JP2010045068A - 永久磁石およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 モータ用磁石に好適な低保磁力、高角型比を有する希土類―鉄―ボロン系磁石およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 所定の組成を具備する保磁力が0.5kOe以上5kOe以下かつ10kOeの磁場での磁化に対する残留磁化の比で表した角型比が85%以上である永久磁石。(R11−x−yR2R3FeCo、R1:Nd,Prから選ばれる少なくとも1種、R2:Sm,La,Ceから選ばれる少なくとも1種、R3:Tb,Dyから選ばれる少なくとも1種、M:Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Cr,Mo、W,Mn、Ni,Cuから選ばれる少なくとも1種、X:Ga,Si,Alから選ばれる少なくとも1種を満たすものが好ましい。
【選択図】 図2

Description

本発明は永久磁石、特にモータ用に適した低保磁力、高角形比を具備した永久磁石およびその製造方法に関する。
従来、永久磁石として、アルニコ磁石、フェライト磁石、Sm−Co磁石、Nd−Fe−B磁石などが知られており、これら永久磁石は、その仕様によりVCM、スピンドルモータなどの各種モータ、計測器、スピーカー、医療用MRI等の他、各種電気機器のキー部品として、それぞれ適正な磁石が使用されている。
これらの磁石のうち、多量のFeまたはCoと、希土類元素とを含有している。Fe,Coは飽和磁束密度の増大に寄与し、一方、希土類元素は、結晶場中の4f電子の挙動に由来する非常に大きな磁気異方性をモータらすため、保磁力の増大に寄与し、良好な磁石特性を実現している。
近年、各種電気機器の小形化、省エネルギー化の要求が高まり、これら機器のキー部品材料である永久磁石にもより高い最大エネルギー積[(BH)max]、大きな保磁力と磁石特性の温度特性改善が求められてきた。
永久磁石の応用分野として、特にモータが省エネの観点から注目されており、これに使用すると従来の誘導型に比べ、損失を大幅に低減できるため、車載、家電応用など、各種用途の省エネ技術として広がってきている。
一般に、永久磁石モータは大きく分けて2種類のタイプがある。回転子鉄心の外周に永久磁石を貼り付けた表面磁石型永久磁石モータと永久磁石を回転子鉄心の中に埋め込んだ埋め込み型永久磁石モータである。可変速駆動用モータには埋め込み型永久磁石モータが適している。
図1を用いて、埋め込み型永久磁石モータの回転子の構成を説明する。図1において、11は回転子、12は回転子鉄心、14は高保磁力永久磁石を示している。回転子鉄心12の外周部に長方形の空洞を等配で極数の数だけ設ける。図1は4極の回転子11であり、4個の空洞を設けて永久磁石14を挿入する。永久磁石14は回転子の半径方向、又は、永久磁石14の断面の長方形におけるエアギャップ面に対向する辺に直角方向に磁化される。永久磁石14は負荷電流により減磁しないように保磁力の高いNdFeB永久磁石等が主に適用される。回転子鉄心12は空洞を打抜いた電磁鋼板を積層して形成する。このようなモータとして特開平11−136912号公報(特許文献1)に記載されている永久磁石式リラクタンス型回転電機が挙げられる。
永久磁石式回転電機では、永久磁石の鎖交磁束が常に一定で発生しているので永久磁石による誘導電圧は回転速度に比例して高くなる。低速から高速まで磁化を変化させながら運転する場合は、高速回転では永久磁石による誘導電圧が極めて高くなり、永久磁石による誘導電圧がインバータの電子部品に印加し、電子部品の耐電圧以上になると部品が絶縁破壊する。そのため、永久磁石の磁束量が耐電圧以下になるように削減された設計が行うことが考えられるが、永久磁石式回転電機の低速域での出力及び効率が低下する。
低速から高速まで定出力に近い磁化を変化させながら運転を行う場合、永久磁石の鎖交磁束は一定であるので、高速回転域では回転電機の電圧が電源電圧上限に達して出力に必要な電流が流れなくなる。その結果、高速域では出力が大幅に低下し、さらには高速までの広範囲で駆動できなくなるため、最近では磁化を変化させながら運転する範囲を拡大する方法として弱め磁束制御が適用されはじめた。弱め磁束制御は、d軸電流による減磁界を高保磁力永久磁石4に作用させ、可逆の範囲で永久磁石の磁気的な動作点を移動させて磁束量を変化させる。このため、永久磁石は減磁界により不可逆減磁しないように高保磁力のNdFeB磁石を適用する。
d軸電流の減磁界により永久磁石の鎖交磁束が減少するので、鎖交磁束の減少分が電圧上限値に対する電圧の余裕分をつくる。そして、電流を増加できるので高速域での出力が増加する。また、電圧余裕分だけ回転速度を上昇させることができ、磁化を変化させながら運転できる範囲が拡大される。
しかし、永久磁石に減磁界を与え続ける必要があり、出力には寄与しないd軸電流を常時流し続けるため銅損が増加して効率は悪化する。さらに、d軸電流による減磁界は高調波磁束を生じ、高調波磁束等で生じる電圧の増加は弱め磁束制御による電圧低減の限界をつくる。これらより埋め込み型永久磁石式回転電機に弱め磁束制御を適用しても基底速度の3倍以上の可変速運転は困難である。さらに、前記の高調波磁束により鉄損が増加し、高調波磁束による電磁力で振動を発生する。
また、ハイブリッド自動車用駆動モータに埋め込み型永久磁石モータを適用した場合、エンジンのみで駆動される状態ではモータは連れ回される。中・高速回転ではモータの永久磁石による誘導電圧が電源電圧以上になり、弱め磁束制御でd軸電流を流し続ける。この状態では、モータは損失のみを発生するので総合運転効率が悪化する。
