開始戦略(下記を参照)および/または特別な安定化概念(下記を参照)により、さらに高まった収率および/または生成物純度が達成される。
方法の好ましい一変形形態では、使用する3-ヒドロキシプロピオン酸がバイオベースの3-ヒドロキシプロピオン酸である。
「バイオベースの3-ヒドロキシプロピオン酸」とは、再生可能資源を起点に製造されたようなものと理解される。
さらに、バイオベースの3-ヒドロキシプロピオン酸が、発酵によって、特に、グルコース、キシロース、アラビノース、スクロース、フルクトース、セルロース、グルコースオリゴマーおよび/またはグリセリンから発酵により、特に続く精製を伴って製造されていることが好ましい。例えば、国際公開第2012/074818号(Novozymes,Inc.)から、糖、例えばグルコースからの発酵、および続く精製による、バイオベースの3-ヒドロキシプロピオン酸(略してバイオ-3-ヒドロキシプロピオン酸、さらに略して、バイオ-HPS)の製造が公知である。
そのように生成された水性バイオ-3-ヒドロキシプロピオン酸は、例えば、水の他に、本質的には次の成分を含有する:
35~70重量%の3-ヒドロキシプロピオン酸、
0~20重量%の3-ヒドロキシプロピオン酸オリゴマー、
0~10重量%のアクリル酸、
0~1重量%のアクリル酸オリゴマー、
0.01~0.1重量%のグリコール酸、
0.01~0.1重量%の2-ヒドロキシプロピオン酸、
0.005~0.05重量%のギ酸、
0~0.15重量%、特に0.0~0.05重量%、例えば0.005~0.10重量%の酢酸、
0.005~0.05重量%のコハク酸、
0.005~0.05重量%のフマル酸、
0.0001~0.01重量%のホルムアルデヒド、
0.0001~0.01重量%のアセトアルデヒド、
0.0001~0.01重量%のメタノール、および
0.0001~0.01重量%のエタノール。
好ましくは、ブタノールR-OHの、3-ヒドロキシプロピオン酸に対する使用モル比が≧1であり、かつさらに好ましくは5未満である。特に有利には、ブタノールR-OHの、3-ヒドロキシプロピオン酸に対する使用モル比が、1:1~3:1の範囲にある。とりわけ好ましくは使用モル比が、1.1:1~1.8:1の範囲にある。
脱水と同時にエステル化する条件は、好ましくは、酸の触媒活性量が存在することを特徴とする。本発明の有利な一構成によると、反応器中での触媒活性酸の含有量が、その中に含有されている反応混合物に対して0.1~20重量%、特に5~15重量%、さらに特に7~10重量%である。好ましい酸は、鉱酸、例えば、硫酸、リン酸、ならびに有機スルホン酸である。有機スルホン酸の中では、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、および/またはp-トルエンスルホン酸が好ましい。有機スルホン酸と鉱酸、例えば硫酸とからなる混合物も使用できる。特に好ましいのは、脱水エステル化触媒(Veresterungs- und Dehydratisierungskatalysator)として硫酸および/または有機スルホン酸を使用することである。
反応物、つまり原料である3-ヒドロキシプロピオン酸およびブタノールR-OHの、反応器中での変換は、好ましくは、80~170℃の範囲、特に100~155℃の範囲、さらに特に120~140℃の範囲の温度で行う。
反応物、つまり原料である3-ヒドロキシプロピオン酸およびブタノールR-OHの反応器中での滞留時間は、好ましくは1~20、さらに好ましくは2~8時間である。滞留時間とは、塔底液抜出し量(4)が、反応容器(1)の液体体積中に滞留する時間と理解される。
最も簡単な場合では、精留塔(6)を反応容器(1)(反応容器=反応器)上に直接に載せ、ただし通常は、反応容器から上昇する蒸気(5)を、精留塔へと案内される向流中の還流量(13;15)へと案内する。
直接載せた塔は、反応器(1)中で生じる蒸気(5)を付加的な配管系なしに直接に精留塔(6)へと、かつ塔内で流出する液体(7)を反応器(1)へと直接に運搬するという利点を提供する。
しかしながら、蒸気を塔へと供給するため、ならびに精留塔を通って流れる液体を反応容器へと流出させるための適切な配管系を備えた、反応容器(1)および精留塔(6)の別々の構成も可能である。そのような、間接的に載せた塔を伴う一実施形態も、用語「精留塔を備えた反応器」に含まれる。
