JP7222359B2 - R-t-b系希土類永久磁石 - Google Patents

R-t-b系希土類永久磁石 Download PDF

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Description

本発明は、R-T-B系希土類永久磁石に関する。
正方晶R14B化合物を主相とするR-T-B系希土類永久磁石(Rは希土類元素、TはFeまたはその一部がCoによって置換されたFe)は優れた磁気特性を有することが知られており、1982年の発明(特許文献1:特開昭59-46008号公報)以来、代表的な高性能永久磁石である。
希土類元素RがNd、Pr、Dy、Ho、TbからなるR-T-B系希土類永久磁石は異方性磁界Haが大きく永久磁石材料として好ましい。中でも希土類元素RをNdとしたNd-Fe-B系磁石は、飽和磁化Is、キュリー温度Tc、異方性磁界Haのバランスが良く、資源量、耐食性において他の希土類元素Rを用いたR-T-B系希土類永久磁石よりも優れているために広く用いられている。
民生、産業、輸送機器の動力装置として、永久磁石同期モータが用いられてきた。しかしながら、永久磁石による界磁が一定である永久磁石同期モータは、回転速度に比例して誘導電圧が高くなるため、駆動が困難となる。そのため、永久磁石同期モータは中・高速域および軽負荷時において、誘導電圧が電源電圧以上とならぬよう、電機子電流による減磁界にて永久磁石の磁束を相殺させ鎖交磁束を減少させる、弱め界磁制御という手法が適用されるようになった。しかし、減磁磁場を印可し続けるためにモータ出力に寄与しない電機子電流を常時流し続けるため、結果としてモータの効率を低下させてしまうという問題がある。
このような問題を解決するために、特許文献2のように、外部から磁界を作用させることにより、磁化が可逆的に変化する低保磁力のSm-Co系永久磁石(可変磁束磁石)を用いた可変磁力モータが開発されている。可変磁力モータでは、中・高速域および軽負荷時において、可変磁束磁石の磁化を小さくすることによって、従来のような弱め界磁によるモータの効率低下を抑制することができる。
しかしながら、特許文献2に記載されているSm-Co系永久磁石は、その主要な原料であるCoの価格が高く、高コストであるという問題があった。そこで、可変磁束磁石用の永久磁石として、R-T-B系永久磁石を適用することが考えられる。
特許文献3には、組成が(R11-xR214B(R1はY、La、Ceを含まない希土類元素の少なくとも1種であり、R2はY、La、Ceの1種以上からなる希土類元素であり、TはFeまたはFeおよびCoを必須とする1種以上の遷移金属元素、0.1≦x≦0.5)である主相粒子を含み、更にM(MはAl、Cu、Zr、Hf、Tiの少なくとも1種)を2at%~10at%含むことを特徴とするR-T-B系可変磁束磁石が開示されている。このR-T-B系可変磁束磁石は、従来の可変磁力モータ用Sm-Co系永久磁石よりも高い残留磁束密度を有しているので、可変磁力モータの高出力化および高効率化が期待される。
特許文献4には、Sm-R-T-B-M系焼結磁石が開示されている。Rは、Smを除きYを含む希土類元素のうち、1種または2種以上であり、Tは、Fe、または、FeおよびCoであり、Mは、Ga、Zr等の元素である。このSm-R-T-B-M系焼結磁石は、再着磁特性に優れることが記載されている。
特許文献5には、組成が(R11-x-yR2R3FeCoである永久磁石が開示されている。R1は、Nd、Prから選ばれる少なくとも1種であり、R2は、Sm、La、Ceから選ばれる少なくとも1種であり、R3は、Tb、Dyから選ばれる少なくとも1種である。また、Mは、Ti等の元素であり、Xは、Ga等の元素である。この永久磁石は、磁化状態を変化させることができ、低保磁力であることが記載されている。
特開昭59-46008号公報 特開2010-34522号公報 特開2015-207662号公報 特開2010-114371号公報 特開2010-45068号公報
通常、R-T-B系希土類永久磁石を着磁する際には、高い磁束密度および高い保磁力を得るために、当該磁石の保磁力の3倍程度の大きな磁場を印加する。
一方、可変磁力モータでは、可変磁束磁石が、モータに組み込まれた状態で、電機子等の磁場により磁化曲線のマイナー曲線に従って可変磁束磁石の磁化状態が切り替えられることにより、広い範囲でモータを高効率で運転することができる。ここで、マイナー曲線とは、正磁場Hmagで着磁後、逆磁場Hrevを印可し、再び磁場Hmagまで磁場を掃引する場合の磁化変化挙動を表す。
磁化の切替は、電機子等から磁場を印加することにより行うので、省エネおよびインバータ容量の問題によりモータ内で印加可能な磁場の上限の観点から磁化切替に要する着磁磁場Hmagを小さくする必要がある。そのためには、まず、可変磁束磁石の保磁力が低いことが求められる。
また、高効率運転範囲を広くするためには可変磁束磁石の着磁時-減磁時のモータの動作点での磁化変化量を大きくする必要がある。そのためにはまず、磁化曲線の角形比が高いことが求められる。また、マイナー曲線中で逆磁場Hrevから磁場Hmagまで磁場を掃引する場合にできるだけHmagに近い磁場まで、つまり第2、第3象限から第1、第4象限まで、磁化が変化しないことが望ましい。この望ましい状態を、以降、マイナー曲線平坦性が高いと表現する。
さらに、可変磁力モータでは、ある部分着磁状態から別の部分着磁状態への逐次増減磁を伴うような無段階可変が想定されているが、マイナー曲線平坦性が第2、第3象限で高くても、第1、第4象限で低い場合、逐次増磁を行う際に所望の着磁状態まで増磁するのが困難になる。無段階可変の制御性のためには、第2、第3象限から第1、第4象限までのマイナー曲線平坦性が高いことが求められる。
上述したように、通常のR-T-B系希土類永久磁石においては、当該磁石を保磁力の3倍以上の十分に大きな磁場で着磁した後、残留磁束密度、保磁力等の磁気特性が評価される。そのため、着磁磁場が保磁力に近い程度まで小さくなる場合における磁気特性は評価されない。
そこで、本発明者らは、着磁磁場が保磁力に近い程度まで小さくなる場合におけるR-T-B系希土類永久磁石の磁気特性を評価したところ、着磁磁場が小さくなると、マイナー曲線の角形比およびマイナー曲線平坦性が悪化することを見出した。すなわち、マイナー曲線の角形比およびマイナー曲線平坦性は、着磁磁場の大きさに影響されることを見出した。
例えば、特許文献3に係る試料について、着磁磁場を小さくしていくと、同じ試料であってもヒステリシス曲線の形状が図6に示すように変化することが判明した。図6Aは、着磁磁場が30kOeである場合のヒステリシス曲線を示し、図6Bは、着磁磁場が10kOeである場合のヒステリシス曲線を示す。図6AおよびBから明らかなように、着磁磁場が変わると、ヒステリシス曲線の形状が大きく変化している。
図6Aと図6Bとを比較すると、図6Bのヒステリシス曲線の角形比およびマイナー曲線平坦性が図6Aに示すヒステリシス曲線の角形比およびマイナー曲線平坦性よりも劣っている。すなわち、着磁磁場が小さくなると、角形比およびマイナー曲線平坦性が低くなる傾向にある。また、図6Aに示すヒステリシス曲線の角形比は比較的良好であるが、図6Bと同様に、マイナー曲線平坦性は依然として低い。
したがって、特許文献3の発明に係るR-T-B系希土類永久磁石は、保磁力は低いものの、飽和着磁状態(図6A)ですらマイナー曲線平坦性は低く、着磁磁場が低い状態(図6B)においては更に低くなり、角形比も低くなってしまう。その結果、特許文献3の発明に係るR-T-B系希土類永久磁石を可変磁束磁石として用いた可変磁力モータでは、高効率運転範囲を広くすることはできないという問題がある。換言すれば、可変磁束磁石に好適な磁石に求められる特性としては、保磁力が低いだけでは不十分であり、着磁磁場が低くても、角形比およびマイナー曲線平坦性が良好であることが求められる。
更に、可変磁力モータに組み込まれた可変磁束磁石は、モータ駆動時には100℃~200℃といった高温環境下に晒されることもあり、高温での保磁力およびマイナー曲線平坦性の低下率が小さいことが好ましい。この点に関しても、特許文献3の発明では、室温での磁気特性しか保証されておらず、高温での保磁力およびマイナー曲線平坦性の低下率が大きく、自己減磁のためにモータ駆動できなくなることが予想される。
特許文献4の発明に係るR-T-B系希土類永久磁石についても、本発明者らが検討した結果、着磁磁場が低い状態では、角形比およびマイナー曲線平坦性が劣ることが判明した。さらに、高温環境下においても、角形比およびマイナー曲線平坦性が劣ることが判明した。
さらに、特許文献5には、着磁磁場が10kOeである時に、第2および第3象限におけるマイナー曲線平坦性が良好であるが、第1および第4象限におけるマイナー曲線平坦性は何ら評価されていない。第1および第4象限におけるマイナー曲線平坦性が低い場合、磁化を逐次増磁させるための折り返し磁場が特定できず、制御不能となってしまう。