このため、上述したような従来技術の問題点に対して、特開2006−280195号公報(特許文献2)では低速から高速までの広範囲で磁化を変化させながらの運転を可能とし、低速回転域の高トルク化と中・高速回転域での高出力化、効率の向上、信頼性向上を提供することのできる全体または一部の永久磁石の磁化状態を変化させることができるモータ(永久磁石式回転電機)が提案されている。
すなわち、この永久磁石式モータは図2(特許文献2の図1)に示したような、固定子巻線を設けた固定子と、回転子鉄心中に前記固定子巻線の電流で作る磁界により不可逆的に磁束密度が変化する程度の保磁力を有する低保磁力永久磁石と前記低保磁力永久磁石の2倍以上の保磁力を有する高保磁力永久磁石とを配置した回転子とを備えたことものである。すなわち、低速から高速までの広範囲で可変速運転を可能とし、低速回転域の高トルク化と中・高速回転域での高出力化、効率の向上、信頼性向上を実現した永久磁石式回転電機を提供できる。この永久磁石モータに用いられる磁石は高保磁力磁石がNdFeB磁石であり、低保磁力磁石はアルニコ磁石、あるいはFeCrCo磁石が示されている。
特許文献2に、低保磁力永久磁石としてアルニコ磁石(AlNiCo)またはFeCrCo磁石、高保磁力永久磁石としてのNdFeB磁石を示している。アルニコ磁石の保磁力(磁束密度が0になる磁界)は60〜120kA/mであり、NdFeB磁石の保磁力950kA/mに対して1/15〜1/8になる。また、FeCrCo磁石の保磁力は約60kA/mであり、NdFeB磁石の保磁力950kA/mに対して1/15になる。アルニコ磁石とFeCrCo磁石は、NdFeBの高保磁力磁石と比較してかなり低保磁力であり、この低保磁力を利用して、全体または一部の永久磁石の磁化状態を変化させることができるモータを作製する。実施形態では、低保磁力永久磁石の8〜15倍の保磁力を有する高保磁力永久磁石を適用しており、これにより優れた特性の回転電機を得ることとしている。
一方、高保磁力の開発を目的としたNdFeB磁石が公開されている。例えば、下記の特許に様々な技術が開示されている。
特公昭63−65742号公報(特許文献3)は、室温以上で磁気的に安定で、磁気異方性を有するFe−B−R三元化合物(但しRはNdとPrの一種又は二種)を含み、かつ合金組成が原子百分率でR8〜30%、B2〜28%、及び残部実質的にFeから成ることを特徴とする強磁性合金に関する。また、室温以上で磁気的に安定で、磁気異方性を有するFe−B−R三元化合物(但しRはその50原子%以上がNdとPrの一種又は二種以上から成り、残部Dy、Ho、Tb、La、Ce、Gd、Yのうち少なくとも一種)を含み、かつ合金組成が原子百分率でR8〜30%、B2〜28%、及び残部実質的にFeから成ることを特徴とする強磁性合金に関するものである。R−Fe−Bからなる強磁性合金は、300℃前後のキユリー点を示すとともに、異方性磁界が100kOe以上に達するものがあることを見出している。
特公平3−19296号公報(特許文献4)は、原子百分比で希土類元素(R)としてNd,Pr,Dy,Ho,Tbのうち少なくとも一種8〜30%、B2〜28%及び残部実質的にFeからなるFe−B−R系磁気異方性焼結体永久磁石において、前記Feの一部を全組成に対して50%以下(0%を除く)のCoで置換したことを特徴とする永久磁石である。また、原子百分比で、希土類元素(R)としてNd,Pr,Dy,Ho,Tbのうち少なくとも一種とLa,Ce,Pm,Sm,Eu,Gd,Er,Tm,Yb,Lu,Yのうち少なくとも一種の合計8〜30%、B2〜28%及び残部実質的にFeからなるFe−B−R系磁気異方性焼結体永久磁石において、前記Feの一部を全組成に対して50%以下(0%を除く)のCoで置換したことを特徴とする永久磁石である。Co置換により、キュリー温度を高めることができ、磁石の温度特性向上、耐食性の向上に有効であることを報告している。
特公平3−20047号公報(特許文献5)は、優れた磁気特性を有する永久磁石の製造方法に関するものであり、所定の組成にした合金を粉砕し、成形し、焼結し更に熱処理する一連の工程を含むものである。
また、特公平3−25922号公報(特許文献6)は、保磁力と平均結晶粒径の関係から優れた磁石特性を示す好ましい範囲を示したものである。RFeB系永久磁石材料では、平均結晶粒径が1〜80μmの範囲でHc1kOe以上が得られ好ましくは2〜40μmの範囲でHc4kOe以上が得られる。本発明の永久磁石材料は好ましくは焼結体として得られる。
特公平7−107882号公報(特許文献7)は、RFeB磁石に含まれる酸素を重量比で3000〜12000PPM、窒素を重量比で50〜300PPM含有することを特徴とする永久磁石に関するもの。
また、特公平4−53083号公報(特許文献8)は、NdFeB磁石のNdの一部をCeで置換した合金を、粉末冶金法により製造されることを特徴とするもの。Nd−Fe−B系への適当量のCeの添加で効果を見い出したものである。
また、特公平6−24163号公報(特許文献9)は、希土類元素をCe、Laを主とした組成で、4kOe以上の保磁力を有し、合金の溶湯を超急冷して得られたものであることを特徴とする液体急冷永久磁石に関するものである。