精留塔(6)は、それ自身公知の構造であり、かつ通常の内部品を有する。塔内部品として、原則的にすべての慣用内部品、例えば、トレイ、規則充填物および/または不規則充填物が考慮に値する。トレイの中では、バブルキャップトレイ、シーブトレイ、バルブトレイ、Thormannトレイおよび/またはデュアルフロートレイが好ましく、不規則充填物の中では、リング、コイル、サドル体、ラシヒリング、Intosリングもしくはポールリング、ベルルサドルもしくはインタロックスサドル、または網状物を有するようなものが好ましい。特に好ましいのはデュアルフロートレイである。精留塔内のそのような内部品の有効性は、好ましくは少なくとも5つの理論段、例えば、6~40の理論段の範囲に相当する。特に好ましくは、10~30理論段の分離性能を想定する。
本発明による方法では、精留塔(6)の塔頂圧が、好ましくは0.2~5.0バールの範囲、特に0.3~3.0バールの範囲、さらに特に0.5~1.2バールの範囲にある。
好ましくは、相分離器を利用して水性相および有機相への分離を行う。そのような装置中では、2つの互いに均質には混和できない液体を、それらの密度差によって分離できる。生じる、水の他にさらにブタノールR-OHおよび場合によっては微量でさらなる成分も含有する水性相の少なくとも一部を排出する。特に好ましくは、生じる水性相の10~80重量%、さらに特に20~70重量%を排出する。残りはそれぞれ、好ましくは精留塔(6)へと返送する。
好ましくは、生じる有機相の一部も同じく、好ましくは精留塔へと返送する。特に、有機相の0~80重量%、例えば、1~75重量%、さらに特に5~50重量%を好ましくは精留塔へと返送する。別の部分は排出し、蒸留による分離へと供給する。
排出された、アクリル酸ブチルエステルおよびブタノール(R-OH)を含有する有機相の蒸留による分離を、好ましくは、後続の精留塔内でブタノールが塔頂から分離されるという様式で行う(例えば、欧州特許出願公開第765859号明細書(BASF AG)に記載)。好ましくは、そのように分離されたブタノールを反応器へと返送する(下記を参照)。目的に合わせて、返送を連続的に行い、中間容器を伴っても伴わなくてもよい。
結果として生じる、その精留塔の塔底液は、本質的には、アクリル酸ブチルエステルならびに小量の高沸点物および使用した安定剤からなる(例えば、いわゆるプロセス安定剤、例えば、特にフェノチアジン(PTZ))。
もう1つの後続の精留塔において、アクリル酸ブチルエステルを通常は塔頂から分離する。凝縮の際に、好ましくは安定剤(いわゆる貯蔵安定剤、例えば、特にMeHQ)を添加する。その精留塔の、より高沸点の副産物を含有する塔底液を、目的に合わせて、好ましくは反応器へと好ましくは連続的に返送し、中間容器を伴っても伴わなくてもよい。
特別な一実施形態(同じく欧州特許出願公開第765859号明細書(BASF AG)に記載)の本質は、ブタノールを回収するために、側部抜出し部(Seitenabzug)を介して、場合によっては随伴した液滴の分離後に、アクリル酸ブチルエステルを精留塔から取り出し、純エステルへと凝縮することにある。凝縮の際に、そのアクリル酸ブチルエステルに安定剤(いわゆる貯蔵安定剤、例えば、特にp-メトキシフェノール(MeHQ))を添加する。この実施形態の場合、ブタノール精留塔の塔底排出液(主にアクリル酸ブチルエステルからなる)を好ましくは反応器へと返送する。
分離後に得られたブタノールは、特に有利には、変換するために少なくとも部分的に反応器へと返送する。好ましくはアルコールの5~100重量%、さらに好ましくは80~100重量%を返送する。
本発明による方法は、特に好ましくは、アクリル酸-n-ブチルエステルを製造するために使用し、ただし、水性、特にバイオベースの3-ヒドロキシプロピオン酸を、アルコールn-ブタノールの存在下に変換する。
本発明による方法を用いると、特に≧99.0重量%、さらに特に≧99.5重量%の純度、かつn-ブチルアセテートの≦1000ppm、さらに特に≦100ppmという含有量を有するアクリル酸-n-ブチルエステルを製造できる。特に、アクリル酸の含有量は、<100ppm、例えば、5~80ppmである。