また、着磁後の第1象限における角形比Mr/Ms(Mrは残留磁化、Msは10kOeにおける磁化)は良好であるものの、第2象限における角形比Hk/HcJ(Hkは磁化がMrの90%となる磁場の値)は何ら評価されていない。可変磁束磁石を適用した可変磁力モータの動作点は、通常、第2象限にあり、第2象限における角形比が低い場合、着磁時および減磁時の磁化変化量が小さくなり、高効率運転範囲を広くすることができない。さらに、特許文献5の発明でも、室温での磁気特性しか保証されていない。
したがって、特許文献5の発明に係るR-T-B系希土類永久磁石についても、本発明者らが検討した結果、着磁磁場が低い状態では、角形比およびマイナー曲線平坦性が劣ることが判明した。また、着磁磁場が低い状態だけでなく、高温環境下においても、保磁力およびマイナー曲線平坦性が低下することが判明した。
本発明はこうした状況を認識してなされたものであり、広範囲の回転速度域にて高い効率を維持できる可変磁力モータに適した、高残留磁束密度、低保磁力、かつ、着磁磁場が低い状態においても、高い角形比とマイナー曲線平坦性を持つR-T-B系希土類永久磁石を提供することを目的とする。
R-T-B系希土類永久磁石は、ニュークリエーション型磁化反転機構を持っているため、外部から印加される磁場に応じて磁壁の移動が容易に生じて、磁化が大きく変化してしまう。そのため、着磁磁場が低いと角形比およびマイナー曲線平坦性は低くなってしまう。一般的に、R-T-B系希土類永久磁石において、着磁磁場が低い状態の角形比とマイナー曲線平坦性を高くするためには、高保磁力化することが有効である。そのため、R-T-B系希土類永久磁石において、低保磁力と着磁磁場が低い状態における特性の両立は困難である。
しかし、発明者らが鋭意検討した結果、低保磁力を実現する組成の検討を行ない、R-T-B系希土類永久磁石に含まれる粒子の逆磁区発生磁場の均一化と磁場印加時の単磁区構造の安定化とにつながる微細構造の検討を行なうことにより、低保磁力と、着磁磁場が低い状態における高い角形比およびマイナー曲線平坦性との両立を実現できることを見出した。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、
本発明は、
組成式が(R11-x-ySmR2で表されるR-T-B系希土類永久磁石であって、
組成式において、R1は、SmおよびR2を含まない1種以上の希土類元素、R2は、Y、Ce、Laの1種以上の希土類元素、
Tは、FeまたはFeおよびCoを必須とする1種以上の遷移金属、
Mは、Ga、または、GaとSn、Bi、Siの1種以上とからなる元素であり、
xおよびyは、(x,y)平面において、点A(0.010,0.600)、点B(0.010,0.400)、点C(0.050,0.000)、点D(0.150,0.000)、点E(0.100,0.600)を頂点とする5角形の辺を構成する直線上および当該直線に囲まれる領域内にあり、
a、b、cおよびdが、
0.16≦a/b≦0.28、
0.050≦c/b≦0.075、
0.005≦d/b≦0.028である関係を満足し、
R-T-B系希土類永久磁石は、R14B型正方晶構造を有する化合物からなる主相と粒界相を含み、
主相結晶粒子の平均結晶粒径D50は、D50≦4.00μmである関係を満足し、
粒度分布が(D90-D10)/D50≦1.60である関係を満足し、D10、D50、D90は、任意の断面における主相結晶粒子の断面積の累積分布が10%、50%、90%となる面積円相当径であり、
粒界相の被覆率が70.0%以上であることを特徴する、R-T-B系希土類永久磁石である。
本発明に係るR-T-B系希土類永久磁石は、上記組成範囲を満たし、特にR14B型正方晶構造を有する化合物(以降、R14B化合物ともいう)からなる主相(以降、R14B相ともいう)に含まれる希土類元素R1をSm、または、SmおよびR2で置換することにより低保磁力を達成している。前記主相に含まれる希土類元素R1(Nd、Pr、Tb、Dy、Hoに代表される)を含むR114B化合物とは異なり、Sm14B化合物は面内異方性を有しているため、R114B化合物が示す強い異方性磁界を少量で劇的に弱めることができるからである。また、主相に含まれる希土類元素R2(Y、Ce、La)を含むR214B化合物の異方性磁界は、R114B化合物の異方性磁界よりも劣るからである。さらに、希土類元素の合計原子組成比におけるSmの原子組成比とR2の原子組成比とが、図1に示す範囲内であることにより、本発明に係るR-T-B系希土類永久磁石は、低保磁力化を達成しつつ、可変磁束磁石に好適な磁気特性を得ることができる。
遷移金属元素Tの原子組成比に対するBの原子組成比の割合、および遷移金属元素Tの原子組成比に対する元素M(Ga、または、GaとSn、Bi、Siの1種以上とからなる元素)の原子組成比の割合を、上記の組成範囲にすることにより、R14B型正方晶構造を有する化合物からなる主相結晶粒子と粒界相を含む構造が得られる。
本発明の主相結晶粒子の平均結晶粒径は、D50≦4.00μmであり、粒度分布は(D90-D10)/D50≦1.60(但し、D10、D50、D90は、任意の断面における主相結晶粒子の断面積の累積分布が10%、50%、90%となる面積円相当径)の関係を満たすものである。更に、主相結晶粒子を取り囲む粒界相の被覆率が70.0%以上である事で、保磁力を低く維持しつつ、着磁磁場が低い状態における角形比とマイナー曲線平坦性を高くする事ができる。
本発明者らは、ニュークリエーション型磁化反転機構を持つR-T-B系希土類永久磁石において、着磁磁場が低い状態の角形比やマイナー曲線平坦性を高くするための検証を行なった。その結果、正磁場Hmagによる着磁後、減磁過程での磁石磁化が負の保磁力付近まで一定に保持されることで、角形比は高くなることが確認された。また、逆磁場Hrevまで減磁した後、再び増磁する過程で正の保磁力付近まで磁石磁化が一定に保持されることで、マイナー曲線平坦性が高くなることを確認した。
正磁場Hmagでの着磁後の減磁過程、および逆磁場Hrevからの増磁過程で磁石磁化が一定に保持されるためには、R-T-B系希土類永久磁石に含まれる主相結晶粒子が、低い着磁磁場Hmagで単磁区状態となり、着磁後の単磁区状態が安定していること、さらに逆磁区発生磁場のばらつきを低減すること等が有効である。仮に、主相結晶粒子が多磁区状態である場合、主相結晶粒子内でピンニングサイトが存在しないため、減磁過程および増磁過程において磁壁は磁場の変化に応じて自由に動いてしまう。そのため、磁石磁化が一定に保持されない。
また、主相結晶粒子毎に逆磁区発生磁場のばらつきが大きいと、同じく減磁過程および増磁過程において、バラバラの磁場の値で各主相結晶粒子の磁化が反転するため、磁石全体の磁化が一定にならない。
低い着磁磁場Hmagで単磁区状態を実現するためには、局所的に反磁場の低減が必要となる。ところが、一般的なR-T-B系希土類永久磁石は、主相結晶粒子に局所的に大きな反磁場が作用するため、着磁磁場Hmagの大きさが保磁力の3倍程度にならないと、全ての主相結晶粒子を単磁区状態にすることができない。
また、局所的反磁場は、隣接する主相結晶粒子同士が直接接したり、主相結晶粒子が粒界相に被覆されず表面にエッジが生じたりすることで、増大する。
そのため、主相結晶粒子の粒界相被覆率を70.0%以上にすることで、局所的反磁場を低減し、低い着磁磁場Hmagで単磁区状態を実現することが可能となる。
また、着磁後の単磁区状態を安定化するためには、静磁エネルギーと磁壁エネルギーとのバランスから主相結晶粒子の粒径をコントロールする事が非常に重要である。本発明において、主相結晶粒子の平均結晶粒径がD50≦4.00μmとすることで着磁後の単磁区構造を安定化することができる。更に、本発明者らは逆磁区発生磁場が主相結晶粒子の粒径と関係性があることから、主相結晶粒子の粒度分布ばらつきを(D90-D10)/D50≦1.60とすることで逆磁区発生磁場のばらつきを低減できることを見出した。
更に、前記のように主相結晶粒子の平均粒径と粒度分布ばらつきをコントロールできていても、隣接する主相結晶粒子同士が磁気的に交換結合する箇所が多くなると、磁気的に、粒径の大きな主相結晶粒子が多数存在する粒度分布と等価になり、粒度分布のばらつきが大きい状態とみなすことができる。その結果、着磁後の単磁区状態が不安定化し、逆磁区発生磁場のばらつきも大きくなる。本発明者らは、本組成により、主相結晶粒子が磁気的交換結合の切れる3nmよりも十分に厚い厚みを持つ粒界相によって70.0%以上被覆された構造になることが可能となり、主相結晶粒子の単磁区状態を安定化し、逆磁区発生磁場のばらつきが低減できることを見出した。
以上の理由で、主相結晶粒子の平均粒径、粒度分布、粒界相被覆率が上記の関係を満たすことで、着磁磁場が低い状態の角形比とマイナー曲線平坦性を高くする事が可能となる。