特公平6−6775号公報(特許文献10)は、低コストで高性能な焼結および樹脂結合磁石に関するものである。すなわち、Ce−La−(ジジム)−Feに半金属を加えた組成で、一般式は、原子比で、Ce1-x-y-zPrNdLa(Fe1-mで表される。但し、MはB,C,Si,Ge,P,Sの各元素のうち1種または2種以上の元素からなり、x,y,z,t,m,nは、0.1≦x≦0.5、0.1≦y≦0.85、0<z≦0.1、0.02≦m≦0.2、4.0≦n≦8.0、0<1−x−y−z<0.8、の値の範囲とする。ここで、Laは必須であり、本磁石の特性は保磁力では7.3kOe以上と高特性が得られている。ここで、ジジムとはNd−Prを主とする混合物であり、希土類元素を分離する前の段階の材料である。
また、特公平6−6776号公報(特許文献11)も、低コストで高性能な焼結および樹脂結合磁石に関するものである。すなわち、Ce−La−(ジジム)−Fe―BにCoを置換した組成であり、保磁力7.9kOe以上と高特性が得られている。
また、特公平6−942号公報(特許文献12)も、低コストで高性能な焼結および樹脂結合磁石に関するものである。すなわち、Ce−(ジジム)−FeにM元素を置換した組成であり、保磁力7.5kOe以上と高特性が得られている。
また、特公平6−2930号公報(特許文献13)も、低コストで高性能な焼結および樹脂結合磁石に関するものである。すなわち、Ce−(ジジム)−Fe―BにCoを置換した組成であり、保磁力7.9kOe以上と高特性が得られている。
特開平11−136912号公報 特開2006−280195号公報 特公昭63−65742号公報 特公平3−19296号公報 特公平3−20047号公報 特公平3−25922号公報 特公平7−107882号公報 特公平4−53083号公報 特公平6−24163号公報 特公平6−6775号公報 特公平6−6776号公報 特公平6−942号公報 特公平6−2930号公報
いずれの特許文献も、高保磁力化を目指したものであり、今回適用する全体または一部の永久磁石の磁化状態を変化させることができるモータにおける低保磁力磁石のコンセプトを十分発揮できるものではない。一方、全体または一部の永久磁石の磁化状態を変化させることができるモータに適用する低保磁力磁石は、アルニコ磁石を用いた場合よりも、さらに広い範囲の磁束制御による効率向上が求められていた。
本発明は、モータ、特に全体または一部の永久磁石の磁化状態を変化させることができるモータのさらなる高出力、効率向上、信頼性向上に対して、所定の動作条件での最適磁束量の設定ができる必要があり、これに適した、特に低保磁力磁石に最適な永久磁石およびその製造方法を提供することを目的とする。本永久磁石モータは、洗濯機、エアコンなどの家電用途、車載用途、電車用途など各種容量のモータの高効率化に極めて有効な永久磁石を提供するものである。
本発明の全体または一部の永久磁石の磁化状態を変化させることができるモータ用永久磁石に好適な磁石として、希土類元素を含有する磁石を用いることが好ましい。さらに、この磁石は希土類元素としてNd、さらに鉄とホウ素を必須とする磁石を用いることが好ましい。また、希土類元素と鉄とホウ素を必須とする磁石は、正方晶構造からなる主相と希土類を多く含む低融点相からなることを特徴とするものである。
さらに、本発明の永久磁石は、以下の一般式を満たすとともに、保磁力が0.5kOe以上5kOe以下、かつ10kOeの磁場での磁化に対する残留磁化の比で表した角型比が85%以上であることを特徴とするものである。
これらの値を実現する具体的な組成として、以下の一般式を満たすことを特徴とする永久磁石である。
(R11−x−yR2R3FeCo
R1:Nd,Prから選ばれる少なくとも1種
R2:Sm,La,Ceから選ばれる少なくとも1種
R3:Tb,Dyから選ばれる少なくとも1種
M:Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Cr,Mo、W,Mn、Ni,Cuから選ばれる少なくとも1種
X:Ga,Si,Alから選ばれる少なくとも1種
0≦x≦0.25
0≦y≦0.1
0≦x+y≦0.3
12≦a≦18
55≦b≦75
1≦c≦30
3.5≦d≦5.5
0≦e≦5
0≦f≦5
0≦g≦5
a+b+c+d+e+f+g=100原子%
また、第2および第3象限の平均リコイル透磁率1.00〜1.08であることが好ましい。また、主相である正方晶相と低融点相の2つの相が主たる相であることが好ましい。また、永久磁石は焼結体であることが好ましい。特に、保磁力が0.5kOe以上5kOe以下、10kOeの磁場での磁化に対する残留磁化の比で表した角型比が85%以上で、かつ第2および第3象限の平均リコイル透磁率1.00〜1.08を具備する永久磁石は全体または一部の永久磁石の磁化状態を変化させることができるモータ用永久磁石に好適である。
また、本発明の永久磁石の製造方法は、以下の一般式を満たす合金粉末を磁場中成形することにより成形体を調整する成形工程、成形体を不活性雰囲気中1000℃以上1200℃以下の温度で10分以上10時間以下焼結および溶体化することにより焼結体を得る焼結工程、焼結体を500℃以上750℃以下の温度で、10分以上10時間以下熱処理するとともに、熱処理後の冷却速度0.1〜50℃/minで室温まで冷却する時効処理工程を具備することを特徴とするものである。
本発明によれば低保磁力および高角形比を具備した永久磁石を提供できるので、モータ、特に全体または一部の永久磁石の磁化状態を変化させることができるモータ用永久磁石の低保磁力側磁石に好適である。また、本発明の製造方法であれば低保磁力および高角形比の永久磁石を効率よく製造することができる。