本発明による方法を用いると、特に≧99.0重量%、さらに特に≧99.5重量%の純度、かつイソブチルアセテートの≦1000ppm、さらに特に≦100ppmという含有量を有するアクリル酸イソブチルエステルを製造できる。特に、アクリル酸の含有量は、<100ppm、例えば、5~80ppmである。
本発明による方法では、望ましくない重合を回避するために、好ましくは適切な重合禁止剤により、形成されたアクリル酸ブチルエステルを安定化する。つまり、本発明による方法は、好ましくは1つまたは複数の安定剤の有効量の存在下に行う。安定剤として適切であるのは、アクリル酸およびアクリル酸エステルを安定化するために、例えば、独国特許出願公開第102005053982号明細書(BASF AG)および独国特許出願公開第10258329号明細書(BASF AG)中で推奨される原則的にすべての重合禁止剤である。
適切な安定剤は、例えば、N-オキシド(ニトロキシルラジカルまたはN-オキシルラジカル、つまり少なくとも1つの>N-O基を有する化合物)、例えば、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピぺリジン-N-オキシル(4HT)または4-オキソ-2,2,6,6-テトラメチルピぺリジン-N-オキシル、フェノールおよびナフトール、例えば、p-メトキシフェノール、p-アミノフェノール、p-ニトロソフェノール、2-tert.-ブチルフェノール、4-tert.-ブチルフェノール、2,4-Di-tert.-ブチルフェノール、2-メチル-4-tert.-ブチルフェノール、2,6-tert.-ブチル-4-メチルフェノールまたは4-tert.-ブチル-2,6-ジメチルフェノール、キノン、例えば、ヒドロキノンまたはヒドロキノンモノメチルエーテル、芳香族アミン、例えば、N,N-ジフェニルアミン、フェニレンジアミン、例えば、N,N’-ジアルキル-p-フェニレンジアミン(ただし、アルキル残基は、同一または異なっていてもよく、それぞれ互いに独立して1~4個の炭素原子を有し、直鎖状または分岐状であってもよい)、例えば、N,N’-ジメチル-p-フェニレンジアミンまたはN,N’-ジエチル-p-フェニレンジアミン、ヒドロキシルアミン、例えば、N,N-ジエチルヒドロキシルアミン、イミン、例えば、メチルエチルイミン、またはメチレンバイオレット、スルホンアミド、例えば、N-メチル-4-トルエンスルホンアミドまたはN-tert.-ブチル-4-トルエンスルホンアミド、オキシム、例えば、アルドキシム、ケトキシムまたはアミドキシム、例えば、ジエチルケトキシム、メチルエチルケトキシムまたはサリチルアドキシム(Salicyladoxim)、リン含有化合物、例えば、トリフェニルホスフィン、亜リン酸トリフェニルまたは亜リン酸トリエチル、イオウ含有化合物、例えば、ジフェニルスルフィドまたはフェノチアジン、金属塩、例えば、酢酸セリウム(III)またはエチルヘキサン酸セリウム(III)、さらには様々な銅塩、例えば、ジアルキルジチオカルバミン酸銅(II)、例えば、ジブチルジチオカルバミン酸銅(II)、さらには銅(II)オキシネート(オキシン=4-ヒドロキシキノリン)、さらにはマンガン塩、例えば、酢酸マンガン(II)またはそれらの混合物が可能である。
好ましくは、フェノチアジン(PTZ)、p-メトキシフェノール(MeHQ)、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピぺリジン-N-オキシル、4-オキソ-2,2,6,6-テトラメチルピぺリジン-N-オキシル、2,6-tert.-ブチル-4-メチルフェノール、またはそれらの混合物を用いて安定化を行う。
とりわけ好ましくは、フェノチアジン(PTZ)および/またはp-メトキシフェノール(MeHQ)および/または4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピぺリジン-N-オキシル(4-HT)を重合禁止剤として使用する。
禁止剤を純物質として添加することも可能であるが、禁止剤を溶媒中に溶解して簡単かつ再現性をもって計量できる溶液として添加することが有利であり、ただし、基本的には、単一溶液中の禁止剤混合物も可能である。好ましくは、アクリレート合成法中ないしは塔内の物質混合物中にすでに存在する液体を溶媒として使用する。アクリレート生成物(つまり、アクリル酸ブチルエステル)そのもの、水、またはアクリレート用の合成原料の1つ(例えば、ブタノールR-OH)が、溶媒としての選択に特に好ましい。