本発明によれば、広範囲の回転速度域にて高い効率を維持できる可変磁束モータに好適な、高残留磁束密度、低保磁力、かつ、着磁磁場が低い状態で格段に高い角形比とマイナー曲線平坦性を持つR-T-B系希土類焼結磁石を提供できる。尚、本発明に係るR-T-B系希土類焼結磁石は、可変磁力モータの他に発電機等の回転機全般に適用可能である。
図1は、本発明のR-T-B系希土類永久磁石に含まれる希土類元素の合計原子組成比において、Smの原子組成比とR2の原子組成比との関係を示すグラフである。 図2は、実験例2-18の試料について最大測定磁場を増加させながら測定したヒステリシス曲線群を示す図である。 図3は、実験例2-18の試料のマイナー曲線群を示す図である。 図4は、実験例2-18の試料の断面のSEM反射電子像を示す図である。 図5は、図4の画像の画像解析により抽出した主相結晶粒子の輪郭を示す図である。 図6Aは、着磁磁場が30kOeである場合において、特許文献3に係る試料のヒステリシス曲線を示す図である。 図6Bは、着磁磁場が10kOeである場合において、特許文献3に係る試料のヒステリシス曲線を示す図である。
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。更に、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
本発明のR-T-B系希土類永久磁石の組成式は、(R11-x-ySmR2で表される。また、R-T-B系希土類永久磁石は、R14B型正方晶構造を有する化合物(R14B化合物)からなる主相と、粒界相とを含んでいる。
本実施形態では、上記の組成式において、R1は、SmおよびR2を含まない1種以上の希土類元素である。したがって、R14B化合物は、R114B化合物、Sm14B化合物およびR214B化合物から構成される。前記組成式の全希土類元素の合計原子組成比に占めるSmの原子組成比をxとし、R2の原子組成比をyとすると、R1の原子組成比は1-x-yである。Sm14B化合物およびR214B化合物は、Nd14B化合物に代表されるR114B化合物の異方性磁界を弱める成分である。したがって、R1をSmおよびR2で置換する、すなわち、xおよびyを所定の範囲とすることにより、磁石の低保磁力化を実現することができる。
Sm14B化合物は、R214B化合物とは異なり、面内異方性を有しており、Sm14B化合物の方が、R114B化合物の異方性磁界を弱める能力が高い。また、Sm14B化合物とR214B化合物とでは、保磁力以外の磁気特性に対する寄与も異なる。
そこで、本実施形態では、xおよびyは、図1に示す点A(0.010,0.600)、点B(0.010,0.400)、点C(0.050,0.000)、点D(0.150,0.000)、点E(0.100,0.600)を頂点とする5角形の辺を構成する直線上および当該直線に囲まれる領域(図1では斜線部分)内となるように制御される。xおよびyが図1に示す範囲内であることにより、磁石の低保磁力化を実現しつつ、可変磁束磁石に好適な磁気特性を得ることができる。
また、R-T-B化合物における異方性磁界の温度依存性は、Rとして上記のR1に含まれる元素を用いた場合、いずれも高温で大きな単調減少を示す。つまり、高温で保磁力が大きく低下してしまう。
一方、Rとして、Smを用いた場合、室温から昇温するにつれて、異方性磁界を弱める寄与がゼロに近づくため、高温において、保磁力を低下させる効果が弱まる。また、R2に含まれる元素を用いた場合、異方性磁界の温度依存性は、いずれもR1よりもフラットであるために、高温で保磁力を低下させる効果が弱まる。
したがって、Rとして、R1に含まれる元素と、Smおよび/またはR2と、を上記の範囲で組み合わせることにより、着磁磁場が低い状態の角形比とマイナー曲線平坦性を高くできることに加えて、高温における保磁力の低下が抑制される。すなわち、高温における保磁力の低下率が、RがR1のみの場合における保磁力の低下率よりも小さくなる。
上記の理由により、本発明に係るR-T-B系希土類永久磁石に含まれる全希土類元素中のSm、R2の割合を高くすることで、高温での保磁力の低下率やマイナー曲線平坦性の低下率も小さくできる。
また、図1に示す範囲内において、R2の原子組成比(y)を限定することにより、可変磁束磁石に好適な磁気特性の一部をさらに良好にすることができる。たとえば、図1に示す範囲内において、y≧0.300である場合(図1では点線よりも上の部分)には、着磁磁場が低い状態での角形比Hk/Hcjを特に良好にすることができる。
また、図1に示す範囲内において、0.000≦y≦0.111の場合には、着磁磁場が低い状態でのマイナー曲線平坦性と、残留磁束密度Brとを特に良好にすることができる。
本実施形態において、R1とSmおよびR2との組成比率のバランスに基づき可変磁束磁石に好適な保磁力を得るために、希土類元素R1は、高い異方性磁界をもつNd、Pr、Dy、Tb、Hoのいずれか一種以上であることが好ましい。Nd、Prの一種以上であることがより好ましい。特に耐食性の観点から、Ndが好ましい。尚、希土類元素は原料に由来する不純物を含んでもよい。
本実施形態に係るR-T-B系希土類永久磁石には、R14B相の基本組成における遷移金属元素Tとして、FeまたはFeに加えて更に他の遷移金属元素を含んでもよい。遷移金属元素としてはCoであることが好ましい。この場合、Coの含有量は1.0at%以下であることが好ましい。希土類磁石にCoを含有させることにより、キュリー温度が高くなるほか、耐食性も向上する。
本実施形態において、遷移金属元素Tの原子組成比に対する希土類元素Rの原子組成比の割合a/bは0.16≦a/b≦0.28である。
a/bが0.16未満であると、R-T-B系希土類永久磁石に含まれるR14B相の生成が十分ではなく、軟磁性を示すTリッチ相が析出し、隣接する主相結晶粒子間に存在する粒界(2粒子粒界)を、磁気的交換結合が切れるのに十分な3nm以上の厚みで形成する事が出来ない。そのため、着磁磁場が低い状態の角形比とマイナー曲線平坦性が低下してしまう。また、高温での保磁力の低下率やマイナー曲線平坦性の低下率も大きくなる。
一方、a/bが0.28超の場合、保磁力が大きくなってしまう。また、粒界相中のRリッチ相が増加し、高温での保磁力の低下率やマイナー曲線平坦性の低下率が大きくなる。
可変磁力モータに用いるための低保磁力を満足し、着磁磁場が低い状態の角形比とマイナー曲線平坦性をより高くするために、a/bが0.18以上であることが好ましい。一方、0.24以下であることが好ましい。
本実施形態に係るR-T-B系希土類焼結磁石において、遷移金属元素Tの原子組成比に対するBの原子組成比の割合c/bは0.050≦c/b≦0.075である。このようにBの含有比率をR14Bで表される基本組成の化学量論比である0.075以下にすることにより、余剰となった希土類元素Rと遷移金属元素Tが粒界相を形成する。その結果、2粒子粒界を、磁気的交換結合が切れるのに十分な厚みで形成することができる。
これにより、主相結晶粒子同士が磁気的に分離され、着磁後の単磁区状態を安定化されて着磁磁場が低い状態の角形比とマイナー曲線平坦性を高くする効果がある。
c/bが0.050より小さいとR14B相の生成が十分ではなく、軟磁性を示すTリッチ相が析出するため、2粒子粒界を、磁気的交換結合が切れるのに十分な厚みを形成することができない。
c/bが0.075より大きいと主相比率が増大して、上記と同様、十分な厚みのある2粒子粒界が形成されない。そのため、着磁磁場が低い状態の角形比とマイナー曲線平坦性が低下する。
可変磁力モータに用いるための低保磁力を満足し、着磁磁場が低い状態の角形比とマイナー曲線平坦性をより高くするためには、c/bが0.060以上であることが好ましい。一方、c/bが0.070以下であることが好ましく、0.066以下であることがより好ましい。
本実施形態に係るR-T-B系希土類永久磁石は、元素Mを含有する。元素MはGa、または、GaとSn、Bi、Siの1種以上とからなる元素であり、遷移金属元素Tの原子組成比に対する元素Mの原子組成比の割合d/bは0.005≦d/b≦0.028である。
d/bが0.005より小さい、またはd/bが0.028より大きいと、いずれも2粒子粒界を磁気的交換結合が切れるのに十分な厚みで形成することができない。そのため、着磁磁場が低い状態の角形比とマイナー曲線平坦性が低下する。
可変磁力モータに用いるための低保磁力を担保し、着磁磁場が低い状態の角形比とマイナー曲線平坦性をより高くするために、d/bが0.008以上であることが好ましい。一方、d/bが0.019以下であることが好ましい。
また、上述した特性を良好にするためには、本発明に係るR-T-B系希土類永久磁石において、全粒界相面積に対するLaCo11Ga型構造を有するR-T-M相(代表的な化合物はR13Mであり、反強磁性相である)の面積比率を増やすことが重要である。