本発明のモータ、特に全体または一部の永久磁石の磁化状態を変化させることができるモータ用永久磁石に好適な磁石として、室温の保磁力が0.5kOe以上、5kOe以下、かつ10kOeの磁場での磁化に対する残留磁化の比で表した角型比が85%以上の磁石を用いることを特徴とする。なお、角型比は好ましくは90%以上である。また、第2および第3象限の平均リコイル透磁率1.00〜1.08であることが好ましく、いずれもモータの効率の向上に好ましい。
本発明のモータ、特に全体または一部の永久磁石の磁化状態を変化させることができるモータ用永久磁石に好適な磁石として、これらの特性を得る磁石にさらに、この磁石は、NdあるいはPrと鉄とホウ素を必須とする磁石を用いることが好ましい。また、NdあるいはPrと鉄とホウ素を必須とする磁石は、正方晶構造からなる主相と希土類を多く含む低融点相からなることを特徴とするものである。
まず、保磁力は0.5kOe以上5kOe以下である。保磁力が0.5kOe未満では全体または一部の永久磁石の磁化状態を変化させることができるモータにおける磁束制御範囲が狭くなり、5kOeを超えるとこの磁石の磁化を反転させるのに多大な電気エネルギーを必要とするため、省エネ効果が大きく低減する。そのため、好ましくは1〜4kOe、さらに好ましくは1〜3.5Oeである。また、角型比は85%以上であり、85%未満では全体または一部の永久磁石の磁化状態を変化させることができるモータにおける、磁束制御範囲が狭くなるため、高効率運転できる範囲が狭くなる。角型比の好ましい値は90〜100%である。なお、本発明の角型比は10kOeの磁場での磁化に対する残留磁化の比で表した値である。10kOeを選択したのは本発明の永久磁石は保磁力が5kOe以下と低保磁力であるため、10kOeの磁場中ではほぼ磁気的に飽和しており、角型比の定義に適しているためである。永久磁石の場合、通常は残留磁化の2乗を4で割った値が最大エネルギー積の理論値であり、実際の最大エネルギー積の値をこの値で割ったものが角型比とされているが、本発明の永久磁石は保磁力を比較的小さい値で制御しているため、角型性を表す新たな指標として、軟磁性材料で適用する角型比を参考に用いた。
また、第2,3象限の平均リコイル透磁率1.00〜1.08であることが好ましい。リコイル透磁率が1.00未満は原理的にあり得ず、1.08を超えると全体または一部の永久磁石の磁化状態を変化させることができるモータの磁束制御量が低減してしまい、高効率運転できる範囲が狭くなる。好ましいリコイル透磁率は1.07以下である。
リコイル透磁率は試料振動型磁力計を用いて第2、3象限での磁化の磁場による変化、たとえば15kOeから磁場ゼロに至る変化から求める。具体的には、パルス磁場60kOeで着磁した試料を着磁した方向とは逆に−15kOeまで磁場を加え、そこから0まで磁場の強さを変化させて磁化測定を行なう。この後、−14kOeまで磁場を印加したのち、同様に磁場ゼロまで変化させ、磁化を測定する。これを、1kOeごとに繰り返し、第3象限から第2象限の範囲で測定する。リコイル透磁率は直線と近似し、各磁場(−15kOe、−14kOe、…)と磁場ゼロにしたときの磁化の差を磁場変化量で割った値であり、それらを平均したものが平均リコイル透磁率である。
保磁力、角型比は通常の測定で、最大磁場10kOeでフルループ測定したときの保磁力と、角型比は10kOeでの磁化に対する残留磁化である。
次に一般式に示した各元素について説明する。
ここで、R1すなわちNdあるいはPrから選ばれる少なくとも1種は本発明の必須元素であり、Fe,Bとともに正方晶構造を主相とする(希土類)2Fe14B相を形成する。また、保磁力の制御のために、R2あるいはR3を用いることができる。R2はLa,Ce,Smから選ばれる少なくとも1種であり、保磁力の低減に有効な元素である。その量x値は0以上0.25以下であり、好ましくはx値が0.01〜0.2である。また、R3はDy,Tbから選ばれる少なくとも1種であり、こちらは保磁力の増大に有効な元素である。その量y値は0以上、0.1以下であり、好ましくはy値が0.01〜0.1である。
さらに、希土類元素全体量a値は12at%以上18at%以下であり、この範囲で所定の保磁力と角型比、および適正なリコイル透磁率が得られる。好ましくは13at%以上17at%であり、さらに好ましくは14at%以上16at%以下である。
Feは希土類元素、Bとともに本磁石の基本となる必須元素であり、いわゆる(希土類元素)2Fe14B1磁石と同じ正方晶構造をもつ。その量55at%以上75at%以下である。この範囲から外れると、異相が大量に析出してしまい、高角型比が得られにくくなる。好ましくは57at%以上、73at%以下であり、さらに好ましくは60at%以上、70at%以下である。また、CoはFeサイトの一部を置換できるが、特に本発明ではキュリー温度を向上させるのに有効である。その量は1at%未満では効果が少なく、30at%を超えるとリコイル透磁率が大きくなるとともに、これを超えると高角型比が得られなくなる。好ましくは、2at%以上、25at%以下である。
B(ホウ素)は上記の通り、本発明の磁石における基本元素の一つであり、所定の結晶構造を形成するための必須元素である。また、この量dを制御することにより、NdあるいはPrの通常の磁石に用いられる希土類元素を用いても、所定の磁気特性(保磁力、角型比、リコイル透磁率)を得ることが出来る。すなわち、その量は3.5at%以上5.5at%以下であり、好ましくは4at%以上、5at%以下である。
M元素は、Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Cr,Mo、W,Mn,Ni,Cuから選ばれる少なくとも1種であり、結晶粒制御による高角型性制御、あるいは保磁力制御に有効である。その量e値は5at%以下であり、好ましくは4at%以下である。好ましい元素はTi,Zr,Nb,Cuである。また、e値の下限は0.01at%以上であることが好ましい。