本発明による方法は、有利には、特定パラメータを制御するための特別な措置を用いて行う。このプロセス制御は、好ましくは次のように行う。
仕様どおりのアクリル酸ブチルエステル、つまり高純度生成物の製造には、精留塔(6)内でアクリル酸ブチルエステルからアクリル酸を分離することが決定的に重要である。
その際、有機還流(13)と水性還流(15)との間で一定の比率を調整することが有利であると分かった。流量13の、流量15に対するその還流比は、好ましくは0.1~1.0の範囲にある。
さらに、変換にとって決定的な、塔の塔底(1)(または間接的に載せた塔の場合は独自の反応容器)中の反応体積が、好ましくは一定またはほぼ一定(+/-10体積%)に維持される。それは、反応容器中の液位が一定またはほぼ一定(+/-10体積%)の場合に、一定またはほぼ一定(+/-10体積%)の液体流(4)を反応体積(1)から排出することによって達成できる。その上、好ましくは、塔底液抜出し量(4)が、流入量(3)に対してある特定の比率にある、好ましくは流量4の、流量3に対する比率が、0.01~0.30の範囲にある。
第2の措置は、有機蒸留物(14)中のアクリル酸含有量に関する品質管理である。反応空間(1)中の液体体積は、水性還流量(15)に対して著しく反応するため、好ましくは水性相の還流量(=返送量)(15)を利用して反応器(1)中の液位を制御する。水性還流は、高沸点物であるn-ブチルアクリレートないしはイソブチルアクリレート、および対応するブタノール(R-OH)が、低沸点共沸混合物の形成に基づいて分留可能であることを確保する。有機還流は、反応器(1)中で生成したアクリル酸の濃度が、特に100ppm未満の濃度にとどまることを確保する。
有機還流(13)量の制御により、複数の効果を組み合わせることができる。つまり、蒸留による精製、反応空間内での滞留時間の延長、反応空間(1)内のブタノール(R-OH)濃度の上昇。
この制御戦略は、反応容器(1)内および精留塔(6)内での特に安定した動作をもたらす。
好ましい一実施形態(図2を参照)では、本発明による方法の精留塔(6)中に、有効分率で水性相にも有機相にも溶解する少なくとも1つの安定剤(安定剤1)が存在する。特に、そのような安定剤、特に4HTを、塔(6)の理論最上段の上側に添加する(17)。それにより、精留塔(6)全体が安定剤で安定化される。
さらに(図2を参照)、本発明による方法では、有効分率で水性相にも有機相にも溶解する少なくとも1つの安定剤を、凝縮物(11)を捕集する相分離器(12)(18)および/またはクエンチ回路(19)の配管および/または凝縮器(9)の頂部に添加する。この安定剤は、好ましくは安定剤1(特に4HT)と同じである。好ましく設置されるクエンチ回路(つまり、凝縮器(9)への、凝縮物の一部、例えば、凝縮物の重量で100分の10~50の液状返送流)は、当然のことながら安定剤を含まない蒸気(8)が、凝縮器(9)内での凝縮時に特に十分に安定化されるという機能を有する。それぞれの相内の溶液中に存在する安定剤有効量は、全体として特に≧10重量ppm、例えば、10~1000重量ppmの範囲にある。該当して使用する安定剤が、それぞれの液相中で完全には溶解しない場合、その安定剤は相応に懸濁状態で存在する。安定剤が懸濁液として液相中に存在する場合、その、アプリオリにはほとんど有効でないか、または有効でない粒状安定剤画分は、安定剤デポとしてのその作用により利点を提供し得るが、なぜなら、例えば、溶解した安定剤が化学分解されることでその有効性が低下すると、さらなる、その場合は新鮮に有効な安定剤が、懸濁画分から付加的に溶液に移行するからであり、それは、液相を適切に完全接触させると相包括的にも起こり得て、かつ粒子のサイズ分布により左右され得る。安定剤は、それぞれ、特に溶液として、適切な溶媒中、特に前記のように、例えば、本方法において使用するアルコール、水、対応するアクリル酸ブチルエステル中で、例えば、それぞれ1~5重量%の溶液として使用できる(例えば、配管17ないしは18を経由、図2)。