さらに、RT、RT、R17等の強磁性であるTリッチ相(RとTの原子数を[R]、[T]としたとき[R]/[T]<1.0となり前記R-T-M相以外の相)の面積比率と、常磁性または反磁性であるRリッチ相(RとTの原子数を[R]、[T]としたとき[R]/[T]>1.0となる相)の面積比率と、をコントロールすることにより、主相粒子間の磁気的分離性が向上し、局所的な反磁場を低減することが可能となる。
具体的には、本実施形態において、任意の断面の全粒界相面積に対するLaCo11Ga型結晶構造を有するR-T-M相の面積比率が10.0%以上である。高温での保磁力の低下率やマイナー曲線平坦性の低下率をより小さくするために、R-T-M相の面積比率は30.2%以上であることが好ましく、55.4%以上であることがより好ましい。これにより、可変磁力モータにより好適に適用できる。
R-T-M相の面積比率が10.0%未満になると、全粒界相面積に対するTリッチ相やRリッチ相の面積比率が増大し、高温での保磁力の低下率およびマイナー曲線平坦性の低下率が大きくなる。
本実施形態において、任意の断面の全粒界相面積に対するTリッチ相の面積比率が60.0%以下である。
前記Tリッチ相は、2粒子粒界(主相結晶粒子間に存在する粒界相)や3重点(3個以上の主相結晶粒子に囲まれた粒界相)等の特定の場所に存在するというよりは、粒界相中に偏析する場合、凝集しやすい等の傾向がある。
全粒界相面積に対する前記Tリッチ相の面積比率が60.0%を超えると、強磁性の前記Tリッチ相が粒界相中に凝集して存在する面積が増えるため、Tリッチ相が磁化反転核となり、局所的に反磁場が増加してしまう。その結果、高温での保磁力の低下率およびマイナー曲線平坦性の低下率が大きくなる。
また、Tリッチ相は主相結晶粒子と接さない粒界相中に存在する事が好ましい。強磁性相のTリッチ相が主相結晶粒子と接してしまうと、隣接する主相結晶粒子の磁化からの漏えい磁場によってTリッチ相が磁化してしまい、局所的な反磁場が発生してしまう。その結果、高温での保磁力の低下率やマイナー曲線平坦性の低下率を大きくしてしまう。
高温での保磁力の低下率やマイナー曲線平坦性の低下率をより小さくするために、Tリッチ相の面積比率は48.9%以下であることが好ましい。これにより、可変磁力モータにより好適に適用できる。
本実施形態において、任意の断面の全粒界相面積に対するRリッチ相の面積比率が70.0%以下である
また、前記Rリッチ相は、3重点に偏析しやすい特性を持っている。全粒界相面積に対する前記Rリッチ相の面積比率が70.0%を超えると、常磁性または反磁性である粗大な前記Rリッチ相の3重点が形成してしまう。その結果、隣接する主相結晶粒子からの漏れ磁界が粒界を貫いて回り込み、大きな局所的な反磁場が増加してしまう。したがって、高温での保磁力の低下率およびマイナー曲線平坦性の低下率が大きくなってしまう。
また、Rリッチ相は主相結晶粒子と接さない粒界相中に存在するのが好ましい。常磁性または反磁性のRリッチ相が主相結晶粒子と接してしまうと、隣接する主相結晶粒子の磁化からの漏えい磁場が収束して粒界相を貫いて回り込み、Rリッチ相中に大きな局所的な反磁場が発生してしまう。その結果、高温での保磁力の低下率やマイナー曲線平坦性の低下率を大きくしてしまう可能性がある。更に、Rリッチ相は腐食が進行しやすいことが知られており、Rリッチ相の面積比率を減少させることで耐食性も向上する。
高温での保磁力の低下率やマイナー曲線平坦性の低下率をより小さくするために、Rリッチ相の面積比率は46.3%以下であることが好ましい。これにより、可変磁力モータにより好適に適用できる。
なお、R-T-M相は、2粒子粒界に偏析しやすく反強磁性であるため、前記Tリッチ相と前記Rリッチ相の面積を減らすことで、主相結晶粒子が反強磁性の前記R-T-M相に被覆された状態となる。その結果、主相結晶粒子からの漏れ磁界の回り込みが起こらず、局所的な反磁場低減を実現することができる。
以上のことから、全粒界相面積に対するLaCo11Ga型結晶構造を有するR-T-M相の面積比率が10.0%以上により、全粒界相面積に対する前記Tリッチ相の面積比率を60.0%以下、全粒界相面積に対する前記Rリッチ相の面積比率を70.0%以下にすることにより、主相結晶粒子が反強磁性の前記R-T-M相に被覆された状態を実現し、局所的な反磁場低減が実現する。これにより、高温での保磁力の低下率やマイナー曲線平坦性の低下率を小さくすることができる。
本実施形態では、a、b、cおよびdが、0.050≦c/b≦0.070、0.25≦(a-2c)/(b-14c)≦2.00、0.025≦d/(b-14c)≦0.500である関係を満足することが好ましい。c/b、(a-2c)/(b-14c)と、d/(b-14c)を上記組成の範囲にすることにより、全粒界相面積に対する上記の相の面積比率を制御することが容易になる。
ここで、組成パラメータとしての(a-2c)/(b-14c)とd/(b-14c)とについて説明する。(a-2c)/(b-14c)は、R-T-B系希土類永久磁石中の粒界相における希土類元素量と遷移金属元素量との比を示し、d/(b-14c)は、R-T-B系希土類永久磁石中の粒界相における元素M量と遷移金属元素量との比を示している。
上述したように、R-T-B系希土類永久磁石におけるRは、R1とSmとR2とを上記範囲で含むので、R-T-B系希土類永久磁石を示す組成式(R11-x-ySmxR2yabcd、すなわち、主相および粒界相を含む全組成を以下の式で置き換えることが出来る。
[aR+bT+cB+dM]
ここで、全組成から主相を構成するR-T-B化合物の基本組成であるR2Fe14Bを減ずることで、粒界相成分の組成を導くことができる。ここで、c/b≦0.070</14のとき、[全組成]-[R2Fe14B組成]の式において、前記R-T-M相を構成する元素R、T、Mだけを残すことができる。Bが0となるように係数を調整して、残りの粒界相組成を算出すると、
[aR+bT+cB+dM]-[2cR+14cT+cB]
=[(a-2c)R+(b-14c)T+dM]
上記の式より、Rの係数(a-2c)が粒界相成分に相当する希土類元素量、Tの係数(b-14c)が粒界相成分に相当する遷移金属量、Mの係数dが粒界相成分に相当する元素M量である。
即ち、粒界相成分に相当する希土類元素量と遷移金属元素量の比(a-2c)/(b-14c)と、粒界相成分に相当する元素M量と遷移金属元素量の比d/(b-14c)とを、上記範囲にすることにより、全粒界相面積に対するR-T-M相の面積比率が10.0%以上、全粒界相面積に対する前記Tリッチ相の面積比率を60.0%以下、全粒界相面積に対する前記Rリッチ相の面積比率を70.0%以下にすることができる。尚、R-T-M相のR/Tの比=6/13、およびM/Tの比=1/13は、それぞれ、(a-2c)/(b-14c)と、d/(b-14c)の範囲に含まれることがわかる。 以上の理由で、上記組成および局所的反磁場を著しく低減した微細構造により、高温での保磁力の低下率やマイナー曲線平坦性の低下率を小さくできる。その結果、幅広い回転速度域にて高い効率を維持できる可変磁力モータに好適なR-T-B系希土類永久磁石が得られる。
本実施形態に係るR-T-B系希土類永久磁石は、主相結晶粒子の粉末冶金工程中での反応を促進するAl、Cu、Zr、Nbの1種以上を含有してもよい。Al、Cu、Zrの1種以上を含有することがより好ましく、Al、CuおよびZrを含有することがさらに好ましい。これらの元素の含有量は合計で0.1~2at%とすることが好ましい。希土類磁石にこれらの元素を添加することで、主相結晶粒子の表面層を反応させ、歪み、欠陥等を除去できる。
本実施形態において、前記主相結晶粒子の平均結晶粒径D50は、D50≦4.00μmである。着磁磁場が低い状態の角形比やマイナー曲線平坦性を高くするためには、着磁後の単磁区状態が安定であることが有効である。D50が4.00μmよりも大きいと、静磁エネルギーと磁壁エネルギーとのバランスから、着磁後の主相結晶粒子内で単磁区構造よりも多磁区構造が安定化し、減磁過程および増磁過程で磁壁は磁場の変化に応じて自由に動くため、着磁磁場が低い状態の角形比およびマイナー曲線平坦性が悪化してしまう。
着磁後の主相結晶粒子の単磁区構造の安定化のために、D50が3.92μm以下であることが好ましく、2.98μm以下であることがより好ましく、2.05μm以下であることがさらに好ましい。また、過度の粒径の微細化を行うと、保磁力が高くなり、可変磁力モータに適さない。そのため、低保磁力を満足させるためにはD50は1.01μm以上であることが好ましく、1.49μm以上であることがより好ましい。
本実施形態において、主相結晶粒子の粒度分布を示す指標として、(D90-D10)/D50を用いる。本実施形態では、(D90-D10)/D50≦1.60である。なお、本実施形態において、D50は、主相結晶粒子の面積の累積分布が50%となる面積を有する円の直径(円相当径)であり、D90は、主相結晶粒子の面積の累積分布が90%となる面積の円相当径であり、D10は、主相結晶粒子の面積の累積分布が10%となる面積の円相当径である。したがって、(D90-D10)/D50が小さいほど、主相結晶粒子の粒度分布のばらつきが少ないことを示す。