X元素はGa,Al,Siから選ばれる少なくとも1種であり、こちらも保磁力制御に有効な元素である。その量は5at%以下であり、好ましくは4at%以下である。好ましい元素は、Ga,Alである。また、f値の下限は0.01at%以上であることが好ましい。
C(炭素)は結晶構造におけるBのサイトを、結晶構造を保ったまま置換できる元素であり、磁気異方性の制御に有効である。その量は5at%以下、好ましくは0.01at%以上3at%以下(0.01≦g≦3)である。また、Cの含有量はBの含有量を超えないこと(d値≧g値)が製造面から好ましく、d値<g値になると磁気特性のばらつきが大きくなり始める。
本発明における磁石の主相の結晶構造は正方晶構造であり、原子比で(希土類元素):(FeCo):B=2:14:1で表される。また、副相として希土類リッチ相が存在してもよい。さらに、酸化物相、主相以外の硼化物相などが含まれていてもよい。
本発明の磁石は、上記組成に加え、酸素5000wtppm以下、水素2000wtppm以下、窒素1000wtppm以下含有されていても良い。特に、水素は水素粉砕などプロセス上水素を用いる場合に、多少残留する場合があるが、特性面には問題ない。また、上記構成成分以外の元素(不純物含む)が0.1wt%以下含有されていても良い。
本発明の永久磁石の製造方法は特に限定されるものではないが、効率よく得る方法として次のものが挙げられる。上記の磁石は、通常の希土類−鉄−Bからなる磁石と同様なプロセス、すなわち合金の溶解・鋳造あるいはストリップキャスト、粉砕、磁場中成形、焼結、熱処理の工程で、所定の磁気特性を発現することが出来る。
ここで、合金の鋳造あるいはストリップキャストについては、母合金の均質性からストリップキャスト法が好ましく、得られるフレークの板厚はおおよそ70μm以上2mm以下である。好ましくは、100μm以上1mm以下が主体となることが好ましい。粗粉砕は、ジョークラッシャー、スタンプミルなどを用いて行なう。なお、ストリップキャストで得られた試料の場合は、粗粉砕は不要の場合もある。また、ストリップキャストで作製した試料は副相が均質に分散しているため、特性の安定化には有効である。
また、粗粉砕後、微粉砕を行うことが好ましく、微粉砕処理はジェットミルを用いることが好ましく、その平均粒径は1〜50μmのものを用いることが好ましい。1μm以下では十分な焼結密度が得られにくく、また処理の間に酸化が起こりやすく、特性劣化の要因となる。一方、50μmを超えると角型性が悪くなり、また焼結後のリコイル透磁率も大きくなってしまう。好ましくは2〜40μmであり、さらに好ましくは3〜30μmである。一方、水素を用いた水素粉砕でも良いが、この手法では所定の平均粒径にまで到達しないことがあるため、複数回水素吸蔵放出を繰り返す、あるいは水素粉砕の後、ボールミルのような湿式法あるいはジェットミルのような乾式法でさらに粉砕することでもよい。
磁場中成形は、縦磁場あるいは横磁場でも良く、その際の磁場は配向させるためには強い方が好ましいが10〜20kOeあればよい。また、成形圧力は高いほうが好ましいが、これも100kg/cm以上あればよい。
焼結は、1000℃から1200℃までの温度範囲で、10分〜10時間焼結する。その後の冷却速度は、1〜100℃/min.で冷却する。1000℃未満では焼結が進まず、高い残留磁化が得られない。一方1200℃を超えると、液相が多く出過ぎてしまい、所定形状に成形した形態を保てなくなり、磁場中成形した効果が激減する。また、焼結時間は10分未満では焼結が進まず、10時間を超えた場合、それ以下の時間と差はなく、エネルギー消費の観点から10時間以下が好ましい。好ましくは、30分以上8時間以下である。冷却速度は1℃/min未満では、磁石特性にばらつきが大きくなり、一方100℃/minを超えると、低融点相の析出が困難になるため、保磁力にばらつきが生じる。また、場合によっては作製した焼結体にクラックが入ることがある。また、焼結温度は主相の融点より20〜80℃低い温度であることが好ましい。
時効処理は焼結に引き続き行っても、一旦室温まで冷却後、再加熱して行っても良い。時効の条件は、500℃以上750℃以下の温度で、10分〜10時間行なえばよく、その後の冷却速度は0.1〜50℃/min.で200℃まで冷却する。500℃未満では、焼結時の保磁力を維持するため、低保磁力が得られにくく、一方750℃を超えると保磁力が回復してしまい、低保磁力が得られにくくなる。好ましくは、550℃以上、700℃以下である。時効時間は10分未満では効果が出にくく、一方10時間を超えると磁石特性の制御が困難な状態となる。このため、10時間以下が好ましい。さらに好ましくは、30分以上、8時間以下である。なお、時効処理は2段以上の多段熱処理でもよいが、いずれにしても時効温度は高温側から低温側に移動していくことが好ましく、多段処理で角型性が向上する。なお、多段処理とした場合も熱処理時間の合計は10分〜10時間の範囲が好ましい。
また、時効処理後の冷却速度は0.1〜50℃/minであることが必要である。冷却速度0.1℃/min未満では低融点相が一部に凝集してしまい、保磁力の制御が困難になる、50℃/minを超えると低融点相の析出が不十分となり、保磁力のばらつきが大となる。また、好ましい冷却速度は1〜30℃/minである。