反応容器(1)には、有利には、安定剤2(20)、特に、より高温に対して適切なPTZ、およびその、より高い蒸気圧ゆえ、さらには反応空間と塔下部との間の移行領域も安定化する安定剤3(20)(特にMeHQ)を添加する。
安定剤2および3は、それぞれ特に溶液として、適切な溶媒中、特に前記のように、例えば、本方法において相応に形成されるアクリル酸ブチルエステルまたは使用する原料3HPAもしくはブタノール(R-OH)中で使用できる(例えば、配管20を経由、図2)。
有利には、本発明による方法において、重合を禁止するために、付加的に酸素含有ガスを使用する。そのために特に適切であるのは、例えば、4~9体積%の酸素含有量を有する空気/窒素混合物である。
重合を禁止するために酸素含有ガスを使用する場合、好ましくは、蒸発器(2)の下端部または反応空間(1)の下端部で供給する(図2中の21を参照)。
反応容器(1)内での変換および塔(6)内での蒸留を含む本発明による方法の開始は、問題を抱えるかもしれないが、なぜなら、特に、両方の流れ13および15の還流量の変化が、システム全体に対して著しく異なる影響を及ぼすからである。
水性還流(15)量の変化は、形成される蒸気量に対して比較的迅速に作用し、有機還流(13)量の変化は、塔の頂部でのアクリル酸濃度に対して比較的ゆっくりと作用する。しかしながら、両方の還流量は、互いに独立ではない。本発明によると、正確な還流量が互いに良好に調整されていないと、蒸発が停止しかねないか、または塔(6)が、過度の蒸気量ゆえにあふれてしまう。その場合、システムを再び正常運転状態にするのが非常に難しい。
したがって、有利には、開始時に容器1(反応器)をまず、アクリル酸ブチルエステル、特に、先行する製造段階(Produktionskampagne)に由来する塔底生成物を含有する対応する反応混合物の適切な量、または対応するアクリル酸ブチルエステルの適切な量で満たす。次いで、塔底液を動作温度(反応温度)へと加熱し、3HPA、ブタノール、および触媒からなる流入を開始する。
すべての圧力データは、絶対圧力に関する。
すべてのppmデータは、重量に関する。
アクリル酸アルキルエステルおよびアルコールを含有する混合物を獲得するまでの本発明による方法に関する一例示的実施形態を示す。 アクリル酸アルキルエステルおよびアルコールを含有する混合物を獲得するまでの本発明による方法に関する好ましい一実施形態を示す。
実施例
例1a
図1は、反応容器1(=反応器)、分離効果のある内部品を備えた精留塔(6)を示す。供給管3を介して、水性3-ヒドロキシプロピオン酸(3HPA)およびブタノール(R-OH)ならびにエステル化触媒であるp-トルエンスルホン酸からなる混合物を供給する。ガス状反応生成物を、反応器1の頂部から、配管5を介して精留塔6に供給する。反応器1の下部に配置された配管4は、残った残渣の処分に利用する。
反応ゾーンから連続的に精留塔6へと流入する蒸気混合物を、そこで精留し、かつその精留塔6の頂部から配管8を介して流出しつつ、形成される標的エステルを含有する、主にアクリレート、アルコール、および水からなる水性共沸混合物を、場合によってはアフタークーラによって補足される凝縮器9に供給し、その中で部分的に凝縮する。凝縮器9に由来する未凝縮画分は、低沸点不純物を含有し、蒸気状で流れ10として抜き出される。
凝縮物は、配管11を介して液-液相分離器12へと流入する。そこで共沸混合物が、水性相と有機相とに分離する。主に水、ならびに多少のアルコールおよびアクリレートからなる水性相は、精留による分離と同様に精留塔の頂部で上昇する蒸気の共沸混合物形成ももたらすために、部分的に、配管15を介して精留塔6の頂部へと供給される。さらなる一部は、配管16を介して、アルコールをストリッピング除去するために取り出す。アクリル酸を押し戻すために、分離器12から、配管13を介して、有機還流を精留塔6の頂部へと導入する。
塔下端部では、液体7を蒸発器2中で部分的に蒸発させて、配管系5を介して塔へと返送する。より高沸点の不純物を含有する部分流4を抜き出す。蒸発器2は、加熱可能容器として、自然循環蒸発器として、または強制循環蒸発器として形成されていてもよく、後者の場合は付加的に、液体流4用の循環ポンプが必要である。望ましくない重合反応の防止に関して特に有利であるのは、強制循環フラッシュ蒸発器の使用であり、なぜなら、その構造を用いると加熱面での蒸発が起こらないからである。