着磁磁場が低い状態の角形比やマイナー曲線平坦性を高くするためには、逆磁区発生磁場のばらつきを低減することが有効である。逆磁区発生磁場は、主相結晶粒子の粒径に依存することから、主相結晶粒子の粒度分布のばらつきをコントロールすることが重要である。上記範囲であることが好ましい。(D90-D10)/D50が1.60より大きくなり、粒度分布のばらつきが大きくなってしまうと、逆磁区発生磁場のばらつきも増大するため、マイナー曲線平坦性が低下する。さらに、逆磁区発生磁場のばらつきをより低減するために、(D90-D10)/D50は、1.19以下であることが好ましく、0.99以下であることがさらに好ましい。
本実施形態において、粒界相とは、2粒子粒界(主相結晶粒子間に存在する粒界相)と3重点(3個以上の主相結晶粒子に囲まれた粒界相)の両方の領域を含むものと定義する。粒界相は非磁性であり、粒界相の厚みとしては3nm以上1μm以下が好ましい。
また、粒界相が主相結晶粒子の外周を覆う割合である粒界相の被覆率は70.0%以上である。前記のように主相結晶粒子の平均粒径と粒度分布ばらつきをコントロールできていても、粒界相被覆率が70.0%未満になると、隣接する主相結晶粒子同士が磁気的に交換結合する箇所が多くなることで、交換結合した粒子は、粒径が大きな1つの主相結晶粒子と磁気的に等価となる。このような粒径の大きな主相結晶粒子が多数存在すると、磁気的には、粒径の大きな粒子(交換結合した粒子)と粒径の小さい粒子(交換結合していない粒子)とが混在することになり、主相結晶粒子の粒度分布のばらつきが大きい状態と磁気的に等価となる。その結果、着磁後の単磁区状態が不安定化し、逆磁区発生磁場のばらつきも大きくなるため、着磁磁場が低い状態の角形比やマイナー曲線平坦性が低下する。
更に、粒界相被覆率が70.0%未満になると、隣接する主相結晶粒子と直接接したり、主相結晶粒子が粒界相に被覆されずに表面にエッジが生じたりする箇所が多くなることで、局所的反磁場が増大する。その結果、低い着磁磁場Hmagで単磁区状態を実現する事が出来なくなり、着磁磁場が低い状態の角形比やマイナー曲線平坦性が低下する。
着磁磁場が低い状態の角形比やマイナー曲線平坦性をより高くするために、粒界相被覆率は90.0%以上であることが好ましい。
なお、粒界相の被覆率は、R-T-B系永久磁石の断面において、主相結晶粒子の輪郭の長さの合計に対する所定の厚みの粒界相に覆われている主相結晶粒子の輪郭の長さの合計の割合として算出する。
本実施形態に係るR-T-B系希土類永久磁石は、その他の元素としてO(酸素)を含有していてもよい。O(酸素)の含有量は2000~8000ppma(Parts of million atomic)である。O(酸素)の含有量がこの範囲よりも小さいと、焼結磁石の耐食性が不十分となり、この範囲よりも大きいと焼結中に液相が十分に形成されなくなり、主相結晶粒子が粒界相に十分に被覆されなくなって、着磁磁場が低い状態の角形比やマイナー曲線平坦性が低下する。耐食性及び着磁磁場が低い状態の角形比やマイナー曲線平坦性をより高くするために、2500~7000ppmaであることが好ましい。
また、本実施形態に係るR-T-B系希土類永久磁石は、Nの含有量が8000ppma以下であると好ましい。Nの含有量がこの範囲よりも大きいと、着磁磁場が低い状態の角形比やマイナー曲線平坦性が低下する傾向にある。
以下、本件発明の製造方法の好適な例について説明する。
本実施形態のR-T-B系希土類永久磁石の製造においては、まず、本発明で用いる組成を有するR-T-B系磁石が得られるような原料合金を準備する。原料合金は、真空又は不活性ガス、望ましくはAr雰囲気中でストリップキャスト法、その他公知の溶解法により作製することができる。
ストリップキャスト法は、原料金属をArガス雰囲気などの非酸化雰囲気中で溶解して得た溶湯を回転するロールの表面に噴出させて合金を得る方法である。ロールで急冷された溶湯は、薄板または薄片(鱗片)状に急冷凝固される。この急冷凝固された合金は、結晶粒径が1μm~50μmの均質な組織を有している。
原料合金は、ストリップキャスト法に限らず、高周波誘導溶解等の溶解法によって得ることができる。尚、溶解後の偏析を防止するため、例えば水冷銅板に傾注して凝固させることができる。また、還元拡散法によって得られた合金を原料合金として用いることもできる。
本実施形態の原料金属は希土類金属あるいは希土類合金、純鉄、フェロボロン、更にはこれらの合金等を使用することができる。また、添加元素として、Al、Cu、Zr、Nbを含んでも良い。ただし、前記添加元素の含有量は20000ppm以下であることが好ましい。添加元素含有量がこの範囲よりも大きいと、着磁磁場が低い状態の角形比やマイナー曲線平坦性が低下してしまう。
なお、Al、Cu、Zr、Nbは原料金属の一部に含有される場合があるため、原料金属の純度レベルを選定し、添加元素全体の含有量が所定の値になるように調整する必要がある。また、製造時に混入する不純物がある場合、その量も考慮する必要がある。
本発明においてR-T-B系希土類永久磁石を得る場合、原料合金として、1種類の合金から磁石を作成するいわゆるシングル合金法の適用を基本とするが、主相結晶粒子であるR14B結晶を主体とする主相合金(低R合金)と、低R合金よりRを多く含み、粒界の形成に有効に寄与する合金(高R合金)とを用いる所謂混合法を適用することもできる。
原料合金は粉砕工程に供される。混合法による場合には、低R合金および高R合金は別々に又は一緒に粉砕される。
粉砕工程には、粗粉砕工程と微粉砕工程とがある。まず、原料合金を、粒径数百μm程度になるまで粗粉砕する。粗粉砕は、スタンプミル、ジョークラッシャー、ブラウンミル等を用い、不活性ガス雰囲気中にて行なうことが望ましい。粗粉砕工程では、原料合金に水素吸蔵後に脱水素することにより粉砕を行なうことが効果的である。ストリップキャスト法で作製した原料合金は狙い粒径程度の幅の主相成分がデンドライト状のRリッチ相に分断された構造になっており、Rリッチ相が水素吸蔵処理されることで膨張してクラックが入り、粗粉砕工程後の微粉砕工程での粉砕効率が向上し、焼成後の主相結晶粒子の粒度分布ばらつきの抑制にもつながる。
水素吸蔵処理は大気圧の水素ガス中に原料合金を暴露して行う。水素吸蔵時の保持温度は通常は室温であるが、希土類元素中のR2の含有比率が高い場合は、室温ではR2の含有比率が高いRリッチ相への水素吸蔵が困難となるため、室温よりも高い温度、例えば500℃以下とすることが好ましい。保持時間は、保持温度との関係、原料合金の組成、重量等によって変わり、1kg当たり少なくとも30分以上、望ましくは1時間以上とする。水素吸蔵後の脱水素処理は、希土類焼結磁石として不純物となる水素を減少させることを目的として行われる。
脱水素処理は真空又は不活性ガス雰囲気中で原料合金を加熱して行う。加熱温度は、200~400℃以上とし、望ましくは300℃とする。保持時間は、保持温度との関係、原料合金の組成、重量等によって変わり、1kg当たり少なくとも30分以上、望ましくは1時間以上とする。水素放出処理は、真空中又はArガスフローにて行う。尚、水素吸蔵処理、脱水素処理は必須の処理ではない。この水素粉砕を粗粉砕と位置付けて、機械的な粗粉砕を省略することもできる。
粗粉砕工程後、微粉砕工程に移る。微粉砕には主にジェットミルが用いられ、粒径数百μm程度の粗粉砕粉末を、平均粒径1.2μm~4μm、望ましくは1.5μm~3μmとする。
ジェットミルは、高圧の不活性ガスを狭いノズルより開放して高速のガス流を発生させ、この高速のガス流により粗粉砕粉末を加速し、粗粉砕粉末同士の衝突やターゲットあるいは容器壁との衝突を発生させて粉砕する方法である。粉砕された粉末は粉砕機内蔵の分級ロータおよび粉砕機下流のサイクロンによって分級される。
微粉砕には湿式粉砕を用いてもよい。湿式粉砕にはボールミルや湿式アトライタなどが用いられ、粒径数百μm程度の粗粉砕粉末を、平均粒径1.5μm~4μm、望ましくは2μm~3μmとする。湿式粉砕では適切な分散媒の選択により、磁石粉が酸素に触れることなく粉砕が進行するため、酸素濃度が低い微粉末が得られる。
本実施形態において、主相に含まれる結晶粒子の粒度分布を(D90-D10)/D50≦1.60を満たすためには、微粉砕工程後、回収した微粉砕粉末を再びジェットミルに投入して更に精密に分級する工程を設ける事が好ましい。
この分級工程の追加により、粒度分布がよりシャープな微粉砕粉末が得ることができる。
微粉砕粉末は成形工程に供される。なお、成形時の潤滑および配向性の向上を目的とした脂肪酸又は脂肪酸の誘導体や炭化水素を添加することができる。例えばステアリン酸系、ラウリル酸系やオレイン酸系脂肪酸類であるステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸アミド、ラウリル酸アミド、オレイン酸アミド、エチレンビスイソステアリン酸アミド、炭化水素であるパラフィン、ナフタレン等を微粉砕時に0.01wt%~0.3wt%程度添加することができる。