また、時効処理として、多段時効処理の代りに時効処理の際に500℃から750℃以下の温度範囲を空冷・水冷等の冷却方法により一定の冷却速度で冷却を行ってもよいが、その際の冷却速度は0.1℃/minから50℃/minであることが必要である。なお、これら時効処理は焼結後そのまま行つても、焼結後一旦室温まで冷却後再び昇温して行つてもよい。
このプロセスでの雰囲気は非酸化雰囲気が好ましく、Ar、窒素、真空中での処理が好ましい。なお、焼結密度は95%以上あればよい。焼結密度は(アルキメデス法による実測値/理論密度)×100%で求める。
上記のプロセスで得られた磁石は、高磁気異方性の主相(正方晶を主とする希土類−鉄−ホウ素相)と非磁性の希土類リッチ相を主体に形成されており、非磁性希土類リッチ相は20体積%以下が好ましい。これを超えると、飽和磁束密度および残留磁束密度が低下してしまい、磁束の制御が十分でなくなってくる。一方、3%以下になると、非磁性相が少なくなりすぎ、主相間に非磁性相が存在しない箇所が増えるために、保磁力および角型性の制御が困難となる。
また、本発明の特徴として、Feを主体とする相を含有する。この相は、時効により析出する相で、合金組成によってCoなどが含有されるが、軟磁性相であるため、保磁力の低下させる制御に効果をもたらす。
ただし、析出しすぎると角型性が低下するとともに、保磁力も低くなりすぎる。
好ましくは、10体積%以下である。
希土類リッチ相は構成する希土類金属元素が60〜90at%と残部Feおよび酸素を主体とする。なお、その他の非磁性相である、例えば希土類酸化物相、硼化物相などが10体積%以下で含まれていても良い。得られた磁石は、耐酸化性を持たせるために、Niめっき、Cuめっき、Alめっきなど各種表面処理を行なうことにより、様々な環境下で使用することが出来る。
(実施例)
(実施例1〜30)
表1に示す組成について、原料粉末を調製したのち、高周波誘導加熱炉で溶解し、そのままストリップキャスト法にて、板厚100〜300μmのフレーク状試料を作製した。得られた試料を、ジェットミルで表1に示した平均粒径に微粉砕した後、磁場10kOe、プレス圧0.5t/cmの条件で磁場中成形した。得られた成形体を、主相の融点より20〜80℃低い温度で3時間の条件で焼結し、50℃/minの速度で室温まで冷却した。この後、600から650℃、30分〜2時間熱処理を行ない、20℃/minの割合で冷却した。これらの処理は、全てAr雰囲気中で行なっている。また、各実施例に係る永久磁石は密度98%以上の焼結体である。
X線回折評価結果から、いずれも実施例の試料はα―Feの最強回折ピークが2θ=45°近傍に見られる。
いずれも、試料を100個作製し、磁石特性の評価として、残留磁束密度(Br)、保磁力(Hc)、角型比、リコイル透磁率、Hcレンジを測定した。残留磁束密度(Br)、保磁力(Hc)、角型比、リコイル透磁率については前述の方法を用いて測定し、100個の平均値とした。また、Hcレンジは保磁力のばらつきを示すもので100個測定した保磁力(Hc)の「最大値−最小値」から求めた。その結果を表1に示す。
Figure 2010045068
これらの実施例について、磁石特性を評価した結果、表1に示すとおり、高角型比と低保磁力、および小さなリコイル透磁率が得られた。
(比較例)
(比較例1〜7)
表2に示す比較例1〜7の組成に調合した素材を高周波溶解し、水冷鋳型に鋳造した後、スタンプミルで35メッシュスルーまで粗粉砕し、次いでボールミルで時間を30分〜3時間微粉砕した。平均粒径は4.8μmである。得られた粉末を、磁場10kOeで配向させるとともに、1.5t/cmにて成形した。成形体は1150℃で1時間、Ar雰囲気中で焼結後、放冷した。比較例1〜7はCeを含有しない組成を具備するものである。
(比較例8)
表2に示す比較例8の合金につき、まず磁石原料を高周波誘導炉で溶解を行った。ルツボはアルミナルツボを用い水冷銅鋳型中に鋳込み、母合金を作った。溶解で得られた母合金を35mesh粗粉砕したのち、更にボールミルにより平均粒径8.5μmのものが得られるように粉砕を行った。この後、粉末を磁界中で所定の圧力で成形した。成形体を1150℃で2時間Ar雰囲気焼結を行い、その後700℃で3時間熱処理を行った。時効熱処理後の冷却速度を100℃/minで放冷したものである。
(比較例9,10)
比較例9,10に示す合金を高周波溶解し、水冷銅鋳型に鋳造した。次に、スタンプミルにより35メツシユスルーまでに粗粉砕し、次いでボールミルにより3時間微粉砕し、平均粒径7μmとした。その後、磁界(10kOe)中配向・成形(1.5t/cmにて加圧)し、得られた成形体を1160℃、1時間Ar雰囲気中で焼結し、焼結後は放冷(冷却速度200℃/min)した。
(比較例11)
比較例11の組成を有する合金をArガスアーク中溶解後、水冷銅鋳型に鋳造して得た。本合金をスタンプ・ミルにより40mesh以下に粗粉砕後、有機溶媒中で平均粒度7μmにボール・ミルにより微粉砕した。得られた粉末を15kOe磁界中で1.0ton/cm2の圧力で加圧成型した後、99.999%純度の180TorrAr中で1060℃、2時間焼結し、焼結後は冷却速度350℃/minで室温まで冷却した。さらに600TorrAr中にて時効処理を725℃で2時間行なった。時効熱処理後の冷却速度を100℃/minで放冷したものである。
(比較例12〜15)
比較例12〜15に示す合金を高周波溶解し水冷銅鋳型に鋳造した。次いで、スタンプミルにより35メツシユスルーまで粗粉砕し、次いでボールミルにより3時間微粉砕し、平均粒径5μmとした。その後、磁界(10kOe)中配向、成形(1.5t/cm2にて加圧)し、成形体は1150℃×1時間Ar雰囲気中で焼結し、焼結後は放冷(200℃/min)した。