例1b
動作モードは、ブチルアクリレートを製造するための設備全体の熱力学的シミュレーションからのデータを手がかりに示す。
プロセスの熱力学的シミュレーションは、Aspen Plus(登録商標)ソフトウェア(略してAspen)を用いて行った。Aspenは、化学プロセス/プラントをモデリング、シミュレーションおよび最適化するために産業分野で使用する広範囲にわたるシミュレーションソフトウェアである。Aspenは、基本動作をモデリングするための広範囲にわたるモデルデータベース、ならびに多数の異なる物質の物質特性に関する物質データベースを有する。混合物の特性は、Aspenにより、純物質の物質データに由来する様々な熱力学モデルを用いて算出する。
設備全体の熱力学的シミュレーションは、次の結果をもたらした。
供給管3を介して次の混合物を反応器1へと供給する。
水性3-ヒドロキシプロピオン酸(3HPA):1000g/h
n-ブタノール:953g/h
p-トルエンスルホン酸:4g/h。
供給管20を介して次の混合物を反応器1へと供給する。
n-ブタノール:9.8g/h
MeHQ:0.1g/h
PTZ:0.1g/h。
供給管21を介して酸素含有ガスを反応器1へと供給する。
窒素:9.5l/h
酸素:0.5l/h。
水性3-ヒドロキシプロピオン酸は次の組成を有する。
水:20重量%
3-ヒドロキシプロピオン酸:80重量%
酢酸:<0.01重量%。
供給管18を介して次の混合物を相分離器12へと供給する。
水:9.9g/h
4HT:0.1g/h。
変換は、150℃の温度、1バールの圧力、および2hの滞留時間において行う。
液-液相分離器12から、有機相の217g/hを還流として配管13を介して塔6へと返送し、1444g/hを、配管14を介して有機蒸留物として抜き出す。
有機相は、次の組成を有する。
水:7重量%
n-ブタノール:23重量%
n-ブチルアクリレート:70重量%
アクリル酸:<0.01重量%
n-ブチルアセテート:<0.01重量%
4HT:<0.01重量%。
液-液相分離器12から、水性相の425g/hを還流として配管15を介して塔6へと返送し、425g/hを、配管16を介して水性蒸留物として抜き出す。
水性相は、次の組成を有する。
水:95重量%
n-ブタノール:3重量%
n-ブチルアクリレート:2重量%
アクリル酸:<0.01重量%
n-ブチルアセテート:<0.01重量%
4HT:<0.01重量%。
反応器の下部において、配管4を介して108g/hを液状残渣として抜き出す。
残渣は次の組成を有する。
水:1重量%
n-ブタノール:3重量%
n-ブチルアクリレート:16重量%
アクリル酸:3重量%
n-ブチルアセテート:<0.01重量%
高沸点物:77重量%
MeHQ:<0.1重量%
PTZ:<0.1重量%
4HT:<0.01重量%。
次いで、公知の手順(特に、欧州特許出願公開第765859号明細書(BASF AG)、前記8ページを参照)に基づき、有機相を、純生成物n-ブチルアクリレートへと処理できる。
純生成物は次の組成を有する。
水:<0.01重量%
n-ブタノール:<0.01重量%
n-ブチルアクリレート:>99.5重量%
アクリル酸:<0.01重量%
n-ブチルアセテート:<0.01重量%。
この例は、純生成物中のわずかなn-ブチルアセテート含有量に関する有利な特性を模範的に明示する。

Claims (20)

  1. アクリル酸ブチルエステルH C=CH-C(=O)OR(式中、Rはn-ブチルまたはイソブチル)の連続的製造方法であって、精留塔を備えた反応器中で水性3-ヒドロキシプロピオン酸を、対応するブタノールR-OHの存在下、脱水およびエステル化条件下で変換し、アクリル酸ブチルエステル、未変換ブタノール、ならびに水含む3成分共沸混合物を前記精留塔の塔頂から分留し、前記塔頂から分留したものをそれぞれ液状の水性相および前記アクリル酸ブチルエステルと前記ブタノールを含む有機相へと分離し、前記分離の後、その水性相および有機相をそれぞれ少なくとも部分的に排出し、前記アクリル酸ブチルエステルおよびブタノールを含有する有機相を蒸留により分離することを特徴とする、方法。