磁場中成形における成形圧力は0.3ton/cm ~3ton/cm (30MPa~300MPa)の範囲とすればよい。成形圧力は成形開始から終了まで一定であってもよく、漸増または漸減してもよく、あるいは不規則変化してもよい。成形圧力が低いほど配向性は良好となるが、成形圧力が低すぎると成形体の強度が不足してハンドリングに問題が生じるので、この点を考慮して上記範囲から成形圧力を選択する。磁場中成形で得られる成形体の最終的な相対密度は、通常、40%~60%である。
印加する磁場は、960kA/m~1600kA/m程度とすればよい。印加する磁場は静磁場に限定されず、パルス状の磁場とすることもできる。また、静磁場とパルス状磁場を併用することもできる。
成形体は焼結工程に供される。焼結は真空又は不活性ガス雰囲気中にて行われる。焼結保持温度および焼結保持時間は、組成、粉砕方法、平均粒径と粒度分布の違い等、諸条件により調整する必要があるが、凡そ1000℃~1200℃で1分~20時間であればよいが、4時間~20時間であることが好ましい。
焼結後、得られた焼結体に時効処理を施すことができる。この時効処理工程を経た後、隣接するR14B主相結晶粒子間に形成される粒界相の構成が決定される。しかしながら、これらの微細構造はこの工程のみで制御されるのではなく、上記した焼結工程の諸条件及び原料微粉末の状況との兼ね合いで決まる。従って、熱処理条件と焼結体の微細構造との関係を勘案しながら、熱処理温度、時間及び冷却速度を設定すればよい。熱処理は400℃~900℃の温度範囲で行えばよい。
以上の方法により、本実施形態に係る希土類磁石が得られるが、希土類磁石の製造方法は上記に限定されず、適宜変更してよい。
本実施形態に係る希土類磁石の着磁磁場Hmagと角形比とマイナー曲線平坦性の指標の定義と評価方法について説明する。
評価に必要な測定はBHトレーサーで行う。まず、本実施形態では、着磁磁場Hmagのうち、角形比とマイナー曲線平坦性が繰り返し測定に対して再現性を持つ必要最低限の磁場を、最低着磁磁場Hmagとして定義する。
具体的な評価方法を、図2に後述する実験例2-18の試料の場合で示す。一定磁場間隔で最大測定磁場を増加させながらヒステリシスループを測定し、ヒステリシスループが閉じて、かつ対称な形状となる(正側と負側の保磁力の差が5%未満)場合に繰り返し測定に対する再現性が保証されるため、その必要最低限の最大測定磁場を最低着磁磁場Hmagとする。
次に最低着磁磁場における角形比は、前記最低着磁磁場Hmagで測定したマイナー曲線の角形比Hk_Hmag/HcJ_Hmagを用いる。ここで、Hk_Hmagは最低着磁磁場Hmagで測定したマイナー曲線の第2象限で、磁化が最低着磁磁場Hmagで測定した残留磁束密度Br_Hmagの90%となる磁場の値、そしてHcJ_Hmagは最低着磁磁場Hmagで測定したマイナー曲線の保磁力である。
マイナー曲線平坦性の指標は下記のように定義し評価する。図3に実験例2-18の試料について、逆磁場Hrevを変化させながら測定したマイナー曲線群を示す。複数の逆磁場Hrevからの磁化曲線のうち、マイナー曲線の第2、第3象限の保磁力に相当する動作点(-HcJ_Hmag,0)からの磁化曲線(図3の太線)について、最低着磁磁場Hmag印加時の磁気分極Jsの50%となる磁場をH_50%Jsとしたときのマイナー曲線の保磁力HcJ_Hmagとの比
_50%Js/HcJ_Hmag
をもってマイナー曲線平坦性の指標とする。
可変磁束磁石として使用するためには、本実施形態に係る希土類磁石の最低着磁磁場Hmagは7.0kOe以下であることが好ましく、6.0kOe以下であることがより好ましい。
また、最低着磁磁場における本実施形態に係る希土類磁石の残留磁束密度(Br_Hmag)は9.5kG以上であることが好ましく、10.0kG以上であることがより好ましい。
また、最低着磁磁場における本実施形態に係る希土類磁石の保磁力(HcJ_Hmag)は5.0kOe以下であることが好ましく、4.0kOe以下であることがより好ましい。また、HcJ_Hmagは0.5kOe以上であることが好ましく、1.1kOe以上であることがより好ましい。HcJ_Hmagが小さすぎる場合、モータ回転中に磁石が減磁してしまう。
また、最低着磁磁場における本実施形態に係る希土類磁石の角形比(Hk/HcJ_Hmag)は少なくとも80%(0.80)以上であることが好ましく、90%(0.90)以上であることがより好ましい。
最低着磁磁場における本実施形態に係る希土類磁石のマイナー曲線平坦性(H_50%Js/HcJ_Hmag)は少なくとも50%(0.50)以上であることが好ましく、80%(0.80)以上であることがより好ましい。
次に、本実施形態に係るR-T-B系希土類永久磁石の高温での保磁力の低下率の評価について説明する。まず、室温(23℃)での試料の最低着磁磁場における保磁力を測定し、これをHcJ_23℃とする。次に試料を180℃に加熱し5分程度保持する。試料の温度が安定した状態にて、最低着磁磁場における保磁力を測定し、これをHcJ_180℃、とする。このとき、高温での保磁力の低下率δ(%/℃)を
δ=|(HcJ_180℃-HcJ_23℃)/HcJ_23℃/(180-23)*100|
で定義する。可変磁束磁石として使用するためには高温の保磁力の低下率は少なくとも0.45%/℃以下であることが好ましく、0.40%/℃以下がより好ましい。
続いて、本実施形態に係るR-T-B系希土類永久磁石の高温でのマイナー曲線平坦性の低下率の評価について説明する。まず室温(23℃)での最低着磁磁場におけるH_50%Js/HcJ_Hmagを測定し、これをP_23℃とする。次に試料を180℃に加熱し5分保持し、試料の温度が安定した状態にて、最低着磁磁場におけるH_50%Js/HcJ_Hmagを測定し、これをP_180℃とする。このとき、高温でのマイナー曲線平坦性の低下率ε(%/℃)を
ε=|(P_180℃-P_23℃)/P_23℃/(180-23)*100|
で定義する。可変磁束磁石として使用するためにはマイナー曲線平坦性の低下率は少なくとも0.30%/℃以下であることが好ましく、0.25%/℃以下がより好ましい。 本実施形態に係る希土類磁石の主相の平均結晶粒径、粒度分布、粒界相被覆率は、SEM(走査型電子顕微鏡)を用いて評価することができる。上記した磁気特性を評価した試料の研磨断面を観察し、反射電子組成像(COMPO)により、主相結晶粒子、および粒界相などそれ以外の相の確認を行う。倍率は観測対象の研磨断面において、所定の厚みを有する2粒子粒界相を認識できる倍率、例えば5000倍以上で撮影する。研磨断面は配向軸に平行であっても、配向軸に直交していても、あるいは配向軸と任意の角度であってよい。
図4に実験例2-18の試料断面のSEM反射電子像を示すが、この画像を画像解析ソフトに取り込んで、各主相結晶粒子1の輪郭を抽出し、断面積を求めた。得られた主相結晶粒子断面積の累積分布が10%、50%、90%となる面積円相当径をそれぞれD10、D50、D90としたとき、中央値D50を主相の平均結晶粒径として、(D90-D10)/D50を粒度分布として定義する。粒度分布(D90-D10)/D50が0である場合全くばらつきがないことを意味し、粒度分布(D90-D10)/D50が大きくなるほどばらつきが大きいことを示す。ここで、図5は、図4の画像の画像解析により抽出した主相結晶粒子の輪郭を示す図である。
図5において、同SEM反射電子像から抽出した各主相結晶粒子1の輪郭のうち、隣り合う別の主相結晶粒子1’に接触する部分3の長さと粒界相2に接触する部分4の長さとを区別して、粒子毎に個別に算出する。ここから、全主相結晶粒子1の輪郭の長さの合計に対する粒界相と接触する部分の長さの合計の比率を粒界相被覆率として算出する。
ここでは、粒界相のうち、交換結合が切れる3nmよりも十分に広い値(D50が1.0μm以上の場合は20nm、D50が1.0μm未満の場合は5nm)以上の幅で主相と異なる組成のコントラストを持つ領域を認識し、当該領域に接触する主相結晶粒子の輪郭部分が粒界相と接触する部分として検出されている。これらの一連の測定および算出を、その試料について5視野以上の磁石断面について行い、その平均値を各パラメータの代表値とする。
本実施形態に係る各種粒界相の組成及び面積比率は、SEM(走査型電子顕微鏡)、EPMA(波長分散型エネルギー分光法)を用いて評価することができる。上記した磁気特性を評価した試料の研磨断面の観察を行う。倍率は観測対象の研磨断面において200個程度の主相粒子が見えるように撮影するが、各粒界相のサイズや分散状態などに応じて、適宜適切に決定すればよい。研磨断面は配向軸に平行であっても、配向軸に直交していても、あるいは配向軸と任意の角度であってよい。この断面領域を、EPMAを用いて面分析し、これにより、各元素の分布状態が明らかになり、主相および各粒界相の分布状態が明らかになる。