(比較例16,17)
Nd(Fe0.90.15.5なる組成の合金を高周波溶解にて作製した。得られたインゴットをスタンプミルおよびディスクミルで粗粉砕し、32メッシュ以下に調整後、振動ミルで微粉砕した。粉砕媒体はアセトンを用い、粉砕粒度3.5μm(FSSS)の微粉砕を得た。微粉砕粉は、未乾燥状態で、15KOeの磁界中で横磁場湿式成形を行なった。本成形体は、真空焼結炉の冷却室にて常温24時間の脱気後、焼結ゾーンに移動し、1100℃の温度で2時間焼結した。含有酸素量および窒素量の変化は、脱気後焼結ゾーンに移動する前に、空気または窒素ガスを導入し、その時間を変化させることによって行なった。窒化処理の場合は、必要に応じて加熱した。得られた焼結体を800℃の温度で1時間保持した後、1.5℃/分の冷却速度で300℃まで冷却した。冷却後、600℃×1時間の時効を行ない、300℃/minの急冷速度で冷却した。
(比較例18〜20)
比較例18〜20の組成につき、高周波溶解で母合金を作製後、単ロール法により、急冷し、板厚20〜40μmのフレーク状試料を得た。これを、ジェットミルで粉砕後、比較例1と同様の条件で磁場中成形した。この比較例は結晶粒がnmと小さく、この結果磁石は等方性のみとなる。また、得られた成形体は焼結すると磁気特性が劣化するため、粉砕状態の試料を樹脂で固めて測定した。従って、焼結磁石としての特性は不十分である。
(比較例21〜23)
比較例21〜23の組成について、高周波溶解炉を用いてArガス中で溶解する。該合金をボールミルを用いて粒径2μm〜5μmの範囲の微粉末に粉砕する。この微粉末を磁場中で圧縮成形し、その成形体を1100℃×1時間、焼結後1070℃×2時間溶体化処理を行ない急冷し、さらには800℃×2時間時効処理した。時効熱処理後の冷却速度を100℃/minで放冷したものである。
(比較例24,25)
比較例24,25の組成について高周波溶解炉を用いてArガス中で溶解する。該合金をボールミルを用いて粒径2μm〜5μmの微粉末にする。この粉末を磁場中で圧縮成形し、その成形体を1100℃×1時間焼結後、1070℃×2時間溶体化処理を行ない急冷し、さらに800℃×4時間時効処理して永久磁石を得た。なお、時効熱処理後は冷却速度100℃/minで放冷したものである。
(比較例26,27,28)
比較例26〜28の組成について、高周波溶解炉を用いてArガス中で溶解する。そして該合金をボールミルを用いて粒径2μm〜5μmの範囲の微粉末に粉砕する。この粉末を磁場中で圧縮成形し、その成形体を1100℃×1時間焼結後1070℃×2時間溶体化処理を行ない急冷し、さらに800℃×2時間時効処理した。なお、時効熱処理後は冷却速度100℃/minで放冷したものである。
(比較例29,30)
比較例29,30の組成について、高周波溶解炉を用いてArガス中で溶解する。該合金をボールミルで粒径2μm〜5μm微粉末にする。この粉末を磁場中で圧縮成形し、その成形体を1100℃×1時間焼結後、1070℃×2時間溶体化処理を行ない急冷し、さらに800℃×4時間時効処理して永久磁石を得た。なお、時効熱処理後は冷却速度100℃/minで放冷したものである。
(比較例31〜33)
表2に示す組成を有する原料粉末を調製したのち、高周波誘導加熱炉で溶解し、そのままストリップキャスト法にて、板厚100〜300μmのフレーク状試料を作製した。得られた試料を、ジェットミルで平均粒径5〜8μmに微粉砕した後、磁場10kOe、プレス圧0.5t/cmの条件で磁場中成形した。得られた成形体を、主相の融点より50℃低い温度で、3時間の条件で焼結し、50℃/minの速度で室温まで冷却した。この後、700℃、3時間熱処理を行ない、10℃/minの割合で冷却した。これらの処理は、全てAr雰囲気中で行なっている。
いずれも、試料を100個作製し、実施例と同様に、残留磁束密度(Br)、保磁力(Hc)、角型比、リコイル透磁率、Hcレンジを測定した。その結果を表2に示す。
Figure 2010045068
各比較例の磁石につき、実施例と同様の測定条件で磁石特性を評価した結果を表2に併せて示す。いずれの比較例とも、保磁力が大きすぎたり、また小さすぎたり、さらに角型性が劣化していることがわかる。また、表2において「原子比」と表記したものは組成式の係数が原子比で表されたものであることを示している(原子比で表示したものは係数の合計が100at%にならない)。
(モータへの適用)
実施例1〜30および比較例1〜35を永久磁石モータに組込んだ際の特性を評価した。モータ特性の評価として各実施例および各比較例に係る永久磁石を、図2に示す全体または一部の永久磁石の磁化状態を変化させることができるモータの低保磁力磁石部に組み込み、また高保磁力磁石としてNdFeB磁石(Hc=21kOe、Br=12.4kG)を用いて、モータの効率評価を行った。なお、表2に比較例34としてアルニコ磁石を示した。
基準とする永久磁石モータは磁石として全てNdFeB磁石(比較例35:低保磁力側も高保磁力側と同じ磁石を使用)を用いた場合の効率を基準とし、実施例、比較例の効率を相対値として示している。評価条件は、モータの高速回転(3000rpm)、中速回転(2000rpm)、低速回転(1000rpm)での効率の平均値である。これらの条件は、トルクを指標とすると低トルク、中トルク、高トルクとなっており、各動作条件での効率が反映されることになる。
結果を表1および表2に併せて示すが、本実施例に係る永久磁石を用いた場合、NdFeB磁石のみの永久磁石モータに比べて、大幅に効率向上しており、またアルニコ磁石を用いた場合に比べても効率が高いことがわかる。