  2. 前記水性3-ヒドロキシプロピオン酸がバイオベースの3-ヒドロキシプロピオン酸であることを特徴とする、請求項1記載の方法。
  3. 前記バイオベースの3-ヒドロキシプロピオン酸が、発酵によって製造されていることを特徴とする、請求項2記載の方法。
  4. ブタノールR-OHの、3-ヒドロキシプロピオン酸に対するモル比が少なくとも1であることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
  5. 前記脱水およびエステル化条件が、前記反応器中に酸の触媒活性量が存在することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
  6. 前記酸が、硫酸有機スルホン酸、またはそれらの組合せであることを特徴とする、請求項5記載の方法。
  7. 前記反応器中での前記変換を、80~170℃の温度で行うことを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
  8. 前記反応器中での反応物の滞留時間が、1~20時間あることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
  9. 前記精留塔が、少なくとも5理論段を有することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
  10. 前記精留塔の塔頂圧が、0.2~5.0バール(絶対圧力)あることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
  11. 前記蒸留による分離、精留塔内で前記ブタノール分留前記アクリル酸ブチルエステルを含有する塔底液を生じさせその後もう1つの精留塔内で前記塔底液を分留してアクリル酸ブチルを得ることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
  12. 前記蒸留による分離後に得られた前記ブタノールを少なくとも部分的に、前記変換ために前記反応器へと返送することを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
  13. 前記変換が、前記水性3-ヒドロキシプロピオン酸をn-ブタノールの存在下に変換することを含む、アクリル酸-n-ブチルエステルを製造するための、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
  14. 前記変換が、前記水性3-ヒドロキシプロピオン酸をイソブタノールの存在下に変換することを含む、アクリル酸-イソブチルエステルを製造するための、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
  15. 前記アクリル酸-n-ブチルエステルが、少なくとも99.0重量%の純度およびn-ブチルアセテートの1000重量ppm以下という含有量を有する、請求項13記載の方法。
  16. 前記アクリル酸イソブチルエステルが、少なくとも99.0重量%の純度およびイソブチルアセテートの1000重量ppm以下という含有量を有する、請求項14記載の方法。
  17. 少なくともつの安定剤の有効量の存在下に前記変換を行うことを特徴とする、請求項1から16までのいずれか1項記載の方法。
  18. 前記水性相の少なくとも一部を、前記反応器へ還流返送し、前記水性相の還流量を利用して前記反応器中の液位を制御することを特徴とする、請求項1から17までのいずれか1項記載の方法。
  19. 前記方法を開始するために、対応する前記アクリル酸ブチルエステル、または前記アクリル酸ブチルエステルを含有する対応する反応混合物を前記反応器中に入れることを特徴とする、請求項1から18までのいずれか1項記載の方法。
  20. 前記精留塔内と同様に前記分留後に結果として生じる前記有機相内にも、それぞれ少なくとも1つの、有効分率で前記水性相にも前記有機相にも溶解する安定剤が存在することを特徴とする、請求項1から19までのいずれか1項記載の方法。
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