更に、面分析を行った視野に含まれる一つ一つの粒界相をEPMAで点分析し、組成を定量的に求め、R-T-M相に属する領域と、Tリッチ相に属する領域と、Rリッチ相に属する領域を特定する。各領域において、RとTとMの原子数を[R]、[T]、[M]としたとき[R]/[T]>1.0の領域をRリッチ相、0.4≦[R]/[T]≦0.5かつ0.0<[M]/[T]<0.1の領域をR-T-M相、[R]/[T]<1.0かつR-T-M相以外の領域をTリッチ相と判別した。これらEPMAの面分析の結果と点分析の結果に基づき、同じ視野で観察したSEMによる反射電子像(組成に由来したコントラストが得られる。図4参照。)から、この観察視野画像を画像解析ソフトに取り込みR-T-M相、Tリッチ相、Rリッチ相に属する領域の面積比率を算出する。すなわち、ここでいう面積比率とは、全粒界相面積に対する各粒界相の面積の比率を意味する。これらの一連の測定および算出を、その試料について5視野以上の磁石断面について行い、その平均値を各パラメータの代表値とする。
以下、本発明の内容を実施例および比較例を用いて詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実験例1)
表1に示す組成のR-T-B系焼結磁石が得られるように原料を配合し、それらの原料を溶解したのち、ストリップキャスト法により鋳造して、フレーク状の原料合金を得た。
次いで、これらの原料合金に対して500℃で水素を吸蔵させた後、Ar雰囲気で300℃での1時間の熱処理の後、一旦室温まで冷却し、真空雰囲気で再び300℃での1時間の熱処理を行う水素粉砕処理を行った。その後、得られた粉砕物をAr雰囲気下で室温まで冷却した。
次に、水素粉砕処理を行った粗粉砕粉末に、粉砕助剤として、ラウリル酸アミド0.1質量%を添加した後、ジェットミルを用いて微粉砕を行った。微粉砕に際しては、微粉砕粉末の平均粒径が1.7μmとなるように、ジェットミルの分級ロータの回転速度を調節した。微粉砕工程後、回収した微粉砕粉末を再びジェットミルに投入して2回分級することで、分級精度を高め、粒度分布ばらつきを低減した。
得られた微粉砕粉末を、電磁石中に配置された金型内に充填し、1200kA/mの磁場を印加しながら120MPaの圧力を加える磁場中成形を行い、成形体を得た。
その後、得られた成形体を、焼結した。真空中1030℃で4時間保持して焼結を行った後、急冷して、焼結体(R-T-B系焼結磁石)を得た。そして、得られた焼結体をAr雰囲気下、590℃で1時間の時効処理を施し、実験例1-1~1-22の各R-T-B系焼結磁石を得た。
尚、本実施例では、上記のこの水素粉砕処理から焼結までの各工程を、50ppm未満の酸素濃度の不活性ガス雰囲気下で行った。
実験例1-1~1-22のR-T-B系焼結磁石について、組成分析を行った結果を表1に示す。表1に示した各元素の含有量はICP発光分析により測定した。
Figure 0007222359000001
実験例1-1~1-22で得られたR-T-B系焼結磁石について、配向軸を含む平面に沿った研磨断面をSEMにより観察し、観察像を画像解析ソフトに取り込んで、主相結晶粒子の平均結晶粒径D50と、粒度分布(D90-D10)/D50と、を評価した結果を、表2に示す。
また、実験例1-1~1-22で得られたR-T-B系焼結磁石について、配向軸を含む平面に沿った研磨断面をSEM及びEPMAにより観察し、粒界相の同定を行うとともに、研磨断面における主相及び各粒界相の組成を評価した。観察像を画像解析ソフトに取り込んで、各粒界相の面積比率と粒界相被覆率とを評価した結果を、表2に示す。
実験例1-1~1-22で得られたR-T-B系焼結磁石の磁気特性をB-Hトレーサーを用いて測定した。磁気特性として、室温(23℃)において、上記で規定した最低着磁磁場Hmag、同着磁磁場Hmagで測定したマイナー曲線の残留磁束密度Br_Hmag、保磁力HcJ_Hmag、角形比Hk/HcJ_Hmag、マイナー曲線平坦性の指標H_50%Js/HcJ_Hmagを評価した。さらに、高温(180℃)において、室温での保磁力に対する保磁力の低下率β、および高温(180℃)において、室温でのマイナー曲線平坦性に対するマイナー曲線平坦性の低下率γを求めた。結果を表3に示す。
Figure 0007222359000002
Figure 0007222359000003
実験例1-2~1-4、1-6、1-7、1-9~1-13のR-T-B系焼結磁石は、最低着磁磁場が7.0kOe以下、最低着磁磁場における残留磁束密度が9.5kG以上、保磁力が0.5kOe以上5.0kOe以下を満たし、最低着磁磁場においても高い角形比とマイナー曲線平坦性とを有する。したがって、0.16≦a/b≦0.28の範囲で、高残留磁束密度、低保磁力、かつ、着磁磁場が低い状態での高い角形比とマイナー曲線平坦性が得られていることが確認された。
実験例1-2~1-4、1-13のR-T-B系焼結磁石が、最低着磁磁場が7.0kOe以下、最低着磁磁場における残留磁束密度が9.5kG以上、保磁力が0.5kOe以上5.0kOe以下を満たし、最低着磁磁場においても高い角形比とマイナー曲線平坦性を持つ。したがって、0.050≦c/b≦0.075の範囲で高残留磁束密度、低保磁力、かつ、着磁磁場が低い状態での高い角形比とマイナー曲線平坦性が得られていることが確認された。
実験例1-15、1-16、1-18、1-19、1-21、1-22のR-T-B系焼結磁石の最低着磁磁場が、7.0kOe以下、最低着磁磁場における残留磁束密度が9.5kG以上、保磁力が0.5kOe以上5.0kOe以下を満たし、最低着磁磁場においても高い角形比とマイナー曲線平坦性を持つ。したがって、0.005≦d/b≦0.028の範囲で高残留磁束密度、低保磁力、かつ、着磁磁場が低い状態での高い角形比とマイナー曲線平坦性が得られていることが確認された。
(実験例2)
表4に示す組成のR-T-B系焼結磁石が得られるように原料を配合し、実験例1と同様にして、それぞれの組成について、原料合金の鋳造、水素粉砕処理、ジェットミルによる微粉砕、成形、焼結、時効処理を行った。
実験例2-1~2-38のR-T-B系焼結磁石について、実験例1と同様にして、組成分析した結果を表4に示す。また、組成分析結果より、xおよびyを算出し、xとyとの関係を図1にプロットした。図1中の番号1~38は、実験例2-1~2-38に対応する。
主相結晶粒子の平均粒径、粒度分布、粒界相被覆率、R-T-M相、Tリッチ相およびRリッチ相の面積比率を評価した結果を表5に示す。また、磁気特性を測定した結果を、表6に示す。
Figure 0007222359000004
Figure 0007222359000005
Figure 0007222359000006
表6に示されるように、実験例2-6~2-8、2-11~2-13、2-15~2-34および2-36のR-T-B系焼結磁石(図1では、黒三角で示す)は、最低着磁磁場が7.0kOe以下、最低着磁磁場における残留磁束密度が9.5kG以上、保磁力が0.5kOe以上5.0kOe以下を満たし、最低着磁磁場においても高い角形比とマイナー曲線平坦性を持つ。
したがって、xおよびyが図1に示す範囲内である場合には、高残留磁束密度、低保磁力、かつ、着磁磁場が低い状態での高い角形比とマイナー曲線平坦性が得られていることが確認された。
さらに、実験例2-6~2-8、2-11~2-13、2-15~2-34および2-36のR-T-B系焼結磁石(図1では、黒三角で示す)は、高温での保磁力の低下率が0.45%/℃以下、マイナー曲線平坦性の低下率が0.30%/℃以下であった。
したがって、c/b,(a-2c)/(b-14c)およびd/(b-14c)が上述した範囲内であり、かつ粒界相の被覆率、R-T-M相、Tリッチ相およびRリッチ相の面積比率が上述した範囲内であることにより、高残留磁束密度、低保磁力、かつ、着磁磁場が低い状態での高い角形比とマイナー曲線平坦性が得られることに加えて、高温での保磁力およびマイナー曲線平坦性の低下率が小さいことが確認された。
特に、y≧0.300を満たす実験例2-6~2-8、2-11~2-13、2-17~2-19、2-22~2-25、2-28~2-31および2-34のR-T-B系焼結磁石で、より高い角形比が得られていることも確認された。
また、0.000≦y≦0.111を満たす実験例2-15、2-16、2-20、2-21、2-26、2-27、2-32および2-36のR-T-B系焼結磁石で、より高い残留磁束密度およびマイナー曲線平坦性が得られていることも確認された。
(実験例3)
表7に示す組成のR-T-B系焼結磁石が得られるように原料を配合し、それぞれの組成について、以下に示す条件以外は、実験例1と同様にして、原料合金の鋳造、水素粉砕処理、ジェットミルによる微粉砕、成形、焼結、時効処理を行った。なお、実験例3-7については、実験例1と同様にして、原料合金の鋳造、水素粉砕処理、ジェットミルによる微粉砕、成形、焼結、時効処理を行った。