なお、今回実施例として図2に示す構造の全体または一部の永久磁石の磁化状態を変化させることができるモータへの適用を行ったが、保磁力の高い磁石と比較的保磁力の小さい磁石の組合せで構成される永久磁石モータ用磁石として本実施例の永久磁石を使用するものであれば、特にモータ構造に制限されるものではない。
(実施例31〜36、比較例36〜37)
次に実施例1と同様の組成を用いた原料粉末を用意し、製造条件を表3のように変えて製造を行った。得られた永久磁石について実施例1と同様の磁気特性の測定を行った。その結果を表3に示す。
Figure 2010045068
表3から分かるとおり、本発明の好ましい条件を満たす製造方法であれば本発明の永久磁石を効率よく得られることがわかる。また、好ましい条件を満たさない比較例36および比較例37では十分な特性が得られないことが分かった。
永久磁石モータの一例を示す図。 本発明の永久磁石を用いたモータの一例を示す図。
符号の説明
1… 回転子
2 … 回転子鉄心
3… 低保磁力永久磁石
3A … 高保磁力永久磁石
3B… 高保磁力永久磁石
4 … 高保磁力永久磁石
4A… 低保磁力永久磁石
4B… 高保磁力永久磁石
5 …第1の空洞
6 … 第2の空洞
7 …鉄心の磁極部
11 … スリット
12 … スリット
14 …永久磁石

Claims (11)

  1. 以下の一般式を満たすとともに、保磁力が0.5kOe以上5kOe以下、かつ10kOeの磁場での磁化に対する残留磁化の比で表した角型比が85%以上であることを特徴とする永久磁石。
    一般式
    (R11−x−yR2R3FeCo
    R1:Nd,Prから選ばれる少なくとも1種
    R2:Sm,La,Ceから選ばれる少なくとも1種
    R3:Tb,Dyから選ばれる少なくとも1種
    M:Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Cr,Mo、W,Mn、Ni,Cuから選ばれる少なくとも1種
    X:Ga,Si,Alから選ばれる少なくとも1種
    0≦x≦0.25
    0≦y≦0.1
    0≦x+y≦0.3
    12≦a≦18
    55≦b≦75
    1≦c≦30
    3.5≦d≦5.5
    0≦e≦5
    0≦f≦5
    0≦g≦5
    a+b+c+d+e+f+g=100原子%
  2. 第2および第3象限の平均リコイル透磁率1.00〜1.08を持つことを特徴とする請求項1に記載の永久磁石。
  3. 焼結体であることを特徴とする請求項1乃至2のいずれか1項に記載の永久磁石。
  4. モータに搭載されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の永久磁石。
  5. 以下の一般式を満たす合金粉末を磁場中成形することにより成形体を調整する成形工程、成形体を不活性雰囲気中1000℃以上1200℃以下の温度で10分以上10時間以下焼結することにより焼結体を得る焼結工程、焼結体を550℃以上750℃以下の温度で10分以上10時間以下熱処理するとともに、熱処理後の冷却速度0.1〜50℃/minで200℃まで冷却する時効処理工程を具備することを特徴とする永久磁石の製造方法。
    (R11−x−yR2R3FeCo
    R1:Nd,Prから選ばれる少なくとも1種
    R2:Sm,La,Ceから選ばれる少なくとも1種
    R3:Tb,Dyから選ばれる少なくとも1種
    M:Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Cr,Mo、W,Mn、Ni,Cuから選ばれる少なくとも1種
    X:Ga,Si,Alから選ばれる少なくとも1種
    0≦x≦0.25
    0≦y≦0.1
    0≦x+y≦0.3
    12≦a≦18
    55≦b≦75
    1≦c≦30
    3.5≦d≦5.5
    0≦e≦5
    0≦f≦5
    0≦g≦5
    a+b+c+d+e+f+g=100原子%
  6. 永久磁石の保磁力が0.5kOe以上5kOe以下で、かつ10kOeの磁場での磁化に対する残留磁化の比で表した角型比が85%以上であることを特徴とする請求項6に記載の永久磁石の製造方法。
  7. 保磁力が0.5kOe以上5kOe以下でかつ、10kOeの磁場での磁化に対する残留磁化の比で表した角型比85%以上であることを特徴とする全体または一部の永久磁石の磁化状態を変化させることができるモータ用永久磁石。
  8. 第2、3象限の平均リコイル透磁率1.00〜1.08を具備することを特許請求項7に記載の全体または一部の永久磁石の磁化状態を変化させることができるモータ用永久磁石。
  9. 希土類元素として主にNdあるいはPr,および鉄とホウ素を必須とする磁石を用いることを特徴とする請求項7乃至8のいずれか一項に記載の全体または一部の永久磁石の磁化状態を変化させることができるモータ用永久磁石。
  10. 希土類元素として主にNdあるいはPr、および鉄とホウ素を必須とする磁石は、正方晶構造からなる主相と低融点の希土類リッチ相からなることを特徴とする請求項7乃至9のいずれか一項に記載の全体または一部の永久磁石の磁化状態を変化させることができるモータ用永久磁石。
  11. Feを主体とする軟磁性相を含むことを特徴とする請求項10に記載の全体または一部の永久磁石の磁化状態を変化させることができるモータ用永久磁石。
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