微粉砕工程では、微粉砕粉末の平均粒径が、実験例3-1では2.7μm、実験例3-2では3.7μm、実験例3-3では4.7μmとなるように、ジェットミルの分級条件を調節した。微粉砕工程後、実験例1と同様に、回収した微粉砕粉末を再びジェットミルに投入して2回分級することで、分級精度を高め、粒度分布ばらつきを低減した。上記以外は、実験例1と同様にして、R-T-B系焼結磁石を得た。
実験例3-4では、室温で水素を吸蔵させた後、Ar雰囲気で300℃での1時間の熱処理の後、一旦室温まで冷却し、真空雰囲気で再び300℃での1時間の熱処理を行う水素粉砕処理を行った以外は、実験例1と同様にして、R-T-B系焼結磁石を得た。実験例3-5では、原料合金を、室温で水素を吸蔵させた後、Ar雰囲気で300℃での1時間の熱処理の後、一旦室温まで冷却し、真空雰囲気で再び300℃での1時間の熱処理を行う水素粉砕処理を行い、微粉砕後のジェットミルによる分級を1回とした以外は、実験例1と同様にして、R-T-B系焼結磁石を得た。実験例3-6では、水素粉砕処理を行わず、スタンプミルにて機械的粗粉砕を行った以外は、実験例1と同様にして、R-T-B系焼結磁石を得た。
実験例3-1~3-7のR-T-B系焼結磁石について、実験例1と同様にして、組成分析した結果を表7に示す。また、主相結晶粒子の平均粒径、粒度分布、粒界相被覆率、R-T-M相、Tリッチ相およびRリッチ相の面積比率を評価した結果を表8に示す。また、磁気特性を測定した結果を表9に示す。
Figure 0007222359000007
Figure 0007222359000008
Figure 0007222359000009
表9より、実験例3-1、3-2、3-4、3-5および3-7のR-T-B系焼結磁石が、最低着磁磁場が7.0kOe以下、最低着磁磁場における残留磁束密度が9.5kG以上、保磁力が0.5kOe以上5.0kOe以下を満たし、最低着磁磁場においても高い角形比とマイナー曲線平坦性を有し、高温での保磁力およびマイナー曲線平坦性の低下率が小さい。
したがって、D50≦4.00μm、または、(D90-D10)/D50≦1.60の範囲で、高残留磁束密度、低保磁力、かつ、着磁磁場が低い状態での高い角形比とマイナー曲線平坦性が得られていることに加えて、高温での保磁力およびマイナー曲線平坦性の低下率が小さいことが確認された。また、Feの一部がCoで置換されていない場合であっても、同様の効果が得られることが確認された。
(実験例4)
表10に示す組成のR-T-B系焼結磁石が得られるように原料を配合し、実験例1と同様にして、それぞれの組成について、原料合金の鋳造、水素粉砕処理、ジェットミルによる微粉砕、成形、焼結、時効処理を行った。
実験例4-1~4-5のR-T-B系焼結磁石について、実験例1と同様にして、組成分析した結果を表10に示す。また、主相結晶粒子の平均粒径、粒度分布、粒界相被覆率、R-T-M相、Tリッチ相およびRリッチ相の面積比率を評価した結果を表11に示す。また、磁気特性を測定した結果を表12に示す。
Figure 0007222359000010
Figure 0007222359000011
Figure 0007222359000012
表12より、実験例4-1~4-5のR-T-B系焼結磁石が、最低着磁磁場が7.0kOe以下、最低着磁磁場における残留磁束密度が12kG以上、保磁力が0.5kOe以上5.0kOe以下を満たし、最低着磁磁場においても高い角形比とマイナー曲線平坦性とを有し、高温での保磁力およびマイナー曲線平坦性の低下率が小さい。
したがって、0.000≦y≦0.111の場合には、高残留磁束密度、低保磁力、かつ、着磁磁場が低い状態での高い角形比とマイナー曲線平坦性が得られることに加えて、高温での保磁力およびマイナー曲線平坦性の低下率が小さいことが確認された。
(実験例5)
表13に示す組成のR-T-B系焼結磁石が得られるように原料を配合し、実験例1と同様にして、それぞれの組成について、原料合金の鋳造、水素粉砕処理、ジェットミルによる微粉砕、成形、焼結、時効処理を行った。
実験例5-1~5-8のR-T-B系焼結磁石について、実験例1と同様にして、組成分析した結果を表13に示す。また、主相結晶粒子の平均粒径、粒度分布、粒界相被覆率、R-T-M相、Tリッチ相およびRリッチ相の面積比率を評価した結果を表14に示す。また、磁気特性を測定した結果を表15に示す。
Figure 0007222359000013
Figure 0007222359000014
Figure 0007222359000015
表15より、実験例5-1~5-8のR-T-B系焼結磁石が、最低着磁磁場が7.0kOe以下、最低着磁磁場における残留磁束密度が9.5kG以上、保磁力が0.5kOe以上5.0kOe以下を満たし、最低着磁磁場においても高い角形比とマイナー曲線平坦性とを有し、高温での保磁力およびマイナー曲線平坦性の低下率が小さい。
したがって、R1としてNd以外の元素を選択し、R2としてY以外の元素を選択した場合であっても、高残留磁束密度、低保磁力、かつ、着磁磁場が低い状態での高い角形比とマイナー曲線平坦性が得られることに加えて、高温での保磁力およびマイナー曲線平坦性の低下率が小さいことが確認された。
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。実施の形態は例示であり、いろいろな変形および変更が本発明の特許請求範囲内で可能なこと、またそうした変形例および変更も本発明の特許請求の範囲にあることは当業者に理解されるところである。従って、本明細書での記述は限定的ではなく例証的に扱われるべきものである。
本発明によれば、幅広い回転速度域にて高い効率を維持できる可変磁力モータに好適なR-T-B系希土類永久磁石を提供できる。
1…主相結晶粒子、1’…主相結晶粒子、2…粒界相、3…主相結晶粒子断面の輪郭のうち粒界相に接触する部分、4…主相結晶粒子断面の輪郭のうち主相結晶粒子に接触する部分


Claims (5)

  1. 組成式が(R11-x-ySmxR2yabcdで表されるR-T-B系希土類永久磁石であって、
    前記組成式において、R1は、SmおよびR2を含まない1種以上の希土類元素、R2は、Y、Ce、Laの一種以上の希土類元素、
    Tは、FeまたはFeおよびCoを必須とする1種以上の遷移金属、
    Mは、Ga、または、GaとSn、Bi、Siの1種以上とからなる元素であり、
    xおよびyは、(x,y)平面において、点A(0.010,0.600)、点B(0.010,0.400)、点C(0.050,0.000)、点D(0.150,0.000)、点E(0.100,0.600)を頂点とする5角形の辺を構成する直線上および当該直線に囲まれる領域内にあり、
    a、b、cおよびdが、
    0.16≦a/b≦0.28、
    0.050≦c/b≦0.075、
    0.005≦d/b≦0.028である関係を満足し、
    前記R-T-B系希土類永久磁石は、R214B型正方晶構造を有する化合物からなる主相と粒界相を含み、
    前記主相結晶粒子の平均結晶粒径D50は、D50≦4.00μmである関係を満足し、
    粒度分布が(D90-D10)/D50≦1.60である関係を満足し、D10、D50、D90は、任意の断面における主相結晶粒子の断面積の累積分布が10%、50%、90%となる面積円相当径であり、
    前記粒界相の被覆率が70.0%以上であることを特徴する、R-T-B系希土類永久磁石。
  2. a、b、cおよびdが、
    0.050≦c/b≦0.070、
    0.25≦(a-2c)/(b-14c)≦2.00、
    0.025≦d/(b-14c)≦0.500である関係を満足し、
    前記粒界相の任意の断面において、全粒界相面積に対するLa6Co11Ga3型結晶構造を有するR-T-M相の面積比率が10.0%以上であり、
    前記全粒界相面積に対するTリッチ相(RとTの原子数を[R]、[T]としたとき[R]/[T]<1.0であり、前記R-T-M相以外の相)の面積比率が60.0%以下であり、
    前記全粒界相面積に対するRリッチ相(RとTの原子数を[R]、[T]としたとき[R]/[T]>1.0となる相)の面積比率が70.0%以下であることを特徴とする請求項1に記載のR-T-B系希土類永久磁石。
  3. y≧0.300であることを特徴とする請求項1または2に記載のR-T-B系希土類永久磁石。
  4. 0.000≦y≦0.111の場合であることを特徴とする請求項1または2に記載のR-T-B系希土類永久磁石。
  5. 最低着磁磁場における保磁力(HcJ _Hmag )が5.0kOe以下である請求項1から4のいずれかに記載のR-T-B系希土類永久磁石。
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